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【事件名】偽「ファービー」人形販売事件(刑)(2)
【年月日】平成14年7月9日
 仙台高裁 平成13年(う)第177号 著作権法違反被告事件
 (原審・山形地裁 平成11年(わ)第184号)

判決


主文
 検察官の本件各控訴を棄却する。

理由
第1 控訴趣意及び答弁
 本件各控訴の趣意は、山形地方検察庁検察官圓山慶二作成の控訴趣意書に、これに対する答弁は両被告人の主任弁護人冨島智雄及び弁護人山崎智義連名作成の答弁書に、それぞれ記載のとおりであるから、これらを引用する。
1 控訴趣意の骨子は、原判決が、アメリカ合衆国の玩具メーカーであるタイガー・エレクトロニクス・リミテッド社が著作権を有する玩具「ファービー」のデザイン形態は、わが国著作権法上の美術の著作物には当たらないとしたのは、著作権法の解釈適用を誤ったものである、というのであり、控訴趣意の大要は、以下のとおりである。
(1) 著作権法上保護される美術の著作物の定義について、明文の規定はなく、絵画、彫刻等専ら鑑賞目的で創作される美的創作物である純粋美術がこれに当たることは法文上明らかであるが、これに対し、実用に供され、あるいは産業上利用される美的創作物であるいわゆる応用美術が著作権法上保護されるか否かについては、意匠法との重畳適用の問題とも関連して、かねてから議論のあるところであるが、従来の裁判例においては、応用美術についても、純粋美術と同視しうる場合には美術の著作物と認めていると解される。この純粋美術と同視しうる場合とは、裁判例の中には、判文上は高度な美的表現を要求しているようなものもあるが、実際の事例を見れば、必ずしも絵画や彫刻等の典型的ないし高度な美的創作物と同程度の高度な美的表現がなされているものに限定されていないことは明らかであり、そもそも純粋美術については美術性の高低や芸術性が問題とされていないのに、応用美術についてのみそれを問題とする合理性はない。また、裁判例には、美の表現が実用目的により実質的に制約されている場合は著作物性を否定しているものもあるが、それは、美的表現がそもそも実用目的のための補助的機能を果たしているにすぎないような、言い換えれば、実用目的による制約が極めて強い場合に、著作物性が否定される趣旨であると解される。結局、従来の裁判例では、美的表象が実用面や機能面を離れて一つの完結した美的表現を追求したものと認められるか否かによって、著作物性を判断する姿勢をとっているといえる。そして、この美的の意味については、「美しい」もののみならず、見る者をして驚きや感動を与え、あるいは愛らしさ、親しみ、愛着を抱かせるなど、鑑賞の対象となりうるものであれば、広い範囲のものが含まれるというべきである。
 「ファービー」は、ペットを飼育しているかのような楽しみを感じさせるため、ペットを飼育する際に感じる喜怒哀楽といった様々な感情を想起させることを意図して、それを目的に開発された育成型電子ペットであるところ、そのデザイン形態は、使用者の感性に訴え、愛らしさ、親しみを覚えさせるよう工夫して創作されたものであり、二頭身のずんぐりした体型を長い毛で覆い、大きな耳、丸くくりっとした目、長くカールされたまつげ、小さなくちばしというような容貌姿態は、使用者の感性に訴えかけるという制作者の思想を具体的に表現したもので、愛らしさがあって親近感や愛情を抱かせるという意味での鑑賞の対象となる美的特性を備えており、「ファービー」のデザイン形態が著作物であることは明らかである。「ファービー」においては、機能上、センサーを取り付ける必要があり、そのため一部にプラスチックを使用せざるを得ないという技術的制約があるものの、使用するプラスチックの色、形、大きさ、位置、バランス等選択できる多様なデザインの中から、使用者の感性に訴えるという美的特性を備えさせるよう工夫されたものであり、実際にも、多くの者が多数のカラーバリエーションのすべてを購入して鑑賞し、あるいは「ファービー」を着せ替え人形として鑑賞して楽しむなどしており、「ファービー」のデザイン形態が、使用者の感性に訴えるという美的特性を有するが故に、美的鑑賞の対象とされているといえるのである。
 原判決は、「実用品のデザイン形態であっても、客観的に見て、実用面及び機能面を離れ独立して美的鑑賞の対象となる美的特性を備えているものについては、純粋美術としての性質を併有しているといえるから、美術の著作物として著作権法の保護が及ぶと解される。」としながら、「ファービー」のデザイン形態は、「全身を覆う毛のぬいぐるみから動物とは明らかに質感の異なるプラスチック製の目やくちばし等が露出しているなど、これが玩具としての実用性及び機能性を離れ独立して美的鑑賞の対象となる美的特性を備えているとは認め難い。」と判示して、その著作物性を否定している。しかし、原判決は、「全身を覆う毛のぬいぐるみから動物とは明らかに質感の異なるプラスチック製の目やくちばし等が露出している」ことが、なぜ美的鑑賞の対象となる美的特性を否定する理由になるのかを明らかにしておらず、そもそも美の表現において素材は問題とならないはずであり、玩具、特にぬいぐるみは、主として日常生活の利便性に資することを意図して製作される実用品とは本質的に違い、使用者の感性に訴えることが基本とされ、往々にして飾り物や置物として鑑賞の対象とされているのであって、玩具あるいはぬいぐるみが、同じ大量生産にかかるものであっても、実用品とは異なる特性を持つことを、原判決は正しく認識、評価していない。
 「ファービー」のデザイン形態は創作されたものであり、映画「グレムリン」に登場するキャラクター「ギズモ」と比較しても、耳の形状や頭とのバランス、眼球の形状、目と顔のバランス、鼻の有無、口の形状等多数の相違点があって、模倣性はない。
(2) 原判決は、応用美術に著作権の保護が及ぶと、意匠制度の存在意義を減殺しかねないとしているが、応用美術に著作権法と意匠法との重畳適用を認めても支障はない。
 模倣商品の譲渡等の取締りは、不正競争防止法によっては有効にできない。
 玩具業界では、模倣商品への対応に著作権法を活用している実態がある。
2 弁護人の答弁の骨子は、原判決が、「ファービー」のデザイン形態は、わが国著作権法上の美術の著作物には当たらないとした判断は、正しいというのであり、答弁の大要は、以下のとおりである。
(1) わが国の現行著作権法は、その立法経過に照らしても、意匠法等工業所有権制度との調整から、著作権法の「美術の著作物」には原則として応用美術を含めず、例外として美術工芸品は「美術の著作物」に含むとの立場を採っているのであり、これは、一品制作の美術工芸品は純粋美術に近いことが考慮されたものである。
 応用美術の著作物性に関するこれまでの裁判例に示された美術の著作物性の判断基準に照らすと、「ファービー」のデザイン形態は、客観的に見て電子玩具のデザイン形態として産業上の利用を目的に創作され、玩具としての機能を離れて美的鑑賞の対象となりうる代物ではなく、また、「ファービー」の顔面の額部にセンサーが取り付けられた扇型の窓が設置され、眼球の上下動を支え、顔全体をプラスチックで一体成型するため、両目の間に額の窓とくちばしの上部をグロテスクな半円部分で結合させており、これらは実用面からの技術的制約であり、さらに、半球形のくちばしが真横に切れて上下に動くのも、音声を発するための仕掛けにすぎず、「ファービー」の顔面部分は、すべて実用面からの技術的制約に従って制作されたものであり、「ファービー」のデザイン形態は、最初から実用品として制作され、専ら美の表現を追求したものとは到底認められず、美的鑑賞の対象となりうるものではないので、美術の著作物に該当しない。
(2) 検察官は、「ファービー」のデザイン形態は、鑑賞の対象となる美的外観を備えている旨主張するが、その愛らしさ、親近感や愛情を抱かせるといった要素は、愛玩性を高める要素ではあるものの、あくまで購入者の興味を惹くためにすぎず、美的鑑賞の対象とさせる要因ではなく、商品にバリエーションを持たせることも、購入意欲をかき立てるものにすぎない。また、検察官は、「ファービー」の制作者の意図には美的鑑賞の目的もあったというが、「ファービー」の主たる用法は、電子ペットとしての玩具としての用法が目的であり、商品にカラーバリエーションがあるということは、美的鑑賞が目的であることを否定するものである。
 「ファービー」のデザイン形態は、1984年ころに人気を呼んだ映画「グレムリン」に登場する「ギズモ」と称する玩具に酷似しており、独創性も認められない。
(3) 応用美術に著作権法と意匠法の重畳適用を認めることは、両法のそれぞれの立法意義や意匠制度の存在を無にすることになり、応用美術を扱う産業界の発展を阻害することになりかねない。
 模倣ないし類似商品の取締りの必要があるとしても、それには不正競争防止法の改正や解釈等による対応策が採られており、そのために著作権法の対象を広げる必要はない。
第2 当裁判所の判断
 当裁判所は、記録を調査し、当審における事実取調べの結果も併せて検討し、以下のとおり判断する。
1 本件公訴事実の要旨は、「商品名『ポーピィ』と称する玩具が、タイガー・エレクトロニクス・リミテッド社が著作権を有する『ファービー』の容貌姿態等を模したもので、同社の有する著作権を侵害して製造されたものであることを知りながら、『ポーピィ』を販売して、タイガー・エレクトロニクス・リミテッド社の著作権を侵害した。」というもので、同事実は著作権法119条1号、113条1項2号違反に該当するというのである。
 「ファービー」のデザイン形態については、アメリカ合衆国の玩具の製造販売会社であるタイガー・エレクトロニクス・リミテッド社が、アメリカ合衆国連邦機関である著作権庁に著作権登録をし、アメリカ合衆国法上の著作権を有するのであるが、こうしたデザイン形態は、物の形態あるいは外観の美的創作であって、著作権法の領域においては、実用品に供されあるいは産業上利用されることを目的として制作される応用美術といわれるものに属する。
 ところで、わが国の著作権法6条3号は、「条約によりわが国が保護の義務を負う著作物」を著作権法により保護する旨定めており、わが国及びアメリカ合衆国は、「文化的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約」に加盟しており、両国間の著作権の保護に関しては同条約によることとなるが、同条約は、本国で保護される著作権が他の同盟国内で保護される範囲等を各同盟国の国内法に委ね(同条約5条1項、2項)、特にいわゆる応用美術については、その保護の範囲及び保護条件を定める権能を各同盟国の国内法に委ねており(同条約2条1項、7項)、「ファービー」のデザイン形態は応用美術に当たるので、結局、タイガー・エレクトロニクス・リミテッド社がアメリカ合衆国において著作権を有する「ファービー」のデザイン形態について、わが国の著作権法上著作物として保護の対象となるか否かは、わが国の著作権法の解釈にかかることとなる(なお、本件では、内蔵チップに組み込まれた言語を発するプログラムについては、アメリカ合衆国で著作権を有する法人である告発者においても、著作権侵害として告発しておらず、また、公訴事実においても、当該プログラムに関する著作権侵害は掲げられておらず、デザイン形態に関する著作権侵害のみが対象とされている。)。
2 わが国の著作権法は、著作権等による保護の対象となる著作物について、同法2条1項1号において、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」とし、同条2項は、「『美術の著作物』には、美術工芸品を含むものとする。」と定めており、絵画、彫刻等の専ら美術鑑賞の対象とされることを目的とした純粋美術のみならず、美術の感覚や技法を手工的な一品制作に応用した美術工芸品が、美術の著作物とされていることは明らかである。しかし、実用品に供されあるいは産業上利用されることを目的として制作される応用美術については、昭和44年当時の著作権法の制定経過や同法が応用美術のうち美術工芸品のみを掲げていることなどを考慮すると、現行著作権法上は原則として著作権法の対象とならず、意匠法等工業所有権制度による保護に委ねられていると解すべきである。ただ、そうした応用美術のうちでも、純粋美術と同視できる程度に美術鑑賞の対象とされると認められるものは、美術の著作物として著作権法上保護の対象となると解釈することはできる。そこで、美術の著作物といえるためには、応用美術が、純粋美術と等しく美術鑑賞の対象となりうる程度の審美性を備えていることが必要である。これを本件で問題となっている実用品のデザイン形態についていえば、そのデザイン形態で生産される実用品の形態、外観が、美術鑑賞の対象となりうるだけの審美性を備えている場合には、美術の著作物に該当するといえる。
3 「ファービー」の制作由来については、アメリカ合衆国のエンジニア兼デザイナーであるデビッド・ハンプトン外2名が、使用する者にあたかもペットを飼育しているかのような楽しみを感じさせる電子玩具の製作を意図したものであり、その電子回路の設計及びデザイン形態を試作した上、同国の玩具メーカーであるタイガー・エレクトロニクス・リミテッド社との間で、「ファービー」の共同開発に関する契約及び「ファービー」の著作権の譲渡契約を締結した。タイガー・エレクトロニクス・リミテッド社は、より斬新性を高めて購買者に対する印象を強めるべく、試作品のデザイン形態に若干の変更を加えて、「ファービー」のデザイン形態を完成させ、1998年10月にアメリカ合衆国において、「毛ぐるみ付き玩具」として「ファービー」のデザイン形態を、同時に、ファービー語・英語辞典をそれぞれ著作権登録をした。「ファービー」は、同年10月にアメリカ合衆国で販売が開始されるとともに話題を呼び、大流行となって、その後世界50カ国以上で発売されることとなり、わが国においても、平成11年2月に英語版が、同年5月末から日本語版が発売され、大きな売り上げを記録している。なお、「ファービー」については、わが国で同年4月2日に意匠登録の出願がなされ、同年9月3日に意匠登録されている。
 「ファービー」の形態や機能等については、原判決が判示しているとおりであり、電子回路やモーター等の内蔵されたプラスチック製の本体と、本体にかぶさる毛のぬいぐるみから成り、体長が約13センチメートルで、頭部分が大きい二頭身ほどのずんぐりした架空の動物を表した体型をしている。顔面部分は本体と一体となっており、球形の大きな両眼と同じく球形の口がある。顔面部分及び底部を除いて、毛のぬいぐるみが覆っており、三角形の大きな耳と頭上部分にたてがみ様の毛があり、3本指の足がついているが、手に当たるものはない。ぬいぐるみの色、模様にはバリエーションがあって、数多くの種類があり、目の色も数種類ある。
 「ファービー」の本体内部に7個の各種センサーが内蔵されており、これらセンサーが、接触、光、音、振動、傾斜等の外部からの刺激をセンサーで感応し、CPU制御によって耳、目、口、足が動くとともに、内設のロムチップに記憶された単語を適切に選択し、その動作に合った言葉等の音声を内蔵スピーカーから発し、刺激を継続することで記憶チップが作動し、あらかじめ記憶された単語の範囲内で次第に語彙を増やし、その組み合わせを変化させ、疑似言語から英語等による言葉を発するようになり、あたかも飼っているペットが成長するような、楽しみやかわいさ等を抱かせることになり、育成型の電子ペット玩具といわれるゆえんである。
4 「ファービー」のデザイン形態は、当初から工業的に大量生産される電子玩具のデザインとして創作されたものであるが、「ファービー」の最大の特徴は、あたかもペットを飼育しているかのような感情を抱かせることを目的に、各種の刺激に反応して各種の動作をするとともに言葉を発することにあり、そのため、そうした特徴を有効に発揮させるための形状、外観が見られるのである。顔面の額に光センサーと赤外線センサーのための扇形の窓が設置され、額から眼球周辺及び口周辺にかけては一体成型のための平板な作りとなっており、目、口は球状のものが三角形上に3つ配置され、眼球及び口が動くため、その周囲が丸くくりぬかれて隙間があり、左右の眼球を連結する軸を隠すように、両目の間に半円形に隆起した部分があり、美感上重要な顔面部分に玩具としての実用性及び機能性保持のための形状、外観が見られ、また、刺激に反応して目、口、耳が動くことを感得させるため、それらが大きくされていることが認められる。このように、「ファービー」に見られる形態には、電子玩具としての実用性及び機能性保持のための要請が濃く表れているのであって、これは美感をそぐものであり、「ファービー」の形態は、全体として美術鑑賞の対象となるだけの審美性が備わっているとは認められず、純粋美術と同視できるものではない。
5 控訴趣意は、美的の意味については、「美しい」もののみならず、見る者をして驚きや感動を与え、あるいは愛らしさ、親しみ、愛着を抱かせるなど、鑑賞の対象となりうるものであれば、広い範囲のものが含まれるというべきであり、「ファービー」は、ペットを飼育する際に感じる喜怒哀楽といった様々な感情を想起させることを目的に開発された玩具であり、そのデザイン形態は、使用者の感性に訴え、愛らしさ、親しみを覚えさせるよう工夫して創作されたものであり、二頭身のずんぐりした体型を長い毛で覆い、大きな耳、丸くくりっとした目、長くカールされたまつげ、小さなくちばしといった容貌姿態は、使用者の感性に訴えかけるという制作者の思想を具体的に表現したもので、愛らしさがあって親近感や愛情を抱かせるという意味での鑑賞の対象となる美的特性を備えている旨主張する。
 しかしながら、なるほどその容貌姿態は、育成型の電子ペットとしての愛らしさやかわいらしさといった感情を抱かせることを目的に創作されたものであるが、使用者にかわいらしさを感じさせ、親近感や愛情を持たせるのは、やはりその大きな特徴であるペットと同じような反応や機能をすることが大きく影響していると認められるのであり、そうした点を抜きにして、その容貌姿態のみで美術鑑賞の対象となるというには困難があるといわねばならない。
 控訴趣意は、「ファービー」が人気があり、現実に爆発的に売れたことを強調するのであるが、そうした事実は、「ファービー」の特徴である上記の反応、機能をすることが大きく影響しているのみならず、著作権の対象とはならないぬいぐるみ部分の色彩や模様も影響していると考えられ、容貌形態のみによる人気や売れ行きの程度を考慮するのは著しく困難である。
 控訴趣意は、著作権法と意匠法の重畳適用をいうのである。しかしながら、著作権法と意匠法とが併存する現行法制度においては、工業的に大量生産される実用品のデザイン形態については、意匠制度の存在を考慮するとき、著作権法の適用を拡大するのが妥当であるかは慎重な検討を要し、殊に刑事罰の適用に関してはより慎重でなければならないと考えられる。
6 以上のとおりで、本件「ファービー」のデザイン形態は、著作権法2条1項1号に定める著作物に該当しないと認められる。したがって、原判決の法令の解釈適用の誤りをいう論旨は理由がない。
第3 よって、控訴趣意は理由がないから、刑訴法396条により検察官の本件各控訴を棄却することとし、主文のとおり判決する。

仙台高等裁判所第1刑事部
 裁判長裁判官 松浦繁
 裁判官 根本渉
 裁判官 春名郁子
 
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【事件名】偽「ファービー」人形販売事件(刑)(2)
【年月日】平成14年7月9日
 仙台高裁 平成12年(う)第63号 著作権法違反被告事件
 (原審・山形地裁平成11年(わ)第167号)


主文
 原判決を破棄する。
 被告人は無罪。

理由
第1 本件控訴の趣意は、弁護人當山泰雄作成の控訴趣意書に記載のとおりであるから、これを引用する。
 論旨は、法令適用の誤りを主張し、要するに、原判決は、被告人が販売した玩具「ポーピィ」は、アメリカ合衆国の法人タイガー・エレクトロニクス・リミテッド社が、その製造販売する玩具「ファービー」のデザイン形態に関して有する著作権を、侵害するものであるとして、著作権法違反の成立を認めたが、アメリカ合衆国法上の著作権があるものは、わが国の著作権法上の著作物に当たるとき、わが国でも保護されるものであるところ、「ファービー」のデザイン形態は、著作権法上の美術の著作物に該当しないので、玩具「ポーピィ」の販売は、「ファービー」のデザイン形態に関する著作権を侵害したことにならないというべきであるから、原判決が著作権法違反の成立を認めたのは誤りである、というのである。
第2 弁護人及び検察官の各主張
 弁護人及び検察官は、控訴趣意及び弁論において、それぞれ以下のように主張する。
1 弁護人の主張の大要
(1) アメリカ合衆国法上の著作権があるものは、当然にわが国の著作権法によって保護されるのではなく、著作権法上の著作物に該当して初めて保護されるのである。
 わが国の著作権法は、その制定過程において、意匠法等工業所有権制度との調整から、原則として応用美術を美術の著作物として保護するとの立場は採らなかったものであり、ただ判例上、応用美術でも美術の著作物に該当することはあるとされている。しかし、「ファービー」のデザイン形態は、応用美術のうち実用品のひな型に属するが、著作権法は一品制作の美術工芸品に限って著作物に該当するとしているのであるから、実用品のひな形は美術工芸品に入らず、また、例え美術工芸品に限らないとの立場に立っても、これまでの判例上の基準からして、「ファービー」のデザイン形態については著作物性が認められないといえる。
 応用美術の著作物性について従来の判例上示された幾つかの基準に照らしてみても、「ファービー」のデザイン形態は、客観的に見て、電子玩具のデザイン形態として産業上の利用を目的に創作され、玩具としての機能を離れて美的鑑賞の対象となる代物ではなく、また、「ファービー」の顔面部分には、額部にセンサーが取り付けられた扇型の窓が設置され、眼球の上下動を支え、顔全体をプラスチックで一体成型するため、両目の間に額の窓とくちばしの上部をグロテスクな半円部分で結合させているなど、実用面からの技術的制約があり、半球形のくちばしが真横に切れて上下に動くのも、音声を発するための仕掛けにすぎず、「ファービー」の顔面部分は、すべて実用面からの技術的制約の下に制作されたものであり、これは玩具としての宿命であって、専ら美の表現を追求したものとは認め難いのであって、著作物に該当するとはいえない。
(2) 「ファービー」のデザイン形態は、1984年ころに人気を呼んだ映画「グレムリン」に登場する「ギズモ」と称する電子玩具に酷似しており、独創性も認められない。
(3) 刑罰法規の発動は謙抑的でなければならず、平成5年に改正された不正競争防止法が、模倣品の譲渡行為に対する罰則を設けなかった経緯に照らせば、知的所有権の分野における刑罰の適用に関しては、刑罰の謙抑性の要請がより強いというべきであり、応用美術が著作物に該当するか否かの判断に当たっては、刑事事件では民事事件における以上に厳しくなるべきである。
 著作権法の立法経過に照らせば、現行著作権法は、応用美術のうち一品制作の美術工芸品のみが美術の著作物に含まれる、としたものと解すべきであり、「ファービー」のデザイン形態がそれに当たらないことは明らかであり、民事事件において一品制作の美術工芸品以外のものについて著作物性を認めた判例があるとしても、それを刑事事件についても当てはめることは、明文にはない類推解釈であって、罪刑法定主義に反する。
2 検察官の主張の大要
(1) 著作権法上の美術の著作物の定義については、明文の規定はなく、絵画、彫刻等専ら鑑賞目的で創作される美的創作物である純粋美術が、美術の著作物に当たることは法文上明らかであるが、実用に供されあるいは産業上利用される美的創作物であるいわゆる応用美術が、著作権法上保護されるか否かについては、意匠法との関係などから、かねてから議論があるが、従来の裁判例においては、応用美術についても純粋美術と同視しうる場合には美術の著作物と認めていると解される。そして、この純粋美術と同視しうる場合とは、判文上は高度な美的表現を要求しているような裁判例もあるが、実際の事例を見ると、必ずしも絵画や彫刻等の典型的ないし高度な美的創作物と同程度の高度な美的表現がなされているものに限定されていないと認められるのであり、そもそも純粋美術については美術性の高低や芸術性が問題とされていないのに、応用美術についてのみそれを問題とする合理性はないといえる。また、裁判例には、美の表現が実用目的によって実質的に制約されている場合には、著作物性が否定されるとしているのがあるが、そのような場合とは、美的表現がそもそも実用目的のための補助的機能を果たしているにすぎないような、言い換えれば、実用目的による制約が極めて強い場合を指しているものと解されるのである。結局、従来の裁判例では、美的表象が実用面や機能面を離れて、一つの完結した美的表現を追求しているものと認められるか否かによって、著作物性を判断するとの姿勢をとっていると理解できる。これまでの裁判例でも、玩具であるとの一事をもって著作物性を否定する判断をしていない。
(2) 「ファービー」のデザイン形態は、ペットを飼育しているかのような感情を想起させることを意図して創作されたものであり、映画「グレムリン」に登場するキャラクター「ギズモ」とは多数の相違点があって、模倣性はない。
 「ファービー」は、ペットを飼育しているかのような楽しみを感じさせるため、ペットを飼育する際に感じる喜怒哀楽といった様々な感情を想起させることを意図して、それを目的に開発された育成型電子ペットであるところ、そのデザイン形態は、使用者の感性に訴え、愛らしさ、親しみを覚えさせるよう工夫して創作されたものであり、二頭身のずんぐりした体型を長い毛で覆い、大きな耳、丸くくりっとした目、長くカールされたまつげ、小さなくちばしというような容貌姿態は、使用者の感性に訴えかけるという制作者の思想を具体的に表現したもので、愛らしさがあって親近感や愛情を抱かせるという意味で鑑賞の対象となる美的特性を備えており、「ファービー」のデザイン形態は著作物であるといえる。
 実際にも、販売されたカラーバリエーションを購入して鑑賞したり、「ファービー」を着せ替え人形として鑑賞して楽しむなどされており、これは、「ファービー」のデザイン形態に、愛らしさや親近感があるからにほかならず、刺激に反応するという機能が備わっていたとしても、そうした爆発的人気商品となることは考えられず、容貌姿態が美的特性を有することを物語っているといえる。
 「ファービー」は、玩具であり、様々な感情を呼び起こし情操を高めるものであって、主として日常生活の利便性に資する日用品とは本質的な差異がある。
 「ファービー」において、「全身を覆う毛のぬいぐるみから動物とは明らかに質感の異なるプラスチック製の目やくちばし等が露出している」ことは、美的鑑賞の対象となる美的特性を否定する理由にならず、そもそも美の表現において素材は問題とならないはずであり、一部プラスチックを使用せざるを得ないという技術的制約があるとしても、それをどのように使用するかは様々であり、そのデザインによって美醜が決まるのであって、「ファービー」は、使用者に愛らしさを感じさせるような外観でデザインされたものである。
(3) 著作権法上美術の著作物の意義について明文の規定がなく、その意義は専ら解釈に委ねられており、解釈として一定の応用美術について著作物と認めることは、類推解釈に当たらない。
第3 当裁判所の判断
 当裁判所は、記録を調査し、当審における事実取調べの結果も併せて検討し、以下のとおり判断する。
1 本件公訴事実の要旨は、「商品名『ポーピィ』と称する玩具が、タイガー・エレクトロニクス・リミテッド社が著作権を有する『ファービー』の容貌姿態等を模したもので、同社の有する著作権を侵害して製造されたものであることを知りながら、『ポーピィ』を販売して、タイガー・エレクトロニクス・リミテッド社の著作権を侵害した。」というもので、同事実は著作権法119条1号、113条1項2号違反に該当するというのである。
 「ファービー」のデザイン形態については、アメリカ合衆国の玩具の製造販売会社であるタイガー・エレクトロニクス・リミテッド社が、アメリカ合衆国連邦機関である著作権庁に著作権登録をし、アメリカ合衆国法上の著作権を有するのであるが、こうしたデザイン形態は、物の形態あるいは外観の美的創作であって、著作権法の領域においては、実用品に供されあるいは産業上利用されることを目的として制作される応用美術といわれるものに属する。
 ところで、わが国の著作権法6条3号は、「条約によりわが国が保護の義務を負う著作物」を著作権法により保護する旨定めており、わが国及びアメリカ合衆国は、「文化的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約」に加盟しており、両国間の著作権の保護に関しては同条約によることとなるが、同条約は、本国で保護される著作権が他の同盟国内で保護される範囲等を各同盟国の国内法に委ね(同条約5条1項、2項)、特にいわゆる応用美術については、その保護の範囲及び保護条件を定める権能を各同盟国の国内法に委ねており(同条約2条1項、7項)、「ファービー」のデザイン形態は応用美術に当たるので、結局、タイガー・エレクトロニクス・リミテッド社がアメリカ合衆国において著作権を有する「ファービー」のデザイン形態について、わが国の著作権法上著作物として保護の対象となるか否かは、わが国の著作権法の解釈にかかることとなる(なお、本件では、内蔵チップに組み込まれた言語を発するプログラムについては、アメリカ合衆国で著作権を有する法人である告発者においても、著作権侵害として告発しておらず、また、公訴事実においても、当該プログラムに関する著作権侵害は掲げられておらず、デザイン形態に関する著作権侵害のみが対象とされている。)。
2 わが国の著作権法は、著作権等による保護の対象となる著作物について、同法2条1項1号において、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」とし、同条2項は、「『美術の著作物』には、美術工芸品を含むものとする。」と定めており、絵画、彫刻等の専ら美術鑑賞の対象とされることを目的とした純粋美術のみならず、美術の感覚や技法を手工的な一品制作に応用した美術工芸品が、美術の著作物とされていることは明らかである。しかし、実用品に供されあるいは産業上利用されることを目的として制作される応用美術については、昭和44年当時の著作権法の制定経過や同法が応用美術のうち美術工芸品のみを掲げていることなどを考慮すると、現行著作権法上は原則として著作権法の対象とならず、意匠法等工業所有権制度による保護に委ねられていると解すべきである。ただ、そうした応用美術のうちでも、純粋美術と同視できる程度に美術鑑賞の対象とされると認められるものは、美術の著作物として著作権法上保護の対象となると解釈することはできる。そこで、美術の著作物といえるためには、応用美術が、純粋美術と等しく美術鑑賞の対象となりうる程度の審美性を備えていることが必要である。これを本件で問題となっている実用品のデザイン形態についていえば、そのデザイン形態で生産される実用品の形態、外観が、美術鑑賞の対象となりうるだけの審美性を備えている場合には、美術の著作物に該当するといえる。
3 「ファービー」の制作由来については、アメリカ合衆国のエンジニア兼デザイナーであるデビッド・ハンプトン外2名が、使用する者にあたかもペットを飼育しているかのような楽しみを感じさせる電子玩具の製作を意図したものであり、その電子回路の設計及びデザイン形態を試作した上、同国の玩具メーカーであるタイガー・エレクトロニクス・リミテッド社との間で、「ファービー」の共同開発に関する契約及び「ファービー」の著作権の譲渡契約を締結した。タイガー・エレクトロニクス・リミテッド社は、より斬新性を高めて購買者に対する印象を強めるべく、試作品のデザイン形態に若干の変更を加えて、「ファービー」のデザイン形態を完成させ、1998年10月にアメリカ合衆国において、「毛ぐるみ付き玩具」として「ファービー」のデザイン形態を、同時に、ファービー語・英語辞典をそれぞれ著作権登録をした。「ファービー」は、同年10月にアメリカ合衆国で販売が開始されるとともに話題を呼び、大流行となって、その後世界50カ国以上で発売されることとなり、わが国においても、平成11年2月に英語版が、同年5月末から日本語版が発売され、大きな売り上げを記録している。なお、「ファービー」については、わが国で同年4月2日に意匠登録の出願がなされ、同年9月3日に意匠登録されている。
 「ファービー」の形状や機能等については、電子回路やモーター等の内蔵されたプラスチック製の本体と、本体にかぶさる毛のぬいぐるみから成り、体長が約13センチメートルで、頭部分が大きい二頭身ほどのずんぐりした架空の動物を表した体型をしている。顔面部分は本体と一体となっており、球形の大きな両眼と同じく球形の口がある。顔面部分及び底部を除いて、毛のぬいぐるみが覆っており、三角形の大きな耳と頭上部分にたてがみ様の毛があり、3本指の足がついているが、手に当たるものはない。ぬいぐるみの色、模様にはバリエーションがあって、数多くの種類があり、目の色も数種類ある。
 「ファービー」の本体内部に7個の各種センサーが内蔵されており、これらセンサーが、接触、光、音、振動、傾斜等の外部からの刺激をセンサーで感応し、CPU制御によって耳、目、口、足が動くとともに、内設のロムチップに記憶された単語を適切に選択し、その動作に合った言葉等の音声を内蔵スピーカーから発し、刺激を継続することで記憶チップが作動し、あらかじめ記憶された単語の範囲内で次第に語彙を増やし、その組み合わせを変化させ、疑似言語から英語等による言葉を発するようになり、あたかも飼っているペットが成長するような、楽しみやかわいさ等を抱かせることになり、育成型の電子ペット玩具といわれるゆえんである。
4 「ファービー」のデザイン形態は、当初から工業的に大量生産される電子玩具のデザインとして創作されたものであるが、「ファービー」の最大の特徴は、あたかもペットを飼育しているかのような感情を抱かせることを目的に、各種の刺激に反応して各種の動作をするとともに言葉を発することにあり、そのため、そうした特徴を有効に発揮させるための形状、外観が見られるのである。顔面の額に光センサーと赤外線センサーのための扇形の窓が設置され、額から眼球周辺及び口周辺にかけては一体成型のための平板な作りとなっており、目、口は球状のものが三角形上に3つ配置され、眼球及び口が動くため、その周囲が丸くくりぬかれて隙間があり、左右の眼球を連結する軸を隠すように、両目の間に半円形に隆起した部分があり、美感上重要な顔面部分に玩具としての実用性及び機能性保持のための形状、外観が見られ、また、刺激に反応して目、口、耳が動くことを感得させるため、それらが大きくされていることが認められる。このように、「ファービー」に見られる形態には、電子玩具としての実用性及び機能性保持のための要請が濃く表れているのであって、これは美感をそぐものであり、「ファービー」の形態は、全体として美術鑑賞の対象となるだけの審美性が備わっているとは認められず、純粋美術と同視できるものではない。
5 検察官は、美的の意味については、「美しい」もののみならず、見る者をして驚きや感動を与え、あるいは愛らしさ、親しみ、愛着を抱かせるなど、鑑賞の対象となりうるものであれば、広い範囲のものが含まれるというべきであり、「ファービー」は、ペットを飼育する際に感じる喜怒哀楽といった様々な感情を想起させることを目的に開発された玩具であり、そのデザイン形態は、使用者の感性に訴え、愛らしさ、親しみを覚えさせるよう工夫して創作されたものであり、二頭身のずんぐりした体型を長い毛で覆い、大きな耳、丸くくりっとした目、長くカールされたまつげ、小さなくちばしといった容貌姿態は、使用者の感性に訴えかけるという制作者の思想を具体的に表現したもので、愛らしさがあって親近感や愛情を抱かせるという意味での鑑賞の対象となる美的特性を備えている旨主張する。
 しかしながら、なるほどその容貌姿態は、育成型の電子ペットとしての愛らしさやかわいらしさといった感情を抱かせることを目的に創作されたものであるが、使用者にかわいらしさを感じさせ、親近感や愛情を持たせるのは、やはりその大きな特徴であるペットと同じような反応や機能をすることが大きく影響していると認められるのであり、そうした点を抜きにして、その容貌姿態のみで美術鑑賞の対象となるというには困難があるといわねばならない。
 検察官は、「ファービー」が人気があり、現実に爆発的に売れたことを強調するのであるが、そうした事実は、「ファービー」の特徴である上記の反応、機能をすることが大きく影響しているのみならず、著作権の対象とはならないぬいぐるみ部分の色彩や模様も影響していると考えられ、容貌形態のみによる人気の程度や売れ行きの程度を考慮するのは著しく困難である。
6 以上のとおりで、本件「ファービー」のデザイン形態は、著作権法2条1項1号に定める著作物に該当しないと認められる。したがって、「ファービー」のデザイン形態が著作権法2条1項1号の著作物に該当するとして、著作権法違反の成立を認めた原判決には、法令の解釈適用を誤った違法があるというべきであり、論旨は理由がある。
第4 よって、刑訴法397条1項、380条により原判決を破棄し、同法400条ただし書により、被告事件について更に次のとおり判決する。
 本件公訴事実である、「被告人は、商品名『ポーピィ』と称する玩具が、タイガー・エレクトロニクス・リミテッド社が著作権を有する『ファービー』の容貌姿態等を模したもので、同社が有する著作権を侵害して製造されたものであることを知りながら、同玩具を頒布し、タイガー・エレクトロニクス・リミテッド社の著作権を侵害した。」旨の著作権法119条1号、113条1項2号違反の事実については、タイガー・エレクトロニクス・リミテッド社がアメリカ合衆国法上の著作権を有する「ファービー」のデザイン形態は、上記説示のとおり、わが国著作権法上の著作物に該当しないので、「ポーピィ」が「ファービー」の容貌姿態等を模したものであるか否かを問うまでもなく、著作権侵害の事実は認められず、公訴事実は罪とならないので、刑訴法404条、336条により、被告人に対し無罪の言渡しをすることとし、主文のとおり判決する。

仙台高等裁判所第1刑事部
 裁判長裁判官 松浦繁
 裁判官 根本渉
 裁判官 春名郁子
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日本ユニ著作権センター
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