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【事件名】プロバイダ各社への発信者情報開示請求事件B
【年月日】令和3年12月23日
 東京地裁 令和3年(ワ)第21014号 発信者情報開示請求事件
 (口頭弁論終結日 令和3年11月12日)

判決
原告 A
同訴訟代理人弁護士 森島崇行
同 臼坂富士彦
被告 GMOインターネット株式会社(以下「被告GMO」という。)
同訴訟代理人弁護士 松井将征
同 川ア友紀
同 八木優大
被告 ビッグローブ株式会社(以下「被告ビッグローブ」という。)
同訴訟代理人弁護士 橋利昌
同 平出晋一
同 太田絢子


主文
1 被告GMOは、原告に対し、別紙発信者情報目録1記載の各情報を開示せよ。
2 被告ビッグローブは、原告に対し、別紙発信者情報目録2記載の各情報を開示せよ。
3 訴訟費用は被告らの負担とする。

事実及び理由
第1 請求
 主文同旨
第2 事案の概要
 本件は、原告が、氏名不詳者が被告らの提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上の投稿サイトに投稿した別紙投稿記事目録記載1及び2の各記事(以下「本件各投稿記事」といい、同目録1の第1記載の記事を「本件投稿記事1」、同第2記載の記事を「本件投稿記事2」といい、同目録2の第1記載の記事を「本件投稿記事3」といい、同第2記載の記事を「本件投稿記事4」という。)により、原告の著作物に係る複製権(著作権法21条)及び公衆送信権(著作権法23条)並びに原告の肖像権が侵害されたことが明らかである旨を主張して、被告らに対し、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「法」という。)4条1項に基づき、別紙発信者情報目録1及び2記載の各情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を求める事案である。
1 前提事実(当事者間に争いがないか、掲記した証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)
(1)当事者
 原告は、一般の個人である。
 被告らは、インターネット接続プロバイダ事業等を目的とする株式会社である。
(2)氏名不詳者による投稿
 氏名不詳者により、別紙投稿記事目録1及び2の各「投稿日時」に記載の各日時において、インターネット上の投稿サイト「インスタA」(以下「本件投稿サイト」という。)に本件各投稿記事が投稿された(甲3の2、4〜6。以下、本件各投稿記事に係る投稿を、「本件投稿1」などといい、これらを併せて「本件各投稿」という。)。
(3)本件各投稿記事の内容
ア 本件投稿記事1には、原告と原告の家族が写った写真(以下「本件写真1」という。)とともに、「長女だけ貧乏かよ」とのコメントが付されている(甲3の2)。
イ 本件投稿記事2には、原告と原告の友人が写った写真(以下「本件写真2」という。)とともに、「顔の大きさ統一してあげてよ」とのコメントが付されている(甲4)。
ウ 本件投稿記事3には、原告と原告の夫が写った写真(以下「本件写真3」という。)とともに、「『うわ!今日めっちゃいい天気!髪の毛セットして〜うんうん俺今日もイケてる!A!化粧できたか?髪整えたか?ハイブランドのネックレスつけたか?よし!肩組んで写真撮るぞ!自然にな!いい夫婦感出せよ!カシャ!よし!A早く加工して加工!これでおけ?おけおけ?いける?背景歪んで無い?よし、投稿するぞ!』『天気のいい朝はテンションあがるね』ってやりとりしてるのかな」とのコメントが付されている(甲5)。
エ 本件投稿記事4には、原告と原告の夫が写った写真(以下「本件写真4」という。)とともに、「仕事の取引先がスポンサーなので、ってわざわざ書く必要ある?ご縁があって、とかお招き頂いたので、って一言だけでよくない?」とのコメントが付されている(甲6)。
(4)被告らの本件各発信者情報の保有
 被告GMOは、本件投稿1及び2に係る発信者情報を、被告ビッグローブは、本件投稿3及び4に係る発信者情報をそれぞれ保有している。
2 争点
(1)本件各投稿による原告の権利侵害の明白性(争点1)
ア 本件投稿1及び2により原告の肖像権が侵害されたことが明らかといえるか(被告GMO関係。争点1−1)
イ 本件投稿3により原告の肖像権が侵害されたことが明らかといえるか(被告ビッグローブ関係。争点1−2)
ウ 本件投稿4により原告の著作物に係る複製権及び公衆送信権が侵害されたことが明らかといえるか(被告ビッグローブ関係。争点1−3)
(2)発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無(争点2)
3 争点に関する当事者の主張
(1)争点1−1(本件投稿1及び2により原告の肖像権が侵害されたことが明らかといえるか)
〔原告の主張〕
 原告は、原告自身のインスタグラムを有しており、同インスタグラムに原告の写真を掲載したりするなどし、多数のフォロワーを有する人物ではあるが、あくまで一般私人であって、原告の肖像を無断で使用されることを受忍しなければならないような社会的地位にはない。本件投稿記事1及び2において投稿された本件写真1及び2についても、これらは原告がインスタグラム等のSNS上に自ら掲載、あるいは原告の夫、友人、知人が自身のインスタグラム等のSNS上に掲載していたものであるが、原告は、原告の夫、友人、知人がそれぞれのSNSに原告が写っている写真を掲載することを明示あるいは黙示に承諾していたとしても、そこから更に転載利用されることまでを承諾していたことはないし、ましてや原告に対する個人攻撃が集中するインターネット上の掲示板において利用されることを承諾していたこともない。
 本件各投稿は、原告に関し、「通称A。実際は思いっきり芋くさい面長顔のそのへんにいる凡顔おばさん。それをアプリで別人加工し盛れる自撮りが大好き。」などという投稿から始まる本件投稿サイトにおけるスレッドの投稿群の中の一部であるところ、これらのスレッドは、原告の容姿を嘲笑、揶揄する目的で立てられたものであって、原告に対する個人攻撃を行うためのものである。原告は、このような態様での投稿に際して、原告の写真を使用することについて承諾をしたことはない。そして、本件投稿記事1は、その2つ前の投稿である「親ばかり着飾って子供が貧乏くさい格好している家族って居るよね」に続く形で、「長女だけ貧乏かよ」とのコメントと共に本件写真1を投稿しているところ、かかる投稿内容は、原告を誹謗中傷、侮辱するものであって、原告の意に反するものであることは明らかであり、本件投稿記事1による原告の肖像の使用は、社会生活上受忍すべき限度を超えており、原告の肖像権を侵害していることは明らかである。
 また、本件投稿記事2も、本件投稿記事1を含む一群のスレッドの中の一つであるところ、本件投稿記事2の一つ前に投稿された投稿には、「今日のメンツの写真なんか怖い」、「もうここまできたら、死ぬまで見え張らないと生きていけなくなるね(笑)一種の病気ですね(笑)A=見栄っ張り…しかも顔も容姿も加工(笑)」などとのコメントがされ、これらに続いて本件投稿記事2において、本件写真2が掲載された上で「顔の大きさ統一してあげてよ」とのコメントが付されている。かかる投稿内容からすれば、本件投稿サイトにおける投稿が原告に対する誹謗中傷を目的としていることは明らかであり、本件投稿記事2も、原告の顔が一緒に写っている他の人物の顔よりも大きいことを強調して原告の容貌を嘲笑し、かつ、原告に向けて、写真を加工するのであれば、顔の大きさを統一しないと、原告の顔の大きさが際立ってしまうとの原告を誹謗中傷する趣旨であることは明らかであって、本件投稿記事2による原告の肖像の使用も、社会通念上受忍すべき限度を超えており、原告の肖像権を侵害していることは明らかである。
〔被告GMOの主張〕
 原告の上記主張は、争う。
ア 原告は、本件投稿記事1の2つ前に投稿された内容を踏まえれば、本件投稿記事1による本件写真1の投稿は、原告の受忍限度を超えた肖像使用であることが明らかである旨主張するが、当該投稿と本件投稿1との間には別の投稿がされており、両者の間に連続性はないから、上記主張に理由はない。そして、本件投稿記事1に付された「長女だけ貧乏かよ」とのコメントが何の目的でされたものか不明であり、いかなる目的で原告とその家族が写った本件写真1が投稿されているのか明らかではないから、原告の肖像権侵害が明白であるともいえない。
イ 原告は、本件投稿記事2の一つ前に投稿された内容を踏まえれば、本件投稿記事2による本件写真2の投稿は、原告の肖像権を侵害するものであると主張するが、両者の投稿の関係性は不明であるから、原告の上記主張は理由がない。そして、本件写真2を見ても、原告が他の人物より顔が大きいようにも見えず、本件投稿2が原告の容貌を嘲笑する内容の投稿であるということはできないから、本件写真2を掲載して原告の肖像を利用したことは、原告の受忍限度を超えた肖像の使用に当たらず、原告の肖像権侵害が明白であるとはいえない。
(2)争点1−2(本件投稿3により原告の肖像権が侵害されたことが明らかといえるか)
〔原告の主張〕
 原告が、原告自身や原告の夫、友人及び知人がSNSに掲載していた原告が写っている写真について、原告に対する個人攻撃が集中するインターネット上の掲示板において利用されることを承諾していたことはないこと、本件投稿サイトへの投稿が、原告を誹謗中傷する目的でされたものであることは、本件投稿記事3による原告の肖像の使用についても、前記(1)と同様である。
 そして、本件投稿記事3も、原告の容姿に対する嘲笑を内容とするものであり、匿名の多数の投稿者による原告に対する誹謗中傷の投稿に、新たな批判材料を投下して更なる人格攻撃を誘発、増幅させて、誹謗中傷活動に自らも加担し、これを面白がるものに過ぎない。かかる態様の本件投稿記事3において原告が写っている本件写真3を掲載することは、社会通念上受忍すべき限度を超えた原告の肖像の使用であり、原告の肖像権を侵害することは明らかである。
〔被告ビッグローブの主張〕
 原告の上記主張は、争う。
 本件投稿記事3の内容が原告の意に沿わない、不本意な内容であったとしても、本件投稿記事3は、様々な読み方やニュアンスが可能な表現となっているから、原告を嘲笑する内容と理解することは困難であって、原告の肖像の利用について、社会通念上許される範囲を超えた使用態様とはいえず、違法性がない。
(3)争点1−3(本件投稿4により原告の著作物に係る複製権及び公衆送信権が侵害されたことが明らかといえるか)
〔原告の主張〕
ア 本件投稿記事4において掲載されている本件写真4は、別紙原告写真目録記載の写真(以下「原告写真」という。)と同一であるところ、原告写真は、原告が、自らのスマートフォンを原告の知人に渡し、構図や撮影アングルなどを指示した上で撮影してもらったものであり、構図、撮影アングルなどの点で原告の思想や感情が創作的に表現されている。したがって、原告写真の著作者は原告であり、その著作権は原告に帰属する。なお、仮に、当該知人に原告写真の著作権が原始的に帰属しているとしても、原告は当該知人から原告写真の著作権の譲渡を受けたから、いずれにしても、原告が原告写真の著作権者である。
イ 本件写真4は、何者かが、原告が自身のインスタグラムやブログ等にアップロードしていた原告写真に依拠してこれを複製し、本件投稿サイト上に掲載したものである。したがって、原告写真に係る原告の複製権及び公衆送信権が侵害されていることが明らかである。
ウ 被告ビッグローブは、本件投稿4については引用の抗弁(著作権法32条1項)が成立する旨主張する。しかし、本件投稿記事4には、本件写真4とともに、「仕事の取引先がスポンサーなので、ってわざわざ書く必要ある?」とのコメントが付されており、当該コメントは、本件投稿記事4が投稿されている本件投稿サイトに多数存在している原告に対する人格攻撃的な投稿に加担し、更なる誹謗中傷を誘発させる目的でしかなく、引用の目的自体が不当である。また、かかる不当な目的の下、原告写真の全部をそのまま転載する必然性もなく、正当な範囲内での引用でもない。したがって、本件投稿記事4において原告写真を引用することは適法な引用には当たらない。
〔被告ビッグローブの主張〕
ア 原告の著作権の帰属及び著作権侵害の主張は、否認して争う。
イ 仮に、本件投稿4が原告の原告写真に係る複製権及び公衆送信権を侵害するとしても、引用の抗弁が成立する(著作権法32条1項)。すなわち、本件投稿記事4は、そこに付された上記コメントこそが、主な部分であり、同部分に著作物性が認められ、本件投稿4に係る投稿者は、読み手の便宜のために、原告写真を引用したということができる。そして、その引用の態様は、話題の対象を明らかにするために必要最小限の範囲であり、原告写真を複製した本件写真4それ自体を鑑賞の対象としているものではなく、また、原告について経済的その他の利益が過分に損なわれたという事情も見当たらないことからすれば、原告写真の引用は、適法な引用に当たり得る。
(4)争点2(発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無)
〔原告の主張〕
 原告は、本件各投稿を行った投稿者に対して不法行為に基づく損害賠償請求等を行う予定であるが、これらの投稿者に係る情報を把握していない。したがって、原告は、上記損害賠償請求等を行うため、本件発信者情報を保有している被告らから、本件発信者情報の開示を受ける必要があり、開示を受けるべき正当な理由がある。
〔被告らの主張〕
 原告の上記主張は、争う。
第3 当裁判所の判断
1 争点1−1(本件投稿1及び2により原告の肖像権が侵害されたことが明らかといえるか)について
(1)人の肖像は、個人の人格の象徴であって、当該個人は、人格権に由来するものとして、その肖像をみだりに利用されない権利を有しているというべきである。そして、当該個人の社会的地位、活動内容、肖像利用の目的、態様、必要性等を総合考慮して、当該個人の人格的利益の侵害の程度が社会通念上受忍の限度を超える場合には、当該個人の肖像の利用は、肖像権を侵害するものとして不法行為法上違法となると解される。
(2)これを本件についてみるに、証拠(甲2の3、3の2、4〜6)によれば、本件投稿記事1を含む本件各投稿記事が投稿された本件投稿サイトに立てられたスレッドには、冒頭に、「通称A。実際は思いっきり芋くさい面長顔のそのへんにいる凡顔おばさん。それをアプリで別人加工し盛れる自撮りが大好き。」などとの説明がされ、本件投稿サイトには、匿名の者により、原告を対象とする内容のコメントが多数投稿されており、「親ばかり着飾って子供が貧乏くさい格好している家族って居るよね」、「もうここまできたら、死ぬまで見え張らないと生きていけなくなるね(笑)一種の病気ですね(笑)…顔も容姿も加工(笑)」などの投稿がされており、
 本件投稿サイトは、原告の容姿や原告のSNS上の投稿記事の内容等に対して誹謗中傷、揶揄する内容の記事が多数含まれていることが認められる。そして、本件投稿記事1は、原告と原告の家族が写っている本件写真1と共に、「長女だけ貧乏かよ」とのコメントが付されており、かかるコメントは、原告に対し、原告や原告の夫だけが着飾り、子供の衣服には構わず、貧しげな恰好をさせる母親であることを指摘して、原告の生活や育児の仕方を誹謗中傷する趣旨のものと認められる。また、本件投稿記事2は、原告とその友人が写っている本件写真2と共に「顔の大きさ統一してあげてよ」とのコメントが付されているところ、原告の顔の大きさが原告の友人らに比べて大きいことを指摘し、かつ、原告が自身が写っている写真を加工することを好んでSNS等に掲載していることを指摘して、原告の容姿を嘲笑し、原告を誹謗中傷する目的で行われた表現であると認められる。そして、本件写真1は原告自身が、本件写真2は原告の友人が自身のインスタグラム等のSNS上に掲載していたものであることが認められるものの(甲8)、これをもって、原告の容姿を嘲笑し、原告を誹謗中傷する態様での原告の肖像の利用についてまで原告が承諾していたということはできず、他にこれを認めるに足りる証拠もない。原告の社会的地位や活動内容を考慮しても、本件投稿記事1及び2による原告の肖像の利用は、社会通念上受忍限度を超えてされたものというべきである。
(3)被告GMOは、本件投稿記事1及び2とこれらの投稿の前にされた投稿との間の関連性が不明であって、かかる投稿を考慮して原告の肖像権侵害を判断すべきでない旨主張する。しかしながら、本件投稿記事1及び2は、原告の容姿等を嘲笑し、原告を誹謗中傷するために利用されている本件投稿サイトに投稿された多数の投稿に続く形で投稿されていることからすれば、本件投稿サイトに投稿されている原告を嘲笑、誹謗するその他のコメントと同質のものということができ、上記関連性は明らかであり、被告GMOの上記主張は理由がない。
(4)したがって、本件投稿1及び2により、原告の肖像権が侵害されたことは明らかであるというべきである。
2 争点1−2(本件投稿3により原告の肖像権が侵害されたことが明らかといえるか)について
(1)前記1で認定したとおり、本件投稿サイトは、原告の容姿や原告のSNS上の投稿記事の内容等に対して誹謗中傷、揶揄する内容の投稿が多数含まれているところ、本件投稿記事3は、原告とその夫が写っている本件写真3とともに、「『うわ!今日めっちゃいい天気!髪の毛セットして〜うんうん俺今日もイケてる!A!化粧できたか?髪整えたか?ハイブランドのネックレスつけたか?よし!肩組んで写真撮るぞ!自然にな!いい夫婦感出せよ!カシャ!よし!A早く加工して加工!これでおけ?おけおけ?いける?背景歪んで無い?よし、投稿するぞ!』『天気のいい朝はテンションあがるね』ってやりとりしてるのかな」とのコメントが付されている。かかるコメントの内容及び本件投稿サイトの性質等に照らすと、本件投稿記事3は、原告が自身の写真を頻繁に加工してSNS上に掲載しているとの事実を指摘した上で、原告を誹謗、揶揄する内容の表現ということができる。そして、本件写真3は、原告の夫によってSNS上に掲載され公表されていたものであることが認められるものの(甲8)、これをもって、かかる態様での原告の肖像の利用についてまで原告が承諾していたということはできず、原告の社会的地位や活動内容を考慮しても、本件投稿記事3による原告の肖像の利用は、社会通念上受忍限度を超えてされたものというべきである。
(2)被告ビッグローブは、本件投稿記事3の内容は、様々な読み方やニュアンスが可能な表現であって、原告を嘲笑する内容と理解することは困難であると主張する。しかしながら、前記1で認定したとおり、本件投稿記事3は原告に対する誹謗中傷を目的とする本件投稿サイトに投稿された記事であって、その投稿内容をみても、原告が原告の容貌を画像編集により加工した上で、自身のSNS上に投稿しているとして原告を誹謗中傷するものであることは明らかであるといえ、被告ビッグローブの上記主張は理由がない。
(3)したがって、本件投稿3により、原告の肖像権が侵害されたことは明らかであるというべきである。
3 争点1−3(本件投稿4により原告の著作物に係る複製権及び公衆送信権が侵害されたことが明らかといえるか)について
(1)本件投稿記事4に付された本件写真4は、原告写真と同一のものと認められる(甲6、7の2)。そして、弁論の全趣旨によれば、原告写真は、原告が原告の知人に構図やアングル等を指示して撮影されたものと認められ、原告の思想や感情が創作的に表現されているものといえ、原告が著作者としてその著作権を有するものと認められる。そうすると、本件写真4を掲載した本件投稿記事4は、原告が著作権を有する原告写真に依拠してこれを複製し、本件投稿サイトに掲載して公衆送信したものと認められる。そして、原告が原告写真を本件投稿記事4に利用することを許諾したことをうかがわせる事情は、本件全証拠をみても見当たらないから、本件投稿4によって原告写真に係る原告の複製権及び公衆送信権が侵害されたと認められる。
(2)被告ビッグローブは、本件投稿記事4に付されたコメント部分に、著作物性が認められ、読み手の便宜のために、原告写真が引用されているものであって、原告写真の利用は、適法な引用(著作権法32条1項)に当たり、原告の複製権及び公衆送信権侵害については、違法性が認められない可能性がある旨主張する。
 しかしながら、本件投稿記事4には、「仕事の取引先がスポンサーなので、ってわざわざ書く必要ある?」とのコメントが付されており、かかるコメントは、原告のSNS上の投稿を批判する内容のものと認められる。そして、本件投稿記事4を含む本件投稿サイトに投稿された多数の投稿からすると、本件投稿サイトは、原告を誹謗中傷するために利用されていることが認められ、本件投稿記事4もかかる性質の本件投稿サイトに投稿されたものであることからすると、原告のSNS上の投稿を批判するとともに、原告を誹謗中傷する目的で投稿されたということができる。
 そうすると、本件投稿記事4における原告写真の利用の目的における正当性は乏しいものといわざるを得ないところ、本件投稿記事4の体裁は、原告写真をそのまま複製した本件写真4がその半分以上のスペースを占めており、従たる利用とは到底いい難いことからすると、上記利用は、引用目的と権衡のとれた「正当な範囲内」(著作権法32条1項)の利用ということはできないこともまた明らかである。
(3)以上からすると、本件投稿4が原告の著作物に係る複製権及び公衆送信権を侵害することは明らかであるということができる。
4 争点2(発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無)について
 上記のとおり、本件各投稿により、原告の肖像権並びに原告写真に係る原告の複製権及び公衆送信権が侵害されたことが明らかであると認められ、原告は、本件各投稿記事の投稿者に対して損害賠償等の請求をする予定であることが認められるから、原告において、本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるといえる。
第4 結論
 よって、原告の請求はいずれも理由があるからこれを認容することとして、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第47部
 裁判長裁判官 田中孝一
 裁判官 小口五大
 裁判官 鈴木美智子


(別紙)投稿記事目録 省略
(別紙)原告写真目録 省略
(別紙)発信者情報目録1
 別紙投稿記事目録1記載のIPアドレスを同目録記載の投稿日時(JST)に割り当てられていた者に関する以下の情報
1 氏名又は名称
2 住所
3 電話番号
4 電子メールアドレス
 以上
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