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【事件名】公園遊具“タコの滑り台”事件(2)
【年月日】令和3年12月8日
 知財高裁 令和3年(ネ)第10044号 著作権侵害控訴事件
 (原審・東京地裁令和元年(ワ)第21993号)
 (口頭弁論終結日 令和3年9月27日)

判決
控訴人 前田環境美術株式会社
同訴訟代理人弁護士 鍛治明
同 酒井昌弘
被控訴人 株式会社アンス
同訴訟代理人弁護士 大畑雅義


主文
1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 (1)主位的請求
 被控訴人は、控訴人に対し、432万円及びうち216万円に対する平成24年4月17日から、うち216万円に対する平成27年2月12日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2)予備的請求
 被控訴人は、控訴人に対し、432万円及びこれに対する令和元年9月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1 事案の要旨
 本件は、控訴人が、被控訴人に対し、前田屋外美術株式会社(旧商号「株式会社前田商事」。以下「前田商事」という。)が製作したタコの形状を模した別紙1原告滑り台目録記載の滑り台(以下「本件原告滑り台」という。)が美術の著作物又は建築の著作物に該当し、被控訴人がタコの形状を模した別紙2被告滑り台目録記載の滑り台2基(以下「本件各被告滑り台」と総称し、同目録1記載の滑り台を「本件被告滑り台1」、同目録2記載の滑り台を「本件被告滑り台2」という。)を製作した行為が控訴人が前田商事から譲り受けた本件原告滑り台に係る著作権(複製権又は翻案権)の侵害に該当する旨主張して、主位的に、著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償として432万円及びうち216万円に対する平成24年4月17日(不法行為の日である本件被告滑り台2の製作日)から、うち216万円に対する平成27年2月12日(不法行為の日である本件被告滑り台1の製作日)から各支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定(以下「改正前民法所定」という。)の年5分の割合による遅延損害金の支払を、予備的に、不当利得返還請求として432万円の利得金の返還及びこれに対する令和元年9月5日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
 原審は、本件原告滑り台は美術の著作物又は建築の著作物のいずれにも該当しないから、控訴人の主位的請求は理由がなく、また、控訴人に本件各被告滑り台の受注額に相当する額の損失が発生したものと認められないから、控訴人の予備的請求も理由がないとして、控訴人の請求をいずれも棄却した。
 控訴人は、原判決を不服として、本件控訴を提起した。
2 前提事実
 次のとおり訂正するほか、原判決の「事実及び理由」の第2の2記載のとおりであるから、これを引用する。
(1)原判決3頁1行目の「原告の」から2行目末尾までを削り、同頁4行目の「民事再生を申し立てた。」を「再生手続開始の申立てをした。」と改める。
(2)原判決3頁13行目の「設立以降」を「昭和38年6月28日に設立されて以降」と、同頁19行目の「納入した」を「納入した。同社が製作したタコの滑り台は、全国で260基以上ある」と改める。
(3)原判決4頁4行目の「(以下」から5行目の「という。)」までを「(本件原告滑り台)」と、同頁11行目の「別紙2」から12行目の「という。)」までを「本件被告滑り台1」と、同頁20行目の「別紙2」から22行目の「と総称する。)」までを「本件被告滑り台2」と改める。
(4)原判決5頁6行目末尾に「同裁判所は、平成25年10月11日、控訴人の請求をいずれも棄却する旨の判決をし、その後、同判決は、確定した。」を加える。
3 争点
(1)著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求権の存否(争点1)
ア 本件原告滑り台が美術の著作物に該当するか(争点1−1)
イ 本件原告滑り台が建築の著作物に該当するか(争点1−2)
ウ 控訴人が本件原告滑り台の著作権を取得したか(争点1−3)
エ 被控訴人による著作権侵害行為の有無(争点1−4)
オ 被控訴人の故意又は過失の有無(争点1−5)
カ 控訴人の損害額(争点1−6)
キ 消滅時効の成否(争点1−7)
(2)不当利得返還請求権の存否(争点2)(予備的請求関係)
ア 損失と利益との間の相当因果関係の有無(争点2−1)
イ 法律上の原因の有無(争点2−2)
4 争点に関する当事者の主張
(1)争点1(著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求権の存否)について
ア 争点1−1(本件原告滑り台が美術の著作物に該当するか)について
 次のとおり訂正するほか、原判決の「事実及び理由」の第2の4(1)ア記載のとおりであるから、これを引用する。
(ア)原判決9頁9行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
 「d この点に関し原判決は、応用美術であっても「実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して、美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えている部分を把握できるもの」については「美術の著作物」として保護され得るという判断基準を示した。仮に上記判断基準によるとしても、ある構成部分自体が実用品としての機能に不可欠又は関連性があるからといって、その構成部分を物理的に取り除いて、形状について何ら判断しないのは、応用美術について著作物性を認めないのに等しく、妥当ではない。
 そうすると、上記判断基準にいう「実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して」とは、その構成部分を物理的に取り除くというのではなく、実用品として必要な機能を果たす構成を観念的に捨象して、創作物をみることを意味すると解すべきである。
 そして、本件原告滑り台を滑り台としての機能を取り去ってみたとき、すなわち、タコの足の部分がスライダーであることを忘れて本件原告滑り台の形状をみたとき、その形状は、前記bで述べたように、Aが彫刻家としての思想又は感情を創作的に表現したものであり、抽象芸術として十分に鑑賞の対象になり得るものであるから、美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えている。
 したがって、本件原告滑り台は、美術の著作物に該当するから、これを否定した原判決の判断は誤りである。」
(イ)原判決12頁9行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
 「さらに、控訴人は、原判決が本件原告滑り台の著作物性の判断に当たり示した判断基準は、本件原告滑り台から、その実用目的と関係する構成部分を物理的に取り去って、残ったものに著作物性があるかどうかを判断している点で妥当でない旨主張する。
 しかし、公園遊具の分野において、明確な基準なく著作物性が認められるとなれば、発注者である自治体等が遊具の選定に困難を来すばかりでなく、受注する遊具制作会社においては著作権訴訟のリスクを抱えることとなり、著作権法の目的である「文化の発展」に対してもマイナスの要因となるから、妥当でない。
 そうすると、上記判断基準の「実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して、美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えている部分を把握できるもの」かどうかを観察することは、客観的かつ外形的な判断に馴染むものであり、極力、抽象的な判断を排するという観点からは、むしろ妥当なものである。
 したがって、控訴人の上記主張は失当である。」
イ 争点1−2(本件原告滑り台が建築の著作物に該当するか)、争点1−3(控訴人が本件原告滑り台の著作権を取得したか)、争点1−4(被控訴人による著作権侵害行為の有無)及び争点1−5(被控訴人の故意又は過失の有無)について
 原判決19頁17行目の「本件被告滑り台」を「本件被告滑り台1」と改めるほか、原判決の「事実及び理由」の第2の4(1)イないしオにそれぞれ記載のとおりであるから、これを引用する。
ウ 争点1−6(控訴人の損害額)について
 原判決23頁7行目末尾に行を改めて次のとおり加えるほか、原判決の「事実及び理由」の第2の4(1)カ記載のとおりであるから、これを引用する。
 「よって、控訴人は、被控訴人に対し、著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償として432万円及びうち216万円に対する平成24年4月17日(不法行為の日である本件被告滑り台2の製作日)から、うち216万円に対する平成27年2月12日(不法行為の日である本件被告滑り台1の製作日)から各支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。」
エ 争点1−7(消滅時効の成否)について
 原判決の「事実及び理由」の第2の4(1)キ記載のとおりであるから、これを引用する。
(2)争点2(不当利得返還請求権の存否)について(予備的請求関係)
ア 争点2−1(損失と利益との間の相当因果関係の有無)について
 次のとおり訂正するほか、原判決の「事実及び理由」の第2の4(2)ア記載のとおりであるから、これを引用する。
(ア)原判決25頁3行目、16行目、20行目、21行目及び26頁24行目の各「利得」をいずれも「利益」と、25頁3行目、9行目、14行目、16行目、22行目及び26頁24行目の各「因果関係」をいずれも「相当因果関係」と改める。
(イ)原判決25頁16行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
 「よって、控訴人は、被控訴人に対し、不当利得返還請求として432万円の利得金の返還及びこれに対する令和元年9月5日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで改正前民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。」
イ 争点2−2(法律上の原因の有無)について
 原判決27頁2行目の「利得」を「利益」と改めるほか、原判決の「事実及び理由」の第2の4(2)イ記載のとおりであるから、これを引用する。
第3 当裁判所の判断
1 争点1(著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求権の存否)について
(1)争点1−1(本件原告滑り台が美術の著作物に該当するか)について
 次のとおり訂正するほか、原判決の「事実及び理由」の第3の1(1)記載のとおりであるから、これを引用する。
ア 原判決27頁18行目の「利用者が」を「背面に利用者が」と改め、同頁25行目の「そして」から29頁15行目末尾までを次のとおり改める。
 「イ 前記ア認定のとおり、本件原告滑り台は、遊具としての実用に供されることを目的として製作されたことが認められる。
 ところで、著作権法2条1項1号は、「著作物」とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」をいうと規定し、同法10条1項4号は、同法にいう著作物の例示として、「絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物」を規定しているところ、同法2条1項1号の「美術」の「範囲に属するもの」とは、美的鑑賞の対象となり得るものをいうと解される。そして、実用に供されることを目的とした作品であって、専ら美的鑑賞を目的とする純粋美術とはいえないものであっても、美的鑑賞の対象となり得るものは、応用美術として、「美術」の「範囲に属するもの」と解される。
 次に、応用美術には、一品製作の美術工芸品と量産される量産品が含まれるところ、著作権法は、同法にいう「美術の著作物」には、美術工芸品を含むものとする(同法2条2項)と定めているが、美術工芸品以外の応用美術については特段の規定は存在しない。
 上記同条1項1号の著作物の定義規定に鑑みれば、美的鑑賞の対象となり得るものであって、思想又は感情を創作的に表現したものであれば、美術の著作物に含まれると解するのが自然であるから、同条2項は、美術工芸品が美術の著作物として保護されることを例示した規定であると解される。他方で、応用美術のうち、美術工芸品以外の量産品について、美的鑑賞の対象となり得るというだけで一律に美術の著作物として保護されることになると、実用的な物品の機能を実現するために必要な形状等の構成についても著作権で保護されることになり、当該物品の形状等の利用を過度に制約し、将来の創作活動を阻害することになって、妥当でない。もっとも、このような物品の形状等であっても、視覚を通じて美感を起こさせるものについては、意匠として意匠法によって保護されることが否定されるものではない。
 これらを踏まえると、応用美術のうち、美術工芸品以外のものであっても、実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して、美的鑑賞の対象となり得る美的特性である創作的表現を備えている部分を把握できるものについては、当該部分を含む作品全体が美術の著作物として、保護され得ると解するのが相当である。
 以上を前提に、本件原告滑り台が美術の著作物に該当するかどうかについて判断する。
ウ 控訴人は、本件原告滑り台は、一品製作品というべきものであり、「美術工芸品」(著作権法2条2項)に当たり、創作性を有するから、美術の著作物に該当する旨主張する。
 そこで検討するに、@「タコの滑り台、北欧に」との見出しの平成23年7月7日の朝日新聞の記事(甲4)には、控訴人のB会長の発言として「タコの滑り台は一つ一つデザインが違い、その都度設計する。」、A「タコの滑り台の話」と題するC作成の令和2年7月11日の毎日新聞の記事(甲25)には、タコの滑り台について「一つ一つが手作りで、全く同形の作品はないという。」、B株式会社パークフル作成のウェブサイトに掲載された「日本縦断!タコすべり台がある公園特集」と題する2018年(平成30年)1月3日付けの記事(乙24)には、タコの滑り台について「どのタコも手作りで作られていて、二つとして同じ形のタコはいないんだそう!」との記載がある。
 しかしながら、上記各証拠の記載は、いずれも、B会長の発言又は伝聞を掲載したものであって、客観的な裏付けに欠けるものである。
 他方で、前記前提事実(2)及び(3)のとおり、前田商事が全国各地から発注を受けて製作したタコの滑り台は260基以上にわたること、前田商事が製作したタコの滑り台は、基本的な構造が定まっており、大きさや構造等から複数の種類に分類され、本件原告滑り台は、その一種である「ミニタコ」に属するものであったことからすれば、本件原告滑り台と同様の「ミニタコ」の形状を有する滑り台が他にも製作されていたことがうかがわれる。そうすると、上記各証拠から直ちに本件原告滑り台が一品製作品であったものと認めることはできない。他にこれを認めるに足りる証拠はない。
 よって、本件原告滑り台は、「美術工芸品」に該当するものと認められないから、控訴人の上記主張は、その前提を欠くものであって、理由がない。
エ 控訴人は、本件原告滑り台が「美術工芸品」に当たらないとしても、
 美術の著作物として保護される応用美術である旨主張する。
 そこで、まず、本件原告滑り台において、実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して、美的鑑賞の対象となり得る美的特性である創作的表現を備えている部分を把握できるかどうかを検討し、その上で、全体として美術の著作物に該当するかどうかについて判断する。」
イ 原判決29頁23行目の「正面向かって後方にやや傾いた」を「後部に向かってやや傾いた」と改める。
ウ 原判決30頁7行目から21行目までを次のとおり改める。
 「このように、タコの頭部を模した部分は、本件原告滑り台の中でも最も高い箇所に設置されており、同部分に設置された上記各開口部は、滑り降りるためのスライダー等を同部分に接続するために不可欠な構造であって、滑り台としての実用目的を達成するために必要な構成であるといえる。また、上記空洞は、同部分に上った利用者が、上記各開口部及びスライダーに移動するために必要な構造である上、開口部を除く周囲が囲まれた構造であることによって、高い箇所にある踊り場様の床から利用者が落下することを防止する機能を有するといえる。他方で、上記空洞のうち、スライダーが接続された開口部の上部に、これを覆うように配置された略半球状の天蓋部分については、利用者の落下を防止するなどの滑り台としての実用目的を達成するために必要な構成とまではいえない。
 そうすると、本件原告滑り台のタコの頭部を模した部分のうち、上記天蓋部分については、滑り台としての実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して把握できるものであるといえる。
 しかるところ、上記天蓋部分の形状は、別紙1のとおり、頭頂部から後部に向かってやや傾いた略半球状であり、タコの頭部をも連想させるものではあるが、その形状自体は単純なものであり、タコの頭部の形状としても、ありふれたものである。
 したがって、上記天蓋部分は、美的特性である創作的表現を備えているものとは認められない。
 そして、本件原告滑り台のタコの頭部を模した部分のうち、上記天蓋部分を除いた部分については、上記のとおり、滑り台としての実用目的を達成するために必要な機能に係る構成であるといえるから、これを分離して美的鑑賞の対象となり得る美的特性である創作的表現を備えているものと把握することはできないというべきである。
 以上によれば、本件原告滑り台のうち、タコの頭部を模した部分は、実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して、美的鑑賞の対象となり得る美的特性である創作的表現を備えている部分を把握できるものとは認められない。」
エ 原判決31頁8行目から12行目までを次のとおり改める。
 「そうすると、本件原告滑り台のうち、タコの足を模した部分は、座って滑走する遊具としての利用のために必要な構成であるといえるから、同部分は、実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して、美的鑑賞の対象となり得る美的特性である創作的表現を備えている部分を把握できるものとは認められない。」
オ 原判決31頁24行目の「美術鑑賞」を「美的鑑賞」と、同頁25行目の「美的特性」を「美的特性である創作的表現」と改める。
カ 原判決32頁2行目から33頁3行目までを次のとおり改める。
 「前記(ア)ないし(ウ)のとおり、本件原告滑り台を構成する各部分において、実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して、美的鑑賞の対象となり得る美的特性である創作的表現を備えている部分を把握することはできない。
 そして、上記各部分の組合せからなる本件原告滑り台の全体の形状についても、美的鑑賞の対象となり得るものと認めることはできないし、また、美的特性である創作的表現を備えるものと認めることもできない。
 したがって、本件原告滑り台が美術の著作物に該当するとの控訴人の主張は、採用することができない。」
キ 原判決33頁4行目の「(カ)」を「(オ)」と改め、34頁1行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
 「(カ)また、控訴人は、応用美術であっても「実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して、美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えている部分を把握できるもの」については「美術の著作物」として保護され得るという判断基準によるとしても、「実用目的を達成するために必要な機能に係る構成と分離して」とは、その構成部分を物理的に取り除くというのではなく、実用品として必要な機能を果たす構成を観念的に捨象して、創作物をみることを意味すると解すべきであり、本件原告滑り台を滑り台としての機能を取り去ってみたとき、その形状は、Aが彫刻家としての思想又は感情を創作的に表現したものであり、抽象芸術として十分に鑑賞の対象になり得るものであるから、美術鑑賞の対象となり得る美的特性を備えているとして、美術の著作物に該当する旨主張する。
しかしながら、本件原告滑り台は、遊具としての実用に供されることを目的として製作された作品である以上、これが美術の著作物に該当するか否かを判断するに当たっては、実用品である滑り台としての機能を果たす構成を観念的に捨象して検討することはできないから、控訴人の上記主張は、採用することができない。」
ク 原判決34頁2行目の「エ」を「オ」と改める。
(2)争点1−2(本件原告滑り台が建築の著作物に該当するか)について
 次のとおり訂正するほか、原判決の「事実及び理由」の第3の1(2)記載のとおりであるから、これを引用する。
ア 原判決34頁9行目の「そして」から11行目の「置かれていない。」までを次のとおり改める。
 「ところで、著作権法10条1項5号は、同法にいう著作物の例示として、「建築の著作物」を規定しているところ、ここに「建築の著作物」とは、建築物の外観に表れた美的形象をいうものと解される。」
イ 原判決34頁11行目の「そのため」から12行目の「当たっては」までを「また、「建築の著作物」にいう「建築」の意義については」と、同頁25行目の「建築美術」を「「美術」の「範囲に属するもの」」と改める。
ウ 原判決35頁3行目の「前記(1)ア」を「前記(1)イ」と、同頁6行目の「美術鑑賞の対象となり得る美的特性」を「美的鑑賞の対象となり得る美的特性である創作的表現」と改め、同頁10行目の「また」から16行目末尾までを削る。
エ 原判決35頁17行目の「したがって」を「そうすると」と、同頁18行目から19行目にかけての「美術鑑賞の対象となり得る美的特性」を「美的鑑賞の対象となり得る美的特性である創作的表現」と改め、同行目末尾に行を改めて次のとおり加える。
 「そして、本件原告滑り台の外観全体についても、美的鑑賞の対象となり得るものと認めることはできないし、また、美的特性である創作的表現を備えるものと認めることもできない。
 したがって、本件原告滑り台が建築の著作物に該当するとの控訴人の主張は、採用することができない。」
オ 原判決35頁24行目から36頁4行目までを次のとおり改める。
 「しかしながら、前記ア及びイで説示したところに照らし、控訴人の上記主張は採用することができない。」
(3)小括
 原判決の「事実及び理由」の第3の1(3)記載のとおりであるから、これを引用する。
2 争点2(不当利得返還請求権の存否)について(予備的請求関係)
 原判決36頁18行目の「原告に」から20行目末尾までを「控訴人主張の受注額に相当する額の損失と被控訴人が受けた利益との間に相当因果関係があるものと認めることはできない。」と改めるほか、原判決の「事実及び理由」の第3の2記載のとおりであるから、これを引用する。
3 結論
 以上のとおり、控訴人の主位的請求及び予備的請求はいずれも理由がないから、これらを棄却した原判決は相当である。
 したがって、本件控訴は理由がないから、棄却することとし、主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第1部
 裁判長裁判官 大鷹一郎
 裁判官 小林康彦
 裁判官 小川卓逸

(別紙1)原告滑り台目録
(別紙2)被告滑り台目録
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