判例全文 | ||
【事件名】熊本の保険金疑惑報道事件(週刊新潮) 【年月日】平成14年12月27日 熊本地裁 平成12年(ワ)第920号 損害賠償等請求事件事件 判決 主文 1 被告株式会社A及び被告Bは、原告らに対し、被告株式会社Aが発行する「C」誌上に、別紙1記載の謝罪広告を別紙2記載の条件で、1回掲載せよ。 2 被告株式会社A及び被告Bは、原告医療法人Dに対し、連帯して、金440万円及びこれに対する平成12年9月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告株式会社A及び被告Bは、原告Eに対し、連帯して、金550万円及びこれに対する平成12年9月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 原告らの被告株式会社A及び被告Bに対するその余の請求並びに被告Fに対する請求をいずれも棄却する。 5 訴訟費用中、原告らと被告Fとの間に生じた分は原告らの負担とし、原告らとその余の被告らとの間に生じた分はこれを2分し、その1を上記被告らの負担とし、その余を原告らの負担とする。 6 この判決は、第2項及び第3項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 請求の趣旨 (1) 被告株式会社A(以下「被告A」という。)及び被告Bは、原告らに対し、別紙3記載の謝罪広告を、株式会社G新聞社発行のG新聞朝刊社会面、被告A発行の週刊誌「C」誌上に、別紙4記載の条件において、各1回掲載せよ。 (2) 被告らは、原告医療法人D(以下「原告D」という。)に対し、各自金2100万円及びこれに対する平成12年9月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3) 被告らは、原告Eに対し、各自金2100万円及びこれに対する平成12年9月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (4) 訴訟費用は被告らの負担とする。 (5) (2)、(3)について仮執行宣言 2 請求の趣旨に対する答弁 (1) 原告らの請求をいずれも棄却する。 (2) 訴訟費用は原告らの負担とする。 第2 当事者の主張 1 請求原因 (1) 当事者(訴状3頁) ア 原告ら (ア) 原告Dは、昭和46年12月20日に設立された医療法人であり、現在法人住所地に所在するH病院(以下「原告病院」という。)を経営している。 (イ) 原告Eは、昭和46年の原告D設立以来理事(理事長)の職にある。 イ 被告ら (ア) 被告Aは、雑誌及び書籍の出版を目的とする株式会社であり、著名な週刊誌である「C」誌を全国で発行している。同誌の発行部数は毎号異なるものと認められるが、これを平均すると1回当たり約69万部である。 (イ) 被告Bは、被告Aの従業員であり、かつCの編集発行人であって、同誌の編集発行責任者を務める者である。 (ウ) 被告Fは、被告Aの従業員であり、Cの本件記事についての直接担当者である。 (2) 名誉毀損の事実 ア 「C」誌による記事の掲載(訴状5頁) 被告らは、平成12年5月28日熊本県天草郡I町内において発生した原告D副理事長J(以下「亡J」という。)、同理事兼看護部長のK(以下「亡K」という。)、同理事兼看護部長のL(以下「亡L」という。)、同理事兼看護部長のM(以下「亡M」という。)4名の死亡事故(以下「本件事故」という。)に関して、平成12年9月7日発行された「C」誌の9月7日号(以下「本件雑誌」という。)138頁から140頁に、「『N』スクープ 熊本『70億円保険金』疑惑の追跡」の表題の下、別紙5(添付省略)の記事(以下「本件記事」という。)を掲載し、これを全国で頒布した。 イ 「N」誌による記事の掲載(訴状9頁) 本件記事に先立ち、被告Aが発行する写真週刊誌「N」誌は、本件事故に関し、以下の各記事(以下「『N』誌の各記事」という。)を掲載した。 (ア) 「N」誌平成12年29号(平成12年7月26日号・同年 7月19日発売)の8頁及び9頁に、「怪!『保険金50億円』熊本病院オーナー夫人の交通事故死」という表題、「『あの人は殺された』との声もあって・・・」の副題の下に、別紙6の1(添付省略)の記事を掲載した。 (イ) 「N」誌平成12年30号(平成12年8月2日号・同年7月27日発行)64頁、65頁に、「続・熊本50億円保険金事故!踏み続けたアクセルの謎」という表題の下に、別紙6の2(添付省略)の記事を掲載した。 (ウ) 「N」誌平成12年31号(同年8月9日号・同年8月2日発売)の10頁及び11頁に、「『熊本50億円保険金事故』第3弾!理事長の保険金70億と病院の“大奥”」という表題、「『ユニットバス』『ダブルベッド』の看護婦個室」の副題の下に、別紙6の3(添付省略)の記事を掲載した。 (エ) 「N」誌平成12年32号(平成12年8月16日・23日 合併号、同年8月9日発売)の72頁ないし75頁に、「『熊本50億円事故』に新事実!! 直前に看護婦二人に8億の保険金」の表題、「保険金の全てを知る理事長は取材拒否」という副題の下に別紙6の4(添付省略)の記事を掲載した。 (オ) 「N」誌平成12年34号(同年8月30日号・同年8月23日発売)の62頁ないし65頁に、「熊本『70億保険金事故』理事長の検事、元県警幹部の華麗な人脈」の表題、「4人はなぜ司法解剖されなかったか」という副題の下に、別紙6の5(添付省略)の記事を掲載した。 ウ 本件記事の摘示する事実 (ア) 本件記事と「N」誌の各記事との関係(訴状16頁、準備書 面8の3頁) 「N」誌と「C」誌は同じ週刊誌であり、一般大衆の共通の読者を多数有すると考えるべきであるから、本件記事を読んだ一般読者の大多数が、本件事故について「N」誌の各記事がどのような報道をしていたかについて知識を有していたと考えるのが自然である。また、本件記事が、「『N』スクープ 熊本『70億円保険金』疑惑の追跡」の表題で、特に読者に対し「N」誌の各記事の追跡記事である旨注意を喚起していることからすれば、本件記事を読んだ一般読者は、普通の注意と読み方で「N」誌の各記事に思い至り、「N」誌の各記事を念頭に本件記事を読むのが普通というべきである。したがって、本件記事による名誉毀損の有無を判断するに当たっては、読者が本件記事を読むに当たって通常有していた知識・経験の一部として、「N」誌の各記事を参照すべきである。 本件記事と「N」誌の各記事を総合するとき、本件記事は、以下の事実を摘示し、原告D及び原告Eの名誉信用を著しく毀損するものである。 a 本件事故は、運転者亡Mが意図的に惹起したものであり、亡Mにとっては自殺行為、亡M以外の3名の同乗者にとっては殺人に該当する。 b 亡Mが上記行為に及んだ理由は、原告Eにマインドコントロールされたことにより、原告Eの命令に従ったものである。亡M及び本件事故で死亡した亡K、亡Lはいずれも原告Eと愛人関係にあり、同人に洗脳され、同人の命令ならば何でも聞く関係にあった。 c 原告Eが亡Mに上記行為を命じた理由は、原告Eが亡J、亡K、亡Lに付保していた70億円の生命保険等の保険金を詐取するためである。原告Dには数十億円の負債があり、また、原告E本人も最近株で大損をして金に困っており、このことが、上記保険金殺人の動機である。 (イ) 本件記事自体が読者に与える印象 仮に「N」誌の各記事を前提としなくとも、以下のとおり、本件記事は、原告らの名誉を毀損するものである。(準備書面(4)2頁) a 本件雑誌138頁及び139頁の表題、138頁のリード部分及び同頁1段1行目から139頁1段4行目まで(以下「a記事部分」という。)。 a記事部分では、まず表題及びリード部分において、本件事故は「N」誌が「『70億円保険金』疑惑」として「スクープ」した事故であると紹介した上で、冒頭で「確かに不可解な“交通事故”だった」と「N」誌が報道する「疑惑」が、「確かに」存在することを強烈に読者に印象づける。 次に、本件事故について報じ、本件事故現場について、「時速30キロ前後で走るのがやっとです」との「地元事情通」の言葉を引用した後、60キロで崖の上から飛び出すためにはドライバーが死を覚悟してアクセルを踏み続ける必要があるとして、運転者が「アクセルを踏み続けていた」という事実を断定的に摘示し、過失による事故の可能性としては居眠り運転についてのみ言及し、「そこに至るまでの難所を運転してこれたことからも考えにくい」として、その可能性を断定的に否定している。加えて、「ガードレールの切れ目を、うまくすり抜けるように転落しているのです」「通常の交通事故では考えられないケース」であるとの「地元事情通」の言葉を借りて、この事故が過失事故であるとの見解をほぼ断定的に否定することにより、一般読者をして、本件事故は過失によるものではなく、故意による殺人事件だ、という思考過程を辿るよう仕向け、一般読者に対し、本件事故は故意による殺人事件であったとの事実を積極的に印象づけている。 さらに、交通事故として処理した警察の事件処理についても、「数々の疑問点があったというのに」、「司法解剖も行われなかった」と報じている。司法解剖は、何らかの犯罪行為により人が死亡した場合に行われるものであり、通常の事故においては行わないことは一般通常人の知るところであるから、これらの各記述は、警察の事件処理を否定することにより、本件事故は、単純な交通事故ではないとの上記記述部分を、より強固に読者に印象づけている。 b 本件雑誌139頁1段5行目から同頁4段10行目まで(以下「b記事部分」という。)。 b記事部分では、「驚くべき事実」として、本件事故の死亡者らには巨額の保険金が掛けられていた(この「掛けられ」ていたという受動態の表現自体が保険を掛けた人物がいるということを読者に暗示している。)と摘示し、保険金が掛けられていた亡Jらに「巨額の保険を掛ける意味があるのだろうか」と記述し、この保険は本来必要のないものである旨印象づけ、更に、保険の加入時期をとらえて、「単なる偶然なのか」と記述し、この保険加入は偶然ではないと印象づけている。 近年、保険金目的の殺人事件が多数報じられており、読者は保険金殺人という犯罪に対して敏感になっている。一般的平均的な読者は、保険金と死亡事故とを結びつけるこの報道手法により、容易に、その人の死亡には保険金取得目的が絡んでおり、ここに保険金を目的とした殺人事件と認められる事件が存在しているとの印象を受ける。本件記事も、読者に対し、この事故は、何者かが保険金を目当てに青写真を書いた殺人事件であるという事実を、婉曲且つ巧妙な形で印象づけている。 c 本件雑誌139頁3段及び4段の各11行目から140頁3段14行目まで(以下「c記事部分」という。)。 c記事部分は、b記事部分の保険金殺人事件の黒幕は一体誰なのだろうという読者の思いを想定して記載されたものである。 c記事部分においては、「理事長と看護婦の奇妙な関係」の見出しのもと、「単なる事故ではない」、つまり故意による事件であると病院内でも噂が流れはじめていること、運転者の亡M及び亡Kが死を覚悟していたことが記述されている。そして、死亡した3名の看護部長(以下「亡看護部長ら」という。)について、「理事長の愛人」と明確に記述した上、「理事長が飛び下りろと言ったら飛び下ります」「死ぬまで理事長の指示に従います」「命懸けで理事長に付いていきます」など公言するほど、原告Eに「洗脳」されていたと記述し、ダブルベッドやシャワーなどという暗に男女関係の存在を示す設備が亡看護部長らの個室に設置されていること、亡看護部長らが、マンション、ドレス、車などを買い与えられ、金銭面でもがんじがらめにされていたこと、ダンスタイムにおいて原告Eを奪い合うなど亡看護部長らは原告Eに気に入られようと必死であったことを摘示する。 このようなc記事部分は、一般的平均的読者に対し、原告Eと愛人関係にある亡看護部長らは、原告Eの言うがままだった、金銭的にもがんじがらめにされ、何を命ぜられてもそれに従うものだった、その程度は、自分の命よりも原告Eの命令の方が優先するほどの正に「洗脳」されたレベルだった、つまり、本件事故は、原告Eに命ぜられた運転者亡Mが故意に引き起こしたものだと強く印象づけるものである。 d 本件雑誌140頁2段及び3段の各15行目から同頁5段末尾まで(以下「d記事部分」という。) d記事部分は、「理事長は株をやっていた」との見出しで始まっているところ、一私人の株取引は、何ら公共的関心事ではなく、報道価値を有しないのであり、この見出しで一私人の株取引の事実を摘示する意味は、本件記事の文脈から、本件事故についての原告Eの「動機」すなわち、本件事故は、原告Eが保険金欲しさに仕組んだ事件であることを示すものである。 また、検察官の娘婿や県警OBの理事に関する記述も存するところ、これらの記述は、読者に対し、かかる人脈の影響で、警察の捜査は甘く、原告Eの犯罪行為が放置されたと強烈に印象づけるものである。 なお、d記事部分では、原告らの言い分を形ばかりは掲載するも、その直後に「病院関係者」の話として、原告Eは株で大損した、つまり、原告Eには金を欲しがる確たる動機がある旨を読者に印象づけ、「あまりに謎が多すぎる」と原告らの説明は謎を解明するほど納得のいくものではないと締めくくるのである。 e 本件記事全体が摘示する事実(準備書面(4)8頁、準備書面8の6頁12行目) 本件記事の伝えた事柄は、一般的平均的な読者がその記事を読むことによりどのような印象を抱いたかによって判断されるべきであるところ、本件記事を呼んだ読者は、「本件事故が単なる交通事故ではなく、保険金目的に原告らが仕組み、演出した保険金殺人事件である、又はその疑惑がある。本件保険金殺人又はその疑惑の背景として、原告Eと亡看護部長ら間の愛人関係があった。」という印象を受けるものと認められる。そして、原告らがこの事故を仕組み、演出したかどうかは、証明可能な事柄であるから、「と思う」、「という疑惑がある」との言辞を用いているとしても、本件記事は、意見や論評とはいえず、原告らが保険金取得目的で加功した殺人事件である旨の事実を伝え、その旨の印象を与えることにより、原告らの社会的評価を毀損したものである。 (3) 被告らの責任(訴状27頁) 被告Bは本件記事の編集・発行責任者として、被告Fは本件記事の担当記者として、それぞれ本件記事による原告らに対する権利侵害の結果の発生を認識しながら本件記事の編集及び発行を行ったものであり、本件記事公表に関し、民法709条に基づく不法行為責任を負う。 被告Aは被告B及び被告Fの使用者として、本件記事による原告らに対する名誉毀損行為について、民法715条に基づく使用者責任を負う。 (4) 原告らの被った損害及び謝罪広告掲載の必要性 ア 原告らの被った損害及び謝罪広告掲載の要否を判断するに際し、考慮すべき事項(訴状26頁、準備書面(6)13頁、準備書面8の12頁、16頁) (ア) 被告A及び「C」誌の社会的影響力 被告Aは、長い歴史と実績に裏打ちされた信頼に支えられているわが国を代表する出版社であり、同社が発行し、日本全国で販売・頒布する「C」誌は、良識ある週刊誌として定評があって、毎週約69万部の発行部数を誇り、社会的影響力は絶大であり、同誌のスクープはしばしば世の中に大きな影響を与えてきた。また、同じく同社が発行する「N」誌も、毎週32万部を誇り、社会的影響力は大きい。原告らは、上記「N」がスクープとして多数回にわたり繰り返し取り上げ、詳しく報じたところへ、さらに本件記事による報道がなされ、真実性の仮装を伴った虚偽事実を全国に流布されたことにより、決定的にその社会的評価を低下させられて、原告らは回復しがたい損害を被った。 (イ) 本件記事が摘示する事実は、原告Eが、保険金欲しさに病院幹部職員らを殺害したというもので、重大かつ悪質な名誉毀損行為であり、原告らに対し、極めて重大な損害を与えるものである。 (ウ) 被告らが本件記事により多大な利益を得たこと 被告らは、本件記事を載せた紙面で、約2億0700万円(1部300円、69万部)の売上げを揚げたものと推定され(広告収入を含めれば、さらに数億円の利益があると推定される。)、多少の損害賠償金では本件のような行為の自制は全く期待できない。 (エ) 原告らが反論の措置を講じるのには多額の費用がかかること 原告らが、本件記事等に反駁、反論の措置として本件記事と同程度ページ数の名誉回復広告等を掲載してもらおうとすると、本件記事の大きさ、発行部数の多さに鑑みれば、数百万円から数千万円もの費用がかかると考えられる。 イ 原告らの被った損害 (ア) 原告Eの損害(訴状26頁、準備書面(6)13頁、準備書面8の17頁) 原告Eは、裸一貫から約30年かけて地道に地域の老人医療に従事することにより原告Dを九州でも三指に入る病院に育てあげた、いわば立志伝中の人物であり、原告Eの人格及び経営手腕に対する社会的評価は極めて高いものであった。しかも、本件事故により長年連れ添った妻及び原告Dの幹部3名を一度に亡くし、もっとも衝撃を受けた者であり、その心情は強く保護されなければならない。 ところが、原告Eは、被告らから、何の証拠も根拠もなく、保険金欲しさに病院幹部職員らを殺害したと報道され、深刻な精神的ショックを受け、同人の社会的評価は地に落ちた。さらに、原告Eは、被告らの常軌を逸した取材により、プライバシー侵害に怯えながら、数ヶ月にわたり事実上の軟禁生活を強いられた苦しみ、遺族や親族等との人間関係に深い亀裂を入れられた苦悩、自分のみならず孫娘まで匿名の電話等により脅迫にさらされた恐怖、設立以来必死の努力により順調に発展してきた病院運営が被告らの報道により破綻の危機に追いやられたときに感じた不安感など多大な精神的苦痛を受け、さらに、原告Dの損害及び同法人の将来にわたる収益力の低下により原告Eの保有する社員権の価値が大きく下落し、また、原告Eが約30年間にわたって築きあげてきた医療関係の人脈が完全に断たれ、今後、理事長としての職務を全うすることが著しく困難になったという点において、深刻な経済的損害を被った。 (イ) 原告Dの損害(訴状26頁、準備書面(2)4頁、準備書面(6)14頁、準備書面8の17頁) 本件記事は、地域医療の中で確たる地位を占めていた原告Dの社会的評価を最低なものに貶めるとともに、病院経営の基礎を突き崩し、極めて重大な有形無形の影響を与えた。原告Dの入院患者数は、「N」誌による報道を端緒として、「C」誌により決定的な影響を受け、原告Dの収益は被告らの一連の報道により、5ヶ月間で3億6000万円以上減少した。 (ウ) 以上の諸事情を考慮すれば、甚大な名誉毀損記事を掲載された原告らの損害が、各自2000万円を下ることはありえない。(準備書面(6)16頁) (エ) 弁護士費用(訴状27頁) 原告らは、本訴提起による権利の救済を、原告ら訴訟代理人らに依頼し、勝訴に際しての弁護士報酬金として原告各自100万円を支払うことを約した。この弁護士費用は本件記事の掲載による不法行為と相当因果関係が認められる損害である。 ウ 謝罪広告の要否(訴状27頁) 被告Aが記載した本件記事が前記のとおり広く国民多数に周知されている実情に鑑みたとき、被告らの本件記事の掲載によって低下した原告らの社会的評価を回復させ、原告らを誤った報道による被害から救済するには、請求の趣旨記載の謝罪広告の掲載が必要である。 (5) よって、原告らは、民法709条、710条、715条、723条に基づき、被告A及び被告Bに対して、名誉回復措置として別紙3記載の謝罪広告を掲載することを求めるとともに、被告らに対して、各自不法行為に基づく損害賠償として原告らそれぞれにつき2100万円及びこれに対する最後の不法行為日である平成12年9月7日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。 2 請求原因に対する認否 (1) 請求原因(1)は認める。 (2)ア 請求原因(2)アは認める。 イ 請求原因(2)イは認める。 ウ(ア) 請求原因(2)ウ(ア)は否認ないし争う。 「N」誌の各記事が報道された程度では、その内容たる事実が一般の読者の知識ないし経験になったとはいえず、「C」誌と「N」誌では読者層も異なり、「『N』スクープ」との見出しによっても「N」誌の各記事の閲読を勧めていることにはなり得ない以上、「N」誌の各記事の内容を、本件記事の読者の一般的な知識とすべきではない。本件記事だけを対象として、原告らに対する名誉毀損の成否を判断すべきである。 (イ) 請求原因(2)ウ(イ)は否認ないし争う。 a 表題(本件雑誌138頁、139頁)及びリード部分(本件雑誌138頁)について (a) 表題(本件雑誌138頁、139頁) 「『N』スクープ熊本『70億円保険金』疑惑の追跡」の表題は、本件事故により死亡した人のうち3名に合計で約70億円の保険金が掛けられていたということは、一般の市民には、そのこと自体が驚きであることから、本件記事が、なぜ、このように巨額な保険が掛けられていたのだろうとの疑問の解明に対し、周辺事実を提供し、意見・論評を加える記事である趣旨を表したものであり、本件記事の掲載意図を表している。(最終準備書面6頁) (b) リード部分(本件雑誌138頁) リード部分は、本件事故についての疑問点を簡潔に表現したものである。すなわち、「熊本県I町で、大病院の理事長夫人と3人の看護婦を乗せた乗用車が崖から転落し、全員死亡という悲惨な事故が起こった」事実を述べ、この事故の状況に不自然な点があること及び理事長夫人と看護婦に巨額の保険が掛けられていたこと、地元では「単なる交通事故ではない」という噂が流れていたことを指摘しているに過ぎない。 なお、「単なる交通事故ではない」との噂が地元で流れているとの表現は、このような噂が流れるような疑問のある事故であることを表現しているのであって、「単なる交通事故ではない」との事実を表現しているものではない。一般の読者の普通の注意と読み方をもってすれば、そもそも噂は不確実なものであり、噂が流れているからと言って、それを直ちに事実であると理解することはない。よって、このリード部分の全体の表現から、一般の読者は、疑問のある交通事故であるとの印象以上のものを読みとることはあり得ない。また、一般の読者は、表題及びリード部分を一読して、本件事故には「『単純な事故』と評するのには解決できない疑問点がある」との印象を持つことがあっても、「亡Mが、3名を殺すことを意図しながら自殺したものだ」との事実を読みとることはない。(最終準備書面6頁) b a記事部分(本件雑誌138頁1段1行目から139頁1段4行目まで。ただし、前記aの表題及びリード部分を除く。)について ここでは、本件事故の状況等について、当日の天候は運転視野の障害にならなかったこと、亡Mは、安全にカーブを切れないはずの60キロものスピードで事故現場に進入し、ブレーキ痕すら現場に残されていなかったこと、車両は、ガードレールにぶつかることもなくガードレールの隙間をすり抜けて転落していること、亡Mが運転歴20年のベテランであること、亡Mは事故現場を、今回初めて通ったわけでもないことの各事実を摘示した。 次に、上記事実を受けて、本件事故の態様から、その原因についての合理的な説明を導き出しがたいことを強調する趣旨で、亡Mの運転経験からすれば、安全運転を心掛けていたはずであるのに、特段危険を回避する動作を講じた跡がないと推論評価し、さらに、数々の疑問点が浮かび上がった、通常の事故では考えられない、崖下に飛び出していったのはどうしてなのか、と、事故態様について総評を加えた。 さらに、本件事故は、死者4名を出す大事故であるから、どのような結論となるかは別として、厳正な捜査が望まれるところ、司法解剖も行わない杜撰な捜査しか行っていないことを批判した。(第6準備書面5頁) 以上のとおりであり、当該記事部分では、本件事故について、故意による事故なのか、あるいはその他の原因に基づく事故なのか、結論を出しておらず、事故原因が解明されていないことを報道したに過ぎない。「地元事情通」の声としても、「通常の交通事故では考えられないケース」と記載しただけで、過失事故ではない旨の記載はない。したがって、本件事故が殺人事件であるとの印象を読者に与えることはありえない。(第6準備書面4頁、最終準備書面9頁) そもそも、原告は、死亡事故は過失による事故と故意による事件の二者択一であるとの前提で、本件記事が過失による事故であることを否定することにより、故意による事件だと読者に印象づけていると主張するが、故意・過失以外にも車の欠陥、道路等の欠陥、第三当事者の関与、不可抗力、原因不明等の場合があり得るのであり、原告らの主張する前提自体が失当である。 また、原告らは、わき見運転の可能性があるのにこれを指摘しなかったこと、司法解剖が行われなかったと記載したことが、それぞれ本件事故が故意による殺人事件であったと読者に印象づけるものであると主張する。しかし、本件事故現場は、わき見運転などできる場所ではないし、司法解剖は、事件性の有無及びその内容が不明である場合にも行われるものであるから、原告らの主張はその前提が誤っている。(第5準備書面5頁、第6準備書面5頁) c b記事部分(本件雑誌139頁1段5行目から同頁4段10行目まで)及び140頁3段27行目から同頁4段22行目まで(以下、これらを併せて「b’記事部分」という。)について b’記事部分では、本件事故で死亡した4名のうち、死亡した理事長夫人に約57億円、2人の看護婦に合計8億円以上の保険が掛けられていたこと、その保険料は年間5000万円を超えると計算できること、各保険の加入時期等の各事実を摘示し、これらの各事実を前提に、このように巨額の保険契約を締結する殊更に合理的な理由を見いだしがたいことを強調する趣旨で、「一般論として、さような保険金額は巨額・桁外れで希有であり、並大抵ではない。」、「理事長本人はともかくとして、理事長夫人及び看護婦にそれだけ巨額な保険を掛ける意味はあるのだろうか。」と論評し、結論的な評価として前記事故態様の疑問点と合わせ考え、「単なる偶然なのか。」と評論した。(最終準備書面10頁) 他方、b’記事部分は、保険会社の見解として、この保険が一般の生命保険とは異なる経営者保険であり、税制上のメリットのあることを解説し、さらに、原告らの顧問弁護士の反論として、法人保険であること、事故による経営への悪影響に備えたものであり、保険会社や金融機関に勧められて入ったものであり、合理的な理由があること、保険への加入の時期も不自然ではないこと等を2か所、37行(約430字)にわたって掲載している。 したがって、b’記事部分は、本件事故による死者に合計70億円という巨額の保険金が掛けられていたとこと等、普通の交通事故と単純に考えられない疑問があると論評したうえ、本件事故で死亡した3名に掛けられた保険金額が多すぎるか否か、保険の加入時期に問題がないか等の判断は、読者に委ねている。一般読者は上記記事を読んで「事故で死亡した4名のうちの3名には、一般的には巨額と評しうる保険が掛けられている。最近掛けられた保険もあるという。偶然なのかな。」との印象を持つことはあっても、原告らが主張するように解釈することはない。 なお、原告らは「保険が掛けられる」という表現を問題としているが、ごく普通の表現であり、保険を掛けた人物がいることを格別暗示するものではない。(第1準備書面9頁、第5準備書面6頁、第6準備書面5頁) d c記事部分(本件雑誌139頁3段及び4段の各11行目から同140頁3段14行目まで)並びに同頁2段16行目から同頁5段1行目まで(以下、これらを併せて「c’記事部分」という。) (a) 亡Mの言動 ここではまず、「事故の前日は土砂降りの雨だったが、お昼休みに亡Mが焼却炉で多数の書類を燃やしていた。」、「同じ日に、亡Mは仲の良い職員に『頑張ってね、何があっても頑張ってね。』と何度も言っていたそうです。」という事故車両を運転していた亡Mの言動を掲載した。 そして、これらの事実を受けて、亡Mの言動が「不思議」であるとの論評を加え、「その翌日に亡くなったことを考えると、覚悟の上だったんじゃないかと思えるんです。」として、亡Mの言動を合理的に説明することができないことを評する趣旨で、可能性の一つとして、あるいは自ら死を意識していたかもしれないと評価した。 一般の読者は、当該記事部分を読んで亡Mの言動に疑問を持ち、亡Mが自殺の道を選択した可能性を想起するかもしれないが、それに原告Dないし原告Eが関与していると読みとることはない。(最終準備書面13頁) (b) 原告Eと亡くなった人たちの関係 次に、本件事故で亡くなった人たちの原告病院における人間模様について、一般に見られない病院経営者と従業員の特異な関係、すなわち、本件事故で死亡した3名の看護婦は、いずれも原告Eに傾倒しており、原告Eも、これら3名を他の看護婦と比較して特別の待遇をしていたことが病院職員の証言を紹介する形で例示され、さらに、亡Mと亡Lが、自らの原告Eに対する忠誠心を職員の前で表現していたこと、亡Jも夫である原告Eの素行に薄々気づいており、亡看護部長らのことを話題にするのも避けていた等の記事を掲載した。 そして、これらの事実から原告病院では一般的には見られない人間関係があったことが推論できる。この関係を論評する趣旨で、「同時に理事長と3人の奇妙な関係がしきりに取り沙汰されていた。」、「M、L、Kさんの3人は特別な方々でした」、「『理事長の愛人というのは病院内で公然の秘密になっていました』とある職員は話す。」、「3人は精神的にも理事長に洗脳されていました。」、「(6階の1画は)“大奥”などと呼ばれて」いる、「金銭面でもがんじがらめにされていたんです」という職員から集められた証言を紹介するなどして論評している。これらは、上記事実を印象的に紹介するための修辞的な論評に過ぎない。 一般の読者は、当該記事部分を読んで、「亡看護部長らが原告Eに傾倒しており、亡看護部長らは他の看護婦らと比較して特別の待遇を受けていた」との印象を持つに過ぎず、それ以上の印象を受けるものではない。原告Eが亡Mを洗脳して自殺に追いやることは社会生活の経験則上ありえないから、一般的平均的な読者も同様に考えるはずである。そもそも、本件記事はマインドコントロールに言及しておらず、「亡Mが、原告Eにマインドコントロールされたことにより、原告Eの命令に従って故意に本件事故を引き起こした。」との印象を持つことはあり得ない。(第1準備書面10頁、第6準備書面8頁、最終準備書面13頁) e 本件雑誌140頁5段2行目から同段21行目まで(以下、これらを併せて「d’記事部分」という。) ここでは、まず、本件事故にまつわる疑問と話題の一つとして、原告Eの株取引について、原告Eは株の売買取引をしていたこと、原告Eが朝礼などで度々、株で儲けているという話をしていたことを摘示し、上記事実を受け、全般の株価大幅下落などの事情を受けて、原告Eが株取引で損失を出したのかもしれないと論評した。一般の読者は、不確かな病院内の噂話と、原告Dの顧問弁護士であるX弁護士(以下「顧問弁護士」ともいう。)の反論を合わせ読み、「原告Eが株で損をしたかもしれない」との印象を持つかもしれないが、「原告Dには数十億円の負債があり、また、原告Eも最近株で大損して金に困っており、このことが、保険金殺人の動機である」と解釈することはない。(第6準備書面9頁、最終準備書面16頁) f 本件記事末尾(本件雑誌140頁5段22行目から末尾まで)について 最後に「それにしても、あまりにも謎が多すぎる。」と本件記事を締めくくっているが、本件事故に関する意見・評論を加えてきたが、解明できないことが多いことを最後の結論として述べたものであり、本件記事が、原告らが保険金領得という目的をもって加功した殺人事件であること、ないしこのような疑いがあるとかの印象を一般読者に与えるものではない。(第6準備書面10頁) g 本件記事全体が摘示する事実 結局、本件記事は、@熊本県Iで、死亡者4名を数える重大な交通事故である本件事故が発生したが、その事故原因が合理的に説明できないこと、A本件事故で死亡した人のうち3名には合計で約70億円が支給される経営者保険契約が締結されていたこと、B死亡した3名の看護部長らと原告Eを含む原告病院には特異とも評しうる人間関係、強い信頼関係が築かれていたこと、Cそれらの未解明の疑問点があるのに熊本県警察が「単純な事故」として本件事故を処理しようとしていることを摘示し、本件事故の原因等未解明の課題について問題提起したものである。(最終準備書面16頁) (3) 請求原因(3)は否認ないし争う。 (4) 請求原因(4)のうち、被告Aがわが国において一定の評価を受けている出版社であること、「C」誌を毎週約69万部発行しており、同誌の記事には一定の社会的影響力があること、「N」誌を毎週約32万部発行していることは認め、原告らが、原告ら代理人との間で原告ら主張の報酬契約を締結したことは不知、その余は否認ないし争う。 3 抗弁 (1) 公共の利害に関する事実(第3準備書面2頁、最終準備書面18頁) 本件事故は、一度に4名もの死者が出た交通事故であり、それだけで報道する価値を有する公共の利害に関する事項であった。しかも、事故態様が単純な交通事故とするのには不自然な状況で発生し、交通事故被害者3名には巨額の保険が掛けられていた。にもかかわらず、熊本県警は本件事故を普通の交通事故と同じように「事件性」がないとして処理しようとしていた。このような事件処理は、刑事警察が適正に機能することによって保たれる一般国民の生活に直結する公共の利害に関する事項である。 したがって、本件事故の状況や周辺事情等は、公共の利害に関する事実であるといえる。 (2) 公益目的性(第3準備書面2頁、最終準備書面18頁) 上記(1)のとおり、本件事故の状況や周辺事情等は、公共の利害に関わることであり、被告らは、専ら公益を図る目的で本件記事を掲載した。 (3) 真実性・相当性 ア 本件記事の取材経過(第7準備書面2頁、最終準備書面19頁) 被告AC編集部では、本件事故報道の公共性を見いだし、平成12年8月25日の編集会議で本件事故の取材に着手することを決定し、Oをデスクに配し、被告F及びPをその下で取材に当たる記者として配属した。被告A内では編集権が独立しており、他の編集部が得た取材結果を当然に知ることはできないことから、被告F及びPは、同日、熊本に出張し、本件事故に関し取材中であったN編集部所属記者のQほかから本件事故について取材し、資料及び情報の一部について開示・提供を受け、その後同月28日まで、本件事故現場、病院関係者、病院周辺に居住する者、熊本県警本渡署員、本件事故の死体を検案した医師、消防署員らから取材した。Oは、同月25日に保険会社に電話取材し、記者であるRを新たに投入して、同月28日、保険関係者に取材させた。また、原告Eからは直接取材を拒否され、顧問弁護士から保険関係等について回答を得た。 イ 本件記事の真実性・相当性について(第7準備書面7頁、最終準備書面21頁) (ア) Oは、取材結果を受け、本件事故が単純な運転ミスによって生じたとは説明できないものであると確信し、亡Jを被保険者とする巨額の保険が、結果として審査の盲点をつくような形で締結され膨れあがっていること及び本件事故前1か月になって亡Kと亡Lを被保険者とする4億円もの保険契約が締結されていた事実を確認した。また、Oは、原告病院の運営状況が特異であることに関するPの取材結果と被告Fの取材結果に矛盾するところがなく、N編集部に取材して開示を受けた取材結果とも何ら矛盾するところがないことから、その内容を真実であると確信した。さらに、Oは、亡Mの血液を採取、検査をしているかについて、本件事故に関する警察の捜査内容が警察官同士の説明でも互いに矛盾する上、他の取材結果とも矛盾するものであるのに、単純な交通事故として処理されようとしているのは杜撰な捜査と評価されても仕方のないところであると確信した。 Oは、これらを総合的に判断し、集められた情報を取捨選択して本件記事にまとめ、さらに、原告Eの代理人として指定されたX弁護士からの回答も記事中に採り入れた。 (イ) 本件記事は、客観的な資料及び複数の取材源から得られた取材結果が一致した部分を抽出し、これを基礎として記述されたものである。 O、被告F及びPは、取材源を一部秘匿せざるを得なかったが、同人らは、五感の作用によって情報提供者の提供する情報の精度を確認し、寄せられた情報が真実であると判断できる場合に記事にしているのであり、同人らが取材源から直接取材したこと、記事にまとめる過程で真実であると判断できた事実を抽出していたことは明らかである。また、取材源から得られた情報そのものが伝聞によるものであったとしても、任意に選択した複数の取材対象から得られた伝聞情報が一致した場合には、経験則上情報の真実性は飛躍的に高まる。 したがって、本件記事に掲載した各事実は、十分な取材結果に基づく真実で構成されており、百歩譲っても、本件記事で指摘した各事実を真実であると信じることについて相当の理由がある。 4 抗弁に対する認否 (1) 抗弁(1)は否認ないし争う。 (2) 抗弁(2)は否認ないし争う。 本件記事は、最近頻発する保険金殺人事件にからめて読者の無責任な疑惑、興味を助長し、週刊誌の売上げを伸ばさんがためになされたもので、全く公益性を有しないこと次のとおり明らかである。 ア 原告D及び原告Eは、医療法人及び同法人経営者であって、医療行為に関する面においては公共の利害に関する面があるものの、その他の部分については全くの私人であり、他人に私事を詮索されない権利、すなわちプライバシーの権利を有するものである。 したがって、原告Dが、理事等にどれだけの額の企業保険を付保しているか否かは、そもそも公共の利益と全く関係がないものであり、原告らの承諾なく、この点について広く大衆に情報を提供する記事に記載することは違法である。まして、付保した保険金額が常識的であるか非常識であるか、第三者から云々されるべき筋合いのものではなく、そのような記載をすること自体プライバシーの侵害である上に、記事を掲載するについて、上記保険の性質を正確に記載せず(というより意図的にこれをぼかし)読者の誤った印象を助長するということは、公益性の見地からも全く説明することはできない。 イ ただ、交通事故は、業務上過失致死という刑法上の犯罪を構成するものであり、それが意図的に行われた場合には殺人罪という重大事件にも発展するものであるので、これに関する記事自体は公益性に関連することを否定できない。 しかし、個人にとって、犯罪に関与しているのではないかとの指摘は、名誉信用について極めて重大な影響を及ぼすだけでなく、事業を営む者にとっては、事業運営上も死活的影響を及ぼすものであるから、犯罪に関与している旨の指摘が軽々になされることが許されないこと明らかである。少なくとも、警察によって逮捕されたとか、逮捕が確実であるとかの段階で初めて公益上許容されることとなるのであり、かつ、この場合においても、少なくとも逮捕までの間は氏名が特定できるような報道が許されないこと、報道界の常識であったはずである。 しかるに、本件においては、警察において事故自体の調査も未了の段階で、また、原告Eに対する自殺教唆又は殺人の可能性すら全く指摘されていない段階で、何故にこのような実名入り・写真入りの報道がなされるのか全く理解に苦しむところである。 畢竟、被告らにおいては、報道に携わる者としての最低限のモラルさえ麻痺しているものといわざるを得ず、本件記事の掲載が、公益性の見地からも全く容認できないこと明らかである。(訴状23頁) (3) 抗弁(3)はすべて否認ないし争う。 ア 真実性について(準備書面8の6頁) 本件記事の摘示事実は、前記1(2)ウ(イ)eのとおり、「本件事故が単なる交通事故ではなく、保険金目的に原告らが仕組み、演出した保険金殺人事件である、又はその疑惑がある。本件保険金殺人又はその疑惑の背景として、原告Eと亡看護部長ら間の愛人関係があった。」というものであるが、以下のとおり、いずれも真実ではない。 (ア) 保険金殺人又はその疑惑について a 原告Dの経営状況、利益状況、亡J外に付保した保険の付保状況・動機・理由に全く不自然なものはなく、保険の契約高も社会的に相当な範囲内である。すなわち、原告らには保険金殺人を企てる理由・必要性ともに全くない。 b 原告Eと妻の亡Jは円満な夫婦であり、お互い力を合わせて原告病院を大きくしてきたものであり、また、亡看護部長らは、若いころから一生懸命同病院のために尽力してきたもので、その相互の間柄、原告E及び亡Jとの間柄はいずれも極めて良好であり、保険金殺人という考えが入り込む余地は全くない。 c 本件事故が単なる交通事故であることは、本件事故の客観的態様から明らかであり、また、亡Mには自殺の動機や自殺につながるような事故前の言動は全く認められない(本件記事中に記載された焼却炉前での言動は事実に反することが明らかである。)。 d 熊本地方検察庁において、本件事故は亡Mの不注意による単なる交通事故であり、保険金とは何ら関係のないことが公権的に確定された。 e 本件事故が保険金とは全く関係のない単なる交通事故であることの証拠は山積しているが、反面、本件事故が保険金殺人ないしその疑惑があるとの事実を基礎づける証拠は全くない。 (イ) 原告Eと亡看護部長らの愛人関係について 原告Eと亡看護部長らに愛人関係など全く存しなかったのであり、これを疑うべき証拠も全くない。そもそも、原告Eの実の娘が4人も医師として勤務する原告病院内において、同時に3人もの看護部長という要職にある女性達と男女関係を持つことが可能であるはずがない。 イ 相当性について(準備書面8の8頁) 本件記事が摘示する保険金殺人の事実について、被告らが根拠とするものは、本件事故が亡Mの過失ではなく、故意によるものであること、保険金疑惑、原告Eと亡看護部長らの愛人関係であるが、これらの事実について、以下のとおり、被告らは、真実と誤信するのを相当とする理由を全く有しない。 (ア) 本件事故が亡Mの故意によるものであることについて(準備書面(6)2頁、準備書面8の9頁) 被告らが、本件事故が過失による事故ではなく、亡Mの故意によるものであると本件記事中において述べるに際し、その直接の根拠とするものは、@事故現場が急カーブであるにもかかわらず、本件事故当時、事故車両が時速60キロメートル以上のスピードを出していたこと、A事故車両が、事故現場の幅約2メートル50センチのガードレールの隙間をすり抜けていること、B事故現場にブレーキ痕がないことの3点である。 しかし、本件事故前に事故車両が進行してきた道路の状況は、下りのほぼ直線道路が約360メートル続き、進行方向右側から崖がせり出しているため、現場が急カーブであることは、現場にかなり接近してからでなければ認知できない。そして、この直線道路からは大海原が一望できることから、亡Mがわき見をしながら運転していた可能性は極めて高い。また、警察の行った血液鑑定により、亡Mの血液中から若干のアルコール成分が検出されていることからすれば、同人が、アルコールの影響により前方への注意が散漫になっていた可能性も否定できない。そして、通常、崖下転落事故や反対車線飛び出し事故等の前方不注意事故においては、運転手は回避対象を発見しないまま直進するため、ブレーキ痕が存在しないのがむしろ普通である。 よって、上記@からBの各点が本件事故が亡Mの故意により引き起こされたと認定する根拠とはならず、原告らは、被告らの取材に対し、この点を詳細に説明したのであり、被告らは、本件事故が亡Mの自殺ではあり得ないことを容易に知り得たはずである。 (イ) 保険金疑惑について(準備書面8の10頁) 本件記事では、保険金額が70億円と摘示されているが、亡Jに付保されていた金額は57億円、亡K及び亡Lに付保されていた金額は8億円であり、全て加えても65億円であって、本件記事内容は実際の付保保険金額とは大きな差があり、被告らが正確に取材していないことは明らかである。 また、被告らが保険会社関係者を取材した結果であるデータ原稿(乙22)には、「保険会社次第では30億でも40億でも大丈夫だと判断した保険会社があった」と明確に記載されており(乙22)、原告らは、被告らの取材に対する回答書(甲48)において、原告らが保険に加入した事情、保険金掛金支払が原告病院の経営に及ぼす負担等について、詳細に数字を上げて説明しており、これらによれば、いわゆる保険金疑惑が原告らには全く無関係であることが分かるはずである。 (ウ) 原告Eと亡看護部長らの愛人関係について(準備書面(6)8頁、12頁、準備書面8の11頁) この点に関する被告らの取材内容は、単なる噂の更なる伝聞に過ぎず、少なくともこれを信じるについて客観的な根拠はない。また、取材対象者の名前も明らかにされていない上、どの取材対象者がどの部分を話したのかという区別さえされておらず、本当に複数の取材対象者がいたのか、本当に職員なのかという確認さえできない。むしろ、被告ら(F、O)がこの点について記述する際に参考としたのはN編集部から入手した情報ないしその記事そのものと考えられる。さらに、被告らは、報道前に、原告ら代理人弁護士を通じて、原告らに、取材対象者の供述が真実かどうかを問う機会が与えられていたのだから、当然、それらの供述内容について確認をするべきであったのに、それを怠っている。 第3 当裁判所の判断 1 請求原因(1)(当事者)は、当事者間に争いがない。 2 請求原因(2)(名誉毀損の事実)について (1) 請求原因(2)アは、当事者間に争いがない。 (2) 請求原因(2)イは、当事者間に争いがない。 (3) 本件記事の摘示する事実 新聞雑誌の記事内容が他人の社会的評価を低下させるものであるかは、一般読者の普通の注意と読み方とを基準として、当該記事を全体的に観察して判断するのが相当である(最高裁昭和31年7月20日第二小法廷判決・民集10巻8号1059頁参照)。以下、この観点から本件記事と「N」誌の各記事との関係及び本件記事の内容について検討する。 ア 本件記事と「N」誌の各記事との関係 本件記事は、表題に「『N』スクープ 熊本『70億円保険金』疑惑の追跡」と記載され、リード部分に「写真誌『N』がスクープした熊本『70億円保険金』疑惑。」と記載されているほか、本文中に、「『N』も報じているが、事故状況には数々の疑問点があったというのに、警察は単純な交通事故として処理。司法解剖も行われなかった。」(本件雑誌138頁4段22行目から139頁1段4行目まで)、「さらに『N』によって驚くべき事実が明らかにされた。亡くなった4人のうち3人に巨額の生命保険が掛けられていたというのである。それも並大抵の額ではない。同誌によれば、〈亡くなった理事長夫人には、生損保17社で約57億円、同乗していた2人の看護婦にも合わせて8億円以上、車の保険まで含めると総額70億円の保険が掛けられていた〉年間の保険料だけでも5000万円を超えるのだ。」(本件雑誌139頁1段5行目から同段20行目まで)、「E理事長には、いずれも女医になった4人の娘がいるが、下の娘2人は検察官に嫁いでいる。さらに熊本県警の有力OBがH病院の理事に天下っており、『N』ではこうした理事長の人脈が、事故の捜査が甘かったことと関係しているのではないかと推測している。」(本件雑誌140頁3段17行目から同段26行目まで)、「再びX弁護士の反論。『N』の記事の中では、病院の金がなくなったから保険金で、という構図を匂わせていますが、全く逆です。」(本件雑誌140頁5段10行目から同段14行目まで)との各記述がある。 これらの各記述は、本件事故について、本件記事に先行して「N」誌によるスクープがあったことを報じ、「N」誌の記事内容を紹介ないし引用するものということができる。 しかし、上記各記述が一般の読者に対し「N」誌の各記事の閲読を勧める内容であるとまでは認められず、また、「N」誌の各記事の内容が、当時一般の読者が通常有する知識となっていたと認めるに足りる証拠はない。 確かに、「N」誌と「C」誌はいずれも被告A発行に係る週刊誌であるが、「N」誌が写真週刊誌であるのに対し、「C」誌は文章を中心としており、出版物の特色が異なり、証人Oの証言に照らしても両者の読者層が重なっていると認めることはできない。 したがって、本件記事による名誉毀損の成否の判断は、「N」誌の各記事を参照することなく、本件記事のみに基づいて行うべきである。 イ 本件記事が摘示する事実 (ア) a記事部分のうち表題、リード部分について 本件記事の冒頭には「『N』スクープ 熊本『70億円保険金』疑惑の追跡」との表題があり、本件雑誌138頁の見開き部分中央寄りのリード部分では、「写真誌『N』がスクープした熊本『70億円保険金』疑惑。」とした上で本件事故について、「その直後から地元では『単なる交通事故ではない』という噂が流れていた。事故の状況にはあまりに不自然な状況が多すぎる。その上、夫人と看護婦に巨額の保険が掛けられていたのである。」と記述されている。 このような内容から、本件事故は70億円の保険金と深い関わりがあることを読者に示し、本件事故による死亡者らに巨額の保険が掛けられていたことを示し、かつ、「単なる交通事故ではない。」という噂を紹介し、本件事故の状況について「あまりに不自然な状況が多すぎる。」と指摘することによって、単なる過失による交通事故ではなく、本件事故が、巨額の保険金を取得するために故意に引き起こされた疑惑があることを冒頭の主題として強く印象づけ、本件記事が本件事故の原因・背景事情を解明する内容であることを示していると解される。 被告らは、本件事故に不自然な点があること及び本件事故の死亡者らに巨額の保険金が掛けられていたことをそれぞれ指摘したにすぎない旨の主張をするが、表題及びリード部分から、「N」誌がスクープした「疑惑」の内容が本件事故とその死亡者らに掛けられた保険金との関係についてのものであること及び本件記事もこの「疑惑」に関するものであることは明らかであり、被告らの主張は採用できない。 また、被告らは、「単なる交通事故ではない」という噂については、噂が流れていたことを指摘するに過ぎないと主張するが、噂をあえて記事に記載している以上、一般の読者は、噂が存することよりも噂の内容に着目して記事を読むと考えられるから、噂の内容自体を示していると解すべきであり、この点に関する被告の主張は採用できない。 (イ) a記事部分のうち表題、リード部分以外の部分について 上記記事部分は、「確かに不可解な“交通事故”だった。」という文章で始まり、本件事故の状況について「右急カーブに差しかかったにもかかわらず、約60キロのスピードを出したまま、ガードレールがわずかに途切れた箇所から飛び出して、80メートル下の岩場に転落していったのである。そこから数々の疑問点が浮かび上がった。」と記述し、事故現場付近及び事故当時の状況について、狭い上にカーブが連続し、時速30キロ前後で走るのがやっとであること、見通しは悪くなかったこと、ブレーキを踏んだ跡が残されていないこと、カーブを曲がろうとしたのであればガードレールに衝突するはずであるが、その形跡がないことなどを指摘する「地元事情通」の談話を紹介したうえ、事故車両を運転していた亡Mについて、「危険を回避することもなくアクセルを踏み続け、崖下に飛び出していったのはどうしてなのか。」とその不自然さを強調する記述をしている。 次に、本件雑誌138頁4段22行目以下で、「『N』も報じているが、」とした上で、本件事故の「状況には数々の疑問点があったというのに、警察は単純な交通事故として処理。司法解剖も行われなかった。」として、単純な交通事故として処理したことについて批判的な記述をしている。 このように、上記記事部分は、「地元事情通」とされる者の談話を引用する形式で、本件事故の状況・態様から運転者の過失による事故とは考えにくいことを示し、本件事故当時事故車両を運転していた亡Mの運転が不自然であったと強調し、本件事故が亡Mの過失以外の原因に基づく可能性が高いことを印象づけるとともに、本件事故を単純な交通事故として処理した警察の対応を批判するものであると解される。 原告らは、表題、リード部分を含むa記事部分の記載は、一般読者に対し、本件事故が故意による殺人事件であったとの事実を積極的に印象づけるものであると主張するが、表題、リード部分を含むa記事部分の記載を併せ読んでも、本件事故態様以外については言及しておらず、何者かの故意による事故だと断定した記載はないことから、原告らの主張は採用できない。 被告らは、本件事故の態様から、事故原因について合理的な説明を導き出しがたいと論評したものであると主張するが、上記印象づけられたと認めた事項は証拠等によって証明することが可能な事柄であるから、論評ではなく、事実の摘示があったというべきであり、被告らの主張は採用できない。 (ウ) b記事部分について b記事部分では、本件雑誌139頁1段5行目から同段20行目までは、「N」誌の記事を引用するなどして、本件事故の死亡者4名のうち3名に「巨額の生命保険金が掛けられていた」と記述し、「驚くべき事実」「並大抵の額ではない。」「車の保険まで含めると総額70億円の保険が掛けられていた」「年間の保険料だけでも5000万円を超えるのだ。」として、保険金の額が巨額だったことを強調している。 次に、同段21行目から同頁2段14行目までは、上記3名に掛けられていた経営者保険について、対象、目的、契約者、税制上の利点において一般的な生命保険と異なることを説明する「H病院と契約している某保険会社」の談話を紹介している。 ところが、同段23行目は、「しかし」という接続詞で始まり、「夫人や看護婦にそれだけ巨額の保険金を掛ける意味があるのだろうか。」とした上で、同頁4段10行目まで、亡Jに掛けられた保険金について、病院の仕事をほとんどしておらず、総額50数億円の保険を掛けている例は「希有なのではないでしょうか」という「先の保険会社」の談話を紹介し、さらに、本件事故時に亡J及び亡看護部長らに掛けられた保険(以下、これらを合わせて「本件各保険」という。)の加入時期についても「(亡Jに掛けられた保険については)平成8年から9年にかけて集中している。そして2人の看護婦にいたっては、事故で亡くなる前月の4月に加入していたのである。」と記述し、保険加入の時期が本件事故の発生日時と近接していることを強調し、最後に「これは単なる偶然なのか。」と記述している。 このような記述は、本件事故により原告らが受領する保険金の総額が巨額であること及び本件各保険の加入時期と本件事故の発生日時との近接性を強調した上、a記事部分と相俟って、本件事故の発生と本件各保険金との間に何らかの不自然な関係があるかもしれないことを印象づけるものと解される。 原告らは、b記事部分を読んだ一般の読者は、本件事故は保険金殺人事件であるとの印象を受けると主張するが、上記記述によっては、いまだ保険金殺人の印象を与えるとまでは認めがたい。 被告らは、本件各保険について、経営者保険であり、税制上のメリットがあることを解説し、さらに、本件雑誌140頁3段27行目から同頁4段22行目にかけて、顧問弁護士の反論を掲載していることから、本件各保険の保険金の額が多すぎるか否か、本件各保険の加入時期に問題がないか等の判断は読者に委ねられていると主張するが、顧問弁護士の反論部分は、b記事部分と離れた部分にあり、一般の読者の通常の読み方からすれば、顧問弁護士の反論部分が前記b記事部分の印象を消し去るほどの強い影響を与えることはない。 また、本件雑誌139頁1段21行目から同頁2段14行目までにおいて、本件各保険の合理性を裏付ける事情となり得る事実が記述されているものの、そのすぐ後に、「しかし」として、亡Jに掛けられた保険金の額の希有さ及び本件各保険の加入時期と本件事故の発生日時との近接性が記載されている結果、やはり一般の読者としては、前述した印象を受けるものと解されるから、被告らの主張は採用できない。 (エ) c記事部分について c記事部分は、「理事長と看護婦の奇妙な関係」という見出しで始まり、まず、本件事故について原告病院内で「単なる事故ではない」という噂が流れ始めていたと記述し、次に、亡Mが本件事故の前日に、焼却炉で多数の書類を燃やし、仲の良い職員に「頑張ってね、何があっても頑張ってね。」と何度も言っていた、亡Kも本件事故前にいつ身近な人が亡くなるか分からないから喪服を用意しておいた方がいいと言っていた、亡Mについて、「覚悟の上だったんじゃないかと思えるんです」などという「病院関係者」の談話を紹介している。 さらに、亡看護部長らが原告Dの理事兼原告病院の看護部長であり、亡看護部長らと「理事長」すなわち原告Eとの「奇妙な関係がしきりに取り沙汰されていた。」と記述し、原告Dないし原告病院の「ある職員」(本件記事全体から、「ある職員」が原告Dないし原告病院の職員を指すことは明らかである。)の談話として、亡看護部長らが原告Eの愛人であり、このことは病院内で公然の秘密になっていたこと、亡看護部長らが精神的にも原告Eに洗脳されていたこと、亡Lは、「理事長が飛び下りろと言ったら飛び下ります」、「死ぬまで理事長の指示に従います」、「命懸けで理事長に付いていきます」と度々公言していたこと、亡Mも同様のことを日頃から言っていたこと、亡看護部長らは、原告Eからマンション、ドレス、車など何でも買い与えられ、金銭面でもがんじがらめにされていたことを記述し、また、「別の職員」の談話として、原告病院のパーティーのダンスタイムで、原告Eと踊るために腕を取り合うのが亡看護部長らであったことを記述している。 上記のように、噂や病院関係者の談話を紹介する形式であっても、これらの噂や談話があえて記事にされており、記事内容を否定すべきことをうかがわせる記述もない以上、噂や談話のそれぞれの内容そのものが伝えられていると解すべきである。 したがって、c記事部分では、亡看護部長ら3名が、いずれも原告Eと愛人関係にあり、原告Eに洗脳され、精神的にも経済的にも原告Eに過度に従属し、理事長の命令であれば何でも従う「奇妙な関係」にあったこと、本件事故前、事故車両の運転者亡Mに自殺を覚悟していたかのような不自然な言動があったことが印象づけられていると解される。 被告らは、c記事部分で「職員」の証言として記載されている部分の一部は、修辞的な論評であると主張するが、上記のとおり証明可能な事柄が記述されているといえるから、被告らの主張は採用できない。 原告らは、c記事部分は、亡Mが原告Eに命ぜられて故意に本件事故を引き起こしたと強く印象づけるものであると主張する。しかし、本件事故に関する原告Eの指示の有無等には言及されておらず、人を自殺に至らしめるほど洗脳するなどということは通常あり得ないことからすると、原告ら主張のような印象を与えるとまでは認めがたい。 (オ) d記事部分について d記事部分では、初めに、「病院関係者」の談話として、亡看護部長らが最近仲が良くなかったこと、亡Jも夫の素行に薄々気づいており、亡看護部長らのことを「話題にするのも避けていた節がある」こと、亡Jと亡看護部長らが同じ車に乗って遊びにいったことについて、「信じられない。病院では、皆が皆、最初から“おかしい”と話していた」ことが紹介されている。 次に、原告Eが検察官や熊本県警の有力OBからなる人脈を有していること、「N」誌では、こうした理事長の人脈が、事故の捜査が甘かったことと関係しているのではないかと推測していると記述し、さらに、「病院関係者の間で根強く囁かれている噂」として、本件事故前に、原告Eが株で大損したという噂が広まっていたと記述している。 このような記述から、d記事部分は、病院関係者の証言を紹介する形式で、亡看護部長ら及び亡J相互の仲が良くなかったこと、原告Eが検察官、熊本県警察に人脈があることを伝えるほか、病院関係者の間で根強く囁かれている噂を紹介する形式で、原告Eが本件事故前に株で大損したことを示すことにより、原告Eの株の損失が、本件事故の原因となった可能性があることを印象づけていると解される。 なお、本件雑誌140頁3段27行目以降、顧問弁護士の反論として、本件事故の死亡者らに掛けられていた保険が個人の生命保険と異なる法人保険であり、事故による経営への悪影響に備えたものであること、亡看護部長らは病院の最高幹部であり、保険を掛けていたのは当然であったこと、亡Jに係る保険についても、長期間加入しているものもあり、平成9年には切換えが多かっただけであること、Nの記事の中では、病院の金がなくなったから保険金で、という構図を匂わせているが、全く逆であること、病院経営が順調であり、税制上の問題から勧められて加入した保険もかなりあることが紹介されている。 しかし、d記事部分の冒頭の「理事長は株をやっていた」という見出し及び同記事部分の末尾の「それにしてもあまりに謎が多すぎる。」との記述並びに前記a、b、c各記事部分とのつながりからすれば、顧問弁護士の反論を考慮に入れても、なお、d記事部分は前記内容を伝え、印象づけていると認めることができる。 この点について、被告らは、原告Eが株取引で損失を出したのかもしれないと論評したに過ぎないと主張するが、原告Eが株で大損したということは証明可能な事柄であるから、論評ではなく、事実の摘示と解すべきである 原告らは、d記事部分は原告Eが金を欲しがる確たる動機があった旨読者に印象づけるものであると主張するが、同記事部分にそのような断定的な記載はなく、原告らの主張は採用できない。 (カ) 本件記事全体について 以上(ア)ないし(オ)で述べたところと本件記事全体とを総合すれば、本件記事は、表題及びリード部分において、本件事故が単なる交通事故ではなく巨額の保険金を取得するために故意に引き起こされた疑惑があることを冒頭の主題として強く印象づけており、本文においては、まず本件事故の状況・態様から運転者であった亡Mの過失による事故とは考えにくいことを述べ、次に死亡者4名のうち3名に巨額の保険金が掛けられていたこと等を述べることにより本件事故の発生と本件各保険金との間に何らかの不自然な関係があるかも知れないことを印象づけ、さらに、亡看護部長らが原告Eの愛人であるとともに同人に対し過度の従属関係にあり、亡Mには本件事故前自殺を覚悟しているかのような言動があったと印象づけ、最後に、原告Eが株で大損したという噂を述べることにより原告Eが本件事故の発生に関与する動機が存在することを印象づけているということができ、全体としてみれば、本件事故は亡Mが故意に引き起こしたもので、亡Jらに掛けられた巨額の保険金の存在及び亡Mの原告Eに対する過度の従属関係からして、原告Eが亡Mの行為すなわち本件事故に何らかの作為的な関与をしたのではないかという疑惑があるという事実を摘示したものと認めるのが相当であり、この判断を左右するに足りる証拠はない。 そして、このような疑惑があると思われることは、本件事故で死亡した亡Jの夫であり、亡看護部長らの上司でもある原告Eの社会的評価を低下させることが明らかである。 また、原告Dは、原告Eが創立した医療法人であり、その名称に原告Eの名前を含み、同人が理事長を務め、本件事故当時同人のみが社員権を有するなど(甲37、53)、原告Eと極めて密接な関係にあるものであって、原告Eに対する上記疑惑により同人に関する否定的な印象が広まることは、原告Dの社会的評価の低下をももたらすものであると認められる。 3 請求原因(3)(被告らの責任)について 被告Bは本件記事の編集発行責任者として、民法709条に基づき、本件記事による原告らに対する名誉毀損の結果の発生について責任を負い、被告Aは民法715条に基づき使用者責任を負うと認められる。 しかし、被告Fについては、後記5(1)で述べるとおり、同人が取材を行い、データ原稿(乙17)をデスクのOに送信したものであるが、複数のデータ原稿から情報を取捨選択し、本件記事を作成したのはOである。したがって、被告Fが本件記事について不法行為責任を負うと認めることはできない。 4 抗弁(1)(公共の利害に関する事実)、同(2)(公益目的性)について 本件記事は、4名が死亡した本件事故とその原因・背景という公共の関心事を記載したものであり、公共の利害に関する事実を記載したものであると認められ、かつ、専ら公益を図る目的で執筆・掲載されたものと認めることができる。 5 抗弁(3)(真実性・相当性)について (1) 被告らの取材について 証拠(甲46、48(枝番を含む。以下同じ。)、乙9、10、12から17、22から26、証人O、同P、被告F本人)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 被告Aにおいては、「N」誌やテレビで本件事故について報道されたのを契機に、平成12年8月25日、「C」誌の編集会議で本件事故の取材に着手することを決定し、被告BがOをデスクに指名し、Oが取材記者として被告F及びPを配属させ、同月28日までの4日間を本件事故に関する取材にあてた。 被告FとPは、同月25日、「N」誌編集部のデスクに取材し、資料の提供を受けた後、熊本に向かい、翌26日に本件事故現場の状況を確認した。その後同月28日まで、Pは、亡看護部長らの遺族のうち2名には、「何も話すことはない。」と事実上取材を拒否されたが、本件事故の死亡者らの検視を行ったS医師、原告病院附近の住民、病院関係者、天草消防組合中央消防署西天草分署長T等を取材し、同月28日取材結果をデータ原稿にまとめOに送信した。被告Fは、同月26日から同月28日にかけて、原告病院の看護婦3名から3時間程度取材し、そのデータ原稿をOに送信し、熊本県警察交通捜査課及び熊本県警察本渡署にも電話取材を行ったほか、原告Eに対する取材を試みたが、取材には顧問弁護士が応じるとして直接取材を断られたことから、同月28日、東京から、同弁護士に対し取材を申し込み、翌29日ファックスで被告F宛ての回答書(乙10)を受領した。また、記者であるRは、同月28日、Oの指示により保険会社関係者から保険契約の締結状況について取材し、その結果をOに報告・提出した。 Oは、同月25日に自らも保険会社に対する電話取材を行い、亡Jらに掛けられた保険契約の内容を聞き取るなどして資料を収集し、被告F、P及びRから入手したデータ原稿等の情報から必要なものを取捨選択し、「N」誌の各記事から一部を引用ないしその要旨を転載するなどし、さらに顧問弁護士に対する反対取材の結果を一部紹介して本件記事を作成した。 (2) そこで、前記2(3)イ(カ)で本件記事が摘示したと認めた事実について、真実性、相当性を検討する。 ア 本件事故の態様についてみるに、証拠(乙1から8、33から40)及び弁論の全趣旨によれば、本件記事(a記事部分)中の本件事故現場の状況、事故車両の転落態様等客観的事実については、ほぼそのとおりの事実が存在したと認められるが、本件事故の原因については、亡Mが故意に引き起こしたものではないことに沿う証拠(甲16、23ないし30、32、証人U)が存在し、また、被告らは、原告らの顧問弁護士から平成12年8月29日に詳細な理由を付して亡Mの自殺を否定する回答書を受領しており、さらに、熊本地方検察庁は、平成13年7月27日、亡Mがハンドルやブレーキなどを的確に操作する注意義務を怠り、ガードレールの切れ目から乗用車を転落させて同乗者を死亡させたという業務上過失致死の被疑事実を認定した上、同月26日付けで被疑者死亡による不起訴処分としたと発表している(甲8、9)。 イ 保険関係についてみるに、証拠(甲12、21、36、40、証人U、原告E本人)によれば、以下の事実が認められる。 原告E及び原告Dの副理事長であった亡Jに対しては、昭和46年に原告Dが設立されたころから生命保険(死亡保険金及び災害死亡保険金が支払われるもの)が掛けられており、その保険金額は、昭和49年から50年にかけて原告病院の東館が建設されたこと、昭和57年に西館が建設されたこと、昭和62年から平成元年にかけて本館が建設されたこと、平成7年から平成8年にかけて南館が建設されたことに伴い段階的に増額し、平成9年ころには、原告E及び亡Jの保険金額はそれぞれ60億円弱となった。原告Eの娘ら4人にも、昭和62年から生命保険が掛けられ始め、本件事故当時には、4人のそれぞれに約10億円ないし約20億円の生命保険が掛けられていた。上記各保険金のほとんどは原告Dが受取人であった。また、平成12年4月には、原告Dの理事兼看護部長であった亡K、亡L及び原告Dの監事であるUにも各4億1000万円の生命保険が掛けられ、その保険金の受取人はすべて原告Dであった。 以上のとおり、原告E夫婦及びその娘らに掛けられていた保険の金額はかなりの高額であるが、その保険金額は、病棟増設のための借入れの都度、増額されたこと、原告E夫婦及び娘らは、原告Dの上記借入金の連帯保証人であり(弁論の全趣旨)、金融機関からも保険加入の要請があり、保険会社からの勧誘も強かったこと、本件事故前、原告Eは、原告Dの社員権をすべて保有しており、原告Eが死亡した場合、亡Jや原告Eの娘らの相続税負担も相当多額のものとなると予想されたこと(原告E本人)、以上の事実が認められ、上記事実に加えて、原告Dの事業規模の大規模さをも考慮に入れると、前記保険金額が高額であるからといって、前記生命保険が不合理なものであったとはいえない。 また、亡Kや亡Lに掛けられていた生命保険についても、保険会社の強い勧誘があり、原告Dとしては、幹部職員である両名の退職金支払の準備を主目的とし、万一の場合の原告D経営悪化への対処を従たる目的として、加入したのであると認められ(甲38、55)、各4億1000万円という保険金額が直ちに不合理なものとはいいがたい。 そして、被告らは、原告らの顧問弁護士からの回答書(乙10)により前記生命保険契約締結の経緯・理由を知らされていた。 なお、熊本地方検察庁は、前記平成13年7月27日の報道発表の際、本件事故は保険契約とは全く無関係であることが明らかになったとコメントしている(甲8)。 ウ 亡看護部長らと原告E間の愛人関係及び過度の従属関係、本件事故前の亡Mの自殺を覚悟していたかのような不自然な言動並びに原告Eが株で大損したことを伝える記述の基となったものは、被告Fが原告病院の看護婦という3名から3時間程度取材した結果をまとめたデータ原稿(乙17)であると認められる(証人O)。 しかし、上記取材対象である看護婦3名は特定できておらず、被告Fは、原告病院の看護婦であることについて身分証明書等によって確認したわけではない上、同席した上記3名のうち1名ないし2名が話し、他の者はこれを特段否定しなかったにすぎないこと、取材当時既に同旨の内容が「N」誌に掲載されており、同誌を読んだ者であればその内容を誇張を交えて供述することも容易にできる状況にあったこと、上記3名は、本件記事中の主要な事実については直接体験しておらず、伝聞した事実を供述したにすぎず、また、原告Eないし原告Dを批判する供述を多々しており、原告らに対し反感を抱き、悪意のある供述をしている可能性を否定できないこと等に照らすと、取材対象者であった上記3名の供述とこれをまとめたデータ原稿(乙17)は、これをそのまま信用することができない。 そして、被告らは、原告らの顧問弁護士からの回答書(乙10)により上記データ原稿の内容を否定する原告らの主張を知らされていた。 エ 以上アないしウで本件事故原因、保険関係、亡看護部長らと原告E間の関係等について検討したところと証人O自身、亡Mの死亡につき「取材の結果では、自殺だとは思いません。」と供述していることに照らすと、前記2(3)イ(カ)で本件記事が摘示したと認めた事実については、これを真実と認めるに足りる証拠はないというべきであり、また、被告らがこれを真実と信じたことに相当の理由があると認めることもできない。 6 請求原因(4)(原告らが被った損害及び謝罪広告掲載の必要性)について (1) 損害額について 原告Eは、本件事故により、妻である亡J及び原告Dの理事兼原告病院の亡看護部長らを一度に失い、本件事故により最も衝撃を受け、その心情を配慮されるべき立場にあったにもかかわらず、同原告が本件事故に関与しているかのように報道されたことにより、多大な精神的苦痛を被ったものと認められる(甲10、37、53、原告E本人)。 原告Dは、人の生命に密接に関わる大規模医療機関であるにもかかわらず、原告Dの創立者であり、代表者理事長でもある原告Eが、本件事故に関与しているかのように報道されたことにより、その信用は大きく低下したと認められ、さらに、原告病院の入院患者の減少による減収等の影響も発生したと認められる(甲50、証人U)。 また、「C」誌は、長い歴史を有し、全国で販売されている著名な雑誌であって、発行部数も約69万部に上るから、本件記事による原告らの社会的評価の低下の程度は、相当に大きかったものと認められる。 他方、本件事故については、熊本地方検察庁が、亡Mの業務上過失致死事件として、被疑者死亡による不起訴処分とするとともに、本件事故は本件各保険とは全く無関係であることが明らかになったとコメントし、その発表が広く報道されており、このことによる原告らの名誉回復の効果もそれなりのものがあったと考えられる。 また、原告Dの入院患者の減少による減収については、本件記事の影響だけではなく、それに先行する「N」誌の各記事、「V」誌の記事(甲45)、テレビ報道等も影響している可能性を否定できない。 以上の各事情のほか、本件に現れた全ての事情を考慮するとともに、後記のとおり謝罪広告による名誉回復措置が行われることに鑑みると、本件記事の掲載による原告Eの精神的損害としては500万円、弁護士費用相当の損害として50万円、原告Dの信用低下等の無形損害として400万円、弁護士費用相当の損害として40万円と認めるのが相当である。 (2) 謝罪広告の掲載について 謝罪広告については、「C」誌の発行部数、社会的影響力を考慮すると、謝罪広告掲載の必要性は認められるものの、本件事故について、熊本地方検察庁により亡Mの業務上過失致死事件として被疑者死亡による不起訴処分がなされ、本件各保険とは全く無関係であることが明らかになったとのコメントとともに既に報道されていることなどを考慮すると、原告らの社会的評価を回復するためには、本件記事が掲載された「C」誌に別紙1記載の謝罪広告を別紙2記載の条件で1回掲載することを命じるのが相当であると認められる。 7 結論 よって、原告らの請求は、被告A及び被告Bに対し、連帯して、それぞれ損害賠償として原告Dにつき440万円、原告Eにつき550万円及びこれらに対する本件雑誌の発行日である平成12年9月7日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うこと及び被告Aが発行する「C」誌上に、別紙1記載の謝罪広告を別紙2記載の条件で1回掲載することをそれぞれ求める限度で理由があるからこれを認容し、上記両被告に対するその余の請求及び被告Fに対する請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条、64条、65条を、仮執行宣言につき同法259条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。 熊本地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官 田中哲郎 裁判官 市川多美子 裁判官 堀部麻記子 別紙1 謝罪広告 当社は、本誌平成12年9月7日号において、同年5月28日に発生した熊本県天草郡I町内の乗用車転落による4名の死亡事故について、同事故は運転者が故意に引き起こしたもので、同乗の医療法人D副理事長に掛けられていた巨額の保険金の存在及び運転者の同法人理事長E氏に対する過度の従属関係からして、同理事長が運転者の行為すなわち前記事故に何らかの作為的な関与をしたのではないかという疑惑があると報道する記事を掲載しました。 しかし、この記事には、十分な裏付けも根拠もありませんでした。 当社は、前記記事により、医療法人D及び同法人理事長E氏の名誉及び信用を傷つけたことを深くお詫びいたします。 平成 年 月 日 株式会社A 代表者代表取締役 W C編集人兼発行人 B 医療法人D殿 E殿 別紙2 1 スペース 横10センチメートル、縦10センチメートル 2 活字の大きさ 見出し「謝罪広告」は明朝体16ポイント 本文は明朝体10ポイント 氏名・宛名は明朝体12ポイント 別紙3 謝罪広告 当社は、当社発行の「C」平成12年9月7日号において、「Nスクープ熊本70億円保険金疑惑の追跡」の標題の下に、平成12年5月28日発生した熊本県天草郡I町における交通事故が単なる交通事故ではなく、運転者が故意に事故車両を崖から転落させて同乗者を殺害したものであり、右殺害行為は、医療法人D理事長Eが、右車両に同乗していた同法人副理事長に掛けていた約70億円の生命保険金を取得する目的で、かねて同理事長と愛人関係にあった運転者を洗脳し、マインドコントロールして実行した旨の記事を掲載しましたが、そのような事実は全くありませんでした。 株式会社A及びBは、事実無根の記事を掲載し、医療法人D及び同医療法人代表理事Eの名誉及び信用を著しく傷つけたことについて、深く謝罪しますとともに、右記事を取り消します。 株式会社A 右代表者代表取締役 W C編集人兼発行人 B 医療法人D御中 E殿 別紙4 G新聞 1 掲載場所 社会面に縦3段×横19.25センチメートル(半3段) 2 字格 @見出し「謝罪広告」は、5倍明朝体活字 A本文は、2倍明朝体活字 B氏名・宛名は、3倍明朝体活字 C 1 掲載面 本文活版 2 スペース 縦20センチメートル、横15センチメートル 3 字格 @見出し「謝罪広告」は、62級明朝体活字 A本文は、20級明朝体活字 B氏名・宛名は、24級明朝体活字 |
日本ユニ著作権センター http://jucc.sakura.ne.jp/ |