判例全文 | ||
【事件名】立体商標“ヤクルト”事件(2) 【年月日】平成13年7月17日 東京高裁 平成12年(行ケ)第474号 審決取消請求事件 (平成13年5月24日 口頭弁論終結) 判決 原告 株式会社ヤクルト本社 訴訟代理人弁護士 菊池武 弁理士 清水徹男 同 醍醐邦弘 被告 特許庁長官 及川耕造 指定代理人 為谷博 同 茂木静代 主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 原告の求めた裁判 「特許庁が平成11年審判第16888号事件について平成12年10月30日 にした審決を取り消す。」との判決。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯 原告は、平成9年4月1日、下記の本願商標の構成からなる商標について、第29類「乳酸菌飲料」を指定商品として登録出願したところ、平成11年9月2日拒絶査定があったので、同年10月15日これを不服として審判を請求し、平成11年審判第16888号事件として審理されたが、平成12年10月30日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決があり、その謄本は同年11月15日原告に送達された。 2 審決の理由の要点 (1) 原査定の理由 原査定は、「本願商標は、その指定商品との関係よりすれば、多少デザインが施されてはいるが特異性があるものとは認められず、通常採用し得る形状の範囲を超えているとは認識し得ないので、全体としてその商品の形状(収納容器)の一形態を表したものと認識させる立体的形状のみよりなるものといわざるを得ないから、これをその指定商品について使用しても、単に商品の包装(収納容器)の形状を普通に用いられる方法をもって表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」として、本件出願を拒絶したものである。 (2) 審決の判断 (2)−1 平成8年法律第68号により改正された商標法は、立体的形状若しくは立体的形状と文字、図形、記号等の結合又はこれらと色彩との結合された標章であって、商品又は役務について使用するものを登録する立体商標制度を導入した。 立体商標は、商品若しくは商品の包装又は役務の提供の用に供する物(以下「商品等」という。)の形状も含むものであるが、商品等の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品等の形状の持つ美感を追求する等の目的で選択されるものであり、本来的(第一義的)には商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として採択されるものではない。 そして、商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは前記したように、商品等の機能又は美感をより発揮させるために施されたものであって、本来的には、自他商品を識別するための標識として採択されるのではなく、全体としてみた場合、商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者・需要者は当該商品等の形状を表示したものであると認識するにとどまり、このような商品等の機能又は美感と関わる形状は、多少特異なものであっても、いまだ商品等の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないと解するのが相当である。 また、商品等の形状は、同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用する必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。 そうとすれば、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、使用をされた結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者・需要者間において、当該形状をもって同種の商品等と明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。 (2)−2 立体商標制度を審議した工業所有権審議会の平成7年12月13日付け「商標法等の改正に関する答申」30頁においても「3.(1)立体商標制度の導入 需要者が指定商品若しくはその容器又は指定役務の提供の用に供する物の形状そのものの範囲を出ないと認識する形状のみからなる立体商標は登録対象としないことが適当と考えられる。・・・ただし、これらの商標であっても使用の結果識別力が生ずるに至ったものは、現行法第3条第2項に基づき登録が認められることが適当である。」としている。 また、意匠法等により保護されている形状等について重ねて又はその権利消滅後商標登録することにより保護することは知的財産制度全体の整合性に不合理な結果を生ずることとなる。 (2)−3 これを本件出願についてみれば、本願商標は、上記のとおりであって、液体等を収納する容器そのものを表した立体的形状よりなるものであるから、これをその指定商品に使用しても、取引者・需要者は、単に商品「乳酸菌飲料」の収納容器を表示するにすぎないものとして理解するにとどまり、自他商品を識別するための標識とは認識し得ないものと判断するのが相当である。 原告(請求人)は、本願商標の形状は決して特異性がないものではなく、通常採択し得る形状でもない旨主張する。 しかしながら、原告も参考資料第13号を提出しているように、「乳酸菌飲料」を取り扱う業界においては、その取り扱う商品が液体であるがゆえに、特徴を持たせた形状の容器を多種類採用し、その容器に商品を収納して販売していることは一般に行われているところであって、本願商標を構成する収納容器の特徴は、商品等の機能(飲み易さ、持ち易さ等)や美感(見た目の美しさ)を効果的に際立たせるための範囲内のものというべきである。 しかして、本願商標は、前記認定のとおり、ややその形状が特徴的なものであっても、それは商品等の機能又は美感をより発揮させるために施されたものであり、商品等の形状を普通に用いられる方法の範疇で表示する標章のみからなる商標というべきであって、本願商標は、その形状に特徴を持たせたことをもって自他商品の識別力を有するものとは認められないことは(2)−1で述べたとおりである。 (2)−4 立体的形状からなる商標であっても、商品又はその包装の形状をもって構成されるものについては、本来的又は直接的には他の知的財産制度で保護されるものであることなど、平面的な商標とは明らかに異なるものであるため、商標法においては、立体商標制度導入に当たって、商標法第4条第1項第18号等が設けられ、また、前掲工業所有権審議会答申でも、「・・・指定商品やその容器の形状そのものの場合には不登録とする運用を厳しくすること・・・」としている(前掲答申31頁参照)。 そして、商品又はその包装の形状であっても、使用により自他商品の識別力を取得する場合があり、そのときには、識別力を認めて登録することは前示のとおりである。 (2)−5 原告は、「本願商標は、永年使用の結果、自他商品を識別する機能を具有するに至っているものであるから、商標法第3条第2項の規定が適用されるべきである。」旨主張し、原審査において参考資料第1号ないし第8号(枝番を含む。)を提出し、さらに、審判において同第9号ないし第16号(枝番を含む。)を提出した。 そこで、原告提出の各参考資料について検討するに、原告が本願商標の使用に係る実績として提出した参考資料第2号ないし第5号(枝番を含む。)は、その資料中に記載されている本願商標と同一と認められる収納容器には、いずれも「ヤクルト」の文字が表示されているものである。 ところで、商品等の形状に係る立体商標が、商標法第3条第2項に該当するものとして登録を認められるのは、原則として使用に係る商標が出願に係る商標と同一の場合であって、かつ、使用に係る商品と出願に係る指定商品も同一のものに限られると解される。 しかして、本願商標と使用商標の異同はおくとしても、前示のとおり、収納容器の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、あるいは、その美感を追求する等の目的で選択されるものであって、本来的(第一義的)には、商品の出所を表示し自他商品を識別する標識として採択されるとはいえないものであり、その識別機能を果たすものとしては文字、図形又は記号等が適しているため、専らこれらが自他商品の識別標識として採択、使用されていることは顕著な事実であること及び前示認定のとおり、本願商標に係る形状が収納容器の一形態を表示するにすぎないものであることからすれば、前記参考資料中の商品「乳酸菌飲料」は、「ヤクルト」の文字商標により識別されているというべきである。 また、参考資料第7号の1ないし54は、公的機関や同業組合等により証明がなされているものではあるが、その証明書が「証明願」を表題とする一枚の用紙のみであるため、証明者が安易に署名、押印をしたのではないかという疑問及び証明書に記載の文面からみて、果たして証明者が本願商標(収納容器の形状)自体が立体商標として自他商品識別機能を有するに至っているとの認識に基づいて証明したものであるか否かの疑問を否定し得ないものであり、さらに、「本件商標に係る収納容器の形状のみを見て原告の業務に係る商品であるとの認識を示した者が82.9%である。」旨の主張の根拠とする参考資料第16号は、「ヤクルト容器アンケート」と題するものであるが、他社が乳酸菌飲料の収納容器として採用している類似の容器(例えば、参考資料第14号)との比較がなされていないことやアンケート中に「ヤクルト」「ヤクルト以外の商品」の文言の記載が認められ、アンケート対象者がその文言に誘導された可能性も否定できないことから、前記参考資料はにわかには採用し難い。 なお、参考資料第8号の1ないし10は、本願商標と同一と認められる収納容器の外国における登録例であるが、諸外国における立体商標の登録制度と我が国のそれが同一のものと解釈しなければならない事情が存するものとは認められないから、これに基づく主張は採用の限りでない。 その他、原告提出の参考資料を総合してみても、本願商標それ自体が自他商品の識別標識としての機能を有するに至っているとするには十分とはいえないものであるから、さきの認定を覆すに足りない。 (3) 審決の結論 以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであって、同法第3条第2項の要件を具備するものとも認められないから、登録することはできない。 第3 原告主張の審決取消事由 1 商標法第3条第1項第3号について (1) 原告が昭和40年9月15日、本願商標と同一の容器の形状につき包装用容器を意匠に係る物品として意匠登録出願した後、昭和43年7月1日に販売を開始した当時、同一ないし類似の形状の包装用容器は他に全く存在しなかった。 原告は、昭和40年春、新幹線のスマートな流線型車輌のデザイン設計などで知られる高名な剣持勇デザイン研究所に対し、保健飲料「ヤクルト」の新容器のデザインを依頼し、原告が採用した容器の「形状」は、結果として、過去に、他に全く見られなかった独特なものとなった。その要点は、以下の3点に集約される。 第1に、瓶の中程、真中より稍上部に丸みを帯びた「くびれ」を付したこと。 第2に、「飲み口」の形状を「哺乳瓶の吸い口」の形状としたこと。 第3に、「くびれ」によって、円筒部分の直径を大きくし、視覚上(見かけ)の大きさが小さく見えない形状となっていること。 原告は、この形状について昭和40年9月15日意匠登録出願し、昭和50年7月9日に登録第409380号意匠権を得るに至った。同様の他社の意匠、例えば、登録第344239号、同407639号、同第430575号の意匠登録出願はすべて、原告製品が販売された昭和43年より後の昭和44年以降である。 原告は、上記意匠登録出願から3年弱経過した昭和43年7月1日に、その形状の容器「くびれ瓶」に乳酸菌飲料を入れた商品の販売を開始した。その当時、上記意匠登録出願に係る形状と同一若しくは類似の形状の容器は市場に皆無であった。 (2) 本願商標の形状の市場における優位性 原告は、昭和53年5月から6月にかけて、上記意匠に加えて、一連の類似意匠登録出願等をした。これらによって、この種形状は昭和43年原告が市場で発売開始当時からユニークなものとして評判となり、乳酸菌業界では、「著しく特異な形状」として認識されるにいたり、市場独占のゆるぎない地位を長年月にわたり保持し続けた。昭和53年の類似意匠登録出願はあくまで、それまで10年余りにわたって培われてきた独占的地位を強化する目的でなされた。 本願商標の形状の市場における優位性はゆるぎないもので、本願商標の形状は、強い識別力を有している。 2 商標法第3条第2項について (1) 原告の容器の「形状」は著しく特異であるために識別力を獲得したのであって、原告製品の瓶の「ヤクルト」と書かれた文字商標によって得られたものではない。何人も、「ヤクルト」の文字がなくとも、本願商標に係る瓶そのものをみただけで、ヤクルトだと弁別しているのであり、それほどに、本願商標の「くびれ瓶」は強い特徴を有しているのである。 (2) 原告が昭和43年7月1日に販売を開始した当時、同一ないし類似の包装用容器は他に全く存在しなかった。この事実は、商標法第3条第2項の適用を考えるうえでも重要である。他社の類似包装用容器の出現時期は、次のとおりである。 製造(販売)社 容器使用開始時期 サントリーフーズ 平成11年 東洋醗酵乳梶i森永乳業梶j 昭和51年ころ 潟Nロレラライト本社 昭和55年ころ 日本ブルガリー梶i明治乳業梶j 昭和48年ころ 雪印ラビオ梶i雪印ローリー梶j 平成8年 関西ルナ株式会社 平成10年 チチヤス乳業株式会社 昭和45年 ルナ物産株式会社 昭和53年ころ 株式会社エルビー 昭和55年ころ 日清ヨーク株式会社 平成6年3月 ホワイト食品株式会社 昭和54年 以上のとおり、各社製品の販売開始時期は、ほとんど原告製品販売開始時期(昭和43年7月1日)よりもかなり後であり、既に、本願商標の著名性が確立した後のことといえる。 3 意匠法との関係についての判断について 審決は、「意匠法等により保護されている形状等について重ねて又はその権利消滅後商標登録することにより保護することは知的財産制度全体の整合性に不合理な結果を生ずることとなる」と判断したが、誤りである。 現行法は、商標権と意匠権とで一部に重複することがあり得ることを 念頭において、両者間の調整規定として、商標法第29条及び意匠法第26条を設けている。両法条の規定は、商標権と意匠権とが併存することがあることを前提としているが、意匠権消滅後に立体商標が存続し得るし、新たに、立体商標が登録されても何らおかしくない。要は、意匠権の対象となり得る美感を有する形状であれば、意匠法で保護されるのであり、立体商標の対象となり得る形状であれば、意匠権の存否とは全く無関係に、商標法で保護されるのである。 第4 審決取消事由に対する被告の反論 1 商標法第3条第1項第3号について (1) 本願商標は、その指定商品「乳酸菌飲料」の収納容器(瓶)の立体的形状と認められるものであるところ、その形状において、原告主張の「瓶の中程、真中より稍上部に丸みを帯びた『くびれ』を付したこと、『飲み口』の形状を『哺乳瓶の吸い口』の形状にしたこと、『くびれ』によって、円筒部分の直径を大きくし、視覚上(見かけ)の大きさが小さく見えない形状としたこと」は、液体等の一般的な収納容器(瓶)の用途、機能からみて予想し得る程度の特徴にすぎない。本願商標を構成する立体的形状の特徴は、飲みやすさや持ちやすさ等、専ら収納容器(瓶)の機能や美感をより発揮させるために採択されたものであることは明らかであり、発揮させるために採択されたものであることは明らかであり、機能又は美感とは関係のない特異な立体的形状ということはできない。 したがって、本願商標をその指定商品「乳酸菌飲料」に使用しても、取引者・需要者は、全体として、単に「乳酸菌飲料」の収納容器(瓶)の形状を表示したと認識するにとどまる。 (2) 意匠法における保護は、同法の目的に基づいて、保護の対象・要件・権利の範囲・効力等が定められ、意匠権消滅後は何人もその実施が予定されているものであって、商標法における保護とは明らかに異なるものであるから、商品等の立体的形状が意匠登録されているか又はされていたことの理由のみでは、当該形状を自他商品の識別力を有するものとして商標登録することができないとしたものである。 したがって、商品等の立体的形状が自他商品の識別力を有するものであれば、意匠権との併存もあり得ること及びその形状に係る意匠権の消滅後においても商標登録がされる場合のあることを否定するものではない。 2 商標法第3条第2項について 本願商標を構成する立体的形状において、その中程よりやや上部に丸みを帯びた「くびれ」を付したことは、液体等の一般的な収納容器(瓶)の用途、機能からみて予想し得る程度の特徴にすぎず、専ら収納容器(瓶)の機能や美観をより発揮させるために採択されたものというべきであるから、本願商標は、これをその指定商品に使用しても、取引者・需要者は、全体として「乳酸菌飲料」の収納容器(瓶)の形状を表示したと認識するにとどまる。 また、商品等の形状に係る立体商標が、商標法第3条第2項に該当するものとして登録を認められるのは、原則として使用に係る商標が出願に係る商標と同一の場合に限られると解される。したがって、出願に係る商標が立体的形状のみからなるものであるのに対し、使用に係る商標が立体的形状と平面標章より構成されている場合には、両商標の全体的構成が同一でないことから、出願に係る商標については、原則として使用により識別力を有するに至った商標ということができない。 原告が本願商標の使用に係る実績として提出した資料中に記載されている収納容器には、いずれも「ヤクルト」の文字が表示されていることから、使用に係る商標は、立体的形状と平面標章より構成されているものであって、本願商標と同一とはいえない。 第5 当裁判所の判断 1 商標法第3条第1項第3号の該当性について 当裁判所も、本件出願の査定がその理由で示しているように、「本願商標は、その指定商品との関係よりすれば、多少デザインが施されてはいるが特異性があるものとは認められず、通常採用し得る形状の範囲を超えているとは認識し得ないので、全体としてその商品の形状(収納容器)の一形態を表したものと認識させる立体的形状のみよりなるもの」と判断するものである。原告は、本願商標の形状は著名なデザイナーに依頼して完成し、これと同様の形状につき意匠登録がされたと主張するが、この主張事実も、本願商標の指定商品「乳酸菌飲料」との関係からみて、多少デザインが施されているものの、その商品の収納容器について採用し得る形状の範囲を超えているものとは認識し得ないとの上記判断と矛盾するものではなく、上記判断を覆すに足りるものではない。 本願商標は、指定商品である「乳酸菌飲料」の容器に関するものである。そこで、飲料に係る商品の容器の形状に係る立体商標についてみるに、このような容器の形状は、容器自体の持つ機能を効果的に発揮させたりする等の目的で選択される限りにおいては、原則として、商品の出所を表示し、自他商品を識別する標識を有するものということはできない。原告は、本願商標につき、「瓶の中程、真中より稍上部に丸みを帯びた「くびれ」を付したこと、「飲み口」の形状を「哺乳瓶の吸い口」の形状としたこと、「くびれ」によって、円筒部分の直径を大きくし、視覚上(見かけ)の大きさが小さく見えない形状となっていること」において、容器の形状が独特なものであると主張するが、これらの点を考慮しても、本願商標の指定商品である「乳酸菌飲料」の一般的な収納容器であるプラスチック製使い捨て容器(甲第4号証=本件審査における原告の平成10年5月20日付け意見書の参考資料第2号その2参照)の製法、用途、機能からみて予想し得ない特徴が本願商標にあるものと認めることはできない。その他、本願商標が、商品の出所を表示し、自他商品を識別する標識を有するものであることに関する事実関係を認めるべき証拠はない。 したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するとした審決の判断に誤りはない。 2 商標法第3条第2項の該当性について 上記1に判断したところを前提にし、また、本件出願当時、既に本願商標の立体形状と同様に「くびれ」のある収納容器が原告以外の業者の乳酸菌飲料等の製品に多数使用されていたことが推認される点(甲第15号証、乙第6号証及び弁論の全趣旨)、他方、原告の商品である乳酸菌飲料「ヤクルト」について、その収納容器に「ヤクルト」の文字商標が付されないで使用されてきたことを認めるに足りる証拠はない点などをも併せ考えると、原告が主張するように、本願商標と同様の飲料製品が販売されたのは原告製品よりも後のことであることを斟酌してみても、原告の商品「ヤクルト」の容器が、その形状だけで識別力を獲得していたと認めるのは困難である。 なお、乙第5号証の3によれば、原告が本願商標と同じ平成9年4月1日に出願した立体商標は、本願商標と同一と認められる収納容器の形状とその下部円筒部に付された「ヤクルト」の文字商標とからなるものであるが、この立体商標は平成10年8月28日に登録されていることが認められる。 原告が審判で提出した参考資料について判断している審決の判断部分(審決の理由の要点(2)−5)における説示(そこに示されている参考資料は、本訴においては甲第4号証中の参考資料に対応する。)も支持することができる。そこに説示されている以外に、本願商標につき商標法第3条第2項に該当することを裏付けるべき事実関係を認めるべき証拠はなく、本願商標につき商標法第3条第2項の適用を否定した審決の誤りをいう審決取消事由も理由がない。 3 判断のまとめ 原告のその余の主張を斟酌してみても、「本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであって、同法第3条第2項の要件を具備するものとも認められないから、登録することはできない。」とした審決の判断に誤りがあるということはできない。 第6 結論 以上のとおり、原告主張の審決取消事由は理由がないので、原告の請求は棄却されるべきである。 東京高等裁判所第18民事部 裁判長裁判官 永井紀昭 裁判官 塩月秀平 裁判官 古城春実 |
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