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9月6日 庭園デザインの著作権侵害事件 |
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大阪地裁/決定・申立却下
JR大阪駅北側にある複合施設「新梅田シティ」の庭園で設置工事が進められている、建築家・安藤忠雄さんの発案による緑化壁をめぐって、庭園を設計した造園家・吉村元男さんが、自分の思想を表現した創作物である庭園の著作権を侵害するとして、施工主の積水ハウスに対して、工事の中止を求める仮処分を大阪地裁に申し立てた事件。
裁判所はまず、設計者の思想・感情が表現されたものとして本庭園を著作物と認定、吉村さんを著作者と判断し、緑化壁の設置を著作者の意に反した改変と認定した。その上で、本庭園は鑑賞のみを目的とするものでなく、むしろ実際に利用するものとしての側面が強いこと、また土地所有者の権利行使の自由との調整の観点から、所有権と著作権の調整規定である法20条2項二号(建築物の増改築等)を類推適用することができると判断し、著作者の同一性保持権を侵害するものではないとして、申し立てを却下した。 |

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9月9日 死刑囚支援団体事件 |
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東京地裁/判決・請求却下
死刑廃止を目的として死刑囚たちにより結成された団体「麦の会」の元メンバーであった原告Aが、会の事務局代表である被告Bと運営委員である被告Cに対し、「麦の会」の名称や規約等の改変が原告の著作権を侵害するとして、各10万円の支払いと会の活動停止を求めた事件。
裁判所は前訴判決から、原告は被告Bに対しては損害賠償請求権および差止請求権を有しないことが確定していると判断した。また被告Cは前訴の当事者でも継承人でもないが、本訴における原告の主張は前訴におけるものとほぼ同様であり、前訴の被告らと本訴の被告はいずれも会の関係者という点で共通していることから、本訴は実質的に前訴の蒸し返しというべきであり、本訴の提起は信義的に照らして許されないと解するのが相当であると判断した。被告Bに対する関係においても本訴の提起を同様に判断し、原告の訴えをいずれも却下した。 |

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9月10日 インタビュー談話の転載事件(2) |
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知財高裁/判決・控訴棄却、予備的請求棄却
ドキュメンタリー映画製作者である原告男性が、被告もその著者の一人である書籍「いのちを語る」の被告執筆部分が、「A Man of Light(光の人)」と題する映画作品のある部分に係る原告の著作権を侵害しているとして、被告に対して出版の差し止めと賠償金110万円の支払い等を求めた事件の第二審。一審東京地裁は、原告がこの映画の著作者であり著作権者であることを認定した上で、被告記述部分の作成は原告の著作権を侵害するものではないとして、原告の請求を棄却したが、原告が控訴した。
知財高裁も一審の判断を維持した上で、翻案権侵害および控訴審で追加された複製権侵害について、いずれも否定して、控訴を棄却し、予備的請求された著作権に基づかない人格的利益侵害による不法行為に基づく賠償請求も棄却した。 |

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9月12日 営業用資料の著作物性事件 |
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東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
ウェブサイトの入力フォームのアシスト機能に係るサービスの説明資料を作成した原告が、被告の作成したエントリーフォーム最適化システムの資料は原告の著作物の著作権および著作者人格権を侵害しているとして、被告資料の複製頒布の差し止めと廃棄、および損害金1680万円の支払いを求めた事件。
裁判所はまず、訴状の送付を受けた被告がその時点で被告資料の使用を停止していることなどから、差し止めと廃棄の請求はその必要を認めなかったが、次に原告資料の著作物性を検討、これを認めた上で、原告資料と被告資料の比較から、被告資料は原告資料を複製・翻案し、原告の著作権を侵害したものと判断して、損害額を10万円と認定、被告に支払いを命じた。 |

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9月20日 POS情報開示システムの著作権帰属事件 |
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東京地裁/判決・本訴請求棄却、反訴請求認容
本訴は、情報処理会社(原告)が、POSシステムである「宝箱システム」の著作権を有し、その後継システムである「トレジャーデータ」を共同開発して著作権を準共有しているとして、被告生活協同組合及び被告システム開発会社らが、原告の著作権行使を不可能にし、不当に契約の更新を拒絶している不法行為に対して、被告らに各5億円弱の賠償金支払いを求め、また被告組合が宝箱システムの著作権を有していないにもかかわらずライセンス料を払わせた不法行為に対して被告組合に1億円強の賠償金支払い等を求めたもの。反訴は被告組合が原告に対して3191万5000円の宝箱システムライセンス使用料を、被告会社が原告に対して3150万円のトレジャーデータシステムライセンス使用料を求めたもの。
裁判所は著作権に関する原告の主張を認めず、原告の請求を棄却、被告の反訴はそれぞれ理由があると認めて請求を認容した。 |

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9月24日 ERPソフトウェアの著作権侵害事件 |
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東京地裁/判決・請求認容、中間確認請求却下(控訴)
原告ソフトウェア制作会社が、被告ソフトウェア制作会社との間のパートナー契約において、被告から提供されたソフトウェア中のプログラムにつき、著作権上の瑕疵があるとして、被告に対し、債務不履行に基づき、損害金205万5千円の支払いを求め、これに対し被告が、中間確認の訴えとして、上記プログラムが他のプログラムの著作権を侵害しないことの確認を求めた事件。
裁判所は、本件各プログラムが先行各プログラムを複製したものであると認定し、被告は本件契約において著作権上の瑕疵がない本件ソフト群を提供する義務を負っていたにもかかわらず、原告に対してこれを提供したのであるから、債務の本旨に従った履行をしていないと判断し、損害金206万5千円の支払いを被告に命じた。被告の中間確認の訴えは却下した。 |

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9月25日 弁護士 vs 行政書士 ブログ事件(2) |
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知財高裁/判決・取消
弁護士である一審原告が、行政書士である一審被告において、虚偽の記事を自己のブログに掲載して原告の営業上の利益を侵害しているとして、不正競争防止法に基づき記事掲載の禁止削除と744万円の賠償金支払いを求めた事件の控訴審。双方は行政書士のブログ記事をめぐって〈かなめくじウォーズ〉と名付けられた争いを繰り返しており、別件名誉毀損訴訟は結審している。一審東京地裁は原告の主張を認め、記事の一部削除と50万円の支払いを命じたが、一審被告が控訴した。
知財高裁は一審の判決を取り消し、被控訴人の請求を棄却した。 |

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9月30日 “自炊”代行事件B |
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東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
小説家・漫画家・漫画原作者である原告ら7人が、自炊代行業者である被告会社2社に対して、被告会社らは電子ファイル化の依頼のあった書籍について、権利者の許諾を受けることなくスキャナーで書籍を読み取って電子ファイルを作成し依頼者に納品しているから、注文を受けた、あるいはこれから受ける書籍には原告らが著作権を有する作品が含まれている可能性が高いとして、被告会社らに電子的方法による複製の差し止めと、各原告への損害賠償金各21万円の支払いを求めた事件。
裁判所は、被告会社の、利用者の「私的複製」行為の手足となっていただけだという主張を退け、被告会社の著作権侵害を認めて、複製行為の差し止めと、各被告から各原告へのそれぞれ10万円の賠償金支払いを命じた。 |

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9月30日 “獄中画”展覧会事件(2) |
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知財高裁/判決・変更
刑務所に収容中の原告が、その制作になる絵画を被告に預けていたところ、被告が原告に断りなく、その1枚を被告主催の展示会に展示し、パンフレットに掲載し、原告の氏名を受刑者との記載とともに載せ、その絵画を紛失して返還しなかったことなどから、原告が被告に対して、著作権侵害、著作者人格権侵害、プライバシー権侵害等により、損害賠償金550万円を請求した事件。一審は著作権侵害、プライバシー権侵害等を認め、被告に26万9千円の賠償金支払いを命じたが、双方が控訴した。
裁判所は、一審判決に加え、著作者人格権侵害(氏名表示権)も認めて賠償金額を31万9千円に変更したが、一審原告のその余の請求と、一審被告の控訴を棄却した。 |

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9月30日 “日航機墜落事故”ノンフィクションの表現類似事件(2) |
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知財高裁/判決・控訴一部棄却、一部変更(上告)
1985年の日航機墜落事故で夫を亡くし、手記『雪解けの尾根』を刊行した遺族が、同事故を題材にしたノンフィクション作家・門田隆将氏の著書『風にそよぐ墓標』に表現を盗用されたとして、氏と版元の集英社に対し、出版差し止めと賠償金518万円の支払いを求めた事件の控訴審。一審東京地裁は17か所に著作権侵害を認め、出版差し止めと書籍の廃棄、58万円余の損害賠償金支払いを命じたが、被告側が控訴した。
知財高裁は審理の対象となった17か所のうち3か所は表現上の創作性がないと判断したが、それ以外の部分については、いずれも事実の記載であったり表現がありふれていて著作権侵害に当たらないとする一審被告側の反論を退け、複製または翻案を認めた。また原審同様、一審原告から明示または黙示の許諾を得ていたとする一審被告の主張も退け、損害賠償金を57万円余に変更して、控訴を棄却した。 |

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10月10日 劇画「子連れ狼」実写映画化事件 |
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東京地裁/判決・請求認容(控訴)
アメリカ法人である映画製作会社(原告)が、ライセンスビジネス会社である被告に対し、原告が劇画「子連れ狼」原作の実写映画化権を取得したとして、その確認および、被告が、被告が本件原作の独占利用権を持ち実写映画と実写ドラマを製作する原告の行為は被告のその独占利用権を侵害する旨を告知したことは、不正競争行為に当たるとして、告知・流布の差し止めを求めた事件。
裁判所は、原告は作画者の承諾を得ていないから実写映画化権を得ていないとする被告の主張等を退け、原告、原作者、原作者から原作の著作権譲渡を受けた会社、および最初に原作者から実写映画化権を取得した会社は、原作を実写映画化するための契約を締結したと認めた。また独占使用権を有するとする被告の主張を認め難いと判断して、原告が実写映画化権を有することの確認と、原告の行為が被告の独占的使用権を侵害する旨を告知・流布してはならない旨の差し止めを認めた。 |

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10月16日 ジャニーズタレントの写真無断掲載事件(2) |
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知財高裁/判決・控訴棄却(上告)
ジャニーズ事務所所属のアイドルグループの写真を雑誌に無断で掲載されたとして、グループメンバーが版元のアールズ出版をパブリシティ権侵害で訴え、書籍の販売停止、廃棄と、賠償金合計約1億7000万円の支払いを求めた事件の控訴審。一審東京地裁はパブリシティ権の侵害を認め、出版社に書籍の販売停止、廃棄と、合計約5400万円の支払いを命じたが、被告が控訴した。
知財高裁は、控訴人の主張――書籍には文章も掲載しており、写真それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品として利用したわけではない――を退け、一審の判断を支持して控訴を棄却した。 |

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10月18日 「週刊朝日」の受刑者への名誉毀損事件 |
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名古屋地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴・控訴棄却、確定)
「週刊朝日」の記事で名誉を傷つけられたとして、殺人罪で懲役19年の判決が確定している受刑者が、発行元の朝日新聞出版に3千万円の損害賠償を求めた事件。問題とされたのは2008年9月発行の、「懲りない浮気癖」という記載を含む見出しの表現。
裁判所は「浮気を繰り返していたと信じるに足りる理由は認められない」として、この一部表現に名誉毀損の成立を認め、朝日新聞出版に10万円の賠償金支払いを命じた。 |
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10月18日 「ユニクロ帝国の光と影」名誉毀損事件 |
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東京地裁/判決・請求棄却(控訴・控訴棄却、上告・上告棄却、確定)
文藝春秋発行の週刊誌や単行本で名誉を傷つけられたとして、ユニクロを展開するファーストリテイリングが文藝春秋に2億2千万円の賠償などを求めた事件。問題となったのは2010年4月発行の「週刊文春」の「ユニクロ中国『秘密工場』に潜入した!」と題する記事と、11年3月に発行された単行本『ユニクロ帝国の光と影』で、ユニクロの中国工場の労働環境が劣悪だと指摘する内容。
裁判所は、記事の内容は真実であるか、真実と信じた相当の理由があると判断して、原告の請求を退けた。 |
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10月21日 類似キャラクター雑貨事件 |
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東京地裁/判決・請求棄却
原告雑貨製造販売会社が、原告作品「くろねこフェイスタオル」「ガーゼハンカチねことさかな」等5作品について、被告デザイナーが提供したデザインに基づいて被告雑貨製造販売会社が製造販売した被告商品「シャロン」「ザビーヌ」「ノワール」は原告作品を複製翻案したものである旨を主張して、著作権および著作者人格権侵害を理由とする被告商品の製造販売の差し止め、廃棄を求めるとともに、損害賠償金約3億1500万円の支払いを求めた事件。
裁判所は両商品の対応箇所の対比、検討を行い、相違点が認められるとして、被告商品は原告商品を有形的に再生したものでなく、また表現上の本質的特徴を直接感得できるものでもないとして、複製または翻案を認めず、原告の請求を棄却した。 |

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10月22日 GMOインターネットへの発信者情報開示請求事件 |
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東京地裁/判決・請求認容
創価学会が著作権を有する動画が無断で「ニコニコ動画」にアップロードされ、著作権を侵害されたとして、創価学会が、アップロードユーザーが利用した電気通信事業会社(ISP)のGMOインターネットに対して、そのユーザーの氏名・住所、メールアドレスを開示するよう求めた事件。アップロードされたのは、「すばらしきわが人生 Part2」と題するビデオテープ作品の一部で、タレントの久本雅美さんが出演している部分2分6秒。
裁判所はまず原告動画の著作物性を検討し、映画の著作物に該当すると判断、次に原告が著作権を有していること、更にアップロードされた動画が原告動画の著作権を侵害していることを認めて、プロバイダ責任制限法に元づき、被告に発信者の氏名・住所・メールアドレスを開示するよう命じた。 |

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10月25日 KDDIへの発信者情報開示請求事件B |
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東京地裁/判決・請求認容
上記10月22日と同じ動画の発信者情報開示請求事件で、著作権者、創価学会による電気通信事業会社(ISP)のKDDIに対するもの。裁判所は被告に発信者情報を開示するよう命じた。 |

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10月25日 KDDIへの発信者情報開示請求事件C |
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東京地裁/判決・請求認容
上記10月22日と同じ動画の発信者情報開示請求事件で、動画製作者、シナノ企画(著作者人格権に基づく)による電気通信事業会社(ISP)のKDDIに対するもの。裁判所は被告に発信者情報を開示するよう命じた。 |

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10月30日 “自炊”代行事件C |
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東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
小説家・漫画家・漫画原作者である原告ら7人が、自炊代行業者である被告会社4社に対して、電子的方法による複製の差し止めと、各原告への損害賠償金各21万円の支払いを求めた事件。前月には同種の訴訟で東京地裁の違う裁判長が、2社に対して差し止めと140万円の支払いを命じている。
この裁判でも裁判所は、被告会社の著作権侵害を認めて、複製行為の差し止めと、各被告から各原告へのそれぞれ10万円計280万円の賠償金支払いを命じた。 |

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10月30日 「チャングムの誓い」小道具事件(2) |
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知財高裁/判決・控訴棄却
韓国の放送局に小道具等を供給している会社から小道具等の著作権の譲渡を受けたと主張する韓国企業(原告)が、NHKら(被告)が韓国テレビドラマ「宮廷女官チャングムの誓い」の展覧会を開催して小道具や衣装等を展示し、関連グッズを販売したのは、原告の著作権を侵害したものであるとして、被告らに対して1億円の損害賠償金を求めた事件。一審東京地裁は、小道具等に著作物性があったとして、著作権の移転では第三者との関係で登録による対抗要件具備が必要であるところ、原告は登録を経ていないことから、登録を経ることなく対抗できる「背信的悪意者」に被告らが当たるかどうかを検討した。そして被告らは「背信的悪意者」に当たらないから、登録のない原告の請求は容れられないとして、請求を棄却したが、原告が控訴した。
知財高裁でも、被告らが「背信的悪意者」に当たるかどうかが争点となったが、裁判所は一審の判断を維持し、控訴を棄却した。 |

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10月30日 名簿管理ソフトの著作権侵害事件(2) |
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知財高裁/判決・控訴棄却
業務管理に関するプログラムを構築したプログラマー(原告)が、制作を委託した公益法人(被告)に対して、プログラム1において使用許諾料190万円を、プログラム2において開発委託料960万円を請求した事件。一審東京地裁は1については法人の職務著作であるから使用許諾料は請求の理由がないとして、また2については契約の成立も法人の不当利得も認められないとして、原告の請求を却下したが、原告が1の使用許諾料の請求に変更を加えるなどして控訴した。
知財高裁は、1に関しては支払いは済んでいると判断すると同時に著作物性を否定し、2についても原審の判断を維持して控訴を棄却した。 |

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