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【事件名】目黒バラバラ殺人事件の匿名報道事件(2)
【年月日】平成13年11月14日
 東京高裁 平成13年(ネ)第3238号 損害賠償等請求控訴事件
 (原審・東京地裁平成12年(ワ)第6176号)
 (平成13年10月3日 口頭弁論終結)

判決


主文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由
第1 当事者の求める裁判
1 控訴人
(1) 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。
(2) 被控訴人の請求を棄却する。
(3) 訴訟費用は、第1、2審とも被控訴人の負担とする。
2 被控訴人
 主文第1項同旨
第2 事案の概要
 事案の概要は、次のとおり付け加えるほかは、原判決「事実及び理由」中の「第2 事案の概要」記載のとおりであるから、これを引用する。
1 控訴人の当審における補足的主張
(1) 名誉毀損事件の違法性あるいは過失の判断は、@公共の利害に関する事実か否か、A公益目的に基づくものであるか否か、B真実もしくは真実と信じたことにつき相当の理由があるか否かの3要件により判断するものとされているが、報道の自由と人格権が衝突した場合の違法性ないし過失の有無の実質的判断は、上記の要素以外にも公表の必要性、情報入手手段の相当性、表現方法の相当性、当該私人の特定方法、当該私人の社会的地位、影響力、公表によって当該私人が受けた不利益の程度等諸般の事情が考慮される必要がある。
 これを本件についてみてみると、本件記事は殺人事件という重大犯罪の捜査状況を報道するものでこれが公益目的によるものであることは明らかであり、直接・間接を問わず被控訴人を被疑者と断定することを目的としたものではない。また、その事案の内容(遺体をバラバラにして30片以上を袋詰めにして遺棄したもの)からすると本件記事掲載当時報道の必要性は高いものであった。更に取材方法及び内容も相当丁寧であり、十分な評価がされるべきである。また、報道内容も被控訴人の人格権をいたずらに侵害することのないように慎重かつ相当な配慮をしており、侮辱的誇張的な表現を用いず被控訴人の実名も伏している。報道の自由を保障する必要性と被控訴人が主張する名誉を保護する必要性とを比較考量した場合、上記のような事情のもとでは報道の自由の保障の必要性が優先するというべきであり、本件記事には違法性がない。
(2) 本件記事による被控訴人の名誉毀損の有無
@ 本件記事は、被控訴人を匿名によって報道したものであり、予備知識のない一般読者の通常の読み方を基準とした場合、本件記事の対象が被控訴人についてのものであることは識別できず、また、このような識別ができたとする証拠はない。したがって、社会一般の読者の被控訴人の評価が低下したという事実は認められない。
A また、本件記事では報道された中国籍の男が重要参考人であることを記載しているが、これは真犯人と明確に区別したものである。したがって、本件記事によって一般読者に対して報道対象となった男が犯人と印象づけることにはならない。また、被控訴人が目黒バラバラ殺人事件の容疑者として取調べを受けたとする記事は平成11年10月初旬の時点で既に新聞各紙が報じていたところであり、本件記事によって新たに被控訴人の社会的地位が低下したとはいえない。
(3) 本件記事掲載の違法性ないし過失の有無
@ 乙記者は、捜査員から原判決「事実及び理由」中の「第3 争点に対する判断」1の(3)のア(イ)、(エ)、(オ)、(カ)、(キ)、(サ)記載のような情報を取材したほか、a平成12年2月上旬には「ここまでつぶせば被控訴人しかいない。否認のままでも逮捕する方針だ。」、b同じころ「捜査本部としてはA氏殺害の主犯は被控訴人で、民事訴訟の判決への不満が直接的な引き金なったと考えている。」、c同月16日に「A氏は体が大きく体力もあったため、一人で殺害することは困難とみられ、捜査本部では主犯である被控訴人から殺害の実行を依頼された共犯がいるとみていたが、特定に至らなかったので、被控訴人の本格的な強制捜査に踏み切るしかないとの方針を固め、方法として被控訴人の子供が学校に出かける午前8時15分から被控訴人の妻が家を出る午前8時45分の間に被控訴人を任意同行する。」、d「捜索令状は取ってある。」等の情報を得、これらの情報のうち裏付けの取れるものはいずれも事実であった。したがって、捜査本部は、被控訴人を重要参考人と断定し、本格的な取調べを行うことを決定していたものであり、本件記事はその報道内容のすべてが真実である。
 上記のうち、aないしd等の情報は乙記者の取材メモには記載がないが、この情報についての乙記者の供述内容は具体的でその他の取材内容とも整合しており、その信用性は高いというべきである。取材メモに記載がないという一事でその取材内容の信用性を否定することは取材メモの性質になじまず、取材現場に不可能を強いるものである。また、取材メモのないaないしd等の情報を除いても、乙記者が得たその他の情報を前提に、同年2月20日捜査員は乙記者に対して同月23日から被控訴人の取調べを行うことを告げ、同記者の取材メモに「目黒PS 2/23 XDay」「夕刊で重とりしらべ」等と自ら記載したものであり、捜査本部が被控訴人を重要参考人と断定し、その本格的な取調べを開始しようとしていたことは明らかである。
A なお、仮に本件記事の一部について真実性の証明が足りないとしても、以上のような取材によってされた本件記事の内容についてみれば、捜査本部が被控訴人を重要参考人と断定し、その本格的な取調べを開始しようとしていたことも含め、控訴人がそのすべてを真実と信じるについて相当な理由のあったことはいうまでもない。
(4) 被控訴人の損害の有無及びその額など
 本件記事による報道以前に新聞各紙が同様の報道をしていたことを考えれば、仮に本件記事によって被控訴人の社会的な評価が低下したものであるとしても、その程度は極めて低いものであった。更に、本件記事が匿名報道であったこと、控訴人の裏付け取材は緻密で周到でありその違法性の程度は極めて低いこと等を考えれば、被控訴人に賠償すべき慰謝料額は減額されるべきである。
2 被控訴人の反論
(1) 本件記事は被控訴人の名前以外すべての個人情報を報道したものであり、平成11年10月に目黒殺人事件が報道された際には被控訴人と事件の関係を知らなかった被控訴人の指導教授、学友などすべての被控訴人の関係者が本件記事の報道内容が被控訴人に関するものであることを知った。しかも、本件記事が出るまで「容疑者」として被控訴人を報道した記事はなかったのであるから、本件記事が被控訴人の社会的評価を低下させ、その名誉を毀損するものであることは明らかである。
(2) 控訴人主張の事由はいずれも被控訴人が目黒殺人事件の犯人であることの根拠とはならないものである。被控訴人の知人に殺人の共犯者となりうる者がいないことなど容易に判明することであり、また、被害者の生活や活動をみれば同人が多くの人から恨みを買い、誰から殺害されてもおかしくはない状況にあったことは明らかである。
 更に個別の警察官から漏らされた情報は、これをもって捜査の方針とする理由はないし、まして控訴人を重要参考人と報道してその人権を侵害する合理的な根拠ともならない。本件記事の内容が真実であれば、被控訴人の取調べをしない理由はないはずなのに、被控訴人はその後警察から取調べを受けたことは一度もない。
(3) 被控訴人は中国の民主化を促進させるために翻訳事業を始めたが本件記事によって当該事業は致命的な打撃を受けた。子供に悪い影響を与え、本件記事が報道された以後被控訴人は職を得ることができず、失業状態が続き、妻の収入と友人の援助でようやく生活をしている状況にある。このような損害を金銭に換算すれば本来3300万円が相当であり、また、控訴人による公開の謝罪が必要である。
第3 証拠関係
 証拠関係は、本件記録中の証拠関係目録記載のとおりであるから、これを引用する。
第4 当裁判所の判断
 当裁判所も、被控訴人の請求は200万円の支払を求める限度で理由があると考える。その理由は、次のとおり付け加えるほかは、原判決「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判断」に記載のとおりであるから、これを引用する(ただし、原判決書7頁21行目の「重要参考人」を「その可能性の極めて高い者」に改める。)。
1 控訴人は、本件記事がいわゆる「匿名記事」であることを理由に、その報道の対象とされた「男」が被控訴人であるとは識別できず、また、本件記事は「男」を目黒バラバラ殺人事件の真犯人とは区別して重要参考人として報道したにすぎないから、被控訴人を同事件の犯人と印象づけることにはならないし、それ以前の同事件に関する報道からすると本件記事によって新たに被控訴人の社会的評価が低下したとはいえないと主張する。
 しかし、前述(原判決「事実及び理由」中の「第3 争点に対する判断」1)のとおり、本件記事にはその報道対象とされた「男」の国籍、年齢、在籍大学と学科、居住地、甲弁護士会に通訳として登録され、Aとの間で貸金に関するトラブルや訴訟のあったことが記載されているから、これによって氏名を除く被控訴人の外面的な属性の重要な部分が明らかにされている。したがって、被控訴人を知る不特定多数の者は、この記事の報道対象とされた「男」が被控訴人であることは容易に識別できるものである。しかも、本件記事には、「男」には被害者を殺害する動機があることを強く印象づける記載と共に、「男」が死体の遺棄現場の近隣に居住していること、捜査本部が目黒バラバラ殺人事件に関与した疑いのある他の者を追及したが無関係であることが判明したこと、その結果最終的に「男」が関与した疑いが強まり重要参考人と断定して本格的な取調べを始めること等の記載があるから、一般の読者の通常の読み方を基準とすれば「男」がこのような猟奇的な殺人事件の犯人ないしその可能性の極めて強い者であることを印象づけるものであることは明らかである。したがって、本件記事が被控訴人の名誉を毀損するものではないとする控訴人の主張は失当である。
 また、本件記事が報道される以前は、被害者が現場近くに住む中国人男性から借金をしていたこと、この男性に会うと言って自宅を出た後に被害者が行方不明になっていること、捜査当局がこの男性から事情を聴取したことを報道する記事が出されているだけである。被控訴人を知る者であってもこのような報道によって当該男性が被控訴人であると識別することは容易ではないし、目黒バラバラ殺人事件に対する被控訴人の関与を示唆する度合いも本件記事とは質的に異なっている。したがって、前記のような報道があったからといって、被控訴人の社会的評価が低下していたと認めることはできず、本件記事が報道された時点でこれによって被控訴人の社会的評価は著しく低下したことは明らかというべきである。
2(1) 控訴人は、前記認定の取材内容(原判決「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判断」2の(3)アの(ア)ないし(サ))のほか、捜査員からa平成12年2月上旬には「ここまでつぶせば被控訴人しかいない。否認のままでも逮捕する方針だ。」、b同じころ「捜査本部としてはA氏殺害の主犯は被控訴人で、民事訴訟の判決への不満が直接的な引き金なったと考えている。」、c同月16日に「A氏は体が大きく体力もあったため、一人で殺害することは困難とみられ、捜査本部では主犯である被控訴人から殺害の実行を依頼された共犯がいるとみていたが、特定に至らなかったので、被控訴人の本格的な強制捜査に踏み切るしかないとの方針を固め、方法として被控訴人の子供が学校に出かける午前8時15分から被控訴人の妻が家を出る午前8時45分の間に被控訴人を任意同行する。」、d「捜索令状は取ってある。」等の情報を得たと主張し、乙記者もその旨を供述する。
 取材内容の真否を判断する場合、取材源の秘匿の要請があるため報道機関側では取材内容を裏付ける証拠の提出に制約のあることには十分配慮する必要がある。しかし、控訴人が主張する乙記者などの取材内容を裏付けるものは、その後明らかになっている事実関係と同記者の供述及び取材メモ(乙7、8の@ないしH)が提出されているだけであり、いわば控訴人内部の資料及び人証による立証にとどまるものである。しかも、控訴人が主張するaないしd等の情報は、それが事実であれば本件記事の形成過程で相当程度重要とされる情報と思われるのに、他の取材結果や情報とは異なって乙記者の取材メモにはこれが書き留められていない。乙記者はこのような情報を取材メモに書き留めなかった理由について、これを記憶にとどめたためだと説明するが(あるいは別のメモに記載した可能性があるがそれは捨ててしまったとも供述している。)、その説明は十分に納得できるものではない。もっとも、記者が取材内容を逐一メモしないことも十分にあり得ることとは推察されるが、控訴人主張のaないしd等の情報は取材メモに記載された他の情報に比して相当の重要性を持っていることは先に述べたとおりである上、これらの情報に反して捜査機関が被控訴人を取り調べその自宅を捜索することがなかったことは控訴人も争っていない。このような事実関係や証拠関係からすると、本件では取材メモの裏付けを欠くaないしd等の事実の存在を認定することは困難といわなければならない。
(2) 控訴人は、aないしd等の事実を除いても、本件で認定された取材結果からすると捜査本部が被控訴人を重要参考人と断定し本格的な取調べを行おうとしていたことは明らかであると主張する。捜査本部が被控訴人から再度事情聴取を行うことを予定していたこと、平成12年2月20日C捜査員が乙記者の取材メモに「2/23 XDay」「夕刊で重とりしらべ」等と記載したことは前記認定のとおりである(原判決「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判断」2の(3)のア、(サ)、同イ)。そして、乙記者はC捜査員のメモのうち「重とりしらべ」の記載は被控訴人を重要参考人として取り調べることを意味すると供述するが、仮にこれが事実であり、C捜査官が被控訴人を重要参考人と呼んだとしても、捜査本部が被控訴人を重要参考人と断定したこととは直接つながるものではない。そして、本件で被控訴人と目黒殺人事件を結びつける物証や目撃情報などがあったとする証拠は皆無である。他方、本件で提出された証拠だけでは目黒殺人事件の捜査がどのように進展し被控訴人に確実なアリバイがなかったと断定できるのか否かも明らかではないが、被控訴人方には風呂場のないこと(遺体が30片以上にバラバラにされているため、その実行場所は極めて限定されたものになり、一般の住居では風呂場以外に想定しにくい。)、被害者は大柄で被控訴人とは体格差があること、遺体を被控訴人の住所地の近くに捨てていること、被害者は借金をめぐる争い等から複数の人間に恨みを買い、あるいは犯罪グループ等に関与しておりその人間関係は複雑であったこと等が窺える。すなわち、被控訴人を犯人とするには解明しなければならない矛盾点が多く、他方で被害者を殺害する動機を有する者は複数いた可能性があったとも思われるのである。このような状況で捜査本部が被控訴人を重要参考人と断定して本格的な取調べを開始しようとしていたかは疑わしいといわなければならない。しかも、本件記事が出た後被控訴人からの事情聴取は行われていないのであるから、捜査本部が被控訴人を重要参考人と断定したこと、本格的な取調べを行おうとしていたことについて真実であるとの証明はないというべきである。
(3) 控訴人は、その取材内容からすると、捜査本部が被控訴人を重要参考人と断定しその本格的な取調べを開始しようとしていたことも含め、控訴人が本件記事のすべてを真実と信じるについて相当な理由があったと主張する。控訴人が長期間にわたり複数の捜査官に対する取材を行い、その裏付けのための情報収集を行った上、被控訴人からも取材をする等目黒バラバラ殺人事件と被控訴人との関連について報道機関として要請される一応の取材を行っていることは認められる。しかし、前記認定からすると、捜査本部が被控訴人を重要参考人と断定したとする根拠は最終的にはC捜査官が被控訴人を「重」と表現したことに尽きるのであって、これを重要参考人の意味に理解するとしても、一捜査官の判断と捜査本部の判断とを同視できないことは前述のとおりである。しかも、本格的な取調べを開始しようとしていたことに関する証拠はない。被控訴人を目黒バラバラ殺人事件と結びつける直接の証拠はない上、被控訴人を犯人とするには解明しなければならない矛盾点が多くあるように窺われることは前述のとおりである。この点、控訴人は、被控訴人に対する直接の取材で被控訴人が犯人であることを強く窺わせるものがあったとする。しかし、その取材は本件記事発表前の近接した時点で複数の記者により行われたものであることは認められるものの(乙7、C証人)、その際の被控訴人の話の内容のメモ(乙7)から窺われるのは、主として被控訴人が被害者が貸金を返済しないことについて悪感情を抱いていたこと、事件前に被控訴人と被害者が借金の返済について電話で話していることのほか、事件当日の被控訴人の行動についての説明にわたる事実等であって、それまでに控訴人が取材によって得ていた情報以上に被控訴人の目黒バラバラ殺人事件への関与を強く疑わせるような内容であったとは考えられない(なお、乙7には、被控訴人が「殺意を認めている。」、「いかに自分がインテリで善良な人間で彼らと違うが(違うことを)強調する。」、「ヤクザ的な儲け話にスケベ根性を出してしまったかもしれない。」、「『まじめに裁判に訴えたのに、なぜむくわれないのか』という、やりきれなさが、引き金の一つだったのか。」、「自身の逮捕が迫っていることへの本能的な危機感を見せた。」、「殺害状況を良く知っているようでもあった。」等と取材者の評価が記載されているが、こられの評価はその前後の話からはやや飛躍したものであって、取材者自身が被控訴人が犯人であるとの予断をもっていたことを窺わせる。)。そして、本件記事が犯罪報道に係るものであって、被控訴人の名誉を侵害しその社会的な評価を著しく低下させるものであることを考えると、前記取材内容だけで控訴人が本件記載部分を真実であると信じたことに相当な理由があるということはできない。
3 控訴人は、本件記事による被控訴人の社会的な評価の低下の程度は極めて低いものであること、本件記事が匿名報道であったこと、控訴人の裏付け取材は緻密で周到でありその違法性の程度は極めて低いこと等から、被控訴人に賠償すべき慰謝料額は減額されるべきであると主張する。しかし、本件記事による被控訴人の社会的評価の低下の程度が低いとはいえず、本件記事の対象が被控訴人であることを識別することが容易であることは前述のとおりであり、本件の取材方法が被控訴人の損害を減少させた事情を認めることはできない。本件記事が被控訴人に与えた影響は原判決「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判断」3に記載のとおりである。
4 なお、控訴人は、本件記事の違法性は、報道の自由の必要性と被控訴人の名誉の保護の必要性とを諸般の事情を勘案して比較考量の上決すべきであると主張する。しかし、名誉毀損として争われる事案が新聞報道に関するものであっても、当該記事が個人の名誉を侵害するものであれば、それが公共の利害に関し、専ら公共の利益を図る目的で報道されたものであって、摘示された事実が真実であることがいずれも証明されない限り、当該記事に違法性がないとはいえず、また、摘示に係る事実が真実であるとの証明がされない場合は、報道機関においてその事実を真実と信ずるについて相当の理由がなければその責任を否定することはできないと解するのが相当である。
第5 結論
 したがって、原判決は相当であり、本件控訴はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法67条1項本文、61条を適用して、主文のとおり判決する。

東京高等裁判所第17民事部
 裁判長裁判官 新村正人
 裁判官 藤村啓
 裁判官 田川直之
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