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【事件名】ソフトバンクへの発信者情報開示請求事件N 【年月日】令和3年7月7日 東京地裁 令和2年(ワ)第31409号 発信者情報開示請求事件 (口頭弁論終結日 令和3年5月14日) 判決 原告 株式会社建築商売 同訴訟代理人弁護士 野口明男 同訴訟復代理人弁護士 渡辺泰央 被告 ソフトバンク株式会社 同訴訟代理人弁護士 五十嵐敦 同 大山貴俊 同 福田輝人 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録1及び2記載の各情報を開示せよ。 第2 事案の概要 1 本件は、ホステル事業への投資勧誘を業とする原告が、経由プロバイダである被告に対し、氏名不詳の発信者が、ツイッター上のアカウントにおいて、別紙投稿記事目録1記載1のプロフィール画像(以下「本件プロフィール画像」という。)を使用したことにより、別紙写真目録記載の写真(以下「本件写真」という。)に係る原告の著作権(複製権、翻案権、公衆送信権)及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害するとともに、別紙投稿記事目録1記載2及び同目録2記載の各ツイート(以下、それぞれ「本件ツイート1」、「本件ツイート2」といい、本件プロフィール画像とこれらのツイートとを併せて「本件各ツイート等」という。)を投稿したことにより、原告の名誉を毀損したことが明らかであるとして、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」という。)4条1項に基づき、上記侵害行為に係る別紙発信者情報目録1及び2記載の各情報(以下「本件情報」という。)の開示を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実。なお、本判決を通じ、証拠を摘示する場合には、特に断らない限り、枝番を含むものとする。) (1)当事者 ア 原告は、「ホステルビジネスFC投資」という商品名のホステル事業への投資の勧誘を事業として行う株式会社である。 イ 被告は、電気通信事業を営む株式会社であり、プロバイダ責任制限法2条3号にいう「特定電気通信役務提供者」に該当する。 (2)本件写真 本件写真は、原告の元従業員であり、令和2年3月23日、労働審判において原告との間で調停が成立したA(以下「A」という。)の肖像写真である。(甲6、16の1) (3)本件各ツイート等の投稿等 ア 本件プロフィール画像及び本件ツイート1 (ア)氏名不詳の発信者は、令和元年10月から令和2年4月までの間に、「B」との名称のアカウント(ユーザーID:(省略)。以下「本件アカウント1」という。)において、本件プロフィール画像を設定した。(甲1の1、甲2の1、甲3、16、23) (イ)a 氏名不詳の発信者は、令和2年7月30日午前9時16分、「B」との名称の本件アカウント1(ただし、令和2年9月7日時点でのアカウントの名称は「C」)において、本件ツイート1を投稿した。 本件ツイート1は、引用ツイート(コメントを付して第三者のツイートを紹介ないし引用したもの)であり、別紙投稿記事目録1記載2のとおり、「D」との名称のアカウント(ただし、同日時点でのアカウントの名称は「D’」)からの同年7月29日付けのツイートを引用するものである。(甲1の1・2、甲2の1、甲3、7、8、13、23) b 本件ツイート1と同一のタイムライン上には、本件アカウント1(「B」)の利用者による令和2年6月22日付けの以下のツイート(甲7。以下「6月22日付けツイート」という。)が投稿されている。 「オーナーさんの人生を狂わせてしまったようです。私は#パワハラを受けてました。社長のT口氏は罪を償うべきだと思います。#建築#商売#リノベ#王子#ホステル投資#詐欺#フランチャイズ#簡易宿泊所#外苑前」 c 氏名不詳の発信者は、令和2年5月13日、本件アカウント1において、以下のツイート(甲10。以下「5月13日付けツイート」という。)を投稿した。 「人数は比べて少ないかもしれませんが、かぼちゃの馬車と似たような#詐欺と言えるかもしれません#建築商売#詐欺#ホステル#フランチャイズ#簡易宿泊所#E#micromuseum#パワハラ#かぼちゃの馬車」 イ 本件ツイート2 氏名不詳の発信者は、令和2年5月21日午後4時31分、「F」との名称のアカウント(ユーザーID:(省略)。以下「本件アカウント2」といい、本件アカウント1と併せて「本件各アカウント」という。)において、本件ツイート2を投稿した。 本件ツイート2は、引用ツイートであり、別紙投稿記事目録2記載のとおり、「D」との名称のアカウントからの同日付けのツイートを引用するものである。(甲1の3、甲2の2、甲3、23) (4)IPアドレス等の開示 原告は、ツイッターインターナショナルカンパニー(以下「ツイッター社」という。)から、@別紙IPアドレス目録1記載の令和2年6月23日から同年8月12日までの間に本件アカウント1にログインした際のIPアドレス及びタイムスタンプ、A別紙IPアドレス目録2記載の同年6月25日から同年8月13日までの間に本件アカウント2にログインした際のIPアドレス及びタイムスタンプ(以下、上記@及びAのIPアドレスを併せて「本件IPアドレス」という。)の開示を受けた。 本件IPアドレスは、被告が保有するものであり、本件IPアドレス以外に原告がツイッター社から開示を受けたIPアドレスはない。(甲2、23) (5)本件情報の内容及びその保有状況 本件情報は、本件IPアドレスが別紙IPアドレス目録1及び2記載の日時頃に割り当てられていた契約者に関する情報であり、被告が保有している。 3 争点 (1)権利侵害の明白性 ア 本件プロフィール画像に関する権利侵害の明白性(争点1) イ 本件ツイート1に関する権利侵害の明白性(争点2) ウ 本件ツイート2に関する権利侵害の明白性(争点3) (2)本件情報の「権利の侵害に係る発信者情報」該当性(争点4) (3)被告の「開示関係役務提供者」該当性(争点5) (4)本件情報の開示を受けるべき正当な理由の有無(争点6) 第3 争点に関する当事者の主張 1 本件プロフィール画像に関する権利侵害の明白性(争点1)について 〔原告の主張〕 (1)本件写真の著作物性 本件写真は、写真家のG(以下「G」という。)がアングルや構図等を決めて撮影したものであり、思想や感情が創作的に表現されているので、本件写真には著作物性が認められる。 (2)本件写真の著作権及び著作者人格権の帰属 本件写真は、原告が、原告のウェブサイトにおける従業員紹介ページに掲載するために、Gに依頼して撮影させたものであるところ、原告は、Gから、本件写真の撮影料金の支払時に、本件写真の著作権の一切を譲り受けたので(甲5、22)、本件写真の著作権及び著作者人格権は、原告に帰属する。 (3)本件写真の著作権及び著作者人格権侵害の有無 ア 著作権侵害 本件プロフィール画像のインターネット上へのアップロードは、本件写真の複製及び公衆送信に該当するとともに、本件写真をトリミングすることは、本件写真の翻案に該当するので、本件写真に係る原告の著作権を明らかに侵害する。 イ 著作者人格権侵害 本件プロフィール画像は、本件写真をトリミングしたものであるところ、著作権の保護の対象となる画像のトリミングは「切除」(著作権法20条1項)に該当するから、本件写真に係る原告の同一性保持権を明らかに侵害する。 〔被告の主張〕 (1)本件写真の著作物性 本件写真は、直立する人物を正面から撮影したものであり、同人物の体勢は、頭部をやや傾け、左手でノートパソコンを持ち、右手を同ノートパソコンに乗せているというものであって、人物の顔及び上半身等をありふれた構図で撮影した写真にすぎないことから、撮影者の思想又は感情が表現されているということはできない。 (2)本件写真の著作権及び著作者人格権の帰属 ア 著作権について 原告は、Gから撮影料金の支払時に本件写真の著作権の譲渡を受けたと主張するが、G作成の原告宛ての請書(甲4)には、「肖像権」が原告に属する旨の記載があるにとどまり、「著作権」が原告に帰属する旨の記載はない。Gの陳述書(甲22)にも、上記請書で著作権に言及していない理由についての記載はない。 また、翻案権の譲渡の場合、契約において譲渡の目的として特掲されなければならず(著作権法61条2項)、特掲されたというためには、単に「著作権等の一切の権利を譲渡する」というような包括的な記載をするだけでは足りず、譲渡の対象に当該権利が含まれる旨が契約書等に明記されることが必要である。しかし、上記請書には翻案権譲渡の記載はなく、Gの陳述書にも、翻案権が特掲されたことをうかがわせる記載は存在しない。 以上によれば、原告が本件写真の著作権の譲渡時と主張する撮影料金の支払時点において原告とGの間に本件写真の著作権の譲渡合意はなかったと考えるのが自然である。 イ 著作者人格権について 著作者人格権が著作者の一身に専属し、譲渡することができないことは条文上明らかである(著作権法59条)から、本件写真の著作者人格権は撮影者に帰属しており、原告には帰属していない。 (3)本件写真の著作権及び著作者人格権侵害の有無 ア 著作権侵害について 本件プロフィール画像は、当該人物の髪型や目など顔の半分が写っておらず、本件プロフィール画像に写る人物が誰であるのかは不明である。本件プロフィール画像に写る人物は、頭部をやや傾け、右手を胸部のあたりに上げているだけで、そのポーズに特に特徴はなく、ありふれている上、画質も粗く、画像がつぶれており、大きさも小さい。また、本件プロフィール画像が本件写真に依拠して作成されたと認めるに足りる証拠もない。 このように、本件プロフィール画像は、本件写真と同一であるということはできず、また、本件写真に新たな思想又は感情の創作的表現を加味したものということもできないので、本件プロフィール画像が、本件写真の複製権、翻案権及び公衆送信権を侵害することが明らかであるということはできない。 イ 著作者人格権侵害について 原告は、本件写真の著作者人格権を有していないから、本件プロフィール画像は本件写真に係る原告の著作者人格権を侵害していない。 2 本件ツイート1に関する権利侵害の明白性(争点2)について 〔原告の主張〕 以下のとおり、本件ツイート1の投稿により、原告に対する名誉棄損が成立する。 (1)名誉棄損の成否 ア 同定可能性 本件ツイート1と6月22日付けツイートとは時期的に近接しているところ、6月22日付けツイートにある「社長のT口」「#建築#商売」との記載と本件ツイート1にある「#ホステル投資詐欺」との記載と併せて読めば、本件ツイート1が原告を対象としていることは一般の閲覧者にとって明らかである。 イ 社会的評価の低下 本件ツイート1は、原告が、投資家を騙して、投資家には全く利益をもたらさないホステル事業への投資の勧誘を行っていたとの事実を摘示するものであり、原告の社会的評価を低下させるものである。 (2)違法性阻却事由をうかがわせる事情の有無 原告が投資家に勧誘をしてきた「ホステルビジネスFC投資」のスキームは、遊休不動産をホステルにリノベーションして運営し、その運用利益を対象不動産の家賃やリノベーション費用、運用費を負担した投資家に分配するというものであり、当然、同投資により利益が生じている物件も存在するから、詐欺的なものではなく、原告がホステル投資詐欺を行っているとの事実は虚偽である。原告が指摘するインターネット記事は、現在、返金を求めている者による原告への嫌がらせのためとしか考えられず、このような虚偽の内容を指摘することに公益目的はない。 したがって、本件ツイート1の投稿について、違法性阻却事由の存在をうかがわせるような事情はない。 〔被告の主張〕 以下のとおり、本件ツイート1の投稿によって、原告に対する名誉棄損が成立することはない。 (1)名誉棄損の成否 ア 同定可能性について 本件ツイート1は、記載内容からして、特定の法人又は自然人に関するものではなく、また、原告の名称又はそれを推認させる記載を含むものでもない。 また、一般的に、同一アカウントにおける投稿であっても投稿相互には関連はなく、ましてや6月22日付けツイートは、本件ツイート1の投稿より1週間以上前の投稿であるから、一般の閲覧者が6月22日付けツイートから本件ツイート1の対象を推認するとは考えられない。 そもそも、6月22日付けのツイートには原告の名称の記載はなく、同ツイートに含まれる「社長のT口」との記載も、一見しただけではその意味するところが不明であって、「建築」と「商売」という語がともに一般名詞であることも踏まえると、6月22日付けツイートも、原告を対象とするものかどうか明らかではない。 したがって、本件ツイート1が、原告を対象とすることが明らかであるということはできない。 イ 社会的評価の低下について 仮に本件ツイート1が原告を対象とするものであったとしても、本件ツイート1は、原告がホステル投資詐欺を行っていたとの事実を摘示していないから、原告の社会的評価を低下させるものではない。 (2)違法性阻却事由をうかがわせるような事情の有無 原告が行っているホステル事業の投資については「完全に騙された」として被害者が集団提訴の準備を始めていることなどがマスコミで報道されており(乙1)、テレビ朝日のニュース番組でも原告の名称が表示された上で「『稼働率8割』信じたら…宿泊事業で投資トラブル」など報じられていること(乙2)や、投資被害の相談を複数受けた弁護士が原告に対して受任通知を送付し、不法行為に基づく損害賠償を求めていること(甲20)を踏まえると、原告がホステル投資詐欺を行っていたという事実は真実であるか、少なくとも、同事実を真実と信じることについて相当の理由があったということができる。 そして、ホステル投資詐欺は、犯罪行為ともなり得る社会的非難の免れない行為であるから、本件ツイート1は、公共の利害に関する事実に係り、その目的が専ら公益を図るものである。 したがって、本件ツイート1の投稿について、違法性阻却事由をうかがわせるような事情がないことが明らかということはできない。 3 争点3(本件ツイート2に関する権利侵害の明白性)について 〔原告の主張〕 以下のとおり、本件ツイート2の投稿により、原告に対する名誉棄損が成立する。 (1)名誉棄損の成否 ア 同定可能性 本件ツイート2が引用するツイートが更に引用する5月13日付けツイートには、原告の名称、原告代表者の氏名等の記載があるところ、かかる記載と本件ツイート2にある「#ホステル投資」などの記載とを併せて読めば、本件ツイート2が原告を対象としていることは一般の閲覧者にとって明らかである。 イ 社会的評価の低下 本件ツイート2は、原告が、投資家を騙して、「かぼちゃの馬車」事件と同様の詐欺的なスキームを持つホステル事業への投資勧誘を行っていたとの事実を摘示するものであり、原告の社会的評価を低下させるものであるので、同ツイートは原告の名誉を棄損するものである。 (2)違法性阻却事由をうかがわせるような事情の有無 本件ツイート2についても、上記2〔原告の主張〕(2)と同様の理由により、違法性阻却事由の存在をうかがわせるような事情はない。 〔被告の主張〕 以下のとおり、本件ツイート2の投稿によって、原告に対する名誉棄損が成立することはない。 (1)名誉棄損の成否 ア 同定可能性について 本件ツイート2は、原告の名称をうかがわせる記載を含むものでなく、特定の法人又は自然人に関するものということはできない。 原告は、本件ツイート2が引用する投稿が更に引用する5月13日付けツイートの記載を根拠として、本件ツイート2が原告についてのものであると同定できると主張するが、一般に、引用先のツイートの記載と引用元のツイートの記載ですら同一の対象に関するものとは限らない上、原告の上記主張によればこのような不確実な推認を重ねて行うこととなる。一般の閲覧者がかかる不確実な推認を重ねた上で、本件ツイート2が原告を対象とするものであると認識するとは考え難い。 イ 社会的評価の低下について 仮に本件ツイート2が原告を対象とするものであったとしても、本件ツイート2は、原告に言及するものではなく、単なる感想を内容とするものであるから、原告の社会的評価を低下させるものではない。 (2)違法性阻却事由をうかがわせるような事情の有無 本件ツイート2についても、上記2〔被告の主張〕(2)と同様の理由により、真実性の抗弁又は相当性の抗弁が成立しないことが明らかであるということはできない。 4 争点4(本件情報の「権利の侵害に係る発信者情報」該当性)について 〔原告の主張〕 プロバイダ責任制限法4条1項にいう「権利の侵害に係る発信者情報」とは、当該権利の侵害情報が発信された際に割り当てられたIPアドレス等から把握される発信者情報に限られず、権利侵害との結び付きがあり、権利侵害者の特定に資する通信から把握される発信者情報をも含むものであり、侵害情報の送信の前後に割り当てられたIPアドレス等から把握される発信者情報であっても、それが侵害情報の発信者のものと認められる場合には、「権利の侵害に係る発信者情報」に当たると考えるのが相当である。ツイッター社から開示された本件IPアドレス(本件各アカウントのログインに係るIPアドレス)の保有者は被告のみであって、本件各アカウントが複数人で共有されていたとは考え難いことからすると、本件情報は、侵害情報の発信者のものであるということができるので、「権利の侵害に係る発信者情報」に該当する。 〔被告の主張〕 プロバイダ責任制限法4条1項にいう「権利の侵害に係る発信者情報」とは、侵害情報の流通自体に係る者の情報に限られ、権利侵害ではない情報の発信に係る者の情報は、これが開示されることにより侵害情報の発信者が特定される可能性があるとしても、開示請求の対象にはならない。本件情報は、本件各アカウントのログインに関与した者の情報にすぎず、本件各ツイート等の投稿自体に係る者の情報ではないから、「権利の侵害に係る発信者情報」に該当しない。 仮に、上記解釈が採用されないとしても、ツイッターでは同一のアカウントを複数人で管理、運営することも考えられ、パスワードさえ分かれば、アカウントの開設者以外の者でもアカウントにログインすることができるので、本件IPアドレスを別紙IPアドレス目録1及び2記載の日時頃に割り当てられていた契約者が、本件各ツイート等の投稿をした蓋然性が高いということはできない。このため、本件情報は「権利の侵害に係る発信者情報」に該当しない。 5 争点5(被告の「開示関係役務提供者」該当性)について 〔原告の主張〕 被告は、特定電気通信設備を用いて、本件各ツイート等の投稿やこれらの閲覧を媒介するのであるから、「開示関係役務提供者」に該当する。 〔被告の主張〕 プロバイダ責任制限法4条1項が定める「開示関係役務提供者」とは、他人の権利を侵害したとされる情報を流通させた特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者であるところ、被告は、本件各アカウントへの「ログイン」という、侵害情報でない情報の発信の用に供された電気通信設備を用いて当該発信を媒介したにすぎない。そして、本件各ツイート等の投稿に使用されたIPアドレス及び同アドレスの割当日時は定かでなく、被告が本件各ツイート等の「投稿」の用に供される特定電気通信設備を用いて本件各ツイート等の「投稿」を媒介したことについては明らかでないから、被告が「開示関係役務提供者」に該当するということはできない。 6 争点6(本件情報の開示を受けるべき正当な理由の有無)について 〔原告の主張〕 原告は、本件各ツイート等の発信者に対して、不法行為に基づく損害賠償請求等をする予定であるが、そのためには、被告から本件情報の開示を受ける必要があるので、原告には、被告から本件情報の開示を受けるべき正当な理由がある。 〔被告の主張〕 不知ないし争う。 第4 当裁判所の判断 1 争点1(本件プロフィール画像に関する権利侵害の明白性)について (1)本件写真の著作物性について 前記前提事実及び証拠(甲6)によれば、本件写真は、顔を左に少し傾け、左半身を右半身よりもカメラに近い位置に向けているAが、左手で持っているノートパソコンに右手を添える様子を撮影したモノクロの肖像写真であり、構図やアングル、光の当て方などにおいて工夫がされているものと認められる。同写真は、撮影者の個性が現れ、撮影者の思想又は感情を創作的に表現したものとして、著作物に当たる。 (2)本件写真の著作権及び著作者人格権の帰属について 原告は、本件写真の著作権を撮影料金の支払時に撮影者のGから譲り受けたと主張し、これを証するものとして、G作成の「請書」(甲4)並びに原告代表者及びGの各陳述書(甲5、22)を提出する。 しかし、甲4の「請書」については、@原告宛ての請求書であるにもかかわらず、宛先である原告名の横に原告の社印が押印されていること、A同文書左上部分の宛先の下部には「写真の使用肖像権は株式会社建築商売に属するものとする。」との記載があるが、請求書の宛先の下にかかる注記をすることが一般的・定型的とはいい難く、Gが顧客である原告名を「貴社」、「株式会社建築商売さま」(甲22参照)などではなく「株式会社建築商売」と表記していることなど、Gが作成した文書と認めるには不自然又は不合理な点が多い。 また、Gは、その陳述書(甲22)において、上記甲4の「請書」の撮影料の対象は原告代表者とAの2名分であり、原告のウェブサイトへの掲載を想定するものであって、著作権の一切を原告に譲渡したと陳述するが、甲4の「請書」には「使用肖像権」の帰属に関する記載があるのみで、「著作権」の帰属についての記載は存在せず、その撮影対象についても「E様撮影料一式」とされ、本件写真の被写体であるAに関する記載はない上、本件写真のデータやその撮影日時・人数を客観的に示す証拠、撮影料に関する支払の時期・金額を客観的に示す証拠、本件写真及び原告代表者の写真を原告のウェブサイトに掲載した事実及びその時期を客観的に示す証拠は存在しない。 以上によれば、甲4、5及び22をもって、原告がGから本件写真の著作権一切を譲り受けたと認めることはできない。 したがって、原告に本件写真の著作権が帰属するということはできず、本件写真の撮影者ではない原告にその著作者人格権が帰属するということもできない。 2 争点2(本件ツイート1に関する権利侵害の明白性)について 本件ツイート1が原告の名誉を棄損するものかどうかについて、以下検討する。 (1)名誉毀損の成否について 本件ツイート1には、引用したツイートも含め、原告の名称の記載は存在しないところ、原告は、本件ツイート1と同一タイムライン上にある6月22日付けツイートにある「社長のT口」「#建築#商売」との記載と本件ツイート1にある「#ホステル投資詐欺」との記載と併せて読めば、本件ツイート1が原告を対象としていることは一般の閲覧者にとって明らかであると主張する。 しかし、6月22日付けツイートにある「#建築#商売」との記載は、本文の下に、2つの連続した個別のハッシュタグとして、「#リノベ」ほか6つのハッシュタグと並べて表示されているにすぎず、「#建築#商売」との記載から、その一般の閲覧者が、これを原告の名称と理解するとは考えられず、そうすると、「社長のT口」との記載についても、一般の閲覧者がこれをもって原告代表者を示すものと受け取るとは認められない。 したがって、本件ツイート1に接した一般の閲覧者が、同ツイートにいう「ホステル投資詐欺」をしたのが原告であると認識するとは認められない。 (2)違法性阻却事由をうかがわせるような事情の有無 ア プロバイダ責任制限法4条1号にいう「権利が侵害されたことが明らか」とは、違法性阻却事由の存在をうかがわせるような事情が存在しないことを意味するものと解されるところ、事実摘示による名誉毀損については、当該行為が公共の利害に関する事実に係り、専ら公益を図る目的に出た場合において、摘示された事実が真実であることが証明されたときは、その行為の違法性が阻却されるので、開示請求者は、上記真実性の抗弁の成立をうかがわせるような事情がないことを主張立証する必要がある。 イ 後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 (ア)原告は、令和2年6月22日付け「受任通知」を受領し、不動産投資詐欺・被害の救済を専門とする弁護士から、原告の勧誘による高利回りをうたったホステル事業への投資は赤字が不可避であり、詐欺的投資勧誘として不法行為に当たるなどとして損害賠償金の支払を求められた。(甲20) (イ)令和2年9月18日放送のテレビ朝日の番組「グッドモーニング」は、原告名を表示した上で、「オーナーへの利回り実質40%」、「初期投資は3年以内に回収できる」、「稼働率8割」と原告の説明を信じた被害者が投資トラブルに陥り、赤字だけがふくらみ続けていると報道した。(乙2) (ウ)インターネット上の報道においても、「「利回り30%も可能」のはずが損失3500万…ホステル投資の実態毎月40万〜50万の持ち出しで自己破産寸前の投資家に聞く」(令和2年8月11日付け楽待不動産投資新聞。乙1の1)、「「完全に騙された」…ホステル投資で7人が集団訴訟請負代金1600万円を払ったものの、着工から5カ月半でいまだスケルトン状態」(同年9月18日付け楽待不動産投資新聞。乙1の2)、「高利回りうたうも実態異なる?簡易宿泊施設「ホステル」への投資でトラブル、2億4000万円賠償求め提訴へ」(同月20日付けzakzakby夕刊フジ。乙1の3)と題する記事が掲載され、ホステル事業への投資を巡るトラブルの実態が紹介された。 ウ 以上のとおり、原告が詐欺的な投資勧誘を行っているとの報道がされ、弁護士からも損害賠償を求める通知がされている一方、上記報道や通知が虚偽であることを示す的確な証拠は存在しない。原告は、甲9の収益計算表に基づき利益の出ている物件もあると主張するが、甲9は「満室時想定」と左上に記載された物件名の記載のない一枚の書類にすぎず、これをもって、本件ツイート1について違法性阻却事由の存在をうかがわせるような事情がないということはできない。また、本件ツイート1は、一般の投資家に対するホステル投資詐欺を問題にするものであるから、公共の利害に関する事実を内容とするものでないとはいえず、専ら公益を図ることを目的としていたことも否定し得ない。 エ 以上によれば、本件ツイート1が原告の社会的評価を低下させるものであるとしても、その違法性を阻却する事由が存在することをうかがわせるような事情がないということはできないので、原告の名誉が毀損されたことが明白であるということはできない。 3 争点3(本件ツイート2に関する権利侵害の明白性)について (1)名誉毀損の成否について 本件ツイート2には、その引用するツイートも含め、原告の名称の記載は存在しないところ、原告は、同引用ツイートにより引用されたとする5月13日付けツイート(甲10)にある「#建築商売」や「#E」との記載と本件ツイート2にある「#ホステル投資」との記載を併せて読めば、本件ツイート2が原告を対象としていることは一般の閲覧者にとって明らかであると主張する。 しかし、本件ツイート2の引用ツイートが5月13日付けツイートを引用していたとしても、一般の閲覧者が、本件ツイート2の「#ホステル投資」との記載を、その引用ツイートが更に引用した5月13日付けツイート(甲10)の記載と結びつけて理解するとは考え難い。 また、同ツイートにある「#建築商売」とのハッシュタグにはそれが会社の名称を示すものであることを示す文言はなく、「#建築商売」及び「#E」とのハッシュタグの間には「#簡易宿泊所」などの関係のないハッシュタグも記載されていることなどによると、本件ツイート2の一般の閲覧者が、「#建築商売」とのハッシュタグをみて原告の名称と認識し、ホステル投資詐欺の主体と理解することは困難であり、そうすると、「#E」が原告代表者であると認識することも無理である。 したがって、本件ツイート2に接した一般の閲覧者が、同ツイートにいう「詐欺」の主体が原告であると認識するということはできない。 (2)違法性阻却事由をうかがわせるような事情の有無 前記2(2)と同様の理由から、本件ツイート2が原告の社会的評価を低下させるものであるとしても、その違法性を阻却する事由が存在することをうかがわせるような事情がないということはできないので、原告の名誉が毀損されたことが明白であるということはできない。 4 結論 よって、その余の争点について判断するまでもなく、本訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 佐藤達文 裁判官 小田誉太郎 裁判官 齊藤敦 (別紙)発信者情報目録1 別紙IPアドレス目録1記載のIPアドレスを、同目録記載の日時(日本標準時)ころに被告から割り当てられていた契約者に関する者の下記情報 1 氏名又は名称 2 住所 以上 (別紙)発信者情報目録2 別紙IPアドレス目録2記載のIPアドレスを、同目録記載の日時(日本標準時)ころに被告から割り当てられていた契約者に関する者の下記情報 1 氏名又は名称 2 住所 以上 (別紙)IPアドレス目録1
(別紙)IPアドレス目録2
(別紙)投稿記事目録1 1 閲覧用URL https://以下省略 投稿内容 (省略) 2 閲覧用URL https://以下省略 投稿日時 午前9:16・2020年7月30日 投稿内容 (独自コメント部分)コロナ関係なくオーナーさんは儲かってないんですよ;儲かったのはその業者のみです#ホステル投資詐欺#旅館業#建築#簡易宿泊所 (引用したツイート)D’・7月29日#ホステル投資詐欺は本当に酷い。青○でホステルをオープンしてしまったオーナーさんは、ご自宅を売却され、債務整理を進めているとのこと。ご家族は、相続するはずだったご実家が突然奪われる。泣き寝入りするしかないのでしょうか。この会社の従業員のみなさん、目を覚ましてください (別紙)写真目録 (別紙)投稿記事目録2 閲覧用URL https://以下省略 投稿日時 午後4:31・2020年5月21日 投稿内容 (独自コメント部分)やはり#詐欺被害が横行しているのは本当だったんですね#ホステル投資#フランチャイズ#簡易宿泊所 (引用したツイート)D・5月21日#かぼちゃの馬車と似てますね あれは銀行もグルだったと思いますが#ホステル投資詐欺は銀行に対しても虚偽の事業計画と実績でだまして融資させてますね 早く逮捕されて欲しいtwitter.com/(省略)... |
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