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【事件名】日田市vs別府市 場外車券場建設をめぐる名誉毀損事件
【年月日】平成14年11月19日
 大分地裁 平成13年(ワ)第93号 訂正記事掲載請求事件
 (口頭弁論終結の日 平成14年9月10日)

判決
原告 日田市
同代表者市長 大石昭忠
同訴訟代理人弁護士 梅木哲
被告 別府市
同代表者市長 井上信幸
同訴訟代理人弁護士 内田健
同指定代理人 工藤将之


主文
1 被告は、原告に対し、被告が発行する「市報べっぷ」に、表題2号活字、本文3号活字として、別紙1記載のとおりの訂正記事を掲載せよ。
2 訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
 別紙1を別紙2とするほか、主文1項と同旨
第2 事案の概要
 本件は、原告が被告に対し、被告の発行する広報誌「市報べっぷ」の記事によって名誉を毀損されたとして、不法行為に基づき、原告の名誉を回復するに適当な処分として、訂正記事の掲載を請求している事案である。
1 争いのない事実等(括弧内に証拠番号を記載した事実は、当該証拠により容易に認定できる事実を含む趣旨である。)
(1) 原告は、大分県西部に位置する人口約6万3000人の普通地方公共団体であり、被告は、同県中部に位置する人口約12万5000人の普通地方公共団体であって、被告の市役所広報広聴課は「市報べっぷ」を毎月5万1200部発行し、被告の各世帯に配布している(乙1)。
(2) 被告は、通産大臣(現在の経済産業大臣)の許可を受けて公営自転車競技である「別府競輪」を開催していたが、建設会社である溝江建設株式会社(以下「溝江建設」という。)と被告は、原告の区域内に別府競輪の大規模場外車券売場である「サテライト日田」を建設することを計画した(甲1、乙1、2)。
(3) 溝江建設は、平成9年7月31日、通産大臣に対する「サテライト日田」の設置許可(以下「本件設置許可」という。)の申請書を九州通産局に提出し、通産大臣は、平成12年6月7日、溝江建設に対し「サテライト日田」の設置を許可(以下「本件許可」という。)した(甲1、2、乙1)。
(4) 「サテライト日田」建設計画を察知した原告は、日田商工会議所のほか、原告区域内の市民団体と共同で反対運動を展開し、平成8年10月3日、九州通産局に対して場外車券売場設置を不許可とするよう申し入れ、平成9年1月13日には、原告市長が「サテライト日田」設置に反対する要望書を通産大臣に提出した。
 また、本件設置許可の申請後も、原告市長は、同年8月28日に九州通産局長に対して「サテライト日田」設置反対の意思を表明し、同年9月5日に通産省を訪れて機械情報産業局長及び同局車両課長補佐に対し、「サテライト日田」の設置反対を申し入れ、同月19日にも、原告企画課長らが衆議院議員を同道して通産省を訪れ、機械情報産業局長等に対してその設置反対の意思を伝えた。さらに、原告の総務部長らは、同年10月2日、九州通産局を訪れ、日田市教育委員会の「サテライト日田」の設置に反対する要望書(甲11)を提出しており、同月21日には原告市長が再び通産省機械情報産業局車両課長と面談して、これまでの経過を説明した上で設置反対の意思を表明し、その後も九州通産局に対して場外車券売場設置反対の意見を伝え、平成11年11月30日に原告市長が三度通産省を訪れて機械情報産業局車両課長に設置不許可を要望した(以上、甲2、3、7の1,9ないし11、12、乙2、10)。
(5) 平成12年11月1日発行の「市報べっぷ」平成12年11月号には、別府競輪の現状と課題を展望する「別府競輪はいま・・・」との特集(以下「本件特集」という。)のもとに、本件設置許可に対する別府市の考え方をまとめた項の中で、Aとして、場外車券売場の通産大臣の設置許可まで、「サテライト日田」の場合3年を要した。反対するのであれば、日田市としては、本来、設置許可が出る前に、許可権者である通産大臣に対して明確な反対の意思表示をすべきだったのではないか。」との記述がある(以下「本件記述」という。)。
2 争点
 @原告の名誉権享有主体性、A本件記述の名誉毀損性、B本件記述の真実性及び故意・過失、C名誉回復措置の必要性が争点である。
(1) 原告の名誉権享有主体性
(被告の主張)
 普通地方公共団体である原告に対する名誉毀損はあり得ず、原告は本件訴えの原告適格を有しない。すなわち、原告は、地方自治法2条1項の規定による公法人であるが、名誉毀損の保護法益は、私人の権利保護を図るべきものとして生まれたものであり、公権力行使の主体である国、地方公共団体に対する批判・論評に対して観念されたものではない。また、公権力の行使について国民が自由にこれを批判し、論評することができることは国民主権・民主主義制度の根幹であり、国・地方公共団体の公権力の行使に対する批判については名誉毀損による保護を受けるものではない。
(原告の主張)
 地方公共団体は、公法人とはいえ、私法の分野において一般の法人同様権利義務の主体となり得るものであり、その社会的信用の面においても十分に保護されなければならない。地方公共団体が、一定の目的を持って、自らの機関によりその事務を遂行するには、客観的な社会的評価、信用の基礎が必要不可欠であり、その名誉・信用が毀損されれば公法人にとって計り知れない大きな打撃を与えることになるから、地方公共団体の名誉・信用の維持は、自然人や私法人以上に必要である。
(2) 本件記述の名誉毀損性
(原告の主張)
 本件記述は、単に、「設置許可が出る前に」とするだけで、「設置許可申請後」という限定は加えられていないし、意思表示の方法についても、「許可権者である通産大臣に対して明確な反対の意思表示をすべきだったのではないか」とするだけで、通産大臣に対する要望書の提出の有無については全く触れていないのであるから、本件記述は、本件設置許可申請前を含め、同設置許可までの間に原告が通産大臣に対して明確な反対の意思表示をいかなる方法によってもしていなかったとするものというべきである。
 本件記述が掲載された平成12年11月当時、原告は、原告と共に「サテライト日田」設置反対運動を展開している日田市内の17団体に対し、逐一、通産大臣に対する設置反対の申入れ内容等を説明し、日田市のまちづくりに反する「サテライト日田」の設置運営を断固阻止しようとしていた。このような時期になされた本件記述は、あたかも原告が通産省をはじめ九州通産局その他の関係機関に対して、「サテライト日田」の設置について何ら反対の意思表示をせず、かつ不許可の申入れ等をしていなかったかのごとき誤解を与えるものであり、原告が行ってきた市民団体、日田市議会あるいは国、県、市町村等の関係機関などに対する経過説明、協議内容とは相反するものであることから、原告の言動に対する不信感を生み、ひいては原告の社会的評価の低下あるいは壊滅につながりかねないものである。
(被告の主張)
 本件記述は、本件設置許可申請から同設置許可までの約3年間に原告が通産大臣に反対の要望書を提出するなど明確な意思表示をしていない事実を捉えて、この行政運営を批判したにすぎない。名誉が損なわれたというためには、社会的評価の低下につながりかねないというだけでは不十分というべきであり、本件記述により原告が名誉を毀損されたということはできない。
 地方公共団体の方針や具体的な行政活動を批判・論評し、その論評を文書にして広く住民に訴えることも表現の自由に属し、また、行政という公権力の行使について、これを批判・論評する自由が保障されることは民主主義の根幹である。ゆえに、地方公共団体に対する名誉毀損があり得たとしても、その成立範囲は私人の場合に比較して限られたものと解するべきである。本件記述は、上記のとおり、原告及びその行政担当者の行政運営に対して批判・論評をしたものであるから、名誉毀損は成立しない。
(3) 本件記述の真実性及び故意・過失
(被告の主張)
 本件特集は、公益事業である競輪事業の意義・役割につき、被告市民の理解と協力を求める目的で組まれたものであり、本件記述は上記(2)で述べたとおり、本件設置許可申請から同許可までの約3年間に原告は通産大臣に反対の要望書を提出するなど明確な意思表示をしていないとの認識を記述したものである。
 そして、原告は、平成9年7月31日の溝江建設の本件設置許可申請から平成12年6月7日の本件設置許可までの約3年間に、通産大臣に対して何ら設置反対の要望書を提出していないことは明白である。
 また、仮に、原告が上記期間に通産大臣に対して明確な反対の意思表示をしていたとしても、被告は、被告事業課職員が、原告から開示された反対運動に関する情報に基づき、「サテライト日田」設置等に関する内部協議のために平成10年9月9日付けで作成した「「サテライト日田」場外車券売場設置についての経緯」と題する書面(甲3)に基づいて、同期間に原告が通産大臣に対して明確な反対の意思表示をしていなかったと信じて本件記述をしたのであるから、被告には故意又は過失はない。
(原告の主張)
 本件記述は上記(2)で述べたとおり、本件設置許可申請前を含め、同設置許可までの間に原告が通産大臣に対して明確な反対の意思表示をいかなる方法によってもしていなかったとするものというべきである。
 しかしながら、上記第2、1(4)のとおり、原告は、通産大臣及び九州通産局に対し、口頭又は書面で設置不許可を何度も要望しているのであって、再三再四にわたって明確な反対の意思表示をしている。
 被告は、九州通産局産業部長が被告市長に宛てた平成10年3月23日付け「場外車券売場(サテライト日田)の設置問題について」と題する書面(甲4)や被告職員が作成した上記書面(甲3)及び通産省機械情報産業局車両課長が被告市長に宛てた平成12年1月14日付「競輪場外車券売場(サテライト日田)の設置問題について」と題する書面(甲5)などで原告が通産大臣に対して本件設置許可に反対の意思を表明していることを十分知っており、現に被告市長も、同年2月25日付で、原告や地元住民がこれに反対しているという認識を明確に示した文書を通産省機械情報産業局長に宛てて提出していたにもかかわらず、あえて本件記述をしたものであり、故意又は過失がある。
(4) 名誉回復措置の必要性
(原告の主張)
 「市報べっぷ」の発行部数は5万1200部であり、別府市の各世帯に配布されていること及びその市報という性格からすると、「市報べっぷ」の記事によって原告の受けた社会的評価(名誉・信用)の毀損という損害の回復には、同一の媒体である「市報べっぷ」を通じて名誉回復措置がとられなければならない。この名誉回復の措置としては、別紙2記載のとおりの訂正文を掲載し、真実を明らかにする必要がある。
 また、原告の本件訴訟における主張がマスメディアによって報道されているが、報道機関は、社会の出来事を広く知らせるに当たり、特に裁判で係争中の事実については、中立の立場から当事者双方の主張を掲載するものであり、上記報道によって原告の名誉が回復されたということはできない。
(被告の主張)
 名誉毀損における名誉回復措置としての謝罪文の広告は、損害賠償に代わるものか金銭賠償だけでは回復しがたいと認められる場合に限り認容されるべきものである。
 また、本件請求に係る訂正文は、本件記述の範囲を超えた謝罪を求めるものである。本件記述は、本件設置許可申請から同設置許可のあった約3年間における日田市の行動を論評したものであるのに、上記訂正文は、平成8年9月から本件設置許可申請のあった平成9年7月までの原告の行動や平成8年12月20日の日田市議会の決議、平成9年1月13日の要望書の提出など、本件記述では全く触れていないことに及んでおり、過大な内容である。
 しかも、原告は、「市報べっぷ」に虚偽事実が記載されているなどとして被告に訂正記事の掲載などを求めて送付した通告書を報道機関に開示して原告の主張を説明し、新聞各社は原告の主張を各紙に掲載した。これにより、本件記述に対する原告の主張は十分に別府市民をはじめ県民の知るところとなっている。さらに、原告は、平成13年3月15日に「広報ひた」の号外を発行し、原告の主張を掲載した。
  以上のとおり、本件請求は、本件記述の範囲を超えた訂正を求めるものである上、本件記述と訂正文との均衡、原告の広報紙の発行及び報道機関に対する反論の発表等の諸般の事情を考慮すれば、本件請求に係る訂正文の掲載を命じる必要性はないというべきである。
第3 当裁判所の判断
1 争点(1)(原告の名誉権享有主体性)について
(1) 法人も法律上一個の人格者として名誉権の享有主体性を有するところ、地方公共団体は、一定の地域内における行政を行うことを目的として活動する公法人であり、また、国内に多数存在し、行政目的のためになされる活動等は種々異なり、これを含めた評価の対象となり得るものであるから、それ自体一定の社会的評価を有しているし、取引主体ともなって社会的活動を行うについては、その社会的評価が基礎になっていることは私法人の場合と同様であるから、名誉権の享有主体性が認められる。
(2) この点、被告は、名誉毀損の保護法益は、本来、私人の権利保護を図るべきものとして生まれたものであり、公権力行使の主体である国や地方公共団体に対する批判・論評に対して観念されたものではないから、地方公共団体に対する名誉毀損はあり得ないと主張する。しかしながら、地方公共団体は公法分野において公権力行使の主体である一方、私法分野においては私権の享有主体でありうる以上、私人と同様に名誉権の保護が図られるべきであるから、被告の主張は採用できない。
 また、被告は、公権力の行使について国民がこれを批判・論評できることが国民主権・民主主義制度の根幹であり、したがって、 国や地方公共団体の公権力の行使に対する批判については名誉毀損による保護を受けるものではないと主張する。しかしながら、被告は地方公共団体であり、国民主権ないし民主主義の観点から被告の他の地方公共団体に対する批判・論評を当該地方公共団体の住民その他の国民による批判・論評と同列に扱うことはできない。したがって、被告の主張は採用できない。
2 争点(2)(本件記述の名誉毀損性)について
(1) 乙1によると、本件記述は、上記第2、1(5)のとおり、「反対するのであれば、日田市としては、本来、設置許可が出る前に、許可権者である通産大臣に対して明確な反対の意思表示をすべきだったのではないか。」との記載であり、その直後には、「市民にとって欠かせない別府競輪」の項の中で、「日田市のように、最近になってサテライト反対に回った地区がある一方で、別府市に対して場外車券売場設置を要望している地区もあります。」と記述されていることが認められる。そうすると、本件記述は、原告が本件設置許可前に許可権者である通産大臣に対して明確な反対の意思表示をすべきであったのに同設置許可後に初めて明確な反対意思表示をした趣旨の記載であり、原告の反対の意思表示が時機に遅れて適正でないとの印象を与えるものであるから、本件記述は原告の社会的評価を低下させるものと認められ、その名誉を毀損するものである。
(2) この点、被告は、本件は憲法で保障された表現の自由と地方公共団体の名誉の保護との比較考量が問われる事案であり、また、行政という公権力の行使について、これを批判・論評する自由が保障されることが民主主義の根幹であるから、地方公共団体に対する名誉毀損があり得るとしても、その成立範囲は私人の場合に比較して限定されたものと解するべきであり、本件記述は原告及びその行政担当者の行政運営に対して批判・論評をしたものであるから、名誉毀損は成立しないと主張する。しかしながら、地方公共団体についても私人と同様にその社会的評価が保護されるべきであることは前述のとおりであって、批判や論評であっても名誉を毀損することは許されない。そして、被告は地方公共団体であり、国民主権ないし民主主義の観点から被告の他の地方公共団体に対する批判・論評を当該地方公共団体の住民その他の国民による批判・論評と同列に扱うことはできない。また、被告の主張は、地方公共団体の行政運営に対する社会的評価とこれとは別の地方公共団体自体の社会的評価が峻別できることを前提とするものであるが、これらを果たして峻別できるかどうかははなはだ疑問である。これらのことからすると、被告の上記主張は採用できない。
3 争点(3)(本件記述の真実性及び故意・過失)について
(1) 被告は、本件記述は、地方公共団体である原告が「サテライト日田」の設置について、通産大臣に対する反対の意思表示を全くしていないとの趣旨ではなく、本件設置許可申請から同設置許可までの3年間に意思表示をしていない趣旨であると主張する。しかしながら、本件記述は「設置許可が出る前に」意思表示をしていないと記述しているに過ぎず、その始期については何ら限定されていないし、先に認定した本件記述の直後の記載を併せて解釈すれば、本件記述の趣旨は上記2(1)のとおり理解できるのであって、被告の主張は採用できない。そして、第2、1(3)に判示したとおり、原告は、実際には、本件設置許可に先立って、本件設置許可申請の前後を通じ、通産大臣に対して、書面によるか又は下部機関である九州通産局への口頭の申し入れを通じて、明確な反対の意思表示をしていたのであり、本件記述は真実に反するものと認められる。
(2) そして、証拠(甲2ないし6)によれば、被告は、通産省(本省及び九州通産局)と設置許可申請の前後を通じ再三にわたって折衝の機会をもっており、通産省を通じて原告の動向を容易に知り得たこと、被告は、原告の動向に重大な関心を持ち、原告とも再三にわたって折衝の機会を持っていたこと、原告市長は、平成9年8月20日に、九州通産局に反対の申入れをしている旨を被告助役らに告げていること、被告は、平成10年3月26日、九州通産局産業部長から、「場外車券売場(サテライト日田)の設置問題について」と題する同月23日付け書面(甲4)を受領したが、同書面には、「日田市長、日田市議会及び日田市の民間団体等から「設置反対の要望」が通商産業大臣に提出されている」旨が明記されていたこと、被告は、平成12年1月20日、通産省機械情報産業局車両課長から、「競輪場外車券売場(サテライト日田)の設置問題について」と題する同月14日付け書面(甲5)を受領したが、同書面には、「現在、本場外車券売場を予定している日田市においては、日田市、日田市議会及び地域住民が設置に反対しているところです。」と記されていたこと、被告市長は、同年2月25日、通産省機械情報産業局長に対し、確約書(甲6)を提出したが、同書には、「競輪場外車券売場(サテライト日田)については、日田市、日田市議会及び地元住民が設置に反対しており」との記載がされていたことが認められ、以上を総合すれば、本件記述がされた当時、原告が実際には本件設置許可に先立って、同設置許可申請の前後を通じ、通産大臣に対して、書面によるか又は下部機関である九州通産局への口頭の申入れを通じて、明確な反対の意思表示をしていたことを被告は容易に認識し得たと認定でき、本件記述による名誉毀損について少なくとも重過失があると認められる。
4 争点(4)(名誉回復措置の必要性)について
 上記第2、1の事実によると、「サテライト日田」の設置に対する反対運動について原告住民の関心の高いことが認められるし、地方公共団体が多数の住民に配布する市報という社会的信頼性の高い発行物に本件記述が掲載されたことにより、原告の社会的評価は大きく低下したと認められる。しかも、上記認定のとおり本件記述が被告の少なくとも重過失によるものであることからすると、本件において原告の社会的評価を回復させるための措置として、本件記述が掲載されたと同一媒体である「市報べっぷ」に別紙1のとおりの訂正記事を掲載させることが相当であると認められる。なお、被告の主張するとおり、原告が本件記述の内容に関して原告の市報に自己の主張を掲載し、また、原告の主張を掲載した新聞報道がなされているが、それらによっては、原告が本件記述が事実でない旨主張している事実は広く知られるものの、本件記述が事実でないと認識されるまでには至らないから、原告の社会的評価が回復されたとは到底いえず、上記訂正記事の掲載の必要性は失われない。
5 結論
 以上によれば、名誉回復処分を求める原告の請求は理由があるから、そのための措置として別紙1のとおりの訂正文の掲載を被告に命じることとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。

大分地方裁判所民事第1部
 裁判長裁判官
 裁判官
 裁判官

別紙1
訂正文
 「市報べっぷ」平成12年11月号「競輪特集・別府競輪はいま…」に、『A場外車券売場の通産大臣の設置許可まで、「サテライト日田」の場合3年を要した。反対するのであれば、日田市としては、本来、設置許可が出る前に、許可権者である通産大臣に対して明確な反対の意思表示をすべきだったのではないか。』と、日田市が別府競輪場場外車券売場の設置許可まで通産大臣に対して明確な反対の意思表示をしなかった趣旨の記事を掲載しました。しかし、日田市は、平成8年9月に別府競輪場場外車券売場「サテライト日田」の設置が明らかになって以来、通産大臣に対してその設置反対の要望書を提出するなど、通産大臣の設置許可前から明確な反対の意思表示をしていました。
 前記記事は事実に反する内容でしたので、訂正するとともに、日田市にご迷惑をお掛けしたことをお詫びいたします。
以上

別紙2
訂正文
 市報べっぷ平成12年11月号「競輪特集・別府競輪はいま…」に掲載された、『A場外車券売場の通産大臣の設置許可まで、「サテライト日田」の場合3年を要した。反対するのであれば、日田市としては、本来、設置許可が出る前に、許可権者である通産大臣に対して明確な反対の意思表示をすべきだったのではないか。』という箇所は事実に反する内容でしたので、次のとおり訂正するとともに、これが原因で日田市及び日田市民に多大なご迷惑をお掛けしたことをお詫びいたします。
 記
 日田市は、平成8年9月に別府競輪場場外車券売場「サテライト日田」の設置が明らかになって以来、通産大臣に対してその設置は日田市の目指すまちづくりビジョンにそぐわず、青少年健全育成の環境、市民の生活に多大な影響を与えるとして設置反対の意思を表明していました。また、「公営競技の場外車券売場の設置に反対する決議」を市議会全員一致で決議するとともに、日田市長は平成9年1月13日、通商産業大臣に対し『「サテライト日田」の設置に反対する要望書』を提出する等、通商産業大臣の設置許可が出る前から明確な反対の意思表示をしていました。
 以後、日田市は再三に亘って、九州通産局、通商産業省に対し、設置反対の要望を行い、また市民総意で「サテライト日田」設置反対の行動を展開しています。
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