裁判の記録 line
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2007年
(平成19年)
[7月〜12月]
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7月3日 類似大衆食堂チェーン事件
   大阪地裁/判決・請求棄却(控訴)
 原告は、「ごはんや まいどおおきに ○○食堂」(○○の部分には店舗の所在地名が入る)の統一ブランドで多店舗展開を行っており、一方、被告会社は「めしや食堂」の営業表示で多店舗展開をしている。
 両者は「食堂」部分で外観、称呼、観念が同一であり、「飯屋」は「ごはんや=御飯屋」と観念が同一なので、大衆食堂の営業表示としては、全体として両者は類似するとして、原告が、不正競争行為の停止、看板等の使用禁止を求め、損害賠償を請求して提訴した。
 大阪地裁は、「ごはんや」「○○食堂」の部分はそれ自体が格別の識別力を有するわけではないとし、営業主体の識別標識の称呼としては、原告は「ごはんやまいどおおきに○○しょくどう」または「まいどおおきに(しょくどう)」であり、被告表示の称呼は「めしやしょくどう」あるいは「めしや」であり、類似しないことは明らかである等として、請求を棄却した。
判例全文
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7月9日 谷垣財務相への名誉棄損事件(週刊文春)
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 2005年12月8日号「週刊文春」の、88年訪中の際に中国人女性をホテルの自室に伴って、中国公安当局の事情聴取を受けたとする記事で名誉を傷つけられたとして、前財務相の谷垣禎一氏が求めた損害賠償請求の判決が、東京地裁であった。
 判決は、「警察内部資料」は「入手経過などが明らかでなく」、「記事が真実との証明はなく、真実と信じる相当の理由もない」とし、330万円の損害賠償支払いを命じた。

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7月11日 著作権登録詐欺事件(刑)
   千葉地検/逮捕
 千葉地検は、著作権登録料名目で知人の社長から約3570万円をだまし取った広告宣伝会社の社長を、詐欺容疑で逮捕した。
 男は、「会社のパンフレットやロゴなども著作権登録しておけば保護される」などと持ちかけていた。

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7月12日 商標“エコブライター”侵害事件(2)
   知財高裁/判決・請求棄却
 平成14年10月7日、東京都渋谷区所在の株式会社クレモナ(「渋谷クレモナ」)の代理人から商標の出願がなされ、クレモナはその後、東京都中央区銀座へ住所を変更。現在は、商標権は福岡県鞍手郡所在の株式会社クレモナに譲渡され、平成18年3月27日に登録された。
 これに対し、原告会社は、平成18年4月、「商標権を承継しない者の商標登録出願に対する登録査定である(商標法46条1項三号該当)」として、無効審判を請求したが、特許庁の請求不成立の審決を受けたため、この審決の取消請求を提起した。
 知財高裁中野哲弘裁判長は、「登録査定は渋谷クレモナに対してなされた」ものであり、この間、登録名義人変更の手続きはなされておらず、本件商標登録を受けた者は渋谷クレモナに特定されるとして、特許庁の審決を支持し、請求を棄却した。
判例全文
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7月12日 商標“海底遺跡”審決取消事件(2)
   知財高裁/判決・請求認容
 沖縄県与那国島の階段状海底遺跡をモチーフにし、女性ダイバーのシルエットに「海底遺跡」という文字を配した商標が登録されたが、第三者の異議申立てにより、特許庁は、この商標は「海底遺跡観光やスキューバダイビングの名所として広く知られた沖縄県与那国島の海底遺跡を容易に認識し理解するから、自他役務の識別標識としては機能しない」ので、登録要件に欠けるとして、指定役務の一部の取消決定をした。
 しかし、知財高裁中野哲弘裁判長は、与那国島の海底遺跡の発見より早く、熱海の階段状海底遺跡やアレクサンドリアの遺跡等が発見されて広く知られており、本件商標が沖縄県与那国島の海底遺跡という特定の遺跡を表示するとは言えないとして、特許庁の取消決定を取り消すと判決した。
判例全文
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7月19日 商標“Pinks”審決取消事件(2)
   知財高裁/判決・請求棄却
 弁当販売の「本家かまどや」が商標出願したところ、称呼も指定役務も類似する先登録商標があるとして拒絶査定を受け、これを不服とする審判請求が不成立とされたために、提訴した。
 「本家かまどや」は、拒絶査定の原因とされる先登録商標(「引用商標」)は、自社の所有する商標によってそもそも登録することができず、当然無効である「引用商標」を根拠として拒絶しているのであるから、違法であり、特許庁の審決は取り消されるべきであると主張した。
 しかし、知財高裁中野哲弘裁判長は、類比判断は、出願商標と特定の他人の商標(ここでは「引用商標」)との対比においてのみ決定されるべきで、たとえその「引用商標」が第三の登録商標(原告の先登録商標)との関係で無効とされるべき瑕疵を有していたとしても、上記の類比の判断を異にするものではない、として、請求を棄却した。
判例全文
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7月19日 商標“CHECHE”侵害事件(2)
   知財高裁/判決・請求認容
 香港の衣料品会社チェチェ・コンセプトは、婦人靴の製造・販売会社馬里奈の商標が不使用であるとして、商標登録取消の審判請求をしたところ、特許庁がこれを認める審決をしたので、馬里奈がその審決の取り消しを知財高裁に求めた。
 馬里奈の商標は、「チェチェ」と「CHECHE」とで2段に構成されているが、「本件商標と社会通念上同一と認められる標章」を用いて婦人靴を販売していると主張した。実際には、欧文の「CHE」と「CHE」の間に小さなハートの図形を配したものである。
 知財高裁は、商標とハートを配した実際の標章とは社会通念上同一と認めるのが相当であるなどとし、請求を認容した。
判例全文
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7月19日 彦根市長への名誉毀損事件(週刊新潮)
   大津地裁/判決・請求棄却(控訴)
 
判例全文
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7月25日 「愛の流刑地」類似表現事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 長野の小説家が、執筆した原稿を新聞社に送付したところ、その後に新聞に連載された小説の表現の多くで、自作小説と同一の表現があり、複製権を侵害されたとして、新聞連載小説家に損害賠償を求めた。
 東京地裁は、表現を比較するに、一部はアイディアの同一性をいうものであり、一部は明らかに類似していない、一部は「日常的によく使用されている、極めてありふれた表現」であって著作物性は認められないとして、請求を棄却した。
判例全文
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7月25日 おもちゃ鑑定家・北原照久さんの著作権侵害事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却(上告・上告受理申立)
 人形作家は、自作の人形作品の写真集の著作権は自分にあるとして提訴した一審の請求棄却判決を不服として、知財高裁に控訴した。
 「DREAM JOURNEY」と題するこの書籍は、人形作家自身が創作したものであり、写真の著作権も自分に帰属しているにもかかわらず、被控訴人が著作権者であるとして出版社から金銭を受け取ったのは著作権の侵害であると主張した。
 知財高裁は、人形作家が自ら掲載写真を撮影することもなく、撮影に創作的に関与したものでもないから、各写真の著作権を取得することはないとし、また、人形が撮影に使用されることに異議を唱えたこともなく、写真著作権の帰属についての具体的な話合いをしたこともないから、本件写真集の出版に不法行為はないとして、請求を棄却した。
判例全文
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7月26日 商標“スーパーフコイダン”侵害事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 「自然健康館」「スーパーフコイダン」の文字を2段に配した商標(「本件商標」)を持つ「自然健康館」は、金秀バイオ(株)の「スーパーフコイダン」「SUPER」「FUCOIDAN」の文字を組み合わせた標章(「被告標章」)が自社の商標に類似しており、商標権を侵害しているとして、使用差止と損害賠償を求めて提訴した。
 「フコイダン」は健康食品の原材料名であり、「スーパー」は誇称表示用語にすぎないので、本件商標の要部は「自然健康館」あるいは「自然健康館スーパーフコイダン」であり、一方被告標章の要部は「スーパーフコイダン」である。よって、両者の称呼も観念も類似しない。両者の外観も類似しないとして、東京地裁は、請求を棄却した。
判例全文
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7月27日 強盗殺人未遂事件被告の名誉棄損事件
   大阪地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 大阪市都島区の現金輸送車襲撃事件の犯人として強盗殺人未遂罪などの罪で無期懲役の判決を受けた被告が、「週刊新潮」の発行元の新潮社と編集長に対し、名誉棄損で1000万円の賠償を求めていた訴訟で、大阪地裁は80万円の支払いを命じた。
判例全文
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7月30日 人気漫画のネット流出事件(刑)
   京都地裁/判決・有罪
 週刊マンガ雑誌の人気作品を発売日前にファイル交換ソフト「ウィニー」でネット上に流出させたとして、著作権法違反に問われていた男性に懲役1年(執行猶予3年)の判決が言い渡された。

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7月30日 旅行パンフレットの写真流用事件
   警視庁/書類送検
 JTB子会社が、写真家に無断で風景写真をJTBの旅行パンフレットに掲載して、写真家の著作権を侵害したとして、警視庁は2社の男性4人を著作権法違反の疑いで書類送検した。

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8月3日 ネット通販の超安値表示事件
   東京地裁/判決・請求認容
 ホームページ上で、実際の価格が13万1000円のカーナビを、誤って10分の1の価格を表示して注文を受けてしまった車用品販売会社が、売買契約の無効確認を求めた訴訟に、東京地裁は「表示価格が誤りだったことを注文者が認識していたことは明らか」だとして、会社側の請求を認容した。

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8月8日 商標“CUBS”審決取消事件(2)
   知財高裁/判決・請求認容
 米メジャー球団シカゴ・カブスは、そのロゴを商標登録出願(「本願商標」)したところ、特許庁がスイスの大手銀行UBSの商標と類似するとして拒絶したので、不服審判を請求したが、請求不成立の審決を受け、その審決の取り消しを求めて提訴した。
 シカゴ・カブス(CHICAGO CUBS)の商標は、「C」を肉太の円環状にデザインし、UBSを「C」の右側欠損部分に配したものである。一方、スイスの大手銀行UBSの商標は、交差した3本の鍵を左側にUBSの文字を右に配する図形商標である。
 特許庁は、カブスの商標は「UBS」部分に目を奪われ「ユービーエス」の称呼も生じるので、称呼を共通にする類似商標であると審決した。
 知財高裁は、本願商標はシカゴ・カブスのロゴと同一であり、シカゴ・カブスの名称はわが国でも相当程度知られているので、「C」と「UBS」は一体として「CUBS」カブスと認識されるのが自然であるとして、特許庁の審決の認定は判断に誤りがあり、違法であるので、審決を取り消すとした。
判例全文
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8月27日 医療事故報道の名誉棄損事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴・控訴棄却)
 2001年、東京女子医大病院で心臓手術を受けた13歳の少女が死亡した事件で、業務上過失致死罪に問われ無罪となった医師が、この判決を報じたフジテレビの番組で名誉を傷つけられたとして、1500万円の損害賠償を求めた裁判の判決が東京地裁であった。
 判決は、名誉棄損を認めフジテレビに100万円の支払いを命じた。

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8月27日 「新宿梁山泊」の戯曲上演権事件
   東京地裁/提訴
 劇団新宿梁山泊は、元座付き作家の鄭義信さんに対し、鄭さん作の劇団代表作「人魚伝説」、「それからの夏」の2作の上演権が劇団にあることの確認を求めて訴訟を提起した。2作とも、劇団員全員が集団で創作した「共同著作物」であると主張している。
 7月6日、鄭さんは、自分が著作権を持つ作品が無断で上演される恐れがあるとして、上演中止を求める仮処分申請を東京地裁に申し立てた。7月24日、上演権が現在も劇団にあるのかどうか、裁判で確定するまで上演しないことを条件として、和解が成立していたものである。

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8月28日 商標“にわか”審決取消事件(2)
   知財高裁/判決・請求棄却
 略正方形の黒地に「俄」の文字を白抜きにした商標(「本願商標」)の登録申請をしたところ、拒絶査定を受け、不服審判請求が不成立とされたため、この審決の取消請求を提起したものである。
 審決の認定では、称呼上および観念上類似の先登録商標(「引用商標」)があり、本願商標の指定商品が引用商標の指定商品に含まれるから、登録を受けることができない商標に該当するとした。
 引用商標は、博多のお土産品「にわかせんべい」の標章として知られるが、郷土芸能「博多仁和加」の「面をかたどった図形」とその下に「にわか」「二○加」の文字とを3段にデザインしたものである。
 知財高裁は、いずれも称呼において同一であり、いずれも「俄狂言」を想起させ観念においても同一であり、全体的に見て、本願商標は引用商標の類似商標と認めるべきで、審決の判断に誤りはないとして請求を棄却した。
判例全文
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8月29日 チャップリン映画の格安DVD事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 チャールズ・チャップリンが映画監督等を務めた映画作品の著作権管理団体が、「モダン・タイムズ」「独裁者」「ライムライト」などの映画9作品について、格安DVDを販売するアートステーションに対し、著作権侵害であるとして、複製・頒布の禁止、在庫の廃棄、約9400万円の損害賠償請求の訴訟を提起した。
 9作品はすべて、1919年から1952年にかけて公表されており、著作権法施行以前に公表されているので、附則7条により、旧法による存続期間が著作権法の存続期間より長い場合は、なお旧法によること。旧法では、独創性のある映画の著作物の存続期間は著作者の死後38年(チャップリンの死は1977年12月25日)であること、作品のクレジットによればチャップリンが監督であり、著作者であるから、少なくとも2015年まで存続すること。したがって、2003年改正法による公表後70年として計算した存続期間と比較して、なお旧法による場合が長いときは旧法によるとして保護期間を計算した。
 こうして東京地裁は、「殺人狂時代」は2017年、「ライムライト」は2022年まで、他は2015年まで存続しているとした。   
 旧法において映画の著作物の著作権は映画製作者「チャールズチャップリン プロダクションズ」等の、映画会社やプロダクションに帰属するので、公表後33年で著作権の保護期間が満了するとするアートステーションの主張を退けた。
判例全文
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8月29日 商標“エルテ”侵害事件
   東京地裁/判決・請求認容
 東京の皮膚臨床薬理研究所は、オイルクレンザーやソープ、化粧品等をOEM契約により商品を供与し、処方に従って製造し、本件商標「エルテ」を付して販売する契約を交わした名古屋の会社に対して、その商標使用料の遅滞を理由として、契約の解除、同商標を付した製品の製造、販売の禁止、同商標使用・頒布の禁止などを求めて提訴した。
 催告のないまま行われた通知書による契約解除が有効か、商標「エルテ」は、「自己の氏名若しくは名称・・を普通に用いられる方法で表示する商標」であって、商標権が及ばないかどうか等が争われたが、東京地裁は、商標使用料不払いによって解除権が発生した、26条1項一号には該当しないとして、請求を認容した。
判例全文
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8月30日 製造“ノウハウ”の侵害事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 元関西ペイントの技術本部長が、被告関西ペイントが自分のノウハウを使用した行為は「不正行為により取得した営業秘密の使用」にあたり、不競法2条1項四号違反である等として、訴えた一審判決で請求を棄却されたので、控訴していた。
 知財高裁は、ノウハウの具体的内容が明らかでなく、「営業秘密」に当たることの立証がない等として、一審判決を支持し控訴を棄却した。
判例全文
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8月30日 ビジネス書の著作権侵害事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 セミナーを開催する会社とその社長は、元従業員が独立して、会社経営者らを対象として執筆した経営のノウハウを教える書籍が、自らの著作物の複製および翻案であり、著作権侵害であるとして提訴した。
 東京地裁は、被告書籍が、「オヤ」「アラ」「エ!」等の感嘆詞を使用した程度で、実質的に原告の著作物と同一である等として、232ページ中8ページに著作権侵害をみとめたが、侵害部分は可分であるとして出版差し止めは認めず、損害額の認定には著作権法114条1項を適用した。
判例全文
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8月30日 商標“海”侵害事件(2)
   知財高裁/判決・請求棄却
 エステー株式会社が商標「海」の登録を受けたことに対して、カイ・ファーマシューティカルズは、商標法4条1項十一号の「他人の登録商標あるいはこれに類似する商標」であるとして無効審判を請求したが、特許庁は、引用商標「快」や貝印株式会社の商標「KAI」とは外観・称呼・観念が非類似であるとして、請求不成立の審決を下したので、この審決取消を求めて控訴した。
 判決では、「海」と「快」は、「カイ」の称呼が生じるが、その観念は明らかに相違する、等として、審決の判断に誤りはないとし、請求を棄却した。
判例全文
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9月12日 日経ビジネス「期待権」事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 日経ビジネスの取材を受けた香港の投資家が、自分の説明した趣旨と違う記事を掲載され、期待権を侵害されたとして訴えた。
 東京地裁は、特段の事情がないかぎり、言論機関が取材して掲載する記事の内容について、取材対象者は何ら期待権を有しない、又、掲載する記事内容について予め取材対象者に説明する法的義務はないとして、請求を棄却した。

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9月13日 HPへの漫画本無断掲載事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(確定)
 永井豪さんやちばてつやさんなど11人の漫画家が、ネット関連会社「ネットカフェプランニング」が運営するサイトに無断で作品を掲載されたとして、損害賠償の訴えを起こしていた。
 公衆送信権侵害の事実に争いがないために損害額が争点となった。著作権法114条3項によって、本著作物の使用料相当額を自己が受けた損害額とした。
 電子書籍化した場合の想定販売価格は¥300を下らない、著作権使用料率は35%を下らないとし、掲載を始めた平成17年9月は1日2万件程度だったアクセス数が、18年1月頃には10万件に達したこと等から算出した閲覧総数を乗じて損害額を算定し、ほぼ請求通り合計約2030万円の支払いを命じた。
判例全文
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9月13日 商標“浜焼き鯖寿司”侵害事件A(2)
   知財高裁/判決・請求棄却
 原告は、「みち子が」「お届けする」「若狭の」「浜焼き」「鯖寿司」という縦書きで5行に書き分けた商標を平成17年に登録したが、被告会社「海の恵み」の請求を受けて、特許庁が、商標法4条1項十号の、「他人の業務にかかわる商品・・を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標」周知商標に当たるとして登録無効審決をしたために、その取消しを求めて控訴したものである。
 原告は、被告の商標(「引用商標」)は自分が創作したものであること、被告は単なる通常使用権者にすぎないから、「他人の業務」に当たらないと主張した。
 知財高裁は、「他人」とは出願者以外の者をさし、商標の創作者が誰であるかは何の関係もないこと、原告は平成14年に「浜焼き鯖寿司」の商標の拒絶査定を受けているので、平成14年を周知性判断の基準とはできないこと、原告の出願時の平成16年には、引用商標は、年間150万食を販売し、空弁ブームを作りだしたとされる人気商品「焼き鯖寿司」の「巻紙」と「しおり」に表示されていてすでに周知商標となっており、原告の商標はこの周知商標と同一のものであるとして、審決を支持し請求を棄却した。
判例全文
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9月13日 商標“浜焼き鯖寿司”侵害事件B(2)
   知財高裁/判決・請求棄却
 原告は、「みち子の」「浜焼き」「鯖寿司」と3行に書き分けた登録商標が、被告会社「海の恵み」の類似商標であるとして登録無効審判を受けたので、控訴していたが、知財高裁は、周知商標と類似するものであるとして、特許庁の審決を支持し控訴を棄却した。
判例全文
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9月13日 商標“浜焼き鯖寿司”侵害事件C(2)
   知財高裁/判決・請求棄却
 原告は、引用商標の「鯖寿司」を「鯛寿司」と改めて5行に書き分けた登録商標の無効審決に対して、控訴していた。
 知財高裁は、原告の出願商標の査定時には、被告の引用商標はすでに周知であり、指定商品である「鯛寿司」と「鯖寿司」は「同一または類似の商品である」として、登録の無効審決を支持して請求を棄却した。
判例全文
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9月13日 商標“浜焼き鯖寿司”侵害事件D(2)
   知財高裁/判決・請求棄却(確定)
 原告は、引用商標の4行目を「昆布〆」と変えた商標に対する登録無効審決を不服として控訴していたが、知財高裁は、周知商標である引用商標と類似するものだとして、請求を棄却した。
判例全文
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9月13日 商標“みずほねっと”侵害事件A(2)
   知財高裁/判決・請求棄却
 みずほフィナンシャルグループの商標「MIZUHO」に対して、「みずほねっと」の商標を有する会社が、商標法4条1項十一号、十五号などに違反するとして登録無効審判の請求をしたが、特許庁が請求不成立の審決をしたので、その審決取消しを求めて控訴した。
 知財高裁は、「みずほねっと」が普通名詞二語を組み合わせた造語であり、二語が相まって一つの観念を形成するのであり、その称呼は「ミズホネット」であって、「ミズホ」のみの称呼は生じない等として、外観、観念、称呼のいずれの点からも類似しないとして、審決の結論を支持した。
判例全文
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9月13日 商標“みずほねっと”侵害事件B(2)
   知財高裁/判決・請求棄却
 上記商標とは類似群を異にし、第42類を中心にした商標「MIZUHO」に対して、やはり「みずほねっと」の商標所有権者が登録無効審判を求めたが、請求不成立の審決を受けて、その取消しを求めて控訴した。
 しかし、知財高裁は、上記と同様に判断し、控訴を棄却した。
判例全文
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9月13日 商標“みずほねっと”侵害事件C(2)
   知財高裁/判決・請求棄却
 上記商標とはさらに類似群を異にし、第35類を中心にした商標「MIZUHO」に対して、同じく「みずほねっと」の商標所有権者が審決取消しを求めて控訴した。
 知財高裁は、上記2件と同様に判断し、控訴を棄却した。
判例全文
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9月14日 黒澤作品のDVD化事件
   東京地裁/判決・請求認容(控訴)
 東宝は、「姿三四郎」等8点の黒沢明(平成10年死亡)監督作品を無断で複製され、廉価版DVDを販売されて、著作権を侵害されたとして、制作会社に販売差し止めと損害賠償を求めて提訴していた。
 東宝は、これら映画の著作権者は黒沢監督であり、東宝はその著作権を継承したと主張し、旧著作権法3条を適用して映画の著作権は平成48年までが保護期間であるとした。
 一方制作会社は、東宝名義で公表されたもので旧著作権法6条が適用され、最も早い公開の映画でも新著作権法施行時に著作権が消滅していないので、新法の公表後50年が適用され、最も遅い公開の映画でも、著作権は平成14年12月31日までだとして争った。
 東京地裁は、黒沢監督は少なくとも著作者の一人であると認め、「自然人の氏名が表示され、その者の死亡時から著作権の存続期間を算定することができる著作物は、同法(旧著作権法)6条にいう団体名義の著作物に当たらない。」として、原告の請求を認容し、原版の廃棄、製造・販売の差し止めと仮執行を認めた。
判例全文
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9月14日 黒澤作品のDVD化事件(大映作品)
   東京地裁/判決・請求認容(控訴)
 角川映画は、「静かなる決闘」「羅生門」の2作品について、旧大映から著作権を継承したとして、廉価版DVDの製作販売会社に対して、著作権侵害の2作品の増製、輸入、頒布の禁止、在庫の廃棄を求めて提訴した。
 東京地裁は、角川映画は本件映画の著作権全部を取得していること、本件映画は旧大映の作品として公開されたが、『冒頭部分には、・・「監督 黒沢明」と表示されているから、著作者の実名で公表されたものであり、・・旧著作権法6条にいう団体名義の著作物には当たらない。』として、旧著作権法3条を適用し、平成48年までを保護期間とした。
判例全文
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9月17日 複製ソフトの違法公開事件(韓国任天堂)(刑)
   ソウル中央地方検察庁/告訴
 韓国任天堂は、自社のゲームソフトを違法に複製し提供したとして、韓国のウェブサイトの運営企業と、これらのプログラムを無断で掲示していた一部ユーザーに対し、削除や取引行為の中断を要請してきたが、従わなかったので、今回の告訴に踏み切ったという。

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9月26日 商標“腸能力”侵害事件(2)
   知財高裁/判決・請求認容
 「共棲培養した乳酸菌生成エキスを加味してなる豆乳、その他の豆乳」を指定商品とする商標「腸能力」を有する沖縄県浦添市の会社(原告)が、埼玉県和光市の会社(被告)で「豆乳を主原料とするカプセル状の加工食品」を指定商品とする商標「腸能力」について登録無効審判を請求し、商標の類否が争われた。特許庁は、指定商品が互いに類似しないとして、請求不成立の審決を下した。
 これに対し知財高裁は、審決の認定は誤りであり、それぞれの指定商品は類似するとし、類似群の違いについても、『そもそも類似群コードを記載した「類似品・役務の審査基準」は、特許庁における商標登録出願の審査事務等の便宜と統一のために定められた内規にすぎず、法規としての効力を有するものではない』として、審決を取消した。
 また、商標の類否判断を省略し、指定商品の類否についてのみ判断したのは審理のありかたとして適切さを欠くと批判した。
判例全文
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9月26日 「フォーラム21」vs創価学会 名誉毀損事件(2)
   東京高裁/判決・取消
 創価学会は、東京都東村山市議の死亡をめぐる隔週週刊誌「フォーラム21」の座談会記事が、創価学会がこの事件に関与しているとの印象を与えるとして、発行人の乙骨正生氏らを名誉棄損で提訴した。一審判決では、謝罪広告と損害賠償を認めたが、東京高裁判決は地裁判決を取消した。

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9月27日 商標“スマイルマーク”審決取消事件F(2)
   知財高裁/判決・請求棄却
 スマイルマークに似たマークの下端に、「Harvey Ball」の文字を重ねた商標の登録申請に対する拒絶査定に対し、原告は、取消請求が不成立とされたために控訴したが、知財高裁は、自他識別機能を有するのは本願商標の図形部分であり、したがって、その他の引用商標とは外観において類似するとして、特許庁の審決を支持し控訴を棄却した。
判例全文
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9月27日 商標“東京メトロ”侵害事件(2)
   知財高裁/判決・請求認容
 東京地下鉄株式会社(愛称「東京メトロ」)は、「とうきょうメトロ」と題する無料配布新聞社の商標「東京メトロ」を、3年以上継続して登録商標として使用していないとして、登録取消を申請したところ、特許庁が取消の審決をしたので、原告は取消審決の取消しを求めて控訴した。
 特許庁は、無料配布の証拠がない、無料配布なので「市場において独立して商取引の対象」とはならないので、指定商品「新聞、雑誌」には当たらない印刷物にすぎないとした。
 しかし知財高裁は、特許庁の事実認定に誤りがあるとして、配布の事実を認め、商法上の「商品」は商取引の対象であり、商取引は売買契約に限られないとして、無料配布紙であっても、読者から対価を受けていないが広告掲載依頼者からは対価を得ているので「商取引の対象である商品」であるとして、原告の請求を認容した。
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9月27日 「極真会館」の商標事件B(2)
   知財高裁/判決・一部取消、控訴棄却
 財団法人極真奨学会は、(1)自ら保有していた商標を原審被告が無断で移転登録をし、(2)遺言の受諾によって原審被告は、失効した商標を再登録する際には極真奨学会にすべき契約上の義務を負っているにも関わらず、自らの名義で再登録し、(3)さらに新たな商標は極真奨学会名義で登録されるべきなのに原審被告名義で登録したとして、これら各種商標は極真奨学会に権利移転登録すべきだとして、控訴していた。
 知財高裁は、(1)各商標の譲渡証書は、極真会創立者の遺言に基づいた極真会館の後継者から原審被告に正当に譲渡され、(2)遺言の受諾は後継者となることの受諾にすぎず、原告が主張するような原審被告に契約上の義務はない、(3)よって、原告には移転登記を求める法的な根拠はないとして、原告の請求は全部理由がないとして棄却した。
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9月27日 商標“一枚甲”侵害事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 三味線用バチの製造・修理会社(被告)が、三味線バチのグリップエンドに、六角形の中に「一枚甲」と印刷した金色シール貼って使用したところ、三代にわたって象牙バチを製造販売する原告が、商標権を侵害されたとして、警告して使用を中止させ、過去20年間の不法行為について1億9000万円の損害金を請求した。しかし、一審判決では請求を棄却されたので、控訴していた。
 知財高裁は、被告標章の「一枚甲」は、商品の「品質ないし原材料を表示する用語」であり、金色のシールは自他識別機能を有するものではないとして、一審判決を支持し控訴を棄却した。
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10月1日 商標“ラブコスメ”侵害事件
   大阪地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 被告会社は、インターネット上で化粧品やアダルトグッズ等を通信販売していたが、商品に付けた「ラブコスメティック」「ラブコスメ」「LOVE COSMETIC」などの標章が、原告商標「ラブ」「LOVE」等の4つの商標権を侵害したとして、標章使用の禁止やネットからの削除、損害賠償を求めて原告が提訴した。
 大阪地裁は、「cosmetic」は化粧品を表す英語であって、被告標章はいずれも「Love」が腰部であり、腰部において称呼、観念が同一であり、外観を考慮しても全体として類似するなどとして、請求を一部認容した。
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10月2日 ピーターラビットの著作権表示事件(2)
   大阪高裁/判決・控訴棄却、附帯控訴棄却
 原告は、ベアトリクス・ポターの著作権仲介代理人コピーライツ・ジャパンが、著作権が消滅しているにもかかわらず、ライセンシーに対してコピーライト表記(C)を付して使用させているのは、著作権が未だ存続しているかのように誤認させ、被告ライセンス商品の品質または内容を誤認させる不正競争行為であるとして、使用させることの差止めや損害賠償を求めて控訴し、被告は付帯控訴を提起した。
 大阪高裁は、原告は子供用被服、文房具、日用品雑貨などの商品の製造・販売を業としているが、それ以外の商品の製造販売について営業上の利益が侵害されるということを、具体的に商品、役務を特定して立証していない等として、一審判決通り、被告が原告に対する著作権に基づく差止請求権を有していないことの確認には理由があるが、その他の請求については理由がないとして、控訴および付帯控訴を棄却した。
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10月9日 「週刊現代」のキヤノン創業者名誉棄損事件
   東京地裁/提訴
 キヤノンと同社会長の御手洗富士夫氏は、叔父であるキヤノン初代社長と旧日本陸軍の七三一部隊との関連性を取り上げた「週刊現代」の記事によって名誉を傷つけられたとして、講談社に損害賠償等を求めて東京地裁に提訴した。

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10月11日 類似「正露丸」販売事件(2)
   大阪高裁/判決・控訴棄却(上告・上告不受理・確定)
 「ラッパのマーク」で知られる「正露丸」の製造販売業者大幸薬品が、和泉薬品工業の「正露丸」の製造販売は不正競争にあたるとして、販売差止や「ひょうたんマーク」包装の廃棄を求めて控訴した。
 高裁判決は、大幸薬品「正露丸」は店頭で一番よく目にするが、「正露丸」の販売業者は複数あり、包装箱の表示にも共通する特徴が見られ、「ラッパの図柄」を度外視した包装では商品の出所表示機能を果たさない等として、控訴を棄却した。
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10月25日 “大阪みたらしだんご”不正競争事件(2)
   大阪高裁/判決・控訴棄却
 「大阪みたらし小餅」を製造販売する控訴人は、「大阪みたらし元祖だんご」を製造販売する被控訴人が包装紙等に「元祖」を使用する行為は、内容・品質を誤認させ、控訴人の営業上の信用を棄損する虚偽の告知であり、不正競争防止法に抵触するとして控訴した。
 大阪高裁は、「元祖」の表示が「その品質にかかわる優位性を強調するとは必ずしもいえず」、品質誤認表示に当たるとは直ちには言えないし、営業誹謗行為にも当たらないとして控訴を棄却した。
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10月25日 商標“モズライト”侵害事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 エレキギターの輸入、製造、販売を行う原告は、被告2社を原告の商標と同一あるいは類似の標章を付して製造、販売し、被告標章を付した商品カタログを配布するのは自社の商標権侵害であり、不正競争防止法違反であるとして、標章使用の禁止、商品広告類の配布禁止を求めて提訴した。
 東京地裁は、ベンチャーズが使用したことにより人気を博したモズライト・ギターの一連の歴史をたどれば、そもそも原告の一部商標はモズライト社の周知商標と同一または類似であって、登録を無効とすべき商標であり、他の一部の商標は「不正競争の目的で商標登録を受けた場合」にあたる。したがって、原告が商標権を主張することはできない等として請求を棄却した。
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10月25日 商標“大阪プチバナナ”審決取消事件(2)
   知財高裁/判決・請求認容
 「大阪プチバナナ」が平成17年8月23日に商標登録されると、登録異議申立てがあり、特許庁は、「他人の商標」である「大阪ばな奈」(「引用商標」)と類似し、指定商品も同一または類似であるとして登録取消の決定をした。原告はその取消を求めて控訴した。
 引用商標は、原告の請求によって、平成19年2月28日に不使用商標の審決(別件審決)を受けて消滅したが、原告商標の登録査定時の平成17年には未だ消滅していなかったので、両商標の類否が争われることになった。
 両商標に共通の「大阪」は地名であって識別力がない、したがって、後に続く「プチバナナ」と「ばな奈」部分は外観において非類似であり、観念や称呼においてはある程度類似し共通する部分もあるが、取引の実情において、商品の出所を誤認混同する恐れがあったとは認められず、本決定は類似性の判断を誤ったとして決定を取消した。
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10月26日 ケネス・ハワード著作物の譲渡事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 原告は「Von Dutch」の文字標章を使って被服を製造、販売するアメリカ法人であり、被告は「Von Dutch」の文字標章や「Flying Eyeball」の図柄の標章を使用した被服を日本に輸入、販売する韓国法人の代表者であり、「Von Dutch」の著作権の譲渡契約に基づいて日本で譲渡登録をした者である。
 原告は、この譲渡契約が虚偽表示によるものであるとして、被告に真正な登録名義の回復を求めて提訴した。
 「Von Dutch」は、1950年代アメリカの著名なアーティスト「ケネス・ハワード」の広く知られたニックネームで、その死後、2人の子供が相続人になったが、「上野商会」や原告に対して著作権譲渡契約を結び、被告に対しても著作権譲渡契約を締結した。
 東京地裁は、日本法を準拠法とすると判断し、2つ契約は二重譲渡の関係にあり、したがって、著作権法77条によって著作権移転登録がなければ第三者に対抗できないとして、移転登録を済ませている被告に対する著作権の移転を認め、原告の請求を棄却した。
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10月30日 商標“オリックス”侵害事件(2)
   知財高裁/判決・請求棄却
 株式会社折原製作所は「オリックス」(「本件登録商標」)の商標権を有しているが、オリックス株式会社が本件登録商標に対して不使用による取消請求をしたところ、特許庁が同商標の登録を取消す審決をしたために、審決の取消しを求めて控訴していた。
 折原製作所は、ウェブサイト上の使用商標は「Orihara & Orix」であるが、本件商標が使用されたと認められるには、この使用商標と本件商標が商標法50条1項にいう「社会通念上同一の商標」と言えるかが問題の一つとなった。
 知財高裁は、両商標は「書体のみの変更」でもなく、「外観が同一」でもない。また、「Orihara & Orix」は同一の書体で一体的に表わされており、「オリハラオリックス」の称呼が生じ、本件商標「オリックス」とは称呼が同一のものとは認められないので、社会通念上同一の商標ということはできないとして、原告の請求を棄却した。
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10月30日 商標“Meta Media”審決取消事件(2)
   知財高裁/判決・請求棄却
 原告が「Meta Media」を商標出願したところ、「自他識別標識としての機能を果たし得ず、商標法3条1項六号に該当し商標登録を受けることができない」として拒絶査定を受けたので、不服審判を求めたが、請求不成立の審決を得たために控訴した。
 知財高裁は、「メタ・メディア」の語は、審決時には「メディアを統合しこれを超えるものを示す概念」として周知であったので、コンピュータに関連する分野の商品・役務について使用されるときには、自他識別機能を果たさないとして、審決の判断に誤りはなかったとした。
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10月30日 商標“コイダス/coidas”侵害事件(2)
   知財高裁/判決・請求認容
 原告の本件商標「コイダス/coidas」について、被告が3年前以降の不使用を理由として取消審判を請求したところ、特許庁がこれを認める審決をしたために、原告はその取消しを求めて控訴した。
 原告は、書籍扱いのムック形式の雑誌を発行しており、そこでは本件商標および「これと社会通念上同一の商標」を使用(「使用標章」)している等と主張した。
 知財高裁は、原告の発行する雑誌には「Coidas」「コイダス」「からだ系」の表示の組み合わされた5種類の原告使用標章が用いられているとし、本件商標と使用標章とが社会通念上同一と言えるかを吟味した結果、いずれも社会通念上同一と認められるとして請求を認容した。
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10月31日 商標“COMPASS”侵害事件(2)
   知財高裁/判決・請求棄却(上告受理申立・上告)
 自動車部品の製造販売会社SPK(原告)は、輸送機械器具やその部品を指定商品とする旧第12類で商標登録をしたが、ダイムラークライスラーは、第12類中「自動車並びにその部品及び付属品、及びこれらに類する商品」について原告商標は、商標法51条1項の不使用に当たるとして、登録取消を請求し、特許庁が登録取消の審決をしたために、原告が控訴していた。
 知財高裁は、原告が使用を主張する「タイミングキット」は旧第12類に属する指定商品ではない、「クラッチ・マスタ・シリンダ」は指定商品ではあるが、使用の証拠がなく、そもそも輸出を目的とする商品に商標を付しても、商標法50条1項の国内での使用には当たらないとして、請求を棄却した。
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10月31日 商標“DB9”審決取消事件(2)
   知財高裁/判決・請求認容
 アストンマーチンの車名の一つである「DB9」の商標登録申請に対して、「極めて簡単で、ありふれた標章からなる」として拒絶査定を受け、不服審判請求が成り立たないとの審決を得たために、アストンマーチン・ラゴンダ社が提訴していた。
 知財高裁は、この商標が「ありふれた標章からなる」ものであるとして、特許庁の判断を支持した。しかし、「特定人が当該商標をその業務に係る商品、役務に使用した結果、・・・商品の出所と特定の業者との関連を・・・広く知られるにいたった場合」には、商標登録を受けることができる(商標法第3条2項)とし、審決時点では「広く知られていたと認めることが相当である」として、請求を認容し、審決を取り消した。
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11月2日 少年供述調書の流出事件(刑)
   奈良地検/起訴
 奈良県田原本町の医師宅の放火殺人事件にかかわる長男の供述調書の漏えいをめぐって、奈良地検は、この日、これを引用して単行本を出版した著者の草薙厚子さんを嫌疑不十分で不起訴、供述調書の写しなどを草薙さんに見せたとされる精神鑑定医を、刑法の秘密漏示罪で奈良地裁に起訴した。

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11月5日 写真集『the man』販売中止事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 韓国の人気俳優ペ・ヨンジュンさん等の写真を載せた写真集を発行した文藝春秋社は、初版5万部を完売し、12万部を増刷したが、「写真使用を許可していない」との俳優側からの指摘を受け、12万部を廃棄し、解決金を支払っていた。
 文藝春秋社が提起した、肖像権についての交渉役だった韓国人カメラマンへの損害賠償請求に対して、東京地裁は、「カメラマンは、実際には俳優側の許可を得ていないのに、許可を得ているかのように文藝春秋社に連絡した」として、約9000万円の賠償を命じた。

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11月8日 インクカートリッジの特許権侵害事件(3)
   最高裁(一小)/判決・上告棄却
 最高裁第一小法廷の横尾和子裁判長は、キヤノンの「インクカートリッジ」のリサイクル品を輸入販売する会社の上告を棄却し、特許権を侵害するとした知財高裁の判決が確定した。
 判決の中で、横尾裁判長は、知財高裁の判決の結論を支持したが、原審判決の判断基準についてはこれを訂正し、「特許権の制限」について新たな基準を示した。
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11月9日 インクカートリッジの特許権侵害事件(エプソン)(3)
   最高裁(二小)/決定・上告不受理
 エプソンは、インクカートリッジのリサイクル品を販売する大阪の業者を、特許権を侵害したとして提訴したが、一、二審で敗訴したため、上告していた。
 最高裁第二小法廷の中川了滋裁判長は、この日、上告を受理しないことを決定した。
 これで、知財高裁の判決で「新規性を欠き・・・特許法29条1項3号に違反する無効理由があるので・・・特許権を行使することができない」とする判決が確定した。

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11月12日 ケンウッド模倣品事件(2)(中国)
   中国北京市高級人民法院/判決・控訴棄却
 ケンウッドは、中国において模倣品を販売されて、商標権、著作権、意匠権を侵害されたとして、中国3社を北京市第一中級人民法院に提訴し、1社を福建省福州市中級人民法院に提訴していた。
 いずれも、中国企業の侵害行為を認め、損害賠償の支払いを命じたが、中国側が控訴していた。
 北京市高級人民法院、福建省高級人民法院がともに、控訴を棄却したため、総額額430万元(約6700万円)の損害賠償、模倣品の製造販売及びソフトウェアの侵害行為の停止、雑誌・ホームページでの謝罪文掲示などが確定した。

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11月16日 挿絵カットの表紙転用事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 折り紙遊びの「プロセスカット(折り方の説明部分に付されるイラスト)」を依頼されたイラストレーターが、本文中にのみ使用するとしたイラストを、許諾なく表紙に使用されて複製権を侵害され、書籍にはイラストレーター名の表示がなく、原画と異なる色を用いたことによって、著作者人格権(指名表示権、同一性保持権)を侵害されたとして、頒布差止や損害賠償を求めて提訴した。
 制作会社は、この使用許諾契約では使用範囲について限定がないと主張したが、判決では、「表紙部分は書籍の第一印象を決める本の顔ともいえる重要部分で・・・表紙にふさわしいものとするよう配慮するのが一般的」であるとし、依頼の内容から見て、「当然に表紙にも用いられることが予定されているとはいえない」とした。また、氏名表示権の侵害も認め、この書籍を出版した出版社の行為は共同不法行為にあたるとするとともに、2色での描画を依頼したにもかかわらず4色で印刷した行為は、同一性保持権を侵害するとして、書籍の頒布差止および33万円の損害賠償支払いを命じた。
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11月21日 商標“EPI”侵害事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 「Epi Salon」「Epi Studio」の標章(被告標章)を使用してエステティックサロンを運営する会社に対して、「EPI」「エピ」の商標を有するTBCグループが、標章使用の禁止、車内広告等の宣伝物の廃棄、損害賠償、謝罪広告などを求めて提訴した。
 東京地裁は、原告商標と被告商標は、指定役務が同一であって、被告標章の要部は「Epi」「エピ」の部分にあり、外観、称呼、観念において類似するとした。
 したがって、被告商標は、他人の先登録商標に類似の商標であって登録要件を欠き、無効とさるべき商標であるとして、商標使用の禁止と広告宣伝物の廃棄、損害賠償9000万円の支払いを命じた。
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11月22日 商標“新しいタイプの居酒屋”審決取消事件(2)
   知財高裁/判決・請求棄却
 「白木屋」「笑笑」「魚民」等の居酒屋チェーンを営むモンテローザ社(原告)が、「新しいタイプの居酒屋」を商標登録出願をしたところ拒絶査定を受け、不服審判請求をしたが、請求不成立の審決を得たために、その取消しを求めて提訴した。
 原告は、「新しいタイプの居酒屋」は「白木屋」「笑笑」の各店舗の看板に2つの独立した商標として表示してあり、それぞれに識別力を持つ商標であると主張したが、知財高裁は『いずれも「白木屋」「笑笑」の店舗名に併記されたものであり、それ自体が・・・単独のものとして使用された例が見当たらない』として、キャッチフレーズとしてのみ機能するといわざるを得ず、商標登録を受けることができないとして、特許庁の拒絶査定を支持した。
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11月28日 発送伝票作製プログラムの侵害事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 百貨店向け筆耕用アプリケーションプログラムを制作した会社は、納入先との使用許諾契約を合意解約したが、納入先が合意解約に違反して、解約後もそのソフトを使い続けて著作権を侵害したとして、複製物の使用差止と損害賠償を求めて提訴した。
 東京地裁は、契約解約交渉の経緯によれば、「解約自体が、明確に合意されたものではなく、黙示の合意」であり、「解約に際して、本件使用許諾契約終了後の義務等について定める合意が形成された」と認めることはできない、また、納入先が筆耕業務を継続していることは事実だが、本件プログラムの複製物を使用していることを認めるに足る証拠はないとした。
 また、本件プログラムの著作物性について、「本件プログラムについて、機能面での特徴を指摘するのみ」で、複製権侵害を基礎づける主張・立証がなく、著作権のどの支分権を侵害するのか明らかにしていない等として、請求を棄却した。
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11月28日 標章“オービック”不正競争事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 東京地裁の判決で、「オービックス」または「ORBIX」の文字を含む商号、標章の使用差止、損害賠償の支払いを命じられたPOSシステムの販売会社(控訴人)が、この判決を不服として控訴した。
 知財高裁は、控訴人が上記商号や標章を使用する行為は、不正競争防止法2条1項1号にいう「混同を生じさせる行為」に該当し、「混同を生じさせる行為」とは、混同を生じさせるおそれがあればよい、したがって、標章が類似しているということだけではなく、被控訴人であるオービック社の標章と類似する標章を控訴人が使用して営業していることに問題があり、このことが公正な競業秩序を破壊するのだとして、原審判決を維持し、控訴を棄却した。
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11月29日 商標“UNITED”侵害事件(2)
   知財高裁/判決・請求棄却
 ハワード社は、第14類の貴金属を指定商品とする商標「UNITED」が、商標権者であるインドネシアの会社によって、3年間継続して使用されていないとして、登録取消請求をしたが、請求不成立との審決を得たために、審決取消請求を提起した。
 知財高裁は、2004年および2005年にインドネシアは大地震によって甚大な被害を蒙ったために、指定商品について本商標が使用できなかったとして、「不使用について正当な理由」があるとして、取り消すべきではないとした特許庁の審決を支持し、審決取消請求を棄却した。
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11月29日 商標“UNITED”侵害事件B(2)
   知財高裁/判決・請求棄却
 ハワード社は、第18類「革ひも、かばん類、袋物」を指定商品とする商標「UNITED」が不使用商標であるとした登録取消請求に対する、特許庁の請求不成立審決を不服として提訴した。
 知財高裁は、同日判決の別訴(平成19年(行ケ)第10227号/上記)と同じ理由でこの控訴を棄却した。
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11月29日 インターネットカフェ利用者情報開示請求事件
   東京地裁/判決・請求認容(控訴)
 
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11月30日 健康食品の製造物責任と特集記事事件
   名古屋地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 
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12月4日 類似大衆食堂チェーン事件(2)
   大阪高裁/判決・控訴棄却、新請求棄却
 「ごはんや まいどおおきに ○○食堂」の表示を使用する食堂チェーン店(控訴人)が、「めしや食堂」の表示で展開する食堂チェーン店(被控訴人)の行為は、不正競争防止法に抵触するとして、「食堂」の表示やその看板などの使用差止を求めるとともに、周知となった控訴人の店舗の外観と類似する外観を使用する被控訴人の行為は不正競争行為であり、仮にそうではないとしても不法行為を構成するとして控訴した。
 大阪高等裁判所は、控訴人の表示は「まいどおおきに」の部分に、被控訴人の表示は「めしや」部分にそれぞれ識別力がある等として、外観、称呼、および観念は非類似であるとし、また、店舗外観も類似するとは認められないと、控訴・新請求ともに棄却した。
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12月6日 日めくりカレンダー配信事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 365枚の花の写真を使って、1年間の日めくりカレンダー用デジタル写真集を作成した写真家が、携帯電話待受画像を配信する富士通(株)に、日めくりカレンダーの画像データの著作権を全部譲渡した。富士通はこれを、毎週1枚のペースで配信したが、365日の日めくりカレンダーの配信をしなかったことに対して、編集著作物の著作者人格権(同一性保持権)の侵害や、毎週1枚配信について明示もしくは黙示の同意があったのか等が争われた。
 東京地裁は、『紛争の実体は、原告が・・・「日めくりカレンダー」として画像配信されることを期待していたのに対して、被告による本件配信行為の内容が・・・その期待に添うものでなかったという行き違いに端を発したものである』として、毎週1回更新して配信することについて、明示もしくは黙示の同意があったかについて、最初に判断した。判決では、交渉の経緯をみるに、著作権譲渡の時点までに黙示の同意を与えていたということができる等として、請求を棄却した。
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12月6日 ゲーム画像のPV無断利用事件(韓国)(刑)
   ソウル中央地方法院/判決・有罪
 ゲームソフト大手のスクウェア・エニックスは、CG映像作品「ファイナルファンタジーZアドベントチルドレン」の一場面を無断改変し実写化して、人気歌手「IVY」の新曲のプロモーションビデオ(PV)に利用されたとして、韓国の芸能プロダクションのファントムとホン・ジョンホ監督をソウル地方検察庁に刑事告訴していた。
 ソウル中央地方法院は、スクウェア・エニックスの主張を認め、両者に合計1600万ウォンの罰金支払いを命じた。
 韓国での従来の著作権侵害事例に比べると、厳しい内容だという。

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12月10日 「アルカイダ」報道事件(産経新聞)
   東京地裁/判決・請求認容(控訴・控訴棄却)
 平成16年5月27日の産経新聞に掲載された記事は、日本に永住権を持つバングラデシュ国籍の男性が地下銀行を営み、国際テロ組織アルカイダの幹部と接触してテロ資金を海外送金した疑いがあり、裏と表の顔を巧みに使い分けていた、と報じた。
 男性は、名誉を棄損されたとして、不法行為に基づき損害賠償を求めて提訴した。
 東京地裁は、記事は警視庁の捜査状況と地下銀行を営んでいた疑惑を報道したものではあるが、その報じ方によって読者の受ける印象も違う。記事は「濃厚な疑惑が存在し、捜査機関はその嫌疑について捜査した結果、ほぼ確実視しているとの印象」を与え、男性の社会的評価を著しく低下させ、名誉棄損に当るとして、慰謝料等の支払いを命じた。
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12月12日 工業製品設計図の“毀棄”事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 イー・ピー・ルームは、原告が交付した製品の設計図を、住友石炭鉱業が毀棄したので、図面について有する著作権を侵害されたとして、損害賠償を求めた。
 東京地裁は、設計図に著作権が認められたとしても、有形物である設計図の毀棄行為は著作権を侵害しないとして、請求を棄却した。
判例全文
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12月12日 工業製品設計図の“毀棄”事件B
   東京地裁/判決・請求棄却
 イー・ピー・ルームは、住友石炭鉱業との間の訴訟(知財高裁平成19年(ネ)第10015号 損害賠償請求控訴事件/平成19年8月28日判決)において、住友石炭鉱業が虚偽の主張または錯誤により誤った主張をしたために、知財高裁に誤った判決(イー・ピー・ルームの控訴棄却判決)をさせたとして、この行為は不法行為を構成すると主張し、損害金の支払いを求めて提訴した。
 しかし、東京地裁は、住友石炭鉱業の主張が虚偽又は錯誤により誤ったものであることや、知財高裁の判断が被告の主張、証拠を誤って採用したためになされたことを窺わせる証拠は一切ないとして、請求を棄却した。
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12月13日 商標“マイクロクロス”侵害事件
   大阪地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 商標権を持つワンズハート社と、その使用権を設定したマイクロクロス社とが、「マイクロクロス」という標章を付した「キッチン掃除用クロス」を輸入・販売する有本カテイ社を、商標権及び使用権の侵害であるとして、販売差止、在庫品の廃棄、損害賠償等を求めて提訴した。
 被告は、「マイクロクロス」という商標が、本来無効審判により無効とされるべき商標であると主張したが、大阪地裁は、「マイクロ」の部分から「マイクロファイバー製である」と一般に認識されるとは認められないので、無効理由はないとした。
 また、被告の行為は、織物等を指定商品とする商標権を侵害し、理化学機器のための専用布を指定商品とする商標権は侵害しないとした。さらに、被告の行為は、通常使用権を持つにすぎないマイクロクロス社の商標権を侵害しないとし、商標権者であるワンズハート社の請求の一部を認容し、その他は棄却した。
判例全文
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12月13日 商標“マイクロクロス”侵害事件B
   大阪地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 被告会社シーズン社は、「マイクロクロス」の標章を付した「ふきん」を平成18年に約5ヶ月間販売した。これに対し、商標権者ワンズハート社と専使用権者であると主張するマイクロクロス社とが、商標権侵害であるとして、被告商品の販売差止、半製品の廃棄、損害賠償を求めて提訴した。
 大阪地裁は、専使用権は登録が要件だが、マイクロクロス社の専使用権の設定登録はされておらず、また、ワンズハート社と第三者との間に商標使用契約関係があることから、被告が当該商品を販売していた期間は、マイクロクロス社は通常使用権者にすぎず、通常使用権者には差止、廃棄請求権はなく、マイクロクロス社の請求には理由がないとした。
 被告の標章が原告の商標と外観、称呼、観念が同一であることには争いがなく、したがって、ワンズハート社の商標権侵害に対してのみ損害賠償を認め、他の請求は棄却した。
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12月14日 北朝鮮映画のニュース報道事件(フジテレビ)
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 北朝鮮文化省傘下の行政機関「朝鮮映画輸出入社」と「カナリオ企画」は、フジテレビが平成15年12月15日のニュース番組で北朝鮮映画を無断で放送したとして、損害賠償を求めて提訴した。
 北朝鮮は、平成15年1月28日にベルヌ条約に加盟しているが、国交のない北朝鮮映画の著作権を日本国内で保護する義務があるかどうかが争われた。
 過去にも使用の事実があり、フジテレビは平成15年2月、日本テレビは平成15年4月、NHKは平成15年10月の使用については使用料を支払っていた。しかし、平成15年4月22日付けで、文化庁長官官房国際課が、「北朝鮮がベルヌ条約を締結したとしても、我が国は北朝鮮を国家として承認していないことから・・・条約上の権利義務関係は生じない」として保護義務がないとの見解を示したことで、今回は支払いを拒否した。
 東京地裁は、ベルヌ条約自体が同盟国という国家の枠組みを前提としており、国家間の権利義務関係が認められていない以上、当該条約に基づく権利義務を有しないと解すべきであり、未承認国が多数国家間条約に加盟したというだけで、国家承認のないまま突然権利義務が発生すると解するのは困難である等として、請求を棄却した。
 しかし、非同盟国の国民の著作物として、いずれかの同盟国において最初に発行された場合(ベルヌ条約第3条(1)(b))等には、保護義務を負う場合がありうるとした。
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12月14日 北朝鮮映画のニュース報道事件(日本テレビ)
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 「朝鮮映画輸出入社」と、同社と映画について契約を締結した「カナリオ企画」は、日本テレビが平成16年6月30日のニュース番組で北朝鮮映画を無断で放送したとして、損害賠償を求めて提訴したが、東京地裁は、同日判決の上記フジテレビ訴訟と同じ判断で請求を棄却した。
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12月18日 「シェーン」格安DVD事件(3)
   最高裁(三小)/判決・上告棄却
 1953年公開の米映画「シェーン」の著作権者であるパラマウントとDVD製造販売会社の東北新社が、格安DVDを製造販売する会社などを相手取って販売差止や損害賠償を求めた訴訟の上告審判決があった。
 最高裁第三小法廷の藤田宙靖裁判長は、経過規定にいう「施行の際現に」という文言の一般的用法においては、当該法律の施行日を指すものと解するほかないとして、「シェーン」を含め、昭和28年に団体名義で公表された「映画の著作物」の著作権は平成15年12月31日をもって存続期間が終了するとして、上告を棄却した。
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12月20日 商標“INTELLASSET”侵害事件(2)
   知財高裁/判決・請求認容
 「INTELLASSET」の商標が、マイクロプロセッサー・メーカー「INTEL」の商標権を侵害するとして、インテル社が、他人の商品・役務と混同を生じる恐れがあり、周知商標に類似の商標に当たる等として登録無効審判を請求したが、請求不成立の審決を得たので、提訴した。
 知財高裁は、本件商標の『文字部分「INTELLASSET」から「資産、財産」(ASSET)の観念を感得するとともに、原告の著名な略称である「INTEL」をも認識し、ひいては原告を想起すると認められる』として、商標法4条の「登録を受けることができない商標」に当たり、審決の判断は誤っているとして、取消した。
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12月20日 商標“良品無印”侵害事件(中国)(2)
   中国北京市高級人民法院/判決・控訴棄却
 (株)良品計画は、香港企業が中国で先行登録していた「良品無印」「MUJI」商標の無効取消審判請求を行っていたが、北京市高級人民法院は一審の判決を支持し、香港企業の上訴を退け、商標の取消を命じる終審判決を下した。

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12月21日 商標“MACKINTOSH”侵害事件
   東京地裁/判決・請求認容(控訴)
 英国法人マッキントッシュ社は、日本国内でアイルランド製のコート類の販売を計画する被告3社が使用を予定している5つの商標が、自社の商標権を侵害するとして、商標法36条1項に基づき、侵害予防のための使用差止を求めて提訴した。
 東京地裁は、英語圏では「mackintosh」がゴム引き布地又はそのような布地製のコートの意で一般的に普及しているとしても、日本でも一般名称的に用いられているとは認められない、また、米国アップル社の「Macintosh」は「iMac」等の「i」をキーワードにした統一ブランドの構築を企図していると思われ、本件の口頭弁論終結時点でなお著名であるとは認められない。双方の商標の要部は「MACKINTOSH」であり、外観、称呼等が同一で類似するとして、請求を認容した。
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12月25日 商標“スーパーフコイダン”侵害事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却、新請求棄却
 「自然健康館 スーパーフコイダン」の商標権者は、被告の商標「SUPER FUCOIDAN」を非類似とする一審判決を不服として、不正競争防止法違反を理由に控訴した。
 知財高裁は、「海藻エキスの加工食品」や「清涼飲料水等」の分野では「スーパーフコイダン」という用語は、高品質の「フコイダン」という意味にすぎず、それ自体では出所識別力がない、したがって、商品の販売高や広告状況をもってしても控訴人の周知表示とはなり得ないとして、原判決を支持した。
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12月26日 HPの「偽造品」表示事件(生ゴミ処理機)
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 生ゴミ処理機を製造販売する原告は、生ゴミ処理機で先行する被告会社に、そのホームページ上で、原告製品に関する虚偽の事実を表示され、顧客に虚偽事実を記載した文書を交付されたとして、不正競争防止法により不正競争行為の差止め、信用棄損に対する賠償を求めて提訴した。
 原告は、会社設立前に被告との間で代理店契約があり、契約書には「同じような製品を製造」しないとあったが、東京地裁は、契約終了後もこの義務が継続されることが明記されていない以上、契約終了によって上記義務は失効するとし、また、虚偽文書の交付はなく、ホームページ上では虚偽事実を流布したとして信用棄損を認め、100万円の損害賠償金支払いを命じた。
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12月26日 商標“REGENERATIVE”侵害事件(2)
   知財高裁/判決・請求棄却
 原告は、「化粧品」を指定商品とする「REGENERATIVE」と「リゼネレィティブ」の文字を2段に書き分けた商標は、不使用商標であるとして登録取消審判を求めたが、「化粧水、美容液及びパック」に使用されていたとして、特許庁は請求不成立との審決をしたため、審決取消を求めて提訴した。
 原告は、被告商標「REGENERATIVE」が化粧水の外箱等に付された使用実態は、単に商品がどのような効能を持っているかを表すための記述的表示にすぎず、出所識別機能を果たす使用態様ではないので、商標法50条の不使用商標に該当すると主張した。
 知財高裁は、本件指定商品の取引者、需要者においては、通常使用権者のキュラス社の商品標章中、「QURAS」や「キュラス」だけでなく、「REGENERATIVE」、「リゼネレイティブ」の標章についても自他商品の識別標識として認識されていたとして、50条は適用されないとした。
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12月26日 彦根市長への名誉毀損事件(週刊新潮)(2)
   大阪高裁/判決・変更(上告・上告不受理・確定)
 滋賀県彦根市の市長は、公務外の職員の飲酒運転に対する報告義務についての発言を、「バカ市長」と題して記事掲載した「週刊新潮」の発行元新潮社に対する名誉棄損訴訟の一審判決を不服として、控訴していた。
 大阪高裁は、市長発言は事実であり、記事には公益性があるとしたが、その「表現方法は、市長としての資質に対する意見や論評の域を逸脱している」として、大津地裁の判決を変更した。22万円の賠償金を命じ、謝罪広告は退けた。
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12月27日 「週刊ポスト」の筒井信隆衆院議員名誉棄損事件(3)
   最高裁(二小)/判決・上告棄却
 「週刊ポスト」誌に、筒井衆院議員らが都内で開いた会合が、郵政民営化法案の衆院通過の打ち上げだと報じられて名誉を棄損されたとして、発行元の小学館等を訴えた訴訟の上告審で、上告が棄却された。
 一審判決では、小学館側に500万円の賠償金と謝罪広告が命じられたが、東京高裁判決では、謝罪広告が退けられ、賠償金も50万円に減額されていた。

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