判例全文 line
line
【事件名】NTTドコモへの発信者情報開示請求事件E
【年月日】令和3年12月10日
 東京地裁 令和3年(ワ)第15819号 発信者情報開示請求事件
 (口頭弁論終結日 令和3年10月29日)

判決
原告X
被告 株式会社NTTドコモ
同訴訟代理人弁護士 南谷健太
同 藏田彩香
同 二神拓也
同 平田憲人
同 渡邉峻
同 横山経通
同 上田雅大


主文
1 被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の各情報を開示せよ。
2 訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
 主文同旨
第2 事案の概要
1 本件は、原告が、ツイッター(インターネットを利用してツイートと呼ばれる140文字以内のメッセージ等を投稿することができる情報ネットワーク)のウェブサイトに別紙投稿記事目録記載の各投稿(以下、当該各投稿を「本件投稿1」ないし「本件投稿4」といい、併せて「本件各投稿」という。)をされた行為により(以下、本件投稿1をした者を「本件投稿者1」といい、本件投稿2ないし4をした者を「本件投稿者2」という。)、本件各投稿にスクリーンショット画像として添付された別紙原告投稿目録記載の各投稿(以下、当該各投稿を「原告投稿1」ないし「原告投稿4」といい、併せて「原告各投稿」という。)に係る原告の著作権(複製権及び公衆送信権)を侵害されたと主張して、被告に対し、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき、別紙発信者情報目録記載の各情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示を求める事案である。
2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の各証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実をいう。なお、証拠を摘示する場合には、特に記載のない限り、枝番を含むものとする。)
(1)当事者
ア 原告は、肩書地に居住する男性であり、自らの氏名をアカウント名とし、自らの顔写真をプロフィール画像とするツイッターのアカウントを有していた(甲8、9、弁論の全趣旨)。
イ 被告は、電気通信事業を目的とする株式会社であり、プロバイダ責任制限法2条3号の特定電気通信役務提供者に該当する(弁論の全趣旨)。
(2)本件各投稿
ア 本件投稿者1は、ツイッターにおいて、「A」というユーザー名のアカウント(以下「本件アカウント1」という。)を開設し、令和3年3月18日に、本件投稿1をした。本件投稿1には、原告投稿1のスクリーンショット画像が添付されていた。(甲8、9、弁論の全趣旨)
イ 本件投稿者2は、ツイッターにおいて、「B」というユーザー名のアカウント(以下「本件アカウント2」といい、本件アカウント1と併せて「本件各アカウント」という。)を開設し、令和3年3月19日から同月21日までの間、本件投稿2ないし4を行った。本件投稿2には原告投稿2のスクリーンショット画像が、本件投稿3には原告投稿2ないし4のスクリーンショット画像が、本件投稿4には原告投稿3のスクリーンショット画像が、それぞれ添付されていた。(甲8、9、弁論の全趣旨)
(3)ツイッター社からのIPアドレスの開示
ア 原告は、ツイッターインク社(以下「ツイッター社」という。)を相手方として、令和2年7月28日正午(日本標準時)以降本件各アカウントを含む合計7個のアカウントにログインがあった際のIPアドレス及びタイムスタンプ(ただし、ツイッター社が保有するものに限る。)の仮の開示を求める仮処分命令を、東京地方裁判所に申し立てた。
 これに対し、同裁判所は、令和3年5月7日、原告の申立てを認容する旨の仮処分決定をした。(甲1)
イ ツイッター社は、令和3年5月15日、上記仮処分決定に基づき、原告に対し、同年3月15日から同年5月7日までの間に本件各アカウントにログインがあった際のIPアドレス及びタイムスタンプを開示した。
 なお、別紙IPアドレス等目録記載のIPアドレス及びタイムスタンプ(ログイン日時)は、ツイッター社から開示されたIPアドレス及びタイムスタンプの一部である(以下、上記IPアドレスを「本件IPアドレス」といい、上記タイムスタンプと併せて「本件IPアドレス等」という。)。(甲2ないし4、12)
ウ 本件IPアドレスは、被告が保有するものである(甲6、7)。
(4)ツイッターの仕組み
 ツイッターを利用するには、まず、氏名、電話番号又はメールアドレスの登録及びパスワードの設定をしてアカウントを作成する必要があり、また、自己のアカウントで投稿するには、当該アカウントにログインする必要がある(甲10、弁論の全趣旨)。
3 争点
(1)プロバイダ責任制限法4条1項にいう「権利の侵害に係る発信者情報」該当性(争点1)
(2)権利侵害の明白性(争点2)
ア 原告各投稿の著作物性(争点2-1)
イ 引用の成否(争点2-2)
(3)正当な理由の有無(争点3)
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点1(プロバイダ責任制限法4条1項にいう「権利の侵害に係る発信者情報」該当性)
(原告の主張)
(1)プロバイダ責任制限法4条1項は、「権利の侵害に係る発信者情報」につき、「氏名、住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であって総務省令で定めるもの」と規定している。同規定により委任を受けた総務省令は、上記「特定に資する情報」につき、「発信者その他侵害情報の送信に係る者の氏名又は住所」と規定しているものの、上記委任の趣旨に照らせば、「氏名、住所その他の権利侵害と発信者情報の特定に資する情報」であれば、「権利の侵害に係る発信者情報」に当たることを左右するものではない。
 そして、ツイッターは、利用者がアカウント及びパスワードを入力してログインしなければ利用することのできないサービスである以上、ログインをする者は当該アカウントの使用者である蓋然性が認められることからすれば、本件発信者情報は、「権利の侵害に係る発信者情報」に当たる。
(2)被告は、仮にログイン情報が「権利の侵害に係る発信者情報」に該当し得るとしても、侵害情報の投稿日時の直前に行われたログインに係る情報に限られる旨主張するが、加害者の特定を可能にして被害者の権利の救済を図るというプロバイダ責任制限法4条の趣旨に照らせば、侵害情報の送信の後に割り当てられたIPアドレスから把握される発信者情報であっても、当該侵害情報の発信者のものと認められるのであれば、同条1項所定の「権利の侵害に係る発信者情報」に当たると解すべきである。
(被告の主張)
(1)本件において、原告は、本件各投稿そのものが行われた際の通信ではなく、飽くまで、ログイン時の通信に係る発信者情報の開示を求めている。しかしながら、そのような通信記録は権利侵害情報を投稿した通信そのものではないため、「権利の侵害に係る発信者情報」に該当しない。
(2)また、ツイッターのようなログイン型サービスは、当該サービスを利用するために作成したアカウントにログインした上で、当該ログイン状態を前提として投稿を行う仕組みであることからすれば、権利侵害情報の投稿後のログイン情報の送信が投稿時と同一人物によってなされたものと考える根拠は乏しい。
 さらに、投稿前のログイン情報についても、投稿との時間的近接性のないものまで投稿時と同一人物によってなされたものと捉えるべきではない。
 したがって、仮にログイン情報が「権利の侵害に係る発信者情報」に含まれる余地があるとしても、せいぜい投稿日時の直前の時点におけるログインに係る通信記録に限られると解すべきである。
2 争点2-1(原告各投稿の著作物性)
(原告の主張)
(1)原告投稿1は、原告が申し立てた発信者情報の開示を求める仮処分の結果と今後の展望について表現したものである。これは、原告という人物が有する思想と感想を創作的に表現したものであり、文芸の範囲に属する言語の著作物に当たる。
(2)原告投稿2は、ツイッター上における匿名アカウントの誹謗中傷の悪質さについて表現したものである。これは、原告という人物が有する思想と感想を創作的に表現したものであり、文芸の範囲に属する言語の著作物に当たる。
(3)原告投稿3及び4は、日本維新の会の支持者の態様について表現したものである。これは、原告という人物が有する思想と感想を創作的に表現したものであり、いずれも文芸の範囲に属する言語の著作物に当たる。
(被告の主張)
 原告各投稿が「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法2条1項1号)に該当するかどうかは疑義がある。
3 争点2-2(引用の成否)
(被告の主張)
 本件各投稿は、いずれも、原告の意見に対して批評を加えるために原告各投稿を引用する形で行われており、「引用」(著作権法32条1項)に該当する余地があるから、本件各投稿により原告の著作権が侵害されたことが明白であるということはできない。
 なお、原告は、出典として原告各投稿のURLが明示されていないことを根拠として、「引用」には当たらない旨主張するが、原告各投稿の出所は画像自体から明らかである以上、同主張には理由がない。
(原告の主張)
 被告は、原告各投稿の出所は画像自体から明らかであり、「引用」の要件を満たしている旨主張するが、画像自体から明らかであるのは、原告のツイッターアカウントにすぎない。そして、原告各投稿は、いずれも既に削除されており、URLが明示されていない限り、決して原典には到達できないことからすれば、原告のツイッターアカウントの表示だけでは出所が明示されたことにはならない。
4 争点3(正当な理由の有無)
(原告の主張)
 原告は、本件各発信者に対する損害賠償請求権を行使するに当たり、民事訴訟の提起の前に、任意での示談交渉を予定している。そのためには、本件各発信者と直接連絡を取りやすい電子メールアドレス及び電話番号の各情報が必要である。
(被告の主張)
 氏名又は名称及び住所の開示を受けることができれば、それだけで損害賠償請求権の行使が可能であり、電子メールアドレス及び電話番号の開示は不要である。本件では、原告が本件各発信者の電子メールアドレス及び電話番号の開示を必要とする具体的な事情は何も示されていないから、これらの情報の開示には「正当な理由」があるということはできない。
第4 当裁判所の判断
1 争点1(プロバイダ責任制限法4条1項にいう「権利の侵害に係る発信者情報」該当性)について
(1)認定事実
 前記前提事実、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
ア ツイッターの利用者がツイート等の投稿を行うには、事前にアカウントを登録した上、ユーザー名、パスワード等を入力し、当該アカウントにログインすることが必要である。そのため、アカウントの使用者は、ツイッターの仕組み上、当該アカウントにログインした者とされている。
イ ツイッター社により開示された本件IPアドレス等の使用期間(令和3年3月15日から同年5月7日まで)においても、本件各アカウントは、いずれも、昼夜を問わず頻繁にログインされるなど、継続的に使用されている。(甲2ないし6、12)。
(2)「権利の侵害に係る発信者情報」該当性
 上記認定事実によれば、ツイッターの上記仕組み及び本件各アカウントの使用状況を踏まえると、本件各アカウントにログインした者が本件各投稿をすることによって、下記2において説示するとおり、原告の権利を侵害したものと認めるのが相当であり、これを覆すに足りる的確な証拠はない。そうすると、ログインに関する本件発信者情報は、上記侵害の行為をした発信者を特定する情報であるといえるから、「権利の侵害に係る発信者情報」に該当するものといえる。
 これに対し、被告は、本件発信者情報が本件アカウントにログインした者の情報にすぎず、本件各投稿を行った本件発信者の情報そのものではないことからすると、本件発信者情報は「権利の侵害に係る発信者情報」に該当しない旨主張する。
 しかしながら、本件発信者情報は本件各投稿を行った本件発信者の情報であるといえることは、上記において説示したとおりであり、被告の主張は、その前提を欠く。のみならず、プロバイダ責任制限法4条の趣旨は、特定電気通信による情報の流通によって権利の侵害を受けた者が、情報の発信者のプライバシー、表現の自由、通信の秘密に配慮した厳格な要件の下で、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者に対して発信者情報の開示を請求することができるものとすることにより、加害者の特定を可能にして被害者の権利の救済を図ることにある(最高裁平成21年(受)第1049号同22年4月8日第一小法廷判決・民集64巻3号676頁参照)。そうすると、アカウントにログインした者が、権利の侵害に係る情報を送信したものと認められる場合には、侵害情報の送信時点ではなく、アカウントにログインした時点における発信者情報であっても、「権利の侵害に係る発信者情報」に該当するものと認めるのが相当である。したがって、被告の主張は、上記判断を左右するに至らない。
 以上によれば、被告の主張は、採用することができない。
2 争点2(権利侵害の明白性)について
(1)争点 2-1(原告各投稿の著作物性)について
ア 原告投稿1について
 証拠(甲8、9)及び弁論の全趣旨によれば、原告投稿1は、「こないだ発信者情報開示した維新信者8人のログインIPとタイムスタンプが開示されたNTTドコモ2人KDDI3人ソフトバンク2人楽天モバイル1人こんな内訳だった。KDDIが3人で多数派なのがありがたい。ソフトバンクが2人いるのがウザいしかし楽天モバイルは初めてだな。どんな対応するか?」という内容であることが認められる。
 上記認定事実によれば、原告投稿1は、140文字以内という文字数制限の中、発信情報の仮の開示を求める仮処分手続を経て、著作権侵害と思われる通信に係る経由プロバイダが明らかになった事実に基づき、当該事実についての感想を口語的な言葉で端的に表現するものであって、その構成には作者である原告の工夫が見られ、また、表現内容においても作者である原告の個性が現れているということができる。
 そうすると、原告投稿1は、原告の思想又は感情を創作的に表現したものであり、言語の著作物(著作権法10条1号)に該当するものと認められる。
イ 原告投稿2について
 証拠(甲8、9)及び弁論の全趣旨によれば、原告投稿2は、「@B @C @D>あたかものんきゃりあさんがそういった人たちと同じよう「あたかも」じゃなくて、木村花さんを自殺に追いやったクソどもと「全く同じ」だって言ってるんだよ。結局、匿名の陰に隠れて違法行為を繰り返している卑怯どものクソ野郎じゃねーか。お前も含めてな。」という内容であることが認められる。
 上記認定事実によれば、原告投稿2は、140文字以内という文字数制限の中、意見が合わない他のユーザーに対して、短い文の連続によりその意見を明確に修正した上、高圧的な表現で同人を罵倒するものであり、その構成には作者である原告の工夫が見られ、また、表現内容においても作者である原告の個性が現れているということができる。
 そうすると、原告投稿2は、原告の思想又は感情を創作的に表現したものであり、言語の著作物(著作権法10条1号)に該当するものと認められる。
ウ 原告投稿3について
 証拠(甲8、9)及び弁論の全趣旨によれば、原告投稿3は、「去年の今頃、「@E 」とかいう高校3年生の維新信者に絡まれて勝手にブロックされて「何したいんだ、このガキ?」って事がさっき、あのガキのツイートが目に入ったんだけど受験に失敗して浪人するわ都構想は否決されるわで散々な1年だった様だ「ざまあ」以外の感想が浮かばない(笑)」、という内容であることが認められる。
 上記認定事実によれば、原告投稿3は、140文字以内という文字数制限の中、かつてツイッター上で特定のユーザーとトラブルとなった経緯のほか、その後、当該ユーザーの政治的主張が採用されなかったこと、当該ユーザーが大学入試に失敗したことを端的に紹介した上で、当該ユーザーが不幸に見舞われたことを「ざまあ」の三文字で嘲笑するものであり、その構成には作者である原告の工夫が見られ、また、表現内容においても作者である原告の個性が現れているということができる。
 そうすると、原告投稿3は、原告の思想又は感情を創作的に表現したものであり、言語の著作物(著作権法10条1号)に該当するものと認められる。
エ 原告投稿4について
 証拠(甲8、9)及び弁論の全趣旨によれば、原告投稿4は、「@C アナタって僕にもう訴訟を起こされてアウトなのに全く危機感無くて心の底からバカだと思いますけど、全く心配はしません。アナタの自業自得ですから。」という内容であることが認められる。
 上記認定事実によれば、原告投稿4は、140文字という文字数制限の中、原告に訴訟を提起されたにもかかわらず危機感がないと思われる特定のユーザーの状況等につき、「アナタ」、「アウト」、「バカ」、「自業自得」という簡潔な表現をリズム良く使用して嘲笑するものであり、その構成には作者である原告の工夫が見られ、また、表現内容においても作者である原告の個性が現れているということができる。
 そうすると、原告投稿4は、原告の思想又は感情を創作的に表現したものであり、言語の著作物(著作権法10条1号)に該当するものと認められる。
オ 小括
 以上によれば、原告各投稿には、いずれも著作物性が認められる。
(2)争点 2-2(引用の成否)について
ア 認定事実
 前記前提事実、証拠(甲8)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
(ア)本件投稿1は、原告投稿1(ただし、原告のアカウント名及びプロフィール画像を含むものをいう。以下、原告投稿2ないし4についても同じ。)のスクリーンショット画像を添付した上で、「この方です・・・」と投稿するものであり、他のユーザーに対して原告及びそのアカウントを紹介するものである。
(イ)本件投稿2は、原告投稿2のスクリーンショット画像を添付した上で、「私に対してのリプ何にもしてないのにぃ(ó﹏ò。)」と投稿するものであり、自らには落ち度がないにもかかわらず、原告から原告投稿2により暴言を受けたことを他のユーザーに報告するものである。
(ウ)本件投稿3は、原告投稿2ないし4のスクリーンショット画像を添付した上で、「絡んだ時間順に並べてみました。暴言はいてます?」と投稿するものであり、他のユーザーに対し、ツイッター上で原告との間で行われた過去のやり取りを示した上で、その中に客観的にみて原告に対する暴言があったかどうか意見を求めるものである。
(エ)本件投稿4は、原告投稿3のスクリーンショット画像を添付した上で、「はい!あなたは私に暴言をはきましたが、私はあなたに暴言をやめてとかしか言っていません。具体的に教えていただいてもいいですか?検索しても出てこないです!絡んだ順にスクショ置きますね!どの事でしょうか?」と投稿するものであり、原告に対し、ツイッター上で原告との間で行われた過去のやり取りを示した上で、その中に原告に対する暴言があれば、これを特定するよう求めるものである。
イ 引用の成否について
 他人の著作物は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われる場合には、これを引用して利用することができる(著作権法32条1項)。
 これを本件についてみると、前記認定事実によれば、本件各投稿は、いずれも原告各投稿のスクリーンショットを画像として添付しているところ、証拠(甲10)及び弁論の全趣旨によれば、ツイッターの規約は、ツイッター上のコンテンツの複製、修正、これに基づく二次的著作物の作成、配信等をする場合には、ツイッターが提供するインターフェース及び手順を使用しなければならない旨規定し、ツイッターは、他人のコンテンツを引用する手順として、引用ツイートという方法を設けていることが認められる。そうすると、本件各投稿は、上記規約の規定にかかわらず、上記手順を使用することなく、スクリーンショットの方法で原告各投稿を複製した上ツイッターに掲載していることが認められる。そのため、本件各投稿は、上記規約に違反するものと認めるのが相当であり、本件各投稿において原告各投稿を引用して利用することが、公正な慣行に合致するものと認めることはできない。
 また、前記認定事実によれば、本件各投稿と、これに占める原告各投稿のスクリーンショット画像を比較すると、スクリーンショット画像が量的にも質的にも、明らかに主たる部分を構成するといえるから、これを引用することが、引用の目的上正当な範囲内であると認めることもできない。
 したがって、原告各投稿をスクリーンショット画像でそのまま複製しツイッターに掲載することは、著作権法32条1項に規定する引用の要件を充足しないというべきである。
 これに対し、被告は、引用に該当する可能性がある旨指摘するものの、その主張の内容は具体的には明らかではなく、本件各投稿の目的との関係でスクリーンショット画像を掲載しなければならないような事情その他の上記要件に該当する事実を具体的に主張立証するものではない。そうすると、被告の主張は、上記判断を左右するものとはいえない。したがって、被告の主張は、採用することができない。
ウ 以上によれば、本件各投稿は、著作権32条1項により適法となるものとはいえない。
(3)その他
 当事者双方提出に係る証拠及び弁論の全趣旨によっても、侵害行為の違法性を阻却する事由が存在することをうかがわせる事情を認めることはできない。
 その他に、被告提出に係る準備書面及び証拠を改めて検討しても、被告の主張は、前記判断を左右するものとはいえない。被告の主張は、いずれも採用することができない。
3 争点3(正当な理由の有無)について
 弁論の全趣旨によれば、原告は、本件各投稿者に対し、損害賠償等を請求することを予定していることが認められる。そうすると、上記2において説示したところを踏まえると、原告には本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるものといえる。したがって、原告は、被告に対し、プロバイダ責任制限法4条1項に基づき、本件発信者情報の開示を求めることができる。
 これに対し、被告は、氏名又は名称及び住所の開示のほかに、メールアドレスや電話番号の各情報の開示は不要であるから、少なくとも当該開示については正当な理由がない旨主張する。しかしながら、前掲総務省令は、上記各情報も侵害情報の発信者の特定に資する情報として規定しているほか(3号及び4号)、実質的にも損害賠償請求権を行使する際に電話番号や電子メールアドレスが開示されていれば、当該請求権の行使が円滑となるといえるから、被告の主張は、上記判断を左右するに至らない。
 なお、被告は、メールアドレスや電話番号を開示した場合、原告がそれらの情報をインターネットに公開するおそれがある旨主張するが、原告は、口頭弁論期日において、当裁判所に対し、開示された情報を目的外利用することはない旨誓約している事実(第4回口頭弁論調書参照)を踏まえると、原告が上記誓約に違反してまでプライバシー侵害その他の違法行為に及ぶおそれは低いとみるべきであるから、被告の主張は、上記判断を左右するものとはいえない。したがって、被告の主張は、採用することができない。
4 結論
 よって、原告の請求は理由があるから、これを認容することとして、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第40部
 裁判長裁判官 中島基至
 裁判官 吉野俊太郎
 裁判官 小田誉太郎


(別紙)発信者情報目録
 別紙IPアドレス等目録記載1及び2のログイン日時に同目録記載1及び2のIPアドレスを割り当てられた電気通信設備から同目録記載3の接続先IPアドレスのいずれかに対して通信を行った電気通信回線の同日時における契約者に関する次の情報
1 氏名又は名称
2 住所
3 電子メールアドレス
4 電話番号

(別紙)投稿記事目録

閲覧用URL https://twitter.com/A/以下省略
ユーザー名 @A
投稿日時 2021年3月18日午後3:57(日本標準時)
投稿内容 この方です(´・ω・`)。。

【スクリーンショット画像が添付されたツイート】
「こないだ発信者情報開示した維新信者8人のログインIPとタイムスタンプが開示された

NTTドコモ 2人
KDDI 3人
ソフトバンク 2人
楽天モバイル 1人

こんな内訳だった。KDDIが3人で多数派なのがありがたい。ソフトバンクが2人いるのがウザい

しかし楽天モバイルは初めてだな。どんな対応するか?」

閲覧用URL https://twitter.com/B/以下省略
ユーザー名 @B
投稿日時 2021年3月19日午後9:48(日本標準時)
投稿内容 私に対してのリプ
何にもしてないのにぃ(ó﹏ò。)

【スクリーンショット画像が添付されたツイート】
「@B @C @D >あたかものんきゃりあさんがそういった人たちと同じよう

「あたかも」じゃなくて、木村花さんを自殺に追いやったクソどもと「全く同じ」だって言ってるんだよ。

結局、匿名の陰に隠れて違法行為を繰り返している卑怯どものクソ野郎じゃねーか。お前も含めてな。」

閲覧用URL https://twitter.com/B/以下省略
ユーザー名 @B
投稿日時 2021年3月19日午後11:01(日本標準時)
投稿内容 絡んだ時間順に並べてみました。
暴言はいてます?

【スクリーンショット画像が添付されたツイート】
「@B @C @D >あたかものんきゃりあさんがそういった人たちと同じよう
「あたかも」じゃなくて、木村花さんを自殺に追いやったクソどもと「全く同じ」だって言ってるんだよ。

結局、匿名の陰に隠れて違法行為を繰り返している卑怯どものクソ野郎じゃねーか。お前も含めてな。」

「去年の今頃、「@E 」とかいう高校3年生の維新信者に絡まれて勝手にブロックされて「何したいんだ、このガキ?」って事が

さっき、あのガキのツイートが目に入ったんだけど受験に失敗して浪人するわ都構想は否決されるわで散々な1年だった様だ

「ざまあ」以外の感想が浮かばない(笑)」

「@C アナタって僕にもう訴訟を起こされてアウトなのに全く危機感無くて心の底からバカだと思いますけど、
全く心配はしません。アナタの自業自得ですから。」

閲覧用URL https://twitter.com/B/以下省略
ユーザー名 @B
投稿日時 2021年3月21日午後8:36(日本標準時)
投稿内容 はい!あなたは私に暴言をはきましたが、私はあなたに暴言をやめてとかしか言っていません。
具体的に教えていただいてもいいですか?

検索しても出てこないです!

絡んだ順にスクショ置きますね!
どの事でしょうか?

【スクリーンショット画像が添付されたツイート】
「去年の今頃、「@E 」とかいう高校3年生の維新信者に絡まれて勝手にブロックされて「何したいんだ、このガキ?」って事が

さっき、あのガキのツイートが目に入ったんだけど受験に失敗して浪人するわ都構想は否決されるわで散々な1年だった様だ

「ざまあ」以外の感想が浮かばない(笑)」

(別紙)原告投稿目録
1 「こないだ発信者情報開示した維新信者8人のログインIPとタイムスタンプが開示された
  NTTドコモ 2人
  KDDI 3人
  ソフトバンク 2人
  楽天モバイル 1人 こんな内訳だった。KDDIが3人で多数派なのがありがたい。ソフトバンクが2人いるのがウザい。
  しかし楽天モバイルは初めてだな。どんな対応するか?」
2 「@B @C @D >あたかものんきゃりあさんがそういった人たちと同じよう「あたかも」じゃなくて、木村花さんを自殺に追いやったクソどもと「全く同じ」だって言ってるんだよ。
  結局、匿名の陰に隠れて違法行為を繰り返している卑怯どものクソ野郎じゃねーか。お前も含めてな。」
3 「去年の今頃、「@E」とかいう高校3年生の維新信者に絡まれて勝手にブロックされて「何したいんだ、このガキ?」って事が
  さっき、あのガキのツイートが目に入ったんだけど受験に失敗して浪人するわ都構想は否決されるわで散々な1年だった様だ
  「ざまあ」以外の感想が浮かばない(笑)」
4 「@C アナタって僕にもう訴訟を起こされてアウトなのに全く危機感無くて心の底からバカだと思いますけど、全く心配はしません。アナタの自業自得ですから。」

(別紙)IPアドレス等目録
1 IPアドレス:省略
  ログイン日時:2021年3月17日午前3時53分47秒(日本標準時)
2 IPアドレス:省略
  ログイン日時:2021年3月23日午後8時51分28秒(日本標準時)
3 接続先IPアドレス
  省略
  省略
  省略
  省略
  省略
  省略
  省略
  省略
  省略
  省略
  省略
  省略
 以上
line
 
日本ユニ著作権センター
http://jucc.sakura.ne.jp/