裁判の記録 line
line
2001年
(平成13年)
[7月〜12月]
line

 
line
7月2日 ゲームソフト「宇宙戦艦ヤマト」事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 映画の著作物である『宇宙戦艦ヤマト』等の各作品について著作者だと主張する原告が、同作品のゲームソフトを共同して製作・販売した東北新社、バンダイ、バンダイビジュアルの3社の行為を、著作者人格権(同一性保持権、氏名表示権)侵害だと訴えた。
 地裁は原告の請求を棄却した。その理由は、原告が破産宣告された時期に原告と東北新社とが交わした著作権譲渡契約に基づき、著作物の利用に関する一切の権利が譲渡され、通常の利用行為に関する限り「著作者人格権を行使しない」と約束したと解するのが合理的だとの判断だった。また、人格権侵害の特段の事情立証もないことも併せて指摘された。
判例全文
line
7月5日 大原麗子さんの名誉毀損事件(2)
   東京高裁/判決・控訴棄却(確定)
 女優大原麗子さんの私生活を取りあげた「女性自身」の記事をめぐって、大原さんと光文社との間で争われていた訴訟の二審判決で、東京高裁は500万円の支払いを命じた一審東京地裁の判決を支持、同社の控訴を棄却した。
 鬼頭季郎裁判長は「人格権の重要性に対する国民の認識が高まり、プライバシー侵害への補償要求も強まっている」と指摘したうえで、「虚偽報道や誤報記事の被害者に対する補償措置を多少強化しても、国民の知る権利を脅かす危険性は少ない」と述べた。さらに「慰謝料額は1000万円を下回るものではない」と言及したが、大原さん側が一審判決の賠償額に不服を主張しなかったため、判決を変更しなかった。
判例全文
line
7月6日 「ポロ」の商標登録事件A(3)
   最高裁(二小)/判決・請求棄却
 米国の人気ブランド「ポロ」を名称の一部に取り込んだ「パームスプリングスポロクラブ」との名称を使った衣類などの商標登録が認められるかどうかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁は商標登録を認めた東京高裁判決を破棄し、衣料品会社「ヘブンコーポレーション」(東京都)側の請求を棄却した。
 河合伸一裁判長は「ポロの商標は衣類の商品を示すものとして周知著名性が高い」と指摘。「混同を生じる恐れがある」と述べた。
判例全文
line
7月12日 VシネマのBGM無断使用事件(2)
   東京高裁/判決・取消
 日本音楽著作権協会(以下JASRACという)は、作曲家でもある音楽プロデューサーを控訴人補助参加人として加え、作曲家が背景音楽を担当したビデオの制作者である日本映像鰍複製許諾料が未払いだと訴えた裁判について控訴した。原判決では、該当する楽曲がJASRACの著作権登録原簿に未登録だったことからJASRACへの著作権移転が認められず、請求棄却とされていた。
 高裁は事実認定においては一審判断を踏襲しつつ、証拠提出された他社事例から複製許諾料と別個に一定額の作曲委嘱料を支払っている事実を認めて、日本映像が支払った金額が事例と比べて低額であったことも総合して、日本映像の支払いには「複製許諾料」が含まれると認めるには足らないとした。また、作曲家と日本映像との間で複製許諾料に関する明確な意思表示がされていなかったことも紛争の原因であると付言して、日本映像は作曲の依頼に当たりJASRACとの契約の有無や複製許諾についての意思の有無を明らかにするべきであったのに、過失により許諾を得ないまま複製行為をしたとして著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償の責任を負うとの判断を示した。損害額はJASRACの使用料規程に基づき使用料相当額を算出、2,825万円余の支払いを命じた。
判例全文
line
7月17日 立体商標“ヤクルト”事件(2)
   東京高裁/判決・請求棄却(上告)
 
判例全文
line
7月18日 交通遺児育英会・元理事のプライバシー侵害事件(2)
   東京高裁/判決・一部取消、一部控訴棄却(上告)
 家計の内容まで書いた「週刊文春」の記事でプライバシーを侵害されたとして、交通遺児育英会の元理事が、文藝春秋と取材を受けた専務理事に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は文藝春秋に対する請求を棄却し、専務理事にだけ55万円の支払いを命じた。
 近藤崇晴裁判長は「公益法人理事の給与の妥当性について問題提起した記事で、公益目的がないとはいえず、仮名を用いるなどの配慮もされている」として文藝春秋への請求を退けた。しかし、専務理事については「情報を提供する行為にまで自由を保障されているとは考えられず、違法性を否定する理由はない」と判断した。
 昨年12月の一審東京地裁判決は、文藝春秋と専務理事双方に55万円の賠償を命じていた。
判例全文
line
7月18日 離婚女性の名誉毀損事件(2)
   東京高裁/判決・変更(上告)
 別れた夫の一方的な言い分に基づいて離婚の経緯を放送され、名誉を傷つけられたとして、埼玉県内の学習塾経営の女性がNHKに約400万円の損害賠償などを求めた訴訟の控訴審で、東京高裁は請求を棄却した一審・東京地裁判決を変更し、NHK側に訂正放送と130万円の支払いを命じた。
 石井健吾裁判長は「NHKが可能な取材を尽くして、主婦の名誉とプライバシーを侵害しないように注意したとは言いがたい」と述べ、女性への名誉毀損を認めた。
 日本民間放送連盟によると、訂正放送を命じた判決は初めて。NHKは上告の方針。

line
7月18日 カラオケ無断使用事件(カラオケボックス経営17社)(2)
   東京高裁/判決・控訴棄却、反訴請求一部認容、一部棄却
 
判例全文
line
7月19日 「呉青山学院」の名称事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 青山学院大学などを経営する青山学院(東京都渋谷区)と、「呉青山学院中学校」を経営する清水ヶ丘学園(広島県呉市)が争った訴訟で、東京地裁は青山学院の請求どおり、清水ヶ丘学園が「青山学院」の文字を含めた学校名を使うことを禁じる判決を言い渡した。
 三村量一裁判長は「呉青山学院」の名称を使うことは不正競争防止法に違反すると述べた。しかし、青山学院が求めた1000万円の損害賠償については「具体的な損害が発生したとは今のところ認められない」として退けた。清水ヶ丘学園は判決を不服とし、直ちに控訴した。
判例全文
line
7月24日 殺人罪被告が提訴、「フォーカス」の名誉棄損事件
   長崎地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 佐賀、長崎の連続殺人事件で、殺人罪に問われて公判中の被告が、無断で全裸写真を掲載され、名誉権、プライバシーを侵害されたとして、「FOCUS」を発行している新潮社と編集長、写真提供者らに謝罪広告と550万円の損害賠償を求めた訴訟で、長崎地裁は新潮社などに330万円の支払いを命じた。謝罪広告掲載については請求を棄却した。
 川久保政徳裁判長は「写真の掲載の仕方が刺激的、扇情的であり、報道目的と対比して著しく相当性を逸脱しており違法」と指摘した。謝罪広告については「侵害された以前の状態には回復できない」と棄却理由を述べた。

line
7月24日 慰安婦法廷番組の改変事件
   東京地裁/提訴
 従軍慰安婦をめぐる民間の「女性国際戦犯法廷」を取り上げたNHK教育テレビの番組が、主催者側が説明した意図とは全く異なる内容に改変され、信用を失ったとして、市民団体「『戦争と女性への暴力』日本ネットワーク」(松井やより代表)が、NHKなどに慰謝料2000万円の支払いを求める訴えを起こした。
 同法廷は元従軍慰安婦の女性らを招いて昨年12月、東京で開かれた。主催者側はNHKに全面的に協力したが、今年1月30日に放送された特集番組では「天皇と国に戦争責任がある」とした法廷の結論に触れなかったばかりか、逆に慰安婦問題に批判的な意見を大きく取り上げる内容になっていた。

line
7月25日 バス車体のペイント画事件
   東京地裁/判決・請求棄却(確定)
 市営バスの車体に描いたペイント画を児童用絵本に使ったのは著作権の侵害として、ペイント画を描いた画家が永岡書店(東京)に300万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は請求を棄却した。
 著作権法は「屋外に恒常的に設置されている作品は自由に利用できる」と定める一方で「販売目的では利用できない」としており、この規定をめぐる初の司法判断となった。
 飯村敏明裁判長は「屋外の作品の著作権を制限なく認めると市民の行動の自由が抑制されすぎる」と指摘。「ある程度の間、いろんな人が見ることができる状態」を「恒常的設置」との判断を示し、バスのペイント画もこうした美術の著作物だと認定した。その上で、絵本の表紙について「自動車の一例として掲載した」として、販売目的で掲載したとする画家の主張を退けた。
判例全文
line
7月25日 ゲームソフト「ファイアーエムブレム(FE)」事件
   東京地裁/提訴
 任天堂とインテリジェントシステムズ(宇治市)の2社は、共同で制作、販売している人気ソフト「ファイアーエムブレム(FE)」に酷似したソフトを販売され、著作権を侵害されたとして、ソフトの販売会社などに製造販売差し止めと総額約2億5800万円の損害賠償を求める訴えを起こした。
 訴えられたのは、ソフトの販売元エンターブレイン(東京)と、開発会社ティルナノーグ(京都市)。エンターブレインが今年5月に販売したソフト「ティアリングサーガ ユトナ英雄戦記」は主人公の顔や舞台設定がFEシリーズに酷似しているという。

line
7月25日 生徒の作文改変事件
   大阪地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 東大阪市の市立中学校夜間学級に通っている女性2人が、作文を勝手に削除、改変して文集に掲載したのは「表現の自由の侵害」として、市に1270万円の損害賠償を求めた訴訟の判決があった。
 谷口幸博裁判長は「生徒の了解を得ずに一部を変えて文集に掲載したのは教師の裁量権を逸脱し、生徒の人格権を侵害する」として、市に慰謝料など85万円の支払いを命じた。
 原告は同市内に住む67歳と64歳の主婦。2人が教師や同級生らの実名を挙げて学校運営や授業内容を批判する作文を書いたところ、教諭から事実と違う部分があるとして修正、削除を求められた。2人は断わったが、文集には個人名をアルファベットにしたり、大幅に削除したりして作品が掲載された。
判例全文
line
7月26日 本の題名侵害事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 単行本『10年、10万キロストーリー。』の著者が、三菱自動車のホームページに題名を無断で使用されたとして、同社の担当者に損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は請求を棄却した。
 齋藤隆裁判長は「本の題名が保護されるには、高度の独創性と公知性が必要」と指摘。雑誌に長期間連載されていることから公知性は認め、さらに三菱自動車の無断使用を「不相当」とした。しかし、使われた言葉は「目新しくなく、創作活動の所産として人格の属性に含まれるとまではいえない」として著者の主張を退けた。

line
7月30日 ビジネス・セミナーのレジュメ出版事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 会社の経営者のためのセミナーを開催し、講演レジュメを著作した原告は、元従業員で原告会社から独立して同種のセミナーを始めた被告が作成、頒布したレジュメを複製権侵害だとし、頒布の差止め、損害賠償を求めた。
 原告著作物は多くの点で表現上の創意工夫がされていると、裁判所は、著作物性を認め、全体がおおむねそのまま複製された事案だとして被告の行為は複製権、頒布権を侵害すると判断し、被告に30万円の支払いを命じた。なお、原告の求めに応じ複製・頒布の禁止、被告文書の執行官保管を命じる仮処分決定が既にあり、差止め請求は認められなかった。
判例全文
line
8月1日 書籍『運鈍根の男』の不当引用事件
   東京地裁/提訴
 記事の意図とはかけ離れた引用で著作権を侵害されたとして、日本経済新聞社は『運鈍根の男 古河市兵衛の生涯』の作者と出版した晶文社に対し、1000万円の損害賠償と本の出版差し止めを求める訴訟を起こした。
 『運鈍根の男−』は、日経新聞が1999年5月に掲載した「20世紀 日本の経済人19 挑戦編 伊庭貞剛」の企画記事を引用している。
 記事は「銅精錬所が無人島に移転しても煙害の完全な解決にならなかった」という趣旨で書かれているのに、著書は「移転で煙害問題が解決した」と読めるように引用。また田中正造の演説についても「デタラメの話を真実らしく報道した」などと記述した。
 日経新聞側は「自分の論旨に合わせるために都合の悪い部分を無視して引用するのは、新聞社への誹謗中傷で、言論の自由とは無縁のものだ」としている。

line
8月2日 ゲームソフトの独禁法違反事件
   公正取引委員会/審決・独占禁止法違反確定
 家庭用ゲーム機「プレイステーション」やゲームソフトを販売する「ソニー・コンピュータエンタテインメント」(SCE)が、取引業者にソフトの値引き販売などを禁じたことは独占禁止法違反にあたるとして、公正取引委員会は、今後このような行為を行なわないよう同社に命じる審決を行なった。
 公取委は98年1月、同様の排除勧告を行なったが、SCEが応ぜず、裁判の一審にあたる審判で争っていた。SCEは公取委の考え方を尊重し、受け入れる方針を示している。

line
8月3日 ドメイン名の移転請求事件(産経新聞)
   世界知的所有権機関(WIPO)/裁定・請求認容
 ドメイン名「産経新聞.com」を勝手に使用されたとして、産経新聞社が韓国の個人を訴えていた紛争で、世界知的所有権機関(WIPO)は同社の主張を全面的に認め、ドメイン名の移転を命じた。
 大手マスコミをめぐるドメイン紛争では、同じく勝訴した毎日新聞社に続く2例目。

line
8月7日 KDDIの個人情報漏洩事件
   東京地裁/提訴
 旧KDD(現KDDI)の国際電話利用者の個人情報が同社の代理店を通じて外部に漏れていた問題で、「プライバシーを侵害された」として在日中国人ら9人が、KDDIと代理店「中文産業」を相手取り、900万円の損害賠償を求める訴えを起こした。
 旧KDDは在日中国人向けの中国語新聞を発行する中文産業に、在日中国人の獲得などの業務を委託。中国に電話をかけた人の名簿などを提供し、このうち3万2000人分が外部に漏れたという。
 原告側は、こうした行為は守秘義務を定めた電気通信事業法に違反すると主張している。

line
8月9日 中学校の設計図事件(2)
   東京高裁/判決・控訴棄却
 小諸市立中学の改築事業の設計コンペに提出された設計図をめぐる、建築事務所どうしの争いである。初めに3社(A、B、C)で共同企業体が組織され提出した中学の設計図が合格した。その後、分かれて2(B、C)社が別の共同企業体を組織し、市内の別の中学の設計図コンペのために設計図を作成した。これに対し、分かれた1社(A)が合格設計図の著作権、著作者人格権(同一性保持権)侵害だと訴えた事件(原審・請求棄却)の控訴審である。
 高裁は、著作権の帰属に関するコンペの公募条件「小諸市に帰属し、使用については市が自由に行える」を認め、原審に続き控訴した1社(A)が著作権主張をなし得ないとの判断を示した。また、双方の設計図を対比して全体として表現が相違すると認定した。建築物の外形(デザイン)や機能に関するアイデアが同一なだけで、アイデアは保護対象ではないから控訴人の同一性保持権の請求は理由がないと、原判決は相当であるとし、控訴棄却とした。
判例全文
line
8月16日 ユニクロvsダイエー 店舗酷似事件
   千葉地裁松戸支部/仮処分申請
 カジュアル衣料チェーン「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングは、ダイエーに対し、ダイエーのカジュアル衣料専門店「PAS」がユニクロの店舗に酷似しているとして、外装および内装の使用中止を求める仮処分申請を行なった。事実上の販売中止を求めたもの。
 PASは全国に12店あるが、対象となったのは松戸市のダイエー五香店のPAS。
 ユニクロによると「商品構成や価格帯、ロゴマーク、店舗のレイアウトなどすべてがそっくりで、錯覚してしまう」ほどだという。
 ダイエーは「清潔感、開放感を持たせた店で、ブランドイメージを含め、一切まねはしていない」と話している。

line
8月17日 ドメイン名の移転請求事件
        (トリンプ・インターナショナル・ジャパン)
   世界知的所有権機関(WIPO)/裁定・請求認容
 下着メーカーのTIJ社がドメイン名「トリンプ.com」を同社とは関係のない国内在住の第三者に登録されたとして、WIPOに申し立てていた移転請求が認められた。
 WIPOは「トリンプは自社名を表わす造語で、商標登録済み」とした同社の主張を認め、移転の裁定を下した。

line
8月17日 談合疑惑をめぐる情報公開事件
   京都地裁/判決・請求認容
 京都府城陽市が発注した公共工事の談合疑惑をめぐり、市がプライバシーを理由に、調査書の中で事情聴取した建設業者の肩書きを非公開にしたのは、市情報公開条例違反として、同市の市民グループの代表が公開を求めた訴訟の判決があった。
 八木良一裁判長は「非公開部分はプライバシーと関係なく、非公開は違法」として、市に公開を命じた。

line
8月24日 「呉青山学院」の名称事件(2)
   東京高裁/控訴取下げ・和解(確定)
 東京の青山学院と呉の清水ヶ丘学園との間で争われていた校名事件は和解が成立した。
 一審東京地裁は、東京・青山学院の主張する商標権の侵害を認め、清水ヶ丘学園に名称の使用を禁じた。同学園は控訴したが、来春以降の生徒募集に影響があることから、校名を「呉青山中学校」に変更し、青山学院と和解した。

line
8月27日 名馬の名前パブリシティ権事件(ダービースタリオン)
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 家庭用テレビゲームの人気ソフト「ダービースタリオン」で競走馬の名を使われ、パブリシティ権を侵害されたとして、23の馬主がソフトの製作会社「アスキー」に製作販売の差し止めと4500万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は原告側の主張を認めず、請求を棄却した。
 飯村敏明裁判長は「パブリシティ権のような排他的な権利は人格権が侵害された場合に認められる」と指摘。馬のような「物」は、商標法など知的財産権の関係法で保護されていることを挙げ、「明確な規定がないまま排他的な権利を認めれば、国民の経済、文化活動を過度に制約する恐れがある」と述べた。
 パブリシティ権をめぐっては、スポーツ選手や芸能人に認められているほか、昨年1月、名古屋地裁がゲームソフトをめぐる同様の訴訟で、G1レースに出走した馬についてのみ権利を認め、同高裁も支持した。
「ダービースタリオン」はプレーヤーに資金と牝馬を与えて競走馬を生ませ、ビッグレースでの優勝を目指すというゲーム。オグリキャップやライスシャワーなどの有名馬名が使われている。
判例全文
line
8月27日 顧客データと業務書類の不正競争事件(消防設備試験)
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 原告も被告も、共に、消防設備の検査実施を専業とする会社であり、さらに被告2名は、元原告会社の従業員でありその在職中に被告会社を設立していた。この被告両名が原告会社の業務に使用していた書式等を無断で自宅に持ち帰り、これらを被告会社のために用いたことについて、不法行為、債務不履行、不正競争行為および著作権侵害行為に該当するとして、原告は被告ら各自に金3,800万円余の損害賠償を求めた。
 裁判所は、検査業務に必要な事項を記載する書類・書式の流用や顧客の名刺を顧客名簿として利用した行為について、原告に無断で持ち帰ったことは、被告両名には雇用契約上の義務違反に当たるとして不法行為及び債務不履行に基づく責任が、また被告会社には不法行為責任があるとして、各自に100万円の支払いを命じた。なお、その余の請求については、書類等は営業秘密として管理されていなかったとして不正競争行為を認めず、また、書式は編集著作物には該当しないから著作権侵害の請求にも理由がないとして、棄却した。
判例全文
line
8月28日 『コルチャック先生』無断舞台化放映事件
   大阪地裁/判決・請求棄却(控訴)
 ナチスドイツの犠牲になったポーランド医師の生涯を描いた舞台劇「コルチャック先生」をめぐり、「原作者の許可を得ずに脚本を改変、上演され、著作権を侵害された」として、『コルチャック先生』の著者が、主催した朝日新聞社と劇団ひまわり、それに劇の公演を放映したNHKなどに総額1億円の損害賠償を求めた訴訟の判決があった。
 小松一雄裁判長は「原告の著作に記されている場面設定やセリフは殆んどなく、劇は原告の著作を翻案したものではない」と述べ、著者の請求を棄却した。
判例全文
line
8月28日 月刊誌「サイゾー」の販売差し止め事件
   東京地裁/決定・仮処分認容
 宝島社発行の男性ファッション誌「Smart」に掲載した人物写真を盗用され、著作権を侵害されたとして、同社と写真家が東京地裁に申し立てた仮処分申請が認められ、月刊誌「サイゾー」8月号(インフォバーン発行)の販売を差し止める決定がなされた。
 「サイゾー」8月号は連載記事の中で「Smart」1999年11月29日号の表紙に掲載されたNIGO(にご)氏の肖像写真を、顔写真部分だけを切り抜いて無断で使った。宝島社は近く、損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こす予定という。

line
8月28日 パチスロ機の誹謗中傷事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部却下、一部棄却(控訴)
 
判例全文
line
8月29日 アニメ絵本の著作権侵害事件(2)
   東京高裁/判決・控訴棄却
 童話作家は『名作アニメ絵本シリーズ』等を出版した永岡書店に対して、複製権、著作者人格権など、著作権侵害を理由に訴え、一審では請求棄却され、控訴した。一審請求理由は、出版契約解除の意思表示後において出版権が消滅したにもかかわらず、発行日をずらして書籍を印刷・販売し、在庫販売を続けたこと等は複製権侵害であり、定価を大幅に下回る販売は著作者人格権を侵害するというというものであった。
 控訴審では請求が追加されたが、(1)バーコードによる売上、在庫数集計を持ち出しても、一審の印刷会社の証明書に基づく発行事実の認定は影響を受けず、控訴人主張は採用できない。(2)廉価販売が名誉、信用を棄損するという、民法上の人格権侵害をいう主張は採用できない。(3)控訴人書籍が有するシンボルとなる絵、シリーズナンバーの順と文字配列、内訳一覧広告掲載などが独自な構成だとして「編集権」「編集構成権」を主張するが、これらの権利存在について法令上の規定がなく、法的根拠はない。以上、控訴人主張は理由がないと、棄却された。
判例全文
line
8月30日 ゲームソフトのシナリオ改変事件
   大阪地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 原告はゲームシナリオライターであり、被告はゲームソフトの製作会社である。被告はプレイステーション用ゲームソフトを販売する会社からの下請けで、製作を請け負った。その製作に当たり、被告は原告作成のシナリオを429箇所にわたり無断改変。また、その題号を変更した。これが同一性保持権侵害に当たるかどうかが争われた。
 裁判所は、この種のゲームにおける原作シナリオが果たす役割を評価し、言語の著作物と認めた。被告は「ゲーム業界全体に、ソフト開発者はシナリオ原作者の了承なく修正・変更できるという慣習が形成されている」と主張したが、その証拠はないと同一性保持権侵害とされた。また、この行為には過失があり賠償責任があると、精神的な損害に対する慰謝料として50万円の支払いが命じられた。
判例全文
line
9月5日 テレビ朝日女性アナをめぐる虚報事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(確定)
 「テレビ朝日」の女性アナウンサーが学生時代にランジェリー・パブでアルバイトをしていたと書いた「週刊現代」の記事をめぐり、アナウンサーとテレビ朝日が発行元の講談社に計2630万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は講談社に対し、アナウンサーに770万円を支払い、同誌に謝罪広告を掲載するよう命じた。テレビ朝日の請求は棄却した。
 高田健一裁判長は「記事は虚偽と認めざるを得ず悪質。本人にも取材していない。肖像権の侵害にあたる」とした。
判例全文
line
9月5日 ニフティサーブ会議室、女性会員誹謗中傷事件(2)
   東京高裁/判決・一部控訴棄却、一部変更、附帯控訴棄却(確定)
 パソコン通信の会員が自由に書き込める「電子会議室」で中傷されたとして、東京都内の女性が、会議室を開設した「ニフティ」とシステムオペレーター(管理者)、書き込みをした男性に計1000万円の賠償を求めた訴訟の控訴審判決があった。
 江見弘武裁判長は「直ちに書き込みを削除せず、議論を重ねて発言の質を高めたいという管理者の運営方法は不当とはいえない」と述べ、被告3者に計50万円の賠償を命じた一審・東京地裁判決を取り消し、男性だけに50万円の支払いを命じた。
 専門家によると、パソコン通信やインターネットをめぐる名誉毀損訴訟で高裁の判断が出たのは初めてという。インターネット上の中傷やプライバシー侵害については、総務省が、被害者からプロバイダーに発言の削除などを求めることができる法案を検討中で、立法をめぐる議論にも影響を与えそうだ。
判例全文
line
9月5日 共有音楽著作権事件
   東京地裁/判決・請求認容(控訴)
 音楽を共同で管理する契約を交わした当事者であるアンリミテッドグループ社(原告)と音楽出版社・バーニングパブリッシャーズ(被告)とのあいだで、共有著作権行使の地位の有無が争われた。本件紛争に関連した別件訴訟が係属中であるが、被告が日本音楽著作権協会から受領した使用料のうちの原告の受領分を支払わなかったことから、債務不履行を理由とする契約解除を根拠に、被告が共有著作権行使の地位にないことの確認を原告は求めた。
 裁判所は、知財事件の迅速審理の要請に応える姿勢を示し、別件訴訟を含めた解決のため待つべき内容ではないと判断し、原告の請求には理由があると、被告は権利行使の地位にはないことを速やかに認めた。
判例全文
line
9月10日 ドメイン名の使用差し止め事件(JACCS)(2)
   名古屋高裁金沢支部/判決・控訴棄却(上告)
 商標「JACCS」をドメイン名に勝手に使われたとして、信販会社ジャックス(東京)が簡易トイレの組み立て販売会社日本海パクト(富山市)に使用差し止めを求めた訴訟の控訴審判決があった。
 川崎和夫裁判長は「日本海パクトがメールアドレスを用いて電子メール広告などを行い、ジャックスの営業上の利益を侵害することも予想される」として、一審・富山地裁の判決を支持して日本海パクトの控訴を棄却した。
判例全文
line
9月18日 建築エスキースの著作者人格権侵害事件(2)
   東京高裁/判決・控訴棄却
 著名な建築家で大学教授だった故人が著作したエスキース(建築物の構想をスケッチしたもの)が、相続人である遺族に無断で、書籍・雑誌に掲載、刊行された。遺族らは発行した新建築社に対して、相続した複製権及び故人の有していた著作者人格権にもとづき、著作権侵害を理由に発行中止、廃棄、損害賠償を求めた事件の控訴審。
 新建築社は、教授が在職した早稲田大学に著作権は帰属すると「法人著作」、大学への「著作権譲渡」、使用についての「包括的合意」の存在、「引用」等の主張を行ったが、裁判所にはすべて認められなかった。また、雑誌広告でのエスキースの利用では、下絵としての扱いで広告文字が多量に重ねて印刷され「著作者に著しい不快感を与えることは明白だ」とされた。さらに、出版を業とする同社は、掲載にあたり何らの調査をせずに発行したことは「出版者の注意義務を果たしていない」との裁判所判断も示された。著作権、著作者人格権侵害を認め、発行の中止、廃棄を命じた原判決は相当だとして、同社の控訴請求は却下された。
判例全文
line
9月19日 叶恭子さんのプライバシー侵害事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 単行本『“ゴージャス姉妹”叶恭子の捨てた猫 シーザーの憂鬱』でプライバシーを侵害されたとして、叶恭子さんが著者に1000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は著者に500万円の支払いを命じた。
 片山良広裁判長は「露骨、過剰な表現で記述されており、叶さんが性的なことばかりしか考えていない人物との印象を与える」と指摘。プライバシーの侵害と名誉毀損を認めた上で「もっぱら営利目的で違法性の度合いも強い」と述べた。

line
9月19日 Nシステムの肖像権侵害事件(2)
   東京高裁/判決・控訴棄却
 
判例全文
line
9月20日 浮世絵春画書籍のフォトCD化事件
   東京地裁/判決・本訴請求一部認容、一部棄却、反訴請求棄却(控訴)
 出版企画『浮世絵春画−千年史』をめぐり、美術史家であり性風俗の研究家と、櫻桃書房(発売元)と人類文化社(発行)および浮世絵画像のデジタル調整を行ったコンピュータ・グラフィックの技術者とのあいだで争われた事件。争点は、研究家(原告)が浮世絵画像を選別し、配列し、レイアウト構成を作成し、解説文を執筆するなどして作った出版用の原稿、画像素材を、書籍編集作業の過程で無断改変されたことについて同一性保持権侵害、奥付等に技術者名も記され共同著作物であるかのような表示がされた刊行については氏名表示権侵害の主張で、出版2社、技術者の3者(被告)に損害賠償を求めた。
 一方で出版2社は出版遅れ、フォトCDの作成費用の立替金の償還等を理由に、原告に対して反訴請求を行った。
 裁判所は「原告が執筆した文章部分は著作物、浮世絵画像の選択、配列、デザイン上の工夫は編集著作物に該当する」と認め、被告技術者のデジタルワーク処理作業には創作的要素はないと著作権を認めなかった。また出版両社には「原告への改変確認を怠ったことは出版社としての責務を果たしていない」として、著作者人格権侵害に基づき、被告らには連帯しての100万円賠償を命じた。なお、反訴請求は理由が無いと棄却した。
判例全文
line
9月25日 サンダルの商標権侵害事件
   大阪地裁/判決・本訴請求一部認容、一部棄却、反訴請求棄却(控訴)
 
判例全文
line
9月25日 公金支出疑惑訴訟のマスコミ公表事件
   高松地裁/判決・請求棄却
 
判例全文
line
9月26日 偽「ファービー」人形販売事件(刑)
   山形地裁/判決・無罪(控訴)
 電子ペット玩具「ファービー」の偽物を販売したとして、著作権法違反の罪に問われた玩具販売会社「ナカヨシ」(大阪市)と同社役員に対し、山形地裁は無罪を言い渡した。
 木下徹信裁判長は「ファービーは美的条件を備えておらず、著作物として保護対象の美術工芸品ではなく実用品」と述べ、著作権侵害を否定した。
 同社と役員は99年7月頃、ファービーの模造品「ポーピー」2400個を香港から輸入し、東京都内の玩具卸売業者に販売、業者が山形市内等で販売した。
 検察側は「学説の動向を無視した極めて不当な判決」として控訴する方針。
判例全文
line
9月27日 『解剖実習書の手引き』事件(2)
   東京高裁/判決・控訴棄却(確定)
 北里大学医学部の解剖学担当の元教授が、後任教授が学生に発行・頒布した『解剖学実習』のテキストは、自分が執筆した『解剖実習の手引き』の内容を模倣したものだと、複製権、翻案権、同一性保持権の侵害を理由に訴えた事件の控訴審。一審横浜地裁は元教授の請求を棄却していた。
 高裁は、解剖の実習というような正確を期すべき学術の著作物については制約があり、表現上の創作性や個性は採用しにくいとの判断を示した。そして、元教授の著作全体には著作物性の存在はあると認めたが、各記述を対比して表現の同一性は認められないとし、また各項目記述の多くの表現について著作物性を認められないことを明らかにして、著作権侵害には当たらないと、元教授の控訴請求を棄却した。
判例全文
line
9月27日 老舗「かまぼこ」のロゴマーク使用差し止め事件(2)
   大阪高裁/判決・一部変更、一部棄却
 
判例全文
line
9月27日 アンケート結果の誤用事件(2)
   高松高裁/判決・控訴棄却、追加請求棄却
 
判例全文
line
9月28日 NTT社員による個人情報漏洩事件(西日本神戸支店)(刑)
   横浜地裁/判決・有罪
 電話利用者の個人情報漏洩をめぐる汚職事件で、NTT法の収賄罪に問われた元NTT西日本神戸支店の社員に、横浜地裁は懲役1年6月、執行猶予3年、追徴金30万円の有罪判決を言い渡した。
 矢村宏裁判官は「NTTの公共性や、個人のプライバシーを侵害した刑事責任は重い」と述べた。
 同被告は神戸支店に勤務していた99年5月から6月にかけ、同支店内のコンピュータで、兵庫県内の電話利用者全員の名前や住所などの個人情報を調べ、MOディスク6枚に保存。そのディスクを千葉市のイベント業者に渡し、見返りに30万円を受け取った。

line
9月28日 プロバイダーのHPファイル消失事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 
判例全文
line
10月1日 カラオケ無断使用事件(名古屋市)
   名古屋地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 著作権使用料を払わずに営業し、著作権を侵害したとして日本音楽著作権協会(JASRAC)が名古屋市のカラオケボックスを経営するB社とD社に損害賠償を求めた訴訟で、名古屋地裁はB社に約140万円、D社に約440万円の支払いを命じた。両社の代表取締役Cへの請求は棄却された。
判例全文
line
10月5日 元リクルート会長のプライバシー侵害事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 リクルート事件で贈賄罪に問われ、公判中のリクルート元会長が「妻との民事訴訟を週刊文春に報じられ、プライバシーを侵害された」と主張して、発行元の文藝春秋に賠償を求めた訴訟で、東京地裁は請求どおり100万円の支払いを命じた。
 訴訟記録を閲覧して記事に引用したことが、違法なプライバシー侵害に当るかが争われたが、菊池洋一裁判長は「夫婦の確執や不和はプライバシーの最たるもの。訴訟が公開の法廷で行なわれ、記録の閲覧も認められているが、他人に知られたくない事実を報道すればプライバシーを侵害する」と指摘した。
 問題となったのは99年2月11日号の「あのリクルート前会長が法廷で夫人との泥沼訴訟合戦」との見出しで報じた記事。夫婦間の私的ないさかいや自宅財産などについて詳細に記載した。
 文藝春秋側は「要人の『公開された記録』を報じることが咎められるなら報道は成り立たない。直ちに控訴する」とコメントした。
判例全文
line
10月9日 偽「ファービー」人形販売事件(刑)(2)
   仙台高裁/控訴
 山形地検は、電子ペット「ファービー」の模造品を販売したとして著作権法違反に問われた玩具卸売会社「ナカヨシ」と同社役員に対する山形地裁の無罪判決を不服として、仙台高裁に控訴した。
 同地検の圓山慶二次席検事は「誤った結論を安易に導いた不当な判決で、到底承服できない」と述べた。

line
10月11日 コンピュータ・プログラム侵害事件
   大阪地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 自社の開発した織布情報作成プログラムを無断で変更、使用され、著作権を侵害されたとして、織物用電子機器の製造会社「高電社」が、業務提携関係にあるコンピュータ機器の販売会社「ジェイ・ティー・エス・タケムラ」に損害賠償を求めた訴訟で、大阪地裁はジ社に約1550万円の支払いを命じた。
 ジ社は高電社の織布情報作成プログラムを装着したレース編機用デザインシステム(TLS-SYSTEM)を顧客に販売していたが、別にソフトプロ社が開発した同様のプログラム(LECS)を購入し、販売した。
 LECSはTLSに変更を加えたプログラムであるか否かが問われていたが、判決は複製権ないし翻案権の侵害と認定した。
判例全文
line
10月11日 “ウソツキ”たれ幕中傷事件
   横浜地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 
判例全文
line
10月16日 クレジットカード密輸入事件(2)
   東京高裁/判決・控訴棄却
 偽造目的のクレジットカード密輸が商標法違反に当るかが争われた事件で、東京高裁はシンガポール国籍の被告に対し、同罪について無罪(関税法違反で懲役1年10月)とした千葉地裁判決を支持し、検察側の控訴を棄却した。
 飯田喜信裁判長は「密輸したカードが詐欺に使われることは明白だが、カード会社の商標権を侵害するのは、本来の目的で使用される場合。詐欺に使用されるケースは、これに当らない」とした。
 磁気情報などを入力する前のカードの所持や輸入は取締まる法律がないため、検察当局は商標法で禁じた「類似品の使用」の予備的行為に当るとして起訴していた。

line
10月17日 ネット上の要約文、無断配信事件
   東京地裁/提訴
 インターネットで著書の要約文を無断で配信され、著作権を侵害されたとして、著者12人と日本経済新聞社が、「速読本舗」の名称でホームページを開設している「コメットハンター」(福井市)に対し、配信指し止めと計1490万円の損害賠償などを求める訴えを起こした。
 提訴したのは落合信彦、江波戸哲夫、樋口広太郎、野口悠紀雄、竹村健一、田原総一朗の各氏ら。
 コメットハンター社は「ビジネス書を原稿用紙10枚程度にまとめます」などの宣伝文句で会員を集めており、個人会員の場合、年間1500円の料金で、毎月4冊の要約文を電子メールで受信できる。96年からこれまでに268冊分を配信したが、原告には何の連絡もなかった。
 インターネット上の著作権をめぐって訴訟になったのは初めて。原告の一人、佐和隆光氏は「電子メディアを使った新しい形の著作権侵害といえ、裁判所の判断を仰ぐべきだと考えた」と話した。

line
10月18日 海賊版ゲームソフト販売事件
   東京地裁/提訴
 美少女アダルトゲームソフトを違法にコピーした海賊版を販売され、著作権を侵害されたとして、業界団体「コンピュータソフトウェア倫理機構」に加盟するソフトメーカー71社が、福岡市でソフト販売店を経営していた男性2人を相手取り、総額約3100万円の損害賠償を求める訴えを起こした。
 2人は昨年9月に閉店するまでの半年間に約3300本の海賊版ソフトを正規品の4分の1程度の価格で販売したという。2人は昨年12月、著作権法違反で起訴され、有罪が確定している。

line
10月23日 住宅情報誌名侵害事件(2)
   東京高裁/判決・請求棄却
 
判例全文
line
10月23日 「薬害エイズ事件」の名誉毀損事件(2)
   東京高裁/判決・控訴棄却
 
判例全文
line
10月24日 NTT社員による個人情報漏洩事件(東日本群馬支店)(刑)
   横浜地裁/判決・有罪
 顧客情報を洩らした見返りに現金を受け取ったとして、NTT法違反(収賄)の罪に問われた群馬県吉井町の元NTT東日本群馬支店の被告に対する判決で、横浜地裁は懲役2年、執行猶予5年、追徴金60万円の有罪を言い渡した。
 被告はツーショットダイヤルで知り合った他被告らに9000人以上の電話番号や住所などの顧客情報を流し、謝礼として約500万円を受け取った。

line
10月25日 ドメイン名の使用差し止め事件(ジェイフォン東日本)(2)
   東京高裁/判決・控訴棄却
 社名および商品名「j-phone」を勝手にドメイン名に使われたとして、携帯電話会社のジェイフォン東日本が東京都内の貿易会社を相手に、使用差し止めなどを求めた訴訟で、東京高裁はジ社側の請求を認めた一審東京地裁判決を支持し、貿易会社側の控訴を棄却した。
 山下和明裁判長は「被告側の会社がドメイン名の割り当てを受けたのはジェイフォンがサービスを開始し、全国規模で認識された後だった」と指摘。「他人の著名表示を無断使用する不正競争行為に当たる」として、使用差し止めと300万円の賠償を命じた。
 ドメイン名訴訟の高裁判決は、9月の名古屋高裁金沢支部に続いて2例目。いずれもドメインなど同様の商標や商品を持つ企業側が勝訴したことになる。
判例全文
line
10月25日 和菓子「ういろう」の商標事件(3)
   最高裁(一小)/判決・上告棄却
 神奈川県小田原市の菓子会社「ういろう」が、名古屋市の同「青柳ういろう」の商標に『ういろう』の名称使用を認めた特許庁の審決の取り消しを求めた訴訟で、最高裁は請求を退けた一審東京高裁判決を支持、原告側の上告を棄却した。これにより原告敗訴が確定した。
 「ういろう」を経営する外郎(ういろう)家は600年の歴史を持ち、薬や菓子作りで知られる。しかし同判決は「『ういろう』の文字は外郎家の姓に由来し、かつては外郎家の製造した菓子を示す固有名詞だったが、時代とともに菓子の一種を意味する普通名詞になった」と認定した。

line
10月25日 「キャンディ・キャンディ」事件(アドワーク)(3)
   最高裁(一小)/判決・上告棄却
 人気漫画「キャンディ・キャンディ」の原作者水木杏子さんが、絵を描いた漫画家のいがらしゆみこさんに著作権の確認などを求めた訴訟で、最高裁は原作者にも著作権を認めた一、二審判決を支持、いがらしさんの上告を棄却した。これで水木さんの勝訴が確定した。
 井嶋一友裁判長は「漫画は原作者のストーリイに基づく二次著作物」と認定。その上で原作者と漫画家双方の著作権を認め、「双方の合意がなければ著作権を行使できない」と述べた。
 東京地裁は「作品は、絵だけでなくストーリイ展開などが一体となった著作物」として原作者にも漫画家と同じ著作権を認め、東京高裁も同じ判断を示していた。
判例全文
line
10月25日 スマイルマークの商標権侵害事件
   大阪地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 黄色の丸い顔に、にっこり笑った目と口をあしらった「スマイルマーク」入りの文具を販売していた「サンメール」(大阪市)が、マークの商標権を持つライセンス会社Y(東京)に、商品がY社の商標権を侵害しないことなどの確認を求めた訴訟の判決があった。
 小松一雄裁判長は「それぞれのマークは、目の位置や口の形状などが異なり、類似していない」として、商標権の侵害はないとの判断を示した。
判例全文
line
10月25日 スポーツウエアの偽造品事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 並行輸入した「フレッド・ペリー」のスポーツウエアを偽造品だと業界紙に広告を掲載したのは不当として、福岡市の輸入業者など3社が、商標権を持つヒットユニオン(福井市)に不正競争防止法に基づく損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁はヒットユニオン社に約6100万円の支払いを命じた。
 三村量一裁判長は「販売差し止めの仮処分など司法手段によらず、一方的に偽造品だと通知した行為には過失があった」と述べた。
判例全文
line
10月26日 「桶川ストーカー殺人事件」の中傷ビラ事件
   さいたま地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 
判例全文
line
10月30日 『魔術師 三原修と西鉄ライオンズ』の改ざん事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(確定)
 無断で著書を改竄し出版され、著作者の人格権を侵害されたとして、『魔術師−』の著者が文藝春秋などに1100万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は200万円の賠償を命じる判決を言い渡した。
 森義之裁判長は、193ヵ所について許可なく改変したことを認め、「悪意はなかったが、故意に改ざんしたもので、著作者の人格権を侵害した」と述べた。
判例全文
line
10月30日 交通安全標語の類似事件(2)
   東京高裁/判決・控訴棄却、新請求棄却
 「ママの胸より チャイルドシート」は「ボク安心 ママの膝より チャイルドシート」の複製ないし翻案かが争われ、後者を先に作成した男性が、前者をテレビコマーシャル用に作成した「電通」などに著作権を侵害されたとして1000万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京高裁は一審東京地裁の判決を支持、控訴を棄却した。
 山下和明裁判長は「交通標語には著作物性そのものが認められない場合が多く、それが認められる場合にも、その同一性ないし類似性の認められる範囲は、一般に狭いものとならざるを得ない」とした。
 一審では男性の作成した標語に「家庭的なほのぼのとした車内情景が描かれていることから、著作物性を認められる」としたが、両者の創作性に共通するところがないとして、類似性を否定し、原告の請求を退けた。
判例全文
line
11月8日 女優鈴木奈保美さんを無断撮影、「週刊現代」の侵害事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 映画のヌードシーンを無断で撮影し、「週刊現代」に掲載したのは著作権侵害だとして、映画製作会社「スカイプランニング」と芸能プロダクション「ホリプロ」が、発行元の講談社に1億円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は280万円の支払いを命じた。
 三村量一裁判長は「読者の性的好奇心を刺激して購買意欲をかきたてる内容で、報道目的とはいえない」と指摘した。
 講談社側は、著作権法で認められている時事事件の報道目的によると主張していた。
判例全文
line
11月9日 毎日新聞ホームページ事件
   名古屋地裁/判決・請求棄却(控訴)
 
判例全文
line
11月14日 目黒バラバラ殺人事件の匿名報道事件(2)
   東京高裁/判決・控訴棄却
 
判例全文
line
11月16日 「議会だより」の答弁改ざん・不掲載事件
   神戸地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 
判例全文
line
11月16日 カラオケ無断使用事件(神戸市)
   神戸地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 
判例全文
line
11月20日 カラオケ無断使用事件(大阪市)
   大阪地裁/判決・請求認容
 著作権使用料を支払わずに営業し、著作権(演奏権・上映権)を侵害したとして、日本音楽著作権協会が大阪市のパブの経営者にカラオケ機器の使用差し止めなどを求めた訴訟で、大阪地裁は機器の使用差し止めと著作権使用料など77万円の支払いを命じた。
判例全文
line
11月22日 次席検事の不起訴処分記者発表事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 
判例全文
line
11月27日 カイロプラクティック書の無断翻訳事件(2)
   東京高裁/判決・控訴棄却
 Aらが共同で発行した書籍は、Bが先に発行した翻訳書の著作権侵害である。頭蓋骨調整法の理論と技術を解説した二つの書籍をめぐる訴訟で、東京高裁は販売差し止めと約610万円の損害賠償を認めた一審・東京地裁判決を支持し、Aらの控訴を棄却した。
判例全文
line
11月29日 ケーブルテレビの再送信使用料事件
         (周南ケーブルサービス)(2)
   東京高裁/判決・控訴棄却
 ラジオ放送番組のケーブル配信による使用料と補償金を契約に基づいて支払え─。日本脚本家連盟が周南ケーブルサービス社を相手に求めた控訴審の判決があった。
 東京高裁は「控訴は理由がない」と一審・東京地裁判決を支持、周南ケーブルサービス社の控訴を棄却して、約120万円の支払いを命じた。
判例全文
line
11月29日 ドメイン名の使用権確認請求事件(合資会社壱)
   東京地裁/判決・請求却下
 
判例全文
line
11月30日 出版許諾契約書をめぐる著作侵害事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 出版許諾契約による発行部数は4000部に限られていたという理由で、新潮社から「とんぼの本」シリーズの一冊を著わしたAが、4000部を上まわる部数を発行したのは契約違反であり、著作権および著作者人格権の侵害であるとして、新潮社と企画・編集会社日本アート・センターに、608万円の支払いを求めた訴訟で、東京地裁は原告Aの請求を退けた。
 判決は「出版許諾契約書は新潮社に対し、部数の限定なしに出版を許諾している」と指摘した。
判例全文
line
12月3日 ネット上の要約文、無断配信事件AB
   東京地裁/判決・請求認容
 インターネットで著書の要約文を無断で配信され、著作権を侵害されたとして、著作者12人と日本経済新聞社が、「速読本舗」の名称でホームページを開設している「コメットハンター」(福井市)に対し、配信差し止めと損害賠償を求めた訴訟の判決があった。
 東京地裁は、著作者たちの著作権、著作者人格権および一部肖像権の侵害を認め、コメットハンターに対し、要約文のホームページからの抹消と、著作者たちそれぞれに100万円から150万円の損害賠償を支払うよう言い渡した。
判例全文
line
12月5日 キタムラの商標権侵害事件
   横浜地裁/判決・請求棄却(控訴)
 
判例全文
line
12月12日 集英社『痛快!』シリーズ事件(2)
   東京高裁/判決・請求認容(確定)
 
判例全文
line
12月18日 ビデオテープ著作権侵害事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 ソニー・ピクチャーズエンタテインメント社の販売しているビデオテープ「デス・ゲーム2025」は、自分のアイディア「スーパードリームボール」と小説『黙示スポーツ女』を複製又は翻案したもので、著作権侵害にあたるとして、著作者Aがソ社に損害賠償1000円を求めた訴訟で、東京地裁は原告の請求を棄却した。
 判決は「アイディアは著作物とはいえない」「ソ社のビデオテープは原告Aの小説を翻案したものとはいえない」とした。
 ソ社によれば、このビデオテープ(映画)は米国のNEW STAR MEDIA INCが制作したもので、近未来のスポーツ選手を主人公に愛と友情を描いたもの。原告の小説とは内容が基本的に異なるとしている。
判例全文
line
12月18日 レセプト公開要求事件(3)
   最高裁(三小)/判決・上告棄却
 出産後間もない子供を亡くした神戸市の夫婦が、兵庫県の公文書公開条例に基づき、出産時の状況を知るため兵庫県知事にレセプト(診療報酬明細書)の公開を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第三小法廷は、非公開決定を取り消した二審・大阪高裁判決を不服とする知事側の上告を棄却した。
 千種秀夫裁判長は、自己の個人情報開示について「条例に開示を許さない規定はなく、個人の権利を害さないことが明らかな場合は、個人情報であることを理由に開示を拒否することはできない」とした。
 一審の神戸地裁は、条例にプライバシー情報の開示が規定されていないことなどから請求を棄却したが、二審・大阪高裁は公開を命じていた。
判例全文
line
12月19日 『チーズはどこへ消えた?』の「類似本」事件A
   東京地裁/決定・仮処分申請却下
 
判例全文
line
12月19日 『チーズはどこへ消えた?』の「類似本」事件B
   東京地裁/決定・仮処分一部認容、一部却下
 ベストセラー『チーズは消えた?』の出版元・扶桑社と翻訳者らが「そっくりな装丁やタイトルで利益を損なわれた」として、『バターはどこへ溶けた?』を出版した道出版を相手に、著作権法に基づいて出版の差し止めなどを求めていた仮処分申請で、東京地裁は著作権の侵害に当たるとして、道出版の発行、販売などを差し止める決定を下した。
 道出版側は「仮処分は、パロディによる原作品への批判を成り立たなくさせる危険がある。決定には不服」として、保全異議の申立てをした。
判例全文
line
12月19日 「週刊現代」、「フライデー」二子山親方夫人の肖像権侵害事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 「週刊現代」と「フライデー」に無断で女優時代のヌード写真を掲載され、肖像権を侵害されたとして、大相撲二子山親方の元夫人が、講談社に1億円の賠償を求めた訴訟で、東京地裁は請求を認め、550万円の支払いを命じた。
 講談社側は「写真は公表目的で撮影されたもので、違法性はない」と主張したが、井上哲男裁判長は「結婚後は角界に身をおき、女優やモデル時代とは異なる生活を送ってきたことを考慮すると、30年以上も前の写真を公表することは肖像権の侵害に当たる」と述べた。

line
12月20日 『コルチャック先生』著作権侵害事件
   京都地裁/判決・請求棄却(控訴)
 名作『コルチャック先生』の著者が、著作権を侵害されたとして、戯曲『「コルチャック先生」ある旅立ち』(文芸遊人社)を出版した著者と発行者に、各1000万円の損害賠償と頒布の停止などを求めた訴訟で、京都地裁は原告の請求を退ける判決を言い渡した。
 事件は被告たちが『「コルチャック先生」ある旅立ち』を書く上で、どこまで原告の著作からの使用及び翻案を許諾していたかが争われた。判決は、原告の著作からの「翻訳部分の使用も含めた包括的許諾がされていたものと認めるのが相当」との判断を下したもの。
判例全文
line
12月20日 「ポロ」の商標登録事件B(2)
   東京高裁/判決・請求認容(上告)
 「Polo」(ポロ)の商標をめぐり、東京高裁は、このブランドで有名な米国のラルフ・ローレン社の主張を認めた特許庁決定を取り消し、大阪府枚方市の衣料品会社「ポロ・ビーシーエス」にもこの商標を使う権利があるとする判決を言い渡した。
 ポロ・ビーシーエス社は83年、「Polo Sports」など二つの商標登録を特許庁に出願し、97年に登録が認められた。しかし、特許庁は昨年、「ラルフ・ローレン社の製品と混同を生じるおそれが極めて高い」として登録を取り消していた。
 現在ではラルフ・ローレン社の売り上げがポロ社を圧倒しているが、判決は「出願当時はポロ社の製品も億単位の売り上げがあり、『ポロ』と言った場合、そちらを認識する人もいた」と指摘、ポロ社にも商標を使う権利があると判断した。
判例全文
line
12月20日 知的所有権登録会社の名誉毀損事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 
判例全文
line
12月21日 ピーターラビットのロゴ事件
   東京地裁/決定・仮処分認容
 人気キャラクター「ピーターラビット」の著作権を持つ英国の出版社「フレデリック・ウォーン」が、子供服メーカー「ファミリア」(神戸市)を相手に、ピーターラビットのロゴを使用した商品の製造、販売などの禁止を求める仮処分申請で、東京地裁はその請求を認める決定を下した。
 ファミリアは76年、フレデリック社とキャラクターの商品化契約を結び、子供服に使用してきた。契約は99年10月に切れたが、ファミリアは「自社でピーターラビットのロゴを商標登録している」として、絵柄を外して、ロゴだけ入れた服の販売を続けたため、フレデリック社が使用禁止を求めていた。

line
12月25日 石油精製技術書をめぐる著作者人格権侵害事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 コスモ石油会社を退職した元研究員Aが、自分も創作に関わったものの、その後に出版された改訂版書籍からは氏名が削られ、著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権)を侵害されたとして、共同執筆者のかつての同僚B、C、Dや書籍を出版したエルゼビア・サイエンス社らを相手に、謝罪広告と約1億4000万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は原告Aの請求を棄却した。
 原告Aは、自分も加わった残油水素化分解技術の理論の叙述と実験データの図表は「極めて革新的な創作表現で、著作物に該当する」と主張したが、被告側は「縁の下の力、名誉を尊重する意味で名前を挙げたにすぎない。書籍は職務著作」としていた。
 判決は「原告は書籍の作成に関与しておらず、書籍の表現を創作したとは認められない」と結論した。
判例全文
line
12月25日 国語副教材への作品無断使用事件(育伸社)
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 著作者川崎洋氏・他4名が「国語の副教材に作品を勝手に使うのは著作権の侵害」として、教材を出版している育伸社に対し、損害賠償と書籍の頒布の差し止めを求めた訴訟で、東京地裁は原告たちの請求を認め、育伸社に頒布の停止と、原告それぞれに約1万円から53万円を支払うよう命じる判決を言い渡した。
判例全文
line
12月25日 住民票データ流出事件(2)
   大阪高裁/判決・控訴棄却
 京都府宇治市の住民データ約22万件が流出した問題で、市民3人が「プライバシーを侵害された」として、市に1人あたり30万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決があり、大阪高裁は1人につき1万5000円の慰謝料支払いを命じた一審・京都地裁判決を支持し、市の控訴を棄却した。
 判決によると、1998年4月頃、同市から乳幼児検診システムの開発業務を委託された情報処理会社の男性アルバイトが、住民基本台帳データを複写して名簿業者に販売した。
 岩井俊裁判長は「業務委託した情報処理会社の選任、監督について、市は相当の注意を払わなかった」と指摘した。久保田勇市長は「主張が認められず遺憾。全国の自治体に影響するので上告手続きを行なう」と話した。
判例全文
line
12月25日 著名SF評論家の名誉毀損事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(確定)
 
判例全文
line
12月26日 ジーンズの標章類似事件(2)
   東京高裁/判決・控訴棄却(確定)
 ジーンズ等の被服を製造販売する米国の「リーバイ・ストラウス・アンド・カンパニー」が、類似の標章を付したジーンズを製造販売され、損害を受けたとして、同業の「エドウィン商事」を相手取り、不正競争防止法に基づく販売差し止めなどを求めた控訴審で、東京高裁は一審・東京地裁判決を支持、ともに一審判決を不服として控訴していた両社に棄却の判決を言い渡した。
 ジーンズのバックポケット部分につけた標章の類似などについて争われ、一審判決は、被服の廃棄を求めるリ社の請求を認容し、その余の請求を棄却したが、リ社はこれを不服として控訴していた。
判例全文
line
12月26日 清原和博選手の名誉毀損事件(2)
   東京高裁/判決・一部変更、一部控訴棄却(確定)
 
判例全文
line
12月27日 ショルダーバッグの模倣事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 旅行用小型バッグを製造、販売しているレジャー・プロダクツ社が、その形態・デザインをそっくり模倣されたバッグを販売され、損害を受けたとして、同業のファイブ・フォックス社に不正競争防止法に基づく販売差し止めと約770万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁はレ社の請求を認め、フ社に311万円の支払いを命じた。
 判決は、バッグの形状は「やや横長」と「やや縦長」だが、「その相違点はきわめて些細」とし、両社のバッグは実質的に同一の形態と認定した。
判例全文
line
12月27日 バイアグラの顧客名簿事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 栄養補助食品を販売する日本アート社が、バイアグラの米国からの輸入販売に際し、医師甲に提供した自社の顧客名簿が、販売中止後も医師甲によって使用され、損害を受けたとして、不正競争防止法に基づき1200万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は日本アート社の請求を棄却した。
 日本アート社は「顧客名簿は会社にとって最も重要な資産で、医師甲は販売中止後も不正な利益を得る目的で使用した」と主張したが、判決は「被告の手元に問診表の写しという形で保管されていた情報は、被告が、医師としての職務に基づいて得た患者の個人情報とみるべきもので、原告の保有する営業秘密に属するものとはいえない」とした。
判例全文
line


 

日本ユニ著作権センター TOPページへ