裁判の記録 line
line
2013年
(平成25年)
[7月〜12月]
line

 
line
7月2日 不動産物件情報プログラムの複製権侵害事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 プログラムの著作物の著作権を有すると主張するウェブサイト製作会社(一審原告)が、不動産会社(一審被告)に対し、複製権侵害等に基づき、原告が被った損害の一部280万円の賠償を求めた事件の控訴審。一審東京地裁は被告による複製権侵害を認めず原告の請求を棄却したが、原告側が控訴した。
 二審知財高裁も、原判決の認定判断を支持すると述べて、控訴を棄却した。
判例全文
line
7月2日 ワイナリー案内看板の著作物性事件B
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 先行する6月5日東京地裁判決の事件と同じ原告被告による、それとは看板の所在地が異なる2件を対象とした事件。被告であるワイン製造販売会社と契約して被告の経営するワイナリーの案内看板を制作設置していた広告看板制作会社(原告)が、被告がのちに別会社に依頼して制作させた同様の案内看板に使われた図柄は、自らが持つ当初の看板及びその図柄の著作権を侵害するものだ等として、損害賠償金605万円余を請求した事件。
 裁判所は、先行判決同様、看板図柄の著作物性を否定し、特に本件では美術の著作物性にも言及して、本件図柄及び看板は応用美術の領域に属するものであって、純粋美術と同視し得るものであると認めることは困難であると述べ、原告の請求を棄却した。
判例全文
line
7月16日 大学パンフレットのイラスト事件
   大阪地裁/判決・請求棄却
 岡山県(被告)は「新おかやま国際化推進プラン」のためのパンフレットの制作印刷を印刷会社に依頼、印刷会社は写真貸与販売会社(原告)の許諾を得てその管理するイラストレーター(原告)のイラストを表紙に使用し、パンフレットを制作した。国際化推進のための施策のひとつであった「公設国際貢献大学校に対する連携支援」のため、岡山県はパンフレット表紙画像を大学校のウェブページに掲載することを大学校運営機構(被告)に許諾し、大学校はそれを掲載した。このウェブページ掲載行為が、主位的には原告会社の有するイラストの著作権を侵害するものであり、原告イラストレーターの著作者人格権を侵害するものである、また予備的にはイラストレーターの著作権および著作者人格権を侵害するものであるとして、原告らが被告らに666万円の損害賠償金支払いを求めた事件。
 裁判所は原告会社に著作権を認めず、またイラストのパンフレット表紙への利用許諾対価のほかに、イラスト二次使用料が別途払われていることから、本件掲載行為を許諾の範囲内であると判断、更にイラストの改変も許諾の範囲内と判断して著作者人格権侵害も認めず、原告らの請求を棄却した。
判例全文
line
7月16日 人気漫画家の“似顔絵”無断掲載事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 漫画家が、その作品を購入した個人に特典として昭和天皇および今上天皇の似顔絵を描き提供したところ、受け取った個人が無断で画像投稿サイトに投稿した。この行為は漫画家の著作権を侵害するもの、また投稿の仕方が漫画家の著作者人格権を侵害するもの、更にその削除を求めた漫画家からあたかも殺害予告を受けたかのごとくにツイッターのサイトに投稿したことは名誉毀損に該当するものであるとして、漫画家がこの個人に対して400万円の損害賠償金を求めた事件。
 裁判所は被告の著作権侵害を認め、また原告が一定の政治的立場に立っていると受け取らせる文章の投稿は著作者人格権を侵害するものとみなされると判断、更に殺人予告を受けたかに思わせる投稿は原告の名誉を毀損する行為であると認め、被告に対し、合計50万円の賠償金支払いを命じた。
判例全文
line
7月18日 “自動車部品の表”著作物性事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 プラスチック自動車部品についての書籍の著者である原告が、同じく自動車用のプラスチック部品についての書籍を刊行した著者と発行元会社、発売元出版社(被告ら)に対して、被告書籍は原告書籍に掲載された14個の表の著作権および著作者人格権を侵害している等と主張して、合計334万円の賠償金支払いと、被告書籍の複製等差し止め、指定告知文の掲載を求めた事件。
 裁判所は図表の著作物性を検討し、アイデアの独創性を主張するものに過ぎないか又は平凡かつありふれたものであるとして、著作物性を否定、原告の請求を棄却した。
判例全文
line
7月18日 TVテロップの“フォント”事件
   大阪地裁/判決・請求棄却(控訴)
 フォントベンダーである原告が、テレビ放送等で使用することを目的としたディスプレイフォントを製作して、番組等に使用するには個別の番組ごとの使用許諾および使用料の支払いが必要である旨を示して、これを販売していたところ、使用許諾していないのにこのフォントをテロップ上に使用した番組を多数制作・配給・放送し、更にその内容を収録したDVDを販売されたとして、それらを行ったテレビ朝日並びに映像制作会社に対して、主位的には不法行為に基づき804万円余と729万円余を、予備的には不当利得の返還として原告の定めた使用料相当額731万円余と663万円余の支払いを求めた事件。
 裁判所は、本件タイプフェイスを排他的に保護すべきものと認めず、被告らによる営業上の利益の侵害を否定、DVDに関する不法行為も、被告らの不当利得も成立しないとして、原告の請求を棄却した。
判例全文
line
7月19日 「Forever21」ファッションショー事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 イベント企画制作会社と運営業者(原告ら)は「Forever21」の衣装等を使用したファッションショーを開催したが、NHKが服飾広告代理店を介してそのショーの映像の提供を受け、テレビ番組においてその一部を放送した。原告らはNHKとこの代理店に対して、原告会社の著作権(公衆送信権)と著作隣接権(放送権)を、また原告業者の著作者人格権と実演家人格権を侵害したとして、NHKに943万円余、代理店に110万円の賠償金支払いを請求した事件。
 原告らはファッションショーを構成する要素のうち、(1)個々のモデルに施された化粧や髪形のスタイリング、(2)着用する衣服の選択及びコーディネイト、(3)装着させるアクセサリーの選択及びコーディネイト、(4)舞台上の位置で決めるポーズの振り付け、(5)舞台上の位置での衣服の着脱の振り付け、(6)化粧、衣服、アクセサリー、ポーズおよび動作のコーディネイト、(7)モデルの出演順序及び背景に流される映像、の著作権が侵害されたと主張したが、裁判所は、(1)はいずれも一般的である、(2)、(3)は選択及び組み合わせに特徴的な点はない、(4)、(5)は動作として特段目新しいものではない、(6)は(1)から(5)の要素の組み合わせにより新たな印象が生み出されているとは言えない、(7)は便宜的要素によるものであり具体的内容を看取することが困難である、等として、本件映像部分に表れた点に著作物性は認められないとして、侵害を否定、原告らの請求を棄却した。
判例全文
line
7月19日 エンジンの写真無断流用事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 職業写真家である原告は、以前、出版広告企画販売会社である補助参加人の依頼により、補助参加人の発行する書籍『HONDA CB750Four FILE.』に使用する目的でHONDA CB750Fourの4気筒エンジンを被写体とした写真を多数撮影し、うち1枚を当書籍に掲載した。このとき撮影した他の写真を原告の承諾なしに、出版販売輸出会社である被告が「週刊ホンダCB750FOUR」シリーズ創刊号に掲載し、ウェブページにも掲載したが、原告は、これを著作権および著作者人格権の侵害であるとして、被告に対し、損害賠償金790万円の支払い、本件写真の複製、公衆送信、改変の禁止、本件書籍の出版、販売、頒布の禁止、本件写真のウェブページからの削除と本件書籍の廃棄を求めた。
 被告は、撮影が補助参加人の指示・決定による撮影であること、補助参加人を法人著作者とする職務著作であること、補助参加人に原告の著作権が譲渡されたこと、原告撮影の写真の改変を補助参加人に許諾する包括許諾の合意があったことなどを主張したが、裁判所はそのすべてを否定し、被告による著作権、著作者人格権侵害を認めた。そして被告に対し、59万円余の賠償金支払い、本件写真の複製、公衆送信、改変の禁止、本件書籍の出版、販売、頒布の禁止、本件写真のウェブページからの削除と本件書籍の廃棄を命じた。
判例全文
line
8月28日 商標“ほっとレモン”審決取消事件(2)
   知財高裁/判決・請求棄却
 カルピス株式会社が平成23年6月に第32類「レモンを加味した清涼飲料、レモンを加味した果実飲料」を指定商品として商標登録を受けた「ほっとレモン」が、複数同業他社の登録異議申し立てにより、24年9月に商標登録を取り消す旨の決定を受けた。カルピスはその決定の取消を求めて知財高裁に提訴した。
 知財高裁は、「品名は温かいレモン風味の飲料を意味し、通常の工夫の範囲を超える商標とは言えない」と指摘し、また調査会社のアンケートでメーカー名を認識していた回答者が少なかった点を挙げて、商標がカルピスの商品として定着しているとは言えないとして、カルピス側の請求を棄却した。
判例全文
line
8月29日 DVD「四季の山野草と高山植物」事件
   東京地裁/判決・本訴請求一部認容、一部棄却、一部却下、反訴請求一部認容、一部棄却(控訴)
 本訴において、フリーカメラマン(原告)が、デジタルコンテンツ製作販売会社(被告)に対して、被告がその販売するDVD商品「virtual trip 花 Flowers四季の山野草と高山植物」に原告に無断で原告の撮影した風景動画を複製頒布したとして、映像の削除と損害賠償金225万円の支払いを求め、反訴において、被告が、原告が製作委嘱契約に違反して同一機会に撮影した映像を第三者に販売したことを理由に当契約を解除したとして、契約に基づき被告がこれらの映像の著作権を有することの確認と、これらを収録した素材の引渡し、既払金153万円余の返還を求めた事件。
 裁判所は、本訴に関して、映像削除請求は不適法として退け、風景動画映像の収録は著作権侵害と認めて被告に23万円余の支払いを命じた。反訴に関しては、原告が第三者に販売した動画映像の著作権を被告が有することを認め、これら素材の被告への引き渡しと既払金153万円余の返還を原告に命じた。
判例全文
line
8月29日 性格心理テストの出版販売契約事件(2)
   大阪高裁/判決・控訴棄却
 二人の著者が共同著作権者として、性格心理テスト検査用紙を、実験心理学機器製作販売会社Aから出版販売しており、Aとの間に出版契約を結んでいた。二人とも故人となり、一方の著作権はB、D等が継承、他方の著作権はCが継承した。当該出版契約更新期に当たり、Dが契約更新拒絶を通告し、Aが提訴した事件。甲事件は、原告Aが、A、B、CらとDとの間で出版契約が存続していることの確認を求めたもの。乙事件は,DらがAに対し、出版販売の停止と損害賠償金の支払いを求めたもの。一審大阪地裁は甲事件に関し、Dの更新拒絶は有効なものでなくAの請求には理由があるとして一部認容し、乙事件に関しては、請求は出版契約が終了したことを前提とするものだから、いずれも理由がないとして棄却した。被告Dらが控訴した。
 大阪高裁は原審の判断を維持して、控訴を棄却した。
判例全文
line
8月30日 “意見書”の概要事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 福島県会津若松市背あぶり山周辺での風力発電施設「会津若松ウインドファーム(仮称)」建設に関して、被告風力発電専門会社が県に提出した環境影響評価書の中に、原告環境保護NPO法人が提出した意見書の内容を表現を改変して掲載したのは著作権および著作者人格権侵害であるとして、原告が福島県と被告会社に評価書の回収と200万円余の損賠賠償金支払いを求めた事件。
 裁判所は、意見書の著作物性は認めたが、その著作者は個々の自然人であって原告ではないとし、また仮に原告が作成者であったとしても、評価書に意見書の「概要」を記載することは義務付けられていると同時に、逆に意見を述べた者の氏名を表示することは義務付けられていないとして、著作権および著作者人格権の侵害を認めず、原告の請求を棄却した。
判例全文
line
9月6日 庭園デザインの著作権侵害事件
   大阪地裁/決定・申立却下
 JR大阪駅北側にある複合施設「新梅田シティ」の庭園で設置工事が進められている、建築家・安藤忠雄さんの発案による緑化壁をめぐって、庭園を設計した造園家・吉村元男さんが、自分の思想を表現した創作物である庭園の著作権を侵害するとして、施工主の積水ハウスに対して、工事の中止を求める仮処分を大阪地裁に申し立てた事件。
 裁判所はまず、設計者の思想・感情が表現されたものとして本庭園を著作物と認定、吉村さんを著作者と判断し、緑化壁の設置を著作者の意に反した改変と認定した。その上で、本庭園は鑑賞のみを目的とするものでなく、むしろ実際に利用するものとしての側面が強いこと、また土地所有者の権利行使の自由との調整の観点から、所有権と著作権の調整規定である法20条2項二号(建築物の増改築等)を類推適用することができると判断し、著作者の同一性保持権を侵害するものではないとして、申し立てを却下した。
判例全文
line
9月9日 死刑囚支援団体事件
   東京地裁/判決・請求却下
 死刑廃止を目的として死刑囚たちにより結成された団体「麦の会」の元メンバーであった原告Aが、会の事務局代表である被告Bと運営委員である被告Cに対し、「麦の会」の名称や規約等の改変が原告の著作権を侵害するとして、各10万円の支払いと会の活動停止を求めた事件。
 裁判所は前訴判決から、原告は被告Bに対しては損害賠償請求権および差止請求権を有しないことが確定していると判断した。また被告Cは前訴の当事者でも継承人でもないが、本訴における原告の主張は前訴におけるものとほぼ同様であり、前訴の被告らと本訴の被告はいずれも会の関係者という点で共通していることから、本訴は実質的に前訴の蒸し返しというべきであり、本訴の提起は信義的に照らして許されないと解するのが相当であると判断した。被告Bに対する関係においても本訴の提起を同様に判断し、原告の訴えをいずれも却下した。
判例全文
line
9月10日 インタビュー談話の転載事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却、予備的請求棄却
 ドキュメンタリー映画製作者である原告男性が、被告もその著者の一人である書籍「いのちを語る」の被告執筆部分が、「A Man of Light(光の人)」と題する映画作品のある部分に係る原告の著作権を侵害しているとして、被告に対して出版の差し止めと賠償金110万円の支払い等を求めた事件の第二審。一審東京地裁は、原告がこの映画の著作者であり著作権者であることを認定した上で、被告記述部分の作成は原告の著作権を侵害するものではないとして、原告の請求を棄却したが、原告が控訴した。
 知財高裁も一審の判断を維持した上で、翻案権侵害および控訴審で追加された複製権侵害について、いずれも否定して、控訴を棄却し、予備的請求された著作権に基づかない人格的利益侵害による不法行為に基づく賠償請求も棄却した。
判例全文
line
9月12日 営業用資料の著作物性事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 ウェブサイトの入力フォームのアシスト機能に係るサービスの説明資料を作成した原告が、被告の作成したエントリーフォーム最適化システムの資料は原告の著作物の著作権および著作者人格権を侵害しているとして、被告資料の複製頒布の差し止めと廃棄、および損害金1680万円の支払いを求めた事件。
 裁判所はまず、訴状の送付を受けた被告がその時点で被告資料の使用を停止していることなどから、差し止めと廃棄の請求はその必要を認めなかったが、次に原告資料の著作物性を検討、これを認めた上で、原告資料と被告資料の比較から、被告資料は原告資料を複製・翻案し、原告の著作権を侵害したものと判断して、損害額を10万円と認定、被告に支払いを命じた。
判例全文
line
9月20日 POS情報開示システムの著作権帰属事件
   東京地裁/判決・本訴請求棄却、反訴請求認容
 本訴は、情報処理会社(原告)が、POSシステムである「宝箱システム」の著作権を有し、その後継システムである「トレジャーデータ」を共同開発して著作権を準共有しているとして、被告生活協同組合及び被告システム開発会社らが、原告の著作権行使を不可能にし、不当に契約の更新を拒絶している不法行為に対して、被告らに各5億円弱の賠償金支払いを求め、また被告組合が宝箱システムの著作権を有していないにもかかわらずライセンス料を払わせた不法行為に対して被告組合に1億円強の賠償金支払い等を求めたもの。反訴は被告組合が原告に対して3191万5000円の宝箱システムライセンス使用料を、被告会社が原告に対して3150万円のトレジャーデータシステムライセンス使用料を求めたもの。
 裁判所は著作権に関する原告の主張を認めず、原告の請求を棄却、被告の反訴はそれぞれ理由があると認めて請求を認容した。
判例全文
line
9月24日 ERPソフトウェアの著作権侵害事件
   東京地裁/判決・請求認容、中間確認請求却下(控訴)
 原告ソフトウェア制作会社が、被告ソフトウェア制作会社との間のパートナー契約において、被告から提供されたソフトウェア中のプログラムにつき、著作権上の瑕疵があるとして、被告に対し、債務不履行に基づき、損害金205万5千円の支払いを求め、これに対し被告が、中間確認の訴えとして、上記プログラムが他のプログラムの著作権を侵害しないことの確認を求めた事件。
 裁判所は、本件各プログラムが先行各プログラムを複製したものであると認定し、被告は本件契約において著作権上の瑕疵がない本件ソフト群を提供する義務を負っていたにもかかわらず、原告に対してこれを提供したのであるから、債務の本旨に従った履行をしていないと判断し、損害金206万5千円の支払いを被告に命じた。被告の中間確認の訴えは却下した。
判例全文
line
9月25日 弁護士 vs 行政書士 ブログ事件(2)
   知財高裁/判決・取消
 弁護士である一審原告が、行政書士である一審被告において、虚偽の記事を自己のブログに掲載して原告の営業上の利益を侵害しているとして、不正競争防止法に基づき記事掲載の禁止削除と744万円の賠償金支払いを求めた事件の控訴審。双方は行政書士のブログ記事をめぐって〈かなめくじウォーズ〉と名付けられた争いを繰り返しており、別件名誉毀損訴訟は結審している。一審東京地裁は原告の主張を認め、記事の一部削除と50万円の支払いを命じたが、一審被告が控訴した。
 知財高裁は一審の判決を取り消し、被控訴人の請求を棄却した。
判例全文
line
9月30日 “自炊”代行事件B
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 小説家・漫画家・漫画原作者である原告ら7人が、自炊代行業者である被告会社2社に対して、被告会社らは電子ファイル化の依頼のあった書籍について、権利者の許諾を受けることなくスキャナーで書籍を読み取って電子ファイルを作成し依頼者に納品しているから、注文を受けた、あるいはこれから受ける書籍には原告らが著作権を有する作品が含まれている可能性が高いとして、被告会社らに電子的方法による複製の差し止めと、各原告への損害賠償金各21万円の支払いを求めた事件。
 裁判所は、被告会社の、利用者の「私的複製」行為の手足となっていただけだという主張を退け、被告会社の著作権侵害を認めて、複製行為の差し止めと、各被告から各原告へのそれぞれ10万円の賠償金支払いを命じた。
判例全文
line
9月30日 “獄中画”展覧会事件(2)
   知財高裁/判決・変更
 刑務所に収容中の原告が、その制作になる絵画を被告に預けていたところ、被告が原告に断りなく、その1枚を被告主催の展示会に展示し、パンフレットに掲載し、原告の氏名を受刑者との記載とともに載せ、その絵画を紛失して返還しなかったことなどから、原告が被告に対して、著作権侵害、著作者人格権侵害、プライバシー権侵害等により、損害賠償金550万円を請求した事件。一審は著作権侵害、プライバシー権侵害等を認め、被告に26万9千円の賠償金支払いを命じたが、双方が控訴した。
 裁判所は、一審判決に加え、著作者人格権侵害(氏名表示権)も認めて賠償金額を31万9千円に変更したが、一審原告のその余の請求と、一審被告の控訴を棄却した。
判例全文
line
9月30日 “日航機墜落事故”ノンフィクションの表現類似事件(2)
   知財高裁/判決・控訴一部棄却、一部変更(上告)
 1985年の日航機墜落事故で夫を亡くし、手記『雪解けの尾根』を刊行した遺族が、同事故を題材にしたノンフィクション作家・門田隆将氏の著書『風にそよぐ墓標』に表現を盗用されたとして、氏と版元の集英社に対し、出版差し止めと賠償金518万円の支払いを求めた事件の控訴審。一審東京地裁は17か所に著作権侵害を認め、出版差し止めと書籍の廃棄、58万円余の損害賠償金支払いを命じたが、被告側が控訴した。
 知財高裁は審理の対象となった17か所のうち3か所は表現上の創作性がないと判断したが、それ以外の部分については、いずれも事実の記載であったり表現がありふれていて著作権侵害に当たらないとする一審被告側の反論を退け、複製または翻案を認めた。また原審同様、一審原告から明示または黙示の許諾を得ていたとする一審被告の主張も退け、損害賠償金を57万円余に変更して、控訴を棄却した。
判例全文
line
10月10日 劇画「子連れ狼」実写映画化事件
   東京地裁/判決・請求認容(控訴)
 アメリカ法人である映画製作会社(原告)が、ライセンスビジネス会社である被告に対し、原告が劇画「子連れ狼」原作の実写映画化権を取得したとして、その確認および、被告が、被告が本件原作の独占利用権を持ち実写映画と実写ドラマを製作する原告の行為は被告のその独占利用権を侵害する旨を告知したことは、不正競争行為に当たるとして、告知・流布の差し止めを求めた事件。
 裁判所は、原告は作画者の承諾を得ていないから実写映画化権を得ていないとする被告の主張等を退け、原告、原作者、原作者から原作の著作権譲渡を受けた会社、および最初に原作者から実写映画化権を取得した会社は、原作を実写映画化するための契約を締結したと認めた。また独占使用権を有するとする被告の主張を認め難いと判断して、原告が実写映画化権を有することの確認と、原告の行為が被告の独占的使用権を侵害する旨を告知・流布してはならない旨の差し止めを認めた。
判例全文
line
10月16日 ジャニーズタレントの写真無断掲載事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却(上告)
 ジャニーズ事務所所属のアイドルグループの写真を雑誌に無断で掲載されたとして、グループメンバーが版元のアールズ出版をパブリシティ権侵害で訴え、書籍の販売停止、廃棄と、賠償金合計約1億7000万円の支払いを求めた事件の控訴審。一審東京地裁はパブリシティ権の侵害を認め、出版社に書籍の販売停止、廃棄と、合計約5400万円の支払いを命じたが、被告が控訴した。
 知財高裁は、控訴人の主張――書籍には文章も掲載しており、写真それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品として利用したわけではない――を退け、一審の判断を支持して控訴を棄却した。
判例全文
line
10月18日 「週刊朝日」の受刑者への名誉毀損事件
   名古屋地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴・控訴棄却、確定)
 「週刊朝日」の記事で名誉を傷つけられたとして、殺人罪で懲役19年の判決が確定している受刑者が、発行元の朝日新聞出版に3千万円の損害賠償を求めた事件。問題とされたのは2008年9月発行の、「懲りない浮気癖」という記載を含む見出しの表現。
 裁判所は「浮気を繰り返していたと信じるに足りる理由は認められない」として、この一部表現に名誉毀損の成立を認め、朝日新聞出版に10万円の賠償金支払いを命じた。

line
10月18日 「ユニクロ帝国の光と影」名誉毀損事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴・控訴棄却、上告・上告棄却、確定)
 文藝春秋発行の週刊誌や単行本で名誉を傷つけられたとして、ユニクロを展開するファーストリテイリングが文藝春秋に2億2千万円の賠償などを求めた事件。問題となったのは2010年4月発行の「週刊文春」の「ユニクロ中国『秘密工場』に潜入した!」と題する記事と、11年3月に発行された単行本『ユニクロ帝国の光と影』で、ユニクロの中国工場の労働環境が劣悪だと指摘する内容。
 裁判所は、記事の内容は真実であるか、真実と信じた相当の理由があると判断して、原告の請求を退けた。

line
10月21日 類似キャラクター雑貨事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 原告雑貨製造販売会社が、原告作品「くろねこフェイスタオル」「ガーゼハンカチねことさかな」等5作品について、被告デザイナーが提供したデザインに基づいて被告雑貨製造販売会社が製造販売した被告商品「シャロン」「ザビーヌ」「ノワール」は原告作品を複製翻案したものである旨を主張して、著作権および著作者人格権侵害を理由とする被告商品の製造販売の差し止め、廃棄を求めるとともに、損害賠償金約3億1500万円の支払いを求めた事件。
 裁判所は両商品の対応箇所の対比、検討を行い、相違点が認められるとして、被告商品は原告商品を有形的に再生したものでなく、また表現上の本質的特徴を直接感得できるものでもないとして、複製または翻案を認めず、原告の請求を棄却した。
判例全文
line
10月22日 GMOインターネットへの発信者情報開示請求事件
   東京地裁/判決・請求認容
 創価学会が著作権を有する動画が無断で「ニコニコ動画」にアップロードされ、著作権を侵害されたとして、創価学会が、アップロードユーザーが利用した電気通信事業会社(ISP)のGMOインターネットに対して、そのユーザーの氏名・住所、メールアドレスを開示するよう求めた事件。アップロードされたのは、「すばらしきわが人生 Part2」と題するビデオテープ作品の一部で、タレントの久本雅美さんが出演している部分2分6秒。
 裁判所はまず原告動画の著作物性を検討し、映画の著作物に該当すると判断、次に原告が著作権を有していること、更にアップロードされた動画が原告動画の著作権を侵害していることを認めて、プロバイダ責任制限法に元づき、被告に発信者の氏名・住所・メールアドレスを開示するよう命じた。
判例全文
line
10月25日 KDDIへの発信者情報開示請求事件B
   東京地裁/判決・請求認容
 上記10月22日と同じ動画の発信者情報開示請求事件で、著作権者、創価学会による電気通信事業会社(ISP)のKDDIに対するもの。裁判所は被告に発信者情報を開示するよう命じた。
判例全文
line
10月25日 KDDIへの発信者情報開示請求事件C
   東京地裁/判決・請求認容
 上記10月22日と同じ動画の発信者情報開示請求事件で、動画製作者、シナノ企画(著作者人格権に基づく)による電気通信事業会社(ISP)のKDDIに対するもの。裁判所は被告に発信者情報を開示するよう命じた。
判例全文
line
10月30日 “自炊”代行事件C
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 小説家・漫画家・漫画原作者である原告ら7人が、自炊代行業者である被告会社4社に対して、電子的方法による複製の差し止めと、各原告への損害賠償金各21万円の支払いを求めた事件。前月には同種の訴訟で東京地裁の違う裁判長が、2社に対して差し止めと140万円の支払いを命じている。
 この裁判でも裁判所は、被告会社の著作権侵害を認めて、複製行為の差し止めと、各被告から各原告へのそれぞれ10万円計280万円の賠償金支払いを命じた。
判例全文
line
10月30日 「チャングムの誓い」小道具事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 韓国の放送局に小道具等を供給している会社から小道具等の著作権の譲渡を受けたと主張する韓国企業(原告)が、NHKら(被告)が韓国テレビドラマ「宮廷女官チャングムの誓い」の展覧会を開催して小道具や衣装等を展示し、関連グッズを販売したのは、原告の著作権を侵害したものであるとして、被告らに対して1億円の損害賠償金を求めた事件。一審東京地裁は、小道具等に著作物性があったとして、著作権の移転では第三者との関係で登録による対抗要件具備が必要であるところ、原告は登録を経ていないことから、登録を経ることなく対抗できる「背信的悪意者」に被告らが当たるかどうかを検討した。そして被告らは「背信的悪意者」に当たらないから、登録のない原告の請求は容れられないとして、請求を棄却したが、原告が控訴した。
 知財高裁でも、被告らが「背信的悪意者」に当たるかどうかが争点となったが、裁判所は一審の判断を維持し、控訴を棄却した。
判例全文
line
10月30日 名簿管理ソフトの著作権侵害事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 業務管理に関するプログラムを構築したプログラマー(原告)が、制作を委託した公益法人(被告)に対して、プログラム1において使用許諾料190万円を、プログラム2において開発委託料960万円を請求した事件。一審東京地裁は1については法人の職務著作であるから使用許諾料は請求の理由がないとして、また2については契約の成立も法人の不当利得も認められないとして、原告の請求を却下したが、原告が1の使用許諾料の請求に変更を加えるなどして控訴した。
 知財高裁は、1に関しては支払いは済んでいると判断すると同時に著作物性を否定し、2についても原審の判断を維持して控訴を棄却した。
判例全文
line
11月1日 JASRAC「包括利用許諾契約」事件(2)
   東京高裁/判決・取消(上告)
 楽曲の放送使用料を放送局から定額徴収するJASRACの「包括契約」は独占禁止法違反に当らないとした公正取引委員会の審決を不服として、新規参入業者のイーライセンスが審決の取り消しを求めて提訴した事件。
 第一審となる東京高裁は、JASRACの包括契約が業者の新規参入を妨げていると指摘し、公取委の審決を取り消した。公取委は上告する方針。
判例全文
line
11月7日 “聖経”著作権使用契約事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 原告・公益財団法人生長の家社会事業団が、被告・財団法人世界聖典普及協会に対し、(1)被告による谷口雅春氏の著作物のカセットテープ複製・販売について、主位的に、印税約2100万円の支払い、予備的に、著作権侵害に基づく頒布の差止めと廃棄および損害金2450万円の支払い、又は不当利得金2250万円の支払いを求め、(2)被告によるコンパクトディスクの販売について、表示が著作権使用契約に定められたものと異なるとして、その表示の削除を求めた事件。
 裁判所は、著作権が原告に譲渡されていることは認めたが、被告による本件カセットテープの複製・頒布は、印税相当額が許諾の条件に従い谷口氏の相続人に支払われており、原告の著作権を侵害せず、不当に利得したということはできないとし、本件CDの著作権表示についてのみ、著作物使用契約に違反すると判断して、表示の削除請求を認めた。
判例全文
line
11月14日 小説「狂人失格」モデル事件(2)
   大阪高裁/判決・控訴棄却(上告)
 作家の中村うさぎさんが書いた小説の登場人物のモデルとなった大阪在住の女性が、小説で名誉を傷つけられたとして、中村さんと発行元の太田出版に1000万円の損害賠償金支払いを求めた事件の控訴審。中村さんはインターネット上で著作活動をしているこの女性をモデルにした小説を季刊誌に連載し、「狂人失格」のタイトルで出版した。一審大阪地裁堺支部は女性のネット上の活動を知る人が読めば容易に登場人物をこの女性と同一視できるとして名誉毀損を認め、中村さんに100万円の支払いを命じたが、双方が控訴していた。
 大阪高裁は一審の判断を支持し、双方の控訴を棄却した。

line
11月14日 雑誌標章“HEART”侵害事件(2)
   知財高裁/判決・請求棄却
 「HEART」という題号の雑誌を刊行する原告出版社は「HEART」を一部分に含む商標を登録していた。この商標について、「HEART nursing」と題する雑誌を刊行しその名を商標登録していた被告出版社が、特許庁に商標登録取消審判請求を行い、特許庁はこれを認容して、当該商標を取消す審決をした。原告出版社がその審決の取消を求めて提訴した事件。
 第一審となる知財高裁は、当該商標とタイトル使用部分商標との類似性をめぐる審決の判断の可否などをめぐり、審決の判断に誤りはないとして、原告の請求を棄却した。
判例全文
line
11月14日 Google書籍電子化事件(米)
   米ニューヨーク連邦地裁/判決・請求棄却(控訴)
 米Googleによる図書館書籍の電子化をめぐる訴訟で、米ニューヨークの連邦地裁はGoogleの行為を合法とし、著作権侵害で訴えた作家側の主張を退けた。担当のチン判事は、公共図書館や大学図書館の蔵書をデジタル化し、インターネットによる検索を可能にしたサービスGoogle Booksはフェアユースに当ると判断した。作家側は控訴する見通し。

line
11月15日 オンデマンド印刷のデータ無断運用事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 発明関連書籍の著作者である原告は、デジタルコンテンツ書籍製造販売業者である被告会社の会員となり、契約に基づいて、複数の書籍を預託したが、被告会社が原告から預かったデータを用いて各書籍につき各100冊の複製物を第三者に提供して利益を得たにもかかわらず、その収益を原告に還元しなかったとして、原告が被告会社に対して収益還元金約160万円を要求した事件。
 裁判所は、原告はいつの時点で何冊を印刷し、何冊を流通に置き、何冊が販売されたかについて何ら主張を行っておらず、原告の了解のもとに流通に置かれた本と、そうでない本の総数の比較のしようもないとして、「無断データ運用」と結びつく事実を認め難いと判断、原告の請求を棄却した。
判例全文
line
11月20日 ジャズCD原盤製作契約事件
   東京地裁/判決・請求認容(控訴)
 ジャズ歌手(原告)の歌唱をレコード製作販売会社(被告)がレコーディングするに際して、レコーディング費用には原告が被告に支払った370万円を充てるという合意のもとに製作されたCDをめぐって、原告が被告に対し、(1)原告がこのCDについてのレコード製作者の権利を有することの確認、(2)本件マスターCDの引き渡し、(3)原告が立て替えた伴奏代金20万円の支払い、を求めた事件。
 裁判所は、「レコードに固定されている音を最初に固定した者」である「レコード製作者」とは、物理的な録音行為の従事者ではなく、自己の計算と責任において録音する者、通常は原盤制作時における費用の負担者がこれに該当すると言うべき、として、原告の主張を(1)(2)(3)とも認容した。
判例全文
line
11月22日 漫画「彼女の告白」映画化事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 漫画家である原告が、被告の製作・監督した映画「帰省」は、原告の漫画作品「彼女の告白」を原告の許諾なく映画化し上映したものであるとして、著作権および著作者人格権侵害に基づき、上映差し止めと電磁記録媒体の廃棄、損害賠償金118万円余の支払い、被告の運営するウェブページでの謝罪文掲載を求めた事件。
 裁判所は、本件映画は表現上の本質的特徴部分において本件漫画と同一であるとして、著作権および著作者人格権侵害を認め、差止・廃棄請求を認容、損害額合計64万円の支払いを被告に命じた。謝罪文掲載といった名誉回復措置は認めなかった。
判例全文
line
11月27日 システム開発ソフトの著作権料未払い事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 大学教授と設計製図用コンピュータソフトウエア製造販売会社(被告会社)が、DSPと称するプログラムについてソフトウエア使用許諾契約を締結して、その使用・複製・販売に関して大学教授に許諾料を支払う旨を約していたところ、大学教授は、被告会社がDSPを株式会社アトリスに使用許諾したとして、被告会社に許諾料の支払いを求める訴訟を提起したが、大学教授が死亡した。そこで相続人である遺族(原告ら)が大学教授の地位を継承して被告会社に使用許諾料2500万円余の支払いを求めた事件の控訴審。一審大阪地裁は、大学教授を含む関係者による合意書の成立を認め、合意成立後は大学教授の遺族である原告らも被告会社にその支払いを求めることはできなくなるとして、原告らの請求を棄却したが、原告らが控訴した。
 知財高裁は一審の判断を維持し、控訴を棄却した。
判例全文
line
11月28日 風俗記事の漫画化事件
   東京地裁/判決・本訴請求一部認容、一部棄却、
            反訴請求一部認容、一部棄却(控訴)
 フリーライターX(原告・反訴被告)がブログに掲載した風俗記事を元に、出版社Y1(被告・反訴原告)が編集プロダクションY2(被告・反訴原告)に依頼して漫画を作画した上で、Y1発行の雑誌に掲載した。Xはこれを著作権および著作者人格権の侵害だとして、Y1およびY2に損害賠償金131万円の連帯支払いと、Y1に謝罪広告の掲載を求め(本訴)、Y1およびY2は、Xがブログに記事を掲載したことが彼らの名誉を毀損したとして、Xに損害賠償金100万円を要求した(反訴)事件。
 裁判所は本訴に関して、記事と漫画を対比の上、一部について表現上の本質的特徴を直接感得できるとして、翻案権の侵害を認め、著作者人格権の侵害も認めて損害額6万6000円の支払いをY1およびY2に命じ、謝罪広告の掲載は認めなかった。反訴に関しては、XのY1に対する名誉毀損行為を認め、40万円の賠償金支払いを命じた。
判例全文
line
11月29日 教育事業者雑誌模倣事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 教育出版物の発行などを手がける原告会社が、同業の被告会社と、原告会社から被告会社へ転職した被告人に対して、(1)被告らに背信的引き抜き行為があったとして7137万円余の損害賠償金支払いと原告等に対する接触等の禁止を、(2)被告会社の発行する簿記検定試験受験誌は原告発行の簿記検定試験受験誌が切り離し式暗記カードをつけていることを模倣しているから編集著作物の侵害であるとして、458万円余の損害賠償金支払いと出版販売の差し止めを求めた事件。
 裁判所は、違法な引き抜き行為があったとは認められないとして(1)の請求を、また原告雑誌の編集著作物性ないし編集著作物侵害を否定して(2)の請求を、ともに棄却した。
判例全文
line
11月29日 ソーシャルゲーム「プロ野球ドリームナイン」侵害事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 「プロ野球ドリームナイン」というゲームをSNS上で提供配信している原告会社が、主位的に、被告会社の提供配信するゲームは原告の有する原告ゲームの著作権(複製権、翻案権、公衆送信権〉を侵害し、また被告ゲームの映像や構成等は不正競争に該当するとして、被告に対し配信の差し止め及び損害賠償金約5855万円余の支払いを求め、予備的に不法行為に基づく損害賠償金1716万円余の支払いを求めた事件。
 裁判所は両ゲームを比較検討し、被告ゲームによる著作権侵害を否定、不正競争にも当たらず、不法行為にも該当しないとして原告の主張を退け、請求を棄却した。
判例全文
line
12月11日 人気漫画家の“似顔絵”無断掲載事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 漫画家が、その作品を購入した個人に特典として昭和天皇および今上天皇の似顔絵を描き提供したところ、受け取った個人が無断で画像投稿サイトに投稿。この行為は漫画家の著作権を侵害、また投稿の仕方は漫画家の著作者人格権を侵害、更にその削除を求めた漫画家からあたかも殺害予告を受けたかのごとくにツイッターのサイトに投稿したことは名誉毀損に該当するとして、漫画家がこの個人に対して400万円の損害賠償金を求めた事件の控訴審。一審東京地裁は被告の著作権侵害を認め、また原告が一定の政治的立場に立っていると受け取らせる文章の投稿は著作者人格権を侵害するものとみなされると判断、更に殺人予告を受けたかに思わせる投稿は原告の名誉を毀損する行為であると認め、被告に対し、合計50万円の賠償金支払いを命じたが、被告が控訴した。
 知財高裁は一審の判断を全面的に維持して控訴を棄却した。
判例全文
line
12月11日 データベースソフトの著作権確認事件B
   東京地裁/判決・請求却下(控訴)
 前訴(一審2008年7月22日大阪地裁判決、二審2011年3月15日知財高裁判決)において、「中国塗料」から子会社「信友」に出向の際に、中国塗料専務から「船舶情報管理システム」の作成を命じられ、その後、子会社「中国塗料技研」の社長に就任して後も、同システムの開発の続行を命じられて、船舶塗料に関するデータベース、新造船受注システム、塗装仕様発行システム等を含む「船舶情報管理システム」を作成した中国塗料元従業員が、中国塗料に対して、このプログラム著作権が自分に属することの確認、及びこのシステムに対する自分の寄与分割合の確定を求めて、提訴した。この訴えは1審で請求を棄却・却下され、2審も同様であったが、本訴において元従業員は、子会社の「信友」および「中国塗料技研」をも被告に加えて、同様の著作権確認の訴えを起こした。
 東京地裁は訴訟物の特定、前訴確定判決の既判断力、前訴からの被告と追加された被告に対する訴えの適法性、について検討し、本訴は実質的には前訴の蒸し返しであるとして、却下した。
判例全文
line
12月12日 郵便不正記事の名誉毀損事件(3)
   最高裁(二小)/決定・上告棄却(確定)
 郵便制度悪用事件の報道で名誉を傷つけられたとして、牧義夫前衆議院議員が朝日新聞社に1650万円の損害賠償等を求めた事件で、最高裁第2小法廷は双方の上告を棄却する決定をした。記事は2009年4月の、郵便局で発送を断られた自称障害者団体のダイレクトメールが、牧前議員の秘書が日本郵便を訪問した後、発送が認められたなどと報じたもの。名誉毀損を認めて同社に110万円の支払いを命じた一審二審の判決が確定した。

line
12月13日 宗教法人の祈願経文事件
   東京地裁/判決・本訴請求一部認容、一部棄却、反訴請求棄却
 宗教法人・幸福の科学(原告)が、かつて原告の職員であり信者であったが除名処分を受けた被告A、およびかつて信者であり除名処分を受けた被告BとCに対して、(1)祈願経文の所有権に基づきAにその返還を、(2)同経文の著作権に基づきBにその口述の差し止め、Aに複製頒布の差し止めと複製物の廃棄を、(3)共謀して法具や袈裟を使用し祈願模倣行為をおこなったこと等の不法行為に基づき被告らに3300万円の損害賠償金支払いを求めた事件(本訴)。被告らは、本訴事件は原告が被告らに対する報復のために提起したもので、被告らに対する不法行為を構成するとして、各1000万円の支払いを求めた(反訴)。
 裁判所は、本件経文の著作物性は認めたが、返還要求、口述の差し止め要求、および複製頒布の差し止めと複製物の廃棄要求を認めず、本件法具等の占有についてのみ、被告BとCに所有権侵害の共同不法行為を認めて、連帯して7万円の支払いを命じた。反訴はその請求を棄却した。
判例全文
line
12月17日 ワイナリー案内看板の著作物性事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 被告であるワイン製造販売会社と契約して被告の経営するワイナリーの案内看板を制作設置していた広告看板製作会社(原告)が、被告がのちに別会社に依頼して制作させた同様の案内看板に使われた図柄は、自らが持つ当初の看板の図柄の著作権を侵害するものだとして、損害賠償金200万円を請求した事件の控訴審。25年6月5日判決の一審東京地裁は、描かれたワイングラスの描き方も文字の配置もありふれたものであって、作成者の個性の表出は感じられないとして著作物性を否定し、請求を棄却したが、原告側が控訴した。
 知財高裁は一審の判決を維持し、控訴人追加主張の絵柄の美術性も、不法行為責任も認められないとして、控訴を棄却した。
判例全文
line
12月20日 オークションカタログ事件B
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 美術の著作権者やその権利継承者を会員として、彼らの著作権を管理しているフランスの法人であるグラフィックアート及び造形芸術作家協会(原告協会)と、原告X1を代表者とする亡美術家Pの著作権継承者たちが、株式会社毎日オークション(被告)が同名のオークションのために作成したカタログに、原告らの許諾を得ることなく会員作品及びPの作品を掲載したのは著作権侵害であるとして、原告協会に8650万円、原告X1に850万円の賠償金支払いを求めた事件。
 裁判は、原告X1の当事者適格性、原告協会への著作権移転の有無、被告の複製権侵害の態様と原告らの損害額、利用許諾の有無、本件カタログが展示に伴う小冊子に当るか、本件カタログに美術作品を複製したことが適法引用に当るか、原告らの請求が権利濫用に当るか、をめぐって争われた。裁判所は、X1は当事者適格性を有する、会員から原告協会へ著作権の移転が認められる、被告による複製権侵害が認められ、原告協会に対し4094万円余、原告X1に対し441万円余を求める理由があると判断した。本件カタログは展示に伴う小冊子に当たらないとし、また適法引用、権利の濫用も認めなかった。
判例全文
line
12月25日 “「グリコ・森永事件」真犯人報道”の名誉棄損事件(2)
   東京高裁/判決・控訴棄却
 小説家の黒川博行氏らが、グリコ・森永事件を題材にした「週刊現代」の記事で犯人扱いされたとして、発行元の講談社と記事を執筆したジャーナリストに対し、損害賠償金4950万円などを請求した事件の控訴審。問題となったのは「かい人21面相は生きている グリコ森永事件27年目の真実」と題されて2010年12月から翌年11月まで20回にわたって連載された記事。一審は名誉毀損などを認めて講談社側に583万円の賠償金支払いを命じたが、講談社側が控訴した。
 裁判所は一審東京地裁の判決を維持して控訴を棄却した。

line
12月25日 エンジンの写真無断流用事件(2)
   知財高裁/判決・変更
 職業写真家である一審原告は、以前、出版広告企画販売会社である補助参加人の依頼により、補助参加人の発行する書籍『HONDA CB 750 Four FILE.』に使用する目的でHONDA CB 750 Fourの4気筒エンジンを被写体とした写真を多数撮影し、うち1枚を当書籍に掲載した。このとき撮影した他の写真を、出版販売輸出会社である一審被告が一審原告の承諾なしに「週刊ホンダCB 750 FOUR」シリーズ創刊号に掲載し、ウェブページにも掲載したが、一審原告は、これを著作権および著作者人格権の侵害であるとして、一審被告に対し、損害賠償金790万円の支払い、本件写真の複製、公衆送信、改変の禁止、本件書籍の出版、販売、頒布の禁止、本件写真のウェブページからの削除と本件書籍の廃棄を求めた。東京地裁は、一審被告による著作権、著作者人格権侵害を認め、59万円余の賠償金支払い、本件写真の複製、公衆送信、改変の禁止、本件書籍の出版、販売、頒布の禁止、本件写真のウェブページからの削除と本件書籍の廃棄を命じたが、双方が控訴した。
 知財高裁は一審被告の控訴に基づき、一審被告の著作権侵害を否定、著作者人格権(氏名表示権)侵害のみを認めて原判決の賠償金部分を11万円に変更した。また本件書籍の出版の禁止以下の一審判決を、写真に一審原告の氏名を表示しない限りとの条件をつける形に変更した。一審原告の請求は棄却した。
判例全文
line
12月25日 パチンコ・スロット用プログラムの著作権侵害事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 遊技場向け電子制御機器製造販売会社(原告)が、同業の被告会社と原告の従業員であった被告甲、被告乙、被告丙に対して、被告会社の製品は、原告の営業秘密であるパチンコ・スロット用の呼出ランプを開発製造するための技術情報を甲乙丙らが原告の許可なく持ち出し、それを使用して開発されたものであるとして、著作権侵害等により、被告会社製品の製造販売の差し止め、記憶媒体の廃棄等と、被告らに損害賠償金合計2億円の支払い等を要求した事件。
 裁判所は、原告の技術情報を営業秘密と認めず、被告らが原告技術情報を不正に取得したと認めず、被告らの著作権侵害を否定して、原告の請求を棄却した。
判例全文
line


 

日本ユニ著作権センター TOPページへ