裁判の記録 line
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2008年
(平成20年)
[7月〜12月]
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7月3日 商標“Elemis”審決取消事件(2)
   知財高裁/判決・請求棄却
 原告の本願商標「elemis」は「せっけん、香料」の原料エレミ油「elemi」の複数形として認識され、「商品の品質、原材料又は役務の質等を普通に用いる方法」で表示したものであり、「商品の品質又は役務の質の誤認」を生ずるおそれがあるとして、拒絶査定を受け、不服審判不成立の審決を得たため、この審決の取消を求めて提訴した。
 知財高裁は、本願商標を「エッセンシャルオイル、香水類、……石けん類」又は「エステティック美容、アロマテラピー」に使用したときは、取引業者や需要者はエレミ油又はその原材料を認識するので、識別標識の機能を果たさないとして、商標登録の用件にかけるとした。一方、エレミ油を原料としない香水類やエステティック美容に用いた場合、取引業者や需要者は、エレミ油を原材料とする商品、あるいはエレミ油からなる商品を用いた役務との誤認を生じるおそれがあり、商標登録を受けることが出来ない商標に該当するとした。従って、特許庁審決の判断は相当であるとして、請求を棄却した。
判例全文
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7月4日 幼児向け教育用ビデオのキャラクター類似事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 原告は、幼児向け教育用ビデオやDVD商品を製造、販売しているが、被告が販売するDVD商品中の博士の絵柄が、原告の博士の絵柄と酷似しており、著作権を侵害された等として、損害賠償などを求めて提訴した。
 東京地裁は、原告の博士の絵柄は著作物として創作的な表現であると認定した。しかし、両者を比較すると、被告の博士絵柄は3DのCGにより作製され、立体的質感があり、原告博士絵柄は「平板な感じで全体的にのっぺりとして」いて、絵柄として酷似しているとは言えないとした。また、両者の共通点として挙げられている「角帽をかぶってガウンをまとわせる」等はアイディアであり、その他の共通点も表現はありふれた表現であって、創作性が認められない等として、原告画像の複製権、翻案権を侵害しない等とした。
判例全文
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7月4日 ぬいぐるみ雑貨の著作物性事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 ぬいぐるみやキャラクター商品を製造・販売する韓国企業「ベストエバー」(原告)と、原告商品の日本での独占的輸入販売権を許諾された「ベストエバージャパン」(原告)とは、チェーンストア「しまむら」(被告)が原告商品の模倣品を輸入販売した行為は、不正競争防止法(不競法)違反であり、原告ベストエバーの著作権を侵害しているとして、損害賠償、謝罪広告を求めて訴訟を提起した。
 知財高裁は、わが国の民法709条、不競法が準拠法になるとした上で、原告商品と被告商品とは多くの特徴的形状が共通しており、実質的に同一であり、被告商品は原告商品の模倣であるとした。
 しかし、原告商品は、「広く認知された商品とは認められない」ことから、被告が(株)平成化成から被告商品を仕入れるに当たって、通常の注意義務を払っても模倣品であることの事実を認識できなかったし、認識できなかったことに重大な過失はなかったとした。
 また、原告商品は、小物入れにプードルのぬいぐるみを組み合わせた実用品であるが、プードルの顔の表情や手足の格好等に純粋美術や美術工芸品の美術性を認めることは困難であり、従って、著作物に当たらない等として、請求を棄却した。
判例全文
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7月4日 ピンク・レディのパブリシティ権事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 元ピンク・レディの2人は、週刊誌「女性自身」の「ピンク・レディdeダイエット」と題する記事中に、「渚のシンドバッド」等の5曲の舞台写真14枚を掲載され、販売促進という商業目的に用いられてパブリシティ権を侵害されたとして、光文社に対し損害賠償請求訴訟を提起した。
 知財高裁は、「ピンク・レディが歌唱し演じた楽曲の振り付けを利用してダイエットを行うという記事において、その振り付けの説明の一部又は読者に振り付けを思い出させる一助として」、さらには「ダイエットの目標を実感させるために」、本件写真を使用したものであり、使用の程度は、1楽曲につき1枚のさほど大きくない白黒写真であり、ことさら原告らの肖像を強調しているものではなく、「原告の顧客吸引力に着目し、専らその利用を目的としたものと認めることは出来ない」等として請求を棄却した。
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7月10日 商標“青丹よし”侵害事件
   大阪地裁/判決・請求棄却
 被告3社が菓子及び包装紙に「青丹よし」の標章を付して販売した行為は、原告「御菓子司鶴屋徳満」の商標権を侵害しているとして、使用差止めと損害賠償を求めて提訴した。
 原告商標は、長方形の中央に「青丹よし」と毛筆で縦書きに大書し、その上方右側に縦書きで「元祖登録商標」、左側下方に「鶴屋徳満」と小さく記し、その上方の草模様図形の中に「献上銘菓」の文字を十字に配していた。
 大阪地裁は、「青丹よし」の語は、幕末又は江戸中期から奈良市内の複数の菓子業者によって広く製造・販売され、「青丹よし」の名称そのものの商標登録は今日まで認められたことがなく、本件商標の要部たり得ないとした。
 従って、原告商標は、草模様に「献上銘菓」と十字に配した図形及び「鶴屋徳満」という製造元の表示と相まって出所識別力が出るとし、被告等の商標は「青丹よし」と単に明朝体斜体で記してあるのみだったりで、外観、称呼、観念において非類似であるとし、請求を棄却した。
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7月11日 「名犬ラッシー」の著作権譲渡終了事件(2)
   米連邦巡回控訴裁/判決・取消
 日本でも大人気の映画「名犬ラッシー」で知られる原作の映画・テレビ化権等の著作権を譲渡(assign)されていたClassic Media社(「クラシック社」)と譲渡人(遺族)との間で、付与権利を強制的に終了させる「終了権」をめぐって争っていたが、連邦巡回控訴裁は、連邦地裁の判決を覆して、原作者エリック・ナイトの娘Mewbornがクラシック社に対して行った「終了権行使」の通知は有効とする判決を下し、彼女の請求通り譲渡契約は1998年5月1日に有効に終了したとした。
 1976年、クラシック社は映画化権、テレビ化権等の著作権譲渡契約をMewbornと交わしたが、他の姉達は2年後の1978年までサインをしなかったので、契約内容の統一を図るために、1978年にクラシック社とMewbornは改めて同一内容の契約書にサインを交わした。しかし、1996年、Mewbornがクラシック社に契約の打ち切りを求めて関係が悪化、2005年、クラシック社は訴訟を提起した。
 連邦地裁は、クラシック社の主張を認め、1976年の契約で「終了権」を含む一切の権利をMewbornは譲渡しており、1978年の契約は1976年契約に含まれなかった新たな映画等の「終了権」を認めるにすぎないとしたので、彼女が控訴した。
 連邦巡回控訴裁は、著作権法304条(c)の「終了権」は、1976年法で延長された保護期間内にある著作物に再契約するチャンスを与えるものであり、「いかなる反対の合意にもかかわらず」終了できるとしており、1996年の終了通知は有効であるとした。

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7月16日 民族史記録映画の著作権帰属事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 
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7月17日 裁判傍聴記の著作物性事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却(上告受理申立)
 ライブドア事件の証人尋問の傍聴記を自身のブログに公開した傍聴記事を、ヤフー(被告)が運営する「Yahoo!ブログ」に原告に無断で掲載され、著作権を侵害され、プロバイダ責任制限法に基づいて発信者情報開示を求め、記事の削除を求めて提訴したが、一審では、原告傍聴記は「著作物」に該当しないとして請求を棄却されたため、原告が控訴していた。
 知財高裁は、原告傍聴記の著作物性について、「原告傍聴記における証言内容を記述した部分は、証人が実際に証言した内容を原告が聴取したとおり記述したか、又は仮に要約したものであったとしてもごくありふれた方法で要約したものであるから、原告の個性が表れている部分はなく、創作性は認めることはできない」等として、原判決は相当であり、控訴を棄却するとした。
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7月17日 「フラッシュ」の橋下弁護士直撃取材事件
   大阪地裁/判決・請求棄却
 平成19年6月、テレビ局の通用口から出てきた橋下徹弁護士(原告)を、雑誌「フラッシュ」(光文社刊)の記者が無断で撮影し、写真を掲載したことで、肖像に関する人格権ないし人格的利益の侵害が受忍限度を超えているとして、光文社および記者に対し、不法行為に基づいて、慰謝料の支払いを求めて提訴した。
 大阪地裁は、不法行為の成否について、「原告は、弁護士として相当数のテレビ番組に出演し……全くの一私人とは立場をことにしていたというべきであり、その言動には相当程度の社会的影響力があったと考えられる。また、その取材目的も、原告が平成15年10月5日にTV番組内でした『日本人による買春は中国へのODAみたいなもの』とする発言に関するものであるところ、……その発言内容や原告の上記社会的地位及び活動内容に鑑みれば、その真意や現在の意見等を取材するという目的は……相応の合理性及び公共性を有するもの」である等として、「金銭的慰謝の措置を講じるだけの違法性」を有するとまではいえない等として、請求を棄却した。
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7月22日 データベースソフトの著作権確認事件
   大阪地裁/判決・請求棄却(控訴)
 原告は、被告「中国塗料(株)」から子会社「信友」に出向の際に、被告会社専務から「船舶情報管理システム」の作成を命じられ、その後、子会社「中国塗料技研」の社長に就任して後も、同システムの開発の続行を命じられて、船舶塗料に関するデータベース、新造船受注システム、塗装仕様発行システム等を含む「船舶情報管理システム」を作成した。
 原告は、独立の際の約束を反故にされたとして、このプログラム著作権が原告に属することの確認、及びこのシステムに対する原告の寄与分割合の確定を求めて提訴した。
 大阪地裁は、原告の主張する「船舶情報管理システム」の著作物性を最初に検討するとして、これをプログラムの著作物と認定したが、システム開発業務は、当初は信友の業務として、後には中国塗料技研の業務として職務上行われ、作成時における契約もなく、勤務規則など別段の定めもないから、著作権法第15条2項によって、職務著作物であり、著作者は法人であるとして請求を棄却した。
 また、寄与分割合の確定については、単なる過去の事実の存否は確認訴訟の対象にならないとして却下した。
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7月23日 焼結機設計図の著作権侵害事件(2)
   知財高裁/判決・新請求棄却(旧請求失効)
 控訴人は、「放電プラズマ焼結機」の設計図から著作者である控訴人の名前を切除して被控訴人の名称に改変した上、その複製物を訴外A社に配布し製造させた行為は、著作権法121条の虚偽氏名表示に該当し、得ベかりし利益を失ったとして、共同不法行為による損害賠償(新請求)を求めて控訴した。
 一方、非控訴人は、仮に不法行為が成立するとしても消滅時効が成立すると抗弁した。
 知財高裁は、控訴人は遅くとも平成7年2月21日までには不法行為による損害が発生したことを知った事実が認められるとし、消滅時効の抗弁は理由があるとして、新請求を棄却した。
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7月30日 商標“オレンジチェリー”審決取消事件(2)
   知財高裁/判決・請求棄却
 「農事組合法人日本植物」は新商品である食用ホオズキについて、果実を指定商品として商標「オレンジチェリー」を出願したが、拒絶査定を受け、不服審判を請求したが、「さくらんぼ」を意味する「チェリー」を含む本願商標を「さくらんぼ」以外の商品に使用するとき「商品の品質について誤認を生じさせるおそれがある」として、請求不成立とされたために、この審決の取消しを求めて訴訟を提起した。
 知財高裁は、「オレンジチェリー」とする本願商標に接した取引者や需要者はオレンジとさくらんぼのミックスしたものないしはその新種の果実を連想したり、「オレンジ色のさくらんぼ」を想起すると思われ、誤認を生じる恐れがある等として、請求を棄却した。
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7月30日 黒澤作品のDVD化事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却(上告)
 黒澤監督の8作品のDVDを輸入し、格安に販売していた控訴人は、映画の著作権の存続期間は満了していないから控訴人の行為は被控訴人の著作権を侵害しているとする一審判決を不服として控訴していた。
 知財高裁は、旧著作権法では、映画の著作名義が監督等の自然人であるとされた場合には生存期間及びその死後38年間であり、著作者となり得るのは原則として自然人であり、「黒澤監督は本件映画の全体的形成に創作的に寄与したものであり、著作者の一人である」とし、被控訴人である東宝は映画公表までには監督から映画の著作権を譲渡されていた、その後、東宝は自ら複製したDVD作品に著作権者と明示して販売しているが、これに対して本件映画に関与した者から著作者であるとの異議が述べられていない等として、控訴人の“映画は映画製作者の単独の著作物であり、団体著作物である”とする主張を退け、一審判決を維持し、控訴を棄却した。
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7月30日 黒澤作品のDVD化事件(大映作品)(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却(上告)
 東宝の事件と同様、(株)コスモ・コーディネートを控訴人とし、角川映画(株)を被控訴人とする、控訴人が格安で輸入、販売する黒澤監督の2作品の映画著作権の存続をめぐる控訴審である。
 知財高裁は、東宝の事件と同様の判断を下し、一審判決を維持し、控訴を棄却した。
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8月6日 動画共有サイトの著作権侵害事件(TVブレイク)
   東京地裁/提訴
 日本音楽著作権協会(JASRAC)は、動画共有サイト「TVブレイク」を運営している「ジャストオンライン」に対し、「JASRACの管理楽曲を含む違法動画の投稿を防止するための対策を講じて違法動画の配信を停止するように要請」したが、要請を拒否し、何の対策もとらなかったとして、著作権侵害行為の差止めと損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。JASRACが動画投稿サイトを提訴するのは初めてだという。
 一方、ジャストオンラインは、「JASRACのプレスリリースにあるような『削除要請を拒否』したことは一度たりともない」としている。

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8月20日 You Tube動画の公正使用(fair use)事件
   米連邦地裁/判決・請求認容
 ペンシルバニア州のステファニー・レンツさんは、自分の赤ちゃんがプリンスの曲“Let’s Go Crazy”に合わせて27秒間台所で踊っている動画に対して、Universal Musicが掲載中止を要請し、You Tubeが約1ヵ月間にわたって動画サイトから削除したのは、デジタルミレニアム著作権法の乱用だと主張して、訴訟を起こしていた。
 プリンスの曲は約20秒間、辛うじて聴き取れる程度のもので、著作権法で保護されている公正使用に当たると主張した。実は、2008年4月にこの訴えは連邦地裁によって却下されたが、僅か10日後に電子フロンティア財団(EFF)がレンツさんの代理として2度目の訴えを起こしていた。
 連邦地裁は、デジタルミレニアム著作権法の下で訴訟手続きを進めるには、「訴える素材の使用が著作権者、代理人、そして法律によって認められていないという誠実な信念に基づき、素材が公正使用に当たるか否かを検討しなければならない」として、Universal Musicの訴えを退け、連邦地裁の却下の決定を覆した。

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8月25日 インド映画「ハリ・プッター」事件
   印ムンバイ地裁/提訴
 米ワーナー・ブラザースは、インド映画「ハリ・プッター:恐怖の喜劇(Hari Puttar ― A Comedy of Terrors)」を制作したインドの映画会社ミルチ・ムービーを、タイトルが酷似しており、著作権侵害に当たるとして提訴した。
 ミルチ・ムービーは、「すでに2005年にはこのタイトルの著作権登録を行っており、ハリー・ポッターとは類似点はない」としているという。AFP通信によれば、「ハリはインドでは一般的な名前であり、プッターは息子を表す」という。

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8月28日 商標“モズライト”侵害事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却(上告・上告受理申立)
 エレキギターの輸入、製造、販売を行う控訴人は、被控訴人2社が控訴人の商標権を侵害しており、不正競争防止法違反であるとして提訴したが、控訴人の一部商標はモズライト社の周知商標と同一または類似であって、登録を無効とすべき商標であり、他の一部の商標は「不正競争の目的で商標登録を受けた場合」にあたり、控訴人が商標権を主張することはできない等として請求を棄却した一審判決を不服として控訴した。
 知財高裁は、控訴人商標は、周知商標であるモズライト商標と同一あるいはモズライト商標の要部と同一であり、モズライト商標と同一又は類似商標である等として、「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標」であり商標登録を受けることができない商標であって、商標法39条、特許法104条の3第1項に基づき、控訴人は控訴人の商標に基づいた権利の行使は許されないとした。また、不正競争行為にも該当しないとして、原判決は正当であるとして、控訴を棄却した。
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8月29日 復刻版歴史資料の“海賊版”流布事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 大韓民国の会社である原告は、原告の発行する書籍が「海賊版」であるとする被告の電子メールやホームページの記事によって名誉・信用を棄損されたとして、損害賠償及び謝罪文の掲載を求めて提訴した。
 原告は、平成12年頃以降「日帝下戦時體制期政策史料叢書」(全98巻)を発行し、韓国国内で販売するとともに、日本へも輸出しているが、北朝鮮関係の図書を専門的に扱う小売商である被告は、原告書籍の一部が、不二出版の昭和8年から20年にかけての「帝国議会説明資料」の復刻版や、龍渓書舎が朝鮮総督府の政策立案メモを収集・発行した書籍の無断複製だとした。
 原告は、「海賊版」とは著作権法に抵触する侵害物件をいうのであり、版面権や商道徳に違反するにすぎないものを含むものではないとして、名誉毀損を主張した。
 東京地裁は、「表現全体を一般読者の普通の注意と読み方とを基準として読めば」「史料集の復刻版の無断複写を海賊版になぞらえて非難していることを読み取るにすぎない」とし、龍渓書舎書籍の無断複写は量からして正当化できるものではなく、不二出版書籍についてはデッドコピーしたものである等として、原告の請求を棄却した。
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9月2日 外務省機密漏洩事件をめぐる元毎日記者の名誉棄損事件(3)
   最高裁(三小)/決定・上告棄却
 沖縄返還交渉をめぐる日米間の「密約」を報じた元毎日新聞記者西山太吉さんは、国家公務員法違反の罪で有罪が確定したが、その後、密約の存在を示す文書が見つかったにもかかわらず名誉が侵害され続けているとして、国に謝罪と損害賠償を求めて上告していた。
 最高裁第3小法廷(藤田宙靖裁判長)は、密約の存在には触れないまま、「違憲及び理由の不備・食違いをいうが、その実質は事実誤認又は単なる法令違反を主張するものであって」適法な上告理由に該当しないとして、上告棄却を決定した。

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9月8日 商標“つつみのおひなっこや”侵害事件(3)
   最高裁(二小)/判決・破棄差戻し
 上告人は、「つつみのおひなっこや」の文字を標準文字で横書きした本件商標の商標権者であるが、知財高裁の判決は、本件商標は引用各商標と観念、称呼において類似し、外観において一部類似し、指定商品が同一ないし類似するとし、全体として類似商標であり、登録できない商標であるとした。
 最高裁は、『本件商標の構成中には、称呼については引用各商標と同じである「つつみ」という文字部分が含まれているが、本件商標は、「つつみのおひなっこや」の文字』を標準文字で同書同大に一行に表わしており、「つつみ」の部分だけを独立して見る者の注意を引くようには構成されていない、また「おひなっこや」の文字部分にも自他商品の識別機能がないとは言えず、「つつみ」の部分だけを引用各商標と比較して類比判断をすることは許されないとして、原判決を破棄し、知財高裁に差し戻した。
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9月17日 レストランのピアノ演奏事件(2)
   大阪高裁/判決・一部変更、一部控訴棄却(上告)
 和歌山市内のレストランが、日本音楽著作権協会(JASRAC)の管理する楽曲をピアノ演奏やライブ演奏をして著作権を侵害したとして、JASRACは、管理楽曲の使用差止め、楽器類の搬入禁止、損害賠償等を請求した。一審の大阪地裁はJASRACの請求の一部を認容したので、双方が控訴した。
 大阪高裁は、『一審被告は、本店店舗におけるピアノリクエスト、ピアノ弾き語り、ピアノBGMにおける演奏、一審被告主催の入場料を徴収する「ライブ」演奏において、JASRACの管理著作物を使用して著作権侵害を継続している』、ただし、第三者主催のライブ演奏および貸切営業においては著作権を侵害したとはいうことができない等として、原判決の一部を変更した。
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9月17日 レストランのピアノ演奏事件B(2)
   大阪高裁/判決・控訴棄却
 レストランを経営する控訴人は、日本音楽著作権協会(JASRAC)が「調査員を侵入させ、実際には無料で開催された演奏会が有料であったかのような領収証を詐取した」、また、「控訴人の顧客がレストランにおいてライブ(「囲む会」)を開催しようとしたのに対し、……虚偽の説明をして、管理著作物の利用許可をすべて拒否して、控訴人の信用を失墜させ、営業を妨害した」等と主張して損害賠償を求めたが、原審は請求をいずれも棄却したため、これを不服として控訴していた。
 大阪高裁は、「囲む会」が無料であったという証拠はないとし、控訴人ではない第三者の著作物利用を正当な理由が無く拒否したことは違法だとする控訴人の主張に対して、「著作権等管理事業者は、正当な理由がなければ、取り扱っている著作物等の利用の許諾を拒んではならない(著作権等管理事業法16条)」とあるが、『「正当な理由」の有無は、著作権者(著作権の管理委託者)の保護と著作権の円滑な利用という法の趣旨を勘案して、』許諾業務の恣意的運営を防ぐという観点から判断すべきであり、本件の場合、開店以来継続的に管理著作物が演奏されていて、このような事情によれば、過去の使用料相当額の清算を利用許諾の条件とすることは、同法の趣旨に反しないとした。ただし、第三者の利用許諾申込みに対して控訴人の精算を許諾条件にすることは同法の趣旨に反するとした。
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9月24日 「首里城」写真集の職務著作事件
   那覇地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 原告は写真家であり同時に被告会社の元取締役で、取締役時代に撮影し原告が著作権を有する写真を、原告に無断で「写真で見る首里城(第4版)」に使用されたとして、被告会社を、複製権侵害等による損害賠償、氏名表示権に基づく謝罪広告等を求めて提訴した。
 多くの争点の中でも、対象写真が職務著作物か否かが大きな争点となった。
 那覇地裁は、原告は、被告会社を事業主とする社会保険、雇用保険に加入していた等の雇用実態を詳細に認定し、従業員兼取締役であって「業務に従事する者」に当たるとした。また、「被告会社の社内方針に従い、被告会社所有の機材を使用して、撮影の都度、当日の作業の報告書である撮影日報を作成」し、 撮影時刻等々のデータを被告会社に報告する等、原告の裁量で自由に撮影していたとする主張を退け、 著作権法15条1項所定の職務著作に当たるとし、入社以前に撮影した一点についてのみ請求を認容し、その他の請求を棄却した。
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9月29日 商標“SUNKID”侵害事件(2)
   知財高裁/判決・請求棄却
 被告片岡物産(株)は、子会社の片岡フードサービスを通じて、片岡フードサービスが運営する喫茶店「サリダ」に商標「SUNKID」を付した「果実飲料」を販売していた。
 原告は、『本件商品は、(片岡物産のアンテナショップである)「サリダ」でのみ販売されたもので、その販売は消費者の嗜好やその変化の市場性調査を目的とするいわば実験的なもの』であり、商標法の規定する商品とは言えない、したがって、不使用商標であるとして登録の取消を請求したところ、特許庁が請求不成立の審決をしたので、その取消しを求めて提訴した。
 知財高裁は、商標法2条3項にいう「使用」は、規模について制限がなく、たとえ少量であっても「使用」に当たり、商品の出所や信用の所在が当該商標により明確にされており、商標本来の機能を果たしているとして、請求を棄却した。
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9月29日 商標“おおたかの森”侵害事件(2)
   知財高裁/判決・請求棄却
 原告は、「おおたかの森」に因む地域の自然保護、環境保全事業の支援を目的として、平成15年11月6日に本件商標を出願し、設定登録を受けた。その後、有機栽培コーヒー農業の経済分析をテーマとして、平成19年5月にハワイ大学から博士号を授与され、その間ハワイ島に在住していた。
 一方、被告は、千葉県流山市で和菓子の製造販売をしているが、平成17年8月、つくばエクスプレス開業に因んだ和菓子の話があり、つくばエクスプレスに確認した上、「おおたかの森」という名称の和菓子の製造販売を始めた。
 被告は、平成19年8月15日、新聞報道で本件商標登録を知り、一時販売を自粛していたが、この和菓子の製造販売を止めるわけにはいかないので、指定商品中「第30類、和菓子、洋菓子、飴菓子」について不使用を理由に取消審判を請求したところ、特許庁は登録を取消す旨の審決をしたので、原告がこれを不服として提訴した。
 知財高裁は、原告は本件商標を冠した冊子で「銘菓」を提案し、冊子の改訂をしたりしているが、これらは商標法の「使用」には当たらない、また、埼玉新聞に「おおたかの森」とメールアドレスを縦二行に書き分けた広告を掲載しているが、具体的商品との結びつきが明らかでないとし、使用したことを認めるに足りる証拠はない等とした。
 また、原告がハワイに居住し、研究が多忙であったから不使用につき「正当な理由」があるとする原告の主張に対し、原告は毎年、年末年始、春季・夏季に度々帰国しているのであるから、不使用について「正当な理由」とは認められないとして、請求を棄却した。
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9月30日 “土地宝典”の違法コピー事件(2)
   知財高裁/判決・一部変更(上告・上告受理申立)
 富士不動産鑑定事務所等の一審原告は、法務局が「土地宝典」を不特定多数の第三者に貸出して、各法務局内に設置したコピー機により利用者による無断複製を放置した行為は、被告自身による複製権侵害行為か、侵害行為の教唆ないし幇助であり、不当利得にもあたるとして、損害賠償の支払いと不当利得の返還を求めた。原判決は、訴外財団法人民事法務協会とともに、国の共同侵害主体を認定し、不当利得を使用料相当額と認定した。
 国は、敗訴部分を不服として控訴を提起した。
 知財高裁は、国は「土地宝典」の「貸出しを受けた第三者が違法な複製行為をしないよう注意を喚起するなどの適宜の措置を講じたと評価できるような具体的な事実もなく、漫然と本件土地宝典を貸し出し、不特定多数の者の複製行為を継続させたといえる」とし、無断複製行為を幇助した点について、少なくとも過失があるとして共同不法行為責任を免れないとした。
 しかし、不当利得については、複製行為は国自らが行ったものではなく、民事法務協会から得ているコインコピー機の設置使用料は、国有財産の一部を占有させたことによる対価の性質を有するもので、民事法務協会が受けるコピー代金に関連して得たものではない等として、原判決の一部を変更した。
判例全文
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9月30日 商標“NEC”侵害事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 香港の電気製品販売会社(控訴人、一審原告)が、中国本土、香港、台湾で「NEC」の商標使用権を認められていたとして提起した商標使用権確認請求訴訟の控訴審で、知財高裁は東京地裁の判決を支持して、控訴請求を棄却した。
 原告は、NECが自身の「子会社」(補助参加人)に対して第三者に商標使用権を許諾する権限を与え、この補助参加人がトーマジャパンに許諾権を与えた。さらにトーマジャパンが原告に使用権を許諾した等と主張し、本件商標を付した製品を製造・販売する権利を有することの確認を求めた一審東京地裁判決を不服として控訴した。
 知財高裁は、“補助参加人からトーマジャパンに対する本件許諾権限の授与があった証拠”とされる“補助参加人からトーマジャパンに対する委任状の写し”について、不自然な点があり、委任状が真正に成立した証拠が無い、原告の主張する表見代理、黙認による権限授与の事実も無い等として、原判決を支持し、控訴を棄却した。
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10月1日 ネット掲示板の中傷事件(大学職員組合)
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 産業能率大学とその代表者理事長が原告であり、元同大学助教授で同大学の教職員組合(以下、産能ユニオンという)の代表者兼執行委員長を被告に争われた事案である。
 産能ユニオンはホームページを開設し、その中に匿名掲示板を設けていた。その投稿の中に原告の名誉毀損または業務妨害に当たるものがあるとして、原告は、それらが被告自らの投稿であるか、仮に一部投稿はそうでないとしても掲示板の管理者である被告が内容確認や削除の義務を怠り、又は内容を確認した上で公開したことを理由とする損害賠償として6,350万円の支払いを求めた。
 裁判所は、投稿が自動的に公開される管理体制が採られていた時点では、名誉毀損が明らかな投稿を知ったときには削除義務を負うが、棄損が明らかでないような場合は第三者から削除請求があって初めて削除義務を負うこと、また、投稿内容の事前確認を経て公開される体制に変更された後の時点では、名誉を棄損する投稿がされた場合は、公開しない条理上の義務を負い、これに反して公開してしまったときは速やかに削除すべき義務を負うことを併せて、この事案の判断理由として示した。そして、投稿の一部については名誉毀損を認め、被告には公開した不法行為の責任があるとして、450万円の損害賠償を命じた。
 その他、被告は、対抗言論や正当な組合活動の法理に基づいて、違法性を免れると主張したが、これらについては認められなかった。
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10月2日 商標“十二単の招福巻”侵害事件
   大阪地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 「招福巻」と縦書きにした商標の商標権を有する大阪の日本料理店経営者の原告は、スーパーマーケットを全国展開するイオン(被告)が、平成19年1月から2月にかけて、「十二単の招福巻」と表示したポスター、チラシで節分用の巻きずしを宣伝、販売し、商標権を侵害されたとして、損害賠償、包装に使用するなどの使用差止を求めて提訴した。
 被告は、『「招福巻」は、節分用の巻きずしの普通名称に過ぎないか、福を招く効能をもたらすという効能を示すものとして普通に用いられる方法で示したものにすぎず、若しくは節分用の巻きずしについて慣用されているものにすぎない』等として、原告の商標権の効力は被告標章には及ばない(商標法26条1項)等と主張した。
 大阪地裁は、節分用巻きずしの“商品名”として「招福巻」が用いられている例が多数あるからといって、そのことで直ちに『「招福巻」が節分用巻きずしの普通名称』であると認めるに足る証拠はない、また節分用巻きずしについて慣用されている商標でもない等として、被告の主張を退けた。
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10月2日 弁護士の“懲戒請求”呼びかけ事件
   広島地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴・上告・上告受理申立)
 
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10月7日 「風雲!たけし城」類似番組事件
   米連邦地裁/提訴
 TBSは、米ABCが2008年夏に放送したテレビ番組「Wipeout(ワイプアウト)」が、「風雲!たけし城」や「SASUKE」、「KUNOICHI」と番組のコンセプトや演出方法が酷似しており、著作権侵害に当たるとして、カリフォルニア連邦地裁に提訴した。また、9日には、同番組の制作会社を、番組の差止と損害賠償を求めて提訴した。
 「Wipeout(ワイプアウト)」は、TBSの各番組の持つ基礎的な構造から番組のフォーマット、イベントの流れ、ナレーション等、多岐にわたって酷似しており、その上、海外への販売にも積極的で、到底看過できないとしている。

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10月8日 法律実務書題号の著作物性事件(2)
   大阪高裁/判決・控訴棄却、新請求棄却
 控訴人(一審原告)は、昭和63年以来、「時効の管理」との題号の法律実務書を出版してきたが、被控訴人(一審被告)が「時効管理の実務」との題号の書籍を出版したため、著作権侵害、著作者人格権の侵害による複製、販売、頒布の禁止、損害賠償を求めて提訴したが、一審判決では、請求がすべて棄却されたため、これを不服として控訴した。
 大阪高裁は、『「時効の管理」という表現を著作物と認めることはできない』とし、『「時効管理の実務」との題号の使用によって控訴人の人格的利益が侵害されたから、不法行為に基づく損害賠償を請求』するとする新請求に対しては、控訴人書籍の題号を殊更に模倣するなどの不正な目的をもって題号を付けたとは認められない等として、控訴を棄却し、新請求を棄却した。
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10月22日 ロックバンド“BRAHMAN”の著作隣接権侵害事件
   東京地裁/判決・請求認容(控訴)
 4人の原告は、ロックバンド「BRAHMAN(ブラフマン)」の名で音楽活動をしているが、被告レコード会社が原告らの演奏レコードを製造販売することに対して、実演家の権利としての録音権、譲渡権を侵害するとして、製造販売の差止を求めて提訴した。
 被告は、「原告らは、……本件レコードの楽曲の著作権をヴァージン・ミュージックに譲渡」したとし、ヴァージンと共同出版契約を締結した被告の依頼によって原告の演奏が行われたものであり、「単なる演奏家は、当該楽曲の著作権者の意向に反して、……著作隣接権の行使として、演奏を固定したレコードの製造の差止めを求めることはできない。そして、原告らも、被告に対し、被告の意向に反して行使できる実演家の著作隣接権を有していない」とした。
 しかし、東京地裁は、原告らは被告に対して、当然、著作権法112条1項により本件レコードの製造、販売の差止めを求めることができるとした。
 また、著作隣接権と著作権とは別個独立の権利であり、「実演家は、当該楽曲の著作権者等から演奏の依頼を受けて演奏をした場合であっても、当該楽曲の著作権等に対して、当該楽曲が固定されたレコードの製造、販売等の差止めを求めることができる」等として、原告の請求を認容した。
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10月23日 児童向け日本語教材の著作権侵害事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 外国人児童向けの日本語教材開発を行っている原告らは、被告らが作成した教育教材「Meu Amigo Kanji 80 Kanjis」等が、原告らが作成した教材「絵でわかるかんたんかんじ80」等を改変したもので、著作権(翻案権)の侵害であり、被告教材試作品を東京外語大学の公式サイトに掲載した行為は、著作者人格権(同一性保持権)の侵害であるとして、損害賠償、謝罪広告、サイトからの電子ファイルの削除を求めて提訴した。
 東京地裁は、原告教材と被告教材、被告教材試作品とを比較した結果、双方に同一点があったとしても、「著作権法によって保護されない、表現それ自体でないアイデア又は表現上の創作性がない部分において同一性が認められるにすぎず、被告教材又は被告教材試作品を作成し、東京外大公式サイトに掲載する行為が、原告らの有する翻案権及び同一性保持権を侵害するということはできない」として、請求を棄却した。
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10月29日 商標“STELLA”審決取消事件(2)
   知財高裁/判決・請求棄却
 原告「ステラ・マッカートニー」社は、元ビートルズのポール・マッカートニーの次女、ステラ・マッカートニーが創作した香水のブランド「STELLA」の商標登録を出願したが、拒絶査定を受け、これを不服として審判を請求したが、請求不成立とされたために提訴した。
 本件商標登録出願は、国際登録後の領域指定により事後指定の日を2003年(平成15年)12月23日とするものであった。
 特許庁は、平成4年から15年9月12日までに登録されていた「スティラ」「STILA」等の4件の先登録商標を引用商標として、本願商標「STELLA」は、「外観は相紛れるものではなく、観念においては比較し得ないが、その称呼において相紛らわしい類似の商標」であり、かつ指定商品も同一又は類似するものであるから商標登録を受けることができないとし、拒絶査定は妥当であり、取り消すことはできないと、審決した。
 知財高裁は、本願商標と引用商標は『ともに3音によって構成され、そのうち、語頭音と語尾音を共通にして、アクセントの置かれる中間音の「テ」と「ティ」のみに差異があるものの、その差異音のうち、一方が他方に置き換えられる可能性』があり、各称呼は相紛らわしいと言わざるを得ないとして、審決を支持した。
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10月30日 商標“レクシス”審決取消事件(2)
   知財高裁/判決・請求棄却
 旺文社は、「レクシス」と大きく横書きにし、その右側に「旺文社」と「レ」文字の縦幅に小さく縦書きにした商標の登録出願をしたが、拒絶査定を受け、請求した不服審判不成立の審決を得たために提訴した。
 知財高裁は、本願商標からは「オウブンシャ」「オウブンシャレクシス」の称呼のみが生じ、「レクシス」の称呼は生じないとする旺文社の主張に対し、『「レクシス」の文字部分は、大きさ及び位置から見て、「旺文社」の文字部分とは分離して表記されており』、主として「レクシス」の文字部分が看る者の注意を強く惹き、取引者、需要者に対しては、「レクシス」の部分が出所識別標識として強く支配的な印象を与えている等として、旺文社の主張を退け、請求を棄却した。
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11月6日 “Make People Happy”類似キャッチフレーズ事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 アイスクリーム等の乳製品の製造販売を営む被告会社は、被告ホームページや広告に「Make People Happy(.)」の文言を使用していた。一方、原告は、アイスクリーム製品等を製造販売する米国の会社で、昭和48年から、日本全国でフランチャイズ事業を展開し、創業精神のスローガン「We make people happy(.)」を、あらゆる機会で目立つ箇所に掲げてきたので、この原告文言は出所表示、自他識別機能を有した周知の営業表示となっていると主張して、被告文言は営業の混同を生じさせ、「他人の商品等表示と同一若しくは類似の商品等表示の使用」にあたる等として、使用禁止を求めて提訴した。
 東京地裁は、「We make people happy(.)」は、4つの英単語からなり、このような平易でありふれた短文の標語そのものは、本来的に自他識別能力を有しないとし、また、原告文言の使用状況から見て、取引業者等に向けたものであって、一般消費者の間に広く認識されていると認められない、したがって、原告文言は不競法の「商品等表示」には当たらないとして、請求を棄却した。
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11月7日 商標“ラブコスメ”侵害事件(2)
   大阪高裁/判決・取消、附帯控訴棄却
 (上告・上告受理申立・上告棄却・上告不受理・確定)
 商品に「Love cosmetic」等の標章を付して販売する控訴人(一審被告)はその標章が、一審判決において、被控訴人(一審原告)の商標「Love」との類否判断で、「cosmetic」は「化粧品」を意味する語であって、「Love」が要部である等として、「被告標章と原告商標は要部において称呼、観念が同一であるから、外観を考慮しても全体として類似する」とされたので、控訴したものである。
 これに対して大阪高裁は、「Love」単独では「商品識別・出所表示機能は弱く、他の語と連結されることにより機能を果たす場合も多い」。他方、「cosmetic」に自他商品識別能力が全くないとは言えず、控訴人標章は必ずしも「Love」のみが要部ではなく、「Love cosmetic」が一体として要部となるとみるのが相当であって外観、称呼、観念において非類似である等として、一審判決の控訴人敗訴部分を取消した。
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11月11日 レンタルサーバー管理者の著作権違反幇助事件(刑)
   京都府警/逮捕
 京都府警生活経済課ハイテク犯罪対策室は日本音楽著作権協会(JASRAC)の管理楽曲を無断でアップロードし、100万人を超える不特定多数のユーザーにダウンロードさせていた携帯サイト「第B世界」の運営者の男性など2人を再逮捕した。
 同時に、これらの行為を違法と知りながら公衆送信を助けたとして、レンタルサーバーの管理者である会社役員を、著作権法違反幇助の疑いで逮捕した。
 携帯違法サイトに関連する著作権法違反幇助による逮捕者ははじめてだという。

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11月21日 音楽プロデューサーの著作権二重譲渡事件(刑)
   大阪地検/起訴
 大阪地検は、この日、音楽プロデューサー小室哲哉容疑者をイベント企画運営会社監査役ともに詐欺罪の容疑で起訴した。
 小室被告は、自身の作詞・作曲した806曲の全作品の著作権を10億円で譲渡する案を、兵庫県芦屋市の投資家に持ちかけ、そのうち5億円を前払い金としてだまし取った疑い。
 806曲中793曲の著作権は、既に音楽出版社約40社に譲渡され、日本音楽著作権協会(JASRAC)に信託されており、さらにその中の主要ヒット曲は、知人の会社に譲渡され、二重譲渡されていて、小室被告は著作権を保有していなかった。

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11月26日 商標“Wii Remote”拒絶査定事件(米)
   米特許商標庁/拒絶査定
 米特許商標庁(USPTO)は、任天堂の「Wii」を対象とする出願商標「Wii Remote」について、「REMOTE」は、単に特性や特徴、機能、用途を記述する語に過ぎないとして、拒絶査定の通知を送付した。米商標法によってUSPTOは、出願商標の単に記述的表現、虚偽の記述、単に地理的な記述等の登録できない一部分について独占的権利の放棄を要求できるが、任天堂に対しては「REMOTE」について権利放棄を求めているという。

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11月27日 「占い本」の著作権侵害事件(激数占い)(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 「生年数」「命数」等を使って未来予知をする占い本の著者である原告は、被告及び被告著書を出版した講談社、テレビ朝日を、著作権(複製権、翻案権)を侵害しているとして発行・販売の差止め、損害賠償、著作者人格権(同一性保持権)に基づく謝罪広告掲載等を求めて提訴したが、一審判決では請求を棄却されたので、控訴したものである。
 知財高裁は、原告の指摘箇所と被告書籍とを対比検討した結果、いずれも「表現上の共通点はなく、また、共通点があったとしても、それらは抽象的なアイデアにおける共通点や創作性のないありふれた表現の共通点にとどまり」、複製又は翻案に該当しない等として、原判決を支持し、控訴を棄却した。
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12月4日 映画のDVD化契約事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 原告は、平成18年3月に発売された「月刊DVDナビゲーター」誌上に、発売元を被告イーエス、販売元を被告イーネットとする、「嵩山少林寺」「CHARON(カロン)」のDVDの発売及び予約受付の広告が掲載されたので、債務不履行による損害賠償、著作権(複製権・頒布権)侵害による損害賠償請求を起こした。
 東京地裁は、「嵩山少林寺」を含むビデオ化権を原告代理人を通じて被告イーエスに2800万円で売り、その売買代金の支払債務が不履行だとする原告の主張に対して、この「売買契約が締結されたとの事実を認めるに足る証拠がない」としてこれを退けた。
 また、原告の代表者である映画監督は、「妻と拳銃」の製作資金の調達の必要に迫られ、「嵩山少林寺」等のビデオ化権を原告代理人を通じて被告イーエスに販売し、代金350万円を受取っており、その後、既に他社から「嵩山少林寺」のDVDが発売されたことがあったことが判明したために被告は発売を中止した等の事実に照らせば、雑誌広告掲載当時、複製・頒布することについて原告から許諾を受けていた可能性が高い、許諾を受けたものと考えたことについて、少なくとも過失はない等として、請求を棄却した。
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12月12日 「発掘!あるある大事典」名誉毀損事件(東京新聞)
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(確定)
 東京都港区のテレビ番組制作会社は、関西テレビの情報番組で、捏造が発覚して打ち切られた「発掘!あるある大事典U」の番組の一つとして製作した「手のひらで悪玉コレステロールの有無を判定するという『手のひら判定』を紹介した番組」を、東京新聞に虚偽の内容だとする記事を掲載されたために損害を受けたとし、発行元の中日新聞社に対して、損害賠償請求の訴訟を提起した。
 東京地裁は、専門分野の事実の真偽を報道するにあたって、手のひら判定の有効性を主張している監修者の大学教授に取材をせず、1人のコメントで判断するなど、充分な取材をしておらず、記事内容を真実とする証明がなされていない等として、中日新聞に約270万円の損害賠償支払いを命じた。

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12月15日 テレビ番組送信サービス事件(まねきTV)(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却(上告)
 日本のテレビ番組をインターネット回線を通じて海外でも視聴可能にする永野商店の「まねきTV」は、放送事業者の有する送信可能化権(著作隣接権、著作権法99条の2)、公衆送信権(著作権法23条1項)を侵害するとして、控訴人等(一審原告。NHK及び在京民放5局)は、差止請求、損害賠償請求に対する一審判決を不服として控訴していた。
 知財高裁は、原判決を支持し、利用者が購入したソニー製品の「ロケーションフリー」をベースステーションとして預かり、各利用者が発する指令により、各利用者が設置している専用端末に対してのみなされる、いわば「一対一」の送信であって、ベースステーションは自動公衆送信装置に当たらないので、被控訴人の行為は送信可能化に当たらないとした。また、被控訴人は、確かにテレビアンテナからベースステーションまで本件放送を送信しているが、利用者の専用端末の指令に応じて、ベースステーションに内蔵されたテレビチューナーがデジタル化した放送データを専用端末が受信することによってはじめて視聴可能になるので、「公衆によって直接受信されること」に当たらず、公衆送信は行われていない等として、控訴を棄却した。
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12月16日 判決文記載事実の営業秘密事件(2)
   知財高裁/決定・申立却下
 申立人萬有製薬(基本事件被告)は、登録商標について不使用につき「第5類薬剤」について取消審判請求(基本事件/知財高裁)を受けたが、口頭弁論期日に出頭せず、答弁書、準備書面の提出もない、したがって、その請求に係る指定商品について登録商標を使用をしていることの事実を認定できないとして、基本事件判決は取消請求を認容した。
 申立人は、この基本事件の訴訟記録中には、基本事件の原告の親会社「独メルク」と申立人の親会社「米メルク」との合意内容が記されており、この合意は申立人において秘密として管理されている営業秘密に該当する、したがって、閲覧あるいはその複製を請求できる者を同事件の当事者に限るとする申立てを行った。
 知財高裁は、訴訟記録中の指摘部分について、「独メルク」と「米メルク」が独立した医薬品企業となった経緯についてはウェブサイトで説明されており、インターネット上のフリー百科事典「ウィキペディア」で説明されている等、既に公然と知られているというべきで、不正競争防止法2条6項にいう「秘密として管理されている……営業上の情報であって、公然と知られていないもの」に当たらない等として、申し立てを却下した。
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12月16日 判決文記載事実の営業秘密事件B(2)
   知財高裁/決定・申立却下
 
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12月17日 商標“キューピー”侵害事件(2)
   知財高裁/判決・請求認容
 キューピーの著作権を譲渡されたとする大阪の男性が出願した、キューピーのイラストに基づく商標(本件商標)が、2006年4月に登録されたが、これに対して原告のマヨネーズ大手「キューピー」は、商標法4条1項十一号の「他人の登録商標又は類似の商標」にあたるとして無効審判を請求して争った。しかし、本件商標と引用商標は非類似であるとして、特許庁が無効審判不成立の審決をしたので、審判取消を求めて提訴した。
 知財高裁は、「キューピー」の際立った容姿によって引用商標からも「キューピー」の称呼及び観念が生じ、キューピーを宣伝広告に使用した原告の「キューピーマヨネーズ」は著名となり、「キューピー」の称呼、観念には識別力があり、本件商標と引用商標は同一又は類似し、商標法4条1項十一号の登録を受けることが出来ない商標である等として、審決の判断は誤りだとして請求を認容した。
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12月24日 美容外科広告事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 女優、タレントの原告は、「コムロ美容外科・歯科」のホームページを管理運営する被告に、氏名及び顔写真等を無断で掲載されて、氏名権、肖像権及びパブリシティ権を侵害されたとして、損害賠償、慰謝料の支払いを求めて提訴した。
 原告とコムロの広告宣伝業務を行っていた会社「オルモック」との間には平成18年3月までの広告出演契約が締結されていた。一方、コムロの経営が悪化したために、被告は「コムロ美容外科」の商標を買い取り、第三者である医師にその商標使用を許諾するとともに、オルモックからコムロのホームページの管理運営を承継したが、平成18年4月以降については、原告と被告との間に広告出演契約がないまま、管理するコムロのホームページに掲載し続けたものである。
 東京地裁では、財産的損害額の算定方法や精神的損害として慰謝料請求の可否等について争われた。
 判決は、芸能人の氏名・肖像は、広く一般大衆に公開されることが前提とされており、当該芸能人自身も、そのことを希望している場合が多いものと推認されるが、芸能人がどのような企業の、どのような商品・サービス等の広告に出演するか、出演を継続するか否か等は、自己の芸能人としてのイメージや、社会的評価等の諸般の事情を考慮して、自己意思に基づいて判断・決定するものであり、無断でその氏名、肖像等を広告に使用された場合には、主観的利益が侵害されたものであり、これによる精神的苦痛は、慰謝料によって慰謝されるべきものであるとして、損害賠償とともに慰謝料の支払いを命じた。
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12月24日 複製写真の不正競争事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 控訴人(一審原告)は、被控訴人四国八十八ケ所霊場会所有の仏画を撮影した写真(本件写真)を書籍に掲載したが、被控訴人が書籍掲載写真をさらに撮影して御影(本件御影)をお札として制作・販売したとして、改正前不正競争防止法と民法の不法行為に基づいて損害賠償を求めたが、原審では請求を棄却されたので、控訴した。
 知財高裁は、本件御影は上記本件写真と同一の形態を有しているので改正前不競法上の「他人の商品……の形態を模倣した商品」にあたる等とする控訴人主張に対して、『同号にいう「商品」とは、競争の目的物たり得るものとして独立して取引の客体とされているものをいい、ある商品を構成する要素の一部であって、それ自体が現に独立して取引の客体とされていないようなものは、「商品」に該当しない』とし、商品を構成する一部が独立に管理し、取引することが可能であるとしても、現に取引に供されていないものを「他人の商品」として保護する必要はない等として、控訴を棄却した。
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12月24日 北朝鮮映画のニュース報道事件(日本テレビ)(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却、拡張請求棄却、
        予備的請求一部認容、一部棄却(上告)
 「朝鮮映画輸出入社」と「カナリオ企画」が、日本テレビが平成16年6月30日のニュース番組で北朝鮮映画を無許諾で放送したとした訴訟の控訴審である。
 知財高裁は、北朝鮮のベルヌ条約加盟と国家承認とは別個の問題であり、未承認国に対して、国際法上の主体である国家間の権利義務関係は認められないとする原判決の判断は相当であったとして、控訴を棄却した。
 しかし、本件映画を営利目的で無許諾放映をしたことは社会的相当性を欠き、控訴人カナリオ企画の利益を違法に侵害する行為であり、著作権法の保護がなくても、民法709条の保護を得る利益があるとして、予備的請求の一部を認容した。ただし、許諾料相当額の損害賠償の主張に対し、“著作権のある著作物と同様の損害を認めることは相当ではない”として、民事訴訟法248条を適用、損害額を10万円、弁護士費用を2万円と認定した。
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12月24日 北朝鮮映画のニュース報道事件(フジテレビ)(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却、拡張請求棄却、
        予備的請求一部認容、一部棄却(上告)
 「朝鮮映画輸出入社」と「カナリオ企画」は、フジテレビが平成15年12月15日のニュース番組で北朝鮮映画を無断で放送したとした訴訟の控訴審である。
 知財高裁は、同日判決の上記日本テレビ訴訟と同じ判断で控訴請求を棄却。予備的請求の一部を認容し、損害額を10万円、弁護士費用を2万円と認定した。
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12月24日 商標“DAKS”侵害事件(2)
   大阪高裁/判決・控訴棄却
 ダックス社の商標を付して「英国王室御用達DAKS社リバーシブルベルト」と称するベルトを輸入・販売している控訴人(一審被告)は、被控訴人(一審原告)である英国企業ダックス・シンプソン・グループと日本での商標の専用使用権を有する三共生興が商標権、専用使用権等の侵害や信用毀損による損害賠償、謝罪広告等を求めて提訴した原審で、被控訴人の請求が一部認容されたので、これを不服として控訴していた。
 大阪高裁は、原審を支持し、「一般消費者のうち品質上の差異等を認識し得たのは、本件商品を購入した95人ないしその近親者に限られると言えるから、……本件商品を販売されたこと自体による信用棄損の程度は限定的」であるが、「カタログやウェブサイトには、世界的高級ブランドであるダックスブランドの正規品が本来の5分の1以下の著しい低価格で販売されていると認識させるものであるから、信用棄損は相当に大きい」等として、控訴を棄却し、謝罪広告掲載についても原判決を支持した。
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12月25日 ゲームソフト「猟奇の檻」事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 原告は、原告コンピュータゲームソフト(本件ゲームソフト)のリメイク版として販売している被告ゲームソフトは原告が著作権を有する「映画の著作物」の著作権(翻案権)侵害だとして、損害賠償を求めて提訴した。
 本件ゲームソフトが「映画の著作物」にあたるか、その著作権は原告に帰属するか等が争われたが、東京地裁は、本件ゲームソフトは、多数の静止画像の組合せによって表現されているにとどまり、動きのある連続映像として表現されていないから「映画の著作物」の要件を充足していない、また、原告が行ったのはプログラムの創作行為そのものであり、映像の著作物の創作行為とは認められないから、著作権は原告に帰属しない等として請求を棄却した。
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12月25日 「週刊現代」のキヤノン創業者名誉棄損事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 キヤノン及び代表取締役会長御手洗冨士夫は、平成19年10月20日号の週刊誌「週刊現代」に、「キヤノン御手洗冨士夫会長と七三一部隊と題する記事が掲載され、読者に、キヤノン及び御手洗冨士夫が「七三一部隊」と特殊な関係があるとの誤解を生じさせるものであり、名誉棄損に当たるとして、講談社に対して2億円の損害賠償と謝罪広告を求めて提訴した。
 東京地裁は、記事自身は名誉棄損に当たらないとしたが、「キヤノン御手洗冨士夫会長と七三一部隊」とした表紙と新聞広告については、同部隊と直接的な関係があるとの誤解を与え、省略や誇張の許容範囲を超えるとして、200万円の賠償金支払いを命じた。

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12月25日 パチスロ「機動戦士ガンダム」事件
   東京地裁/判決・主意的請求一部認容、一部棄却、予備的請求棄却
 回転式遊技機(パチスロ)の液晶画面表示用として「機動戦士ガンダム」のアニメ映画の映像を3次元コンピューターグラフィック(3DCG)によるシーンデータに加工するための開発業務委託契約に基づき、原告が被告に未払いの対価を求めて提訴。
 主な争点は、納品の前提となる各シーンデータの制作作業がどの程度仕上がれば完成と言えるのかという点であった。シーンデータの品質を定める「仕様書」とも言うべき原告が承認した被告の要望事項には、「本件元映像にできる限り似せて3DCG映像を制作すること」とあり、被告は、「そっくりそのまま」似ていると言わしめるような相当高い水準が要求されることが原告と被告間の了解事項であったと主張した。
 裁判所は、本件映像が手書きの平面画像なので3DCG画像が「そっくりそのまま」似ていると言えるかどうかは程度の問題であるとした。その上で、被告の査定表などを総合的に考慮して、250点のシーンデータの出来型を5つのランクに分け、被告に、出来型の金銭的評価の未払相当金3,327万円の支払いを命じた。
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12月26日 類似「黒烏龍茶」事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(確定)
 原告サントリーは、周知・著名な自社の商標「黒烏龍茶」と類似の商品表示を付して2種の商品を製造販売したとして、被告企業らに対して、不正競争防止法2条1項一号または二号違反による製造差止め、包装等の廃棄、損害賠償の請求、さらには、ウェブサイト上の広告によって商標権、著作権(複製権)を侵害されたとして、誤認惹起行為や虚偽事実の流布行為の差止め、複製権侵害行為の差止め、損害賠償、信用回復措置等々を求めて提訴した。
 東京地裁は、被告らが被告商品Aの販売を開始したときには、原告商品は周知性を獲得していたが、著名とまでは言えなかったとしたが、被告商品Aの商品表示は外観、称呼、観念ともに類似しているとして、不競法違反を認め、商品Bについては否認した。また、ペットボトル容器のパッケージデザインの著作物性については、応用美術の領域に属するものであるとして著作物性を否定し損害賠償請求の一部を認容したが、その他の請求は棄却した。
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12月26日 槇原敬之vs松本零士「約束の場所」事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却、一部却下(控訴)
 原告槇原敬之氏は、自身が作詞した歌詞のサビの部分の表現が、被告松本零士氏の漫画「銀河鉄道999」中の表現を模倣したものだとして、テレビ取材に応じてした被告発言によって名誉を傷つけられたとして、「被告が著作権(複製権、翻案権)及び著作者人格権(同一性保持権)に基づく損害賠償請求権を有していないことの確認、名誉棄損による損害賠償支払並びに謝罪広告」を求めて提訴した。
 東京地裁は、著作権及び著作者人格権に基づく各請求権を、被告が別件の裁判の中で放棄したので、不存在確認の利益がないとしてこれを却下した。しかし、名誉棄損に関しては、生放送における「被告表現に依拠したことを原告が認めた」という被告発言は原告の名誉を棄損したと認定した。
 被告表現「時間は夢を裏切らない。夢も時間を裏切ってはならない」と原告表現「夢は時間を裏切らない。時間も夢を決して裏切らない」という両表現について、『このように短い文章においては「裏切ってはならない」と「決して裏切らない」という……両表現の相違は大きい』として、原告表現は、「依拠したのでなければ説明できないほど酷似しているとは言えない」とした。
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