判例全文 line
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【事件名】データベースソフトの著作権確認事件
【年月日】平成20年7月22日
 大阪地裁 平成19年(ワ)第11502号 著作権確認等請求事件
 (口頭弁論終結日 平成20年3月27日)

判決
原告 A
被告 中国塗料株式会社
訴訟代理人弁護士 小山雅男


主文
1 原告が別紙著作権目録記載の「船舶情報管理システム」について著作権を有する旨の確認を求める原告の請求を棄却する。
2 本件訴えのうち、原告が別紙著作権目録記載の「船舶情報管理システム」に対する原告の開発寄与分の割合の確認を求める部分を却下する。
3 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由
第1 当事者の求めた裁判
1 請求の趣旨
(1) 原告が別紙著作権目録記載の「船舶情報管理システム」について著作権を有することを確認する。
(2) 前項の「船舶情報管理システム」に対する原告の開発寄与分がどれほどの割合かの確認を求める。
2 請求の趣旨に対する答弁
(1) 原告の請求をいずれも棄却する。
(2) 訴訟費用は原告の負担とする。
第2 当事者の主張
1 原告の主張
(1) 原告は、昭和37年4月、被告に入社し、昭和45年2月には企画第2課長、昭和47年に広島工場業務課課長兼務となり電算機導入に伴う製品コード、原材料コードの開発、適正在庫管理システムのための常備品、準常備品、特注品種別在庫・生産管理システムを導入し、製造コストの減少、営業担当者別返品管理体制による返品率大幅減少を達成した。その間滋賀新工場建設に従事し、昭和48年3月完成後に製造課長として生産に従事し、被告の生産能力を倍増させ、被告は資本金を4億円から16億円に年2度の倍額増資を果たした。原告は、新工場生産を軌道に乗せた昭和50年1月より資材課長として、新原材料、代替原材料の積極的採用、コンピュータへの単価設定即時入力方法の導入による月次収益計算のスピード化を達成した後、品質管理課長(滋賀工場勤務、) 広島品質管理課長を経て、昭和60年、被告の子会社で商社の信友株式会社(以下「信友」という。)に出向した。
(2) 原告は、 信友に出向する際、 被告代表取締役のA ( 以下「A 」という。)から船舶情報管理システムの開発・業務運営を行う旨の特命を受け、開発・運営費用として原告とオペレーター社員の人件費、その他開発に要した総費用の10%を信友の利益として被告が負担するとの約束の下で、その開発及び業務運営に当たった。そして、被告は、データベース開発・運営に係るコンピュータ設備費、ソフト開発費、原告及び専従社員、アルバイトなどの人件費、出張旅費、通信費、その他経費一切の費用に加え、子会社のマージンとして10%を加算した金額を原告が退職する平成5年1月末まで支払い続けた。
(3) 「船舶情報管理システム」とは、一言でいえば「世界の船舶塗料の戸籍簿」であり、新造船建造時の塗料から現在就航している修繕船の塗料について、過去、現在、将来の受注実績、シェアから成績を含め、すべての必要情報の入力、取り出しを瞬時に行い、活用できるようにしたもので、被告の売上げの大半を占める船舶塗料営業・技術の中枢を占めるデータベースである。
 すなわち、新造船受注システム、塗装仕様発行システム、修繕船管理システム、入渠船成績管理システム、船主、造船所情報等の船舶・塗装・成績・受注までの情報を入力し、必要データの取り出し、ユーザーが満足する製品供給と受注拡大を目的とするシステムである。
 このような船舶情報管理システムを作るために徹底的に自分のアイデアを関係者らにぶっつけ、さらにアイデアを磨き、優秀なシステムエンジニア、プログラマーの意見を聞き、プログラム設計を行った後、プログラムを外注し、システム完成後は作業者を始め関係する人たちの意見を聞き、自分の改善事項に対するアイデア改善を繰り返し行い、入力データを確認し、データベースとして少しでもよくなるように努力を続けていた。
(4) 主要システムの概要及び特徴は、次のとおりである。
ア 新造船受注システム(甲第23号証の1〜第23号証の15の2)
 船舶用塗料は、新造船に塗装された塗料メーカーの製品がその後も引き続き塗られるもので、船が建造される時に製品が採用されることが最も重要である。新造船受注システム稼動以前は、担当部門(主に営業)が大手主要造船所で建造される船舶情報を集め、手書きで建造スケジュール表を作り、営業活動を行っていたので工数もかかり、また情報の抜けや、必要部署に適切に伝達されないという問題があった。また中小造船所の新造船建造情報までは手が回らず、建造後就航している船舶を追跡調査することも難しく、これらを解決するため原告が作ったシステムである。
 建造計画情報からコンピュータ入力を行い、他社を含めた受注活動状況、建造スケジュール表、塗料メーカーが決まっていない船、決まった船(塗装部分を含め)の必要情報がいつでもコンピュータから取り出るので、被告中国塗料の新造船用塗料受注活動、管理はすべてこのシステムにより行われている。また、新造船塗料受注シェア計算がシステム稼動開始までさかのぼり、各年次で取り出せるから、年度ごとのシェアアップ数値を求めることができる。
 新造船受注システムは、新造船計画段階の情報収集から、受注までの各時点でのあらゆる情報を集め、コンピュータに入力し、関係部署(船主店所、造船所店所、荷主店所、統括部署)に出力を重ね、受注活動の促進をはかり、受注を確定させる他社にないシステムで原告が被告中国塗料のために作った独自システムである。
 まず、船主、造船所、商社、傭船社、業界新聞、社内担当から新造船の建造情報を得るとこの情報をこのシステムに入力する。すると、コンピュータから各種受注ワークに必要な情報が出力され、関係各店所に送られる。送られた各担当店所は、関係部署と受注のための情報交換を行いながら船舶各部の塗料受注活動を展開し、随時情報を統括部署の船舶企画室に送る。船舶企画室は各店所からの情報を常にコンピュータに入力・更新を行い受注活動情報の整備を行う。最終的には各造船所で建造される一隻毎の船舶各部の塗料メーカーの決定状況、各塗料メーカー別の受注総隻数、総トン数、各メーカー別のシェア、国内のみならず海外の造船所の新造船のスケジュール表、船舶各部の塗料メーカー受注状況が常時最新状況で把握できる。また、受注活動ワーク中の状況も把握でき、受注活動ワークに対する適切な指示や対応が常に図られる。
 新造船受注活動システムは、昭和64年から稼動を開始し、全国の造船所で建造される船舶の塗料受注活動のために活用されていた。現在では世界の造船所で建造される船舶情報が入力され、受注ワークに活用されているシステムになっていると確信している。
イ 塗装仕様発行システム(甲第24号証の1〜甲第25号証の6)
 技術部においては営業の要求に応じ、船舶各部に塗る塗料の塗装仕様(主に新造船や大型修繕船、重要製品など)をいちいち手書きで発行していた。手書きで塗装仕様を作る手間とクレームが起こった際、過去発行した塗装仕様(塗装された)の船を捜し出す手間は多大なものであった。
 原告は、コンピュータから最適塗装仕様を前回塗装仕様と対比させて発行し、塗装された塗料の適否、これからの製品開発に役立てるシステムを提案し、作ったシステムである。コンピュータ化したことにより簡単に塗装仕様書が発行され、クレームなど必要なデータが瞬時に検索できる効果は大きなものである。以前は手書きの前回仕様と今回仕様を探しだし、見比べながら検討していたものを前回塗られた塗料と今回塗られた塗料が対比して見られるため、各種の検討が一目で行うことが出来るようになったシステムである。塗装仕様発行システムは、新造船塗装仕様書発行システムと修繕船塗装仕様書発行システムとがある。
ウ 成績管理システム(甲第26号証の1〜8)
 いつどのような塗料が、どのように、どれだけ塗られ、その成績がどんなものかを正しく判断する基準をシステム化し、コンピュータに入力し、必要なデータをいつでも取り出すようにしたシステムである。
 成績管理システムは成績管理において考えられるあらゆることに対応を図ったシステムと自負するもので、クレーム対応、成績管理、実績管理、報告書提出等の業務に活用されている。船舶情報管理システムは、船舶の建造設計段階から受注を目的とした受注活動情報をコンピュータに入力し、受注を計り、塗装後の成績を管理し、さらにユーザーが満足する製品を供給し、また他社より優れた製品開発システム構築を目的として原告が取り組んだシステムである。成績基準は、技術部が作らねば原告はコンピュータ化することは出来ない。他のシステム稼動後、技術部責任者から船舶情報管理システムに成績管理システムが出来ていないという声が上がっていた。平成4年に技術部責任者(取締役)が同期のBに代わったので技術部に成績基準の作成をしつこく督促し、システム作成にかかったものであった。成績管理システムアイデアは長年原告が温めていたものだったから成績基準確立後は、短期間で完成し、予想以上に良いシステムに仕上がった。
エ 修繕船入渠管理システム(甲第27号証の1〜甲第29号証)
 船舶は、船底部分に牡蠣、フジツボ、アオサなどの藻が付くと摩擦抵抗が大きくなり、燃料消費量が上がり、船のスピードが落ちるので、これら海生物が付かないよう毒物入りの塗料を短期的には半年、長期的には4年程度で周期的に再塗装する。船舶塗料を売上の主体する被告中国塗料にとっては、修繕船塗装受注体制をさらに充実させることは、絶対的に必要であった。新造船受注拡大は新造船受注システムの定着により計られたが、当初作った修繕船入渠管理システムは、十分なものでなく活用も不十分でシステム改善を計らねば効果が上がらないと原告は、長年考えていた。
 成績管理システムを完成させ、修繕船入渠管理システムにも成績管理を導入し、入力、出力方法も簡便にした修繕船入渠管理システムの改善策を考え、アイデアを固め、Aにアイデアをぶっつけ業務委託、独立を後押ししてくれれば退職、独立し、この修繕船入渠管理システムの作成に取りかかろうと思い、平成4年11月20日Aとの会談が実現した。
 上記面談でAに原告が説明した修繕船システムの概要は、修繕船が次回入渠する時期と場所、使用塗料予定量、売上数量と金額概算、その見積書の発行、代理店別・月別、年別販売予測と結果、担当者別各種データの把握、成績及び履歴、クレームとその内容、クレーム履歴、修繕船に関する必要データをタイムリーに把握し、様式も簡便にまとめ、扱いやすいシステムを作るというものだった。この修繕船入渠管理システムが完成すれば、主要代理店にコンピュータ端末を置き、回線でつなぎ、入渠する修繕船について双方向からデータの出し入れを行えるようにもできるシステムであった。原告が独立後この修繕船入渠管理システムの開発を請け負うことで、被告中国塗料も売り上げ増加、増収が期待できるものであった。
オ チェック項目検索システム(甲第30号証の1〜3)
 船舶情報管理システムで必要なチェック項目すべてを網羅したと自負する検索システムである。入力された船名、船種、トン数、速度、航路、稼働率、船会社、船主グループ、建造造船所名、入渠造船所名、引渡し年月日、前回、今回、次回入渠年月日、売船先船会社、売船先船名、新造船時塗装塗料名、前回、今回塗装塗料名、塗装時の下地処理、膜厚、塗装系、塗装仕様No、さび、ふくれ、はがれなど塗膜の損傷状態。フジツボ、アオサなど海生動物の付着状態などコンピュータに入力されたデータすべてを必要なデータに加工し、瞬時に取り出せる検索システムである。
 被告中国塗料の船ばかりでなく、他メーカー塗料が塗装された船の塗料、塗装の欠陥、クレームについての情報も検索も可能であるから他社に対する営業攻撃にも威力を発揮している。
カ 入渠予定リスト(甲第31号証の1・2)
 造船所に入渠する船舶の予定を年月別、造船所別、担当店所別、船主別、船種別、塗料メーカー別、塗料タイプコード別にどの組み合わせても出力できるようにしたものである。統括部署の船舶企画室が各担当店所の毎月3ケ月先までの入渠予定船舶を出力し、各店所に発送、管理していた。受注活動、ユーザー管理、他社製品攻略、クレーム対応などに活用され、重要度の高い情報である。
キ その他データベースを支える船舶、塗料、塗装、船主、造船所、成績管理等マスタープログラム類
 前記システム類の十分な成果を得るには、システムを支えるマスタープログラム類が求められる。いずれのマスター類も原告が効果を検証しながら外注先に作らせたものである。
(5) 原告が開発、運営していた船舶情報管理システムの詳細は、次のとおりである。
ア 新造船受注システム(甲第23号証の1〜甲第23号証の15の2)
(ア) 入力画面
a 新造船受注システムメニュー画面(甲第23号証の1)
 総合メニュー(甲第22号証)から新造船受注システムaを選択し、新造船受注システムから新造船指名活動票入力を選択、画面bに進む。
b 新造船指名活動票入力画面(甲第23号証の2)
 登録、修正、問合せ、削除のいずれかを選択し画面cに進む。
c 新造船指名活動入力画面(甲第23号証の3)
 この画面は検索画面で整理番号、年(1桁)、月(2桁)、日(2桁+枝番)で設定されているので、簡単に過去の受注票を整理番号のスタート、エンドで検索することができる。受注票修正、確認などに使用する。この画面を必要としない場合は、実行キーで次画面dに進む。
d 新造船指名活動入力画面(甲第23号証の4)
 船主、船種、大きさ、造船所、荷主、商社、塗装各部決定塗料メニュー、その概算金額、受注活動協力者への指名料支払の有、無、その金額などを入力し、画面eに進む。
e 新造船指名活動入力画面(1)(甲第23号証の5の1)
 この画面で船主、造船所、運行業者、商社に対する指名願いの可否の入力を行い画面fに進む。
f 新造船指名活動入力画面(2)(甲第23号証の5の2)
 この画面で船主、造船所、運行業者、商社に対する指名活動状況をいつどのように行い、現状はどうであるかを入力し画面gに進む。
g 新造船指名活動入力画面(3)(甲第23号証の5の3)
 前画面からの続き画面である。入力後画面hに進む。
h 新造船指名活動入力画面(4)(甲第23号証の5の4)
 新造船各部の塗料金額、指名活動を依頼した先に対する指名料支払先及び支払金額などの入力で完了。
(イ) 出力票類
 入力されたデータから以下のものが出力され、新造船受注のための業務に活用される。
a 新造船指名活動出力票(甲第23号証の6)
 入力後、新造船指名活動出力票が出力され、各部署が出力された新造船指名活動出力票に基づき指名(受注)活動を行い、結果を入力し、修正を重ね、受注に至るまでのシステムである。このような船舶塗料受注活動をしつこくトレースするシステムは他社にはない原告オリジナルのシステムである。多分現在も先行開発の有利性を存分に発揮しているシステムと確信する。
b 店所別メーカー別受注集計表(船主別)(甲第23号証の7の1)
 総合メニュー(甲第22号証)から店所別メーカー別受注集計表(船主別)を選択、本画面で店所、竣工年月、塗料メーカー、船種、トン数レンジ(1から5レンジまで選択可能)を入力、実行でdが指定した範囲内で店所別メーカー別受注集計表(船主別)が出力される。
c 同出力表サンプル(甲第23号証の7の2)
d 店所別メーカー別受注集計表(造船所別)(甲第23号証の8の1)
 総合メニュー(甲第22号証)から店所別メーカー別受注集計表(造船所別)を選択、本画面で店所、竣工年月、塗料メーカー、船種、トン数レンジ(1から5レンジまで選択可能)を入力、実行でeが指定した範囲内で店所別メーカー別受注集計表(造船所別)が出力される。
e 同出力表サンプル(甲第23号証の8の2)
f 店所別指名料明細(船主別)画面(甲第23号証の9の1)
 総合メニュー(甲第22号証)から店所別指名料明細を選択、本画面で店所、竣工年月を入力、実行でgが指定した範囲内で店所別指名料明細(船主別)が出力される。
g 同出力表サンプル(甲第23号証の9の2)
h 造船所別新造船船表画面(甲第23号証の10の1)
 総合メニュー(甲第22号証)から造船所別新造船船表を選択、本画面で、竣工年月、造船所ランク、造船所コード、船種、船主、傭船者、荷主、商社コードを入力、実行でiが指定した範囲内で造船所別新造船船表一覧が出力される。
i 同表出力表サンプル(甲第23号証の10の2)
j 店所別新造船船表(造船所別)画面(甲第23号証の11の1)
 総合メニュー(甲第22号証)から店所別新造船船表(造船所別)を選択、本画面で、竣工年月、店所、船種を入力、実行でkが指定した範囲内で店所別新造船船表一覧(造船所別)が出力される。
k 同出力表サンプル(甲第23号証の11の2)
l 店所別新造船船表(船主別)画面(甲第23号証の12の1)
 総合メニュー(甲第22号証)から店所別新造船船表(船主別)を選択、本画面で、竣工年月、店所、船主グループ、船主コードを入力、実行でmが指定した範囲内で店所別新造船船表一覧(船主別)が出力される。
m 同出力表サンプル(甲第23号証の12の2)
n 造船所別新造船線表画面(甲第23号証の13の1)
 総合メニュー(甲第22号証)から造船所別新造船線表を選択、本画面で、竣工年月、店所、造船所コード、塗料メーカーコードを入力、実行でoが検索された造船所での新造船建造状況が線表で出力されるので、一目で起工、進水、引渡しがわかる。
o 同出力表サンプル(甲第23号証の13の2)
p メーカー未決定新造船船表(船主別)画面(甲第23号証の14の1)
 総合メニュー(甲第22号証)からメーカー未決定新造船船表(船主別)を選択、本画面で、竣工年月、店所、船主グループ、船主コード、1.SP、2.船底、3.外板、4.暴露、5.内部、6.タンク、7.BWTを入力、実行でqが指定した範囲内で店所別新造船船表一覧(船主別)が出力される。
q 同出力表サンプル(甲第23号証の14の2)
r メーカー未決定新造船線表(造船所別)画面(甲第23号証の15の1)
 総合メニュー(甲第22号証)からメーカー未決定新造船線表(造船所別)を選択、本画面で竣工年月、店所、船主グループ、造船所コード、1.SP、2.船底、3.外板、4.暴露、5.内部、6.タンク、7.BWTを入力、実行でsが検索された造船所での塗料メーカーが決まっていない新造船建造状況が線表で表示されるので一目で判断できる資料が出力される。
s 同出力表サンプル(甲第23号証の15の2)
イ 塗装仕様発行システム(甲第24号証の1から甲第24号証の6まで)
 塗装仕様発行システムは、新造船塗装仕様と修繕船塗装仕様からなっている。
(ア) 新造船塗装仕様発行
 造船工程、船主の意向などに基づき、営業の要求を受けた技術部が作成、発行するもので、aからfまでは入力画面、gは出力サンプルである。
a 新造船塗装仕様メニュー画面(甲第24号証の1)
 総合メニュー(甲第22号証)から塗装仕様・成績管理システムaを選択し、新造船塗装仕様入力を選択、画面bに進む。
b 新造船船舶情報入力第1画面(甲第24号証の2)
 登録、修正、問合せ、決定登録、未受注抹消から、登録いずれかを選択し画面cに進む。
c 新造船塗装仕様入力画面(No1)(甲第24号証の3)
 この画面は、新造船が持つ情報(担当店所担当者、船主、運行業者、造船所、船種、大きさ、速度、起工、ブロック、進水、引渡し年月日、次回入渠、入渠間隔その他データ)を入力し、次画面に進む。
 この新造船塗装仕様入力画面の特徴は、訂正入力(現在では普通の入力方法であるが)を時代に先駆け取り入れている。
 造船所が過去建造した船、船会社が所有している船には、同サイズ、同塗装仕様の船が存在するので、過去の同じものを検索し、呼び出し、訂正入力する方が簡単に入力できる。
 画面dからfは、塗料、塗装に関する入力画面である。
d 新造船塗装仕様入力画面(No2)(甲第24号証の4)
 新造船塗装仕様入力画面(No2)は、船舶各部にどんな塗料をどのように塗装するかという指示書(塗装仕様)である。1塗装部分に対し1画面としている。要求された塗装部分の塗装仕様を作成し、次画面eを作成する。
e 新造船塗装仕様入力画面(No3)(甲第24号証の5)
 この画面は、塗装仕様の決定の経緯、塗装仕様に対する保証期間の有・無、期間、塗装仕様チェックの確認などの入力画面である。入力後画面fに進む。
f 新造船塗装仕様入力画面(No4)(甲第24号証の6)
 発行する新造船塗装仕様に対する、補足、注意、特記事項などの入力画面である。入力を簡便にするため、予め定文化した文書番号を入力、訂正することとしている。入力後g、新造船塗装仕様が出力され、関係部署に送られる。
g 新造船塗装仕様出力サンプル(甲第24号証の7)
(イ) 修繕船塗装仕様システム(甲第25号証の1から6まで)
 通常は店所担当が発行するが、重要船会社(日本郵船など)、大型船、新しい塗料、塗装などの船は技術部が発行する。aからeまでは入力画面、fは出力サンプルである。
a 修繕船船舶情報入力画面(甲第25号証の1)
 @総合メニュー(甲第22号証)から塗装仕様・成績管理システムを選択、A修繕船塗装仕様入力、選択で本画面。登録、修正、問合せ、削除、決定登録、未受注抹消、終了いずれかを選択し画面bに進む。
b 修繕船塗装仕様入力画面(No1)(甲第25号証の2)
 船コード検索、入力で当該船舶情報、前回塗装仕様があれば次画面以降cからeに前回塗装仕様が表示される。
c 修繕船塗装仕様入力画面(No2)(甲第25号証の3)
 この画面に塗装仕様作成分だけ作られるが、前回塗装仕様のある場合は、画面は前回塗装仕様が表示されているので今回変更分の訂正入力を行い、次画面dに進む。
d 修繕船塗装仕様入力画面(No3)(甲第25号証の4)
 チェック項目、協議者など必要項目を入力し、次画面eに進む。
e 修繕船塗装仕様入力画面(No4)(甲第25号証の5)
 発行する塗装仕様に対する補足、注意、特記事項などの入力を行い、終了するが、入力を簡便にするため、予め定文化した文書番号を入力、訂正する。入力後fが出力され、関係部署に送られる。
f 修繕船塗装仕様、出力票(甲第25号証の6)
 最大の特徴は前回塗られた塗装仕様と今回塗られる塗装仕様が対比して出力されることである。前回塗装仕様と今回塗装仕様が対比して出力されることによって、ユーザーへの提案と了承も得やすい。多分現在ではパソコンを使い、出力票はさらに読みやすく、検討しやすくなっているものと思われるが、基本的には原告が作成した様式が踏襲されているものと確信する。
ウ 成績管理システム(甲第26号証の1から8まで)
 営業担当及び技術部立会者が発行する。(ア)から(キ)までは入力画面、(ク)は出力サンプルである
(ア) 立会成績入力(甲第26号証の1)
 @総合メニュー(甲第22号証)から塗装仕様・成績管理システムを選択、A立会成績を選択、本画面。登録、修正、問合せ、削除、終了いずれかを選択し(イ)画面に進む。
(イ) 船舶情報入力画面(No2)(甲第26号証の2)
 船コード検索から該当船舶を呼び出し、修正部分を修正し、次画面(ウ)前回塗装仕様画面に進む。
(ウ) 前回塗装仕様入力画面(No3)(甲第26号証の3)
 前回塗装仕様を確認、前回塗装仕様が入力されていない場合、この成績入力時に前回塗装仕様を調査、入力し、次画面(エ)入渠管理画面に進む。
(エ) 入渠成績(No4)画面(甲第26号証の4)
 船体各部の防蝕成績、防汚成績について、5点法で入力し次画面(オ)成績コメントに進む。
(オ) 入渠成績・塗装・その他コメント画面(No5)(甲第26号証の5)
 このコメント画面への入力がユーザーへの成績報告書の原稿となり、また製品改良、新規製品開発の蓄積データとなる。立会成績入力後次画面(カ)今回塗装仕様入力画面へ進む。
(カ) 今回塗装仕様入力画面(No6)(甲第26号証の6)
 立会成績塗装仕様後、今回実際に塗られた塗装仕様を入力する。この画面では、すでに塗装仕様が発行されている場合には、画面には発行された塗装仕様が表示されている。入力者は、発行された塗装仕様を実際に塗られた塗装仕様に修正し、次画面(キ)実際に使用された塗料明細までを入力する。
(キ) 使用塗料明細(No7)(甲第26号証の7)
 使用塗料明細まで入力することで、塗装状況が推測され次回入渠時の成績予測、塗料使用予測などが可能となるので、この画面も重要である。
(ク) 立会成績出力票(甲第6号証の8)
 前述のとおり前回と今回立会成績が対比してみることができ、問題の把握が容易であり、クレーム防止、製品改良、新製品の実船テストと開発に威力を発揮しているシステムである。
エ 修繕船入渠管理システム(甲第27号証の1から甲第28号証まで)
(ア) 原告が退職まで運用していたシステム、aからdまでは入力画面、eからgまでは出力サンプルである。
a 修繕船入渠記録入力(甲第27号証の1)
 @総合メニュー(甲第22号証)から修繕船入渠管理システムを選択、A入渠記録入力を選択、本画面。登録、修正、問合せ、削除、終了いずれかを選択し画面bに進む。
b 船舶情報入力画面(No2)(甲第27号証の2)
 船コード検索から該当船舶を呼び出し、修正部分を修正し、次画面c使用塗料・成績画面に進む。
c 使用塗料明細・成績画面(No3)(甲第27号証の3)
 タイトルは使用塗料明細・成績画面となっているが、No3は使用塗料明細入力画面、No4は今回塗装仕様入力画面である。No3で使用塗料明細を入力し、次成績画面dに進む。
d 今回塗装仕様入力画面(No4)(甲第27号証の4)
 今回入渠時、塗装された塗装仕様の入力画面である。入力完了で入渠塗装記録eが出力される。
e 入渠塗装記録出力票(甲第27号証の5)
 出力票は修繕船塗装仕様同様前回塗装記録と今回塗装記録が対比されて出力される。
f 修繕船入渠一覧表(店・担当・年月・成績)(甲第27号証の6)
 修繕船入渠一覧表を店所別・担当別・年月別・塗料成績別に出力し、営業活動に活用するシステム。
g 修繕船入渠記録調査票(甲第28号証)
 修繕船営業のための船舶調査のために作成し、コンピュータから出力し、担当店所に送付、調査要請を行ったが担当店所の協力が得られず苦慮していたものである。
(イ) 原告が改善策をAに提案し、退職後取り組む予定だった修繕船入渠管理システム
 新造船受注の拡大は新造船受注システムの定着により計られ、また成績システムもそれなりのものが完成し、期待通りの効果を発揮しつつあった。しかし修繕船入渠管理システムは営業サイドの協力もなく、活用されていなかった。成績管理システムを組入れ、入力、出力方法も簡便にした修繕船入渠管理システムの改善方法のアイデアを固め、Aに提案し、業務委託、独立を後押ししてくれるよう要請したのは平成4年11月20日であった。Aから早速取り掛かれとの強い指示を受け、退職までこのシステムに有給休暇もとらずとりかかっていた。
 新しい修繕船入渠管理システムの概要は、従来の修繕船が次回入渠する時期と場所、使用塗料予定量、売上数量と金額概算に加え、その見積書の発行、代理店別・月別。年別販売予測と結果、担当者別各種データの把握、成績、クレームとその内容、クレーム履歴、修繕船に関する必要データをタイムリーに把握し、様式も簡便にまとめた扱いやすいシステムにしたものだった。
 このシステムが完成すれば、主要代理店にコンピュータ端末を置き(現在ではパソコンで可能になっているはず)、回線でつなぎ、入渠する修繕船について双方向からデータの出し入れを行えるようにするものだった。原告がAにアイデアを提示し、退職前に取り掛かっていた改善修繕船入渠管理システムは次のようなもので、退職・独立後人員を増やし、2年程度で完成させる予定であった。まず、これからシステム化しようとする様式を「未登録船入渠記録調査票(甲第29号証)」として全店所に送り、調査票の記入を要請し、システム化に取り掛かった。これは原告が退職前改善修繕船入渠管理システムのため作成したコンピュータに入力されていない船舶を調査するため作成した調査票であるが、この用紙の調査項目はそのまま新しい修繕船入渠管理として管理のサイクルを回すためのものである。この用紙は、ユーザー(船主、造船所、荷主、その他)、代理店、関係部署などに成績報告書として、見積作成のための原資料として、その活用範囲を一段と拡大することを意図したものであった。
 勿論、これを完成したものにするには、関係するデータ類の整備は欠かせないものであるが、完成の暁には被告中国塗料の修繕船入渠管理システムは他社をさらに引き離すものであった。多分現在の修繕船入渠管理システムは、この様式を用いているものと思っている。
オ チェック項目検索システム(甲第30号証の1から3まで)
(ア) チェック項目検索初期画面(甲第30号証の1)
 @総合メニュー(甲第22号証)から塗装仕様・立会成績システムを選択、Aチェック項目検索を選択、本画面、実行で(イ)の入力画面に進む。
(イ) チェック項目入力画面(甲第30号証の2)
 前述のとおり船舶情報管理システムに必要と思われるチェック項目すべてを網羅したと自負する検索システムである。クレーム対応、新製品開発対応、受注対応など入力されたデータすべてを必要とする業務に活用するデータに加工し、取り出せるようにしたものである。
(ウ) 検索結果出力票(甲第30号証の3)
 チェック検索から出力されたサンプルは、AC(さび止め塗料)コード014101〜014102、膜厚40〜100ミクロン、AF(海生物付着防止塗料)コード020905〜020905、膜厚75〜100ミクロン、海生物付着防止性能有効期間12〜24ヶ月(1年〜2年、海生物付着防止性) 能総合評価4〜5点、右舷(1)、左舷(2)の前部、中部、後部の状態、@MD(メカニカルダメージ)4〜5点、ABLIS(塗幕のふくれ)4〜5点、BPEEL(塗膜のはがれ)4〜5点、CRUST(さびの発生状態)4〜5点、DL.SLI(ライトスライム―軽い水垢)2〜3点、EH.SLI(ヘビイスライム―重いスライム)2〜3点、FWEED(アオサ―青海苔)2〜3点、GBARNA(バーナクル)4〜5点、HSERP(セルプラ)4〜5点に該当する船舶を出力したものである。この検索システムはこのように船舶情報管理システムで必要とするデータを必要な時に取り出せる検索するシステムである。
カ 入渠予定リスト(甲第31号証の1から2まで)
 前述のとおり修理のため入渠する船舶の予定を年月別、造船所別、担当店所別、船主別、船種別、塗料メーカー別、塗料タイプコード別にそれぞれ組み合わせても出力できるようにしたもので、受注活動、ユーザー管理、他社製品攻略、クレーム対応などに活用され、重要度の高いデータである。
(ア) 入渠予定リスト(甲第31号証の1)
 総合メニュー(甲第22号証)から各種出力データ類を選択し、本画面で入力すべきデータ(対象年月、店所、担当、メーカー、船主コード、船種、塗料タイプコードなど)を入力、実行で(イ)が出力される。
(イ) 入渠予定出力リストサンプル(甲第31号証の2)
 出力されたリストは、92年11月から12月に近畿マリンが管轄する被告中国塗料製品が塗装された船舶の入渠予定リストである。
キ その他出力類(甲第32号証の1から甲第36号証の4まで)
 船舶塗料専門メーカーの被告中国塗料にとって船舶塗料シェア管理はもっとも重要な経営管理手法である。原告が作った以下のシェア管理類は以下のとおり徹底したものだった。
(ア) 受注・シェア管理類
a 店所別メーカー別、受注集計表(船主)画面(甲第32号証の1)
 総合メニュー(甲第22号証)から各種出力データ類、本画面を選択し、入力すべきデータ(店所、竣工年月、メーカー、船種、トン数レンジ、1から5レンジまで選択可能)を入力、実行でbが検索した船主別受注集計表が出力される。
b 同出力票サンプル(甲第32号証の2)
c 店所別メーカー別、受注集計表(造船所)画面(甲第32号証の3)
 総合メニュー(甲第22号証)から各種出力データ類、本画面を選択し、本画面で入力データ(店所、竣工年月、メーカー、船種、トン数レンジ、1から5レンジまで選択可能)を入力、実行でdが検索した造船所別受注集計表が出力される。
d 同出力票サンプル(甲第32号証の4)
e 店所別クラス別シェア合計表(国内)(甲第32号証の5)
 総合メニュー(甲第22号証)から各種出力データ類、本画面を選択、入力データ(店所、メーカー、船種、トン数レンジ、1から5レンジまで選択可能)を入力、実行でfが検索したシェア合計表(国内)が出力される。
f 同出力票サンプル(甲第32号証の6)
g 船主別船別シェア合計表(甲第32号証の7)
 総合メニュー(甲第22号証)から各種出力データ類、本画面を選択し、入力すべきデータ(船主または船主グループ、店所)を入力、実行でhが検索した船主別シェア明細表が出力される。
h 同出力票サンプル(甲第32号証の8)
i 船主別当社シェア合計表(甲第32号証の9)
 総合メニュー(甲第22号証)から各種出力データ類、本画面を選択し、入力すべきデータ(店所)を入力、実行でjが検索した船主別シェア合計表が出力される。
j 同出力票サンプル(甲第32号証の10)
k 店所別シェア合計表(国内)(甲第32号証の11)
 総合メニュー(甲第22号証)から各種出力データ類、本画面を選択し、入力すべきデータ(店所、メーカー)を入力、実行でlが検索した店所別シェア合計表が出力される。
l 同出力票サンプル(甲第32号証の12)
m 支店別シェア合計表(甲第32号証の13)
 総合メニュー(甲第22号証)から各種出力データ類、本画面を選択し、入力すべきデータ(メーカー)を入力、実行でnが検索した支店別シェア合計表が出力される。
n 同出力票サンプル(甲第32号証の14)
(イ) 塗装実績管理類
 塗装された船の実績を管理することは重要である。過去の実績を取り出すことはコンピュータの最も得意とするもの。原告が作った実績管理データ類は以下のものであった。
a 製品別年代別塗装実績表(和文)(甲第33号証の1)
 総合メニュー(甲第22号証)から各種出力データ類、本画面を選択し、入力すべきデータ(製品コード、新造船、修繕船区分、塗装年月、船種)を入力、実行でb及びcが指定した範囲の製品別塗装実績表(和文)が新造船、修繕船別で出力される。
b 同出力票(新造船)サンプル(甲第33号証の2)
c 同出力票(修繕船)サンプル(甲第33号証の3)
d 製品別年代別塗装実績表(英文)サンプル(甲第33号証の4)
 総合メニュー(甲第22号証)から各種出力データ類、本画面を選択し、入力すべきデータ(製品コード6桁、新造船、修繕船区分、塗装年月、船種)を入力、実行でe及びfが指定した範囲で製品別塗装実績表(英文)が新造船、修繕船別で出力される。
e 同英文出力票(新造船)サンプル(甲第33号証の5)
f 同英文出力票(修繕船)サンプル(甲第33号証の6)
g 塗料タイプ別実績表(和文)(甲第34号証の1)
 総合メニュー(甲第22号証)から各種出力データ類、本画面を選択し、入力すべきデータ(新造船、修繕船区分、塗料タイプ製品コード4桁範囲指定塗装年月、船種)を入力、実行でiが指定した範囲で塗料タイプ(樹脂あるいは名称別製品コード4桁)別の塗装実績表(和文)が新造船、修繕船別で出力される。
h 同出力票(新造船)サンプル(甲第34号証の2)
i 塗料タイプ別実績表(英文)(甲第34号証の3)
 総合メニュー(甲第22号証)から各種出力データ類、本画面を選択し、入力すべきデータ(新造船、修繕船区分、塗料タイプ製品コード4桁範囲指定塗装年月、船種)を入力、実行でkが指定した範囲で塗料タイプ(樹脂あるいは名称別製品コード4桁)別塗装実績表(英文)が新造船、修繕船別で出力される。
j 同出力票(新造船)サンプル(甲第34号証の4)
k 塗料類別実績表(和文)(甲第35号証の1)
 総合メニュー(甲第22号証)から各種出力データ類、本画面を選択し、入力すべきデータ(新造船、修繕船区分、塗料類製品コード2桁範囲指定塗装年月、船種)を入力、実行でl及びmが指定した範囲で塗料類別(製品コード2桁)別塗装実績表(和文)が新造船、修繕船別で出力される。
l 同出力票(新造船)サンプル(甲第35号証の2)
m 同出力票(修繕船)サンプル(甲第35号証の3)
(ウ) 船舶塗装履歴管理
a 船舶情報問合せ及び塗装履歴(甲第36号証の1)
 総合メニュー(甲第22号証)から各種出力データ類、本画面を選択し、船コードあるいは造船所コード、船番から検索したい船を呼び出し、次画面b船名検索画面に進む。
b 船名検索(甲第36号証の2)
 検索された船から該当する船を選択し、次画面cに進む。
c 船舶情報問合せ及び塗装履歴(船舶情報)(甲第36号証の3)
 該当船の船舶情報管理システム画面を確認、または訂正箇所があれば訂正し、次画面d塗装履歴画面に進む。
d 船舶情報問合せ及び塗装履歴(新造船)(甲第36号証の4)
 塗装履歴(塗装された場所、塗料、塗装された状態、時期など)表示画面。
e 同出力票(修繕船)サンプル(甲第36号証の6)
(エ) その他出力類
a 船主船名リスト(甲第37号証の1)
 総合メニュー(甲第22号証)から各種出力データ類、本画面を選択し、入力すべきデータ(店所指定、船主グループ指定、郵便番号指定、船主コード指定)を入力、実行でbが指定した範囲で船主、船名リストが出力される。
b 同出力票(修繕船)サンプル(甲第37号証の2)
c 船主及び傭船者別船名リスト(甲第37号証の3)
 総合メニュー(甲第22号証)から各種出力データ類、本画面を選択し、入力すべきデータ船主コード(傭船者コード)実行でdが指定された範囲で船主及び傭船者別船名リストが出力される。
d 同出力票(修繕船)サンプル(甲第37号証の4)
(オ) 常識ではこのような巨大なシステムを原告が一人で作り運営していたということを理解、納得することはなかなかできないものであるが、原告は、被告中国塗料船舶情報管理システムを原告一人で作るため、被告の関係、関連部署業務を徹底的に調べ・確認し、必要システム設計仕様書私案を作り、関係、関連部署類と検討を重ね、被告中国塗料社内了承を取り付け、画面設計仕様書を作り、外注先田中電機工業に見積を依頼し、被告中国塗料に費用を提示・要請し、了解を得て、外注先田中電機工業にプログラム作成を発注し、検証、検収し、被告中国塗料に納入、作成されたシステム業務運営のすべてを一人で行っていたものである(甲38号証ないし第70号証)。
(カ) 原告は、平成4年6月、信友から中国塗料技研株式会社(以下「中国塗料技研」という。)に出向し、同社の社長に就任した。船舶情報管理システムの開発・運営は、中国塗料技研に移管された格好となり、原告は、引き続きその開発及び業務運営に当たった。そして、原告は、平成4年11月20日被告のAと面談し、原告退職後は本件船舶情報管理システムの開発、業務運営を原告に委託してくれるよう要請したところ、その快諾を得たので、平成5年1月末で被告を退職して独立することとし、退職願を平成4年11月24日C前社長(当時専務)(甲3号証の1)に送り、翌日付でA宛にC社長宛退職願を同封した礼状(甲第3号証の2)を送った。しかるに、被告のD(当時管理本部長)は、平成5年1月29日の原告退職当日、Aは業務委託の約束などはしていない、言った言わないのことは、これで終わりにする、原告がこれ以上主張するなら裁判でも何でもやって証明せよ、開発された船舶情報管理システムは、著作権で保護されているもので、他所でやることは容赦しないと文書、口頭で、現社長のDが通告し、55歳を前に原告を体よく退職させ、原告の家族を奈落の底に落とし、原告を被告中国塗料との戦いに追い込んだものである。
(キ) 被告は、原告の開発した船舶情報管理システムは職務著作(著作権法15条2項)に係る著作物であると主張するが、以下のとおり理由がない。
a 著作権法は、法人等の発意によりその被用者により著作物が作成される際、それは「職務上の」作成でなければならないとしている。法人等の発意について、著作物の作成につきその企画段階で従業員の意見を聞くことはあっても、最終的には法人等が具体的な判断を下していなければならないこと、それだけに、法人等の発意、雇用関係、職務上の作成などの諸要件の充足を厳密に吟味しなければならないとされている(斉藤博著「著作権法」123頁)。船舶情報管理システムの開発及び業務運営については、被告は法人として何らの具体的指示や判断を原告に下しておらず、法人等の発意は全くなく、原告一人におんぶに抱っこで開発及び業務運営を行わせていた。
 法人の発意とされる被告のAが原告に開発を要請した状況は、被告のライバル会社のインターナショナルペイントが作っていたデータベースを原告に渡し、同社システム相当品を作ってくれというものであった。しかし、インターナショナルペイントのデータベースは、成績管主体のもので原告が開発した船舶塗料受注サポートシステムとは全く異なったものである。Aが原告に開発を要請した後は、ハードのコンピュータ機器も原告が決めたIBM製の購入を認め、信友に機器リース料を支払い、またプログラム作成料も原告が外注を決めた田中電機工業にプログラム作成料を10%のマージン(利益)を信友に払っていたもので、法人の発意は最初の原告への開発用だけというもので、その後は全くなく、法人発意といえるものではない。その後原告退職まで単に原告がいうとおりの費用を信友に支払い、原告の給料も、信友、休眠会社中国塗料技研から支払われていただけ、すべて原告におんぶに抱っこでこれほどのデータベースを開発させていたもので「著作物の作成につき、 、その企画段階で従業員の意見を聞くことはあっても、最終的には法人等が具体的な判断を下していなければならない」などではない。
 職務著作というならば、被告は船舶情報管理システムの開発について原告への関与(指導、監督)を示せるものがあるはずだが、おんぶに抱っこ、原告に100%任せていたので、まったく何もないであろう。被告は法人としての管理、指導は一切行っていないので、職務著作物を主張する権利は全くない。
 よって、原告が開発作成した船舶情報管理システムは、著作権法がいう「著作者は著作物を創作する者であり(2条1項2号)」にまさに該当し、原告が著作権者となるものである。
b また、職務著作物の著作権は原始的に被雇用者に属し、その後雇用者に法定譲渡されるものである(前掲書130頁)。よって、被用者といえども被用者が作ったものは被用者こそが著作者であるはずである。「著作者とは著作物を創作する者」というのが根本であるはずである。
 さらに前掲書(131頁)は、「現に、1991年5月14日のコンピュータプログラムの法的保護に関するEC指令も、その2条3項において、コンピュータプログラムが被用者により作成されたときは、被用者は、契約による別段の定めがない限り、そのプログラムに関するすべての経済的権利(著作権者)をもっぱら行使できる旨定めている。大陸、英米両法系の諸国が混在するヨーロッパ連合はまさに国際著作権界の縮図であり、同連合における調和の正否は、日米などを含むより広い国際著作権界における調和に大きな示唆を与えるものといえよう。」とし、被用者の著作権を認めている。
(ク) よって、原告は、被告に対し、原告が開発作成した船舶情報管理システムについて原告が著作権を有することの確認を求めるとともに、原告開発寄与分の確認を求める。
2 被告の主張
(1) 被告が現在使用中の「船舶情報管理システム」は、平成8年9月、被告において日本電気株式会社に1982万6985円(消費税込み)で発注し、平成9年3月と6月に同社より検収を経て納品されたものである。原告は、平成5年2月に被告の子会社である中国塗料技研を退職したが、要するに、上記船舶情報管理システムは、原告が開発したものではない。原告主張の著作物は、被告内には存在しない。
(2) 仮に原告主張の「船舶情報管理システム」なる著作物が存在するとしても、原告の主張によれば、原告は、信友在籍中に「船舶情報管理システム」の開発を命じられてその業務に従事し、原告が中国塗料技研に転社後も同業務が継続されたとのことであり、原告主張の開発は完成に至らなかったとのことであるが、その著作権者は、著作権法15条によれば、信友株式会社若しくは中国塗料技研株式会社となる。
 さらにいえば、仮に開発を命じたのが被告であり、原告が被告の業務として開発したとの主張であるとしても、上記のように、その著作者は被告となる。いずれにしても、仮に原告主張の「船舶情報管理システム」なる著作物が存在するとしても、その著作権者は原告ではない。
第3 当裁判所の判断
1 はじめに
 まず、被告は、被告が現在使用中の「船舶情報管理システム」なる著作物は原告が開発したものではなく、原告の開発したものは被告には存在しない旨主張する。被告の上記主張の趣旨は、原告が本件確認訴訟の対象とする「船舶情報管理システム(以下「本件」システム」という。)は、それが存在するとしても、被告とは何らかかわりのない著作物として存在するものであり、同著作物については原告と被告との間に何らその著作権の帰属について争いはないというものと解される(この主張を以下「第1の被告主張」という。)ところ、仮に、第1の被告主張のとおりであるとすれば、原告の請求の趣旨第1項の訴えは訴えの利益(確認の利益)を欠くもので不適法であり、却下すべきものである。
 また、被告は、仮に原告主張の「船舶情報管理システム」なる著作物が原告が開発したものとして存在するとしても、同著作物は、著作権法15条2項の職務著作に係る著作物であり、原告が著作権を有するものではないとも主張している(この主張を以下「第2の被告主張」という。)。仮に第2の被告主張が認められるとすれば、それだけで原告の請求の趣旨第1項に係る請求は理由がないものに帰し、棄却を免れないことになる。
 このように、原告の請求の趣旨第1項に係る請求を認容するためには、第1の被告主張及び第2の被告主張のいずれをも排斥する必要があるのに対し、上記各主張のいずれか一つでも理由があるものとすれば、原告の上記訴えないし請求は却下又は棄却を免れないのである。したがって、裁判所としては、第1の被告主張又は第2の被告主張のいずれかを判断し、そのいずれかを採用すべきものと判断すれば、原告の上記訴えを却下すべきである又は上記請求を棄却すべきであるという結論に至るのであるから、当裁判所は、第1の被告主張についての判断に先立って、第2の被告主張について判断することとする。
 この点について、原告は、まず、第1の被告主張について審理判断をし、第2の被告主張は第1の被告主張が排斥されて初めて審理判断すべきであると主張する。しかし、まず、訴訟要件の審理と本案訴訟の審理との先後関係については、特に前者を先行させる必要性はない。また、確かに、訴訟要件の存否が不確定なのに、その点の審理をしないで請求棄却の本案判決をすることは、原則として許されないというべきであるが、本件のような訴えの利益(確認の利益)については、本案の主張と重複する点が少なくなく、また、公益的要請のある他の訴訟要件とは異なるものであるから、訴訟要件の判断をせず、請求棄却の判決をすることも許されると解するのが相当である。したがって、被告の上記両主張の判断順序に制約があると解すべき根拠はない。
 そこで、当裁判所は、第1の被告主張についての判断に先立って、第2の被告主張について判断することとする。
2 本件システムの著作物性について
 証拠(甲第23号証ないし第37号証〔枝番を含む〕)及び弁論の全趣旨によれば、本件システムは、新造船受注システム、塗装仕様発行システム、成績管理システム、修繕船入渠管理システム、チェック項目検索システム、入渠予定リスト、その他データベースを支える船舶、塗料、塗装、船主、造船所、成績管理等マスタープログラム類からなるものであること、このうち、新造船受注システムは、新造船の建造計画情報からコンピュータ入力を行い、他社を含めた受注活動状況、建造スケジュール表、塗料メーカーが決まっていない船、決まった船(塗装部分を含め)の必要情報を任意に取り出るようにしたシステムであり、これにより、被告の新造船用塗料受注活動、管理を行うものであること、塗装仕様発行システムは、コンピュータから最適塗装仕様を前回塗装仕様と対比させて発行し、塗装された塗料の適否、これからの製品開発に役立てるシステムであって、新造船塗装仕様書発行システムと修繕船塗装仕様書発行システムとからなるものであること、成績管理システムは、いつどのような塗料が、どのように、どれだけ塗られ、その成績がどんなものかを正しく判断する基準をシステム化し、コンピュータに入力し、必要なデータをいつでも取り出すようにしたシステムであること、修繕船入渠管理システムは、修繕船が次回入渠する時期と場所、使用塗料予定量、売上数量と金額概算、その見積書の発行、代理店別・月別、年別販売予測と結果、担当者別各種データの把握、成績及び履歴、クレームとその内容、クレーム履歴、修繕船に関する必要データをタイムリーに取り出すことのできるシステムであること、チェック項目検索システムは、入力された船名、船種、トン数、速度、航路、稼働率、船会社、船主グループ、建造造船所名、入渠造船所名、引渡し年月日、前回、今回、次回入渠年月日、売船先船会社、売船先船名、新造船時塗装塗料名、前回、今回塗装塗料名、塗装時の下地処理、膜厚、塗装系、塗装仕様No、さび、ふくれ、はがれなど塗膜の損傷状態、フジツボ、アオサなど海生動物の付着状態などコンピュータに入力されたデータすべてを必要なデータに加工し、取り出すことのできる検索システムであること、入渠予定リストは、受注活動、ユーザー管理、他社製品攻略、クレーム対応などに活用することを目的として、造船所に入渠する船舶の予定を年月別、造船所別、担当店所別、船主別、船種別、塗料メーカー別、塗料タイプコード別にどの組み合わせても出力できるようにしたシステムであることが認められる。
 以上によれば、本件システムは、そのプログラムの構成の詳細は明らかでないものの、船名、船種を始めとする船舶塗装に関する種々の情報を単独で、また、各情報を組み合わせた情報を随時任意に検索し、取り出せるようにしたものであって、電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合せたものとして表現したものをいうことができ、プログラムの著作物と評価することができるものというべきである(著作権法2条1項10号の2、10条1項9号)。
3 本件システムは職務著作に係る著作物であるかについて
 次に、本件システムが職務著作に係る著作物であるか否かについて検討する。
(1) 証拠(甲第2号証の1・2、第4、第21、第38〜第40、第42、第43、第45〜第48、第50、第51、第53、第66、第70号証)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
ア 原告は、昭和37年4月被告に入社し、昭和60年に被告の関連会社での信友に出向した。信友は、被告会社の関係グループ会社の中で商社部門を担っている会社である。
イ 原告が信友に出向する際に被告の専務取締役(その後代表取締役に就任)であったAは、当時、日本ペイントの提携会社であるインターナショナルペイントが独自の船舶情報管理システムを構築しようとしているという情報を入手し、被告としてもこれを採用しなければならないと考えた。そこで、Aは、原告が信友に出向する際、原告に対し、上記船舶情報管理システムの開発を命じた。当時、被告社内にもコンピュータ関係の担当者がおり、このような船舶情報管理システムは、本来、同担当者にその開発を命ずべき筋合いであったが、被告社内のシステムは、給料計算や経理システムから発足しており、同システムは船舶情報管理システムとはかけ離れたところがあったことから、Aは、被告における本来のコンピュータ担当者とは別にその開発担当者を決めることとし、原告にその開発を命ずることにした。そして、Aが開発担当者として原告を選んだ理由は、原告が技術の部門にいるときに、船舶に関する種々のデータ収集をしており、どういうものが営業的に必要であり、あるいは技術的にはどういうものが必要であるかということを一番よく知っていたことから、原告が最適任と考えたことによるものであった。そして、上記のとおり、被告社内には別にコンピュータ関係の担当者がいたこと等から、これとは別にその開発作成業務に当たらせるには、原告を関連会社に出向させて被告の社外で開発業務を行わせるのが適切であると考えた。そこで、Aは、上記のとおり原告を信友に出向させることとした。
ウ 原告は、Aの上記命令に従い、信友に出向後、船舶情報管理システムの開発に従事した。そして、その開発に関し、被告から信友に「情報システム受託料」の名目で金銭が支払われた(信友の平成3年4月1日から平成4年3月31日までの事業年度に係る損益計算書〔甲第21号証〕によれば、同年度の受託料の額は1928万5898円であった。)。
 原告は、信友に出向した当時は平従業員(給与は課長待遇)であったが、昭和61年6月に役員に就任した(給与は課長待遇のまま)。
エ 原告は、平成4年6月に中国塗料技研に代表取締役として出向したが、被告は、船舶情報管理システムに係る業務を同社に移管し、引き続き同業務に従事させた。原告は、その後も、A(当時は被告代表取締役)を始め被告側の担当者から本件システムの開発の詳細について個々具体的な指示がなされることはなかったものの、Aや担当のB部長等の被告関係者に宛てて、本件システムに係る「入力項目」の確認依頼や、プログラムが追加・変更された旨の連絡や、それに伴い追加費用が発生した旨の連絡といった本件システムの開発に関する種々の連絡を被告に行い、その指示を仰ぐなどしていた。原告は、平成5年1月、同社を退職したが、同社退職後も、引き続き被告から業務委託を受けて本件システムの開発業務を行おうと考え、その旨を当時被告代表取締役であったAに申し入れた。Aがその際に原告の上記申入れを了承し原告と被告との間で本件システムの開発業務に係る業務委託契約が締結されたか否かについて後日紛争が生じ、原告と被告間の訴訟に発展したが、結局、そのような契約が締結されたとは認められないとする原告敗訴の判決が確定した。
(2) 前記2で認定判断したとおり、本件システムはプログラムの著作物である。著作権法15条2項は、法人等の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成するプログラムの著作物の著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする旨定めている。そして、上記「法人等の発意」があったというためには、著作物作成に向けた意思が直接又は間接に法人等の判断にかかっていればよいと解すべきであり、明示の発意がなくとも、黙示の発意があれば足りるものというべきである。
 本件についてこれをみるに、上記(1)認定の事実によれば、被告の当時の専務取締役(その後代表取締役に就任)であったAは、同業他社が独自の船舶情報管理システムを構築していたことから、被告においても同種の船舶情報管理システムを導入する必要性を感じていたところ、その開発担当者として原告がその適任であると考えた。しかし、Aは、被告の社内組織上の理由から原告を被告の社外で船舶情報管理システムの開発業務に従事させるのが適切であると考え、原告を被告の関連グループ会社の一つである信友に出向させるとともに、原告に対し出向先の信友で船舶情報管理システムの開発業務を行うよう命じたものである。原告は、上記Aの命令に従い、信友の従業員として同システムの開発に従事し、さらに中国塗料技研に代表取締役として出向した後も、引き続きその開発業務に従事したが、同業務も、被告においてその開発業務を中国塗料技研に移管したことによるものであった。そして、上記認定のとおり、原告は、本件システムの開発業務について、被告のA社長を始め担当者と頻繁に報告をし、その指示を仰ぐなどしていたものであって、そのような開発業務の遂行態様は、原告が信友に在籍中も同様であったと推認される。
 そうすると、原告の本件システムの開発作成業務は、当初は信友の業務として、その後は中国塗料技研の業務として職務上行われたものであることが明らかであって、本件システムは、著作権法15条2項にいう「その法人等の業務に従事する者が職務上作成」したものである。
 また、原告に対し本件システムの開発作成業務を明示的に命じたのは被告の専務取締役(当時)であるAであったから、その作成について被告の発意があったことは明らかであるが、実際に業務を行った信友及び中国塗料技研による明示の発意があったとは証拠上認め難い。しかし、信友は、被告の関連会社であって、実質的にその商社部門を担当しているものであり、被告中国塗料技研も被告の子会社であって、いずれも被告と業務運営上あるいは経済上ほぼ一体的な立場に立つ会社とみ得ること、Aは、被告の社内組織上の理由から原告を被告の社外で船舶情報管理システムの開発作成業務をさせようとして、原告を信友に出向させ、さらに原告を中国塗料技研に代表取締役として出向させる際も船舶情報管理システムの開発業務を同社に移管しているものであり、現に、原告は、信友及び中国塗料技研において支障なく船舶情報管理システムの開発作成業務に従事し、その業務内容を信友及び中国塗料技研に頻繁に報告しその指示を仰いでいるのである。以上の事実によれば、本件システムの作成が、信友及び中国塗料技研(の代表者)の黙示の発意に基づくものであることを優に推認することができる(特に、中国塗料技研については原告自身がその代表者である。また、信友についても当初は従業員であったが途中から役員に就任している。)。この推認を覆すに足りる証拠はない。
 そして、本件システムの作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがあったことの主張立証はない。
 そうすると、本件システムは、著作権法15条2項のいわゆる職務著作に当たり、その著作者は信友ないし中国塗料技研であるということができる。原告は、本件システムを実際に作成したものであるにしても、その著作者にはなり得ないものである。上記説示に反する原告の主張は採用できない。
 したがって、仮に、原告に最大限に有利に、本件システムが原告の著作に係るものと認めるとしても、原告がその著作権を有するとはいえず、本件システムについて原告が著作権を有することの確認を求める原告の請求の趣旨第1項の請求は理由がないことに帰する。
4 本件船舶情報管理システムに対する原告の開発寄与分がどれほどの割合かの確認を求める訴えについて
 次に、請求の趣旨第2項の請求について検討する。原告が請求の趣旨第2項で確認の対象としているのは、本件システムに対する原告の開発寄与分がどれほどの割合であるかということであり、要するに、原告の本件システムの開発について過去から現在に至るまでどの程度の寄与をしたかという過去の事実を数量的割合の形で確認するよう求めたものと解される。
 民事訴訟は、法律上の争訟を解決することを目的とするものであるから、民事訴訟の1類型である確認訴訟の対象となるのは、原則として争いのある現在の権利又は法律関係に限定され、単なる過去の事実の存否は、確認訴訟の対象とはなり得ないものというべきである。もっとも、過去の事実が現在の複数の権利又は法律関係の成否の前提となっており、その事実を確定することがこれら現在の権利又は法律関係を巡る紛争を抜本的に解決することができるような場合には、例外的にこれを確認訴訟の対象となし得るものと解される場合がある(たとえば、証書真否確認訴訟等)。
 しかし、本件システムに対する原告の開発寄与分がどれほどの割合であるかという過去の事実が現在の複数の権利又は法律関係の成否の前提となっているものということはできず、その事実を判決をもって確認することにより他の権利又は法律関係を巡る紛争が抜本的に解決され得るという関係に立っているとはいえない。なお、原告の上記訴えは、実質的には、原告が本件システムの著作権についてどの程度の共有持分を有しているかという確認を求める趣旨であると解されるが、それは、結局のところ、原告の請求の趣旨第1項の請求に包含されるというべきである(同請求は本件システムの著作権がすべて原告に属することの確認を求めるものであるが、そのすべてが原告に属するものではないとしても、その一部が原告に属するものであれば、同請求を一部認容して、原告が本件システムについて一定割合の著作権の共有持分を有することを確認する旨の判決をすることは何ら妨げられない。)から、この観点からしても、同訴えは確認の利益を欠くものというべきである。
 そうすると、原告の本件訴えのうち、本件システムに対する原告の開発寄与分がどれほどの割合であるかの確認を求める部分は不適法であり、却下を免れない。
5 結論
 よって、原告の本件請求のうち、本件システムについて原告が著作権を有することの確認を求める請求は理由がないからこれを棄却する。そして、本件システムに対する原告の開発寄与分がどれほどの割合であるかの確認を求める原告の本件訴えは不適法であるからこれを却下することとする。訴訟費用については民事訴訟法61条に従い原告の負担とすることとして、主文のとおり判決する。

大阪地方裁判所第21民事部
 裁判長裁判官 田中俊次
 裁判官 西理香
 裁判官 松宏之は、転任のため署名押印することができない。
裁判長裁判官 田中俊次
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