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【事件名】ビジネスソフトウェアの表示画面事件
【年月日】令和3年9月17日
 東京地裁 平成30年(ワ)第28215号 著作権侵害差止等請求事件
 (口頭弁論終結日 令和3年7月8日)

判決
原告 株式会社光和コンピューター
同訴訟代理人弁護士 富坂博
被告 BookSuperSolution株式会社
同訴訟代理人弁護士 山本光太郎
同 有馬潤


主文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
1 被告は、別紙物件目録1及び2記載の各ソフトウェアプログラムをサーバ、ハードディスク等の記録媒体に格納し、有線又は無線通信装置等によって送信し又は送信可能な状態に置いてはならない。
2 被告は、別紙物件目録1及び2記載の各ソフトウェアプログラムをサーバ、ハードディスク等の記録媒体から抹消せよ。
3 被告は、別紙物件目録1及び2記載の各ソフトウェアプログラムを複製し、又は頒布し、若しくは頒布のためにウェブページその他の媒体において展示してはならない。
4 被告は、原告に対し、4214万2304円及びこれに対する平成30年10月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5 被告は、原告に対し、平成30年9月1日から被告が上記第1項及び第3項の行為を中止するまでの間、1か月106万5064円の割合による金員を支払え。
6 第1項及び第4項につき、仮執行宣言
第2 事案の概要
 本件は、書店業務管理のためのソフトウェア「BookAnswer3」(以下「原告製品」という。)を製造・販売している原告が、①被告が製造・販売する別紙物件目録記載1及び2の各ソフトウェア(以下「被告製品1」などといい、併せて「被告製品」という。)の表示画面(以下「被告表示画面1」などといい、併せて「被告表示画面」という。)は、原告製品の表示画面(以下「原告表示画面」という。)を複製又は翻案したものであり、原告の著作権(複製権又は翻案権、譲渡権、貸与権、公衆送信権)及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害するとともに、②被告製品2は、原告製品の周知な商品等表示である原告表示画面と類似の表示画面を使用して、原告製品との混同を惹起するものであり、不正競争防止法2条1項1号の不正競争行為に該当するなどと主張して、被告に対し、著作権法112条又は不正競争防止法3条に基づき、侵害行為の差止め(請求1及び3)及び被告製品の記録媒体からの抹消(請求2)を求めるとともに、民法709条に基づき、損害賠償金4214万2304円(平成27年9月1日から平成30年8月30日までの36か月間に係る既発生のシステム利用料及び保守料相当額3834万2304円並びに弁護士費用相当額380万円の合計額)及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成30年10月13日から支払済みまで民法(平成29年法第44号による改正前のもの)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払(請求4)並びに平成30年9月1日から被告が侵害行為を中止するまでの間、1か月当たり106万5064円(システム利用料及び保守料相当額)の支払(請求5)を求める事案である。
1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の各証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実。なお、本判決を通じ、特に断らない限り、証拠番号は枝番を含む。)
(1)当事者等
ア 原告は、コンピュータソフトウェアの研究開発及び販売業務、コンピュータ及び周辺機器の販売業務、コンピュータハードウェアの据付工事・保守業務等を目的とする株式会社である。
 原告は、平成14年7月、株式会社三菱電機インフォメーションシステムズ(以下「三菱電機インフォメーションシステムズ」という。)から、書店業務管理システムの開発や販売等に係る事業につき事業譲渡(以下「本件事業譲渡」という。)を受けた。(弁論の全趣旨)
イ 被告は、コンピュータシステム・コンピュータ機器の開発販売業務、出版社・取次店・倉庫会社・書店のコンピュータシステムの管理運用業務等を目的とする株式会社である。
ウ 被告代表者であるA(以下「A」という。)は、IT関連の企業であるハイテック・システム・マネジメント株式会社を経営していたが、その後、同社の事業を承継した株式会社イディー(以下「イディー」という。)や、イディーの事業をさらに承継した三菱電機インフォメーションシステムズにおいて、書店業務管理システムの開発に従事していた。
 Aは、平成14年7月、本件事業譲渡に伴い、原告に取締役として入社し、書店業務部門の責任者を務めたが、平成25年6月20日付けで退職した後、同年12月16日に被告を設立した。(乙30、弁論の全趣旨)
エ 有限会社NET21(以下「NET21」という。)は、書店を経営する複数の法人が出資して設立された法人である。(弁論の全趣旨)
(2)原告製品及び被告製品の開発前の状況
ア Book&Magazineマスター(以下「BMマスタ」という。)は、前記ハイテック・システム・マネジメント株式会社が開発した、MS-DOSをOSとする書店業務管理システムであり、同社が業務を停止した後は、イディーが販売を行っていた。
 BMマスタは、書店本部だけではなく、個々の店舗にもサーバを置くシステムであるが、個々の店舗についての情報が書店本部に集約されるため、個々の店舗及び書店本部の双方において、書籍の分析、発注、返品や定期改正等の書店業務を行うことができるという特徴を有していた。
(以上につき、乙27、弁論の全趣旨)
イ WebAnswer(以下「WA」という。)は、Aが三菱インフォメーションシステムズ在籍中に、BMマスタをベースとして開発した、WindowsをOSとする書店業務管理システムである。
 WAは、ASPであり、クラウド上のシステムにアクセスして利用する形態のサービスであるため、個々の店舗にサーバを置くことなく、個々の店舗及び書店本部の双方において、書店業務を行うことができるものであったが、開発当時はインターネットの通信速度が遅く、データ量にも限界があったことから、基本的には、個々の店舗が独立して書店業務を行う形態の書店ではなく、多店舗を展開している書店が本部で全体及び個別店舗の売上分析を行い、発注、返品、定期改正等の書店業務を行う形態の書店を想定したシステムである。ただし、対象とする書店業務の内容は、BMマスタと基本的に同一であった。(以上につき、乙1、弁論の全趣旨)
 なお、本件事業譲渡に当たって、WAの原著作権は三菱電機インフォメーションシステムズに留保された。(当事者間に争いのない事実)
(3)原告製品
 原告は、本件事業譲渡後、WindowsをOSとする書店業務管理システムとして、SuperBookSolution(以下「SBS」という。)を開発するとともに(SBSとBMマスタの関係については、後記のとおり、当事者間に争いがある。)、平成17年頃、WAを継承した「BookAnswer」(以下「BA」という。)を開発し、販売を開始した。
 原告は、平成21年頃、BAをバージョンアップした後、平成24年11月頃、更にバージョンアップした原告製品(BookAnswer3)を開発し、販売を開始した。そして、平成25年6月17日付けで、「BookAnswer3操作説明マニュアル」(以下「原告マニュアル」という。)を作成した。
 原告製品は、インターネットを利用した書店業務管理のためのASP(ApplicationServiceProvider)システムであり、インターネットに接続されたサーバを経由して、顧客である書店に対し、売上分析、在庫管理、商品の発注・仕入れ・返品管理、ロケーション管理、棚卸等の様々な書店業務を効率的に行うための業務用システムを提供するものである。
(以上、甲25、26、42、弁論の全趣旨)
(4)被告製品
ア Perfectionは、被告が製造・販売する、インターネットを利用した書店業務管理のためのASPシステムである。
 Perfectionは、原告製品同様、インターネットに接続されたサーバを経由して、顧客である書店に対し、売上分析、在庫管理、商品の発注・仕入れ・返品管理、ロケーション管理、棚卸等の様々な書店業務を効率的に行うための業務用システムを提供するものである。
イ Perfectionの開発に至る経緯は、次のとおりである(なお、Perfectionは、時期によって、「BookSolutionPerfection」又は「BookstoreSuperSolution」とも称されているが、弁論の全趣旨に照らせば、これらは、いずれもソフトウェアとしては同一のものであると認められる。)
(ア)被告は、平成26年4月11日、ホームページ上で、書店向けASPである「BookstoreSuperSolution」につき、同年9月にサービスを開始する旨発表した。(甲19)
(イ)被告は、平成26年9月9日、ホームページ上で、書店向けASPである「BookSolutionPerfection」につき、サービス開始を平成27年1月に延期する旨発表した。(甲20)
(ウ)被告は、平成26年9月13日、Facebook上で、「BookSuperSolution株式会社ホームページで、書店向けASP『BookstoreSuperSolution』のデザインを発表しました。近日、動きをVideoで公開します。」、「書籍での実データを準備しており、そのあといくつかの画面を見れるようにしますね。」との投稿を行った。(甲60)
(エ)被告は、平成26年10月6日、「BookSolutionPerfection」のデモ動画をHP上にアップロードした。(乙47の1)
(オ)被告は、平成27年9月1日、Perfectionをリリースし、NET21に導入した。(甲20〔7頁〕)
 なお、原告は、このときにリリースされたPerfection(乙48)が被告製品1であり、その後、下記(キ)の時点で被告製品2にバージョンアップされた旨主張しているが、被告は、Perfectionには2つのバージョンは存在せず、原告主張に係る被告製品1を製造・販売したことはないと主張している。
(カ)被告は、平成27年10月5日付けで、Perfectionの操作マニュアル(乙24。以下「被告マニュアル」という。)を作成した。(乙24)
(キ)被告は、平成30年1月11日、Facebook上で、「2018.01.10Perfection第二ステップシステムをリリース」というタイトルの投稿を行った。(甲31)
 なお、同日以後に被告が製造・販売するPerfectionが被告製品2であることは、当事者間に争いがない。
(5)原告製品の表示画面
 原告マニュアル(甲25)によれば、原告製品は、以下の表示画面(原告表示画面)を含んでいる。
ア メニューバー(甲25〔2頁〕等)
 原告製品では、ログインをすると、画面上部にメニューバーが常時表示される。メニューバーは、「日次業務」、「売上実績」、「発注」、「定改」、「検品」、「返品」、「移動」、「在庫管理」、「リクエスト管理」、「取引分析」、「棚卸」、「ロケ管理」及び「マスタ管理」の各メニュータグから構成され、いずれかを選択すると、その下に、さらに詳細な業務がサブメニューとして表示される。
イ 単品分析画面(甲25〔21、22頁〕、甲1)
 単品分析画面は、画面上部のメニューバーの中から、「日次業務」を選択した上で、その下に表示されるサブメニューの中から「単品分析」を選択することで表示されるところ、その具体的な表示画面は、別紙表示画面一覧表1(1)記載のとおりである(以下、同表記載の表示画面中、赤枠で区分された各ブロックを、当該ブロックに付された数字に従い、「ブロック①」などという。)。
 単品分析画面は、検索した商品(単品)についての情報及び販売変動数の確認を行うための画面であり、「商品コード」、「書名」、「著書名」、「発売日」等の検索条件を入力し、「検索」ボタンをクリックすると、次画面に遷移した上で、検索条件に合致した商品の一覧が表示される(ブロック⑤)。
 一覧表示された商品のうち、特定の商品を選択してクリックすることで、別ウインドウが起動し、当該商品についての単品詳細情報画面(下記ウ)が表示される。(甲25・15頁上から3行目参照)
ウ 単品詳細情報画面(甲25〔15、16、22頁〕、甲30の1)
 単品詳細情報画面は、単品分析画面で選択された商品(単品)について、さらに詳細な情報を確認するための画面であり、その具体的な表示画面は、別紙表示画面一覧表2-1(1)記載のとおりである。
 単品詳細情報画面では、画面中央部(ブロック⑤)にサブメニューとして、「週間/月間」、「日別」、「他店情報」、「定期改正」及び「リクエスト管理」の5つのタブが表示され、これらのタブを選択することにより、次のとおり、画面下部(ブロック⑥及び⑦)に表示される当該商品(単品)についての情報を切り替えることができるが、デフォルトでは「週間/月間」が選択された状態になっている。
(ア)週間・月間画面(甲25〔15頁〕、甲30の1)
 週間・月間画面は、単品詳細情報画面において、「週間・月間」のタブを選択することで表示される画面であり、その具体的な表示画面は、別紙表示画面一覧表2-1(1)のブロック⑥及び⑦記載のとおりである。
 週間・月間画面では、当該商品(単品)につき、週間(ブロック⑥)及び月間(ブロック⑦)の「仕入数」、「売上数」、「返品数」、「入庫数」及び「出庫数」がそれぞれ表示される。
(イ)日別画面(甲25〔15頁〕、甲62)
 日別画面は、上記のサブメニューのうち、「日別」のタブを選択することで表示される画面であり、その具体的な表示画面は、別紙表示一覧表3(1)の赤枠部分記載のとおりである。
 日別画面では、当該商品(単品)について、当月の日別ごとの「仕入数」、「売上数」、「返品数」、「入庫数」及び「出庫数」が表示される。
(ウ)他店舗在庫表示画面(甲25〔15、16頁〕、甲6)
 他店舗在庫表示画面は、上記のサブメニューのうち、「他店情報」のタブを選択することで表示される画面であり、その具体的な表示画面は、別紙表示画面一覧表4(1)のブロック⑥記載のとおりである。
 他店舗在庫表示画面では、当該商品(単品)に係る系列店における情報として、発売日から初動0日目~5日目までの期間中の他店舗における「売/仕」(売上数/仕入数)、「売」(売上数)、「仕」(仕入数)及び「返」(返品数)が、それぞれ累計及び日別で表示される。
(エ)定期改正入力画面(甲25〔16頁〕、甲7の1)
 定期改正入力画面は、上記のサブメニューのうち、「定期改正」のタブを選択することで表示される画面であり、その具体的な表示画面は、別紙表示画面一覧5(1)のブロック⑥及び⑦記載のとおりである。
 雑誌等の定期的に刊行される出版物(定期刊行物)については、予め取り決めた配本数が取次店から送られてくるところ、定期改正入力画面は、定期購読者の増減や売れ筋等に応じて当該配本数を調整するための定期改正業務を行うための画面である。(乙20〔67頁〕)
 定期改正入力画面では、当該商品(単品)につき、「取次店」を選択又は指定した上で、「定期購読数」や「定期改正数」を入力することで、定期改正を行うことができるが、「自動計算」ボタンをクリックすることで、定期購読数や過去の入荷・販売履歴等に基づき、目安となる定期改正数を表示する機能を備えている。
(オ)リクエスト管理画面(甲25〔17頁〕、甲61)
 リクエスト管理画面(顧客からのリクエストを管理するための画面)は、上記のサブメニューのうち、「リクエスト管理」のタブを選択することで表示される画面であり、その具体的な表示画面は、別紙表示画面一覧表6(1)記載のとおりである。
 リクエスト管理画面では、「リクエストコード」を入力し、「選択」ボタンをクリックすることで、当該商品(単品)について登録されたリクエストを呼び出すことができる。呼び出されたリクエストは、「リクエスト一覧」に表示され、「リクエストコード」のほかに、「メモ」、「更新日」及び「確認済み」の各項目に加え、当該リクエストを削除するための「削除」ボタンが表示される。
 また、「新規登録」のボタンをクリックすることで、当該単品について新たなリクエストを登録することもできる。
エ 発注手入力画面
(ア)条件設定画面(甲25〔32頁、37頁〕、甲3の1)
 発注手入力(条件設定)画面は、画面上部のメニューバーの中から、「発注」タブを選択した上で、その下に表示されるサブメニューの中から「発注手入力」を選択することで表示される画面であり、その具体的な表示画面は、別紙表示画面一覧表7-1(1)記載のとおりである。
 発注手入力(条件設定)画面は、商品の発注を手動で行うための画面であり、「発注日付」、「取次店」及び「発注方法」を入力し、「抽出」ボタンをクリックすると、発注手入力(発注入力)画面(下記オ)が表示される。
(イ)入力画面(甲25〔37、38頁〕、甲3の2)
 発注手入力(入力)画面は、実際に商品の発注を行うための画面であり、その具体的な表示画面は、別紙表示画面一覧表7-2(1)記載のとおりである。
 発注手入力(入力)画面では、発注したい書籍の「商品コード」を入力した上で、「表示」ボタンをクリックすると、当該商品コードに紐付けられた書籍の「書名」及び「出版社名」が表示されるため、必要な冊数を入力した上で、「追加」ボタンをクリックすると、入力内容が画面下部(ブロック⑤)に表示される。必要な入力を終えた上で、「登録」ボタンをクリックすることで、発注を行うことができる。
オ 補充発注画面
(ア)条件設定画面(甲25〔33頁〕、甲4)
 補充発注(条件設定)画面は、画面上部のメニューバーの中から、「発注」を選択した上で、その下に表示されるサブメニューの中から「補充発注」を選択することで表示される画面であり、その具体的な表示画面は、別紙表示画面一覧表8-1(1)記載のとおりである。
 補充発注(条件設定)画面は、一定期間内に販売され、その分在庫が減少した商品について、当該減少分を補充するための発注を行うための画面であり、「売上日付」を入力し、「抽出」ボタンをクリックすることで、選択した売上日付の期間内に売上げのあった商品の一覧(補充発注(発注入力)画面。下記(イ))が表示される。より条件を絞って検索をしたい場合には、検索条件として、「分類」、「出版社」及び「抽出順」の各項目を指定することも可能である。
(イ)入力画面(甲25〔34、35頁〕、甲5)
 補充発注(入力)画面は、実際に補注発注を行うための画面であり、その具体的な表示画面は、別紙表示画面一覧表8-2(1)記載のとおりである。
 補充発注(入力)画面では、補充発注(条件設定)画面で選択した「売上日付」の期間内に売上げのあった各商品につき、当該期間内の「売上」及び「出庫」数や、「在庫」数の増減が表示されるため、その数値を参考にしながら、「冊数」欄に必要な冊数を入力した後、「登録」ボタンをクリックすることで、発注を行うことができる。
カ 自動発注設定画面(甲25〔32頁、58頁〕、甲53)
 自動発注設定画面は、画面上部のメニューバーの中から、「発注」を選択した上で、その下に表示されるサブメニューの中から、「自動発注設定」を選択することで表示される画面であり、その具体的な表示画面は、別紙表示画面一覧表9(1)記載のとおりである。
 自動発注設定画面は、特定の書籍を自動で発注するための設定を店舗ごとに登録するための画面である。
キ 定期改正画面
(ア)条件設定画面(甲25〔62、63頁〕、甲51)
 定期改正とは、雑誌などの定期的に発売される商品についてその配本数を調整することを意味するところ、定期改正(条件設定)画面は、画面上部のメニューバーの中から、「定改」を選択した上で、その下に表示される「定期改正入力」を選択することで表示される画面であり、その具体的な表示画面は、別紙表示画面一覧表10-1(1)記載のとおりである。
 定期改正(条件設定)画面では、「仕入日付」、「取次店」及び「表示順」を入力・選択した上で、「抽出」ボタンをクリックすることで、選択した条件に合致する雑誌の一覧及びそれぞれの雑誌の「雑誌コード」、「仕入数」、「売上数」及び「在庫数等」が表示される。一覧表示された雑誌につき、「雑誌コード」欄に設けられた「詳細」ボタンをクリックすると、選択された雑誌についての定期改正入力画面(下記(イ))が表示される。
(イ)入力画面(甲25〔65頁〕、甲52)
 定期改正(入力)画面は、選択した雑誌のバックナンバーについて、「年号」や「本体価格」、「仕入日付」、「仕入数」等の合計21項目にわたる詳細情報を、過去30号分まで遡って表示する画面であり、その具体的な表示画面は、別紙表示画面一覧表10-2(1)記載のとおりである。同画面において、定期購読数・定期改正数を入力し、「閉じる」、「登録」をクリックすると定期改正が完了する。
ク 単品定期改正入力画面(甲25〔62、66、67頁〕、甲8)
 単品定期改正入力画面は、画面上部のメニューバーの中から、「定改」を選択した上で、その下に表示されるサブメニューの中から、「単品定期改正」を選択することで表示される画面において、「雑誌コード」又は「雑誌名」を入力し、「抽出」ボタンをクリックすることで表示される画面であり、その具体的な表示画面は、別紙表示画面一覧表11(1)記載のとおりである。
 単品定期改正入力画面は、特定の商品(単品)について定期改正を行うための画面であり、過去30号分までのバックナンバーについての情報が表示されるため、それを参考にしながら、「定期購読数」や「定期改正数」を入力し、「登録」ボタンをクリックすることで、定期改正を行うことができる。「自動計算」ボタンをクリックすることで、定期購読数や過去の入荷・販売履歴等に基づき、目安となる定期改正数が自動的に表示される機能を備えている。
ケ 返品(条件設定)画面(甲25〔86、87頁〕、甲9)
 返品(条件設定)画面は、画面上部のメニューバーの中から、「返品」を選択した上で、その下に表示されるサブメニューの中から、「返品入力」を選択することで表示される画面であり、その具体的な表示画面は、別紙表示画面一覧表12(1)記載のとおりである。
 返品(条件設定)画面は、一定期間経過後に売れ残った在庫を返品するための画面であり、「新規入力伝票番号発行」ボタンをクリックして返品伝票番号を発行した上で、「返品日付」や「取次店コード」等を入力し、「抽出」ボタンをクリックすることで、返品入力画面に遷移することができる(その後、返品入力画面で必要な処理を行うことで、実際に返品処理を行うことができる。)。
コ 商品マスタメンテナンス(新規登録・検索)画面(甲25〔148~151頁〕、甲10、11)
 商品マスタメンテナンス(新規登録・検索)画面は、画面上部のメニューバーの中から、「マスタ管理」を選択した上で、その下に表示されるサブメニューの中から、「商品マスタメンテナンス」を選択することで表示される画面であり、具体的な表示画面は、別紙表示画面一覧表13-1(1)のとおりである(なお、同7-2(1)に相当する画像は甲25には存在しない。)。
 商品マスタメンテナンス(新規登録・検索)画面は、システムで使用する元データであるマスタデータを管理するための画面であり(乙24・17頁)、「-新規登録・商品コード直接入力―」ボタンをクリックすることで、新規商品の登録をすることができるほか、「商品コード」や「書名」等の検索項目を入力した上で、「抽出」ボタンをクリックすることで、既に登録された商品を検索することができる。
2 争点
(1)原告表示画面が実在するか(争点1)
(2)被告表示画面が原告表示画面に係る著作権を侵害するか(争点2)
ア 被告表示画面1が実在するか(争点2-1)
イ 原告表示画面の著作物性(争点2-2)
ウ 被告表示画面の複製又は翻案該当性(争点2-3)
(3)被告表示画面2が編集著作物としての原告製品に係る著作権を侵害するか(争点3)
(4)不正競争防止法違反の有無(争点4)
(5)損害(争点5)
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点1(原告表示画面が実在するか)について
(原告の主張)
(1)原告表示画面は、いずれも、原告マニュアル(甲25)に掲載されたものであり、原告製品の実際の画面としても実在するものである。
(2)被告は、原告表示画面につき、原告マニュアルに掲載された画面表示は原告製品の実際の画面ではないと主張するが、以下のとおり、理由がない。
ア メニューバーの表示の不一致
 被告は、原告表示画面が平成24年11月7日付けの「BookAnswer3画面変更イメージ」(乙5)に掲載された表示画面と異なる旨主張するが、同表示画面は、従来品であるBAと原告製品との違いをイメージとして示すため、開発過程におけるバージョンアップ前の画面に基づいて作成されたものにすぎず、最終的な製品である原告表示画面と一致していないとしても不自然ではない。
イ 原告表示画面の不自然さ
(ア)最終更新日の日付に一貫性がないこと
 被告は、原告表示画面では画面ごとに更新日が異なっているのが不自然である旨主張するが、原告製品は、顧客の要望を取り込みながら、システムに追加・修正を加えつつ段階的に発展させてきたものであるから、画面ごとに更新日が異なるのは当然である。
(イ)表示されているURLが不自然であること
a 異なる画面で同一のURLを共有していること
 被告は、原告表示画面では、異なる複数の画面で同一のURLが用いられているのが不自然である旨主張するが、メニュー画面のURLを基礎として各画面が作成されている以上、複数の画面が同一のURLを共有しているのは当然である。
b プライベートIPアドレスが表示されていること
 被告は、補充発注画面(甲4)のURLにおいて「http」以下に数字が表示されているが、他の画面と同様に「BookAnswer.jp」と表示されないのは不自然であると主張するが、同画面のドメインは同一である。
c URLの表示のない画面が存在すること
 被告は、発注手入力(条件設定)画面(甲3の1)や発注手入力(発注入力)画面(甲3の2)にはURLが表示されていないのが不自然である旨主張するが、それは、印刷した際に上部が欠けてしまったからにすぎない。原告マニュアルには、URLが表示された状態の上記両画面が掲載されていている。(甲25〔37頁〕)
(被告の主張)
(1)原告は、被告製品が原告製品の表示画面を模倣しているというために、被告製品に近い画面デザインを殊更に作り出した上で、それを原告表示画面として主張しているにすぎず、原告表示画面は原告製品の実際の画面とは異なる。
(2)具体的には、以下のとおり、原告表示画面は、原告製品の実際の画面と一致しない。
ア 平成24年11月7日付けで原告が作成した「BookAnswer3画面変更イメージ」(乙5)では、画面上部に示されるメニューバーには、「検品」、「発注」、「定期改正」、「返品」、「店舗間移動」、「在庫管理」、「日報・月報」、「販売データ分析」及び「マスタ管理」の各項目が表示されているのに対して、原告表示画面では、それ以外にも、「日次業務」、「売上実績」、「移動」、「リクエスト管理」、「取引分析」及び「棚卸」という項目が存在しており、一致していない。
イ(ア)単品分析画面(甲1)の画面右下に表示された最終更新日は「2014/11/18」であるが、単品詳細情報画面(甲30)の最終更新日は「2014/11/27」、発注手入力画面(甲3)では「2017/2」であるなど、一致していない。これは、原告表示画面が、統一的に稼働する一つのシステムの画面ではないことを示している。
(イ)原告表示画面には、次のとおり、実際に稼働する製品のものとしては不自然なURLが表示されている。
a 原告製品は、クラウド上で提供されるASPであるから、特定のURLは1つの画面及びプログラムに対応するはずである。しかし、単品分析画面(甲1)と商品マスタメンテナンス画面(甲10)という全く異なる画面において、同一のURLが表示されている。b 補充発注(条件設定)画面及び補充発注(発注入力)画面(甲4)のURLは、「http://」の後に数字が続いている。このようなURLは、いわゆるプライベートIPアドレスであり、基本的にインターネットにアクセスすることができない社内等の閉じた空間内での通信のために設定されるものである。
c 発注手入力(条件設定)画面(甲3の1)や発注手入力(発注入力)画面(甲3の2)には、そもそもURLが表示されていない。
2 争点2-1(被告表示画面1が実在するか)
(原告の主張)
 被告は、被告表示画面1は、開発途中のPerfectionの画面デザインにすぎない旨主張するが、同画面は、実際に稼働する被告製品1の画面にほかならない。
(1)被告表示画面1の入手経緯について
ア 被告表示画面1は、原告の社員であったB(以下「B」という。)が平成27年12月15日に保存した、実際に稼働する被告製品1の表示画面である。すなわち、Bは、PerfectionがNET21に導入されてから約3か月後に、被告のウェブサイトにアクセスして、被告が公開していた被告製品1の表示画面を入手した上で原告製品の表示画面と比較し、そのデータを業務用の個人フォルダに保存していた(甲43)。本件訴訟において原告が被告表示画面1として提出している表示画面は、当該データに基づくものである。
イ 被告は、そもそも被告製品1を製造・販売したことがないと主張するが、最初にPerfectionがリリースされ、NET21に導入されたのは、平成27年9月1日である。その後、平成30年1月10日以降、NET21に被告製品2(Perfection第二ステップシステム)が導入されていること(甲31)からすれば、当初NET21において稼働していた製品は、被告製品1以外にあり得ないはずである。
ウ 被告は、被告表示画面1の入手経緯に係る原告の主張が変遷をしている旨指摘するが、そのような事実は存在しない。
(2)原告は、被告表示画面1は、平成26年11月8日当時の開発中のPerfectionの画面デザインと完全に一致する旨主張するが、被告表示画面1が実際にその頃作成された画面デザインなのであれば、被告は当該画面デザインを証拠として提出すれば足りるはずであるにもかかわらず、提出していない。
(3)被告は、平成26年9月13日に、Facebook上で「書籍での実データを準備しており、そのあといくつかの画面を見れるようにしますね。」との投稿をしている(甲60)。このように、被告表示画面1においては、実際に入力したデータに基づき入力結果が表示されており、単なる画面デザインではない。
(4)被告は、被告製品1が平成27年当時に実際に稼働していたとすると、次のような点を説明することができない旨主張するが、いずれも理由がない。
ア ログイン時のメッセージが不自然であること
 被告は、被告表示画面1が平成27年12月に保存されたものあれば、ログイン時のメッセージは、「2015年12月○日現在のC学芸大学店の単品詳細情報です。」と表示されるはずである旨主張するが、ログイン時の日付が「2014/8/6」となっているのは(甲30の1)、選択されている商品(ジャンプSQ)の発売日が「2014/8/4」と表示されているからにすぎない。
 また、アカウント名が「テスト太郎」と表示されているのは(甲30の1)、被告表示画面1が、導入直前にC書店学芸大店でテスト稼働をした際の表示画面であるからである。
イ 著作権表示が平成27年(2015年)となっていないことについて補充発注画面(甲4の1)の著作権表示が「Copyright2016」となっているのは、同画像の入手時期が平成28年だったからにすぎず、被告表示画面1がNET21において稼働しているシステムから入手したものであることには変わりはない。
ウ プライベートIPアドレスが使用されていること
 被告は、被告表示画面1にはURLとしてプライベートIPアドレスが表示されていることを根拠に、実際に稼働するPerfectionの画面ではない旨主張するが、前述のとおり、被告表示画面1は、現実に被告のウェブサイトにアクセスして入手したものであり、プライベートIPアドレスが表示されているのは、被告において、そのようなURLを設定していたためである。
エ データに整合性がないこと
 被告は、被告表示画面1に表示されている各種データに整合性がないことを根拠に、実際に稼働するPerfectionの画面ではない旨主張するが、整合性がないのはシステムの精度が低いからであり、被告製品1の品質の問題にすぎない。
(被告の主張)
 被告表示画面1は、実在する製品の表示画面ではないから、被告表示画面1は原告の著作権を侵害するものではない。
(1)被告表示画面1は、補充発注画面(甲4の1)を除いては、NET21が被告製品を利用開始した時点の画面ではなく、平成26年11月8日時点で存在した開発段階のPerfectionの画面デザインである。当該画面デザインは、平成26年11月10日頃から平成27年12月19日頃までの間、被告がホームページ上で公開していたPerfectionのデモ動画の画像を、原告において複製したものと考えられる。
(2)被告は、そもそも、被告表示画面1から構成されるソフトウェアや、原告が被告製品1として主張するソフトウェアを製造・販売したことはない。NET21に導入された当時のPerfectionの表示画面は、平成27年10月5日付けで作成された被告マニュアル(乙24)のとおりであるところ、同マニュアルに掲載された表示画面は被告表示画面1と一致していない。
(3)被告表示画面1が開発段階のPerfectionの画面デザインにすぎないことは、次の点からも明らかである。
ア 被告表示画面1は、平成26年11月8日当時のPerfectionの画面デザインと内容が完全に一致すること
 被告は、Perfectionのリリースに先立って稼働画面をイメージすることができるように、平成26年10月6日頃から、被告のホームページ上で、エクセルで作成した画像をベースとして動画編集ソフトで作成した動画を公開していた(乙47の1)。そのうち、同年11月10日頃から平成27年12月19日頃まで公開していた動画(乙47の2)の内容は乙48のとおりであるが、これと被告表示画面1(補充発注画面(甲4の1)は除く。)を対比すると、右下のタスクバーに表示されている時刻、「テスト太郎」というアカウント名、メッセージの日時、店舗名に至るまで、全てが完全に一致している。
イ 被告製品のリリース(平成27年9月)直後の実際の画面は、被告マニュアル(乙24)と一致すること
(ア)被告は、リリースからわずか3か月後の平成27年12月20日以降、当時実際に稼働していた被告製品の動画を公開しているが(乙39、55)、その画面は、被告マニュアル(乙24)と一致する。
(イ)C書店の代表者が平成27年9月25日にAに対して送信したメールには、当時実際に稼働していた被告製品の表示画面(単品詳細情報画面及び補充発注画面)の画像が添付されているが(乙54)、同表示画面は、被告マニュアル(乙24)とは一致するものの、被告表示画面1(甲30の1、甲4の1)とは一致しない。
ウ 被告製品1が平成27年当時に実際に稼働していたソフトウェアだとすると、説明のつかない点が存在すること
(ア)ログイン時のメッセージが不自然であること
 被告表示画面1が平成27年12月当時に稼働していたPerfectionの表示画面であるという原告の主張を前提とすれば、単品詳細情報画面(甲6の1、甲7の1、甲30の1、甲61、62)のブロック③には、「2015年12月○日現在のC学芸大学店の単品詳細情報です。」というメッセージが表示されるはずであるが、実際には、「2014/8/6現在のBSS1号店単品詳細情報です。」と表示されている。
 ブロック②の右方向に表示された店舗名も、「BSS1号店」という架空のものであり、かつ、アカウント名も「テスト太郎」であることからも、実際に稼働する製品の画面ではないことが裏付けられる。
(イ)著作権表示が平成27年(2015年)となっていないこと
 被告表示画面1の著作権表示は、補充発注画面(甲4の1)については「Copyright2016」であるが、その他は全て「Copyright2014」であり、いずれにせよ、平成27年に被告表示画面1を入手したという原告の主張と矛盾する。
(ウ)プライベートIPアドレスが使用されていること
 被告表示画面1は、いずれも、URLとして「http://192.168.0.109/...」などのプライベートIPアドレスが表示されている(甲1の1、6の1、7の1、10の1、11の1、30の1、甲51~54)。これは、基本的に社内などの限定された空間にある端末間で通信を行うために設定されるアドレスであり(乙88)、実際に稼働する製品であれば、そのような表示にはならないはずである。
(エ)データに整合性がないこと
a 単品詳細情報画面(甲6の1、甲7の1、甲30の1、甲61、62)では、単品として情報が表示されている書籍は「ジャンプSQ」であるにもかかわらず、その書影(書籍の外観イメージ)として「法華経物語」が表示されている。
 また、同画面の中段に表示されている単品の仕入れ、売上げ等の数値は、「仕入れ」、「売上」、「返品」、「入庫」、「出庫」及び「発注が」全て100であるのに対し、「在庫」は6であり、計算が合わない。
 さらに、ジャンプSQの発売日は「2014年8月4日」であるが、「週刊/月間」のタブ(甲30の1)には、同発売日の1年前から2014年8月までの仕入れ等の数値が計上されており、これも架空の数値であることは明らかである。
b 定期改正入力(条件設定)画面(甲51)では、8件の書籍の仕入数、売上数及び在庫数が表示されているが、仕入数から売上数を控除した数と在庫数が一致していない。
c このような理論上あり得ない数値、情報が表示されているのは画面デザインであるからであり、実際の店舗で稼働するシステムの画面であればこのようなことは生じ得ない。
エ 平成26年11月25日当時、Perfectionは要件定義段階にあったこと
 Aが平成26年11月25日にC書店の代表者に送ったメール(乙56)によれば、当時、被告製品はまだ要件定義段階であったことがうかがわれる。システム開発は、「要件定義→外部設計→内部設計→プログラミング」という工程を経るのが通常であり、テスト稼働は当然プログラミングの終了後となるが、平成26年11月25日当時は、Perfectionはプログラミング段階にさえ至っていない。
オ 被告表示画面1の入手経緯に関する原告主張は変遷していること
 原告は、①当初、第2準備書面16頁において、平成28年8月4日から平成29年2月10日までの間に被告製品1の画面を入手したと主張していたにもかかわらず、②その後、第5準備書面の別紙7ページにおいて、平成29年に入ってから被告製品1の画面を見たことにより、同製品がNET21に納入されていることが判明したと主張するようになり、③さらに、最終的には、第8準備書面2頁において、平成27年12月15日の時点で、稼働する画面として被告表示画面1を入手したと主張するに至っている。このように入手経緯についての主張が変遷していることからも、被告製品1が実在しないことが裏付けられる。
3 争点2-2(原告表示画面の著作物性)
(原告の主張)
 以下のとおり、原告表示画面は著作物性を有する。
(1)原告表示画面の著作物性
ア 原告製品は、一定の設計思想に基づき制作された個々の表示画面(その画面を構成する項目、文字、文章、色彩等の表現、配列などにより形成されるもの)及び個々の画面から構成される表示画面全体に創作性及び個性が発揮された著作物である。
イ 原告製品は、マーケティング分析を重視するものであり、必要な情報を検索し、検索選択画面以外のデータを画面全体に表示し、分析データを見ながら業務を行う統合型のシステムである。同製品は、書店への導入経験やノウハウに基づき、新たな時代の要求に応える製品として作成されたものであり、「少人数で書店経営をできることが重要と考え、そのためにフラットな組織体制で運営できるシステム」であることを基本コンセプトとしている。
 原告製品のコンセプトを具体的に視認できるのは、その表示画面である。すなわち、原告製品は、画面の最上部にメニュータグを常時表示し、各タグに具体的な業務名を明記した上で、どの画面からも次の業務に移行できるようにしている。また、画面の中央にサブメニュー画面を用意し、日、週、月単位の売上情報、他店舗、定期改正、リクエスト管理の情報につき、画面遷移なしに表示することを可能にするなど、速やかに業務を切り替えることができる構造にしている。機能的には、他社製品にはない補充発注画面を設け、即発注を可能としたほか、システムが自ら蓄積したデータ群から判断する自動計算機能も備えている。
 このような構造は、他社の製品(甲21~24)と大きく異なるものであり、被告はそのようなシステム構造・表示画面をデッドコピーしている以上、著作権侵害を免れない。
(2)BMマスタ及びWAとの関係
 被告は、原告製品及びSBSはBMマスタやWAをベースに開発されたものであり、創作性がない旨主張するが、以下のとおり、原告製品及びSBSは、原告において新規に開発したものであり、先行する製品であるBMマスタやWAにはない独自の創作性を有する。
ア BMマスタやWAは、本部システムと店舗システムが分かれている分散型のシステムであり、統合型ではないのに対し、BA及びそれをバージョンアップした原告製品は、本部及び店舗を統合した新たなシステムであり、基本的なコンセプトが異なっている。
イ SBSについての進捗表(甲45)によれば、原告がSBSの開発を開始したのは平成14年4月であり、完成は平成15年末か平成16年であるから、2年近い歳月をかけて制作されている。新規開発であったからこそ、これだけの時間を要したものである。
ウ BMマスタの取扱説明書(甲40。ただし本部システムのもの)とBAの操作マニュアル(甲42)を比較すれば、BMマスタとBAが全く異なるものであると理解できる。
(被告の主張)
 以下のとおり、原告表示画面には創作性が認められないので、著作物には該当しない。
(1)原告表示画面の著作物性
ア 原告製品のようなビジネスソフトウェアにおいては、作業の機能的遂行や利用者による操作や閲覧の容易性等の観点から、その表示画面の構成が決定されるという制約が存在するため、作成者がその思想・感情を創作的に表現することのできる範囲は限定的なものにならざるを得ない。それゆえ、仮に原告表示画面に何らかの創作性があり、著作物性が認められるとしても、その創作的表現を直接感得できるような他社製品の表示画面は、原告表示画面の創作的要素のほとんど全てを共通に有し、新たな要素も付加されていないようなもの、すなわち、いわゆるデッドコピー又はそれに準ずるようなものに限られる(東京地裁平成14年9月5日判決・判例時報1811号127頁参照〔サイボウズ事件〕)。
イ 書店業務をシステム化するという目的が共通する以上、各社が開発する書店業務システムで設けられる機能及び画面は大半の項目において共通する。書店業務のうち、①書籍をデータベース化して検索を可能にする、②書籍の詳細情報に基づき商品の販売管理、売上分析を行う、③書籍の発注、補充発注を行う、④雑誌の定期改正を行う、返品作業を行う、⑤商品マスタ情報の新規登録及び修正を行うなどの業務は、帳簿で情報管理を行っていた時代から書店において行われたものであり、システム化してもこれらに対応する画面が取り込まれている。
 原告表示画面から感得できる創作的特徴が何であるのかは原告の主張によっても不明であるが、いずれにしても、原告製品の各表示画面に設けられた機能自体はアイデアにすぎず、項目の名称や配置、配列はありふれたものであって、原告表示画面に創作性は認められない。
(2)BMマスタ及びWAとの関係
 原告製品の機能や表示画面の大半は、バージョンアップ前の製品であるBAと共通しているところ、そのBAの機能や表示画面は、SBSと共通している。そして、BAやSBSの機能や表示画面は、以下のとおり、原告が著作権を有しないWA及びBMマスタを継承したものであるから、原告製品には独自の創作性は認められない。
 なお、原告は、BMマスタの本部システムのマニュアル(甲40)のみならず、店舗システムのマニュアルも保有しているはずであり、それを証拠として提出すれば、WAとBMマスタの機能及び表示画面を直接比較できるにもかかわらず、提出しようとしない。
ア SBSとBMマスタの連続性について
 SBSがBMマスタを継承したものであり、原告が新規開発したものではないことは、①BMマスタをベースとしてSBSを開発することが本件事業譲渡以前から提案されていたこと(乙29)、②BMマスタもSBSも本部と店舗の2つのシステムから構成されていること(乙27、28)、③BMマスタのリーフレット(乙27)とSBSのマニュアル(甲39)を対比すると、「返品システム」、「発注システム」、「雑誌管理(定期改正)」及び「店内在庫照会システム」等の基本的なメニューが同一であり、その機能と画面表示が共通していること、④原告は、原告作成に係る平成15年11月吉日付けの資料(乙28)について「BMマスタを名称変更しただけのSBS」についての資料であると主張し、BMマスタの機能及び画面をベースにしたSBSの存在を自認していることなどから明らかである。
イ BAとWAの連続性について
 BAがWAを継承したものであり、原告が新規開発をしたものではないことは、①原告は、本件事業譲渡に伴い、WAという名称を使用することができなくなったこと、②WAは、従来から、BMマスタを使用する書店において「本部システム」として利用されており(乙35)、BMマスタを継承したSBSのリーフレット(乙33)でも、提供されるサービスの一つとしてBAが組み込まれていること、③平成17年8月30日付けのBAの操作マニュアル(甲42)のログイン画面やメニュー画面においても、「BookAnswer」などソフトウェア名が端的に表示されることなく、「WEB本部システム」と表示されていること、④同マニュアルは一体性を欠く記載が多数存在し、既存のマニュアルに項目を付け足して作成されたものであると推認されることなどから明らかである。
4 争点2-3(被告表示画面の複製又は翻案該当性)
 原告は、以下の(原告の主張)のとおり、被告表示画面(被告製品1について乙48、被告製品2について乙24、37)は原告表示画面と実質的に同一であり、又はその表現上の本質的な特徴を直接感得することができるものであると主張する。これに対し、被告は、以下の(被告の主張)のとおり、原告表示画面と被告表示画面が共通する部分は書店業務システムに一般的に認められる機能やアイデアにすぎず、創作的表現として保護に値するものではない上、両表示画面には相違点が存在するので、被告表示画面は原告表示画面の複製又は翻案には該当しないと主張する(なお、原告表示画面を記載する順序はメニューバーの項目に沿うこととし、適宜画面の名称を変更した上、主張が重複する「他店舗在庫表示画面」及び「他店情報画面」、「商品マスタメンテナンス画面(新規登録画面)」及び「商品マスタメンテナンス画面(検索画面)」は統合して主張を摘示する。)。
(1)単品分析画面〔日次業務タブ〕(別紙画面一覧表1)
(原告の主張)
 原告製品及び被告製品は、いずれも、単品分析画面につき、別紙表示画面一覧表1記載のとおり、画面を5つのブロックに分割しており、その全体的な画面構成や表示は同一である。
ア ブロック①について
(ア)被告製品1について
 原告製品では、ブロック①に、メニューバーとして、横配列で「日次業務」、「売上実績」、「発注」、「定改」、「検品」、「返品」、「移動」、「在庫管理」「リクエスト管理」、「取引分析」、「棚卸」、「ロケ管理」及び「マスタ管理」の各項目が表示されるが、被告製品1においても、「仕上率管理」と「HT処理」が追加されている以外は、項目名や配列順、配置のレイアウトは原告製品と同一である。また、そもそも、「単品分析」という名称の画面が存在すること自体、原告製品独自である。
(イ)被告製品2について
 被告製品2も、「リクエスト管理」が削除される一方で、「マニュアル」が追加されている以外は、画面構成や表示は被告製品1と同一である。
イ ブロック②について
(ア)被告製品1について
 原告製品では、ブロック②に、単品分析の対象となる商品を検索するための検索項目として、縦配列で「商品コード」、「書名」、「著者名」、「発売日」、「大分類」の各項目が表示されるが、被告製品1においても、これと同一の項目名や配列順、配置のレイアウトが採用されている。被告製品1では商品コードは「前方一致」しか選択できないが、両者は、①書名については「あいまい検索」、「前方一致」又は「完全一致」のいずれかを選択できる点、②著者名については「あいまい検索」又は「前方一致」のいずれかを選択できる点、③発売日については、4桁の西暦に加え、月を2桁、日を2桁の合計8桁で表示する点、④大分類には「分類コード」を入力する点において共通する。
(イ)被告製品2について
 被告製品2も、「書名」及び「著者名」につき「前方一致」しか選択できないことを除くと、その画面構成や表示は被告製品1と同一である。
ウ ブロック③について
(ア)被告製品1について
 原告製品では、ブロック③に、単品分析の対象となる商品を検索するための出版社等の項目として、縦配列で「出版社」、「商品メモ」、「表示件数」及び「現在庫」の各項目が表示されるが、被告製品1においても、「表示件数」と「現在庫」が表示されず「副題」が表示されるほかは、原告製品と同一の項目名や配列順、配置のレイアウトが採用されている。被告製品1は、「出版社」を検索条件に加えるかどうかを選択できるようになっており、選択した場合に出版社名を直接入力できる点においても原告製品と共通する。
(イ)被告製品2について
 被告製品2も、出版社名の直接入力ができないことを除くと、画面構成や表示は被告製品1と同一である。
エ ブロック④について
(ア)被告製品1について
 原告製品では、ブロック④に、店舗別の検索項目として、縦配列で「店舗」、「期間」及び「店舗表示順」の各項目が表示されるが、被告製品1においても、原告製品と同一の項目名や配列順、配置のレイアウトが採用されている。「期間」の入力に関して表示されるガイダンスメッセージは、いずれも「分析対象は入力日を含む週又は月(入力例:2013年2月28日→20130228)」である。
(イ)被告製品2について
 被告製品2も、「店舗」につき「単一店舗」又は「全店舗」のいずれかを選択することができることや、ガイダンスメッセージの日付が2013年2月1日に変更されていることを除くと、画面構成や表示は被告製品1と同一である。
オ ブロック⑤について
 原告製品では、ブロック⑤に、検索条件に該当する商品の明細として、横配列で「選択」、「書名」、「出版社」、「著者」、「発売日」、「本体」、「商品コード」、「在庫」、「大分類」、「中分類」及び「メイン」が表示されるが、被告製品1でも原告製品と同一の項目名や配列順、配置のレイアウトが採用されている。両者は、「書籍の在庫は、選択店舗の現在庫(最新在庫)を合計したものです。」、「雑誌の在庫は、条件画面で指定した年の在庫を合計したものです。」というガイダンスメッセージにおいても同一である。
(被告の主張)
ア ブロック①について
 メインメニューを常時表示し、そこで選択した画面を表示するというシステムは様々なビジネスソフトウェアにおいて一般的に用いられており、ありふれたものである。また、メニューバーに表示された業務は、いずれも一般的かつ常識的な書店業務にすぎず、その配列順も含め、創作性は認められない。「単品」という名称も、「単一の商品」という意味を持つ一般的な用語である。
イ ブロック②及び③について
 商品の検索条件として表示される各項目は、いずれも書籍を特定するために必要な基本的な項目であり、これらの項目を検索条件とすることは、他社製品でも採用されているような、ごくありふれた機能又はアイデアにすぎない。
 「あいまい検索」や「完全一致」は、いずれも検索条件として一般的に用いられるものであり、ありふれた機能又はアイデアにすぎない。発売日を西暦で表示することもごく一般的な表現であり、その場合、8桁の数字で表示されるのも当然である。
ウ ブロック④について
 書店に限らず、小売業一般において、複数店舗を有する場合には、売上情報等の分析を単一店舗と複数店舗のいずれについて行うのかを選択する必要がある以上、これらを選択可能とすることは、ありふれたアイデアにすぎない。
エ ブロック⑤について
 原告製品では、ブロック⑤は新たな画面に遷移して表示されるが、被告製品では、ブロック④の下部に表示されるため(甲1の1、乙24〔1頁〕、乙37〔3頁〕)、画面構成も画面の牽連性も異なる。表示される各項目は、いずれも、商品である書籍に関する基本的な情報であり、それらを表示することに創作性は認められない。
オ 相違点について
(ア)被告製品1との相違点
 原告製品と被告製品1には、①原告製品は水色や青を基調としているのに対し、被告製品1では灰色を、被告製品2では赤を基調としていることから、表示画面全体から利用者が受ける印象は相当に異なる。さらに、被告製品2については、画面全体にわたって横長に表示することで、見やすさと一覧性を重視したデザインを実現しており、縦長で画面中央に小ぶりに表示する原告製品とは、画面のレイアウトも明らかに異なっている。(この点は、原告主張に係る全ての画面に共通する相違部分である。)、②被告製品1には、原告製品とは異なり、「商品区分指定」という項目が存在しない、③被告製品1には、メインメニューに「仕上率管理」及び「HT管理」のタブが存在するが、原告製品にはこれらのタブは存在しない、④被告製品1は、日付の入力を補助するためのカレンダータブが存在するが、原告製品にはそのようなタブは存在しない、⑤被告製品1には「副題」という項目が存在するが、原告製品には存在しない、⑥原告製品では全ての項目を縦並びに配置されているのに対し、被告製品1では、「出版社」、「商品メモ」及び「副題」の各項目は、他の検索条件と横並びに配置されているといった相違点が存在する。
(イ)被告製品2との相違点
 原告製品と被告製品2には、上記(ア)記載の相違点に加え、①被告製品2では、表示画面全体のレイアウトが被告製品1よりも更に横長であり、画面中央に情報が集約された原告製品とは印象が異なる、②被告製品2には、「出版社」の名称を直接入力することができない、③店舗選択につき、原告製品では、「単一店舗」又は「複数店舗」を選択するのに対し、被告製品2では、「全店舗」又は「単一店舗」を選択するといった相違点が存在する。
(2)単品詳細情報画面〔日次業務タブ〕(別紙表示画面一覧表2)
(原告の主張)
 原告製品及び被告製品は、いずれも、単品分析画面につき、別紙表示画面一覧表2記載のとおり、画面を7つのブロックに分割しており、その全体的な画面構成や表示は同一である。
ア ブロック①について
(ア)被告製品1について
 原告製品では、ブロック①に、選択された商品(単品)の基本情報として、画面左側に、縦配列で「商品コード」、「書名」、「著者」及び「出版社」の各項目が、画面中央に「本体」が表示されるほか、画面右側に縦配列で「発売日」、「大分類」、「中分類」及び「小分類」の各項目が表示される。それらの下に、商品の所在として、「メイン」1か所に加え、「サブ1」から「サブ4」までの4か所が表示されるが、被告製品1においても、原告製品と同一の項目名や配列順、配置のレイアウトが採用されている。そもそも、単品詳細情報画面が存在すること自体、原告製品独自である。
(イ)被告製品2について
 被告製品2も、商品の所在につき、「メイン」と「サブ」を区別することなく、合計4つの「ロケーション」を表示している点を除くと、画面構成や表示は被告製品1と同一である。
イ ロック②について
 原告製品では、ブロック②には、商品の書影が表示されるが、被告製品においても、その配置や大きさに加え、「閉じる」ボタンの位置まで原告製品と同一である。
ウ ブロック③について
(ア)被告製品1について
 原告製品では、ブロック③には、分析対象となる商品の情報として、「○○年○○月○○日現在の○○店単品詳細情報です。」というメッセージに続き、縦配列で「当年総計」、「最終更新日」及び「最終更新数」の各項目が、横配列で「仕入」、「売上」、「返品」、「入庫」、「出庫」、「発注」及び「在庫」の各項目がそれぞれ表示されるが、被告製品1においても、原告製品と同一の項目名や配列順、配置のレイアウトが採用されている。なお、「当年総計」という語は、一般的に使われるものではない。
(イ)被告製品2について
 被告製品2も、「○○年○○月○○日現在の○○店単品詳細情報です。」というメッセージの位置が、ブロック③の最上段から最下段に変更されていることを除くと、画面構成や表示は被告製品1と同一である。
エ ブロック④
 原告製品では、単品についての情報を確認しながら発注することができるが、被告製品も同様である。ガイダンスメッセージの内容まで同一である。
オ ブロック⑤について
(ア)被告製品1について
 原告製品では、ブロック⑤に、サブメニューのタブとして、横配列で「週刊/月間」、「日別」、「他店情報」、「定期改正」、「リクエスト管理」の各項目が表示されているところ、被告製品1においても、原告製品と同一の項目名や配列順、配置のレイアウトが採用されている。
(イ)被告製品2について
 被告製品2も、サブメニューのタブにつき、「リクエスト管理」に代わり、「法人グループ」が加えられていることを除くと、画面構成や表示は被告製品1と同一である。
カ ブロック⑥について
 原告製品では、ブロック⑥に、ブロック⑤で「週間/月間」を選択した場合の週間の統計として、横配列で「5週前」、「4週前」「3週前」…「当週」、「月」、「火」、「水」…「日」の各項目が表示されるとともに、縦配列で「仕入数」、「売上数」、「返品数」、「入庫数」、「出庫数」の各項目が表示されるが、被告製品においても、原告製品と同一の項目名や配列順、配置のレイアウトが採用されている。
キ ブロック⑦について
 原告製品では、ブロック⑤で「週間/月間」を選択した場合の月間の統計として、ブロック⑦に、横配列で「12か月前」から順に14か月分の情報が表示されるとともに、縦配列で「仕入数」、「売上数」、「返品数」「入庫数」及び「出庫数」の各項目が表示されるところ、被告製品においても、原告製品と同一の項目名や配列順、配置のレイアウトが採用されている。
(被告の主張)
ア ブロック①について
 商品コードや書名、著書名等は、いずれも書籍の識別・特定に必要な基本的な情報である上に、その配列順にも特段の創作性は認められない。また、個別の商品を「単品」と呼ぶことはありふれた表現であるところ、単品に関する詳細な情報を「単品詳細情報」と称することにも創作性はない。
イ ブロック②について
 商品の画像を表示することや、画面を閉じるために「閉じる」というボタンを設けることは、いずれもありふれた機能又はアイデアであり、それらを表示することに創作性は認められない。
ウ ブロック③について
 仕入れや売上げ等の数値は、いずれも、商品管理や売上分析に必要な基本的な情報であり、「当年総計」として、その12か月分の合計数を示すことは、書店業務の慣行に基づくありふれたものである。情報の鮮度を把握するために、各数値の最新更新日等を表示することも、商品のデータ管理上一般的なことであり、ありふれた機能又はアイデアである。
エ ブロック④について
 単品についての詳細情報を確認した上で当該商品を発注するというのは、コンピュータシステムが導入される前から存在する業務プロセスをシステム化したものにすぎず、ありふれた機能又はアイデアである。発注のためには取次店の指定が不可欠であるところ、「取次先を選択してください」というガイダンスメッセージに創作性はない。
オ ブロック⑤について
 売上げ等のデータを参照する際に、日単位や週単位、月単位の数値を確認するのは書店業務上一般的なことである。また、サブメニューとして掲げられた個々の業務も、いずれも基本的な書店業務にすぎず、これらを画面上表示することは、いずれもありふれた機能又はアイデアである。
カ ブロック⑥について
 仕入数や売上数等は、商品管理や売上分析に必要な基本的な情報であり、これらの数値の過去の数を把握することは商店業務上一般的なことであるから、これらを画面上表示することは、ありふれた機能又はアイデアである。
キ 相違点について
(ア)被告製品1との相違点
 画面全体として、原告製品は水色や青を基調としているのに対し、被告製品1は灰色を基調としており、表示画面全体から受ける印象は相当異なる。
(イ)被告製品2との相違点
 被告製品2は、被告製品1から更に画面全体を横長に表示するとともに、配色もより赤色を増やすなど、見やすさを重視したデザインへと変更されており、縦長で画面中央に小振りに各項目が表示された原告製品とは、明らかに印象が異なる。
(3)日別画面〔日次業務タブ・サブメニュー〕(別紙表示画面一覧表3)
(原告の主張)
 原告製品及び被告製品1の日別画面は、別紙表示画面一覧表3の赤枠部分記載のとおりであり、その全体的な画面構成や表示は同一である
ア 原告製品では、単品詳細情報画面のブロック⑤に表示されるサブメニューから「日別」のタブを選択すると、日別画面が、既に表示されている自店舗情報の下段に表示されるが、被告製品1においても、このような表示画面の牽連性は同一である。
イ 原告製品では、日別画面に縦配列で日付が表示されるとともに、横配列で「仕入数」、「売上数」、「返品数」、「入庫数」及び「出庫数」の各項目が表示されるが、被告製品1においても、原告製品と同一の項目名や配列順、配置のレイアウトが採用されている。
(被告の主張)
ア 単品についての詳細情報画面に日別の情報を表示するという画面構成は、他社のシステムでも導入されているありふれた機能又はアイデアである。
イ 書籍の仕入数、売上数、返品数等の情報は、書籍の在庫・販売を管理する上で不可欠なデータであるから、これらの項目を横並びで表示することに創作性はない。また、上記のようなデータを分析する際に日々の変化や週単位又は月単位の合計数を確認することも一般的な書店業務であり、これらの項目を画面上表示することも、ありふれた機能又はアイデアである。
ウ 原告製品と被告製品1には、原告製品は縦長のレイアウトであるのに対し、被告製品1は画面を横長に表示しており、その結果、原告製品では日別の情報が30件表示されるのに対し、被告製品1では12件しか表示されないといった相違点が存在し、表示画面全体から受ける印象は相当異なる。
(4)他店舗在庫表示画面〔日次業務タブ・サブメニュー〕(別紙表示画面一覧表4)
(原告の主張)
 原告製品及び被告製品は、いずれも、他店舗在庫表示画面につき、別紙表示画面一覧表4記載のとおり、画面を6つのブロックに分割しており、その全体的な画面構成や表示は同一である。
ア 他店舗在庫表示画面という名称の画面は原告製品に独自のものであるが、被告製品は、全く同じ思想に基づき同じ名称で制作されている。
イ ブロック①~⑤について
 ブロック①~⑤については、単品詳細情報画面と共通しており、この点に関する原告の主張は、前記(2)(原告の主張)のとおりである。
ウ ブロック⑥について
(ア)被告製品1について
 原告製品では、ブロック⑥には、他店舗における売上げや仕入れの情報として、横配列で発売日から6か日の日付及び日付ごとの「累計」及び「日別」が表示されるとともに、縦配列で、店舗ごとの「売/仕」、「売」、「仕」、「返」の各項目が表示されるが、被告製品においても、原告製品と同一の項目名や配列順、配置のレイアウトが採用されている。
(イ)被告製品2について
 被告製品2では、サブメニュー(ブロック⑤)で「法人グループ」を選択した場合の表示が、他店舗在庫表示画面に当たるが、その画面構成や表現は被告製品1と同一である。
(被告の主張)
ア 複数店舗を展開している書店であれば、他店舗の在庫情報につき分析を行うことは書店業務上一般的なことであるから、商品の詳細情報の一つとして、他店舗での在庫情報等を確認できるようにすることは、ありふれた機能又はアイデアにすぎない。
イ ブロック①~⑤について
 ブロック①~⑤については、単品詳細情報画面と共通しており、この点に関する被告の主張は、前記(2)(被告の主張)のとおりである。
ウ ブロック⑥について
 売上数の仕入数に占める割合や、売上数、仕入数、返品数に基づき分析を行うことは書店業務上一般的なことであるから、これらを画面上表示することは、ありふれた機能又はアイデアである上に、それらを日付順に横並びで配列することに創作性はない。また、書店業務においては、発売日から最初の3日間の動きに基づき追加発注の要否を判断することが多いから、6日間の日別の売上等の情報を表示することも、ありふれた機能又はアイデアである。
エ 相違点について
(ア)被告製品1との相違点
 原告製品と被告製品1には、原告製品では、起算日となる日付を指定して表示する構成となっているが、被告製品1では、日付の指定をすることはできないといった相違点が存在する。
(イ)被告製品2との相違点
 原告製品と被告製品2には、①原告製品では、発売日から6日間の日別の統計が表示されるのに対し、被告製品2では、より多くの情報に基づく分析を可能にするため、全期間を対象とした数値や過去6か月間の月別の数値、過去6週間の週別の数値に加え、日別でも過去30日の数値が表示される、②被告製品2には、CSV(エクセルファイル)出力の項目があるといった相違点が存在する。
(5)定期改正入力画面〔日次業務タブ・サブメニュー〕(別紙表示画面一覧表5)
(原告の主張)
 原告製品及び被告製品は、いずれも、定期改正入力画面につき、別紙表示画面一覧表5記載のとおり、画面を7つのブロックに分割しており、その全体的な画面構成や表示は同一である。
ア ブロック①~⑤について
 ブロック①~⑤については、単品詳細情報画面と共通しており、この点に関する原告の主張は、前記(2)(原告の主張)のとおりである。
イ ブロック⑥について
 原告製品では、ブロック⑥に、定期改正に必要な項目として、最上段に、単品詳細画面にて表示されている商品の「雑誌コード」及び「雑誌名」が、その下にオペレーションガイダンスが、さらにその下に「取次店」、「定期購読数」及び「定期改正数」がそれぞれ表示される。また、「定期改正数」の右隣には自動計算ボタンがあるが、被告製品においても、原告製品と同一の項目名や配列順、配置のレイアウトが採用されている。オペレーションガイダンスの内容も同一である。
ウ ブロック⑦について
 原告製品では、ブロック⑦に、定期改正数を検討するに当たって必要となる情報が表示される、被告製品1には該当する表示は存在しないが、被告製品2では表示され、その内容は原告製品と同一であると推測される。
(被告の主張)
ア ブロック①~⑤について
 ブロック①~⑤については、単品詳細情報画面と共通しており、この点に関する被告の主張は、前記(2)(被告の主張)のとおりである。
イ ブロック⑥について
 定期改正は、個別の商品(単品)についての発注業務である以上、単品についての詳細な情報を表示する画面において、商品分析と併せて定期改正を可能とすることは、ありふれた機能又はアイデアにすぎない。また、表示される項目は、いずれも定期改正を行う際に必要な基本的な情報であり、これらを画面上表示することはありふれた機能又はアイデアである上、その具体的な表示方法にも創作性はない。自動計算機能はBMマスタにおいても採用されており、自動計算のためのボタンを設けることもありふれた機能又はアイデアにすぎない。
 オペレーションガイダンスは、定期改正に当たって必要となる操作上の説明事項及び注意事項を一般的な表現で説明したものにすぎず、その表現内容に創作性はない。
ウ ブロック⑦について
 被告製品には、ブロック⑦に相当する表示画面は存在しない。
エ 相違点について
(ア)被告製品1との相違点
 原告製品と被告製品1には、①原告製品では画面下部に過去情報が表示されるのに対し、被告製品1では表示されない、②原告製品には「登録」・「全クリア」ボタンがあるが、被告製品1には存在しないといった相違点が存在する。
(イ)被告製品2との相違点
 原告製品と被告製品2には、上記(ア)記載の相違点に加え、①被告製品2のガイダンスメッセージは、定期改正数のみを入力した場合や登録を削除した場合についての記載がなく、より単純化されている、②サブメニューのタブは、原告製品では左寄せで表示されているのに対し、被告製品2では画面全体にわたって表示されている、③被告製品2には、「取次店」の入力につき、「取次コード一覧」というボタンが存在しない、④原告製品では「全クリア」という名称のボタンが、被告製品では「クリア」という名称となっている、⑤原告製品には「自動計算」ボタンの左側に矢印が存在するが、被告製品2では存在しないといった相違点が存在する。
(6)リクエスト管理画面〔日次業務タブ・サブメニュー〕(別紙表示画面一覧表6)
(原告の主張)
 原告製品及び被告製品1のリクエスト管理画面は、別紙表示画面一覧表6の赤枠部分記載のとおりであり、その全体的な画面構成や表示は同一である。
ア 原告製品では、リクエスト管理画面は、単品詳細情報画面のブロック⑤に表示されるサブメニューから「リクエスト管理」のタブを選択すると、既に表示されている自店舗情報の下段に表示されるが、被告製品1においても、このような表示画面の牽連性は同一である。
イ 原告製品では、リクエスト一覧として、「リクエストコード」、「メモ」、「リクエスト数」、「更新日」、「確認済」、「状態」の各項目が横配列で表示されているが、被告製品1においても、原告製品と同一の項目名や配列順、配置のレイアウトが採用されている。本来、リクエストを管理する画面であるにもかかわらず、画面のタイトルが「リクエスト呼び出し」である点も同じである。
(被告の主張)
 登録されたリクエストを抽出することを「リクエスト呼出し」と名付けることは、ありふれた表現である。
 また、リクエストをした顧客に連絡する必要があるため、「メモ」として、その氏名や電話番号等の連絡先を記録する項目を設けることや、当該リクエストについて対応をしたか否かを記録すること、対応済みのリクエストを削除することは、いずれも、書店業務上当然必要となる機能又はアイデアであり、これらの項目を横並びで表示することに創作性はない。
(7-1)発注手入力(条件設定)画面〔発注タブ〕(別紙表示画面一覧表7-1)
(原告の主張)
 原告製品及び被告製品2は、いずれも、発注手入力(条件設定)画面につき、別紙表示画面一覧表7-1記載のとおり、画面を2つのブロックに分割しており、その全体的な画面構成や表示は同一である。
ア ブロック①について
 原告製品では、メニューバーが表示され、「発注」選択した上で、その下に表示される「発注手入力」というサブメニューを選択すると発注手入力(条件設定)画面が表示されるが、被告製品2も同様である。そもそも、「発注手入力」という画面自体が、原告製品独自のものである。
イ ブロック②について
 原告製品では、ブロック②に、発注に必要な情報を入力するため、縦配列で「発注日付」、「取次店」及び「発注方法」の各項目が表示されるが、被告製品2においても、原告製品と同一の項目名や配列順、配置のレイアウトが採用されている。オペレーションガイダンスも、日付が異なるだけで、「入力例:2013年2月○日→2013/02/○」という内容は同一である。
(被告の主張)
ア ブロック①について
 「発注手入力」は、発注を手入力で行うことを意味する、ありふれた表現である。発注手入力は、書店における基本的な発注業務の一つであるから、そのための画面を設けることは当然であり、創作性はない。
イ ブロック②について
 「発注日付」、「取次店」及び「発注方法」といった項目は、発注を行う際に当然必要となる項目を縦並びに表示したものにすぎず、創作性はない。発注日付の入力例の表記を設けることも機能又はアイデアにすぎず、創作性はない。
ウ 相違点について
 原告製品と被告製品2には、①被告製品2には、原告製品と異なり、日付の入力を補助するためのカレンダータブが設けられている、②被告製品2には、「新規入力/抽出」ボタン及び「全クリア」ボタンが存在するが、原告製品には、「抽出」ボタンは存在するが、クリアボタンは存在しないなどの相違点が存在する。
(7-2)発注手入力(入力)画面〔発注タブ〕(別紙表示画面一覧表7-2)
(原告の主張)
 原告製品及び被告製品2は、いずれも、発注手入力(入力)画面につき、別紙表示画面一覧表7-2の記載のとおり、画面を5つのブロックに分割しており、その全体的な画面構成や表示は同一である。
ア ブロック①について
 原告製品では、メニューバーが表示され、そのうち「発注」を選択した上で、その下に表示される「発注手入力」を選択すると発注手入力画面が表示されるが、被告製品2も同様である。
イ ブロック②について、
 原告製品では、ブロック②に、横配列で「発注日付」、「取次店名」及び「発注方法」の各項目が表示されるが、被告製品2においても、原告製品と同一の項目名や配列順、配置のレイアウトが採用されている。
ウ ブロック③について
 原告製品では、ブロック③において、発注する商品の「商品コード」を入力し、「表示」ボタンをクリックすると、当該商品の基本情報として、「商品コード」、「書誌名」、「出版社、」、「前回発注日」及び「在庫」の各項目が表示されるので、それらの情報を参照しながら、当該商品の発注冊数を入力するが、被告製品2においても、「Oak在庫」という項目が追加されていることを除くと、原告製品と同一の項目名や配列順、配置のレイアウトが採用されている。
エ ブロック④について
 原告製品では、ブロック④に、ブロック③で入力した複数の商品の発注冊数の合計が表示されるが、被告製品2においても、原告製品と同一の項目名や配列順、配置のレイアウトが採用されている。
オ ブロック⑤について
 原告製品では、発注する商品の明細として、ブロック⑤に、横配列で、「No」、「商品コード」、「号数」、「書誌名」、「本体」、「冊数」、「在庫」、「前回発注日」、「最新仕入先」、「削除」の各項目が表示されるが、被告製品2においても、原告製品と同一の項目名や配列順、配置のレイアウトが採用されている。
(被告の主張)
ア ブロック①について
 発注業務を1つの画面で完結させることとせず、商品情報を入力する画面とは別に発注のための画面を設けることは、機能上の問題にすぎない。
イ ブロック②について
 「発注日付」、「取次店」及び「発注方法」といった項目は、発注を行う際に当然必要となる項目を縦並びに表示したものにすぎず、創作性はない。
ウ ブロック③について
 書籍の全情報は商品コードで紐づけられているため、商品の特定のために商品コードを用いることは発注業務において一般的である。表示される項目も、いずれも書店業務において一般的な情報にすぎず、創作性はない。
エ ブロック④について
 過剰発注を防ぐために発注した合計数や合計金額を確認することは、書店業務上一般的なプロセスであり、それらを表示することは、ありふれた機能又はアイデアにすぎない。
オ ブロック⑤について
 発注した商品の明細を確認することは、書店業務上一般的なプロセスである上に、明細として表示される各項目は、いずれも書店業務における基本的な情報であるところ、それらを横並びに表示することに創作性はない。
カ 相違点について
 原告製品と被告製品2には、①被告製品2には、在庫の数量とは別に「Oak在庫」の数量を表示する項目がある、②被告製品2では、「追加」ボタンが画面中央に配置されているのに対し、原告製品では画面右端に配置されている、③被告製品2には、原告製品は異なり、「商品コードを入力して下さい。」というメッセージガイダンスは表示されない、④被告製品2には、原告製品とは異なり、ブロック⑤には「出版社」の項目が表示されないなどの相違点が存在する。
(8-1)補充発注(条件設定)画面〔発注タブ〕(別紙表示画面一覧表8-1)
(原告の主張)
 原告製品及び被告製品は、いずれも、補充発注(条件設定)画面につき、別紙表示画面一覧表8-1記載のとおり、画面を3つのブロックに分割しており、その全体的な画面構成や表示は同一である。
ア ブロック①について
 原告製品では、メニューバーが表示され、そのうち「発注」を選択した上で、その下に表示される「補充発注」を選択すると、補充発注(条件設定)画面が表示されるが、被告製品も同様である。
イ ブロック②について
(ア)被告製品1について
 原告製品では、ブロック②に、補充発注する商品の検索条件として、縦配列で「売上日付」、「分類」、「出版社」及び「表示順」の各項目が表示されるが、被告製品においても、原告製品と同一の項目名や配列順、配置のレイアウトが採用されている。売上日付の入力例として記載されている8桁の年月日も同じである。
 また、「分類」に関して用いられている「単一分類選択」という用語は原告製品独自のものであるところ、被告製品1も一致している。
(イ)被告製品2について
 被告製品2も、「分類」の選択に関し、「ロケーション」の項目が単純化されていることなどを除くと、全体的な画面構成や表現は、被告製品1と同一である。
ウ 相違点について
(ア)被告製品1との相違点
 原告製品と被告製品1は、①被告製品1には、原告製品とは異なり、売上日付の入力を補助するためのカレンダータブが設けられている、②被告製品1には、原告製品と異なり、「複数分類選択」、「ロケグループ」、「サブロケーション除外」という項目が存在しないため、原告製品とは画面のレイアウトも明らかに異なるといった相違点が存在する。
(イ)被告製品2との相違点
 原告製品と被告製品2には、上記(ア)記載の相違点に加え、被告製品2ではロケーションを選択するのではなく、ロケーション場所を特定するための数字を直接入力する形式になっているという相違点が存在する。
(被告の主張)
ア ブロック①について
 補充発注は、書店における基本的な発注業務の一つであるところ、これに対応するメニューをメニューバーに設定することは当然であり、創作性はない。
イ ブロック②について
 補充発注の性質上、商品を絞り込むために、その分類及び出版社の指定を検索条件とすることは当然であり、それらの項目を表示することに創作性はない。また、「単一分類選択」という用語も、複数分類の指定をしないという意味にすぎず、一般的なありふれた表現である。
 書籍の分類についても、取次店又は書店が「大分類」、「中分類」及び「小分類」と定めている以上、それらの項目を表示することに創作性はない。
(8-2)補充発注(入力)画面〔発注タブ〕(別紙表示画面一覧表8-2)
(原告の主張)
 原告製品及び被告製品2は、いずれも、補充発注(発注入力)画面につき、別紙表示画面一覧表8-2記載のとおり、画面を5つのブロックに分割しており、その全体的な画面構成や表示は同一である。
ア ブロック①について
 原告製品では、メニューバーが表示されるが、被告製品2も同様である。
イ ブロック②について
 原告製品では、ブロック②に、補充発注(条件設定)画面で入力した検索条件が表示されるが、被告製品2も同様である。
ウ ブロック③について
 原告製品では、ブロック③に、抽出された商品の状態が色別で表示され、ピンク色は発売日から3か月以上経過した商品、青色は出庫処理で在庫が減少した商品、グリーンは未入荷、薄いグリーンはその他の商品を指すが、被告製品2でも同一の色分けが採用されている。
エ ブロック④について
 原告製品では、ブロック④に、発注した商品の情報として、横配列で「本体金額」及び「冊数」の合計が表示され、「再計算」ボタンも備わっているが、被告製品2においても、原告製品と同一の項目名や配列順、配置のレイアウトが採用されている。
オ ブロック⑤について
 原告製品では、ブロック⑤に、抽出された商品の明細として、横配列で「No」、「出版社」、「書誌名/著者名」、「売上」、「出庫」、「本体」、「冊数」、「在庫」、「自動」、「発注種別」、「発注取次店」、「前回発注日」、「発注状況」、「最新仕入先」、「分類」及び「商品コード」の各項目が表示されるが、被告製品2においても、「Oak在庫」という項目が追加されている以外は、原告製品と同一の項目名や配列順、配置のレイアウトが採用されている。
カ 相違点について
 原告製品と被告製品2には、原告製品では、オペレーションガイダンスの内容が「冊数を入力、発注先取次店を選択して、登録ボタンを押してください。」という発注場面におけるガイダンスであるのに対し、被告製品では、「売上日付、分類、表示順を指定して抽出ボタンを押してください」という検索場面におけるガイダンスとなっているといった相違点が存在する。
(被告の主張)
ア ブロック①について
 画面上部に常時メニューバーを表示することはありふれた機能にすぎない。
イ ブロック②について
 補充発注の対象となる商品を検索する以上、検索結果についての明細を表示することは当然の機能であり、創作性はない。また、原告製品では、補充発注(条件設定)画面から遷移して補充発注(抽出)画面が表示されるものと考えられるが、被告製品2では、補充発注(条件設定)画面の下(ブロック③の下)に検索結果が表示されるから、画面の牽連性も異なる。
ウ ブロック③について
 商品の状態に応じて色分けして表示することは、機能又はアイデアにすぎない。設定される色も特殊なものではなく、創作性はない。
エ ブロック④について
 補注発注する商品の合計冊数や合計金額を表示することは、過剰発注を避けるために必要な当然の機能であり、創作性はない。
オ ブロック⑤について
 検索結果についての明細は、補充発注の要否や補充発注の内容を確認するために必要な基本的な情報であり、これらを横並びで表示することに創作性はない。
(9)自動発注設定画面〔発注タブ〕(別紙表示画面一覧表9)
(原告の主張)
 原告製品及び被告製品1の自動発注設定画面は、別紙表示画面一覧表9記載のとおりであり、その全体的な画面構成や表示は同一である。
 原告製品では、画面の最上段に「各店の自動発注を行い、発注停止の優先順位は、単品>出版社>小分類>中分類>大分類>ロケーション」というオペレーションガイダンスが表示されるが、被告製品1においても全く同一の説明文が表示されることから、自動発注の考え方や方法が同じであることが裏付けられる。また、その下に表示される自動発注の設定を行う部分の画面レイアウトの表示も基本的に同じである。
(被告の主張)
 自動発注機能自体は、従来の製品においても採用されていた機能にすぎず、原告としての創作性はない。自動発注に際してどのような個別の項目を設定するかも機能又はアイデアである上に、実際に設定した項目を横並びに表示することに創作性はない。
 また、原告製品と被告製品1には、①被告製品1には、原告製品とは異なり、「分類」及び「ロケーション」の各項目が存在しない、②メッセージガイダンスの内容も一部異なる、③自動発注・発注確認の項目にあるボタンは、原告製品では「全ON」、「全OFF」、「全あり」、「全なし」であるのに対し、被告製品1では「ON」、「OFF」、「あり」、「なし」となっている、④「単品」及び「発注パターン選択」の項目の配置が異なっているといった相違点が存在する。
(10-1)定期改正(条件設定)画面〔定改タブ〕(別紙表示画面一覧表10-1)
(原告の主張)
 原告製品及び被告製品1の定期改正(条件設定)画面は、別紙表示画面一覧表10-1記載のとおりであり、その全体的な画面構成や表示は同一である。
 原告製品では、定期改正(条件設定)画面において、定期改正を行う雑誌を抽出するための項目として、縦配列で「仕入日付」、「取次店」及び「表示順」の各項目が表示されるが、被告製品1においても、原告製品と同一の項目名や配列順、配置のレイアウトが採用されている。「仕入日付」には入力例が案内されている点や、オペレーションガイダンスの内容、最下段に「抽出」、「クリア」のボタンが設けられている点も同じである。
(被告の主張)
 定期改正の対象となる雑誌を仕入日付や取次店で絞り込むことは機能又はアイデアにすぎず、創作的表現ではない。そもそも、原告が比較対象として主張する被告製品1の画面は、検索結果が表示されたものであるのに対し、原告製品では検索結果が表示されていないため、比較対象の選択自体に誤りがある。
 被告製品1には、原告製品にはない「並び替え」というボタンが存在するほか、原告製品では「全クリア」であるのが被告製品1では「クリア」と表示されているという相違点や、ガイダンスメッセージと各ボタンの上限関係が異なるという相違点も存在する。
 原告製品と被告製品1には、①被告製品1には、原告製品にはない「並び替え」というボタンが存在する、②原告製品では「全クリア」と表示されているボタンが、被告製品1では「クリア」と表示されている、③原告製品と被告製品1では、ガイダンスメッセージと各ボタンの上下関係が逆になっている、④被告製品1では、メッセージガイダンスの欄の下に、原告製品にはない「登録」・「自動計算」のボタンが存在するといった相違点が存在する。
(10-2)定期改正(入力)画面〔定改タブ〕(別紙表示画面一覧表10-2)
(原告の主張)
 原告製品及び被告製品1の定期改正(入力)画面は、別紙表示画面一覧表10-2記載のとおりであり、その全体的な画面構成や表示は同一である。
ア 原告製品において定期改正(入力)画面を表示する方法としては、①メニューバーの「定改」を選択し、定期改正入力画面を経由する方法と、②単品詳細情報画面のブロック⑤にあるサブメニューから「定期改正」のタブを選択する方法の2つが存在するが、被告製品においても同様である。
イ 原告製品では、横配列で過去の月が表示されるほか、縦配列で合計20もの項目が表示されるが、被告製品1においても、項目名や配列順、配置のレイアウトは原告製品と同一である。
(被告の主張)
ア 被告製品1では、単品詳細情報画面のブロック⑤にあるサブメニューから「定期改正」のタブを選択した場合、定期改正(入力)画面(甲52)は表示されないため、画面の牽連性が同一であるという原告の主張は誤りである。
イ 表示される各項目の大半は、BMマスタの頃から採用されていた項目と一致するものであり、創作性はない。
ウ 原告製品と被告製品1には、①定期改正(入力)画面は、原告製品では、メインメニューが表示される画面と同じ画面に表示されるが、被告製品1では、定期改正(条件設定)画面(甲51)で検出された雑誌から特定の雑誌を選択した際に、別画面として表示されるものであり、画面の牽連性が明らかに異なる、②過去情報を表示した表の配色につき、原告製品では、項目欄が白、具体的な情報が黄色であるのに対し、被告製品1では、項目欄が赤、具体的な情報が白であるといった相違点が存在する。
(11)単品定期改正入力画面〔定改タブ〕(別紙表示画面一覧表11)
(原告の主張)
 原告製品及び被告製品2の単品定期改正入力画面は、別紙表示画面一覧表11記載のとおりであり、その全体的な画面構成や表示は同一である。
ア 単品定期改正入力画面は、メニューバーの中から「定期改正」を選択した上で、その下に表示される「単品定期改正」を選択することで表示されるが、被告製品2も同様である、
イ 原告製品では、その下の部分において、定期改正をする雑誌の「雑誌コード」を入力するが、被告製品2でも同様である。
ウ 原告製品では、その下の部分には、縦配列で「取次店」、「定期購読数」及び「定期改正数」の各項目が表示されるほか、「自動計算」ボタンが設けられているが、被告製品2においても、原告製品と同一の項目名や配列順、配置のレイアウトが採用されている。
エ 原告製品では、さらにその下の部分に、定期改正数を検討する際に必要となる過去の情報として、横配列で過去の月が表示されるほか、縦配列で「雑誌コード」、「年号(年月)」、「本体価格」、「仕入日付」、「仕入数」、「定期購読数」、「売上数」、「3日目在庫」、「7日目在庫」、「返品数」、「入庫数」、「出庫数」、「在庫数」、「売上%」、「伸冊数」、「前年売上数」、「適正定改数」、「定期改正数」、「定改入力日」及び「仕入取次店」の20項目が表示されるが、被告製品2においても、原告製品と同一の項目名や配列順、配置のレイアウトが採用されている。
(被告の主張)
ア 定期改正は書店における基本的な業務の一つであるところ、これに対応するメニューを設けることは当然であり、創作性はない。
イ 全ての定期刊行物には雑誌コードが付されている以上、雑誌の特定のために雑誌コードを入力する項目を表示することは、ありふれた機能又はアイデアである。オペレーションガイダンスの内容も異なっている。
ウ 取次店、定期購読数、定期改正数等は、定期改正のために必要な基本的な情報であるから、これらの項目を表示することは機能上当然であり、創作性はない。自動計算のためのボタンを設けることにも創作性はない。
エ 過去の情報として表示される項目は、いずれも、配本数を調整するために必要な基本的な情報であるから、これらの項目を表示することは機能上当然であり、創作性はない。
オ 原告製品と被告製品2には、原告製品では、過去情報も中央部分に表示されているのに対し、被告製品は、全体的に横長のレイアウトであり、過去5報も画面全体にわたって表示されているといった相違点が存在する。
(12)返品(条件設定)画面〔返品タブ〕(別紙表示画面一覧表12)
(原告の主張)
 原告製品及び被告製品2は、いずれも、返品(条件設定)画面につき、別紙表示画面一覧表12記載のとおり、画面を2つのブロックに分割しており、その画面構成や表示画面は基本的に同一である。
ア ブロック①について
 原告製品では、メニューバーが表示され、「返品」を選択すると、返品入力画面が表示されるが、被告製品2も同様である。
イ ブロック②について
 原告製品では、ブロック②に、返品処理に必要な項目として、縦配列で「返品伝票番号」、「返品日付」、「取次店コード」、「伝票種別」、「返品期限」及び「処理票番号」の各項目が表示されるが、被告製品2においても、原告製品と同一の項目名や配列順、配置のレイアウトが採用されている。
(被告の主張)
ア ブロック①について
 一定期間経過後に売れ残った在庫を返品することは、書店における基本的な業務の一つであるところ、返品に関するメニューを設けることは当然であり、創作性はない。
イ ブロック②について
 返品伝票番号や返品日付、取次店コード等は、いずれも返品処理のために必要となる基本的な情報であるところ、これらの項目を縦に並べて表示することに創作性はない。
ウ 相違点について
 原告製品と被告製品2には、被告製品2には、原告製品とは異なり、日付の入力を補助するためのカレンダータブが設けられているといった相違点が存在する。
(13-1)商品マスタメンテナンス(新規登録・検索)画面〔マスタ管理タブ〕(別紙表示画面一覧表13-1)
(原告の主張)
 原告製品及び被告製品の商品マスタメンテナンス(新規登録・検索)画面は、別紙表示画面一覧表13-1記載のとおり、画面を2つのブロックに分割しており、その全体的な画面構成や表示は同一である。
ア ブロック①について
 原告製品では、メニューバーが表示され、「マスタ管理」を選択した上で、その下に表示される「商品マスタメンテナンス」を選択すると商品マスタメンテナンス画面が表示されるが、被告製品も同様である。
イ ブロック②について
(ア)被告製品1について
 原告製品では、ブロック②に、対象となる商品の検索条件として、最上段に「-新規登録・商品コード直接入力―」と表示され、その下に、「商品区分指定」及び「商品抽出条件」と表示される。具体的な条件として、縦配列で、「商品タイプ」、「商品コード」、「書名」、「著者名」、「発売日」、「大分類」、「出版社」及び「表示件数」の各項目が表示されるところ、被告製品1においては、「商品タイプ」という項目は存在しない点を除いて、原告製品と同一の項目名や配列順、配置のレイアウトが採用されている。
 「書名」及び「著者名」の検索方法として、「あいまい検索」と「前方一致」が選択可能な点も同じである。
(イ)被告製品2について
 被告製品2においても、具体的な条件につき、「著者名」及び「発売日」が存在しないことを除くと、原告製品と同一の項目名や配列順、配置のレイアウトが採用されている。
(被告の主張)
ア ブロック①について
 新しい商品が発売された場合に、当該商品の情報をデータベース上にマスタとして登録することは書店業務上不可欠であり、そのために画面上に「新規登録」というボタンを設け、そこから新規登録画面に移行できるようにすることは、ありふれた機能又はアイデアである。
イ ブロック②について
 商品コードや書名、著者名といった各項目は、書籍を特定するために必要な基本的な情報であり、これらを検索条件として表示することはありふれた機能又はアイデアである上に、これらの項目を縦に並べて表示することに創作性はない。検索方法として「前方一致」や「あいまい検索」を設けることや、分類として、中分類・小分類ではなく大分類を用いることも、機能又はアイデアにすぎず、これらを表示することに創作性はない。
ウ 相違点について
(ア)被告製品1との相違点
 原告製品と被告製品1には、①原告製品には、被告製品1にはない「商品タイプ」という項目が存在する、②被告製品1には、「商品コード」、「書名」及び「著者名」の各項目につき、それぞれメッセージガイダンスがあるが、原告製品には存在しないといった相違点が存在する。
(イ)被告製品2との相違点について
 原告製品と被告製品2には、上記(ア)記載の相違点に加え、①原告製品では、「マスタ管理」のタブがメインメニューの右端に表示されているのに対し、被告製品2では右から2番目に表示されている、②被告製品2には、メインメニューに、原告製品にはある「リクエスト管理」のタブが存在しない代わりに、原告製品にはない「仕上率管理」、「顧客管理」及び「マニュアル」のタブが存在する、③原告製品には、被告製品2にはない「商品区分指定」、「著者名」及び「発売日」の各項目が存在する、④原告製品では、「検索」・「クリア」という名称のボタンが、被告製品2では、それぞれ、「抽出」・「全クリア」という名称であるといった相違点が存在する。
(13-2)商品マスタメンテナンス(抽出)画面〔マスタ管理タブ〕(別紙表示画面一覧表13-2)
(原告の主張)
 原告製品及び被告製品1の商品マスタメンテナンス(抽出)画面は、別紙表示画面一覧表13-2記載のとおりであり、その全体的な画面構成や表示は同一である。
 原告製品では、商品マスタメンテナンス(検索)画面において検索された商品の情報として、横配列で「NO」、「選択」、「書名」、「著者名」、「出版社」、「発売日」、「本体」、「商品コード」、「大分類」及び「中分類」という項目が表示されるが、被告製品1においても、原告製品と同一の項目名や配列順、配置のレイアウトが採用されている。
(被告の主張)
 原告が商品マスタメンテナンス(抽出)画面として主張する原告製品の画面(甲54)は、原告製品操作マニュアル(甲25)には掲載されていないため、実在する画面であるか不明である。
 仮に商品マスタメンテナンス(抽出)画面が実在するとしても、登録した商品マスタの情報を抽出するために、検索条件に該当する商品の一覧を表示することはありふれた機能又はアイデアである上に、書名、著者名、出版社、発売日等の項目も書籍の特定のために必要な基本的な情報であるから、これらの項目を横並びで表示することに創作性はない。
 原告製品と被告製品1には、①被告製品1には、原告製品とは異なり、CSV出力に対応するボタンの表示はない、②原告製品では、検索結果数が多い場合、複数ページに分割して表示されるが、被告製品1では、下スクロールにより全ての検索結果を表示させる画面構成になっており、その結果、被告製品1には、原告製品とは異なり、ページを遷移させるための「前のページ」、「前へ」、「12345」といった頁数、「次へ」、「次のページ」といった項目は存在しないといった相違点が存在する。
5 争点3(被告表示画面2が編集著作物としての原告製品に係る著作権を侵害するか。)
(原告の主張)
 原告製品は、個々の表示画面が創作的表現であり、著作物に当たるのみならず、原告製品を構成する表示画面全体をみた場合、その表示画面の選択及び配列(画面相互の連携、流れ、リンク性及び組み合わせ等)にも原告独自の創作性があるから、原告製品は、編集著作物としての保護も受ける。
 具体的には、原告製品は、画面の最上部にメニュータグを常時表示し、各タグに具体的な業務名を明記した上で、どの画面からも次の業務に移行できるようにするとともに、画面の中央にサブメニュー画面を用意し、日、週、月単位の売上情報、他店舗、定期改正、リクエスト管理の情報につき、画面遷移なしに表示することを可能にするなど、その表示画面の選択と配列には創作性がある。
(被告の主張)
 原告が本件訴訟において、原告表示画面として取り上げる表示画面は、いずれも、個別の商品についての売上げ、在庫等のデータベースからの商品検索、発注・補充発注、定期改正、返品、マスタ情報の登録・検索などといった基本的な書店業務をメニュー化したものにすぎず、その選択及び配列に創作性は認められない。
 そもそも、原告表示画面は、原告製品の一部のプルダウンメニューに対応する画面のみを選択したものにすぎない。原告は、原告製品の表示画面の全てにつき、その選択及び配列の創作性に関する主張立証を具体的にしていない以上、原告の主張は失当である。
6 争点4(不正競争防止法違反の有無)
(原告の主張)
 原告表示画面は、周知性及び特別顕著性を備えたものであり、不正競争防止法2条1項1号の「商品等表示」に当たるところ、これに類似した表示画面を有する被告製品1を販売する行為は、同号の「不正競争」に当たる。
(1)商品等表示
 原告製品は、多数の個別の表示画面(甲1~22)から構成され、個々の表示画面は項目、文字・文章、色彩等の表現から形成されている。これらの画面は、商品の形態であり、不正競争防止法2条1項1号にいう「他人の商品等表示」に該当する。
(2)周知性
 以下のような事情からすると、原告表示画面は、遅くとも平成25年末までには、出版業界及び書店業界において周知となった。
ア 原告製品は、既に全国の小売書店1000店舗に向けて販売・採用されており、原告製品の標章、ソフトの機能や画面構成等の内容は、ユーザーである書店小売業界や出版業界において広く認識・周知されている。
イ 原告製品は、平成24年11月には東京のD書店に導入され、平成25年1月には静岡市のE書店にも導入されたが、そのことが出版業界の業界新聞である「文化通信BB」(甲18)にも紹介されたことにより、出版業界・書店業界において耳目を集めた。
ウ 業界最大手の取次店である日本出版販売株式会社(以下「日販」という。)は、平成25年8月1日、業界新聞「新文化」に書店向けPOSレジと原告製品を連携させることを発表し、日販系列の書店1000店に1300台を目標に販売していくことを業界に表明した。これにより、出版業界・書店業界において、原告製品がメインの書店業務システムであることが広く周知された。
エ 原告は、「文化通信」及び「新文化」のウェブサイトの最上段に、最大のバナー広告を35日掲載している。また、経産省・日本書籍出版協会・日本書店商業組合が後援している「BOOKEXPO」や「書店大商談会」に出展し、広報を行ってきている。
オ 原告のシステム製品は、出版社市場ではトップシェアを占めており、原告は、出版業界システムのリーディングカンパニーであり、書店市場においてPOS分析会社への送信店舗数が1000店を超えているのは原告会社と大手取次店の日販とトーハンのみである。
(3)特別顕著性
 原告表示画面は、以下のとおり、画面における要素の選択と配置、画面の推移・構成・配色など、その表現に原告の個性が表れており、他に類のない独創的な特徴を有するものである。
ア 原告製品は、業務統合型のシステムを構築するという設計思想に基づき、各書店業務の組織的縦割り業務の枠を取り払ったシステムとなっており、例えば、仕入部門で使うメニューと店売部門で使うメニューとが分けられることなく統合されている。
イ 原告製品は、商品分析を軸にした業務運営が可能となるように設計されており、商品分析の画面からそのまま商品の発注ができる。すなわち、原告製品は、全ての画面の最上段にメニューが表示されているので、当該メニューをクリックすることにより各業務に移行することができるが、他社の書店業務システムはいったんメニュー画面に立ち戻り、そこから各業務の画面に移行する必要がある。
ウ 原告表示画面は、他に類を見ない表示方法、構成、画面の推移を有するものであり、例えば、「単品分析画面」、「単品詳細情報画面」、「他店舗在庫表示画面」等は原告製品に特有の画面であり、その画面から発注ができるという機能も原告製品ならではの工夫である。また、これらの画面から更に詳細分析情報を展開する画面を表示したり、定期改正の画面に展開することができるという機能も他社製品にはない原告製品の特徴である。
エ 原告製品は、業務システムにありがちな帳票を作成するという発想がなく、飽くまで画面に表示して見るということを基本としている。また、用語についても独自性がある。
(4)誤認混同のおそれ
 原告及び被告などのシステム会社は、営業活動においてシステムのデモンストレーションを行うところ、顧客に原告表示画面及び被告表示画面を見せれば、色彩以外は同じだと感じるから、誤認混同が生ずることは避けられない。
(被告の主張)
 原告表示画面には、周知性も特別顕著性も認められない以上、不競法2条1項1号の「商品等表示」に該当する余地はない。したがって、被告製品1の販売は「不正競争」には当たらない。
(1)周知性
ア 原告製品がわずか1年という短期間に独占的に使用されるに至ったことや、強力な宣伝広告や爆発的な販売実績等が存在することにつき、原告は客観的証拠に基づく立証を一切行っていない。なお、D書店、E書店はテスト利用をしていたにすぎない。
イ 原告製品が小売書店1000店舗に導入されていることを裏付ける客観的証拠はない。
ウ 「文化通信BB」の記事(甲18)は、広告料を支出する事業者の新製品をPRするための広報記事にすぎず、周知性を基礎付けるものではなく、そもそも、同記事には原告製品の具体的な表示画面は掲載されていない。
エ 出版業界新聞「新文化」(乙23)の記事の内容も、日販が原告製品ではなく日販の新型POSレジの導入台数として1000店舗、1300台を目指していることを紹介するものにすぎず、原告製品が1000台導入されたことを意味するものではない(乙23、甲71の2)。また、同記事には原告表示画面は一切示されていない。
オ 原告の主張するバナー広告(乙22)についても、広告として表示されているのは「BookAnswer」という商品名にすぎず、原告表示画面は一切示されていない。
(2)特別顕著性
ア 原告の主張は、他社製品と原告製品が異なるという趣旨であると解されるが、そもそも、原告表示画面は、書店業務における基本的な業務をシステム上取り込んだものにすぎず、取り立てて特徴的な機能や画面はない。用語についても独自性はない。
イ 商品分析、発注、定期改正、マスタメンテナンスといった業務の種類に応じてメニューと画面が整理されている点は、他社製品においても同様である。
ウ 他社製品やBMマスタにおいても、商品分析をしながら発注を行う機能及び画面が実装されており、別途発注画面に立ち戻る必要はない。
(3)誤認混同のおそれ
 需要者である書店は、書店業務管理システムにつき、その商品名により出所を区別することができる。書店業務管理システムは、小売店・量販店に陳列されるような商品とは異なり、需要者と顧客との間で一連のやり取りを経た上で最終的に導入に至るものであるから、Perfectionを導入する需要者が原告の製品であると誤認・混同する余地はない。
7 争点5(損害)について
(原告の主張)
 被告の著作権侵害行為により原告が被った損害は、次のとおりである。
(1)既発生の損害4214万2304円
ア NET21に対するシステム利用料及び保守料3834万2304円被告が被告製品をNET21に販売し、同社及び同社に加盟する小売書店業者に電気通信回線を通じて提供したことにより、原告は、原告製品の利用契約及び保守契約を締結する機会を失った。
 原告製品のシステム利用料及び保守料は、月額106万5064円(税込み)であり、NET21との契約が解除された平成27年8月31日の翌日から本件訴訟提起時までの36か月間のシステム利用料及び保守料相当額は、3834万2304円である。
イ 弁護士費用380万円
(2)未発生の損害月額106万5064円
 原告は、平成30年9月1日以降も、被告が著作権侵害行為を停止するまでの間、月106万5064円の割合によるシステム利用料及び保守料相当額の損害を被り続けることになる。
(被告の主張)
 争う。
第4 当裁判所の判断
1 争点2-3(被告表示画面の複製又は翻案該当性)について
事案に鑑み、まず争点2-3について判断する。
(1)複製及び翻案の意義
 原告は、被告表示画面が原告表示画面に係る著作権の複製又は翻案に該当すると主張するところ、複製とは、印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製することをいい(著作権法2条1項15号参照)、既存の著作物に依拠し、これと同一のものを作成し、又は、具体的表現に修正、増減、変更等を加えても、新たに思想又は感情を創作的に表現することなく、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持し、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものを作成する行為をいうと解される。
 また、翻案(著作権法27条)とは、既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう(最高裁平成11年(受)第922号同13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁参照)。
 そして、著作権法は、思想又は感情の創作的な表現を保護するものであるから(同法2条1項1号参照)、既存の著作物に依拠して作成又は創作された著作物が、思想、感情若しくはアイデア、事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において、既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には、複製にも翻案にも当たらないというべきである。
(2)ビジネスソフトウェアの表示画面における複製又は翻案該当性
 原告製品及び被告製品は、いずれも、書店業務に必要なデータを入力・登録し、業務の目的、内容等に応じて、これを検索・抽出して分析し、あるいは、収載されたデータを追加、削除又は修正するなどの作業を行うことにより、発注、返品、定期改正等の書店業務を効率的に行うためのビジネスソフトウェアである。
 そして、本件において複製又は翻案該当性が争われている原告表示画面及び被告表示画面は、利用者が、書店業務に関するデータの入力、登録、修正の作業や、検索結果の表示の閲覧をするための画面であり、その性質上、同画面における入力項目の配置・選択や検索結果の表示は、利用者の操作性や一覧性を可能な限り高め、作業の効率性を向上するという観点から設計されることとなると考えられる。
 原告製品及び被告製品の画面表示は、その表示形式及び表示内容に照らすと、「図形の著作物」(著作権法10条1項6号)に類するものであると解されるが、両製品は、一定の業務フローを実現するため、単一の画面表示で完結することなく、業務の種類に応じて複数の画面を有し、一つの画面から次の画面に遷移することを可能にするなどして、利用者が同一階層又は異なる階層に設けられた複数の表示画面間を移動しつつ作業を行うことが想定されている。
 このようなビジネスソフトウェアの表示画面の内容や性質等に照らすと、本件において被告表示画面が原告表示画面の複製又は翻案に該当するかどうかは、①両表示画面の個々の画面を対比してその共通部分及び相違部分を抽出し、②当該共通部分における創作性の有無・程度を踏まえ、被告製品の各表示画面から原告製品の相当する各表示画面の本質的な特徴を感得することができるかどうかを検討した上で、③ソフトウェア全体における表示画面の選択や相互の牽連関係の共通部分やその独自性等も考慮しつつ、被告表示画面に接する者が、その全体として、原告表示画面の表現上の本質的な特徴を直接感得することができるどうかを検討して判断すべきであると解される。
(3)各画面表示の対比・検討
ア 単品分析画面
(ア)被告表示画面1と共通する部分
 証拠(甲1の1、25〔21、22頁〕、乙48の1)によれば、原告製品及び被告製品1における単品分析画面の内容は、別紙表示画面一覧表1(1)(2)のとおりであり、両製品は、(ⅰ)画面の上部にメニューバーが表示され、被告製品1において「仕上率管理」と「HT処理」が追加されていることや、「棚卸」と「ロケ管理」の位置が逆であることを除けば、その項目名や配列順等が同一であること、(ⅱ)商品抽出条件ブロックにおいては、検索条件として、縦配列で「商品コード」や「書名」、「著者名」、「発売日」、「大分類」、「出版社」、「商品メモ」の各項目が表示され、項目の順番も一致していること、(ⅲ)商品分析条件ブロックにおいては、縦配列で「店舗」、「期間」及び「店舗表示順」という項目が表示され、項目の順番も一致していることなどにおいて共通すると認められる。
(イ)上記共通部分の創作性の有無及び程度等
 しかし、上記(ⅰ)の共通部分に関し、画面の最上段にメインメニューを配し、そこに表示された各メニューをクリックすることにより、画面の表示内容の切替えを可能にすることは、アイデアにすぎず、メニューバーに具体的に表示されている個々のタブはいずれも基本的な書店業務であって、その名称の選択、配列順序等の具体的な表現において、創作者の思想又は感情が創作的に表現されているということはできない(以下、他の画面に表示されるメインメニューについても同様である。)。また、「単品分析」という用語についても、個々の商品を「単品」と称することに創作性があるということはできない。
 上記(ⅱ)及び(ⅲ)の共通部分に関しても、複数の検索条件を設定することで商品を絞り込むというのは、それ自体はアイデアに属する事柄であるところ、検索条件として具体的に表示されている各項目は、書籍を特定し、あるいは店舗毎の分析をするために必要な一般的な情報であり、その名称の選択、配列順序及びそのレイアウトといった具体的な表現において、創作者の思想又は感情が創作的に表現されているということはできない。
 原告が主張するその余の共通点も、原告製品の単品分析画面における表現上の本質的な特徴を直接感得させるものということはできない。
(ウ)被告表示画面1と相違する部分
 かえって、原告製品は青を基調とした配色を画面全体で採用しているのに対し、被告製品1は赤を基調とした配色を採用しており、その配色が異なる(配色の差異については、差違の程度は異なるものの、原告主張に係る全ての画面に共通する相違部分である。)。
 また、原告製品では、商品抽出条件の検索条件を縦に並べた上で、商品の検索結果が新たな画面において表示されるのに対し、被告製品1では商品抽出条件の検索条件ブロックを左右に分けて、それぞれに検索条件が縦配列され、商品検索結果が商品分析条件(ブロック④)の下に表示されるという相違部分が存在する。これらの相違部分により、利用者が画面全体から受ける印象は相当異なる。
 以上のとおり、両製品の単品分析画面に関する共通部分は、アイデアに属する事項又は表現上の創作性がない部分にすぎず、上記の相違部分の存在も併せ考えると、被告製品1の単品分析画面に接する利用者が原告製品1の同画面における本質的な特徴を感得することができないというべきである。
(エ)被告表示画面2について
 証拠(乙37〔2頁〕)によれば、被告製品2における単品分析画面は、表示画面一覧表1(3)のとおり、商品抽出条件において、「あいまい検索」及び「完全一致」という検索条件を選択することができないことや、商品分析条件において、「店舗」につき、「複数店舗」ではなく「全店舗」を選択することができることなどを除き、表示されている項目や配列順は被告製品1と基本的に同一であるところ、被告製品1に関する上記判示と同様の理由から、被告製品2の単品分析画面に接する利用者が原告製品1の同画面における本質的な特徴を感得することはできないというべきである。
イ 単品詳細情報画面
(ア)被告表示画面1との共通部分
 証拠(甲25〔15、16、22頁〕、甲30の1、乙48の2)によれば、原告製品及び被告製品1における単品詳細情報画面の内容は、別紙表示画面一覧表2(1)(2)のとおりであり、両製品は、(ⅰ)画面の最上段の左側には自店舗単品詳細情報を表示するブロック①が、その右側には当該単品の書影を表示するブロック②が存在し、ブロック①には、「商品コード」、「本体」、「発売日」、「書名」、「著者」、「出版社」及び「分類」(大分類・中分類・小分類)等の各項目が表示され、項目の順番や表示位置も一致すること、(ⅱ)その下に、単品詳細情報を表示するブロック③及び発注操作を行うためのブロック④が存在し、単品詳細情報として、縦配列で「当年総計」、「最終更新日」及び「最新更新数」の各項目が、横配列で「仕入」、「売上」、「返品」、「入庫」、「出庫」、「発注」及び「在庫」の各項目が表形式で表示され、項目の順番も一致すること、(ⅲ)更にその下に、サブメニューとして、「週間/月間」、「日別」、「他店情報」、「定期改正」及び「リクエスト管理」の各項目が表示され、項目の順番も一致すること、(ⅳ)デフォルトの状態においては、上記サブメニューのうち、「週間/月間」が選択されており、その下に、週間の統計として、縦配列で「仕入数」、「売上数」、「返品数」、「入庫数」及び「出庫数」の各項目が、横配列で「5週前」、「4週前」・・・「当週」、「月」、「火」、「水」・・・「日」の各項目が表形式で表示されるとともに、月間の統計として、縦配列で「仕入数」、「売上数」、「返品数」、「入庫数」及び「出庫数」の各項目が、横配列で、12か月前から順に14か月分の情報が表形式で表示され、項目の順番も一致していることが認められる。
(イ)上記共通部分の創作性の有無及び程度等
 しかし、上記(ⅰ)の共通部分に関し、自店舗単品詳細情報として具体的に表示されている各項目は、書籍を効率的に検索するために必要な一般的な情報であり、その名称の選択、配列順序及びそのレイアウトといった具体的な表現において、創作者の思想又は感情が創作的に表現されているということはできない。また、検索された商品の書影を表示することは、アイデアに属する事柄にすぎない。
 また、上記(ⅱ)の共通部分に関し、当該書籍の統計を参照しながら、画面を遷移させることなく発注を可能とすることは、それ自体アイデアにすぎない上に、単品詳細情報として具体的に表示されている各項目は、発注業務を効率的に行うに当たって必要となる一般的な情報であり、その名称の選択、配列順序及びそのレイアウトといった具体的な表現において、創作者の思想又は感情が創作的に表現されているということはできない。
 上記(ⅲ)及び(ⅳ)の共通部分についても、画面中央部にサブメニューを設け、メニュータブを選択することで表示を切り替えるというのは、それ自体アイデアに属する事柄である上に、サブメニューとして具体的に表示されている各メニューや、「週間/月間」の統計として具体的に表示されている各項目は、いずれも、当該商品に関し、書店業務を効率的に行うに当たって必要となる一般的な情報であり、その名称の選択、配列順序及びそのレイアウトといった具体的な表現において、創作者の思想又は感情が創作的に表現されているということはできない。
 原告が主張するその余の共通点も、原告製品の単品詳細情報画面における表現上の本質的な特徴を直接感得させるものではない。
(ウ)被告表示画面2について
 証拠(乙24〔21、22頁〕、乙37〔3頁下段〕)によれば、被告製品2における単品詳細情報画面は、自店舗単品詳細情報において、その所在につき「メイン」と「サブ」を区別することなく、合計4つのロケーションを表示していることなどを除くと、表示されている項目や配列順は、被告製品1と基本的に同一であるところ、被告製品1に関する上記判示と同様の理由から、被告製品2の単品分析画面に接する利用者が原告製品1の同画面における本質的な特徴を感得することはできないというべきである。
ウ 日別画面
(ア)被告表示画面1との共通部分
 証拠(甲25〔15頁〕、甲62、乙48の11)によれば、原告製品及び被告製品1における日別画面(当月の日別毎の仕入れ等の変動数を表示したもの)は、別紙表示画面一覧表3(1)(2)の画面下段(赤枠部分)であり、同部分以外は単品詳細情報画面と同一である。上記赤枠部分には、当該単品の日別の統計として、横配列で「仕入数」、「売上数」、「返品数」、「入庫数」及び「出庫数」が、縦配列で日付が表形式で表示され、項目の順番も一致していることが認められる。
(イ)上記共通部分の創作性の有無及び程度等
 しかし、日別画面において具体的に表示されている各項目は、いずれも販売状況を確認するために必要な一般的な情報であり、その名称の選択、配列順序及びそのレイアウトといった具体的な表現において、創作者の思想又は感情が創作的に表現されているということはできない。
 原告が主張するその余の共通点も、原告製品の日別画面の表現上の本質的な特徴を直接感得させるものではない。
エ 他店舗在庫表示画面
(ア)被告表示画面1との共通部分
 証拠(甲6、甲25〔15、16頁〕、甲62、乙48の3)によれば、原告製品及び被告製品1における他店舗在庫画面は、別紙表示画面一覧表4(1)(2)のブロック⑥であり、同部分以外は単品詳細情報画面と同一である。両製品のブロック⑥には、縦配列で各店舗名及び「売/仕」、「売」、「仕」及び「返」のサブ項目が、横配列で発売日から6日間の日付及び「累計」及び「日別」のサブ項目が表形式で表示され、項目の順番も一致していることが認められる。
(イ)上記共通部分の創作性の有無及び程度等
 しかし、他店舗在庫として具体的に表示されている各項目は、他店舗における書籍の販売状況を確認・分析するために必要な一般的な情報であり、その名称の選択、配列順序及びそのレイアウトといった具体的な表現において、創作者の思想又は感情が創作的に表現されているということができない。
 原告が主張するその余の共通点も、原告製品の他店舗在庫表示画面における表現上の本質的な特徴を直接感得させるものではない。
(ウ)被告表示画面2について
 原告は、甲6の2の画面が被告製品2における「他店舗在庫表示画面」である旨主張するが、同画面の具体的な内容は、別紙表示画面一覧表4(3)のとおりであるところ、ブロック⑤によれば、同画面は、サブメニューとして、「他店情報」ではなく「法人グループ」のタブが選択された状態であることが認められるので、そもそも、甲6の2の画面は、比較対象として不適切であるといわざるを得ない。
 この点に関し、原告は、被告製品2における「法人グループ」が原告製品にいう「他店情報」に該当する旨主張しているが、ブロック⑤には、「法人グループ」というタブのほかに「他店情報」というタブも表示されている以上、原告の同主張は採用することができない。
オ 定期改正入力画面
(ア)被告表示画面1との共通部分
 証拠(甲7の1、甲25〔16頁〕、乙48の4)によれば、原告製品及び被告製品1における定期改正入力画面は、別紙表示画面一覧表5(1)(2)のブロック⑥であり、同部分以外は単品詳細情報画面と同一である。両製品のブロック⑥は、(ⅰ)定期改正に必要な項目として、最上段に、当該単品についての「雑誌コード」及び「雑誌名」が表示され、その後、上から順に、オペレーションガイダンス、「取次店」、「定期購読数」及び「定期改正数」などとの各項目が表示され、項目の順番も一致しているほか、「自動計算」ボタンをクリックすると、定期改正数が自動的に表示される点も同一であることや、(ⅱ)オペレーションガイダンスの内容が、「取次店を選択し、定期購読数と定期改正数を入力して登録ボタンを押してください。取次店を選択すると、現在登録されている定期購読数と定期改正数が表示されます。【注意】定期購読数を指定した場合は、その数を含めた定期改正数を入力してください。」との記載である限度で共通すると認められる。
(イ)上記共通部分の創作性の有無及び程度等
 しかし、上記(ⅰ)の共通部分に関し、単品詳細情報画面において、サブメニューを切り替えることにより、定期改正に必要な情報を表示した上で、画面を遷移させることなく定期改正の処理を可能とすることや、自動計算ボタンを設けることにより、目安となる定期改正数を自動的に表示することは、いずれも、それ自体アイデアにすぎない上、具体的に表示されている各項目は定期改正を行うために必要な一般的な情報であり、その名称の選択、配列順序及びそのレイアウトといった具体的な表現において、創作者の思想又は感情が創作的に表現されているということはできない。
 また、上記(ⅱ)の共通部分についても、ガイダンスメッセージの内容は、表示された画面の機能を端的に説明するものであり、その表現の選択の幅は狭く、その内容に創作性があるということはできない。
 原告が主張するその余の共通点も、原告製品の定期改正入力画面における表現上の本質的な特徴を直接感得させるものではない。
(ウ)被告表示画面2について
 証拠(乙37〔5頁下段〕)によれば、被告製品2における定期改正入力画面は、別紙表示画面一覧表5(3)のとおりであり、画面の最下部に「登録」及び「クリア」ボタンが付加されていることなどを除くと、表示されている項目やその配列順は、基本的に被告製品1と同一であると認められるところ、被告製品1に関する上記判示と同様の理由から、被告製品2の定期改正入力画面に接する利用者が原告製品の同画面における本質的な特徴を感得することはできないというべきである。
カ リクエスト管理画面
(ア)被告表示画面1との共通部分
 証拠(甲25〔17頁〕、甲61、乙48の10)によれば、原告製品及び被告製品1におけるリクエスト管理画面は、別紙表示画面一覧表6(1)(2)の画面下段(赤枠部分)である。両製品の同部分は、「リクエスト呼び出し」というタイトルの下、「リクエスト数」や「リクエストコード」の各項目が表示されており、リクエストコードを入力した上で、「呼び出し」ボタンをクリックすることにより、当該リクエストコードに対応したリクエストが呼び出され、その下に、「リクエスト一覧」として、「リクエストコード」、「メモ1」、「リクエスト数」、「更新日」、「確認済」、「状態」の各項目が横配列で表示され、その順番も一致していることが認められる。
(イ)上記共通部分の創作性の有無及び程度等
 しかし、単品詳細情報画面において、サブメニューを切り替えることにより、画面を遷移させることなく、当該単品について顧客が行ったリクエストに係る情報を確認できるようにすることは、それ自体アイデアに属する事柄である上に、具体的に表示されている各項目は、いずれも、リクエストを特定し、又は、特定されたリクエストの内容や処理状況等を把握した上で、その対応を検討したりするために必要な一般的な情報であり、「リクエスト呼び出し」というタイトルを含め、その名称の選択、配列順序及びそのレイアウトといった具体的な表現において、創作者の思想又は感情が創作的に表現されているということはできない。
 原告が主張するその余の共通点も、原告製品のリクエスト管理画面における表現上の本質的な特徴を直接感得させるものではない。
キ 発注手入力(条件設定)画面
(ア)被告表示画面2との共通部分
 証拠(甲3の1、甲25〔32、37頁〕、乙37〔15頁上段〕)によれば、原告製品及び被告製品2における発注手入力(条件設定)画面の内容は、別紙表示画面一覧表7-1(1)(2)のとおりであり、両製品は、発注手入力の対象となる書籍を抽出するための検索条件として、縦配列で「発注日付」、「取次店」及び「発注方法」の各項目が表示されており(ブロック②)、その項目の順番が一致することや、「発注日付」の右隣に表示された「入力例:2013年2月○日→2013/02/○」というオペレーションガイダンスの内容(日付は異なる。)において共通すると認められる。
(イ)上記共通部分の創作性の有無及び程度等
 しかし、ブロック②において表示されている各項目は、いずれも発注手入力という書店業務を行うために必要な一般的な情報であり、その名称の選択、配列順序及びそのレイアウトといった具体的な表現において、創作者の思想又は感情が創作的に表現されているということはできない。また、オペレーションガイダンスの内容も、日付の入力方法を説明するものとして、ごくありふれたものにすぎない。
 原告が主張するその余の共通点も、原告製品の発注手入力(条件設定)画面における表現上の本質的な特徴を直接感得させるものではない。
ク 発注手入力(入力)画面
(ア)被告表示画面2との共通部分
 証拠(甲3の2、甲25〔37、38頁〕、乙37〔15頁下段〕)によれば、原告製品及び被告製品2における発注手入力(入力)画面の内容は、別紙表示画面一覧表7-2(1)(2)のとおりであり、両製品は、(ⅰ)ブロック②の最上段に、横配列で「発注日付」、「取次店(名)」及び「発注方法」の各項目が表示され、(ⅱ)その下のブロック③において、発注手入力の対象となる書籍を抽出するための検索条件として、「商品コード」の入力欄が設けられ、商品コードを入力して「表示」ボタンをクリックすると、その下に商品の基本情報として、「書誌名」や「出版社」、「前回発注日」及び「在庫」の各項目が表示され、それらを参考にしながら発注する冊数を入力することができる構成になっていること、(ⅲ)発注する冊数を入力した上で、「追加」ボタンをクリックすると、その下のブロック④に「本体金額」、「冊数」として、発注する商品の合計金額及び合計冊数が表示され、(ⅳ)画面の最下部に位置するブロック⑤に、当該商品の明細として、横配列で「No」、「商品コード」、「号数」、「書誌名」、「本体」、「冊数」、「在庫」、「前回発注日」、「最新仕入先」、「削除」が表示され(ただし、原告製品では「書誌名」の後に「出版社」が表示されているという相違点がある。)、その順番も一致していることなどが認められる。
(イ)上記共通部分の創作性の有無及び程度等
 しかし、書籍を効率的に発注するためには、「発注日付」、「取次店」、「発注方法」などの発注業務に関する基本的な情報を入力するとともに、「商品コード」、「書誌名」、「出版社」などの情報を入力して発注対象となる商品を特定し、更に発注に必要な「前回発注日」、「在庫」などの情報を参照しつつ発注する冊数を決定することが必要かつ合理的であると考えられる。かかる業務フローを考慮すると、上記(ⅰ)(ⅱ)の共通部分に係るブロック②及び③に表示される各項目は、発注業務を効率的に行う上で必要な一般的な情報にすぎず、その名称の選択、配列順序及びそのレイアウトといった具体的な表現において、創作者の思想又は感情が創作的に表現されているということはできない。
 また、上記(ⅲ)の共通部分に関し、ブロック④に表示される項目は、発注する商品の合計金額及び合計冊数の表示であり、発注業務に不可欠な情報の表示であって、その名称の選択、配列順序及びそのレイアウトといった具体的な表現において、創作者の思想又は感情が創作的に表現されているということはできない。
 さらに、上記(ⅳ)の共通部分についても、商品の発注処理を行った画面において当該商品の明細を確認できるようにすることは、アイデアに属する事柄である上に、具体的に表示されている項目は、いずれも商品の明細として一般的な情報であり、その名称の選択、配列順序及びそのレイアウトといった具体的な表現において、創作者の思想又は感情が創作的に表現されているということはできない。
 原告が主張するその余の共通点も、原告製品の発注手入力(入力)画面における表現上の本質的な特徴を直接感得させるものではない。
ケ 補充発注(条件設定)画面
(ア)被告表示画面1との共通部分
 証拠(甲4、甲25〔33頁〕、乙24〔3頁〕、乙37〔13頁〕)によれば、原告製品及び被告製品1における補充発注(条件設定)画面の内容は、別紙表示画面一覧表8-1(1)(2)のとおりであり、両製品は、(ⅰ)ブロック②において、補充発注の対象となる書籍を抽出するための検索条件として、縦配列で「売上日付」、「分類」、「出版社」及び「表示順」の各項目が、最下部のブロック③に「抽出」及び「クリア」ボタンが表示され、その項目の順番も一致していることや、(ⅱ)上記の「分類」欄につき、単一分類選択として、「大分類」、「中分類」及び「小分類」を選択することができることや、「ロケーション」を選択することができる点においても共通すると認められる。
(イ)上記共通部分の創作性の有無及び程度等
 しかし、上記(ⅰ)及び(ⅱ)の共通部分に関し、検索条件を具体的に表示されている各項目(細部項目を含む。)は、いずれも書籍を特定するために必要な一般的な情報であり、その名称の選択、配列順序及びそのレイアウトといった具体的な表現において、創作者の思想又は感情が創作的に表現されているということはできない上、「抽出」、「クリア」などのボタンもありふれたものである。
 原告が主張するその余の共通点も、原告製品の補充発注(条件設定)画面における表現上の本質的な特徴を直接感得させるものではない。
(ウ)被告表示画面2について
 証拠(乙24〔3頁〕、乙37〔13頁〕)によれば、被告製品2における補充発注(条件設定)画面は、別紙表示画面一覧表8-1(3)のとおりであり、ロケーションの入力に際して、ロケーションを選択するのではなく、特定するためのコードを直接入力する形式になっていることなどを除くと、表示されている項目やその配列順は、基本的に被告製品1と同一であり、被告製品1に関する上記判示と同様の理由から、被告製品2の補充発注(条件設定)画面に接する利用者が原告製品の同画面における本質的な特徴を感得することはできないというべきである。
コ 補充発注(入力)画面
(ア)被告表示画面2との共通部分
 証拠(甲5、甲25〔34、35頁〕、乙24〔3頁〕、乙37〔14頁〕)によれば、原告製品及び被告製品2における補充発注(入力)画面の内容は、別紙表示画面一覧表8-2(1)(2)のとおりであり、両製品は、(ⅰ)ブロック②には「補充発注(条件設定)画面」において、入力された抽出条件(売上日付、分類、出版社、表示順)等が表示されること、(ⅱ)さらにその下のブロック③に抽出された商品の状態が色別で表示され、それぞれ、ピンク色は発売日から3か月以上経過した商品、青色は出庫処理で在庫が減少した商品、グリーンは未入荷、薄いグリーンはその他の商品を指すこと、(ⅲ)その右側のブロック④に、本体金額や冊数の合計が表示されること、(ⅳ)最下部のブロック⑤に抽出された書籍についての情報として、書籍ごとに、その状態に従った色が付された状態で、横配列で「No」、「出版社」、「書誌名・著者名」、「売上」、「出庫」、「本体」、「冊数」、「在庫」、「自動」、「発注種別」、「発注取次店」、「前回発注日」、「発注状況」、「最新仕入先」、「分類」、「商品コード」の各項目が表形式で表示され(ただし、被告製品2では、「在庫」の後に「Oak在庫」が表示されるという相違点がある。)、項目の順番も共通すると認められる。
(イ)上記共通部分の創作性の有無及び程度
 しかし、上記(ⅰ)及び(ⅱ)の共通部分に関し、ブロック②及び④に具体的に表示されている各項目は、いずれも、補充発注という書店業務を行うために必要な一般的な情報であり、その名称の選択、配列順序及びそのレイアウトといった具体的な表現において、創作者の思想又は感情が創作的に表現されているということはできない。
 また、上記(ⅲ)の共通部分に関し、商品の状態を区別し、各状態を異なる色で表示することは、いずれもアイデアにすぎず、「3カ月経過」をピンク色、「出荷」を水色、「未入荷」を緑、「新着」を紫、「その他」を黄緑でそれぞれ表示することも、特段の創作性が認められるような表現方法ということはできない。
 さらに、上記(ⅳ)の共通部分についても、補充発注を行うために、検索条件に合致した書籍を、その商品の状態を色で識別できるようにした上で一覧表示すること自体はアイデアに属する事柄であるところ、検索結果として具体的に表示されている各項目はいずれも、発注業務に当たって参考とすべき一般的な情報であり、その名称の選択、配列順序及びそのレイアウトといった具体的な表現において、創作者の思想又は感情が創作的に表現されているということはできない。
 原告が主張するその余の共通点も、原告製品の補充発注(入力)画面における表現上の本質的な特徴を直接感得させるものではない。
サ 自動発注設定画面
(ア)被告表示画面1との共通部分
 証拠(甲25〔32頁、58頁〕、甲53、乙48の8)によれば、原告製品及び被告製品1における定期改正入力(条件設定)画面の内容は、別紙表示画面一覧表9(1)(2)のとおりであり、両製品は、(ⅰ)画面の上部にオペレーションガイダンスが表示されており、そのうち「各店の自動発注設定を行い、登録ボタンを押してください。」、「優先順位は、単品>出版社>小分類>中分類>大分類>ロケーション」との記載が一致することや、(ⅱ)自動発注の設定部分において、横配列で、「自動発注」、「発注確認」、「単品」、「発注パターン選択」、「出版社」という各項目が表示されている限度で共通していると認められる。
(イ)上記共通部分の創作性の有無及び程度等
 しかし、上記(ⅰ)の共通部分に関し、オペレーションガイダンスを設けること自体は、アイデアに属する事柄であるところ、その内容も、操作上の留意事項を端的に説明するものであり、その具体的な表現において特段の創作性があるということはできない。
 また、上記(ⅱ)の共通部分についても、自動発注を行う際に、具体的にどのような機能を設けるかはアイデアにすぎない上、両製品の表示画面は、原告表示画面では表示されている「分類」や「ロケーション」という項目が被告表示画面には存在せず、配色も異なるなどの相違部分が存在し、利用者が画面全体から受ける印象は相当異なるものと考えられる。
 そうすると、被告製品1の自動発注設定画面に接する利用者が原告製品の同画面における本質的な特徴を感得することはできない。
シ 定期改正(条件設定)画面
(ア)被告表示画面1との共通部分
 証拠(甲25〔62、63頁〕、甲51、乙48の6)によれば、原告製品及び被告製品1における定期改正(条件設定)画面の内容は、別紙表示画面一覧表10-1(1)(2)の赤枠部分のとおりであり、両製品は、(ⅰ)縦配列で「仕入日付」、「取次店」及び「表示順」の各項目が表示され、その順番も一致していることや、(ⅱ)その下に、「仕入日付、取次店、表示順を指定して、抽出ボタンを押してください」という同一内容のガイダンスメッセージが表示されている点で共通すると認められる。
(イ)上記共通部分の創作性の有無及び程度等
 しかし、上記(ⅰ)の共通部分に関し、表示される各項目はいずれも、定期改正の対象となる雑誌を仕入日付に基づき特定するための基本的な情報であり、その名称の選択、配列順序及びそのレイアウトといった具体的な表現において、創作者の思想又は感情が創作的に表現されているということはできない。
 また、上記②についても、ガイダンスメッセージの内容は、要するに、検索項目を指定してボタンをクリックすることをそのまま伝えるものにすぎず、その表現に創作性があるということはできない。
 原告が主張するその余の共通点も、原告製品の定期改正(条件設定)画面における表現上の本質的な特徴を直接感得させるものではない。
ス 定期改正(入力)画面
(ア)被告表示画面1との共通部分
 証拠(甲25〔65頁〕、甲52、乙48の7)によれば、原告製品及び被告製品1における定期改正(入力)画面の内容は、別紙表示画面一覧表10-2(1)(2)のとおりであり、両製品は、選択された雑誌のバックナンバーに関する情報が表形式で掲載され、縦配列で「雑誌名」、「雑誌コード(5桁)」、「年号(年月)」、「本体価格」、「仕入日付」、「仕入数」、「定期購読数」、「売上数」、「3日目在庫」、「7日目在庫」、「返品数」、「入庫数」、「出庫数」、「在庫数」、「売上%」、「伸冊数」、「前年売上数」、「適正定改数」、「定期改正数」、「定改入力日」及び「仕入取次店」の各項目が表示され、項目の順番も一致していることが認められる。
(イ)上記共通部分の創作性の有無及び程度等
 しかし、雑誌の定期改正を行うに当たって参考となるバックナンバーの情報を表示する画面を設けることは、アイデアに属する事柄であるところ、具体的に表示された各項目及びその順番は、原告の指摘するとおり全て一致するものの、具体的に表示されている各項目はいずれも、配本数を調整するために参考となる一般的な指標又は情報であり、その名称の選択、配列順序及びそのレイアウトといった具体的な表現において、創作者の思想又は感情が創作的に表現されているということはできない。
 原告が主張するその余の共通点も、原告製品の定期改正(入力)画面における表現上の本質的な特徴を直接感得させるものではない。
セ 単品定期改正入力画面
(ア)被告表示画面2との共通部分
 証拠(甲8、甲25〔62、66、67頁〕、乙24〔6頁〕、乙37〔20頁〕)によれば、原告製品及び被告製品2における単品定期改正入力画面の内容は、別紙表示画面一覧表11(1)(2)のとおりであり、両製品は、(ⅰ)画面最上段に「雑誌コード」の入力欄が設けられ、(ⅱ)その下に、ガイダンスメッセージに続き、縦配列で「取次店」、「定期購読数」及び「定期改正数」の各項目が表示され、「定期改正数」欄に配された「自動計算」ボタンをクリックすると、定期改正数が自動的に表示され、(ⅲ)更にその下には、当該単品の最新号及びバックナンバーの情報として、「雑誌コード」、「年号(年月)」又は「号数(年月)」、「本体価格」、「仕入日付」、「仕入数」、「定期購読数」、「売上数」、「3日目在庫」、「7日目在庫」、「返品数」、「入庫数」、「出庫数」、「在庫数」、「売上%」、「伸冊数」、「前年売上数」、「適正定改数」、「定期改正数」、「定改入力日」及び「仕入取次店」の各項目が表形式で表示され、項目の順番も一致していると認められる。
(イ)上記共通部分の創作性の有無及び程度
 しかし、上記(ⅰ)及び(ⅱ)の共通部分に関し、雑誌コードは、定期改正の対象となる書籍を抽出するために必要となる一般的な項目であるほか、取次店や定期購読数、定期改正数は定期改正という書店業務を行うに当たって必要となる基本的な情報であり、いずれについても、その名称の選択、配列順序及びそのレイアウトといった具体的な表現において、創作者の思想又は感情が創作的に表現されているということはできない。
 また、上記(ⅲ)の共通部分についても、定期改正画面のための画面において過去の情報を表示すること自体は、アイデアに属する事柄であるところ、具体的に表示されている各項目はいずれも、配本数を調整するために参考となる一般的な指標又は情報であり、その名称の選択、配列順序及びそのレイアウトといった具体的な表現において、創作者の思想又は感情が創作的に表現されているということはできない。
 原告が主張するその余の共通点も、原告製品の単品定期改正入力画面における表現上の本質的な特徴を直接感得させるものではない。
ソ 返品(条件設定)画面
(ア)被告表示画面2との共通部分
 証拠(甲9、甲25〔86、87頁〕、乙24〔10頁〕、乙37〔30頁〕)によれば、原告製品及び被告製品1における返品(条件設定)画面の内容は、別紙表示画面一覧表12(1)(2)のとおりであり、両製品は、返品入力の欄において、縦配列で「返品伝票番号」、「返品日付」、「取次店コード」、「伝票種別」、「返品期限」及び「処理票番号」の各項目が表示され、順番も一致していることが認められる。
(イ)上記共通部分の創作性の有無及び程度
 しかし、両製品の返品(条件設定)画面に表示されている具体的な項目は、いずれも、返品処理を行うに当たって必要な一般的な情報であり、その名称の選択、配列順序及びそのレイアウトといった具体的な表現において、創作者の思想又は感情が創作的に表現されているということはできない。
 原告が主張するその余の共通点も、原告製品の返品(条件設定)画面における表現上の本質的な特徴を直接感得させるものではない。
タ 商品マスタメンテナンス(新規登録・検索)画面
(ア)被告表示画面1との共通部分
 証拠(甲10、11、甲25〔148~151頁〕、乙48の5)によれば、原告製品及び被告製品1における商品マスタメンテナンス(新規登録・検索)画面の内容は、別紙表示画面一覧表13-1(1)(2)のとおりであり、両製品は、(ⅰ)上部に「-新規登録・商品コード直接入力-」というボタンが表示されており、これをクリックすることで、新たな商品のマスタを登録することができること、(ⅱ)さらにその下に、商品検索のために、「商品区分指定」及び「商品抽出条件」の各ブロックが存在し、検索項目に所定の情報を入力した上で、「検索」ボタンをクリックすることで、既に登録された商品のマスタを検索することができること、(ⅲ)商品区分指定としては、「商品区分」が表示され、商品抽出条件としては、縦配列で「商品コード」、「書名」、「著者名」、「発売日」、「大分類」、「出版社」及び「表示件数」の各項目が表示され、順番も一致していると認められる。
(イ)上記共通部分の創作性の有無及び程度等
 しかし、上記(ⅰ)及び(ⅱ)の共通部分に関し、商品マスタを管理する画面において、新たな商品につき商品マスタを新規登録するためのボタンを設けるとともに、既に登録された商品を検索できるようにすることは、アイデアに属する事柄であるところ、その具体的な表現に特段の創作性は認められない。
 さらに、上記(ⅲ)の共通部分についても、検索条件として具体的に表示されている各項目は、いずれも、書籍を特定するのに必要な一般的な情報であり、その名称の選択、配列順序及びそのレイアウトといった具体的な表現において、創作者の思想又は感情が創作的に表現されているということはできない。
 原告が主張するその余の共通点も、原告製品の商品マスタメンテナンス(新規登録・検索)画面における表現上の本質的な特徴を直接感得させるものではない。
(ウ)被告表示画面2について
 証拠(乙24〔17頁〕、乙37〔51頁〕)によれば、被告製品2における商品マスタメンテナンス(新規登録・検索)画面は、商品抽出条件から、「著者名」、「発売日」及び「大分類」の各項目が削除されていることなどを除くと、表示されている項目や配列順は基本的に被告製品1と同一であり、被告製品1に関する上記判示と同様の理由から、被告製品2の商品マスタメンテナンス(新規登録・検索)画面に接する利用者が原告製品の同画面における本質的な特徴を感得することはできないというべきである。
チ 商品マスタメンテナンス(抽出)画面
(ア)被告表示画面1との共通部分
 証拠(甲54、乙48の9)によれば、原告製品及び被告製品1における商品マスタメンテナンス(抽出)画面の内容は、別紙表示画面一覧表13-2(1)(2)のとおりであり、両製品は、いずれも、抽出された各書籍の情報を表形式で掲載しており、横配列で、「NO」、「選択」、「書名」、「著者」、「出版社」、「発売日」、「本体」、「商品コード」、「大分類」、「中分類」という項目が表示され、その順番も一致していると認められる。
(イ)上記共通部分の創作性の有無及び程度等
 しかし、上記の各項目はいずれも、書籍を特定するための基本的な情報であり、その名称の選択、配列順序及びそのレイアウトといった具体的な表現において、創作者の思想又は感情が創作的に表現されているということはできない。
 原告が主張するその余の共通点も、原告製品の商品マスタメンテナンス(抽出)画面における表現上の本質的な特徴を直接感得させるものではない。
ツ 各表示画面の対比(まとめ)
 以上のとおり、原告表示画面と被告表示画面の共通する部分は、いずれもアイデアに属する事項であるか、又は、書店業務を効率的に行うに当たり必要な一般的な指標や情報にすぎず、各表示項目の名称の選択、配列順序及びそのレイアウトといった具体的な表現においても、創作者の思想又は感情が創作的に表現されているということはできない上、両製品の配色の差違等により、利用者が画面全体から受ける印象も相当異なるというべきである。そして、被告表示画面について、他に原告表示画面の本質的特徴を直接感得し得ると認めるに足りる証拠はない。
(4)表示画面の選択や相互の牽連関係における創作性の有無・程度
ア 原告は、表示画面の牽連性に関し、原告製品は、画面の最上部にメニュータグを常時表示し、どの画面からも次の業務に移行できるようにしている点や、画面の中央にサブメニュー画面を用意し、画面遷移なしに表示することを可能にしている点などに独自性があると主張する。
 しかし、画面の最上部にメニュータグを常時表示し、そのいずれの画面からも次の業務に移行できるようにすることや、画面の中央にサブメニュー画面を用意し、画面遷移なしに表示することを可能にすることは、利用者の操作性や一覧性あるいは業務の効率性を重視するビジネスソフトウェアにおいては、ありふれた構成又は工夫にすぎないというべきであり、原告製品における表示画面相互の牽連性に特段の創作性があるということはできない。
イ また、原告は、原告製品が補充発注画面や自動計算機能を備えていることをもって他社にはない独自性があると主張するが、在庫の変動に伴い商品を補充して発注することや、定期改正数を自動計算することなどは、一般的な85書店業務の一部であり、原告製品の補充発注(条件設定)画面及び補充発注(入力)画面に表示された項目の名称の選択、配列順序及びそのレイアウトなどの具体的な表現において、創作者の思想又は感情が創作的に表現されているということはできないことは、前記(3)ケ及びコで判示のとおりである。
ウ したがって、原告製品は、表示画面の選択や画面相互の牽連性において独自性又は創作性があるとの原告主張は採用し得ない。
(5)小括
 以上のとおり、被告表示画面は、いずれも原告表示画面の複製又は翻案には当たるということはできないので、その余の点については判断するまでもなく、被告表示画面が原告の著作権を侵害するという原告の主張は理由がない。
2 争点3(被告表示画面2が編集著作物としての原告製品に係る著作権を侵害するか)について
(1)著作権法12条1項は、編集物で素材の選択又は配列によって創作性を有するものは著作物として保護すると規定するところ、原告は、原告製品の表示画面全体をみた場合、当該画面の選択及び配列に創作性があるので、原告製品は全体として編集著作物に当たると主張する。
 前記判示のとおり、原告製品のようなビジネスソフトウェアは、一定の業務フローを前提としていることから、単一の画面表示で完結することはなく、業務の種類ごとに複数の画面を有し、画面に表示された特定の項目をクリックすると次の画面に遷移するなど、利用者は同一階層又は異なる階層に設けられた複数の表示画面全体を利用して作業を行うことが想定されている。
 かかるビジネスソフトウェアの特性を考慮すると、一定の業務目的に使用される各表示画面を素材と考え、各画面の選択とシステム全体における配置、更には画面相互間の牽連性に創作性が認められる場合には、素材の選択及び配列に創作性があるものとして、当該ソフトウェアの表示画面が全体として編集著作物に当たるとの考え方も一般論としてはあり得るところである。
(2)本件において、原告は、原告製品の表示画面の最上部にメニュータグを常時表示し、各タグに具体的な業務名を明記した上で、どの画面からも次の業務に移行できるようにしていること、画面の中央にサブメニュー画面を用意し、日、週、月単位の売上情報、他店舗、定期改正、リクエスト管理の情報につき、画面遷移なしに表示することを可能にしていることなどを根拠として、当該表示画面の選択と配列に創作性があると主張する。
 しかし、前記1(4)で判示したとおり、画面の最上部にメニュータグを常時表示し、そのいずれの画面からも次の業務に移行できるようにすることや、画面の中央にサブメニュー画面を用意し、画面遷移なしに表示することは、利用者の操作性や一覧性あるいは業務の効率性を重視するビジネスソフトウェアにおいては、ありふれた構成又は工夫にすぎないというべきであり、原告製品における表示画面の選択や相互の牽連性等に格別な創作性があるということはできない。
 その他、本件において、原告製品が、これを構成する各表示画面の選択、システム全体における各画面の配置、画面相互の牽連性などの点において創作性を有すると認めるに足りる証拠はない。
(3)したがって、原告製品が編集著作物に当たるとは認められず、被告表示画面2が、編集著作物としての原告製品に係る著作権を侵害するということはできない。
3 争点4(不正競争防止法違反の有無)
(1)原告は、被告製品の表示画面が不競法2条1項1号の規定する不正競争行為に該当すると主張するところ、ビジネスソフトウェアの表示画面は、商品の形態と同様、①当該表示画面が客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有しており(特別顕著性)、かつ、②その表示画面が特定の事業者によって長期間独占的に使用され、又は極めて強力な広告宣伝や爆発的な販売実績等により、需要者においてその形態を有する商品が特定の事業者の出所を表示するものとして周知になっている場合に不競法2条1項1号の「商品等表示」に該当すると解するのが相当である。
(2)周知性について
 原告は、原告表示画面が、遅くとも平成25年末までには、出版業界及び書店業界において広く認識されていたと主張するが、以下のとおり、理由がない。
ア 原告製品の販売数や市場占有率に関し、原告は、原告のシステム製品は出版社市場でトップシェアを占めており、原告製品は既に全国の小売書店1000店舗に向けて販売・採用されていると主張するが、原告商品の導入件数、市場規模、原告製品の市場占有率を客観的に示す証拠は提出されていない。
イ また、原告は、業界新聞である「文化通信BB」において原告製品が紹介されたことを指摘するが、「文化通信BB」の発行部数等は明らかではなく、その記事の内容は原告製品を紹介する内容を含むものの、原告製品の表示画面は一切掲載されていない(甲18)。
 同様に、原告は、日販が平成25年8月1日付け業界新聞において書店向けPOSレジと原告製品を連携させることを発表し、系列の書店1000店に合計1300台を販売することを表明したと主張するが、同記事で導入が表明されているのはPOSレジであり、原告製品が書店に導入されたことを裏付けるものではない上、同記事には原告製品の表示画面は一切表示されていない(乙23)。
ウ さらに、原告は、「文化通信」及び「新文化」のウェブサイトの上段に、バナー広告を掲載したことや、「BOOKEXPO」や「書店大商談会」に出展し、広報を行っていることを根拠に、原告表示画面には周知性がある旨主張する。
 しかし、証拠(乙22)によれば、文化通信社のウェブサイト上に掲載されたバナー広告は、「BOOKANSWERシリーズ」という製品名を表示するものにすぎず、原告製品の表示画面は一切示されていない。また、「BOOKEXPO」や「書店大商談会」への出展についても、その規模や具体的な出展・宣伝態様などは一切明らかではない。
エ 以上によれば、原告画面表示が、遅くとも平成25年末までに、出版業界及び書店業界において広く認識されていたと認めることはできない。
(3)特別顕著性について
 原告は、原告表示画面には特別顕著性が認められる旨主張し、その根拠として、①業務統合型のシステムを構築するという設計思想に基づき、仕入部門で使用するメニューと店売部門で使用するメニューが統合されている点や、②発注に当たって、商品分析の画面から一旦発注画面に移行することなく、商品分析の画面から即発注することができる点、③帳票を作成するという発想がなく、画面上に表示して見るということを基本にしている点、④独自の用語を用いている点に、他社製品にはない原告製品の独創的な特徴がある旨主張する。
 しかし、上記①~③の点は、いずれも、原告製品の設計思想や機能としての独自性を指摘するものにすぎず、表示画面自体の顕著な特徴を基礎付けるものということはできない。また、上記④の点についても、原告製品の表示画面に用いられた用語は、一般的な書店業務に用いられているものがほとんどであり、画面全体の特別顕著性を基礎付けるに足りる独創的を有すると認めることはできない。
 したがって、原告表示画面が同種製品と異なる顕著な特徴を有しているということはできない。
(4)以上のとおり、原告表示画面には、周知性及び特別顕著性のいずれも認められないから、原告表示画面が「商品等表示」に該当するということはできない。
 したがって、その余の点を判断するまでもなく、不正競争防止法に関する原告の主張についても理由がない。
4 結論
 以上の次第で、その余の点を判断するまでもなく、原告の請求にはいずれも理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第40部
 裁判長裁判官 佐藤達文
 裁判官 吉野太郎
 裁判官 小田誉太郎


(別紙)物件目録
1「Perfection」の名称を有し、コンピュータ上で動作可能な、書店における在庫管理、商品の発注・仕入・返品管理、ロケーション管理、棚卸等の業務を管理する用途の書店業務管理ASPシステムのソフトウェア
2「Perfection」の名称を有し、コンピュータ上で動作可能な、書店における在庫管理、商品の発注・仕入・返品管理、ロケーション管理、棚卸等の業務を管理する用途の書店業務管理ASPシステムのソフトウェアで、平成30年1月以降に頒布しまたは有線または無線による電気通信設備により送信した改訂版

(別紙)表示画面一覧表
line
 
日本ユニ著作権センター
http://jucc.sakura.ne.jp/