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【事件名】商標“CUBS”審決取消事件(2) 【年月日】平成19年8月8日 知財高裁 平成19年(行ケ)第10061号 審決取消請求事件 (平成19年6月18日 口頭弁論終結) 原告 メージャーリーグベースボールプロパティーズインコーポレーテッド 同訴訟代理人弁理士 松原伸之 同 村木清司 同 橋本千賀子 同 松嶋さやか 同 高部育子 同 寺島正己 被告 特許庁長官 肥塚雅博 同指定代理人 伊藤三男 同 岩崎良子 同 大場義則 主文 1 特許庁が不服2002−18308号事件について平成18年9月26日にした審決を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 主文同旨 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯 原告は、別紙商標目録中の「本願商標」記載のとおりの構成からなる商標(以下「本願商標」という。)につき、指定商品及び指定役務を第9類、第16類及び第41類に属する商品及び役務として平成12年10月13日に登録出願をし、平成14年3月15日に手続補正書を提出し、指定商品及び指定役務を審決認定のとおりに補正した。原告は、平成14年4月16日に拒絶査定を受け、同年8月15日拒絶査定不服の審判を請求した。特許庁は、同請求を不服2002−18308号事件として審理し、平成18年9月26日に「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、同年10月18日、審決の謄本が原告に送達された(附加期間90日)。 2 審決の内容 (1) 審決の内容 ア 別紙審決書の写しのとおりである。要するに、本願商標は、後記引用商標と類似するので商標法4条1項11号に該当し、登録を受けるべきものに該当しないとするものである。 イ 審決の「判断」部分の概要は、以下のとおりである。 本願商標は、別掲(1)(別掲の図柄は判決においても同じ。)のとおり、肉太の円輪郭中に、これと同じ太さからなる右側を一部切り取った円輪郭状の図形を配し、その切り欠いた円輪郭状図形中に、欠損部分にかかるように「UBS」の文字を太字で書してなるところ、これら図形と「UBS」の文字部分とが常に不可分一体のものとして認識されるとはいい難く、読みやすい「UBS」の文字部分が看者の注意を惹くことから、これより単に「ユービーエス」の称呼を生ずるとみるのが自然である。 請求人(原告)は、円輪郭の内側に配された右側を一部切り取った円輪郭状図形はローマ字「C」であり、これと「UBS」の文字とを合わせて「カブス」と称呼されるものである旨主張するが、上記のとおり、外側の円輪郭と内側の円輪郭状図形は太さが同じであり、内側に配された右側を一部切り取った円輪郭状図形に「UBS」の文字を表したものとみるのが自然であり、この右側を一部切り取った円輪郭状図形がローマ字「C」を表したものと理解し把握されるとするのは困難であるといわざるを得ないから、「カブス」と読まれるとするには無理があり、請求人(原告)のこの主張は採用することができない。 また、請求人(原告)は、本願商標は米国のプロ野球メジャーリーグの人気球団「シカゴ・カブス(CHICAGO CUBS)」のユニフォームロゴとして知られていることから、本願商標に接する需要者は「シカゴ・カブス」のチームロゴを想起し、本願商標から「カブス」の称呼のみが認識される旨主張するが、昨今の我が国における米国のプロ野球メジャーリーグの人気を考慮したとしても、本願商標の指定商品及び指定役務の取引者、需要者の間において、本願商標を構成する標章が上記シカゴ・カブスのチームロゴとして直ちに理解されるほど広く認識されているとまではいうことができないから、請求人(原告)のこの主張も採用することができない。 他方、引用商標アないしオ(後記引用商標1ないし5と同じ。)は「UBS」の文字又はこれと図形若しくは他の文字の組合せからなるものであって、いずれも「UBS」の文字が顕著に表されていることから、「ユービーエス」の称呼を生ずるものである。そうすると、本願商標と引用商標とは、外観及び観念の差異を考慮しても、「ユービーエス」の称呼を共通にする類似の商標といわなければならない。 そして、本願商標の補正後の指定商品及び指定役務と引用商標アないしオの指定商品又は指定役務とは、同一又は類似のものといえるものである。 したがって、本願商標は、商標法4条1項11号に該当する。 (2) 引用商標について 引用商標は、@昭和59年11月13日に登録出願され、登録第1951134号として登録されたもの(甲11の1、以下「引用商標1」という。)、A平成10年9月25日に登録出願され、登録第4339840号として登録されたもの(甲11の2、以下「引用商標2」という。)、B平成10年9月25日に登録出願され、登録第4364718号として登録されたもの(甲11の3、以下「引用商標3」という。)、C平成10年9月25日に登録出願され、登録第4515606号として登録されたもの(甲11の4、以下「引用商標4」という。)、D平成10年4月20日に登録出願され、登録第4623586号として登録されたもの(甲11の5、以下「引用商標5」といい、引用商標1ないし引用商標5を併せて「引用商標」という。)の5つである。これらの商標は別紙商標目録中の「引用商標1」、「引用商標2ないし4」及び「引用商標5」記載の構成からなり、それらの指定商品は、それぞれ審決の認定のとおりである(甲11の1ないし5)。 第3 取消事由に関する原告の主張 以下のとおり、本願商標と引用商標とは、類似するとした審決の判断には誤りがある。 1 称呼について (1) 本願商標の称呼 ア 本願商標は、シカゴ・カブスのユニフォームの胸の部分等にロゴとして使用されている(甲45)。 米国のプロ野球メ−ジャーリーグベースボール(以下「メジャーリーグ」という。)は、1876年にナショナル・リーグが発足したことから始まり、1900年に「クラシックエイト」といわれる8球団が確定した。シカゴ・カブスは、この「クラシックエイト」の一つである「シカゴ・オーファンズ」が後に改名したものである(甲38)。 野球は、米国では最も人気のあるスポーツの1つであるが、我が国においても、特に第二次世界大戦後、アメリカ文化の流入とともに人気が高まり、多くのファンが存在する。我が国では、メジャーリーグに関し、ベーブ・ルース、ハンク・アーロン等の有名選手の名前とともに、ニューヨーク・ヤンキース、サンフランシスコ・ジャイアンツ、シアトル・マリナース等の球団名が一般的に知られており、シカゴ・カブスもこれらの球団とともによく知られている。特に、2004年(平成16年)からは電通がメジャーリーグの試合の日本向け放映権を獲得し、NHK、TBS、フジテレビジョン及びSKY PerfecTV!で放映を開始したため、メジャーリーグ所属のチーム名は、以前にも増して、我が国の視聴者の間に浸透することとなった(甲38)。 昨今では、日本人選手が米国に渡ってメジャーリーグで活躍するようになっており、このことが日本におけるメジャーリーグの人気を押し上げている(甲3ないし5)。1995年(平成7年)に野茂英雄が、2001年(平成13年)以降には新庄剛志、イチロー、石井一久等の日本人選手が(甲6)、それぞれメジャーリーグに移籍した。2006年(平成18年)7月には、日本人のメジャーリーガーは13人となった(甲6)。本件審決時において、我が国の一般的な需要者の間において、メジャーリーグに関する知識はかなり豊富になっていた(甲41、42)。 イ シカゴ・カブスは1871年に「ホワイト・ストッキングス」の名称で設立され、130年以上の歴史を有するメジャーリーグでも名門の球団である。1903年以来日本を含め世界中で「カブス」の略称で呼ばれ、親しまれてきた。 我が国では、2000年(平成12年)の公式戦開幕試合を東京ドームで行った球団として、また、1998年(平成10年)及び1999年(平成11年)にホームラン王をマグワイア選手と争ったサミー・ソーサ選手の所属していた球団として、有名である(甲44)。 本願商標は、シカゴ・カブスの選手のユニフォーム姿の画像、映像には常に表れるものである(甲12、17、33、45)。また、シカゴ・カブスの愛好者向けの商品にも頻繁に使用されている(甲46)。 ウ 本願商標は、円の中に「CUBS」を図案化して描いたものである。すなわち、頭文字「C」を大きく描き、その中に続きの「UBS」を描いたものであり、全体として一連一体に認識されるものであり、「UBS」の部分のみを分離して観察するのは相当でない。 アルファベットで表された語を図案化する場合、頭文字を特に大きく描く手法は一般的に用いられている(甲35の1ないし23、36の1ないし22)。特に、アルファベットで表される語の頭文字が「C」である場合、「C」を大きく描き、その中に残りの文字を入れて表すという手法は、ロゴデザインの分野において頻繁に見受けられる(甲36の1ないし22)。本願商標も、円輪郭の中に、「CUBS」の頭文字であるアルファベット「C」を大きく表し、残余の「UBS」をその中に表したロゴであると理解することができるから、そこから生ずる称呼は「カブス」のみであり、「ユービーエス」の称呼が生ずることはない。 エ 特許庁においても、本願商標と同様の商標から生ずる称呼が「カブス」であると判断されたことが推測される。すなわち、国際登録第803311号は、商標「UBS」について商品及び役務の区分第9、14、16、35、36、38、41及び42類においてUBS AG(以下「UBS社」という。)によって出願されたものであるが、本願商標とほぼ同様の態様からなる商標、登録第1190753号、同第1388525号及び同第1402717号(いずれも商標権者は原告)が引用され、最終的に各引用商標とは非類似と判断されて登録されている(甲47)。また、原告が商標権者である登録第1190753号(本願商標と同様の態様からなる商標)と、UBS社が商標権者である登録第4521353号(引用商標2ないし4と同様の態様からなる商標)、登録第4326784号(同上)とが、商品「身飾品」に関して併存して登録されている(甲24の1、2、甲47)。 したがって、特許庁において、本願商標と同様の態様からなる商標について「カブス」の称呼のみ生ずると認定され、その結果として、商標「UBS」あるいは「UBS」に鍵の図形を結合させた商標と、本願商標と同様の態様からなる商標とが非類似であると判断された例があることを示しているといえる。 オ 以上のとおり、本願商標は常に「カブス」とのみ称呼されるものであり、「ユービーエス」の称呼を生ずることはない。 (2) 本願商標と引用商標の対比 上記のとおり、本願商標からは、「ユービーエス」の称呼は生じず、本願商標がシカゴ・カブスのロゴとして我が国の一般的な需要者・取引者の間においてもよく知られた商標であって、常に「カブス」とのみ称呼されていることから、「カブス」の称呼のみが生ずる。 これに対し、引用商標は、それぞれアルファベット「UBS」の部分から「ユービーエス」の称呼のみ生ずる。したがって、本願商標と引用商標とは、称呼において類似しない。 2 その他の要素について (1) 外観について 本願商標は、円輪郭の中にロゴ化した「CUBS」が配置され、全体としてまとまりよく表わされている。本願商標は、メジャーリーグに所属する球団である「シカゴ・カブス(CHICAGO CUBS)」のロゴとしてよく知られたものであるから(甲8、9、12、13、15ないし18)、需要者は一見して、外観からこれが「シカゴ・カブスのロゴ」であることを認識する。 これに対し、引用商標は、「UBS」の文字又はこれと図形若しくは他の文字の組合せからなり、需要者の間では、世界的に有名な銀行であり、スイス三大銀行の一つである「Union Bank of Switzerland(UBS)」の商標として知られている。 以上のとおり、本願商標から、殊更に「UBS」の文字のみを抽出して判断することは不自然であり、外観において本願商標と相紛れることはない。 (2) 観念について 本願商標中「CUBS」は「肉食獣の幼獣(子熊等)」を意味するが、これは、シカゴ・カブスのマスコットマークが子熊であることに由来する(甲39、40)。そして、本願商標は、前記のとおりシカゴ・カブスのロゴとして需要者の間に浸透し、よく知られたものであるから(甲8、9、12、13、15ないし18、45、46)、そこから「シカゴ・カブス」、「カブス」の観念を生ずる。 他方、引用商標1の「UBS」は、特に観念を生じない造語であり、引用商標2ないし4は「UBS」にスイスユニオン銀行の鍵の図形を組み合わせたものであるから、そこから、「スイスユニオン銀行」又は「鍵」との観念を想起させ、引用商標5は、「UBS」と「Union Bank of Switzerland」とを二段併記したものであり、「スイスユニオン銀行」との観念を生ずる。 したがって、本願商標と引用商標とは観念において類似しない。 3 商品及び役務の類似性について (1) 本願商標は、シカゴ・カブスのロゴであるため、これを使用した商品は、メジャーリーグの愛好者向けのものが多く、その愛好者によって購入されることが多い(甲21、46)。これを使用した役務に関しても同様である。 我が国においても、原告から、株式会社ユニクロ(以下「ユニクロ」という。)等がライセンスを受けて商品を製造・販売し(甲46)、コナミがゲームソフトの製造・販売をしている(甲51)。また、原告のオフィシャルホームページ等から商品を購入することも可能である(甲46)。 このように本願商標に係る商品を購入する場合、ほとんどはメジャーリーグと関連している。したがって、需要者は、本願商標がシカゴ・カブスのロゴであることを認識しながら商品・役務を選んでいるといえる。 (2) シカゴ・カブス関連の商品の2006年(平成18年)6月から2007年(平成19年)3月までの我が国での売上高は、米国、カナダ、英国に次いで世界で4番目である(甲52)。すなわち、我が国では、メジャーリーグとの関連において、本願商標はメジャーリーグ所属の球団「シカゴ・カブス」のロゴであるとの認識の下に、これを使用した商品・役務が取引の対象となることが多いので、メジャーリーグとは何らの関係もない引用商標を使用した商品・役務との間で出所の混同が生ずる可能性はほとんどない。 (3) 引用商標1は理化学機械、光学機械等の機械に使用され、引用商標2ないし5は、商標権者であるUBS社の業務に関連する商品・役務に使用されるので、いずれもメジャーリーグの愛好者向け商品・役務との間で出所の混同が生ずる可能性は全く考えられない。 したがって、本願商標を使用した商品・役務と引用商標を使用した商品・役務との間では、実際の取引においても出所の混同が生じないので、本願商標と引用商標とは非類似である。 4 以上のとおり、本願商標と引用商標とは外観、称呼、観念のいずれにおいてもまた商品又は役務においても相紛れることはなく類似しない。 第4 被告の反論 以下のとおり、審決の認定、判断に誤りはない。 1 称呼について (1) 本願商標の構成、態様は、肉太の円輪郭中に、これと同じ太さからなる右側を一部切り取った円輪郭状の図形を配し、その切り欠いた円輪郭状図形中に欠損部分にかかるように「UBS」の文字を同一書体からなる太字で書してなる。これら図形と「UBS」の文字部分とが常に不可分一体のものとして認識されるとはいい難く、円輪郭状の中央部に位置し読みやすい「UBS」の文字部分が、おのずと看者の注意を惹くことから、単に「ユービーエス」の称呼を生ずるとみるのが極めて自然である。 そうすると、本願商標は、「ユービーエス」の称呼をも生ずるものというべきである。 (2) 本願商標の指定商品又は指定役務は、第9類、第16類及び第41類の商品・役務であるところ、その指定する範囲は、商品については、「電話機」、「ラジオ受信機」、「カメラ」、「はがき」、「印刷物」、「ノートブック」、「ペン」、「鉛筆」、「鉛筆削り」、役務については、「教育情報の提供」、「娯楽情報の提供」等であって、それら商品・役務自体はメジャーリーグと密接な関係のある商品等とはいえない。そうすると、本願商標の指定商品又は指定役務の主たる需要者は、子供から高齢者までの老若男女を含む一般的な消費者といえるから、必ずしもメジャーリーグに精通した者ないし興味を有する者に限られない。 すなわち、我が国においては、熱狂的なシカゴ・カブスファンならばともかくとして、一般のメジャーリーグファンにおいて、シカゴ・カブスのユニフォームのロゴは、到底知られているとはいえない。ましてや、本願商標の指定商品又は指定役務において、メジャーリーグと密接な関係の商品等とはいえない前記の商品の主たる需要者である一般的な消費者にとって、「CHICAGO CUBS」、「シカゴ・カブス」等の文字、又はユニフォームと共に表示されていないロゴの態様から、これが、直ちに、シカゴ・カブスのユニフォームのロゴと理解するのは困難である。よって、本願商標は、その指定商品又は指定役務の分野において、その主たる需要者である一般的な消費者にとって、シカゴ・カブスのユニフォームのロゴとしてよく知られているとはいえず、かかる一般的な消費者は、その構成中の円輪郭状の中央部に位置し読みやすい「UBS」の文字部分を捉えて、これより生ずる「ユービーエス」の称呼をもって取引に当たることが少なくないというべきである。 したがって、本願商標から、仮に「カブス」と読まれる場合があるとしても、そのことが、本願商標の文字部分「UBS」から「ユービーエス」の称呼が生ずることを否定する要因にはならない。 (3) 原告の主張に対し ア 原告は、本願商標の円輪郭の内側に配された右側を一部切り取った円輪郭状図形は欧文字「C」であり、これと「UBS」の文字とを合わせて、「カブス」と称呼されると主張する。 しかし、本願商標は、右側を一部切り取った円輪郭状図形と文字(「UBS」)の太さが異なる上に、円輪郭状図形の右側を切り取った位置が「UBS」の末尾の「S」付近であることから、「UBS」の冒頭文字である「C」を表したものと理解することは困難である。むしろ、外側の円輪郭と同じ太さで表し、かつ、「S」の部分に重ならないように切り取って、内部の「UBS」の文字を囲むように配置した円輪郭状の図形を表したものとみるのが自然である。 原告の挙げる商標登録例(甲35の1ないし23、36の1ないし22)は、冒頭文字付近で図案化したもの、冒頭文字をも文字中に表示した上で冒頭文字を図案化したもの、振り仮名として片仮名文字又は平仮名文字が付されているものがほとんどであり、この登録例と、肉太の円輪郭中に、これと同じ太さで文字の末尾付近で切り取った円輪郭状の図形を配した本願商標とでは、その構成、態様が異なる。 イ 原告は、本願商標は、我が国の一般的な需要者・取引者の間にもよく知られた商標であって、常に「カブス」とのみ称呼されているから、「カブス」の称呼のみが生ずる旨主張する。 しかし、本願商標は、色彩が施されていないのに対して、実際にシカゴ・カブスのユニフォームの胸の部分等に使用されているロゴ(甲12、15)は、外周の円輪郭が青色で、内部の表示された右側を一部切り取った円輪郭状の図形と「UBS」の文字が赤色で表されており、その結果、同色で表された内部にある一部切り取った円輪郭状の図形と「UBS」の文字に一体感があることを醸し出しているとの感があり、受ける印象も本願商標と異なるというべきである。 2 その他の要素について (1) 外観について 商標の外観の類否を判断するに当たっては、必ずしも全体的な対比によってされるわけではなく、視覚上、特に識別標識として人の印象に残る部分については、これを抽出して分離観察により類否判断する場合がある。本願商標の図形部分と文字部分とは、分離して認識されるのであって、これらを常に不可分一体のものとして把握しなければならないとする格別の事情も認められない。これに接する取引者及び需要者は、読みやすい文字部分に着目して取引に当たる場合が多いといえるので、「USB」の文字部分が図形部分と独立して自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものである。 そうすると、本願商標と引用商標の文字部分「USB」は、その綴り字をすべて同じくするものであり、また、その活字がサンセリフ体風かモダンローマン体風の書体の違いという差にすぎないものであることも考慮すれば、両商標は、時と所を異にして離隔的に観察するときは、外観上も近似した印象を与え、互いに類似するというべきである。 (2) 観念について 本願商標は、その指定商品・役務の主たる一般的な消費者において、シカゴ・カブスのユニフォームのロゴとしてよく知られているとはいえず、特定の観念を生じない。 この点、原告は、甲8、9、12、13、15ないし18、45、46を根拠として、本願商標中「CUBS」から「シカゴ・カブス」、「カブス」の観念を生ずる旨主張する。しかし、前記各証拠に表示されたロゴにはいずれも「CHICAGO CUBS」、「Chicago Cubs」及び「Chicago CUBS」又は「シカゴカブス」のいずれかの文字とともに紹介されているか、あるいは、ユニフォーム中に表示され、そのユニフォームを着用してプレーしている選手の姿とともに紹介されているものであるばかりでなく、実際に使用しているロゴと本願商標とは、いずれもその態様を異にしてなるものであるから、本願商標はシカゴ・カブスのユニフォームのロゴとして我が国のメジャーリーグファンにおいて、また、その指定商品・役務の主たる一般的な消費者においてもよく知られているとはいえない。 他方、引用商標1ないし4からは、直ちに特定の意味合いを想起するものとはいえないので、観念を生じ得ないというべきである。また、引用商標5からは、その構成文字より「UBSという名称のスイスの銀行」の観念を生ずるものといえる。 そうすると、本願商標と引用商標とは、観念において比較することができない。 3 指定商品及び指定役務の類似性について 本願商標の指定商品・役務における主たる需要者である一般的な消費者にとって、本願商標がシカゴ・カブスのユニフォームのロゴとしてよく知られているとは到底いえないばかりでなく、本願商標の指定商品・役務は、メジャーリーグと密接な関係のある商品等とはいえないものであって、かつ、実際の取引であると主張するライセンスに基づく商品も本願商標の指定商品・役務中のごく一部の商品に限って販売されているにとどまるものである。 そうすると、本願商標は、メジャーリーグと密接な関係のある商品等とはいえない大半の本願商標の指定商品・役務に使用されたときは、「ユービーエス」の称呼を共通にし、外観においても近似した印象を与える引用商標と、その商品・役務の出所について混同を生ずるおそれがあることが十分あり得るというべきである。 第5 当裁判所の判断 当裁判所は、「本願商標と引用商標とは、外観及び観念の差異を考慮しても、『ユービーエス』の称呼を共通にする類似の商標である」とした審決には誤りがあると判断する。その理由は、以下のとおりである。 以下、本願商標と引用商標の称呼の類否判断を中心に述べる。 1 本願商標の称呼について (1) 事実認定 証拠(甲1ないし9、12ないし17、18の1、2、甲19ないし23、24の1、2、甲29ないし31、33、35の1、2、4、23、甲36の3、6、14、16、甲38、40、43ないし47、49の1、3ないし6、8ないし10、甲50の1ないし5、甲51、54、57)及び弁論の全趣旨によると、以下の事実が認められる。 ア 本願商標の構成 本願商標は、別紙商標目録中の「本願商標」記載のとおり、肉太の円輪郭中に、これとほぼ同じ太さからなる右側を一部切り取った円輪郭状の図形を配し、その切り欠いた円輪郭状図形中に、切り欠き部分にかかるように「UBS」の文字を太字で配した商標である。 本願商標は、シカゴ・カブスのユニフォームの胸の部分等に使用されているロゴと同一の形状である(甲45)。 イ 我が国におけるメジャーリーグの周知度 メジャーリーグは、1876年にナショナル・リーグが発足したことから始まり、1900年に「クラシックエイト」といわれる8球団が確定した。シカゴ・カブスは、この「クラシックエイト」の一つである「シカゴ・オーファンズ」が後に改名したものである。メジャーリーグは、アメリカンリーグとナショナルリーグからなり、2006年(平成18年)現在、30球団が所属している。両リーグともに西地区、中地区、東地区の3地区に分かれ、このうちシカゴ・カブスはナショナルリーグの中地区に所属する(甲38)。 1986年(昭和59年)以降現在に至るまで、我が国において、2年に1回の割合でメジャーリーグのオールスターチームと我が国のプロ野球のオールスターチームとの対戦が行われ、これらの試合はテレビで中継されてきた(甲31)。 近年、日本人選手がメジャーリーグで活躍するようになり、我が国におけるメジャーリーグへの関心が高まった。1995年(平成7年)に野茂英雄が移籍した後、新庄剛志、イチロー、佐々木主浩ほか7人の日本人選手が移籍し、その後も、石井一久、田口壮、松井秀喜、井口資仁、大家友和、松井稼頭央等の選手が移籍し、2006年(平成18年)7月現在で、日本人選手は13人になった。このうち、田口壮が在籍するセント・ルイス・カージナルスは、シカゴ・カブスと同じくナショナルリーグの中地区に所属している(甲3、6)。 このような日本人選手の活躍に伴い、遅くとも平成13年以降、我が国においてメジャーリーグの試合の中継や特集がテレビ放映されたり試合結果等が新聞紙上やインターネット上やスポーツ雑誌に掲載されたり、旅行代理店においてメジャーリーグ観戦ツアーが企画されたりした(甲2ないし4、19、38)。メジャーリーグの公式サイト「MLB.com」への2006年(平成18年)6月1日から2007年(平成19年)3月31日までのアクセス数は約429万件に上り、上記期間中のシカゴ・カブスの公式ホームページ「Chicago cubs mlb com」へのアクセス数は7万3900件に上る(甲32)。 ウ 我が国におけるシカゴ・カブスの周知度 シカゴ・カブスは、1876年に「ホワイト・ストッキングス」の名称で設立され、130年以上の歴史を有する球団である。1903年以降、「シカゴ・カブス」の略称で呼ばれるようになった。「カブス」の名称は「カブ」が「小熊」等を意味するところ、当初若く経験の浅い選手から構成されていたからとされている(甲1、8、13)。 シカゴ・カブスは、地区優勝2回、リーグ優勝10回を数え、ワールドチャンピオンに2回なっている(甲8、16)。 シカゴ・カブスに所属したサミー・ソーサ選手が1998年(平成10年)にホームラン数66本、1999年(平成11年)に63本を記録するなど活躍したことなどが知られている。1998年(平成10年)にメジャーリーグの選手と我が国の選手が対戦した日米野球が開催された際、サミー・ソーサ選手がMVPに選出された(甲1、8、44)。 また、シカゴ・カブスは、2000年(平成12年)、我が国で、メジャーリーグの公式戦開幕試合2試合(対戦相手ニューヨーク・メッツ)を行い、その前に西武ドームにおいて西武ライオンズと、東京ドームにおいて読売ジャイアンツと親善試合を行っており、サミー・ソーサ選手も出場した(甲18の1、甲43)。 上記開幕試合は、スポーツ雑誌にも掲載され、「スマッシュ」4月号増刊の「SLUGGER(スラッガー)」第24号(2000年(平成12年)4月発刊)においては、サミー・ソーサ選手の特集がソーサ選手のユニフォーム姿の写真付きで組まれたり、シカゴ・カブスのチーム紹介が掲載され(甲18の2)、「月刊メジャーリーグ」平成13年11月・12月合併号にもシカゴ・カブスの紹介記事が掲載された。また、ホームページコンテンツ「YAHOO!スポーツ」(平成13年アップデート)にはシカゴ・カブスのチームの成績等が掲載されている(甲16、18の3)。 エ シカゴ・カブスのロゴ及びその使用状況 シカゴ・カブスのロゴは、本願商標とその形状が同一であるが、これは1909年以降、ユニフォームの前面に使用するようになり、現在においてもシカゴ・カブスの選手のユニフォーム姿の画像、映像に表れる(甲12、17、33、45)。 また、上記ロゴを含めMLBのマークが付いた製品を我が国で販売する許諾を受けた会社としては、株式会社栗原、株式会社サンリオ、株式会社セガ、株式会社タカラ、ユニクロ、スケーター株式会社、株式会社マツモト、住友商事株式会社、株式会社ワコール等がある。そして、メジャーリーグ所属の球団の帽子、ユニフォ−ム、Tシャツ等の関連商品を専用に取り扱う「メジャーリーグベースボールジャパンショップ」は新宿、池袋、札幌、名古屋、大阪、広島にあり、また、関連商品は、サンリオ・ギフト・ゲートショップ、ユニクロ等の小売店、高島屋、三越、大丸等の百貨店、ゼビオ・上州屋・ヒマラヤ・ミズノ等のスポーツショップで扱っている(甲21)。また、コナミはメジャーリーグに関するゲームソフトを、製造、販売している(甲51)。 シカゴ・カブスの公式ウエブサイトにおいては、平成18年及び平成19年に上記ロゴを付したユニフォームを着用した選手の写真が掲載されたり本願商標自体が記事の下部に掲載され(甲15)、メジャーリーグ関連商品をインターネット上で販売する「MLB.com shop」等のホームページから上記ロゴを付したユニフォーム(レプリカジャージ)やマグカップ等を我が国においても購入することができる(甲46、57)。 以上の事実を総合すると、メジャーリーグは日本人選手の活躍に伴い広く知られており、その球団であるシカゴ・カブスもまた、メジャーリーグの一球団として、またサミー・ソーサ選手が活躍した球団などからそのチーム名は広く知られ、そのロゴもまた本願商標に係る商品の取引者又は需要者を含めて我が国において相当程度知られているということができる。 オ 特許庁等における登録実績 特許庁においては、本願商標と形状が同一の図形を構成要素とし、色彩については外周の円弧と内側の「C」及び「UBS」を異ならせ、上記図形の下部に「ChicagoCubs」と「シカゴカブス・1876年」との文字を二段に表記した構成からなる商標が登録番号第2520468号として登録され(甲23)、外周の円弧の線の太さを内側の「C」の文字の太さよりも細くし、その余は本願商標と同一の構成からなる商標が登録番号第1190753号として登録されている(甲24の2)。 国際登録第803311号は、商標「UBS」について商品及び役務の区分第9、14、16、35、36、38、41及び42類においてUBS社によって出願されたものであるが、本願商標とほぼ同様の態様からなる商標が、登録第1190753号、同第1388525号及び同第1402717号(いずれも商標権者は原告)が引用されたにもかかわらず、最終的に登録されている(甲47)。また、原告が商標権者である登録第1190753号(本願商標と同様の態様からなる商標)と、UBS社が商標権者である登録第4521353号(引用商標2ないし4と同様の態様からなる商標)、登録第4326784号(同上)とが、商品「身飾品」に関して併存して登録されている(甲24の1、2、甲47)。 米国及び欧州共同体においては、本願商標と同様の態様からなる商標と引用商標と同様の態様からなる商標とが共に登録されている(甲49の1、3ないし6、8ないし10、甲50の1ないし5)。 カ 一般に、商標において、@「Orange」「ORAGALAND」「LAUREL STAR」のように、英文字等で構成される商標の先頭の文字を図案化したり、大きく表示する例、また、A先頭文字が「C」の場合に、「CAMAT」、「Carawit/キャラウィット」、「EURO−JAPAN/COMMUNICATION」の下段「COMMUNICATION」のように、「C」を大きく表記する例、さらに、B先頭文字が「C」の場合に、「CPOP」、「CSV」、「CACER」のように、他の文字を囲む形状で「C」を大きく表記する例が数多く存在する(甲35の1、2、4、23、36の3、6、14、16、18)。 キ 引用商標2ないし4の商標権者であるUBS社は、本願商標の出願人である原告に対して、原告が本願商標を第9類、第16類及び第41類の商品について登録することに同意していること(甲54)に照らすならば、UBS社も、本願商標と引用商標とは、互いに出所の混同を来さないと認識、理解しているものと推認される。 (2) 本願商標から生ずる称呼について ア 以上のとおり、本願商標は、シカゴ・カブスのロゴと同一形状であること、シカゴ・カブスの名称は我が国においてよく知られ、また、シカゴ・カブスのロゴは我が国において相当程度知られていること、英文字等で構成される商標において、先頭の「C」を、他の文字を囲む形状で大きく表記する例は少なくないこと等に照らすならば、本願商標では、「円輪郭状図形」ないし「C」部分と「UBS」部分とを、一体のものと理解して、「CUBS」すなわち「カブス」と認識するのが自然であり、そうすると、本願商標からは、「カブス」の称呼のみが生じ、「ユービーエス」の称呼は生じないと解するのが相当である。 イ これに対して、被告は、以下のとおり主張する。 (ア) まず、被告は、本願商標は、格別の色彩を施していないのに対して、シカゴ・カブスのユニフォームの胸の部分等に使用されているロゴは、外周の円輪郭が青色で、円輪郭状の図形と「UBS」の文字が赤色で表されており(甲12、15)、その態様が本願商標と異なっているから、本願商標と異なると主張する。 しかし、シカゴ・カブスのロゴが、その青色と赤色の彩色によって、明確に「CUBS」と認識することができる態様で使用されてきたという点は、色彩を施していない本願商標についても、その「円輪郭状図形」部分と「UBS」部分とを一連一体に理解し「CUBS」と認識させる要因になり得るとしても、そのように認識させることを妨げる要因となるものではないから、上記事実は前記の認定を左右するものとはいえない。 (イ) 次に、被告は、シカゴ・カブスのロゴは、「CHICAGO CUBS」、「Chicago Cubs」及び「Chicago CUBS」又は「シカゴカブス」のいずれかの文字とともに紹介されているか、あるいは、ユニフォーム中に表示され、そのユニフォームを着用してプレーしている選手の姿とともに紹介されているから、シカゴ・カブスのロゴ単独では、一般的な需要者によく知られているとはいえないと主張する。 しかし、前記認定のとおり、メジャーリーグに対する関心の高い我が国において、シカゴ・カブスのチームの名称が知られ、さらにシカゴ・カブスのロゴも相当程度知られているところ、シカゴ・カブスのロゴが、シカゴ・カブスを示す文字やユニフォームを着用する選手と共に頻繁に紹介されている事実は、本願商標をもってシカゴ・カブスのロゴであると認識させる要因になり得るのであって、そのように認識させることを妨げる要因となるものではないといえる。したがって、上記事実は前記の認定を左右するものではない。 2 引用商標の称呼及び本願商標との対比 (1) 引用商標の構成及び称呼(甲11の1ないし5) 引用商標1は別紙商標目録の「引用商標1」記載のとおり、「UBS」の文字を横書きした商標、また、引用商標2ないし4は別紙商標目録の「引用商標2ないし4」記載のとおり、横書きした「UBS」の文字の左側に3本の鍵状図形を錠前への挿入部を上部にして1本を中央部に、その余の2本を左右から交差させた図形を配置した商標、さらに、引用商標5は別紙商標目録の「引用商標5」記載のとおり、上段に「UBS」の文字を大きく、下段に「Union Bank of Switzerland」の文字を小さく、二段に横書きした商標である。 引用商標1ないし4からは、「UBS」の文字により「ユービーエス」の称呼が生じ(なお、引用商標2ないし引用商標4について、左側の鍵状図形からは格別の称呼は生じないと解される。)、引用商標5からは、「ユービーエス」あるいは「ユニオン・バンク・オブ・スイッツアランド」との称呼が生ずる。 (2) 本願商標と引用商標との対比 前記認定のとおり、本願商標からは「カブス」の称呼が生ずるのに対し、引用商標1ないし4からは「ユービーエス」の称呼が、引用商標5からは「ユービーエス」ないし「ユニオン・バンク・オブ・スイッツアランド」の称呼が生ずるので、本願商標と引用商標とは、称呼において類似しない。 3 結論 (1) 審決は「本願商標と引用商標とは、外観及び観念の差異を考慮しても、『ユービーエス』の称呼を共通にする類似の商標である」と記載するように、本願商標と引用商標とは、称呼が共通することを理由に、両商標は類似するとの結論を導いたものである。 したがって、本願商標と引用商標とは、称呼において類似しない以上、その余の点を判断するまでもなく、審決には誤りがある。 (2) 補足的判断(その1−外観) 被告は、本訴において、本願商標と引用商標とは、外観において類似すると主張する。すなわち、本願商標における図形部分と文字部分とは、分離して認識され、これらを常に不可分一体のものとして把握しなければならないとする格別の事情もなく、これに接する取引者及び需要者は、読みやすい文字部分に着目して取引に当たる場合が多いといえるので、「UBS」の文字部分が図形部分と独立して自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものであり、本願商標と引用商標の文字部分「UBS」は、その綴り字のすべてを同じくするので、両者は時と所を異にして離隔的に観察するときは、外観上類似すると主張する。 しかし、被告の上記主張は、外観において差異があるとした本件審決の判断に反するものであり、本訴において独立の主張(反論)として取り扱うべきではないが、念のために判断する。 前記1(2)で認定したとおり、本願商標は、シカゴ・カブスのロゴと同一形状であること、シカゴ・カブスの名称は我が国においてよく知られ、また、シカゴ・カブスのロゴも我が国において相当程度知られていることに照らすならば、本願商標では、「円輪郭状図形」部分を「C」と「UBS」部分とは、一体のものと理解し、「CUBS」すなわち「カブス」と認識するのが自然である。そうすると、本願商標は「UBS」の文字部分と円輪郭状図形とが一体となって「CUBS」との外観を有するものということができ、「UBS」の文字部分のみが看者の注意を惹くということはできない。確かに、本願商標の円輪郭と上記円輪郭状図形とはその太さがほぼ同一であり「UBS」の文字部分がこれらより細い線で描かれているが、この点も、前記認定のとおり、欧文字等で構成される商標において、先頭の「C」を、他の文字を囲む形状に大きく表記する例は少なくないことに照らすならば、本願商標の「UBS」部分のみが、外観の上で、看者の注意を惹く特徴的部分であるとはいえない。 そうすると、本願商標と引用商標1とは、本願商標には「UBS」部分が含まれているものの、本願商標の場合、上記文字と併せて欧文字の「C」の文字を連想させる円輪郭状図形と一体となっており、「UBS」部分のみで認識されるものではないこと、外側に円輪郭を配置していること、円輪郭状図形の占める部分が大きいこと等の点において、引用商標1と相違する。また、引用商標2ないし4については、独特の鍵状図形が付加されていること、引用商標5については、下部に「Union Bank of Switzerland」の文字が付加されていることから、本願商標と引用商標2ないし5とも相違する。 (3) 補足的判断(その2ー観念) さらに、念のため、本願商標と引用商標との観念についても対比する。 前記のとおり、シカゴ・カブスのロゴが我が国において相当程度知られていることに照らせば、本願商標からは、前記円輪郭状図形及び内側の「UBS」の文字とが一体となって「CUBS」との文字を認識し、「CUBS」の文字から、「シカゴ・カブス」を観念することができ、他方、引用商標1からは格別の観念を生ずることはなく、引用商標2ないし4の左側に配置された鍵状図形により、鍵などの観念を生ずることがあり、引用商標5からは、下段の「Union Bank of Switzerland」により「スイスユニオン銀行」の観念を生ずる。したがって、本願商標と引用商標とは、観念において相違するか、少なくとも類似することはない。 4 結語 以上のとおり、審決の認定、判断には誤りがあり、違法である。よって、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官 飯村敏明 裁判官 三村量一 裁判官 上田洋幸 |
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