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【事件名】住宅情報誌名侵害事件(2) 【年月日】平成13年10月23日 東京高裁 平成13年(行ケ)第190号 審決取消請求事件 (平成13年9月6日 口頭弁論終結) 判決 原告 株式会社賃貸住宅ニュース社 訴訟代理人弁理士 小林正治 被告 株式会社リクルート 訴訟代理人弁護士 宇都宮秀樹 同 奥田洋一 同 横山経通 訴訟代理人弁理士 原島典孝 主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告 特許庁が平成11年審判第31435号事件について平成13年3月26日にした審決を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 2 被告 主文と同旨 第2 当事者間に争いのない事実 1 特許庁における手続の経緯 原告は、「賃貸住宅情報」の文字を左横書きしてなり、第16類「新聞、雑誌」を指定商品とする登録第3153588号商標(別紙の(1)のとおり。平成5年6月10日登録出願、平成8年5月31日設定登録、以下「本件商標」という。)の商標権者である。被告は、平成11年10月25日、原告を被請求人として、特許庁に対し本件商標について登録取消審判(以下「本件審判」という。)を請求し(同年11月17日予告登録)、平成11年審判第31435号事件として審理され、平成13年3月26日に「登録第3153588号商標の商標登録は取り消す。」との審決があり、その謄本は同年4月5日に原告に送達された。 2 審決の理由の要点 (1) 請求人(被告)の主張の要旨 被請求人(原告)は、継続して3年以上日本国内において本件商標をその指定商品に関して正当な理由なく使用していない。また、本件商標について専用使用権は設定されておらず、通常使用権の登録もない。よって、本件商標登録は商標法第50条の規定により、その登録を取り消されるべきである。 (2) 被請求人(原告)の答弁の要旨 本件商標の通常使用権者である株式会社海外生活は、資料1の「abCHINTAI/エービーチンタイ」1999年8月号(平成11年7月10日)を発行した。 本件商標の通常使用権者である株式会社エイビー・チンタイは、資料2〜9のとおり、「abCHINTAI/エービー・チンタイ」1999年9月号(平成11年8月10日発行)〜2000年4月号(平成12年3月10日発行)を発行している。 資料1〜4は本件審判請求日前に発行されたものであり、資料5〜9はその後に発行されたものである。 資料1〜9には本件商標「賃貸住宅情報」が表示(使用)されている。したがって、本件商標は、通常使用権者である株式会社海外生活及び株式会社エイビー・チンタイにより本件審判請求の日前3年以内に、本件商標の指定商品である「雑誌」について使用され、現在も使用されていることが明らかである。 (3) 審決の判断 (ア) 被請求人が提出した資料1ないし9(本訴甲第4ないし第12号証)によれば、本件商標の通常使用権者である株式会社海外生活又は株式会社エイビー・チンタイは、平成11年7月10日から同12年3月10日の間に発行された雑誌「ab.CHINTAI」の表紙に別紙の(2)ないし(5)のとおりの構成によりなる標章(以下「使用A標章ないし使用D標章」という。)を表示し、また、同11年7月10日発行の同雑誌(資料1)の7頁から51頁の間の各頁(一部頁を除く)上端部分に「賃貸住宅情報」(以下「使用E標章」という。)の表示をしていることが認められる。前記の雑誌は、本件商標の指定商品中の「雑誌」の範ちゅうに含まれる商品である。 (イ) 商標登録の取消を免れるためには、被請求人が、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者等のいずれかがその請求に係る指定商品のいずれかについて登録商標の使用をしていることを証明しなければならないところ、被請求人が提出した資料6ないし9は、本件審判の請求の登録(平成11年11月17日)以降のものであるから、前記の証拠として認められない。 (ウ) 資料1は、雑誌「ab.CHINTAI」(平成11年7月10日発行)であり、資料2ないし5は、同11年8月10日から同年11月10日の間に発行された同雑誌の表紙と裏表紙のコピーである。 (エ) 使用各標章の使用について判断すると、使用A標章は、別紙の(2)のとおり、「世界のアパートメントホテル&賃貸住宅情報」の文字よりなり、資料1ないし5において、題号である「ab.CHINTAI」の文字部分の左上に表示されている。これらの表示は、同雑誌が、世界のアパートメントホテルの賃貸に関するものであることを示すものとして、需要者に認識されるにどどまるというのが相当であるから、商品の出所表示機能としての役割を果たすものでなく、商標の使用と認めることはできない。 また、使用B標章は、別紙の(3)のとおり、「US.EURO.ASIAの賃貸住宅情報」の文字よりなり、資料1及び2の同雑誌の表紙中程の右側に表示され、使用C標章は、別紙の(4)のとおり、「世界の賃貸住宅情報」の文字よりなり、資料1及び資料3ないし5の目次に表示されている。使用D標章は、別紙の(5)のとおり、「海外賃貸住宅情報」の文字よりなり、資料3ないし5の表紙中程の右側に表示されている。使用E商標は、「賃貸住宅情報」の文字よりなり、資料1のの雑誌中、「世界の賃貸住宅情報」としての記事が掲載されている各ページの上端に表示されている。 (オ) 資料1ないし5の雑誌「ab.CHINTAI」は、海外生活者のための賃貸住宅に関する情報を掲載した月刊雑誌であり、その表紙には、海外の賃貸住宅に関する情報について、「アパートメントホテル情報」、「US.EURO.ASIAの賃貸住宅情報)(資料1、平成11年7月10日発行)、「帰国者のための東京賃貸マンション情報」、「US.EURO.ASIAの賃貸住宅情報」(資料2、同年8月10日発行)、「海外アパートメントホテル情報」「海外賃貸住宅情報」(資料3、同年9月10日発行)のように、この月刊雑誌の掲載内容を表示して紹介していることが認められる。 そうすると、使用B標章ないし使用D標章は、雑誌の掲載内容を知らせる表示として、使用E標章は、表示ページの掲載内容を示す表示として、需要者に認識される文字といえるから、商品の出所表示機能を果たすものでなく、商標の使用と認めることはできない。 (カ) 被請求人は、雑誌の題号以外の使用においても、自他商品識別機能を発揮することができる使用であれば、登録商標の使用ということができると主張し、平成12年11月13日提出の答弁書において、本件商標は、資料1ないし8の表紙中と記事中に表示されていると述べている。そして、表紙の題号の上に表示されている使用A標章は、「世界のアパートメントホテル」と本件商標を組み合わせて使用したもので、内容を把握する一助となるサブタイトルであるから、商品の内容を把握し、他の雑誌の内容と端的に識別するために必要不可欠であり、識別標識そのものであると主張する。 (キ) けれども、題号「ab.CHINTAI」の文字の左上方に小さく記載された「世界のアパートメントホテル&賃貸住宅情報」の文字は、当該雑誌に、世界のアパートメントホテルと賃貸住宅に関する情報が掲載されているものであると、需要者に認識させるにとどまり、商品の出所表示機能は、題号である「ab.CHINTAI」及びその表音である「エイビー・チンタイ」の文字にあると認められる。 商標は、自他商品を識別する標識として使用されるものであるから、雑誌の掲載内容表示が、需要者に対して購入の動機となる場合があるとしても、それらの表示は、あくまでも雑誌の掲載内容を示すものにすぎず、商標としての機能(自他商品識別機能)を果たすものとは認められない。したがって、被請求人の主張は、採用することができない。 (ク) 以上のとおりであるから、被請求人が提出した証拠(資料1ないし9)によっては、本件商標が商品「雑誌」について使用されていたとは認められないものであり、他に本件商標を指定商品中のいずれかについて使用していると認め得る証拠はない。 したがって、本件商標は、商標法第50条の規定によりその登録を取り消すべきものである。 第3 原告主張の取消事由 審決は、原告が本件商標を指定商品について商標として使用していないと認定したが、本件商標権の通常使用権者であった株式会社海外生活及び現在の通常使用権者である株式会社エイビー・チンタイは、平成11年7月10日以降、雑誌「ab.CHINTAI」に使用A標章ないし使用E標章を、審決の認定のとおりの態様で表示して使用してきており、これらの使用はいずれも自他商品識別機能を有する態様での使用であるから、商標の使用と認められるものである。これを商標の使用と認められないとした審決は誤っており、取り消されるべきである。 1 使用A標章ないし使用E標章について (1) 使用A標章について 審決は、使用A商標である「世界のアパートメントホテル&賃貸住宅情報」は、「同雑誌が、世界のアパートメントホテルの賃貸に関するものであることを示すものとして、需要者に認識されるにどどまるというのが相当であるから、商品の出所表示機能としての役割を果たすものでなく、商標の使用と認めることはできない。」と認定したが、誤りである。 使用A標章は、前記雑誌の副題(サブタイトル)であり、雑誌の題号(タイトル)と同様に商品の出所表示機能を有しているから、その使用は商標の使用というべきである。 (2) 使用B標章ないし使用D標章について 審決は、使用B標章ないし使用E標章は、雑誌の掲載内容を知らせる表示として、使用E標章は、表示ページの掲載内容を示す表示として、需要者に認識される文字といえるから、商品の出所表示機能を果たすものでなく、商標の使用と認めることはできない、と認定したが誤りである。使用B標章ないし使用E標章は、前記雑誌の副題(サブタイトル)であり、雑誌の題号(タイトル)と同様に、商品の出所表示機能を有するから、その使用は商標の使用というべきである。 (3) 使用E標章について 審決は、使用E標章である「賃貸住宅情報」は、表示ページの掲載内容を示す表示として需要者に認識される文字といえるから商品の出所表示機能を果たすものでなく、商標の使用と認めることはできない、というが、誤りである。使用E標章は、本件商標をそのまま使用したものであって、本件雑誌の創刊号以来、毎月号に連続して掲載されてきた本件雑誌特有の連載特集のタイトルとして使用され、需要者に親しまれてきたのであり、出所表示機能の一翼を担ってきた。したがって、使用E標章は、商標として使用されているというべきである。 2 雑誌の副題号(サブタイトル)について 商標審査基準によれば、雑誌の題号(タイトル)は、内容を表示するようなものであっても、原則として自他識別力があるとされている。このことは、タイトルに限られるものではなく、登録商標がサブタイトルとして使用された場合でも、自他商品識別機能があれば、その使用は商標の使用ということができる。雑誌を指定商品とする商標は雑誌の題号として使用されるのでなければ商標法上の商標の使用ではない、ということはできない。 副題号(サブタイトル)は、内容把握が難しい雑誌の場合、雑誌の企画、編集、連載記事、特集記事等の特徴や個性を強調し、需要者にアピールするために、メインタイトルに添えて使用される。需要者は、雑誌の購入に当たって、題号だけでは雑誌を識別することができないときには、サブタイトル、連載記事、特集記事等のタイトル(以下「サブタイトル等」という)に基づいて雑誌を識別することがよくある。特に、サブタイトル等が連続的に、あるいは繰り返し使用されることにより、メインタイトルよりもサブタイトルの方が周知となったときには、サブタイトル等が特定の雑誌を示すものとして認識され、サブタイトル等によって他の商品と識別されることになる。このような場合、サブタイトル等として標章を使用することは、商標法上の商標の使用と認められるべきものである。 使用A標章ないし使用E標章は、まさに、上記のような、雑誌の企画、編集方針、特集記事、連載記事といった「雑誌の特徴」を端的に補足説明するためのサブタイトルとして、連続して、雑誌の表紙、目次等に使用されてきた結果、出所表示機能を備えるに至ったものであるから、商標として使用されている。 第3 被告の反論の要点 審決の認定判断は正当であり、原告主張のような誤りはない。 1 使用A標章ないし使用E標章について 商標の「使用」の有無は、不使用取消審判においても、登録商標が自他商品の識別機能を有する態様で使用されているか否かを基準として判断されなければならない。例えば、東京高裁平成2年3月27日判決無体集22巻1号233頁も「商標の使用といい得るためには、当該商標の具体的な使用方法や表示の態様からみて、それが出所を表示し自他商品を識別するために使用されていることが客観的に認められていることが必要である。」と判示している。 原告は、甲第4ないし第12号証(審判資料1ないし9)に記載された、@「世界のアパートメントホテル&賃貸住宅情報」(使用A標章)、A「U.S.EURO.ASIAの賃貸住宅情報」(使用B標章)、B「世界の賃貸住宅情報」(使用C標章)、C「海外賃貸住宅情報」(使用D標章)及びD「賃貸住宅情報」(使用E標章)の各表示が登録商標の使用を裏付けるものと主張するが、甲第4ないし第12号証において、自他商品識別機能を有しているのは、雑誌の題号である「ab.CHINTAI」のみである。原告の主張する5種類の表示はいずれも自他商品の識別機能を有する態様で使用されているということはできない。 2 サブタイトルとしての使用について 原告は、「雑誌の題号は、内容を表示するようなものであっても、原則として自他商品識別力があるとされている」、「商標審査基準を根拠として、雑誌を指定商品とする商標は、雑誌の題号として使用されなければ商標法上の商標の使用ではない、と判断することはできない」などと主張した上で、登録商標をサブタイトルとして用いていた場合であっても、自他商品識別機能を発揮することができれば商標の使用といえるので、使用標章AないしEを雑誌に表示することは、商標の使用に当たると主張する。 しかしながら、サブタイトルは、主にその企画、編集、連載記事、特集記事等の特徴や個性を強調し、アピールすることにより、出所表示たる題号とは別に、当該雑誌の内容を表示するものである。そして、需要者がサブタイトルに惹かれて雑誌を購入したとしても、それはサブタイトルにより当該雑誌の内容を知って購入動機を形成したからにすぎず、サブタイトルにより出所を識別して、あるいは特定の雑誌であることを認識して、雑誌を購入するものではない。 また、原告も認めるとおり、商標法上の商標の使用であるか否かは、当該商標が自他商品の識別機能を有する態様で使用されているか否かを基準として判断されるところ、原告がサブタイトルとして使用していると主張する前記@ないしDの各表示は、前記のとおりいずれも自他商品識別機能を有する態様で使用されているものではない。 乙第1号証ないし乙第4号証の雑誌に見られるとおり、「賃貸住宅情報」という表示は、雑誌等の掲載内容を示すために普通に使用されているし、乙第5号証の「雑誌新聞記事総かたろぐ」に見られるとおり、賃貸住宅に関する情報を掲載する雑誌は一般に「賃貸住宅情報誌」と呼ばれている。乙第6号証の新聞記事からは、雑誌「ab.CHINTAI」において、自他商品の識別は「エイビー・チンタイ」(雑誌の題号)によってなされ、「賃貸住宅情報」という文言には自他商品識別機能がないことが示されている。これらのことからみても、甲第4号証ないし甲第12号証に記載された前記@ないしDの表示が、当該雑誌に掲載されている内容を示すものとして理解されることは明らかである。 第5 当裁判所の判断 1 株式会社海外生活又は株式会社エイビー・チンタイを発行人として平成11年7月10日から同年11月10日の間に発行された雑誌「ab.CHINTAI」(甲第4号証ないし第8号証、以下「本件雑誌」という。)に「賃貸住宅情報」の文字を含む下記の標章ないし文字(使用A標章ないし使用E標章)が表示されていること、及び本件雑誌の発行人が発行当時の本件商標権の通常使用権者であったことは、当事者間に争いがない。 表示された文字 表示場所 「世界のアパートメントホテル&賃貸住宅情報」(別紙の(2)、使用A標章) 表紙の左上部、題号の左上(甲第4から第8号証) 「U.S.EURO.ASIAの賃貸住宅情報」(別紙の(3)、使用B標章) 表紙中程の右側部(甲第4、第5号証) 「世界の賃貸住宅情報」(別紙の(4)、使用C標章) 目次(甲第4から第8号証) 「海外賃貸住宅情報」(別紙の(5)、使用D標章) 表紙中程の右側部(甲第6から第8号証) 「賃貸住宅情報」(使用E標章) 記事を掲載した各頁の上端(甲第4から第8号証) 2 本件雑誌における使用A標章ないし使用E標章の使用態様が、本件商標を商標として使用したものに当たるかどうかを判断する。 (1) 甲第4号証ないし第8号証によれば、@本件雑誌は、海外で生活しようとする者のために世界の主要都市の賃貸住宅に関する情報を掲載した月刊誌であること、A本件雑誌の表紙には、上部の約5分の1を占める位置に雑誌の題号である「ab.CHINTAI」の文字が太字で大書され、その中央部右寄り上部に「エイビー・チンタイ」の小さな文字が付記されており、背表紙の上部にも目立つ文字で「ab.CHINTAI」の題号が表示されていること、B表紙には、上記題号の下側に多段にわたって、題号よりもかなり小さい文字(文字の高さにして1/8から1/4程度)で、ホームページのアドレス、「1週間の滞在旅行から赴任・留学まで 短期・長期の海外滞在先情報満載」などの各号の特集記事を示す記載、「帰国者のための「東京」賃貸マンション情報」、「ニューヨーク1泊1,988円、ハワイ2,420円。アパートメントホテル情報」、「留学・赴任を緊急サポート!」などの各種の記載があることが認められる。 これらの事実によれば、本件雑誌において、自他商品識別機能を発揮しているのは本件雑誌の題号と認められる「ab.CHINTAI」の文字であり、需要者は表紙及び背表紙に記載された題号によって、本件雑誌を他の雑誌から識別するものと認められる。 (2) 原告は、本件雑誌に表示された使用A標章ないしE標章は、本件雑誌のサブタイトルであり、需要者に本件雑誌を他の雑誌から識別させる自他商品識別機能を果たしていると主張する。しかし、具体的な表示態様及び内容を検討すると、使用A標章ないしE標章は、以下のとおり、雑誌のサブタイトルとして使用されているとも自他商品識別機能を有する態様で使用されているとも認めることができない。 使用A標章である「世界のアパートメントホテル&賃貸住宅情報」は、甲第4ないし第6号証においては、表紙の左上隅に、題号に近接して小さく「世界のアパートメントホテル&賃貸住宅情報」「海外に暮らすマガジン」と上下2段に表示され、甲第7、8号証においては、表紙の左上隅に、題号に近接して小さく「世界のアパートメントホテル&賃貸住宅情報」と表示されており、その表示された位置及び態様からみて、「ab.CHINTAI」を題号とする本件雑誌に世界のアパートメントホテル及び賃貸住宅に関する情報が記事として掲載されていることを示すものとして需要者に認識されるにとどまるものと認められる。 使用B標章である「U.S.EURO.ASIAの賃貸住宅情報」は、表紙の題号の下側に数行にわたって表示されたホームページアドレス、「帰国者のための「東京」賃貸マンション情報」、「ニューヨーク泊1,998円、ハワイ2,420円。アパートメントホテル情報」などの文字行の最下行に、「留学・赴任を緊急サポート!」(甲第4号証)、「海外赴任者・留学生必見!」(甲第5号証)、「海外赴任者・留学生の住まいを安心サポート!」(甲第6号証)などの文字に続けて表示されていることが認められ、その表示位置及び態様からみて、本件雑誌に掲載されている記事の内容を示すものとして需要者に認識されるにとどまるものと認められる。 使用C標章である「世界の賃貸住宅情報」は、本件雑誌(甲第4、第6ないし第8号証)の目次の中段部分に表示されているもので、その下には、「ニューヨークエリア、ロンドンエリア」等に分けて世界の主要都市の賃貸物件についての記事の細目次が記載されていることが認められる。してみると、使用C標章は、その表示位置及び態様からみて、雑誌に掲載される記事の内容を概括的に示した記述として需要者に認識されるにとどまるものと認められる。 使用D標章である「海外賃貸住宅情報」は、表紙の題号の下側に数行にわたって表示されたホームページアドレス、「帰国者のための「東京」賃貸マンション情報」、「安全・快適・経済的!『暮らせるホテル』海外アパートメントホテル情報」などの文字行の最下行に、「海外赴任者・留学生の住まいを安心サポート。」(甲第6号証)、「海外赴任者・留学生必見!」(甲第7号証)、「世界主要8都市525物件を掲載」(甲第8号証)などの文字に続けて表示されていることが認められ、その表示位置及び態様からみて、「ab.CHINTAI」を題号とする本件雑誌に掲載された記事の内容を示す記述として需要者に認識されるにとどまるものと認められる。 使用E標章である「賃貸住宅情報」は、表紙ではなく、本件雑誌(甲第4ないし第8号証)中の各地の賃貸物件を具体的に紹介している記事頁の右上隅又は左上隅に小さく表示されているもので、その表示された頁、位置及び表示態様からみて、表示頁の掲載内容を示す見出し的な文字として需要者に認識されるにとどまるものと認められる。 さらに、乙第1ないし第6号証によれば、「賃貸住宅情報」という語は、雑誌等に賃貸住宅に関する情報を掲載する場合に、掲載内容を表す語として普通に使用され、賃貸住宅に関する情報を掲載する雑誌が一般に「賃貸住宅情報誌」と呼ばれていることも認められる。 以上によれば、使用A標章ないしE標章は、いずれも自他商品識別機能を有する態様で本件雑誌に使用されているものということはできず、その使用を「商標としての使用」であると認めることはできない。 (3) 原告は、ある表示がサブタイトル等として連続して使用されることにより、特定の雑誌を示すものとして需要者に認識されるに至ったときは、その表示に出所表示機能があり、これを使用することは「商標としての使用」に当たると主張するが、使用AないしE標章が雑誌記事の内容を概括的に記述したものであり、識別表示となる可能性のあるサブタイトルとして使用されていると認めることができないことは前示のとおりである。また、使用AないしE標章が連続して使用されることによって特定の雑誌を示すものとして需要者に認識されるに至ったことを認めるに足りる証拠はない。 3 よって、原告主張の取消事由は理由がないから、原告の請求を棄却することとし、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第18民事部 裁判長裁判官 永井紀昭 裁判官 古城春実 裁判官 橋本英史 |
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