裁判の記録 line
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2008年
(平成20年)
[1月〜6月]
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1月17日 商標“ROYAL ARMANY”侵害事件(2)
   知財高裁/判決・請求棄却
 指定商品を「時計」とする「ROYAL ARMANY」の商標登録の無効審決を受けた原告が、その審決の取り消しを求めて提訴した。
 原告は、猛禽類を図案化し「GA」文字を白抜きに配した引用商標、および「EMPORIO ARMANI」というアルマーニの商標は「時計」の分野では需要者間に広く認識されている著名商標とはいえない等として、審決の取消を求めたが、問題は、総体としてのARMANI標章の著名性であり、商標法第4条1項十五号は他人の商品あるいは役務と混同の恐れがある商標を一般的に排除しようとするものであり、ARMANI標章は、G・アルマーニの略称あるいはアルマーニ・グループ関連のハウスマークとして著名であり、出所混同を生じる恐れは明白であるとして、請求を棄却した。
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1月24日 類似“ヒュンメル”事件
   大阪地裁/判決・請求棄却
 
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1月28日 黒澤作品のDVD化事件(松竹作品)
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 映画会社「松竹」は、黒沢明監督作品の著作権譲渡を受けているとして、廉価版DVDを海外において製造させ、輸入・販売をしている業者を、著作権を侵害するとして、複製、輸入、販売等の差止めを求めて提訴した。
 被告の業者は、1950年公開の劇場用映画「醜聞(スキャンダル)」、1951年公開の「白痴」は、旧著作権法により公表後33年で保護期間は満了していると主張した。
 東京地裁は、「思想又は感情を創作的に表現し得るのは自然人のみであり」、「映画の著作物の場合も、思想又は感情を創作的に表現した者が著作者となる」とし、黒沢は「少なくとも本件作品の著作者の一人である」と認定した。旧著作権法上の保護期間は、自然人である「著作者の死亡時期を起点として一定期間存続すること」が原則であり、著作者の死亡時期が観念できなかったりした場合について旧著作権法6条の団体著作物が適用されるとした。そして、「黒沢は、松竹に対して本件両作品の著作権を譲渡していたと推認できる」とし、1998年9月6日に死亡しているので、旧著作権法によれば、保護期間は著作者の死後38年の2036年12月31日まで。平成15年改訂前著作権法によれば公表後50年、平成15年改訂後著作権法によれば公表後70年の保護期間となる。しかし、平成15年改正法の附則3条により、旧著作権法による保護期間の満了する2036年まで継続することになるので、依然保護期間内であるとして、DVDの輸入、頒布の禁止、在庫品・録画原版の破棄を命じた。
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1月29日 職務発明提案書の著作権侵害事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 アルプス技研の関連グループ会社に勤務していた原告は、自分がアイディアを提案し、アルプス技研が出願登録した特許について、職務特許ではなく自由特許なので自分が特許を受ける権利があるにもかかわらず、アルプス技研に特許を受ける権利及び著作権を侵害されたとして、不法行為に基づく損害賠償金の支払いを求めて提訴した。
 東京地裁は、原告がアイディア提供当時、関連企業の従業員の身分のまま、アルプス技研の研究開発室に所属する室員としてアイディア提供等の職務に従事していたとし、したがって、本件発明は職務発明ととらえることが適切である等として原告の主張を退けた。
 また、著作権侵害という主張に対しても、仮に提案書が著作物であるとしても、アルプス技研の業務に従事する原告が職務上作成した職務著作物であり、著作者はアルプス技研である等として、原告の請求を棄却した。
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1月31日 “土地宝典”の違法コピー事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 富士不動産鑑定事務所は、公図に地目・地積等の情報を追加し編集した地図「土地宝典」の著作権を譲渡されており、法務局が各法務局内に設置したコインコピー機で、無断で利用者にコピーさせ、コピー行為を放置していたのは、複製権侵害行為であるとして、国に損害賠償を求めて提訴した。
 東京地裁は、「土地宝典」は著作物であり、著作権も譲渡されていると認定し、国が主張する「営利を目的としない貸出」を規定する著作権法第38条4項は複製権とは関係がない、また、国が公図の原著作者であり、その二次的著作物である「土地宝典」に、二次的著作物の著作者(原告)と同一の権利を有しているとしても、原告の許諾なく複製を行うことは明らかに違法である等として、総額576万円の損害賠償を命じた。
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1月31日 商標“貴鶏屋”侵害事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 「貴鶏屋」の商標権者である原告は、居酒屋店舗の看板や名刺に「喜度利家」の標章を用いている被告に対して、いずれも「きどりや」の称呼が生じ、誤認混同が生じるとして、商標権侵害に対する損害賠償を求めて提訴した。
 被告は、「喜度利家」は「きどりゃあ」と読み、名古屋弁で「気取りなさい」「気取って」という意味であり、居酒屋に来るときぐらい少し気取って(格好つけて)遊んでいただきたいという意味で使っており、外観、称呼ともに異なると主張した。
 大阪地裁は、「喜度利家」は「きどりゃあ」と振り仮名を振ってない以上、「きどりや」との称呼を共通する、しかし、外観は全く異にする上、類似の観念も生じないので、両者は容易に区別できるので誤認混同は生じず、全体として類似しない、として請求を退けた。
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1月31日 「パズル」の著作物性事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 原告のパズル作家は、自分が考案し数社から出版したパズルのうち12問が、被告によって主婦の友社の書籍「右脳を鍛える大人のパズル」中に複製又は翻案され、氏名表示権及び同一性保持権が侵害されたとして、著作権侵害に基づく損害賠償を求めて提訴し、パズルの著作物性が争われた。
 東京地裁は、「数学の代数や幾何あるいは物理の問題とその解答に表現される考え方自体は、アイディアであり、これを何らかの個性的な出題形式ないし解説で表現した場合は著作物として保護され得る」、「数学的ないし物理的問題及び解答に含まれるアイディア自体は著作物として保護されないことは当然」であり、パズルにおいても同様であるとして、それぞれのパズルについて検討した。
 その結果、(1)「結び目ができる糸」については編集著作物性を有する著作物であるとし、(2)原告パズルの表現上の本質的特徴を直接感得しうるとして翻案権の侵害を認め、(3)等式・不等式の組合せ自体は数学的な問題と解答(アイディア)であるとしても、多数の中から特定の組み合わせを選択し、これを天秤と3種類の物で表現することまで具体化すると作者の個性的な表現が可能となり、被告パズルは複製権を侵害しているなどとして、東京地裁は、12問中3問について複製権あるいは翻案権の侵害を認め、約25万円の損害賠償を命じた。
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1月31日 伝統工芸品“堤人形”の著作物性事件
   仙台地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 仙台の伝統工芸品である「堤人形」の制作家が、同様な人形の製造、販売を営む業者を訴えた。著作権、商標権侵害に加え、不正競争防止法違反行為があるとして差し止めと損害賠償を求めた。裁判所は、既存の伝統工芸品の造形に改良を加えた程度では創作性は認められないとし、著作権侵害は認めず、「堤人形」の表示は仙台市堤町の土人形を表す普通名詞であるとして、商標権侵害も否定した。そのうえで、訴えられた人形の一部、5点に限り制作家の人形の型を盗用したと思われる箇所を認め、営業秘密の不正取得行為があるとして人形5点の石膏型の破棄と、それらに対応した商品の製造・販売禁止を命じた。
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2月5日 「ウルトラマン」の著作権確認事件(タイ)(3)
   タイ王国最高裁/判決・変更
 円谷プロダクションは、ウルトラマンの著作権を侵害されたとして、タイ企業の株式会社円谷チャイヨーの代表取締役ソムポーテさんに対して、タイ王国最高裁判所に損害賠償訴訟を提起していた。
 タイIP&IT裁判所の2000年4月の一審判決では、初期9作品については、チャイヨーさんと故円谷皐さんの間で著作権譲渡契約が成立しているとされたが、円谷プロはこれを不服として上告した。
 最高裁判所では、譲渡契約書は偽造であり無効だとする主張が認められ、約3500万円の賠償金の支払いと賠償金支払いが完了するまで年利7.5%の利息の支払いが命じられ、全面的な勝訴となった。

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2月5日 商標“青森”侵害事件(中国)
   中国政府商標局/裁定・拒絶査定
 中国・広州市の企業が2002年7月、農水産物を対象として「青森」の商標の登録申請をしたが、青森県が異議申立てを行っていた。
 「青森」は、中国語では「きれいな森」「新鮮」などを意味するところから、地名か否かが問題となっていた。
 裁定では、「公衆に知られる日本地名」と認定し、登録申請を退けた。年間180万トンに上る「青森リンゴ」が中国に輸出できなくなる事態も心配されていた。

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2月7日 商標“clear”侵害事件
   大阪地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 光文社発行のファッション誌「JJ誌」に被告のタイアップ広告が掲載され、人気ブランドとなったが、原告は、タイアップ広告上で使用した被告標章が原告の商標と類似しており、原告の商標権を侵害されたとして、同標章を使用した商品の販売・展示の差止め、広告の使用差止めや損害賠償などを求めて提訴した。
 被告は、被告標章は特集記事の体裁をとった有料のタイアップ広告中に掲載されたものだが、ブランドのロゴをどのように構成するかの主導権は全面的に雑誌社にあって、アパレルメーカーは洋服等を提供しているにすぎない、したがって、被告がこの標章を使用したという事実はない等と主張した。
 しかし、大阪地裁は、タイアップ広告の内容はJJ誌が決定したものだが、広告料を支払って初めて掲載されるに至ったのだから、被告自身が行った広告であり、被告自身が行った広告に被告ブランドのロゴが掲載された以上、被告が使用したものであるとした。
 しかし、個々の標章については、類似標章は1件のみで他の4件の被告標章は非類似であるとして、1件の標章についてのみ、衣類やハンドバッグ等に同標章を付した展示もしくは頒布を差止め、商標権侵害及び不正競争防止法違反による300万円の損害賠償支払いを命じた。
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2月8日 ゲームソフト「ファイナルファンタジー」事件
   ロサンゼルス連邦地裁/提訴
 ゲームソフト大手のスクウェア・エニックスは、「ファイナルファンタジー」に登場する剣の模倣品を、許諾を得ずに、警告を無視して、違法に販売していたとして、米国の卸業者4社を、著作権等侵害の理由で、米国カリフォルニア州連邦地方裁判所に提訴した。

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2月12日 ビジネス書の著作権侵害事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 セミナーを開催する会社とその社長(控訴人)が、自社の著作物を違法に複製、翻案して著作権、出版権を侵害したとして、元従業員(被控訴人)を提訴した訴訟で、一審では、232ページ中8ページに著作権侵害を認めたが、控訴人は被告書籍中にはそれ以外にも原告書籍の複製又は翻案があるとして控訴した。
 知財高裁は、指摘箇所は「平凡な表現による短文」、「いずれも極めてありふれた表現」である等として著作物性を認めず、また、侵害部分以外の内容が割合的に相当に大きいので、被告書籍全体に破棄を求めることはできないとする原判決の判断も支持した。
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2月13日 「JASRAC」への名誉毀損事件(週刊ダイヤモンド)
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 日本音楽著作権協会(JASRAC)は、「週刊ダイヤモンド」2005年9月17日号に掲載された「企業レポート 日本音楽著作権協会(ジャスラック)」中で、楽曲使用料の「横暴な取り立て」とか、使用料配分基準等が「不透明」である等の記事によって名誉が毀損されたとして、損害賠償を求めて提訴した。
 東京地裁は、「記事は真実ではない」として550万円の損害賠償の支払いを命じたが、謝罪広告の掲載は認めなかった。

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2月14日 「原田ウィルス」亜種の配信事件(刑)
   京都地検/起訴
 京都地検は、テレビアニメ「CLANNAD(クラナド)」の静止画像を無断で利用して「原田ウィルス」亜種とみられるウィルスを作成し、ファイル共有ソフト「Winny」経由で送信可能化状態にした大阪府の大学院生を含む男性3人を、著作権法違反(公衆送信権・著作者人格権侵害)容疑で起訴した。
 ウィルス作成行為を直接処罰する法律がないために、著作権法を適用した。ウィルス作成者が摘発されたのは国内で初めてという。
 なお、京都地検は2月26日、知人の顔写真などを添付したウィルスをネット上に流したとして、名誉棄損罪で追起訴した。

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2月15日 ノンフィクションの共同著作事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 自身が顔などにあざや膨らみができる「海綿状血管腫」に苦しんだことから、同じ病気や顔の傷などで苦しんでいる人たちに対する、差別や偏見をなくす活動をしていることで知られる鳥取大学の医学部教授(被告)が、平成16年、汐文社から著書「さわってごらん、ぼくの顔」を出版したが、前年に草思社からフリージャーナリスト(原告)と共著で出版した「運命の顔」からの引き写しであり、共同著作者である原告の許諾なく複製、翻案して原告の著作権を侵害したとして、損害賠償請求、被告書籍の廃棄、謝罪広告などを求めて提訴した。
 被告医学部教授は、原告は「ゴーストライター」にすぎず、自分の口述を逐一文章に起こし、自分が補筆、加筆、修正をして確定稿にしたものであって、「運命の顔」の著作者は唯一教授であり、原告は代筆者以外の何者でもないと、主張した。
 東京地裁は、原稿作成過程や印税の分配率、奥付記載などから、「運命の顔」は共同著作物であると認定した。また、文章を比較するに、「表現をほぼそのまま引き写したか」、「表現を平易な言葉を用いて修正したり」、「簡略化したり、並べ替えたりしたものにすぎない」とし、出版社には共同不法行為責任を課した。損害額は著作権法114条第3項によって算定した。
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2月20日 外務省機密漏洩事件をめぐる元毎日記者の名誉棄損事件(2)
   東京高裁/判決・控訴棄却(上告)
 沖縄返還協定を巡って、国家公務員法違反で有罪が確定した元毎日新聞社政治部記者が、その後、「米国立公文書館保管文書」の中から密約の存在を示す文書が見つかったにもかかわらず、日本政府は依然否定発言を繰り返しており、名誉が侵害され続けているとして、国に謝罪と損害賠償請求の訴訟を起こしていたが、この日、東京高裁は一審判決と同様に、密約の有無の判断を避け、除斥期間(賠償請求権は20年間)を適用して、損害賠償請求権は消滅しているとし、請求を棄却した。

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2月25日 プロ野球選手の肖像権侵害事件(野球カード)(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却(上告)
 選手名や肖像を第三者に使用許諾する権限が球団側にないことの確認を求めた一審の判決を不服として、プロ野球選手団が控訴していた。
 知財高裁は、一審判決を支持し、野球協約に基づく統一契約書では「肖像権のすべてが球団に属し、球団は宣伝目的のためにいかなる方法でも利用できる」等と規定しており、この規定自体が公序良俗に反するとはいえない等として、請求を棄却した。
 選手団は、3月10日最高裁に上告した。
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2月26日 雑誌記事の社保庁内LAN無断掲載事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 官僚問題などを取り上げてきたジャーナリスト(原告)が、週刊誌に掲載した年金問題の記事が社会保険庁の電子掲示板システムの中にある新聞報道等掲示板にそのまま掲載されて、社会保険庁、社保庁業務センター、全国の地方保険事務局・事務所等々で閲覧可能にされたことによって、複製権または公衆送信権を侵害されたとして、著作物のLANシステムからの削除や損害賠償等を求めて国を提訴した。
 社会保険庁は、国民の苦情の多くは報道等を契機とするものであり、その苦情に適切で統一的な対応をするためには極力速やかに報道等の内容を把握する必要があり、したがって、この複製行為は、著作権法42条1項本文の「行政目的のための内部資料として必要と認められる場合」に相当する等と主張した。
 東京地裁は、週刊誌記事をLANシステムに記録した行為は、自動公衆送信を可能化したもので公衆送信権を侵害する、42条1項は特定の場合に著作物の複製行為が複製権侵害とならないことを規定したものであり、公衆送信権侵害には適用されないことは明白だとして退け、損害額は114条3項を適用して算定した。
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2月27日 ゲーム機“虹彩占い”侵害事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 原告と被告は、虹彩識別技術を利用して虹彩占い機器を共同開発することにした。
 しかし、被告が無断で、第三者と独占販売代理店契約を結び、原告が開発したプログラムを組み込んだゲーム機の利用を許諾して対価を得たとして、同プログラムの著作権及びそれによって画面表示されるイラストや文章等の著作権が原告に帰属することの確認を求め、不当利得の返還を求めて訴訟を起した。
 東京地裁は、本件プログラムやイラスト等は原告が著作権を有することを確認し、不当利得返還請求については、独占販売代理店契約が合意解約され、製品が供給されることはなかったとして棄却した。
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2月28日 チャップリン映画の格安DVD事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却(上告)
 チャールズ・チャップリンの「黄金狂時代」など9作品の格安DVDを複製販売した東京の制作会社2社は、チャップリンが著作者であり、旧著作権法の規定により「保護期間は著作者の死後38年間」であり、いずれの作品も保護期間内にあるとする一審判決を不服として控訴していたが、知財高裁は原審を支持し、控訴を棄却した。
 旧法においては「自然人が著作者となると解するほかない」とし、米国法人の著作名義をもって公表された映画「シェーン」とは事案を異にするとした。
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2月29日 ネット掲示板の中傷事件(ラーメンチェーン)(刑)
   東京地裁/判決・無罪(控訴)
 ホームページに、ラーメンチェーン店を経営する企業がカルト団体と関係があるような書き込みをし、企業の名誉を傷つけたとして名誉棄損罪に問われた男性の公判で、無罪が言い渡された。
 判決では、インターネット上の書き込みに関して、名誉毀損罪が成立するか否かを検討し、「ネットでは利用者が互いに反論できる上、情報の信頼性が低いため、従来の基準は当てはまらない」と指摘し、「真実でないと知りながら発信した場合か、インターネット個人利用者に要求される水準の事実確認を行わずに発信した場合に、名誉毀損罪が成立する」との新たな基準を示した。
 東京地検は、3月12日、控訴した。
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3月3日 「弁護士のくず」著作権侵害事件
   東京地裁/提訴
 弁護士の内田雅敏さんは、人気漫画「弁護士のくず」に自著を盗用され、発行元の小学館やマンガ家によって著作権を侵害されたとして、500万円の損害賠償を求めて提訴した。
 2月13日、東京地裁に、「ビッグコミックオリジナル」4回連載の最終回(3月5日号)への掲載差止めなどを求める仮処分を申請したが、地裁が判断を示さないままに最終号が発行されたので、正式に提訴した。
 小学館側は、事実関係については著書を参考にしたが、ストーリーは独創的であり、指摘された類似点は客観的事実であり、著作権は侵害していないとしている。

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3月6日 住基ネット・プライバシー侵害事件(関東、近畿66人)(3)
   最高裁(一小)/判決・破棄自判(確定)
 大阪府吹田市、守口市の住民が、住基ネットの運用はプライバシー権を侵害し憲法違反だとして、国や自治体に個人情報の削除や損害賠償を求めた訴訟の上告審で、最高裁第一小法廷は裁判官の全員一致で、住基ネットは「合憲」との初の判断を示した。
 「制度自体の欠陥により・・・人格権を違法に侵害する」とした大阪高裁の判決を破棄し、住基ネットの導入によりさまざまな利点があること、技術面では、システム構成機器等について相当厳重なセキュリティ対策が講じられていること、公務員の守秘義務違反は刑罰の対象となること、情報の適切な取扱いを担保する制度的な措置を講じていることなどに照らせば、憲法13条に保証する個人のプライバシー権その他の人格権を侵害するものではないとした。
 第一小法廷は、この日、石川、愛知、千葉県の住民による住基ネット差止め請求についても、いずれも住民側の上告を棄却した。これにより、二審判決が確定し、いずれも住民側の敗訴となった。
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3月8日 ソフトバンク携帯デザイン酷似事件
   東京地裁/仮処分申請
 NTTドコモと富士通の両社は、ソフトバンクモバイルが発売した東芝製携帯端末が、デザインやUI等、複数の項目で酷似しているとして、不正競争防止法に基づいて製造・販売差止等の仮処分申請を東京地裁に申し立てた。

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3月11日 商標“DAKS”侵害事件
   大阪地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 英国企業ダックス・シンプソン・グループと日本での商標の専用使用権を有する三共生興は、被告会社が、ダックス社の商標を付した「英国王室御用達DAKS社リバーシブルベルト」と称するベルトを、韓国より輸入し、ダイレクトメールやウェブサイトで販売して、商標権、専用使用権等を侵害され、信用を毀損されたとして損害賠償、謝罪広告等を求めて提訴した。
 大阪地裁は、被告使用の標章はいずれも原告の商標と外観、称呼及び観念が同一又は類似であり、原告の商標権を侵害し、専用使用権等を侵害しているとした。また、ダックスブランドは、英国王室御用達の詔勅を授与される等、高級ブランドとして著名だが、「粗悪品の評価を免れない」低品質商品を正規品と称して著しい低価格で輸入・販売され、ブランド価値が相当に毀損された等として、損害賠償とともに、輸入・販売の禁止、在庫品の破棄及び謝罪広告等を命じた。
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3月11日 予備校教材への作品無断使用事件(河合塾)
   東京地裁/提訴
 なだいなださん等9人が、大手予備校「河合塾」に対して、作品を無断で教材に使用されたとして、損害賠償を求めて、東京地裁に提訴した。

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3月11日 予備校教材への作品無断使用事件(東進ハイスクール)
   東京地裁/仮処分申請
 妹尾河童、五味太郎さん等13人は、国公私立大学の入試問題を大手進学塾「東進スクール」のホームページに無断掲載されたとして、掲載差止めを求める仮処分を、東京地裁に申し立てた。

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3月12日 スナック“シャネル”の営業表示使用禁止事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 ココシャネル商品の商標権を管理するスイス法人は、「スナック シャネル」「SNACK CHANEL」等の店名で飲食店を営業していた経営者に、「シャネル」「CHANEL」の使用差し止め、損害賠償を求めて東京地裁に提訴していた。
 東京地裁は、被告が口頭弁論に出頭せず、答弁書の提出もないので、自白とみなして、不正競争法第2条1項二号「他人の著名な商品表示と同一若しくは類似のもの」を使用する不正競争行為に該当するとして、店名の使用禁止と250万円の損害賠償を命じた。
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3月13日 写真の“水彩画”模写事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 原告のアマチュア写真家が、自分の撮影した京都祇園祭りの写真を、許諾なく掲載した出版社、祇園祭りの広告に写真を利用した新聞社、写真ポスターや水彩画ポスターを使用した八坂神社、無断でこれらにポジフィルムを提供したデザイン会社代表取締役等に対して、複製権、氏名表示権・同一性保持権侵害による損害賠償請求訴訟を起こした。
 東京地裁は、いずれも著作権侵害を認め、それぞれに損害賠償を命じた。
 八坂神社は、原告に対して本殿内部等の報道陣でさえ撮影できない場所の撮影も許可し、「(八坂神社が)写真を必要とした時は、これを無償で提供する」旨記載の許可書を発行しているとしたが、東京地裁は、再度の撮影許可書では、本殿の撮影は禁止され、撮影範囲は一般観光客と変わらないものとなり「無償提供条項」は削除されているとした。
 また、原告からクレームを受けたので、写真使用を止めて水彩画ポスターを使用したとの主張に対しては、「本件水彩画の創作的表現から本件写真の表現上の本質的特徴を直接感得することができる」と認められるから、「本件水彩画は、本件写真を翻案したもの」であるとし、翻案権侵害であるとした。
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3月13日 ゲーム画像のPV無断利用事件(韓国)
   ソウル中央地方法院/判決・請求一部認容、一部棄却
 スクウェア・エニックス社は、韓国のファントム社所属の人気歌手“IVY”の新曲「誘惑のソナタ」のプロモーションビデオ(PV)中に、「ファイナルファンタジーZ アドベントチルドレン」の一場面が無断で改変され、実写化されて使用されたとして、ファントム社とホン・ジョン監督に対して、著作権侵害による損害賠償請求を提起していた。
 ソウル中央地方法院は、この日、スクウェア・エニックス社の主張を認め、総額3億ウォン(2800万円)の損害賠償を命じた。
 単独作品の損害賠償額としては、韓国では過去最高額だという。

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3月14日 黒澤作品のDVD化事件B
   東京地裁/提訴
 東宝は、この日、「姿三四郎」などの黒沢明監督8作品の廉価版DVDを製造販売していた「コスモ・コーディネート」に対して、約1億2200万円の損害賠償を求める訴えを起こした。「コスモ・コーディネート」が販売した16万本の廉価版DVDを、通常価格で販売した際にかかる著作権料を賠償額とした。

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3月18日 商標“マイクロクロス”侵害事件C
   大阪地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 超極細繊維を使った布製品について「マイクロクロス」の商標権を有する原告会社「ワンズハート」とその商標専用使用権を持つとする原告「マイクロクロス」社が、被告会社が「マイクロクロス」の標章を付した「ふきん」を販売したとして、販売差止と損害賠償を求めて提訴した。
 大阪地裁は、原告マイクロクロス社については、その専用使用権の設定は登録されていないので専用使用権者ではなく、平成17年6月1日以降は、単なる通常使用権者にすぎず、非独占的通常使用権者には差止・廃棄請求権、損害賠償請求権はないとした。
 また、被告は平成18年に「商標無断使用警告書」を受けるや、商品名を「マイクロクロス」から「マイクロふきん」と変更して販売したとして、ワンズハート社の損害額として約4万円の賠償を命じた。
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3月19日 商標“ELLE”侵害事件(ロックバンド)(2)
   知財高裁/判決・変更(確定)
 「エル」「ELLE」等の周知・著名商標を有するアシェット社(一審原告)が、ロックバンド「ELLEGARDEN」等の商標を付したTシャツやリストバンド等を販売する会社グローイングアップ(一審被告)に対して商標使用差止、不正競争防止法に基づく商品の廃棄などを求めた一審判決では、被告商標は原告商標に類似するとして、アシェット社の請求の大部分が認容された。これを不服として、グローイングアップが控訴した。
 知財高裁は、グローイングアップの商標である「ELLEGARDEN」は、(1)同大・同色・同フォントで一連一体にまとまりよく表記してあり、殊更に2語に分割して把握する事情はない、(2)骸骨や血溜まりといったデザインと一体として用いられているので、「ELLE」ブランドのイメージと重なる余地はない等とし、2商標は非類似であるとした。
 しかし、音楽CDに付した“被告標章10”は、「ELLE」「GARDEN」と2段に書き分け、「GARDEN」を小さく表記しており、この標章の要部は「ELLE」である。したがって、本件商標と“被告標章10”は外観、称呼及び観念において類似するとした。
 知財高裁は、一審判決を変更し、“被告標章10”についてのみ、音楽CDに付したり、同標章を付した音楽CDの販売・展示・ウェブサイト上で表示することを禁止した。
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3月19日 商標“NEC”侵害事件
   東京地裁/判決・主意的請求棄却、予備的請求棄却(控訴)
 
判例全文
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3月27日 ケネス・ハワード著作物の譲渡事件(2)
   知財高裁/判決・変更
 ケネス・ハワードの著作権は、共同相続した2人の子供A及びBから、上野商会へ著作権譲渡(本件譲渡契約1)され、上野商会からさらに「フォン・ダッチ・オリジナルズ」(控訴人)へ譲渡(本件譲渡契約2)された。
 ところが、A及びBからさらに被控訴人へ著作権譲渡(本件譲渡契約3)されたために、ケネス・ハワードの著作権をめぐっては二重譲渡の関係が成立した。
 一審の東京地裁判決は、日本の著作権法77条により、著作権の移転については登録しなければ第三者に対抗できないとして、譲渡登録を完了した被控訴人を著作権者として、控訴人の請求をすべて棄却した。これを不服として控訴したものである。
 これに対し知財高裁は、本件譲渡契約1及び2は有効に締結されており、本件著作権はA及びBから上野商会を経て控訴人に移転している。A及びBから被控訴人への「本件譲渡契約3は成立していないかまたは虚偽表示により無効であって、本件著作権は譲渡されておらず」、 被控訴人は背信的悪意者と認められるから、控訴人に対して著作権法77条の対抗要件の欠缺(けんけつ)を主張できない等として、控訴人を著作権者と認定し、被控訴人に譲渡登録の抹消手続きを命じた。
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3月27日 商標“AJ”審決取消事件(2)
   知財高裁/判決・請求認容
 イタリアの著名デザイナーのジョルジオ・アルマーニの、墨塗り長方形の中に「AJ」の2字を白抜きにした商標登録申請に対し、特許庁は、「簡単かつありふれた標章からなる商標であり、自他商品の識別力がない」として拒絶査定をした。これに対する不服審判請求が「成り立たない」との審決を得たので、控訴した。
 知財高裁は、審決は「極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標」という商標法3条1項五号該当性については検討しているが、本件の主要な争点である同条2項使用による顕著性、「使用された結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」についての検討をしていない。したがって、審決は、理由不備の違法があるので取消すとした。
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3月27日 安倍前首相元秘書への名誉毀損事件(週刊現代)
   山口地裁下関支部/判決・請求棄却(控訴・控訴棄却・確定)
 2006年8月から10月にかけて「週刊現代」(講談社)にフリージャーナリストが連載した連載記事中で、安倍氏が元秘書に語ったとされる虚偽の記事によって地元の声望が地に落ち、名誉を傷つけられたとして、元秘書が慰謝料と謝罪広告を求めて提訴したが、山口地裁は、「原告の発言内容がおおむねその通りに掲載されているとして」請求を棄却した。

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3月28日 「沖縄ノート」の“集団自決”名誉棄損事件
   大阪地裁/判決・請求棄却(控訴)
 大江健三郎著「沖縄ノート」(岩波書店刊)で、太平洋戦争後期、沖縄の座間味島、渡嘉敷島の住民に集団自決を命じ、自分は生き延びたとする虚偽の事実を指摘されて名誉を傷つけられたとして、当時の座間味島守備隊長と渡嘉敷島隊長(故人)の弟が、大江氏と出版社に謝罪文の掲載や損害賠償を求めて訴訟を起こした。
 大阪地裁は、「沖縄ノート」では氏名を特定していないが同定は可能であり、原告の社会的評価を低下させたとしながらも、専ら公益目的で出版されたものであり、原告が「本件書籍にあるような内容の自決命令を出したことを真実と断定できないとしても、これらの事実については合理的資料又は根拠がある」として、名誉棄損を認めず、請求を棄却した。
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3月28日 書籍の増刷確認事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 平成11年11月、原告は文芸社と著書「世界初、大発見地震予知確立」の出版契約を交わした。翌12年5月、文芸社は初版1200部を本体価格1000円で発行し、同年9月、初版に係る著作権使用料を支払った。
 原告は、平成17年度〜19年度の著作権使用料の支払いに関する支払調書控えの閲覧及び著作権使用料の支払いを求めて提訴した。
 東京地裁は、初版1200部を超えて発行された証拠がないこと、したがって著作権使用料の支払いがないので、そもそも支払調書が作成されることがないとして請求を棄却した。
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3月31日 マリリン・モンローの肖像権事件B
   ロサンゼルス連邦地裁/判決・請求認容
 モンローを撮影した写真家の遺族が、1962年に死亡した女優マリリン・モンローの肖像権をめぐって訴訟を起こし、ロサンゼルス連邦地裁は、肖像権は死亡時に消滅しており、モンローの遺産管理団体に使用料を払う必要はないとする判決を言い渡した。
 ニューヨーク州では死亡と同時に肖像権は消滅すると規定されているが、カリフォルニア州では死後も保護される。モンローがどちらの市民であったかが争われ、ロサンゼルス連邦地裁は、元家政婦の証言を重視し、死亡時はニューヨーク州民であったと認定した。

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4月7日 映画「Shall we ダンス?」の振り付け侵害事件
   東京地裁/提訴
 社交ダンスブームを生んだ周防正行監督の映画「SHALL we ダンス?」のダンスシーンの振り付けを担当したわたりとしお氏は、無断でテレビ放映やDVD化等に二次利用されたとして、角川映画を被告として、著作権侵害による損害賠償請求訴訟を東京地裁に提起した。
 わたり氏は、映画のダンス振り付けは、社交ダンスの基本ステップにない振り付けも多く、独創性、創作性があり、著作権法10条1項三号「舞踊又は無言劇の著作物」に当たり、二次使用料を受け取る権利があるとしている。

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4月15日 高校生の海賊版ソフト ネット販売事件(刑)
   宮城県警/書類送検
 宮城県警生活環境課と大河原署は、ファイル共有ソフトを通じて入手したアドビシステムズのソフトやマイクロソフトのソフト等、約100タイトルを、権利者に無断でCD−RやDVDに複製し、小遣い稼ぎのために販売していた札幌市の男子高校生(17歳)を著作権侵害事件として仙台地検に書類送検した。

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4月16日 HPへの教材無断掲載事件(ジョージア州立大学)
   ジョージア州連邦地裁/提訴
 学術出版物も多い英米の大手出版社3社は、米ジョージア州立大学が、教材としている書籍を出版社の許諾なく同大学のオンライン・システムにアップロードして、学生がデジタル・コピーをダウンロード出来る環境を提供しているのは著作権侵害行為であるとして、デジタル・コピー配布の永久差止めを求めて提訴した。
 提訴したのは、英国Oxford University Press、英国Cambridge University Press、米国Sage Publicationsの3社。

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4月17日 商標“青森”侵害事件(中国)B
   中国商標局/異議申立
 中国の果物取引業者が「青森」にそっくりな商標(「青森」の「森」が、「木」ではなく「水」3つ)の登録を申請し、告示されたため、全農青森県本部など5団体は連名で中国商標局に異議申立書を提出した。
 2003年、広州市の業者がリンゴ等を指定商品とした「青森」の商標申請対しては、青森県の異議申立を認める裁定が下されている。

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4月18日 イラストの無断転用事件B
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 原告は、被告(広告代理店)に発注した雑誌広告用のイラストを自社製品のパッケージに使用したが、これが第三者の著作権を侵害したとされ、1200万円の損害賠償金を払ってイラストレーターと和解した。
 原告は、この損害金はイラスト使用に関与した被告広告代理店の債務不履行、不法行為に起因するとして損害賠償を求めた。
 イラストは、著作権・著作者人格権の処理に関する契約書がないまま、平成5年、原告が被告に発注し、外部デザイン会社を経て、山梨県在住のイラストレーターによって描かれ、納入された。被告広告代理店は、当初はイラストのデザイン変更等の改変を把握していたが、平成12年から他の広告会社や原告自らデザインの変更を担当し、被告広告代理店は、広告掲載の取次をするだけとなった。この状況下で、被告広告代理店にどのような著作権法上の義務があったかが争われた。
 東京地裁は、被告代理店には「著作者から翻案の許諾を得、著作者人格権が行使されないように権利処理を行う義務があり」、原告にその使用をしないように連絡するなどして、原告の被害の拡大を防止する義務を負っているとした。被告は、原告には伝えたと主張したが、判決では、「被告としては、以後責任を負えないことを明確に伝え、本件イラストの使用中止を強く求める」ものではなかった、著作権法上の問題が生じないように権利処理を行う義務を履行していないことは明らかである等として、前訴の和解金1200万円は被告の債務不履行に起因すると認め、約3012万円の損害金の支払いを命じた。
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4月18日 研修マニュアルの著作権侵害事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 原告会社を退社して被告会社を設立し、原告の発行するネットワーク研修用教本に2章を加えて書籍名を変えて出版した「アドバンサーブ」社、被告教本を販売した研修講師の派遣を請け負う被告会社「ウチダ人材開発センタ」の両社に対して、原告は自社の著作権(複製権)を侵害されたとして、複製・販売の禁止、損害賠償を求めて提訴した。
 東京地裁は、アドバンサーブについては、原告教本に依拠してこれを異なる書名で複製し、原告を著作者として表示せずに被告教本を作成したものであるとして、原告の著作権及び著作者人格権を侵害したと認めたが、被告ウチダに対する請求については、被告教本が原告の著作権を侵害して作成されたことを認識していたとは言えず、したがって、著作権法113条1項二号の「情を知って頒布した」とみなすことはできないとして、被告ウチダに対する請求を棄却した。
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4月22日 「オリコン」中傷記事事件
   東京地裁/判決・本訴請求一部認容、一部棄却、反訴請求棄却(控訴)
 音楽情報提供最大手のオリコンが、月刊誌「サイゾー」に掲載された烏賀陽氏のコメントで名誉を傷つけられたとして、5000万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は100万円の支払いを命じた。
 「コメントがそのまま掲載されることに同意していた場合は、取材に応じた側も例外的に責任を負う」とした。

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4月23日 JASRAC「包括利用許諾契約」事件
   公正取引委員会/立入り検査
 公正取引委員会は、著作権管理事業者である日本音楽著作権協会(JASRAC)を独占禁止法違反(私的独占)の疑いで立ち入り検査した。
 JASRACは音楽を大量に使う放送局と楽曲利用に関して包括契約を結んでいて、放送事業収入の一定割合を支払うことで、楽曲数や使用頻度に関係なく自由に使用することができる。放送局は楽曲ごとの利用状況を報告する手間が省け、JASRAC側のチェック業務も軽減される。“どんぶり勘定”ではあるが、双方にとって便利な契約である。しかし一方では、新規参入した音楽著作権管理事業者の場合は、使用数と頻度によって支払額も違ってくることから、放送局側が手続きの煩雑さや新たな負担を嫌って、管理楽曲の使用を見合わせる傾向もあるという。
 公取委は、包括契約が新規事業者の著作権管理市場への参入を不当に締め出し、競争を妨げる要因ではないかと判断したようである。

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4月25日 複製写真の不正競争事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 四国八十八ケ所霊場会(被告霊場会)が所有し著作権を有している仏像画を写真に撮影した原告は、同写真を使った写真集を出版した。被告霊場会等は、原告に無断でこの写真集から仏像画を写真撮影してお札を製作し、販売した。そこで原告は、被告の行為は旧不正競争防止法2条1項三号の「他人の商品の形態の模倣行為(デッドコピー)」にあたり、不正競争行為、不法行為である等として損害賠償を求めて提訴した。
 東京地裁は、この場合「他人の商品」とは本件書籍であって、原告の写真ではない等として原告の主張を退け、また、被告霊場会が原告の写真を掲載した書籍から写真撮影したことは、原告の成果にただ乗りした面があることは明らかだが、仏像画の著作権に基づき被告霊場会がお札を製作し、販売することに何ら問題はないとした。
 逆に、原告が被告霊場会の仏像画写真をお札として製作・販売することは被告霊場会の著作権を侵害する行為であり、札所でない原告には実際上これをすることが出来ない。したがって、原告と被告霊場会とはお札の製作・販売に関して競合する関係になく、不法行為に当たらない等として請求を棄却した。
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4月25日 商標“ほっかほっか亭”侵害事件
   東京地裁/判決・本訴請求棄却、
  反訴主意的請求棄却、反訴予備的請求一部認容、一部棄却
 持ち帰り弁当「ほっかほっか亭」を買収し、九州や東日本でチェーン店を展開する「プレナス」が、営業権管理会社の「ほっかほっか亭総本部」に対して、商標使用料の一部約9000万円の支払いを求めた訴訟(本訴)に対して、ほっかほっか亭総本部は、商標の無償専用使用権を有することの確認を求める訴訟(反訴)を提起していた。
 東京地裁は、プレナスが商標権者であることは認めたが、プレナスが商標権者から買収する以前に、ほっかほっか亭総本部に商標使用権を設定する黙示の合意が商標権者との間に成立しており、この合意は終了していない等として、プレナスの請求を棄却し、4商標中の3商標について、ほっかほっか亭総本部が無償の独占的通常使用権を有するとした。
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4月25日 受刑者モデル小説事件(2)
   福岡高裁/判決・控訴棄却
 熊本刑務所の男性受刑者が、所内誌に、自分が関与した殺人事件を題材にした小説が掲載され、受刑者は所内誌の回収を求めたが応じられなかったので、国に慰謝料等を求めて起こした訴訟の控訴審である。
 福岡高裁は、5万円の支払いを命じた一審判決を支持し、国の控訴を棄却した。「事件とほぼ同じ内容の詳細な事実が記載されており、プライバシー権を侵害している」として、刑務所側の過失を認めた。

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5月15日 商標“TEDDYBEAR”侵害事件(2)
   知財高裁/判決・請求棄却
 ジャス・インターナショナル(株)は、指定商品を第17類「被服、布製身回品、寝具類」とする、「テディベア」「TEDDYBEAR」と上下2段に書分けた本件商標が、被告(株)友企画によって国内で3年以上使用されていない等として、登録取消の審判請求をしたが、請求不成立の審決を得たために、控訴した。
 知財高裁は、タオルを販売していた(株)ドウシシャは本件商標の通常使用権者であり、本件商標とドウシシャの使用商標は「社会通念上同一の商標」であるので、本件商標は使用されたと認定し、請求を棄却した。
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5月16日 「原田ウィルス」亜種の配信事件(刑)
   京都地裁/判決・有罪
 同級生の顔写真等の画像を使用したウィルスを作成し、「Winny」を通じて配布して被害者の名誉を毀損し、人気アニメ「CLANNAD」の画像を許可無く使用して原田ウィルスを作成し著作権を侵害したとして、刑事告訴されていた大学院生に対して、京都地裁は、懲役2年、執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。
 「原田ウィルス」の約100種類に及ぶ亜種も全てこの大学院生が作成したとされるが、ウィルス作成自体を罰する刑罰が無いために、著作権法違反と名誉毀損の罪で起訴していた。ウィルス作成者が刑事罰に問われた初めてのケースである。

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5月20日 建設機械リース管理ソフトの著作権侵害事件
   大阪地裁/判決・第1事件請求一部認容、一部棄却、
  第2事件請求棄却、第3事件請求棄却
 第1事件原告(以下「原告」)は、「弊社の権利を侵害している会社(弊社が解雇した社員が設立した会社)と取引すると、法的な差止請求をされる可能性がある」等とする文書(本件文書)を配布され、「不正競争行為により営業上の利益を侵害」されたとして、不正競争防止法4条に基づく損害賠償請求、信用回復措置を求めた(第1事件)。
 一方、第1事件被告(以下「被告」)は、原告のプログラムは自社プログラムの著作権(複製権、翻案権)を侵害しているとして、原告会社や原告会社従業員(被告会社を解雇された元従業員)らを著作権法違反で提訴し、複製、製造、頒布、翻案等の差止及び損害賠償を求めて提訴した(第2、3事件)。
 知財高裁は、第1事件については、本件文書は原告の営業上の利益を侵害する虚偽事実の告知または流布及び信用を棄損する不法行為である等として、損害賠償、謝罪文の送付を命じた。
 一方、第2、3事件については、プログラム中、被告が「同一と指摘するのは649行あるが、そのうち629行はビジュアルベーシックでプログラムを組むための命令、関数または文法のいずれかであって、創作性はない」、残りの20行も「画面の各項目の名称を表現するもの」で、原告プログラムが被告プログラムに依拠して作成されたものとは到底認められない等として、請求を棄却した。
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5月21日 「『南京虐殺』の徹底検証」の“ニセ被害者”事件(2)
   東京高裁/判決・控訴棄却
 南京大虐殺の生存被害者とされる夏淑琴(一審原告)さんが、「『南京虐殺』の徹底検証」の中でニセ被害者とされたとして、著者と出版社を名誉棄損で訴えていた訴訟の一審被告による控訴審で、この日、判決があった。
 控訴審で、著者、出版社(一審被告)は、夏淑琴さんが南京事件の被害者であるとする根拠となっている「資料」は「創作話」であるとの主張を展開したが、東京高裁は、第一審では「資料」を前提として、資料中の8歳の少女と夏さんとは別人であるとの主張をしておきながら、いまさら資料を「創作話」であるとする主張は採用できないとして、これを退け、一審判決を維持した。

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5月23日 ネット掲示板の中傷事件(女子児童)
   大阪地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 
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5月28日 テレビ番組送信サービス事件(ロクラクU)
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 NHKと都内及び静岡県内の民放9局は、親子機能を有する2台の「ロクラクU」をセットで販売あるいはレンタルして、日本のテレビ番組を海外でも視聴できるようにした日本デジタル家電(被告)のサービスが、著作権侵害、著作隣接権侵害に当たるとして、サービスの差止及び損害賠償を求めて提訴した。
 被告は、複製行為は利用者の私的使用のための複製にすぎず、親機の管理も他の業者に委ね、被告の管理支配する場所に設置されたことは一切ないと主張した。
 しかし、東京地裁は、本件モニタ事業実施時期には、利用者から特段の申し出がない限り、親機ロクラクは被告が提供する場所に設置されていたし、その後も、親機ロクラクの設置場所として東京周辺、名古屋周辺、静岡周辺地区の設定が可能であると説明しているところからも、親機の設定場所について一定の関与をしていたというべきであって、原則として被告の実質的支配下にあり、本件サービスを利用するための環境の提供を含め、実質的に被告が管理していた。また、「親機ロクラクの設置場所を提供して管理支配することで、国外の利用者が格段に利用しやすい仕組みを構築し、いまだ、大多数の利用者の利用に係る親機ロクラクを、東京都内や静岡県内において管理支配しているものということができる」等として、テレビ番組の複製行為を行っており、複製権、著作隣接権としての複製権を侵害しているとした。
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5月28日 商標“CHARGE”侵害事件(2)
   知財高裁/判決・請求認容
 加美乃素本舗は、「トリートメントチャージ」「TREATMENT CHARGE」と上下2行に書き分ける被告商標が、「CHARGE」「チャージ」と2段に書き分ける自社の商標、「CHARGE」の文字の右肩に小さく「チャージ」の文字を配した自社商標に類似するとして、登録の無効審判を請求したが、請求不成立の審決を得たために、控訴した。
 知財高裁は、「トリートメント」「TREATMENT」は「化粧品、せっけん類」に使用された場合、識別力が乏しい言葉であるとし、他方、「チャージ」「CHARGE」は特に識別力が高いとはいえないまでも、「トリートメント」よりは識別力が高いことは明らかである等として、外観、称呼及び観念において共通しているから、類似商標であるとして、請求不成立の審決を取り消した。
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5月28日 インターネットカフェ利用者情報開示請求事件(2)
   東京高裁/判決・取消(確定)
 映像、音楽、文字情報を加工・編集した制作物等のソフトウェアを企画し、配信することを業とする株式会社とその代表取締役が原告となり、インターネット上の掲示板に書き込まれた情報により名誉等の権利が侵害されたと、「プロバイダ責任制限法」に基づき、発信者情報の開示を求めて訴えた。被告は複合カフェで、店内での飲食と共に、店内のネット接続された端末機器を使って会員登録をした顧客がネット利用することができるサービスを、行っていた。氏名不詳の顧客が「ヤフーファイナンス掲示板」上に書き込んだメッセージが問題視されたわけだが、原審では、原告の主張が認容され、開示命令が出されていた。
 被告(控訴人)は、これを不服として控訴した。本件の「発信者情報」とは、本件書き込みがされた日時に当該店舗を利用していた者の氏名及び住所の開示を求めるものだった。高裁は、この複合カフェが「発信者情報」を保有しているといえるかについて着目し、検討した。本件では複合カフェはPOSシステムの形で、どの顧客が本件書き込みのされた日時に当該店舗を利用していたかという情報を保有していただけであった。つまり、ネットに当該書き込みをした発信者が誰かという端的な情報は、保有していないともいえた。
 また、「プロバイダ責任制限法」が想定している発信者情報開示請求とは、ネット接続サ−ビスを行うプロバイダ等が該当する特定電気通信の過程において、具体的に把握された発信者の情報(住所、氏名等)を対象とするという趣旨で設けられたものである。高裁はこう判示して、被告(控訴人)はネット接続事業運営者ではない複合カフェであり、本件のように発信者が特定できない状況では、被控訴人(原告)の求める発信者発見の手掛かりになるような情報は法で規定する発信者情報には当たらないとして、被控訴人(原告)らの請求は失当と、原判決を取り消し、棄却した。
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5月29日 法律実務書題号の著作物性事件
   大阪地裁/判決・主意的請求棄却、予備的請求棄却(控訴)
 昭和63年以来、「時効の管理 法律問答一三〇」等、題号に「時効の管理」を冠する法律実務書を多数著わしてきた原告は、新日本出版(株)が「時効管理の実務」を出版したところ、「時効の管理」の題号に著作物性があるとして、著作権侵害、著作者人格権の侵害による複製、販売、頒布の禁止、損害賠償を求めて提訴した。
 大阪地裁は、『「時効の管理」は、時効に関する法律問題を論じようとする際に不可避の用語である「時効」に、日常よく使用され、民法上も用いられている用語である「管理」』を組み合わせたありふれた表現にすぎず、あるいは、債権の管理行為について論じようとするとき、「消滅時効の管理」というのはごく自然な表現である等として、著作物性を否定した。また、「時効の管理」を原告の周知著名な商品表示とはいえないから、不正競争防止法に基づく請求にも理由がないとして、原告の請求を棄却した。
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5月29日 立体商標“コカコーラ”事件(2)
   知財高裁/判決・請求認容(確定)
 コカ・コーラの瓶の形状を立体商標として登録できるかを争っていた訴訟において、知財高裁は、「商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるとして、商標法3条1項三号に該当し、請求不成立とする」特許庁の審決を取り消した。
 商標法3条1項三号に該当するとする審決の判断に誤りはないが、リターナブル瓶入りの本商品は、日本国内でも昭和32年から一貫して同一の形で販売されており、23億8000万本を売り上げた昭和46をピークに、缶入り商品等の販売比率が高まるにつれて売り上げが減少しているとはいえ、今なお年間9600万本を販売しており、ボトルの形自体に自他識別能力があり、周知著名であるとして、商標法3条2項に該当し、登録できるとした。
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5月30日 商標“Kent”侵害事件(2)
   知財高裁/判決・請求棄却
 平成16年、「かばん金具、皮革製包装容器」等を指定商品とする被告商標「Kent Family」が商標登録された。
 やや傾斜させて表記した「KENT」商標及び「ケント」と「KENT」を上下2段に書き分けた原告商標の商標権者である(株)ケントジャパン(原告)が、被告商標は、他人の先登録と類似であり、他人の商品又は役務と混同を生じるとして、登録無効審判請求をしたが、請求不成立の審決を得たために控訴した。
 知財高裁は、一連に表記された被告商標と原告商標とは外観において類似しないとし、「ケントファミリー」と「ケント」の称呼も非類似であり、「Kent家、Kent一族」の観念が生じる被告商標と男の名「ケント」又は英国の州名等の観念しか生じない原告商標は、観念においても類似しない等として、請求を棄却した。
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6月11日 「占い本」の著作権侵害事件(激数占い)
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 「数霊占術講義(1)入門初級編(改訂版)」の著者は、被告の著書である講談社の「運命の激数占い」及びテレビ朝日の「激数占い」はいずれも著作権を侵害しているとして、被告著者、講談社、テレビ朝日に対して、発行、販売の差止、損害賠償や謝罪広告を求めて提訴した。
 原告は、「生年数」(被告書籍では、「宿命数」)を旧暦に基づいて算出すること、「命数」(被告書籍では、「宿命数」)の出し方の説明、「破壊数」の説明等々、数か所にわたる侵害があると主張した。
 東京地裁は、原告の主張は「アイデア」における同一性を指摘するもの、表現において全く異なっているもの、ありふれた表現で創作性がない部分等であるとして、複製権侵害、翻案権侵害、同一性保持権侵害のいずれにも当たらないとして、請求を棄却した。
判例全文
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6月12日 慰安婦法廷番組の改変事件(3)
   最高裁(一小)/判決・破棄自判、追加請求棄却、取消、附帯上告棄却
 民間の「女性国際戦犯法廷」を取り上げたNHKの番組が、取材担当者の説明と異なり、「番組内容に対する期待と信頼」に反するものとなったとして、損害賠償を請求していた裁判の上告審である。
 最高裁は、東京高裁の判決を破棄し、市民団体の請求をすべて退ける判決を言い渡した。
 放送法によれば、「放送番組は、何人からも干渉され、又は規律されることがない」としており、「国民の知る権利に奉仕するものとして表現の自由を規定した憲法21条の保障」の下にあり、番組編集は放送事業者の自律的判断にゆだねられているとした。
 二審判決では、「取材者の言動等により取材対象者がそのような期待を抱くのもやむを得ない特段の事情が認められるときは、編集の自由も一定の制約を受ける」としたが、最高裁は、取材対象者の「期待や信頼は原則として法的保護の対象とならない」とした。しかし、「取材対象者に格段の負担が生じる場合」等、一定の条件の下では「法律上保護される利益となり得る」としたが、この点については、取材対象者が抱いた内心の期待、信頼をその都度確認しなければならないとしたら、取材活動の委縮を招き、放送番組への介入を許容する恐れがある、取材対象者の期待、信頼は法的保護の対象にならないとする横尾和子裁判長の意見が付せられている。
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6月14日 NHKニュース番組の写真無断使用事件(刑)
   北海道警西署/告訴(書類送検・不起訴)
 札幌市在住の写真家が、NHK総合テレビの全国ニュース「風力発電開発へファンド創設」の中で、写真家が撮影した風車の風景写真2点がトリミングされ、一部色を変える等改変し無断で使用されたとして告訴した。

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6月18日 商標“GABOR”侵害事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 スカルのシルバーチェーン等、シルバーアクセサリーの著名ブランド「Gabor」の創設者ガボール・ナギーの死後、その事業継続を巡って、遺産相続人である妻のマリア・ナギーと、アクセサリーの輸入販売代理店との間で争われた。
 ガボラトリー・インク及び妻を原告とし、舶来バッグやアクセサリーの輸入卸業者を被告として、原告商標の類似商標使用差止、製品の輸入販売の差止、在庫品の廃棄、損害賠償等を求めて訴訟が提起された。
 被告は、類似商標は米国CDM社の商標権に基づくものだとした。CDM社によれば、ガボールと共にシルバーアクセサリーを製造していた従業員Eが、ガボールの遺言と原告会社との契約により、原告会社の営業上の全権利を譲渡されてインターナショナル社を設立し、CDM社はこのインターナショナル社から、商標権を含む営業上の全権利を譲渡されたと主張した。
 東京地裁は、製品の立体形状は原告会社の商品表示として周知著名であり、その周知著名性は現在まで継続しているとした。また、遺言書、及びオリジナルのシルバー金型、営業権を含む譲渡契約書についは、遺言書写し、契約書写しの提出はあっても原本の提出がなく、証拠として採用することが出来ない等として、損害賠償額を除いて、原告等の主張を全面的に認容し、被告の主張を退けた。
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6月19日 性格心理テストの著作権譲渡事件B
   大阪地裁/判決・請求認容
 YG性格検査の開発者であるP1教授の未亡人が平成18年8月2日に死亡したことにより、その子である原告は、YG性格検査の著作権の共有持分を相続取得したことの確認を求めて訴訟を提起した。
 被告は、現行検査用紙にP1が著作者の1人として表示されているのは、「検査用紙」の著者としてであり、検査項目の著者ではない。P1は現行質問項目の選択に関わっていないので、P1の著作権(持分権)は認められない等と主張した。
 大阪地裁は、著作権法14条の著作者の推定規定について、現行検査用紙に「著者」として表示されている者は、その実名が「著作者名として通常の方法により表示されている者」であり、同時に著作物である本件質問項目の「公衆への提供若しくは提示の際に」実名が「著作者名として通常の方法により表示されている者」であるから、P1は本件質問項目の著者と推定できるとした。また、現行質問項目は、旧質問項目に依拠して作製された二次的著作物である等として、P1を共同著作者と認定し、P1の死亡によりその妻P2が単独で権利を相続し、P2の死亡によってYG性格検査に関わるP2の権利を原告が単独で取得し、持分は100分の9であるとして、原告の請求を認容した。
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6月20日 テレビ番組送信サービス事件(まねきTV)
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 NHK及び在京民法5局(原告)は、「まねきTV」という名称で、契約した遠隔地利用者がインターネット回線を通じてテレビ番組を視聴できるようにする被告サービスが、放送事業者の有する送信可能化権、公衆送信権を侵害しているとして差止請求、及び著作権侵害、著作隣接権侵害による損害賠償請求訴訟を起した。
 原告らは、平成18年、送信可能化行為差止の仮処分命令を申し立てたが、被保全権利について疎明がないとして申立て却下の決定。この決定に対して知財高裁に抗告を申し立てたが、抗告棄却及び追加申立て却下の決定。更に知財高裁への許可抗告申立てに対して不許可の決定と、既に3回の司法判断を経ており、訴権の濫用であると被告は主張した。
 知財高裁は、仮処分は本案手続きが存在し得ることを前提としており、仮処分申立てが却下された場合でも変わらないとした。
 また、本件サービスで送信を行う機器はベースステーションであるが、「本件サービスにおいては、各利用者が、自身の所有するベースステーションにおいて本件放送を受信し、これを自身の所有するベースステーション内でデジテル化した上で、自身の専用モニタ又はパソコンに向けて送信し、自身の専用モニタ又はパソコンで」受信、視聴している。また、ベースステーションは「1対1」の送信をする機能を有するに過ぎないので「自動公衆送信」には該当しない等として、請求を棄却した。
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6月23日 日めくりカレンダー配信事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却(確定)
 365枚の日めくりカレンダー用デジタル写真集を作成し、携帯電話待受画像配信用に著作権を全部譲渡したが、実際には毎週1枚のペースでしか配信しなかったことが、編集著作物の同一性保持権等を侵害するとして、損害賠償として慰謝料の支払いを求めた訴訟の控訴審である。
 争点は、(1)本件写真集は編集著作物か、(2)上記配信は同一性保持権を侵害するか、(3)上記配信方法について明示又は黙示の合意があったか等であった。
 原審の東京地裁判決は、(3)についてのみ判断し、黙示の合意があったとして請求を棄却した。これを不服として控訴したものである。
 知財高裁は、過去に撮影しストックした写真を、365日の日ごとに季節・行事等にふさわしい花と対応させたものであるから、写真自体が著作物であると同時に編集著作物でもあるとした。しかし、同一性保持権侵害については、編集著作権の譲渡を受けた被控訴人がおよそ7枚に1枚の割合で一部を使用し、公衆送信したものであるが、その際、写真の内容に変更を加えたことはないから、著作権法第20条の同一性保持権侵害にはあたらないとした。したがって、明示または黙示の合意について判断するまでもなく、同一性保持権侵害を理由とする損害賠償請求は理由がないとして、請求を棄却した。
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6月24日 商標“MACKINTOSH”侵害事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 日本国内でアイルランド製のコート類の販売を計画する3社(以下、被告らという)は、その5つの標章が、英国法人マッキントッシュ社(以下、原告という)の商標権を侵害するとする使用差止請求を認容した原判決を不服として控訴していた。
 知財高裁は、原告の被告らに対する差止請求を認容するとして、本件商標の要部は「MACKINTOSH」であり、外観、称呼等が同一で類似するとして、控訴を棄却した。
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6月25日 ネットワーク技術者入門書の著作権侵害事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 原告は、システム開発、エンジニア教育を主事業とし、エンジニア教育・育成サービスに際して、講師派遣と原告教本をセット販売していた。
 被告(株)アドバンサーブは、原告の元取締役Aや元従業員によって設立された。
 原告は、原告の職務著作物である原告教本を被告が無断で複製し、被告が著作者であると表示し、被告(株)ケンソフトに販売した、被告ケンソフトはこれに自己の名称を付記して販売して原告の複製権及び氏名表示権を侵害したとして、被告らに対して、それぞれ複製及び販売の差止め、民法709条、710条に基づく不法行為、非財産的損害の賠償を求めて提訴した。
 被告は、原告教本はAを中心とする講義担当派遣講師らが講義をしやすくするための補足資料として、それぞれ自主的に作成したものをまとめたものであり、原告の発意も指示もない、したがって、著作権、著作者人格権は自分たちにあり、原告の職務著作は成立しない等と主張した。
 東京地裁は、職務著作の要件である「法人等使用者の発意」とは、「個別具体的な命令がされたような場合のみならず、当該雇用関係から外形的に観察して、法人等の使用者の包括的、間接的な意図の下に創作が行われた」場合も含むとし、「職務上作製された」とは、個別具体的に命令された内容だけでなく、当該職務の内容として従業員に期待されているものも含むとし、「Aは当時原告の従業員であった」、「自己の名義」である「KYOSAI」が付されて公表されているので、職務著作の要件を充足しているとした。
 また、被告ケンソフトに対しては、被告教本が原告の著作権及び著作者人格権を侵害して作成されたものであることを知って販売したことは原告の著作権、著作者人格権の侵害行為とみなされるとして、それぞれにあるいは連帯して損害賠償の支払いを命じた。
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6月26日 断熱建材の不正競争事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却、
        主位的請求棄却、予備的請求棄却
 原告は、米国の遮熱材製造会社の日本における総代理店となり、自ら米国の本社工場内の写真(本件写真1)を撮影した。この写真、及び本社から著作権を譲り受けた遮熱材の写真(本件写真2−1)、絶縁テープ(本件写真2−2)、遮熱材の構造図(本件図面)を、被告らが、書籍やホームページに掲載した行為は、不正競争防止法上の不正競争にあたり、原告の著作権(複製権、著作者人格権)も侵害するとして、被告A及び(株)せらら工房等3社に対して、書籍の増刷等の差止、損害賠償等を求めて提訴した。
 原告は、これら写真や図面は原告の商品又は営業の表示として周知であると主張したが、遮熱材に写真等を付して販売しているわけではないから営業主体を識別する表示とはならず、周知でもないとして、不正競争は認められないとした。
 また、本件写真2−1、2−2、本件図面については本社の著作物であるとの証明がなく、譲渡の事実を認めるに足る証拠もないとしたが、本件写真1は、原告自身を著作権者とする著作物であり、掲載にあたって氏名を表示しなかったことは氏名表示権の侵害に当たるとして、被告Aと被告せらら工房に損害賠償金の支払いを命じ、その他の請求をすべて棄却した。
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6月26日 書籍の増刷確認事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却、拡張請求棄却
 原告は、初版1200部を超えて発行された書籍について支払調書控えの閲覧を請求し、初版を超えて発行された少なくとも6万6667部について支払調書控えと印税の支払いを求めて控訴した。
 知財高裁は、(株)フクインが被告より受注した製作部数は1200部であり、それを超えて製作していない旨の証明があること、フクイン以外の業者に発注したことを窺わせる証拠はない等として、請求を棄却した。
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