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【事件名】カラオケ無断使用事件(大阪市)
【年月日】平成13年11月20日
 大阪地裁 平成13年(ワ)第8170号 著作権侵害差止等請求事件
 (口頭弁論終結日 平成13年11月13日)

判決
原告 社団法人日本音楽著作権協会
訴訟代理人弁護士 北本修二
同 七堂眞紀
被告 A
被告 B


主文
1 被告らは、大阪市(以下略)「パブ C」において、別添楽曲リスト記載の音楽著作物を、次の方法により使用してはならない。
 (1) カラオケ装置を操作し、又は客に操作させ、伴奏音楽に合わせて客又は従業員に歌唱させ、若しくは自ら歌唱する方法。
 (2) カラオケ装置を操作し、又は従業員に操作させて伴奏音楽及び歌詞の文字表示を再生する方法。
2 被告らは、上記「パブ C」から別紙物件目録記載のカラオケ装置の機器を撤去せよ。
3 被告らは、原告に対し、連帯して金76万8600円及びこれに対する別紙遅延損害金目録記載の各金員を支払え。
4 訴訟費用は被告らの負担とする。
5 この判決は、第1ないし第3項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由
1 原告は、主文同旨の判決(及び仮執行宣言)を求め、請求原因として別紙「請求原因事実」記載のとおり述べた。
 請求原因事実については当事者間に争いがない。
2 以上によれば、原告の請求はいずれも理由があるから、主文のとおり判決する。

大阪地方裁判所第21民事部
 裁判長裁判官 小松一雄
 裁判官 阿多麻子
 裁判官 前田郁勝


(別紙) 請求原因事実
1 当事者
(1) 原告は、「著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律」(昭和14年法律第67号)に基づく許可を受けた国内唯一の音楽著作権仲介団体であり、内外国の音楽著作物の著作権者からその著作権ないし支分権(演奏権、録音権、上映権等)の移転を受けるなどしてこれを管理し(内国著作物についてはその著作権者から著作権信託契約約款により、外国著作物については本邦の締結した著作権条約に加盟する諸外国の著作権仲介団体との相互管理契約による。)、国内のラジオ・テレビの放送事業者をはじめレコード、映画、出版、興行、社交場、有線放送等各種の分野における音楽の利用に対して音楽著作物の利用を許諾し、利用者から著作物使用料を徴収するとともに、これを内外の著作権者に分配することを主たる目的とする社団法人である(甲1ないし3)。
 別添楽曲リスト記載の音楽著作物は、いずれも原告が著作権を管理する音楽著作物(以下「管理著作物」という。)であって、カラオケ歌唱の使用実績を有する主要な曲目に当たり、今日、カラオケ装置を設置している社交場において、日常的に反復使用されている楽曲である。
(2) 被告らは夫婦であり、両者は、共同して、大阪市(以下略)において、平成5年4月9日より平成12年9月30日までの間は「D」との店名で、同年10月1日より現在に至るまでは「パブ C」との店名で、飲食店(以下、両者を合わせて「本件店舗」という。)をいずれも営業している。なお、平成12年12月25日以降は、Eとの共同経営である。
(3) Eは、本件店舗を平成12年12月25日より現在に至るまで被告らと共同して営業している。
2 被告らの著作権侵害行為
(1) 他人の音楽著作物を公に演奏・歌唱して利用する者は、法律に別段の除外規定がない限り、その著作物の利用について、著作権者の許諾を受けるべき法律上の義務を有する(著作権法第22条、第63条)。これは入場料をとって演奏する場合に限らず、キャバレー、カフェ、バー、スナック等社交場、飲食店の経営者が音楽の演奏・歌唱により直接あるいは間接に営利を目的とする場合にもすべてこれに著作権が及び、著作物使用者が許諾を得ないで著作物を演奏すれば著作権の侵害となる。
(2) 本件店舗において、平成5年4月9日の開店から現在まで、営業用の設備としてカラオケ装置が設置されており、その営業期間中、原告の利用許諾を受けないで、来集した不特定の客に聞かせる目的で、原告の管理著作物に含まれる楽曲をカラオケ伴奏による歌唱により演奏し、また歌詞の文字表示を再生して上映し、もって、原告の著作権を侵害したものである。
 そして、被告らは、各営業期間中、毎日の営業時間中、飲食を提供するかたわら、カラオケ伴奏による歌唱により、店の雰囲気作りをし、客の来集を図って利益をあげることを意図しているのであり、原告の管理著作物の演奏を客に聞かせることを自己の営業に利用し、利益を収めていた。
(3) よって、被告らが、営利を目的とし、公に管理著作物を演奏し、もって、原告の著作権(演奏権・上映権)を侵害するものであることは明らかである。
 したがって、原告は被告らに対し、著作権法第112条1項に基づき、カラオケ関連機器を用いる管理著作物の再生(演奏・上映)、歌詞の文字をモニターテレビに表示すること(上映)、および客による歌唱(演奏)を差し止める請求権を有する。
 また、別紙物件目録記載のカラオケ関連機器は、著作権法第112条2項の「もっぱら侵害の行為に供された機械若しくは器具」に該当するので、原告は、同項の「廃棄その他の侵害の停止又は予防に必要な措置」として、被告らに対し、別紙物件目録記載のカラオケ関連機器一式を本件店舗から撤去することを求める権利を有する。
3 損害賠償請求
(1) 被告らは、本件店舗において、共同して、管理著作物をカラオケ伴奏により歌唱させる行為が原告の著作権の侵害になることを知りながら、又は、過失によりこれを知らないで侵害したのであって、これにより原告が被った損害を連帯して賠償すべき義務がある。
(2) 原告は、「著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律」第3条1項に基づき、文化庁の認可を得て「著作物使用料規程」(甲3)を定めている。
 包括使用許諾契約を結ばない場合、原告の管理著作物1曲1回使用時間5分までの使用料は、店舗の座席数(面積)と標準単位料金(社交場において客1人あたりにつき通常支払うことを必要とされる税引後の料金相当額)とを要素として算定される。
 本件店舗の座席数は、40席までに該当し、標準単位料金は少なくとも5000円までに該当するところ、これを著作物使用料規程別表16の1(甲3、44頁)に当てはめると、1曲1回使用時間5分までの使用料は、90円である。
 そして、消費税が別途加算される(甲3、21頁)。
(3) 原告の客席面積5坪までの店舗からの使用料徴収業務は、平成9年8月11日の著作物使用料規程変更認可に基づき、平成10年2月1日から開始されている。
 本件店舗において、平成10年2月1日から平成13年7月31日までの1日あたりの管理著作物の使用曲数は、10曲を下らない。
 また、本件店舗の営業日数は平均して1か月20日を下らない。
 これに基づき、本件店舗における管理著作物の1か月当たりの使用料を算定すると、
 90円×10曲×20日×1.05(消費税相当額加算)=
 金18,900円
となる。
(4) もっとも、本件店舗においては、平成12年11月14日、原告申立ての当庁平成12年(ヨ)第20053号カラオケ演奏禁止等仮処分命令決定がなされ、同月21日仮処分執行の結果、被告らによるカラオケ演奏は、平成12年11月21日から同年12月31日までは一時中断されていたが、平成13年1月1日より、再開された。
 したがって、平成10年2月1日から同13年7月31日までの使用料相当損害金は、
中断前(平成10年2月1日より同12年11月20日まで)
 金18,900円×33か月+18,900円×(20/30)=
 金636,300円
中断後(平成13年1月1日より同年7月31日まで)
 金18,900円×7か月=金132,300円
(両期間の合計 636,300円+132,300円=
 金768,600円)
となる。
 上記の中断前の期間は、被告らが共同して経営しており、中断後の期間は、被告ら及びEが共同して経営している。
4 遅延損害金
 また、被告らの上記使用料相当損害金支払義務は毎月の無許諾使用により発生するので、各月の使用料相当損害金に対し翌月1日を各起算日として各支払い済みまで民事法定利率年5分の割合による遅延損害金を請求する。

(別紙) 物件目録
1 大阪市(以下略)「パブ C」店舗内に設置されたアンプ、コマンダー、マイク、スピーカー、モニターテレビ等の組み合わせからなるカラオケ関連機器一式
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日本ユニ著作権センター
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