判例全文 line
line
【事件名】工業製品設計図の“毀棄”事件
【年月日】平成19年12月12日
 東京地裁 平成19年(ワ)第17959号 損害賠償請求事件
 (口頭弁論終結日 平成19年10月24日)

判決
原告 株式会社イー・ピー・ルーム
被告 住友石炭鉱業株式会社
同訴訟代理人弁護士 冨永敏文
同 尾原央典


主文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
 被告は、原告に対し、金10万円及び平成19年7月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 本件は、原告が、自ら作成した別紙図面目録記載の各図面(以下「本件図面」と総称する。)を被告に交付したところ、被告が本件図面を毀棄したが、被告の上記行為は、本件図面について原告が有する著作権を侵害する不法行為を構成するとして、被告に対し、民法709条、著作権法114条に基づき、10万円の損害金(及びこれに対する訴状送達の日の翌日から民法所定年5分の割合による遅延損害金)の支払を求めている事案である。
1 原告の主張
(1) 原告は、放電燒結装置に関する特許権を有しており、同特許発明を利用した放電燒結機の製造、販売をしている。
(2) 原告は、平成6年9月、原告が設計したSPS−S502放電プラズマ燒結機を発注するか否かの被告の検討のため、被告に対し本件図面の写しを交付した。その後、被告から、図面の修正、加筆等が必要であるとして、本件図面の原紙の交付を要請されたため、原告としては、本件図面の原紙は返却されるものと信じて、本件図面の原紙を被告に交付したところ、被告は、これを毀棄してしまった。
 本件図面は著作物であり、原告は、本件図面についての著作権を有しているから、被告の上記毀棄行為は、原告の本件図面についての著作権を侵害し、著作権侵害の不法行為を構成する。
(3) 被告は、上記著作権侵害行為により、SPS−510L住石放電プラズマ燒結装置を製造、販売して、10万円以上の利益を得たから、原告は、著作権法114条により、被告に対して、10万円の損害賠償をする義務がある。
2 被告の主張
(1) 本案前の答弁
 本件訴訟の訴訟物は、本訴原告が提訴した東京地裁平成18年(ワ)第22355号〔本訴〕、同第26612号〔反訴〕事件訴訟(控訴審・知財高裁平成19年(ネ)第10015号事件。以下「先行訴訟」という。)の訴訟物の1つと同一であるから、本件訴訟の提起は、民事訴訟法142条(重複する訴えの提起の禁止)に反し許されず、原告の訴えは却下されるべきである。
(2) 本案の答弁
 原告の主張は争う。
 本件図面に著作物性は認められない。
第3 当裁判所の判断
1 まず、本案前の答弁について判断するに、本件記録(裁判所書記官塚田賢司作成の「平成19年(ネ)第10015号事件について」と題する書面)によれば、先行訴訟は、本訴口頭弁論終結日前の平成19年9月14日に確定したことが認められ、したがって、その余の点について判断するまでもなく、本件訴訟は、民事訴訟法142条に反しない。
2 そこで、原告の本訴請求の当否について判断するに、本件において、原告が著作権侵害と主張する行為は、本件図面の毀棄行為である(原告は、本訴において、上記毀棄行為に関し、その他の法益の侵害を主張するものではない。)ところ、仮に本件図面に著作物性が認められたとしても、著作物が固定された有形物である本件図面の毀棄行為は、その著作物についての著作権を侵害することにはならないから、原告の主張はそれ自体失当である。
 したがって、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第29部
 裁判長裁判官 清水節
 裁判官 佐野信
 裁判官 國分隆文


図面目録
 番号1ないし51の別添図面(甲12の1〜51) 略
line
 
日本ユニ著作権センター
http://jucc.sakura.ne.jp/