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【事件名】商標“REGENERATIVE”侵害事件(2) 【年月日】平成19年12月26日 知財高裁 平成19年(行ケ)第10252号 審決取消請求事件 (平成19年11月28日 口頭弁論終結) 判決 原告 ボェールリント ゲゼルシャフト フューア コスメティッシェ エアツォイクニッセ エムベーハー 訴訟代理人弁理士 加藤朝道 同 青木充 被告 ピアス株式会社 訴訟代理人弁理士 藤本昇 同 薬丸誠一 同 野村慎一 同 白井里央子 主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。 事実及び理由 第1 請求 特許庁が取消2006−30563号事件について平成19年2月27日にした審決を取り消す。 第2 当事者間に争いがない事実 1 特許庁における手続の経緯 被告は、「REGENERATIVE」の文字と「リゼネレィティブ」の文字を2段に書してなり、指定商品を第4類「せっけん類、歯みがき、化粧品、香料類」とする商標登録第2137690号商標(昭和61年11月26日商標登録出願、平成元年5月30日設定登録、以下「本件商標」といい、上記指定商品を「本件指定商品」という。)の商標権者である。 原告は、平成18年5月22日、被告を被請求人として、商標法50条の規定に基づき、本件商標の商標登録を取り消すことについて審判を請求した。特許庁は、同請求を取消2006−30563号事件として審理した結果、平成19年2月27日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をした。 2 審決の理由 審決は、別紙審決のとおり、本件商標は、審判請求の予告登録前3年以内に、日本国内において、通常使用権者により、本件指定商品中の「化粧品」に属する「化粧水、美容液及びパック」について使用されていたとして、本件商標の登録は、商標法50条1項の規定により取り消すことができないとした。 第3 原告主張の審決取消事由 審決は、使用標章についての認定判断を誤り(取消事由1及び2)、本件商標の登録は、同項の規定により取り消すことができないとしたものであって、違法として取り消されるべきである。 1 取消事由1(「REGENERATIVE」についての認定判断の誤り) (1) 審決は、原告が、本件商標の通常使用権者が化粧水の外箱等に付した、「リゼネレイティブ」、「REGENERATIVE」との語について、同商品の効能又は用途を表すために付されている記述的表示にすぎないことを主張したのに対し、「『REGENERATIVE』の文字は、『再生させる』等を意味する英単語であることが認められる・・・。しかしながら、大修館発行『ジーニアス英語辞典第4版』によれば、『regenerative』及び『regenerate』の語は、『中学学習語』・『高校学習語』・『大学生・社会人に必要な語』」のいずれのカテゴリーにも含まれておらず」(7頁第4段落)とした上で、原告の主張を排斥したが、誤りである。 (2) 「REGENERATIVE」の語の使用が、商標の使用に該当するかは、一部の学習辞書において、「regenerative」という単語の学習の重要性が低いことをもって、決められるものではない。 「再び」の意味の接頭辞である「re」で始まる語は、日本語としても、少なからず存在して、広く用いられており、広辞苑において、リアクション(reaction)、リサイクル(recycle)、リセット(reset)、リストラクチュアリング(restructuring)、リフォーム(reform)といった語が収録されている。 また、「発生させる」や「生み出す」という意味の「generate」も広く知られており、審決が引用する辞典においても、「大学生・社会人に必要な語」のカテゴリーに含まれるとされている。 さらに、「ive」で終わる語も、日本語として少なからず存在し、広辞苑において、代表的なものだけでも、アクティブ、クリエーティブ、コンサバティブ、ネガティブといった語が収録されている。 他方、「REGENERATIVE」、「リジェネレイティブ」の語は、化粧品の品質、効能、用途等を表すものとして、化粧品需要者の間で慣用の語であり、インターネットの検索結果に照らしても、「リジェネレイティブ・フェイシャル」などというように、後続する化粧品の用途・効能を示す形容詞の意味合いで、広く使用されている。そして、極めて限定的な「リジェネレイティブ」と「ローション」、「エッセンス」、「マスク」及び「化粧品」という組合せを検索しただけでも、それらの用例が頻出することから、「REGENERATIVE」の語は、取引者、需要者において普通に用いられているということができる。 そうすると、本件商標の指定商品の取引者、需要者の語学水準を考慮すれば、「regenerative」について、「再び」の意味の「re」と「generate」の複合語の形容詞形であることを容易に理解し、「REGENERATIVE LOTION」、「リゼネレイティブローション」といった表示に接した取引者、需要者は、同書同大で後続する「LOTION(ローション)」などの商品名称そのものとの関係からも、「REGENERATIVE」が、容易にその商品の品質、効能、用途である、肌や歯等を「再生させる」や「回復させる」を指す表示であると認識する。 2 取消事由2(使用態様についての認定判断の誤り) (1) 審決は、原告が、本件商標の通常使用権者が化粧水の外箱等に付した、「リゼネレイティブ」、「REGENERATIVE」との語について、その使用態様を挙げて、同商品の効能又は用途を表すために付されている記述的表示にすぎないことを主張したのに対し、「商品の容器や包装箱等に、代表的出所標識を上段に表記し、その下段に本件商品と同様に個別商標と商品名等を表示することは、化粧品等を取り扱う業界においても少なからず用いられる表現手法というべきである」(7頁第4段落)として、原告の主張を排斥したが、誤りである。 (2) 商品の容器や包装箱等においては、代表的出所標識を上段に表記し、下段に記述的表示を含んだ商品名を表示することが、主流というべき表現手法である。 そして、本件商標の通常使用権者が化粧水の外箱等に付した「REGENERATIVE」、「リゼネレイティブ」の使用態様(甲52)は、上記の表現手法に即したものであり、「QURAS」という出所表示とは別に、いずれも、「ローション」、「LOTION」、「エッセンス」、「ESSENCE」、「マッサージ&マスク」、「MASSAGE&MASK」といった商品の品質(内容物)、形状、用途等の記載と同書同大の表示を伴った態様で用いられ、形容詞としてのみ機能し、取引需要者からもそのように認識される。 したがって、「REGENERATIVE」、「リゼネレイティブ」は、単に、同社の販売に係る化粧水、美容液、パックが、どのような効能又は用途をもっているかを表すために付されている記述的表示にすぎず、同表示をもって、特定の出所が認識されることはなく、信用が蓄積されることはあり得ない。審判段階で被告が提出したパンフレット(甲52)では、「リゼネレイティブ」と表示した化粧水、美容液、パックの3製品をまとめて「REGENERETIVE STEP」と紹介していて、これによっても、肌や歯等を「再生させる」や「回復させる」ステップに用いる製品としてのみ認識されるものである。 また、審判段階で被告が提出した他の証拠(甲53の1ないし3、甲63の1、2、甲64の1、2)においても、外箱の「リゼネレイティブ」、「REGENERATIVE」が、商品の品質(内容物)、形状、用途等を示す同書同大の表示を必ず伴っていることからも明らかなとおり、形容詞としてのみ機能し、取引需要者からもそのように認識される。 したがって、「REGENERATIVE」、「リゼネレイティブ」の文字は、取引者、需要者が「再生する」との意味を容易に認識できる単語であるだけでなく、その使用態様からも、商品の品質、効能、用途等を指す単語として機能して、取引者、需要者に認識されるものであり、本件商標と社会通念上同一の商標が、出所識別機能を果たし得る態様で使用されている事実は認められない。 (3) 商標法50条は信用が化体しておらず、商標選択の余地を無用に狭めるものとしてしか機能しない商標登録を取消請求できることを規定していて、その趣旨及び商標登録の無効審判の除斥期間の規定(商標法47条1項)の規定により、この種の登録商標を無効とすることができないことからも、実質的に不使用状態が継続し、信用の全く化体していない、あるいは、指定商品との関係上、信用が化体する余地のない本件商標を存続させる必要性はない。 また、原告商品では、「QURAS」以外に、出所を想起させる標章は見当たらず、「REGENERATIVE」の語の使用態様は、取引者、需要者からは「商標」とは認識されないものであって、「REGENERATIVE」は、商標法26条1項2号の「商標権の効力が及ばない商標」に該当し、特定の出所が想起されるものではなく、信用自体が化体しないので、商標として使用されたことにならない。 第4 被告の反論 審決の認定判断に誤りはなく、原告主張の取消事由はいずれも理由がない。 1 取消事由1(「REGENERATIVE」についての認定判断の誤り)に対して (1) 原告は、「regenerative」等の語の使用態様が「商標の使用」に該当するか否かは、一部の学習辞書において「regenerative」という単語の学習上の重要性が低いことをもって機械的に決せられるものではない旨主張するが、これは、審決の理由の一部のみを引用して反論しているものであり、失当である。 審決は、「regenerative」及び「regenerate」という語は、一般的及び日常的な英単語としては認識されていないこと、本件商品との関係においてその品質、効能等を具体的に表すような格別の意味合いを認めることができないこと、さらには、この種業界において商品の品質等を表示するものとして普通に使用されていると認められないこと等を、総合的に判断したものである。 (2) 原告は、「REGENERATIVE」の文字を分断して、「re」で始まる語は日本語として広く用いられているとし、また、「発生させる」や「生み出す」といった意味の「generate」も広く知られ、「ive」の語も広く用いられていると主張するが、「REGENERATIVE」の一連の文字を分断して、広く用いられているとか、広く知られているとか主張しても、全く無意味である。 審決が認定したのは、「REGENERATIVE」の文字が本件商標の指定商品との関係において商品の品質等を表す格別な意味合いを有するか否かについてであり、原告の上記主張は商標法上の主張ではなく、単なる英単語としての文字分析である。 そして、日本人の英語力やこの種商品の取引者、需要者の英語力をもって、「REGENERATIVE」という文字から、化粧品の品質・効能・用途等を示す語として理解する者はほとんどないものと考えられる。 (3) 原告は、「REGENERATIVE」、「リジェネレイティブ」の語が、化粧品の品質、効能、用途等を表すものとして化粧品需要者の間で慣用の語として広く使用されている旨主張する。 しかし、原告がその根拠として挙げる記載は、インターネットの検索結果による、ほとんどが重複した記載で、「REGENERATIVE」が化粧品との関係で記載されているのは、1件のみであり、現実に使用されている事実も全く不明である。 また、原告の主張する日本語の片仮名文字は全て「リジェネレイティブ」であるが、本件商標の片仮名文字は「リゼネレイティブ」であって決して同一ではなく、仮に、「リジェネレイティブ」が原告主張のような「再生」の意味があったとしても、本件商標は「リゼネレイティブ」であってこの発音から「再生」の意味は直接的には読みとれない。 そして、原告は、「REGENERATIVE」が使用されている記載において、商品の品質や効能、用途等との関係について全く具体的な主張をせず、「REGENERATIVE」が、化粧品との関係でどのような品質・効能・用途等を意味するのかは全く不明である。 2 取消事由2(使用態様についての認定判断の誤り)に対して (1) 原告は、審決の「商品の容器や包装箱等に、代表的出所標識を上段に表記し、その下段に個別商標と商品名等を表示することは、化粧品等を取り扱う業界においても少なからず用いられる表現方法というべきである」との認定を争うが、原告の主張は、事実に反し、また、審決の取消事由とどのような関係を有するか不明である。 (2) 原告が提出した証拠(甲13)においても、上段に代表的出所標識を、その下段に個別商標を表記しているものや、本件と同様に、上段に代表的出所標識を、その下段に個別商標を、さらにその下段に商品名を表記しているものがあって、代表的出所標識を上段に、その下段に個別商標と商品名等を表示する表現が化粧品業界で用いられていることが認められ、これに反する原告の主張は理由がない。 本件商標の商品の容器や商品の包装箱における使用態様は、ハウスマークとしての「QURAS」又は「キュラス」の文字を表記し、その下段に商品の識別標識としての個別商標である「REGENERATIVE」又は「リゼネレイティブローション」及び(化粧水)等の商品文字を3段表記してなるのであるが、「ローション」が化粧水を意味する商品名表示であることは化粧品業界において明白であるから、「REGENERATIVE」、「リゼネレイティブ」が個別商標として機能する表示態様であることは明らかである。 そして、本件商標の「REGENERATIVE」、「リゼネレイティブ」という文字は、化粧品の内容を直接表すものではなく、直接化粧品の品質等を意味するものではないし、仮に、原告主張のようにこの文字から「再生させる」、「回復させる」との意味を暗示することがあったとしても、直接的表示ではなく、間接的表示である。 第5 当裁判所の判断 1 甲51ないし60及び弁論の全趣旨によれば、本件商標の取消審判請求の予告登録前3年以内に、本件商標の通常使用権者であるキュラス株式会社は、商品の容器に、「QURAS」の文字を大きく表し、その下部に、「REGENERATIVE LOTION」の文字を付し、その商品の外箱に、「キュラス」、「リゼネレイティブローション」、「(化粧水)」との文字を3段に付したこと、商品の容器に、「QURAS」の文字を大きく表し、その下部に、「REGENERATIVE ESSENCE」の文字を付し、その商品の外箱に、「キュラス」、「リゼネレイティブエッセンス」、「(美容液)」の文字を3段に付したこと、商品の容器に、「QURAS」の文字を大きく表し、その下部に、「REGENERATIVE MASSAGE&MASK」の文字を付し、その商品の外箱に、「キュラス」、「リゼネレイティブマッサージ&マスク」、「(パック)」の文字を3段に付したことが認められる(以下、これらの標章をまとめて「本件使用標章」ということがある。)。 2 本件使用標章のうち、「REGENERATIVE」の語は、「再生させる、改心させる、改新の、改造する」などの意味を有する英語の形容詞であり(甲2)、「リゼネレイティブ」は、その日本語表記ともいえる。しかし、「REGENERATIVE」の語自体、日本人にとり平易な英単語といえないことや、同語が本件指定商品の分野において一般的に品質等を示す形容詞として使用されているとは認められないことなど、後記3に記載した各事情に照らせば、本件指定商品の取引者、需要者において、本件使用標章に接したとき、その「REGENERATIVE」、「リゼネレイティブ」について、商品の品質等を表示する標章であると認識するものであるとはいえず、本件使用標章に接した取引者、需要者は、本件使用標章のうち、「QURAS」、「キュラス」の部分だけでなく、「REGENERATIVE」、「リゼネレイティブ」の部分についても、自他商品の識別標識として認識するものであると認められる。 そして、本件使用標章のうち、「REGENERATIVE」、「リゼネレイティブ」は、本件商標と社会通念上同一といえるから、本件商標と社会通念上同一の商標が、本件指定商品中の「化粧品」に属する「化粧水、美容液及びパック」に使用されていたと認められる。 3 取消事由1(「REGENERATIVE」についての認定判断の誤り)及び取消事由2(使用態様についての認定判断の誤り)について (1) 原告は、取消事由1及び2において、審決の認定判断の誤りを主張し、本件標章のうち、「REGENERATIVE」、「リゼネレイティブ」の文字は、取引者、需要者が「再生する」との意味を容易に認識でき、その使用態様からも、商品の品質、効能、用途等を指す単語として機能して、取引者、需要者に認識され、それらが出所識別機能を果たし得る態様で使用されていない旨主張するので、検討する。 (2) 原告は、「REGENERATIVE」の語の使用が、商標の使用に該当するかは、一部の学習辞書において、「regenerative」という単語の学習の重要性が低いことをもって決められるものではなく、「再び」の意味の接頭辞である「re」で始まる語や、「ive」で終わる語は、日本語として、広く用いられていて、「発生させる」や「生み出す」という意味の「generate」も広く知られていること、「REGENERATIVE」、「リジェネレイティブ」の語は、化粧品の品質、効能、用途等を表すものとして、化粧品需要者の間で慣用の語であることなどから、本件の標章に接した取引者、需要者は、同書同大で後続する「LOTION(ローション)」などの商品名称そのものとの関係からも、「REGENERATIVE」が、容易にその諸品の品質、効能、用途である、肌や歯等を「再生させる」や「回復させる」を指す表示であると認識する旨主張する。 確かに、「generate」は、「生ずる、起こす、発生させる、<新個体を>生む」(甲9)などの意味を有する英単語であり、大修館書店発行ジーニアス英和辞典(甲10)において大学生・社会人に必要な語とされ、また、英語において、「re」は「再び」という意味の接頭語であり、「ive」で終わる形容詞があり、さらに、日本語において、英語に由来する、リアクション、リサイクルなどの「リ〜」という単語が知られ、また、アクティブ、クリエーティブなどの「〜イブ」という形容詞が知られている。そして、インターネットにおける検索によれば、「バイオレジェネレイティブジェルクリーム」、「BIO−REGENERATIVE CREAM」、「バイオリジェネレイティブコンパウンド」、「リジェネレイティブフェイシャル」などの用例がある(甲12の1ないし8)。 しかし、インターネットにおいて検索をした結果、「REGENERATIVE」、「リ(レ)ジェネレイティブ」を形容詞として使用していることがうかがえる商品の例が存在したとしても、原告提出の証拠によっても、そのような商品の数が多数あるとまでは認められず、また、上記商品の具体的な販売額や広告の規模等は一切不明であることなどから、本件使用標章のうちの「REGENERATIVE」、「リゼネレイティブ」を形容詞として使用することが本件指定商品の取引者、需要者にとり、一般的であると認めることはできない。 そして、原告は、「REGENERATIVE」という英単語を分析するのであるが、「REGENERATIVE」の英単語自体、日本人にとり平易な英単語とは認められず(甲2、7。英単語について、重要度の高い順にAランクからDランクが付され、「REGENERATIVE」はDランクとされている。)、また、本件指定商品の取引者、需要者において、語尾が「ive」や「イブ」の語が必ず形容詞として受け止められるとまでは認められないし、「generate」という英単語が比較的一般的な英単語であったとしても、本件指定商品の分野において、「generate」の関連語が使用されたとき、「generate」の部分について、例えば、原告が主張するような「発生させる」などの意味のものとして取引者、需要者が直ちに理解し得るものであるとまでは到底認められない。したがって、問題となる単語の後に商品内容を説明する単語が続いていることを考慮しても、本件使用標章のうちの「REGENERATIVE」、「リゼネレイティブ」という語に接した取引者、需要者が、その語の構成から、それを、再生させるとか、回復させるという、商品の性質等を示す形容詞であると理解するとは認められない。 (3) 原告は、商品の容器や包装箱等においては、代表的出所標識を上段に表記し、下段に記述的表示を含んだ商品名を表示することが、主流というべき表現手法であり、本件商標の使用態様は、「QURAS」という出所表示とは別に、いずれも、「ローション」、「LOTION」、「エッセンス」、「ESSENCE」、「マッサージ&マスク」、「MASSAGE&MASK」といった商品の品質(内容物)、形状、用途等の記載と同書同大の表示を伴った態様で用いられ、形容詞としてのみ機能し、取引需要者からもそのように認識される旨主張する。 しかし、本件指定商品の分野において、代表的出所標識を上段に表記し、下段に記述的表示を含んだ商品名を表示する表現手法があったとしても、代表的出所標識の下段にさらに出所標識を示す例もあり(甲13の10頁等)、出所標識の下段に記載された表示が、必ず記述的表示であるとの慣行等は認められず、出所標識の下段に記載された表示を出所標識と認識するか、商品の内容等を示す記述と認識するかは、表示の内容等によるものと認められる。 ここで、本件使用標章のうち、「REGENERATIVE」、「リゼネレイティブ」は、出所標識であることが明らかである「QURAS」、「キュラス」との表記の下段に記載されていること、「〜TIVE」、「〜ティブ」という語は形容詞として知られているものも多いこと、「REGENERATIVE」、「リゼネレイティブ」に続き、同書同大で、商品の内容を示すといえる「ローション」、「LOTION」等の文字が記載されていることなど、それが形容詞として使用されているのではないかと推測させる諸事情がないわけではない。 しかし、これらの事情等を考慮しても、なお、上記で検討したように、「REGENERATIVE」、「リゼネレイティブ」を形容詞として使用することが本件指定商品の取引者、需要者にとり、一般的であると認められず、また、「REGENERATIVE」、「リゼネレイティブ」という単語に接した取引者、需要者が、その語の構成から、それを、再生させるとか、回復させるという、商品の性質等を示す形容詞であると理解するとは認められないことからすると、本件使用標章のうち、「REGENERATIVE」、「リゼネレイティブ」の部分は、出所識別機能のある商標として使用されていると認めることが相当である。なお、原告は、本件使用標章が使用された商品のパンフレットにおいて、「リゼネレイティブ」と表示した化粧水、美容液、パックの3製品をまとめて「REGENERETIVE STEP」と紹介していることなどもいうが、これは商品に付されたものではないし、このような表記が、原告が主張する、肌や歯等を「再生させる」や「回復させる」ステップという意味で一般的に用いられているとも認められず、パンフレットの記載は、上記説示を左右するものではない。 また、原告主張中には、商標法50条の立法趣旨や商標登録の無効審判の除斥期間の規定(商標法47条1項)との関係、「REGENERATIVE」が、商標法26条1項2号の「商標権の効力が及ばない商標」に該当することを主張する部分もあるが、いずれも、本件使用標章中の「REGENERATIVE」、「リゼネレイティブ」について、記述的表示であることを前提とするもので、採用できない。 4 以上によれば、原告主張の取消事由はいずれも採用できず、原告の請求を棄却することとする。 知的財産高等裁判所第1部 裁判長裁判官 塚原朋一 裁判官 宍戸充 裁判官 柴田義明 |
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