判例全文 | ![]() |
|
![]() |
【事件名】朝日ネットへの発信者情報開示請求事件D 【年月日】令和3年11月17日 東京地裁 令和3年(ワ)第21012号 発信者情報開示請求事件 (口頭弁論終結日 令和3年10月1日) 判決 原告 X 同訴訟代理人弁護士 臼坂富士彦 同 森島崇行 被告 株式会社朝日ネット 同訴訟代理人弁護士 福本悟 主文 1 被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 主文同旨 第2 事案の概要 1 本件は、別紙原告写真目録記載の各写真(以下、同目録の番号に従い「原告写真1」などといい、総称して「原告写真」という。)を含む4枚の写真(以下「原告写真等」という。)の著作権者であると主張する原告が、インターネット上のウェブサイトの電子掲示板にされた別紙投稿写真目録記載の写真(以下「本件投稿写真」という。)の投稿により、原告写真等に係る著作権(複製権及び公衆送信権)又は原告の肖像権を侵害されたとして、被告に対し、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき、別紙発信者情報目録記載の各情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の各証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実をいう。なお、証拠を摘示する場合には、特に記載のない限り、枝番を含むものとする。) (1)原告は、自らを被写体として、自己の携帯電話端末で原告写真を撮影し、平成22年7月14日(原告写真1)、平成23年2月20日(原告写真2)及び平成28年10月11日(原告写真3)、自らのブログ「XBlog」に投稿した(甲4、5)。 (2)氏名不詳の発信者(以下「本件発信者」という。)は、令和3年3月26日午後0時10分24秒、インターネット上の電子掲示板「ホストラブ」の「インスタ(省略)X」と題するスレッド(https://以下省略)に、本件投稿写真のほか、「Xも整形前(1、2枚目、9年前)に比べてマシになって」というメッセージを含むツイート記事のスクリーンショットを掲載し、次に掲げる文章を併せて投稿した(甲3。以下、この投稿を「本件投稿」という。)。 「Twitterでこんな事書かれた位なんだから子供居て住まいも分かってる人も多いし変な返し危ないよ 大ちゃんと別れたら寂しいって色んな男に手を出してはポイポイ捨ててたし ステマやブランド投資案件の件とか色々嫌ってる人もいるだろうし子供が心配」 (3)本件投稿は、被告の管理する別紙投稿写真目録記載のIPアドレスからされたものである。また、被告は、プロバイダ責任制限法4条1項の開示関係役務提供者に該当し(甲1の2・3)、本件発信者情報を保有している。 3 争点 (1)本件投稿による権利侵害の明白性(争点1) ア 著作権侵害の明白性(争点1−1) イ 肖像権侵害の明白性(争点1−2) (2)正当な理由の有無(争点2) 第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1−1(著作権侵害の明白性)について (原告の主張) 本件投稿写真は、原告のブログにある原告写真等の複製物であるところ、原告写真等は、原告による撮影を通じて、構図、撮影アングルなどの点において原告の思想又は感情が創作的に表現されたものであるから、著作物に当たる。それにもかかわらず、本件発信者は、本件投稿に際し、原告の承諾なく原告写真等を複製してインターネット上の電子掲示板に本件投稿写真を掲載したのであるから、本件投稿が、原告写真等に係る原告の複製権及び公衆送信権を侵害することは明らかである。 (被告の主張) 次に掲げる事情によれば、本件投稿が、原告写真等に係る原告の複製権及び公衆送信権を明白に侵害するものということはできない。 (1)原告写真等は、プロのカメラマンが一定の目的をもって撮影したものとは異なり、誰が撮影しても同じような内容になる写真であって、殊更構図やアングルに創作性があるということはできないから、著作物とはいえない。 (2)本件投稿の内容は、「危ないよ」、「子どもが心配」などとして原告やその子供を案じるものであるから、本件投稿写真の掲載を原告写真等に係る原告の複製権及び公衆送信権の侵害と捉えることには、疑問がある。 (3)原告写真等は、原告のブログで公表された写真であるところ、ブログに掲載されているブロガーの写真を、そのファン等が、他に一切転用してはならない義務まであるかは疑問がある。万一、ファンが好意的に拡散した場合に、常に当該写真の転用が複製権等を侵害したものと断ずることができるかは不明である。 2 争点1−2(肖像権侵害の明白性)について (原告の主張) 本件投稿写真は、原告を被写体とするものであるところ、原告は、一般の私人にすぎず、その掲載につき許諾をしたこともない。また、本件投稿は、誹謗中傷を加えながら原告の容貌を嘲笑し又は揶揄するものであって、原告の肖像を使用する正当な目的や必要性はなく、本件投稿写真が、原告のブログで公表された写真を複製したものであるとしても、社会生活上受忍すべき限度を超えている。 したがって、本件投稿が、原告の肖像権を侵害することは明らかである。 (被告の主張) 本件投稿写真をみても、被写体が原告であるかは不明であり、仮に、被写体が原告であるとしても、本件投稿は、「危ないよ」、「子どもが心配」などとして原告やその子供を案じるものであって、原告の容貌等を誹謗中傷するものではないから、原告の肖像自体を晒すことが目的でないのは明らかである。また、原告は、20万人を超えるフォロワーを持つインスタグラマーであって、広く知られた存在であることからすると、批判的意見や忠告があっても、なお表現の自由の範囲内にあるということができる。加えて、原告は、インスタグラムで、その容貌等を公表しているのであるから、自己の容貌等を知られたくない権利を放棄している。 これらの事情を踏まえると、本件投稿が、原告の肖像権を明らかに侵害するものということはできない。 3 争点2(正当な理由の有無)について (原告の主張) 原告は、本件発信者に対し、不法行為に基づく損害賠償請求等をする予定であり、そのためには、被告から本件発信者情報の開示を受ける必要がある。 したがって、原告には、被告から本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由がある。 (被告の主張) 不知ないし争う。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(本件投稿による権利侵害の明白性)について (1)争点1−1(著作権侵害の明白性)について ア 前提事実、証拠(甲3ないし5)及び弁論の全趣旨によれば、原告写真1については、原告が、原告から見て左斜め方向を向いている様子を自撮りした写真であること、原告写真2については、原告が、他の女性と一緒にピースサイン等のポーズを取っている様子を自撮りした写真であること、原告写真3については、原告が、美顔器を左頬に当ててカメラ目線でいる様子を、原告の体が斜めになるような構図で自撮りした写真であること、以上の各写真は、いずれも構図、撮影ポジション・アングルの選択等において一応の創意工夫がされていること、他方、本件投稿写真の左上にある写真は原告写真1を、本件投稿写真の右上にある写真は原告写真2を、本件投稿写真の右下にある写真は原告写真3を、それぞれ複製した写真であること、原告は、本件発信者に原告写真の使用を許諾したことはないこと、以上の事実が認められる。 上記認定事実によれば、原告写真は、構図、撮影ポジション・アングルの選択等を一応工夫したことにより、撮影者の個性が現れているといえるから、原告写真は、撮影者の思想又は感情を創作的に表現したものとして、著作物に該当するものと認めるのが相当である。 そうすると、本件投稿は、著作権者である原告の許諾を得ずに、原告写真を有形的に再製した上で、公衆送信するものであるから、少なくとも原告写真に係る原告の複製権及び公衆送信権を侵害するものと認められる。 したがって、本件投稿によって原告の著作権が侵害されたことは明らかであるといえる。 イ これに対し、被告は、@原告写真は、プロのカメラマンが撮影したものとは異なり、創作性があるということはできないから、著作物ではない、A原告やその子供の身を案じる本件投稿の内容からすると、本件写真の掲載を原告写真に係る複製権及び公衆送信権の侵害と捉えることには疑問がある、B原告写真は、原告のブログで公表された写真であるから、ファンによって好意的に拡散された場合に常に複製権等を侵害したものと断ずることができるかは不明であるなどと主張する。 しかし、@については、原告写真が、構図、撮影ポジション・アングルの選択等において、撮影者である原告の個性が現れ、原告の思想又は感情を創作的に表現するものであることは、上記において説示したとおりであり、A及びBについては、複製権や公衆送信権侵害の成否を左右する事情ということはできない。その他に、被告提出に係る準備書面及び証拠を改めて検討しても、上記判断を左右するに至らない。 したがって、被告の上記主張は、いずれも採用することができない。 (2)小括 以上によれば、争点1のその余の点につき判断するまでもなく、本件投稿による権利侵害の明白性を認めることができる。 2 争点2(正当な理由の有無)について 弁論の全趣旨によれば、原告は、本件投稿者に対し、損害賠償等を請求することを予定していることが認められる。そして、上記1において説示したところを踏まえると、原告には本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるものといえる。 したがって、原告は、被告に対し、プロバイダ責任制限法4条1項に基づき、本件発信者情報の開示を求めることができる。 3 結論 よって、原告の請求は理由があるから、これを認容することとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 中島基至 裁判官 吉野俊太郎 裁判官 齊藤敦 (別紙)発信者情報目録 別紙投稿写真目録記載のIPアドレスを同目録記載の接続日時(JST)に使用した契約者に関する以下の情報 1 氏名又は名称 2 住所 以上 (別紙)投稿写真目録 投稿日時 令和3年3月26日午後0時10分24秒 IPアドレス(省略) 以上 (別紙)原告写真目録(省略) 以上 |
![]() 日本ユニ著作権センター http://jucc.sakura.ne.jp/ |