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【事件名】商標“みずほねっと”侵害事件C(2)
【年月日】平成19年9月13日
 知財高裁 平成19年(行ケ)第10114号 審決取消請求事件
 (平成19年7月5日 口頭弁論終結)

判決
原告 X
被告 株式会社みずほフィナンシャルグループ
訴訟代理人弁護士 鳥海哲郎
訴訟代理人弁理士 廣中健
同 阪田至彦


主文
 原告の請求を棄却する。
 訴訟費用は、原告の負担とする。

事実及び理由
第1 原告の求めた裁判
 「特許庁が無効2006−89075号事件について平成19年2月21日にした審決を取り消す。」との判決
第2 事案の概要
 本件は、被告の商標登録につき原告が無効審判を請求したところ、特許庁が同請求を不成立とする審決をしたためその取消しを求める事案である。
1 特許庁における手続の経緯
(1) 被告は、別紙商標目録記載1の商標(以下「本件商標」といい、その登録を「本件商標登録」という。)の商標権者である(乙5)。
(2) 原告は、平成18年5月31日、本件商標登録について無効審判の請求をした(無効2006−89075号事件として係属)ところ、特許庁は、平成19年2月21日、「本件審判の請求は、成り立たない。審判費用は、請求人の負担とする。」との審決をし、同年3月3日、その謄本を原告に送達した。
2 審決の要点
 原告は、審判請求手続において、自己が商標権者である別紙商標目録記載2の商標(以下「引用商標」といい、本件商標と併せて「本件両商標」ということがある。)を引用した上、本件商標は引用商標と同一又は類似のものであり、本件商標の指定役務も引用商標の指定役務と同一又は類似のものであることなどを根拠に、本件商標登録は商標法4条1項11号、同項15号、同法8条1項又は同法3条1項柱書の規定に違反してされたもので無効である旨主張したのに対し、審決は、本件両商標は非類似のものである旨判断するなどした上、本件商標登録は商標法の上記各規定に違反してされたものではないから同法46条1項の規定によりこれを無効とすることはできないとした。
 審決の理由中、本件商標登録が商標法4条1項11号、同項15号及び同法8条1項の規定に違反してされたものではないとの判断に係る部分は、以下のとおりである。(原告は、審決取消事由として、同法3条1項柱書違反の主張をしないため、この点に係る審決の引用は省略する。)
(1) 商標法4条1項11号及び同法8条1項について
 「本件商標は、前記したとおり「MIZUHO」の欧文字を書してなるから、これよりは「ミズホ」の称呼及び「瑞穂(よく実った穂)」の観念を生ずるものと認められる。
 これに対し、引用商標は、前記のとおり「みずほねっと」の文字を平仮名で同書、同大、同間隔に一連に書してなるものであり、これより生ずる称呼も冗長でなく一気に称呼し得るものであるから、これよりは「ミズホネット」の一連の称呼のみを生ずる造語よりなるものと判断するのが相当である。
 しかして、本件商標より生ずる「ミズホ」の称呼と引用商標より生ずる「ミズホネット」の両称呼は、後半部において「ネット」の有無という顕著な差異を有するものであるから、それぞれを一連に称呼しても、何ら相紛れるおそれはないものである。
 また、本件商標と引用商標は、それぞれ前記の構成よりなるから、外観上、十分に区別し得る差異を有するものであり、さらに、観念においても引用商標は前記したとおり造語と認められるものであるから、両者は比較し得ないものであり、類似するものとは認められない。
 そうすると、本件商標と引用商標とは、その指定役務において類似の役務を有するところがあるとしても、その称呼、外観及び観念のいずれの点からしても、非類似の商標といわなければならない。」
(2) 商標法4条1項15号について
 「本件商標と引用商標は、上記(1)で認定、判断したとおり非類似の商標と認められるものであり、かつ、そもそも商標法4条1項15号の規定は、引用商標が需要者の間に広く認識されていること(著名性)が要件とされているところ、請求人は、引用商標の著名性はもとより、引用商標をその指定役務に使用していることについて何らの証拠も提出していないものであるから、本件商標をその指定役務に使用しても、その出所について混同を生ずるおそれがあるものとは認められない。」
(3) 審決の「結び」
 「したがって、本件商標は、商標法・・・、同法4条1項11号、同項15号及び同法8条1項に違反して登録されたものでないから、同法46条1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。」
第3 審決取消事由の要点
 審決は、本件両商標の類否判断を誤った結果、本件商標登録が商標法4条1項11号、同項15号又は同法8条1項の規定に違反してされたものでないとの誤った判断をしたほか、引用商標が著名でないこと及び原告が引用商標をその指定役務について使用していないことを理由に本件商標登録が同法4条1項15号の規定に違反してされたものでないとの誤った判断をしたものであるから、取り消されるべきである。
1 取消事由1(本件両商標の類否判断の誤り)
(1) 本件両商標の類否判断に当たっては、以下の点を考慮すべきである。
ア 本件両商標の類否判断に当たっては、取引の実情(「インターネット」の略語として「ネット」の語が使用されていること、インターネットにおいては、識別標識として、ドメイン名が用いられていること)を、当該役務の供給者の視点や、当該役務の取引者・需要者の視点において判断すべきである。
イ 外観上異なる文字種により構成される2つの商標の類否判断に当たっては、両者を同一の文字種で表示した場合についても考察されるべきである。
ウ 商標の使用に係る商標法50条1項の括弧書きに従えば、平仮名で表示された引用商標については、片仮名及びローマ字による表示についても考慮されるべきである。
 なお、被告は、同項の括弧書きが同条についての解釈規定であり、他の規定における登録商標についてまで一律に拡大させる旨の一般規定ではない旨主張するが、同項の括弧書きは、平仮名、片仮名及びローマ字における表示を相互に変更することがままあるという日本文化を考慮したものであるから、これを同条についての解釈規定であると限定して解釈するのは相当でない。
 また、仮に、同項の括弧書きが同条の適用場面においてのみ妥当するとしても、被告は、本件商標の出願時及び登録査定時において、引用商標が未使用商標であることを認めていたのであるから、本件両商標の類否判断に当たっては、同項の括弧書きの適用が肯定されると解すべきである。
エ 本件両商標は、ともに標準文字により構成されるところ、標準文字の場合には、すべての構成文字を同書体、同大、同色で統一して表示する必要はない。
オ 引用商標は、自他役務識別機能を有する「みずほ」の語の後ろに、識別標識としての機能がないか、あったとしても希薄である「ねっと」の語を結合させたものであり、本件両商標の類否判断に当たっては、商標を構成する文字の全体を観察対象にするとともに、自他役務識別部分をも観察対象とすべきである。
カ なお、本件商標がその指定役務について周知・著名であるとの被告の主張は、否認する。
(2) 本件両商標の外観について
 上記(1)によれば、本件商標の外観は「MIZUHO(Mizuho)」、「みずほ」又は「ミズホ」となるのに対し、引用商標の外観は「MIZUHONET(Mizuho Net)」、「mizuho.net」、「みずほねっと」又は「ミズホネット」となり、上記(1)エ及びオにも照らせば、本件両商標は、外観上類似するといえる。
 ただし、引用商標が、外観(視覚)上、まとまりがよいことは認める。
(3) 本件両商標から生じる観念について
 上記(1)によれば、本件商標からは「瑞穂(みずみずしい稲の穂)」の観念が生じるのに対し、引用商標の「みずほ」の部分からは「瑞穂(みずみずしい稲の穂)」の観念が、「ねっと」の部分からは「ネットワーク」、「インターネット」等の観念がそれぞれ生じ、上記(1)エ及びオにも照らせば、両商標は、観念上類似するといえる。
 ただし、「みずほねっと」の語が造語であることは認める。
(4) 本件両商標から生じる称呼について
 上記(1)によれば、本件商標からは「ミズホ」の称呼が生じるのに対し、引用商標からは「ミズホネット」、「ミズホドットネット」等の称呼が生じるのであるから、上記(1)エ及びオにも照らせば、本件両商標は、称呼上類似するといえる。
 ただし、引用商標を「ミズホネット」と、短く、よどみなく一連に称呼し得ることは認める。
(5) 以上によれば、本件両商標は、その外観、観念及び称呼のいずれの点からも類似するといえるから、これを非類似とした審決の判断は誤りである。
2 取消事由2(商標法4条1項15号違反についての判断の誤り)
(1) 本件両商標を非類似とした審決の判断に誤りがあることは、上記1において主張したとおりである。
(2) 加えて、審決は、引用商標が著名でないこと及び原告が引用商標をその指定役務について使用していないことを根拠に、本件商標をその指定役務に使用しても、その出所について混同を生ずるおそれはない旨判断するところ、確かに、原告は、引用商標を使用していないし、また、引用商標は、著名・周知ではない。
 しかしながら、商標法4条1項15号の規定に該当するための要件として、引用商標が何らかの業務について使用されている必要はない。また、取引者・需要者が本件商標に接した後、引用商標に接した場合、引用商標は著名・周知でないから、取引者・需要者は、引用商標に係る役務の出所について、被告又はこれと経済的・組織的に何らかの関係を有する者であると誤認するおそれがあるといえる。
(3) また、商標法4条1項15号の規定については、ドメイン名が重要な役割を果たしているというインターネットにおける取引の実情を考慮し、商標権を守るため、同項11号の規定を補うような運用をすべきである。
(4) 以上からすると、本件商標登録が商標法4条1項15号の規定に違反してされたものではないとの審決の判断は誤りである。
第4 被告の反論の骨子
1 取消事由1(本件両商標の類否判断の誤り)に対して
(1)ア 引用商標は、「みずほねっと」の文字を平仮名で同書、同大、同間隔にまとまりよく一体に書して成るものであり、称呼上も、短く一連によどみなく称呼し得るものであり、また、ドメイン名でもないから、引用商標は、「ミズホネット」という一連の称呼のみを生じさせる全体として一体不可分の造語として感得されるものであり、外観、称呼及び観念のいずれの点においても、これを「みずほ」と「ねっと」の2つの部分に分断して観察しなければならない理由はない。
 平仮名で記載された「ねっと」の文字に接した者は、これを、外来語である「インターネット」の「ネット」や、「ネットワーク」の「ネット」の意味を有するものとして認識することはなく、これらとは異なる何かであろうという認識を抱くものであるから、引用商標においては、外観及び称呼上の強い一体性とも相まって、「みずほねっと」の6文字が一体不離に結合し、全体として一つの造語を構成すると認識されるものである。
 引用商標は、まとまりよく一体に構成されているものであるから、引用商標に接した取引者・需要者が、「ねっと」の文字に識別力がないものとみなし、「みずほ」の部分を切除抽出することはないし、「みずほ」の部分のみに着目するという理由もない。
イ 引用商標の外観について
 上記アにおいて主張したとおり、引用商標の外観上、取引者・需要者が、「みずほ」の部分にのみ着目することはない。
ウ 引用商標から生じる観念について
 上記アにおいて主張したところからすると、引用商標からは、「瑞々しい稲の穂」と「インターネット」又は「ネットワーク」といった2つの独立した観念が生じることはなく、むしろ、「みずほねっと」全体として、特定することのできない漠然とした観念が生じるものである。
エ 引用商標から生じる称呼について
 上記アにおいて主張したところからすると、引用商標からは、「みずほ」の部分が切除抽出されて「ミズホ」の称呼が生じることはない。
オ 本件商標の著名性等について
 本件商標が、株式会社みずほホールディングスを中核会社とする企業グループが使用する商標及び当該企業グループの略称として周知・著名であったのに対し、引用商標は、いかなる商品又は役務についても使用されたことがないというのであるから、このような取引の実情を考慮すれば、本件両商標の間で出所の誤認混同が生じる余地は全くない。
カ 以上からすると、本件両商標が非類似であるとした審決の判断に誤りはない。
(2)ア 原告は、外観上異なる文字種により構成される2つの商標の類否判断に当たっては、両者を同一の文字種で表示した場合についても考察されるべきであると主張するが、2つの商標の類否判断に当たって対比の対象とされるのは、「願書に記載した商標」(商標法27条1項)であるから、本件両商標がともに標準文字により構成されることを理由とする部分も含め、原告の上記主張は、失当である。
イ また、原告は、上記主張の根拠として、商標法50条1項の括弧書きをも根拠とするが、同項の括弧書きは、同条についての解釈規定であり、他の規定における登録商標についてまで一律に拡大させる旨の一般規定ではないから、同項の括弧書きを根拠とする原告の上記主張も、失当である。
2 取消事由2(商標法4条1項15号違反についての判断の誤り)に対して
(1) 本件両商標が非類似のものであることは、上記1において主張したとおりである。
(2) さらに、商標法4条1項15号の規定の適用に当たっては、具体的出所の混同、すなわち、現実に出所の混同が生じるか否かが問われるのであるから、同号にいう「他人の業務」とは、文理上、出願商標について登録の可否を判断する際に現に存在するものか、少なくとも過去に存在したものでなければならない。
 本件においては、「他人」である原告の業務が存在せず、しかも、原告が現実に引用商標をその業務について使用していないというのであるから、出所混同の対象は存在せず、被告が本件商標を使用することによって現実に出所の混同が生じることはあり得ない。
(3) 以上によれば、本件商標登録が商標法4条1項15号の規定に違反してされたものでないとの審決の判断に誤りはない。
第5 当裁判所の判断
1 取消事由1(本件両商標の類否判断の誤り)について
(1)ア 引用商標は、前記のとおり、「みずほねっと」の平仮名6文字を標準文字で、同書、同大、同間隔に一連にまとまりよく書して成るものであり、また、決して冗長ではなく、一息によどみなく称呼し得るものであるから、引用商標から「ミズホネット」の称呼が生ずることは明らかである。更に検討するに、引用商標は、「みずほ」と「ねっと」から成る一種の造語であると認めることができるところ、「みずほ」は、「みずみずしい稲の穂」(株式会社岩波書店平成10年11月11日発行の「広辞苑第五版」。甲18)を意味する普通名詞であり、「ねっと」の語はそれ自体国語辞典には掲載されていないのであるから、引用商標は原告による造語であり、直ちに、一般人がその観念を了解することは困難であるといわざるを得ない。もっとも、「ねっと」と称呼を同じくする「ネット」は、「網」、「ネットワーク」、「インターネット」等の意味を有する普通名詞(前掲広辞苑等)であるところ、引用商標の外観から直ちに「ネット」を想起することができるか否かは平仮名と片仮名の相違があることから疑問といわざるを得ないが、称呼だけからは両者は区別できないため、「みずほねっと」を「みずほネット」と理解することも十分考えられるところである。そして、この場合の称呼及び観念についてみると、前述のとおり「みずほ」も「ネット」も共に普通名詞であり、それ自体は自他役務識別機能を有しないことを考慮すると、これら普通名詞同士の組合せから成る一種の造語として理解されるものというべきであるから、その称呼は「ミズホネット」であり、「ミズホ」のみの称呼は生じないものというべきである。次に観念についてみると、「ネット」の前記のような意味を踏まえ、「みずほネットワーク」ないしは「みずほインターネット」との観念が生ずる余地があるところである。しかし、これらは、いずれも普通名詞2語の組合せから成る一種の造語であり、2語が相まって初めて一つの観念を形成するものというべきであるから、これらから単に「瑞穂」なる観念が生ずる余地はないものというべきである。
イ 原告は、引用商標において自他役務識別機能を有するのは「みずほ」の部分であり、引用商標は、この語の後ろに、同機能を有しないか、有するとしても希薄である「ねっと」の語(「インターネット」の略語)を結合させたものであるから、引用商標を一体不可分の語と認識すべきではない旨主張する。
 しかしながら、上記主張は、前項に説示したところに照らして失当であり、採用することはできない。
(2)ア そして、前記のとおりの本件商標の構成(「MIZUHO」の文字を標準文字で書して成るもの)に、上記(1)において説示したところを併せ考慮すると、@本件両商標の外観が類似するということはおよそできず、A本件商標からは「瑞穂(みずみずしい稲の穂)」の観念が生じるのに対し、引用商標からは、「みずほネットワーク」ないしは「みずほインターネット」の観念が生じ得る余地があり、B本件商標からは「ミズホ」の称呼が生じるのに対し、引用商標からは「ミズホネット」の称呼が生じることになるのであるから、本件両商標は、外観、観念及び称呼のいずれの点からも、類似しないものであるといわざるを得ない。
イ (ア)原告は、外観上異なる文字種により構成される2つの商標の類否判断に当たっては、両者を同一の文字種(平仮名、片仮名及びローマ字)においても対比すべきである旨主張するが、商標法27条1項は、「登録商標の範囲は、願書に記載した商標に基づいて定めなければならない。」と規定し、また、同法12条の2第2項3号は、出願公開に際して商標公報に掲載すべき事項として、「願書に記載した商標(第五条第三項に規定する場合にあつては標準文字により現したもの。・・・)」と規定しているのであるから、原告の上記主張は失当である。
 (イ)原告は、上記主張の根拠として、商標法50条1項の括弧書きを挙げるが、同括弧書きは、登録商標の不使用を理由とする商標登録の取消審判において、使用していると認められる当該登録商標の範囲(構成)について定めたものであるから、これを、商標の類否判断における当該商標の範囲(構成)を規律するものと解するのは相当でない。
 また、原告は、同括弧書きが平仮名、片仮名及びローマ字における表示を相互に変更することがままあるという日本文化を考慮したものであること並びに引用商標が未使用商標あることを根拠に、本件両商標の類否判断に当たっては、同括弧書きの適用が肯定されるべきである旨主張するが、独自の見解であり、到底これを採用することはできない。
ウ 原告は、標準文字により構成される商標の場合には、すべての構成文字を同書体、同大、同色で統一して表示する必要はない旨主張するが、本件両商標は、いずれも色彩を付した商標ではないし、また、標準文字とは、特許庁長官の指定する文字であって(商標法5条3項)、登録商標の範囲を定めるに当たり、構成文字の書体を変更したり、その大きさを不統一なものにしたりすることが許されないものであるから、原告の上記主張を採用することはできない。
エ 原告は、インターネットにおいては、識別標識として、ドメイン名が用いられているとの取引の実情にかんがみ、本件商標を、引用商標をドメイン名化した「mizuho.net」と対比すべきであるとも主張するが、独自の見解であって、到底採用することができない。
(3) 以上によれば、本件両商標の類否判断の誤りをいう取消事由1は、理由がない。(したがって、本件商標登録が商標法4条1項11号、同項15号又は同法8条1項の規定に違反してされたものではないとの審決の判断に誤りはないことになる。)
2 取消事由2(商標法4条1項15号違反についての判断の誤り)について
 上記1において説示したところによれば、本件商標登録が商標法4条1項15号の規定に違反してされたものではないとの審決の判断に誤りはないことになるが、念のため、以下、取消事由2に対する当裁判所の判断を示すこととする。
(1) 本件両商標が類似しないものであることは、上記1において説示したとおりである。
(2) そして、原告は、引用商標を使用していないこと及び引用商標が著名・周知でないことを自認しているのであるから、本件商標が、「他人」である原告の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標であると認めることは到底できず、その他、そのような事実を認めるに足りる証拠はない。
(3) 原告は、商標法4条1項15号の規定については、ドメイン名が重要な役割を果たしているというインターネットにおける取引の実情を考慮し、商標権を守るため、同項11号の規定を補うような運用をすべきである旨主張するが、その主張の趣旨は不明確であるし、いずれにせよ、独自の見解であるから、これを採用することはできない。
(4) 以上によれば、商標法4条1項15号違反についての判断の誤りをいう取消事由2は、理由がない。
3 結論
 よって、審決取消事由はいずれも理由がないから、原告の請求を棄却することとし、主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第4部
 裁判長裁判官 田中信義
 裁判官 古閑裕二
 裁判官 浅井憲


商標目録
 (商標法施行令別表記載の類については、以下、単に「第35類」などと略記する。)
1 登録番号 第4478383号
 商標の構成 「MIZUHO」の文字を標準文字で書して成るもの
 指定役務 第35類「広告、トレーディングスタンプの発行、経営の診断及び指導、市場調査、商品の販売に関する情報の提供、ホテルの事業の管理、財務書類の作成、職業のあっせん、競売の運営、輸出入に関する事務の代理又は代行、新聞の予約購読の取次ぎ、書類の複製、速記、筆耕、電子計算機・タイプライター・テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作、文書又は磁気テープのファイリング、建築物における来訪者の受付及び案内、広告用具の貸与、タイプライター・複写機及びワードプロセッサの貸与、経営情報の提供、人材派遣による電子計算機・タイプライター・テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作、人材派遣による文書・磁気テープ等のファイリングに係る分類の作成又はファイリング、人材派遣による新商品の企画・販売計画の作成等に必要な基礎資料を得るためにする市場等に関する調査又は当該調査の結果の整理若しくは分析、人材派遣による貸借対照表・損益計算書等の財務に関する書類の作成その他財務の処理、人材派遣による建築物における来訪者の受付又は案内、一般事務の代理又は代行、経理事務処理の代行、マネキン人形の貸与、タイムレコーダーの貸与、自動スタンプ打機の貸与、会計機の貸与、キャッシュレジスタの貸与、広告場所の貸与(商業又は広告のための展示施設の貸与を含む)、コピーボードの貸与、事務用什器・備品の貸与、シュレッダーの貸与、商品陳列用什器等のディスプレイ什器の貸与、電子式卓上計算機の貸与、光ディスクファイリングの貸与、ラベルプリンターの貸与、機械式接着テープディスペンサーの貸与、ファイリングシステム機器の貸与」
 登録出願日 平成11年12月16日
 設定登録日 平成13年6月1日

2 登録番号 第4246220号
 商標権者 原告
 商標の構成 「みずほねっと」の文字を標準文字で書して成るもの
 指定役務 第35類「広告、商品の販売に関する情報の提供」及び第38類「電子計算機端末による通信ネットワークへの接続の提供」
 登録出願日 平成9年5月26日
 設定登録日 平成11年3月5日
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