判例全文 | ||
【事件名】国語副教材への作品無断使用事件(啓林館・文理) 【年月日】平成14年12月13日 東京地裁 平成12年(ワ)第17019号 著作権侵害差止等請求事件 (口頭弁論終結の日 平成14年8月30日) 判決 原告 A 原告 B 原告 C 原告 D 原告 E 原告 F 原告 G 原告ら訴訟代理人弁護士 本田俊雄 同 田中宏明 同 桐生貴央 同 金子悦司郎 原告ら訴訟復代理人弁護士 森哲也 同 國吉歩 被告 株式会社新興出版社啓林館 訴訟代理人弁護士 田倉整 訴訟復代理人弁護士 田倉保 被告 株式会社文理 訴訟代理人弁護士 城戸勉 主文 1 被告株式会社新興出版社啓林館は、原告Aに対し金52万5143円、原告Bに対し金232万8349円、原告CことCに対し金6万3204円、原告Dに対し金13万6718円、原告Fに対し金61万7451円、原告Eに対し金52万9820円、原告Gに対し金36万7221円及びこれらに対する別紙遅延損害金一覧表記載の金員を支払え。 2 被告株式会社文理は、原告Aに対し金26万3572円、原告Bに対し金161万7966円、原告CことCに対し金2万5394円、原告Dに対し金1万5118円及びこれらに対する別紙遅延損害金一覧表記載の金員を支払え。 3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用はこれを5分し、その1を被告らの負担とし、その余を原告らの負担とする。 5 この判決は、第1項及び第2項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 主位的請求 (1) 被告株式会社新興出版社啓林館は、 ア 原告Aに対し、金997万3842円及び 内金41万4564円に対する昭和62年3月31日から支払済みまで 内金41万4564円に対する昭和63年3月31日から支払済みまで 内金41万4564円に対する平成元年3月31日から支払済みまで 内金41万4564円に対する平成2年3月31日から支払済みまで 内金41万4564円に対する平成3年3月31日から支払済みまで 内金41万4564円に対する平成4年3月31日から支払済みまで 内金41万4564円に対する平成5年3月31日から支払済みまで 内金41万4564円に対する平成6年3月31日から支払済みまで 内金41万4564円に対する平成7年3月31日から支払済みまで 内金41万4564円に対する平成8年3月31日から支払済みまで 内金78万7323円に対する平成9年3月31日から支払済みまで 内金50万4155円に対する平成10年3月31日から支払済みまで 内金20万3250円に対する平成11年3月31日から支払済みまで 内金18万4850円に対する平成12年3月31日から支払済みまで 内金85万0957円に対する平成13年3月31日から支払済みまで 内金329万7667円に対する平成14年3月31日から支払済みまで イ 原告Bに対し、金3185万3017円及び 内金8万1039円に対する昭和57年3月31日から支払済みまで 内金8万1039円に対する昭和58年3月31日から支払済みまで 内金8万1039円に対する昭和59年3月31日から支払済みまで 内金8万1039円に対する昭和60年3月31日から支払済みまで 内金8万1039円に対する昭和61年3月31日から支払済みまで 内金117万7801円に対する昭和62年3月31日から支払済みまで 内金117万7801円に対する昭和63年3月31日から支払済みまで 内金117万7801円に対する平成元年3月31日から支払済みまで 内金117万7801円に対する平成2年3月31日から支払済みまで 内金117万7801円に対する平成3年3月31日から支払済みまで 内金117万7801円に対する平成4年3月31日から支払済みまで 内金146万6435円に対する平成5年3月31日から支払済みまで 内金146万6435円に対する平成6年3月31日から支払済みまで 内金146万6435円に対する平成7年3月31日から支払済みまで 内金146万6435円に対する平成8年3月31日から支払済みまで 内金299万6947円に対する平成9年3月31日から支払済みまで 内金215万3904円に対する平成10年3月31日から支払済みまで 内金65万8891円に対する平成11年3月31日から支払済みまで 内金50万6310円に対する平成12年3月31日から支払済みまで 内金1219万9224円に対する平成13年3月31日から支払済みまで ウ 原告CことCに対し、金123万7960円及び 内金35万1788円に対する平成9年3月31日から支払済みまで 内金19万3900円に対する平成10年3月31日から支払済みまで 内金5万9846円に対する平成11年3月31日から支払済みまで 内金3万9876円に対する平成12年3月31日から支払済みまで 内金59万2550円に対する平成13年3月31日から支払済みまで エ 原告Dに対し、金342万7051円及び 内金8万2554円に対する昭和62年3月31日から支払済みまで 内金8万2554円に対する昭和63年3月31日から支払済みまで 内金8万2554円に対する平成元年3月31日から支払済みまで 内金8万2554円に対する平成2年3月31日から支払済みまで 内金8万2554円に対する平成3年3月31日から支払済みまで 内金8万2554円に対する平成4年3月31日から支払済みまで 内金8万2554円に対する平成5年3月31日から支払済みまで 内金8万2554円に対する平成6年3月31日から支払済みまで 内金8万2554円に対する平成7年3月31日から支払済みまで 内金8万2554円に対する平成8年3月31日から支払済みまで 内金31万1171円に対する平成9年3月31日から支払済みまで 内金13万9082円に対する平成10年3月31日から支払済みまで 内金4万5765円に対する平成11年3月31日から支払済みまで 内金5万5458円に対する平成12年3月31日から支払済みまで 内金205万0035円に対する平成13年3月31日から支払済みまで オ 原告Fに対し、金951万8567円及び 内金47万3441円に対する昭和62年3月31日から支払済みまで 内金47万3441円に対する昭和63年3月31日から支払済みまで 内金47万3441円に対する平成元年3月31日から支払済みまで 内金47万3441円に対する平成2年3月31日から支払済みまで 内金47万3441円に対する平成3年3月31日から支払済みまで 内金47万3441円に対する平成4年3月31日から支払済みまで 内金47万3441円に対する平成5年3月31日から支払済みまで 内金47万3441円に対する平成6年3月31日から支払済みまで 内金47万3441円に対する平成7年3月31日から支払済みまで 内金47万3441円に対する平成8年3月31日から支払済みまで 内金77万7698円に対する平成9年3月31日から支払済みまで 内金55万6600円に対する平成10年3月31日から支払済みまで 内金22万6745円に対する平成11年3月31日から支払済みまで 内金14万5952円に対する平成12年3月31日から支払済みまで 内金307万7162円に対する平成13年3月31日から支払済みまで カ 原告Eに対し、金717万9379円及び 内金13万4275円に対する昭和57年3月31日から支払済みまで 内金13万4275円に対する昭和58年3月31日から支払済みまで 内金13万4275円に対する昭和59年3月31日から支払済みまで 内金13万4275円に対する昭和60年3月31日から支払済みまで 内金13万4275円に対する昭和61年3月31日から支払済みまで 内金17万3051円に対する昭和62年3月31日から支払済みまで 内金17万3051円に対する昭和63年3月31日から支払済みまで 内金17万3051円に対する平成元年3月31日から支払済みまで 内金17万3051円に対する平成2年3月31日から支払済みまで 内金17万3051円に対する平成3年3月31日から支払済みまで 内金17万3051円に対する平成4年3月31日から支払済みまで 内金20万8478円に対する平成5年3月31日から支払済みまで 内金20万8478円に対する平成6年3月31日から支払済みまで 内金20万8478円に対する平成7年3月31日から支払済みまで 内金20万8478円に対する平成8年3月31日から支払済みまで 内金46万9108円に対する平成9年3月31日から支払済みまで 内金20万0157円に対する平成10年3月31日から支払済みまで 内金7万3692円に対する平成11年3月31日から支払済みまで 内金4万4718円に対する平成12年3月31日から支払済みまで 内金384万8111円に対する平成13年3月31日から支払済みまで キ 原告Gに対し、金135万8710円及び 内金8万2095円に対する平成9年3月31日から支払済みまで 内金3万4769円に対する平成10年3月31日から支払済みまで 内金6534円に対する平成11年3月31日から支払済みまで 内金3176円に対する平成12年3月31日から支払済みまで 内金123万2136円に対する平成13年3月31日から支払済みまで それぞれ年5分の割合による金員を支払え。 (2) 被告株式会社文理は、 ア 原告Aに対し、金148万9257円及び 内金2万3398円に対する平成7年3月31日から支払済みまで 内金2万3398円に対する平成8年3月31日から支払済みまで 内金2万2437円に対する平成9年3月31日から支払済みまで 内金6万3525円に対する平成10年3月31日から支払済みまで 内金4万2595円に対する平成11年3月31日から支払済みまで 内金3万0755円に対する平成12年3月31日から支払済みまで 内金14万0807円に対する平成13年3月31日から支払済みまで 内金114万2342円に対する平成14年3月31日から支払済みまで イ 原告Bに対し、金2085万9661円及び 内金40万6791円に対する昭和57年3月31日から支払済みまで 内金40万6791円に対する昭和58年3月31日から支払済みまで 内金40万6791円に対する昭和59年3月31日から支払済みまで 内金40万6791円に対する昭和60年3月31日から支払済みまで 内金40万6791円に対する昭和61年3月31日から支払済みまで 内金86万4696円に対する昭和62年3月31日から支払済みまで 内金86万4696円に対する昭和63年3月31日から支払済みまで 内金86万4696円に対する平成元年3月31日から支払済みまで 内金86万4696円に対する平成2年3月31日から支払済みまで 内金86万4696円に対する平成3年3月31日から支払済みまで 内金86万4696円に対する平成4年3月31日から支払済みまで 内金86万4696円に対する平成5年3月31日から支払済みまで 内金86万4696円に対する平成6年3月31日から支払済みまで 内金86万4696円に対する平成7年3月31日から支払済みまで 内金86万4696円に対する平成8年3月31日から支払済みまで 内金179万1787円に対する平成9年3月31日から支払済みまで 内金92万6017円に対する平成10年3月31日から支払済みまで 内金64万4294円に対する平成11年3月31日から支払済みまで 内金44万7273円に対する平成12年3月31日から支払済みまで 内金816万9375円に対する平成13年3月31日から支払済みまで ウ 原告CことCに対し、金103万7932円及び 内金14万2718円に対する平成9年3月31日から支払済みまで 内金4万3601円に対する平成10年3月31日から支払済みまで 内金5万8135円に対する平成11年3月31日から支払済みまで 内金2万9068円に対する平成12年3月31日から支払済みまで 内金76万4410円に対する平成13年3月31日から支払済みまで エ 原告Dに対し、金68万1203円及び 内金4万6116円に対する平成9年3月31日から支払済みまで 内金1万8796円に対する平成11年3月31日から支払済みまで 内金9398円に対する平成12年3月31日から支払済みまで 内金60万6893円に対する平成13年3月31日から支払済みまで それぞれ年5分の割合による金員を支払え。 2 予備的請求 (1) 被告株式会社新興出版社啓林館は、原告Aに対し金444万3469円、原告Bに対し金1265万6950円、原告CことCに対し金77万0947円、原告Dに対し金171万1217円、原告Fに対し金343万4135円、原告Eに対し金403万0900円、原告Gに対し金117万6387円及びこれらに対する平成14年8月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (2) 被告株式会社文理は、原告Aに対し金122万4962円、原告Bに対し金683万8727円、原告CことCに対し金70万3338円、原告Dに対し金58万8785円及びこれらに対する平成14年8月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 本件は、別紙著作物目録記載の著作物(以下、同目録の著作物番号に従って「本件著作物1」又は「本件著作物1−1」などといい、これらをまとめて「本件各著作物」という。)の著作権者である原告らが、本件各著作物を掲載した別紙書籍目録記載の書籍(以下、同目録の書籍番号に従って「本件書籍1−1」などといい、これらをまとめて「本件各書籍」という。)の被告らによる印刷、出版、販売は、原告らの複製権、著作者人格権を侵害すると主張し、被告らに対し、主位的に損害賠償、予備的に不当利得の返還を求める事案である。 1 争いのない事実等(括弧内に証拠等を掲記しない事実は争いがない。争いが ある事実は、括弧内に掲記した証拠等により認められる。) (1) 原告A、同B、同F、同E及び同G(以下それぞれ「原告A」、「原告B」、「原告F」、「原告E」及び「原告G」という。)は、それぞれ本件著作物1、2、5ないし7の著作者である。 原告CことC(以下「原告C」という。)は、本件著作物3の翻訳者である。 故Hは、本件著作物4を著作した。原告D(以下「原告D」という。)は、Hの相続人の1人であり、本件著作物4の著作権者である(甲15、37、甲63の1、2)。 (2) 本件各著作物は、別紙書籍目録記載のとおり、小学校用国語科検定教科書及び中学校用国語科検定教科書(以下、小学校用国語科検定教科書と中学校用国語科検定教科書を合わせて「教科書」という。)に掲載されている。 (3) 被告らは、別紙書籍目録記載のとおり、教科書に準拠した本件各書籍を印刷、出版、販売している。 2 争点 (1) 被告株式会社文理(以下「被告文理」という。)が、本件各著作物を本件各書籍に掲載することが、著作権法32条1項にいう「引用」に当たるかどうか (2) 著作者人格権侵害 ア 被告らによる本件各書籍の印刷、出版、販売が、原告A、同B、同E及び同Gの著作者人格権(同一性保持権)を侵害するかどうか イ 被告株式会社新興出版社啓林館(以下「被告啓林館」という。)による本件各書籍の印刷、出版、販売が、原告Fの著作者人格権(氏名表示権)を侵害するかどうか (3) 消滅時効の成否 (4) 本件請求が権利濫用又は信義則違反に当たるかどうか (5) 故意又は過失の有無 (6) 損害の発生及び額 3 争点に関する当事者の主張 (1) 争点(1)について 【被告文理の主張】 @本件各書籍は、教科書の掲載文を基にして、問題文を独自に創意工夫して創作された作品であること、A多岐にわたる問題文は、教科書に掲載された本件各著作物と明瞭に区分されていること、B本件各書籍における引用率(本件各著作物の全部の行数と引用文の行数の割合)は約1.2%ないし5.6%程度に過ぎないことからすると、適法な引用に当たる。 【原告らの主張】 著作権法32条1項にいう「引用」に当たるというためには、引用を含む著作物の表現形式上、引用して利用する側の著作物と、引用されて利用される側の著作物とを明瞭に区別して認識することができ、かつ、両著作物の間に、前者が主、後者が従の関係があると認められることを要する。しかるに@本件各書籍における本件各著作物の転載分量(原典との比較による転載割合)は、多いもので100%であり、少ないものでも40%に及ぶこと、A本件各著作物は概ね本件各書籍中の上段部分全部を占めていることから、本件各書籍の見開き1ページ中における本件各著作物の占める割合は、50%を超えていること、B本件各書籍は、上段部分に掲載された本件各著作物を読み、当該著作物において描かれた情景や人物の心情及び表現形式を理解した上で問いに答えるという形式になっており、その主たる目的は、本件各著作物を読み、その内容を理解することにあることからすると、本件各書籍においては、引用されて利用される側の本件各著作物が主であるということができるから、著作権法32条1項にいう「引用」に当たらない。 (2) 争点(2)アについて 【原告らの主張】 被告らは、別紙改変目録1ないし5各記載のとおり、本件各著作物を本件各書籍に掲載するに当たり、原文の平仮名を漢字にしたり、原文の漢字を平仮名にしたり、原文にはない句読点や語句を加筆したり、原文中にある句読点、語句、文章などを削除、変更して、原文上の表現に変更を加えている。したがって、原告A、同B、同E及び同Gの著作者人格権(同一性保持権)を侵害している。 【被告啓林館の主張】 ア 本件各書籍は、教科書に掲載されている原文に基づき、その対象となる掲載教科書を使用している児童・生徒の学習成果を高めるために製作したものであり、教科書に掲載された内容と本件各著作物との相違点は、教育指導上の目的かつその必要性から行われた一部の改変である。そして、本件各書籍の家庭内学習用教材としての重要性、必要性を考慮すると、「著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ない」改変ということができるから、同一性保持権を侵害しない。 イ 被告啓林館は、編集された教科書に準拠してテスト教材を創作したのであり、原著作物から直接に引用していないから、同一性保持権を侵害しない。 ウ 原告Bは、原著作物が教科書に掲載され、改変が加えられた場合に、原著作物を再発行する場合に、その改変をそのまま取り入れて改変を是認している例があるから、同原告による同一性保持権侵害の主張は認められない。 【被告文理の主張】 以下の事情を総合すると、上記表現の相違は小学生を対象とする国語教育という利用目的の必要上、やむを得ないと認められる「用字又は用語の変更、その他の改変」である。 ア 本件各書籍は、小学校用の文部省検定教科書に準拠した学習図書であり、本件各書籍に掲載された本件各著作物の表現内容は上記教科書の表現内容と同一である。 イ 原告ら主張の改変箇所は、@小学生に英語がわからない場合があること、A生徒の理解を助ける必要があること、Bぞんざいな言葉遣いであることから、いずれも小学生に対する教育目的上やむを得ない性格のものである。 ウ 著作者人格権の法的性格は著作者の声望、名誉を害することのないように保護するところにあり、その判断は客観的、合理的にされるものであるところ、原告ら主張の改変は、いずれも著作者の声望、名誉を害するものではない。 (3) 争点(2)イについて 【原告らの主張】 被告啓林館が本件書籍1−2−2に原告Fの氏名を表示しなかったことは、同原告の氏名表示権を侵害する。 【被告啓林館の主張】 争う。 (4) 争点(3)について 【被告らの主張】 本件各書籍は店頭売りであり、全国にある配本先の書店の店頭において陳列、販売される。しかも、ほとんどの書店において、本件各書籍は、児童書の隣の書棚に置かれて展示されている。したがって、原告らは、本件各書籍が陳列棚に陳列された時点で本件各書籍を知っていたものである。また、原告らは、文化庁の告示に見合う補償金を受領していたのであるから、教科書に掲載がされていることは十分に承知していた。さらに、被告らは、新聞に本件各書籍の広告を掲載し、一般人にこれらの書籍の存在を知らせていた。したがって、民法724条の消滅時効が完成している部分がある。 被告らは、上記消滅時効を援用する。 【原告らの主張】 本件各書籍は、全国の大多数の書店で販売されているものではなく、学習教材専門店や一部の大手書店の専用売場で販売されているに過ぎない。日常生活の中でそのような大手書店に赴く機会は、当該書店が自宅のすぐ近くにある場合を除くと、それほど多いものではないし、一般に大手書店は書籍の分野ごとにフロアや売場が厳密に分けられているから、意識して教科書準拠教材の売場に赴くのでなければ、本件各書籍に本件各著作物が複製されていることに気がつくことはない。原告らは、作家、詩人であり、教科書の製作等に関与することはあっても教材業界には縁がない。したがって、原告らが被告らによる著作権及び著作者人格権侵害の具体的な事実を知っていたとはいえない。 (5) 争点(4)について 【被告らの主張】 本件各書籍の製作に当たり、教科書の内容を適宜使用するための許諾は、教学図書協会を通して教科書発行会社にその対価を支払うことで処理されてきたし、被告らは、この許諾料が原著作者へ渡っていないことを知らなかった。また、被告らは、現在では、その発行する書籍に著作物を掲載する場合は、原著作者と取り交わした協定書の手順に従って処理している。さらに、原告らの請求はあまりに過大である。したがって、原告らの本件請求は信義則違反又は権利濫用に当たる。 【原告らの主張】 争う。 (6) 争点(5)について 【原告らの主張】 被告らは、本件各著作物を改変して本件各書籍に転載したとの認識を有し、かつ上記改変及び転載を正当化する具体的な根拠を何ら認識していないから、被告らには、故意又は故意に匹敵する重大な過失がある。 【被告啓林館の主張】 被告啓林館は、学習教材協会を通じて教科書発行会社に許諾料を支払い、これによって著作権法上の一切の免責を得たものと確信していたから、故意も過失もない。少なくとも重大な過失はない。 (7) 争点(6)について 【原告らの主張】 ア 主位的請求について (ア) 著作権者は、著作物を利用する権利を専有するものであって(著作権法21条ないし27条)、市場において当該著作物の利用を通じて独占的に利益を得る地位を法的に保障されていることに照らせば、著作権者は、侵害者が著作権を侵害する物を販売等する行為により、現在又は将来市場においてこれに対応する数量の真正品を販売等する機会を喪失し、当該販売等により得られるはずの利益を失う損害を被る。したがって、侵害者が侵害品の販売等を行った時期に著作権者が実際に著作物の利用行為を行っていなかったとしても、著作権者において著作権の保護期間が満了するまでの間に当該著作物を利用する可能性を有していたのであれば、侵害者の行為により、著作権者には、販売等により得られるはずの利益を失うことによる損害が生じたということができるから、侵害者に対し、著作権法114条1項に基づく損害賠償を求めることができるというべきである。 (イ) 著作権法114条1項にいう「利益」とは「粗利益」を指すものと解するべきである。 被告らが出版している本件各書籍は、年度を示す表示が付されていないことからも明らかなように、一度作成されると教科書改訂が行われない限り全く同一内容で出版されるだけでなく、教科書改訂があった場合でも教科書掲載作品に変更が生じない部分については作品の掲載態様、設問の配置等の内容をほとんど変更することなく、出版されている。したがって、被告らは、本件各書籍の販売総額(税込価格)の50%を下らない粗利益をあげている。 (ウ) 本件各書籍の価格、本件各書籍における本件各著作物の使用率は、別紙損害賠償等目録(主位的請求)の価格欄及び使用率欄記載のとおりである。 使用率は、使用ページ数÷総ページ数によって算出している。本件各著作物が、1ページの上段又は右側部分しか占めていないとしても、設問は、すべて本件各著作物を正しく読解させ、その表現方法や語彙の使用方法、登場人物の心情や背景等を正しく理解させるために置かれたものであり、複製された本件各著作物中に線を引いたり、空欄を設定する等して問題が製作されているから、このような本件各著作物の質的貢献度を考慮して、使用ページ数を1ページとして計算すべきである。 (エ) そうすると、著作権侵害に対する損害額は、別紙損害賠償等目録(主位的請求)記載のとおり、本件各書籍の印刷部数×価格×利益率(50%)×使用率となる。 (オ) 仮に本件において著作権法114条1項が適用されないとしても、原告らは同条2項に基づき下記イの損害につき損害賠償を請求する。 イ 予備的請求について (ア) 仮に原告らの主位的請求が認められないとしても、原告らは不当利得返還請求として、被告らに対する通知書(甲20の1)送達の日の翌日(平成12年5月3日)から10年さかのぼった日以降の被告らの侵害行為に関し、原告らが受けるべき使用料相当額の金員の支払を請求する。 (イ) 部数について 原告らが受けるべき使用料相当額、すなわち、本件各書籍への複製を許諾することの対価の支払を求めるものであるから、上記対価の算定は印刷部数を基礎として行うのが相当である。 (ウ) 価格について 本件各書籍の価格は、本体価格に消費税相当額を加えた一般販売価格とするのが相当である。 (エ) 使用率について 上記ア(ウ)と同じ。 (オ) 使用料率について 原告らは、原告らからの問題提起に対して当初から誠実かつ真摯に対応し、過去の著作権侵害行為については率直にこれを認めて謝罪し、裁判手続によることなく、原告らの要求する条件での過去の清算を申し出ている教材会社に対しては、原則として8%の許諾料を提示していること、本件各書籍における本件各著作物の価値は極めて高く、本件各書籍にとって必要不可欠というべきものであること、被告らは長期かつ継続的に著作権及び著作者人格権の侵害行為を行いながら、紛争の早期解決に消極的であること、被告らは原告らが使用を許諾した誠実な教材会社とは競合関係にあること、著作権法114条2項から「通常」の文言が削除されたこと等を考慮すると、使用料率は16%を下らない。 なお、使用料率について、原告C翻訳の本件著作物3に関して、それが翻訳であるということの一事をもって、他の原告らと差を設けることは許されない。なぜなら、原告らは翻訳であっても他の著作物と同一の条件で使用を許諾していること、被告らが重きを置いているのは、教科書に掲載されている本件著作物3であること、原著作者に対する使用料率の支払は使用を希望する者と原作者の間の協議によって決定されるべき事項であること、以上の理由からである。 (カ) そうすると、上記使用料相当額は、別紙損害賠償等目録(予備的請求)記載のとおり、本件各書籍の印刷部数×価格×使用料率(16%)×使用率となる。 ウ 著作権侵害及び著作者人格権侵害に対する慰謝料 著作物に対する同一の行為により、著作権と著作者人格権とが侵害された場合であっても、著作権侵害に対する慰謝料請求と著作者人格権侵害に対する慰謝料請求が認められる。 原告らは、被告らの故意又は故意に匹敵する重大な過失に基づき権利を侵害されたのであるから、原告らの精神的苦痛を慰謝するためには上記慰謝料の支払が不可欠である。 被告らの著作者人格権(同一性保持権)侵害行為により、原文が改変され、原文の表現する微妙な人物や背景の描写及び原文の有するリズム感や語感が著しく減殺されたまま一般に販売されたことにより、著作物としての価値が損なわれ、原告A、同B、同E及び同Gは、計り知れない精神的苦痛を被っている。 エ 弁護士費用 原告らは、被告らに対し、事前に通知書を発して本件の早期解決の実現を図ったが、上記通知書に対して、被告らは、「使用許諾料は支払済みであると考えている。」、「関係団体との協議中であるので待ってほしい。」との回答に終始し、どのような内容の協議が進められているのか、いつごろ合意に至るか等について全く報告等を受けなかったことから、原告らは裁判外での交渉を断念し、やむなく本訴の提起に至った。 したがって、原告らは本件に関する弁護士費用の支払を請求することができる。 オ 以上により、原告らが被告らに対して求める損害賠償等の額は以下のとおりである(なお、以下の記載のうち、主位的、予備的の関係となるのは、各@の点のみであり、各A以下は、同一の損害賠償請求であるが、主張の整理のために記載した)。 (被告啓林館に対する主位的請求) (ア) 原告A @ 著作権侵害に対する損害 657万3842円 A 著作権侵害に対する慰謝料 200万円 B 著作者人格権(同一性保持権)侵害に対する慰謝料 50万円 C 弁護士費用 90万円 (イ) 原告B @ 著作権侵害に対する損害 2295万3017円 A 著作権侵害に対する慰謝料 400万円 B 著作者人格権侵害(同一性保持権)に対する慰謝料 200万円 C 弁護士費用 290万円 (ウ) 原告C @ 著作権侵害に対する損害 62万7960円 A 著作権侵害に対する慰謝料 50万円 B 弁護士費用 11万円 (エ) 原告D @ 著作権侵害に対する損害 211万7051円 A 著作権侵害に対する慰謝料 100万円 B 弁護士費用 31万円 (オ) 原告F @ 著作権侵害に対する損害 715万8567円 A 著作権侵害に対する慰謝料 100万円 B 著作者人格権(氏名表示権)侵害に対する慰謝料 50万円 C 弁護士費用 86万円 (カ) 原告E @ 著作権侵害に対する損害 352万9379円 A 著作権侵害に対する慰謝料 200万円 B 著作者人格権(同一性保持権)侵害に対する慰謝料 100万円 C 弁護士費用 65万円 (キ) 原告G @ 著作権侵害に対する損害 23万8710円 A 著作権侵害に対する慰謝料 50万円 B 著作者人格権(同一性保持権)侵害に対する慰謝料 50万円 C 弁護士費用 12万円 (被告啓林館に対する予備的請求) (ア) 原告A @ 不当利得返還請求 154万3469円 A 著作権侵害に対する慰謝料 200万円 B 著作者人格権(同一性保持権)侵害に対する慰謝料 50万円 C 弁護士費用 40万円 (イ) 原告B @ 不当利得返還請求 555万6950円 A 著作権侵害に対する慰謝料 400万円 B 著作者人格権(同一性保持権)侵害に対する慰謝料 200万円 C 弁護士費用 110万円 (ウ) 原告C @ 不当利得返還請求 20万0947円 A 著作権侵害に対する慰謝料 50万円 B 弁護士費用 7万円 (エ) 原告D @ 不当利得返還請求 56万1217円 A 著作権侵害に対する慰謝料 100万円 B 弁護士費用 15万円 (オ) 原告F @ 不当利得返還請求 162万4135円 A 著作権侵害に対する慰謝料 100万円 B 著作者人格権(氏名表示権)侵害に対する慰謝料 50万円 C 弁護士費用 31万円 (カ) 原告E @ 不当利得返還請求 67万0900円 A 著作権侵害に対する慰謝料 200万円 B 著作者人格権(同一性保持権)侵害に対する慰謝料 100万円 C 弁護士費用 36万円 (キ) 原告G @ 不当利得返還請求 7万6387円 A 著作権侵害に対する慰謝料 50万円 B 著作者人格権(同一性保持権)侵害に対する慰謝料 50万円 C 弁護士費用 10万円 (被告文理に対する主位的請求) (ア) 原告A @ 著作権侵害に対する損害 35万9257円 A 著作権侵害に対する慰謝料 50万円 B 著作者人格権(同一性保持権)侵害に対する慰謝料 50万円 C 弁護士費用 13万円 (イ) 原告B @ 著作権侵害に対する損害 1595万9661円 A 著作権侵害に対する慰謝料 200万円 B 著作者人格権(同一性保持権)侵害に対する慰謝料 100万円 C 弁護士費用 190万円 (ウ) 原告C @ 著作権侵害に対する損害 44万7932円 A 著作権侵害に対する慰謝料 50万円 B 弁護士費用 9万円 (エ) 原告D @ 著作権侵害に対する損害 12万1203円 A 著作権侵害に対する慰謝料 50万円 B 弁護士費用 6万円 (被告文理に対する予備的請求) (ア) 原告A @ 不当利得返還請求 11万4962円 A 著作権侵害に対する慰謝料 50万円 B 著作者人格権(同一性保持権)侵害に対する慰謝料 50万円 C 弁護士費用 11万円 (イ) 原告B @ 不当利得返還請求 323万8727円 A 著作権侵害に対する慰謝料 200万円 B 著作者人格権(同一性保持権)侵害に対する慰謝料 100万円 C 弁護士費用 60万円 (ウ) 原告C @ 不当利得返還請求 14万3338円 A 著作権侵害に対する慰謝料 50万円 B 弁護士費用 6万円 (エ) 原告D @ 不当利得返還請求 3万8785円 A 著作権侵害に対する慰謝料 50万円 B 弁護士費用 5万円 【被告啓林館の主張】 ア 主位的請求について (ア) 本件のように著作物を使用する者がいても複数企業が競業して存在するときは、著作権法114条1項の推定は働かない。また、原告らは、本件各著作物を用いた営業活動を行っていないから、著作権法114条1項の推定は働かない。 (イ) 利益率について 原告らは利益額を算出するに当たって利益率を50%としているがそれは社会常識をはるかに超えるものである。本件各書籍のようなテスト教材の単価は1000円未満と低いにもかかわらず、返本率は40〜50%と高いから、被告啓林館は上記利益率による利益を得ていない。 (ウ) 使用率について 本件各書籍に掲載された本件各著作物の行数を基準とするのが相当である。 (エ) 部数について 被告啓林館が印刷会社から受け取った部数のうち、献本、関係者のための調査資料その他に充当されるものがあり、また、返本されるものもある。これらについて被告啓林館は利益を得ていないから、損害計算の部数に含めるべきではなく、実売部数を基礎とすべきである。 なお、著作権法33条1項の教科用図書又は同条4項の通信教育用学習図書、教師用指導書についての補償金の額は官報で告示されるが、この告示においては教科書等の発行部数に応じて補償金が支払われるべきものとされている。 (オ) 定価について 現実の定価に基づいて算定すべきである。平成7年度までの定価は、平成8年度用よりも低い価格になっている。 (カ) 消費税について 消費税は国に納付すべきものであって、民事上の損害賠償の金額のうちに含めるべきものではない。 (キ) 弁護士費用について 本訴は濫訴であって、弁護士費用を被告啓林館が負担すべき法的根拠はない。 イ 予備的請求について (ア) 上記ア(ウ)ないし(カ)と同じ。 (イ) 使用料率について 原告主張の使用料率はあまりに高額であり、このような高率の使用料の支払を恒常化することは企業の衰退を招くだけである。被告啓林館は、「小学校国語教科書著作者の会」らとの間で協定書を取り交わし、5%の使用料をもって原著作物をテスト教材に使用することについての承諾を受けている。 (ウ) 被告啓林館は、教学図書協会を通して許諾料を支払済みであるから、利得は現存しない。 【被告文理の主張】 ア 主位的請求について (ア) 使用率について @文化庁において、原著作物から教科書会社が教科書に掲載する場合の掲載使用率は文字数に応じた計算を採用していること、A「小学校国語教科書著作者の会」と被告文理の加入する「学習教材協会」との間の協定(丁3)等においても、同様に掲載行数計算を採用していること、B仮に1ページに1行分の作品が使用された場合、これを1ページ分の掲載として計算すると、1ページに数人以上の著作権者の作品の一部が掲載されるとその1ページについて数ページ以上の計算をしなければならず矛盾が生ずること、C被告文理の学習教材は、問題を主としていること、以上からすると、行数計算(面積比計算)が合理的である。 (イ) 部数について 多くの返品が生じことからすると、実売部数によるべきである。 (ウ) 価格について 定価は年度により一定していないから、その現実の定価に基づいて算定すべきである。 (エ) 消費税について 消費税は国が国民に対して負担させる公法上の税金であって、私法上の著作権使用料の算定に当たってこれを加算することは極めて不合理である。業界においては、消費税を控除した額を「本体価格」としている。 イ 予備的請求について (ア) 上記ア(ア)ないし(エ)と同じ。 (イ) 使用料率について @被告文理は、その出版する学習用教材について、各小中学校生徒を対象として全国にわたり出張、宣伝、展示活動を行っており、本件各書籍の販売は、このような営業活動の上に成り立っていること、A本件各図書の返品の割合は、例年40%以上であり、そのようなコストも負担して経営せざるを得ないこと、B本件各図書は、生徒用であるため価格は低額であること、C「小学校国語教科書著作者の会」と「学習教材協会」との間の協定(丁3)においても5%の印税率とされていること、D株式会社福音館書店と上記学習教材協会との間の協定(丁8)においても5%の印税率とされていること、E社団法人日本文芸著作権保護同盟と被告文理との間の協定(丁9)においても5%の印税率とされていること、F大学受験参考書類につき「日本文芸著作権保護同盟」と被告文理との間で締結された協定の印税は3.5%であることからすると、使用料率は5%が相当である。 (ウ) 被告文理は、教学図書協会を通して許諾料を支払済みであるから、利得は現存しない。 第3 争点に対する判断 1 争点(1)について (1) 証拠(甲1の3、甲2の4の1、2、甲2の5、甲3の4、甲4の4、甲49)と弁論の全趣旨によると、本件書籍4−1ないし5−3における本件著作物1−4、2−4、2−5、2−6、3、4−3の各掲載態様は、次のようなものであると認められる。 ア 上記各著作物は、上記各書籍中において、同著作物の表題によって特定される単元のうち、「次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。」(本件書籍4−1、2)、「次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。」(本件書籍5−2)、「次の文章を読んで、後のといに答えなさい。」(本件書籍5−3)、「次の詩を読んで、あとの問いに答えなさい。」(本件書籍4−3、4)、「次の詩を読んで、後のといに答えなさい。」(本件書籍5−1)と指示された見開きページに掲載されている。 イ 本件書籍4−1ないし4には、それぞれ本件著作物2−4、2−5、4−3、3が、アの見開きページ上段のほぼ全面又は上段ほぼ全面から下段右側部分にかけて、罫線によって四角で囲まれた中に掲載されている。また、本件書籍5−1ないし3には、それぞれ本件著作物1−4、2−4、2−6が、見開きページのほぼ全面又は右側部分に掲載されている。これらの掲載行数は、10行以上ある。そのため、上記各書籍に掲載されている上記本件各著作物は、それ自体で、表現されている情景や登場人物の言動、その心理等を理解することができる。 ウ イのように掲載された上記本件各著作物には、@その一部に番号とともに傍線が付され、Aその一部の語句の代わりに番号や記号を付した四角が挿入され、B各行の下に番号が付されるなど、著作物中の部分を特定するための表記がされている。 エ 本件書籍4−1ないし4には、アの見開きページ下段のほぼ全面又は下段左側部分に、本件書籍5−1ないし3には、アの見開きページのほぼ全面又は左側部分に、2個ないし9個の選択式又は記述式の問題が設けられており、これらは、ウのように特定された著作物の部分や掲載された著作物全体についての読解力を問うものである。 (2) 証拠(甲66の1、2)と弁論の全趣旨によると、本件書籍6−1、6−2における本件著作物1−5の掲載態様等は、次のようなものであると認められる。 ア 本件著作物1−5は、本件書籍6−1、6−2において、「次の詩を読んで、後の問いに答えなさい。」と指示された見開きページに掲載されている。 イ 本件著作物1−5の全部が、アの見開きページの左側部分上段の一部又は左側部分上段のほぼ全面から下段にかけて掲載されている。 ウ イのように掲載された本件著作物1−5は、@その一部に番号と共に棒線が付され、Aその一部に棒線又は波線が付され、B各行の上に番号が付されるなど、著作物中の部分を特定するための表記がされている。 エ アの見開きページの左側部分上段から下段にかけて又は左側部分下段に4個又は5個の選択式又は記述式の問題が設けられており、これらは上記のとおり特定された著作物の部分や掲載された著作物全体についての読解力を問うものである。 (3) 公表された著作物を引用して利用することが許容されるためには、その引用が公正な慣行に合致し、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行わなければならないとされている(著作権法32条1項)ところ、この規定の趣旨に照らすと、ここでいう「引用」とは、報道、批評、研究その他の目的で、自己の著作物中に、他人の著作物の原則として一部を採録するものであって、引用する著作物の表現形式上、引用する側の著作物と引用される側の著作物とを明瞭に区別して認識することができるとともに、両著作物間に、引用する側の著作物が「主」であり、引用される側の著作物が「従」である関係が存する場合をいうものと解すべきである。 (4) 上記認定のとおり、本件各書籍の設問は、本件各著作物に表現された思想、感情等の理解を問うものであって、設問の設定、配列等に被告文理の創意工夫があるとしても、それは、児童ないし生徒に本件各著作物をいかに正確に読みとらせ、また、それをいかに的確に理解させるかという点にあり、本件各著作物の創作性を度外視してはあり得ないものである。そして、このことに、上記認定の本件各書籍における本件各著作物の掲載態様を総合すると、引用される側の著作物である本件各著作物が「従」であり、引用する側の著作物である本件各書籍が「主」であるという関係が存するということはできない。 (5) そうすると、上記各書籍における上記各著作物の掲載が、著作権法32条1項にいう「引用」に当たると認めることはできない。 2 争点(2)ア(同一性保持権侵害)について (1) 原告Aに関するもの(本件著作物1−4)について ア 被告啓林館について 証拠(甲1の1の4)と弁論の全趣旨によると、本件書籍1−10と本件著作物1−4とを対比すると、別紙改変目録1記載のとおり、本件書籍1−10には、@「こんにちわ」を「こんにちは」に変更したこと、A「はんにんのしもんをとる」という文書を削除したこと、B平仮名を片仮名に変更したこと、C「でんわとる」を「じゅわきとる」に変更したことが認められる。これらは、著作権法20条が規定する「改変」に当たるものと認められる。 イ 被告文理について 証拠(甲1の3)と弁論の全趣旨によると、本件書籍5−1と本件著作物1−4とを対比すると、別紙改変目録4記載のとおり、上記ア@ないしCと同じ変更をしたことが認められる。これらは、著作権法20条が規定する「改変」に当たるものと認められる。 (2) 原告Bに関するもの(本件著作物2−4)について ア 被告啓林館について 証拠(甲2の1の3ないし5、甲2の2の2及び3)と弁論の全趣旨によると、改訂後に出版された本件著作物2−4と本件書籍1−11ないし13、2−8及び9とを対比すると、別紙改変目録1記載のとおり、上記各書籍には、@「?」を「。」に変更したこと、A””を削除したこと、B片仮名を平仮名に変更したこと、C上記著作物にはない句読点を加えたこと、D「。」を「!」に変更したこと、E「!?」を「。」に変更したこと、F丸括弧を鍵括弧に変更したこと、F上記著作物にある読点を削除したことが認められる。 また、上記証拠と弁論の全趣旨によると、別紙改変目録3記載のとおり、@平仮名を漢字に変更したこと、A漢字を平仮名に変更したことが認められる。 以上は、著作権法20条が規定する「改変」に当たるものと認められる。 イ 被告文理について 証拠(甲2の4の1、甲2の5)と弁論の全趣旨によると、改訂後に出版された本件著作物2−4と本件書籍4−1、5−2とを対比すると、別紙改変目録4記載のとおり、上記各書籍には、@「?」を「。」に変更したこと、A””を削除したこと、B丸括弧を鍵括弧に変更したこと、C片仮名を平仮名に変更したこと、D上記著作物にはない句読点を加えたこと、E「!?」を「。」に変更したことが認められる。 また、上記証拠と弁論の全趣旨によると、別紙改変目録5記載のとおり、@平仮名を漢字に変更したこと、A漢字を平仮名に変更したことが認められる。 以上は、著作権法20条が規定する「改変」に当たるものと認められる。 (3) 原告Bに関するもの(本件著作物2−5)について ア 被告啓林館について 証拠(甲2の2の4)と弁論の全趣旨によると、上記著作物と本件書籍2−10とを対比すると、別紙改変目録1記載のとおり、同書籍には@「あき地のかたすみの、」を「だれもいない空き地のはずれの」と変更したこと、A「いくどもうめくようにつぶやきました。」を「いく度もうめくようにつぶやいていました。」と変更したこと、B上記著作物にはない語句や鍵括弧を加えたこと、C「この町は、見わたすかぎりにやけくずれていました。」を「この辺りは、見わたすかぎりに焼けて、くずれた町でした。」と変更したこと、D「何回もくうしゅうで」を「三度の空しゅうで、」と変更したこと、E上記著作物にある句読点や鍵括弧を削除したこと、F「かなこの笑顔が、」を「かなこのうれしそうな笑い顔が、」と変更したこと、G「おはじきをしていた子は、」を「おはじきをしていたその子は」と変更したこと、H句点を読点に変更したこと、I「わらいました。」を「笑っていました。」と変更したこと、J「二どほど見にいきましたが、」を「おそく見に行ったことも二度ほどありましたがね、でも、その時は、」と変更したこと、K「おもいまして」を「思いましてね」と変更したこと、L「それなのに、」を「それが、」に変更したこと、M「あのころは、」を「そのころは、」と変更したこと、N「まわっています。」を「回り始めました。」と変更したこと、O「立ち上がり、」を「立ち上がりました。そして、」と変更したこと、P「大きくなったようです。」を「大きくなったようでした。」と変更したこと、P「なにも見えなくなりました。」を「何もかも見えなくなりました。」と変更したこと、Q「女の子は、」を「その子は、」に変更したこと、R片仮名を平仮名に変更したこと、S「目が、大きく見ひらかれました。」を「目は、じきに大きく見開かれました。」と変更したこと、<21>「あかりでもともったようにぼうっと見えだしました。」を「ぼうっと、明かりでもともったように見えだしました。」と変更したこと、<22>「昼ましたように、」を「ちょうど昼間してみせたように、」と変更したこと、<23>「みきをとんとんとたたきました。」を「幹をトントンとたたき始めていました。」と変更したこと、以上が認められる。 以上は、著作権法20条が規定する「改変」に当たるものと認められる。 イ 被告文理について 証拠(甲2の4の2)と弁論の全趣旨によると、上記著作物と本件書籍4−2とを対比すると、別紙改変目録4記載のとおり、上記ア@ないしM、O、P、Sないし<23>の外、<24>「小さな指で」を「小さい指で」に変更したこと、<25>「さようならあ。」を「さよならあ」と変更したこと、<26>「手をつないで、」を「手をつなぐと、」と変更したことが認められる。これらは、著作権法20条が規定する「改変」に当たるものと認められる。 (4) 原告Bに関するもの(本件著作物2−6)について ア 被告啓林館について 証拠(甲86の1、2)と弁論の全趣旨によると、上記著作物と本件書籍1−18とを対比すると、別紙改変目録3記載のとおり、平仮名を漢字に変更したことが認められる。これらは、著作権法20条が規定する「改変」に当たるものと認められる。 イ 被告文理について 証拠(甲49の1、2)と弁論の全趣旨によると、上記著作物と本件書籍5−3とを対比すると、別紙改変目録5記載のとおり、@平仮名を漢字に変更したこと、A漢字を平仮名に変更したことが認められる。これらは、著作権法20条が規定する「改変」に当たるものと認められる。 (5) 原告Eに関するもの(本件著作物6−1)について 証拠(甲6の2)と弁論の全趣旨によると、上記著作物と被告啓林館の本件書籍2−2とを対比すると、別紙改変目録2記載のとおり、@上記著作物にはない句点を加えたこと、A読点を句点に変更したこと、B「わーい」を「わあい。」と変更したこと、C上記著作物にある読点を削除したこと、D「うわーい」を「うわあい」と変更したことが認められる。 また、上記証拠と弁論の全趣旨によると、別紙改変目録3記載のとおり、@漢字を平仮名に変更したこと、A平仮名を漢字に変更したことが認められる。 以上は、著作権法20条が規定する「改変」に当たるものと認められる。 (6) 原告Gに関するもの(本件著作物7)について 証拠(甲7の2)と弁論の全趣旨によると、上記著作物と被告啓林館の本件書籍2−12とを対比すると、別紙改変目録2記載のとおり、@上記著作物の「そっちも、こっちも、胸のあたりまで火を近づけた。」を省略したこと、A上記著作物にある読点を削除したこと、B上記著作物にはない読点を加筆したことが認められる。 また、上記証拠と弁論の全趣旨によると、別紙改変目録3記載のとおり、漢字を平仮名に変更したこと、平仮名を漢字に変更したことが認められる。 以上は、著作権法20条が規定する「改変」に当たるものと認められる。 なお、原告Gは、上記著作物にはない語句を加筆させる問題を設定したことも、「改変」に当たると主張するが、上記著作物の原文自体が変更されているわけではないから、「改変」に当たるとは認められない。 (7) 著作権法20条2項1号は、学校教育の目的上やむを得ない改変を認めているが、上記(1)ないし(6)記載の本件各書籍が同号の「第33条第1項(同条第4項において準用する場合を含む。)又は第34条第1項の規定により著作物を利用する場合」に当たらないことは明らかであり、同号に該当する教科書に準拠した教材であるからといって、教科書に当たらないものについて、同号により改変が適法になるものということはできない。 また、著作権法20条2項4号は、同一性保持権による著作者の人格的利益の保護を例外的に制限する規定であり、かつ、同じく改変が許される例外的場合として同項1号ないし3号の規定が存することからすると、同項4号にいう「やむを得ないと認められる改変」に該当するというためには、著作物の性質、利用の目的及び態様に照らし、当該著作物の改変につき、同項1号ないし3号に掲げられた例外的場合と同程度の必要性が存在することを要するものと解される。しかるところ、上記のとおり上記(1)ないし(6)記載の本件各書籍は同項1号で定める場合には当たらず、同項1号で定める場合と同程度の必要性が存在すると認めることもできないし、その他被告ら主張の事情をもってしても、本件各書籍の発行に当たり上記各著作物に改変を加えるにつき、上記のような必要性が存在すると認めることはできない。したがって、著作権法20条2項4号が定める「やむを得ないと認められる改変」に該当するとは認められない。 (8) よって、上記(1)ないし(6)認定の各改変がされたことによって、原告A、同B、同E及び同Gが本件各著作物について有する同一性保持権が侵害されたものと認められる。 (9) なお、被告啓林館は、編集された教科書に準拠してテスト教材を創作したのであり、原著作物から直接に引用していないから、同一性保持権を侵害しないと主張するが、教科書に準拠して改変したとしても、結果的に改変されている以上、同一性保持権侵害に当たるものというべきであるから、被告啓林館の上記主張は理由がない。 また、被告啓林館は、原告Bは、原著作物が教科書に掲載され、改変が加えられた場合に、原著作物を再発行する場合に、その改変をそのまま取り入れて改変を是認している例があるから、同原告による同一性保持権侵害の主張は認められないと主張するが、仮に上記事情が存するとしても、原告Bは、被告啓林館による上記改変に対して同意しているわけではないから、何ら上記認定を左右するものではない。 3 争点(2)イ(氏名表示権侵害)について 証拠(甲5)と弁論の全趣旨によると、本件書籍1−2−2において、原告Fの氏名が表示されていないものと認められるから、著作権法19条1項の氏名表示権を侵害しているものというべきである。 4 争点(3)について (1) 民法724条にいう「損害及ヒ加害者ヲ知リタル時」とは、被害者において、加害者に対する賠償請求が事実上可能な状況の下に、その可能な程度にこれらを知った時を意味するものと解され(最高裁昭和48年11月16日第二小法廷判決・民集27巻10号1374頁参照)、このうち同条にいう被害者が損害を知った時とは、被害者が損害の発生を現実に認識した時をいうとものと解される(最高裁平成14年1月29日第三小法廷判決・民集56巻1号218頁参照)。 (2) 原告A、同B、同C及び同Dの各陳述書(甲78ないし81)には、これらの原告が本件各著作物が本件各書籍に掲載されていることを知ったのは、本件訴訟を提起する直前である旨の記載があり、原告F、同E、同Gの各陳述書(甲82ないし84)には、平成11年に谷川俊太郎らが青葉出版等に対して訴えを提起したことより本件各著作物が本件各書籍に掲載されていることを知った旨の記載がある。 証拠(甲77、乙13の1ないし4、乙14の1ないし4、乙15の1ないし4、丁11の1ないし4、丁13)と弁論の全趣旨によると、本件各書籍は少なくとも東京、大阪、京都の大手書店の売場陳列棚に陳列され販売されていたこと、書店によっては、本件各書籍の売り場と児童書の売り場が近接している場合があること、被告らは、本件各書籍について新聞広告をしていること、以上の事実が認められる。また、本件各著作物は、教科書に掲載されているから、原告らは、文化庁の告示に従った補償金を受領していたものと推認される。しかし、本件各書籍の売り場と児童書の売り場が近接している場合があり、本件各書籍について新聞広告されているからといって、直ちに原告らが本件各書籍の内容を知っていたものと認めることはできず、また、原告らが教科書に掲載されたことによる補償金を受領していたことによって、本件各著作物が教科書に掲載されたことを知っていたものと認めることはできるが、そのことから直ちに本件各著作物が本件各書籍に掲載されていることまで知っていたものと認めることはできない。したがって、上記認定事実から直ちに、原告らが前記陳述書記載の時期より前に本件各著作物が本件各書籍に掲載されていることを知っていたものと認めることはできない。その他、前記陳述書の記載を覆すに足りる証拠はない。よって、原告らは、前記陳述書記載の時期より前には、被告らが原告らの著作権又は著作者人格権を侵害し、原告らに損害が発生したことを現実に認識していたとは認められない。 (3) 以上により、民法724条の消滅時効が成立している旨の被告らの主張は認められない。 5 争点(4)について 証拠(甲26ないし31の各1、2、甲34ないし40、乙1、丁2、17)と弁論の全趣旨によると、被告らは、学習教材協会及び教学図書協会を通じて、教科書発行会社に対して、教科書に準拠した教材を発行する許諾を得たことによる対価を支払っていたこと、これには、原告ら原著作者に対する著作権料は含まれておらず、原告ら原著作者には支払われていないこと、以上の事実が認められる。被告らは、上記対価が原著作者に支払われていなかったことを知らなかったと主張するが、上記対価の支払に関する契約書(乙1、丁2)には、原著作者について何ら記載されていないこと、被告らが、原著作者に対価が支払われているかどうか確認するのは極めて容易であったと考えられるにもかかわらず、何らかの確認をしたとは認められないことからすると、被告らは、上記対価が原著作者に支払われていなかったことを知らなかったとしても、そのことに過失があるものというべきであって、以上のような事情からすると、その過失は決して軽いものということはできない。 被告らは、現在では、その発行する書籍に著作物を掲載する場合は、原著作者と取り交わした協定書の手順に従って処理していると主張する。確かに、後記7(2)エ認定のとおり、被告らは、教科書掲載著作物について、契約を締結して、許諾を受け、使用料を支払っていることが認められるが、原告らが、被告らに対し、本件各著作物を本件各書籍に掲載することについて許諾し、使用料の支払を受けているとは認められないから、上記主張のような事情は、原告らとの関係では、特段考慮することはできない。 さらに、被告らは、原告らの請求はあまりに過大であると主張するが、原告らの請求は金員の支払請求であるから、過大であれば、適正な額が認められることになるに過ぎないものである。 以上述べたところからすると、原告らの本件請求が信義則違反又は権利濫用に当たるものということはできず、他に原告らの本件請求が信義則違反又は権利濫用に当たるものというべき事情は認められない。 6 争点(5)について 上記5のとおり、被告らは、上記対価が原著作者に支払われていなかったことを知らなかったとしても、そのことに過失があるものというべきであって、被告らには、本件各著作物を本件各書籍に掲載して、原告らの著作権及び著作者人格権を侵害したことについて過失があるものというべきである。 7 争点(6)について (1) 著作権法114条1項による損害の主張について 著作権法114条1項は、当該著作物を利用して侵害者が現実にある利益を得ている以上、著作権者が同様の方法で著作物を利用する限り同様の利益を得られる蓋然性があることに基づく規定と解される。証拠(甲78ないし83)と弁論の全趣旨によると、原告らは、作家、翻訳家又はその相続人であって、自ら本件各著作物の出版を行っていないものと認められるから、原告らが、被告らと同様の方法で著作物を利用して利益を得られる蓋然性はないものと認められる。したがって、本件においては、同法114条1項の適用の余地はないものというべきである。 (2) そこで、次に、著作権法114条2項による損害について検討する。 ア 部数等について 原告らは、複製権の侵害による損害賠償を求めているのであるから、使用料相当額を算定するに当たっては、印刷部数を基礎とすることが相当である。 証拠(乙19、21、丁14、15、丁16の1ないし44)と弁論の全趣旨によると、被告らは、平成8年度から平成13年度までの間に、別紙計算書記載の部数の本件各著作物が掲載された本件各書籍を印刷したものと認められる。 また、証拠(乙22)と弁論の全趣旨によると、本件著作物1−1、1−3ないし1−5、2−2ないし2−4、2−6、4−1、5、6−1ないし6−3は、いずれも平成8年より前から、別紙計算書記載の各年度に同計算書記載の教科書に掲載されていること、本件各書籍は、教科書に準拠した教材で、別紙計算書記載の各年度に発行されていること、上記の各著作物は、本件各書籍に平成8年度以降も継続して掲載されていること、以上の事実が認められる。そうすると、反対の証拠がない限り、上記の各著作物は、平成7年度以前にも、別紙計算書記載の各年度に発行された本件各書籍に掲載されていたものと推認することができるところ、これに反する証拠は存在しないから、上記の各著作物は、平成7年度以前にも、別紙計算書記載の各年度に発行された本件各書籍に掲載されていたものと認められる。そして、その部数については、これを直接認めるに足りる証拠がないので、平成8年度以降の本件各書籍の最も少ない年度の印刷部数(ただし、原告ら主張の印刷部数が上記印刷部数を下回る時は原告ら主張の印刷部数)によるのが相当である。 なお、原告Aは被告啓林館に対し、本件著作物1−3が教育出版版ぴったりテストに掲載されていると主張し、原告Bは同被告に対し、本件著作物2−2が教育出版版ホームテストに掲載されていると主張しているが、いずれも上記各著作物が上記各書籍に掲載されていることの証拠がないので、これを認めることができない。 イ 基礎となる価格について 基礎となる価格について、被告らは、消費税分を控除すべきであると主張するが、消費税相当額も販売価格の一部としてそれに含まれているから、基礎となる価格として、消費税相当額を控除すべき理由はない。 証拠(甲1の2の1ないし4、甲1の3、甲2の2の1ないし4、甲2の5、甲3の2、甲4の2の1ないし3、甲6の2の1ないし3、甲7の2)と弁論の全趣旨によると、被告啓林館発行のホームテスト(本件書籍2の1の1ないし2の14)の価格(平成元年からは消費税相当額を含む価格)は、昭和56年度から480円、昭和58年度から530円、昭和61年度から550円、平成元年度から600円、平成4年度から700円、平成8年度から780円、平成9年度から795円、平成12年度から840円であり、被告文理発行のホームテスト(本件書籍5−1ないし5−3)の価格も、同額であると認められる。 証拠(乙22)によると、被告啓林館発行のぴったりテスト(本件書籍1−1ないし1−17)の価格は、昭和61年度から1年生ないし3年生が680円、4年生から6年生が700円であると認められ、証拠(甲1の1の1ないし5、甲2の1の1ないし5、甲3の1、甲4の1の1ないし4、甲5、6の1の1、2、甲7の1)と弁論の全趣旨によると、同書籍の価格(消費税相当額を含む価格)は平成8年度から950円、平成9年度から968円、平成12年度から987円であると認められる。同書籍についても、上記ホームテストと同様に価格が推移しているものと推認できるから、同書籍の価格(消費税相当額を含む価格)は、平成元年度から1年生ないし3年生が730円、4年生から6年生が750円、平成4年度から1年生ないし3年生が850円、4年生から6年生が870円であると推認される。 証拠(甲69)と弁論の全趣旨によると、被告啓林館発行の教科書トレーニング(本件書籍3−1)の価格(消費税相当額を含む価格)は、977円であると認められる。 弁論の全趣旨によると、被告文理発行の必修テキスト4年と5年(本件書籍4−1ないし4−3)の価格(消費税相当額を含む価格)は、平成8年度から950円、平成9年度から968円、平成12年度から966円であり、被告文理発行の必修テキスト6年(本件書籍4−4)の価格(消費税相当額を含む価格)は、平成8年度から980円、平成9年度から998円であると認められる。 証拠(甲66の1、2)と弁論の全趣旨によると、被告文理発行の中学教科書ワーク(本件書籍6−1)と中学必修テキスト(本件書籍6−2)の価格(消費税相当額を含む価格)は、それぞれ中学教科書ワークが987円、中学必修テキストが平成8年度から968円、平成9年度から987円であると認められる。上記中学必修テキストの価格は、上記ホームテストと同様に推移しているものと推認されるから、平成6年度以降の価格(消費税相当額を含む価格)は、880円と推認される。 ウ 使用率について 前記1(4)で認定したとおり、本件各書籍の設問は、本件各著作物の創作性を度外視してはあり得ないものであるが、別紙書籍目録記載の各証拠によると、本件各著作物の「複製」がされている部分は、本件各書籍の見開きページほぼ全面にわたるものがある反面、上段のみ、上段から下段の一部にかけて、下段の一部から上段の一部にかけて、中央部分のみ、右側部分のみ、上段右側部分のみ、左側部分のみのものがあるものと認められる。 使用ページ数は、1ページのほぼ全面に掲載されているものは1ページ、一部に掲載されているものは、2分の1ページとして計算するのが相当である。これに反する原被告の主張は採用できない。 したがって、使用率として、上記のような意味での使用ページ数を、弁論の全趣旨により認められる総ページ数で除したものを用いることとする。 エ 使用料率について 証拠(乙4、8、9、20、丁3、4、8、9)と弁論の全趣旨によると、小学校国語教科書著作者の会外2団体と被告らを含む学習教材協会加盟各社との間で平成12年9月8日に締結された協定書では、被告らを含む教材発行会社は、教科書掲載著作物の原著作者から許諾を得て、この著作物を教材に掲載することができること、教材発行会社は、原著作者に対して、行数割により5%の使用料を支払うこと、この協定は平成12年度に発行される教材から適用されることの各条項が定められていること、株式会社福音館書店と被告らを含む学習教材協会加盟各社との間で平成13年2月9日に締結された覚書では、被告らを含む教材発行会社は、株式会社福音館書店の管理する著作物を平成12年度及び平成13年度の教材に掲載する場合には、同社に許諾を申請し、許諾された場合には行数割により5%(翻訳については2.5%)の使用料を支払う旨定められていること、社団法人日本文芸著作権保護同盟と被告啓林館との間で及び社団法人日本文芸著作権保護同盟と被告文理との間で平成13年2月28日に締結された著作物使用許諾書では、被告らは、平成12年度及び平成13年度の教材につき、教科書掲載著作物の原著作者から、この著作物を教材に掲載する許諾を受け、行数割により5%の使用料を支払う旨定められていること、以上の事実が認められる。また、証拠(甲75、76、85)によると、教材会社と教科書掲載著作物の原著作者との間で締結された協定書又は合意書には、教材会社は、教科書掲載著作物の原著作者に対して、著作物が掲載されているページを上下段を分けずに1ページと計算して8%の使用料を支払う旨定められているものが存することが認められる。 そして、これらの事実に、本件で問題となっているのは、将来における使用料ではなく、過去の著作権侵害に対する使用料相当額を算定するための使用料率であること、証拠(甲71)と弁論の全趣旨によると、書籍の印税率は通常10%とされていること、証拠(乙20)と弁論の全趣旨によると、児童文学作家が単行本について受領している印税率は5%程度が多いものと認められるが、児童文学の単行本の場合には、挿し絵などがあり、必ずしもすべてが文章でないと考えられるのに対して、前記ウで認定したとおり、本件においては、使用率を当該ページ中の掲載部分に限られるものとしていること、証拠(乙20)によると、児童文学でも印税率が10%のものが存することが認められることを総合すると、使用料率は、10%(ただし、原告Cについては、翻訳であるので5%)が相当であると認める。 オ 原告Cは、翻訳であっても他の著作物と同一の条件で使用を許諾していること等を理由に他の原告らと差をつけるべきではないと主張するが、原告Cの著作物は翻訳に係るものであり、他の原告らの著作物とは違うから、上記原告の主張は理由がない。 カ 以上により、原告らが被告らに対して請求することができる損害額は、別紙計算書記載のとおり、印刷部数×価格×使用率×使用料率(10%)によるのが相当である。 (3) 著作権侵害に対する慰謝料について 原告らは、著作権侵害を理由に慰謝料の請求をしているが、財産権の侵害に基づく慰謝料を請求し得るためには、侵害の排除又は財産上の損害の賠償だけでは償い難い程の大きな精神的苦痛を被ったと認めるべき特段の事情がなければならないものと解されるところ、本件全証拠をもってしても、上記特段の事情が存するとまでは認められないから、上記請求を認めることはできない。 (4) 著作者人格権侵害に対する慰謝料について 前記2認定のとおり、原告A、同B、同E及び同Gについては、本件各著作物を本件各書籍へ掲載する際に改変がされ、同原告らの同一性保持権が侵害されたものと認められる。また、前記3認定のとおり、本件書籍1−2−2において原告Fの氏名の表示がなかったことが認められる。証拠(甲78、79、82ないし84)と弁論の全趣旨によると、上記原告らは、これらの著作者人格権侵害行為により精神的苦痛を受けたものと認められる。 そして、前記2認定に係る改変の態様からすると、改変された箇所は、平仮名を漢字に変更するとか、読点を削除するといった、文章の意味内容を直接変更するものではない箇所も多いこと、前記3認定のとおり氏名は表示されていなかったが、原告Fの氏名は、教科書によって容易に認識することができるものと考えられるから、著作者を誤解するおそれは少ないこと、その他本件に現れた諸事情を考慮すると、著作者人格権侵害行為に対する慰謝料の額は、被告らそれぞれに対して、原告Aにつき20万円、同Bにつき40万円、被告啓林館に対して、同Eにつき30万円、同Gにつき30万円、同Fにつき20万円が相当である。 (5) 弁護士費用について 原告らが、本件訴訟の提起、遂行のために原告ら訴訟代理人を選任したことは、当裁判所に顕著であるところ、本件訴訟の事案の性質、内容、審理の経過、認容額等の諸事情を考慮すると、被告らの著作権及び著作者人格権侵害行為と相当因果関係のある弁護士費用の額としては、下記(6)の金額が相当である。 被告啓林館は、本件訴訟は濫訴に当たるから弁護士費用を原告らの損害とすべきではないと主張するが、上記で認定判断したとおり、本件訴訟は権利濫用又は信義則に反するものではないから理由がない。 (6) 以上によると、損害額は次のとおりとなる。なお、損害賠償に対する遅延損害金の起算点は不法行為時であると解されるので、本件各書籍の各発行年度ごとに遅延損害金が発生するものと認められる。 ア 被告啓林館 (ア) 原告A @ 著作権侵害に対する損害 27万5143円 A 著作者人格権(同一性保持権)侵害に対する慰謝料 20万円 B 弁護士費用 5万円 C 合計 52万5143円 (イ) 原告B @ 著作権侵害に対する損害 172万8349円 A 著作者人格権侵害に対する慰謝料 40万円 B 弁護士費用 20万円 C 合計 232万8349円 (ウ) 原告C @ 著作権侵害に対する損害 5万8204円 A 弁護士費用 5000円 B 合計 6万3204円 (エ) 原告D @ 著作権侵害に対する損害 12万1718円 A 弁護士費用 1万5000円 B 合計 13万6718円 (オ) 原告F @ 著作権侵害に対する損害 35万7451円 A 著作者人格権(氏名表示権)侵害に対する慰謝料 20万円 B 弁護士費用 6万円 C 合計 61万7451円 (カ) 原告E @ 著作権侵害に対する損害 17万9820円 A 著作者人格権(同一性保持権)侵害に対する慰謝料 30万円 B 弁護士費用 5万円 C 合計 52万9820円 (キ) 原告G @ 著作権侵害に対する損害 2万7221円 A 著作者人格権侵害に対する慰謝料 30万円 B 弁護士費用 4万円 C 合計 36万7221円 イ 被告文理 (ア) 原告A @ 著作権侵害に対する損害 3万3572円 A 著作者人格権(同一性保持権)侵害に対する慰謝料 20万円 B 弁護士費用 3万円 C 合計 26万3572円 (イ) 原告B @ 著作権侵害に対する損害 106万7966円 A 著作者人格権(同一性保持権)侵害に対する慰謝料 40万円 B 弁護士費用 15万円 C 合計 161万7966円 (ウ) 原告C @ 著作権侵害に対する損害 2万2394円 A 弁護士費用 3000円 B 合計 2万5394円 (エ) 原告D @ 著作権侵害に対する損害 1万2118円 A 弁護士費用 3000円 B 合計 1万5118円 (7) 被告らは、原告らが第20回弁論準備手続期日において、著作権及び著作者人格権侵害に関する主張を変更し、損害額を増額したことは、時機に後れた攻撃方法に当たるので、同主張を却下すべきである旨主張するが、原告らは、著作権侵害を理由とするものについては、被告らが印刷部数を開示したのでそれを踏まえて損害額を増額したものであって、時機に後れたものということはできないし、著作者人格権侵害を理由とするものについては、原告Aの被告文理に対する損害額の主張、原告Bの被告らに対する本件著作物2−6についての同一性保持権侵害の主張、原告E及び原告Gの被告啓林館に対する同一性保持権侵害の主張を除いては、すでに主張がされていたものであり、同期日で初めてされた上記各主張についても、さらに証拠調べ等を要するものではないから、これによって訴訟の完結を遅延させるものではない。したがって、被告らの主張は理由がない。 7 結論 以上により、原告らの請求は主文の限度で理由がある。なお、既に述べたところからすると、予備的請求は、主位的請求の認容額を超えることがないものと認められるので、予備的請求について、主位的請求とは別に判断することはしないものとする。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官 森義之 裁判官 内藤裕之 裁判官 上田洋幸 (別紙) 遅延損害金一覧表 下記遅延損害金の利率はいずれも年5分である。 1 被告新興出版社啓林館 (1) 原告A 内金7525円に対する昭和62年3月31日から支払済みまで 内金7525円に対する昭和63年3月31日から支払済みまで 内金7525円に対する平成元年3月31日から支払済みまで 内金8146円に対する平成2年3月31日から支払済みまで 内金8146円に対する平成3年3月31日から支払済みまで 内金8146円に対する平成4年3月31日から支払済みまで 内金9494円に対する平成5年3月31日から支払済みまで 内金9494円に対する平成6年3月31日から支払済みまで 内金9494円に対する平成7年3月31日から支払済みまで 内金9494円に対する平成8年3月31日から支払済みまで 内金6万2396円に対する平成9年3月31日から支払済みまで 内金3万1039円に対する平成10年3月31日から支払済みまで 内金1万4196円に対する平成11年3月31日から支払済みまで 内金1万3626円に対する平成12年3月31日から支払済みまで 内金6万7545円に対する平成13年3月31日から支払済みまで 内金25万1352円に対する平成14年3月31日から支払済みまで (2) 原告B 内金2275円に対する昭和57年3月31日から支払済みまで 内金2275円に対する昭和58年3月31日から支払済みまで 内金2511円に対する昭和59年3月31日から支払済みまで 内金2511円に対する昭和60年3月31日から支払済みまで 内金2511円に対する昭和61年3月31日から支払済みまで 内金4万6538円に対する昭和62年3月31日から支払済みまで 内金4万6538円に対する昭和63年3月31日から支払済みまで 内金4万6538円に対する平成元年3月31日から支払済みまで 内金4万9966円に対する平成2年3月31日から支払済みまで 内金4万9966円に対する平成3年3月31日から支払済みまで 内金4万9966円に対する平成4年3月31日から支払済みまで 内金6万4365円に対する平成5年3月31日から支払済みまで 内金6万4365円に対する平成6年3月31日から支払済みまで 内金6万4365円に対する平成7年3月31日から支払済みまで 内金6万4365円に対する平成8年3月31日から支払済みまで 内金38万8360円に対する平成9年3月31日から支払済みまで 内金30万3438円に対する平成10年3月31日から支払済みまで 内金9万6774円に対する平成11年3月31日から支払済みまで 内金6万7482円に対する平成12年3月31日から支払済みまで 内金91万3240円に対する平成13年3月31日から支払済みまで (3) 原告CことC 内金2万3338円に対する平成9年3月31日から支払済みまで 内金1万3490円に対する平成10年3月31日から支払済みまで 内金3967円に対する平成11年3月31日から支払済みまで 内金2925円に対する平成12年3月31日から支払済みまで 内金1万9484円に対する平成13年3月31日から支払済みまで (4) 原告D 内金1452円に対する昭和62年3月31日から支払済みまで 内金1452円に対する昭和63年3月31日から支払済みまで 内金1452円に対する平成元年3月31日から支払済みまで 内金1567円に対する平成2年3月31日から支払済みまで 内金1567円に対する平成3年3月31日から支払済みまで 内金1567円に対する平成4年3月31日から支払済みまで 内金1826円に対する平成5年3月31日から支払済みまで 内金1826円に対する平成6年3月31日から支払済みまで 内金1826円に対する平成7年3月31日から支払済みまで 内金1826円に対する平成8年3月31日から支払済みまで 内金3万1771円に対する平成9年3月31日から支払済みまで 内金1万6510円に対する平成10年3月31日から支払済みまで 内金5127円に対する平成11年3月31日から支払済みまで 内金5663円に対する平成12年3月31日から支払済みまで 内金6万1286円に対する平成13年3月31日から支払済みまで (5) 原告F 内金1万0252円に対する昭和62年3月31日から支払済みまで 内金1万0252円に対する昭和63年3月31日から支払済みまで 内金1万0252円に対する平成元年3月31日から支払済みまで 内金1万1006円に対する平成2年3月31日から支払済みまで 内金1万1006円に対する平成3年3月31日から支払済みまで 内金1万1006円に対する平成4年3月31日から支払済みまで 内金1万2816円に対する平成5年3月31日から支払済みまで 内金1万2816円に対する平成6年3月31日から支払済みまで 内金1万2816円に対する平成7年3月31日から支払済みまで 内金1万2816円に対する平成8年3月31日から支払済みまで 内金7万7769円に対する平成9年3月31日から支払済みまで 内金5万5660円に対する平成10年3月31日から支払済みまで 内金2万2674円に対する平成11年3月31日から支払済みまで 内金1万4595円に対する平成12年3月31日から支払済みまで 内金33万1715円に対する平成13年3月31日から支払済みまで (6) 原告E 内金2700円に対する昭和57年3月31日から支払済みまで 内金2700円に対する昭和58年3月31日から支払済みまで 内金2981円に対する昭和59年3月31日から支払済みまで 内金2981円に対する昭和60年3月31日から支払済みまで 内金2981円に対する昭和61年3月31日から支払済みまで 内金4630円に対する昭和62年3月31日から支払済みまで 内金4630円に対する昭和63年3月31日から支払済みまで 内金4630円に対する平成元年3月31日から支払済みまで 内金5041円に対する平成2年3月31日から支払済みまで 内金5041円に対する平成3年3月31日から支払済みまで 内金5041円に対する平成4年3月31日から支払済みまで 内金7720円に対する平成5年3月31日から支払済みまで 内金7720円に対する平成6年3月31日から支払済みまで 内金7720円に対する平成7年3月31日から支払済みまで 内金7720円に対する平成8年3月31日から支払済みまで 内金5万2420円に対する平成9年3月31日から支払済みまで 内金2万2805円に対する平成10年3月31日から支払済みまで 内金7779円に対する平成11年3月31日から支払済みまで 内金4471円に対する平成12年3月31日から支払済みまで 内金36万8109円に対する平成13年3月31日から支払済みまで (7) 原告G 内金1万1382円に対する平成9年3月31日から支払済みまで 内金4869円に対する平成10年3月31日から支払済みまで 内金980円に対する平成11年3月31日から支払済みまで 内金476円に対する平成12年3月31日から支払済みまで 内金34万9514円に対する平成13年3月31日から支払済みまで 2 被告文理 (1) 原告A 内金1165円に対する平成7年3月31日から支払済みまで 内金1165円に対する平成8年3月31日から支払済みまで 内金2243円に対する平成9年3月31日から支払済みまで 内金6352円に対する平成10年3月31日から支払済みまで 内金4259円に対する平成11年3月31日から支払済みまで 内金3075円に対する平成12年3月31日から支払済みまで 内金1万4080円に対する平成13年3月31日から支払済みまで 内金23万1233円に対する平成14年3月31日から支払済みまで (2) 原告B 内金1万6333円に対する昭和57年3月31日から支払済みまで 内金1万6333円に対する昭和58年3月31日から支払済みまで 内金1万8034円に対する昭和59年3月31日から支払済みまで 内金1万8034円に対する昭和60年3月31日から支払済みまで 内金1万8034円に対する昭和61年3月31日から支払済みまで 内金3万3273円に対する昭和62年3月31日から支払済みまで 内金3万3273円に対する昭和63年3月31日から支払済みまで 内金3万3273円に対する平成元年3月31日から支払済みまで 内金3万6298円に対する平成2年3月31日から支払済みまで 内金3万6298円に対する平成3年3月31日から支払済みまで 内金3万6298円に対する平成4年3月31日から支払済みまで 内金4万2348円に対する平成5年3月31日から支払済みまで 内金4万2348円に対する平成6年3月31日から支払済みまで 内金4万2348円に対する平成7年3月31日から支払済みまで 内金4万2348円に対する平成8年3月31日から支払済みまで 内金20万7885円に対する平成9年3月31日から支払済みまで 内金10万8059円に対する平成10年3月31日から支払済みまで 内金7万5028円に対する平成11年3月31日から支払済みまで 内金5万2456円に対する平成12年3月31日から支払済みまで 内金70万9665円に対する平成13年3月31日から支払済みまで (3) 原告CことC 内金7135円に対する平成9年3月31日から支払済みまで 内金2180円に対する平成10年3月31日から支払済みまで 内金2906円に対する平成11年3月31日から支払済みまで 内金1453円に対する平成12年3月31日から支払済みまで 内金1万1720円に対する平成13年3月31日から支払済みまで (4) 原告D 内金4611円に対する平成9年3月31日から支払済みまで 内金1879円に対する平成11年3月31日から支払済みまで 内金939円に対する平成12年3月31日から支払済みまで 内金7689円に対する平成13年3月31日から支払済みまで |
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