判例全文 line
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【事件名】浮世絵春画書籍のフォトCD化事件(2)
【年月日】平成14年12月10日
 東京高裁 平成13年(ネ)第5284号 著作権に基づく損害賠償、損害賠償反訴請求控訴事件
 (原審・東京地裁平成11年(ワ)第24998号、平成12年(ワ)第13941号)
 (平成14年10月8日 口頭弁論終結)

判決
控訴人 株式会社櫻桃書房
控訴人 株式会社人類文化社
控訴人ら訴訟代理人弁護士 井上章夫
被控訴人 A
訴訟代理人弁護士 島田修一
同 石井麦生


主文
1 原判決中、反訴請求に関する部分を次のとおりに変更する。
(1) 被控訴人は、控訴人ら各自に対し、178万7562円及びこれに対する平成12年7月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え(ただし、上記178万7562円及びこれに対する平成12年7月8日から支払済みまで年5分の割合による金員は、被控訴人の支払うべき全体の額である。)。
(2) 控訴人らのその余の反訴請求をいずれも棄却する。
2 その余の本件控訴をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は、第1、2審を通じ、10分し、その8を控訴人らの、その余を被控訴人の負担とする。
4 この判決は、第1項(1)に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 控訴人ら
(1) 原判決中、控訴人ら敗訴部分を取り消す。
(2) 被控訴人の請求をいずれも棄却する。
(3) 被控訴人は、控訴人各自に対し、それぞれ1309万8550円及びこれに対する平成12年7月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被控訴人
 控訴人らの控訴をいずれも棄却する。
第2 事案の概要
 @被控訴人は、控訴人株式会社櫻桃書房(以下「控訴人櫻桃書房」という。)及び控訴人株式会社人類文化社(以下、「控訴人人類文化社」という。2社を合わせて「控訴人ら」ということがある。)が被控訴人との出版契約に基づき出版した「浮世絵春画一千年史」(以下「本件出版物」という。)について、上記出版に当たり、本件出版物に収録する写真(浮世絵春画の写真)のデジタルワーク処理を担当した原審被告B(以下、「原審被告B」という。)及び控訴人らによって、被控訴人に無断で、同人が作成した本件出版物のペーパーレイアウト(浮世絵及び解説文の配列について記載したもの。甲第5号証の1〜16。以下「本件ペーパーレイアウト」という。)の内容が改変されたこと、本件出版物の著作者として被控訴人だけでなく原審被告Bをも表示されたことにより、著作者人格権(同一性保持権及び氏名表示権)を侵害された、と主張して、控訴人ら及び原審被告Bに対し、損害賠償を求め(本訴請求)、A控訴人らは、被控訴人に対し、上記契約に基づく本件出版物の出版に当たり、被控訴人の作業の遅れにより損害が生じたとして、損害賠償金の支払を求め、併せて、本件著作物の出版に当たり控訴人らが費用を支出して作成し、被控訴人が現に所持するフォトCD(以下「本件フォトCD」という。)の作成費用等の支払、本件出版物とは別の企画段階で出版が取りやめとなった書籍について控訴人らが被控訴人に支払った印税の返還などを求めた(反訴請求)。原判決は、被控訴人主張の著作者人格権の侵害を認めて本訴請求を一部認容し、反訴請求を全部棄却した。控訴人らは、これを不服として控訴を提起した(なお、原審被告Bは控訴を提起せず、同人との間では、原判決が確定した。)。
 事案の概要は、次のとおり付加するほか、原判決の事実及び理由「第2 事案の概要」のとおりであるから、これを引用する。
1 当審における控訴人らの主張の要点
(本訴請求関係)
(1) 本件ペーパーレイアウトの著作物性
 本件出版物のような美術本においては、文章のみの書籍とは異なり、著作者が作成した編集レイアウトにおいて、作品成立にかかわるすべての表現要素をまとめた編集行為がなされていることによって、初めて、著作者の意図を創作的に表現することが可能となる。
 すなわち、本件ペーパーレイアウトのようなペーパーレイアウトに創作性、著作物性が認められるためには、@レイアウト効果の大半を決定づける様式の8要素である、「視覚度(文字に対し、絵的な要素(写真・イラストなどの画像)が起こす視覚的な強さ)」、「図版率(紙面に占める図(写真・イラストなどの画像)と文章との面積比率)」、「文字のジャンプ率(本文の文字の大きさを基準として、最も大きな見出し文字との大きさの比率)」、「写真(画像)のジャンプ率(最小面積の写真(画像)を基準とした、最も大きな写真(画像)との面積比率)」、「グリッド拘束率(レイアウト用紙上のグリッドに対する編集レイアウトの拘束率)」、「版面率(余白量に反比例。余白量の別称)」、「構成の三原型(ページ全体や、一群の文字を組む方法としての3つの基本組型)」、「書体のイメージ(文字の大きさ、書体、文字修飾など)」、Aレイアウト編集において形を整え完成させる造形の8原則である、「主役の明示」、「準主役は離す」、「グループ化」、「あいまいは不安」、「流れを整理」、「余白は主役の領地」、「四隅をおさえる」、「版面線の利用」、B造形効果を高める基本テクニックである、「リズム」、「対比」、「アクセント」、「比例」、「バランス」、「融合」などの、作品成立にかかわるすべての表現要素をまとめた編集行為がなされていることが必要である。本件ペーパーレイアウトは、上記の作品成立にかかわるすべての表現要素をまとめた編集行為がなされたとはいえないものであり、作品として体をなしていないから、著作権法にいう著作物、すなわち、著作者の意図を創作的に表現したものには当たらない。したがって、本件ペーパーレイアウトが作成されたにすぎない段階では、被控訴人に著作者人格権を始めとする著作権法上の権利は認められない。
 このように、本件ペーパーレイアウトは著作権法にいう著作物ではないにもかかわらず、原判決は、これが著作物であることを前提に、著作者人格権侵害の結論を導いたものであり、その前提において既に誤っている。
(2) 本件出版物の編集レイアウトの著作者について
ア 本件出版物は、次に述べるとおり、原審被告Bがしたデジタルワーク後の浮世絵画像と被控訴人がしたその画像の解説文とがあいまって成立した共同著作物である。
@ 本件出版物中の被控訴人が執筆した解説文の著作者
 本件出版物中、被控訴人が執筆した解説文については、同人が著作者である。
A 本件出版物のレイアウトの素材の一つである、原審被告Bのデジタルワーク後の浮世絵画像の著作者
 春画浮世絵の原画には、著作権は存在せず、被控訴人の所有権も存在しないから、同人が所有する、原画を単に撮影しただけのフィルムに著作権法上の権利が存在することはあり得ず、このフィルムをフォトCD化した際のデジタル画像にも著作権上の権利は存在しない。
 浮世絵画像について、コンピュータグラフィックス(CG)を用いて制作当時の色彩や技巧を余すところなく再現するには、経年変化による損傷や汚れ等を単に除去すればよいというものでなく、浮世絵や仏画分野での造詣による浮世絵特有の色使いや様々な技巧について、日本画家に準じた創作性が不可欠である。このことからすれば、デジタルワーク後の浮世絵画像は、二次著作物であり、その著作者は、原審被告B及びその費用を負担した控訴人らになるというべきである。
B 本件出版物のレイアウトの著作者
 本件ペーパーレイアウトは、原審被告Bのデジタルワークでの編集レイアウトを行うことを前提に作成されたものであること、控訴人らも被控訴人もデジタル出版をするのは初めてであること、被控訴人は、本件ペーパーレイアウトを原審被告Bに届けてからは、本件出版物の編集作業をほどんど原審被告Bに任せきりであったこと、原審被告Bのデジタルワーク(浮世絵画像の再現を含む編集レイアウト)の作業量は膨大であったことを総合すると、被控訴人は、本件出版物の編集レイアウトのほとんどを原審被告Bのデジタルワークに依拠していたということができる。
イ 上に述べたところによれば、本件出版物は、被控訴人と原審被告Bとの共同制作にかかるものであるから、両名の共同著作物であり、かつ、その編集レイアウトの内容の一切は、原審被告Bに任されていたというべきである。そうである以上、原審被告Bが、本件出版物について、本件ペーパーレイアウトと異なる編集行為を行ったこと、被控訴人と原審被告Bとの共同著作物であるとの体裁をとったことは、何ら被控訴人の著作者人格権を侵害するものではない。
(3) 本件出版物の編集、色校正(以下「色校」という。)に関する控訴人らの義務について
ア 被控訴人は、本件出版物の制作に関する控訴人らとの当初の打合せにおいて、デジタル印刷にはほとんどなじみのない控訴人人類文化社の代表者X(以下「X」という。)及び担当社員Y(以下「Y」という。)に対し、本件出版物において、印刷用CDRの制作と色校まではデジタル印刷システムにより被控訴人及び原審被告Bが共同で行う旨説明し、「ABブラザーズの著作になる」などと説明して、被控訴人と原審被告Bとは一体化した編集プロダクションである、との認識を与えた。
 このことは、被控訴人の作成した打合せ書(乙第6号証)の「デジタル印刷」の枠内に、「色補正、編集、印刷用CDR制作(6色分解)」、「A3サイズ・色校、6色、カラープリント」、「CDR制作、A・B、共同制作スタッフ」と記載されていることなどからも明らかである。
 上記の事実関係の下では、仮に被控訴人が本件ペーパーレイアウトにつき著作者としての権利を有するとしても、そのときには、被控訴人は、単独の著作者として、共同制作スタッフである原審被告Bを指揮、監督するなどして、本件出版物の編集と色校を、自らの責任で行う義務を負っており、出版元である控訴人人類文化社は、色校済みの印刷用CDRの完成後、これを印刷所に持参し、CDRの指定どおり刷り上がっているかどうかを確認し、印刷・製本を行うだけで、それ以前の編集、色校については、何らの義務も負わない、というべきである。原審被告Bが、被控訴人に無断で本件ペーパーレイアウトと異なる編集をしたとしても、そのことにつき控訴人らは何らの責任も負わない、というべきである。
 被控訴人は、原審被告Bに本件出版物の編集を任せきりにし、同人に対する指揮監督を怠っておきながら、その責任を控訴人らに転嫁しているにすぎない。
イ 被控訴人は、控訴人人類文化社の担当社員であるYが、本件出版物の色校を確認するよう求めたにもかかわらず、これを行わなかった。被控訴人は、これにより、色校を同人に一任したものというべきである。
(反訴請求関係)
(4) 「浮世絵春画名宝撰(仮題)」の出版企画(以下「名宝撰の出版」という。)における前払金の返還請求
 原判決は、平成10年10月ころ、控訴人らの判断で一方的に名宝撰の出版が中止された、と認定した。しかし、控訴人らは、名宝撰の出版を中止したこともなければ、被控訴人に中止を通告したこともない。同出版が遅延しているのは、被控訴人の作業の遅れによるものである。
 被控訴人には同出版の作業を続ける意思がないものと認められるので、同人に対し、同出版の前払金100万円の返還を求める。
(5) 出版契約書(甲第4号証。以下「本件出版契約書」という。)10条2項に基づく損害賠償請求
 前記のとおり、被控訴人は、「印刷用CDR」を原審被告Bと共同で制作する責任を有し、単独の著作者としてその指揮・監督を行うべき義務があった。本件出版物の刊行が5か月間遅延したのが、原審被告Bの編集作業の遅れに起因するとしても、その責任は、被控訴人にある。
 原判決は、本件出版物の頁数、収録口絵点数、刊行予定日の変更について、控訴人らは当初これを渋ったものの、最終的にはこれを了承した、と認定した。しかし、控訴人らは、被控訴人から本件出版物の増頁の申入れがあった際、同人から、「印刷用CDR」の完成が5か月も遅れる旨の説明が全くなかったので、本件出版企画のそれまでの経緯に照らし、遅くとも2か月程度の遅れですむとの判断の下に、被控訴人の申入れを受け入れ、新聞広告による予約募集中などの刊行の準備も、2か月程度の遅れを前提に、それに合わせて行ったものである。被控訴人に、本件出版物の刊行が遅れたことによる費用の増加分につき、本件出版契約書に基づく支払責任があることは、明白である。
(6) 予約募集の新聞広告代に関する損害賠償請求
 本件出版物の刊行が遅れたことによる新聞広告等の費用の増加分について、被控訴人に損害賠償の義務があることは、上に述べたことから明らかである。控訴人らが、特に刊行時期が確実でない段階でも本件出版物の広告をしていること、常に一定期間ごとにあらかじめ新聞等の広告スペースを予約していること、広告の都度、適当な同社の出版物の広告でこのスペースを埋めていること、は、新聞広告の費用が増加していないことの根拠にはならない。
(7) フォトCD化の費用の返還請求
 本件フォトCDは、本来、フォトCD化の費用を負担した控訴人らの所有に属するものである。
 被控訴人は、控訴人らに、本件フォトCDを渡さなければ、別に出版を予定している「百花繚乱」の執筆を中止するなどと告げて、本件フォトCDを引き渡すよう強要して、その引渡しを受け、これを所持しており、控訴人らからの返還請求に応じないことが明白である。控訴人らは被控訴人に対し、不当利得返還請求権又は損害賠償請求権(不法行為を理由とするもの)に基づき、フォトCD化の費用に当たる178万7562円の支払を求める。
(8) 原審被告Bに支払った立替金の負担
 被控訴人は、本件出版物の単独の著作者として、本件出版物の著作に要する費用は被控訴人の負担とするとの本件出版契約書10条の規定に基づき、控訴人らが原審被告Bに支払った250万円を負担すべきである。
(9) 慰謝料
 控訴人らは、被控訴人から本件出版物の増頁の申入れがあった際、同人から印刷用CDRの完成が5か月も遅れる旨の説明が全くなかったので、本件出版物の出版企画のそれまでの経緯に照らし遅くとも2か月程度の遅れですむとの判断の下に被控訴人の上記申入れを受け入れ、新聞広告による予約募集等の刊行の準備もこれに合わせて継続したため、上記完成の遅れにより、一般購読者及び大取次等に対し、著しくその信用を失墜し、重大な損失を被ったものであるから、慰謝料請求が認められるべきである。
2 当審における被控訴人らの主張の要点
(本訴請求関係)
(1) 本件ペーパーレイアウトの著作物性について
 著作権法12条1項は、編集著作物の成立要件について、「編集物でその素材の選択又は配列によって創作性を有するものは、著作物として保護する」と規定している。同条項によれば、編集物についての編集著作物としての成立要件は、当該編集物における素材の選択又は配列に創作性が認められるか否かのみであって、それ以外にない。
 素材の選択又は配列に創作性が認められるためには、素材の選択又は配列に著作者の精神的活動の成果が現れていることをもって足りる。
 これを本件ペーパーレイアウトについてみると、被控訴人は、春画浮世絵の分野における自らの学識・造詣を発揮して、同人が保有する膨大な浮世絵コレクションのフィルムの中から美術的価値のあるものを選別し、歴史的順序やデザイン上の観点から配列したものであり、被控訴人の精神活動の成果として創作性がある。
 本件ペーパーレイアウトは、単なるスペースの割付けではなく、素材の取捨選択、素材の組合せ、素材が持つ歴史的意味等についての被控訴人の学識、知見、造詣が反映されたものである。このため、本件出版物は、本件ペーパーレイアウトに全面的に依拠して、その出版が計画されたのである。
(2) 本件出版物の編集レイアウトの著作者について
ア デジタルワーク後の浮世絵画像の著作者について
 本件出版物においてデジタル処理が採用されたのは、現物である浮世絵を正確かつきれいに(汚れや傷がないように)再現することに意義があったからである。本件におけるデジタル処理においては、むしろ、デジタル処理をする者の創作性は排除されるべきものと想定されていた。実際にも、写真の選定やそのレイアウト(順番、大きさ、配置など)は、被控訴人が指定しており、デジタル処理後の色使いも被控訴人がチェックすることになっていたのであって、そこに原審被告Bの創作性が入り込む余地はなかった。同人に期待されていたのは、浮世絵や仏画分野での造詣ではなく、デジタル処理を施す技術であった。
 本件デジタル処理を施した後の浮世絵画像につき、原審被告Bが著作権法上の著作者の地位に立つことは、あり得ない。
イ デジタル処理のもととなった写真に関する権利について
 本件においてデジタル処理のもととなった写真は、被控訴人の長年培ってきた知識、経験、技量に基づき、対象物である浮世絵が最も美しくかつ魅力的に再現されるように配慮されて撮影されたものであるから、被控訴人の著作物に当たるというべきである。
 仮に、上記写真に著作物性がなかったとしても、写真自体は被控訴人の所有物であり、被控訴人は、その写真に現れた情報を管理する権原を有する。
 被控訴人は、本件出版物を作成する限りにおいて、その所有する写真の利用を許したにすぎず、それ以外に「情報」が利用されることまでは許容していなかった。
ウ 被控訴人が、編集レイアウトの内容の一切を、原審被告Bに任せたということはない。原審被告Bが行ったデジタルワーク及びCDRへの変換は、創作性のない下職としての作業にすぎない。
(3) 本件出版物の編集、色校に関する控訴人らの義務について
ア 本件出版物については、以下の工程を経て作業が進められた。
@ フィルムの選別
A ペーパーレイアウトの作成、解説文の執筆
B フィルムをデジタル処理してフォトCDに変換
C ペーパーレイアウトにフィルムを貼付
D デジタルワーク
E 印刷作業のためCDRに変換
F 校正(文字校正、色校正、レイアウト校正)
G 印刷して出版
 以上のうち、被控訴人が行うのは@、A、C、Fで、原審被告Bが行うのは、D、Eである。被控訴人は、Cまで終了したので、解説原稿とペーパーレイアウト(本件ペーパーレイアウト)を控訴人人類文化社の担当社員であるYに渡した。Yは、同ペーパーレイアウトを原審被告Bに届けてデジタルワークを依頼し、解説原稿は社内で校閲した上で校正を被控訴人に頼んできた。原審被告Bは、デジタルワーク作業を進めてCDRに変換し、これをYに渡した。Yは、CDRに基づく色校とレイアウト校正を被控訴人に求めるべきであったのに、これを省略して印刷に回し出版してしまった。
 このように、控訴人らは、上記8段階中の印刷前の最後の段階であるFの校正を省略したものである。
 控訴人人類文化社の代表者であるX及び担当社員であるYは、原審被告Bが完成した画像とテキスト文を入れて構成したCDRを、市販のプリンターにより印刷してカラーカンプを作成し、これを見た際、カラーカンプが本件ペーパーレイアウトどおりでなく、被控訴人に無断で改変した部分があることを知ったにもかかわらず、出版を急ぐ余り、被控訴人にこのことを告げず、被控訴人の指示どおりできているとの虚偽の事実を伝え、意図的に被控訴人から校正の機会を奪ったのである。
 控訴人らは、出版元である控訴人人類文化社は、色校済みの印刷用CDRの完成後、これを印刷所に持参し、CDRの指定どおり刷り上がっているかどうかを確認し、印刷・製本を行う義務を負うだけで、それ以前の編集、色校については、何らの義務も負わない、と主張する。しかし、Fの校正は、著作者である被控訴人が、原画に忠実になされているか、本件ペーパーレイアウトどおりに配列されているかどうか、傷、染みが除去されているかどうかを最終確認する重要な作業であり、著作者にしかできない代替性がないものである。控訴人人類文化社のYには、原審被告Bが作ったCDRを被控訴人に届けて最終確認をさせる義務があった。まして、前記のとおり、カラーカンプを見て本件ペーパーレイアウトの内容と異なっていることを認識したのであれば、その差異を被控訴人に伝えて意見を聴取することは、出版社の当然の責務である。
イ 被控訴人が、控訴人人類文化社の担当社員であるYに対し、たとい黙示的意思表示によるにせよ、色校を一任することは、上記の経過に照らし、あり得ないことが明らかである。
(反訴請求関係)
(4) 名宝撰の出版における前払金の返還請求について
 控訴人らの主張は争う。名宝撰の出版の企画が控訴人らの都合で中止となったからこそ、本件出版物の制作が可能となったのである。中止になってから本件紛争に至るまでの間、控訴人らから、名宝撰の出版の件はどうなったか、などの問合わせがなされたことも全くない。
(5) 本件出版契約書10条2項に基づく損害賠償請求について
 控訴人らの主張は争う。本件出版契約書を締結した平成11年3月20日の時点でも、控訴人らから、出版の遅れは控訴人の責任である、といった指摘は全くなされていない。
 本件出版契約書は、本体価格を5800円としていることからも分かるとおり、最終的に合意した頁数、口絵数などを前提に作成されている。本件出版契約書は、平成11年3月20日に何らの留保文言なく作成されているから、それ以前の「修正増減」に関する費用は、同項の対象とならない。仮に同項の対象となったとしても、その費用は「通常の費用」と考えるべきである。本件出版契約書10条2項は、「修正増減」に関する条項であり、「遅れ」に関する条項ではない。
(6) 予約募集の新聞広告代に関する損害賠償請求について
 控訴人らの主張は争う。出版の時期が平成11年4月になることは、被控訴人と控訴人らとの間の合意となっていた。同年3月20日の本件出版契約書作成の時点において、控訴人らから、被控訴人に対し、出版の遅れの責任が追及されたことはなく、一般購読者や取次会社から控訴人らに対し苦情があったとの報告が被控訴人に対しなされたこともなかった。
 また、「出版が4月になったこと」と「新聞広告代分が損害となったこと」との因果関係が不明である。実際に新聞広告され、広告としての効果が上がったのであれば、それはそもそも損害ではない。
(7) フォトCD化の費用の返還請求について
 控訴人らの主張は争う。本件出版物の出版のための作業工程の一環として、元の材料をデジタルデータ化(フォトCD化)したものであり、その費用は正に出版のための費用であって、控訴人株式会社櫻桃書房が負担すべきものである(本件出版契約書10条1項。甲第4号証)。
(8) 原審被告Bに支払った立替金の負担について
 控訴人らの主張は争う。控訴人らの主張どおりであるとすると、被控訴人は全く利益の上がらない仕事を引き受けたことになってしまう。
(9) 慰謝料について
 控訴人らの主張は争う。本件出版物の出版は、当初想定していたスケジュールと比較して後ろにずれ込んだが、その後ろにずれ込んだ新たなスケジュールを前提に、平成11年3月20日に本件出版契約書が作成されている。被控訴人は、本件出版契約書どおり義務を履行したのであるから、控訴人らの、被控訴人の仕事の遅れを理由とした請求は根拠を欠いている。
第3 当裁判所の判断
1 本件の事実関係
 本件の事実関係は、原判決の事実及び理由のうち、「第3 当裁判所の判断」の「1 本件における事実関係等」欄記載のとおりであるから、これを引用する。
2 本訴請求について
 当裁判所も、被控訴人の本訴請求は、控訴人らに対し、連帯して100万円及びこれに対する平成11年11月12日から支払済みまでの年5分の割合による金員を支払うよう求める限度では理由があると判断する。その理由は、次のとおり付加するほかは、原判決の事実及び理由のうち、「第3 当裁判所の判断」の「2 本件著作物の著作物性及び著作者」(ただし、25頁15行〜17行の「そこには作業者自身の創作的要素が介在するものではないから、処理された結果としての画像に作業者が著作権を取得するものではない。」との部分を除く。)及び「3 本訴請求について」の各欄記載のとおりであるから、これを引用する。
(1) 本件ペーパーレイアウトの著作物性について
 控訴人らは、ペーパーレイアウトに創作性、著作物性が認められるためには、作品成立にかかわるすべての表現要素をまとめた編集行為がなされていることが必要であり、具体的には、様式の8要素、造形の8原則、造形効果を高める基本テクニックである「リズム」、「対比」、「アクセント」、「比例」、「バランス」、「融合」などの各要素をまとめた編集行為がなされていることが必要であるのに、本件ペーパーレイアウトは、このような編集行為がなされていないから、創作性、著作物性を認めることはできない、と主張する。
 著作権法2条1項1号は、「著作物」の定義として「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と規定するのみである。同法12条1項は、編集物の著作物性について、「編集物(データベースに該当するものを除く。以下同じ。)でその素材の選択又は配列によって創作性を有するものは、著作物として保護する。」と規定するのみである。
 本件ペーパーレイアウトは、被控訴人がその編集方針に従い、同人が世界各地で撮影した膨大な写真の中から、主要なものを選択し、選択した写真とこれについて被控訴人が執筆した解説文を、同人の長年に及ぶ学識、知見に基づいて、時代別に体系的に構成し配列したものであるから、素材である写真及び解説文の選択と配列により被控訴人の思想又は感情を創作的に表現したものであって、学術、美術の範囲に属するものということができ、著作物性を優に認めることができる。
 レイアウト基礎講座と題するテキスト(乙46号証の3ないし27)中には、レイアウトに関し、原告主張の各要素についての記載があることが認められる。しかしながら、上記記載に係る要素は、レイアウトの効果を高めるために考慮すべき要素として記載されているものにすぎず、その要素が一つでも欠ければ、レイアウトとしておよそ成り立たないとされるようなものではなく、上記要素すべてを備えているわけではないからといって、直ちに、著作権法上の著作物性が否定されることになるものではないことは、明らかである。
 控訴人らの主張は採用することができない。
(2) 本件出版物の編集レイアウトの著作者について
 控訴人らは、本件出版物の編集レイアウトは、被控訴人と原審被告Bとの共同著作物である、と主張する。
 原審被告Bのなすべきものとされていたデジタルワーク作業は、原判決の認定するとおり、浮世絵画像から年月の経過による損傷や汚れを除去することにより浮世絵の作成当時における色彩を忠実に復元するというものであるから、専門的な技術及び経験を必要とする作業であり、少なくとも、作業者の技術、経験により出来映えに巧拙の差が生ずるものである。原判決は、上記デジタルワーク作業は、作業者自身の創作的要素が介在するものではないから、処理された結果としての画像につき作業者が著作権法上の著作者としての地位を取得するものではない、との趣旨の判断をした。
 弁論の全趣旨によれば、上記デジタルワーク作業において、浮世絵画像の制作当時の色彩や技巧を再現するには、年月の経過による損傷や汚れを単に機械的に除去する技術だけではなく、浮世絵特有の色使いや様々な技巧についての作業者の造詣をも活用することが不可欠であることが認められる。このような作業者の造詣の内容(この中に、作業者の思想や感情が含まれることは、当然である。)によって、デジタルワーク作業の結果に、作業者の個性が表われることは明らかであるから、デジタルワーク後の画像自体には、創作性があり、その限度で著作物性が認められるというべきである。この点において、当裁判所は、原判決とは見解を異にする。
 しかしながら、原審被告Bにデジタルワーク作業後の画像に対する上記の意味での著作者としての権利があるからといって、そのことから、直ちに、原審被告Bに、本件出版物の出版に向けての作業の過程において、被控訴人の単独著作物である本件ペーパーレイアウトの内容を改変する権限があるとすることができるものではないことは、明らかである(このことは、原判決も仮定的に説示するところである。)。そして、このことは、仮に、原審被告Bの上記の意味での著作者性に着目して、本件出版物を同人と被控訴人との共同著作物と呼ぶことにしても、変わるところはない。共同著作者の一人であるからといって、共同著作者中の他の者が単独で著作するものとされている部分につき、その内容を改変することが許されるものではないことは、いうまでもないことであるからである。
 控訴人らは、被控訴人が原審被告Bに対し、本件ペーパーレイアウトの内容を改変する権限を与えたと主張する。しかしながら、このような授権の事実を認めるに足りる証拠はない。甲第5号証の1ないし16によれば、本件ペーパーレイアウトは、被控訴人の手書きのものであり、余白部分の寸法等、厳密に指定されていない部分もあることが認められるから、原審被告Bの判断に任されている部分もあるとはいえるものの、それは、いずれも改変にわたらない範囲内でのことにすぎないというべきである。
 控訴人らは、被控訴人がデジタルワーク作業を原審被告Bに任せきりにしていた、と主張する。しかしながら、デジタルワーク作業をその能力を有する原審被告Bのみに任せるのは当然のことであって、そのことから、同人に本件ペーパーレイアウトの内容を改変する権限まで与えたことになるものではないことは明らかである。また、原審被告Bの本人尋問の結果により、被控訴人は、原審被告Bのデジタルワーク作業の過程において、原審被告Bが作業の妨げになると感ずるほどに、電話をかけたり、作業所を訪れたりして、原審被告Bに対し作業内容についての指示などをしていることが認められるから、被控訴人が、デジタルワーク作業を原審被告Bに任せきりにしていた、との主張は、根拠がないというべきである。
 上記のとおり、原審被告Bは、デジタルワーク後の画像自体について著作者としての地位を有するから、本件出版物において、画像自体についての上記の意味での著作者としての氏名表示権を有することは当然である。しかしながら、本件の事実関係の下においては、本件出版物において、原審被告Bの氏名をどのような形で表示するかの権限は、同人の氏名表示権を侵害しない限度で、本件ペーパーレイアウトの著作者である被控訴人が有していたというべきである。甲第5号証の1ないし16によれば、本件ペーパーレイアウトにおいて、原審被告Bの氏名は、本件出版物の1頁目の見開きの右側頁に「全画像調整3Dデジタルワーク−B」とのみ記載することと指定されていたことが認められ、この記載は、原審被告Bの、デジタルワーク後の画像自体の著作者としての氏名表示として十分なものであるというべきである。原審被告Bが自己の氏名表示権に基づき、自己の氏名を、上記被控訴人の指定に反して、本件出版物の任意の個所に自由な方法によって表示することが許されると解すべき根拠はない。
 控訴人らの主張は、いずれも採用することができない。
(3) 本件出版物の編集、色校に関する控訴人らの義務について
 控訴人らは、本件出版物についての出版契約上、控訴人らは、印刷用CDRに基づき印刷、製本を行うだけで、それ以前の編集、色校については何らの義務も負わないから、原審被告Bが被控訴人の意思に反して本件ペーパーレイアウトを改変した内容の印刷用CDRを作成したとしても、そのことについて、控訴人らには何らの責任もない、と主張する。
 しかしながら、前記引用に係る本件の事実関係についての原判決の認定のとおり、本件において、控訴人人類文化社の担当社員であるYは、原審被告Bから報酬の増額要求が入れられなければ仕事を辞めると告げられたことから、同人をなだめるため、被控訴人に無断で、原審被告Bにおいて本件出版物のレイアウトを自由にやってよい、一切を任せる旨を告げ、控訴人人類文化社の代表者のXもこのことを了承したこと、Y及びXは、原審被告Bが作成した印刷用CDRを市販のプリンターで印刷したカラーカンプを見て、その中に本件ペーパーレイアウトどおりでなく、原審被告Bが自分の判断で改変した部分があることを知ったことが認められるのであり、このような事実関係の下では、改変の事実を被控訴人に知らせるべき注意義務があったというべきである。控訴人らは、上記改変の事実を知りながら、故意にその事実を被控訴人に告げないままにしたのであるから、共同不法行為により被控訴人の著作者人格権(同一性保持権及び氏名表示権)を侵害したものというべきである。
 控訴人らは、その主張の根拠として、本件出版物についての出版契約締結に当たり行われた打合せにおいて作成された打合せ書(乙第6号証)の記載を挙げる。上記打合せ書には、本件出版物の制作の工程について、@カラー・リバーサル・フィルム、AフォトCD入力(64ベース)・スキャンニング、Bコンピューター・グラフィック、コンピューター・デジタル・レタッチ(DTP)、色補正、編集、印刷用CDR制作(6色分解)、CA3サイズ、色校、6色、カラープリント、D刷版(6色オフセット)、E製本、F完成、の順に行うこと、@ないしCは、まとめて「デジタル印刷システム」と呼ぶ工程であること、DないしFは、「印刷会社」において行う工程であること、CDR制作については、被控訴人及び原審被告Bが共同制作スタッフであることが記載されている。しかしながら、上記記載からは、印刷用CDRの制作を被控訴人及び原審被告Bが行い、完成した印刷用CDRに基づいて印刷を行うといった、大まかなことが把握できるにとどまり、これを根拠に、上記認定の事実関係にかかわらず、控訴人らには、印刷用CDRの内容に関し、一切責任がない、と解することはできない。
 控訴人らは、控訴人人類文化社の担当社員であるYが、被控訴人に対し、本件出版物の色校の確認をするよう求めたにもかかわらず、被控訴人はこれを行わなかったとして、これを前提に、被控訴人は、Yに黙示的に色校を一任した、と主張する。乙第30号証及び証人Yの証言中には、Yが、被控訴人に対し、静岡県沼津市の印刷工場での本件出版物の印刷に立ち会うよう求めたところ、被控訴人から、Yに対し立会のすべては任せる、と告げられた、との部分があるものの、これらの供述及び記載は、被控訴人本人の供述に照らし採用することができない。仮に、被控訴人がYに対し印刷の立会いを任せたことが認められるとしても、そのことは、控訴人らが、本件ペーパーレイアウトが被控訴人に無断で改変された部分があることを知りながら、これを被控訴人に知らせるべき義務を免除したとまで評価し得るようなものではないことは明らかである。他にも、被控訴人が本件レイアウトの改変があってもこれを不問に付する、という内容の意思表示をしたとの評価を可能とする事実を認めるに足りる証拠はない。
 控訴人らの主張は、採用することができない。
3 反訴請求について
 当裁判所は、控訴人らの反訴請求は、本件フォトCD作成費用相当額の金員の支払請求についてのみ理由があり、その余は理由がないと判断する。その理由は、次のとおり付加するほかは、原判決の事実及び理由のうち、「第3 当裁判所の判断」の「4 反訴請求について」欄記載のとおり(ただし、「(4) フォトCD作成の立替金及び被告両会社の被告Bへの立替金250万円について」のうち、フォトCD作成の立替金に関する部分を除く。)であるから、これを引用する。
(1) フォトCD化の費用の返還請求について
 本件フォトCD作成の費用を、控訴人らが負担すべきであると解すべきことは、原判決29頁18行ないし30頁17行に記載されたとおりであるから、引用する。しかしながら、本件フォトCD作成の費用を控訴人らが負担する以上、作成された本件フォトCDの所有権は、反対の結論に導く特別の事情が認められない限り、控訴人らに属するものと解するのが相当である。ところが、上記特別の事情に該当する事実は、本件全証拠によっても認めることができないから、本件フォトCDの所有権は、少なくとも当初は、控訴人らに属したということができる。
 被控訴人が本件フォトCDを占有していることは、弁論の全趣旨により明らかである。本件訴訟において、控訴人らは、所有権に基づきフォトCDの返還請求をすることをしないで、返還を求めてもこれに応じないことは明らかであるとして、その返還を求める代りに、本件フォトCD作成費用相当額の支払を求めている。控訴人らが返還請求をしても、被控訴人がこれに容易に応じるとは考えられない状態にあることは、弁論の全趣旨で明らかである。
 被控訴人が、本件フォトCDの占有権原(所有権の取得によるものを含む。)を有することは、本件全証拠によっても認めることができず、むしろ、そのような権原がないことが弁論の全趣旨で認められる。控訴人らは、本件フォトCDの所有権に基づき被控訴人に対しその返還を請求することができる状態にあるものと認められる。また、被控訴人らの所有に属する本件フォトCDを権原なく占有し、その返還を請求してもこれに容易に応じない態度をとることは、反対の結論に導く特別の事情が認められない限り、それ自体、控訴人らに対する不法行為を構成するものというべきである。そして、上記特別の事情に当たる事実は本件全証拠によっても認めることができない。
 このような場合、本件フォトCDの所有者である控訴人らは、所有権に基づく返還請求権の行使が可能であっても、本件フォトCD自体の返還を求めることなく、その取得に要した費用に当たる額の支払を求めることは、不法行為に基づく損害賠償請求として許されるものと解するのが相当である。このような不法行為により生じた損害の回復の方法の一つとして、本件フォトCD自体の回復の実現を断念する代りに、その価値に見合う額の金員の支払を受けるということを、他のもの(例えば、本件フォトCD自体の返還を求めつつ、返還によって補えないものを金銭で請求するなど)とともに認め、その選択を許すとすることには、不法行為という制度の目的に照らし、十分合理性があるということができるからである。
 控訴人らは本件フォトCDの作成費用として合計178万7562円を負担している(乙第22号証の1ないし8、弁論の全趣旨)から、特段の事情が認められない限り、本件フォトCDには少なくとも同額の価値があるというべきである。そして、上記特段の事情は本件全証拠によっても認めることはできない。
 控訴人らは、被控訴人に対し、不法行為に基づく損害賠償請求権に基づき、178万7562円及びこれに対する平成12年7月8日(反訴状送達の日の翌日)から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができるというべきである。
(2) 上に述べたところによれば、控訴人らの反訴請求は、上記(1)の限度で理由があり、その余は理由がない。
第4 結論
 以上のとおりであるから、原判決のうち、反訴請求に関する部分を主文第1項のとおり変更することとし、その余の本件控訴はいずれも理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法67条、61条、64条、65条を、仮執行の宣言につき同法259条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

東京高等裁判所第6民事部
 裁判長裁判官 山下和明
 裁判官 阿部正幸
 裁判官 高瀬順久
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