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【事件名】KDDIへの発信者情報開示請求事件B
【年月日】平成25年10月25日
 東京地裁 平成25年(ワ)第15969号 発信者情報開示請求事件
 (口頭弁論終結日 平成25年9月18日)

判決
原告 創価学会
同 訴訟代理人弁護士 中條秀和
同 甲斐伸明
被告 KDDI株式会社
同 訴訟代理人弁護士 光石俊郎
同 光石春平


主文
1 被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の情報を開示せよ。
2 訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求の趣旨

主文同旨
第2 事案の概要
 本件は、別紙著作物目録記載の著作物につき著作権を有する原告が、被告が提供するインターネット接続サービスを経由して、動画投稿サイト(以下「本件サイト」という。)に投稿された別紙投稿動画目録記載の各動画につき、同各動画は原告の著作権(公衆送信権、送信可能化権)を侵害するものであり、その損害賠償請求権行使のため必要であるとして、被告に対し、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「法」という。)4条1項に基づき、別紙発信者情報目録記載の各発信者情報の開示を求めた事案である。
1 前提事実(証拠を掲げていない事実は当事者間に争いがない。以下、証拠番号の枝番の記載を省略することがある。)
(1) 当事者
ア 原告は、昭和27年9月8日に宗教法人法に基づいて設立された宗教法人である。〔弁論の全趣旨〕
イ 被告は、電気通信事業を営む株式会社である。
(2) 株式会社シナノ企画(以下「シナノ企画」という。)は、原告に関連する映像作品や一般映画の企画・製作・興行を業とするところ、VHSビデオ作品である別紙著作物目録記載1の作品(以下「本件ビデオ映像@」という。)及び同目録記載2の作品(以下「本件ビデオ映像A」といい、本件ビデオ映像@と併せて「本件各ビデオ映像」という。)をそれぞれ製作し、本件ビデオ映像@については平成15年3月31日に、本件ビデオ映像Aについては平成12年3月31日に、原告との間で、本件各ビデオ映像の所有権及び著作権を原告に譲渡する旨合意した。なお、著作者人格権については、シナノ企画に留保されている。〔甲8の1、2〕
(3) 本件ビデオ映像@は、14分34秒にわたるビデオ映像であり、そのうち開始約7分55秒時点の画像は、別紙対照表1の「本件ビデオ映像@」欄上段記載のとおりである。また、本件ビデオ映像Aは、19分17秒にわたるビデオ映像であり、そのうち開始約12分0秒から12分2秒付近の画像は、別紙対照表2の「本件ビデオ映像A」欄上段ないし下段記載のとおりである。〔甲5の3、甲11の1、2〕
(4) 本件サイトは、株式会社ニワンゴ(以下「訴外会社」という。)が開設、運営する動画投稿サイト「ニコニコ動画」であるところ、平成25年1月5日及び同年2月5日に、別紙投稿動画目録No.1及び2記載の各情報に係る各動画(以下、各No.に従って、それぞれ「本件投稿動画@」、「本件投稿動画A」といい、両者を併せて「本件各投稿動画」という。)が投稿され、そのころ、本件サイトに掲載されていた。
 本件投稿動画@は、約1分33秒にわたる動画であり、そのうち開始約49秒時点の画像は、別紙対照表1の「本件投稿動画@」欄記載のとおりである。また、本件投稿動画Aは、約1分44秒にわたる動画であり、そのうち開始約1分15秒ないし1分35秒時点の画像の左上には、別紙対照表2の「本件投稿動画A」欄上段ないし下段記載のとおりの人物の画像が繰り返し使われている。〔甲11の1、2〕
 本件各投稿動画は、遅くとも本件訴えの提起の時点までには本件サイトから削除された。〔弁論の全趣旨〕
(5) 原告は、訴外会社に対して、本件各投稿動画を投稿した発信者(以下「本件各発信者」という。)に係る発信者情報(以下「本件各発信者情報」という。)の開示を求めたところ、訴外会社は、平成25年3月13日、原告に対して本件各発信者情報の一部として、投稿日時や投稿時IPアドレス等を開示した。〔甲3の1、2〕
(6) 上記各IPアドレスから、本件各発信者は、被告が提供するインターネット接続サービスを経由して本件各投稿動画を本件サイトに投稿したことが判明した。〔甲4〕
(7) 被告は、本件各発信者情報を保有している。
2 争点
(1) 本件各投稿動画に対応する本件各ビデオ映像の著作物性の有無
(2) 本件各投稿動画による本件各ビデオ映像の複製権ないし翻案権侵害の成否
(3) 本件各投稿動画が本件サイトに掲載されたことによる権利侵害の明白性の有無
(4) 本件各発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点(1)(本件各投稿動画に対応する本件各ビデオ映像の著作物性の有無)について
〔原告の主張〕
 本件ビデオ映像@は、シナノ企画の社員であるA(以下「A」という。)が、同Aは、製作当時シナノ企画の社員であったB(以下「B」という。)が、それぞれディレクターとして、企画・発案、台本の構成、インタビュー撮影の指示、映像の編集作業などの製作全般に関与して製作されたものである。本件各ビデオ映像はいずれも、社会で活躍する芸能人が、仏法の実践により芸能界で実証を示したという信仰体験を、本人のインタビューや芸能活動の実際の映像などを織り交ぜながら紹介するものであり、AやBがそれぞれ創意工夫を凝らして製作した作品であって、その思想・感情が創作的に表現されたものである。そして、本件各ビデオ映像は、いずれも映画の効果に類似する視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつビデオテープに固定されたものであり、映画の著作物である。
 被告は、本件各投稿動画に使用された本件各ビデオ映像はいずれもありふれた映像であり著作物性がないと主張するが、以下のとおり誤りである。
 本件投稿動画@と本件ビデオ映像@を比較すると、本件投稿動画@の49秒付近には、本件ビデオ映像@の7分55秒付近のC(以下「C」という。)が所属する創価学会地元組織の地区担当員であるD(以下「D」という。)が発言している場面のDの顔の部分だけを切り取った映像と、同人の「じゃ、学会活動できるじゃない」との発言が使われている。
 本件ビデオ映像@のDが話す場面は、仕事がなくて落ち込んでいたCを、Dが、「仕事がない分創価学会の活動ができる」と激励し、同人の激励を受けたCが創価学会の活動によって前向きになっていったという、Cの信仰活動のエピソードを紹介する場面の一部である。
 本件投稿動画@に使用された本件ビデオ映像@の上記場面は、Cの人生における転機となったエピソードについて、その当事者であるDに出演してもらって直接発言してもらったもので、他人で代替させることができない非常に重要な場面である。そこでは、人生に悩むCを信仰活動によって蘇生させようとしたDの慈愛の気持ちが視聴者に伝わるよう、Dの表情が明るくかつやわらかな印象となるよう撮影が行われている。
 次に、本件投稿動画Aと本件ビデオ映像Aを比較すると、本件投稿動画Aの1分15秒から1分35秒付近で、本件ビデオ映像Aの12分0秒から12分2秒付近のE(以下「E」という。)が「パーンとなりましてね、頭が」と話す場面の、Eだけを切り取った映像を繰り返し使用している。
 本件ビデオ映像AのEが「パーンとなりましてね、頭が」と話す場面は、同人がF創価学会名誉会長から漫才を誉められ、激励を受けたときの驚き、嬉しさ、感動を、涙を流しながら語る場面の一部である。
 本件投稿動画Aに使用された本件ビデオ映像Aの上記場面も、単にEの容姿を撮影したものではなく、信仰の実体験をEらしい表情や仕草、発言で表現している様子を余すところなく視聴者に伝えようと撮影されたものである。
 以上によれば、本件各ビデオ映像の上記各場面がいずれも著作物性を有することは明らかである。
〔被告の主張〕
 本件各ビデオ映像自体の著作物性の有無にかかわらず、本件ビデオ映像@のうち本件投稿動画@に対応する部分及び本件ビデオ映像Aのうち本件投稿動画Aに対応する部分は、いずれも、ありふれた人間の顔の正面からの映像であり、著作物性がない。
 すなわち、本件投稿動画@は、全体が約1分33秒であり、本件ビデオ映像@と対応する画面は、別紙対照表1の「本件投稿動画@」欄記載の一場面しかない。その顔の部分だけの映像に関して、原告の主張する本件ビデオ映像@の顔の部分の映像は、ありふれたものであって、著作物性はない。なお、本件投稿動画@に使用されていると原告の主張する、「学会活動できるじゃない」との音声は、他の音声等に埋没し、本件投稿動画@に接する一般人にとって聞き分けることはほとんどできない。
 また、本件投稿動画Aは、全体が約1分44秒であり、本件ビデオ映像Aと対応する画面は別紙対照表2の「本件投稿動画A」欄上段の顔を両手で覆う仕草をする画面と、下段の両手を拡げた2場面の連続が約20秒続くものである。人物の顔及び手の部分だけの映像に関して、原告の主張する本件ビデオ映像Aの顔及び手の部分についての人物の映像は、ありふれたもので、著作物性はない。
2 争点(2)(本件各投稿動画による本件各ビデオ映像の複製権ないし翻案権侵害の成否)について
〔原告の主張〕
 本件ビデオ映像@に関し、一市民にすぎないDが出演する映像作品は、本件ビデオ映像@以外には確認できないし、上記発言の音声も確認すれば、本件投稿動画@が本件ビデオ映像@に依拠していることは明らかである。同人の顔の部分の画像は本件ビデオ映像@から抽出した画像を左右反転したものにすぎず、同一性は認められる。
 そして、本件投稿動画@の49秒付近には、本件ビデオ映像@のDの顔を左右反転したものが静止画で使用され、Dの「じゃ、学会活動できるじゃない」との発言がそのまま使用されていることから、本件ビデオ映像@と実質的に同一であるか、少なくとも視聴者がその表現上の本質的な特徴を直接感得することができる。
 本件ビデオ映像Aについて、本件投稿動画Aに使用されている映像と本件ビデオ映像Aに映し出された映像における、Eの髪型、メイク及び服装等の同一性や、「パーン」と発言するのに合わせて両手を拡げた仕草をしている場面は、本件ビデオ映像A以外には確認できないことからすれば、本件投稿動画AのEの映像を使用した場面が本件ビデオ映像Aに依拠していることは明らかである。そして、本件投稿動画Aの1分15秒から1分35秒付近には、音声はないものの、本件ビデオ映像AのEが「パーン」と発言するのに合わせて両手を拡げた仕草をしている場面の映像が使用されていることから、本件ビデオ映像Aと実質的に同一であるか、少なくとも視聴者がその表現上の本質的な特徴を直接感得することができる。
〔被告の主張〕
 本件各投稿動画は、本件各ビデオ映像に依拠して複製されたとは認められない。
 まず、本件投稿動画@には、顔の部分だけが貼り付けられているので、本件ビデオ映像@以外の写真、映像等から複製されている可能性が大であり、本件ビデオ映像@に依拠したといえない。本件ビデオ映像@の背景には観葉植物と思しきもの等が映っているが、本件投稿動画@には映っておらず、両者は異なるものであり、両者で、人物の顔の部分も同一ではなく、異なる。
 なお、本件投稿動画@について、法4条2項に基づく意見照会には、「グーグル画像検索から引用した画像であり、そちらの『すばらしき人生PART 4』に収録されている動画からは使用しておらず」と述べられている。
 次に、本件投稿動画Aについては、本件ビデオ映像Aに映っているEは著名人であり、Eには本件ビデオ映像A以外の多数の写真、映像等が存在するので、本件投稿動画Aはこれらのいずれかに依拠して複製されている可能性が大であり、本件ビデオ映像Aに依拠したといえない。本件ビデオ映像Aの背景には額縁、観葉植物と思しきものが映っているが、本件投稿動画Aには映っておらず、両者は異なり、Eの顔及びポーズも多少異なる。
3 争点(3)(本件各投稿動画が本件サイトに掲載されたことによる権利侵害の明白性の有無)について
〔原告の主張〕
 前記1及び2の各〔原告の主張〕記載のとおり、本件各投稿動画は、本件各ビデオ映像に依拠し、これを複製ないし翻案したことが明らかである。
 そして、本件各発信者は、本件各投稿動画を本件サイトに掲載して、インターネットを通じて不特定多数の者がアクセスして閲覧することができる状態にしたものであり、これによって原告の公衆送信権(送信可能化権)が侵害された。
〔被告の主張〕
 本件は、本件各投稿動画の流通によって原告の権利が侵害されたことが明らかであるときに該当しない。
4 争点(4)(本件各発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無)について
〔原告の主張〕
 原告は、本件各発信者に対する不法行為に基づく損害賠償請求権の行使のために、被告に対して発信者情報の開示を求める必要があるから、原告には本件各発信者情報の開示を受けるべき正当な理由がある。
〔被告の主張〕
 不知ないし争う。
第4 争点に対する判断
1 争点(1)(本件各投稿動画に対応する本件各ビデオ映像の著作物性の有無)について
 被告は、本件各ビデオ映像自体の著作物性について認めていないので、以下、念のため本件各ビデオ映像自体の著作物性について、判断する。
 証拠(甲5の1ないし3、甲6)によれば、本件各ビデオ映像は、仏法の実践による信仰体験を紹介する目的で、社会で活躍する芸能人が、仏法を実践して芸能界で活躍するに至った信仰体験を語る様子を撮影した動画映像であること、本件各ビデオ映像の製作に当たっては、上記目的に沿って、出演者らの自然で的確な発言が引き出されるように進行を工夫した内容の台本が作成され、出演者の表情等が現れるように被写体が選択され、アングルや光量が調整されて撮影が行われ、さらに、上記目的に沿う場面を選択して編集がされた上に、色調や音声の補正がされたり、BGMやナレーションが組み込まれたりといった加工が施されたことが認められる。このような本件各ビデオ映像は、出演者らが信仰体験を語る様子が視聴者に臨場感をもって伝わるように、脚本の内容や、被写体の選択、撮影方法に工夫がこらされ、出演者の信仰体験を短時間で効果的に紹介できるように編集・加工がされたものということができるから、思想又は感情を創作的に表現したものであると認められる。
 本件各ビデオ映像は、上記認定事実からして映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で作成されたものであるところ、証拠(甲5の1ないし3)によれば、ビデオテープ(磁気テープ)に固定されたものであると認められるから、映画の著作物(著作権法2条3項)に該当すると認めるのが相当である。
 なお、被告が争う本件各ビデオ映像のうちの、本件各投稿動画に対応する部分の著作物性についての当裁判所の判断は、下記争点(2)における判断の中で示すことにする。
2 争点(2)(本件各投稿動画による本件各ビデオ映像の複製権ないし翻案権侵害の成否)について
(1) 著作物の複製(著作権法21条、2条1項15号)とは、既存の著作物に依拠し、その内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製することをいい(最高裁判所昭和50年(オ第324号同53年9月7日第一小法廷判決・民集32巻6号1145頁参照)、ここでいう再製とは、既存の著作物と同一性のあるものを作成することをいうと解すべきであり、同一性の程度については、完全に同一である場合のみならず、多少の修正増減があっても著作物の同一性を損なうことのない、すなわち実質的に同一である場合も含むと解すべきである。
 また、著作物の翻案(著作権法27条)とは、既存の著作物に依拠し、かつ、その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう。
 そして、既存の著作物に依拠して創作された著作物が、思想、感情若しくはアイデア、事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において、既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には、複製にも翻案にも当たらないと解するのが相当である(最高裁判所平成11年(受)第922号同13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁参照)。
(2) 以上を前提にして本件について検討する。
 まず本件投稿動画@については、別紙対照表1により、本件投稿動画@の画像のうちの人物の顔の部分と、本件ビデオ映像@の約7分55秒付近の画像を左右に反転したもの(別紙対照表1の「本件ビデオ映像@」下段)を比較すると、Dの前髪を含む髪形、眉、目鼻立ち、少し笑って開いた口の状態がほぼ同一であるといえる。そして、本件投稿動画@の他の音声と重なってはいるものの、本件ビデオ映像@のDの発言である「じゃ、学会活動できるじゃない」との音声が明らかに聞き取れることも併せ考えると、本件投稿動画@の上記画像は、本件ビデオ映像@に依拠したものということができる。そして、本件投稿動画@の人物の画像は、上記のとおり本件ビデオ映像@のDの髪形、眉、目鼻立ち、口の状態とほぼ同一であることから、その顔であることを覚知することができ、本件ビデオ映像@のDの顔の部分と実質的に同一であること、Dの「じゃ、学会活動できるじゃない」との発言が音声としてそのまま用いられていることからすると、少なくとも視聴者がその表現上の本質的な特徴を直接感得することができるものというべきである。
 そして、本件投稿動画@に複製ないし翻案された部分であるとされる別紙対照表1の「本件ビデオ映像@」欄上段のDの音声を含む画像については、Dが信仰に関する体験を語るについて、Dを被写体として、その表情や、撮影アングル等にも工夫がされたものであり、その発言も音声として用いられているものであるから、その部分についても著作物性を認めるのが相当である。
 以上によれば、本件投稿動画@は、本件ビデオ映像@の複製ないし翻案に当たるものというべきである。
 次に本件投稿動画Aについて検討すると、別紙対照表2の「本件投稿動画A」欄の上段ないし下段の映像のうちの、左上の人物(E)の胸から顔の部分と、本件ビデオ映像Aの約12分0秒から12分2秒付近に至る映像を比較すると、Eがうつむいて顔を手で覆い指を拡げた状態から、顔を上げ、目を開けて手を顔の両側に開いて拡げる状態までの連続的な映像とほぼ同一の映像が、本件投稿動画Aには用いられており、本件投稿動画Aの上記映像は、本件ビデオ映像Aに依拠したものであることが明らかであり、本件投稿動画Aの人物の映像は、上記のとおり本件ビデオ映像Aのうつむいて顔を手で覆った状態から顔を上げて手を拡げるまでの映像を約20秒間にわたり反復連続して用いており、本件ビデオ映像Aと実質的に同一であるか、少なくとも視聴者がその表現上の本質的な特徴を直接感得することができるものというべきである。
 そして、本件投稿動画Aに複製ないし翻案された部分であるとされる別紙対照表2の「本件ビデオ映像A」欄上段ないし下段の映像は、Eが信仰に関する体験を語るについて、Eを被写体として、Eの表情や動きを的確に捉え、その撮影アングル等にも工夫がされたものであり、その部分についても著作物性を認めるのが相当である。
 以上によれば、本件投稿動画Aは、本件ビデオ映像Aの複製ないし翻案に当たるものというべきである。
 なお、被告は、本件投稿動画@につき、法4条2項に基づく意見照会には、グーグル画像検索から引用した画像である旨記載があることを根拠に依拠性を否定するが、その主張に沿う証拠を提出しておらず、他に本件全証拠を精査しても、同主張を裏付ける証拠はなく、かえって、前記のとおり、Dの発言も本件投稿動画@に収録されていることからすれば、本件投稿動画@が本件ビデオ映像@に依拠したものであることは明らかであるから、被告の上記主張は採用することができない。
3 争点(3)(本件各投稿動画が本件サイトに掲載されたことによる権利侵害の明白性の有無)について
 前記1及び2の説示によれば、前記第2、1(4)のように、本件各投稿動画をインターネット上のウェブサイトである本件サイトに掲載する行為は、原告が有する本件各ビデオ映像の送信可能化権を侵害するものと認めるのが相当である。
 そして、本件全証拠を精査しても、上記送信可能化権の侵害の成立を否定すべき事情は何ら認められないから、本件各投稿動画が本件サイトに掲載されたことによって原告の権利が侵害されたことは明らかである。
4 争点(4)(本件各発信者情報の開示を受けるべき正当な理由の有無)について
 原告が本件各発信者に対して著作権侵害による不法行為に基づく損害賠償請求権を行使する意向を示していることは当裁判所に顕著であるところ、証拠(甲1ないし4の2、甲9の1、2)及び弁論の全趣旨によれば、そのために本件各発信者情報の開示が必要であると認められる。
 したがって、原告には被告から本件各発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があると認められる。
5 結論
 以上によれば、原告の請求は理由があるから、これを認容することとし、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第40部
 裁判長裁判官 東海林保
 裁判官 今井弘晃
 裁判官 実本滋


(別紙)発信者情報目録
 別紙投稿動画目録記載の情報を発信した発信者に関する以下の情報
 1 氏名又は名称
 2 住所
 3 電子メールアドレス(電子メールの利用者を識別するための文字、番号、記号その他の符号)
 以下別紙省略
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日本ユニ著作権センター
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