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【事件名】パチスロ「機動戦士ガンダム」事件
【年月日】平成20年12月25日
 東京地裁 平成18年(ワ)第24821号 業務委託料等請求事件
 (口頭弁論終結日 平成20年8月5日)

判決
原告 株式会社スタジオMC
同訴訟代理人弁護士 熊倉禎男
同 富岡英次
同 飯田圭
同 竹内麻子
被告 エピクロス株式会社
同訴訟代理人弁護士 吉原政幸


主文
1 被告は、原告に対し、金3327万円及びこれに対する平成18年11月15日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の主位的請求及び予備的請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は、これを5分し、その3を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
4 この判決は、1項及び3項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求
1 主位的請求
 被告は、原告に対し、金7702万9250円並びに内金1530万円に対する平成18年8月1日から、内金4040万円に対する同年9月1日から及び内金2132万9250円に対する同年11月15日から、各支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2 予備的請求
(1)被告は、別紙一覧表の「本件シーンデータ G−DEVデータ」及び「カットイン番号 カットイン映像」の各列に記載のシーンデータ(ただし、カット#214(RT08D002)を除く。)を複製、改変又は頒布してはならない。
(2)被告は、前項記載のシーンデータを記憶した媒体を廃棄せよ。
第2 事案の概要
 本件は、原告と被告との間で締結された、回胴式遊技機(いわゆるパチスロ)の液晶画面表示用として「機動戦士ガンダム」の劇場版アニメーション映画の一部の映像を3次元コンピュータグラフィクス(3DCG)によるシーンデータに加工するための開発委託基本契約及び各個別契約について、原告が被告に対し、主位的に、上記各契約に基づき、納入したシーンデータに対応する未払の対価の支払とともに、商法512条の報酬請求として、受託業務に該当しない作業の対価の支払を求め、予備的(シーンデータの納入が契約上の引渡しに当たらない場合)に、原告に契約上留保された二次的著作物の著作権及び著作者人格権に基づき、納入したシーンデータの複製等の差止めと廃棄を求める事案である。
1 争いのない事実
(1)当事者
 原告は、映画、アニメーション等の企画制作等を業とする株式会社である。
 被告は、コンピュータシステムを利用した娯楽用電子機器の開発、製造等を業とする株式会社である。
(2)開発業務
 平成18年1月、原告と被告との間で、山佐株式会社(本店所在地:岡山県新見市<以下略>、以下「山佐」という。)が製造、販売を企画し、被告がそのハードウエアのデザインやソフトウエア等の製作を受託する回胴式遊技機について、その液晶画面に表示されるシーンデータの制作のための開発業務案件が持ち上がった。
 これは、劇場版アニメーション映画の「機動戦士ガンダム」、「機動戦士ガンダムU哀・戦士篇」及び「機動戦士ガンダムVめぐりあい宇宙篇」の一部の映像(以下「本件元映像」という。)を3DCG化して、山佐製の回胴式遊技機に搭載する企画に係る開発業務であり、原告と被告の間では、これを「Vプロジェクト」と通称し、このうち、1機種目の回胴式遊技機に搭載する「機動戦士ガンダム」及び「機動戦士ガンダムU哀・戦士篇」に対応する業務作業が「V1」、2機種目の回胴式遊技機に搭載する「機動戦士ガンダムVめぐりあい宇宙篇」に対応する業務作業が「V2」とそれぞれ呼ばれていた。
(3)基本契約
 原告と被告は、平成18年5月23日、被告が原告に委託する回胴式遊技機に関するVプロジェクトの開発業務に関し、同月1日付け開発委託基本契約(甲1、以下「本件基本契約」という。)を締結し、その「対象業務」の内容、仕様、対価、対価の支払方法、「納入物」の納期、納入方法については、本件基本契約に定めるもののほか、業務委託の都度締結される「個別契約」において定めるものとされた(なお、本件基本契約と個別契約とによって特定される対象業務を、以下「本件業務」という。)。
 なお、本件基本契約には、次の前文と条項が規定されている。
 「エピクロス株式会社(以下「甲」という。)と株式会社スタジオMC(以下「乙」という。)とは、甲が乙に委託する回胴式遊技機に関する開発業務「以下「対象業務」という。)に関し、その基本的事項について次の通り契約を締結する。」
 「第1条(定義)
 本契約において使用する次の各号に掲げる用語の意味は、当該各号に定めるところによる。
(1)「納入物」
 「対象業務」の成果として乙が甲に納入するものをいい、詳細は「個別契約」(第3条〔ママ〕に定義される。)に定めるものとする。
(2)「成果物」
 「納入物」その他の「対象業務」の過程で生成される全てのものをいう。
 〔省略〕」
 「第4条(「個別契約」)
1.「対象業務」の内容、仕様、対価、対価の支払方法、「納入物」、「納入物」の納期及びその納入方法は、本契約に定めるものの他、業務委託の都度「個別契約」において定めるものとする。
 〔省略〕」
 「第7条(作業内容と範囲)
1.乙は、「個別契約」に定める仕様に従って「対象業務」を実施する。
 〔省略〕」
 「第8条(納期)
 〔省略〕
2.乙は、甲に対し、「納入物」の納入遅延につき、債務不履行責任を負う。但し、納入遅延の原因が甲の責に帰すべき事由による場合はこの限りでない。この場合、納入期限の延長につき甲乙協議の上決定する。
 〔省略〕」
 「第9条(検査)
1.甲は、「納入物」の納入を受けた後、仕様その他の甲所定の検査基準に基づいて「納入物」を検査し、その結果を納期の翌日から起算して30日後(〔省略〕以下「検査期限」という。)までに書面(FAX、Eメールを含む。)により乙に通知する。なお、「検査期限」の翌日から起算して3日(〔省略〕)以内に当該通知が乙に到達しなかった場合、「納入物」は「検査期限」に検査に合格したものとみなす。
2.「納入物」が前項の検査基準を満たす場合には、「納入物」は前項の検査に合格したものとする。
3.乙は、「納入物」が第1項の検査に合格しない場合、当該「納入物」を修補して、甲に対し、甲乙協議の上定めた納期までに無償で納入する義務を負う。但し、不合格の原因が乙の責に帰すべき事由によらない場合は、修補作業に要する対価は有償とし、甲乙別途協議の上、これを決定する。
 〔省略〕
5.全ての「納入物」が検査に合格した日をもって、「対象業務」は完了したものとみなす。」
 「第10条(引渡し及び所有権の移転)
1.乙から甲への「納入物」の引渡しは、「納入物」が前条所定の検査に合格した時点をもって完了する(以下、当該時点の属する日を「引渡し完了日」という。)。
2.「納入物」の所有権は、前項に規定の当該「納入物」の引渡しが完了した時点で乙から甲へ移転する。」
 「第13条(保証)
 〔省略〕
3.前項の規定に関わらず、当該瑕疵が次の各号の一に起因する場合は、甲がその解決にあたるものとし、乙は何ら責任を負わないものとする。
(1)甲の乙に対する指図(民法第636条の指図と同義)に起因する場合
 〔省略〕」
 「第14条(著作権の帰属)
1.「対象業務」は、甲が丙〔山佐〕から受託した業務の全部又は一部を乙に対して再委託するものであり、「成果物」の著作者は発注者である丙であり、したがって、「成果物」に関する著作権(〔省略〕)及び著作者人格権は、丙に帰属する。〔省略〕
2.前項の規定に関わらず、乙又は「再委託者」その他の第三者が「成果物」の著作者とみなされた場合においても、乙は、「成果物」に関する著作権(〔省略〕)が、「引渡し完了日」をもって、乙又は「再委託者」その他の第三者から甲に全て移転されることを承諾し、「再委託者」その他の第三者からの当該著作権の移転のために必要な措置を講じなければならないものとする。〔省略〕」
 「第26条(契約解除)
1.甲又は乙が次の各号の一に該当する場合、他の当事者は何らの催告を要することなく本契約又は「個別契約」の全部又は一部を解除し、係る当事者に対し損害賠償を請求することができるものとする。
(1)本契約の各項の一にでも又は「個別契約」に違反し、他の当事者が相当の期間を定めて違反状態の是正を催告しても、当該違反状態が是正されない場合、又は催告後の履行では本契約又は「個別契約」の目的が達成できない場合
 〔省略〕
(10)乙による「納入物」の品質不良、納入不能又は納入困難(納入遅延を含む。)となる事態に陥るおそれが生じた場合
(11)その他本契約又は「個別契約」を継続し難いと認められる相当の事由がある場合
 〔省略〕」
 「第27条(損害賠償責任)
 甲及び乙は、本契約(〔省略〕)又は「個別契約」に違反し、相手方に損害を与えた場合は、その損害(弁護士報酬等一切の費用を含む。)の全てにつき責任を負う。」
(4)個別契約その1
 原告と被告は、平成18年5月23日、本件基本契約に基づいて、被告が原告に業務を委託し、原告がこれを受託する旨の同月1日付け個別契約(甲2、以下「本件個別契約(1)」という。)を締結し、シーンデータ250カット分(V1の前半分、以下「V1−1」ということがある。)について、次のとおり定めた。
ア 対象業務(1条、契約書別紙1項)
 被告が作成した「仕様書」及び原告が承諾した被告の「要望事項」(仕様書と併せて、以下「本件仕様」という。)に基づく次の業務
 被告が山佐から受託した業務の全部又は一部であって、山佐が製造、販売を企画する回胴式遊技機(山佐のプロジェクトコード:EPXH)に使用される液晶表示用ソフトウエアで使用するシーンデータ250カット分の制作業務
イ 業務実施要項(3条)
 被告は、原告に対し「対象業務」に必要な資料、情報を提示し、原告は、共同作業を前提として被告より提示された被告の資料、情報及び「本件仕様」に基づき、「対象業務」を実施する。
ウ 納入物(5条1項、契約書別紙3項)
 次の構成によるデータ一式
(ア)実機用表示データ@(被告が指定する3DソフトウエアMaya ver.7.0 上で品質を確認できるもの)
(イ)実機用表示データA(対象業務に使用される開発用機材G−DEVを経由して外部ディスプレイに表示することにより品質を確認できるもの)
(ウ)テクスチャー画像データ(上記の各データを構成し、これらのデータを制作する際に作られるPSD〔Photoshop Data〕データ及びTGA〔TruVision 'Targa'〕データ)
エ 納期(6条1項、契約書別紙4項)
(ア)納入物のうち被告が指定する100カット分(以下「納入物T」という。)につき平成18年5月31日
(イ)納入物のうち被告が指定する150カット分(以下「納入物U」という。)につき平成18年6月30日
オ 納入方法(5条2項)
 CD−R又はDVD−R等に記録して納入
カ 対価(7条1項、契約書別紙5項)
 5100万円(消費税別)
キ 対価の支払方法(7条2項、契約書別紙6項)
(ア)本件個別契約(1)の締結日の属する月の末日に着手金として1530万円(消費税別)
(イ)納入物Tに係る「引渡し完了日」の翌月末日に1530万円(消費税別)
(ウ)納入物Uに係る「引渡し完了日」の翌月末日に2040万円(消費税別)
(5)覚書
 原告と被告は、平成18年5月30日、本件個別契約(1)で定めた納期について、納入物Tを同年5月31日から同年6月30日に、納入物Uを同年6月30日から同年7月31日にそれぞれ変更する旨を合意し、その覚書(甲3、以下「本件覚書」という)を取り交わした。
(6)個別契約その2
 原告と被告は、平成18年5月末ころ、本件基本契約に基づいて、被告が原告に業務を委託し、原告がこれを受託する旨の個別契約(甲4参照、以下「本件個別契約(3)」といい、本件基本契約及び本件個別契約(1)と併せて「本件各契約」という。)を締結し、シーンデータ100カット分(V1の後半分である250カット分(以下「V1−2」ということがある。)の一部)について、次のとおり定めた。
ア 対象業務(1条、契約書別紙1項参照)
 本件個別契約(1)と同じ、ただし、シーンデータ100カット分
イ 業務実施要項(3条参照)
 本件個別契約(1)と同じ
ウ 納入物(5条1項、契約書別紙3項参照)
 本件個別契約(1)と同じ
エ 納期
 平成18年7月31日(なお、この100カット分の納入物を、以下「納入物V」という。)
オ 納入方法(5条2項参照)
 本件個別契約(1)と同じ
カ 対価及びその支払方法
 遅くとも納入物Vに係る「引渡し完了日」の翌月末日に2000万円(消費税別)
(7)映像製作の作業
 Vプロジェクトにおける映像製作の作業を概観すると、次の手順のとおりである。
@オブジェクト素材の制作(「モデリングデータ」及び「背景データ」の制作、手付け影作業を含む)
A仮想3D空間にオブジェクト素材のレイアウト
Bモーション付け及びエフェクト作成
Cコンポジット(モーションとエフェクトの合体)
Dエクスポート(3DソフトMayaで作成したデータを実機〔開発用機材G−DEV〕用データに置換する作業)
E実機(開発用機材G−DEV)表示後の自動影の設定、調整等の作業
(8)シーンデータの提出
 平成18年7月27日までに、原告から被告に対し、本件業務に係るシーンデータとして、別紙一覧表の「本件シーンデータG−DEVデータ」及び「カットイン番号カットイン映像」の各列に記載の350カット(以下、これらの納入物T、納入物U及び納入物Vに対応するカットを「本件カット」といい、そのシーンデータを「本件シーンデータ」という。)のうち、カット#214(RT08D002)を除いた349カットが提出された。
(9)代金の支払
ア 平成18年5月31日、被告から原告に対し、本件個別契約(1)に定める着手金として、1530万円(消費税別)が支払われた。
イ その後、本件個別契約(1)に定める対価の残金合計3570万円(消費税別)及び本件個別契約(3)に定める対価2000万円(消費税別)は、被告から原告に対して支払われていない。
(10)通知書
 平成18年9月28日ころ、被告は、原告に対し、同日付け「通知書」をもって、本件各契約上の債務不履行を理由として、本件各契約における未履行部分を解除するとともに、被告が既履行部分の相当対価と主張する3193万円(消費税別)から着手金1530万円及び予測損害額706万円を控除した957万円に消費税相当額を加えた1004万8500円の提供を予告し、既履行部分の引渡しを求めた。
2 当事者の主張の概要
(1)請求原因
ア 主位的請求その1−本件各契約に基づく未払対価の支払請求−
(ア)本件個別契約(1)及び(3)で定まった「本件仕様」の骨子は、次のとおりである。
@仕上がり
 本件元映像に「できる限り」似せること
Aモデリングデータ
 原則として、被告が提供したデータを使用するが、小物データの新規制作等の負担の少ない作業は原告が行う。人物データのうち、顔アップ(近景)については、原告が被告から提供されたデータの修正又はデータの新規作成を行うこと
B背景データ
 本件カットのうち、214カット分については、被告の提供した背景データを使用し、136カット分については、本件シーンデータでの必要に応じて原告が本件元映像を切り出して制作すること
C影作成作業
 人物カットのうち、本件元映像に影がある場合又は本件元映像を制作したサンライズ株式会社(以下「サンライズ」という。)の影指示書がある場合、これに従って原告が手付けで影を作成すること
 モビルスーツカットは、自動影とすること
D開発ツール
 被告から提供を受けた「G−DEV」(開発用機材)、「エクスポーター」(開発用プログラム)及び「G−DEVツール」(開発用プログラム)を使用すること
(イ)原告は、本件仕様を充たす本件シーンデータを作成し、被告にこれを提出したから、本件基本契約所定の引渡しを終えている。
 したがって、本件個別契約(1)(ただし、本件覚書による納期の変更に基づくもの)について、納入物Tの「引渡し完了日」の翌月末日にあたる平成18年7月31日を支払期とする対価1530万円、納入物Uの「引渡し完了日」の翌月末日にあたる平成18年8月31日を支払期とする対価2040万円、本件個別契約(3)について、納入物Vの「引渡し完了日」の翌月末日にあたる平成18年8月31日を支払期とする対価2000万円の支払が未了である。
(ウ)よって、原告は、被告に対し、本件各契約に基づき、本件業務に係る未払の対価として、5570万円並びに内金1530万円に対する支払期日の翌日である平成18年8月1日から及び内金4040万円に対する支払期日の翌日である同年9月1日から各支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。
イ 主位的請求その2−本件業務外の追加作業に係る対価の支払請求−
(ア)原告は、本件業務に伴い、被告のため、原告の営業であるアニメーション等の企画制作等の範囲内の作業として、本件業務外の後記(イ)のとおりの追加作業(以下「本件追加作業」という。)を行っており、これらは、原告の「責に帰すべき事由によらない」作業(本件基本契約9条3項)である。
 この結果、原告と被告との間には、本件追加作業について、有償の受委託契約(以下「本件受委託契約」という。)が成立している(本件基本契約9条3項、商法512条)。
(イ)本件追加作業の内容
@「影指示書」の作成(32カット分) 30万2250円
作業日数:10.075日(平成18年7月初旬〜同月下旬)
 人工数:1人工
 単価:3万円/人工・日
 30000*1*10.075=302250
A被告から提供された「背景データ」の修正(4カット分) 14万7000円
 作業日数:4.9日(平成18年6月〜同年7月)
 人工数:1人工
 単価:3万円/人工・日
 30000*1*4.9=147000
B不当なリテイク 171万円
 作業日数:5.7日(平成18年6月28日〜同年8月28日)
 人工数:10人工
 単価:3万円/人工・日
 30000*10*5.7=1710000
C「G−DEVツール」及び「エクスポーター」の検証等 279万円
 作業日数:31日(平成18年4月中旬〜同年8月中旬)
 人工数:3人工
 単価:3万円/人工・日
 30000*3*31=2790000
Dモデリング(人物カットの新規制作及び被告提供データの修正等) 1254万円
 作業日数:20.9日(平成18年6月12日〜同年8月28日)
 人工数:20人工
 単価:3万円/人工・日
 30000*20*20.9=12540000
E被告がカットのチェックを依頼したγ01氏への対応 309万円
 作業日数:10.3日(平成18年6月8日〜同年8月28日)
 人工数:10人工
 単価:3万円/人工・日
 30000*10*10.3=3090000
F原告が当初より制作が困難であるとして受託をいったん断った1カットに係る作業 75万円
 作業日数:12.5日(平成18年7月5日〜同年8月10日)
 人工数:2人工
 単価:3万円/人工・日
 30000*2*12.5=750000
G合計 2132万9250円
 302250+147000+1710000+2790000+12540000+3090000+750000=21329250
(ウ)よって、原告は、被告に対し、本件受委託契約に基づき、本件業務外の本件追加作業に係る対価として、2132万9250円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成18年11月15日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を求める。
ウ 予備的請求−著作権及び著作者人格権に基づく差止請求−
(ア)仮に、原告の被告に対する本件シーンデータの提出が本件基本契約10条所定の納入物の「引渡し」に該当しない場合、本件シーンデータは原告によって作成された二次的著作物であって、その著作権及び著作者人格権は、いまだ原告に留保されている(本件基本契約14条参照)。
(イ)よって、原告は、被告に対し、著作権法112条に基づき、本件シーンデータの複製、改変及び頒布の差止めを求めるとともに、本件シーンデータを記憶した媒体の廃棄を求める。
(2)抗弁
ア 一部解除−請求原因アに対して−
(ア)被告は、平成18年9月28日付けをもって、原告に対し、債務不履行と瑕疵担保を理由として、本件各契約の未履行部分を解除する旨の意思表示をした。
 平成18年9月28日の時点で、既履行部分の出来型は、せいぜい全体の約45パーセントであって、その相当対価は3193万円にとどまる。
(イ)したがって、被告に本件各契約に基づく未払対価の支払義務があるとしても、その金額は、3193万円から着手金として支払済みの1530万円を差し引いた1663万円にすぎない。
イ 同時履行−請求原因アに対して−
(ア)本件各契約において、被告が原告に対して本件シーンデータの既履行部分と未履行部分に相当する対価を支払う義務と原告が被告に対して本件シーンデータの既履行部分と未履行部分を引き渡す義務とは同時履行の関係にある。
(イ)したがって、原告が被告に対して本件各契約で定められた本件シーンデータの納入の提供をしない以上、被告が原告に対して既履行部分と未履行部分に相当する対価を支払う必要がない。
(ウ)なお、被告から原告に対して相当対価の支払がされれば、これと引換えに、原告から被告に対して本件シーンデータの引渡しがされて、少なくとも本件各契約上、著作権が原告から被告に確定的に移転することになる(本件基本契約10条、14条)から、原告の予備的請求(請求原因ウ)については、これを判断をする余地がない。
ウ 相殺−請求原因ア及び同イに対して−
(ア)被告は、原告による大幅な制作の遅延により、次のとおりの損害を被った。
@原告に代わる他の業者への発注費用 2413万0000円
A納期の延期により生じた経費 (1億2056万6394円)
・人件費 7890万0406円
・家賃等の人件費以外の経費 4166万5988円
 合計 1億4469万6394円
(イ)したがって、被告は、原告に対して有する(ア)の債権と、被告が原告に対して負担すべき請求原因ア又は同イによる債務とを、対当額において相殺する。
3 争点
(1)本件各契約の基本的性質(請求原因アの関係)
(2)本件仕様の内容(請求原因ア及びイの関係)
(3)本件仕様と本件シーンデータとの適合性(請求原因アの関係)
(4)本件追加作業の具体的内容(請求原因イの関係)
(5)抗弁関係の成否
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点(1)〔本件各契約の基本的性質〕について
〔原告の主張〕
(1)本件各契約に基づく本件業務は、原告において、本件元映像(2Dセルアニメーション)を3DCGで表現したものを制作する開発業務であり、製造業務とは異なる「開発」業務としての性質や「本件仕様」との相関関係からして、このような開発業務は本来的にその成否が不確定であって、その委託においては、厳密な意味で開発完成義務が観念できず、通常、開発業務遂行義務、開発完成努力義務、開発成果納入義務等を観念し得るにすぎないものである。
(2)したがって、本件各契約は、請負人の仕事完成義務が観念される民法上の請負契約とは異なる無名契約であり、原告が本件仕様について請負人の負うような仕事完成義務そのものを負担することはない。
 そして、実際に、原告は、本件仕様を充足するように最大限努力し、対象業務を誠実に遂行し、その成果を納入物として被告に納入することによって、本件各契約上の義務を履行したものである。
(3)なお、被告は、本件各契約における個別の規定を挙げて、本件各契約の基本的な性質が請負である旨を主張する。しかしながら、本件各契約を全体としてみれば、本件基本契約1条(1)号、4条1項、7条1項、本件個別契約(1)3条、5条、本件個別契約(3)3条、5条などにより、本件シーンデータの制作業務が開発業務であり、本件シーンデータがこのような開発業務の成果であることは明らかである。
〔被告の主張〕
(1)一般に、システムやプログラム開発に関する契約の性質が請負契約か準委任契約であるかについては、「仕事の完成」が契約の目的となっていたかどうかによって決定される。
 本件各契約における「対象業務」に関する本件基本契約の契約書前文及び4条、本件個別契約(1)の契約書別紙1項、本件個別契約(3)の契約書別紙1項の規定、「納入物」に関する本件基本契約1条、4条、本件個別契約(1)の契約書別紙3項、本件個別契約(3)の契約書別紙3項の規定によれば、原告に求められていた本件業務については、山佐が企画する回胴式遊技機の実機に搭載され表示するに耐える映像の制作を行い、これを被告に納入することが予定されていたものであったことが文言からも明らかである。
(2)したがって、本件各契約の基本的な性質は、本件シーンデータの完成義務を内容とする請負契約にほかならない。
 また、このように解する実質的な根拠としては、@本件業務と同様に、2Dアニメを題材とした3DCGゲームは大量に存在しており、完成可能な業務であることが明らかであること、A実際に、被告から同種業務を請け負った他の業者は、原告ほどの支援を受けられなかったにもかかわらず、被告の要求するとおりの水準で仕事を完成させることができたこと、B請負契約でなく、単なる努力目標にとどまるのであれば、その旨契約に特に明記されているはずであるが、本件各契約にそのような記載がないこと、C原告は、先行するプロジェクトZのプリプロダクション等を通じて、本件業務の性質を十分に認識していたこと、D単価の見積、決定の段階において、原告は、本件業務につき一切異議を述べていないことなどを挙げることができる。
2 争点(2)〔本件仕様の内容〕について
〔原告の主張〕
(1)本件仕様とは、本件各契約上、本件個別契約(1)及び(3)において、「対象業務」のなかで定義されているとおり、被告が作成した「仕様書」及び原告が承諾した被告の「要望事項」のことである。本件業務では、上記の仕様書が存在しなかったから、本件仕様の内容としては、上記の要望事項が問題となる。
(2)原告と被告は、平成18年1月ころから、打ち合わせ、ミーティングを重ねており、原告から被告に提出された平成18年3月20日付け見積書(甲6)の前後で時期を分けると、そのころまでに形成された原告と被告との間の共通認識は、次のとおりである。
ア 本件元映像(2Dセルアニメーション)のうち、被告が指定する一部を3DCGで表現したものを原告が制作すること
イ 映像の1カット当たりの長さは約4秒であること
ウ 原告の作業には、レイアウト・アニメーション等の映像制作は含むが、映像調整は含まないこと
エ 上記映像制作の素材であるモデリングデータは、被告が作成し、原告に提供すること
オ 上記映像制作の素材である背景データは、被告が本件元映像から抜き出した上で、上記映像制作にそのまま使用できる状態に加工し、原告に提供すること
カ 原告が制作する3DCG映像には影を付けること
キ 本件元映像にできる限り似せて3DCG映像を制作すること
ク 原告がMayaで制作したデータを実機(G−DEV)でチェックするためのソフトウエアを被告が用意すること
ケ 原告の作業には、映像制作のためのツールのバグの発見、報告を超えてそのバグに対処することまでは含まないこと
コ 対価は1カット当たり20万円とすること
 ただし、原告のバグ発見、報告のために作業遅延が生じること等により10カットについては10万円を上乗せし、1カット当たり対価を30万円とすること
 これらのうち、アないしケは、コの対価が協議されるにあたって、前提とされたものであり、後の本件各契約の内容と矛盾しない限り、本件仕様のほか、対象業務、納入物の内容についても、重視される。
(3)さらに、その後、本件各契約が締結されるまでに先行してされた開発ツールやデータの授受、開発作業、ミーティング、話合いなどを通じて、前記(2)アないしコのうち、ア、ウ、エ、オ、カ、クは、次のとおりの内容となった。
ア’本件元映像(2Dセルアニメーション)のうち、被告が指定した一部を3DCGで表現したものを原告が制作すること、特に、本件個別契約
(1)の対象となる納入物Tの100カットは、平成18年5月17日に被告から受領したV1−1の一部である100カットのFIX版発注シート記載の100カットであり、本件個別契約(1)の対象となる納入物Uの150カット及び本件個別契約(3)の対象となる納入物Vの100カットは、同日被告から受領した250カット(V1−1の残りの150カット及びV1−2の一部の100カット)の発注シート記載の250カットであり、計350カットであること
ウ’原告の作業には、レイアウト・アニメーション等の映像制作は含むが、映像調整は含まないこと、特に、原告が被告に納品するのは「@Mayaデータ、A実機出力のできるデータ、Bテクスチャー(PSD、TGAの両方)」であること
エ’上記映像制作の素材であるモデリングデータは、被告が作成し、原告に提供すること、ただし、小物のデータの新規制作等の負担の少ない作業に限り、原告が行い、人物データのうち、顔アップ(近景)については、原告が被告から提供されたデータの修正又はデータの新規作成を行うこと
オ’上記映像制作の素材である背景データは、被告が本件元映像から抜き出した上で、上記映像制作にそのまま使用できる状態に加工し、原告に提供すること(もっとも、実際には原告担当の本件カット350カットの背景データとして使えるものは236カット分しか提供されなかったことが以後随時判明し、以後随時11カット分は原告で修正しなければならず、また、103カット分は原告で新規作成しなければならなかった。)
カ’原告が制作する3DCG映像には影を付けること、特に、影作成作業については、@人物カットのうち、本件元映像に影がある場合及びサンライズ影指示書がある場合は、それに従って原告が手付けで影作成作業を行い、Aモビルスーツカットは自動影とすること
ク’原告がMayaで制作したデータを実機(G−DEV)でチェックするためのソフトウエアを被告が用意すること、特に、被告から提供を受けた実機「G−DEV」、開発用ソフトウエア「エクスポータ」、開発用ソフトウエア「G−DEVツール」等の開発ツールを使用すること
 これらの共通認識を踏まえて、本件各契約が締結されており、その関連規定における定義は、原告の作業、工程等の内容、範囲等である前記ア’ないしケの本件仕様と合致するものであって、何ら矛盾しない。
〔被告の主張〕
(1)本件業務における実際の「本件仕様」、「対象業務」は、本件元映像のうち、最もクオリティが高い劇場第3作目の画質水準を目指し、影や背景が欠けているものについては、これを補充し、いわば本件元映像の「理想的な映像」を作成するものであった。
 そして、被告からは、モデリングデータ、背景データ等のうち、基本的なものを提供するものの、シーンに合わせた修正や不足分の新規作成等については、原告が行うこととされていた。また、デバッグ処理等に伴う作業など、対象業務の性質上、これに付随して生ずる作業についても、当然に原告の義務に含まれ、さらに、実機における映像調整までも原告の義務に含まれるとされていた。これらの点は、本件基本契約が締結された平成18年5月23日までに原告と被告の双方において了解されていた。
 原告は、本件仕様につきいずれも原告が承諾した被告の要望事項と主張するものの、「原告の作業には映像製作のためのツールのバグの発見、報告を超えてそのバグに対処することまでは含まないこと」、「モデリングデータは原則として被告が作成し、原告に提供すること」などの事項は、性質上、被告に著しく不利益な事項であって、ことさら被告が要望することはあり得ないから、本件仕様には該当しない。
 また、「背景データを被告が加工し原告に提供すること」、「モデリングデータを原則として被告が作成すること」などの事項が本件仕様に該当するという主張は、そもそも、通常の「仕様」の語義に反するものであり、最終製品の結果や性能等を示すために必要な事項ではないから、本件仕様に含まれるものではない。
(2)原告の指摘する事項について
ア’本件元映像を3DCGで表現したものの作成
 3DCGによること、また、カットの特定について、当事者間に争いはない。
イ 1カット当たりの長さ
 約4秒というのは、平均的な長さの目安にすぎず、これを超えるものを一切含まないという意味ではない。
ウ’作業内容
 本来は、シーンデータの作成のみならず、映像調整も含むことが想定されていた。
エ’モデリングデータ
 原告は、小物データ、負担の少ない作業、人物の顔アップ(近景)のみが対象業務に含まれていたとして、自らの義務を限定しようとする。しかし、実際には、本件基本契約の締結日の1か月以上前の平成18年4月21日の時点で、原告がモデリングデータの追加作成作業を行っている。
オ’背景データ
 原告は、もともと、背景データの不足分について、自ら随時制作する義務を負っていた旨を認めていたところである。
カ’影
 被告が「人物には影指示書に従って手付け、モビルスーツには自動影」などと指示したことはない。あくまで、自然な影を付けるように指示していたにすぎない。
キ 本件元映像と比較した場合のクオリティ
 本件元映像に「そっくりそのまま」似ていると言わしめるような相当高い水準が要求されており、これが原告と被告の間の了解事項であった。
 このことは、@本件元映像の存在、A仕様書となることが再確認された(甲48)原告自身が作成した「Vコンテ」の存在、B著名なアニメーションであってファンの要求水準の高い本件元映像の性質、C先行する別のプロジェクトで同種作業を行ってきた原告の認識、D初期の段階でサンプルカットが交付されていること、E原告の親会社は、本件業務のために本件元映像の著作権者であるサンライズに対して懸命に働きかけたものであって、原告としても、サンライズが本件元映像を素材としたゲーム等のクオリティに厳しいことを十分に認識していたこと、F山佐に納入された他の受託業者による制作データとの対比、から明らかである。
ク’開発ツール
 この点について、当事者間に争いはない。
ケ 開発ツールに含まれるバグの処理
 本件基本契約の締結日よりも前である平成18年5月16日の時点で、既に解決済みの問題である。そもそも、原告が重視する「お見積書」(甲6)の記載中に「デバッグ処理」と明記されている事柄である。
コ 対価
 1カット当たりの平均単価を20万円とし、初期の10カットのみ、「デバッグ処理」を含む手間がかかることを想定して、特別に1カット当たり30万円としたことについて、当事者間に争いはない。
(3)もとより、システムやソフトウエア等の開発委託契約において、仕様書の交付がされたか否か、仕様の指定がされたか否かは、「仕様書」との表題を有する文書が交付されたか否かによって決められることではない。現に、原告は、自ら仕様書となる「Vコンテ」を作成し、プリプロダクションも含め約半年間、制作を行ってきており、何らの指針もなく作業を行っていたとすることはあり得ない。
 また、平成18年3月20日付けの見積書(甲6)の時点で、本件仕様が確定していたとすることもできない。実際には、これと前後して、仕様書となるVコンテが作成され、プリプロダクションがされ、そこから浮かび上がった問題点を協議して、上記見積書の提出から2か月を経過してようやく本件基本契約が締結されたものである。
(4)本件のようなシーンデータの制作にかかる契約においては、「仕様書」と題する文書が交付されたとしても、受託者の義務が「仕様書」に記載されている内容に限定されるものではない。業務の性質や当事者間の協議、あるいは、日々発生する問題点を共同して解決する中で、映像表現の制作方針あるいは映像表示プログラム等の細かな部分の「仕様」が形成されるというケースが大半である。
 「Vコンテ」と「本件元映像」が「仕様書」と扱われることは、原告と被告の間で再三確認されていた。遅くとも、本件基本契約が締結された平成18年5月23日までに、作業内容、方法など、「本件仕様」、「対象業務」に該当する様々な事項が原告と被告の双方の間で、議事録その他の形式により確認されていた。
3 争点(3)〔本件仕様と本件シーンデータとの適合性〕について
〔原告の主張〕
(1)原告が制作して被告に納入した本件シーンデータは、本件仕様に従っており、本件仕様に基づいた対象業務の成果としての納入物に該当する。なお、本件カットごとの原告の主張の詳細は、別紙一覧表の該当欄に記載のとおりである。
ア 本件仕様エ’〔映像制作の素材であるモデリングデータは、被告が作成し、原告に提供すること、ただし、小物のデータの新規制作等の負担の少ない作業に限り、原告が行い、人物データのうち、顔アップ(近景)については、原告が被告から提供されたデータの修正又はデータの新規作成を行うこと〕の該当性
(ア)人物(キャラクター)データのうち、顔アップ(近景)に該当する51カット中の50カット(例えば、カット#115(RT07A003)、カット#147(RT07A035))について、原告において、新規にモデルを作成し、又は、被告から提供されたモデルを修正し、本件元映像にできる限り似せるためのトレース作業を行っており、本件仕様エ’を充たしている。
(イ)人物(キャラクター)データのうち、上半身(中景)に該当する97カット中の35カット(例えば、カット#175(RT08A002)、カット#220(RT09A004))について、原告において、被告から提供されたモデルを使用して制作し、また、62カット(例えば、カット#2(RE01B005)、カット#14(RE05B009)、カット#28(RT05A015)、カット#35(RT05A025)、カット#91(RT06B004)、カット#103(RT06B018)、カット#173(RE08E008)、カット#255(RT09B012)、カット#261(RT09B018)、カット#330(RT10B020))について、原告において、新規にモデルを作成し、又は、被告から提供されたモデルを修正し、本件元映像にできる限り似せるためのトレース作業を行っており、本件仕様エ’を充たしている。
(ウ)人物(キャラクター)データのうち、全身及び引き(遠景)に該当する36カット中の24カット(例えば、カット#252(RT09B009))について、原告において、被告から提供されたモデルを使用して制作し、また、12カット(例えば、カット#47(RT05B021)、カット#254(RT09B011))について、原告において、新規にモデルを作成し、又は、被告から提供されたモデルを修正し、本件元映像にできる限り似せるためのトレース作業を行っており、本件仕様エ’を充たしている。
(エ)モビルスーツ、メカ、小物等のカットに該当する166カット中の165カット(例えば、カット#45(RT05B012)、カット#132(RT07A020)、カット#159(RT07A047)、カット#314(RT10B003)、カット#323(RT10B013)、カット#329(RT10B019))について、原告において、被告から提供されたモデルを使用して制作し、また、1カット(カット#187(RT08A026))について、原告において、新規にモデルを作成し、又は、被告から提供されたモデルを修正し、本件元映像にできる限り似せるためのトレース作業を行っており、本件仕様エ’を充たしている。
イ 本件仕様カ’〔原告が制作する3DCG映像には影を付けること、特に、影作成作業については、@人物カットのうち、本件元映像に影がある場合及びサンライズ影指示書がある場合は、それに従って原告が手付けで影作成作業を行い、Aモビルスーツカットは自動影とすること〕の該当性
(ア)キャラクターの元映像に影のあるカットに該当する71カット中の70カット(例えば、カット#22(RT05A007)、カット#324(RT10B014))について、原告において、本件元映像に合わせて手付けで影付け作業を行っており(ただし、カット#24(RT05A009)については、対応していない。)、本件仕様カ’を充たしている。
(イ)キャラクターの元映像に影がなく、サンライズ影指示書のあるカットに該当する47カット(例えば、カット#93(RT06B006)、カット#325(RT10B015))について、原告において、サンライズ影指示書に合わせて手付けで影付け作業を行っており、本件仕様カ’を充たしている。
(ウ)キャラクターの元映像に影がなく、サンライズ影指示書のないカットに該当する71カット(例えば、カット#74(RT06A032))について、原告において、影付け作業を行っていない。これは、被告からサンライズ影指示書を提供されなかったためであって、本件仕様カ’を充たしている。
(エ)モビルスーツ、メカの元映像に影のあるカットに該当する52カット(例えば、カット#127(RT07A015)、カット#291(RT10A030))について、また、モビルスーツ、メカの元映像に影のないカットに該当する110カット(例えば、カット#120(RT07A008)、カット#315(RT10B004)、カット#319(RT10B008))について、原告において、本件元映像に合わせて自動影で影付け作業を行っており、本件仕様カ’を充たしている。
ウ 本件仕様オ’〔上記映像制作の素材である背景データは、被告が本件元映像から抜き出した上で、上記映像制作にそのまま使用できる状態に加工し、原告に提供すること〕の該当性
(ア)被告から提供された背景を使用して制作したカットに該当する240カット中の231カット(例えば、カット#183(RT08A018))について、原告において、この背景を使用して制作し、また、9カット(例えば、カット#322(RT10B012))について、この背景の修正作業を行っており、本件仕様オ’を充たしている。
(イ)被告から背景の提供がなかったため、原告において、本件元映像から抜き出して新規作成又は修正加工した背景を使用して制作したカットに該当する110カット(例えば、カット#247(RT09B004))についても、本件仕様オ’を充たしている。
エ 原告が制作して被告に納品したシーンデータが、OKとして、本件仕様を充たしていること
(ア)原告が納品し、いったん被告からOKが出されたカットのうち、後日NGとされていないカットに該当する22カット(例えば、カット#172(RE08B007)、カット#277(RT10A004))については、本件仕様をすべて充たしている。
(イ)また、後日NGとされ、原告において修正対応したカットに該当する30カット(例えば、カット#117(RT07A005)、カット#122(RT07A010)、カット#245(RT09B002)、カット#312(RT10B001)、カット#321(RT10B011))については、本件仕様をすべて充たしている。
(ウ)さらに、後日NGとされ、原告において修正対応をしなかったカットに該当する8カット(例えば、カット#146(RT07A034))についても、本件仕様をすべて充たしている。
オ 被告から平成18年8月29日に提供された別紙一覧表の「EPXランク」の列に記載のとおりのカットランク表(甲107の4〜6、以下「被告査定表」という。)のランク@及びAについても、本件仕様をすべて充たしていること
(ア)被告査定表によって少なくともランクB以上に査定されたカットに該当する242カットについては、本件仕様をすべて充たしている。
(イ)被告査定表によってランクAに査定されたカットに該当する61カット、ランク@に査定されたカットに該当する45カットについて、そのうちの多くのカットは本件仕様を充たしている(乙12号証で指摘されたランクAの4カット、ランク@の9カットは極端な例である。)。
 すなわち、被告は、ランク@又はAと査定したカットのデータをそのまま流用し、調整したものを最終データとして山佐に納品している。また、被告からいったんOKが出たのに、後にNGとなり、原告において修正作業を行ったにもかかわらず、ランクAと査定されたものがある。そして、被告から山佐に最終納品されたG−DEV映像と本件元映像とを比較すると、相違点が多く見られるカット(例えば、カット#6(RE01F005))もあり、ランク@又はAと査定することも不当である。また、上記の最終納品のG−DEV映像には、2Dを併用したものが多く見られるにもかかわらず、2Dを併用したことを理由としてランク@又はAと査定することも不当である。
(2)なお、本件各契約上、納入物は仕様等に基づき検査され、これに合格しない場合、原告は、納入物を修補して、被告と協議のうえ合意した納期までに納入することとされていた(本件基本契約9条1項、3項)から、平成18年7月27日のDVD納品以降の納入物があれば、これを基準にして、納品されたシーンデータが本件仕様を充たしているか否かが判断されるべきことは当然である。
〔被告の主張〕
(1)原告の主張する本件仕様の内容について、「できるだけ似せる」との項目が含まれているならば、そのような努力義務を果たしたことが指摘されるべきであり、単に、被告提供のモデルを使用するなどして制作しているから本件仕様を充たしているとの指摘は、それ自体失当である。
(2)本件仕様カ’について、本件元映像における影の有無、サンライズの影指示書の有無にかかわらず、3次元映像であるから、立体的に見えるように全カットに影を付けることが当然の前提となっており、原告が自分で影指示書を作成することができているように、被告が影指示書を用意しなくとも、本件元映像を3D化するという仕事の内容自体からして、原告において、自然な影を付けることは可能であった。
 また、被告において管理上OKとしたカットは、納入と認めて正規にOKとしたものではなく、背景や影の修正、エフェクトの追加などの条件付きのものであったことは、その都度原告に伝えてあったとおりである。
 なお、被告は、本件元映像自体に問題がある場合(角度がおかしい、不足がある、遠近感が狂っている、不完全であるなど)のみに限っては、版元の承諾を得て、本件元映像の趣旨の範囲内で映像を修正加工し、山佐に納入している。原告が元請けの被告に納入する映像と被告が発注者の山佐に納入する映像とが同一であることを求められる理由はない。
(3)本件シーンデータの完成度については、被告において、その出来型を評価した被告査定表のとおりである。なお、これは、当時、話合いによる解決を前提に作成したものであって、原告に有利な内容の評価である。
 もとより、「本件仕様」、「対象業務」等の文言の解釈について当事者間に争いがあるものの、本件シーンデータがVコンテや本件元映像と似ていないことは素人目にも明らかであり、被告の解釈に従えば、本件シーンデータが本件仕様に適合しないというほかない。
 原告は、平成18年7月27日、被告に対し、同時点における本件シーンデータが記録されたDVD−Rを交付しており、これに収録されたテキストデータには、自ら「α版」と明記し(乙20の16、乙21)、未完成品であることを自認していた。そして、原告と被告は、納期までに完成することができないことが明らかとなったことから、被告査定表を作成し、これを踏まえて相当対価の算定につき協議を行っていたものである。
4 争点(4)〔本件追加作業の具体的内容〕について
〔原告の主張〕
(1)原告が本件業務に伴って被告のために行った本件追加作業の具体的な内容は、以下のとおりである。なお、本件カットごとの原告の主張の詳細は、別紙一覧表の該当欄に記載のとおりである。
ア 「影指示書」の作成
 原告が制作を担当した本件カット350カットのうち、本件元映像に影が付いていたものは123カット、本件元映像に影がない又は一部しかないカットは227カットであり、そのうち、原告が手付けで影制作作業をした人物カットは合計112カットもあった。この112カット中、影指示書は、47カットにしかなく、残りの65カットにはなかった。
 原告は、キャラクターの元映像に影がなく、サンライズ指示書のないカットに該当する65カット(例えば、カット#74(RT06A032))について、影付け作業は行っていないものの、作業を進めるための影指示書32カットを作成しており、追加費用が発生した。
イ 被告から提供された「背景データ」の修正
 平成18年8月1日及び2日、被告から原告に対し、先行の100カット分(V1−1の一部に相当)のうち77カットについて、リテイクの指示がされた。このうち、被告の提供した背景データを使用したにもかかわらず、NGの理由の全部又は一部が背景に関するものであったカットが42カットであり、原告は、このうちの9カットについて、追加で修正作業をした。
 本来であれば、被告の提供した背景データを使用することにより本件仕様を充たしているはずの245カット中の9カット(例えば、カット#322(RT10B012))について、原告において、追加で修正作業を余儀なくされたものであり、追加費用が発生している。
ウ 不当なリテイク
 原告が納品して被告がいったんOKを出しながらこれを後に取り消したカットについて、原告としては、被告からリテイクの指示を受け、追加作業に該当するものであっても、指示に従い、修正作業を行った。
 このようなカットに該当する30カット(例えば、カット#117(RT07A005)、カット#122(RT07A010)、カット#245(RT09B002)、カット#312(RT10B001)、カット#321(RT10B011))については、追加費用が発生している。
エ 「G−DEVツール」及び「エクスポーター」の検証等
 本件各契約上の「本件仕様」、「対象業務」及び「納入物」の内容として、原告の作業には、映像制作のためのツールのバグの発見、報告を超えて、そのバグに対処することまでは含まれていない。
 ところが、実際には、開発ツールにバグが続発し、本件業務の遅延の一つの大きな原因となったため、原告自身が対処せざるを得なかった。すなわち、原告のスタッフから開発ツールの不具合の報告を受けると、原告の担当者において、それが原告側の不手際かバグによるものかを検証し、バグであると判断したものについて、被告の担当者とやりとりを行い、問題の解決方法を教示してもらって、原告のスタッフに伝えた。被告からバグの解決方法の教示がない場合や、被告の方法では別の問題が生じる場合には、原告のスタッフは被告の担当者とやりとりを行い、作業手順を変えるなどしながら、制作業務を続けたから、追加費用が発生している。
オ モデリング(人物カットの新規制作及び被告提供データの修正等)原告は、被告からの強い要請を受けて、本件各契約上の「本件仕様」、「対象業務」及び「納入物」の内容にかかわらず、人物の「上半身」(中景)及び「全身及び引き」(遠景)のカットについても、人物のモデリングデータの新規制作、修正の追加作業をせざるを得なかった。また、メカについても、小物以外、例えばトレーラー等の大きなメカのモデリングデータの新規制作、修正の追加作業の実施を強いられた。
(ア)人物データ(キャラクター)のうち、上半身(中景)に該当する97カット中の47カット(例えば、カット#2(RE01B005)、カット#14(RE05B009)、カット#28(RT05A015)、カット#35(RT05A025)、カット#91(RT06B004)、カット#103(RT06B018)、カット#173(RE08E008)、カット#255(RT09B012)、カット#261(RT09B018)、カット#330(RT10B020))について、原告において、新規にモデルを制作し、又は、被告から提供されたモデルを修正し、本件元映像にできる限り似せるためのトレース作業を行っており、追加費用が発生した。
(イ)人物データ(キャラクター)のうち、全身及び引き(遠景)に該当する36カット中の11カット(例えば、カット#47(RT05B021)、カット#254(RT09B011))について、原告において、新規にモデルを制作し、又は、被告から提供されたモデルを修正し、本件元映像にできる限り似せるためのトレース作業を行っており、追加費用が発生した。
(ウ)モビルスーツ、メカ、小物等のカットに該当する166カット中1カット(カット#187(RT08A026))について、被告から提供されたモデルがなかったため、原告において、新規にモデルを制作し、本件元映像にできる限り似せるためのトレース作業を行っており、追加費用が発生した。
カ 被告がカットのチェックを依頼したγ01氏への対応
 γ01氏は、平成18年6月29日ころから同年7月10日ころまで、原告の制作したカットのうち合計125カットをチェックし、そのうち102カットに対して修正を指示した。しかし、γ01氏の指示は、本件各契約上の本件仕様に合致せず、これと矛盾したり、これを超えていたりしたものであり、γ01氏の指示に対する被告の対応は二転三転した。
 γ01氏からリテイク(修正)指示のあったカットに該当するカット125カット中の27カット(例えば、カット#34(RT05A024)、カット#233(RT09A019))については、γ01氏の指示内容が被告のクオリティチェックでOKがもらえる内容かどうかについて、被告からの正式な回答がなかったため、追加費用が発生している。他方、γ01氏からリテイク指示のあったカットに該当するカット125カット中の98カット(例えば、カット#157(RT07A045))については、具体的な作業内容が本件仕様に合致せず、矛盾したり、超過したりするものであったため、原告は修正をしていない。
キ 原告が当初より制作が困難であるとして受託をいったん断った1カットに係る作業
 カット#5(RE01D001)(フラウ・ボウのカット)及びカット#214(RT08D002)(マ・クベのカット)の2カットは、納期に間に合わせて本件仕様の「本件元映像にできる限り似せる」ことが技術的に極めて困難であり、原告から被告に対して相談し、納期変更の提案をしたにもかかわらず、被告は、3DCGで制作することにこだわり、結果として、原告に対し、前者のカットにつき制作作業を強い、追加費用が発生した。
 このカットが制作困難であった理由は、被告の提供したアムロとフラウのモデリングデータが全く似ておらず、人物の動きが激しい上、映像尺が約20秒と長いということである。このカットは、被告でも制作することができず、最終的に山佐に未納品となっている。
(2)これらの本件追加作業は、いずれも、原告の「責に帰すべき事由によらない」作業であり、この結果、原告と被告との間において、本件受委託契約が成立しているものである(本件基本契約9条3項、商法512条)。
〔被告の主張〕
(1)原告の主張する本件追加作業は、いずれも本件各契約上の本来の受託業務の範囲内のものである。
 被告から提供された「背景データ」の修正については、他の業者において、背景のみの制作を新たに発注する際の金額は1カット当たり3000円であり、難なく仕上げられている。
 不当なリテイクとの主張については、そもそも何をもって「不当な」リテイクとしているのか不明である。
 「G−DEVツール」及び「エクスポーター」の検証等については、本件各契約の締結の前後で解決済み、あるいは、被告の支援により簡単に収束している事項ばかりである。
 被告がカットのチェックを依頼したγ01氏への対応については、γ01氏は、本件元映像の著作権者であるサンライズから進行管理の役割を担い、本件元映像に関するビジネスに精通した人物として業界内でよく知られている。γ01氏は、平成18年6月29日ころ及び同年7月10日ころ、原告の制作が遅れていることを懸念し、制作現場の視察に訪れ、その際、いくつか気付いた点を原告の担当者に対して指摘した。しかし、被告は、原告に対し、これらの指摘のうち、ささいなものについては修正指示を出さず、品質が劣っていることを指摘されたものにつき修正を命じたにすぎない。したがって、本来の受託業務の範囲を超える追加作業は存しない。
 原告は、本件シーンデータの制作が本件元映像という著名なアニメーションを素材としている以上、著作権者から承認を得られる品質に仕上げなければならないことは、当初より承知しているはずである。
(2)なお、原告が本件追加作業に係る対価の支払請求の根拠とする本件基本契約9条3項は、不合格の原因が原告の責に帰すべき事由によらない場合に、対価につき「協議」の上で「決定」がされて生ずるものである。本件においては、不合格となったことにつき原告に帰責事由があり、被告と原告との間の協議も決定もないことから、当該条項に基づく請求はできない。また、本件基本契約9条3項の「修補作業」が本来の当初の「対象業務」の範囲内のものであることは、「修補」の用語や不合格の場合の規定の趣旨から明らかであり、このような場合には、商法512条の適用はない。
5 争点(5)〔抗弁関係の成否〕について
〔被告の主張〕
(1)一部解除の抗弁
ア 原告は、本件各契約に基づき、「納入物」である本件シーンデータを作成し、被告に対して、本件基本契約上の手順に従って、これを納入する義務を負っていた。
 納入物はあくまでも本件カット350カットであり、そのうちのカット#5(RE01D001)(フラウ・ボウのカット)及びカット#214(RT08D002)(マ・クベのカット)の2カットについて、原告と被告の間で、これを対象から除外する合意がされた事実はない。
 原告は、平成18年7月27日、被告に対し、同時点における本件シーンデータが記録されたDVD−Rを交付しているものの、これは未完成カットの相当対価を査定するために行われたにすぎず、これに収録されたテキストデータには、原告自ら「α版」と明記し、未完成品であることを自認していたから、本件各契約上の「納入」に該当しない。なお、原告は、被告のイントラネット上のフォルダに制作した本件シーンデータを複写している。しかし、これは速やかな被告による査定をするため、便宜行われたものにすぎず、被告において、これを納入方法として認めたことはない。
 そして、本件シーンデータが納入された後、検査に合格しない限り、対象業務は終了せず、原告の債務が履行されたことにはならない(本件基本契約9条)。
イ 原告と被告の間で、納期は最終的に次のとおり合意された。
 納入物T(100カット) 平成18年6月30日
 納入物U(150カット) 平成18年7月31日
 納入物V(100カット) 平成18年7月31日
ウ 原告と被告は、無催告解除を合意していた(本件基本契約26条1項)。
エ 原告は、納期までに、債務を履行しなかった。遅くとも、平成18年7月27日の時点において、納期までに債務の履行が不能となっていたことが明らかであり、同月31日の時点になっても、債務の履行はされなかった。
 すなわち、本件シーンデータの制作を完成できず、CD−R、DVD−R等の媒体に記録して「納入」を行うこともなく、「検査」を受けるに至らず、「合格」となることもなかったものである(なお、原告は、被告に対し、いまだ出来型部分についても、納入、引渡しを行っていない。)。
 上記の事実は、本件基本契約26条1項1号、10号、11号の解除事由に該当する。
オ 被告は、原告に対し、相当対価の支払を準備してその旨を通知しており、弁済の提供をしている。なお、原告は、増額を要求し、その対価の受領を拒んだ。
 被告は、原告に対し、平成18年9月28日付けの通知書をもって、そのころ、本件各契約のうちの未履行部分を解除した。
カ なお、本件各契約の解除について、原告の帰責事由は必要とされないが、原告に帰責事由の存在することも明らかである。
 原告の制作スタッフは、その多くの者が被告の本社内で作業を行っており、常に、被告のスタッフから、作業内容につき助言を受けられる環境にあった。被告は、原告のスタッフとの間で、週に数回の頻度で会議を開き、不明な点がある場合には、その都度、問題を明らかにし、改善策を講じてきた。その内容は、被告の社内で作業をしているか否かにかかわらず、全スタッフに告知されるように配慮してきた。
 しかし、原告は、十分な能力を備えたスタッフを用意することができなかったため、制作に適した組織を形成することができず、制作方法の情報の伝達、周知も不十分であった。そして、被告から、1人のスタッフが個々のカットを最初から完成まで責任をもって制作する「一括請負方式」にするように指摘されたにもかかわらず、複数のスタッフで素材の制作、レイアウト、モーション付け等の個々の作業を分担する「流れ作業方式」に最後までこだわり、非効率な作業を繰り返したため、結局、本件業務の完成をみることができなかったものである。
(2)同時履行の抗弁
 本件各契約は、双務契約であるから、一部解除の可否にかかわらず、既履行部分の引渡しとその対価の支払及び未履行部分の引渡しとその対価の支払がそれぞれ同時履行の関係に立つものである。
(3)相殺の抗弁
 被告は、原告の債務不履行により、本件基本契約27条に基づく損害賠償として、次のとおり、合計1億4469万6394円の支払請求権を有しているから、これを反対債権として、対当額において、原告の請求債権と相殺する。
ア 原告に代わる他の業者への発注費用
 原告は、急遽、原告に代わる他の業者に対し、制作を外注することを余儀なくされた。この費用は、次のとおり、2413万円である。
(ア)平成18年9月1日から同年10月16日までの間の外注費用
・ベック 800万円
 内訳カット数/64カット カット単価12万5000円
・ディアフィールド 673万円
 内訳カット数/54カット カット単価12万4600円
・ザックス・エンターテインメント 500万円
 内訳カット数/40カット カット単価12万5000円
・小計 1973万円
(イ)平成18年10月17日から同月31日までの間の追加外注費用
・ベック 180万円
 内訳カット数/ 9カット カット単価20万円
・ディアフィールド 260万円
 内訳カット数/13カット カット単価20万円
・小計 440万円
(ウ)合計 2413万円
イ 納期の延期により生じた経費
 原告は、本来、平成18年10月末日までに、「V1」に係る作業を完結させる予定であったにもかかわらず、作業が完結せず、納期が延期された。このため、被告は、平成18年12月末日まで2ヶ月の期間につき予定外の費用をかけることを余儀なくされた。この費用は、次のとおり、1億2056万6394円である。
(ア)平成18年11月の社内経費
・人件費 4010万3683円
・人件費以外の経費(家賃等)  2087万3465円
・小計 6097万7148円
(イ)平成18年12月の社内経費
・人件費 3879万6723円
・人件費以外の経費(家賃等)  2079万2523円
・小計 5958万9246円
(ウ)合計 1億2056万6394円
〔原告の主張〕
(1)一部解除の抗弁について
ア 本件カット350カットのうち、カット#5(RE01D001)(フラウ・ボウのカット)及びカット#214(RT08D002)(マ・クベのカット)の2カットについて、原告と被告の間で、これを対象から除外する合意がされた事実は、電子メール等によって明らかである。
 また、平成18年7月27日に交付したDVD−Rには、本件シーンデータの「一式」、すなわち、「納入物」としての「実機用表示データ@」、「実機用表示データA」及び「テクスチャー用画像データ」が収録されていたのであるから、単なる査定用でないことが明らかである。このDVD−Rのテキストデータに「α版」と記載されていたのは、本件各契約上の「検査」を受けて「合格」をする前であったことから、自然なものというべきである。
 なお、被告において、出来型部分についても、納入、引渡しを否定するのは、単に同時履行の抗弁を提出するためにする主張であって、事実に基づくものではない。実際に、被告は、本件シーンデータのうち、被告査定表でランク@及びAと査定したカットも含めて、ほとんどすべてを流用して山佐に納品を行っている。
イ 被告が実際に原告に支払を提案した金額は、本件個別契約(1)及び(3)の残代金5570万円と比較して、わずか1004万8500円にすぎず、到底、相当対価の支払とは認められないものであり、本件シーンデータを不当に買い叩こうとした事実を示すものである。
 また、本件各契約のうちの未履行部分の解除については、本件各契約上、本件シーンデータごとの本件仕様の不充足部分につき一部の解除が許されるかについては、何ら規定がないというべきであるし、本件基本契約26条の解除の解釈としても、本来可分なシーンデータごとに許容されるにとどまるものと解される。
ウ 被告は、本件各契約の解除につき原告の帰責事由は必要とされないとも主張する。しかしながら、本件各契約は、被告による任意の解除を許容するものではなく、失当である。
 すなわち、本件基本契約26条1項1号、10号、8条2項の文言からして、原告が納入遅延となったときでも、被告の帰責事由による場合には原告が債務不履行責任を負わないと規定しており、解除は許されないのであり、また、本件基本契約9条3項の納入物が検査に合格しない場合でも、原告の帰責事由によらないときには、やはり解除は許されない。さらに、本件契約26条1項11号の「相当の事由」についても、原告と被告の帰責事由を含めた諸般の事情によって、判断されるべきものである。
(2)同時履行の抗弁について
 被告は、既履行部分について、引渡しを受ける権利を主張するものの、何ら事実に基づくものではなく、単に同時履行の抗弁を提出するためにする主張にすぎない。
(3)相殺の抗弁について
 被告の主張のうち、外注費用については、仮に、本件シーンデータの一部が本件仕様を充足しなかった場合には、その部分についてのみ損害賠償請求権を有するにとどまるのであって、本件仕様を充足した本件シーデータの残部に対する追加作業分は含まれないものである。被告は、被告査定表のランク@及びAの合計数の106カットより多い180カットについて、被告が原告に支払を提案した1004万8500円の2倍強にあたる2413万円を損害賠償金としており、それ自体失当である。
 また、平成18年11月及び同年12月の社内経費については、本件シーンデータの一部における本件仕様の充足の有無にかかわらず、被告において負担されるべきものである。
第4 当裁判所の判断
1 前記第2の1争いのない事実に、証拠(甲1、2、3、5〜7、12〜18、20、22、23、24の1・2、甲26、29、30、35、37の1・2、甲38の1〜甲39、43〜45、48、56の1・2、甲107の1〜甲108の3、甲110、乙1、4の1・2、乙5の1〜7、乙6の2・4〜7・12・13・15・18、乙9の1・2、乙10、11の1・2・4・8・9・11〜15、乙13の1〜乙14の2、乙16、18、19、20の1・3・8〜11・14・16・17・19)及び弁論の全趣旨を総合すれば、次の事実が認められる。
(1)本件各契約締結までの経過
ア 平成17年12月、原告と被告との間では、アニメ「宇宙戦艦ヤマト」の映像を素材とした山佐製の回胴式遊技機を開発する「プロジェクトZ」が進行しており、原告において、被告からの委託を受けて、回胴式遊技機に用いるシーンデータの試作作業(「プリプロダクション」又は略称して「プリプロ」)を行っていた。
 なお、その後、このプロジェクトZは、平成18年3月末、本制作の作業に移行することなく、試作作業の完了をもって終了した。
イ 原告と被告との間で、プロジェクトZの作業がされたことが契機となって、平成18年1月、Vプロジェクトの案件が持ち上がり、同月下旬から、関係者のミーティングが開始され、まず、被告から原告に対し、本件シーンデータの制作に先立って、映像制作の指針となる「Vコンテ」(ビデオコンテ、乙19)の制作が発注された。
 Vコンテの発注は、平成18年2月と同年3月の2回に分けて行われ、第1回発注分は、同年2月13日付けの開発委託契約書(乙4の1、なお、同月3日付け見積書(乙13の1)と同月20日付け見積書(乙13の2))によって同月28日に納品され、修正作業を経て、同年4月7日に検査合格通知(乙14の1)がされ、第2回発注分は、同年3月1日付けの開発委託契約書(乙4の2、なお、同月9日付け見積書(乙13の3)と同月20日付け見積書(乙13の4))によって同月31日に納品され、修正作業を経て、同年4月21日に検査合格通知(乙14の2)がされた。
ウ この間、平成18年3月から、原告と被告との間では、Vプロジェクトの本制作についての具体的な協議が進行し、原告の被告に対する同月14日付け見積書(甲5)及び同月20日付け見積書(甲6)の提示などを経て、同月20日ころ、1カット当たりの平均単価を20万円とし、最初の契約分の該当する10カット(本件個別契約(1)の250カットのうちの10カット)については、「研究開発」と位置付けて、10万円を上乗せした30万円とすることで合意をみた。
 そして、契約の締結に向けた協議と並行して、同年4月にかけて、プリプロダクション作業(RT07関係、「迫撃!トリプルドム」の一部)が開始され、その後、被告は、原告に対し、平成18年5月1日ころ、第1回分としてプリプロダクション分を含む100カット(甲24の1・2、甲29、37の1・2、甲38の1・2)を発注(以下「4月分」(10カット)及び「5月分」(90カット)又は全体を単に「5月分」として言及することがある。)し、同年5月17日、第2回分として250カット(甲29、38の1・3)を発注(以下「6月分」として言及することがある。)した。
エ こうして、発注後の作業と並行しながら契約条項が協議された結果、原告と被告との間において、平成18年5月23日に本件基本契約(同月1日付け、甲1)と本件個別契約(1)(同月1日付け、甲2)が締結され、同月末ころに本件個別契約(3)(ただし、調印は未了、甲3)が締結された。なお、本件個別契約(1)の対象カットは、4月分10カット、5月分のうちの50カット及び6月分のうちの190カットであり、本件個別契約(3)の対象カットは、5月分のうちの残り40カット及び6月分のうちの残り60カットである。
(2)本件業務の作業
ア 本件業務の内容は、劇場用映画DVDの2Dセルアニメーションの名場面(本件元映像)をパチスロ用の動画データ(本件シーンデータ)に再現するというものである。
 本件シーンデータの制作は、本件元映像のリアルタイム3DCG化(より正確には、簡略された3次元画像となるいわゆる「2.5D」の技術を用いたもの)であり、本件元画像をトレースして、人物(アムロ、カイ、ハヤト、セイラ、ブライト、フラウ、ミライ、リュウ、マチルダ、レビル、シャア、ガルマ、ランバ・ラル、ハモン、ミハル等)、モビルスーツ(ガンダム、ガンキャノン、ザク、グフ、ドム、ズゴック等)やメカなどの立体的なモデリングデータを適切な位置に配置し、動きを与え、光の向きに合った影を付け、また、背景を加えることによって行われる。
 モデリングデータは、人物やメカなどの3次元(3D)の対象物について、形、サイズ、位置、色、質感等をポリゴン(多角形)によってコンピュータ上で表現するデータであり、シーンの制作にあたって素材となるものである。ところが、2次元映像を3次元のモデリングデータで表現する場合、そのままモデリングデータを用いても、人物のキャラクターの表情などが2次元映像と同じに見えないことがある。これは、もともとの2次元映像が作画者の手書きで描かれており、正確なモデリングデータと不一致を生ずるためである。
 そこで、モデリングデータを用いた映像を元の2次元の映像に似せるためには、単に素材となるモデリングデータを配置するだけでは足りず、シーンごとに表情や形状に合わせて、モデリングデータを変形させる作業が必要となる。特に、本件元映像のように著名なアニメーションの場合、もとの2次元映像と異なる見え方をすることは避けなければならず、モデリングデータの変形作業は重要であった。
イ 本件業務にあたって、被告から原告に対し、開発用機材として、「GDEV」のほか、開発用プログラムとして、「G−DEVツール」と「エクスポーター」が提供された。
 そして、実際の作業では、本件元映像を前提に、Vコンテ説明書(@各カットにおけるパチスロ上での役割を記載した一覧表、Aパチスロ演出上の流れを記載したフロー、Bフローで記載された演出の流れを絵や文字で詳しく説明した字コンテ)とVコンテ(元の映像を利用して、Vコンテ説明書を基に、カットのつながりやカットの長さ等を調整し、指定されたカット番号をつないだ一連の映像)を利用して、3DCG化の作業が行われた。
 その工程は、カット単位でみると、おおよそ次のとおりである。
@ モデリング(提供されたモデリングデータとMayaを用いて人物、モビルスーツ、メカ、その他のオブジェクトを作成すること)
A マテリアル・質感設定(顔や物などのオブジェクトにテクスチャーなどを貼ること)
B ボーン設定(元の映像に似せるため、ジョイントを動かしてオブジェクトを変形させること)
C〔@〜Bと並行して〕背景切出し(元の映像をコンピュータに取り込み、主に人物やモビルスーツを画面から消し、背景のみの画像に修正すること)
D レイアウト(尺(時間)の長さを決めて、仮のカメラを配置して、背景、キャラクターを仮に配置すること)
E アニメーション(人物、モビルスーツ、メカなどに元の映像をトレースした動きをつけること)
F〔Eと並行して〕エフェクト(水、爆発、炎、布などの映像上の効果を与えること)
G コンポジット(カメラデータ、背景データ、オブジェクトデータ、マテリアルデータ、エフェクトデータを取りまとめて1つのシーンにすること)
H エクスポート(3Dで制作されたデータを実機(G−DEV)に表示できるデータに変換すること)
I 実機(G−DEV)表示(3Dデータを計算して、これを液晶表示するG−DEV(ハードウエア)で表示すること)
J マスター調整(映像調整)(パチスロ機(商用機)のメモリ上にG−DEV用のデータを一時的に保存して、カットの繋がりに関して問題がないかを確認した上で、調整すること)
ウ 原告においては、代表者取締役のα01氏の下に、α02プロデューサーとα03ディレクターが配置され、α03氏の下に、テクニカルディレクター、アニメーションディレクター、エフェクトディレクター等が置かれ、さらに配下の実働部員がそれぞれ配置される組織体制を敷き、本件業務の作業にあたった。また、実働部員の一部については、原告の再委託による外注先として、「しいたけデジタル」、「CGR」、「アスペクト」等が原告の指揮により、作業を担当した。
 本件シーンデータの作成においては、出来上がったカットごとに、原告が被告のディレクションを受け、NGとなったカットは、リテイクの後、再提出をして、再度のディレクションを受ける形で作業が進められた。
(3)本件シーンデータ作成の進捗状況
ア 原告作成の進捗状況一覧表(乙11の4、8、9、11〜15)の記載
(ア)4月分10カットと5月分90カット
a 平成18年5月24日時点の集計(乙11の4)
・提出カット/30カット
 NGカット/12カット
 判定未了カット/18カット
・リテイク1の提出カット/8カット
 NGカット/3カット
 判定未了カット/5カット
・未提出カット/70カット
b 平成18年6月21日時点の集計(乙11の8、追加関連カット1カットを含む計101カット、以下同様)
・提出カット/89カット
 OKカット/5カット
  内訳:カット#124(RT07A012)、カット#138(RT07A026)、カット#142(RT07A030)、カット#247(RT09B004)、カット#258(RT09B015)
 NGカット/79カット
 判定未了カット/5カット
・リテイク1の提出カット/49カット
 OKカット/4カット
  内訳:カット#121(RT07A009)、カット#141(RT07A029)、カット#147(RT07A035)、カット#151(RT07A039)
 NGカット/13カット
 判定未了カット/32カット
・リテイク2の提出カット/4カット
 判定未了カット/4カット
・未提出カット/12カット
c 平成18年6月28日時点の集計(乙11の9)
・提出カット/95カット
 OKカット/5カット
  内訳:平成18年6月21日時点に同じ
 NGカット/79カット
 判定未了カット/11カット
・リテイク1の提出カット/68カット
 OKカット/4カット
  内訳:平成18年6月21日時点に同じ
 NGカット/15カット
 判定未了カット/49カット
・リテイク2の提出カット/10カット
 判定未了カット/10カット
・未提出カット/6カット
d 平成18年7月5日時点の集計(乙11の11)
・提出カット/96カット
 OKカット/10カット
  内訳:〔平成18年6月28日時点後の追加分〕カット#135(RT07A023)、カット#245(RT09B002)、カット#246(RT09B003)、カット#249(RT09B006)、カット#326(RT10B016)
 NGカット/85カット
 判定未了カット/1カット
・リテイク1の提出カット/78カット
 OKカット/28カット(3カットNGに判定変え)
  内訳:〔平成18年6月28日時点後の追加分〕: カット#115(RT07A003)、カット#117(RT07A005)、カット#128(RT07A016)、カット#132(RT07A020)、カット#133(RT07A021)、カット#134(RT07A022)、カット#146(RT07A034)、カット#248(RT09B005)、カット#251(RT09B008)、カット#254(RT09B011)、カット#256(RT09B013)、カット#257(RT09B014)、カット#259(RT09B016)、カット#260(RT09B017)、カット#312(RT10B001)、カット#313(RT10B002)、カット#314(RT10B003)、カット#315(RT10B004)、カット#316(RT10B005)、カット#317(RT10B006)、カット#321(RT10B011)、カット#324(RT10B014)、カット#327(RT10B017)、カット#329(RT10B019)、カット#330(RT10B020)、カット#333(RT10B023)、〔平成18年6月28日時点後の判定変更分〕: カット#122(RT07A010)、カット#141(RT07A029)(なお、前記b参照)、カット#147(RT07A035)
 NGカット/39カット
 判定未了カット/11カット
・リテイク2の提出カット/15カット
 OKカット/7カット
  内訳:カット#120(RT07A008)、カット#126(RT07A014)、カット#130(RT07A018)、カット#148(RT07A036)、カット#153(RT07A041)、カット#155(RT07A043)、カット#161(RT07A049)
 判定未了カット/8カット
・未提出カット/5カット
e 平成18年7月12日時点の集計(乙11の12)
・提出カット/96カット
 OKカット/10カット
  内訳:平成18年7月5日時点に同じ
 NGカット/85カット
 判定未了カット/1カット
・リテイク1の提出カット/78カット
 OKカット/28カット
  内訳:平成18年7月5日時点に同じ
 NGカット/39カット
 判定未了カット/11カット
・リテイク2の提出カット/15カット
 OKカット/7カット
  内訳:平成18年7月5日時点に同じ
 NGカット/3カット
 判定未了カット/5カット
・未提出カット/5カット
f 平成18年7月19日時点の集計(乙11の13)
・提出カット/99カット
 OKカット/10カット
  内訳:平成18年7月12日時点に同じ
 NGカット/85カット
 判定未了カット/4カット
・リテイク1の提出カット/78カット
 OKカット/28カット
  内訳:平成18年7月12日時点に同じ
 NGカット/39カット
 判定未了カット/11カット
・リテイク2の提出カット/15カット
 OKカット/7カット
  内訳:平成18年7月12日時点に同じ
 NGカット/3カット
 判定未了カット/5カット
・未提出カット/2カット
g 平成18年7月26日時点の集計(乙11の14)
・提出カット/100カット
 OKカット/10カット
  内訳:平成18年7月19日時点に同じ
 NGカット/85カット
 判定未了カット/5カット
・リテイク1の提出カット/78カット
 OKカット/28カット
  内訳:平成18年7月19日時点に同じ
 NGカット/39カット
 判定未了カット/11カット
・リテイク2の提出カット/17カット
 OKカット/7カット
  内訳:平成18年7月19日時点に同じ
 NGカット/3カット
 判定未了カット/7カット
・未提出カット/1カット
h 平成18年8月2日時点の集計(乙11の15)
・提出カット/101カット
 OKカット/10カット
  内訳:平成18年7月26日時点に同じ
 NGカット/85カット
 判定未了カット/6カット
・リテイク1の提出カット/80カット
 OKカット/28カット
  内訳:平成18年7月26日時点に同じ
 NGカット/39カット
 判定未了カット/13カット
・リテイク2の提出カット/20カット
 OKカット/7カット
  内訳:平成18年7月26日時点に同じ
 NGカット/3カット
 判定未了カット/10カット
・リテイク3の提出カット/2カット
 判定未了カット/2カット
・未提出カット/0カット
(イ)6月分250カット
a 平成18年6月21日時点の集計(乙11の8)
・提出カット/17カット
 NGカット/12カット
 判定未了カット/5カット
・リテイク1の提出カット/10カット
 判定未了カット/10カット
・未提出カット/233カット
b 平成18年6月28日時点の集計(乙11の9)
・提出カット/27カット
 NGカット/13カット
 判定未了カット/14カット
・リテイク1の提出カット/11カット
 NGカット/1カット
 判定未了カット/10カット
・未提出カット/223カット
c 平成18年7月5日時点の集計(乙11の11)
・提出カット/45カット
 OKカット/6カット
  内訳:カット#7(RE01F006)、カット#27(RT05A013)、カット#81(RT06A045)、カット#83(RT06A047)、カット#241(RT09A027)、カット#278(RT10A010)
 NGカット/21カット
 判定未了カット/18カット
・リテイク1の提出カット/12カット
 OKカット/5カット
  内訳:カット#172(RE08E007)、カット#163(RT07B017)、カット#196(RT08B002)、カット#277(RT10A004)、カット#308(RT10A051)
 NGカット/6カット
 判定未了カット/1カット
・未提出カット/205カット
d 平成18年7月12日時点の集計(乙11の12)
・提出カット/58カット
 OKカット/6カット
  内訳:平成18年7月5日時点に同じ
 NGカット/21カット
 判定未了カット/31カット
・リテイク1の提出カット/12カット
 OKカット/5カット
  内訳:平成18年7月5日時点に同じ
 NGカット/6カット
 判定未了カット/1カット
・未提出カット/192カット
e 平成18年7月19日時点の集計(乙11の13)
・提出カット/109カット
 OKカット/6カット
  内訳:平成18年7月12日時点に同じ
 NGカット/21カット
 判定未了カット/82カット
・リテイク1の提出カット/12カット
 OKカット/5カット
  内訳:平成18年7月12日時点に同じ
 NGカット/6カット
 判定未了カット/1カット
・未提出カット/141カット
f 平成18年7月26日時点の集計(乙11の14)
・提出カット/136カット
 OKカット/6カット
  内訳:平成18年7月19日時点に同じ
 NGカット/24カット
 判定未了カット/106カット
・リテイク1の提出カット/15カット
 OKカット/5カット
  内訳:平成18年7月19日時点に同じ
 NGカット/6カット
 判定未了カット/4カット
・未提出カット/114カット
g 平成18年8月2日時点の集計(乙11の15)
・提出カット/222カット
 OKカット/6カット
  内訳:平成18年7月26日時点に同じ
 NGカット/24カット
 判定未了カット/192カット
・リテイク1の提出カット/20カット
 OKカット/5カット
  内訳:平成18年7月26日時点に同じ
 NGカット/6カット
 判定未了カット/9カット
・未提出カット/28カット(仮提出カット/27カット)
  内訳:カット#3(RE01B008)、カット#5(RE01D001)、カット#166(RE08C003)、カット#169(RE08C006)、カット#16(RT05A001)、カット#18(RT05A003)、カット#31(RT05A020)、カット#58(RT06A002)、カット#62(RT06A014)、カット#63(RT06A015)、カット#64(RT06A016)、カット#75(RT06A036)、カット#86(RT06A051)、カット#98(RT06B011)、カット#99(RT06B013)、カット#180(RT08A012)、カット#214(RT08D002)、カット#215(RT08D003)、カット#216(RT08D004)、カット#217(RT09A001)、カット#218(RT09A002)、カット#224(RT09A009)、カット#225(RT09A010)、カット#226(RT09A011)、カット#235(RT09A021)、カット#242(RT09A028)、カット#243(RT09A029)、カット#348(RT10E009)(ただし、カット#214(RT08D002)を除く27カットにつき仮提出あり)
イ 被告作成(平成19年5月時点)の進捗状況一覧表(乙10)の記載
(ア)4月分10カットと5月分90カット
・提出カット/100カット
 OKカット/25カット
  内訳:カット#121(RT07A009)、カット#132(RT07A020)、カット#139(RT07A027)、カット#140(RT07A028)、カット#146(RT07A034)、カット#147(RT07A035)、カット#157(RT07A045)、カット#245(RT09B002)、カット#247(RT09B004)、カット#254(RT09B011)、カット#255(RT09B012)、カット#257(RT09B014)、カット#258(RT09B015)、カット#259(RT09B016)、カット#260(RT09B017)、カット#261(RT09B018)、カット#315(RT10B004)、カット#317(RT10B006)、カット#320(RT10B010)、カット#322(RT10B012)、カット#324(RT10B014)、カット#325(RT10B015)、カット#326(RT10B016)、カット#329(RT10B019)、カット#330(RT10B020)
 NGカット/75カット
・未提出カット/0カット
(イ)6月分250カット
・提出カット/199カット
 OKカット/22カット
  内訳:カット#7(RE01F006)、カット#173(RE08E008)、カット#174(RE08E009)、カット#23(RT05A008)、カット#27(RT05A013)、カット#29(RT05A017)、カット#34(RT05A024)、カット#36(RT05A028)、カット#50(RT05C002)、カット#52(RT05E002)、カット#81(RT06A045)、カット#83(RT06A047)、カット#163(RT07B017)、カット#204(RT08B017)、カット#211(RT08B028)、カット#263(RT09B020)、カット#275(RT09E008)、カット#276(RT10A001)、カット#278(RT10A010)、カット#308(RT10A051)、カット#348(RT10E009)、カット#349(RT10E010)
 NGカット/211カット
・仮提出カット/50カット
 NGカット/34カット
 判定未了カット/16カット
  内訳:カット#3(RE01B008)、カット#5(RE01D001)、カット#166(RE08C003)、カット#169(RE08C006)、カット#18(RT05A003)、カット#62(RT06A014)、カット#63(RT06A015)、カット#64(RT06A016)、カット#86(RT06A051)、カット#98(RT06B011)、カット#180(RT08A012)、カット#215(RT08D003)、カット#216(RT08D004)、カット#218(RT09A002)、カット#242(RT09A028)、カット#243(RT09A029)
・未提出カット/1カット
  内訳:カット#214(RT08D002)
(4)ミーティング報告書等の記載
 平成18年1月から同年8月までの間、原告側の担当者と被告側の担当者との間でされた各種ミーティングの報告書又は議事録の主要な記載内容は、次のとおりである。
ア 平成18年1月27日「Vキックオフミーティング」(出席者/原告:α01、α02、α03、α04、α05、α06、α07、被告:β01、β02、β03、β04、β05、β06、β07、報告者/α03、甲12)
「■プロジェクト概要
・実機筐体:5号機パチスロ機。2機種、V1(T・U中心)・V2(V中心)
・コンテンツ:機動戦士ガンダム劇場版T・U・V(ベースはLD、台詞はDVD)
・実機筐体:2種、V1(T・U中心)・V2(V中心)〔ママ〕
・プロジェクトアップ:2006年10月アップ(映像のアップ8月末)
・映像表現:2.5D(3DCGを使用してセルアニメ表現)
・SMC作業範囲:RT部分の演出及び映像制作
 ■プロジェクトスタッフ
・プロジェクトリーダー:β02氏
・企画:β01氏
・RT部チーフ:β05氏
・映像技術チーフ:β04氏
・プログラム:β08氏
・進行管理:β09氏
・サウンド:β10氏
・管理:β06氏
・他
 〔省略〕」
イ 平成18年1月31日「Vキックオフミーティング」(出席者/原告:α01、α02、α03、α04、被告:β01、β02、β03、β05、β06、β09、β11、β12、報告者/α03、甲13)
 「〔省略〕
 ■スケジュール、作業内容・工程を確認・検討
・SMCよりの全体スケジュール案を元に検討。
・全体スケジュールでピーク時にはおよそ300人月。
・大規模なプロジェクトとなるため、進行その他、管理体制の強化。
・SMC、RT部分の担当、その他はEPX。
・レイアウト・アニメーション作業はMaya←→中間ファイル←→XSI←→ジーレブ〔G−DEVのこと〕が確立できてから。3月中旬を予定。
・SMCでのモデリング作業無し。
・BGは2D。コックピット内等のキャラが操作する部分は3D。
・カメラはほぼ固定。
・作業工程フロー:別ファイル“V作業工程”を参照。
 〔省略〕」
ウ 平成18年2月6日「Vミーティング」(出席者/原告:α01、α02、α03、α04、α05、被告:β01、β02、β05、β09、β04、報告者/α03、甲14)
 「1)RT演出部、内容説明・作業量・作業工程・見積もり確認検討
・1/3は全演出を見れずに当り
・1/4が全編を見られての当り
・1カット4.1秒程度を78程度つなげたものが1ストーリー
・内部を10ステップに区切り、ステップの最後はループ
・SMCにて3本程度の演出たたき台ムービーの作成(アフターエフェクトでの尺出し)
 ガンダム大地に立つ、ジオンの脅威、ランバ・ラル特攻
 (明朝α03の席にて打ち合わせ)
 〔省略〕」
エ 平成18年2月28日「Vミーティング」(出席者/原告:α03、α07、α05、α08、α06、被告:β13、β14、報告者/α03、甲15)
 「■RT演出・Vコンテ仕様変更内容確認
・EPXさんから字コンテ受け取り後、SMCにて絵コンテ、承認後Vコンテ作成という流れを、絵コンテ部分削除の方向に変更(1工程削減)
・ストーリーを追うのは無理があるため、ダイジェスト版、予告編等のイメージ
・明日18:00目標で連続演出部分字コンテがEPXさんより提出予定
・EPXさんより作業工程の確認があり、その中でSMC側とEPXさん側での認識が異なりそれぞれ持ち帰り、契約内容の確認を行う
(EPX:Vコンテ→レイアウト→アニメーション→実機へのエクスポートSMC:Vコンテ→レイアウト→アニメーション)
 〔省略〕」
オ 平成18年3月16日「V定例ミーティング」(出席者/原告:α03、α04、α07、α06、α09、α05、α08、α10、被告:β02、β14、β13、β09、β15、β05、β06、報告者/α10、甲16)
 「1)Vコンテ制作スケジュールドラフトについて
 EPXさん作成のスケジュールでは、V1の全て、10カットを23(木)アップ、連続演出部分は29(水)アップ予定
 連続演出部の字コンテを現状2本分しか受け取っていないので、早急に頂けるよう要請
 V2の字コンテが出てくるのが、4月中旬予定とのことで、早めてもらうように要請(3/29〜4/15まで字コンテ作業休止となるため)
 〔省略〕
3)Vコンテ、プリプロ製作についての質疑応答
 プリプロ制作用、素材についてやイメージの相違などを確認
 mtg.後、プリプロ用オブジェクトデータ資料をEPXβ09氏より受け取る(プリプロテスト用RT演出“トリプルドム”用に受け取ったモデリングデータに既に足りないオブジェクトが見受けられるため)
 〔省略〕」
カ 平成18年3月23日「V定例ミーティング」(出席者/原告:α03、α04、α06、α09、α05、α08、α10、被告:β02、β14、β13、β16、β09、β15、β17、β06、報告者/α10、甲17)
 「〔省略〕
2)Vコンテ(V1)について
 担当者によるバラつきを統一できるようにする。細かい点の修正はWiki〔イントラネット上の電子掲示板のようなもの〕でやりとりして解決していく。
3)制作について
 足りないオブジェクトの制作について、契約内容を確認。
 何のオブジェクトかにもよる為難しいが、まだ渡されていないオブジェクトがあったので頂く。
 〔省略〕」
キ 平成18年4月7日午後5時「V仕様ミーティング」(出席者/原告:α01、α03、α10、被告:β12、β02、β09、β06、報告者/α10、甲18)
 「1)RT
・連続部分の制作はシリコンスタジオにFIX
・まとめて1000カットの契約は、出来るか不安があり結びたくない旨を伝える。V1を6末FIX、V2を8末FIXという方向で話を進める。そのためにも4月の成果物はV1RT07の50カットをFIXさせることをepx側は希望。エフェクトにどれだけの日数が必要かまだ測れないため、次回のミーティングまでにRT07のカット数と人員が測れる表を作成しepx側へ提示することになった。
・契約を結ぶ上でepx側としてはアサインがわからないと詳細が決められないので、10(月)の午前中までにアサイン表を作成し提示することになった。
・外注先が更に外へ発注する場合、NDA〔秘密保持合意のこと〕はepxと結ぶ必要はないとのこと
・前回紹介頂いた3社と、12(水)13(木)の17:00以降に時間を設けて話をすることになった→α01とβ09氏で日程を決める。
・どこのカットを作業するかは、来週いっぱいには決定できるとのこと。早く決定すれば、早い段階で外注へ指示できて助かる旨伝える。
 〔省略〕」
ク 平成18年4月21日午後3時「V仕様ミーティング」(出席者/原告:α02、α03、α07、α05、α10、被告:β12、β02、β09、β06、報告者/α10、甲20)
 「@Vコンテ契約書受け渡し
 完了
A全体のロードマップ
B制作上の問題点について
 ABまとめると、現状予想以上のモデリングの量と実機上での不具合が生じ作業が難航している。smc側では当初予想していたモデルを弄る量をはるかに超えているのだが、β09氏は始めからその作業量を見込んで話を進めていた。実機上の問題も、仕様書通りに設定すれば実機にあがることにはなっているので表示されないのはこちらがどこか間違った設定になっていると基本的には考える。
 不具合はその場その場で解決し、先々効率良く作業が進む方法を見つけることを優先する為、当初予定していた19カットを無理にあげるのではなく中身のあるカットをあげ今後につなげていく。smc側ではもう一度作業量を見直しアサインを組みなおす。
 →アサイン表は遅くとも月曜日には提出する
 smcからepxへは上記のような問題を懸念し再度契約の完了を強く求めた。
C委託先について
 上記のような問題もあり、作業始めは稼働率が30〜40%だということを委託先へ必ず伝えること
 その他
 RT契約について
 現在の状態6月末で500カット納品は現実的ではないのでsmcからは再度6末250カット、7末250カット、8末500カット契約を要望。しかしepxではスロットの調整期間の問題もありV1を6末upさせたいため6末500カット希望。次回へ持ち越すことになる。
 RT制作カットについて
 25(火)には決定しシートが完成する予定。当日打合せの場を設ける。
 時間は未定。
 サンライズへのアプローバルについて
 随時行う予定である
 以上」
ケ 平成18年4月25日午後4時「Vグラフィックミーティング」(出席者/原告:α03、α10、被告:β09、β05、β18、報告者/α10、甲22)
 「1)実機のどこまでのデータを作成して納品すれば良いのか?
・Mayaデータ
・実機出力できるデータ
・テクスチャー(psd、tga両方)
2)モビルスーツは自動影にするのか?
・モビルスーツはほぼ自動影でおこなう(描かなければいけないところも少しはある)
 →<β09氏>影のないものもあるが、今からサンライズに発注することは現状難しいため、出来れば自動影でいきたいとのこと。
 →<β05氏>ドムも実際自動影だが、いけないこともない
3)アニメーションのループ機能の追加を提案
・できるだけもう実機にデータを追加したくない為、ソフト上で出来る方法があるためそれを使うことでまとまる
 〔省略〕
6)プログラムの対応日数を明確にいただけないでしょうか
・レベルに応じているため明確には言えない。優先的には見ている。
 〔省略〕」
コ 平成18年4月26日午後4時「V定例進捗ミーティング」(出席者/原告:α03、α10、被告:β02、β17、β06、β09、報告者/α10、甲23)
 「1)進捗状況確認、現状遅れの改善について
 現状の進捗状況、並びに遅れている原因(※“Project V RT作業の遅延原因報告書”参照)を説明する。明日(4/26〔「27」の誤り〕木)の契約mtgで問題点、解決策を提出することを伝える。
 アサイン表通り人がいれば出来るかというと現実的にはそうではなく、慣れるまでにかかる時間の問題、各パート同士のヤリトリの時間などの問題もある。β09氏、β02氏ともに、一人の人が各パート出来るようにならないと1000カットは難しいと考えている。内部でも1日設定してレクチャーを行う方向で話が進んでいる事を伝える。
 β06氏から、今後現場レベルで1000カットが現実的ではないというのが見えてきたら早めに伝えてほしいと求められる。
2)その他の確認事項
@チェック体制
 epxのチェックは完全にエフェクトまでついた状態でおこなうことをβ09氏に確認。
A4月の成果物について
 契約上決まりはない為、出来たところまでを5/1(月)の朝β09氏にチェックしていただくことに決定する。
 〔省略〕
※お互いリカバリープランを立てなければいけないことを判断するのが遅かったことを反省。明日(4/26〔「27」の誤り〕木)の契約mtgの場で話しあい対策を考えることになる。
以上」
サ 平成18年4月28日午後5時「V仕様ミーティング」(出席者/原告:α02、α03、α01、α11、α10、被告:β12、β02、β09、β06、β17、報告者/α10、乙20の1)
 「1)進捗状況、問題点について
 現状作業が遅れていることに対して、α03から原因を説明。
 (Project V RT作業の遅延原因報告書参照)
・全体の半分のカットが一人、1日でできる簡単なカットの為、そこで時間をかせいでほしい
・エフェクトも簡単なものであれば1パターン1時間で終わる(epx様では自動でポリゴン化してくれる機能を使用している)
 上記の内容をβ09氏から言われ、手を抜くところは抜いて、人数かけている分カット数こなしてほしいと言われる。
 SMCは真面目にやりすぎている。例えばキャラクターでもまゆげにダ〔ママ〕ボーンを入れてそこだけ動かして、要は劇画と似ていれば良いのである。
・その際に作業点で確認したこと
@5月から作業する制作カットはRT09大西洋とRT10ジャブローの連続部分に決定。RT07と合わせて合計100カットになる。5/19(金)納品予定。5月後半残りでリテイクをおこなう。
A液晶の持ち出しはやはり出来ない為、外注会社の6階立ち入りを許可することになった(epx様とNDAを結ぶ)
Bファイル名変更、シーンナンバーとステップの間にアルファベットが入る。
 「RT07001→RT07A001(Aがステップ〜、Bが連続部分)」
2)契約について
SMCが示したアウトプット表
  4月 5月 6月 7月 8月 合計
v1−01 10 50 190     250
v1−02   40 60 150   250
v2−01       100 150 250
v2−02       50 200 250
制作カット(月別) 10 90 250 300 350  
契約カット 6末350カット 8末650カット
現場目標 6末400カット 8末600カット
 Epx様は6末にV1を終了させたいため(早く調整にまわしたい為)6末500カット、8末500カットを希望されている。上記の表にある〔赤色〕の150カットは7/14納品希望である。
外注様との交渉について
 現状どこの会社もsmc−epx間よりも高い金額を見積もり出してきていることを伝える。Smcとしては修正期間や管理費などを考え3割はsmcの取り分としたい旨を伝え理解を得られた。
 ベックに10万と提示したのは、あくまで営業的な交渉であり、本当に10万でやってもらおうとは思っていないと伝えた。そしてベックの提示した金額が想定外の金額であり、出来高制を希望されているため、今回契約はしないことをβ09氏へ伝え了解を得た。
 万が一1000カット契約の話が変わる場合
 通常2ヶ月前には報告があるもの。そのため5月末までに連絡をする約束にしたい旨を伝える。その約束については後日β06氏からα02へどうするか連絡があることになった。
 以上」
シ 平成18年5月2日午後4時「Vグラフィックミーティング」(出席者/原告:α03、α05、α01、α07、α09、α12、α10、被告:β09、β05、β18、β12、報告者/α10、甲26)
 「1)修正の説明
 β05氏よりシートを見ながら支持〔ママ〕がある
 今後のサンライズの修正などのポイントとして・・
 動きを詰めてくれと言われる可能性が高い(厳しく言ってくるところである)、それをはじめからふまえておいてほしいとのことである。
 “ためる感じをだす”つまり、アニメーションカーブ上でスタートフレームからエンドフレームの間をなめらかなカーブを描く動きではなく、始めの何フレかは動かさず、途中から直線的なカーブを描くような動きにする。これを頭に入れてほしいとのこ〔ママ〕である。
 影の設定について
・劇中にも支持〔ママ〕にもない影は、基本的には1つ影。
・サンライズに指示されることなので、epxで一概にはっきりと言えない。なので、影もその後2段つけなければいけない指示がくることもある。
※ 今後サンライズから、モーション、影、色を見る人がそれぞれ週一でディレクションに来る予定。そこで確認できるようになるだろう。
※ あやしいカットはリスト化して提出(その予定であったがリスト化するよりも他のシーンを参考にして作業をすすめたほうが1カットでも多くあがるのでリスト化はおこなわないことにした、α05よりβ09氏へ連絡済)
 今後、ガンダムのあごの色が違っていた為、テクスチャーが差し替えになる予定である
 〔省略〕
その他の質問
@キャラクターアップも、モデルを実機に上げてキャプチャーして調節してはだめか?
 →このプロジェクトの根本が‘3Dで作る’ということなので、それでは意味がない。安全ではないのでやめた方が良い。また、そうなるともっとクオリティを求められてくる。そして作り方の定性は整えていきたい。動かないところのボーンを取ることは構わない。モデル以外は他で調節しても良いので、モデルだけは3Dでおこなうこと。
 →セットアップを見直してみる
 〔省略〕」
ス 平成18年5月9日午後6時「Vグラフィックミーティング」(出席者/原告:α03、α05、α01、α02、α09、α07、α10、被告:β09、β05、β18、β17、報告者/α10、乙6の2)
 「進捗状況確認
 smcから現状報告
・5月に入ってから手をつけているカットは外注含めて合計34カットになる。実機にはまだあげていない。渋谷のメンバー増員を報告。
 β09氏より出来上がり次第あげていってほしいと伝えられる。
 〔省略〕」
セ 平成18年5月10日午後4時「V定例進捗ミーティング」(出席者/原告:α01、α02、α03、α10、被告:β02、β17、β09、報告者/α10、乙20の3)
 「1)進捗状況報告
 現状は週報を提出。それとアニメーションを割り振ったスケジュールを提出し、5/19までに90カットの納品は出来ないがスケジュールの通り5月末で100カットをあげる。(060510_V_スケジュール.xls 参照)了承頂く。
 しかし、β02氏はカット数もだがクオリティも心配。β09氏もクオリティがあがらないとディレクションする人数が多くないので、今月の100カットまでのリテイクで吸収ししてほし〔ママ〕とのことである。
 SMCでは回転が良くなるのは6月中旬くらいを見込んでいる
 19日で50カットあがりそうか早い段階で判断し報告する。
 随時遅れそうな時は連絡を入れてほしいとの要望
 〔省略〕
その他
 ・β09氏に紹介頂いた外注さんを使わない方向になった。その為断りの方法をβ12氏に確認中であることを報告
 〔省略〕」
ソ 平成18年5月16日午後5時15分「V臨時会議」(出席者/原告:α01、α03、α02、α10、被告:β02、β09、β17、β12、β06、報告者/β06、乙1)
 「1)『V_RT 作業遅延原因報告書.doc』の記述内容の再確認
(確認内容)

・『V_RT 作業遅延原因報告書.doc』の内容にある遅延原因(=問題点)については下記の理由により現状では問題はない。
・『V_RT 作業遅延原因報告書.doc』については変な誤解を生む可能性があるため、SMCの方で資料の提示を取り下げることとなった。
(理由)
・4月のプリプロ初期の問題点のため、その後にSMC、EPXの両者が共同で問題解決に取り組んだため、現在ではほとんど解決されているものである。
・5/16現在において解決していない問題点についてはグラフィック会議でSMC、EPXの両者で認識しており、対応中である。
今後の予定
・EPX社内で『V_RT 作業遅延原因報告書.doc』の内容を確認したメンバーに対しては、本会議内容をフィードバックし、認識を改める調整を行う。
 以上」
タ 平成18年5月16日午後6時「Vグラフィックミーティング」(出席者/原告:α03、α04、α01、α02、α07、α06、α10、被告:β09、β05、β18、β06、報告者/α10、乙6の4)
 「進捗状況確認
SMCから現状報告
・SMCで作業を進めているものが30カット、外注協力会社で進めているものが20カットの計50カット。
・本日中に実機出しを予定しているものがSMC3カット、外注協力会社が9カット。
・レイアウト、アニメーションが80%以上出来ているものが21カット(エフェクト待ちが多い)。
 〔省略〕」
チ 平成18年5月17日午後4時「V進捗報告ミーティング」(出席者/原告:α01、α03、α02、α10、被告:β02、β09、β17、β12、β06、報告者/β06、α10、乙20の19)
 「1)進捗報告
 5/19(金)予定の48カットの全体的な進捗は50%
・アニメーション(80%)
・レイアウト(80%)
・エフェクト(50%)
・美術(70%)
・実機にあげられていない現状から進捗状況は50%となる
今後の予定
・5/19(金)の時点で実機表示可能なカットは20カットの予定。(20カットの中には外部発注分のリテイク後カットも含む)
・5月末に100カット(4月分:10カット、5月分:90カット)を完了させることに変更はない。但し、提出して頂くクオリティに関してはα03さんの判断基準でOKであると判断されたものとする。
・6月分の発注内容については、EPX側で制作の優先順位を付けていくことを確認した。連続部分(B)からを優先すること。
その他決定事項
・まとめてカット提出→確認ではなく、毎週金曜日にカット提出→確認を行うことをグラフィック会議で決定した。
・今後の物量を踏まえると、今後SMCさんで質の高いディレクションを行って頂く必要があるが、EPXが細かいチェック可能なのは5月分の100カットになるため、映像の品質基準やノウハウなどは今月中に対応して頂く。6月以降はSMCさんのディレクションの質を高めて頂いて、EPXのチェックとしては細に入り過ぎない程度でチェックを行っていく予定である。
・制作上、迷っているときや疑問があるときにはβ09もしくはβ05に随時で構わないので確認する。
・テクニカルな部分など不明な点があるときはグラフィック会議や随時EPX側担当者に問い合わせて頂く。
・カットチェックは10カット程度まとまった段階で随時EPXへ提出して頂く。
・来週5/22にサンライズによるカットのラッシュチェックを開始させるため、γ02さんとγ01さんが来社される予定。アニメーションの方向性などの指針やカットチェックのタイミングなどを調整していく予定。
・その際はSMCさんからα01さん、α03さんを始め美術担当メンバーなど、必要メンバーの方はご参加頂く予定。
・サンライズのチェック体制としては、γ02さんとγ01さんは演出チェック、γ03さんはキャラクターチェック、γ04さんは色彩チェックの予定。アニメーションに関しては全員が監修する予定。
・液晶の貸し出しは不可であることを再確認した。
・進捗報告会における資料としては、今後は工程ベースではなく、カットベースで把握できるものにしていく。
2)GC上での映像確認
・実機にあがっているカット(まだ納品レベルではないもの)RT07A006、007、029、035、036、037、038、039、040、041、042、043、044、RT07B021、合計14カットを確認させて頂いた。
 以上」
ツ 平成18年5月23日午後3時30分「V契約交渉会議」(出席者/原告:α01、α03、α02、α10、被告:β02、β06、報告者/β06、甲35)
 「1)契約書の締結手続きについて
・下記の3つの契約書についてEPXから調印済みの契約書をSMCへ手渡し、契約手続きが完了したことを確認した
 >>基本契約書
 >>個別契約書(1)
 >>個別契約書(2)
 〔省略〕
2)個別契約書(3)V1−2の契約内容について
・6〜7月の2ヶ月間で計250カットを制作する
・納品時期は6月末:100カット(中間納品)、7月末:150カット(最終納品)とする
・EPXから契約書のドラフトを作成し、SMCへ提示する
・契約書上の制作期間は7月末までであるが、リテイク作業が発生した場合は検査合格通知書が発行されるまでSMCで対応することを確認した
・なお、最終の支払についてはリテイク作業終了後、検査合格通知書が発行されるまではEPXは手続きできないことを確認した
3)今後のV2の見通しについて
・契約手続きについては、5月分の100カットの制作実績を踏まえ、6月第1週目にEPX、SMCの両社で協議し決定していくことを確認した
・SMCのアサイン予定では8月末までとなっているが、7〜8月の2ヶ月間で計500カットを制作する予定である
・納品時期は7月末に中間納品、8月末に最終納品とする
 〔省略〕
4)今後のSMC作業内容の再確認について
・今後の作業内容にはクオリティアップの修正だけでなくリダクション、ループ作成などの調整も入ることを確認した
・新規カットについては、サンライズにコンテ作成して頂き、そのコンテをベースに仮レイアウトをCG上で作成し制作を進めていく
・新規背景については、CG上で作成したレイアウトを基に、サンライズで背景制作を行い、仮あて背景で制作しているカットに差し込む
5)カットNo. RT07B021の取り扱いについて
・対象となるカット(RT07B021)の取り扱いについては個別契約書(1)のカットには含まないことを確認した
・明確な過失がどちらにあるかではなく、EPXとSMCの双方に注意が不足していたことを確認した
・今後はプロデュースサイドと制作サイドで共通認識をもって間違いがないように進めていくことを確認した
・発注シートはプロデューサーが必ず書面でやり取りを行い、現場のディレクター同士でやり取りが行われた場合も必ず双方のプロデューサーに報告し、データを渡すこととする
 〔省略〕」
テ 平成18年5月23日午後5時「Vグラフィックミーティング」(出席者/原告:α03、α04、α07、α06、α01、α02、α09、α10、被告:β05、β18、(途中参加)β09、報告者/α10、乙6の5)
 「@リテイク内容について下記の内容を言われた
・動きについて、カクカクしているのが多い。以前に説明のあったタメの動きをするようにしてほしい
・動きを止めてみるとポリゴンが変形するカットがある(サンライズ様が動きを止めてみる可能性があるので修正した方が良い)
・セイラの髪の動き
・爆発とモビルスーツのシーンに関しては、動きをモビルスーツに合わせてほしい
・背景が違うものがあった→新しい背景を頂いていなかったので後ほど頂く
 本日よりリテイク指示が順にあがる予定である
 〔省略〕」
ト 平成18年5月24日午後4時「V進捗報告ミーティング」(出席者/原告:α01、α03、α02、α10、被告:β02、β17、β06、報告者/β06、甲39)
 「1)進捗報告
・本日アップされたものは8カット、4月からトータルで30カットアップ済み
・今後の納品予定については下記の通り
 >>5/26・・・25カット
 >>5/30・・・20カット
 >>5/31・・・26カット(内、3カットは保留となったカットの代替カット)
 合計で101カット納品予定(アップ済み30カット+上記71カット)
・リテイクは必ずあるが、その対応は6月中に行う予定
・進捗0%のカットは来週(5/29週)アップ予定のものであり、1週間に1カットあがる予定なので問題はない
2)今後の制作体制
・100カットを制作していく中でエフェクトに時間がかかることが判明したため、アニメーターとして考えていたリソースをエフェクトに回すことで効率的にカット制作を進める予定
・チェックするEPX側もリテイク作業を行うSMC側も月末に一括で対応となると苦しくなるため、今後は10カット程度のまとまった数でEPXに随時アップしていく予定
・Vにアサイン予定のメンバーの合流が延びているなど不確定要素があるが、必要に応じた新規アサインなどでカバーしていく予定
・SMCから特殊カットと新規作成カットについては別スケジュールで進めていきたいとの要望があったが、進め方について具体的な提案を頂いた後にEPXで検討し、決定していく予定
3)制作上の確認事項
・現状の仕様でループが確定しているカットがあれば事前にSMCへ連絡する
 →但し、今後の調整でループとなるカットが新規発生する可能性があることは誤解がないように再確認した
・再委託先への発注分に関する調整についてはSMCで対応する予定
・ROM上、メモリ上の問題でリダクション作業が発生する可能性があるが、その調整作業がSMCで発生することを再確認した
・クオリティの底上げについてはフィードバック結果をもとに修正作業を行い、今後のカット制作に活かしていく予定
・SMCでは組織上、チーフ(ディレクション担当)がいるので、チーフがクオリティレベルを把握し、また制作を進めていく上で得たノウハウも吸収しているため、新しいメンバーがアサインされても問題はない
4)今後の検討事項
・(前回の会議内容の再確認)今後SMCで質の高いディレクションを行うため、今回の100カットに関してはEPXが細かいチェックを行い、映像の品質基準やノウハウなどをSMCへディレクションするが、6月以降についてはSMCがEPX基準の品質でディレクションして頂く
・その際、品質に関する最終的な責任者はα03さんになる
・今回の100カットに関しては6FにEPXのディレクションメンバーが来て、画面を見ながらやりとりをするといった対応も考えられるが、必要があればSMCからEPXへ連絡することとする
 〔省略〕」
ナ 平成18年5月29日午後8時「V進捗報告ミーティング」(出席者/原告:α03、α10、被告:β17、β06、報告者/β06、乙6の6)
 「1)5月分に関する進捗報告と今後の見通し
・5/26(金)提出25カット予定であったが、29日の朝時点で新規17カットの提出であった
・残りの8カットについては本日中に終了させ、合計で25カットあげる予定
・5/30(火)は20カット、5/31(水)は26カットの予定に変更はない
・5月分に関しては5/30(火)は20カットを下回ることになりそうだが、その分を5/31(水)に上乗せする予定
2)6月以降に関する今後の見通し
・6月分に関しては19日で180程度を提出し、25日に残りカットを提出し、残りの期日にリテイクの修正作業を行う予定(期日設定はするが、その日に一括で提出ということではなく、あくまでその日までにその数が揃っているということ)
・5/30(火)15:00からSMCとの打合せがあるが、そのときにα02氏から詳細説明を行う予定
・5月分の提出に対するリテイク率は半分以上になる可能性があるとのことだが、6月以降のNGテイクは10%に留めるようにする
 〔省略〕」
ニ 平成18年5月30日午後3時「今後の体制について」(出席者/原告:α02、α03、被告:β12、β06、報告者/β06、甲43)
 「1)6月以降のスケジュール及び体制について
・現時点では不確定な部分(リソースのアサイン等)があるが、6月末納品を実現するスケジュールに今後も調整を進めていく
・なお、再委託先のしいたけデジタル、CGR、アスペクトのスケジュールも提示頂いた
・なお、現時点での全体スケジュール、再委託先スケジュール(×3)、アサイン表についてはSMCよりEPXへ送付頂く
・新たな再委託先の検討については進展があり次第ご連絡を頂く
2)V1−2の契約について
・SMCより見積書を提示頂き、状況説明をして頂いた
・単価については大きく変えることは確実にできないことをSMCに伝えたが、今後の検討課題として、次回の交渉の場で検討することとする
・上記単価が変更できない場合、カット制作(リテイク含む)以外に作業が予想される調整作業(ループ他)について別途費用が発生する旨をSMCより伝え、次回MTGまでにEPXにて検討する
・次回の交渉は6/1(木)17:00〜18:00とする
3)V2について
・V2については制作する方向となり、V1とあわせ1、000カットにてFIX。
 以上」
ヌ 平成18年5月30日午後4時「Vグラフィックミーティング」(出席者/原告:α03、α04、α07、α06、α01、α02、α09、α10、被告:β09、β05、β18、報告者/α10、甲44)
 「制作難カットについて(RT09B018〜RT09B020)
 β18氏より、来週に作り方がまとまるとのことである
 その他の制作方法の質問
・マントの動きに合わせた影の作成について
 →現状マントの動きを決めてからテクスチャーで作成するしかない
※マントの動きに関しての制作方法は未決定
・カイのカットインについて
 →2Dの元絵を作成し、テクスチャー名をカットインだとわかるようにしておく「それでテクスチャー名が9文字になってしまっても問題はない」
・オーバーラップのシーンについて
 →基本的に透明に出来るのはひとつだけのため、ミハルだけを3Dにして周囲にキャプチャーしたものを2枚用意しミハルをはさんで中で動かす。そして前面の絵を透明にする。
 →カイの座っているシーン(回想シーン)については本当に必要なカットかどうかβ09氏から企画担当に確認して頂くことになった。
 下記の2点をβ05氏より確認された
・モビルスーツの影についてはサンライズ様もうるさいだろう
・サンライズ様からのカラーチャートに合わせていても修正を依頼されることがあるだろうが、それは致し方ないことである
 以上」
ネ 平成18年6月1日午後4時30分「V進捗報告ミーティング」(出席者/原告:α03、α01、α02、α10、被告:β02、β06、β09、β17、報告者/α10、乙6の7)
 「1)5月提出カットについて
・6月発注のカットを先にあげていってしまったため、5月発注の中で未提出の14カットを最優先カットとし作業をおこなう。EPXも確認作業を行えず困るため。(特にドムとアムロのカットを優先とする)
・RT09B018、RT09B019、RT09B022のオーバーラップを使用する3カットについては5月中の提出分ではなく、6月分として捉えることとする
・上記3カットの代替としてはアムロとドムのカットを優先して検討することとし、SMCの方で決定した3カットをEPXへ連絡する
・作業途中と見受けられるカットがいくつかあったとのことで、SMC側でどのカットか検討〔ママ〕がつかないためβ09氏に確認していただくこととなる
・5月提出カットのリテイクは6/16までにEPXがOKと判断したカットを提出する(ミハルの回想シーンの3カットは6/19までかかることを報告)
2)6月提出カットについて
・毎週月曜に、先週提出カット数と今週提出予定カット数をα10からEPXへ報告することとする
・6月分の250カットについてはSMCのディレクションでOK率を90%に持っていくこととする
 〔省略〕」
ノ 平成18年6月1日午後5時30分「V契約交渉会議」(出席者/原告:α01、α03、α02、α10、被告:β09、β17、β06、報告者/β06、甲45)
 「1)パチスロを制作する上での映像調整(ループ対応など)の取り扱いについて
・EPXとしては交渉を進めていく中でパチスロとしての映像調整は必ずあるという説明をSMCにしてきたが、SMCとの認識に差異があり、説明はなかったとの認識で双方に差異がある
・SMCでは3月の見積りの時点では映像調整は考慮に入れていないとの認識とのことだが、3月に契約交渉を開始してから5月末に契約締結するまでの間に何度も映像調整の話はしており、3月時点での認識は理由にならないことを伝えた
・議事録作成を開始してからでは5/23(火)に開催した契約交渉の場でも映像調整の件はEPX、SMCで確認を行っているが、その場ではSMCに認識がなかったため、SMCで確認後に改めてEPXへ連絡することとなった
・EPXからは4月、5月のあまり効率的ではない時期の実績値をベースとして今後の予定を考えるのではなく、今後の生産性の向上を踏まえて今後の予定を検討して欲しい旨を伝えた(トータルでは1、000カットという大きなボリュームの発注になるため、ノウハウや経験を活かして効率的に捌いていくことで対応して欲しい旨を伝えた)
・SMCとしてはSMCで修正対応が可能な範囲を超えてしまう場合は今回の個別契約とは別のものとして考えたい
・SMCでは修正対応が可能な範囲は1、000カットの10%の100カット程度で考えている(制作期間の最後の方に準備している修正要員で対応できる範囲内であれば問題ないが、それを超えるようだと対応は難しい)
・パチスロを制作する上での映像調整(ループ対応など)は修正に必要な工数とSMCで対応可能な範囲との見合いになる
・映像調整に関する取り扱い方針については、お互いが持ち帰っての検討課題となった
【補足事項】
・パチスロとしての映像修正については実機にのせてから明確になる部分もあるため、ある程度の映像修正は後に発生することになる
【確認事項】
・EPXはループ対応が必要となるカット数については概算で算出する
・SMCは5/23(火)の契約交渉の議事録を確認し、改めてEPXへ連絡する
2)今後の検討課題について
・映像制作と映像調整を別の契約として明確にすることを検討する
・映像制作の単価設定を変更し、例えば現状の単価20万円の内、映像制作の単価を18万円、修正分の単価を2万円といった形で分割して別契約とする案も考えられる
 〔省略〕」
ハ 平成18年6月6日午後4時「V契約交渉会議」(出席者/原告:α01、α02、被告:β12、β06、報告者/β06、甲48)
 「1)パチスロ用映像としての調整作業の契約上の取り扱いについて
・現在SMCが制作しているのはパチスロ用映像であることは間違いなく、それに準じたものがVコンテであり、OLも制作して頂いた経緯も踏まえ、パチスロ用映像としての調整作業には協力頂きたい
・現状の契約内容にパチスロ用映像の調整作業が含まれることは共通の認識であることを確認した
・個別契約書の表記は現状のままであるが、パチスロ用映像としての調整作業については別途、確認書(あるいは覚書)で確認を行う(V1−1、V1−2)
2)パチスロ用映像としての調整作業について
・Vコンテが映像制作の仕様書となることを再確認した
・ループ対応箇所についてはVコンテの制作依頼時にシーン説明書にて説明しており、現時点では映像制作の仕様書となるVコンテとシーン説明書に準じた形でループ対応があるということを再確認した
・ループ箇所については最大で250カット程度になるが、EPX社内においてループ作成の指針を確定させるべく検証作業に取り掛かっている
・ループ対応箇所だけでなく、どのようにループさせるかといったループ作成の指針が確定次第、工数の見積りを行っていく
・SMCでは吸収できる範囲内では対応するが、無尽蔵に調整するのは難しいので、対応する作業については要相談とする
・また、映像のクオリティアップを追求する工数とループ対応の工数のバランスを取りながら作業内容を協議する必要がある
3)その他
【V1−2について】
・当初は着手金の支払は6月であったが、上記のパチスロ用映像の修正作業についての認識を合わせてからの契約締結となるため、6月中での経理処理は困難であるため7月中の支払とさせて頂きたい
 →SMCの方で持ち帰り、経理に相談した上で返答を頂く
【5月分の提出について】
・5月分の100カットについては、先に確認している6/16(金)を期限としてEPXチェックでOKとなったカットを期日通り提出することを再確認した
【6月分の提出について】
・6月分の250カットについては、先に確認している6/23(金)を期限としてEPXチェックでOKとなったカットを期日通り提出することを再確認した
・但し、6/5(月)、6(火)にOK率を90%とするためにリスケジューリングしているため、6/7(水)のSMC進捗会議にて改めてSMCより説明を頂き、EPX、SMCが協議の上、今後のスケジュールを決定していくこととする
 以上」
ヒ 平成18年6月7日午後4時「V進捗報告ミーティング」(出席者/原告:α01、α03、α10、被告:β09、β12、β17、β06、報告者/β06、乙20の8)
 「1)6月提出カットについて
・SMC社内での内部リテイクの期間を考慮したスケジュールで進行することによって、EPXへ提出するカットはOK率90%を確保する
・6/12(月)までに提出して頂く予定の31カットについては、早い段階でOK率の確認を行い、今後の見通しが適切かどうかの判断を行うこととする
・クオリティレベルについては、EPXとしてもサンライズのOK基準を探っている段階であるが、SMCからのクオリティレベル(EPXのOK基準)の要望はEPXへ伝達済みである
・現状はEPXのOK基準で対応して頂き、今後予定しているサンライズチェックにおいてOK基準を明確にしていくこととする
・6月の懸念事項としては手間のかかるキャラクターカットが多いことであるが、今回は少し長めに制作期間を設定することでOK率90%確保を目指している
・今回提示して頂いたスケジュールでは6月最終週に110カットの提出するようにみえるため、実際の制作スケジュールに合わせて各週に提出カットをおしなべて表記し、リスケジューリングしたものを改めてEPXへ提出して頂く
・提出カットのおおまかな目安としては6/16(金)までに100カット、6/23(金)の週に100カット、最終週である6/30(金)の週に50カットの予定で制作していく予定
2)5月提出カットについて
・リテイク作業中のカット、新規カット(13カット)を含め5月発注分100カットについてはEPXチェックでOKとなったカットを6/16(金)までに提出することを再確認した
・修正が完了したカットについては10カット程度のまとまりで随時にEPXへ提出した〔ママ〕頂き、回転よく捌いていくこととする
2)〔ママ〕その他確認事項について
【納品について】
・納品フォルダに指定した形式で納めて頂いた時点で納品とする
・PSDデータなどは今後の色味調整等も考えられるので、Work用としてデータは保存しておくこととする
 〔省略〕」
フ 平成18年6月13日【第1部】午後3時、【第2部】午後4時「V契約交渉会議」(出席者/【第1部】原告:α11、α01、α02、α03、被告:β02、β01、β09、β12、β17、β06、【第2部】原告:α01、α02、α03、被告:β12、β06、報告者/β06、乙20の9)
 「【第1部】
1)現状の進捗状況と今後の打開策について
・6月分の新規制作カットについては、5〔「6」の誤り〕/12(月)10:00に提出予定であった31カットは5〔「6」の誤り〕/13(火)の時点では提出されていない
 →先週の時点ではSMCには5月分のリテイクカットと6月分の新規制作カットを両立させるためのスケジュールを引いて頂いたが、EPXβ19社長との討議を行った結果、5月分のリテイクカットを最優先することにしたため、今週6/16(金)までの作業はリテイクカットの修正作業に集中することを確認した
・5月分91カット(9カットはOK)のうち、85カットについては6/16(金)の午前中までに提出する予定だが、残り6カットはクオリティが達しない可能性があり、見通しは不明である
 →現在の制作方針で問題がなければ6/16(金)に提出する
・SMC内部リソースが今週中に作業を予定していた新規制作カットについては、リテイクカットに注力することによって対応できなくなるが、その押し出された新規制作カットについては再委託先に依頼をする予定である
・渋谷SMCの視察結果と提出カットの実績を踏まえ、EPX、SMCの両者で制作方針や今後の見通しについて討議した結果、現状のままでは納期を落とす可能性が非常に高いことを確認した
 →6/14(水)の進捗会議の場でSMCより打開策(制作体制やスケジュールなど)とそれを裏付ける根拠(裏づけ、エビデンス)を提示して頂く
 →その際に6/16(金)の午前中までに提出する5月分のリテイクカットについては日ベースのスケジュールを提出して頂く
・制作の基本方針としえ〔ママ〕は7月末までにV1−1、V1−2合わせて500カットを達成することに変わりはない
2)V1−1の納期遅延の対処について
・中間納品、最終納品共に納期を1ヶ月ずらすこととする
 →中間納品:5月分100カット(旧)5/31→(新)6/30
 →最終納品:6月分150カット(旧)6/30→(新)7/31
※会議中では最終納品の納期は6月末のまま変更はしないとの結論に至ったが、その後にEPXβ12−SMCα02の間で再調整を行い、上記結論に至った
・納期遅延の覚書については早急に対応することを確認した
・V1−1の6月分150カットについては、先にEPXからSMCへ提出している発注内容の250カットの内、EPXが指定している優先順位通りに制作して頂く
・但し、SMCからの要望についてはEPXとの事前に協議を行うことで調整は行っていくこととする
・RT09B018、RT09B019、RT09B022のオーバーラップを使用する3カットについては、V1−1ではなく、V1−2の取り扱いとできるかをEPXで検討することとする
【第2部】
3)V1−1、V1−2に係る業務内容の確認書について
・確認書のドラフトをEPXよりSMCへ提示することとする
4)V1−2の納期設定について
・現状の予定からは変更なく、7月末までに映像素材を500カット提出、8月中にパチスロ用映像としての調整作業を完了させる予定とする
・但し、V1−1の大幅な遅延状況もあり、慎重に対処する必要があるため、契約上の納期はバッファをもった期間で設定することとする
・納期変更により支払サイトも当初の予定からは変更される
5)V1−2の着手金について
・前回の契約交渉にて確認をお願いしているV1−2に係る着手金(6月末払い)を7月末に延期する件については、交渉を締結できていないこともあり、SMCには了解して頂いた
6)V2の制作スケジュールについて
・V1を最優先させる必要があること、V1−1が大幅に遅延している状況、V1−2での制作状況等を踏まえ、当初予定していた7〜8月という制作期間ではV2の制作は困難であるため、制作開始を延期することを確認した
・V2をSMCにお願いする際には2ヶ月前程度をメドに交渉を開始することとする
 〔省略〕」
ヘ 平成18年6月14日午後4時「V進捗報告ミーティング」(原告:α01、α02、α03、α10、被告:β01、β09、β06、報告者/β06、乙20の10)
 「1)6/13(火)に提出して頂いている10カットについて
・6/13(火)提出の10カットについては、リテイク分8カットの内4カットがOK、新規分2カットの内1カットがOKとなっており、リテイクカットも新規カットもOK率は50%となっている
【SMCのクオリティ判断の基準について】
・6/13(火)に提出して頂いた10カットのOK率が50%であることを考えると、SMCのクオリティ判断の基準はEPXがOKとする基準には達していないと考えられる
・ディレクションする上で判断に迷うときなど何かあれば、随時で構わないのでEPXへ相談することを確認した
2)5月分のリテイクカットについて
・5月分のリテイクカットは6/15(木)中(もしくは16(金)の午前中)に提出する予定となっているが、EPXとしては難しいのではないかと考えている
 →SMCとしては64カットを提出する予定であるが、現状のOK率上記の50%と仮定すると32カット程度になる見通しである
【アウトラインが入っていないリテイクカットの対応について】
・アウトラインが入っていないリテイクが多いが、SMC社内で対応策を検討し、テクニカル担当にチェック機能を設定するなどして対応することでOK率を向上させていくことを確認した
3)今後の制作について
・V1に関して6〜7月の制作期間でサンライズチェックに出せるクオリティのカット数をSMCの現場として現実的な数字としてご連絡頂く
 →現実的に500カット全てを制作することが不可能なのであればEPX側で対応策を講じることが可能となるため、努力目標ではなく、あくまで確実に約束できる現実的なカット数をSMC内で検討して頂き、EPXへ連絡して頂く
 →EPXとしては残りの期間と現在までのSMCの実績を踏まえ、SMCが担当するカット数を減らして他の会社へ依頼するなど、現実的なリスクヘッジプランを検討せざるを得ない状況にある
 →リスクヘッジプランを検討する上では今週提出予定の5月分のリテイクカットの提出状況、クオリティ状況と6/20(火)にSMCから提出される現実的なスケジュールを確認した上で判断していく
※上記スケジュールは7月末までに映像素材の制作を完了し、8月はループ対応などのパチスロ用映像としての調整期間に充てることを前提条件とした現実的なスケジュールとする
4)その他確認事項について
【月別の提出カット数の変更について】
・現在予定している月別の提出カット数を下記のように変更することは可能かEPXで検討を行うこととする
  6月 7月
(変更前)  250カット  150カット
  ↓−50 ↓+50
(変更後)  200カット  200カット
 〔省略〕」
ホ 平成18年6月21日午後4時「V進捗報告ミーティング」(原告:α02、α03、α10、被告:β02、β09、β12、β17、β06、報告者/β06、乙20の11)
 「1)5月分の100カットについて
・5月分100カット(1カットは中間生成物レベル)の提出は6月中に終了することを確認した
・OKとなる基準では7月に納期が遅れてしまうカット(RT07A002)については、アニメーションしてある程度流れが分かる程度のレベルのものを6月中に提出する方向で調整することとする
 →SMC内部で検討し、検討結果を早急にご連絡頂くこととする
・SMCから提出されたカットに対してEPXからの連絡がないカットが8カット程度あるが、早急にEPX内で確認し、SMCへ連絡する
・5月分100カットに対するEPXのディレクションについて、今後のEPXからSMCへの修正指示については、今までの詳細な対応(修正要望をエクセルファイルに記述したもの等)は難しいため、5For6Fで実際の実機上の映像を見ながらの口頭でのディレクションとすることをEPX、SMCで両者で問題がないことを確認した
2)6月分250カットについて
・6月中に対応するカットは6/21時点では80カットの予定。
・全く手をつけていないカットについては継続して制作するか、制作が困難な場合は全く手をつけていないカットは引き揚げ、代替案として112ある新作カットの方を対応して頂く可能性があることを確認。
 →来週頭までに検討を行い、SMCへ連絡することとする
・手をつけていないカットについては本日中にSMCよりご回答を頂くこととする
 以上」
マ 平成18年7月3日午後3時「V1カット制作に関するSMCとの打合せ」(原告:α11、α01、α02、被告:β02、β09、β12、β06、作成者/β06、乙6の12)
 「【決定事項】
 トレースカット350カットについて
1.SMCで350カットの制作を行う
2.但し、329カットについては7月中にコンプリートさせ、残りの21カットについては7月中に実機で表示できるレベルで提出、8月中にコンプリートさせる
3.上記350カットの制作スケジュールを7/4中に完成させ、夕方までに完成するようであれば7/4の夜に改めて制作方針確認の打合せを行う
4.なお、350カットの制作を進めていく中で、実現度を高めるための施策として下記の2点をカット単位で検討する
レ 長尺カットは使用する部分(Vコンテの尺)+αを制作対象とする
 → 省エネの制作とし、無駄なカロリーはかけないようにする
レ スプライト対応が可能なカットを検討する
 → コンセプトに反するが、許容範囲内で省エネ(制作期間の短縮)できないか検討する
5.4月からの継続的にEPXからSMCへ言い続けてきていることの再確認になるが、問題となるカットがあれば随時、制作方針についてEPXへ提案もしくは相談をすることとする
 新作カット72カットについて
6.新作カットについては全体的にγ02氏と作画打合せを行う中で制作工数が軽減できるような方向で調整する必要がある
 〔省略〕
9. 制作の見通しが立っていない『アムロやられ』の4カット(アニメーションするアムロを似せる作業が困難であり、SMCには対応できるリソースがいない)については、EPX、SMCで制作方針を早々に決定させる必要がある
【EPXの見解、今後の対応】
 新作カット72カットについて
10.γ02氏との作画打合せの場を早急に設定し、新作カットの制作方針(なるべく省エネなカット制作とする)を早急に決定させる必要がある
11.現状を考えると7月中にコンプリートさせることはほぼ不可能なため、最悪でも7、8月中に実機で表示できるレベル(クオリティアップ後に差し替えが可能な状態)で提出、8〜9月に中にクオリティアップを行い、コンプリートさせていくプランが可能かどうか検討する必要がある
【確認事項】
 ディアフィールド及びベックへの単価提示(@10万円)について
12.ディアフィールド及びベックへのSMCからの単価提示(@10万円)はα02さんの判断により、契約交渉のテクニックとして想定より低めの金額から交渉をスタートさせたとのこと
(補足)
 →EPXからの紹介会社については中間マージンをとらないようにSMCへはEPXから要請していたが、必要情報を全て与えた上で先方が納得するのであれば15万円程度に落ち着かせることは問題ないことを契約交渉の場で伝えている
 ベックがロイヤリティを要求してきた件について
13.ベックからの見積もりを根拠として、α02さんの判断により、ベックがロイヤリティを要求してきたとしている
 →実際にベックからSMCに提示された見積りをデータで頂いたが、ベックがロイヤリティを要求していると解釈するのは明らかに誤解である(別紙参照)
 以上」
ミ 平成18年7月12日午後4時「V進捗報告ミーティング」(原告:α02、α03、α10、被告:β02、β09、β12、β17、β06、報告者/β06、乙6の13)
 「1)5月発注分100カットについて
・RT10B030については中間成果物として今週中に一度提出して頂き、来週月曜をメドに正式に提出して頂く
・リテイク修正中のカットは約25カット程度ある
2)6月発注分250カットについて
・今週中に新規提出するカット数は最大で70カットであるが、再委託先からのカットのOK率によって提出できるカット数は変動する
・SMC判断で70%〜80%の完成度のカットは上記の正式に提出して頂くカットとは別に実機出力データを提出して頂く
3)制作上の問題点について
・中景カットの映像制作方針については、上記の70%の完成度で提出して頂いたカットをEPXで確認し、改めてSMCへ連絡する
・陽炎カットの映像制作方針については、まずはSMCで試作映像を制作して頂き、その後にEPXで確認を行う
 以上」
ム 平成18年7月21日午後4時30分「無題」(原告:α01、α03、被告:β09、β12、β06、作成者/β06、乙20の14)
 「【決定事項】
 新作カットについて
・7/21(金)の午前中までのSMCの制作実績を踏まえ、EPXでは新作カットの委託先をSMC以外とすることを決定した
【補足】:7/21(金)午前中までの制作実績
 →β版:55カット
 →α版:165カット
 →仮:76カット
 →未提出:54カット
・但し、アニメーション担当(2名)、エフェクト担当(2名)であればSMCからの人工貸しも可能とのことなので、状況に応じて検討することとする
【補足】:SMCからのアサインについて
 →モーション担当についてはキャラ似せも行っていたので、能力は高いとのこと
 →キャラモデリング&モーション:α05、α13
 →メカモーション:ARON
 →エフェクト:α06、α14、α15、α16
 350カットについて
・α版は7月中に確実に提出することを確認した
・β版は8月中に確実に提出することを確認した
 G−DEVの返却について
・新作カットをSMC以外の委託先で制作することになったため、SMCからG−DEVを2台返却して頂くこととなった
・まずは1台を来週7/25(火)にEPXへ返却して頂く
・もう1台は7/31(月)週、8/4(金)までにEPXへ返却して頂く
 以上」
メ 平成18年7月27日午後零時30分「映像制作に係る契約交渉」(原告:α11、α01、α02、被告:β12、β06、作成者/β06、乙6の15)
 「V1−1(4月発注分250カット)の納期遅延の覚書について
・覚書は7/26版で確定とし、以降、製本作業に入ることとする
・調整作業に関する協議については、作業範囲はSMCに確認の上、必要に応じて制作方法等の検討を行い、決定していくものとする
・但し、最終的な決定権限はEPXが持つこととする
・プロジェクトVを成功させるためにSMC、EPXお互いが最大限の協力をもって制作にあたることとする
・EPXからの調整依頼の時期によるSMCの調整キャパシティをパターン別にEPXへ連絡して頂くこととする
 7月上旬にEPXで引き揚げた3カットの制作について
・EPXがいったん引き揚げた下記3カットについてはSMCで制作して頂くこととなった
 →RT08D002
 →RT08D003
 →RT08D004
・但し、制作再開時期を考慮し、納期に関してはEPXで配慮することとする
 以上」
モ 平成18年7月31日午後零時「映像制作に係る確認」(原告:α11、α01、α02、被告:β09、β12、β06、作成者/β06、乙20の16)
 「350カットのα版納品について
(SMCからのコメント)
・SMCとして『実機表示できる』、『尺があっている』の2点をα版の定義と考え、7/27付けのDVDにてα版350カットを納品としたい
 →EPXとしてはα版の定義は別紙にあるとおり、一定のレベルを超えたものをα版としている
(EPXからのコメント)
・7/27の夕方にDVDを頂いて以降、24時前程度にα版ではなく仮で提出して頂いているカットがあるが、それはどう説明されるか
 →SMCが判断する見通しとしては本日7/31終了時点で10カット程度は仮として残る予定
 →例えば、マントの処理とフラウボウの長尺については提出までには至らない予定
(結論)
・7/27付けのDVDではα版350カットの納品とはならない
・7月は本日7/31までであるため、本日中にアップされるデータを明日8/1に再度確認し、実績値をもって判断することとする
・但し、『RT08D002(マ・クベ)』のカットについては制作再開の経緯を踏まえ、納期の調整を行うこととする
5月分100カットのβ版納品について
・SMCとEPXでは認識に差異があるため、早急に5月分100カットのα版、β版、修正指示内容についての認識を共通化させる必要がある
・混乱を避ける意味でEPXは対象となるカット全てについて修正指示内容を洗い出し、早ければ本日7/31中、明日8/1、2までにSMCへ連絡することとする
 →(本会議の後に決定した事項として)8/1(火)14:30より5月分100カットについてのフィードバック会議を行うこととする
 以上」
ヤ 平成18年8月2日午前10時30分「契約会議」(原告:α11、α17、α01、α02、被告:β12、β06、作成者/β06、乙20の17)
 「1.V1−1について
(1)α版250カットの納品について
 →α版250カットは条件を満たしているため、納品とする
(2)β版100カットの納品について
 →カット数が100に達していないため納品としては認められない
(3)覚書の対価変更について
 →α版250カットの納品に対して対価を設定していたが、SMCで支払サイトに問題ないことを確認し、対価設定の変更は了承して頂いた
2.V1−2について
(1)α版100カットの納品について
 →カット数が100に達していないため納品としては認められない
(2)契約書のドラフトについて
 →EPXからドラフトを提示し、SMCに簡単な口頭説明を行った
 →契約書ドラフトをSMC社内で検討して頂き、確認した後にEPXへご連絡頂く
3.β版制作について
(1)β版制作の進め方について
 →SMCにはα版、β版の定義については、昨日8/1の5月分100カットのフィードバック会で理解して頂いた
 →但し、MS系、キャラ系(近景)については実機上での確認を踏まえながらクオリティレベルを確認できたが、キャラ系(中景、遠景)についてはサンプルデータを実機上で確認しながら認識をもう少し高める必要がある
 →キャラ系(中景、遠景)に関してはSMCの方でサンプルを3カット+フラウ・ボウ長尺シーンの1カットを用意して頂き、実機上で確認しながら検討を行う
(2)β版制作に向けた作業内容について
(β版基準項目)
 →キャラ系(中景、遠景)の検討
 →MS系の影調整
 →背景調整
(M版基準項目)
 →色味
 〔省略〕」
ユ 平成18年8月2日午後4時「SMC進捗会議」(原告:α11、α17、α01、α02、α10、被告:β02、β09、β06、作成者/β06、乙6の18)
 「350カットの進捗について
・提出:322カット
・仮提出:27カット
・(追)未提出:1カット
 今後の見通しについて
・α版未達の2カットについては来週になる見通し
・追加分未提出の1カット(マ・クベのカット)について、納期はα版:8/10、β版:8/末とする
 →SMCで再検討後、明日のお昼までにEPXへ連絡する
 中景カットについて
・RE01D001(フラウ・ボウ)は制作が難しく、EPXで中景カットのサンプルデータがあれば参考にもらえないかという打診があった
 →EPXの方でも確認し、後でSMCに連絡をする
 以上」
 なお、平成18年4月25日に行われた原告担当者と当時の外注先候補社とのミーティング報告書の主要な記載内容は、次のとおりである。
ア 同日午前11時「Vディアフィールド契約打合せ仕様説明」(出席者/ディアフィールド:γ11、γ12、原告:α02、α05、α12、α10、報告者/α10、乙9の1)
 「実際のデータを見ながらα05から説明、下記の内容を伝える
 →マテリアルが4文字との制限があるが、4文字以上のデータもあり、それを変更する作業は必要ない。
 →エフェクトは全てを実写通りにするのではなく、モヤッとした感じを上手く出せたほうが良いという指示があることを伝える。仕様を伝える。
 →キャラクターのアップなどはモデルをいじって調節が必要な事を伝える。足りないものを自分達で作らなければいけない事も伝える。γ11氏了解済み。
 ディアフィールド様から下記の質問があがった
・爆発以外のエフェクトも全てポリゴンでやるのか?
 →テクスチャーの量を減らしたい為、多分そうなるであろう
・epxからの仕様書が見たい
 →後日渡す
・劇場版を見て、後半につれてクオリティーが上がっていっているがどれでも1カット4日で仕上げたのか?
 →後半(V2)にはまだ取り掛かっていないが、V2に取り掛かるのは8月の慣れて作業のスピードも上がっていることを想定している。
・影表現のテクスチャーは?
 →仕様はあるが、まだ確立していない。実機で影がつけられる新機能があることを説明。しかしすべての影をその機能でやるのではなくテクスチャーで表現するところもあることも了承済み。
 〔省略〕」
イ 同日午後2時「Vベック契約打合せ仕様説明」(出席者/ベック:γ13、γ14、原告:α02、α05、α12、α10、報告者/α10、乙9の2)
 「Vの概要を説明。先にこちらから下記の要望を伝える
 →100カット〜200カット協力要請
 →1人月6カットで1カットいくらの契約を結びたい
 →例えば、6末40カット、8末60カット納品といったような形を取るのは
 α05から実際の制作カットを見て一通りの説説明〔ママ〕を行う。
 エフェクトの制作方法の説明、影設定の説明、フラミンゴのモデルがあるのか心配されていたので画面で確認。モデルについては既存のものを使用するが、多少のモデリングは必要になる旨を伝える。
 ベック様からはキャラクターよりも得意なメカが多いカットを希望
 →なるべく希望にそうようには考える旨を伝える。
 〔省略〕」
(5)遅延原因報告書の記載
 平成18年4月26日ころに原告によって作成された「Project V RT作業の遅延原因報告書」(甲7)の記載内容の要旨は、次のとおりである。
 「各担当ディレクターからあがったものを列挙しました。最後に全体的なまとめを追記しました。
■美術
・テクスチャーの形状仕様についてなかなか決定が出なかった問題。
 〔省略〕
・テクスチャーのラッピングの問題
 〔省略〕
・テクスチャーのαマップ使用方法
 〔省略〕
・カラーチャートが最近になってから届いたための修正作業発生
・カラーチャートの見方がわからない(仕様書の不在)
・素材モデルがなかなか届かなかった事
・素材モデルのデータのバグ
・素材モデルのどれが「色味OKデータ」か把握不可能(基本的にOKなのはなかったようです)
・素材モデルのマテリアル分けの未完成さ
 〔省略〕
・準主役級の素材モデルの欠落
・テクスチャーの色味修正をしたくてもレイヤー分けしたデータがなかった(先週あたりに受取る)
・全カット、使用するキャラは基本的にモデリングから作業が発生。
 〔省略〕
・全体的なMayaでの作業手順に関してのマニュアル不在。
 〔省略〕
■アニメーション
・慣れていない。
 FBIKの扱いや、ボーン構成など、実機表示のための約束事に、こちらが慣れていない。
・仕様の再確認
 示された仕様も、外注からの質問などに備えるため等の理由で、一つひとつ検証する必要があった。
・細かい仕様が明確でない。
 説明されていなかった、または、双方で認識していなかった仕様が、存在した。
・の〔ママ〕作業中にも実機表示されない事態が発生し、エピクロスさんに確認していただいて、仕様が確定するということが幾度か起きた。
 〔省略〕
・エクスポーターのバグ。
 Mayaシーン作成中も、エクスポーターのバグが発覚した。
 〔省略〕
■エフェクト
・作業を進める上で基本的な仕様が決まっていない
 〔省略〕
・3Dの作業において必要最低限の機能を盛り込めていない
・GDEVの操作方法、
 マニュアルがなかったこともあり、操作を理解するのに時間がかかったり、仕様の変更が入ったりと、作業工程の確立が困難だったこと。
・Mayaデーターの確認、
 〔省略〕
・プログラム
 Mayaでシーンを作成、GDEVで表示する時、Mayaで使用できない機能が分からずそのつど修正。
 OLで出来た機能も対応できていない状況でプログラマーに修正依頼。(ライセンス切れで新たにライセンス取得まで修正待ち)
・Maya検証
 エフェクト(爆発)の検証、確立できるシーンを作成するためには時間が掛かる。
・両者の認識の違い
  エピクロスさん スダジオMC
プログラム 出来ている 最低限の機能しか使えない。
本来当然あるべきと考えている機能がない。
仮にあがったプログラムをデバックもしくは検証作業を行っている感覚で、完成したプログラムとは考えにくい
3Dデータ メインのキャラクターは出来ているが多少の修正は必要。存在しない小物オブジェクトは作成する。 メインのキャラクターは出来ているがシーンとして作成することはできない。
修正に関しても、こちらの認識は多少ではなく、全てに関して大幅な修正という認識
※最低限必要なものとして各担当者からあがったものをまとめたものです。(一部上記内容と重複しています。)
・GDEVのマニュアル
・Mayaのマニュアル
・モデルリスト
・自動影ONにするためのNのチェックウィンドウ(Mayaでのマニュアルに重複)
・Transparency(透過)の対応がない→対応の確約は頂いたがスケジュールは未定
・ビジブル→4/24対応、検証開始
※まとめ
 遅れた原因として、全般的に言えることとしては、EPXさんから頂くはずのデータ等がなかなかあがってこなかったこと。またあがってくるデータやプログラムがこちらが期待していた内容とことなっていて、予定していなかった作業が大量に発生したこと、未決定の仕様が多々あり、その検証作業に大半の時間が費やされていて、今も尚作業中であることなどが考えられます。
 また、SMCサイドも従来行っている作業工程にそぐわない工程での作業が発生したこと(従来分業化してきたモデリング作業・レイアウト・アニメーションを一貫して一人で行う作業)。またそのスキルを持ったスタッフの人材不足、エフェクト要員の不足、また、ボリュームをこなすため大量の外注発注の指示の効率化を図るため、社内だけの作業時に準備するものよりも完成度の高い制作マニュアルが必要となり、その制作等もその原因として考えられます。
 さらに今後新たに遅れの原因として出てきそうな問題として、外注さんとのやり取りに仲〔ママ〕で、現状のシステムではGDEVを介して最終のアウトプット形態である液晶画面を一緒に観た上での共通の認識を持てる場がないことがあげられます。
※解決策として考えられること
 プログラム・エクスポーター・それぞれの仕様等の不確定要素を一つずつ潰してゆき、明確な作業工程の確立を行うこと。つまり、プリプロです、実制作の日程をさらに侵すことになりますが、現時点でその作業を怠り、見切り発車を行うと益々その後の作業日程が読めなくなる危険性があります。現在現場であがっている要望としては後半月程度のプリプロ期間の延長です。それによりなんとか諸問題の解決を謀り、キチンとした作業工程・日程が組めるのではと算段しています。
 また、今後新たに遅れの原因になると考えられる外注さんとの認識の共有化問題の解決策として、もっとも簡便で有効な手段としては、SMC担当と外注さんとが同席して液晶画面上のデータを視ながらチェックを行える場を設けることだと考えられます。液晶そのものが最重要機密事項ということで現在許可が出ていませんが、要望として渋谷SMCに一台置かせていただきたいこと、社外に持ち出すことが、叶わないのであれば外注さんにEPX社内のSMCブースへの立ち入りの許可をいただけないかという内容でEPXさんに申請中です。」
(6)被告の査定等と顛末
ア 被告は、平成18年8月22日、本件シーンデータについて、7段階の基準を決めて完成度をランク付けした(甲56の1・2)。
 被告の設定したランク、単価及び基準は、次のとおりである。
 ランク@/単価1万円/全体の完成度が10%以下でα版の条件を満たしていないもの
 ランクA/単価8万円/トレース(キャラクターやメカなどのモデルの形状や動きを元の映像に似せる作業)の完成度が50%程度(α版)のもの
 ランクB/単価12万円/トレースのみ完成しており、背景と影がともにできていないもの
 ランクC/単価12万5000円/影の製作、調整ができていないが、トレースと背景の製作、調整ができているもの
 ランクD/単価17万5000円/背景の制作、調整ができていないが、トレースと影の制作、調整ができているもの
 ランクE/単価18万円/トレース、影、背景の制作、調整ができているもの
 ランクF/単価20万円/色調整、データ調整ができていて、そのまま製品として実機に入れられる(マスター版)もの
イ 被告は、平成18年8月29日、原告に対し、上記の基準に基づき査定した評価額を通知した(甲107の1〜7)。
 本件シーンデータごとのランク付けは、被告査定表に記載のとおりであり、評価額は、次のとおりである。
100カット分
 ランクF/ 0カット/ 0円
 ランクE/ 2カット/ 36万0000円
 ランクD/ 5カット/ 87万5000円
 ランクC/ 5カット/ 62万5000円
 ランクB/ 8カット/ 96万0000円
 ランクA/ 33カット/ 264万0000円
 ランク@/ 45カット/ 45万0000円
 対象外/ 2カット/ 0円
100カット  591万0000円
250カット分
 ランクF/ 0カット/ 0円
 ランクE/ 54カット/ 972万0000円
 ランクD/ 93カット/ 1627万5000円
 ランクC/ 26カット/ 325万0000円
 ランクB/ 49カット/ 588万0000円
 ランクA/ 28カット/ 224万0000円
 ランク@/ 0カット/ 0円
250カット 3736万5000円
合計 350カット  4327万5000円

ウ これに対し、原告は、社内で見解をまとめて算定を行い、平成18年8月30日、被告に対し、上記100カットにつき2505万3000円、上記250カットにつき6864万円の合計9369万3000円であるなどとする通知をした(甲108の1〜3)。
 その後、原告と被告との間で、事態の収拾に向けた交渉が決裂し、原告は、平成18年11月7日、本件訴訟を提起した(顕著な事実)。
2 争点(1)〔本件各契約の基本的性質(請求原因アの関係)〕について
(1)本件基本契約(甲1)は、その前文(「エピクロス株式会社(以下「甲」という。)と株式会社スタジオMC(以下「乙」という。)とは、甲が乙に委託する回胴式遊技機に関する開発業務(以下「対象業務」という。)に関し、その基本的事項について次の通り契約を締結する。」)にあるとおり、被告が原告に対して一定の業務を委託(準委任)するものであるものの、本件各契約の目的がいわゆるパチスロに使われる映像の制作(本件業務)であることからすると、基本的には、被告が原告に発注して原告がこれを請けた「請負」の業務の範疇にあるものとして理解されるべきである。
 もっとも、その具体的な内容については、本件個別契約(1)及び(3)による合意を含め、詳細に取り決められており、本件基本契約の条項を概観すると、9条(検査)において、被告の実施する検査に「合格」しない限り、原告においてさらなる納入の義務を負い、対象業務が完了しない規定が置かれている。この規定は、本件業務の委託者(発注者)である被告自身の行う検査が原告の債務の履行の有無を決めるものであることから、本件業務のいわば到達点について、その検査に先行して、被告の明確な指示のもとに、原告と被告の間で共通の認識ができていることを前提としたものと解することができる。
(2)実際に、前記1の本件各契約の締結に至るまでの経過に照らしてみると、契約締結に先行して、原告と被告の間において、本件業務に関する作業が先行し、かつ、数多くのミーティングが開かれていることが認められる。そうすると、本件各契約とその履行過程を検討するには、当事者間における契約の書面によって条項化されていない事実上の了解事項や折衝状況などを吟味することが欠かせないものというべきである。
 本件各契約の基本的な性質については、それ自体を抽象的に論ずることにあまり意味はないものの、請負的な性格を有する業務の委託契約であって、しかもその完成に至るまでに、原告の作業や修正作業などに対する被告の的確な指示(ディレクション)が必要であり、このような原告と被告のいわば共同の作業によって契約の履行が完遂されるものと理解できる。
(3)以下においては、このように本件各契約を理解する観点から、判断するものとする。
3 争点(2)〔本件仕様の内容(請求原因ア及びイの関係)〕について
(1)前記1にあらわれた事実経過によると、原告と被告の間において、本件各契約の締結に至る前、本件業務と類似したプロジェクトZの作業が先行して、その業務が終了していること, 平成18年1月27日のキックオフミーティングから本件基本契約が締結された同年5月23日までに、少なくとも17回のミーティングが開催されたこと, 契約の締結に向けた協議と並行して、同年4月にかけて、Vコンテの制作のほか、RT07関係の「迫撃!トリプルドム」の一部につきプリプロダクション作業が開始していることがそれぞれ認められる。
 そして、証拠(乙11の4)及び弁論の全趣旨によれば、上記プリプロダクションについて、平成18年4月28日にカット#113(RT07A001)、カット#118(RT07A006)、カット#119(RT07A007)、カット#120(RT07A008)、カット#121(RT07A009)、カット#126(RT07A014)、カット#130(RT07A018)、カット#145(RT07A033)、カット#147(RT07A035)及びカット#161(RT07A049)の10カットが提出され、同年5月2日にいずれもNGの判定を受け、リテイクの後、同月20日にカット#118(RT07A006)、カット#119(RT07A007)、カット#120(RT07A008)、カット#121(RT07A009)、カット#126(RT07A014)、カット#130(RT07A018)、カット#147(RT07A035)及びカット#161(RT07A049)の8カットが提出され、同月22日にはカット#118(RT07A006)、カット#119(RT07A007)及びカット#120(RT07A008)の3カットが再びNGになっていることが認められる。
 そうすると、平成18年5月23日に締結された本件基本契約の前に、既に当事者間において、少なくとも、双方の十分な協議を経て行われたプリプロダクションの実施を通じて、本件各契約で予定する本件業務の内容は、体験的に確認できており、これを前提として、本件各契約の締結に至ったものと認めるのが相当である。
(2)そこで、本件各契約における本件業務の履行の状況を検討するには、本件シーンデータの個々の制作作業がどの程度に仕上がれば、個別にみた本件業務の完成に至るといえるかを確定する必要があり、その意味において、「本件仕様」の内容が問題となる。
 この点、原告は、ア’)本件元映像のうち、被告が指定した一部を3DCGで表現したものを原告が制作すること、イ)映像の1カット当たりの長さが約4秒であること、ウ’)原告の作業には、レイアウト・アニメーション等の映像制作は含むものの、映像調整は含まないこと、エ’)上記映像制作の素材であるモデリングデータは、被告が作成し、原告に提供する(ただし、小物のデータの新規制作等の負担の少ない作業に限り、原告が行い、人物データのうち顔アップ(近景)については、原告が被告から提供されたデータの修正又はデータの新規作成を行う)こと、オ’)上記映像制作の素材である背景データは、被告が本件元映像から抜き出した上で、上記映像制作にそのまま使用できる状態に加工し、原告に提供すること、カ’)原告が制作する3DCG映像に影を付ける(影作成作業については、人物カットのうち、本件元映像に影がある場合及びサンライズ影指示書がある場合には、それに従って原告が手付けで影作成作業を行い、モビルスーツカットは自動影とする)こと、キ)本件元映像にできる限り似せて3DCG映像を制作すること、ク’)原告がMayaで制作したデータを実機(G−DEV)でチェックするためのソフトウエアを被告が用意する(被告から提供を受けた実機「GDEV」、開発用ソフトウエア「エクスポータ」、開発用ソフトウエア「G−DEVツール」等の開発ツールを使用する)ことが「本件仕様」である旨主張する。
 しかしながら、これらのうち、キ)本件元映像にできる限り似せること以外の事項については、上記の本件業務の完成度を計ることとは関連性が薄いものといわざるを得ない。おそらく、原告の上記主張は、本件基本契約7条の文言や本件個別契約(1)及び(2)の各1条の文言のとおり、対象業務としての本件業務の実施にあたって、「仕様」に従っている限り、原告としての責を果たしたことになるとの理解によるものと思われる。しかしながら、本件基本契約9条の検査を前提としてみれば、本件シーンデータごとの被告による具体的な指示(ディレクション)がされることの反面として、原告において、それに応じた水準の作業や修正作業がされることが求められるものというべきである。
 他方、被告は、上記キ)に関して、さらに、本件元映像に「そっくりそのまま」似ていると言わしめるような相当高い水準が要求されて、これが原告と被告の間の了解事項である旨主張する。
 しかしながら、本件元映像自体、2Dの手書きを基本とした画像であって、3DCGで制作される画像と対比して、正確さに欠ける画像を含むものであることは否めないところであるから、正確にトレースし、場合によってモデルを変形させることなどが求められるとしても、それが「そっくりそのまま」似ているといえるかどうかは、程度の問題というべきであり、このような基準が「本件仕様」として合意されていたとまで認めることはできない。
 そうすると、本件業務における完成度を計るための「仕様」を表現するとすれば、被告の具体的な指示を前提として、原告において、本件元映像にできる限り似せることである、としかいいようのないものである。
(3)なお、原告が主張する上記のキ)以外の事項については、原告における本件各契約の本旨に従った履行の有無を検討する上での判断の要素となり得るとはいえるものの、上記の完成度の程度と比して、従属的な要素にとどまるものというべきである。
4 争点(3)〔本件仕様と本件シーンデータとの適合性(請求原因アの関係)〕について
(1)原告は、エ’)上記映像制作の素材であるモデリングデータは、被告が作成し、原告に提供する(ただし、小物のデータの新規制作等の負担の少ない作業に限り、原告が行い、人物データのうち顔アップ(近景)については、原告が被告から提供されたデータの修正又はデータの新規作成を行う)こと、カ’)原告が制作する3DCG映像に影を付ける(影作成作業については、人物カットのうち、本件元映像に影がある場合及びサンライズ影指示書がある場合には、それに従って原告が手付けで影作成作業を行い、モビルスーツカットは自動影とする)こと、オ’)上記映像制作の素材である背景データは、被告が本件元映像から抜き出した上で、上記映像制作にそのまま使用できる状態に加工し、原告に提供すること、を充たしているから、本件カットのうちの別紙一覧表のそれぞれの該当欄に該当するカットの本件シーンデータが本件仕様に適合する旨を主張する。
 しかしながら、これらに該当するカットが上記の事項を充たしていることと、原告において、各シーンデータを本件元映像にできる限り似せるに至ったか否かとが別論であることは、前記3で述べたところから明らかであり、被告の提供した素材を使用したことなどから、直ちに本件業務に関する原告の責務が果たされたことにはならないというべきである。
(2)前記3で説示したところによれば、本件シーンデータの本件業務としての完成の度合いについては、本件カットの個々のカットごとに、被告に提出された各シーンデータの画像に従って、個別に判断するしかない。
 もっとも、前記1の本件シーンデータの作成状況に照らすと、OKカット、NGカットと判定されたカットのほか、最後まで、仮提出にとどまったカットがある一方で、カットによっては、時期により、判定が留保されていたカットがあること、いったんOKカットとされながら、その後NGカットとされたカットがあること、また、前記1のミーティング報告書等の記載に照らすと、被告としても、サンライズのOK基準を把握できず、原告に対する指示が必ずしも明確でない状況のあったこともそれぞれ考慮すべきである。
 また、本件カットの被告査定表によるランク付けは、本件シーンデータを原告が仕上げるにあたってその指示(ディレクション)を行った被告自身によって評価、作成されたものである点で、一応の基準となり得るものである。他方、被告査定表が作成された平成18年8月29日時点を考慮すれば、より慎重にその評価の公平性、中立性を吟味する必要がある。
 なお、原告は、被告査定表によってランクB以上に査定されたカットのほか、ランク@及びAに査定されたカットについても、一律に本件仕様をすべて充たしている旨主張する。しかしながら、仮提出にとどまったカットについては、おのずとその完成度が低いとされてもやむを得ないところがある。
 もっとも、前記1の本件シーンデータの作成状況のなかで、被告の管理記録においてOKとされたカットについては、当時の被告の指示に従って原告が作業を行い、それに基づいて被告の行った判定であると認められる以上、後になってこれを覆すことは許されないものというべきである。
(3)ところで、甲第121号証の1のG−DEV用のデータには、平成18年8月9日になってから作成交付されたものが含まれている(甲121の2の一覧表参照)ものの、被告に提出されたデータである以上、本件基本契約9条3項の趣旨から、提出扱いとされるデータが同年7月27日時点のものに限定されることはないと解される。
 また、被告は、平成18年7月27日に原告から提出された乙第21号証のDVD−Rに収録されたテキストデータに「α版」と明記されている(乙20の16、乙21)として、このDVD−Rに収録された本件シーンデータが未完成品であることを自認していたと主張する。しかしながら、同月31日の当時、原告としては、このDVD−Rをもって納品の扱いとすることを被告と協議していたことが明らかであって(前記1(4)ミーティング報告書等の記載モ)、「α版」との記載が未完成品の自認を意味するものとは認め難いところである。
 そこで、以上の観点から、被告に提出された本件シーンデータとして、甲第121号証の1、乙第21号証のデータを総合的に考慮して判定すると、別紙一覧表の「裁判所評価」の列に記載のとおりであるものと判断する。なお、被告査定表に示された7段階のランク付けについては、そのランク区分自体を尊重しつつも、ランクBとランクC、ランクDとランクEとをそれぞれ合体し、改めて、全体を5段階に分けた上で、ランクE/1万円、ランクD/8万円、ランクC/12万円、ランクB/18万円、ランクA/20万円として評価するのが相当である。
 したがって、被告に提出された本件シーンデータは、その出来型の金銭的な評価として、全体で合計4857万円となり、既払金1530万円を差し引くと、未払相当金は3327万円であるものと認められる。
(4)なお、原告から被告に提出された本件シーンデータの上記評価額は、本来予定されていた未払の対価5570万円と対比しても、その相当額に達するものであり、後記6(1)のとおり、本件各契約関係の未履行部分(出来型以外の部分)が既に契約解除により解消されているものと認められることからすれば、結果的に、本件基本契約10条にいう「引渡し」がされたものと認めることができる。
 したがって、原告の被告に対する著作権及び著作者人格権に基づく差止請求としての予備的請求は、その余の点を検討するまでもなく、理由がない。
5 争点(4)〔本件追加作業の具体的内容(請求原因イの関係)〕について
(1)原告は、本件業務に伴い、被告のため、原告の営業であるアニメーション等の企画制作等の範囲内の作業として、本件追加作業を行っており、これが原告の責に帰すべき事由によらない作業であることから、本件基本契約9条3項、商法512条により、原告と被告との間に本件受委託契約が成立していると主張する。
 しかしながら、本件追加作業は、現に本件各契約が成立している当事者間において、本件業務を遂行するに際し、これに伴って行われた作業であり、このような作業が本件各契約とは別個の合意によって、その対価が根拠付けられるとすることは、当事者の基本的な意思解釈としても、通常、考え難いところである。そして、本件基本契約9条3項の文言上も、所定の検査を経て不合格となり、その不合格の原因につき原告に帰責事由のない場合、双方が協議をして決定すると定めており、本件追加作業は、いずれも検査の不合格を経たといえるものか明らかではない。
 そして、他に本件受委託契約が成立したことを認めるに足りる証拠はなく、原告の被告に対する本件追加作業に係る対価請求としての主位的請求その2は、その余の点を検討するまでもなく、理由がない。
(2)なお、念のため、モデリング(人物カットの新規制作及び被告提供データの修正等)につき言及するに、前記1(4)のミーティング報告書等の記載に照らせば、平成18年1月下旬の当初のキックオフミーティングの時点で、本件業務にあたって、原告のモデリング作業がないことが確認されているものの、同年4月下旬の原告による外注先候補社とのミーティングでは、原告自身がモデルの調節や足りないものを作成する必要のあることを説明しており、同年4月にかけてのプリプロダクション等を通じて、同年5月23日の契約締結前に、原告において、モデリングデータの作業の必要性を知悉していたものと認められる。
 また、被告がカットのチェックを依頼したγ01氏への対応については、確かに、本来的に本件業務の作業としては、疑問の余地のある指示がされたとも窺えるところである。しかしながら、γ01氏がサンライズ側の人物であり、本件元映像を扱う本件業務の性質上、被告としても、γ01氏の意見に一定の配慮をもって対応せざるを得なかったことも止むを得ないと考えられることからして、なお、γ01氏の意見に基づく被告の指示が本件各契約の作業範囲を超えるものであったとまでは認め難いというべきである。
6 争点(5)〔抗弁関係の成否〕について
(1)一部解除の抗弁について
 原告による被告に対する本件シーンデータの提出は、その出来型の評価額からも、本件各契約上の「納入」に該当するものと認められる(本件個別契約(1)及び(3)の納入物としてのデータ一式がイントラネット上のフォルダに格納されれば、カット数を問題としていた当時の当事者間の理解(前記1(4)ミーティング報告書等の記載ヤ)として、本件各契約上の「納入」に該当するものと認められる。)。そして、本件基本契約9条によれば、検査が不合格となった場合には、なお修補作業が必要となり、本件各契約の性質上、本件シーンデータの修補作業にあたっては、被告による指示が不可欠であるものと考えられる。
 ところが、被告から平成18年9月28日ころにされた原告に対する通知書によって、未履行部分を解除する意思が通知されたことから(少なくとも、前記1(6)にあらわれた平成18年8月末ころ以降の当事者間の状況を踏まえると、当時、本件各契約を継続し難いと認められる相当な事由があったということができる。)、そのような原告による作業がもはや不能であることが明らかである。
 したがって、上記の通知により、本件シーンデータの出来型として割合的に完成したものと評価できる部分以外については、本件各契約の未履行部分として、本件基本契約26条1項11号に基づき、原告の帰責事由の有無にかかわらず、解除されたものと認められる。
 なお、被告において、あくまでも、本件各契約上の納入がないことを前提に、未履行部分を解除するのであれば、上記のとおり、納入があったと認められるから、失当である。
 また、被告の指摘する原告の帰責事由については、むしろ、被告において、本件各契約の締結に至る前に、十分に把握できたはずの原告側の事情というべきものであって、実際に本件各契約の締結に至った事実自体からして、専ら原告側に原因を求めることはできない。前記1(4)のミーティング報告書等の記載に照らせば、被告は、平成18年6月13日の時点でV2の制作は延期したものの、同年7月3日の時点において、新作カット72カットを原告に担当させる方針であり、この方針が覆ったのは、同月21日の時点であって、少なくとも、同月半ばすぎころまでは、被告においても、原告に対する一定の評価がされていたはずである。本件業務の遂行上の実情については、前記1(5)で言及された原告の指摘する事由についても、謙虚に受け止める必要がある。
(2)同時履行の抗弁について
 前記(1)のとおり、原告から被告に対し、本件シーンデータの出来型が本件各契約の債務の履行として引き渡され、被告によって、未履行部分が解除されているから、被告の対価支払債務と牽連関係に立つ原告の引渡債務は存在しないことになる。
 したがって、被告の同時履行の抗弁の主張は、失当である。
(3)相殺の抗弁について
 被告は、原告による本件各契約の債務不履行により、原告に代わる業者に外注したことによる発注費用と社内経費について、損害賠償請求権がある旨主張する。しかしながら、原告の帰責性については、前記(1)のとおり、被告の帰責性といわば競合するものとみるのが相当であって、原告において、債務不履行責任を生ずるような帰責事由があるものと認めることはできないというべきである。
 なお、上記の社内経費については、原因行為と損害発生との間の因果関係自体を認めることができず、失当である。
 したがって、被告の相殺の抗弁の主張は、失当である。
7 結論
 以上のとおりであるから、原告の被告に対する本件各契約に基づく未払対価請求としての主位的請求その1は、金3327万円及びこれに対する平成18年11月15日から支払済みまで6分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり(なお、遅延損害金については、本件シーンデータが出来型としての引渡しであり、少なくとも、「納入物T」、「納入物U」又は「納入物V」として「引渡し完了日」までに引き渡されたとはいえないことから、請求の意思が明らかな訴状送達の日の翌日から起算することが相当である。)、原告の被告に対するその余の主位的請求その1、本件追加作業に係る対価請求としての主位的請求その2及び著作権及び著作者人格権に基づく差止請求としての予備的請求は、いずれも理由がない。
 よって、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第47部
 裁判長裁判官 阿部正幸
 裁判官 平田直人
 裁判官 瀬田浩久
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