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【事件名】知的所有権登録会社の名誉毀損事件
【年月日】平成13年12月20日
 東京地裁 平成12年(ワ)第25977号 損害賠償等請求事件


判決
主文
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由
第1 請求
1 被告は、原告らに対し、各自金500万円及びこれに対する平成12年12月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告は、原告らに対し、日本の全ての地域において発行される朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞に別紙1「謝罪広告」記載の謝罪広告を掲載せよ。
第2 事案の概要
本件は、被告が原告らの行っている知的所有権(著作権)登録(以下「本件登録」という。)商法が詐欺に該当する旨及び原告らのうち個人2名を詐欺罪で刑事告発する予定である旨をマスコミ各社を招いた記者会見において発表し、その上で上記刑事告発を行ったことについて、上記刑事告発された原告ら2名及び本件登録の業務(以下「本件登録業務」という。)を行っている原告株式会社知的所有権協会(以下「原告会社」という。)が、上記刑事告発及び上記記者発表により名誉信用が著しく毀損されたと主張して、被告に対し、不法行為に基づき損害賠償及び謝罪広告の掲載を求めた事案である。
1 争いのない事実等(証拠により認定した事実については、各項の末尾に当該証拠を摘示した。)
(1) 当事者
ア 原告Aは、明治40年6月22日生まれの者であり、昭和36年に社団法人発明学会を設立して会長職に就任し、平成4年に本件登録の制度(以下「本件登録制度」という。)を始めた者である。(争いがない)
イ 原告会社は、著作権、商標等の財産権の取得、譲渡、貸与、売買並びに仲介等を目的とする株式会社として平成5年に設立され、本件登録業務を行っている。(争いがない)
ウ 原告Bは、原告会社の代表取締役である。(争いがない)
エ 被告は、弁理士法に基づき設立された弁理士を会員とする法人である。(争いがない)
(2) 本件登録の手続
ア 発明・創作者は、知的所有権(著作権)登録願用紙(以下「本件登録願用紙」という。)に、図面、創作・考案アイデアの要約、従来の方法とその欠点、創作・考案アイデアの構成、創作・考案アイデアの作用・効果を記載し、登録料2000円を添えて原告会社に提出する。
イ 原告会社は、上記登録願用紙に登録番号を付して、50円の郵便切手を貼付し郵便局に持参し、消印を得る。
ウ その後、原告会社は、発明・創作者に対し、知的所有権登録書を送付する。この登録書の文面は以下のとおりである。

 「知的所有権登録書
  知的所有権登録第  号
  あなたの作品は著作権法第2条により上記登録番号を授与し、完全なる著作権の発生を証明す
  平成 年 月 日
  知的所有権協会」

エ 原告会社は、発明・創作者に対し、企業への売り込み方などの指導も実施している。(以上アないしエにつき、甲2ないし4、乙4の1・2、5の1・2、6の1・2、7の1・2、8ないし10、11の1・2、12の1・2)
(3) 被告による記者発表
ア 被告は、下記(4)の告発に先立ち、平成12年9月19日、マスコミ各社に対し、告発についての記者会見開催の案内を送付し、翌20日午後3時30分ころから午後4時30分ころまで、弁理士会3階会議室においてマスコミ各社を招いて記者会見を開催し、本件登録制度を実施している原告会社の代表取締役である原告B及びそのバックにいる発明学会会長の原告Aを告発する予定であること、同人らは、本件登録に出願することによって、特許庁に出願したと同じような権利が得られるというように発明家を騙しているということを発表し、また、同趣旨の内容が記載された「『知的所有権(著作権)登録』商法の実態と刑事告発の概要」と題する記者会見資料をマスコミ各社に配布し、上記の事実を各メディアを通じて報道することをマスコミ各社に要請した(以下「本件記者発表」という。)。(甲8ないし10)
イ 本件記者発表を受け、朝日新聞等に、本件記者発表の内容に沿う記事が掲載され、また、テレビ各局のニュース番組でも採り上げられた。(争いがない)
ウ 上記朝日新聞(平成12年9月21日発行)掲載記事の具体的記述は以下のとおりであった。(甲12)
 見出し 弁理士会 発明学会長ら告発へ
 詐欺容疑 著作権装い登録料
 本文 弁理士会(C会長)は20日、A・発明学会会長と株式会社「知的所有権協会」のB社長の2人を詐欺の疑いで、近く警視庁に告発すると発表した。弁理士会によると、2人は「知的所有権(著作権)登録」と称して、本来は「工業所有権」で保護されるべき発明や工業デザインを、「著作権」で保護できるかのように装い、一般から登録を募り、1件当たり2千円の登録料をとっていた詐欺の疑いがある、という。
  弁理士会は、A発明学会会長がこの登録商法を考え、知的所有権協会が登録機関になっていると指摘。同協会への登録数は17万件に上っているという。(以下略)
(4) 被告による原告A及び原告Bに対する詐欺容疑による告発
 被告は、平成12年9月27日、原告A及び原告Bを詐欺容疑で警視庁に告発した(以下「本件告発」という。)。上記告発に係る告発事実は概略以下のとおりである。
 原告A及び原告Bは共謀の上、著作権登録料名下に金員を詐取しようと企て、著作権法により保護される対象には特許法、いわゆる工業所有権において保護される発明、アイデアは含まれないのを十分承知していたにもかかわらず、原告会社に著作権として登録することにより、あたかも工業所有権で保護の対象となっている発明、アイデアが保護されるかのように装い、平成5年ころより、原告Aにおいては、多数の著作物等にて「知的所有権協会への著作権登録により先使用権が取れ防御特許になる。」旨記述してこれを出版販売して、原告会社への著作権登録への勧誘及びその登録を推奨し、原告Bにおいては、原告会社発行の本件登録願用紙裏面の目的欄に「著作権というのは写真でも作文でもイラストでも、発明でも他人のまるうつしでないものは、凡そ権利になり、100年近くの長い間権利料がとれる。」、登録の効果欄に「原稿に法的日付を刻印する。」、「日付が正確だから『先使用権』や防御特許になる。」、「ここに登録しておくとすぐ権利になって著作権侵害で内外のまねを防げる、また権利がとれる。」等記載して前記登録願用紙を有料配布し、自己の発明、アイデア等を原告会社に本件登録願用紙を使用して著作権として登録すれば、工業所有権で保護の対象となる発明、アイデアが保護されるのと同様の法的保護が受けられるものと誤信させ、被害者ら3名から、原告会社への直接支払い、または原告会社への現金書留の送金により登録料名下に合計6万9800円を詐取したものである。(乙1)
(5) 本件告発がなされた平成12年9月27日、産経新聞、日本経済新聞、東京新聞等に、被告が本件告発をした旨の記事が掲載された。(甲13ないし15)
2 争点及び争点に関する当事者の主張
(1) 本件告発及び本件記者発表により原告らの名誉が毀損されたか。
(原告の主張)
 本件登録制度は、発明の振興を願って考え出された真に意義のある制度であり、原告A及び原告Bは詐欺罪など犯していないのであるが、それにもかかわらず、被告は、本件告発及び本件記者発表により上記両名が詐欺罪を犯したとの事実を公言し、その旨のニュース番組を各テレビ局に流させ、また各新聞社をしてその旨を大々的に記載した新聞記事を多量に頒布させたのであって、これらの行為が原告らの名誉信用を著しく毀損した。
(被告の主張)
 原告の主張は争う。
(2) 本件告発及び本件記者発表が公共の利害に関する事実に係るものか、また、その目的が専ら公益を図ることにあったか。
(被告の主張)
 被告が本件告発及び本件記者発表を行ったことは、知的所有権に関する社会公共の関心事という公共の利害に関する事実について、本件登録によって被害を受ける者をこれ以上増やさず、知的財産権に関する正確な知識を一般人に広めて、適切な権利の保護を図るという公益を図る目的のために、知的財産権に関する重要な担い手(弁理士)を指導及び監督する団体である被告(日本弁理士会)が行ったものである。
(原告の主張)
 被告の本件告発及び本件記者発表が公共の利害に関する事実に係るものであることは認める。
 しかし、それが公益目的のためになされたとの主張は否認する。被告は、原告らの行為を抹殺するために本件告発及び本件記者発表を行ったのである。すなわち、本件登録制度によって発明やアイデアが工業所有権ほどの効力はなくとも保護され得るとすると、発明家は本件登録制度の方を選択して、弁理士に出願等を依頼することを取り止めることが予想され、また、原告らは個人で特許等の出願をする方策をも教授しているのでさらに弁理士の仕事の妨害になると被告は考えたからである。
 また、弁理士の役割は、弁理士法で定められている弁理士の業務を誠実かつ適正に処理することに尽きるのであって、「知的財産権に関する正確な知識を一般人に広める」とか、知的財産権に関する事項が国民の間で適切に処理されるように監督指導するとかの使命は弁理士法に規定はないのであって、弁理士やその団体である被告にはそのような使命は認められていない。
(3) 本件告発及び本件記者発表により摘示された事実が真実であるといえるか、あるいは、上記事実を真実であると信じるについて相当の理由があるといえるか。
(被告の主張)
ア 被告が本件告発及び本件記者発表により摘示した事実は真実である。
(ア) 原告らの欺罔行為
 原告らは、本件登録によっては発明やアイデアそのものが何ら法的に保護されないことを知りながら、知的所有権について十分な知識を持たない者を対象に、上記登録によりあたかも何らかの法的保護が生じるかのように宣伝、流布して、そのように誤信させているものである。原告Aの各種著作物や原告会社が作成しているパンフレットその他の書類は、一瞥しただけでは、この点を誤解、混同してしまうように記載されている。
 上記のような手口を駆使して原告らにより行われた詐欺の概要は以下のとおりである。
 すなわち、著作権により保護される対象には、いわゆる工業所有権(特許権、実用新案、意匠権及び商標権)において保護される発明やアイデアは含まれないにもかかわらず、原告会社に対して著作権を登録することにより、あたかも工業所有権で保護の対象とされる発明やアイデアが保護されるかのように装い、原告Aにおいて、多数の著作物等に「知的所有権協会への著作権登録により、先使用権が取れ防御特許になる」旨記述してこれを出版販売して、著作権登録への勧誘及びその登録を推奨し、原告Bにおいて、本件登録願用紙裏面の目的欄に、「特許をとるには十万円もいるから出願できない人が何万人もいる。米国では、それ等を著作権にして高く外国に売りつけている。」、「例えば香川婦人はスリッパの踵を切り取った。これも特許にならぬので著作権にした。年に3千万円も権利料をとっている。」、「正田さんは、ハート形のよだれ掛けを考えた。これも意匠にならぬので著作権にした。月々50万円になっている。」、「著作権というのは写真でも作文でもイラストでも、発明でも他人のまるうつしでないものは、凡そ権利になり、100年近くの長い間権利料が取れる」旨、さらに登録の効果欄に、「日付が正確だから「先使用権」や防御特許になる。」などと記載してこれを印刷のうえ有料頒布し、原告Aの前記著作物や本件登録願用紙裏面を閲読した者をして、原告会社に対し自己の発明やアイデアを登録すれば、あたかも工業所有権で保護の対象とされる発明やアイデアが保護されるのと同様の保護が受けられるものと誤信させ、登録料や登録継続料などとして金銭を詐取したものである。
(イ) 本件登録の意義についての原告の主張に対する反論
 原告は、「発明やアイデアの表現形態によって先使用権の取得を証明したり、発明やアイデアの表現形態である解説書や図画や使用説明書等について、これに類似したものの他人による作出を著作権の効力をもって妨げることによって、事実上同じ発明やアイデアの実施を妨げるとともに、反射的効果として発明やアイデアについて発明者の有利な地位を作出しようとすることを目的とする制度である。」とするが、これは、「事実上」とか「反射的効果として」といった曖昧な用語で論理的に矛盾した文章をつなぎ合わせていることが明らかである。
a 著作権は、思想・感情を創作的に表現した表現そのものを保護するのであり、思想や感情の独占を認めるものではない。むしろ、当該思想・感情の表現方法が多様であることを前提に、当該特定の表現方法についての独占権を認めるものである。著作権である以上、発明やアイデアを他に表現する方法があることを大前提に、表現が保護されているだけなのであるから、原告らの所論の方法では、発明やアイデアを保護することにはならない。一方、特許権は、多様性を前提とせず、技術的思想の合理的到達点との発想で発明やアイデア自体を保護しているのであって、著作権と特許権とではよって立つ基本的な発想、前提が異なるのであるから、著作権を手段として「事実上」でも「反射的に」でも、特許権に代替する効果を期待することはできない。
b それどころか、本件登録願用紙に商品形態やアイデアを記載することにより、また、同登録により法的保護を得られたと誤信した者が原告らの推奨に従い企業等にアイデアを売り込んでしまうことにより、仮にそれらのアイデアが意匠権や特許権を取得し得るものであったとしても、新規性が喪失してしまい、発明者の意図とは正反対に全く法的保護を受けられなくなってしまう。
c 原告らは、上記abのことを十分認識しながら、本件登録をすれば、あたかも工業所有権で保護の対象とされる発明、アイデアが保護されるのと同様の保護が受けられるものと誤信させ、登録料や登録継続料などとして被害者から金銭を詐取した。
(ウ) 防御特許について
 原告らは、防御特許なる概念はなく、まして法律上の効果がないことを知りながら、素人が読めば、防御特許は先使用権と同義又は類似の法律上の効果がある権利であるとか、特許法の防御特許を取得できるとか、他人の特許を無効にしたり、権利金を取ることもできると誤信させるような、曖昧で誤った理解に誘導するかのごとき説明を行い、登録料と称する金銭を受領した。
(エ) 先使用権について
 先使用権とは、特許権者の発明と同内容の発明を、その特許出願前から善意で使用している者に対し、一定の条件の下で与えられる法定の通常実施権である(特許法79条)が、先使用権の取得要件として、実際に「事業の準備」をしていたことが必要である。しかし、例えば本件登録願用紙裏面の説明には、「日付が正確だから、『先使用権』や防御特許になる。」とのみ記載がされ、上記の取得要件については全く記載されておらず、あたかも本件登録を行えば、それだけで先使用権を取得し得るとの誤信を生むような内容となっている。また、先使用権は成立しただけではなく、現に特許がなされ権利行使を受けた時点においても継続的に実施していなければならないという、先使用権の存続条件があるのであるが、例えば本件登録願用紙裏面の説明には、「権利の売買は最初の2年か3年が多い。」などと記載されており、アイデアが2、3年実施されることもなく放置されることが前提となっているのであって、それでは到底先使用権が認められるはずもない。
 原告らは、事実実験公正証書で先使用権を証明した事例があり、本件登録でも同様の効果が期待できる旨主張するが、事実実験公正証書は、公証人が「事業の準備」に該当する具体的事実の存在を確認し、それを公正証書で証明するものであるのに対し、本件登録は、その時期において本件登録願書が存在した事実の立証に一定程度役立つだけであり、願書に記載された具体的な「事業の準備」が、実際に存在したか否かを立証するものでは毫もない。
(オ) 故意の存在
 被告は、原告らの本件登録に対して、従来よりこれを警告し、広くパンフレットを配布して注意を呼びかけるなどしてきたが、原告らはこれに対して反論を続け、本件登録商法をやめようとしない。よって、原告らは、発明やアイデアが著作権法で保護されないことを十分知りながら、原告会社において本件登録商法を続けており、詐欺罪としての故意も存する。
イ 仮に上記事実の真実性の立証がなされなかったとしても、上記事実を真実であると信じたことは相当であり、名誉毀損行為についての故意、過失がない。
 被告は、原告らの主張のとおり「オーソライズドされた団体」であり、その言動は確実な資料根拠に基づきなされなければならないのは当然であるが、被告は、「民間業者による知的所有権登録対策委員会」を設置して被害の実態を調査し、被害者の事情聴取を重ね、十分な資料と根拠を備えて告発に及んだのである。
(原告の主張)
ア 被告が本件告発及び本件記者発表により摘示した事実は真実ではない。
(ア) 欺罔行為の不存在
 発明やアイデアそのものは特許権等の工業所有権によって保護されるものであり、著作権によっては保護されないことは言うまでもなく、原告らも、そのことを前提としているのであって、このことは、原告Aの各種著作物や原告会社のパンフレットその他の書類を一瞥すれば明らかであり、読者が発明やアイデア自体が著作権によって保護されると誤解することなどあり得ない。
 すなわち、原告Aは、本件登録制度について数多くの著作物を出版しているが、上記著作物において必ず特許権等の工業所有権や著作権について体系的かつ詳細な説明を行っており、また本件登録の眼目や効果を明確に記載しているのであって、上記著作物を読んだ本件登録申込者が、工業所有権と著作権を混同し、本件登録により特許権等と同じような効果を生じるというような誤解をする余地などないことは、上記著作物を一読すれば明らかである。
 被告は、原告Aの著作物や本件登録願用紙の記載を全体として捉えるのではなく、片言隻句を抽出して詐欺の成否を論じているが妥当でない。著作物の中の個々の記述は全体の中に位置づけられて初めてその真の意味を理解できるものであり、また、本件登録を行った人も原告Aの著作物全体を読んだ上で登録を行ったものと考えられるからである。
(イ) 本件登録制度の意義
 発明やアイデアそのものは著作権によっては保護されないにしても、その表現形態である解説書や図画等は著作権によって保護を受け得る。この点に着目して考え出されたのが本件登録制度である。
 発明やアイデアについては、特許等の出願を行い、登録の上工業所有権各法の定める保護を受けるのが本則であろうが、これらについては、@出願料、弁理士に対する報酬等に少なからぬ費用を必要とする、A出願には煩瑣な手続を必要とするし、出願から審査に通常でも数年を要し、登録までに時間が掛かり簡便かつ速やかな保護を受けることができない、B出願により発明やアイデアが公開されることになる、C特許は自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なものに限られるし、実用新案も物品の形状、構造または組み合わせに係わる考案に限られる等、工業所有権によっては保護されない発明やアイデアも存在するといった問題点が存在する。そこで、これらの問題点を踏まえ、工業所有権による保護まで受け得ないものの、より安く、より早く、さらに非公開で簡易に発明やアイデアを保護するために考え出された方法が本件登録制度なのである。
 すなわち、本件登録制度は、発明やアイデアの表現形態によって先使用権の取得を証明したり、発明やアイデアの表現形態である解説書や図画や使用説明書等について、これに類似したものの他人による作出を著作権の効力をもって妨げることによって、事実上同じ発明やアイデアの実施を妨げるとともに、反射的効果として発明やアイデアについて発明者の有利な地位を作出しようとすることを目的とする制度である。そして、本件登録が効用を発揮して成功を収めている事例は、現実にたくさんある。
(ウ) 新規性喪失について
 原告Aは、その著作物の中で新規性についても何度も説明しているだけでなく、被告が本件登録は新規性を喪失させる虞があると非難していることを紹介さえしている。読者はこれらのことも理解した上で本件登録に及んでいるのであり、何の問題もない。
(エ) 防御特許について
 防御特許とは、法律上の概念でもないし講学上も耳慣れない言葉であるが、原告らは、前記(イ)のように、本件登録することによって同様の発明やアイデアについて他人が特許等を取得してその実施を行うことを事実上妨げる効果を期待し得るという意味で使用しているのであって、それ以上のものではない。そして、防御特許なる言葉がそのような意味合いで使用されていることは、原告Aの著作物等を見れば明らかである。
(オ) 先使用権について
 先使用権という言葉について、原告らは、本件登録をすればそれだけで先使用権が発生するということは言っていない。原告Aの著作物では、本件登録は先使用権の要件が備わっている場合にその証明の役に立つと言っているに過ぎない。例えば、平成4年に出版されその後改訂を重ねている原告A著原告会社発行の「著作権登録願書のかき方」(甲4)においても、先使用権を認めさせるためには願書に「その準備をしていたことを明らかにしておかなければならない。」とか、この発明を実施するために友人と出資しあって任意団体を作っていた事実等の例を挙げて、それらを願書に記述しておかなければならない旨を詳述している。したがって、読者が本件登録さえすれば先使用権の要件とは全く関係なしに先使用権が発生するなどという誤解をするはずはない。
(カ) 故意の不存在
 仮に、欺罔行為が認められたとしても、原告らには故意が認められない。
 すなわち、原告らは、発明やアイデア自体あるいはその内容は工業所有権によって保護されるのであって著作権によっては保護されない旨、あるいは、著作権登録は先使用権の証明に役立つに過ぎない旨を明言しているのであり、仮に、被告が主張するような欺罔行為を原告らが行おうとしているのであれば、そのようなことを明言するはずがないのであるから、原告らには被告が主張するような欺罔行為についての故意はない。
イ 被告が「原告らの行為が詐欺罪に該当するという事実は真実である」と信じたことについては、相当の理由は認められない。
 告発は、人の名誉を毀損する可能性を常に有し、本件のような場合、原告らを社会的に抹殺しかねない要素を含んでいるのであるから、告発するに際しては、確実な資料根拠に照らして慎重に慎重を重ねて判断されなければならない。しかも、被告が弁理士という国家資格を有する者によって構成され、弁理士法によってその設立が求められているオーソライズドされた団体であり、被告の言動が社会に与える影響は大きく、その責任も極めて重いという被告の置かれた立場を考慮すれば、被告は、告発に際して、市井の人と比べて極めて高度の注意義務を負っている。
 しかし、本件では、被告は、確実な資料根拠に基づき告発が相当であると適正に判断した上でなされたものとはいえない。
 すなわち、原告Aの著作物を一読すれば、本件登録によって工業所有権と同様の権利が発生すると読者が誤解する虞などないこと、原告らには少なくとも読者にこのような誤解を惹起させて財物を騙取しようという意思などないことは容易に理解できるのであって、告発が相当であると適正に判断したとはいえない。むしろ、被告は、本件について詐欺罪の成立は認められないこと、したがって同容疑での告発は困難であることを承知の上で敢えて告発に及んだ可能性もある。
第3 争点に対する判断
1 争点(1)(名誉毀損の有無)について
 前記争いのない事実等によれば、被告による本件告発及び本件記者発表は、原告らが本件登録制度を用いて詐欺を行ったという事実を摘示したものである。この摘示事実を一般読者の普通の注意と読み方をもって読めば、告発の対象となった原告A及び原告Bのみならず、本件登録業務を行っている原告会社が詐欺的商法を行っているとの印象を受けるから、本件告発及び本件記者発表は、原告らの社会的評価を低下させるものであったことは明らかである。
 ところで、民事上の不法行為たる名誉毀損については、その行為が公共の利害に関する事実に係り、もっぱら公益を図る目的に出た場合において、摘示された事実が真実であることが証明されたときは、上記行為には違法性がなく、また、その事実が真実であることが証明されなくても、その行為者においてその事実を真実と信ずるについて相当の理由があるときには、上記行為には故意もしくは過失がなく、不法行為は成立しないものと解すべきである(最高裁判所昭和41年6月23日第1小法廷判決・民集20巻5号1118頁参照)。
 以下、これにつき争点(2)及び(3)において検討する。
2 争点(2)(本件告発及び本件記者発表の公共性、公益性)について
(1) 本件告発及び本件記者発表が公共の利害に関する事実に係ることについては当事者間に争いがない。
(2) そして、弁理士には知的財産権の適正な保護及び利用の促進に資するべきとする一般的な目的があること(弁理士法1条、乙20参照)、被告には、本件登録に関し、多数の被害相談が寄せられていたこと(後記3の(1)のウ。乙14、17、18)、本件告発及び本件記者発表に先立つ原告らの本件登録商法への対処について、被告は、被告独自で決定実施していたものではなく、通産省、特許庁、文化庁等の国家機関とも正式に協議を重ねた上で決定実施していること(後記3の(1)のイ。甲5、6)が認められることからすると、被告が本件告発及び本件記者発表を行ったことは、もっぱら知的財産権に関する正確な知識を一般人に広めて、適正な権利の保護を図るという公益を図る目的に出たものと認めるのが相当である。
3 争点(3)(摘示事実の真実性、相当性)について
(1) 証拠(甲2、4、19ないし21、乙1、13、14、17、18)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実を認めることができる。
ア 原告会社が平成11年に作成し、現在まで発行している本件登録願用紙裏面の目的欄及び登録の効果欄、並びに、「知的所有権著作権登録願書のかき方」(以下「本件登録願書の書き方」という。)には、別紙2「本件登録願用紙等記述概要」(以下、単に「記述概要」という。)記載の記述がある。
 また、原告Aの著作物である「知的所有権は誰でもとれる」(甲19)、「だれでも成功する著作権ビジネス」(甲20)、「著作権の取り方・生かし方」(甲21)には、それぞれ本件登録願用紙裏面及び本件登録願書のかき方の前記記述と同旨あるいはそれぞれ補完しあう内容の記載がある(例えば、甲19の61頁ないし63頁、216頁、227頁、甲20の94頁ないし97頁、甲21の26頁、35頁ないし37頁、63頁、64頁、137頁ないし139頁等)。
イ 被告は、平成6年ころより原告会社の調査を開始し、平成7年に「知的所有権登録対策委員会」を設置して原告らの本件登録商法につき検討を開始した。また、同時期に、被告の発案により、通産省、科学技術省、特許庁、文化庁などをメンバーとする「知的所有権登録対策連絡会」が設置されその対策が協議され、同連絡会は、平成7年12月、被告作成のリーフレットを地方自治体をはじめとする関係諸団体に送付するなどした。
 その後、被告は、東京、大阪及び名古屋に常設の「知的所有権登録商法相談室」を設け、弁理士を相談員として相談に対応していた。
 また、被告は、平成8年4月18日、名古屋弁護士会との共催で、「知的所有権登録商法110番」を実施した。相談者は自営業者などが多く、26件の電話相談があった。内容としては、「特許や実用新案より早く安くアイデアの保護が図れる。死後50年は盗まれずに済む。」、「各企業へ売り込んで使用料を請求できる。」などのセールストークで登録を勧誘され、数万円の手数料を取られたというものや、本件登録をしたと称する者から、「実施料を払え。侵害をやめよ。」などと警告を受けて困っているというものなどがあった。
ウ 平成7年10月から平成13年5月末日までに被告の事務局、特許相談室に寄せられた相談、平成8年2月に実施した相談アンケート及び同年4月に実施された名古屋弁護士会の本件登録商法の被害相談会に寄せられた相談の件数は、合計1211件であり、その内、明確に「被害に関する相談、問い合わせ」と分類できるものが40件(その他、重複質問の形をとるものの、「法律効果に関するもの」882件、「売り込みに関するもの」337件、「侵害・警告・訴訟に関するもの」74件等となっている。)、実際に被害金額の申告があった件数は52件、その被害額は約100万円から約2000円までであり、金銭返還請求により原告会社から金銭返還を受けた事例が2件(被害額4万8000円の件と被害額1万3000円の件)、訴訟による金銭返還を受けた事例が1件(被害額5万8000円の件)あった。
エ 本件告発事実に係る被害者の被害
(ア) D氏(本件告発事実に係る被害者3名を、順次「D氏」、「E氏」、「F氏」と称す。)は、書店で原告Aの著作物を読んで本件登録を知って、同登録をしようと思うに至り、本件登録願用紙を取り寄せた。D氏は、同用紙裏面に記述されている「知的所有権登録をすれば、『防御特許』になり、先使用権が得られ模倣を防ぐ」というくだり等を読み、アメリカにおける著作権の保護領域の考え方が日本にも広がってきたのかと、益々上記登録に興味を持った。さらに、D氏は、原告Aの著作物である「知的所有権は誰でもとれる」を購読したところ、上記登録願用紙裏面の記述と同様の記述があり、本件登録には、発明を侵害から保護して模倣を防ぎ、工業所有権的に権利が保護される効果があるものと信じるに至った。そこで、D氏は、原告会社に対し、数件の本件登録を行った。
(イ) E氏は、書店で原告Aの著作物である「知的所有権は誰でもとれる」を購読して本件登録を知った。E氏は、同書を購読することにより、本件登録をすれば知的創作物を独占使用する権利が発生し、特許権が得られると理解するに至った。E氏は、アイデアを権利化しようと思い、本件登録をさらに詳細に理解するために原告Aの著作物である「だれでも成功する著作権ビジネス」を書店で購読したところ、同書には、「特許はもう古い。著作権でもうけよう。」などと記述されていたことや、特許庁の出願に比較してわずか2000円の費用で独占使用権が得られるものと理解し、本件登録に益々興味を持った。また、E氏は、原告Aが社団法人の会長であることや同人の著作物が書店の発明コーナーの大半を占めていたことなどから本件登録が社会的にも信用があるものと理解した。そこで、E氏は、原告会社に対し、数件の本件登録を行った。
(ウ) F氏は、原告Aの著作物である「すぐ書ける特許・著作権出願法」、「著作権の取り方・生かし方」を読み、本件登録を知った。F氏は、同書巻末の記述を読み、本件登録ならば費用も1件2000円で済み、未発表のアイデアが著作権の証明を受けることにより盗用されない良法であると信じるようになった。F氏は、上記著作物の中の「本件登録により『表現』が保護される」という記述を見たが、著作権と工業所有権との違いについての十分な知識がないために、本件登録によって、特許ほどの権利の保護は認められなくとも、イラストや文章が著作権で保護されれば、発明やアイデアも結果的には保護され、実際にその発明により造形物が作成されても、本件登録により模倣を防げるものと信じるに至った。そこで、F氏は、原告会社に対し、数件の本件登録を行った。
(2) 以上の認定事実を前提に、本件告発及び本件記者発表により摘示された事実の真実性、相当性を検討する。
ア 上記(1)のアに認定した本件登録願用紙裏面、本件登録願書の書き方(別紙2記述概要参照)及び原告Aの著作物の内容については、概ね次のように理解できる。
(ア) 著作権の長所を特許権等との対比において強調している(@特許の出 願料は10万円であるが、原告会社が行っている著作権登録の費用は1件2000円であり安価であること、A特許の場合、低度の創作は特許として認められないが、著作権は低度の創作でも著作権となること、B特許は出願してから権利が認められるまで数年かかるが、著作権の場合直ちに権利になること、C特許は外国には及ばないが、著作権は世界にも及ぶこと、D特許権の存続期間は20年であるが、著作権は本人の死後50年であることなど)。(別紙2記述概要の1、2のB、C、3の(1)、(2)、(6)、(7))
(イ) 何らかの発明あるいは創作をしたが、特許権等の工業所有権には費用がかかるため出願しにくかったり、特許等に出願するほど創作の程度が高くないと考えている発明者に対し、著作権には(ア)のような長所がある のであるから、特許権に出願する前にまず、出費が少なくてすむ著作権にしておく、あるいは、原告会社の本件登録制度により登録することを勧奨している。(別紙2記述概要の1、3の(3)ないし(6))
 これらの記載においては、著作権は特許権を補完する役割を有するものとして並記されているので、特許権と著作権とは共通の目的のため、すなわち、発明やアイデアを権利として確保しておくという共通の目的のために存在するものであり、ただ、著作権の方が特許権よりも程度の低い権利であるという印象を一般の読者に与えるものといえる。
(ウ) 著作権の効果については、「模倣を防ぎ、権利料が取れる」(別紙2記述概要の1、2のB、3の(2)、(7))、「『先使用権』や防御特許になる。」(同2のA、3の(4)、(7))、「これを模倣した説明書は誰も作れないからマネを防ぐことができる。」(同2のA)などと記載し、「先使用権」という講学上の概念(特許法79条に定める通常実施権)や、「防御特許」という曖昧な言葉を用い、あたかも、著作権の効果として発明やアイデア自体が第三者により模倣されることを防ぎ、先使用権や防御特許なるものを取得することができる、という印象を一般の読者に与えている。
(エ) 著作権は届けを必要とせず発生するが、それを第三者に証明できなければ泣き寝入りすることとなるため、それを証明するために原告会社の本件登録の制度があるとした上で、原告会社の本件登録をすることを推奨している。(別紙2記述概要の2のB、D、3の(6))
(オ) このようにみてくると、本件登録願用紙裏面及び本件登録願書の書き方を一般人が読めば、自己の発明やアイデアを原告会社に知的所有権(著作権)登録すれば、特許権等の工業所有権と同様に、あるいは程度が低いものであるにせよ、自己の発明やアイデア自体が保護されるものと理解される危険性が十分にある内容となっているものといわざるを得ない。もちろん、著作権は、思想・感情を創作的に表現した表現そのものを保護する権利であって、技術的な発明やアイデア自体を保護する特許権とは異なり、発明やアイデア自体を保護する権利ではないのであるから、上記の記載は、一般の読者をして錯誤に陥れる危険性が十分にある記載だということになる。また、原告Aの著作物についても同様に考えることができる。
イ そして、本件告発に係るD氏、E氏及びF氏の3名の被害者は、上記(1)のエの(ア)ないし(ウ)に記載したとおり、本件登録願用紙裏面及び原告Aの著 作物を読んで錯誤に陥り、本件登録を行った。
 また、上記(1)のウに認定した事実及び弁論の全趣旨によれば、上記3名の他にも、現実に本件登録願用紙裏面、本件登録願書の書き方あるいは原告Aの著作物を読み、上記のような錯誤に陥った上で、原告会社に対し本件登録をした被害者が少なからず存在することが明らかである。
ウ 次に、弁論の全趣旨より、原告Aはもちろん原告会社の代表者である原告Bも、上記著作物及び本件登録願用紙の記載内容を認識していること、被告が従来から原告らの本件登録業務について注意を促す内容のパンフレットを配布したり(甲5)、上記(1)のイのとおり知的所有権登録商法110番を開設したり、それが新聞で報道される(乙17)などにより、原告らの本件登録商法が批判されていることを原告らは当然に認識していることが認められる。原告らは、そのような認識のもと、上記著作物及び本件登録願用紙の記述をそのままにして本件登録商法を継続しているのであるから、原告らが詐欺の故意を有していた可能性は極めて高く、少なくとも、被告において本件告発及び本件記者発表における摘示事実が真実であると信じたことにつき相当の理由があるものというべきである。
エ なお、原告らは、原告Aは著作物において必ず特許権等の工業所有権や著作権について体系的かつ詳細な説明を行っており、また本件登録の眼目や効果を明確に記載しているのであって、上記書籍を読んだ本件登録申込者が、工業所有権と著作権を混同し、本件登録により特許権等と同じような効果を生じるというような誤解をする余地などないことは、上記書籍を一読すれば明らかである旨主張する。
 確かに、原告Aの著作物には、@特許等の工業所有権や著作権についての体系的な説明を行い、特許法が発明等を保護する法律であり、著作権法が著作物の表現を保護する法律である旨記載している部分(例えば、甲19の24頁ないし28頁、甲21の14頁ないし16頁など)、A著作権が発明やアイデアの内容を保護するものではなく、そのルール解説書や仕様書の表現を保護するものであり、創作の内容と表現の双方を保護したい人は、特許権による保護と著作権による保護との双方を考えなければならず、特許権と著作権は表裏一体の関係にあるとの趣旨が記載されている部分(例えば、甲20の46頁ないし48頁、127頁ないし128頁、甲21の34頁ないし35頁など)、B先使用権及び防御特許についてその意味の説明を行い、先使用権が発生する要件として特許出願前からの実施あるいは実施の準備をしていたことが必要であること及びその証明の手段として本件登録が有効であることを記述している部分(例えば、甲19の227頁、甲21の189頁ないし191頁など)等があることが認められる。
 しかしながら、これらの著作物には、前記認定((1)のア)のとおりの記述部分があるのであって、全体としてみれば@ないしBの記載にかかわらず、著作権と工業所有権との差異を明確にし、読者の誤解を防ぐための配慮がなされているとはいい難く、なお、一般の読者をして錯誤を生じさせる危険性を十分有する著作物であるといわざるを得ない。さらに、本件登録の申込みを行う者は、原告会社発行の本件登録願用紙裏面、あるいは、これに加えて本件登録書のかき方を、注意を傾けて読むものと思われるところ、同願書等には、前記認定((1)のア、別紙2記述概要の1ないし3)のとおりの記載があることにより、読者をして、著作権登録により発明やアイデアが保護されるものとの誤解を生じさせる危険性が十分に存するのであって上記@ないしBのような記載が原告Aの著作物の中にあるからといって、それにより、上記結論を左右することはないといわざるを得ない。
4 結論
 以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、原告らの請求は理由がないから、いずれも棄却する。

東京地方裁判所民事第14部
 裁判長裁判官 山名学
 裁判官 中村さとみ
 裁判官 宮崎拓哉


別紙1
謝罪広告
 「知的所有権(著作権)登録」は何ら人を欺罔する制度ではないのにもかかわらず、同登録に関し、当会が貴殿らを詐欺容疑で警視庁に告発して、貴殿ら及び同登録業務を行っている貴協会に多大の迷惑をお掛けしたことを心からお詫び申し上げます。
  平成  年  月  日
  弁理士会会長 C
  A殿
  B殿
 株式会社知的所有権協会 殿

別紙2
本件登録願用紙等記述概要
1 本件登録願用紙(甲2)裏面の目的欄
 今や知的財産時代である。しかし特許出願には何十万円もいるから出願できない人が何万人もいる。また拒絶された人も何十万人もいる。それ等は権利がないから、みな捨てられている。ところが米国では、それ等を含めて、年、60万件も著作権に登録して高く外国に売りつけている。
 著作権なら、たった2千円か3千円で登録できる。そこで日本でも、新聞やテレビが登録をすすめるようになった。
 例えば香川夫人はダイエットスリッパをつくったが程度がひくく特許にならぬので著作権にした。すると資本家がつき、ヒット商品になり年に200万円も権利料をもらった。
 正田さんは、かわいい形のよだれ掛けを考えた。これも意匠にならぬので著作権にした。するとNHKが登録書をクローズアップして衆知させたので大ヒット、月々50万円になっている。
 また甲が建築等の設計図面をつくった。乙がそれを見て家を建てた。すると甲は著作権侵害で600万円もらった裁判例がある。図面を、著作権にしてあったからである。
 銅像の頭にカラスがとまった写真は2百万円になった。うさこちゃんの絵のキャラクターを書いた人は1億円になった。小学5年、アイカさんの漫画は1000万円で売れた。創作碁やオセロが金になったのも、著作権にしてあったからである。
 皆、「もし著作権にしてなかったら1円にもならなかった」と口をそろえて登録をすすめる。
 著作権というのは写真でも作文でもイラストでも、発明でも他人のまるうつしでないものは、凡て権利になり、100年近くの長い間権利料が取れる。それで次の発明する勇気が出てくる。
 しかも、その出願料は、たった2千円である。1つ特許で出す金があると50件も権利がとれる。すると1つ位は必ずあたる。
 その実際を知るには「知的所有権管理士に合格する本 日本法令(1500円 〒400円)」を見ればよくわかる。

2 本件登録願用紙(甲2)裏面の登録の効果欄
 登録の表現は自由であるから、自分で書ける。それがソフトであろうと、ハードであろうと、具体的にくわしく登録用紙に書いて、本協会に送る。
@ 原稿に公的日付を刻印する。それをコピーし、改変不可として、当会で保存し、証明し、原稿と登録証を返送する。
A 日付が正確だから『先使用権』や防御特許になる。また、程度が低いものでも権利になる。とくに商品のカタログは登録しておくこと。するとこれを模倣した説明書は誰も作れないからマネを防ぐことができる。(米国は年に62万件の登録がある)
B 特によいことは、無名者でも著作権が第三者に証明されるので泣き寝入りすることがないことである。すると、それが絵でも写真でも、コラムでもイラストでもみな本人の死後50年もの長い間、マネを防ぎ権利料がとれる。そこで貴方も年に3つや4つは、登録して、売り込んでみることである。推薦状も出す。盗られない良法である。
C 登録料は1件につき、2千円である。次年度より登録継続料は1年間千円である。したがって3千円納めると2年間の登録となり、4千円なら3年間の登録となる。継続登録料を忘れると原簿から削除されるので、裁判のときなど本部からの証明ができなくなる。権利の売買は最初の2年か3年が多いので備忘のため、登録料と別に、2〜3年分の継続料を同時に納付するとよい。
D また、登録料と別に『登録原簿の謄本』を3通うけて、保存し紛失や焼失などしないようにしておくと、死後50年まで、権利が証明されるので裁判のとき、有利である。その謄本は登録1件につき『3部3千円』(1部でも同じ)である。
E 賞金総額500万円の全国発明大会、また賞金2百万円のネーミングのコンクール等に応募する時、その他、外部に発表する時は盗まれる心配があるので必ず登録すること。

3 「知的所有権著作権登録願書のかき方」(原告A著、原告会社発行、甲4)
(1) 「特許出願は10万円かかるので困っている。それを助けるのが2千円の著作権である。」(冊子の表紙)
(2) 「何でも1つの法律で完全に守ることはできない。その時は他の法律でカバーすることである。特許法でも幾多の長所があるが欠点もある。弁慶の泣き所である。その欠点をあげると、@出願から登録まで自分で書いても10万円以上の金がかかる。世界最高の出願料である。それを出さないと権利はくれない。その為、発明者は困りぬいている。A出願しても審査に2、3年もかかる。その間まねられて、ひどい目にあう。B技術以外のアイデアは権利にならぬので出願料の損である。C程度のひくい案もダメなので凡人は7割も不許可で大損をしている。このように特許の何十倍のアイデアが死んでいる。それを生かし金にするのが著作権である。日本は、それを知らず年700億円も権利料をとられている。著作権の長所は、@出願料の金が一切いらない。A権利はすぐおりるので、内外までまねられる心配はない。権利料もくれる。B程度がひくくても技術以外の案も権利になり、しかもそれは世界に及ぶ。Cしかもその登録料は文化庁に届けても、たった3000円である。これほど弱者の味方の法律はない。これを使わなかったら強者になれない。」(1頁)
(3) 「特許実用新案では完勝し世界一になったおかげで大金持ちになった日本も、著作権では、アメリカに完敗し、たちまち不況におちこんだ。そこで、日本も早く、それに、力を入れて、世界一の著作権国にならなくてはならない。特許にならぬ小アイデアを著作権にすることは実に大切である。発明だけでなく写真でもイラストでも、アイデアは、みな著作権にして輸出すべきである。」(4頁)
(4) 「特許や意匠的考案は、お金のいらない著作権にして、長い権利をとる、というのも目的だが、一番大きなメリットは、金を使わず先使用権(防御特許)をとることである。」(4頁)
(5) 「日本人も早く、それを知って小アイデアでも知的所有権(著作権)にして攻撃に出ると共に防御することである。」(11頁)
(6) 「著作権というのは写真でも作文でも発明でも意匠でもイラストでも、また、程度が低くても創作したものは凡て届けなしで権利になり、100年近く権利料が取れる。このように広く強い権利だが、ただ1つ大きな欠点がある。それは『私が創作したのだ』という証明ができないので、無名者は泣き寝入りすることが多いことである。そこで、わづかの費用ですむから知的所有権(著作権)に登録しておくことである。」(12頁)
(7) 「登録の効果(中略)@原稿に法的日付をして、それをコピーし、当会で保存し、原稿と登録証を返送する。A日付が正確だから『先使用権』や『防御特許』になる。また、著作権として模倣を防ぎ権利金をとれる。B『著作権』がとれるので、それが写真でも、アイデアでも、コラムでもまねを防ぎ権利料がとれる。C登録料は1件につき、たった2千円である。(DEF省略)」(12、13頁)
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日本ユニ著作権センター
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