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【事件名】動画配信サイトのストリーミング配信事件 【年月日】平成28年4月21日 東京地裁 平成27年(ワ)第13760号 損害賠償請求事件 (口頭弁論終結日 平成28年2月25日) 判決 原告 株式会社CA 同訴訟代理人弁護士 竹村公利 同 佐藤裕紀 同 岡本順一 同 石塚司 同 塚松卓也 同 河合郁 同訴訟復代理人弁護士 齋藤章隆 被告 A 同訴訟代理人弁護士 笹浪靖史 主文 1 被告は、原告に対し、110万円及びうち55万円に対する平成25年10月5日から、うち55万円に対する同月4日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は、これを10分し、その9を原告の負担とし、その余は被告の負担とする。 4 この判決は、1項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 被告は、原告に対し、1475万4090円及びうち518万3880円に対する平成25年10月5日から、うち957万0210円に対する同月4日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 本件は、原告が、被告に対し、原告は別紙著作物目録記載の映像作品(以下、同目録記載の番号により「本件著作物1」などという。)の著作権を有するところ、被告が本件著作物1及び2のデータを動画共有サイトのサーバーにアップロードした行為が公衆送信権(著作権法23条1項)の侵害に当たると主張して、民法709条及び著作権法114条1項(主位的)又は3項(予備的)に基づき、損害賠償金1475万4090円(内金請求)及びうち518万3880円に対する本件著作物1に係る不法行為の日である平成25年10月5日から、うち957万0210円に対する本件著作物2に係る不法行為の日である同月4日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実) (1) 原告は、映画、ビデオの映像製作、編集業務、販売等を営む株式会社である。本件著作物1及び2はいずれも原告の依頼に基づき外部の映像製作会社により製作されたものであり、原告はこれらの著作権者である。 (2) 被告は、本件著作物1につき平成25年10月5日に、本件著作物2につき同月4日に、いずれもインターネット上の動画共有サイトである「FC2アダルト」(以下「本件動画サイト」という。)のサーバー上にそのデータをアップロードした。本件動画サイトは動画をストリーミング配信するウェブサイトであり、これを視聴する者のパソコン等に一時的に上記データが蓄積されるが、視聴すると直ちに消去されるので、データをダウンロードした場合のようにウェブサイトに再度アクセスせずに映像を再度視聴することはできない。(甲4〜7) 2 争点及び争点に関する当事者の主張 上記前提事実によれば、被告が本件著作物1及び2のデータを本件動画サイトのサーバーにアップロードした行為は原告の公衆送信権(著作権法23条1項)の侵害に当たる。本件の争点は、原告の損害額である。 (原告の主張) (1) 著作権法114条1項に基づく損害について ア 受信複製物の数量 本件著作物1及び2は本件動画サイトにアップロードされ、ストリーミング配信されていた。視聴者のパソコン等にはストリーミングによる再生ごとにキャッシュとしてそのデータが蓄積されるところ、このキャッシュの作成は複製に当たるから、受信複製物の数量はストリーミングの再生回数ということができる。仮に、受信複製物とはダウンロードされたものを意味し、ストリーミング配信により一時的に作成されたキャッシュが受信複製物に当たらないとしても、本件動画サイトにおいて動画データをダウンロードすることは容易であるから、本件動画サイトにおけるストリーミングの再生回数はダウンロード回数と同視することができる。 そして、本件著作物1の再生回数は1万3292回、本件著作物2の再生回数は2万4539回であるから、これらが受信複製物の数量となる。 イ 原告の単位数量当たりの利益額 本件著作物1は、原告のグループ企業の一つである「DMM.com」のウェブサイトにおいて、ストリーミング配信により1本当たり372円で販売されていたところ、これを1本販売するために要する経費は●(省略)●であるから、本件著作物1の単位数量当たりの利益額は●(省略)●となる。 本件著作物2は、上記ウェブサイトにおいて、ダウンロードとストリーミング配信をセットとして1本当たり2362円で販売されていたところ、これを1本販売するために要する経費は●(省略)●であるから、本件著作物2の単位数量当たりの利益額は●(省略)●となる。 ウ 損害額 以上によれば、本件著作物1に係る原告の損害額は●(省略)●、本件著作物2に係る原告の損害額は●(省略)●となる。また、弁護士費用相当額は、上記金額の合計の10%である●(省略)●が相当である。したがって、原告は、被告に対し、一部請求として1475万4090円(本件著作物1につき518万3880円、同2につき957万0210円)の支払を求めることができる。 (2) 著作権法114条3項に基づく損害について 原告は取引先との間でコンテンツ提供基本契約を締結しているところ、同契約においては、本件著作物1及び2の使用許諾の対価として●(省略)●を原告が受け取ることになっているから、同金額に相当する金額が損害額になる。 そして、本件著作物1及び2の販売価格並びに本件動画サイトにおけるストリーミングの再生回数は上記(1)ア及びイのとおりであるから、本件著作物1に係る原告の損害額は●(省略)●、本件著作物2に係る損害額は●(省略)●となる。また、弁護士費用相当額は、上記金額の合計の10%である●(省略)●が相当である。 したがって、原告は、被告に対し、一部請求として1475万4090円の支払を求めることができる。 (被告の主張) (1) 著作権法114条1項に基づく損害額について ストリーミング配信はダウンロードを伴わず、表示の過程で端末パソコン内に一時的なキャッシュが作成されるのみであるところ、このキャッシュ作成行為は適法である(著作権法47条の8)から、ストリーミング配信により一時的に作成されたキャッシュは受信複製物には当たらない。そして、本件著作物1及び2は本件動画サイトにおいてストリーミング配信されたものであって、これらの受信複製物は存在しないから、同法114条1項の適用の前提を欠く。 なお、ストリーミング配信によって一時的に作成されたキャッシュが受信複製物に当たるとしても、本件動画サイトに表示される再生回数が実際に再生された回数を正確に反映しているか疑わしいこと、上記再生回数の大部分はサンプル動画の再生回数であると考えられることなどからすれば、受信複製物の数量は原告が主張するストリーミングの再生回数の1%程度と考えられる。また、原告は本件著作物1及び2の使用許諾の対価として●(省略)●を受け取っているのみであるから、単位数量当たりの利益額は、ストリーミング配信の販売額に上記割合を乗じた金額から、各種経費を控除して算定すべきである。 (2) 著作権法114条3項に基づく損害額について 本件動画サイトは無料又は定額によるストリーミング配信(いわゆる見放題)を行っているから、ダウンロード数ないしストリーミングの再生回数にかかわらず、著作権の行使につき受けるべき金銭の額は動画1本当たり月額1円とするのが相当である。 第3 当裁判所の判断 1 著作権法114条1項に基づく損害額について (1) 原告は、@ストリーミングの再生回数が受信複製物の数量に当たること、A本件動画サイトにおけるストリーミングの再生回数はダウンロードの回数と同視できることなどからすれば、本件著作物1及び2の本件動画サイトにおけるストリーミングの再生回数が著作権法114条1項にいう受信複製物の数量となる旨主張する。 (2) そこで判断するに、受信複製物とは著作権等の侵害行為を組成する公衆送信が公衆によって受信されることにより作成された著作物又は実演等の複製物をいうところ(同項)、本件においてはダウンロードを伴わないストリーミング配信が行われたにとどまり、本件著作物1又は2のデータを受信した者が当該映像を視聴した後はそのパソコン等に上記データは残らないというのであるから、受信複製物が作成されたとは認められないと解するのが相当である。 また、前記前提事実(2)のとおり、本件動画サイトは動画をストリーミング配信するウェブサイトであるところ、証拠(甲19、20)及び弁論の全趣旨によれば、本件動画サイトにアップロードされた動画をダウンロードすることは不可能ではないが、そのためには特殊なソフトウェアを利用するなどの特別の手段を用いる必要があることが認められる。 以上によれば、本件著作物1及び2の本件動画サイトにおけるストリーミングによる動画の再生回数が受信複製物の数量に当たるということはできないし、これをダウンロードの回数と同視することもできない。したがって、著作権法114条1項に関する原告の上記主張は失当である。 2 著作権法114条3項に基づく損害額について (1) 後掲証拠(書証の枝番の記載は省略する。)及び弁論の全趣旨を総合すれば、次の事実が認められる。 ア 本件動画サイトがストリーミング配信する動画には、無料動画と会員向けの有料動画(会費は1か月当たり1000円又は1年当たり6000円)がある。本件動画サイトにおいては、配信される動画ごとに「再生数」が表示されている。 本件著作物1は、平成25年10月5日に本件動画サイトに有料動画としてアップロードされ、同月6日時点における「再生数」は1万3292回と表示されていた。本件著作物2は、同月4日に本件動画サイトに有料動画としてアップロードされ、同年11月29日時点における「再生数」は2万4539回と表示されていた。 本件動画サイトの会員でない者が有料動画を視聴しようとするとサンプル動画が数秒間再生されるところ、上記の「再生数」にはこのサンプル動画の再生数も含まれる。本件著作物1及び2に係る「再生数」の内訳は不明である。 被告がアップロードした本件著作物1及び2のデータは、平成26年3月頃までに本件動画サイトから削除された。 (甲4、5、乙3、8、12) イ 本件著作物1は、動画配信サイト「DMM.com」にて有料でインターネット配信されており、その価格は、平成25年10月5日時点において、HD版ダウンロードとHD版ストリーミングのセットが2480円、ダウンロードとストリーミングのセットが1980円、HD版ストリーミング(7日間)が390円であった。また、本件著作物2も同様に配信されており、その価格は、同年11月29日時点において、HD版ダウンロードとHD版ストリーミングのセットが2980円、ダウンロードとストリーミングのセットが2480円、DVDトースターが2800円であった。 インターネット配信の上記各価格は、配信時期やキャンペーンの実施等によって変動し、本件著作物1に係る平成28年1月15日時点のHD版ストリーミング(7日間)が273円、本件著作物2に係る平成27年9月28日時点のHD版ストリーミング(同)が300円となっていた。 (甲2、3、13、乙2、15) ウ 原告(変更前の商号は株式会社北都)は、取引先との間で、コンテンツ提供基本契約を締結し、取引先に対して原告の映像等のコンテンツの配信を許諾しているところ、ある取引先との契約では、原告がその対価として●(省略)●を受け取ることが定められている。 (甲17、25) (2) 原告は、@本件著作物1及び2が本件動画サイトにおいて上記「再生数」に記載の回数配信され、Aこれらが正規に配信された場合の価格はそれぞれ372円、2362円であり、Bこの場合原告は●(省略)●を受領できたとして、著作権法114条3項に基づく損害賠償を請求する。しかし、上記の事実関係によれば、@上記「再生数」の正確性を裏付ける証拠が何ら提出されていない上、全体の再生回数のうち有料のストリーミング配信の回数は、事柄の性質上、無料のサンプル動画の再生回数より大幅に少ないと考えられる。また、A本件著作物1及び2のストリーミング配信の正規の価格は時期等によって変動するがおおむね1本当たり270〜390円程度であり、さらに、B原告は自らが使用許諾をした場合の対価につき契約条項の大半を抹消した契約書の写し(甲17)を提出するのみであり、現実にいかなる収入を得ていたかは明らかでない。本件におけるこれらの事情を総合すれば、被告による本件著作物1及び2の公衆送信権の侵害に対して原告が著作権の行使につき受けるべき金銭の額は、それぞれ50万円とするのが相当である。 3 弁護士費用相当額の損害について 本件における弁護士費用相当の損害額は合計10万円(本件著作物1につき5万円、本件著作物2につき5万円)と認められる。 4 まとめ 以上によれば、原告は、被告に対し、民法709条及び著作権法114条3項に基づき、110万円及びうち55万円に対する本件著作物1に係る不法行為の日である平成25年10月5日から、うち55万円に対する本件著作物2に係る不法行為の日である同月4日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。 第4 結論 よって、主文のとおり判決する。なお、仮執行免脱宣言については相当でないからこれを付さないこととする。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官 長谷川浩二 裁判官 萩原孝基 裁判官 中嶋邦人 (別紙一部省略) 別紙 著作物目録 1 作品タイトル 品番 DMM.com上のURL http://(以下省略) 収録時間 約100分 2 作品タイトル 品番 DMM.com上のURL http://(以下省略) 収録時間 約120分 |
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