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【事件名】オンデマンド印刷のデータ無断運用事件
【年月日】平成25年11月15日
 東京地裁 平成24年(ワ)第9900号 損害賠償請求事件
 (口頭弁論終結日 平成25年10月16日)

判決
原告 X
同訴訟代理人弁護士 浦川道太郎
同 外山太士
被告 株式会社デジタルパブリッシングサービス
同訴訟代理人弁護士 小野孝明


主文
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
1 被告は、原告に対し、161万9356円及びこれに対する平成24年7月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 仮執行宣言
第2 事案の概要
1 前提事実(証拠等を掲げていない事実は当事者間に争いがない。なお、書証の枝番号は特に記載しない限り省略する。)
(1) 当事者
 原告は、「X1」の名称を使用して、発明関連書籍の著作を行っている(以下、X1が名宛人になっているものについても、原告を指すものとして扱う。)。
 被告は、デジタルコンテンツデータに基づく書籍等の製造・販売等を業とする株式会社である。
(2) 原被告間の出版会員契約の締結
 原告と被告は、平成13年7月11日に、「デジタルパブリッシングサービス出版社会員規約」に係る契約(以下「本件契約」という。)を締結し、原告は被告の会員となった。
 本件契約の「第3章 データ管理サービス」には、第11条(データ登録)として、「当社は、データ登録として、前条に基づき会員から提供されたコンテンツデータを、当社所定の手続に従い、自らの費用と責任でコンテンツデータベースに複製します。」と規定されている。
 また、「第4章 データ運用サービス」には、第15条(データ運用)として、「会員が預託しデータ登録されたコンテンツデータに関し、当社は、本規約に従いオンデマンド出版及び電子書籍により第三者にその複製物を提供することでデータ運用を行うものとします。」「2.当社は、自らの責任と費用において、第16条に定める範囲内に限り、オンデマンド出版のための在庫を持つことができるものとします。」と規定されている。また、本件契約の第17条(運用収益の還元)には、「当社は、当社が受領したデータ運用の対価に所定の料率を乗じた金員を、データ運用の収益還元として会員に支払うものとします。」と規定されている。
 本件契約の「第6章 複製物製作サービス」中の第26条(複製物製作の委託)には、「会員は、当社に対し、会員が預託しデータ登録されたコンテンツデータについてオンデマンド出版及び電子書籍による複製物(以下「委託複製物」といいます)の製作を委託することができます。…」と規定されている。
〔甲1の1〕
(3) 被告の行う個別の印刷物製作請負
 被告は、本件契約に基づく出版のほか、印刷の対象となる原稿と印刷部数を特定した上で個別の印刷の申込みがされ、これに対して被告が承諾をした場合に成立する個別の印刷物製作請負契約に基づく印刷を「ショートラン印刷」と称して行っており、これは上記本件契約に基づくオンデマンド出版とは区別されている。
 ショートラン印刷に適用される規約等は存在しない。〔甲17の1、弁論の全趣旨〕
(4) 原告の調停申立て
 原告は、被告を相手方として、東京簡易裁判所に民事調停(平成23年(ノ)第50582号)を申し立てたが、平成24年3月22日に調停不成立となり、本件訴訟を提起した。〔弁論の全趣旨〕
2 本件は、本件契約によって被告の会員となった原告が、本件契約の第17条によれば、被告は原告から預託を受けたデジタルコンテンツデータを運用した場合、データ運用の対価に所定の料率を乗じた金員(以下「収益還元金」という。)を原告に支払うべき収益還元義務を負うところ、原告は、被告に対し、本件契約に基づき、平成21年3月末頃までに、別紙書籍目録記載の各書籍(以下「本件各書籍」といい、同目録記載の番号に従って順に「本件書籍1」などという。)を預託したが、被告は、平成22年初め頃から平成23年10月頃までの間に、原告から預かったデータを用いて本件各書籍につき各100冊の複製物を第三者に提供するなどして運用し、対価を得ているにもかかわらず、その収益を原告に還元していないと主張して、本件契約が定める収益還元義務の履行請求として、別紙書籍目録末尾収益還元料金計算結果記載の収益還元金191万3600円の内金161万9356円及び平成24年7月7日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
3 争点
(1) 被告による本件各書籍のデータの無断運用の有無
(2) 収益還元金発生の有無及びその額
第3 当事者の主張
1 争点(1)(被告による本件各書籍のデータの無断運用の有無)について
〔原告の主張〕
(1) 本件契約において被告がデータ運用をした場合にはその対価の収益を原告に還元すべきこととされているところ、そのデータ運用は、本件契約の第15条において、「第三者にその複製物を提供すること」と定義されている。
 原告は被告に対し、平成21年3月末頃までに、本件契約に基づき、本件各書籍を預託し、被告はこれを製版データ化して保有していた。
(2) ところが、被告は、平成22年初め頃から平成23年10月頃までの間に、原告に収益を還元することなく、原告から預かったデータを用いて本件各書籍につき、各100冊の複製物を第三者に提供することにより対価を得た。
(3) 上記(2)の事実は、平成22年1月以降、被告から、本件各書籍のいずれについても、その複製を作成して第三者に提供したとの報告を受けていないのにもかかわらず、以下の事実が認められることから推認されるものである。
ア 日本出版販売株式会社(以下「日販」という。)からの返品
 平成22年8月2日、書籍取次業者である日販から書籍の返品がされた。在庫管理の関係からスペース確保のため在庫本については順次返品がされるところから、それと近い時期に納品がされたものと推認されるところ、原告はその頃、被告に対し返品依頼に係る書籍の印刷を依頼していないから、被告による原告に無断でのデータ運用がされたものである。
イ 株式会社ブックライナー(以下「ブックライナー」という。)在庫更新契約解約後の在庫増加
(ア) ブックライナーから原告に対して送付された平成23年(2011年)7月5日付け「在庫商品についてのお願い」と題する書面(甲25)において、書籍取次業者であるブックライナー所有の在庫が平成19年当時より増えていた。
(イ) 同様に、ブックライナーから原告に対して送付された平成23年(2011年)10月付け「ブックライナー『基本在庫更新』及び『基本在庫商品の追加出品』のお願い」と題する書面(甲28の1)の中で、ブックライナー所有の在庫が同年7月5日送付文書に比べさらに増えていた。
(ウ) ネット書店における書籍在庫の存在
 原告が、平成23年7月、株式会社トーハン(以下「トーハン」という。)系列のインターネット書店の在庫をインターネット検索(甲12〜15)によって確認したところ、在庫が存在することが判明した。そこにおいて、短期間で発送可能と表示されているものは、当該書店が在庫を保有しているものと解される。
(エ) 被告が、本件各書籍につき、最低でも各100冊の複製物を第三者に提供し対価を得たことは、被告から原告に対する平成22年(2010年)8月24日付けファクシミリ文書(甲7)などの原告とのやり取りの中で被告も暗に認めているものである。
(4) 被告提出の記録にない、被告によるデータ運用の疑いについての更なる主張
 原告は、トーハンより、平成23年6月から平成24年3月にかけて、本件書籍8につき、合計6冊、返品受諾の打診を受けた。この6冊の書籍には、いずれも13桁のISBNコードが付されていたが、流通する全ての書籍に付されるISBNコードが13桁に変更されたのは平成19年1月であるから、上記返品受諾の打診を受けた6冊の書籍は、いずれも平成19年1月以降に流通に置かれたものと推認される。
 ところで、本件書籍8の被告における商品IDは「AB589」であるところ、平成17年(2005年)2月28日から平成21年(2009年)12月31日までの被告の原告に対する各請求書(乙1の1〜31。以下「本件各請求書」といい、書証の各枝番号に従って順に「本件請求書1」などという。ただし、乙1の5の正確な内容は乙9であり、乙1の10の正確な内容は乙10である。)を精査すると、平成19年1月以降に流通におかれた本件書籍8は、被告の記録上は本件請求書15に記載された2冊のみとなっている。よって、この2冊がいずれもトーハンから返品受諾打診がされた6冊に含まれていると解したとしても、少なくとも4冊については、被告の記録にないデータ運用がされていた疑いが濃い。
(5) 被告の主張に対する反論
 被告の主張は、要するに、被告の記録には、データ登録が行われた本件各書籍についてデータ運用した記録は見つからなかったというだけであって、それ以上ではない。また、被告は、原告が平成18年2月期における被告の原告に対する請求書につき、特段の異議なく処理していることをもって、被告が登録コンテンツのデータ運用をしていないことを原告も認めている旨の主張をしているが、原告が被告による原告への報告のないデータ運用の事実を疑い始めたのは、平成22年8月の日販からの返品の頃からであるから、平成18年2月頃に原告が特段の異議を述べていないことをもって、被告がデータ運用をしていないことを原告が認めたということはできない。
(6) トーハンに対する調査嘱託の結果について
 なお、調査嘱託の結果によれば、トーハンが平成19年1月以降に受領した本件書籍2は1冊のみとされている。しかし、株式会社セブンネットショッピングの発行に係る平成24年(2012年)12月4日付け納品書兼領収書(甲32の2)及びトーハンの発行に係る商品明細書(甲33の2)によって、本件書籍2が、平成24年12月と平成25年3月に、各1冊ずつ、合計2冊市販されたことが判明した(いずれも13桁のISBNコードが付されている。)。これは、トーハンの記録と合致せず、少なくとも1冊については被告が記録外のデータ運用を行ったものと推認される。なお、本件書籍2は、上記市販元以外でも、広くインターネットを通じて販売されている。
 また、本件書籍8(「RC157−173」)については、本件各請求書を精査すると、平成19年1月以降に流通におかれた本件書籍8は、被告の記録上は本件請求書15に記載された2冊のみとされているが、調査嘱託の結果によれば、トーハンの記録上もそのようになっており、また同書籍のうち1冊は東日本大震災により汚損したものとされている。しかし、上記平成24年(2012年)12月4日付け納品書兼領収書(甲32の2)及び商品明細書(甲33の2)によって、本件書籍8が、平成24年11月と平成25年3月に、各1冊ずつ、合計2冊市販されたことが判明した(いずれも13桁のISBNコードが付されている。)。そうすると、記録上は合計2冊のはずであるのに、汚損分を加えると3冊になってしまうことから、少なくとも1冊については被告が記録外のデータ運用を行ったものと推認される。なお、本件書籍8は、上記市販元以外でも、広くインターネットを通じて販売されている。
〔被告の主張〕
(1) 本件書籍10、11、29ないし33の七つの書籍については、原告からのショートラン印刷の依頼に応じたものであって、そもそも本件契約の第11条に基づくデータ登録(以下「本件データ登録」という。)が行われておらず、被告はデータをそもそも保有していない。ショートラン印刷の印刷代金については、平成13年1月期ないし平成21年4月期の本件請求書8、9、14、17ないし19、26及び27のとおり、被告は、原告に対し請求を行い、原告からその支払を受けている。
 本件各書籍のうち、ショートラン印刷に係るものは、いずれも本件契約の第11条に基づくデータ登録がされておらず、データ運用自体がされる余地がないものである。
(2) また、本件各書籍のうち、その余の26の書籍についても、データ登録は行われているが(以下「登録コンテンツ」という。)、本件契約の第15条1項に基づくデータ運用はされていない。
 登録コンテンツについては、いずれの登録コンテンツについても、本件契約の第6章に定める複製物製作サービスとして、原告が被告に対して本件契約の第26条1項に基づきオンデマンド出版による複製物の製作を委託したものである。
 本件契約に基づく登録コンテンツの取扱いとしては、本件契約の第4章に定めるデータ運用サービスとして、登録コンテンツの複製物を第三者である読者に販売する場合(以下「読者直販の場合」という。)と、本件契約の第6章に定める複製物製作サービスとして、登録コンテンツの複製物を、当該登録コンテンツを登録した会員(本件契約の第1条において定義される「会員」)である出版社のために製作し、これを納入する場合(以下「出版社納品の場合」という。)の2種類がある。
 このうち、出版社納品の場合においては、会員である出版社(本件契約であれば原告)から直接被告に対して複製物製作の発注がされる場合(以下「直接発注の場合」という。)と、取引先書店からの注文などに応じて取次会社から被告に対して複製物製作の発注がされる場合(以下「取次経由発注の場合」という。)があるが、このうち、まず直接発注の場合においては、当該発注に係る複製物については出版社に納入され、その製作代金については、被告は出版社に対して請求することになる。
 他方、取次経由発注の場合も、取次会社を介した出版物の流通は版元である出版社が取次会社に販売し、取次会社が書店等に販売するという流れになるため、当該発注に係る複製物については取次会社に直接納入されることになり、取次会社への納入により版元である出版社に対して当該複製物が提供されたことになるものの、当該発注は版元である出版社から被告に対して行われたものとして取り扱われ、その製作代金については、直接発注の場合と同様に、被告は版元である出版社に対して請求することになる。
(3) 本件各請求書は、平成17年以降にされた原告と被告との間の取引に関して、被告が原告に対して送付した請求書のうち、被告のコンピュータ上にデータが残っていたものである。当該各請求書の「集計明細表」の欄には「ショートラン印刷」「オンデマンド/取次・出版社納品分」「オンデマンド/読者直販」という欄があるが、このうち「ショートラン印刷」の欄に記載される内容は、登録外コンテンツに係るショートラン印刷分の請求内容であり、当該請求内容に係る具体的な印刷明細は、同請求書の「ショートラン印刷納品明細表」欄に記載されたとおりである。
 次に、「オンデマンド/取次・出版社納品分」の欄に記載される内容は、出版社納品の場合に該当する請求内容(本件契約の第26条1項に基づく委託複製物の製作の対価としての請求内容)である。なお、当該請求内容に係る具体的な製作物の明細は、同請求書の「オンデマンド出版 明細表」欄に記載される(同明細表の「納品先」欄に「出版社」と記載されているものは「直接発注の場合」に該当するものであり、「書店」と記載されているものは「取次経由発注の場合」に該当するものである。)。
 また、「オンデマンド/読者直販」の欄に記載される内容は、「読者直販の場合」に該当する支払内容(本件契約の第17条1項に基づくデータ運用の収益還元として支払う内容)である。なお、仮に「読者直販の場合」に該当する支払が実際にある場合には、請求書の「オンデマンド/読者直販」の欄の「出版社収入」欄に支払金額がマイナスの金額で表示されるとともに、「オンデマンド出版 明細表」欄の「納品先」欄には「読者」と記載される。
 そして、本件各請求書によれば、「オンデマンド/読者直販」の欄に記載されている金額は全て0円であり、マイナスの金額が表示されているものは存在せず、また「オンデマンド出版 明細表」欄の「納品先」欄に「読者」と記載されているものも存在しない。
(4) 以上により、いずれの登録コンテンツについても、本件契約の第6章に定める複製物製作サービスとして、原告が被告に対して本件契約の第26条1項に基づきオンデマンド出版による複製物の製作を委託したものであって、本件契約の第15条1項に基づくデータ運用はされていない。したがって、本件契約の第17条1項に基づくデータ運用の収益還元として被告が原告に対して支払うべき金員が存しないことが、証拠上も明らかである。
(5) 原告からは、被告から受領した請求書の原本として甲17の1が提出されているが、その内容は本件請求書7(乙1の7)の内容と一致していることからすれば、被告は原告に対して、本件各請求書を送付し、原告はこれをいずれも受領していることが強く推認される。
 甲17の1の請求書の「集計明細表」によれば、同請求書で被告が原告に対して請求しているのは「取次・出版社納品分」及び小口配送料金の3万2513円であり、「出版社収入」欄には0円と記載されているところ、「オンデマンド出版 明細表」欄の「品名」欄には登録コンテンツの一部が記載されており、三菱東京UFJ銀行の「ご利用明細」(甲17の2)によれば、この請求金額については、その全額について、原告から被告に対して異議なく支払がされていることが認められる。
 すなわち、原告は、少なくとも甲17の1の請求書の「オンデマンド出版明細表」欄の「品名」欄に記載の各登録コンテンツについては、本件契約の第15条1項に基づくデータ運用はされていないことを認めた上で、甲17の1の請求書に記載の金額の全額を支払っているのであり、このことからも、登録コンテンツについてデータ運用の収益還元が行われるべきであるとの原告の主張は不合理なものであることが明らかである。
(6) トーハンに対する調査嘱託の結果によれば、「平成23年6月に第一回目の要請文を発信いたしましたが、同社から諾否の回答がないため、平成24年3月までの期間、同一内容の文書を複数回継続的に発信したものであります。」「以上のとおり、別紙2乃至7の文書は、本件商品1冊のみの当社在庫品につき発行した文書であり…」とされていることからすれば、トーハンが原告に対して返品受諾を打診した本件各書籍は1冊であることが認められる。
 したがって、本件請求書15において記録されている印刷部数である「2冊」を超える部数について、トーハンから原告に対する返品受諾の打診が行われていることを前提とした、被告の記録にないデータ運用の事実が認められるとの主張は、単なる原告の勘違いである。
 調査嘱託への回答添付の書籍納品書(A)の記載内容と本件請求書15の記載内容からすれば、当該請求書に対応する本件各書籍に係る取引内容は、まず、取次経由発注の場合として、平成19年10月頃にトーハンから被告に対して複製物2部の製作の発注がされ、当該発注に従い、被告は同月にその印刷を行い、当該印刷に係る複製物をトーハンに対して平成19年11月14日に直接納入し(なお、トーハンへの納入により版元である原告に対して当該複製物が提供されたことになる。)、当該発注は版元である原告から被告に対して行われたものとして取り扱われるため、その複製物2部の製作代金については、被告は、本件請求書15により原告に対して請求したということになる。なお、本件請求書15に係る請求代金についても、他の請求書に係る請求代金と同様に、原告は被告に対して、特段の異議を述べることなく、その全額の支払を行っている。
(7) 調査嘱託の結果については、平成19年(2007年)11月15日以降、被告からトーハンに対して本件書籍8が納入された事実を確認することはできなかった旨の説明が記載されているだけであり、本件書籍2については、そもそも何らの説明もされていないため、調査嘱託の結果から、原告が主張の前提とする、平成19年(2007年)1月以降にトーハンが受領した本件書籍2は1冊のみである、との事実が導かれるものではない。
(8) 書籍に関するコード表示としては、国際標準図書番号であるISBNコードのほかに、ISBNコードに分類と価格表記を付加した日本独自の日本図書コード、日本図書コードをJANコード体系に組み入れた2段のバーコードで構成される書籍JANコードがある。
 ISBNコードの規格は、平成18年(2006年)までは10桁であったが、平成19年(2007年)1月以降は13桁に変更されたため、平成19年1月以降に刊行する新刊本・重版本については改定13桁が表示されることになり、既刊本についても、可及的に速やかに改定13桁に書き換えることとされた。
 ISBNコードの10桁から13桁への書き換えは、書籍JANコードの冒頭3桁のプリフィックスの番号である「978」を10桁のISBNコードの冒頭に付加した上で、末尾のチェックデジットの番号を変更するという至って簡便なものであって、日本図書コード管理センターのホームページにおいても、10桁から13桁への書き換えのための検算ツールが用意されている。
 したがって、10桁のISBNコードが付された既刊本(平成18年〔2006年〕12月以前に発行された本)について、13桁表示に書き換えることは極めて簡単に行える作業であり、日々大量の書籍を取扱う取次業者・小売業者において、販売する書籍の管理のために、既刊本についても全て13桁に書き換えた上で、管理を行っていることは容易に想定される。
 以上により、本件書籍2及び本件書籍8の納品書兼領収書(甲31の2、甲32の2)及び商品明細書(甲33の2)に商品コードとして13桁のISBNコードが記載されていたとしても、これに対応する書籍が平成19年(2007年)1月以降に発行されたものとは限らない。
(9) ところで、本件各請求書に記載されている本件書籍2の冊数は合計で8冊(本件請求書3、6、7、8及び15)であり、また、本件各請求書に記載されている本件書籍8の冊数は合計で15冊(本件請求書3、4、6、7、10及び15)である。
 以上からすれば、平成18年(2006年)12月以前に製作されたものも含めれば、本件書籍2については少なくとも8冊、本件書籍8については少なくとも15冊が製作されているのであるから、仮に原告主張のとおり本件書籍2について2冊、本件書籍8(汚損分を含む)について3冊が市場で流通していたとしても不合理ではなく、原告主張の事実は、それが仮に真実であったとしても、そもそも被告が記録外のデータ運用を行ったことを何ら推認するものではない。
2 争点(2)(収益還元金発生の有無及びその額)
〔原告の主張〕
 本件契約の第15条において、データ運用とは、「第三者にその複製物を提供すること」と定義され、「データ運用の対価に所定の料率を乗じた金員」(収益還元金)とは、原告と被告との商慣習上、書籍の定価に67%を掛けたものから、その製作費を引いたものとなっている。
 そうすると、被告は、本件各書籍につき、各100冊、原告に無断で第三者に複製物を提供するデータ運用を行ったものであるから、上記料率を乗じた収益還元金につき、原告に対して、本件契約に基づく収益還元義務として支払うべきところ、その金額は、別紙書籍目録末尾収益還元料金計算結果記載のとおり191万3600円となるから、原告は、被告に対し、内金として161万9356円及びこれに対する平成24年7月7日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。
〔被告の主張〕
 否認ないし争う。
第4 当裁判所の判断
1 証拠(甲2〜8、14、16、25、40、乙1、9、10〔書証の枝番号省略〕)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められ、同認定を覆すに足る的確な証拠はない(なお、主要な証拠を末尾に掲げた。)。
(1) 原告は、平成13年7月11日付けで被告の会員となったところ、被告は、原告から、少なくとも平成17年(2005年)2月ないし平成21年(2009年)12月に係る分として、原告から本件各書籍の印刷の依頼を受けてオンデマンド出版及びショートラン印刷を行い、原告に本件各請求書を送付して、その代金を受領した。〔乙1の1〜31、乙9、10。なお、これらは平成24年9月時点において、被告のコンピュータ上にデータとして残っていたものについて、プリントアウトしたものである。〕
(2) その後、原告は、日販から、平成22年8月2日付け「取次別版元返品伝票」と題する書面(甲2の1)により、本件書籍33について1冊、本件書籍8について5部、本件書籍5について29部、本件書籍6について27部、本件書籍7について28部、本件書籍23について19部、本件書籍28について17部の合計126部について、在庫メンテナンスを理由として、返品依頼を受けた。日販ネット事業部は、上記につき、原告に対し、返品の承諾を求めるべく、さらに同年9月15日にも、了解を記載する欄を設けた「返品了解承諾書」と題するファクシミリ文書(甲2の2)を送信した。〔甲2の1、2〕
(3) 原告は、平成22年8月2日付け簡易書留郵便(甲3の1)において、被告取締役のA(以下「A」という。)に対し、上記返品依頼のあった書籍につき、被告から納品したものか等についての問い合わせをした。
 原告は、同月17日付け簡易書留郵便(甲4の1)においてもAに対し同旨の問い合わせをしたが、その際、上記「取次別版元返品伝票」(甲2の1)の2ないし7項に記載の、本件書籍33を除く本件書籍5ないし8、23、28がオンデマンド版である旨を伝えた。
 これに対しAは、同月18日付けファクシミリ文書(甲5)において、上記伝票の記載について、「貴社からお預かりしているコンテンツにつきまして当社の製造販売状況を確認しました。が、ここ数年間、日販さんへの納品はゼロでした。トーハンからの出向者に相談したところ、現在でしたら返品を受けた取次サイドでどの書店から帰ってきたものか把握できているはずなのでそれを取次に対し問い合わせして元を遡っていくのが筋であろう、との見解を得ました。今回の件、まず、日販さんに対し、どこからの返品か?と問い合わせ突き詰められてはいかがでしょう?」等と回答した。
 また、Aは、原告から同月23日付け郵便(甲6の1)によって更なる問い合わせを受けたので、これに対し、同月24日付けファクシミリ文書(甲7)において、「18日のFAXに書いた通り各流通に対しどの書店からの返品かを明示してもらい突き詰めていくのがいいのではないでしょうか?」等と回答した。
 これに対し原告は、同月26日付け簡易書留郵便(甲8の1)において、Aに対し、上記返品依頼に係る本件書籍33を除く本件書籍5ないし8、23、28につき、被告に対するオンデマンド版としての注文冊数を詳細に明記した上、再度、回答を求めた。〔甲3の1、2、甲4の1、2、甲5、6の1、2、甲7、甲8の1、2〕
(4) 原告は、平成23年に至り、被告に対し、民事調停を申し立てた。
 被告は、同調停手続において、原告に対し、本件各書籍のうちオンデマンド版にかかる26種の書籍につき、「実績明細データ」と題する書面(甲16)を作成して交付した。ただし、このうち、平成17年(2005年)8月分、平成19年(2007年)5月分の各伝票(請求書)については、既に被告のコンピュータ上にデータが存しない。
 上記民事調停は、平成24年3月22日、不成立で終了した。〔弁論の全趣旨〕
(5) 原告は、日販ネット事業部に対し、日販の平成22年8月2日付け返品について問い合わせをした。同事業部は、原告に対し、平成24年3月19日付けファクシミリ文書(甲29)において、先程の電話での件についての回答として、同社の平成22年8月2日付け返品について、どこで発生したものか明確に押さえられていないのが現状であると回答した。〔甲29、弁論の全趣旨〕
(6) ブックライナーは、原告に対し、平成19年(2007年)10月付け「ブックライナー『基本在庫更新』及び『基本在庫商品の追加出品』のお願い」と題する書面(甲23の1)に添付した「ブックライナー 基本在庫商品更新リスト」(甲23の2)において、基本在庫商品の更新及び追加出品を依頼した際におけるブックライナーの基本在庫商品については30点であること、その在庫の内訳は、本件書籍1が2冊、本件書籍2が1冊、本件書籍3が1冊、本件書籍4が2冊、本件書籍5が2冊、本件書籍6が2冊、本件書籍7が2冊、本件書籍8が記載なし、本件書籍9が2冊、本件書籍10が2冊、本件書籍11が2冊、本件書籍12が2冊、本件書籍13が2冊、本件書籍14が2冊、本件書籍15が2冊、本件書籍16が2冊、本件書籍17が2冊、本件書籍18が2冊、本件書籍19が2冊、本件書籍20が2冊、本件書籍21が2冊、本件書籍22が1冊、本件書籍23が2冊、本件書籍24が2冊、本件書籍25が2冊、本件書籍26が2冊、本件書籍27が2冊、本件書籍28が2冊、本件書籍29が記載なし、本件書籍30が2冊、本件書籍31が2冊、本件書籍32が記載なし、本件書籍33が記載なしとなっている旨回答した。なお、在庫書籍のうち、「世界の先端技術著作権表現&オール 総合版」2冊とされているものは、本件各書籍との対応関係はない。〔甲23の1、2〕
(7) その後、ブックライナーは、平成23年(2011年)7月5日付け「在庫商品についてのお願い」と題する書面(甲25)において、原告に対し、在庫商品の返品依頼をした。その返品を依頼する書籍のブックライナーの在庫数は、本件書籍2が1冊、本件書籍3が2冊、本件書籍4が1冊、本件書籍5が1冊、本件書籍6が2冊、本件書籍19が2冊、本件書籍20が2冊、本件書籍21が2冊、本件書籍29が4冊となっており、上記平成19年10月時点と比べると、本件書籍3について1冊、本件書籍29について4冊が増えていた。
 なお、この間の平成19年(2007年)10月30日及び同年11月22日に、オンデマンド出版(ブックライナー扱い)で、本件書籍3が各1冊納品されており、平成20年(2008年)3月24日には、原告は、本件書籍29につき、150冊ショートラン印刷を行って被告から納品を受けた。〔乙1の15〜17〕
(8) ブックライナーは、原告に対し、平成23年(2011年)10月付け「ブックライナー『基本在庫更新』及び『基本在庫商品の追加出品』のお願い」と題する書面(甲28の1)において、基本在庫更新伝票切替処理についての依頼を行った際、同年9月末のブックライナーにおける本件各書籍に係る全在庫としては、本件書籍1が1冊、本件書籍2が2冊、本件書籍3が3冊、本件書籍4が2冊、本件書籍5が2冊、本件書籍6が2冊、本件書籍7が2冊、本件書籍8が2冊、本件書籍9が2冊、本件書籍10が2冊、本件書籍11が2冊、本件書籍12が2冊、本件書籍13が2冊、本件書籍14が2冊、本件書籍15が2冊、本件書籍16が2冊、本件書籍17が2冊、本件書籍18が2冊、本件書籍19が2冊、本件書籍20が2冊、本件書籍21が2冊、本件書籍22が3冊、本件書籍23が2冊、本件書籍24が2冊、本件書籍25が2冊、本件書籍26が2冊、本件書籍27が2冊、本件書籍28が1冊、本件書籍29が4冊、本件書籍30が2冊、本件書籍31が2冊、本件書籍32が2冊、本件書籍33が2冊である旨記載されている「ブックライナー基本在庫商品更新リスト」(甲28の3)を送付した。なお、原告は、平成20年(2008年)8月に本件書籍32を150冊、平成21年(2009年)3月ないし4月に本件書籍33を合計160冊、被告にそれぞれショートラン印刷を依頼している。〔乙1の18、26、27〕
2 争点(1)(被告による本件各書籍のデータの無断運用の有無)について
(1) 原告は、被告により、本件各書籍について、原告に無断で、被告の記録にないデータ運用がされているところ、原告にその収益が還元されていないと主張して、本件契約で定められた収益還元義務に基づき、原告に無断でデータ運用した本件各書籍につき、各100冊分の収益還元金の支払を求めるとする。
 しかし、原告は、そもそも、本件各書籍について被告による無断データ運用がされたか否かの前提として、いつの時点で何冊を印刷し、そのうち何冊をいかなる経路で流通に置き、このうち販売された部数が何部であるか、それに比して、現在までに流通した部数が何部多いか等について、何ら主張立証を行っていない。
 そうすると、原告の了解のもとで流通に置かれた本件各書籍の総数と、そうでない書籍の数とを比較しようがなく、被告による原告に対する無断データ運用の総数を検討する以前の問題として、そもそも原告の意思に基づかない書籍の流通自体があったのか否か不明というほかないから、原告の請求は、この点からして理由がないというべきである。
(2) この点に関して原告は、被告が原告から預かったデータを用いて本件各書籍につき各100冊の複製物を第三者に提供することにより対価を得たことを推認させる事実があると主張するが、同主張についての判断は、以下のとおりである。
ア 原告は、平成22年8月に、日販から多数の返品依頼があったが、それらはその近い時期に被告に印刷を依頼した事実がない書籍であるから、この事実により、被告による無断データ運用がされたものと推認されると主張する。
 しかし、日販からの返品依頼があった書籍のうち、本件書籍33については平成21年3月ないし4月にショートラン印刷を行っているほか、本件書籍5ないし7については34ないし39部(仮に平成19年〔2007年〕5月期の伝票〔請求書〕分を除いたとしても少なくとも30ないし37部)、本件書籍8については17部(仮に平成17年〔2005年〕8月期の伝票〔請求書〕分を除いたとしても少なくとも15部)、本件書籍23については26部(仮に平成19年〔2007年〕5月期の伝票〔請求書〕分を除いたとしても少なくとも23部)、本件書籍28については24部、それぞれ原告の依頼に基づき被告により印刷がされていたものであるから、これらにつき、日販からそれまで返品依頼がされず、あるいはされたとしても原告が承諾しなければ、日販にそのまま在庫として残っていたとしても何ら不自然ではないものである(甲16、乙1の1〜31、乙9、10)。
 したがって、原告の上記主張は採用することができない。
イ 原告は、ブックライナーの在庫が、平成19年及び平成23年7月当時と比べ、平成23年9月末時点で増えており、これは被告による無断データ運用がされた事実を推認させると主張する。
 しかし、平成19年10月当時に在庫として記載された書籍(甲23の2)と比して、平成23年7月当時において増加したものとされる本件書籍3、29、平成23年7月当時と比べ平成23年9月末当時において増加したものとされる本件書籍32、33については、前記1で認定したとおり、それぞれ、この間に原告においてオンデマンド出版ないしショートラン印刷を行っているものである。そして、ブックライナーの平成23年(2011年)7月5日付け「在庫商品についてのお願い」と題する書面(甲25)における在庫商品の記載については、これらにつき返品を依頼する趣旨の記載であって、必ずしも在庫商品全てが記載されているとは認め難いところ、平成19年10月当時の在庫として記載された書籍と平成23年9月末当時の全在庫として記載された書籍を比較すると、上記検討済みの本件書籍29、32、33を除き、在庫商品が増加しているのは本件書籍2の1冊、本件書籍3、8、22の各2冊であり、これらについては、平成19年10月30日に1冊(本件書籍2、3、22)ないし2冊(本件書籍8)が、平成19年11月22日に1冊(本件書籍3、22)が、それぞれトーハンに納入されている(乙1の15、16)ものであるから、平成19年10月19日以前に作成された(甲23の1に10月19日必着の記載がある)ブックライナーの在庫リスト(甲23の2)に、増加分に相当する冊数の本件書籍2、3、8、22、28が記載されておらず、その後に在庫が生じても不自然とはいえないものである。
 したがって、原告の上記主張は採用することができない。
ウ また、原告は、被告にはISBNコードが13桁になった平成19年(2007年)以降には2冊しか発注していない本件書籍8につき、トーハンから6冊の返品打診を受けるなどしているから(調査嘱託申出書)、被告による無断データ運用がされた事実が推認されるとも主張する。
 しかし、調査嘱託の結果によれば、本件書籍8について、1冊のみ在庫があったものについて、平成23年3月の東日本大震災により汚損したため、返品をX1こと原告に要請したものであり、同年6月に第1回の返品要請文を原告に発信したが、諾否の応答がないため、その後平成24年3月まで同一内容の文書を5回にわたり継続して送信したものであり、また、上記書籍(本件書籍8)は、被告から納品されたものと考えられるが、平成19年11月15日以降に納入された事実は確認できなかったことが認められる。
 そして、証拠(乙1の3、4、6、7、15、乙9)によれば、本件書籍8は、平成19年までに、請求書が被告のコンピュータ上にデータとして残されている分だけでも、少なくとも15冊が原告に直接ないし書店に納入され、その代金についても原告に請求がされており、ISBNコードが13桁に変更される以前の在庫本に関しても、可及的に13桁に変更の手続がされ、しかもそれは容易であったことが認められるから、本件各書籍につき、ISBNコードが13桁であることから、直ちに平成19年(2007年)以降に印刷されたものであると認めることもできない。
 したがって、原告の上記主張は採用することができない。
エ 原告は、被告が本件各書籍について各100冊の複製物を第三者に提供し対価を得たことは、被告も暗に認めているとし、それに沿う証拠として甲7(平成22年〔2010年〕8月24日付けファクシミリ文書)を提出する。
 確かに、甲7(平成22年〔2010年〕8月24日付けファクシミリ文書)は、被告のAが原告に宛てた文書であるところ、そこには「念のため確認させていただきますが、最初に100部とか200部とか貴社からのご注文で作成した際、取次へ相当量納品なさってはいないのでしょうか?その分の動きも再度検証なさってはいかがでしょうか?」などと記載されている。
 しかし、上記記載は、その内容自体、本件各書籍について、原告に無断で本件各書籍のデータを運用して各100冊の複製物を被告が第三者に提供し対価を得たと読めるものではなく、発注部数の例えとして100部等の数字が記載されているものにすぎないと認められるほか、前記1(7)で認定したとおり、実際に、原告は、被告に対し、本件書籍29につき150冊のショートラン印刷の依頼をしている実績もある。
 したがって、原告の上記主張は採用することができない。
オ さらに原告は、甲12ないし15(インターネット販売の検索結果)を提出し、これらによれば、トーハン系列のインターネット書店であるlivedoorBOOKS 等において在庫が存することから、本件各書籍につき、被告において少なくとも100冊のデータ運用を行った旨推認されると主張する。
 しかし、甲12ないし15(インターネット販売の検索結果)は、いずれもインターネット販売において、本件各書籍の販売について対応可能であることを示す証拠にすぎず、被告による無断データ運用との結びつきを示すものというには飛躍があるというべきである。
 したがって、原告の上記主張は採用することができない。
カ 原告は、被告が提出した乙10(平成18年〔2006年〕11月30日付け請求書)と、原告の手元にある甲39(平成18年〔2006年〕12月1日付け請求書)とでは、同じ請求書でありながら日付けと伝票番号が異なるとし、理由不明な二重伝票が被告において作成されている旨主張する。
 乙10(平成18年〔2006年〕11月30日付け請求書)及び甲39(平成18年〔2006年〕12月1日付け請求書)は、いずれも平成18年11月29日における本件書籍2の2冊分についてのオンデマンド出版に係る請求書であるところ、日付け及び伝票番号の一部が両者で異なることについて理由は不明であるものの、本件書籍2について、ブックライナーの在庫は1ないし2冊で、平成19年10月以降の在庫の増加についても上記のとおり裏付けもあり、特段被告による無断データ運用と結びつく事実も認め難い。
 したがって、原告の上記主張は採用することができない。
3 結論
 以上のとおりであり、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求には理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第40部
 裁判長裁判官 東海林保
 裁判官 今井弘晃
 裁判官 足立拓人


別紙添付省略
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