判例全文 line
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【事件名】商標“Meta Media”審決取消事件(2)
【年月日】平成19年10月30日
 知財高裁 平成19年(行ケ)第10187号 審決取消請求事件
 (口頭弁論終結日 平成19年10月16日)

判決
原告 株式会社クロスメディアインフォメーションセンター
訴訟代理人弁理士 三好秀和
同 岡村雅一
同 須永浩子
同 芦田望美
被告 特許庁長官肥塚雅博
指定代理人 寺光幸子
同 山口烈
同 内山進


主文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
 特許庁が不服2006−19296号事件について平成19年4月16日にした審決を取り消す。
第2 事案の概要
 本件は、原告が後記商標登録出願をしたところ、拒絶査定を受けたので、これを不服として審判請求をしたが、特許庁が請求不成立の審決をしたことから、その取消しを求めた事案である。
 争点は、本願商標が商標法3条1項6号にいう「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」に当たるかである。
第3 当事者の主張
1 請求原因
(1) 特許庁における手続の経緯
 原告は、平成17年11月1日、後記商標登録出願(以下「本願」という。)をした(甲1)ところ、平成18年6月14日付けで特許庁から拒絶理由通知(甲2)を受けたので、平成18年7月25日付けで指定商品(指定役務)の変更を内容とする手続補正(甲3の2)をしたが、平成18年7月28日付けで拒絶査定(甲4)を受けた。そこで原告は、平成18年8月31日付けでこれに対する不服の審判請求(甲5)をし、これを受けた特許庁は、同請求を不服2006−19296号事件として審理した上、平成19年4月16日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は平成19年4月27日原告に送達された。
(2) 商標の内容
ア 商標(標準文字)
 Meta Media
イ 指定商品((指定役務)前記手続補正後のもの。下線は判決で付記)
 第9類
 耳栓、加工ガラス(建築用のものを除く。)、アーク溶接機、金属溶断機、電気溶接装置、オゾン発生器、電解槽、検卵器、金銭登録機、硬貨の計数用又は選別用の機械、作業記録機、写真複写機、手動計算機、製図用又は図案用の機械器具、タイムスタンプ、タイムレコーダー、パンチカードシステム機械、票数計算機、ビリングマシン、郵便切手のはり付けチェック装置、自動販売機、ガソリンステーション用装置、駐車場用硬貨作動式ゲート、救命用具、消火器、消火栓、消火ホース用ノズル、スプリンクラー消火装置、火災報知機、ガス漏れ警報器、盗難警報器、保安用ヘルメット、鉄道用信号機、乗物の故障の警告用の三角標識、発光式又は機械式の道路標識、潜水用機械器具、業務用テレビゲーム機、電動式扉自動開閉装置、乗物運転技能訓練用シミュレーター、運動技能訓練用シミュレーター、理化学機械器具、写真機械器具、映画機械器具、光学機械器具、測定機械器具、配電用又は制御用の機械器具、回転変流機、調相機、電池、電気磁気測定器、電線及びケーブル、電気アイロン、電気式ヘアカーラー、電気ブザー、電気通信機械器具、電子応用機械器具及びその部品、磁心、抵抗線、電極、消防艇、ロケット、消防車、自動車用シガーライター、事故防護用手袋、防じんマスク、防毒マスク、溶接マスク、防火被服、眼鏡、家庭用テレビゲームおもちゃ、携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD−ROM、スロットマシン、ウエイトベルト、ウエットスーツ、浮袋、運動用保護ヘルメット、エアタンク、水泳用浮き板、レギュレーター、レコード、メトロノーム、電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD−ROM、計算尺、映写フィルム、スライドフィルム、スライドフィルム用マウント、録画済みビデオディスク及びビデオテープ、電子出版物
 第35類
 広告、トレーディングスタンプの発行、経営の診断又は経営に関する助言、市場調査、商品の販売に関する情報の提供、ホテルの事業の管理、財務書類の作成、職業のあっせん、競売の運営、輸出入に関する事務の代理又は代行、新聞の予約購読の取次ぎ、速記、筆耕、書類の複製、文書又は磁気テープのファイリング、電子計算機・タイプライター・テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作、建築物における来訪者の受付及び案内、広告用具の貸与、タイプライター・複写機及びワードプロセッサの貸与、求人情報の提供、自動販売機の貸与
 第42類
 気象情報の提供、建築物の設計、測量、地質の調査、機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらの機械等により構成される設備の設計、デザインの考案、電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守、電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明、医薬品・化粧品又は食品の試験・検査又は研究、建築又は都市計画に関する研究、公害の防止に関する試験又は研究、電気に関する試験又は研究、土木に関する試験又は研究、農業・畜産又は水産に関する試験・検査又は研究、機械器具に関する試験又は研究、著作権の利用に関する契約の代理又は媒介、社会保険に関する手続の代理、計測器の貸与、電子計算機の貸与電子計算機用プログラムの提供、理化学機械器具の貸与、製図用具の貸与
(3) 審決の内容
 審決の内容は、別添審決写しのとおりである。その理由の要点は、本願商標を前記指定商品及び指定役務中の「電子応用機械器具及びその部品」等のコンピューターに関連する分野の商品又は役務に使用しても、これに接する取引者・需要者は単に上記概念ないし理念の実現を目指す商品又は役務であると認識するにとどまるから、自他識別標識としての機能を果たし得ず、商標法3条1項6号に該当し商標登録を受けることができない、としたものである。
(4) 審決の取消事由
 しかしながら、本願商標である「Meta Media」の語が表すところは極めて抽象的なものであり、これが、商品又は役務の具体的品質又は具体的内容を認識させるものとは考えられないから、本願商標を指定商品及び指定役務のいずれに使用しても自他の識別標識としての機能を果たし得るものであり、審決は以下に述べるとおり、違法として取り消されるべきである。
ア 審決は、本願商標を構成する「Meta Media」の文字(語)が、米国の科学者アラン・ケイ(Alan Curtis Kay、以下「アラン・ケイ」という。)が提唱した「コンピュータ」を定義した概念表示としてコンピュータに関連する商品又は役務分野において普通に使用されていることを前提として、本願商標は、その指定商品及び指定役務中「電子応用機械器具及びその部品」・「電子出版物」、「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」、「電子計算機の貸与」、「電子計算機用プログラムの提供」等のコンピュータに関連する分野の商品又は役務について使用しても、これに接する取引者、需要者は、単に上記概念ないし理念の実現を目指す商品又は役務であることを表したと認識するにとどまり、自他識別標識としての機能を果たし得ないものと判断した。
 しかし、本願商標を構成する「Meta Media」の語が、仮にアラン・ケイが提唱した「コンピュータ」を定義した概念表示としてコンピュータに関連する商品又は役務分野において知られているとしても、他にも「マルチメディア」、「ハイパーメディア」、「スーパーメディア」の各語も、同様に「コンピュータ」を定義した概念表示として普通に使用されている。
 しかも、上記各語は、いずれも「コンピュータ(電子計算機)」のメディアとしての優秀性・卓越性を抽象的に表現するにすぎず、本願商標を構成する「Meta Media」の語が、指定商品中の特定の商品及び指定役務中の特定の役務について、具体的品質・機能等及び特定の役務の具体的質(内容)を表示するためのものとして使用されている事実はないし、また慣用商標的に、コンピュータの同義語として普通に使用されているという事実も見出すことができない。審決が認定した(特定の商品又は役務に本願商標を使用しても、)「これに接する取引者、需要者は、単に上記概念ないし理念の実現を目指す商品又は役務であることを表したと認識するにとどまるものであり」と認定・判断した部分(5頁6行〜7行)についても、それが具体的にいかなる商品又は役務を指すのか明らかではない。
イ また「メタメディア」の語に関し、最近の携帯電話はその多機能化により急速に普及し、これも「メタメディア」としての地位を既に確立しており、またテレビの世界においても、最近急速にアナログからデジタルへの切り換えが進んでおり、インタラクティブ(双方向性の)なメディアとして、これも「メタメディア」に進化したとする見方がある。このように、ひとりコンピュータのみが「メタメディア」であるわけではなく、実際にも「Meta Media」及び「メタメディア」の語がコンピュータ、を指称する語として、あるいは本願指定商品又は指定役務の具体的品質を表す語として使用されている事実もない。
ウ そもそも、アラン・ケイは、「Meta Media」の語によって、コンピュータが、単なるメディアではなく、道具としての存在を超越していること、コンピュータが無限の可能性を秘めたブラック・ボックスであることを抽象的に主張・表現しているにとどまり、コンピュータも特定の具体的概念・理念で規定できるものではあり得ない。そうすると、具体的な「上記概念ないし理念」(5頁6行)の存在を想定する審決の認定・判断は、前提において誤りである。
 以上のとおり、「Meta Media」の語が表すところは、極めて抽象的なものであり、これが商品や役務の具体的品質又は具体的質(内容)を認識させるものとは、到底考えられない。
エ なお、「Meta Media」の語は英語であり、これを唱えたアラン・ケイも米国人であるが、米国においては「METAMEDIA」の商標が第2615450号として登録されている(甲7)。指定商品は「レコード、録音済みのカセットテープ、CD、録画済みのビデオテープ、音楽を組み込んだ双方向のシステム、音楽をフィーチャーしたコンピュータ・ソフトウエア」である。米国におけるコンピュータの普及は我が国に劣るものではないし、米国の需用者は我が国の需用者以上に「METAMEDIA」の語に慣れ親しんでいるところであるが、米国においては自他商品(役務)の識別力が認められているにもかかわらず、英語を公用語ともしていない我が国において「Meta Media」の語が自他商品識別機能を発揮し得ないとする理由はない。
オ さらに、本願商標の指定商品又は指定役務について、「メタメディア」の語が取引上、相当数の者により普通に使用されているとの事実、あるいは特定の商品等を認識させる事実はないから、このような取引の実情を考慮しても、本願商標は自他識別標識としての機能を果たしうる。
カ そうすると、本願商標は、上記商品又は役務はもとより、本願の指定商品又は指定役務のいずれについて使用しても、自他商品(又は役務)の識別標識としての機能を果たし得るものといわなければならないから、審決の認定、判断は誤りであり取り消されるべきである。
2 請求原因に対する認否
 請求原因(1)、(2)、(3)の各事実は認めるが、(4)は争う。
3 被告の反論
 本願商標が商標法3条1項6号に該当するとした審決の認定、判断は正当であり、以下に述べるとおり原告主張の取消事由は理由がない。
(1) 本願商標の構成
 本願商標は、「Meta Media」の欧文字を標準文字で表してなるものであり、「Meta」と「Media」の文字とを組み合わせてなるものと容易に看取されるものである。
 そして、本願商標の構成中の「Meta」の文字は、「ギリシア語で『間に』『後に』『越える』の意の meta に由来する接頭語」であり、同じく「Media」の文字は、「媒体。手段。特に、マス‐コミュニケーションの媒体。」を意味する語である(広辞苑第5版。乙1) 。
(2) 「Meta Media」又は「メタメディア」の語
 「Meta Media」の語について、審決時(平成19年4月16日)より以前に、以下の文献に、「Meta Media」又はその片仮名表記である「メタメディア」の語は、米国の著名な科学者アラン・ケイの提唱したコンピュータの概念ないし理念を表示する用語として掲載され、また、以下の新聞記事情報やインターネットの情報により「メタメディア」又は「metamedia」の語が「各種メディアを統合し、メディアを超越したもの」程の意味合いで使用されているといえる。
ア 「2005−’06年版最新パソコン用語事典」(平成16年11月1日 株式会社技術評論社発行)の「メタメディア metamedia」の項には、「Alan Kay氏が提唱した概念。各種メディアを統合したものとして想定された。コンピュータが、メディアを超えた最初のメディアだという考えである。」との記載がある(乙2)。
イ 「超図解パソコン用語事典2002年版」(2001年9月28日 株式会社エクスメディア発行)の「メタメディア metamedia」の項には、「Alan Curtis Kay氏が提唱した、『コンピュータはあらゆるメディアを統合したものであり、また代替品になりうる』という概念のこと。」との記載がある(乙3)。
ウ 「最新2002年版標準パソコン用語事典」(2001年8月6日第3版第1刷 株式会社秀和システム発行)の「メタメディア meta media」の項には、「Alan Curtis Kay(アラン・ケイ)の提唱したコンピュータのこと。コンピュータは、メディアの垣根を越えたはじめての存在であるという考えに基づく。コンピュータは複数のメディアを統合し、人間の使い易いかたちで、個人で活用できるようになるという。」との記載がある(乙4)。
エ 「朝日現代用語『知恵蔵』2004」(2004年1月1日 朝日新聞社発行)の「メタメディア[metamedia]」の項には、「超メディア.様々なメディアを統合する超越的な媒体.」との記載がある(乙5)。
オ http://www.jiten.com/dicmi/docs/k34/23195.htm「メタメディア-マルチメディア/インターネット事典」のタイトルの下、「メタメディア/Meta−Media」の見出しで、「音声、テキスト、画像、ビデオなどの既成メディアを統合し、人が活用できるようにするという考え方で、あらゆるメディアを超えたメディアとしてコンピュータが存在するというAlan C. Kayによって提唱された概念です。」との記載がある(乙6)。
カ http://www.big.or.jp/~mio/ga/dic/cdm_1.4/x70/cd35211.html 「MioCity:computing terms reference "terms"」のタイトルの下、「【メタメディア】[metamedia] 」の見出しで、「画像、音声、テキストなど各種のメディアを統合し、活用できるようにしたもの。アラン・ケイ(Alan Kay)により提唱された概念で、『コンピュータがメディアを超えた最初のメディアである』という考え方。」との記載がある(乙7)。
キ http://biography.sophia-it.com/content/%E3%82%A2%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B1%E3%82%A4 「アラン・ケイ(Alan Curtis Kay)とは |略歴・経歴・プロフィール| Smalltalkの開発者」のタイトルの下、「アラン・ケイ」の見出しで、「アラン・ケイとは、米国の科学者である。1940年、マサチューセッツ州スプリングフィールドに生まれた。オブジェクト指向プログラミング言語『Smalltalk』の開発や、コンピューターはメディアを超えたメディアであるという『メタメディア』の概念を提唱したことなどで知られている。」との記載がある(乙8)。
ク http://www.online-fd.com/edunet/DB/024.html「創造・学習・コンピュータ(喜多一」のタイトルの下、「授業の概要」として「◆授業のテーマ)と目的:コンピュータはプログラミングすることで多様な機能を発揮できる万能の機械です。そして、それは様々なメディアを包含するメタメディアであり、創造のための強力なツールとなります。」との記載がある(乙9)。
ケ http://www.socc.sfc.keio.ac.jp/~cyber/work/report/envinf/ws/society.html 第「1章 社会変革」「計算機から思考支援ツールへ」のタイトルの下、「一方ケイは76年、『パーソナル・ダイナミック・メディア』という報告書をまとめる。このなかで彼は、『メタ・メディア』という概念を提唱。コンピュータは言語を超えたメディアになりえる可能性を示唆する。コンピュータは可能性として、既存のメディアをシミュレートでき、さらにそれらを組み合わせたりできるので、メタなメディアであるということである。」(2頁26行〜29行)との記載がある(乙10)。
コ http://agrinfo.narc.affrc.go.jp/fs/cdrom/3syou/306st/t0602.htm「3.6.2 マルチメディア」・「(2)マルチメディアとは」のタイトルの下、「コンピュータをあらゆるメディアの統合体として捉えること。これは抽象的で分かりにくいが、コンピュータはプログラマブルであるために、ソフトウェアとして実現すれば、既存のメディアをすべてメタファーとして表現できるとする考え方である。いわゆるメタメディアあるいはハイパーメディアという表現に近い。」との記載がある(乙11)。
サ http://rblog-biz.japan.cnet.com/takahito/2007/04/post_78e3.html「ブログパブリッシングネットワークとその進化系を考える(2)。 −アート資本主義」のタイトルの下、「■メタメディアとしてのブログ出版プラットフォームの産業的インパクトを考えながら現実的に製品をデザインすること」、「…電子流通やそのファイナンス支援など、『メタメディア』から生まれる様々な産業を事前に想定しておくべきだろう。」との記載がある(乙12)。
シ 1984年8月13日 日経産業新聞、17ページ「パソコン(3)どのように付き合うか−まず入力方法を習得(入門先端技術」)の見出しの下、「コンピューターとは何か−この問いに、ひとことで答えることはできない。…情報を伝達するテレビ、ラジオ、電話、出版などのメディアをまねすることもできる。あるときは電話になったり、本になったり、変身自在である。この点では、スーパーメディアとかメタメディアという名称がふさわしい。コンピューターは他の機械に比べて、この二つの特徴が際立っている。」との記載がある(乙13) 。
ス 1995年12月16日 日本経済新聞 地方経済面(東北B)、24ページ「通産省のソフトウエア育成事業、コムテック、選ばれる。」の見出しの下、「…同社の研究テーマは『エージェントモデルに基づく統合メタメディア環境の構築』で、二年後をめどに一般利用者に分かりやすく、操作しやすいマルチメディアの構築を目指す。」との記載がある(乙14)。
セ 2007年1月25日産経新聞SANKEIWEB 「メタメディアとしての携帯電話」のタイトルの下、「あらゆるメディアを超越し、包含するメディアをメタメディアと言うが、携帯電話はメタメディアの道を突き進んでおり、携帯電話という名称すらふさわしくないくらいだ。携帯電話が日本でメタメディア化したのは、居住空間が狭く、モノを置くスペースが限られ、通勤時間が長い日本の事情が関係している。そのため、海外では日本と同じようには推移していない。」との記載がある(乙15)。
ソ http://www.ntticc.or.jp/Archive/2002/Art_Bit_Collection/Works/index_j.html「art.bit collection 2002年6月21日(金)-8月11日(日)」の展示作品「2.音や映像を扱うプログラミング環境」のタイトルの下、「音や映像を取り込んだり、作りだしたり、再構成するためのソフトウエア環境.ここでのコンピュータは、様々なメディアを結合するメタメディアとして機能します.」の記載がある(乙16)。
(3) メディアの統合化が進められていること
 ところで、近年コンピュータや情報通信分野においては、インターネットや、映像、音声などのメディアの統合化や電子メールや携帯電話の統合化など様々なメディアの統合化が進んでいるところであり、このことは、以下のインターネットの記載からも明らかである。
ア http://www.nec.co.jp/press/ja/0109/1801.html「インターネットから音声まで様々なメディアを統合した付加価値サービスを実現するネットワーク・アプリケーション・サーバの発売について」との記載がある(乙17)。
イ http://www.rikei.co.jp/product/ja/64.html「NORTELのマルチサービススイッチ(MSS)6400シリーズは、多彩なメディアを統合する、次世代マルチメディアネットワークの中核のATMマルチサービススイッチです。」との記載がある(乙18)。
ウ http://www.earnet.co.jp/jp/feature.html「…映像・音声、アニメ機能も含むパワーポイントスライド、その上を指し示すレーザーポインターの位置、電子ホワイトボード、以上の複数メディアを統合し、受信用画面におPCいてリアルタイム・オンデマンド双方で同期化した情報の受信ができます。」との記載がある(乙19)。
エ http://www.okinawa-ct.ac.jp/dept/mi/index.html「…情報処理技術と通信技術の発展と融合のおかげで、情報のディジタル化を通して異なるメディアを統合的に扱うこと、そして、膨大な情報を世界規模で伝達共有することが可能になりました。」との記載がある(乙20)。
オ http://www.t-kougei.ac.jp/i/info/gakubu/mediga.html「このメディアの時代を迎え、メディア画像学科はその核となる情報メディアと画像メディアを統合的に教育・研究するために、これまでの光情報メディア工学科と画像工学科両分野の技術基盤が融合して新たに誕生した新学科です。」との記載がある(乙21)。
カ http://www.nri.co.jp/news/2001/010517.html 「『iPostUCS』はボイスメール、Fax、電子メール、携帯電話等のメッセージメディアを統合する、世界最大のシェアを持つユニファイド・コミュニケーション・ソリューションです。」との記載がある(乙22)。
キ http://www.j-ts.com/「ビデオ・音声(会話)会議システム」のタイトルの下に、「従来のPSTN、ISDNからVoIPまでメディアを統合したキャリアクラスのマルチポイント音声会議システム。」との記載がある(乙23)。
ク http://www.electori.co.jp/amx_ls/amx_02.html「オーディオをはじめ、DVD、ビデオ、衛星放送、ケーブルテレビなど全てのメディアを統合し、ひとつのシステムとして構築できます。」との記載がある(乙24)。
ケ http://plusd.itmedia.co.jp/broadband/0202/21/epstart.html「家電各社らが出資するイーピーは2月21日、デジタル放送(BSデジタル/110度CSデジタル)、セットトップボックスに内蔵されたHDD、インターネット、という3つのメディアを統合した世界初の蓄積型双方向サービス『ep サービス』を、今年5月から段階的に開始すると発表した」との記載がある(乙25)。
コ http://allabout.co.jp/computer/digitalvideo/closeup/CU20060802A/「8月2日、日立製作所から、DVDメディアとHDDメディアを統合した『ハイブリ ッドカム Wooo』を発表しました。そのハイブリッドカムの特徴をお伝えしましょう。」との記載がある(乙26)。
サ http://wp.netscape.com/ja/navigator/v3.0/quicktime.html 「QuickTimeはビデオ、音声、音楽、テキストなどさまざまなメディアを統合し、すでに何千ものウェブ・サイトで用いられています。」との記載がある(乙27)。
シ http://www.jagat.or.jp/story_memo_view.asp?StoryID=5701 「Viewpoint Experience Technology (VET)は、Web上で3DコンテンツやFlash、パノラマ、静止画などの複数のメディアを統合できるツールである。」との記載がある(乙28)。
ス http://www.nifty.com/webapp/digitalword/word/051/05143.htm 「…メディアを統合するQuickTime、さらに第3レベルにはAPI群として、Mac OS 9 実行環境のClassic/ ネイティブ環境のCarbon/ 開発環境のCocoa、最上位にGUIである『Aqua』が位置する。」との記載がある(乙29)。
(4) まとめ
 以上によれば「Meta Media」及び「メタメディア」の語は、アラン・ケイの提唱した、「コンピュータはあらゆるメディアを統合し、メディアを超越したもの」という概念ないし理念を表す用語として、我が国においてコンピュータに関係する分野において広く知られ、「各種メディアを統合し、メディアを超越したもの」程の意味合いで普通に使用されているといえるものである。
 そして、コンピュータを中心とする情報通信分野において、各種情報の扱いを簡便化し、膨大な情報を伝達共有するために、様々なメディアの統合化が進められているところである。
 そうすると、本願商標「Meta Media」を、その指定商品及び指定役務中、コンピュータに関連する分野の商品及び役務、例えば、「電子応用機械器具及びその部品」、「電子出版物」、「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」、「電子計算機の貸与」、「電子計算機用プログラムの提供」等について使用しても、これに接する需要者は、ごく自然に、「コンピュータはあらゆるメディアを統合し、メディアを超越したもの」の概念ないし理念又はその意味合いを認識するというべきであり、本願商標は、自他商品又は役務の識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものといわざるを得ない。
 したがって、本願商標は、その指定商品及び指定役務中、前記のとおり、コンピュータに関連する分野の商品及び役務に使用しても、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標というべきであるから、本願商標が、商標法3条1項6号に該当するとして登録することができないとした審決の認定、判断に誤りはない。
第4 当裁判所の判断
1 請求原因(1)(特許庁における手続の経緯)、(2)(商標の内容)、(3)(審決の内容)の各事実は、いずれも当事者間に争いがない。
2 本願商標の商標法3条1項6号該当性の有無
 原告は、本願商標が、商標法3条1項6号にいう自他識別標識としての機能を果たし得ない商標には当たらないと主張するので、以下検討する。
(1) 本願商標は、「Meta Media」の文字を標準文字で書してなるところ、広辞苑(第5版)によれば、「メタ」【meta】の項には、「〔化〕(ギリシア語で『間に』『後に』『越える』の意のmetaに由来する接頭語)…」と、「メディア」【media】の項には「(mediumの複数形)媒体。手段。特に、マス‐コミュニケーションの媒体。『マス・−』」との記載がそれぞれある(乙1)。
(2) 本願商標の指定商品・指定役務は、前記第3、1、(2)、イ記載のとおりであるところ、判決下線付記のとおり、その中には「電子応用機械器具及びその部品」、「電子出版物」、「電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守」、「電子計算機の貸与」、「電子計算機用プログラムの提供」等のコンピュータに関連する分野が含まれそれに関連する文献、インターネットの記載には以下のとおりのものがある。
ア 「2005−’06年版最新パソコン用語事典 」(平成16年11月1日第16版第1刷発行 発行所株式会社技術評論社)の「メタメディア metamedia」の項には、「Alan Kay氏が提唱した概念。各種メディアを統合したものとして想定された。コンピュータが、メディアを超えた最初のメディアだという考えである。」と記載されている(乙2)。
イ 「超図解パソコン用語事典2002年版」(2001年9月28日初版発行 発行所株式会社エクスメディア)の「メタメディア metamedia」の項には、「Alan Curtis Kay氏が提唱した、『コンピュータはあらゆるメディアを統合したものであり、また代替品になりうる』という概念のこと。」と記載されている(乙3)。
ウ 「最新2002年版標準パソコン用語事典 」(2001年8月6日第3版第1刷 発行所株式会社秀和システム)の「メタメディア metamedia」の項には、「概念」との白抜き文字の記載のもと、「Alan Curtis Kay(アラン・ケイ)の提唱したコンピュータのこと。コンピュータは、メディアの垣根を越えたはじめての存在であるという考えに基づく。コンピュータは複数のメディアを統合し、人間の使い易いかたちで、個人で活用できるようになるという。」と記載されている(乙4)。
エ 「朝日現代用語『知恵蔵』2004」(2004年1月1日発行発行所朝日新聞社)の「メタメディア[metamedia] 」の項には、「超メディア.様々なメディアを統合する超越的な媒体.」と記載されている(乙5)。
オ 「http://www.jiten.com/dicmi/docs/k34/23195.htm」 「メタメディア−マルチメディア/インターネット事典」のタイトルの下、「メタメディア Meta−Media」の見出しで「音声、テキスト、画像、ビデオなどの、既成メディアを統合し、人が活用できるようにするという考え方で、あらゆるメディアを超えたメディアとしてコンピュータが存在するというAlan C. Kay によって提唱された概念です。」と記載されている(乙6)。
カ 「http://www.big.or.jp/~mio/ga/dic/cdm_1.4/x70/cd35211.html」 「MioCity:computing terms reference "terms"」のタイトルの下、「【メタメディア】[ metamedia] 」の見出しで、「画像、音声、テキストなど各種のメディアを統合し、活用できるようにしたもの。アラン・ケイ(Alan Kay)により提唱された概念で、『コンピュータがメディアを超えた最初のメディアである』という考え方。」と記載されている(乙7)。
キ 「http://biography.sophia-it.com/content/%E3%82%A2%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B1%E3%82%A4」 「アラン・ケイ(Alan Curtis Kay)とは|略歴・経歴・プロフィール|Smalltalkの開発者」のタイトルの下、「アラン・ケイ【英】Alan Curtis Kay」の見出しで、「アラン・ケイとは、米国の科学者である。1940年、マサチューセッツ州スプリングフィールドに生まれた。オブジェクト指向プログラミング言語『Smalltalk』の開発や、コンピューターはメディアを超えたメディアであるという『メタメディア』の概念を提唱したことなどで知られている。1968年、理想的なコンピューターコンセプトとしての『Dynabook』構想を発表する。1972年にXerox社のパロアルト研究所に入る。パーソナルコンピューターの原型となる『ALTO』、オブジェクト指向プログラミング言語であるSmalltalkを開発した。…」等と記載されている(乙8)。
ク 「http://www.online-fd.com/edunet/DB/024.html」 「京都大学高等教育研究開発推進センター 大学教育ネットワーク 創造・学習・コンピュータ(喜多一)」のタイトルの下、「授業の概要」として「◆授業のテーマと目的:コンピュータはプログラミングすることで多様な機能を発揮できる万能の機械です。そして、それは様々なメディアを包含するメタメディアであり、創造のための強力なツールとなります。創造活動にとって、数学や科学の知識は重要な素養ですが、コンピューターはそれを理解するための強力な支援ツールでもあります。…」と記載されている(乙9)。
ケ 「http://www.socc.sfc.keio.ac.jp/~cyber/work/report/envinf/ws/society.html」「Social Development」のタイトルの下、「第1章社会変革」「計算機から思考支援ツールへ」として「…一方ケイは76年、『パーソナル・ダイナミック・メディア』という報告書をまとめる。このなかで彼は、『メタ・メディア』という概念を提唱。コンピュータは言語を超えたメディアになりえる可能性を示唆する。コンピュータは可能性として、既存のメディアをシミュレートでき、さらにそれらを組み合わせたりできるので、メタなメディアであるということである。」(2頁26行〜29行)と記載されている(乙10)。
コ 「http://agrinfo.narc.affrc.go.jp/fs/cdrom/3syou/306st/t0602.htm」「3.6.2 マルチメディア」のタイトルの下、「(2)マルチメディアとは」として、「・コンピュータをあらゆるメディアの統合体として捉えること。これは抽象的で分かりにくいが、コンピュータはプログラマブルであるために、ソフトウェアとして実現すれば、既存のメディアをすべてメタファーとして表現できるとする考え方である。いわゆるメタメディアあるいはハイパーメディアという表現に近い。」と記載されている(乙11)。
サ 「http://rblog-biz.japan.cnet.com/takahito/2007/04/post_78e3.html」「ブログパブリッシングネットワークとその進化系を考える(2)。−アート資本主義」のタイトルの下、「■メタメディアとしてのブログ出版プラットフォームの産業的インパクトを考えながら現実的に製品をデザインすること」、「ブログ出版取次業と言う以上、媒体開発や広告開発以外に、電子流通やそのファイナンス支援など、『メタメディア』から生まれる様々な産業を事前に想定しておくべきだろう。」「■メタメディア生成の起源を集中と強み、社会変革の視点から見直してみる」「■ブログ出版者向けのメタメディアとは?新しいタイプの個人ポータルと言えるでしょう。」等と記載されている(乙12)。
シ 1984年8月13日 日経産業新聞の17ページには、「パソコン(3)どのように付き合うか−まず入力方法を習得(入門先端技術)」の見出しの下「コンピューターとは何か−この問いに、ひとことで答えることは、できない。…情報を伝達するテレビ、ラジオ、電話、出版などのメディアをまねすることもできる。あるときは電話になったり、本になったり、変身自在である。この点では、スーパーメディアとかメタメディアという名称がふさわしい。コンピューターは他の機械に比べて、この二つの特徴が際立っている。」と記載されている(乙13、日経テレコン21、https://telecom21.nikkei.co.jp/nt21からの記事検索結果。)。
ス 1995年12月16日 日本経済新聞 地方経済面(東北B)、24ページには、「通産省のソフトウエア育成事業、コムテック、選ばれる。」の見出しの下、「…同社の研究テーマは『エージェントモデルに基づく統合メタメディア環境の構築』で、二年後をめどに一般利用者に分かりやすく、操作しやすいマルチメディアの構築を目指す。」と記載されている(乙14、日経テレコン21、https://telecom21.nikkei.co.jp/nt21からの記事検索結果。)。
セ 2007年1月25日産経新聞SANKEIWEB(産経新聞ウエブサイト、http://www.sankei.co.jp)には、「メタメディアとしての携帯電話」のタイトルの下、「あらゆるメディアを超越し、包含するメディアをメタメディアと言うが、携帯電話はメタメディアの道を突き進んでおり、携帯電話という名称すらふさわしくないくらいだ。携帯電話が日本でメタメディア化したのは、居住空間が狭く、モノを置くスペースが限られ、通勤時間が長い日本の事情が関係している。そのため、海外では日本と同じようには推移していない。」と記載されている(乙15)。
ソ 「http://www.ntticc.or.jp/Archive/2002/Art_Bit_Collection/Works/index_j.html」「art .bit collection 2002年6月21日(金)−8月11日(日)ギャラリーA、B」の展示作品「2.音や映像を扱うプログラミング環境」のタイトルの下、「音や映像を取り込んだり、作りだしたり、再構成するためのソフトウエア環境.ここでのコンピュータは、様々なメディアを結合するメタメディアとして機能します.」と記載されている(乙16)。
(3) 以上の(1)(2)の各事実を基に判断すると、本願商標は、ギリシャ語で「間に」「後に」「越える」等を意味するmetaに由来する接頭語「Meta」と、「媒体、手段、特にマス−コミュニケーションの媒体」を意味する「Media」の語を、その間に1文字分程度の間隔を空けて一連表記した商標であり、その称呼は「メタメディア」と認められる。そして、これを一語とし、あるいは一連表記した「metamedia」及び「メタメディア」ないし「メタ・メディア」の語は、1976 年(昭和51年)ころ、米国の科学者でありオブジェクト指向プログラミング言語「Smalltalk」を開発したことで知られるアラン・ケイが、「メタ・メディア」と称し、コンピュータがメディアを統合し、あるいはメディアを超えた最初のメディアであると提唱したことによって、そのような概念を指すものとしてコンピュータ関連分野において広く知られるようになった。そして、その後もコンピュータ関連分野においては上記概念あるいはコンピュータそのものを指す語として定着しているほか、場合によりメディアを統合しこれを超えるものを示す概念(例えば上記(2)サ〔乙12〕、セ〔乙15〕など)としても、コンピュータ関連分野及び関連するメディアの分野における需要者に対し審決時までに周知であったと認められる。そしてその理は、「M」の各文字を大文字とし、「Meta」と「Media」との間に間隔を置いた本願商標についても同様であるというべきである。
 そうすると本願商標は、本件の指定商品・指定役務中のコンピュータに関連する分野の商品又は役務(前記第3、1、(2)の判決下線付記部分)について使用されるときには、需要者が何人かの業務に係る商品ないし役務であると認識することができないというべきであるから、自他識別標識としての機能を果たし得ないというほかなく、商標法3条1項6号に該当する。
(4)ア 原告は、「Meta Media 」の語は、指定商品中の特定の商品及び指定役務中の特定の役務について、具体的品質・機能等及び特定の役務の具体的質(内容)を表示するためのものとして使用されている事実はないし、また慣用商標的に、コンピュータの同義語として普通に使用されているという事実も見出すことができないし、審決が需要者において本願商標は概念ないし理念の実現を目指す商品又は役務であることを表したと認識するにとどまるとした点についても、それが具体的にいかなる商品又は役務を指すのか明らかではないと主張する。
 しかし、原告が主張するように商品、役務の具体的な品質等を表すものではなくとも、結局のところ本願商標が自他識別標識としての機能を果たし得ないものであることに関しては上記(3)で説示したとおりであり、原告の主張は採用することができない。
イ また原告は、「メタメディア」の語に関し、現在においてはコンピュータのみではなく、携帯電話もメタメディア化しているとするほか、テレビの世界においてもインタラクティブ(双方向)なメディアとしてメタメディアに進化したとの見方もあるとしてそれに沿う証拠を提出し(甲6)、「Meta Media」ないし「メタメディア」の語はコンピュータのみを指すものではないとも主張する。
 しかし、甲6のインターネットの記載(http://www.tatsuru.com/columns/simple/26.html)をみても、「このときテレビは『情報を構成し、発信し、消費に供する』メディアの段階から、『情報がどのようにして構成され、発信され、商品化されるのかについての情報』を伝えるメタ・メディアの段階に『進化』したのである。」(2頁27行〜28行)とされているとおり、「メタ・メディア」の語がメディアを超える概念として記載されているに止まり、「Meta Media」の語が自他識別機能を持つとの原告の主張を裏付けるものとは言えないというべきである。加えて、上記(3)で認定したとおり、現在において「Meta Media」ないし「メタメディア」の語がコンピュータに限らずメディアを統合しこれを超えるものを示す概念等を指すものとして用いられているとしても、結局のところそれも抽象的な概念であって、本願商標が自他識別機能を有するとする根拠とはなりえないものである。
 また、上記(2)アないしウ記載のとおり、コンピュータ関連の用語事典等においては、「メタメディア」「metamedia」 「meta media」の語は、コンピュータそのもの、あるいはコンピュータがメディアを統合しあるいはこれを超えるものとする概念であると記載されていることからすれば、本願商標の指定商品、指定役務に含まれるコンピュータ関連分野においては、そのような概念として需用者に認識されることは上記のとおりであって、原告の上記主張は採用することができない。
ウ さらに原告は、米国において「METAMEDIA」 の商標が「録音(録画)済みのカセットテープ・・・双方向のマルチメディア・音楽を搭載した電子計算機用ソフトウエア又はダウンロード可能な電子計算機用ソフトウエア、音楽とマルチメディアを合体する双方向の電子計算機、オンラインを通じてダウンロード可能な音楽とマルチメディアを合体する双方向の電子計算機用ソフトウエア」を指定商品及び(又は)役務として登録されており(甲7)、米国の需要者はわが国以上に「MetaMedia」の語に慣れ親しんでいる一方、英語が公用語でもない我が国では自他識別機能がないとする理由はないとも主張する。
 しかし、米国における商標の登録状況につきわが国において直接これを参酌すべきとする根拠はないし、本願商標につき自他識別機能がないとする判断については上記()のとおりである。原告の上記主張は採用することができない。
エ 原告は、本願商標の指定商品又は指定役務について「メタメディア」の語が取引上、相当数の者により普通に使用されているとの事実、あるいは特定の商品等を認識させる事実がないとの取引の実情を考慮すれば、本願商標は自他識別標識としての機能を果たしうるとも主張する。
 しかし、これまで「メタメディア」の語が本願商標の指定商品又は指定役務について取引上使用されてきた事実、あるは特定の商品等を認識させるとの事実がないとしても、それが「Meta Media」の語について自他識別標識としての機能を果たし得ないとする上記(3)の認定を左右するものではなく、原告の主張は採用できない。
3 結語
 以上のとおり、原告主張の取消事由は理由がなく、本願商標が商標法3条1項6号に該当するとした審決の認定判断に誤りはない。
 よって、原告の請求は理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第2部
 裁判長裁判官 中野哲弘
 裁判官 今井弘晃
 裁判官 田中孝一
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