裁判の記録 | ||
2002年 |
(平成14年) |
[7月〜12月] |
◆ | 7月1日 アサヒvsサントリー 商標事件B |
東京地裁/仮処分申請 サントリーは自社の発泡酒「スーパーマグナムドライ」と缶チューハイ「スーパーチューハイドライ」の商品名について、アサヒビールが使用中止を主張していることに対して不正競争防止法の「営業誹謗行為」に当たるとして、使用中止を公言しないよう求める仮処分を申し立てた。 商品名をめぐる両者の争いは訴訟合戦の泥試合の様相を呈してきた。 |
|
◆ | 7月3日 かえでの木の著作物性事件 |
東京地裁/判決・請求棄却(確定) 高さ15メートル、独特の美しさで観光名所にもなった長野県池田町の「かえでの木」の所有主が、許可なく写真を撮影し、書籍の出版をしたのは、所有権侵害で不法行為に当たるとして、カメラマンと出版元のポプラ社に対し、出版差止めと330万円の損害賠償を求めた訴訟は請求が棄却された。 飯村敏明裁判長は「所有権は、有体物としてのかえでを排他的に支配する権能に止まるのであって、撮影した写真を複製したり、複製物を掲載した書籍を出版したりする排他的権能を包含するものではない」として、主張を退けた。 |
|
◆ | 7月5日 歌川家の名称事件(2) |
大阪高裁/判決・控訴棄却、予備的請求棄却 |
|
◆ | 7月9日 偽「ファービー」人形販売事件(刑)(2) |
仙台高裁/判決・控訴棄却(確定) 電子ペット「ファービー」の模造品を販売したとして著作権法違反に問われた大阪市の玩具販売会社と同社役員、仙台市の玩具小売業者と同社元役員に対する控訴審判決で、仙台高裁は一審山形地裁の無罪判決を支持し、山形地検の控訴を棄却した。 松浦繁裁判長は「ファービーのデザインは美術鑑賞の対象となるだけの審美性はなく、著作権法が保護する美術の著作物に当たらない」とした。 |
|
◆ | 7月10日 ドメイン名の使用中止事件(NTTドコモ) |
世界知的所有権機関(WIPO)/裁定・請求棄却 NTTドコモが米国の通信会社「AT&Tワイヤレスサービス」を相手取り、「iモード」の名称を使ったドメイン名の使用中止を求めてWIPOの仲裁センターに訴えていたが、請求を退ける決定があった。 問題のドメイン名は「imode.biz」。ワイヤレス社は2000年12月に締結した協定で「米国でのiモードブランドの独占使用権」を認められたとしていたが、ドコモ側は「iモードは自社独自の商標名で、ワイヤレス社に正当な使用権はない」と主張していた。 |
|
◆ | 7月11日 「エイビーロード」の写真事件(2) |
東京高裁/判決・控訴棄却 リクルート社の発行する雑誌「エイビーロード」の編集部から委託され、撮影した4000枚余りの写真を、引渡し後、10年を経て返却を求めたが廃棄されていたのは、所有権と著作権の侵害だとして、フリーのカメラマンが同社と関係者に300万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京高裁は一審横浜地裁の判決を支持し、原告の請求を棄却した。 山下和明裁判長は判決で「引渡しを受けた写真は、その後、編集部のものとなり、自由に使用でき、返却する義務も負わない、との合意の下に、カメラマンに依頼する扱いを採用していた」とした。 |
|
◆ | 7月11日 「ポロ」の商標登録事件(3) |
最高裁(一小)/決定・上告棄却 シャツなどに広く使われている「ポロ」の商標をめぐり、大阪府枚方市の衣料品会社がラルフ・ローレン社(米国)の権利を認めた特許庁の決定の取消しを求めた訴訟で、最高裁は特許庁側の上告を受理しない決定をした。これで大阪の会社の権利を認めた東京高裁の判決が確定した。 |
|
◆ | 7月13日 コマ・スタジアムの演奏テープ流用事件 |
大阪地裁/和解 文楽の太夫ら5人が、映画のために収録した演奏を無断で舞台に流用されたとして、興業主のコマ・スタジアムに使用料684万円の支払いを求めていた訴訟が和解した。コマ側が400万円を支払う内容。 5人は81年製作の映画「曽根崎心中」で音声の吹込みを担当。コマは99年に「シアター飛天」(現梅田コマ劇場)で曽根崎心中の公演を企画した際、映画の製作者から借用したテープを勝手に編集して使った。 |
|
◆ | 7月15日 ドメイン名の使用差し止め事件(システム・ケイジェイ) |
東京地裁/判決・請求認容(確定) ドメイン名「mp3.co.jp」を無断で使われたとして、パソコン機器等の販売会社「システム・ケイジェイ」が、音楽配信サービスを行なっている「エムピー3・ドット・コム・インコーポレイテッド」社を訴えていた事件で、東京地裁はシ社の請求を認める判決を下した。 |
|
◆ | 7月15日 家電商品の比較広告事件(2) |
名古屋高裁金沢支部/判決・破棄自判 実際より高い価格を比較広告の対象とされ、販売を妨害されたとして、家電量販店「百満ボルト福井南」と「百満ボルト小松」が「ヤマダ電機」(前橋市)に計4000万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、名古屋高裁金沢支部は、百満ボルト側の請求を棄却した一審福井地裁の判決を取り消し、ヤマダ電機に計200万円の支払いを命じた。 川崎和夫裁判長は「比較広告の表示価格に誤りがあり、これは不正競争防止法が禁じた不正競争に当たる」と述べた。 |
|
◆ | 7月16日 「野外科学」の登録事件(2) |
東京高裁/判決・請求棄却 (株)アイテックが「野外科学KJ法」の商標登録を無効とした特許庁の審決の取消しを求めた訴訟で、東京高裁は特許庁の審決を支持、原告の請求を退けた。 野外科学とは野外での観察を通じて、これを科学的に分析していく学問研究の一方法。 審決は「創案者やKJ法学会等の関係者の利益を害し、剽窃的であって、社会の一般的道徳観念に反し、公の秩序を害するから無効とする」としていた。 |
|
◆ | 7月16日 歯科教科書の無断改変事件(2) |
東京高裁/判決・控訴棄却 神奈川歯科大の主任教授らが師弟関係を利用して、講師の論文を無断で教科書に転用したのは悪質な著作権侵害とした横浜地裁の判決を不服とした控訴審で、東京高裁は被告側の控訴をいずれも棄却した。 被告側は「主任教授は出版社から教科書の改訂を依頼された場合、執筆者が教室に在籍していない時は異動先まで連絡しない。異動した者は一般に、主任教授に対し改訂作業への黙示の許諾を与えている、との事実たる慣習がある」と主張していた。 |
|
◆ | 7月16日 読売テレビの実名報道事件(2) |
大阪高裁/和解 収賄罪の前科を動画で報道したのはプライバシーの侵害として、大阪府田尻町の元町長が読売テレビと当時の報道部長に1000万円の損害賠償を求めた訴訟が和解した。 読売テレビ側が、一審大阪地裁判決で命じられた賠償額50万円を解決金として支払い、「今後、元町長が公職の候補になるなどの場合をのぞき、過去の裁判を実名・肖像つきで報道しない」ことを確認した。 |
|
◆ | 7月17日 早稲田大学の名簿提供事件B(2) |
東京高裁/判決・控訴棄却(上告) 江沢民・中国国家主席が早稲田大学で講演した際、大学側が警視庁に参加希望者名簿を提出しプライバシーを侵害されたとして、元学生3人が計330万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審で、東京高裁は請求を棄却した一審東京地裁判決を支持し、訴えを退けた。 雛形要松裁判長は「個人識別の単純な情報であり、警備に万全を期すという目的のために名簿を提出したのは正当」と認定した。 この名簿提出をめぐる同様の訴訟で、東京高裁の別の部は今年1月、早大側に賠償を命じる逆転判決を出している。 |
|
◆ | 7月17日 「猿軍団」商標権事件 |
宇都宮地裁/和解 猿の曲芸を上演する「日光猿軍団」(栃木県藤原町)が商標権を侵害されたとして、「日本猿軍団」(福島県郡山市)に名称の使用差止めなどを求めた訴訟は、和解が成立した。 和解条項は、日本猿軍団側が (1)「猿軍団」や「お猿の学園」の名称を使って演芸をしない (2)広告に「テレビでもおなじみの猿軍団」などの表示をしない (3)日光側に謝罪する、という内容。 |
|
◆ | 7月18日 商号「三菱」の使用差止め請求事件(三菱ホーム) |
東京地裁/判決・請求認容 「三菱地所」など2社が、不正競争防止法に基づき熊本市の不動産会社「三菱ホーム」に「三菱」の商号やスリーダイヤを使った類似の商標を使用しないことを求めた訴訟で、東京地裁は2社の請求を全面的に認めた。 |
|
◆ | 7月18日 顧客データの不正競争事件(デザイン会社) |
大阪地裁/判決・請求棄却 顧客名や顧客の商品に対する要望などの情報、営業ノウハウを無断で利用されたとして広告や建築デザインの企画会社「メイテック」が、同種の会社「デジタルフィールド」に対し、不正競争防止法に基づき、営業の差止めと約4000万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京高裁は原告の請求をいずれも棄却した。 メ社の取締役にあった被告側のAは、辞任届を一方的に提出し、メ社と競合するデ社を設立、メ社から従業員を引き抜き、営業誹謗の言動を行った、とメ社は主張していた。 |
|
◆ | 7月22日 「フライデー」二子山親方元夫人への接近禁止事件 |
東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却 二子山親方元夫人が「フライデー」の記事でプライバシーや肖像権を侵害されたとして、講談社に取材記者を半径50メートル以内に接近させないよう求めた訴訟で、東京地裁は請求を棄却した。 同時に求めた1100万円の損害賠償については165万円の支払いを命じた。 |
|
◆ | 7月24日 著名シェフの名前の商標権事件(2) |
東京高裁/判決・請求棄却 イタリア料理店の総料理長で、『ナポリの食卓へようこそ』の著者が、商標名「SALVATORE」の名称使用をベラヴィータ社に認めた特許庁の審決の取消しを求めた訴訟で、東京高裁は特許庁の審決を支持し、原告の請求を棄却した。 原告はSALVATOREは氏名の略称であって、需要者の間で広く認識されている。この名をイタリア料理の提供に利用されると混同され、不利益が生じると主張したが、判決は「ある程度の知名度を得ていたとは認めても、出所混同を生じ、顧客に著しい不利益を与えるとは推認できない」とした。 |
|
◆ | 7月25日 ゲームソフト製作の二重契約事件 |
東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却 (株)ジ・エー・エムがサン電子(株)にゲームソフト「必殺パチンココンストラクション」のプログラムの製作を委託し、他方、(株)プリズムに同種のソフト「実践パチンココンストラクション」のプログラムの製作委託をした。同時期、同種のゲームソフトをめぐる二重の委託製作契約事件である。 プリズムはゲームソフトを製造し、東芝イーエムアイを通じて販売を予定していた。ところがサン電子は、ジー・エム・エーの二重契約の事実を知って、東芝イーエムアイに対し、プリズムのソフトはサン電子が有する知的財産権を侵害すると通知した。東芝はソフトの販売を中止した。これに基づく損害賠償事件である。 判決は、プリズムに対し、サン電子、ジー・エム・エーがそれぞれ約665万円、サン電子に対し、ジー・エム・エーが約1500万円の損害賠償を支払うよう命じた。 |
|
◆ | 7月25日 オフィスソフト「オートくん」の複製事件 |
大阪地裁/判決・請求一部認容、一部棄却 高知県の公共事業入札及びそれに関する契約書類、現場管理書類の作成支援ソフトウエア「オートくん」を無断で複製され、損害を受けたとして、測量機械等を販売する大斗(有)が同種の(有)冨士測機に対し、ソフトの複製・頒布の停止と1200万円の損害賠償を求めた訴訟で、大阪地裁は原告の請求を認める判決を下し、被告に216万円の支払いを命じた。 |
|
◆ | 7月26日 医学書の著作権侵害事件 |
東京地裁/判決・請求棄却 (株)モリタの発行した書籍『歯科情報マガジン』のうち「CLINICAL REPORT 咬み合せの不思議」の部分は、自分の論文の複製または翻案であり、著作権を侵害されたとして、(株)モリタと執筆者4人に対し、販売の停止や印刷用原版の廃棄などと約300万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は原告の請求をいずれも棄却した。 |
|
◆ | 7月26日 住基ネット運用差止め請求事件 |
東京地裁/提訴 住民基本台帳ネットワークはプライバシーの侵害だとして、東大名誉教授やジャーナリストら6人が、自治体や地方自治情報センターに運用の差止めを求める訴えを起こした。原告側は同時に国などに一人100万円の慰謝料支払いも請求している。 原告は「住基ネットは、監視社会をいっそう進め、ハイテク化した封建社会をつくるものだ」と述べている。 |
|
◆ | 7月29日 プレイステーションの著作権侵害事件 |
オーストラリア連邦裁判所/判決・請求棄却 ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)が、同社の家庭用ゲーム機「プレイステーション」用の改装チップを販売していた業者を著作権侵害で訴えていた訴訟は、SCEの敗訴となった。 プレイステーションは営業地域をアジア、米国、欧州・オセアニアの3地域に分け、異なった地域で販売された本体とゲームソフトでは互換性がないように製造されている。同裁判所は、この「垣根」を外すチップについて「違法コピーでない限り、消費者が国外で買ったゲームを楽しむことは問題ない」とする判断を下した。 |
|
◆ | 7月30日 「ダリ」の商標権事件(2) |
東京高裁/判決・請求認容 スペインの画家サルバドール・ダリの名前をつけた香水を販売するオランダの会社が、名古屋市の会社「メナード化粧品」による「ダリ」の商標登録を有効と判断した特許庁の審決を取り消すよう求めた訴訟の判決で、東京高裁は審決は誤りとして請求を認めた。 人名はDALI、商標はDARIで、アルファベット表記の違いはあるが、篠原勝美裁判長は「日本語でRとLの音を区別するのは困難で、商品の取引者などが綴りの違いを認識するとは認めがたい。画家のダリを思い起こさせ、故人の名誉を傷つける恐れがあり、国際信義に反する」と指摘した。 |
|
◆ | 7月30日 カラオケ装置撤去事件(高知市) |
高知地裁/強制執行 日本音楽著作権協会(JASRAC)との裁判の和解内容に反し、カラオケの著作権料を支払わないとして、高知地裁は高知市瀬戸東町のスナックからカラオケ装置を強制撤去、使用を差止めた。 同協会によると、強制執行は全国で4件目で、四国では初めて。「何度も支払いの督促をしたが、何も回答がなく、悪質だった」としている。 |
|
◆ | 8月5日 住基ネットへの不参加請求事件 |
大阪地裁/提訴 住民基本台帳ネットワークに参加したことで、個人のプライバシーが侵害される恐れがあるとして、大阪・豊中市の市議会議員が市に対し、ネットワークへの参加を取りやめるよう求める訴えを起こした。 訴えた市議会議員は「裁判の原告をさらに募り、ネットワークの危険性を訴えたい」と話している。 |
|
◆ | 8月14日 中国・バイクメーカーの商標権侵害事件 |
天津市高級人民法院/判決・請求認容 ヤマハ発動機が自社の商標を無許可で使用されたとして、天津市のバイクメーカー「港田集団」とその子会社に対し損害賠償などを求めた訴訟で、中国企業側に約1350万円の支払いを命じる判決があった。 賠償額は中国の知的財産権絡みの訴訟では「かなりの高額」とみられ、外国企業から批判の強い中国企業による商標権侵害に対する中国政府の厳しい姿勢を反映した判決として注目されている。 |
|
◆ | 8月20日 代々木ゼミの放送番組無断使用事件 |
岐阜県警生活保安課/書類送検 大手予備校代々木ゼミナールの衛星放送の講義番組を録音し、自分の学習塾で勝手に使っていたとして、岐阜県警生活保安課は、学習塾を経営する岐阜大医学部2年の男子学生(34歳)を著作権法違反(私的使用以外の使用)の疑いで岐阜地検に書類送検した。 男性は高校生や大学浪人生らを対象に学習塾を開業。教材に使うため、衛星放送の視聴契約を個人として結び、昨年2月から12月にかけて同放送の65講座1381番組を収録。塾の教室にビデオ付きテレビ6台を設置し、生徒らに自由に見せていた。 |
|
◆ | 8月26日 プロ野球選手の肖像権侵害事件 |
東京地裁/提訴 日本プロ野球選手会(会長・ヤクルト古田敦也)は、日本プロフェッショナル野球組織(コミッショナー川島広守)と、同組織と選手名、球団名の使用に関する独占契約を結んでいるゲームソフトのコナミ社を、肖像権の侵害をしているとして提訴した。 選手会は「選手の肖像権は個人に帰属するもの。特定の会社に独占させることによって多種多様なゲームソフトが市場に出回らなくなり、プロ野球人気の阻害につながる」と主張している。 これに対し、日本プロ野球組織は「球界内部で解決すべき問題が法廷の場で争われることは誠に遺憾」とし、「肖像権は球団が管理すると統一契約書に明記されており、球団が有する権利を組織が代行してコナミと契約したもの。選手が統一契約書に署名捺印している以上、選手会からいかなる苦情も申し立てることはできない」と反論している。 |
|
◆ | 8月27日 「すてイヌシェパードの涙」事件 |
横浜地裁小田原支部/判決・請求認容(確定) 神奈川県秦野市教育委員会が作成した小学生向けの人権啓発用副読本「百合子おばさんの捨て犬救出大作戦」について、童話作家が「自分の著書と似ており、著作権侵害に当たる」として損害賠償を求めた訴訟で、横浜地裁は秦野市に30万円、執筆者の社会教育指導員に60万円の支払いをそれぞれ命じた。 矢崎博一裁判長は「ストーリーの展開や登場人物などが一致しており、翻案権を侵害している。秦野市は著作権を侵害することを知っていたか、不注意で知らなかったと認められる」とした。 |
|
◆ | 8月28日 講談脚本「はだしのゲン」事件 |
東京地裁/判決・請求認容(確定) 講談師の元夫が、戦争や原爆の惨状を伝える講談『はだしのゲン』など三作品の脚本は自分が創作したとして、講談師に上演の差止めなどを求めた訴訟の判決で、東京地裁は請求を全面的に認めた。 飯村敏明裁判長は「講談師は原爆資料館訪問などをきっかけに反核反戦を訴える漫画『はだしのゲン』の上演を思いついた」としたが、脚本については「脚本を書けずに悩んでいた講談師のために、当時の夫が単独で創作した」と認定、共同創作とする講談師の主張を退けた。 |
|
◆ | 8月29日 作図ソフト「スーパー土木」事件 |
大阪地裁/判決・請求一部認容、一部棄却、反訴請求一部認容、一部棄却 ソフトウェア開発、販売を行う会社(原告)とコンピュータの販売、ソフトウェアの卸販売および小売販売を行う計三社(被告)とのあいだで、開発委託費の支払い、自動作図システムソフトウェア「スーパー土木」の販売等の差止等をめぐって争った。 裁判所は、「開発委託契約書」、両者の交渉経過等を判断材料にして、ソフトウェアの著作権は原告と被告の共有であると認めた。そして仕様変更、追加開発作業の工数、費用等にも検討を加え、反訴請求もあるところ、被告らには販売等の差止とソフト複製物の廃棄と損害賠償金約1162万円を連帯して支払うように命じた。また、反訴に関しては、反訴被告(原告)に対して、開発費残金、ライセンス料、仕様変更に基づく追加開発費用の合計約1853万円の支払いを命じた。 |
|
◆ | 8月29日 ネット上の漫画家プライバシー侵害事件 |
東京地裁八王子支部/判決・請求認容 人気漫画「しゅーまっは」の著者がインターネット上の掲示板に悪質な書き込みをされ、名誉やプライバシーを侵害されたとして、高校時代の同級生の男性に対し、慰謝料などを求めた訴訟の判決があった。 中山幾次郎裁判官は「裁判中も書き込みを続けるなど、被告の行為は執拗で人権侵害は明らかだ」とし、男性に慰謝料550万円の支払いと侵害行為の差止めを命じた。 |
|
◆ | 8月30日 ゲームソフト「DEAD OR ALIVE 2」事件 |
東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴) 対戦格闘ゲームの女性キャラクターを無断でヌードにする改変ソフトを売るのは著作権法違反だとして、製作会社の「テクモ」が、ソフトを売った「ウエストサイド」に400万円の損害賠償を求めた訴訟の判決があった。 森義之裁判長は「著作者の意に反して改変されないことを保障した同一性保持権が侵害された」と認め、ウ社に200万円の支払いを命じた。 |
|
◆ | 9月2日 「別冊宝島」の消費者金融会社名誉棄損事件 |
東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却 業界最大手の消費者金融会社T社が「別冊宝島」2000年11月30日号に掲載された記事「詐欺師、政商、街金融! ネットバブルを演出した知られざる裏人脈」によって、名誉、信用を著しく毀損し、損害を被ったとして、宝島社と執筆者に約1億円の損害賠償と謝罪広告を求めた訴訟で、東京地裁は請求を一部認め、宝島社側に約300万円の支払いを命じる判決を言い渡した。 |
|
◆ | 9月2日 ネット掲示板の中傷事件(運送会社) |
東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却 貨物の運送等を業とする会社を解雇された元社員が、インターネット上の掲示板ホームページ「2ちゃんねる」内に「不当解雇」というスレッドを作成し、「業務は多忙で休日もほとんどなく、勤務は朝7時から夜中の2時3時もざらであった、いきなりの解雇通知である……」等と書き込んだのは、虚偽の事実を適示し、会社の営業上の信用及び名誉、並びに役員の名誉を著しく毀損したとして、同社と役員が元社員に対し、約700万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は原告側の主張を認め、元社員に約160万円の支払いを命じた。 |
|
◆ | 9月3日 パソコンソフトの違法コピー事件(豊樹学園他)AB |
東京地裁/提訴 大阪地裁/提訴 マイクロソフトやジャストシステムなどソフトメーカー5社が、違法コピーで著作権を侵害されたとして、コンピュータ関係の専門学校を経営する豊樹学園(東京)など3法人を相手に、計約5億7000万円の損害賠償を求める訴えを東京、大阪両地裁に起こした。 |
|
◆ | 9月4日 学習教材への作品無断使用事件(文理) |
警視庁目白署/書類送検 教科書に掲載された詩人、谷川俊太郎さんらの作品を無断転載した学習教材を販売したとして、目白署は大手教材出版社「文理」と出版責任者の取締役を著作権法違反容疑で書類送検した。 教材出版社は、教科書の出版社から使用許諾を得るだけで教科書の内容を引用するのが長年の慣行になっていたが、警視庁は、原作者からも使用許諾を得る必要があったと判断した。 調べでは、同社は「光村図書」の3、4年生用の国語教科書に掲載されていた谷川さんの詩「なくぞ」と、作家今西裕行さんの童話「一つの花」を無断転載した学習教材「ホームテスト」10冊を書店で販売、著作権を侵害した疑い。教材は1冊800円、これまでに全国の書店で約1万冊が販売されたという。 |
|
◆ | 9月5日 カラオケ無断使用事件(大阪市) |
大阪地裁/判決・請求一部認容、一部棄却 |
|
◆ | 9月5日 ビジネスソフトの著作権侵害事件 |
東京地裁/判決・請求棄却(控訴) ビジネスソフトを製作・販売するサイボウズ社が、ネオジャパン社のソフト「アイオフィス2.43」は自社のソフト「サイボウズ2.0」の複製ないし翻案であり、著作権を侵害されたとして、ネ社に製造・頒布・上映の中止と約1000万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は「被告ソフトにおける表示画面の選択・配列をもって、原告ソフトの複製ないし翻案ということはできない」として、請求を棄却した。 三村量一裁判長は「原告ソフトと被告ソフトの共通する点は、いずれもソフトウェアの機能に伴う当然の構成か、あるいは従前の掲示板、システム手帳等や同種のソフトウェアに見られるありふれた構成であり、両者の間にはソフトウェアの機能ないし利用者による操作の便宜等の観点からの発想の共通性を認める点はあるにしても、そこに見られる共通点から表現上の創作的特徴が共通することを認めることはできない」と判示した。 |
|
◆ | 9月6日 小林亜星vs服部克久盗作事件(2) |
東京高裁/判決・一部変更(上告) CMソング「どこまでも行こう」を作った作曲家小林亜星さんと著作権を持つ出版社が、「そっくりな曲で著作権を侵害された」として、作曲家の服部克久さんを相手に損害賠償を求めた控訴審判決があった。 判決は著作権侵害を認め、小林さんらの請求を棄却した一審東京地裁判決を変更し、服部さんに対し、小林さん側に約940万円の支払いを命じた。 篠原勝美裁判長は「旋律の相当部分は実質的に同一で、構成も酷似。服部さんの『記念樹』は小林さんの『どこまでも行こう』に依拠したとしか考えられず、編曲権を侵害した」と述べた。 |
|
◆ | 9月12日 名馬の名前パブリシティ権事件(ダービースタリオン)(2) |
東京高裁/判決・控訴棄却(上告) オグリキャップなどの馬名をゲームソフト「ダービースタリオン」に無断で使われたとして、馬主20人が製作元のアスキー社に損害賠償と販売の差止めを求めた訴訟の控訴審で、東京高裁は「馬名をソフトに使用できる」と判断した一審・東京地裁判決を支持し、馬主側の控訴を棄却した。 一、二審を通じて、馬主側は著名人が名前や写真から生じる経済的利益を独占できるとする「パブリシティ権」が馬にもあると主張。これに対し、山下和明裁判長は一審同様「この権利はもともと人格権に根ざすものであり、物である競走馬には認められない」と判断した。 馬目をめぐる同種の訴訟は、名古屋高裁が2001年3月、逆の判断を示して上告中。高裁段階で司法判断が分かれる形になった。 |
|
◆ | 9月17日 塾用ネットソフトの製作代金不払い事件 |
東京地裁/判決・請求認容 コンピューターソフトウェアの開発・販売をする「(有)サイバードリームズ」は、学習塾を経営する「(株)ナンバーワン倶楽部」の求めに応じ、インターネットを使ったパソコン勉強プログラム製作して引き渡したが、ナンバーワン社が請負代金の残金を支払わないとして、代金の支払いを求め、認められない場合は著作権の帰属の確認を求めた訴訟。 東京地裁は原告の請求を認め、被告側に請負代金の残金約400万円を支払うよう命じた。 |
|
◆ | 9月18日 『コルチャック先生』著作権侵害事件(2) |
大阪高裁/判決・控訴棄却 名作『コルチャック先生』の著者が、著作権を侵害されたとして、戯曲『「コルチャック先生」ある旅立ち』(文芸遊人社)を出版した著者と発行者に損害賠償と頒布の停止などを求めた控訴審で、大阪高裁は一審・京都地裁の判決を支持し、原告の控訴を棄却した。 |
|
◆ | 9月19日 ソニーの経営を描いた二著の著作権侵害事件(講談社)(2) |
東京高裁/判決・控訴棄却 「自分の取材した内容を盗用され、著作権を侵害された」として、作家Aが、『ソニーの「出井」革命 ― リ・ジェネレーションへの挑戦』の著者Bと講談社に対し、頒布の停止と約231万円の損害賠償を求めた控訴審訴訟で、東京高裁は一審・東京地裁判決を支持、Aの控訴を棄却した。 |
|
◆ | 9月24日 『石に泳ぐ魚』のプライバシー侵害事件(3) |
最高裁(三小)/判決・上告棄却 『石に泳ぐ魚』のモデルになった女性が「プライバシーを侵害されたとして、著者と新潮社に出版差止めと損害賠償を求めた訴訟で、最高裁は上告を棄却、出版差止めと約130万円の支払いを命じた著者側敗訴の一、二審判決が確定した。 最高裁がプライバシーや名誉権などの人格権に基づいて、小説の出版差止めを認めたのは初めてで、大きな影響を与えそうだ。 判決は「小説の公表により、公的立場にないモデル女性の名誉、プライバシー、名誉感情が侵害されており、さらに単行本として出版されれば、重大で回復困難な損害を被る恐れがある」と指摘し、「二審判決が、人格権に基づいて出版差止めを命じたことは、表現の自由を保障した憲法に違反しない」と判断した。 東京地裁は99年6月、作品を公表する場合は改訂版を出すことで両者が合意していたと認定し、出版差止めと慰謝料支払いを命じた。東京高裁は01年2月、「プライバシーや名誉感情を傷つけるもので、表現の自由の名のもとでも許されない」と述べ、人格権に基づく小説の出版差止めを認める初の司法判断を示した。 |
|
◆ | 9月25日 毎日新聞ホームページ事件(2) |
名古屋高裁/判決・控訴棄却 |
|
◆ | 9月26日 カラオケ無断使用事件(大阪府守口市) |
大阪地裁/請求一部認容、一部棄却 原告は日本音楽著作権協会であり、被告は大阪府守口市でスナックを営業している店舗の経営者である。原告は、被告が原告の許諾を得ることなくカラオケ関連機器を使って原告の管理する音楽著作物を再生して客に歌唱させる営業を行い、著作権を侵害したとして、損害賠償120万円余の支払いを求めた。 被告店舗はその所在地で店名変更をしつつ営業をしていたことで、原告は無許諾営業を認識し実態調査を行っていた。裁判所は、原告職員作成の調査報告書の記載事項の対象事実や時期を確認した。また、別訴本件仮処分申立てを受けて仮処分が行われ、大阪地裁執行官による点検等でカラオケ設備への封印もされていたが、その封印破棄をしてのカラオケ営業の事実もあり、それら原告実施の調査事実全てを認定対象に挙げて、裁判所は被告のカラオケ使用期間を算定し、損害額を算出した。 裁判所判断は「本件各店舗におけるカラオケ装置による歌詞及び楽曲の上映または再生は、演奏権ないし上映権侵害による不法行為責任を負う」とし、また「原告職員が数度にわたり被告らに『著作物利用許諾契約』の締結を申し入れたにもかかわらず、拒否したことが認められ、原告の著作権を侵害することを知りながら、または過失により知らないで原告の著作権を侵害した」と、原告の管理著作物の損害認定が成立した使用料相当額として、被告に101万余の支払いを命じ、その余の請求は棄却した。 |
|
◆ | 9月26日 キタムラの商標権侵害事件(2) |
東京高裁/判決・控訴棄却(上告) ハンドバッグ等の皮革製品の製造・販売を行っている(株)キタムラが、平成元年に同社より分離独立した同種の会社キタムラ・ケイツウに対し、商標Kマークを付した製品の頒布の停止と廃棄を求めた控訴審で、東京高裁は一審・横浜地裁の判決を支持、キタムラの控訴を棄却した。 キタムラはキタムラ・ケイツウの分離独立に際し、営業譲渡契約を結び、Kマークの使用権を設定していた。 |
|
◆ | 9月26日 カードリーダー事件(3) |
最高裁(一小)/判決・上告棄却 米国の特許権(発明の名称「FM信号復調装置」)を有するAが、ニューロン社が製品を製造し、米国に輸出するなどの行為は侵害に当たるとして、米国特許法に基づき、行為の差止めと製品の廃棄、並びに約1億8000万円の損害賠償を求めた訴訟で、最高裁は一、二審の判決を支持、Aの上告を棄却した。 一審・東京地裁は「特許権については、国際的に広く承認されている属地主義の原則が適用され、外国特許権を内国で侵害するとされる行為がある場合でも、特段の法律又は条約に基づく規定がない限り、外国特許権に基づく差止め及び廃棄を内国裁判所に求めることはできない」とした。 |
|
◆ | 9月26日 舞台装置をめぐる名誉毀損事件(3) |
最高裁(三小)/決定・上告棄却 劇団「スコット」の舞台美術が、造形美術家Aの作品の盗作かどうかをめぐり、双方が提訴あった訴訟で、最高裁はA側の上告を棄却する決定をした。劇団側に著作権を侵害されたとするA側の請求を退ける一方、「盗作された」と記者会見したことに対して慰謝料など計280万円の支払いを命じた二審・東京高裁判決が確定した。 |
|
◆ | 9月27日 情報公開委員会の公募作文公開請求事件 |
東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴) |
|
◆ | 9月27日 「マジンガーZ」著作権侵害事件 |
東京地裁/提訴 人気アニメ「マジンガーZ」を題材として翻案した絵画作品の展示や図録販売などが著作権侵害に当たるとして、原作者のマンガ家とダイナミックプロダクションが、絵画展を主催した東日本鉄道文化財団とJR東日本を相手取り、2000万円の損害賠償などを求める訴えを起こした。 この作品は「散策する奈緒子 ― 八甲田遠望」で、マジンガーZの頭頂部に乗る少女を描いている。今年2月、東京駅構内のギャラリーで開かれた絵画展に展示され、宣伝ポスターやチラシにも利用されたが、同プロの抗議を受けてJR側が会期途中で撤去し、ポスターなども回収した。 原告側は「無断で翻案した画家にも疑問はあるが、事前に連絡もなく展示、複製し、著作権侵害を認めない主催者の責任を問いたい」として提訴した。 |
|