判例全文 | ||
【事件名】「フラッシュ」の橋下弁護士直撃取材事件 【年月日】平成20年7月17日 大阪地裁 平成19年(ワ)第8101号 損害賠償請求事件 判決 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 被告らは、原告に対し、連帯して30万円及びこれに対する平成19年6月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の要旨 本件は、原告が、テレビ局社屋から出てきて、タクシーに乗り込む際に無断で写真撮影されたこと等について、取材方法としての社会的相当性を逸脱する行為であり、これにより原告の肖像に関する人格権ないし人格的利益を侵害されたとして、被告株式会社光文社(以下「被告会社」という。)及び同社の雑誌記者である被告Aに対し、不法行為(被告会社については使用者責任)に基づいて、連帯して慰謝料30万円の支払(上記不法行為の日である平成19年6月19日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を含む。)を求める事案である。 第3 前提となる事実(争いのない事実及び証拠上容易に認められる事実) 1 当事者 原告は、大阪弁護士会に所属する弁護士である。 被告会社は、出版業等を目的とする株式会社であり、被告Aは、被告会社発刊の雑誌「FLASH」(以下、単に「FLASH」という。)の記者である。 2 被告A及び同行のカメラマンは、平成19年6月19日午前11時40分ころ、大阪市B区CD―E―F所在の讀賣テレビ放送株式会社(以下、単に「読売テレビ」(略字を用いる。)という。)関係者通用口の車寄せ(以下「本件車寄せ」という。)において、原告が同社屋通用口から出てきた際、原告の容貌を複数回写真撮影する等した(以下、撮影行為を「本件撮影」といい、上記撮影を含む上記取材行為を「本件取材」という。)。 3 本件取材は、FLASH内の企画の一つとして、平成15年10月5日に原告がTBS(東京放送)の「サンデージャポン」という生放送番組で行った発言についてのものであったが(乙1)、同取材に当たって、事前に原告(ないし原告側)の同意は得ていなかった。 第4 争点 1 不法行為の成否(本件撮影を含む本件取材が原告の肖像に関する人格権ないし人格的利益を侵害する違法性を有するのか。) 2 損害の発生及びその額 第5 争点に対する当事者の主張 1 争点1について (原告の主張) 原告は、本件取材によって肖像に関する人格権ないし人格的利益(以下、単に「肖像権」と略称する。)を侵害されたものであるところ、この点、最判平成17年11月10日(民集59巻9号2428頁)は、「人は、みだりに自己の容ぼう等を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有する」とした上で、「もっとも、人の容ぼう等の撮影が正当な取材行為等として許されるべき場合もあるのであって、ある者の容ぼう等をその承諾なく撮影することが不法行為法上違法となるかどうかは、被撮影者の社会的地位、撮影された被撮影者の活動内容、撮影の場所、撮影の目的、撮影の態様、撮影の必要性等を総合考慮して、被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを判断して決すべきである。」と判示しているが、上記基準に照らしても、以下のとおり本件取材の違法性は明らかであり、不法行為を構成する。 (1) 被撮影者の社会的地位及び活動内容 原告は、本件取材当時、大阪弁護士会所属の弁護士であり、テレビ番組等に多数出演しており、その発言には相応の影響力があったとすれば、「公的存在」ないし「有名人」であったことは否めない。 しかしながら、原告が「公的存在」ないし「有名人」であったからといって、それだけで本件撮影行為の違法性が完全否定されることにはならないし、また、原告は当時公職ないし公職の立候補予定者等の強い公的性を有していたわけではない。 (2) 本件取材の態様 被告Aは、原告が読売テレビの関係者専用通用口から出てくるのを見つけるや、何の事前依頼もなく、原告に向かって「Gさん。」等と連呼して走り寄り、同時に同行するカメラマンとともに、原告の目の前に立ちはだかり、業務用の一眼レフカメラでフラッシュをばんばんたいていきなり原告の姿態を複数回撮影した。原告がタクシーに乗り込んだ後も、カメラをタクシーの窓にへばりつかせて執拗に写真撮影を続けた。 原告は、テレビ出演を終えて通用口から出てきたばかりであり、仕事を終えほっとしている反面、次のスケジュールのため移動しようとしていたところであるが、かかる状況下で、いきなり目の前で業務用ストロボをたかれてフラッシュ閃光に曝され、困惑・威圧感を感じるとともに、非礼で常識外れであると憤りを感じた。かかる挙動は、原告の意思を制圧してでも、無理矢理に取材・撮影を敢行せんとするものといわざるを得ず、また、これにより、原告は写されたくない表情を撮影されたというだけでなく、周囲の第三者に対しても不信感を与え得るものであった。 しかも、本件取材にあたっては、原告側はもちろん、読売テレビにも何ら事前の取材依頼がなかった。 以上のような本件取材は、社会生活上受忍の限度を超え、行き過ぎたものであり、非礼というほかない。 (3) 本件取材の場所 ア 本件取材の場所は、読売テレビの通用口を出た辺りの本件車寄せであるところ、同場所は読売テレビの敷地内(私有地)であり、被告A及びカメラマンは同敷地に無断侵入しているのである。 しかも、同場所は、写真撮影が禁止されていた場所であったのであるから、本件取材は多分に違法であるというべきである。 イ これに対し、被告らは、本件取材場所である本件車寄せについて、読売テレビの社屋内ではなく、いわゆる玄関の車寄せの場所であって、一般人の往来も十分可能な場所であり、取材場所として相当な場所であったかのように主張する。 しかしながら、本件車寄せのある通用口は、警備員監視下のもと、関係者等の利用に限定されており、一般人の往来が可能であるなどとはいえず、また、敷地内無断立ち入り禁止の看板も立っていることに鑑みれば、被告Aらは不法「侵入」して、本件取材を実施したものであり、被告らの主張は理由がない。 (4) 本件取材の目的 被告らは、本件取材の目的が、公共的に影響力のある原告が以前にした失言についての真意及びその後の社会的影響並びに原告自身に対する影響を問うとともに、失言の内容についての現在の意見を問うことにあった旨主張する。 しかしながら、本件のような事前依頼もなく、かつ、移動する際のごく僅かの間隙に上記(2)記載のような態様による取材をすることで、果たして上記のような目的を達し得たといい得るのかは極めて疑問である。 この点、被告Aにおいて「とにかくそのときの、その現時点でのGさんの反応というのかな、その部分が必要だったんですね。」と供述するように、なんでもよいので原告の表情及び反応を撮影したかっただけなのであって、失言についての真意及びその後の社会的影響等などどうでもよく、上記のような表情を撮影し、それらの写真をもとにして、おもしろおかしく記事を書き立てることしか考えていなかったのである。 また、実際に発売されたFLASHの記事内容を見ても、おもしろおかしく読者の興味に訴えかけることに心血を注いだ内容であるといわざるを得ない。すなわち、FLASHは、質問内容なんてどうでもよく、被撮影者の困惑した表情とか、取り乱した反応とかを撮影したいだけなのである。そして、そのようにして得られた写真をもとにして、おもしろおかしく記事を書き立てたいだけなのである。 仮に百歩譲っても、被告らの主張するような目的があったにせよ、撮影目的の過半部分は営利目的であったというべきであって、被告らの主張するような目的は、あくまでも副次的な目的にすぎなかったというべきである。 (5) 本件撮影の必要性及び緊急性 仮に本件撮影の目的が、被告らの主張するように、失言についての真意及びその後の社会的影響並びに原告自身に対する影響等を問うことにあったとするのであれば、肖像(原告の容ぼう)は要らないはずであるし、仮に肖像を用いるにしても、昔の肖像を用いれば十分である。 また、失言についての真意及びその後の社会的影響並びに原告自身に対する影響等を汲み取り得る表情を撮影したかったのであれば、まずは、原告に対し挨拶をし、撮影の趣旨説明をし、礼儀を尽くした上で撮影するべきであった。 いずれにせよ、必要性及び緊急性は皆無である。 (被告らの主張) (1) 被撮影者の社会的地位及び活動内容 原告は、本件撮影当時、弁護士であったところ、弁護士という職業は、いわゆる単なる私人という立場にとどまるものではなく、弁護士法により、一定の法律事務を独占的に行うことが認められている上、基本的人権を擁護し、社会的正義を実現することを使命とするものであり、単なる私人という立場を超え、社会において公的な意味を有する存在である。 しかも、原告は、本件取材当時、弁護士として活動するのみならず、数々のテレビ番組にコメンテーターとして出演し、光市母子殺人事件等をはじめとする事件や政治問題等について多数論評し、極めて著名な存在になっていたものであり、本件撮影当時においても、原告が参議院議員に出馬するのではないかとの情報も流れる程であったのであるから、その活動内容、発言内容及び発言の真意については、極めて重大な国民の関心事になっていたものである。 (2) 本件取材の場所 本件取材は、読売テレビの敷地内ではあるものの、施設外からも見通せる場所で、かつ、多くの人が出入りする玄関の車寄せ部分である。 上記場所については、現にこれまで多数の報道において同様の場所での取材及び撮影がなされているのである。 したがって、原告のようにテレビ番組に多数出演してコメントを述べている人物については、テレビ局の車寄せ部分において取材が行われる可能性については当然予想され得るものであり、特段取材や撮影場所として不相当な場所ではない。むしろ、原告の失言がまさにテレビ番組においてなされたものである以上、原告の芸能界での活動とは無関係な顧客も多数存在する原告の法律事務所や原告の自宅等よりも適切な場所であったといい得るし、また、公道等に比しても原告にとって穏当な場所で取材及び撮影をしたものである。 なお、原告は、本件取材場所がテレビ局の敷地内であることを強調するようである。 しかしながら、そもそも本件取材を行ったのはテレビ局に対してではなく原告に対してであるところ、上記場所は原告の私有地というわけではなく、多数の第三者も存在する場所である以上、原告にとっては公道等でなされたものと何ら変わることはないというべきである。 しかも、本件取材の間、テレビ局の警備員は全く取材を気にするそぶりもなく、何の注意ないし指摘もしていないのであり、本件車寄せにおいて取材を行うことが日常的に行われていたことを示しているというべきである。 (3) 本件取材の目的 本件取材は、原告のテレビ番組内においてなされた失言についての真意及びその後の社会的影響並びに原告自身に対する影響についての取材の一環として行われたものであって、国民の重大な関心事として、大きな社会的な価値を有するものである。 すなわち、原告は、TBS系の全国放送の番組である「サンデージャポン」という報道バラエティ番組において、日本人団体による中国広東省珠海市での集団買春騒動についての報道に関し、「日本人による買春は中国へのODAみたいなもの」と発言したものであるが、かかる発言は、人権上極めて問題の大きい発言であり、高い公共性と知名度を有している法曹としてあるまじきものであるだけではなく、その社会的影響力も極めて大きいのであるから、その真意とその後の影響について取材をすることは、何ら不当なものではないし、公共性も極めて大きいものであり、また、その取材の様子について撮影を行うことも、また極めて正当な目的というべきものである。 (4) 本件取材の態様 本件取材は、読売テレビの敷地外の車寄せの外側のところで原告を待っていた被告Aが、原告が同テレビ局玄関から出てきたので、原告に声をかけながら近づき、その様子を後からきたカメラマンが撮影したものである。そして、被告Aが自身の身分を明かした上で取材の趣旨を説明したところ、原告のマネージャーから取材を拒否されたものである。その際、被告Aは、原告のマネージャーと名刺を交換している。 この一連のやりとりは数分程度であるが、その際原告がカメラを遮ったり避けたりする様子はなかったし、また建物内に戻るようなこともなかった。当然のことであるが、原告が乗車している車を強制的に停止させたり、体を掴むなどの行動をしたこともなかった。 このように、本件取材は極めて穏当な対応で、およそ威圧感や恐怖感を与えるようなものとはいえない。 (5) 本件撮影の必要性及び緊急性 本件撮影の目的は、前記(3)記載のとおりで公共性が極めて高いものであるところ、その取材の際に話をしたことやその話の内容が真意に基づくものであることを明確に示すために、取材中の写真を撮影したものである。 したがって、記事内容の真実性を担保する意味においても、本件撮影の必要性は極めて高いものである。 なお、原告は、今回改めて撮影する必要はなく、以前公開されたものを使用すれば足りる旨主張する。 しかしながら、以前公開されたものを使用するのであっても、現在撮影したものを使用するものであっても、公開された場合、肖像権侵害との関係では何ら違いがあるものではなく、原告の主張自体失当といわざるを得ない。 2 損害の発生及びその額 (原告の主張) 前記1の原告の主張記載のとおり、本件取材は違法であり、同取材に伴う撮影等により、原告は社会生活上の受忍限度をはるかに超える精神的苦痛を受けた。 かかる苦痛に対する慰謝料は30万円を下らない。 (被告らの主張) 否認ないし争う。 第6 当裁判所の判断 1 認定事実 前記第3の前提となる事実、証拠(甲1、3の1ないし5、4、8、10、12、乙1、4、11、原告本人、被告A敦)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 (1) 原告は、大阪弁護士会に所属する弁護士であり、また、本件取材当時、タイタンという芸能事務所にマネージメントを依頼し、相当数のテレビ番組等に出演し、時事問題等についてコメントする等していた。 (2) FLASHでは、政治家、芸能人等の過去の失言について、その失言によるその後の影響及び現在の意見等を記事として掲載することとし、原告については、平成15年10月5日に同原告がTV番組内でした「日本人による買春は中国へのODAみたいなもの」という発言を取り上げることとし、被告Aが担当することとなった。なお、同発言により、原告は同番組を降板した。 被告Aは、原告に対し事前に取材依頼をしても、その取材内容からすると原告から断られる可能性があると考えたこと、また、事前に取材内容を知らせてしまうと、原告側で準備されてしまい、原告の率直な生の意見を聞けなくなる可能性が高いと考え、事前の取材依頼をせず、いきなり取材を敢行することとした(「直撃」という取材方法)。また、その取材を受けた際の困惑ないし驚愕を含めた原告の表情が撮影できれば、ドキュメンタリー性が高まるなどと考え、同時に写真撮影をすることとした。 (3) 被告A及び同行のカメラマンは、平成19年6月19日午前11時40分ころ、読売テレビ関係者通用口の敷地外で、上記取材をすべく、番組の収録を終えて出てくる原告を待っていた。 被告Aは、原告が上記通用口から出てくるのを見かけるや、「Gさん。」と声をかけながら、同行のカメラマンとともに読売テレビの敷地内の本件車寄せまで駆け寄り、同時に同カメラマンにおいて一眼レフカメラでフラッシュをたきながら複数回原告を写真撮影した。 (4) 原告は、被告Aと応対することなく、タクシーに乗り込んだが、その後も原告に対する写真撮影は継続された。被告Aは、原告のマネージャーに対し、取材の趣旨を説明し、同時に同マネージャーと名刺交換をした。 原告のマネージャーは、取材を中止してほしい旨伝え、被告A及び同行のカメラマンはこれに応じ、取材及び撮影を止めた。 (5) FLASHでは、平成19年7月10日・17日号において、「その後どーなった!?み〜んな直撃したッ」「有名人100発失言大追跡!」と題する特集記事(以下「本件特集記事」という。)を組んだが、原告に関する記事及び写真は掲載しなかった。 同特集記事では、原告のケースと同様に「直撃」という方法によって、取材時に撮影した写真を用いたものがある一方で、過去の写真を用いたものもあった。 2 当裁判所の判断−争点1について (1) 人は、その承諾なしに、みだりにその容ぼう、姿態(以下「容ぼう等」という。)を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的利益を有すると解される。もっとも、人の容ぼう等の撮影が正当な取材行為等として許されるべき場合もあるのであって、ある者の容ぼう等をその承諾なく撮影することが不法行為法上違法となるかどうかは、被撮影者の社会的地位、撮影された被撮影者の活動内容、撮影の場所、撮影の目的、撮影の態様、撮影の必要性等を総合考慮して、被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを判断して決すべきである(最判平成17年11月10日判決・民集59巻9号2428頁)。 (2) これを本件についてみるに、前記1認定のとおり、本件取材は原告に何の事前連絡もなく、いきなり取材を実施する「直撃」と称するもので、また、その取材(撮影)態様も、番組の収録を終えてテレビ局から出てきたばかりの原告に対し、「Gさん」と声をかけながら、いきなりフラッシュをたきながら複数回写真撮影を敢行し、原告のマネージャーに中止を申し入れられるまで撮影を継続した等というものであり、原告にとってみれば、問答無用の形で撮影をされたという感覚を持つとともに、かかる取材方法に対し、戸惑いのみならず憤りを覚えたであろうことは至極もっともである(原告がその日のうちに本件を提訴していることからも、その点が十分窺われるところである。)。 しかしながら、一方で、原告は、本件当時、弁護士として相当数のテレビ番組等に出演し、時事問題等についてコメントする等しており、全くの一私人とは立場を異にしていたというべきであり、その言動については相当程度の社会的影響力があったと考えられる。また、その取材目的も、原告が平成15年10月5日にTV番組内でした「日本人による買春は中国へのODAみたいなもの」とする発言に関するものであるところ、かかる発言が本件当時から約3年8か月前になされたものであるとはいえ、その発言内容や原告の上記社会的地位及び活動内容等に鑑みれば、その真意や現在の意見等を取材するという目的は、原告の主張するように専ら読者の興味をそそり、又は、営利目的に出ただけのものなどということはできず、相応の合理性及び公共性を有するものというべきである。 ただ、本件取材目的を達するために本件撮影をする緊急性・必要性があったかどうかについては、現に本件特集記事において過去の写真が使われた例も相当数あることや、上記発言が3年8か月以上も前になされたものであること及び上記取材目的に照らしても、原告に取材目的を告げる前に(あるいはそれと同時に)、原告が眩しいと感じる程にフラッシュをたきながら複数回写真撮影をする必要がいかほどあったのかは疑問を呈さざるを得ず、単に被写体である原告が困惑したり、驚愕する表情を撮影し、これを紙面に掲載することで読者の関心ないし好奇心を引くという意味合いが多分に強いものであったというべきである。 しかしながら、一方で、被告Aが供述するように、かかる状況により撮影された写真を添付することにより、記事にドキュメンタリー性をもたせるという側面も写真週刊誌等の媒体における表現方法として一概に否定できないところもあり、また、本件取材(撮影)の時間及び場所に照らしても原告との関係では著しく相当性を欠くとまではいえず(原告の主張する「撮影の禁止された他人の敷地内」という撮影場所については、読売テレビとの関係で違法行為となるか否かは格別としても、原告との関係では公道その他のオープンスペースでの取材と格段の差異があるとまではいい難い。)、さらには、前記のとおりの原告の社会的地位及び活動内容並びに取材目的に照らせば、このような撮影方法が「非礼」なものであることは格別としても、原告にとって社会生活上受忍限度を超えるであるとか、あるいは、金銭的慰謝の措置を講じるだけの違法性を有するものとまでいうことは相当ではない。 (3) 以上検討したところによれば、原告においては、本件取材、ことに本件撮影により相当の憤りを覚えたことは想像に難くはないものの、一方で、原告の当時の社会的地位及び活動内容並びに本件取材の目的及び必要性等に鑑みれば、本件撮影を含む本件取材によって、社会生活上受忍の限度を超えるだけの人格的利益の侵害が原告に生じたとまでいうことはできない。 3 結論 以上によれば、原告の請求はその余の点を判断するまでもなく、理由がないので、これを棄却することとする。 大阪地方裁判所第19民事部 裁判官 澤田忠之 |
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