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【事件名】週刊誌「乙」による社長セクハラ報道事件 【年月日】平成14年10月15日 東京地裁 平成13年(ワ)第10621号 損害賠償等請求事件 判決 東京都港区ab丁目c番d号 原告 株式会社D(以下「原告会社」という。)代表者代表取締役 E 千葉県浦安市ef丁目g番h号 原告 E(以下「原告E」という。) 原告ら訴訟代理人弁護士 田辺克彦 同 藤田耕三 同 田辺信彦 同 奥宮京子 同 松林智紀 同 大野 渉 同 宍戸一樹 東京都千代田区i町j番k号 被告 株式会社F(以下「被告会社」という。)代表者代表取締役 G 同所(就業場所) 被告 H(以下「被告H」という。) 同所(就業場所) 被告 I(以下「被告I」という。) 被告ら訴訟代理人弁護士 喜田村洋一 同 林陽子 主文 1 被告らは、原告会社に対し、各自金110万円並びにこれに対する被告会社及び被告Hについては平成13年6月5日から、被告Iについては同月6日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告らは、原告Eに対し、各自金60万円並びにこれに対する被告会社及び被告Hについては平成13年6月5日から、被告Iについては同月6日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は原告らの負担とする。 5 この判決は、第1項及び第2項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告らは、原告会社に対し、各自金7億円並びにこれに対する被告会社及び被告Hについては平成13年6月5日から、被告Iについては同月6日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告らは、原告Eに対し、各自金3億円並びにこれに対する被告会社及び被告Hについては平成13年6月5日から、被告Iについては同月6日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告らは、原告らに対し、別紙1記載の謝罪広告を別紙2記載の掲載要領により読売新聞(全国版)、朝日新聞(全国版)、日本経済新聞(全国版)、毎日新聞(全国版)、産経新聞(全国版)、東京新聞の朝刊社会面に各1回掲載せよ。 4 被告らは、原告らに対し、別紙3記載の謝罪広告を別紙4記載の掲載要領により被告会社の発行する週刊乙の記事面に1回掲載せよ。 第2 事案の概要 1 争いのない事実等(末尾に証拠等を掲げた以外の事実は争いがない。) (1) 当事者 ア 原告会社は、昭和50年翻訳業等を目的として設立された株式会社であり、現在は化粧品の製造、販売等を主たる業務としている。 イ 原告Eは、原告会社の創業者であり、その代表取締役の地位にある。 ウ 被告会社は、書籍の出版等を業とする株式会社であり、被告Hは、被告会社の発行する雑誌である週刊乙の編集長、被告Iは同誌の記者である。 (2) 原告会社は、昭和58年に化粧品事業部を設立後は急速に売上を伸ばし、平成12年7月期には売上高約651億円、法人所得約173億円という巨大企業となっている。また、原告Eは、連続して高額納税者として氏名が公表されており、平成12年分の所得税額は6億円超であり、全国26位(平成11年は30位)となっている。 (3) 被告会社は、平成13年5月24日発売の週刊乙同月31日号(以下「本件週刊誌」という。)36頁、37頁、194頁及び195頁に、別紙5のとおり、「仰天内部告発 化粧品会社甲社長『女子社員満喫生活』」というタイトルで、原告らに関する記事及び原告Eの写真などを掲載した(以下「本件記事」という。)。 本件記事には、別紙6のaないしnのとおりの記載がある。 (4) 被告会社は、平成13年5月24日、読売新聞(全国版)、朝日新聞(全国版)、日本経済新聞(全国版)、毎日新聞(全国版)、産経新聞(全国版)及び東京新聞の各朝刊に、本件週刊誌の広告として「仰天内部告発 化粧品会社甲社長『女子社員満喫生活』 ルックスも査定対象か?」ないし「ルックスも査定対象か? 仰天内部告発 化粧品会社甲社長『女子社員満喫生活』」との内容を掲載し、併せて、同様の内容をその週の電車内の中吊り広告として掲示した(以下、これらの広告を併せて「本件広告」という。甲2の1及び2、弁論の全趣旨)。 2 争点 (1) 本件記事及び本件広告の名誉毀損性 (原告らの主張) ア 本件記事及び本件広告(以下、これらを併せて「本件記事等」という。)は、原告Eが女性にだらしないという印象を与える刺激的、差別的かつ侮蔑的表現を用い、原告Eが社長としての地位を背景として、昼食をともにすることやデートすることを女性従業員に強要したりし、全体として、女性に不快感を催させるような言動を行っているかのように印象づけるとともに、女性従業員について、自らの好みによって原告会社内において不公平な人事労務管理を行っているかのように印象づけるものであり、原告Eの社会的評価、信用、イメージを悪化させるものである。 イ また、本件記事等は、原告会社では、社長である原告Eが自らの好みに基づいて女性従業員を極めて不公平に扱い、個人的な嫌悪により女性従業員に対し不当な人事管理を行っており、しかも、原告会社がそのようなことを許容する企業であると印象づけ、さらには、「ストレスから体調を崩し、ニキビや肌荒れに悩む女性も少なくないという。」というような化粧品会社には致命的ともいえる中傷も含まれており、原告会社のイメージを悪化させ、社会的評価を毀損する。 (被告らの主張) 本件記事等は、原告会社代表者である原告Eに関するものであり、原告Eの社会的評価に影響を与えるものであるが、原告会社に関するものではないから、原告会社の社会的評価が本件記事等によって低下することはない。 (2) 本件記事等の公共性及び公益性 (被告らの主張) ア 原告会社は、女性に対する化粧品販売で巨額の売上を上げ、その従業員も女性が相当数を占めているのであり、原告会社代表者である原告Eが、自社の女性従業員とどのように接しているかは、社会の正当な関心事である。 また、@連日、女性従業員の中からごく少数の者を昼食に誘い、これを断ることは極めて困難である、A休日に女性従業員を誘い、高額のプレゼントをしている、B海外の買付に同行させる女性従業員は、その従業員の通常業務と関係なく選択している、C食事の席で、女性従業員に対して「君、可愛いね」と囁くことがある、D原告会社社長室に従業員からの直通ファクシミリが置かれており、従業員の間で「密告専用ファクシミリ」と呼ばれている、などのような原告Eの言動は、自社の女性従業員に対するセクシャルハラスメント(以下「セクハラ」という。)とも理解されるものであり、また、原告会社の職場環境を悪化させるものである。このような言動は、高額納税者名簿の上位を占め、強い公的関心の対象となっている原告Eの財産形成過程について、市民が判断を下すに当たって適切な情報である。 したがって、本件記事等の内容は、公共の利害に関する事実に係る事項である。 イ 週刊乙編集部では、このような事実を報道することは市民に対して必要ないし有用な情報を提供することになると考えて、本件記事等を掲載したものであり、本件記事等の掲載は、公益を図る目的でなされたものである。 原告らは、本件記事等の表現が刺激的、扇情的であるとして公益性が否定されると主張するが、週刊誌は学会誌ではなく、その表現が学術論文と異なることは当然である。公益性が否定されるかどうかの問題は、本件記事等の表現が対象者の人格を全て否定するようなものになっているか否かによって判定されるべきものであり、用いられた表現が、対象者への批判と適切な関連性を有している場合には、そこで用いられた表現がどれほど激越なものであっても、公益性は否定されない(最高裁判所昭和61年6月11日大法廷判決・民集40巻4号872頁、最高裁判所平成元年12月21日第一小法廷判決・民集43巻12号2252頁)。 また、本件記事等の表現は、いずれも事実を前提としてなされたものであり、反論を認めない人身攻撃の類とは異なり、原告Eないし原告会社の状況を報じ、これを批判するにあたって相当なものである。 (原告らの主張) ア いったい何のために、またいかなる理由で原告Eの「財産形成過程」を市民が判断しなければならないのか、それをすることにより一体いかなる公共的な価値に資するのか、被告らの主張は明らかでない。 本件記事等の内容は公共の利害に関係しない。 イ(ア) 公益目的の存否は、名誉毀損事実自体の内容、性質から客観的に判断 するだけでなく、その表現方法や事実調査の程度なども考慮して決せられるべきものである。 (イ) 煽情的・揶揄的な表現方法 本件記事等は、「女子社員満喫生活」、「ハーレム生活」、「“したい放題”の社長」、「羨ましいね!」、「社長の『女子社員満喫生活』は、まだまだ続くのである」、「E社長の“ヤリ手ぶり”は、経営面にだけ発揮されているわけではない。女子社員への接し方にも、かなり意欲的なのだ」、「男冥利につきる」などと、公益目的を実現するためのものとはおよそ考えがたい刺激的、煽情的、揶揄的な表現を用いており、単に読者の興味を煽るようなゴシップ記事を記載することで、本件週刊誌の売上の増加を図っていることが明らかである。 (ウ) 取材の不十分性 後記のとおり、被告らは、被告Iが本件記事等を作成するにあたり原告会社の元従業員3名から取材を行ったと主張するが、疑わしい。仮に被告Iが上記3名から取材を行ったことが事実だったとしても、被告らの行った取材活動はこれだけで、取材対象者の誠実さの確認や本人取材を行うための努力をしていないことなど、真実性確認のために要求されるさまざまな努力を怠っている。 このように不十分な取材に基づいているものでありながら、本件記事等の掲載に踏み切ったことは、被告らに公益目的がなかったことを示している。 (エ) 不誠実な表現態度 本件記事には、真に事実の検証を行い社会的な問題提起を行うのであれば、決してあり得ない不誠実な表現態度がみられる。 a 「甲社員」との虚偽記載 仮に被告ら主張の取材の事実があったとしても、3人の取材対象者は取材当時いずれも原告会社を退職していたにもかかわらず、本件記事では「甲社員」、「別の女子社員」と記載し、本件記事の読者に対し、情報提供者の供述の信用性を実際以上に高く見せており、極めて不誠実である。 b 供述主体の水増し 本件記事には、「甲社員」、「元社員」、「別の女子社員」、「社員」がそれぞれ供述した内容が記載されている体裁となっているが、被告らの主張によっても取材対象者は3名にすぎず、これは、取材協力者の数を実際よりも多く見せることにより、本件記事の信用性を高く見せるものであり、極めて不誠実である。 c 供述主体と取材対象者の対応関係の不存在 本件記事に記載されている供述主体と、被告Iが取材を行ったという取材対象者には1対1の対応関係が存せず、鍵括弧部分の供述は適宜供述内容を織り交ぜて構成されている。これは取材対象者の供述をそのまま掲載しているような体裁をとりながら、実際には記者自身が勝手に構成した内容を記載するものにほかならず、本件記事をもっともらしく見せようとする不誠実な表現態度といわざるを得ない。 d 体験と伝聞の意図的混同 別紙6mにおいては、「社員」なる者が原告Eから退職届を書くよう直接強要されたという記載になっているところ、この取材対象者は直接の経験を述べたものではないのであるから、少なくとも直接の体験であるかのように記載することは、本件記事の信用性を実際以上のものに見せかけようとする行為であり、不誠実きわまりない。 e 断定口調 前述のとおり、被告らの取材行為は不十分なものでしかなく、事実の存在を確信できる状況でなかったにもかかわらず、本件記事の文体は全体に断定口調となっており、これは取材の不十分さを糊塗しようとする被告らの不誠実な態度を表している。 f 対応部分のない見出し 別紙6aの「デートの誘いは断われない」なる小見出しについては、本件記事本文中に対応する文章が存在しない。地の文章に対応しない見出しが存在すること自体、被告らが本件記事を作成するに当たり、極めて不注意ないし不誠実であったことを表している。また、これは、元々見出しの内容の記事を掲載することが大前提にあって、記事は後付けであったこと、そして、この「デートの誘いは断われない」に該当する部分は被告Iが創出できなかったことを窺わせる。 (オ) このように、本件記事等は、一方的かつ不十分な取材に基づきながら、読者の興味本位におもしろおかしく事実を捏造し、さらにこれに煽情的な見出しを付けることで、週刊誌の販売を促進するために作成されたものであり、被告らに公益を図る目的がなかったことは明らかである。 (3) 本件記事等の真実性ないし真実相当性 (被告らの主張) ア 被告Iの取材対象とその信用性 被告Iは、本件記事に関して原告会社の元従業員3名から取材している。被告Iがこれら元従業員らの供述を信用したのは、@元従業員らの話すそれぞれの話が非常に具体的であったこと、A互いに他の者の供述を知らないでなされた元従業員らの供述が基本的に一致したことによる。 イ 被告Iの取材の十分性 被告Iは、取材依頼文書を20通ないし50通程度出し、多種多様な証言を確保しようとするための十分な努力を払った。 また、本件記事の対象になる予定の原告らに対しても、被告Iは何回も取材の申入れを行い、最終的には質問事項を明記して取材を申し入れたが、これについて何の返事もなかった。 したがって、本件記事等に原告らの主張が反映されなかったことは、取材拒否という原告らの対応によるものである。 ウ 以上のとおり、被告Iが取材した元従業員らの供述は基本的に信用性の高いものである。本件記事等はその供述に基づいて作成されたものであって、その内容はいずれも真実であり、仮に真実と異なる点があったとしても、被告らは、その内容を真実と信じるについて相当の理由を有していた。 また、元従業員らの供述以外に、別紙6のe、hにかかる摘示事実は原告会社社長室秘書一課課長J某(以下「J」という。)の当庁平成13年(ワ)第14598号事件(以下「別訴」という。)における供述によって、別紙6のh、iにかかる摘示事実は原告会社取締役総務本部長K某(以下「K」という。)の供述によって、別紙6のl、mにかかる摘示事実は原告E自身が書いたファックス文書(乙8の2)によってもそれぞれ裏付けられているのであり、その真実性は優に認められる。 エ 原告Eの不出頭と民事訴訟法208条の適用 原告Eは、原告兼原告会社代表者として自ら提訴し、争いを裁判所の判断に委ね、裁判所から事実認定に必要であるとして原告兼原告会社代表者本人尋問が採用されたにも関わらず、理由にもならない理由を述べて出廷を拒んでいる。 このような不誠実な当事者に対しては、本訴に現れた証拠を勘案すれば、衡平の観念に基づき、民事訴訟法208条を適用して、被告らが平成13年12月18日付け証拠申出書に記載した原告Eについての尋問事項にかかる被告らの主張を真実と認めるべきである。 (原告らの主張) ア 本件記事等の真実性の欠如 本件記事に記載された別紙6aないしnの事実はすべて虚偽であり、その他、休日のデートに関する記載内容(本件記事36頁第4段)、社長室直通ファックスに関する記載内容(本件記事37頁第1、2段)などもすべて虚偽である。 イ 本件記事等の相当性の欠如 (ア) 取材の事実自体の疑わしさ 被告らは、3名の取材対象者から取材したと主張するが、被告Iは、取材対象者3名の氏名を全く明らかにしていないのであって、被告Iが取材対象者3名に対する取材を行ったか疑わしいというべきである。 (イ) 取材対象者の供述の信用性を確認していないこと 被告Iは、取材対象者の1人に対する取材の過程で、同人が原告らに対して不満ないし反感を抱いていることに気付いており、しかも同人は社外秘の住所録一覧表を被告Iに交付するなどその誠実性に疑問があったのであるから、同人が自らの不満をはらす目的で虚偽の事実を述べるのではないかということを当然警戒すべきであり、そのためには、同人が虚偽の供述をしても何のメリットもないこと(不満をはらすこともメリットの一つである。)を確認すべきであったが、それを行わず、そのほかにも同人の誠実さの確認のために何らの行為も行っていない。 (ウ) 取材対象者に対する事実確認の不足 本件記事に符合する取材対象者らの供述には極めて多数の疑問点、矛盾点があるにもかかわらず、被告らは、当然取材対象者に確認すべきこれらの疑問点について確認しておらず、あるいは不十分な確認しかしていない。 (エ) 本人に有利な証拠を得る努力の不足 真実と信じるに足りる相当な理由があるというためには、取材を行うにあたって本人に有利・不利を問わず公平に資料を集めることが不可欠であり、本人に有利な証拠が集まりにくいような方法でしか取材を行わなかった場合、その取材は公平性を欠き、相当性を否定すべきである。 被告らは、原告会社に対し不満を抱いているという取材対象者から原告会社の従業員又は元従業員20名ないし50名程度を指定してもらった上、それらの者に取材依頼文書を送っているが、それを受け取った者としてみれば、何も問題視するようなことがないのであれば、わざわざ時間を割いてまでそのことを説明しようとは思わないはずであり、かかる文書を送付しただけでは原告らに有利な証拠をも収集しようとしたとはいいがたく、また、被告らが真に公平な取材を望むのであれば、上記取材依頼文書の送付先は無作為に選ぶか、少なくとも取材対象者とは無関係に選んで取材を試みるべきものであるが、実際は上記のとおりである。これらのことは、被告らが原告らに有利になる証拠を求めようとしなかったことを示している。 (オ) 本人からの証言を得る努力の不足 真実と信じるにあたり相当な理由があるというためには、本人と接触をとるために十分な努力をすることが不可欠というべきである。 被告らの取材申入れは、締切日である平成13年5月21日の午後3時27分にファックスで書面(甲5)を送付するまで一切質問事項を示しておらず、上記書面も、手書き1枚のもので、全く具体的な事実を明示せず、明らかに興味本位の質問ばかりであり、上記書面のほかには、原告会社の広報や総務などしかるべき部署への正式な取材申込書も送っていない。このような本人の感情や都合を無視した取材申入れでは、被告らが取材に際し原告らに接触するために十分な努力をしたということは到底できない。 (カ) 客観的証拠の欠如 本件記事等の作成に当たり、被告Iは、取材対象者3名の話以外の客観的資料を確認していない。 (キ) 以上のとおり、被告らが3名の取材対象者に取材を行ったという事実自体疑わしく、たとえ3名の取材対象者に取材したとしても、被告らは十分な事実確認を怠ったものといわざるを得ず、本件記事等の内容を真実と信じるに足りる相当な理由はない。 ウ 民事訴訟法208条の適用 原告Eが出頭しなかったのは、次の2つの理由によるものである。 (ア) 被告らの訴訟行為の誠実さには疑問があり、原告Eが当事者尋問の ために出頭することで二次的被害を受ける可能性が高かったこと a 前記のとおり、本件記事等の作成に至る過程で行われた取材は取材の名に値しないほど杜撰なものであり、被告らは、このような自らの取材の不備を補い、探索的に尋問するために原告Eの尋問申請をしているものとしか思われない。 b 被告らは、本件記事を掲載した後に同じ週刊乙に「セクハラ告発第二弾 甲社長が専用リムジンで『両手に花』」と題する記事(乙17)を掲載したが、これには、「さて、E社長に話を伺うべく取材を申し込んだが、今回も取材に応じて頂けなかった。法廷で直接お話が聞ける日を、楽しみに待つ他はない。」などという嘲笑的な記載がある。 c このように、被告らの訴訟行為の誠実さには疑問があり、原告Eの尋問が実施されれば、「当たれば儲けもの」という発想から、本件記事等を上回る興味本位の尋問がなされ、本件記事等にも記載されていない事項を根ほり葉ほり聞かれる可能性が極めて高く、さらには、その結果がおもしろおかしく週刊誌に掲載される事態も予測された。本件において原告Eの尋問を行うことは、名誉回復を求める被害者に、かえって二次的被害を誘発するような行為を要求することにほかならないのであって、そのような尋問に出頭することを回避することには正当な理由があったというべきである。 (イ) 原告Eの尋問は必要がなかったこと a 公益目的の欠如 前述のとおり、本件記事等にはそもそも公益を図る目的が欠如しているので、真実性、相当性の立証に入る必要はない。 b 立証対象事実 本件記事等には、原告Eしか知り得ないような事情は記載されていないので、その虚偽性はK及びL某(以下「L」という。)の証人尋問により十分に立証し得たものである。なお、乙第8号証の2の成立経緯については、本件記事等との関連性に問題があり、かつ、原告E自身記憶していないところであったため、尋問を行う実益がなかった。 c 以上のとおり、原告Eの尋問は必要性がなかったのであるから、原告Eの不出頭には正当な理由があったというべきである。 (4) 損害及び謝罪広告 (原告らの主張) ア 原告Eは、本件記事等により名誉を著しく傷つけられ、極めて多大な精神的苦痛を受けた。その慰謝料としては2億7000万円以上、弁護士費用としては3000万円が相当である。 イ 原告会社は、本件記事等により社会的信用を著しく傷つけられた。本件記事等により原告会社の売上に悪影響が出ることが予想されることを考慮すると、原告会社の慰謝料としては原告会社の平成12年度の売上高の1%相当額である6億5000万円が相当であり、弁護士費用としては5000万円が相当である。 ウ 原告らの損害を回復するには、金銭賠償のみならず、被告らが本件記事を掲載した週刊乙、被告らが本件広告を掲載した読売新聞(全国版)、朝日新聞(全国版)、日本経済新聞(全国版)、毎日新聞(全国版)、産経新聞(全国版)及び東京新聞の各朝刊の社会面に別紙1及び3のとおりの謝罪広告をそれぞれ別紙2及び4のとおりの掲載要領で掲載することが必要である。 (被告らの主張) すべて争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(本件記事等の名誉毀損性)について (1) 本件記事等が原告Eの社会的評価に影響を与えるものであることは、被告らもこれを認めており、本件記事等が原告Eの名誉を毀損するものであることは被告らにおいても争わないものと認められる(なお、本件広告のうち「ルックスも査定対象か?」との部分については、特に原告らからの主張もないため、判断の対象としない。)。 (2) また、本件記事には、原告会社では原告Eの「お気に入りか否かが、当然、昇進に直結する」(別紙6j)、「妊娠を報告したら、退職願を書くように社長から直接迫られた、という社員の証言もある。」(別紙6m)、原告Eが「食事の席で『ちょっと太ったんじゃない?』なんて腰に手を回してきたり、耳元で『キミ可愛いね』って囁くようなことは、ちょくちょくありました」(別紙6d)、「ストレスから体調を崩し、ニキビや肌荒れに悩む女性も少なくないという。」(別紙6n)などの記載があり、原告会社では、社長である原告Eの好みに基づいて女性従業員を不公平に扱い、妊娠したことにより退職を迫られるなど不当な人事管理が行われており、ストレスから体調を崩す女性従業員も少なくないなどと印象づけるものであり、本件広告は、「女子社員満喫生活」という表現を用い、原告会社が女性従業員をそのように不当に取り扱うことを許容する企業であるとの印象を与えるものであるから、本件記事等が原告会社の社会的評価を低下させるものであることは明らかである(なお、本件広告のうち「ルックスも査定対象か?」との部分については、前記のとおり、判断の対象としない。)。 2 争点(2)(本件記事等の公共性及び公益性)及び争点(3)(本件記事等の真実性ないし真実相当性)について (1) 事実を摘示しての名誉毀損にあっては、その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合に、摘示された事実がその重要な部分について真実であることの証明があったときには、その行為には違法性がなく、仮にその事実が真実であることの証明がないときにも、行為者においてその事実を真実と信ずるについて相当の理由があれば、その故意又は過失は否定され、また、ある事実を基礎としての意見ないし論評の表明による名誉毀損にあっては、その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合に、その意見ないし論評の前提としている事実が重要な部分について真実であることの証明があったときには、人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない限り、その行為は違法性がなく、仮にその意見ないし論評の前提としている事実が真実であることの証明がないときにも、行為者においてその事実を真実と信ずるについて相当の理由があれば、その故意又は過失は否定されると解するのが相当である(最高裁判所平成9年9月9日第三小法廷判決・民集51巻8号3804頁)。 (2) そこで、まず、本件記事等が公共の利害に関する事実に係るものであるか否かを検討する。 ア 被告らは、高額納税者である原告Eの財産形成過程は公衆の関心事であると主張する。 しかし、私人の財産形成過程は私生活上の事実にすぎず、その私人が高額の納税によって氏名を公表されたとしても、その財産形成過程が一般に公共の利害に関する事実になるということはできない。 また、原告Eが原告会社内で誰と昼食を共にし、休日に誰とデートしているかということも、基本的には原告会社内あるいは原告Eの私的な事実にすぎず、原告会社が化粧品販売によって巨額の売上を上げている企業であり、原告Eがその社長であるとしても、それだけでは公共の利害に関する事実に当たるということはできない。 イ ただ、本件記事等の内容は、原告会社内では、原告Eがいわば社長の地位を利用して女性従業員を昼食に誘い、これを断ることは極めて困難である、原告会社内では原告Eの好みによって人事配置や昇進が決められている、原告会社内では妊娠したことにより退職を迫られるなどといった、原告会社内で原告Eが社長としての地位を利用して女性従業員にセクハラまがいの行為を行っており、原告会社内では不公正な人事管理が行われているなどというものであって、もしかかる事実が本当に存在するのであれば、そのような原告会社内の不当な行為を報道することは、社会の正当な関心事であり、公共の利害に関する事実にあたるということができる。 もしそうでないとすれば、私企業においてセクハラや不公正な情実人事といった事実が存在したとしても、それを報道することは当該事実の有無に関わらず一切許されないということになるが、そのような結論は到底容認できるものではない。 ウ したがって、本件記事等は公共の利害に関する事実に係るものである。 (3) 次に、本件記事等が専ら公益を図る目的で掲載されたか否かを検討する。 ア 本件記事等の掲載に至る経緯について 証拠(甲1、4ないし7、12、乙4、7、証人K、被告I)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実を認定することができる。 (ア) 平成13年のゴールデンウイークのころ、週刊乙編集部に、原告Eが原告会社の女性社員を私物化しているという情報が寄せられた(以下において年が省略されているものは、すべて平成13年である。)。 週刊乙編集部は、原告Eが自社の女性社員とどのように接しているかにつき取材を開始することとし、被告Iが取材に当たることとなった。 (イ) 被告Iは、5月6日、上記の情報を寄せた原告会社の元従業員の女性(以下「元従業員A」という。)と被告会社の社内で面談した。 被告Iは、元従業員Aから、原告Eが連日のように、午前11時45分ころから午後1時半か2時ころまで、女性5名くらいを連れてリムジンに乗って昼食に行くこと、原告Eと昼食に行くメンバーは日によって違うが、限られた者の中から全て原告Eの指名によって集められること、元従業員Aは当初昼食に誘われていたが、途中から誘われなくなったこと、休みの日に原告Eとデートをして、バッグや時計を買ってもらった同僚もいること、イタリアへの仕入に同行した仕入とは関係のない経理の女性従業員がいること、元従業員Aは食事中に原告Eの隣に座った時に、「君可愛いね」と耳元で囁かれたり、車の中で腰に手を回されたことがあること、元従業員Aは原告Eのセクハラ的なことや恣意的な人事によるストレスから体調を崩し、にきびや肌荒れに悩んでおり、周りにもそういう人が多かったことなどを取材した。 (ウ) 翌5月7日ころから、週刊乙グラビア班の記者及びカメラマンは、10日間にわたって、原告Eの昼食時の動向を観察し、撮影した。原告Eが昼食に行かなかったのは1日だけであり、その余の日は、原告Eは数人の女性従業員と一緒にリムジンで昼食に出ていった。 (エ) 被告Iは、その後、再び元従業員Aと喫茶店で会い、グラビア班の 撮影した写真に写っている人物が原告Eであることを確認し、原告会社の社長室に直通のファックスが置いてあるが、これは他人の悪口を送るためのものであり、それをやらないと仕事をしているとみなされないことなどを取材した。 (オ) 被告Iは、元従業員Aから、社外秘と記載された原告会社の住所録一覧表を入手した。 被告Iは、5月16日頃、元従業員Aから入手した住所録一覧表を元に、20名ないし50名程度の原告会社の従業員又は元従業員に対し、原告Eの「女性従業員への接し方」につき取材を申し入れる文書(甲4と同様のもの)を送った。 (カ) 原告Eは、5月17日夜、被告Iに電話をかけ、被告Iが住所録一覧表を元に従業員らに手紙を出したことに強く抗議した。これに対し、被告Iは、原告Eに対する直接取材を申し入れたが、原告Eは会う必要はないと拒絶した。原告Eは、その後再び被告Iに電話し、住所録一覧表の入手先がある女性かどうかを尋ねたが、被告Iは回答しなかった。 (キ) Kは、5月18日、被告会社に対し、被告Iが原告会社の社外秘の住所録一覧表を利用して取材申入れをしていることについて、法的手段を取る旨を記載した書面(甲6)をファックスで送信した。 これに対し被告Iは、原告会社に対し、原告Eへのインタビューの機会を設けてほしい旨を申し入れたが、原告会社側は、不正に入手した住所録一覧表を元に従業員に対する取材を行わないよう要求し、取材を拒否した。 (ク) 被告Iは、5月19日、別の元従業員の女性(以下「元従業員B」という。)と被告会社の社内で1時間半ほど面談した。 被告Iは、元従業員Bから、同僚が昼食のときに原告Eから誘われていたこと、原告会社の社長室直通ファックスは自分の周りの人間の悪口を送るためにあるファックスであり、それを原告Eが読んで、書かれた当人を社長室に呼びつけることがあることなどを取材した。 (ケ) 5月20日、被告Iの出した文書に応じて、別の元従業員(以下「元従業員C」という。)が被告Iに電話をかけてきたので、被告Iは2時間くらい電話で取材した。 被告Iは、元従業員Cから、原告Eから昼食に誘われ、午後1時に打合せがあるので行けないと断ろうとしたら、人事担当の女性から、社長に誘われたら絶対に行かなければ駄目だと言われて行ったことがあること、スペインでのオリーブの買付やパリでのインナーウェアの仕入に同行した仕入や買付とは関係のない部署の女性従業員がいること、原告Eから食事中にあごをさすられたことがあること、原告Eからホテルに誘われた女性従業員が複数いること、そのうち1人が人事担当の女性役員に相談したが、「いろいろ買ってもらったんだから、1回ぐらい付き合ってあげればいいんじゃないの」と言われたこと、原告会社では、原告Eの好き嫌いによって昇進が決まったり、給与でも美人手当が基本給にプラスされることなどを取材した。 (コ) 被告Iは、5月21日、原告会社に対し、本日中に原告Eと面会 したい旨記載した書面(乙4)をファックスで送り、同日午後3時27分には、原告会社に対し、原告Eとの面会が叶わないのであれば、以下の各点につき回答を求める旨の書面(甲5)をファックスで送った。 @ 妊娠した社員は、E社長から退職を迫られると聞きますが、事実ですか。また、何故でしょうか。 A “役職者ランキング”の掲示、社長室直通FAXの目的を教えて下さい。 B 社員の昇級昇格あるいは降格が、正しい査定でなく、社長の好みで決められているとの指摘があります。どうお考えですか。 C 特定の社員とのみランチを共にされる理由をお教え下さい。御社の午後の業務は1時からと思いますが、支障はないのでしょうか。 D 海外出張の際、当該業務に無関係の社員を同行させるのは、何のためでしょうか。 E 「E社長からセクハラ行為を受けた」との証言を得ています(厳密には飲食の強要もセクハラに含まれますが)。お心当たりの有無、コメントがあればお聞かせ下さい。 これに対し、原告会社側は、何らの回答をしなかった。 (サ) 被告Iは、本件記事の内容を、5月21日深夜締切の本件週刊誌に載せることとし、同日深夜、本件記事のうち36頁及び37頁の本文を執筆した。また、本件記事のうち195頁(別紙5の2枚目左側の頁)の本文はグラビア班の記者が執筆した。これらの記事は、被告Hがこれを掲載することを容認して掲載されたものである。なお、本件記事のリード部分は、被告Iの作成した原稿に基づいてデスクが決定し、見出し部分は、いずれもデスクと編集長が決定した。 イ 以上の事実と証拠(甲1、乙7、被告I)を総合すれば、被告らは、本件記事等に記載されている内容を真実であると信じ、これを報道することは市民に対して必要ないし有用な情報を提供することになると考えて、本件記事等を掲載したものと認めるのが相当であり、本件記事等は、専ら公益を図る目的により掲載されたものということができる。 ウ 原告らは、本件記事等は、公益目的を実現するためのものとはおよそ考えがたい刺激的、煽情的、揶揄的な表現を用いていると主張する。 しかし、週刊誌は、学会誌とは異なり、公共の利害に関する事実を報道するとともに、読者に購入してもらうことも目的とする営利出版物であるから、読者の興味を引くためにある程度煽情的な表現を用いることもあり得るのであって、その表現が公正な論評として許されるか否かは別として、本件記事等について、その表現からただちに公益目的の存在が否定されるものではない。 エ また、原告らは、本件記事等を作成するにあたり、被告らが取材対象者3名から取材を行ったという事実自体疑わしく、仮に被告らが取材対象者3名から取材を行っていたとしても、取材対象者の誠実さの確認や本人取材を行うための努力をしていないことなど、真実性確認のために要求されるさまざまな努力を怠っており、このような不十分な取材に基づきながら、本件記事等の掲載に踏み切ったことは、被告らに公益目的がなかったことを示していると主張する。 しかし、上記のとおり、被告Iは取材対象者3名から取材をし、被告会社のグラビア班は、原告Eが女性従業員らと昼食に行っていることを確かめていること、被告Iは原告会社ないし原告Eに取材を試みていることが認められるから、被告らの取材が、公益目的の存在を疑わせるほど不十分であったということはできない。 オ さらに、原告らは、本件記事には、真に事実の検証を行い社会的な問題提起を行うのであれば、決してあり得ない不誠実な表現態度がみられると主張する。 本件記事には、取材対象者は元従業員であるのに「甲社員」(本件記事36頁第1段)、「別の女子社員」(37頁第2段)とあたかも現に原告会社に雇用されている従業員であるかのように記載し、また、取材対象者は3名であるのに「甲社員」(36頁第1段)、「元社員」(36頁第4段)、「別の女子社員」(37頁第2段)、「という社員の証言もある」(37頁第3段)と供述主体を水増しするように記載し、さらに、36頁第4段の「元社員」は、元従業員Aと元従業員Cの供述を混ぜている(被告I)のに、1名が述べたかのように記載し、さらにまた、37頁3段の「直接迫られた、という社員の証言もある」というのは、元従業員A及び元従業員Cから、そのような人間がいると伝聞で聞いたにすぎない(被告I)のに、直接取材したかのように記載しており、加えて、「デートの誘いは断われない」(別紙6a)との小見出しは、本文中に対応する文章が存在しないなどの不正確な記載があることは原告ら主張のとおりである。 しかし、本件記事の一部にこのような不正確な記載があるからといって、本件記事等が公益を図る目的で掲載されたとの上記認定を左右するに足りるものではない。 (4) そこで、次に、本件記事等に係る摘示事実が真実と認められるか否か及び仮に真実と認められない場合に被告らがその事実を真実と信じたことについて相当な理由があったか否かについて検討する。 ア 民事訴訟法208条の適用について (ア) 本件において、被告らは、「原告本人が昼食に出かける際の車中での 行状、その他本件記事全般の真実性」を立証事項とし、別紙7のとおりの尋問事項で原告Eの本人尋問の申請をし、当裁判所はその尋問の必要性を認めて2回にわたり呼出を行ったにもかかわらず、原告Eはいずれも出頭しなかった。 民事訴訟法208条によれば、当事者本人を尋問する場合において、その当事者が正当な理由なく出頭しなかったときは、裁判所は尋問事項に関する相手方の主張を真実と認めることができるとされているので、まず、原告Eの不出頭に正当な理由があるか否か検討することとする。 a 原告らは、@被告らの訴訟行為の誠実さに疑問があり、尋問に出頭することで二次的被害を受ける可能性が高かったこと、A原告Eの尋問は必要性がなかったことから、原告Eは出頭しないこととしたものであり、不出頭には正当な理由がある旨主張する。 b しかし、まず、Aについては、尋問の必要性を判断するのは、当事者尋問の採否を決定する裁判所であって当事者ではないから、当事者が必要性がないと自ら判断して出頭しなくてよいというものではなく、正当な理由に当たらないことは明らかである。 なお付言すれば、本件記事等に公益目的が認められることは前記のとおりであるし、本件記事には、妊娠を報告したら退職願を書くように原告Eから直接迫られたとの記載(別紙6m)や、原告Eがセクハラまがいの行為をしたとの記載(別紙6d)などがあるのであり、また、乙第8号証の2は、原告E自身が記載した文書であり、その内容は、原告Eが別紙6lのような持論を抱いているのか否かに関するものであるから、原告Eの尋問により事実を明らかにする必要性は高かったものである。 次に@についていえば、まず、被告らが真実性を立証するための証拠資料は、取材当時の資料に限られるわけではない(最高裁判所平成14年1月29日第三小法廷判決・判例時報1778号49頁)から、被告らが原告Eの尋問を申請することは不当とはいえない。 そして、当事者尋問においても、争点に関係のない質問や当事者を侮辱する質問等をしてはならず、裁判長は、申立により又は職権で、そのような質問を制限することができる(民事訴訟規則127条、115条2項、3項)とされており、不当な質問は、最終的には裁判長の訴訟指揮によって解決されることを予定しているのであるから、当事者が裁判長の判断を待たずに、自己が不当と考えた質問に対する供述を拒否することができるものではないし、いわんや、不当な質問がなされるおそれを理由として出頭しないことが正当とされるものでもない。 なお、被告らの掲載した後続記事に原告ら主張のような記載があったからといって、本訴における当事者尋問において不当な質問がなされる可能性が高かったと認めることはできないし、被告らの証拠申出書に記載された尋問事項を見ても、格別不当な質問がなされる可能性が高かったとは認められない。 したがって、原告Eの不出頭が正当な理由によるものと認めることはできない。 なお、このように解したとしても、不当な質問があれば裁判長により制限されるのであるから、名誉毀損の被害者の保護に欠ける結果を生じるとはいえない。 c そうすると、民事訴訟法208条により、裁判所は、尋問事項に関する被告らの主張を真実と認めることができることになる。 (イ) そこで、民事訴訟法208条を適用することにより、本件記事の別紙6の各部分及び本件広告に係る摘示事実又はそれが論評の場合にはその前提とされている事実が真実であるとの被告らの主張が真実であると認めるべきか否かについて検討する。 a まず、別紙6の各部分の摘示事実又はそれが論評である場合にはその前提とされている事実、すなわち、被告らが真実であると主張している事実は、次のとおりであると認められる。 (a) 別紙6aは、「デートの誘いは断われない」との小見出しであり、原告会社内においては、原告Eが女性従業員をデートに誘うことがあり、女性従業員はその誘いを断ることができないか、少なくとも困難であるとの事実を摘示するものである。 (b) 別紙6bは、原告Eの昼食の誘いを断った女性従業員が、人事担当の女性役員に叱責されたとの事実を摘示するものである。 (c) 別紙6cは、原告会社には、原告Eの「お気に入り」の従業員とそうでない従業員がいるとの事実を前提に、「お気に入り」の女性従業員が結婚すれば、「お気に入り」から外されるとの事実を摘示するものである。 (d) 別紙6dは、原告Eが、食事の席で「ちょっと太ったんじゃない?」と女性従業員の腰に手を回したり、耳元で「キミ可愛いね」と囁いたりすることがしばしばあったとの事実を摘示するものである。 (e) 別紙6eの摘示事実の重要な部分は、原告Eが、「お気に入り」の女性従業員数名と昼食に出かけているとの事実である(なお、別紙6eの記載が原告らの社会的評価を低下させるのは、別紙6eの記載が上記事実を摘示することにより、原告Eが、社長としての地位を利用して自己の好みの女性従業員を昼食に連れ出しているという印象を与え、原告E及び原告会社のイメージを悪化させるからである。したがって、原告Eが仕事上の必要のある者やその時たまたま手の空いている者を昼食に誘っているにすぎないのであれば、それを原告Eが「お気に入り」の女性従業員を選んで誘っているように表現する別紙6eの記載は名誉毀損の成立を免れないし、他方、真実、原告Eが自己の「お気に入り」の女性従業員を昼食に誘っているというのであれば、それが厳密には「毎日」ではなく、あるいは誘うのが「秘書」ではなかったとしても、別紙6eの記載は全体として違法性を欠くものとみるのが相当である。)。 (f) 別紙6f及び本件広告のうち「化粧品会社甲社長『女子社員満喫生活』」との部分は、原告Eが、連日、女性従業員らと豪華な昼食に行っているとの事実を前提とする論評である(なお、「女子社員満喫生活」との論評は、原告Eが「お気に入り」の女性従業員とのみ昼食に行っているとか、女性従業員が半ば強制的に連れ出されているとかの事実を前提としなくても成立するというべきであるから、これらの事実は別紙6f及び本件広告のうちの前記部分の論評の前提となる事実には含まれない。)。 (g) 別紙6gのうち「お気に入りの女性社員のみに好待遇で報いる」との部分は、原告会社内において、原告Eが、自己の「お気に入り」の女性従業員のみに好待遇で報いているとの事実を摘示するものであり、具体的には、原告Eのお気に入りか否かによって、昇進(別紙6j)、給与(別紙6k)に影響するとの事実を指すものと認められる(なお、一般読者の通常の読み方を基準とすれば、原告吉田がお気に入りの女性従業員と昼食を共にしている(別紙6e)とか、原告Eのお気に入りによって配属が決められる(別紙6h)とかの事実は、「好待遇で報いる」ことに含まれるとは解されない。)。また、別紙6gのうち「“ハーレム生活ぶり”」との部分は、別紙6gの記載の直前にある「美人社員と日ごとゴージャスなランチをともにし」ている事実と、上記の「お気に入りの女性社員のみに好待遇で報いる」事実とを前提とする論評である。 (h) 別紙6hは、原告会社においては、女性志願者の容貌が良ければ採用試験で社長面接までは通過することができ、美人は原告会社本社の秘書課、人事、宣伝等の社長室直属の部署に配属されるとの事実を摘示するものである。 (i) 別紙6iは、業務に関係がないのに海外出張に同行した従業員がいる、出発前には支度金がもらえる、往復の飛行機はファーストクラスである、現地では10万円から20万円の小遣いが手渡されるとの事実を摘示するものである。 (j) 別紙6jのうち、「“したい放題”の社長のこと」までの部分は、本件記事のうちこの部分より前に記載された事実、特に、原告Eがお気に入りの女性従業員を昼食に連れ出していること、採用及び配属を顔で決めていること(別紙5h)、無関係な従業員を海外出張に同行させていること(別紙5i)などの事実を前提とした論評であり、「お気に入りか否かが、当然、昇進に直結する」との部分は、原告会社では、原告Eのお気に入りか否かが昇進に影響しているとの事実を摘示するものである。 (k) 別紙6kは、原告会社では、半年ごとに、給与の3か月分にお気に入り度を加味したボーナスが出る、すなわち、原告Eのお気に入りか否かで賞与の額が左右されるとの事実を摘示するものである。 (l) 別紙6lは、原告Eが「女は妊娠するとメスになる。メスと母は使い物にならないから要らない」との持論を抱いているとの事実を摘示するものである。 (m) 別紙6mは、女性従業員が妊娠を報告したら、退職願を書くように原告Eから直接迫られたとの事実を摘示するものである。 (n) 別紙6nは、原告会社においては、ストレスから体調を崩し、ニキビや肌荒れに悩む女性従業員が多いとの事実を摘示するものである。 b ところで、尋問事項書は、できる限り、個別的かつ具体的に記載しなければならない(民事訴訟規則107条2項)とされているにもかかわらず、被告らの提出した原告Eの尋問事項は、別紙7のとおりであって、尋問事項のうち、「原告本人は、原告会社社員に対して、日頃、どのように接しているか」、「原告本人は、原告会社の女性社員に対して、日頃、どのように接しているか」、「その他、上記に関連する事項」との尋問事項は個別的かつ具体的であるということはできず、民事訴訟規則107条2項に反するものである。そして、尋問事項が民事訴訟規則107条2項に反していることによる不利益を原告らに負わせるのは相当ではないから、前記尋問事項に関しては、明らかにこの尋問事項に含まれると認められる事項に限って民事訴訟法208条を適用するのが相当である。 c 上記の見地に立って判断するに、別紙6aの摘示事実は、「原告本人は、原告会社の女性社員に対して、日頃、どのように接しているか」との尋問事項に、別紙6cの摘示事実は、「原告本人は、原告会社の女性社員に対して、日頃、どのように接しているか」との尋問事項に、別紙6dの摘示事実は、「原告本人は、原告会社の女性社員に対して、日頃、どのように接しているか」との尋問事項に、別紙6eの摘示事実の重要な部分は、「原告本人は、昼休みに社員を連れて昼食に行くことがあるか、その頻度はどのようなものか」及び「昼食に同行する社員は、誰がどのように決めるのか」との尋問事項に、別紙6f及び本件広告のうち「化粧品会社甲社長『女子社員満喫生活』」の論評の前提となる事実は、「原告本人は、昼休みに社員を連れて昼食に行くことがあるか、その頻度はどのようなものか」及び「昼食に同行する社員は、誰がどのように決めるのか」との尋問事項に、別紙6gの一部である「“ハーレム生活ぶり”」との論評の前提となる事実のうち、美人社員と日ごとゴージャスなランチをともにしていることは、「原告本人は、昼休みに社員を連れて昼食に行くことがあるか、その頻度はどのようなものか」及び「昼食に同行する社員は、誰がどのように決めるのか」との尋問事項に、別紙6iのうち、出発前に支度金がもらえること及び現地では10万円から20万円の小遣いが手渡されることは、「原告本人は、原告会社の女性社員に対して、日頃、どのように接しているか」との尋問事項に、別紙6jの一部である「“したい放題”の社長のこと」との論評の前提となる事実のうち、原告Eがお気に入りの女性従業員を昼食に連れだしていることは、「原告本人は、昼休みに社員を連れて昼食に行くことがあるか、その頻度はどのようなものか」及び「昼食に同行する社員は、誰がどのように決めるのか」との尋問事項に、別紙6lの摘示事実は、「原告本人は、どのような女性観を抱いているか」との尋問事項に、別紙6mの摘示事実は、「原告本人は、原告会社の女性社員に対して、日頃、どのように接しているか」との尋問事項にそれぞれ含まれると解するのが相当であるから、民事訴訟法208条により、これらの事実が真実であるとの被告らの主張は真実であると認める。 d したがって、別紙6のうちa、c、d、e、l、mはその摘示事実が重要な部分について真実であることの証明があったものであり、別紙6f及び本件広告のうち「化粧品会社甲社長『女子社員満喫生活』」の論評は、その前提としている事実が重要な部分について真実であることの証明があったものであり、「女子社員満喫生活」という語は揶揄的ではあるが、意見ないし論評としての域を逸脱したものとはいえないから、これらの記載はいずれも違法性を欠くものである。 イ 次に、本件記事の別紙6の各部分及び本件広告に係る摘示事実又はそれが論評の場合にはその前提とされている事実のうち、民事訴訟法208条が適用されると判断した事実以外の事実、すなわち、別紙6bの摘示事実、別紙6gの摘示事実ないし論評の前提となる事実のうち、原告Eが自己の「お気に入り」の女性従業員のみに好待遇で報いているとの事実、具体的には、原告Eのお気に入りか否かによって昇進(別紙6j)やボーナス(別紙6k)に影響するとの事実、別紙6hの摘示事実、別紙6iの摘示事実のうち、業務に関係がないのに海外出張に同行した従業員がいるとの事実及び往復の飛行機はファーストクラスであるとの事実、別紙6jの摘示事実ないし論評の前提となる事実のうち、採用及び配属を顔で決めているとの事実、無関係な従業員を海外出張に同行させているとの事実及び原告会社では原告Eのお気に入りか否かが昇進に影響しているとの事実、別紙6kの摘示事実、別紙6nの摘示事実を真実と認めることができるか、真実と認められない場合に、被告らがそれを信じたことにつき相当な理由があったといえるかについて検討する。 (ア) 別紙6bについて a 前記のとおり、被告Iは、元従業員Cから、同人自身の体験として、原告Eの昼食の誘いを、午後1時に打合せがあるので行けないと断ろうとしたことがあるが、人事担当の女性に「社長に誘われたら絶対に行かなければ駄目だ」と叱られて行ったことがあることを取材している。 しかし、証拠(甲13)よれば、原告会社においてはM某(以下「M」という。)が平成10年から人事本部部長、平成13年4月から人事担当の取締役を務めていることが認められ、他に人事担当の女性役員がいたことの証拠はないから、別紙6bの「人事担当の女性役員」とはMを指すものと思われるが、Mの陳述書(甲13)には、原告Eの昼食の誘いを断った女性従業員を叱り付けるようなことをしたことはない、そもそもMの仕事は面接であり、外部の人と会うことが多く、それ以外は机に向かっている時間が長いので、他の部署との接触は余り多くなく、フロアの違う社長や他の従業員が誰と昼食に行っているのか分からず、社長の昼食の誘いを従業員に強制して回るような余裕はない、Mを含め、社長から食事を誘われても断ることはよくあり、その場合は他の人を呼ぶだけのことである旨の陳述記載部分がある。 Mは体調不良との理由で証人として出頭することができず、上記陳述記載部分は反対尋問を経ているわけではないが、証人として出廷したLも、社長からの昼食の誘いを断ることはできるし、L自身も断ったことがあると供述し、また、別訴において証人となったJも、体調が悪いときや食欲がないとき、また午後に予定があるときや昼に他の課の者とのミーティングがあるときなどは、Jのほうから原告Eの昼食の誘いを断るときがある旨供述している(乙13)。 これらの供述や陳述に、被告Iが取材対象者である元従業員Cの氏名を明らかにしないため、取材内容の信用性を十分に吟味することができないことを併せ考えると、被告Iの上記取材の結果からただちに別紙6bの摘示事実が真実であると認めることはできず、他に上記事実が真実であると認めるに足りる証拠はない。 b そこで、さらに、被告らが摘示事実を真実であると信じたことについて相当な理由があったか検討する。 被告らは、元従業員Cを含む元従業員らからの取材の結果を信用したのは、第1に、元従業員らの話すそれぞれの話が非常に具体的であったこと、第2に、互いに他の者の供述を知らないでなされた元従業員らの供述が基本的に一致したことによると主張し、被告Iは、この主張に沿う供述をする。 確かに、別紙6bの摘示事実に関する元従業員Cの供述はそれなりに具体的であるし、元従業員Cの供述は、原告Eが女性従業員を誘って昼食に行っていることやその行き先、原告Eから直接退職を迫られた女性従業員がいることについて、元従業員Aの供述と一致していたことが認められる。 しかし、被告Iが取材した3名はいずれも中途退職した元従業員であるところ、一般的にいえば、中途退職者は、元の会社や上司に不満を抱いていることも少なくないし、虚偽の供述をしても不利益を受けるおそれがないため、虚偽の供述をする可能性もあることから、その供述の信用性は慎重に吟味しなければならないと考えられる。 しかるところ、被告Iは、元従業員Cについては、退職の理由も聞いていない(被告I)。 また、元従業員らの供述全般について、被告I及びグラビア班により原告Eが女性従業員らとリムジンで昼食に出て行くことを確認したほかは、本件記事等執筆までに客観的な裏付けが得られた形跡はない。 さらに、情報の真偽を確認するにあたっては、本人に対し事実確認のための十分な努力をすることも必要であると考えられるところ、前記のとおり、被告Iは、5月17日に原告Eに対し、18日にはKに対し、それぞれ原告Eへの取材を電話で申し入れ、5月21日の締切当日になって、原告会社に対し、当日中に原告Eと面会したい旨記載された書面、6項目について回答を求める旨の書面をファックスで送っているが、別紙6bの摘示事実に関して、Mであれ誰であれ「人事担当の女性役員」に取材申込みはしていない(被告石井)。 そして、原告らに対する取材申込みも、具体的な取材対象事実を明らかにせずに電話で原告Eとの面会を求めるにとどまったり、締切当日に面会や回答を求めたりといったものであって、被告Iは、社外秘である原告会社の住所録一覧表を利用した被告Iの取材方法に対して原告E及び原告会社が異議を唱えていた(甲6、被告I、証人K)にもかかわらず、原告Eの理解を得る努力も全くせず、一方的に取材に応じるよう求めていたにすぎず、原告らに十分な反論の機会を与えたものとはいいがたい(被告Iは、例えば22日や23日だったら取材に応じるとの対応であれば記事の掲載は1週間延びたと思うと供述するが、原告らにとってはそのようなことは知り得ないのであり、本来、原告らの対応を待ってから締切を決めるべきものである。)。 そうすると、被告らが別紙6bの摘示事実を真実と信じたことについて相当な理由があったと認めることはできない。 c したがって、別紙6bの記載については、違法性及び被告らの故意・過失は否定されない。 (イ) 別紙6gについて a 原告Eが自己の「お気に入り」の女性従業員のみに好待遇で報いているとの事実、具体的には、原告Eのお気に入りか否かによって昇進(別紙6j)やボーナス(別紙6k)に影響するとの事実については、後記のとおり、いずれも真実であると認めることはできないし、被告らが真実であると信じたことについて相当な理由があったと認めることもできない。 b 「ハーレム生活ぶり」との論評は、「美人社員と日ごとゴージャスなランチをともにしている」事実と「お気に入りの女性社員のみに好待遇で報いる」事実の双方を前提としてなされているものであるから、「美人社員と日ごとゴージャスなランチをともにしている」事実については前記のとおり真実であることの証明があったとしても、上記論評の前提とした事実が重要な部分について真実であることの証明があったということはできないし、被告らが真実であると信じたことについて相当な理由があったと認めることもできない。 c したがって、別紙6gの論評については、違法性及び被告らの故意・過失は否定されない。 (ウ) 別紙6hについて a(a) 被告Iは、別紙6hについては人事関係の部署にいたという元従業員Cから取材した、原告会社のホームページでは部門別に募集しているが、元従業員Cから、実態は必ずしもそうではなく、顔を理由に、ある部署で募集したのに別の部署に回された例を2例、個別に名前を挙げて説明された、元従業員A及び元従業員Cから、本社の社長室の下の部門については最終的に原告Eが面接すると聞いたと供述し、Jは、別訴において、証人として、広報を希望して応募したが、面接の際、原告Eから、秘書の仕事に就くつもりはありますかと打診され、それに応じたため秘書課に配属されたと供述している(乙13)。 (b) しかし、被告Iの上記供述は伝聞であって、被告Iは、元従業員A及び元従業員Cの氏名を明らかにしないため、元従業員A及び元従業員Cの説明内容の信用性を十分に吟味することができない。 また、別の部署に回されたという2名について、元従業員Cの供述以外に裏付けがあるわけでもない。 そして、Jの供述によっても、Jが秘書課に配属された理由が適性等ではなく容貌であったとまで認めることはできず、Jは帝京女子短期大学の秘書科を卒業しているというのである(乙13)から、むしろ適性が理由であった可能性も十分あり得る。 (c) 一方、証人Kは、Jが入社した平成6年ころは原告Eが面接を行い、被面接者の適性を考慮して部門を超えた採用をすることがあったが、現在は社長面接はしていないと供述し、同人作成の報告書(甲18)には、平成5年頃以降、2次面接は原告E又はN常務取締役(以下「N」という。)が行っていたが、会社規模の拡大とともに社長面接の頻度は減少し、平成8年10月からは、翻訳・通訳事業部の2次面接はLが、平成10年頃からは翻訳・通訳事業部以外の部署の2次面接もNが行うことになり、特別な事情がある場合を除いて社長面接は行われなくなった、平成13年4月以降は、2次面接はMが行い、原告Eは書面による最終承認を行うのみであるとの記載がある。そして、L及びMの陳述書(甲13、17)には同旨の陳述記載部分があり、証人Lも同旨の供述をするほか、Mの陳述書(甲13)には、採用の際の社長面接は、新事業立ち上げなどで社長が直々にスタッフ採用にも関与し、意向を反映させたいと考えるときなどに最終面接として行われることがあるだけで、ほとんどの場合Nが、最近ではMが最終面接を行い、書面で原告Eに報告しているが、原告EがNないしMの判断を覆すようなことはない、採用は筆記試験に加え、人事担当と配属部署のヘッドが面接をして業務への適性を見て行われ、美人だから採用するなどということはないとの陳述記載部分がある。 (d) 上記(b)及び(c)に記載した事情に照らすと、上記(a)の被告Iの供述及びJの別訴における証人としての供述からただちに別紙6hの摘示事実を真実と認めることはできず、他に上記事実が真実であると認めるに足りる証拠はない。 なお、証人Kは、原告会社の子会社である会員制クラブに勤務していた女性7、8名が原告会社に採用されていると供述しているが、そのような事実があったとしても、そのことからただちに同人らが容貌のみを理由に採用されたとまで推認することができないことはいうまでもない。 b 次に、被告らが別紙6hの摘示事実を真実と信じたことにつき相当な理由があったといえるか検討する。 前記のとおり、被告Iは、人事関係の部署にいたという元従業員Cから、顔を理由に、ある部署で募集したのに別の部署に回された例を2例、個別に名前を挙げて説明されたと供述している。 しかし、被告Iは、ある部署で募集した人を別の部署に回すとすれば、部署間の調整が必要になるが、その点について元従業員Cに確かめることもなく、また元従業員Cの退職理由も聞いていないのであるし、その実名を聞いたという2名に対して取材する等の裏付けをとった形跡もない。 また、被告Iは、原告会社の人事部に対して取材を申し込んだ形跡もないし、原告Eらに対する取材申込みも、具体的な取材対象事実を明らかにせずに電話で原告Eとの面会を求めるにとどまったり、締切当日に面会や回答を求めたりといったものであって、原告らに十分な反論の機会を与えたものとはいいがたい。 そうすると、被告らが別紙6hの摘示事実を真実と信じたことについて相当な理由があったと認めることはできない。 c したがって、別紙6hの記載については、違法性及び被告らの故意・過失は否定されない。 (エ) 別紙6iについて a(a) 被告Iが、元従業員Aからはイタリアでの仕入に同行した仕入とは関係のない部門の経理の同僚がいたことを、元従業員Cからはスペインでのオリーブの買付やパリでのインナーウェアの仕入に同行した買付や仕入とは関係のない部署の同僚がいたことを取材したことは前記のとおりであり、証人Kは、平成11年か12年ころ、原告Eがロンドンからイタリア、パリ、ロンドンと経由するインナーウェアの買付に行く際に、経理の女性従業員を同行したことがあると供述する。これらによれば、まず、パリでのインナーウェアの仕入に経理の女性従業員が同行したことが認められる。 そして、経理の女性従業員が同行した理由について、証人Kは、出張旅費の精算を担当する人間であったことを挙げ、また、記帳役みたいなものだろうとも供述するが、出張旅費の精算は帰国してからでもできることであるし、記帳は経理の人間でなくてもできるから、経理の者を同行させる理由として合理的なものとはいいがたい。また、証人Kは、買い付けるインナーウェアが20代をターゲットにしたものであったところ、インナーウェア事業部にはそれよりも年上の人間しかいなかったことから、若い人の感覚を見るために同行させたとも供述するが、インナーウェアを買い付けて販売しようというときに、急遽、無関係の部署の人間を同行させて意見を聞いて選ぶというのは、いささか不自然である。 そうすると、被告Iの取材結果のとおり、別紙6iの摘示事実うち、業務に関係がないのに海外出張に同行した従業員がいるとの事実は、真実であると認めるのが相当である。 (b) 甲第13号証及び被告I本人尋問の結果によれば、海外旅行の往復の飛行機がファーストクラスであることは真実と認められる。 b したがって、別紙6iの摘示事実についてはいずれも真実であることの証明があったというべきであるから、別紙6iの記載は違法性を欠く。 (オ) 別紙6jについて a 前記のとおり、採用及び配属を顔で決めているとの事実(別紙6h)については真実であるとは認められず、また、被告らが真実と信じたことについて相当な理由があったとも認められないが、原告Eがお気に入りの女性従業員を昼食に連れ出しているとの事実(別紙6e)及び無関係な従業員を海外出張に同行させているとの事実(別紙6i)については、真実であると認められる。 「したい放題」との論評は、採用及び配属を顔で決めているとの事実を前提にしなければ成り立たないものではなく、お気に入りの女性従業員を昼食に連れ出し、無関係な従業員を海外出張に同行させているとの事実を前提とするだけでも成立するというべきであるから、「したい放題」との論評の前提としている事実はその重要な部分について真実であることの証明があったと認められ、また、「したい放題」との論評は、揶揄的ではあるが、人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものとはいえない。 b 次に「お気に入りか否かが、当然、昇進に直結する」との摘示事実の真実性について検討する。 被告Iは、元従業員Cから、原告会社では、原告Eの好き嫌いによって昇進が決まったり、あるいは給料の額が決まったり、能力とは別のところでの評価で会社が動いている、原告会社が考査表を利用して人事考課を行っていることは聞いていたが、元従業員A及び元従業員Cからそれは有名無実であり、主に原告会社本社の中では原告Eの気に入るかどうかで評価が決められていると聞いたと供述し、本件記事にある「お気に入りだと、中途入社から半年で係長になることもあります。逆に、理由のない降格人事もある。仕事の能力が基準とは思えない」との発言(本件記事37頁第1段)をしたとされる「同前」すなわち「元社員」は、いったん元従業員Bとし、次に元従業員Aとした後、最終的には元従業員Cだとし、元従業員Cから上記の供述を聞いたとの趣旨の供述をしている。 しかし、上記供述は伝聞であって、被告Iは、元従業員Cらの氏名を明らかにしないため、原供述の信用性を十分に吟味することができない。 また、中途入社から半年で係長になることがあるとか、理由のない降格人事があるとかの事実について、これらを裏付けるような証拠もない。 なお、乙第9号証は、原告会社の関連会社社長ら4名を、「役職者でありながら1年以上にわたって社長への業務報告を怠っており、当社の役職者としては著しく不適格であると判断した。」などとして解雇した旨の通達であるが、当該解雇がただちに理由のない降格人事であるということはできないし、仮に当該解雇が不当なものであったとしても、これによってお気に入りか否かが昇進に直結するとの事実が立証されるものではないから、元従業員Cの供述の信用性を補強するものとはいえない。 ところで、K、L及びMは、証人尋問あるいは陳述書において、原告会社では人事評価のために考査表を利用しているとの供述ないし陳述をしている(甲12、13、17、証人K、証人L)が、証人K及び証人Lの供述からすれば、これは賞与の査定にのみ関係するようであり、原告会社における昇進が何に基づいて決定されるのかについて明確な証拠はない。 しかし、証人Lは、女性従業員の人事が原告Eのお気に入り度に応じて恣意的に決められているようなことはないと供述し、Kの陳述書(甲12)には、「お気に入りだと中途入社から半年で係長、逆に理由のない降格人事」とは具体的に誰を指しているかも示さず、作り話を書いているといわざるを得ないとの趣旨の陳述記載部分があり、また、原告Eの陳述書(甲11)及びMの陳述書(甲13)にも、本件記事には、給与や地位に関し、お気に入り社員に特別な待遇を行うなどと書かれているが、そのような事実は一切ない旨の陳述記載部分がある。 これらの供述ないし陳述に照らすと、被告Iの上記供述をただちに採用することはできず、他にお気に入りか否かが昇進に直結するとの事実が真実であると認めるに足りる証拠はない。 c 次に、被告らがお気に入りか否かが昇進に直結するとの事実を真実と信じたことに相当な理由があったといえるか検討する。 被告Iが供述する取材の内容は前記のとおりであって、原告Eの好き嫌いによって昇進や給料の額が決まった具体例、原告Eのお気に入りであったために中途入社から半年で係長になったり、理由のない降格人事をされた者の氏名を聞くなど、元従業員Cの説明の信用性を確認するための努力をしたか不明であるし、元従業員Cの供述について裏付けを得るなどの努力をした形跡もない。また、前記のとおり、被告Iは、元従業員Cの退職理由も聞いていないし、原告会社の人事部に対して取材を申し込んだ形跡もなく、原告Eらに対する取材申込みも、具体的な取材対象事実を明らかにせずに電話で原告Eとの面会を求めるにとどまったり、締切当日に面会や回答を求めたりといったもので、原告らに十分反論の機会を与えたものとはいいがたい。 そうすると、被告らがお気に入りか否かが昇進に直結するとの事実を真実と信じたとことについて相当な理由があったと認めることはできない。 d したがって、別紙6jの記載のうち「“したい放題”の社長のこと」までの部分は、その前提としている事実が重要な部分につき真実であるとの証明があったものといえ、違法性を欠くものであるが、「お気に入りか否かが、当然、昇進に直結する」との部分については、違法性及び被告らの故意・過失は否定されない。 (カ) 別紙6kについて a 被告Iは、元従業員Cから、アルバイトから入って、最初のボーナスが90万円出た者がいると聞いた、はっきり覚えてはいないが、お気に入り度を加味したボーナスが出た者2、3人の名前を聞いた、原告会社が考査表を利用して人事考課を行っていることは聞いていたが、元従業員A及び元従業員Cからそれは有名無実であり、主に原告会社本社の中では原告Eの気に入るかどうかで評価が決められていると聞いたと供述している。 なお、被告Iは、元従業員Cから、基本給に美人手当がプラスされると聞いたとも供述しているが、別紙6kはボーナスについての記載であるから、元従業員Cからの美人手当に関する上記取材内容は別紙6kの摘示事実を立証するものではない。 そして、元従業員Cのボーナスに関する上記供述も伝聞であって、被告Iは、元従業員Cらの氏名を明らかにしないため、原供述の信用性を十分に吟味することができない。 また、アルバイトから入って最初のボーナスが90万円であったとかの事実について、これを裏付けるような証拠もない。 さらに、K、L、Mは、その証人尋問あるいは陳述書において、概要、原告会社では、賞与の額は、部署ごとに決められた賞与月数に、上司及び部下から提出された考査表により計算された評価と勤怠(勤務状況)を考慮要素としてNが賞与の額を計算し、原告Eが最終的に決裁する、原告Eの好悪で賞与の額が左右されるようなことはないとの供述ないし陳述をしている(甲12、13、17、証人K、証人L)。 また、証人Kは、本社勤務であれば半年後の賞与月数は3.5か月分であり、90万円を3.5で割れば25、6万円であるから、入社半年後で90万円のボーナスは普通のことであるとも供述する。 これらの供述ないし陳述に照らすと、被告Iの上記供述をただちに採用することはできず、他に別紙6kの摘示事実が真実であると認めるに足りる証拠はない。 b 次に、被告らが別紙6kの摘示事実を真実と信じたことに相当な理由があったといえるか検討する。 被告Iは、前記のとおり元従業員Cから取材はしたものの、それについて裏付けを得るなどの努力をした形跡はない。また、前記のとおり、被告Iは、元従業員Cの退職理由も聞いていないし、原告会社の人事部に対して取材を申し込んだ形跡もなく、原告Eらに対する取材申込みも、具体的な取材対象事実を明らかにせずに電話で原告Eとの面会を求めるにとどまったり、締切当日に面会や回答を求めたりといったもので、原告らに十分反論の機会を与えたものとはいいがたい。 そうすると、被告らが別紙6kの摘示事実を真実と信じたことについて相当な理由があったと認めることはできない。 c したがって、別紙6kの記載については、違法性及び被告らの故意・過失は否定されない。 (キ) 別紙6nについて 前記のとおり、被告Iは、元従業員Aから、同人が原告Eのセクハラ的なことや恣意的な人事によるストレスから体調を崩し、にきびや肌荒れに悩んだ、周りにもそのような従業員が多かったことを取材している。 被告Iは、原供述者である元従業員Aの氏名を明らかにしないため、原供述の信用性を十分に吟味することができないとはいえ、これまで判示してきた原告会社内の状況(民事訴訟法208条を適用することにより、真実であると認められた事実を含む。)によれば、少なからぬ女性従業員がストレスを感じていることは容易に推認できるから、被告Iの上記取材結果のとおり、別紙6nの摘示事実は真実であると認めるのが相当である。 したがって、別紙6nの記載は違法性を欠く。 3 争点(4)(損害及び謝罪広告)について (1) 上記によれば、本件記事等のうち、違法性及び被告らの故意・過失が否定されないのは別紙6のb、gのうち、原告Eが自己のお気に入りの女性従業員のみに好待遇で報いているとの部分、h、jのうち、お気に入りか否かが、当然、昇進に直結するとの部分及びkの各部分である。そして、これらの部分は、記者である被告Iが執筆し、あるいは被告Iの原稿に基づいて作成され、編集長である被告Hがこれを掲載することを容認して本件週刊誌に掲載したものであるから、被告らは共同不法行為として責任を負うものである。 (2) 原告会社は化粧品販売を主たる業務とする会社であって、女性に対するブランドイメージが重要な価値を有するものであり、原告会社内においてセクハラまがいの行為が行われて、社長の好みに基づく不公正な人事が行われているなどとした本件記事等によって、その社会的評価に多大な被害を受けたであろうことは想像に難くない。 しかし、他方、合計7億円という巨額な損害を主張しておきながら、原告会社代表者は裁判所の決定を無視して正当な理由なく出廷しないなど、権利保護や名誉回復を求める者としては疑問といわざるを得ない訴訟態度を示しており、このことは、慰謝料算定にあたっても考慮するのが相当である。 これらを総合考慮すると、本件記事等全体により原告会社の受けた損害は、500万円を下らないとみることができる(なお、原告らは、本件記事等により原告会社の売上に悪影響が出ることが予想されるから、原告会社の慰謝料としては原告会社の平成12年度の売上高の1%相当額である6億5000万円が相当である旨主張するが、本件記事等が掲載されてから1年以上が経過しているにもかかわらず、本件記事等掲載後原告会社の売上がどのように変化したのかを示す証拠は一切提出されていないから、原告らの前記主張は採用しない。)。 しかし、前記のとおり、本件記事等のうち多くの部分については違法性を欠くものであることを考えると、本件記事等のうち違法性及び被告らの故意・過失が否定されない部分による損害は100万円とみるのが相当である。 これにつき相当な弁護士費用としては10万円が相当である。 (3) 原告Eは、原告会社の社長として大きな社会的評価を有していたところ、原告Eがその女性従業員にセクハラまがいの行為をしているなどとする本件記事等によって、その社会的評価に多大な被害を受けたであろうことは想像に難くない。 しかし、他方、合計3億円という巨額な損害を主張しておきながら、裁判所の決定を無視して正当な理由なく出廷しないなど、権利保護や名誉回復を求める者としては疑問といわざるを得ない訴訟態度を示しており、このことは、慰謝料算定にあたっても考慮するのが相当である。 これらを総合考慮すると、本件記事等全体により原告Eの受けた損害は、250万円を下らないとみることができる。 しかし、前記のとおり、本件記事等のうち多くの部分については違法性を欠くものであることを考えると、本件記事等のうち違法性及び被告らの故意・過失が否定されない部分による損害は50万円、相当な弁護士費用は10万円とみるのが相当である。 (4) なお、別紙6のうち違法性及び被告らの故意・過失が否定されない部分による名誉毀損について、本件記事等のうち多くの部分は違法性を欠くものであることなどを考えると、原告らの名誉回復のために謝罪広告が必要であるとまでは認められない。 4 よって、原告らの本訴請求は、原告会社が、被告ら各自に対し金110万円、原告Eが、被告ら各自に対し金60万円並びにそれぞれに対する被告会社及び被告Hについては同被告らに対する訴状送達の日の翌日である平成13年6月5日から、被告Iについては同被告に対する訴状送達の日の翌日である同月6日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるが、その余はいずれも理由がない。 なお、訴訟費用の負担については、認容額が原告らの請求額の約0.15%ないし0.2%であること等を考慮し、その全額を原告らに負担させることとする。 東京地方裁判所民事第38部 裁判長裁判官 北澤晶 裁判官 伊藤繁 裁判官 西村康夫 (別紙1) 謝罪広告 平成 年 月 日 東京都港区ab丁目c番d号 株式会社D 代表者代表取締役 E殿 東京都港区ab丁目c番d号 E殿 東京都千代田区i町j番k号 株式会社F 代表者代表取締役G 東京都千代田区i町j番k号 「週刊乙」編集長H 東京都千代田区i町j番k号(就業場所) 「週刊乙」記者I 平成13年5月31日号の週刊乙に、侮蔑的な表現を用い、貴殿および貴社が女性従業員に対する差別発言や不公正な人事を行っているかのよう嘘偽事実を記載して頒布し、貴殿および貴社の名誉を著しく傷つけ、多大な迷惑を及ぼしたことを心から深く謝罪いたします。 (別紙2) 1 謝罪広告は横書きによるものとし、その大きさは4段、横12センチメートル とする。 2 年月日は謝罪広告掲載の日を記載する。 3 見出しおよび原被告の氏名、肩書きは9Pゴシック、その他の文字は9P明朝 とする。 4 掲載場所は社会面広告欄とする。 (別紙3) 謝罪広告 平成13年5月31日号の当誌に、侮蔑的な表現を用い、貴殿および貴社が女性従業員に対する差別発言や不公正な人事を行っているかのよう嘘偽事実を記載して頒布し、貴殿および貴社の名誉を著しく傷つけ、多大な迷惑を及ぼしたことを心から深く謝罪いたします。 平成 年 月 日 東京都千代田区i町j番k号 株式会社F 代表者代表取締役G 東京都千代田区i町j番k号 「週刊乙」編集長H 東京都千代田区i町j番k号(就業場所) 「週刊乙」記者I 東京都港区ab丁目c番d号 株式会社D 代表者代表取締役E殿 東京都港区ab丁目c番d号 E殿 (別紙4) 1 謝罪広告は縦書きによるものとし、その大きさは横5分の2とする。 2 年月日は謝罪広告掲載の日を記載する。 3 見出しおよび原被告の氏名、肩書きは9Pゴシック、その他の文字は9P明朝 とする。 4 掲載場所は記事欄とする。 (別紙5) 週刊乙平成13年5月31日号記事 省略 (別紙6) a デートの誘いは断われない(36頁第2、第3段中ほどの小見出し) b 「あるとき、午後一時に打合せがあるからと、ランチのお誘いを断わった女性がいたんです。すると、人事担当の女性役員が飛んできて、『この会社は社長の会社なの! 何の用事があっても行かなきゃいけないの!』と叱りつけられていました」(36頁第2段中見出し左側) c 勿論、お気に入りの社員が結婚でもしようものなら、「他人のモノになるのか」と、お気に入りから外される。(37頁第3段5行目) d セクハラまがいの行為もあった、という。「食事の席で『ちょっと太ったんじゃない?』なんて腰に手を回してきたり、耳元で『キミ可愛いね』って囁くようなことは、ちょくちょくありました」(37頁第3段20行目) e 「社長は毎日、お気に入りの女子社員数人とゴージャスランチに出掛けます。秘書が内線電話で誘って、少しでも遅れると社長の機嫌が悪くなるので、ご指名の子の仕事は、誰かが途中で代わるほど、全社員が気をつかっています」(195頁18行目) f しかしこれはほんの一部。社長の「女子社員満喫生活」は、まだまだ続くのである(195頁33行目) g お気に入りの女性社員のみに好待遇で報いる“ハーレム生活ぶり”(36頁リード部分) h 「『入社試験の合否と配属は顔で決まる』というのは、すでに定説となっています。ルックスがよければ、採用試験で社長面接まではいける。本社社屋の中で秘書課、人事、宣伝などの部署は社長室直属となっていますが、美人はそこに配属されるんです」(36頁第4段1行目) i 「海外出張にも、同行します。その子の業務に、何の関係がなくても。出発前にはパスポートやスーツケース用にお支度金が貰えるし、往復の飛行機はファーストクラス、現地では十万円から二十万円のお小遣いが手渡されるそうです」(36頁第4段17行目) j 何せこれだけ“したい放題”の社長のこと、お気に入りか否かが、当然、昇進に直結する(36頁第4段31行目) k 半年ごとに、三ヵ月分にお気に入り度を加味したボーナスも出る。(37頁第1段6行目) l 「女は妊娠するとメスになる。メスと母は使い物にならないから要らない」というのが社長の持論。(37頁第3段11行目) m 妊娠を報告したら、退職願を書くように社長から直接迫られた、という社員の証言もある。(37頁第3段14行目) n 万事こんなふうだから、社内の雰囲気は察しがつこうというもの。ストレスから体調を崩し、ニキビや肌荒れに悩む女性も少なくないという。(37頁第4段6行目) |
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