裁判の記録 line
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2021年
(令和3年)
[7月〜12月]
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7月7日 ソフトバンクへの発信者情報開示請求事件N
   東京地裁/判決・請求棄却
 ホステル事業への投資勧誘を業とする原告が、氏名不詳の発信者がツイッター上に原告が著作権を有する原告従業員のプロフィール写真を載せて原告の著作権を侵害し、ホステル投資詐欺に関わるツイートを載せて原告の名誉を傷つけたとして、経由プロバイダである被告ソフトバンクに対し、発信者情報の開示を求めた事件。
 裁判所は、原告に本件写真の著作権が帰属するとは言えず、また本件ツイートにより原告の名誉が毀損されたことが明白であるとは言えないとして、原告の請求を棄却した。
判例全文
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7月16日 訴状のブログ公開事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 弁護士である原告は別件名誉棄損訴訟の訴訟代理人であり、被告は同訴訟の被告の一人であるが、被告は別件訴訟の第一回口頭弁論期日の前に、原告の作成した訴状を無断で自らのブログの中で公表した。本件は原告が被告に対し、被告の上記行為は別件訴状に係る原告の著作権及び著作者人格権を侵害するものであるとして、慰謝料30万円の支払いを求めた事件。
 裁判所は被告による著作権及び著作者人格権侵害を認め、被告の法40条や41条の類推適用・適用の主張を退けて、被告に慰謝料2万円の支払いを命じた。
判例全文
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7月20日 朝日ネットへの発信者情報開示請求事件C
   東京地裁/判決・請求認容
 原告が、氏名不詳者が被告朝日ネットのネット接続サービスを介してツイッター上に投稿した記事は、原告がインスタグラム上に掲載した写真の著作権を侵害し、また原告の名誉やプライバシーを侵害するものであるのは明らかだとして、被告に対して氏名不詳の投稿者の発信者情報開示を求めた事件。
 裁判所は原告の主張を認め、被告に対して発信者情報の開示を命じた。
判例全文
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7月20日 ソネットへの発信者情報開示請求事件I
   東京地裁/判決・請求認容
 小説執筆者である原告が、氏名不詳者がビットトレント方式を利用して被告の小説を原作とする漫画を、被告ソニーネットワークコミュニケーションズの提供するネット接続サービスを通じて公衆送信するなどして著作権が侵害されたとして、被告に対し、発信者情報の開示を求めた事件。
 裁判所は原告の主張を認め、被告に対して発信者情報の開示を命じた。
判例全文
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7月29日 段ボール生産管理ソフト事件
   大阪地裁/判決・本訴請求認容、反訴請求棄却(控訴)
 本訴は、段ボール生産管理システムソフトの著作権がソフト開発会社である原告にあるにもかかわらず、当時原告代表であった被告Pがその任務に違反し、被告会社と共謀して被告会社にライセンス料名目で1490万円余を支払い原告に損害を与えたとして、原告が被告らに対し、上記額の支払いを求めると共に、原告が本件著作権を有することの確認を求めた事件。反訴は、被告会社が原告に対し、ライセンス契約に基づき未払いライセンス料596万円余の支払いを求めた事件。
 裁判所は、ソフト開発の経緯を詳しく検討し、ソフトの著作権が原告にあることを認め、本件販売契約は無効であるとして、被告らに損害額の支払いを命じた。反訴請求は、被告に請求権がないとして棄却した。
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8月10日 著作権の相続事件
   東京地裁/判決・本訴請求一部認容、一部棄却、
        反訴請求一部認容、一部棄却
 故人である作家の著作権は、妻も亡くなったあと、子供たち4人が共有し、その一人である原告の父が利用許諾等の管理を行い、父没後は原告が行っていたが、原告と作家の残りの子供たち(被告ら)との間で著作権の収益分配方法等で紛争となった。本訴:原告は、原告が著作権の四分の一の共有持分を有すること及び原告が共有著作権の行使の代表者の地位にあることの確認を求め、反訴:被告らは、著作権の管理をしていた原告の父及び原告において、経費として計上した金員の一部には理由がない等として、不当利得の返還を請求した。
 裁判所は、原告が著作権の共有部分を有することは確認したが、共有部分の行使の代表者の地位にあるとの主張は退けた。反訴に対しては、原告の管理部分に関して不当利得があるとして、被告ら各人への支払いを命じた。
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8月18日 水虫治療キットの商品説明文事件
   東京地裁/判決・請求認容
 化粧品ネット販売会社である原告が英国法人製作の白癬菌治療キットを販売・宣伝するに際し説明文を使用したところ、海外化粧品ネット販売業者である被告が、原告説明文は被告の説明文の著作権を侵害し被告の著作者人格権を侵害するとして300万円の損害賠償金を請求した。本件はこの事実関係を前提に、原告が被告に対し、被告説明文に係る著作権及び著作者人格権侵害に基づく損害賠償債務の存在しないことの確認を求めた事件。
 裁判所は被告説明文には全体として著作物性が認められないとして、原告の請求には理由があるからこれを認容するとした。
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8月20日 女子プロレス“コスチューム”事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 イベント会社である原告会社が、女子プロレスラータレントである被告に対し、被告が原告会社の著作物であるコスチュームのデザイン画を無断で使用してコスチュームを制作したことが著作権侵害であるとして賠償金216万円余の支払いを求めるとともに、原告会社の代表者とマネジメント実務担当者(原告ら)が被告に対し、被告が立て替えていない代金を立て替えたかのように装って原告らから11万5千円を騙し取ろうとし脅迫したとして、原告らに賠償金50万円の支払いを求めた事件。
 裁判所は、原告会社は被告に対してデザイン画およびそのコスチュームの使用を許諾していたものというべきとして、また被告による詐欺行為や脅迫行為は認められないとして、原告側の主張を認めず、請求を棄却した。
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8月20日 ソフトバンクへの発信者情報開示請求事件Q
   東京地裁/判決・請求認容
 原告が、被告ソフトバンクに対し、氏名不詳者が原告の著作物である写真を被告の提供する設備を利用してツイッター上に無断で投稿し、原告の著作権が侵害されたとして、ツイッター社から得たIPアドレスとログイン日時による発信者情報の開示を求めた事件。
 裁判所は原告の主張を認め、被告に発信者情報の開示を命じた。
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8月27日 ヘアースタイルの写真無断掲載事件
   東京地裁/判決・請求認容
 ネット上で美容室の広告サイト用ヘアスタイル写真の利用サービスを提供している会社(原告)が、そのサービスを利用した美容室経営者(被告)に対し、被告が、サ―ビス利用規約に反して登録店舗以外の店舗の広告サイトに写真を掲載した上、契約解除後も広告サイトに写真を掲載し続けて、原告の著作権を侵害したとして、写真の削除と、登録手数料相当損害金及び令和3年6月までの利用料相当損害金合計196万円の支払い、並びにそれ以降も掲載を続けている店舗での1カ月3万円の割合による利用料相当損害金の支払いを求めた事件。
 裁判所は原告の主張を認めて、被告に、写真の削除、196万円の支払い、令和3年7月から写真削除まで1カ月3万円の割合による金員の支払いを命じた。
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8月27日 BitTorrent“アダルト動画”事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 自分の著作物であるアダルト動画を、ビットトレントと呼ばれるP2Pファイル共有ソフトを利用してアップロードされ著作権を侵害されたとして、アダルトビデオ製造販売会社が、発信者情報開示請求によって情報を得た11人の利用者に損害賠償請求したところ、利用者(原告ら)が製造販売会社(被告)に対し、本件著作物に係る著作権侵害に基づく損害賠償債務が存在しないことの確認を求めた事件。
 裁判所は、原告らの主張を退けて、原告2人を除く原告9人はお互いに他のユーザーとの共同不法行為によって本件著作物の送信可能化権を侵害したと認め、また被告の主張を退けて、原告らが自ら本件ファイルを他のユーザーに送信することができる間に限り不法行為が継続していると解すべきと判断して、各自のアップロードの始期と終期を検討、ダウンロード回数、基礎販売価格を勘案して、各自の損害賠償額を算定した。
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9月3日 GMOインターネットへの発信者情報開示請求事件C
   東京地裁/判決・請求認容
 競馬予想情報提供会社である原告が、氏名不詳者によりネット上のウェブページに原告が著作権を有する写真を掲載され著作権が侵害されたとして、当ページのサーバを管理していた被告GMOインターネットに対し、発信者情報の開示を求めた事件。
 裁判所は原告の主張を認め、被告に発信者情報の開示を命じた。
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9月6日 エックスサーバーへの発信者情報開示請求事件C
   大阪地裁/判決・請求認容
 YouTubeで動画配信チャンネル「感動アニマルズ」を運営し動画テロップを創作したとする原告が、氏名不詳者が被告エックスサーバーの管理するサーバを使用してウェブサイトに投稿した記事により著作権を侵害されたとして、被告に対し発信者情報の開示を求めた事件。
 裁判所は原告の主張を認め、被告に発信者情報の開示を命じた。
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9月17日 ビジネスソフトウェアの表示画面事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 書店業務管理のためのソフトウェアBook Answer 3を製造販売している原告が、被告が製造販売するソフトウェアの表示画面は原告製品の表示画面を複製又は翻案したもので、原告の著作権および著作者人格権を侵害するとともに、原告製品の周知な表示画面と類似の表示画面を使用して不正競争行為に該当するとして、被告に対し、侵害行為の差止め、記録媒体からの抹消、損害賠償金4214万円余の支払いを求めた事件。
 裁判所は両表示画面を対比した結果、両者の共通する部分はいずれもアイデアに属する部分か一般的な指標や情報に過ぎないと判断、複製又は翻案該当性を否定した。また原告製品の編集著作物性も否定、不競法に関する原告の主張も認めず、請求を棄却した。
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9月29日 放置系RPG“放置少女〜百花繚乱の萌姫たち〜”事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却、追加請求棄却
 ネットサービス会社である一審原告が、関連2会社と共に「放置少女」という放置系RPGに係る5つの著作権を共有しているところ、スマホアプリ企画制作会社である一審被告が「戦姫コレクション」というゲームを制作配信する行為は本件著作権を侵害しているとして、被告ゲームの差止めと削除、損害金5760万円の支払いを求めた事件の控訴審。
 一審東京地裁は、原告が本件著作権の共有持分権を有することを認めた上で、被告ゲームの著作権侵害を認めず、原告の請求を棄却したが原告が控訴した。
 知財高裁は原審の判断を維持し、控訴人の主張を認めず、控訴を棄却した。
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9月30日 ソフトバンクへの発信者情報開示請求事件O
   東京地裁/判決・請求認容
 レコード制作会社である原告が、氏名不詳者が被告ソフトバンクの用いる通信設備を経由したファイル交換ソフトの使用によって、原告がレコード製作者の権利を有するレコードの送信可能可権を侵害されたとして、被告に対し、発信者情報の開示を求めた事件。
 裁判所は原告の主張を認め、被告に発信者情報の開示を命じた。
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9月30日 文章に依拠したイラストの翻案権侵害事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 一審原告が、一審被告がウェブサイトに掲載した文章及びイラストは、原告がツイッター上に載せたイラスト及び文章に依拠して制作されたものであるから原告の翻案権、公衆送信権及び同一性保持権を侵害するとして、被告に対し、掲載記事の削除と賠償金394万円余の支払いを求めた事件の控訴審。
 一審東京地裁は、被告作品は原告作品の表現それ自体でない部分や創作性のない部分の依拠であるとして、原告の主張を退けて請求を棄却したが、原告が控訴した。
 知財高裁も原審の判断を維持して控訴を棄却した。
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10月7日 ソフトバンクへの発信者情報開示請求事件L(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 漫画家でイラストレーターである一審原告が、一審被告であるソフトバンクに対して、原告の作品が氏名不詳者により、被告の提供するプロバイダを経由してビットトレントを通じて送信され著作権を侵害されたとして発信者情報の開示を求めた事件の控訴審。一審東京地裁は原告の主張を認め、請求を認容したが、被告が控訴した。
 被告=控訴人は、この件の通知は一対一対応の通信に過ぎずプロバイダ責任制限法2条一号の「特定電気通信」に該当しない、権利侵害が明白であるとは言えないと主張したが、知財高裁はこれを認めず、控訴を棄却した。
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10月7日 「文藝春秋」投稿文改変事件(2)
   知財高裁/判決・一部変更、一部控訴棄却
 一審原告は、月刊誌「文藝春秋」を発行する一審被告・株式会社文藝春秋に投稿文を投稿したが、被告はこれを変更した上で本件月刊誌に掲載した。この裁判は、原告が被告に対し、この変更は原告の著作者人格権を侵害すると主張して、慰謝料60万円を請求した事件の控訴審。一審さいたま地裁は人格権侵害による不法行為の成立は認めた上で、後に本件月刊誌に謝罪文が掲載されたこと等により損害はすでに填補されたとして原告の請求を棄却したが、原告が控訴した。
 知財高裁は、同意の範囲外である変更箇所は修正したが人格権を侵害する不法行為であることを認め、更に本件変更は原告の意見の主要な部分に関わるものであって、意見の趣旨に触れることのない謝罪文の掲載によって人格権侵害の損害が大きく回復されたものとは言えないとして、原審の判決を一部変更し、被告に10万円の慰謝料支払いを命じた。
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10月12日 フリー素材の“CCライセンス”事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 カメラマンである原告が、著作者名等を表示することを条件に無償での利用を許諾するCCライセンスを付して自分の撮影した写真を写真共有サイトに投稿したところ、起業家養成セミナー運営業者である被告が、原告の氏名等を表示せずに自身の運営するサイトに掲載したことについて、被告に対し、損害賠償金36万円余の支払いを求めた事件。
 裁判所は、CCライセンスを付した権利者が違反行為に対して請求できるのは利用の差止めだけであるという被告の主張を退け、ライセンス条件が満たされていない場合は原告は許諾していなかったものとみなされるとして公衆送信権と氏名表示権の侵害があったと判断、損害賠償請求権を認めて、被告に賠償金5万円の支払いを命じた。
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10月14日 ソネットへの発信者情報開示請求事件J
   東京地裁/判決・請求認容
 共にレコード製作会社である原告らが、ソニーネットワークコミュニケーションズ(被告)に対し、氏名不詳者による被告の提供するネット接続サービスを経由したファイル交換ソフトの使用によって原告らのレコード製作者の権利(送信可能化権)を侵害されたとして、発信者情報の開示を請求した事件。
 裁判所は原告らの主張を認め、被告に氏名不詳の発信者情報の開示を命じた。
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10月15日 NTTドコモへの発信者情報開示請求事件D
   東京地裁/判決・請求認容
 原告が、被告NTTドコモに対し、氏名不詳者が被告の提供する設備を利用して、ツイッター上に原告の著作物であるイラスト自画像をプロフィール画像として使用した記事を投稿し、著作権、名誉権等を侵害されたとして、ツイッター社から得たIPアドレスとログイン日時による発信者情報の開示を求めた事件。
 裁判所は原告の主張を認め、被告に発信者情報の開示を命じた。
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10月18日 NTTぷららへの発信者情報開示請求事件D
   東京地裁/判決・請求認容
 ポケモンに関するウェブサイトをYouTube上で運営しコミュニティサイトで会員との交流を図っている原告が、被告NTTぷららの設備を経由してのネット上での氏名不詳者による動画の配信により、原告が著作権を有するコミュニティサイト上の投稿の著作権が侵害されたとして、被告に対して、発信者情報の開示を請求した事件。
 裁判所は原告の主張を認め、被告に対して発信者情報の開示を命じた。
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10月19日 ソフトバンクへの発信者情報開示請求事件P
   東京地裁/判決・請求認容
 原告が、氏名不詳者が被告ソフトバンクを経由プロバイダとしてブログサービス「5チャンネル」に投稿された記事により、原告がインスタグラムに投稿した文章及び写真の著作権が侵害されたとして、被告に対して発信者情報の開示を求めた事件。
 裁判所は原告の主張を認め、被告に発信者情報の開示を命じた。
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10月26日 プロバイダ各社への発信者情報開示請求事件
   東京地裁/判決・請求認容
 原告が、被告ソフトバンク、被告GMOインターネット、被告ジェイコム埼玉、被告ビッグローブの4社に対し、氏名不詳者が被告らの提供する設備を利用してウェブサイトに投稿した記事に原告の著作物である動画の静止画像を貼付したことにより原告の著作権が侵害されたとして、発信者情報の開示を求めた事件。
 裁判所は原告の主張を認め、被告らに発信者情報の開示を命じた。
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10月27日 コンサルティング“すごい会議”事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 「すごい会議」を推進し、経営コンサルティング、出版、講演会の企画運営等をする一審原告会社が、経営コンサルティングを業とし、「侍会議」を行う一審被告会社らに対し、著作権侵害、不正競争防止法違反を理由として、また原告会社の代表を務める一審原告Aが被告らに対し、著作者人格権を理由として、被告レジュメや被告ノウハウの表現の部分の不使用や廃棄、キャッチコピー文言の不使用、動画の削除、損害賠償金の支払い等を求めた事件の控訴審。一審東京地裁は、原告ワークブックと被告レジュメにおける部分の表現に著作物性を認めず、キャッチコピーの著作物性も認めず、不正競争防止法違反の主張も容れずに、原告の請求を棄却したが、原告が控訴した。
 知財高裁は一審の判断を維持し、著作権侵害性を否定、控訴を棄却した。
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10月28日 JASRACへの演奏利用許諾拒否事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 演奏家である一審原告X1がJASRAC(一審被告)に対し、被告が同原告によるライブハウス「Live Bar X.Y.Z.→A」における演奏利用許諾申込みを拒否したことが、同原告の権利、演奏の自由、著作者人格権を侵害する等と主張して、被告に対し、慰謝料等合計220万円の支払いを要求し、同じく演奏家であるX2、X3が被告にそれぞれの主張による要求をした事件の控訴審。一審東京地裁は原告の主張を認めず、請求を棄却したが、原告らが控訴した。
 知財高裁も一審の判断を維持し、控訴を棄却した。
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10月28日 貴船神社の広報写真事件
   大阪地裁/判決・請求棄却
 カメラマンである原告が、貴船神社(被告)が保有する神社社殿、風景、行事等の写真データは原告が著作権を有する著作物で、被告に無償で利用を許諾したものであるから、原告が利用許諾を解約したあとに被告がネット上に写真データを掲載した行為は、原告の著作権を侵害すると主張して、被告に対し、掲載等の差止め、抹消、廃棄を求めるとともに損害賠償金3009万円の支払いを求めた事件。原告は令和元年9月に当月末までのサイト上からのすべての削除を求めたが、被告は2年11月ないし12月まで展示するなどしていた。
 裁判所は、原被告間の継続的関係性から、被告による信頼関係を損なうような写真使用事情が主張されていない以上、一方的な使用禁止は許容されず、相手方に損害を与えない合理的な期間を設定した上での解約通知であるべきと判断、被告の展示停止はその期間内であり、著作権侵害は認められないとして、原告の請求を棄却した。
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10月28日 KDDIへの発信者情報開示請求事件R
   東京地裁/判決・請求認容
 原告が、被告KDDIに対して、原告の著作物であり原告が部屋で自撮りした複数の写真が被告の提供する設備を利用してツイッター上に無断で投稿され、著作権を侵害されたとして、ツイッター社から得たIPアドレスとログイン日時による発信者情報の開示を求めた事件。
 裁判所は原告の主張を認め、被告に発信者情報の開示を命じた。
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10月28日 KDDIへの発信者情報開示請求事件S
   東京地裁/判決・請求認容
 共にレコード製作会社である原告らが、KDDI(被告)に対し、氏名不詳者による被告の提供するネット接続サービスを経由したファイル交換ソフトの使用によって原告らのレコード製作者の権利(送信可能化権)を侵害されたとして、発信者情報の開示を請求した事件。
 裁判所は原告らの主張を認め、被告に氏名不詳の発信者情報の開示を命じた。
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10月29日 バニーガール衣装事件
   東京地裁/判決・本訴請求棄却、反訴請求一部認容、一部棄却
 本訴は、バニーガール衣装を製造販売する原告が、被告に対し、被告のバニーガール衣装の製造販売行為は原告商品に対する不正競争行為に当たり、被告商品は著作物である原告商品の著作権を侵害するとして、被告商品の販売差止めと廃棄、損害賠償金193万円余の支払いを求めたもの。反訴は、被告が原告に対し、原告によるツイッター等への記事投稿は虚偽の事実の告知又は流布に当たり被告の名誉を棄損、また原告による本訴提起は濫訴であると主張して、告知流布の差止めと損害賠償金160万円余の支払いを求めたもの。
 裁判所は不正競争行為及び原告商品の著作物性を認めず、本訴を棄却、反訴に対しては原告の記事投稿が虚偽に事実の告知流布に当たり、被告の名誉を棄損すると認めて、原告に賠償金55万円余の支払いを命じた。
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11月9日 CADプログラムの海賊版事件
   大阪地裁/判決・請求認容
 機械や構造物の設計、製図等のCAD機能等を有するアプリケーションソフトの著作権者である原告が、原告製品の海賊版をネットオークションサイトを使って販売した被告に対して、著作権侵害を理由に、損害合計の一部である6000万円の支払いを求めた事件。被告はこの海賊版販売の刑事裁判で、既に懲役刑及び罰金刑の判決を受けている。
 裁判所は原告の主張を認め、被告に6000万円の支払いを命じた。
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11月11日 自然保護センターの展示システム事件
   大阪地裁/判決・請求棄却(控訴)
 福井県(被告)の運営する自然保護センターのインターネット展示システムを構築等した会社(原告)が、被告に対し、被告が本システムに手を加えた行為は著作者人格権侵害であるとして差止と廃棄、また同行為と共に本件サーバ設計書を第三者に開示した行為は原被告間の使用許諾契約の債務不履行だとして差止と廃棄、並びに本件開示行為による損害賠償金8569万円の支払いを求めた事件。
 裁判所は、本件展示システムに本件サーバ設計書とは別の著作物性があるとする原告の主張を認めず、また原告は本件使用許諾契約の不履行を理由とする差止め請求権及び損害賠償請求権を有しないとして、原告の請求を棄却した。
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11月12日 KDDIへの発信者情報開示請求事件T
   東京地裁/判決・請求認容
 YouTube上で多数の動画の配信などを行っている原告が、ツイッターにおいて氏名不詳者の投稿により、原告の名誉権、著作権、営業権などが侵害されたとして、ツイッター社から開示を受けた本件記事のアカウントからのログイン時とIPアドレスを元に、被告KDDIに発信者情報の開示を求めた事件。
 裁判所は原告の主張を認め、被告に発信者情報の開示を命じた。
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11月12日 ブルーホストインクへの発信者情報開示請求事件
   東京地裁/判決・請求認容
 原告が、米国法人である被告ブルーホスト・インクに対し、被告の提供するウェブサイトに投稿された記事により、原告の名誉及び信用が毀損されたとして、プロバイダ責任制限法に基づき、記事投稿者の情報の開示を求めた事件。
 被告は裁判所に出頭せず、書面等の提供もなかったが、裁判所は被告が日本で事業を行うものであると認めるのが相当であり、本件は日本に国際裁判管轄があるというべき、という判断をした上で、被告は原告の主張を認める自白をしたものとみなし、被告に発信者情報の開示を命じた。
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11月17日 朝日ネットへの発信者情報開示請求事件D
   東京地裁/判決・請求認容
 原告が、被告朝日ネットに対し、氏名不詳者が被告の提供する設備を利用してウェブ上の電子掲示板に原告がブログ上に載せていた自撮り写真を投稿したことにより著作権を侵害されたとして、発信者情報の開示を請求した事件。
 裁判所は原告の主張を認め、被告らに発信者情報の開示を命じた。
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11月29日 医療情報プログラム“HealthECO”事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 健康診断費用請求用提出データを処理するプログラムの著作権を有する健診システム開発会社(一審原告)が、医師会等からの委託を受けて保険請求を代行するデータ作成会社(一審被告会社)とその代表者(一審被告A)に対し、被告会社が本件プログラムをその使用許諾契約に反する態様により使用したと主張して、差止めと廃棄、損害賠償金の支払い、違約金の支払いを求めた事件の控訴審。一審東京地裁は被告会社によるプログラムの著作権侵害行為を認め、原告の請求の一部を認容する判決をしたが、被告が控訴した。
 知財高裁は原審の判断を維持して、控訴を棄却した。
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12月2日 学術論文の共同著作事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 研究者である一審原告が、同じく研究者であり原告の妻(当時)である一審被告に対し、被告が本件論文を作成し被告の名前でネット上に公開したことが、原告とCが創作した共同著作物の著作権を侵害し著作者人格権を侵害するとして損害賠償金支払いを請求した事件の控訴審。一審東京地裁は、本件論文の元となった著作物は原告とCとの共同著作物であることを認めたが、原告とCとは被告に対し、被告が本件著作物を複製することを許諾し、当該複製物の公衆への提示に際し、原告の氏名を著作者名として表示しないことを合意したと認めるのが相当であるとして、原告の請求を棄却したが原告が控訴した。
 知財高裁は原審の判断を維持して、控訴を棄却した。
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12月7日 ラネットへの発信者情報開示請求事件
   東京地裁/判決・請求認容
 アダルトビデオの製作販売会社である原告が、氏名不詳者によって原告の著作物であるアダルト動画から抜き出して作成した画像がネット上に公開され、原告の著作権が侵害されたとして、本件投稿の開示関係役務提供者であるラネット(被告)に発信者情報の開示を求めた事件。
 裁判所は原告の主張を認め、被告に情報の開示を命じた。
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12月8日 公園遊具“タコの滑り台”事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 タコの形状を模した滑り台を製作し全国に設置している公園施設設計施工会社(一審原告)が、同業の公園施設設計施工会社(一審被告)に対し、原告のタコ滑り台が美術の著作物又は建築の著作物に該当し、被告がタコの形状を模した滑り台2基を製作した行為が原告の著作権を侵害するとして、損害賠償金を請求した事件。一審東京地裁は遊具として実用に供されることを目的とするタコ滑り台は、実用目的と分離して美的特性を備えている部分を把握できるものとは認められないから美術の著作物とは認められないとし、建築の著作物性についても同様に判断して、原告の請求を棄却したが、原告が控訴した。
 知財高裁も原審の判断を維持し、控訴を棄却した。
判例全文
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12月8日 「ホンダ50年社史」事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 『いつか勝てる−ホンダが二輪の世界チャンピオンに復帰した日』という書籍の著者であるフリーライターの原告が、自動車会社である被告によって平成11年に発行された『語り継ぎたいことチャレンジの50年』と題する被告社史は原告の書籍を無断で翻案したものであるとして、被告に対し、不当利得返還請求権に基づき、200万円の支払いを求めた事件。
 裁判所は、言語の著作物における翻案の意義、判断基準について言及した後、原告の提示した20か所の記述対比表を逐次検討して、いずれも創作的表現において同一性を有するとは認められないとして翻案該当性を否定、請求を棄却した。
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12月10日 NTTドコモへの発信者情報開示請求事件E
   東京地裁/判決・請求認容(控訴)
 原告が、被告NTTドコモに対し、氏名不詳者が被告の提供する設備を利用して、ツイッター上に投稿を行った行為により、その各投稿にスクリーンショット画像として添付された原告の投稿(言語の著作物)の著作権を侵害されたとして、発信者情報の開示を請求した事件。
 裁判所は原告の主張を認め、被告に発信者情報の開示を命じた。
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12月16日 NTTぷららへの発信者情報開示請求事件E
   東京地裁/判決・請求認容
 原告が、被告NTTぷららに対して、氏名不詳者が被告の提供する設備を利用して、原告が著作権を有する写真をツイッター上に投稿され、著作権を侵害されたとして、ツイッター社から得たIPアドレスとログイン日時による発信者情報の開示を請求した事件。
 裁判所は原告の主張を認め、被告に発信者情報の開示を命じた。
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12月21日 海賊版サイト「漫画村」広告掲載事件
   東京地裁/判決・請求認容(控訴)
 漫画家である原告が、ネット上の漫画閲覧サイトに原告の漫画が無断掲載されているところ、ネットの広告を取り扱う広告代理業者である被告2社がそのサイトの管理者に広告掲載料として運営資金の提供をすることにより、上記公衆送信権侵害を幇助したとして、共同不法行為者の責任に基づき、被告らに損害賠償金1100万円の支払いを求めた事件。
 裁判所は原告の主張を認め、その請求を認容して、被告ら2社に連帯して1100万円の支払いを命じた。
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12月21日 GMOインターネットへの発信者情報開示請求事件D
   東京地裁/判決・請求認容
 漫画家・同人作家として活動している原告が、被告GMOインターネットに対し、氏名不詳者が被告の提供するサービスを利用してツイッター上の投稿サイトに原告のイラストを添付した記事を投稿され、原告の著作権、名誉権、プライバシー権等が侵害されたとして、発信者情報の開示を請求した事件。
 裁判所は原告の請求を認め、被告に発信者情報の開示を命じた。
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12月21日 編み物動画の“YouTube”公開事件
   京都地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 編物動画の投稿者である原告が、YouTubeに投稿した動画が、被告ら(別の編物動画の投稿者とその者が経営する古美術商の共同経営者)からの著作権侵害に関する通知によって削除されたことは不法行為に当たるとして、損害賠償金18万円余の支払いを請求した事件。尚、原告動画は本件侵害通知の法的要件不備により復元されている。
 裁判所は、原被告の投稿動画を検討して原告動画による著作権侵害を認めず、被告編物動画投稿者の侵害確認の不備による注意義務違反の重過失を認めて、被告らに対し、損害賠償金等7万円余の支払いを命じた。
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12月22日 弁護士懲戒請求書の著作物性事件(2)
   知財高裁/判決・一部取消、控訴棄却
 弁護士である一審原告から懲戒請求を受けた弁護士であるY(一審被告)が自らのブログ上に掲載した原告への反論記事に関し、@Yが原告の氏名を明示して掲載したことが原告のプライバシーを侵害するとともに、原告の氏名が記載された懲戒請求書をPDFファイルに複製してネット上にアップロードした上、本件記事内に同ファイルへのリンクを張った行為が著作権及び著作者人格権(公表権)を侵害し(第1事件)、A第1事件におけるYの訴訟代理人となった弁護士Z(一審被告)が、第1事件の訴えの提起後に自らのブログ記事にYのブログ記事へのリンクを張ったことが、前記著作権及び著作者人格権侵害の幇助に当たるとして(第2事件)、原告が、Yに対して記事の削除と慰謝料の支払い、Zに対して慰謝料の支払いを求めた事件の控訴審。
 一審東京地裁は、本件懲戒請求書の著作物性を認め、Yの著作権侵害と著作者人格権侵害を認めたが、プライバシー侵害、Zの幇助、原告に発生した損害は認めず、Yにブログ記事内の懲戒請求書ファイルの削除を命じて、その他の請求を棄却したが、原告及び被告が控訴した。
 知財高裁は権利濫用の成否について検討し、Yの権利濫用の抗弁を全面的に認めて、一審判決を一部変更、Yに命じたブログ記事内の懲戒請求書ファイルの削除を取り消して、原告の請求を棄却、控訴も棄却した。
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12月23日 ツイッターへの発信者情報開示請求事件C
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 イラストレイターである原告が、氏名不詳者によりツイッターにおいて、トレース疑惑の書き込みと共に原告のイラストを加工するなどして掲載され、著作権および著作者人格権を侵害され、名誉毀損等されたとして、被告ツイッター社に対して、発信者情報の開示を請求した事件。
 裁判所は被告の主張を認め、発信者情報の一部を開示するよう被告に命じた。
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12月23日 プロバイダ各社への発信者情報開示請求事件B
   東京地裁/判決・請求認容
 原告が、被告GMOインターネット及び被告ビッグローブに対して、氏名不詳者が被告らの提供するネット接続サービスを経由してネット上の投稿サイトに投稿した記事(写真とコメント)により、原告の著作権及び肖像権が侵害されたとして、発信者情報の開示を求めた事件。
 裁判所は原告の請求を認め、被告らに発信者情報の開示を命じた。
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12月23日 無断掲載写真の“損害賠償額”事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 写真会社である原告会社とその代表者である原告カメラマンが、被告の管理するウェブサイトに原告カメラマンが撮影した写真が無断掲載され、原告会社の著作権及び原告カメラマンの著作者人格権が侵害されたとして、被告に対し、原告会社への損害賠償金128万7千円及び原告カメラマンへの損害賠償金16万5千円の支払いを求めた事件。
 裁判所は被告による著作権侵害及び著作者人格権侵害を認め、被告に、原告会社へ11万円、原告カメラマンへ5万5千円の支払いを命じた。
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12月23日 ツイッターへの発信者情報開示請求事件E
   東京地裁/判決・請求認容
 山岳写真専門のフォトグラファーである原告が、氏名不詳者がツイッターのアカウントのプロフィール画像としてアップロードした画像は、原告が撮影・加工した画像を改変したものであり、原告の著作権・著作者人格権が侵害されたとして、ツイッターを運営する被告に、発信者情報の開示を請求した事件。
 裁判所は原告の主張を認め、被告に情報の開示を命じた。
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12月24日 類似標章“ANOWA”事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 商業施設設計管理会社である原告が、化粧品等製造販売会社である被告に対し、@被告の標章が原告の標章の著作権を侵害しているとしてその妨害排除と妨害予防を、A被告が不正目的をもって原告と同一の商号を使用しているとして被告の商号の使用差止めを、B被告が原告のものと類似するドメイン名を使うのは不正競争防止法違反であるとして、その使用の差止めを求めた事件。
 裁判所は、@原告標章の著作物性を検討してこれを認めず、A所在地も業種も異なる双方の商号の一致は不正目的をもってなされたものではないとし、B被告ドメイン名は商品名に相当するにすぎず不正なところはないとして、原告の請求を棄却した。
 なお裁判所は早期解決を図るため、被告標章のデザイン変更という和解案を示したのに対し、被告は応じる構えをみせたが、原告が受け入れなかったため、和解は打ち切られた。
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