裁判の記録 line
line
2016年
(平成28年)
[1月〜6月]
line

 
line
1月12日 ニンテンドーDSソフトのコピー機(マジコン)事件B(3)
   最高裁(三小)/決定・上告棄却、上告不受理(確定)
 ニンテンドーDSで起動するマジコンと呼ばれる装置を輸入販売していた業者に対する任天堂の訴訟について、任天堂は2013年7月9日付けで東京地裁が下した、マジコンの輸入販売行為の差し止めと総額5962万5000円の損害賠償金支払いを命じる判決が確定したと発表した。この裁判は一審判決に対して一部の被告から控訴がなされたが、知財高裁は2014年6月12日判決で控訴を棄却、更に一部の控訴人から上告並びに上告受理の申し立てが行われたが、最高裁(3小)は1月12日付けで、上告を棄却し上告審として受理しない決定をしたもの。

line
1月14日 類似“加湿器”の不正競争事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 加湿器の開発者であるプロダクトデザイナー(原告ら)が、家電輸入卸会社と雑貨店(被告ら)に対して、被告商品の形態は原告加湿器の形態に依拠しこれを模倣したものであるとして、被告らによる被告商品の輸入及び販売は著作権侵害および不正競争に当たるとして、輸入等の差し止めと損害賠償金各120万円の支払いを求めた事件。当該加湿器はスティック型をしており、原告作品は試作品として展覧会に出展された。
 裁判所はまず原告加湿器の「商品」該当性を検討し、これらが市場における流通の対象になるものとは認められないとして、不正競争防止法にいう「商品」に当たらないと判断した。次にその著作物性を検討、実用性を離れて見た場合に美的鑑賞の対象となり得るような創作性を備えていると認めることはできないとして、著作物性を否定し、請求を棄却した。
判例全文
line
1月18日 KDDIへの発信者情報開示請求事件F
   東京地裁/判決・請求認容
 池田名誉会長の写真(本件写真)の著作権を有するとする宗教法人・創価学会(原告)が、氏名不詳の投稿者によりKDDI(被告)の提供するインターネット接続サービスを経由して、ネット上のウェブサイト「NAVERまとめ」に投稿された記事に掲載された同会長の写真は、本件写真を複製したものであって、原告の著作権を侵害しているとして、被告に対し、本件投稿者に対する損害賠償請求権の行使のためにその発信者情報の開示を求めた事件。
 被告は本件投稿者の行為によって原告の著作権が侵害されたことは明らかだとは言えないと主張したが、裁判所は本件写真の著作物性と原告の著作権保有を認定し、本件投稿者による著作権侵害を認めて、被告に対し、投稿者の発信者情報を開示するよう命じた。
判例全文
line
1月19日 トラベル管理ソフト「旅行業システムSP」事件(2)
   知財高裁/判決・変更
 一審原告会社に吸収合併される前の訴外会社(旧原告会社)が著作権を有するデータベース部分(原告DB)を含む旅行業者向けシステム「旅行業システムSP」に関し、その開発を担当した旧原告会社の社員であった一審被告Y2、Y3、Y4、Y5、Y6らが、旧原告会社を退社後、一審被告Y1とともに一審被告会社を設立または同社に入社して、検索及び行程作成業務用データベース(被告DB)を含む旅行業者向けシステムを製作販売したのは、原告DBの著作権を侵害するものであるとして、被告DBの複製、翻案、頒布、公衆送信の差し止めと収録媒体の廃棄、および損害賠償金9億1037万円余の支払いを求めた事件。一審東京地裁は原告DBの著作物性を認め、被告DBが原告DBに依拠して作成された複製物ないし翻案物と認めて、被告に対し、被告DBの複製、頒布、公衆送信の差し止めと収録媒体の廃棄、および損害賠償金1億1215万円余の支払いを命じたが、原被告双方が控訴した。
 知財高裁は、一審では否定された被告CDDB(新版)の著作権侵害を肯定して一審判決を変更し、被告CDDB(新版)をも差し止め及び廃棄等を命じる対象に加え、また被告らの損害賠償金支払い額を合計5億502万円余とした。
判例全文
line
1月21日 NHKスペシャル「アジアの一等国」集団提訴事件(3)
   最高裁(一小)/判決・破棄自判(確定)
 日本の台湾統治を検証した番組によって名誉を傷つけられたとして、出演した台湾人女性や視聴者がNHKに損害賠償を求めた事件。2009年4月5日に放送されたNHKスペシャル「シリーズJAPANデビュー」の第1回「アジアの一等国」に対し、台湾人を含む全国の視聴者約8400人が「事実と異なる偏向報道だ」として一人当たり1万円の慰謝料を求める訴えを起こし、その後訴訟委任状や、出演した台湾原住民女性らを含む二次提訴を合わせて1万人以上が原告となった。一審東京地裁は平成24年12月、請求をすべて棄却したが、台湾原住民族37名と日本人原告団5人に控訴人を変更した控訴審では、東京高裁は一審判決を破棄、「番組で祖先を動物扱いされた」と主張していた番組出演の原住民女性1名に対する名誉毀損を認め、100万円の支払いをNHKに命じた。これに対してNHKが上告していた。
 最高裁(1小)はNHKの主張を認め、二審判決の上告人敗訴部分を破棄して被上告人の控訴を棄却し、一審判決が確定した。
判例全文
line
1月21日 「怪獣ウルトラ図鑑」復刻版事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 昭和43年にA社より発行された『カラー版怪獣ウルトラ図鑑』を被告出版社が平成24年に復刊した。この書籍にイラストが掲載されているイラストレーターの一人(原告)が、被告による本件書籍の複製等が原告の著作権および著作者人格権を侵害すると主張して、被告に対し、本件書籍の複製の差し止め及び廃棄と、損害賠償金737万円の支払いを要求した事件。
 裁判所は、被告による原告へのイラスト使用料振込先問い合わせに原告が答えていることなどから、原告は本件書籍の発行を承諾する意思表示をしていたと判断した。また、目次の脇にはイラストレーターとしての原告名が記されているものの、個々のイラスト掲載箇所に原告名が記されていないという原告の主張に対しては、全イラストレーターに対して同じ扱いをしていることや、本件書籍の表示方法はA社の原書籍と同一であることなどから著作者人格権侵害性も否定して、請求を棄却した。
判例全文
line
1月22日 催眠術DVDの“オマケ”事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 「催眠術の掛け方[専門版]自己催眠編」というDVDを制作した原告と、その著作権を譲り受けDVDを販売した原告会社が、被告がそれを無断で複製し販売して原告会社の著作権を侵害し、名誉声望を害する方法で利用して原告の著作者人格権を侵害したと主張して、163万円余の損害賠償金支払いと、謝罪広告の掲載を求めた事件。被告は精神工学研究所の中古DVDをインターネットオークションサイトに出品するに際して本件DVDの複製を「オマケとして」抱き合わせていた。
 裁判所は、原告が被告による無断複製物を手に入れるために出費した3万448円を原告の損失であると認定して被告にその額の支払いを命じたが、被告によるオークションサイトへの出品方法は原告の社会的評価を低下させる行為だとは言えないとして、著作者人格権のみなし侵害は否定した。
判例全文
line
1月26日 美川憲一氏の事務所独立事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 歌手・芸能人の美川憲一氏(一審被告)と専属契約を結んでいた芸能プロダクション(一審原告)が、被告が一審被告会社(被告が代表)と共に一方的に契約を破棄して独立したことによって被害を被ったとして、債務不履行による損害賠償金1億3500万円余、衣装と譜面の持ち出しによる所有権侵害の賠償金5100万円余、原告が著作権を有する衣装の著作権侵害予防請求として衣装の複製・展示等の差し止め、原告が著作権を有する譜面の著作権侵害予防請求として譜面の複製・演奏等の差し止め、被告への貸金返還請求300万円および立替金返還請求324万円余、被告会社への貸金返還請求1000万円および立替金返還請求776万円余を、それぞれ求めた事件。一審東京地裁は原告は被告の独立に同意していたと判断して債務不履行を否定、また所有権侵害等も否定して原告の請求を棄却したが、原告が控訴した。
 知財高裁は、移籍金の支払い合意の成立を裏付ける事情の検討などを加えた上で、原審の判断を維持し、控訴を棄却した。
判例全文
line
1月27日 上林暁作品集の編集著作権事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 戦後を代表する私小説家・故上林暁の「同人誌時代の創作から晩年の随筆まで、新発見原稿を含む、全集未収録作品125篇」を集めた書籍『ツェッペリン飛行船と黙想』に関して、その刊行に協力し、解説を執筆した著作者の孫(著作権者の一人である長女の子供・一審原告)が、本件書籍は編集著作物であり、原告がその編集著作権者であるとして、発行元の出版社(一審被告)に対し、本件書籍の複製および販売は原告の編集著作権および著作者人格権の侵害であるとして、複製・販売の差し止めと書籍等の廃棄、損害賠償金238万円の支払い、および謝罪広告の掲載を求めた事件の控訴審。被告は長女ら著作権者に印税を、原告には解説の原稿料を支払っていた。
 一審東京地裁は原告が本件書籍の編集著作権者とは認められないとして請求を棄却したが、原告が控訴した。
 知財高裁は本件書籍の編集著作物性を検討し、収録作品の選択においては編者の個性が表れているとまでは言えないとしながらも、その分類配列においては編者の個性が表れており編集著作物に該当すると判断した。次にその配列に関して創作性を有する行為を行った者について検討し、これを被控訴人と認定して、控訴人の編集著作者性を否定した。また本件書籍が編集著作物ではないとされた場合に備えて控訴人が予備的に主張した編集契約違反等も理由がないとして退け、控訴を棄却した。
判例全文
line
1月29日 ニフティへの発信者情報開示請求事件
   東京地裁/判決・請求認容
 「風水」に関するコンサルタント及び執筆活動を行っている原告が、氏名不詳者がウェブサイト「2ちゃんねる」上のスレッド「風水考」に記載している情報は、原告の「風水」や「五術」に関するブログの記事を改変して無断掲載したもので、原告の著作権および著作者人格権を侵害しているとして、氏名不詳者が情報を発信するインターネット接続サービスを提供していたニフティ(被告)に対して、「プロバイダ責任制限法」に基づき、発信者情報の開示を求めた事件。
 裁判所は原告の記事の著作物性を認め、引用ややむを得ない改変であるという被告の主張を排して、氏名不詳者情報の著作権侵害性および著作者人格権侵害性、更に原告名誉権・名誉感情侵害性を認め、被告に発信者情報の開示を命じた。
判例全文
line
2月8日 学習教材「でき太」事件
   大阪地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 算数・数学のプリント教材を開発・作成してその著作権を有する原告会社と、原告商標の商標権者である原告P1(原告会社の代表者)は、以前にP2との間で学習塾向けに同教材の販売を委託する契約を結び、また同教材を複製して原告商標と同一ないし類似の商標を付して一般家庭に販売することを許諾する契約を締結していたが、P2による債務不履行行為又は信頼関係破壊行為を理由としてその契約を解除した。この契約解除後のP2およびP2の事業を継承した被告会社(P2が代表者)による同教材の販売行為は、原告らの著作権侵害および商標権侵害に当たるとして、原告らが被告に対し、教材販売の差し止め等と原告らに合わせて831万円の損害賠償金支払いを求めた事件。
 裁判所は、被告による著作権侵害と商標権侵害を認め、教材販売の差し止め等を認めたが、損害額については原告会社に著作権侵害の1001万円余+弁護士費用75万円、P1に商標権侵害の弁護士費用のみ30万円とした。その上で原告らの請求した831万円をこの比率で按分して、原告会社に対し808万円余、原告P1に対し22万円余の支払いを命じた。
判例全文
line
2月10日 職務発明文書の著作権帰属事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却、交換的変更請求棄却
 ソフト開発会社(一審被告)の元従業員(一審原告)が、在職中に作成した研究開発に関する文書ないしプログラムの著作権等の権利は原告が有することの確認と、所有権に基づく文書類の返還を求めた事件の控訴審。一審東京地裁はこれらを職務著作であり著作権は被告が有すると判断したが、原告が原判決不服として返還要求部分を変更して控訴した。
 知財高裁も原審判断を維持、職務著作の成立を肯定し、控訴を棄却した。
判例全文
line
2月16日 住宅設備カタログの著作物性事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 米国コーラー社のキッチン周り等の製品の日本正規販売代理店(原告)が、原告が制作したカタログを他の国内販売代理店(被告)が無断流用したとして、被告に対して、著作権侵害並びに著作者人格権侵害を主張して1000万円の損害賠償金支払いを請求した事件。被告は被告カタログを制作する際に、原告カタログを参考にしたことは認めている。
 裁判所は、編集物における原告の編集著作権と被告による複製を認め、また文章表現や図表についても、いくつかを除いて複製に当たると判断、人格権侵害も認めた。その上で損害額をそれぞれ120万円、30万円と認定、弁護士費用と合わせ、合計180万円の支払いを命じた。
判例全文
line
2月16日 ジャズCDの委託契約事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 スタンダードジャズのCDをめぐって、そのレコード製作者である原告会社及び収録楽曲の実演家であり原告会社の代表でもある原告Xが、本件CDの製造販売を行った被告会社AB及びその従業員(被告ら)に対して、被告らが契約外のレンタルや配信業務を行ったこと等により、(1)原告会社による被告会社Aに対する印税の支払い請求及び債務不履行に基づく損害賠償請求179万円余、(2)原告会社による被告らに対する、著作隣接権侵害等の不法行為に基づく損害賠償請求1674万円余、(3)原告会社による被告らに対する、実演家人格権侵害、名誉権侵害等の不法行為に基づく損害賠償630万円、(4)原告会社による被告会社ABに対する、名誉回復措置としての本件CDの販売と謝罪広告の掲載、を要求した事件。
 裁判所は、(1)については原告会社に50万円余の支払い請求権と損害賠償請求権を認め、(2)については被告会社ABに隣接権侵害及び侵害についての故意過失があったとして、原告会社に対する7077円の支払いを命じ、その余の請求を棄却した。
判例全文
line
2月17日 「トムとジェリー」の日本語版DVD事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却、附帯控訴棄却、被附帯控訴却下
 有限会社アートステーション(一審原告)が、株式会社メディアジャパン(一審被告会社)とその社の代表取締役(一審被告A)に対して、被告らが製造・輸入・販売している「トムとジェリー」30作品のDVD商品は、著作権保護期間の経過した外国映画に原告が日本語音声及び字幕を収録し直した、原告が著作権を有する作品の複製であり、原告の著作権を侵害しているとして、被告らに輸入、複製、販売の差し止めと損害金405万円の支払いを求めた事件の控訴審。被告らは原告と被告会社との間に共同事業の合意があり、当該DVDの著作権も共有していると主張したが、一審東京地裁は共同事業合意の成立を認めず、被告会社が著作権を侵害しているとして、被告Aについての請求は退け、被告会社に輸入、複製、販売の差し止めと、15万円余の支払いを命じた。被告会社が控訴した。
 知財高裁は一審の判断を維持して、控訴を棄却した。
判例全文
line
2月24日 「生命の實相」復刻出版事件C(2)
   知財高裁/判決・変更、附帯控訴棄却
 亡Aの創始した宗教団体「生長の家」をめぐる事件。生長の家の宗教的理念に基づき社会厚生事業を行う公益財団法人(一審原告事業団)と一審原告出版社が、亡Aの執筆した多数の論文を分類してまとめた本件著作物1と亡Aの長編自由詩である本件著作物2について、原告事業団が著作権を、原告出版社が出版権を有するとして、亡Aの著作物を出版する一審被告出版社の出版する被告書籍1と、1審被告宗教法人・生長の家が作成した被告書籍2の出版は、それぞれ原告らの著作権および出版権を侵害するとして、被告書籍1・2の複製・頒布の差し止めと、原告それぞれに対する賠償金50万円の支払いを求めた事件。一審東京地裁は、被告書籍1および2による著作権侵害を認め、複製・頒布等の禁止と在庫の廃棄、および被告出版社に原告出版社に対する20万円の賠償金支払いと被告宗教法人に原告それぞれに対する20万円の賠償金支払いを命じたが、被告側が控訴し、原告側も請求額を増額して附帯控訴した。
 知財高裁は、一審被告宗教法人の著作権侵害性に関する原審の判断を覆して、被告書籍2の著作権侵害を否定、被告書籍1に対する複製・頒布等の禁止と在庫の廃棄、および原告出版社に対する20万円の賠償金支払いを被告出版社に命じ、附帯控訴は棄却した。
判例全文
line
2月24日 データベースソフトの著作権確認事件C(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 第一次訴訟(一審2008年大阪地裁判決、二審2011年知財高裁判決)において、「中国塗料」から子会社「信友」に出向の際に中国塗料専務から「船舶情報管理システム」の作成を命じられ、その後、子会社「中国塗料技研」の社長に就任して後も、同システムの開発の続行を命じられて、当該システムを作成した中国塗料元従業員が、中国塗料に対して、このプログラム著作権が自分に属することの確認、及びこのシステムに対する自分の寄与分割合の確定を求めて提訴したが、一審で本プログラム著作物は職務著作であるとして請求を棄却・却下され、二審も同様であった。
 本訴においてこの元従業員(一審原告)は、職務著作と認定された法人側の「発意」は無効であり、職務著作は成立しないと主張して提訴したが、一審東京地裁は、この主張は一次訴訟の事実審の口頭弁論終結時点前に主張できたものであるから新たに生じた事情ではないとして請求を棄却、原告が控訴した。
 知財高裁は、原告が本件システムの著作権を有しないことは一次訴訟で確定しており、更に法人側の「発意」は無効とする原告の主張は失当であり、また一次訴訟の際に主張できたはずであるという原審の判断を維持し、控訴を棄却した。
判例全文
line
2月24日 猫の刺繍著作権侵害事件
   大阪地裁/和解
 家族のためにと白シャツの胸に手縫いで猫の姿を刺繍したところその可愛らしさが評判を呼び、遂には注文を受け付けて販売するようになった主婦が、世界的ファッションブランドからコラボの申し出を受け、無視していると当該ブランドの姉妹ブランドから刺繍の猫と同じ絵柄の描かれたハンカチが販売された。主婦が抗議したところ、ブランド側は猫の刺繍に著作権はないと応じなかったので、主婦は今年1月、国内でこのハンカチをライセンス製造・販売している会社とネットで販売している会社を相手に、大阪地裁に差し止めを求める訴訟を起こした。
 ファッションブランド側から和解の申し入れがなされ、主婦の著作権を認め、ハンカチの販売や展示を差し控えるという内容で和解が成立、主婦は訴訟を取り下げた。

line
2月25日 「神獄のヴァルハラゲート」事件
   東京地裁/判決・主位的請求棄却、予備的請求一部認容、一部棄却
 ソーシャルアプリゲーム「神獄のヴァルハラゲート」の開発に関与した原告が、本ゲームをネット上で配信するアプリ企画開発会社(被告)に対し、(1)主位的に、原告は本ゲームの共同著作者の1人であって著作権を共有するから、同ゲームから発生した収益の少なくとも6割に相当する金額の支払いを受ける資格がある旨、(2)予備的に、仮に共同著作者の1人でないとしても、原被告間に報酬に関する合意があり、仮に合意がないとしても報酬を受ける権利がある旨を主張して、被告に対し、1億1294万円余の支払を求めた事件。原告と現被告代表者は、ソーシャルアプリゲーム開発会社を共に退社した同志であり、新たな会社を立ち上げてゲームを開発、販売したが、権利を巡って対立していた。
 裁判所は、本ゲームの職務著作性および映画の著作物であるか否かを検討し、本ゲームは職務著作あるいは映画の著作物であると判断、原告は著作権を有していないとして主位的請求は理由がないとした。予備的請求に関しては、対価に関する原被告間の黙示の合意を認め、ボーナス300万円と4か月分の報酬120万円の合計420万円を支払額として認定した。
判例全文
line
2月25日 類似ジュエリーデザイン事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 ジュエリー作家である原告が、ファッションブランド事業を展開する日本法人である被告会社が輸入、販売するアクセサリー(パリでのセリーヌ2015春夏コレクションで発表されたネックレス)は、原告の制作した彫刻それ自体または指輪に接着された彫刻部分を複製したものであるから、原告の著作権及び著作者人格権を侵害しているとして、被告に対し、当該アクセサリーの輸入、販売等の差し止め及び廃棄と、損害賠償金2000万円の支払い、謝罪広告の掲載を求めた事件。原告彫刻は3センチほどの乳白色の板状材料の表面に女性の裸体前面胸腹部を表現したもの。
 裁判所は、原被告作品の構図に共通の特徴はみられるが、構図それ自体に創作性はなく、また両者が類似しているとは認められないとして、原告の請求を棄却した。
判例全文
line
2月29日 カタログ誌「マダムトモコ」事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 雑誌やポスターのデザイン等の業務を営む編集者(原告)が、婦人服の製造・販売を営む株式会社(被告)に対し、被告の発行する季刊雑誌「マダムトモコ」の編集・デザイン・レイアウト等に関する請負契約ないし継続的取引契約を一方的に解除されたとして、損害賠償金270万円余の支払いを求めた事件。被告は2008年に原告に編集等業務を委託しており、以後5年以上にわたって原告は委託業務を継続し、2013年には被告が原告に年間計画書を交付していたが、2014年に被告は原告に取引終了を通告し以後の号は原告に業務委託せずに制作された。
 裁判所は、本件に関わる契約書等による明示の意思表示がなされなかったことは争いがないことから、継続的ないし包括的な業務委託に関する黙示の意思表示の合致があったかどうかを検討、2008年以降の委託について話が交わされたことがないこと、5年の間に原告に業務委託せずに制作された号があったにもかかわらず原告は異議を述べなかったこと、2013年の年間計画書はあくまで単に予定を記したものであること、業務内容やその報酬は号ごとに取り決められていたことなどから、黙示の意思表示の合致はなかったと判断し、継続的ないし包括的な契約の存在を否定、原告の請求を棄却した。
判例全文
line
2月29日 果実酒“みみきゅ〜る”イラスト事件
   東京地裁/判決・本訴請求一部認容、一部棄却、反訴請求棄却
 インターネット通信販売事業社である被告がウェブサイトで「萌酒」を販売していたところ、イラストレーターである原告より当酒類ラベル用のイラストの売り込みがあり、参考までにと譲渡対価が記してあった。被告は原告にイラストを依頼し、原告は応えてキャラクターイラストを描き、被告はその何点かを使用、原告も更にこの販売事業に協力したが、原告に対価は支払われなかった。
 原告は、被告の依頼により制作した複数イラストの著作権を原告が被告に有償で譲渡する契約を、被告の債務不履行(譲渡対価の不払い)により解除した上で、被告に対し、(1)イラストの複製・公衆送信・譲渡等の差し止め、(2)被告管理ウェブサイトに掲載されたイラストのサイトからの削除と原画の返還、(3)損害賠償金150万5千円の支払い、(4)被告が取得したクリアファイルについて原告が支払ったイラスト印刷代3万円余の支払いを求めた。これが本訴であり、反訴は被告が原告に対し、基本合意を一方的に破棄されたとして損害賠償金179万5千円の支払い等を求めたもの。被告はこの販売事業を、原被告両者の「共同事業」であり、対価は当酒類売り上げの3%で基本合意したと主張した。
 裁判所は、譲渡契約は成立していた、被告は原告に40万円支払う義務を負っていたが債務不履行によりその譲渡契約は有効に解除された、と判断し、被告に対し、被告に渡されたイラストのうち当酒類とクリアファイルに使用されたイラストの複製物の譲渡の禁止とそのラベルとファイルの廃棄を命じ、損害金として当酒類の実際に販売された分の価格の3%即ち1万7千円余とクリアファイルの印刷代3万円余の支払いを命じた。反訴に対しては基本合意の成立を否定し、請求を棄却した。
判例全文
line
3月4日 創価学会名誉会長の写真無断投稿事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 池田名誉会長の写真(本件写真)の著作者であるとする宗教法人・創価学会(原告)が、被告個人がインターネット上の電子掲示板「Yahoo!知恵袋」に投稿した記事に掲載された写真は原告の有する著作権および著作者人格権を侵害するものであるとして、不法行為に基づく損害賠償金350万円の支払いを求めた事件。これは昨年4月の発信者情報開示請求事件判決に基づく提訴。
 被告は口頭弁論期日に出頭せず、書面も提出しなかったことから、自白が擬制され、裁判所は著作権および著作者人格権の侵害を認定、損害額合計180万円の支払いを被告に命じた。
判例全文
line
3月15日 前大阪市長VS元大阪市長 名誉毀損事件
   大阪地裁/判決・請求棄却(控訴)
  
判例全文
line
3月15日 さくらインターネットへの発信者情報開示請求事件D
   大阪地裁/判決・請求認容
 「アクシスフォーマー」という名称の健康用具を製造販売している株式会社(原告)が、インターネット上のウェブサイトに使用されるドメイン名及びそこでの掲載記事の流通によって権利を侵害されたとして、不正競争又は著作権侵害を理由とする損害賠償請求権の行使のために、ネットへの接続サービスを提供しサーバーを保有管理している被告に対して、その発信者情報の開示を求めた事件。
 裁判所は、本件サイトのASCU文字列によるドメイン名はピュニコード変換すると「アクシスフォーマー.com」となるものであり、そのサイトには原告製品に興味を持ちその購入を検討しようとしてアクセスしてきた需要者に対して、その購入意欲を損なうことを意図しているとしか考えられない内容の記事を随所に掲載しているとして、著作権侵害の判断におよぶまでもなく、原告の請求を認め、被告に発信者情報の開示を命じた。
判例全文
line
3月16日 “自炊”代行事件B(3)
   最高裁(二小)/決定・上告不受理(確定)
 小説家・漫画家・漫画原作者ら7人が、顧客の依頼で本や雑誌の内容をスキャナーで読み取り電子データ化する自炊代行業者を著作権侵害で訴えた事件の裁判で、最高裁は被告業者1社の上告を受理しない決定をした。この結果、自炊代行の違法性と業者に複製の差し止めおよび10万円の賠償金支払いを命じた一審二審の判決が確定した。

line
3月23日 類似“映画字幕制作ソフト”事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 字幕制作システム開発会社である一審原告が、同じく字幕制作ソフト開発会社である一審被告が製造販売する「Babel」というソフトは、原告の著作物であるプログラムSSTG1を複製または翻案したものであるとして、著作権侵害により被告プログラムの複製販売の差し止めと廃棄、および損害賠償金4800万円余の支払を求めた事件。一審東京地裁は、被告プログラムが原告プログラムの複製・翻案だとする根拠は認められないとして請求を棄却したが、原告が控訴した。
 知財高裁は一審同様、被告プログラムが原告プログラムの創作性を有する部分をコピーしたことを推認させるとは言えないとした上、控訴審で追加されたプログラム内1ファイルも複製されているという原告の主張に対しても当該ファイルの創作性を認めず、控訴を棄却した。
判例全文
line
3月24日 CADソフトの利用許諾事件
   大阪地裁/判決・請求認容
 建築・建設業界向けのプログラム、構造詳細設計用3D CADソフトの著作権者であるフィンランド法人のソフトウェア開発会社(原告)が、同プログラムの不正コピーを購入しコンピュータにインストールして利用した鋼構造物製作会社(被告)に対し、損害賠償金836万円を請求した事件。
 争点は、本件プログラムについての著作権侵害に故意または過失があるかであったが、裁判所は、被告の行為は著作権者である原告からの利用許諾を受けずになされたものであるから著作権侵害行為であり、被告はかつて本プログラムの古いバージョンについては原告のライセンスを受けていたから、今回のプログラム利用について許諾が必要であることは認識していたとし、被告に少なくとも過失があると判断、原告の請求を認容して、被告に賠償金の支払いを命じた。
判例全文
line
3月25日 ライブハウス生演奏事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 著作権等管理事業者であるJASRAC(原告)が、ライブハウス経営者とロックバンドドラマー(被告ら)に対し、ライブバー「X.Y.Z→A」を被告らが共同経営しているところ、被告らが原告との間で利用許諾契約を締結しないまま同店内でライブを開催し、原告が管理する著作物を演奏させていることは著作権侵害に当たるとして、著作物使用の差し止めと、損害賠償請求ないし不当利得返還請求として703万円余の支払い、更に将来も被告らの不法行為が継続することは明らかだとして、口頭弁論終結以降使用終了まで月6万円余の使用料相当額の支払いを求めた事件。
 被告らは、演奏主体は出演者であってライブハウス側ではない等と主張したが、裁判所は被告らを演奏主体と認め、その他の被告らの主張も退けたが、原告の将来請求は却下して、被告らに対し、著作物使用の差し止めと、損害額または不当利得額283万円余の支払を命じた。
判例全文
line
3月29日 「中日英ビジネス用語辞典」の増刷印税未払い事件
   東京地裁/判決・請求一部却下、一部棄却(控訴)
 被告である出版社ジャパンタイムズ社から出版された『中日英ビジネス用語辞典 会計・金融・法律』の編著者である原告が、被告との間で締結した本件書籍の出版契約に基づく印税が未払いであるなどと主張して、被告に対し、(1)本件契約に基づく印税140万円の支払い、(2)被告による印税の過少申告という不法行為に基づく損害賠償金1080万円の支払い、(3)本件契約第17条に係る文言に対する原告の解釈が正しいことの確認、(4)本件契約第18条に規定する発行部数を証する証拠書類の保存期間を規定日よりさらに2年間延長すること、を求めた事件。
 裁判所はまず(3)(4)の請求に対し、(3)は裁判所にこの判断を求めるのは不適格であるとして、(4)は原告が法律的な請求原因を具体的に示していないので請求の特定を欠くとして、ともに却下した。その上で(1)については、増刷を裏付ける証拠は見当たらないので、印税の支払い時期は平成28年5月16日になるとして、また(2)については、本件書籍の印刷部数ないし実売部数を実際よりも低く伝えたことを認めるに足る証拠はないとして、原告の請求を棄却した。
判例全文
line
4月7日 「著作権判例百選」の編集著作権事件
   東京地裁/決定・仮処分認可(抗告)
 法学者である大学教授(債権者)が、自らが編集著作物である雑誌『著作権判例百選(第4版)』の共同著作者の一人であることを前提に、出版社である有斐閣(債務者)が発行しようとしている雑誌『著作権判例百選(第5版)』は、第4版を翻案したものであると主張して、第4版の著作権および著作者人格権に基づく差止請求権を被保全権利として、債務者による第5版の複製・頒布等を差し止める旨の仮処分命令を求め、東京地裁は申し立てに理由ありとして昨年10月26日に仮処分決定をした。債務者はこれを不服として保全異議を申し立て、仮処分決定の取り消しを求めた事件。
 争点は、債権者を含む誰が第4版の共同著作者であるかに始まり、翻案該当性、二次的著作物性、人格権侵害の有無、保全の必要性など、多岐にわたるが、裁判所は、債権者は第4版の著作者の一人であり、第5版の表現からは第4版の表現上の本質的特徴を感得できる、第5版に編集著作権者として債権者の氏名を表示しないことは氏名表示権侵害に当たる等として、債務者の主張をことごとく否認、債権者には差し止め請求権があると判断し、結論として債権者の仮処分申し立てには理由があり、これを認容した原決定は相当であるとした。
判例全文
line
4月12日 商標“フランク ミュラー”侵害事件(2)
   知財高裁/判決・請求認容(上告)
 スイスの高級腕時計「フランク・ミュラー」のパロディ商品「フランク三浦」を販売する大阪市の会社(原告)が、特許庁による「フランク三浦」の商標登録を無効とした審決を不服として、その取り消しを求めた事件。「フランク三浦」は2012年に商標登録されたが、特許庁はミュラー側(被告)の請求に基づいて2015年に登録無効の審決をしていた。
 知財高裁は、「呼称が極めて似ている」「顧客吸引力へのただ乗りだ」とする被告の主張を、「呼称は似ているが外観で明確に区別できる」「100万円を超える高級腕時計と4000〜6000円程度の低価格の時計を混同することは考えられない」として退け、無効審決を取り消した。
判例全文
line
4月18日 商標“かつーん”侵害事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 串かつ店「かつーん」の経営を巡る争いで、原告は飲食店の経営を目的とする株式会社、被告Y1は原告の元代表取締役、Y2は不動産売買も目的とする株式会社で「かつ―ん」千歳烏山店店舗の賃貸人である。原告は被告Y1に対する会社法に基づく損害賠償請求、被告らに対する共同不法行為に基づく損害賠償請求、被告Y1に対する所有権に基づく動産引渡請求等とともに、被告Y1が使用している標章は原告の商標の商標権を侵害するものであるとして、被告標章の使用差し止めを請求した。
 裁判所は、原告の請求の多くを認容したほか、被告標章の使用行為は原告の有する商標権を侵害すると判断した。被告Y1は抗弁として、本来第三者が著作権を有している標章をY1はその第三者から許諾を受けて被告標章として使い、原告は被告Y1が主体となって利用する限りにおいて使用許諾を得ていたにすぎないから、原告による商標権行使は、原告商標の商標登録出願日より前に生じた第三者の著作権と抵触するから許されない(商標法29条)と主張したが、裁判所は当該商標に著作物性を認めず、被告Y1の主張する著作権の抗弁を採用できないとした。
判例全文
line
4月21日 宇多田ヒカルの歌詞共同著作事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 原告が、原告は宇多田ヒカル名義の編集著作物であるCDアルバム「First Love」等の楽曲の歌詞の共同著作者であり、「B&C」はじめ数楽曲の歌詞の被告による創作に関与したが、被告が原告の氏名を表示せず、被告のみが著作者として利益を得ており損害を被ったとして、被告に対して、原告の氏名表示、著作物発表前の原告への通知、損害賠償金の支払い等を求めた事件。
 裁判所は原告の第2請求である合意による通知請求を理由がないと判断し、また残りの請求についても、被告の創作に際して、原告の伝達内容が被告に伝えられたとする原告の主張は認め難い上、仮に認められたとしてもその内容は創作のための着想に過ぎないとして退け、請求を棄却した。
判例全文
line
4月21日 動画配信サイトのストリーミング配信事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 映画・ビデオの製作・販売を営む株式会社(原告)が、原告が著作権を有する映像作品を無断で被告にインターネット上の動画共有サイトにアップロードされたとして、被告に対し公衆送信権侵害に基づく損害賠償金1475万円余の支払いを求めた事件。公衆送信権侵害は前提事実であり、争点は、本件動画サイトがダウンロード方式ではなく動画をストリーミング配信するサイトであることによる原告の損害額であった。
 裁判所は、ストリーミングの再生回数をダウンロードの回数と同一視できるとする原告の主張を退け、侵害された2著作物により原告が得るべき金額はそれぞれ50万円と認定し、被告に対し弁護士費用との総計110万円の支払いを命じた。
判例全文
line
4月21日 ゴルフシャフトのデザイン画事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 グラフィックデザイナーである原告が、ゴルフ用品製造販売会社である被告に対して、被告の販売するシャフトは、原告が著作権を有するゴルフクラブのデザインおよびその原画の著作権および著作者人格権(同一性保持権)を侵害し、また被告の頒布するカタログは原告のカタログの同一性保持権を侵害しているとして、被告に対し、不当利得金および慰謝料合計5825万円の支払いと、製造・頒布の差し止めと廃棄、謝罪広告の掲載を求めた事件。
 裁判所はゴルフクラブのシャフトというような実用品のいわば応用美術の著作権について触れた上で、本件シャフトデザインおよび原画は著作権法上の著作物に当たらないとして原告の主張を認めず、請求を棄却した。
判例全文
line
4月27日 幼児用箸のデザイン画事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 「エジソンのお箸」という商品名の幼児用箸を製造販売している会社(原告)が、「デラックストレーニング箸」という商品名の幼児用箸を製造販売している会社(被告)に対し、被告商品は原告商品の著作権(複製権・翻案権)を侵害するとして、被告商品の製造販売の差止・廃棄および2400万円の損害賠償金支払いを求めた事件。双方の箸は一膳の箸を上部のキャラクター表現材でつなぎ、また一方に親指挿入のための輪をつけるなど、幼児が用いるために工夫されている。
 裁判所は、原告商品の著作物性を検討し、実用的機能を離れて美的鑑賞の対象となり得る特質を備えているとは言えないとして著作物性を否定し、原告の請求を棄却した。
判例全文
line
4月27日 KDDIへの発信者情報開示請求事件G
   東京地裁/判決・請求認容
 報道写真家である原告が、氏名不詳者がKDDI(被告)の提供するインターネット接続サービスを経由してウェブサイト「NAVERまとめ」に投稿した記事に付された日航機墜落事故関連の写真は、原告の著作物を複製したものであるとして、本件投稿者に対する損害賠償請求権行使のため、被告に対して発信者情報の開示を求めた事件。
 裁判所は本件投稿による著作権及び著作者人格権の侵害を認め、被告に対し、投稿者の発信者情報開示を命じた。
判例全文
line
4月27日 自動接触角計プログラム侵害事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却、附帯控訴一部認容、一部棄却
 水滴の接触角度を自動計測する装置をめぐって、理化学機器の開発設計製造会社(一審原告会社)と、その原告会社を退職した二人の従業員(一審被告a、b)、彼らが設立あるいは入社した測定機器企画設計製造会社(一審被告会社A)、および各種機械装置開発製造会社(一審被告会社B)とが、著作権侵害性や営業秘密管理性を争った事件の控訴審。原告プログラムを翻案したものとされる被告製品の旧バージョンは、被告会社Aが製造販売し、新バージョンは被告会社Aが製造販売、被告会社Bも販売した。
 旧バージョンに対する訴訟、新バージョンに対する追訴訟、被告らによる反訴請求(不当訴訟による損害賠償請求等)があり、複数の争点で争われたが、一審東京地裁は結論として、旧バージョンの被告製品についてだけ複製権(又は翻案権)侵害を認め、被告会社Aと被告aに対して原告会社への190万円余の支払を命じ、営業秘密管理性は否定、不正競争行為性は認めなかった。被告ら(被告bを除く)が一審判決の敗訴部分を不服として控訴、原告も付帯控訴して原判決中の敗訴部分の取り消しを求めた。
 知財高裁は、一審同様旧バージョンの被告製品についてだけ著作権侵害を認め、被告らの控訴請求を棄却したが、付帯控訴請求については原判決を変更し、被告aらによる営業秘密の不正使用等を認めて、被告会社Aと被告aに対する原告会社への304万円余の支払いと、被告aに対する原告会社への44万円余の受領した退職金の返還を命じた。
判例全文
line
4月28日 朝日新聞のブログ記事参考事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 有用微生物群(EM)の研究者である大学名誉教授(原告)が、朝日新聞社(被告)に対し、被告の発行する新聞の記事に原告の執筆したブログの一部を引用したことは原告の複製権及び同一性保持権の侵害に当たる等として、損害賠償金352万円の支払いと謝罪広告の掲載を求めた事件。本件ブログはEMに関する考え方を示したものであり、本件記事はEMに関する原告の見解を紹介報道したもの。
 裁判所は、ブログと記事とで表現上共通する部分は原告の思想そのものということができ、著作権法において保護の対象となる著作物に当たらないとして、請求を棄却した。
判例全文
line
4月28日 恋愛シミュレーションゲーム「QuinRose」事件
   大阪地裁/判決・請求認容
 漫画家である原告は、訴外株式会社からプレイステーションポータブル(PSP)で使用される開発中の恋愛シュミレーションゲームのための原画の注文を受け、数百点のイベント画を含む作品を制作して応じた。訴外会社はPSP用のゲームを販売ののち、本件ゲームのスマートフォン向けオンラインゲーム化を提案、原告はそれに応じたが、被告であるゲーム制作会社は訴外会社から受け取った本件原画を改変して、18歳以上を対象とするいわゆる「R−18」ゲームを制作し、配信した。原告は著作権侵害に基づく損害賠償金及び著作者人格権侵害により被った精神的苦痛を慰謝する相当額に弁護士費用を加え、被告に対し合計600万円の支払いを求めた。尚、訴外会社は東京地裁において破産手続き中であり、また被告会社は口頭弁論期日に出頭せず、準備書面も提出しなかったので、擬制自白が成立した。
 裁判所は、被告が原画を複製するだけでなく、頭部など登場人物を特徴づける重要部分を残して首から下に被告自身が作成した裸体のイラストを接合したりした改変に、翻案権侵害及び同一性保持権侵害を認め、原告の請求を認容して、被告会社に600万円の支払いを命じた。
判例全文
line
5月19日 「バシッと!キメたいそう」事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 テレビ番組内で放送予定のダンスコーナーで使用される様々な条件の付された楽曲が、音声映像ソフト企画制作会社(被告SME)の従業員(被告Z)により募集されたのを受けて、それに応募した作曲家(原告)が、被告作曲家(被告Y)、被告Z、被告SMEが、原告の応募曲(原告楽曲)に依拠してこれに類似した被告楽曲を創作し、被告テレビ会社(被告TSC)がこれを番組内で放送し、被告音声映像商品販売会社(被告SMD)がこれを収録したDVD等を販売したことが、原告の著作権及び著作者人格権を侵害しているとして、被告らに対し、被告楽曲の録音、演奏、収録DVDの販売等の差し止めと損害賠償金合計2億2000万円(被告Y、被告Z及び被告SMEに9000万円、被告TSCに7000万円、被告SMDに6000万円)の支払いを要求した事件。
 裁判所は、いずれも募集条件に合致するように作曲されている原告楽曲と被告楽曲の各楽譜について検討を加え、旋律の上昇及び下降など多くの部分が相違していること、全体の構成、音符の長さ、テンポはほぼ同一であるが、これは募集条件で指定されているせいであることなどから、被告楽曲が原告楽曲の複製または翻案に当たると評価することはできないと判断し、請求を棄却した。
判例全文
line
5月20日 「いわで議会だより」寄稿原稿の改変事件(2)
   大阪高裁/判決・控訴棄却
 岩出市議会議員である一審原告が、一審被告である岩出市に対して、岩出市議会は原告が市議会広報誌「いわで議会だより」用に提出した原稿を、原告に無断で編集して同誌に掲載して著作権を侵害したとして、10万円の損害賠償金支払いを求めた事件の控訴審。一審和歌山地裁は原告の請求を棄却したが、原告が控訴した。
 裁判所は、控訴人は、文字数等を具体的に指定した上での、文字数等の超過の場合は委員会が校正する旨を伝える広報委員会の通知文を受け取った上で原稿提出していることなどから、一審同様控訴人の主張を認めず、控訴を棄却した。
判例全文
line
5月26日 楽曲の“歌詞”譲渡契約事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却、追加請求棄却
 音楽マネジメント会社とその代表者(一審原告ら)が、音楽制作会社ら4者(一審被告ら)に対して、原告会社がエイベックス・エンタテインメント株式会社(被告の1社の旧商号、以下AEI)との間で締結した、楽曲名My Bass(作詞者May J.、作曲者Bentley Jones)に関する著作物譲渡契約書は、被告らの従業員等によって偽造されたものであるなどと主張して、本件契約書の成立の不真正の確認を求めるとともに、被告らの従業員による不法行為に関する使用者責任を主張して、損害賠償金80万円余の支払いと謝罪広告を求めた事件。一審東京地裁は本件契約書の真正な成立を認め、原告らの請求を棄却したが、原告が、損害賠償請求金額を70万円余に減額するとともに、譲渡契約に基づく代金10万円の支配請求を追加して、控訴した。
 二審知財高裁は、控訴審で追加された請求部分も含め、控訴人の請求を認めず、控訴を棄却した。
判例全文
line
6月8日 コミュニティFMのサイマル配信事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 コミュニティ放送(限られた地域でのFM放送)を行う29のラジオ局運営会社(原告ら)は、各局の音楽番組の地上波放送と同時に、スマートフォン及びパソコン向け無料配信サービスListen Radio(リスラジ)においてインターネット配信していたが、リスラジにおける「おすすめ番組まとめ」チャンネルには、各局の音楽番組をつなぎ合わせて自動的にまとめるザッピング機能があり、24時間連続して音楽番組がインターネット配信されるという特徴があった。被告・日本レコード協会は、本件各番組配信が、各局と被告との間の利用許諾契約に基づく使用料規定の細則の適用基準に違反しているとして、平成27年4月1日以降は本利用許諾契約を自動更新しないと通知した。原告らは、この更新拒絶は著作権等管理事業法もしくは独占禁止法により禁止されている行為に該当し、私法上無効であると主張して、使用料を支払うことにより原告らが被告管理のレコードを利用できる契約上の地位にあることの確認を求めた。
 裁判所は、原告らの主張を退け、本件更新拒絶は無効とはいえないと判断して、請求を棄却した。
判例全文
line
6月9日 催眠術DVDの“オマケ”事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却、追加請求棄却
 「催眠術の掛け方[専門版]自己催眠術」というDVDを制作した一審原告と、その著作権を譲り受けDVDを販売した一審原告会社(原告が代表を務める)が、一審被告がそれを無断で複製し販売して原告会社の著作権を侵害し、また名誉声望を害する方法で利用して原告の著作者人格権を侵害したと主張して、原告らに163万円余の損害賠償金支払いと、謝罪広告の掲載を求めた事件の控訴審。被告は精神工学研究所の中古DVDをインターネットオークションサイトに出品するに際して当該DVDの複製を「オマケとして」抱き合わせていた。一審東京地裁は、原告の出費した3万448円を原告の損失と認定して被告にその額の支払いを命じたが、原告が判決を不服として控訴し、慰謝料60万円を追加請求した。
 知財高裁は原審の判断を維持し、また著作権侵害を理由とする慰謝料請求には理由がないとして、追加請求も棄却した。
判例全文
line
6月22日 オークションカタログ事件B(2)
   知財高裁/判決・変更
 美術の著作権者やその権利継承者を会員として、彼らの著作権を管理しているフランスの法人であるグラフィックアート及び造形芸術作家協会(一審原告協会)と、一審原告X1を代表者とする亡美術家Pの著作権継承者たちが、株式会社毎日オークション(一審被告)が同名のオークションのために作成したカタログに、原告らの許諾を得ることなく会員作品及びPの作品を掲載したのは著作権侵害であるとして、原告協会に8650万円、原告X1に850万円の賠償金支払いを求めた事件の控訴審。一審東京地裁は、X1の当事者適格性、会員から原告協会へ著作権の移転、被告による複製権侵害を認め、原告協会に対し4094万円余、原告X1に対し441万円余の支払を被告に命じたが、原被告双方が控訴した。
 知財高裁は一審判断をほぼ踏襲した上で、本訴で提出されていないカタログについても同様の違法行為があったと推認し、損害額を増額の方向で判断、原審判決を変更して、原告協会に対し7862万円余、原告X1に対し893万円余の支払を、被告に命じた。
判例全文
line
6月23日 広告写真の著作物性事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 30点弱の写真の著作権を有するとする一審原告が、一審被告会社がその写真データを使用して作成したメガネ広告のチラシをメガネサロントミナガのホームページに掲載した行為は原告の著作権を侵害すると主張して、被告に対し2303万円余の損害賠償金支払いを要求した事件の控訴審。一審千葉地裁松戸支部は本件写真データには著作物性があるとは言えないと判断して請求を棄却したが、原告が控訴した。
 知財高裁も原審同様,本件写真の著作物性を否定して、控訴を棄却した。
判例全文
line
6月23日 冊子のホームページ掲載事件(2)
   知財高裁/判決・変更
 地域活性化のため祭りで配布することを念頭に発行されたフリーペーパー向けに撮影された写真を巡り、カメラマンである一審原告が、冊子発行人である一審被告に対し、原告の撮影した写真48点を使用して作成した小冊子「ARCH」を原告の許諾なく電子データ化して被告の管理運営する特定非営利活動法人のホームページに掲載した行為は、原告の著作権及び著作者人格権を侵害するとして、損害賠償金814万円余を請求した事件の控訴審。一審水戸地裁龍ヶ崎支部は、現状の雑誌広告写真の利用態様からホームページ掲載は通常として原告の請求を棄却したが、原告が控訴した。
 知財高裁は一審判決を変更し、本件ホームページ掲載に原告の明示の許諾はむろん、黙示の許諾があったとは認められないとして、被告の過失、行為の違法性を肯定し、著作権侵害性を認定したが、著作者人格権の侵害は認めず、被告に5万円の支払いを命じた。
判例全文
line
6月23日 KDDIへの発信者情報開示請求事件H
   東京地裁/判決・請求認容
 レコード製作会社4社(原告ら)が、氏名不詳者らが原告らが送信可能化権を有するレコードに収録された楽曲を無断で複製してGnutella及びこれと互換性のあるソフトを利用し、被告KDDIの提供するインターネット接続サービスを経由して自動的に送信しうる状態にしたことにより、原告らの送信可能化権が侵害されたとして、プロバイダ責任制限法に基づき、被告に対して氏名不詳者らの発信者の情報を開示するよう求めた事件。
 裁判所は氏名不詳者らの送信可能化権侵害を認め、被告に対し発信者情報を開示するよう命じた。
判例全文
line
6月23日 教科書イラストの許諾期間事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 イラストレーターである原告が、小学校学習教材出版社である被告らに対して、原告が被告らの依頼により作成し提供したイラスト類に関して、被告らの使用は原告の許諾の範囲を超えるものであって著作権を侵害するものであり、改変し作者名を表示しないなど著作者人格権を侵害するものであるとして、複製の差止と廃棄、謝罪広告の掲載、総計8153万円余の損害賠償金や慰謝料等の支払いを求めた事件。
 裁判所は絵柄別、使用例別、使用年度別に侵害性を検討し、その一部に複製権侵害と著作者人格権侵害を認めて、総計253万円余の請求を認容した。差止及び謝罪広告掲載の請求は認めなかった。
判例全文
line
6月27日 近未来宇宙船のイメージイラスト事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 有人宇宙輸送システムのコンセプト「スペースプレーン」のシステム構成を描いたイラストの著作権者であると主張する一審原告が、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(一審被告JAXA)が本件イラストをパネル化して展示したこと、ウェブページに掲載したこと、また被告JAXAから渡されたネガフィルムを使って一審被告小学館が本件イラストを掲載した書籍を制作発行したことは、原告の著作権を侵害するとして、被告らに複製等の差し止めとパネル、フィルム等の廃棄、損害賠償金301万円余の支払い、並びに謝罪広告の掲載を求めた事件の控訴審。一審東京地裁は本件イラストの著作物性を検討して、本件イラストはNALシステム構成図に依拠した複製物であって、同図と共通する部分に著作物性はなく、また新たに創作性のある表現も付与されていないとして、本件イラストが著作物であることを前提とした原告の請求は理由がないと、請求を棄却した。
 知財高裁は原審の判断を維持し、本件イラストは原告の原著作物とは認められないとして、控訴を棄却した。
判例全文
line
6月29日 歴史小説の“参考文献”事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 歴史小説作家(一審原告)が、テレビ番組企画制作会社(一審被告)が制作したテレビ番組(シリーズ作品中の5作品)に原告の3小説を無断で翻案ないし複製して使ったのは著作権および著作者人格権の侵害であるとして、被告に対し、番組放送と番組収録DVDの複製・頒布の差し止めと、損害賠償金3200万円の支払いを求めた事件の控訴審。一審東京地裁は原告各小説の記述部分にかかる創作性等に関して、個別に著作権侵害性を検討し、3か所の表現部分に侵害性を認めたが、著作者人格権侵害は認めず、財産的損害を小説使用料相当額に侵害性認定部分の分量を頁割りで算定し、弁護士費用相当額との合計30万円余の支払を被告に命じた。原告は損害賠償金の支払いが認められなかった部分についてのみ控訴した。
 知財高裁は、原告が控訴審で変更した著作権侵害のうちのシークエンスの翻案侵害を示す作品対照表について、時機に遅れた攻撃防御方法として却下した上で、原告の著作権侵害の主張を検討し、いずれも理由がないとして退けて、控訴を棄却した。
判例全文line
6月29日 「怪獣ウルトラ図鑑」復刻版事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 昭和43年にA社より発行された『カラー版怪獣ウルトラ図鑑』を一審被告出版社が平成24年に復刊した。この書籍にイラストが掲載されているイラストレーターの一人(一審原告)が、被告による本件書籍の複製等が原告の著作権および著作者人格権を侵害すると主張して、被告に対し、本件書籍の複製の差し止め及び廃棄と、損害賠償金737万円の支払いを要求した事件の控訴審。一審東京地裁は、被告は本件書籍の発行を承諾する意思表示をしていたと判断し、また本件書籍のイラストレーター名表示方法はA社の原書籍と同一であることなどから著作者人格権侵害性も否定して、請求を棄却した。
 知財高裁は、許諾の対象となったイラストがどのようなものであるかを知らなかったとする原告の主張を認めず、また本件書籍の氏名表示方法は一般的に行われているとして、原告の主張を退け、控訴を棄却した。
判例全文
line


 

日本ユニ著作権センター TOPページへ