判例全文 line
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【事件名】研修マニュアルの著作権侵害事件
【年月日】平成20年4月18日
 東京地裁 平成18年(ワ)第26738号 損害賠償等請求事件
 (口頭弁論終結日 平成20年3月7日)

判決
原告 京西クリエイト株式会社
同訴訟代理人弁護士 中山徹
被告 株式会社アドバンサーブ
同訴訟代理人弁護士 石嵜信憲
同 延増拓郎
同 義経百合子
同 小森光嘉
被告 株式会社ウチダ人材開発センタ
同訴訟代理人弁護士 毛受久


主文
1 被告株式会社アドバンサーブは、原告に対し、71万3853円及びこれに対する平成18年12月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告の被告株式会社アドバンサーブに対するその余の請求及び被告株式会社ウチダ人材開発センタに対する請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は、原告に生じた費用の50分の4及び被告株式会社アドバンサーブに生じた費用の50分の7を被告株式会社アドバンサーブの負担とし、原告及び被告株式会社アドバンサーブに生じたその余の費用並びに被告株式会社ウチダ人材開発センタに生じた費用を原告の負担とする。
4 この判決は、第1、3項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求
1 被告株式会社アドバンサーブは、別紙被告教本目録記載の教本を複製し、販売してはならない。
2 被告株式会社アドバンサーブは、原告に対し、326万1542円及びこれに対する平成18年12月14日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告株式会社ウチダ人材開発センタは、別紙被告教本目録記載の教本を販売してはならない。
4 被告株式会社ウチダ人材開発センタは、原告に対し、176万1542円及びこれに対する平成18年12月13日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 本件は、被告株式会社アドバンサーブ(以下「被告アドバンサーブ」という。)が、原告に無断で、原告が著作者である「ネットワーク基礎」と題する別紙原告教本目録記載の教本(以下「原告教本」という。)を複製し、著作権者を被告アドバンサーブ、書名を「LAN・ネットワーク設計コース」とする別紙被告教本目録記載の教本(以下「被告教本」という。)を作成したことについて、原告が、被告アドバンサーブの上記行為は、原告の著作権(複製権)及び著作者人格権(氏名表示権・同一性保持権)を侵害し、かつ、今後も侵害するおそれがあると主張して、被告アドバンサーブに対し、侵害の停止又は予防として、被告教本の複製、販売の差止めを請求するとともに、著作権侵害及び著作者人格権侵害の不法行為に基づく損害賠償を請求し、また、被告株式会社ウチダ人材開発センタ(以下「被告ウチダ」という。)が被告教本を販売したことについて、原告が、被告ウチダの上記行為は、原告の著作権(複製権)を侵害する行為によって作成された被告教本を情を知って頒布することにより原告の著作権を侵害し(著作権法113条1項2号)、かつ、今後も侵害するおそれがあると主張して、被告ウチダに対し、侵害の停止又は予防として、被告教本の販売の差止めを請求するとともに、著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償を請求する事案である。
1 争いのない事実等(証拠を掲げていない事実は当事者間に争いがない。)
(1) 当事者
 原告は、コンピュータ、ネットワーク、ソフトウェア、計測関連の技術者養成及び教育事業等を目的とする株式会社である。
 被告アドバンサーブは、情報システムの企画、開発、製作及び販売業務等を目的とする株式会社である。
 被告ウチダは、労働者派遣業務、紹介予定派遣業務及び有料職業紹介業務等を目的とする株式会社である。
(2) 被告アドバンサーブの設立の経緯
 A、B、C及びD(以下、これらの4名を合わせて「Aら」という。)は、原告の研修業務を担当する部署であるシステム技術部に所属していた。
 Aは、平成17年6月20日に、B及びCは、同年9月20日に、Dは、同月30日に、それぞれ原告を退社した。(甲4ないし7)
 被告アドバンサーブは、平成17年9月7日、設立された。Aは、被告アドバンサーブの代表取締役に就任し、B、C及びDは、同被告の取締役に就任した。(弁論の全趣旨)
(3) 原告と被告ウチダの契約関係等
 被告ウチダは、平成14年ころ、NTTラーニングシステムズ株式会社(以下「NTTラーニング」という。)との間で、NTTラーニングが主催し、社団法人情報通信設備協会に対して行う、米国シスコ社の認定試験であるCCNA(Cisco Certified Network Associate)試験の合格に向けた研修(以下「ネットワーク研修」という。)に関し、被告ウチダが、ネットワーク研修の講師の派遣に関する業務を行い、NTTラーニングが、同業務に対する報酬を支払うとの契約を締結した。
 また、被告ウチダは、同じころ、原告との間で、原告が、その社員をネットワーク研修の講師として派遣し、被告ウチダが、講師派遣に対する報酬を支払うとの契約を締結した。
 被告ウチダは、平成15年及び平成16年においても上記契約と同一の内容の契約を締結した。
 原告は、上記各契約に基づき、平成14年から平成16年までの間に実施されたネットワーク研修に講師を派遣した。
 (丙3、弁論の全趣旨)
(4) 原告教本
 Aらを含む、原告のシステム技術部に所属していた社員らは、平成16年2月ころ、ネットワーク研修に用いる教材として、「ネットワーク基礎」と題する教本(第1版、甲32)を作成し、同年5月ころ、同教本の改訂版(第2版、甲33)を作成した。これらの教本を一部手直しした教本は、原告から被告ウチダに販売され、平成16年に行われたネットワーク研修において使用された。(丙3、弁論の全趣旨)
 原告教本は、上記教本の改訂版(第3版)であり、その内容は一部の章を除き、第1版及び第2版と同一である。原告教本の表紙を除くページの欄外には「(c) Kyosai Create, Inc. All Rights Reserved.」との記載があり、末尾のページには「著者 京西クリエイト株式会社 システム技術部」との記載がある。(甲1、弁論の全趣旨)
(5) 被告教本
 被告教本の本文及び目次は、別紙被告教本目録記載の第7章「顧客のニーズと目標の識別」及び第12章「セキュリティ」が加えられ、第4章に異なる表題が付されているほかは、原告教本の本文及び目次と同一である。
 被告教本には、原告教本と異なる書名が付されているほか、「本書の著作権は株式会社アドバンサーブにあります。」との記載があり、原告の名称は表示されていない。
 (甲1、2)
(6) 被告アドバンサーブと被告ウチダとの契約関係等
 被告ウチダは、平成17年8月下旬ころ、NTTラーニングとの間で、被告ウチダが、ネットワーク研修の講師の派遣に関する業務を行い、NTTラーニングが、同業務に対する報酬を支払うとの契約、また、被告ウチダが、ネットワーク研修で使用する教本をNTTラーニングに販売し、NTTラーニングが、その代金を支払うとの契約を締結した。(丙3、弁論の全趣旨)
 また、被告ウチダは、同じころ、被告アドバンサーブとの間で、被告アドバンサーブが、その社員をネットワーク研修の講師として派遣し、被告ウチダが、講師派遣に対する報酬を支払うとする契約、さらに、被告アドバンサーブが、ネットワーク研修で使用する教本を作成して販売し、被告ウチダが、教本の作成費用及び代金を支払うとの契約を締結した。(丙3、弁論の全趣旨)
 被告ウチダは、上記契約に基づき、平成17年実施のネットワーク研修への講師派遣並びに教材の作成及び販売を被告アドバンサーブに依頼し、同年9月以降に実施したネットワーク研修について、原告には依頼しなかった。
 被告アドバンサーブは、上記契約に基づき、平成17年に実施されたネットワーク研修用の教本として作成した被告教本79冊を、被告ウチダに対して販売した。(乙7の1ないし4、弁論の全趣旨)
 被告ウチダは、上記契約に基づき、NTTラーニングに対し、被告アドバンサーブから購入した被告教本を販売した。(丙4の1ないし4、弁論の全趣旨)
(7) 別件訴訟の概要
 原告は、本件訴えの提起に先立ち、被告アドバンサーブが、平成17年9月ころから同年11月ころにかけて、被告教本と内容の類似する教本(以下「別件被告教本」という。)を作成、販売したことにより、原告教本に係る原告の著作権及び著作者人格権を侵害したとして、平成18年2月2日、東京地方裁判所に対し、被告アドバンサーブ等を被告として、損害賠償の支払等を求める訴訟を提起した(同裁判所平成18年(ワ)第2012号。以下「別件訴訟」という。)。
 別件訴訟においては、平成18年8月3日、被告アドバンサーブ等が原告の著作権及び著作者人格権を侵害したことを認めるとともに、原告に対し、連帯して、損害賠償金として100万円を支払うこと等を内容とする訴訟上の和解が成立した。(乙1)
2 争点
(1) 原告教本の職務著作性
(2) 被告アドバンサーブによる著作権侵害及び著作者人格権侵害の成否
(3) 被告アドバンサーブに対する差止めの必要性
(4) 被告アドバンサーブに対する損害賠償請求の可否
ア 被告アドバンサーブの故意又は過失の有無
イ 損害額
(5) 被告ウチダに対する差止請求の可否
ア みなし侵害(著作権法113条1項2号)の成否
イ 差止めの必要性
(6) 被告ウチダに対する損害賠償請求の可否
ア 不法行為の成否
イ 損害額
第3 争点に関する当事者の主張
1 争点(1)(原告教本の職務著作性)について
〔原告の主張〕
 原告教本は、原告の発意のもとに企画され、原告の従業員が職務上作成し、原告の著作名義の下に公表された法人著作であるから、その著作者は原告であり、著作権及び著作者人格権は原告に帰属する。
〔被告アドバンサーブの主張〕
 Aらが原告のシステム技術部に従事していたときに、Aを中心として同部の社員が、自ら企画、立案して原告教本を作成したこと、原告教本の著作権及び著作者人格権が原告に帰属していることは認める。
〔被告ウチダの主張〕
 原告の主張は知らない。
2 争点(2)(被告アドバンサーブによる著作権侵害及び著作者人格権侵害の成否)について
〔原告の主張〕
 被告アドバンサーブは、原告に無断で、原告教本に依拠し、これを複製して、書名を「LAN・ネットワーク設計コース」とし、原告の名称が記載されていない被告教本を作成した。
 被告教本が平成15年のネットワーク研修で使用された教本(丙2。以下「平成15年教本」という。)に基づいて作成されたとする被告ウチダの主張及び原告が被告ウチダ及び同被告から委託を受けた者に対し平成15年教本の複製及び改変を許諾したとする被告ウチダの主張は争う。
〔被告アドバンサーブの主張〕
 被告アドバンサーブが、原告に無断で、原告教本に依拠し、これを複製して、原告の名称が記載されていない被告教本を作成したことは認める。しかし、書名については、原告は、ネットワーク研修で使用する目的で被告ウチダに販売する教本に関し、被告ウチダの依頼により、「LAN・ネットワーク設計コース」という書名で販売していたのであり、被告アドバンサーブが原告教本の書名を「LAN・ネットワーク設計コース」と変更したのではない。
〔被告ウチダの主張〕
 被告教本は、被告アドバンサーブが平成15年教本に基づいて作成したものであり、原告教本を複製、改変したものではない。
 すなわち、原告は、平成15年8月ころ、NTTラーニングが独自に作成していた教材と平成14年のネットワーク研修で用いられた資料とに基づいて、平成15年教本を作成し、その電子データを被告ウチダに交付するとともに、平成15年教本に関し、被告ウチダとの間で、@原告は、被告ウチダに対し、NTTラーニングが主催するネットワーク研修で使用する場合に限り、平成15年教本を使用し、複製することを許諾すること、A原告は、被告ウチダに対し、ネットワーク研修の内容等に応じて平成15年教本を改変することを許諾すること、B原告は、NTTラーニングが主催するネットワーク研修で使用する場合に限り、被告ウチダから委託を受けた者に対しても、平成15年教本を使用し、複製し、改変することを許諾すること、を合意した。
 被告教本は、上記Bの許諾に基づき、被告アドバンサーブが、平成15年教本を複製し、これに別紙被告教本目録記載の第12章「セキュリティ部分」を追加して作成したものである。
3 争点(3)(被告アドバンサーブに対する差止めの必要性)について
〔原告の主張〕
 被告アドバンサーブは、平成18年8月ころ、被告ウチダから、NTTラーニングからの購入の申込みがあったとして、被告教本100冊の購入の申込みを受けたことがあった。被告アドバンサーブは、上記依頼を断ったものの、今後、需要に応じて原告教本の複製や被告教本の作成を行う可能性があるため、被告教本の作成、販売の差止めを求める必要がある。
〔被告アドバンサーブの主張〕
 被告アドバンサーブは、被告教本とは全く内容の異なる全く別の教材である新教本が完成したことにより、被告教本を作成、販売する必要がなくなったため、平成17年12月を最後に、被告教本の作成、販売を一切行っておらず、今後も被告教本を作成、販売することは一切ない。
4 争点(4)(被告アドバンサーブに対する損害賠償請求の可否)について
(1) 被告アドバンサーブの故意又は過失の有無
〔原告の主張〕
 原告教本は、被告アドバンサーブの取締役らが原告に在籍中に職務上作成されたものであり、原告教本には、同教本の著作者が原告である旨の表示があるから、被告アドバンサーブは、原告教本の著作権及び著作者人格権が原告に属することを当然に知っていた。
 仮に、Aらが自らに著作権等の法的権利が帰属していると信じていたとしても、それは法律の錯誤にすぎないものであって、故意を阻却するものではなく、少なくとも過失が認められる。
〔被告アドバンサーブの主張〕
 平成14年からネットワーク研修の講師として派遣された原告の社員らは、原告代表者らから指示されることなく、各自の判断で、講義を分かりやすくするための資料を作成し、受講者に提供しており、原告教本はこれらの資料に基づいて作成されたものである。このため、Aらは、上記資料及び原告教本の著作権及び著作者人格権が自己に帰属するものと信じていた。したがって、被告アドバンサーブに著作権侵害及び著作者人格権の侵害についての故意又は過失はない。
(2) 損害額
〔原告の主張〕
ア 著作権侵害による損害(著作権法114条1項)
(ア) 原告は、原告教本を、講師の派遣と一体のものとして被告ウチダに販売している。これにより得られる原告教本1冊当たりの利益の額は、2万2298円である。
 被告アドバンサーブは、被告教本を79冊作成して、被告ウチダに講師の派遣と一体のものとして販売しており、この販売数に上記原告教本1冊当たりの利益の額を乗じると、176万1542円となる。
(イ) 仮にそうでないとしても、原告教本を教本単体で販売した場合に得られる原告教本1冊当たりの利益の額は、原告教本1冊の販売額5500円(甲9ないし13)から、原告教本1冊にかかる印刷代等の製造原価2586円(甲16ないし21)を引いた、2914円である。
 被告アドバンサーブは、被告教本79冊を被告ウチダに販売しており、この販売数に教本単体で販売した場合の上記原告教本1冊当たりの利益の額を乗じると、23万0206円となる。
イ 著作者人格権侵害による損害
 原告教本は、コンピュータ技術に関する教本であり、技術的正確性が要求されること、原告教本は、原告のコンピュータ技術教育により蓄積された業績に基づいて作成された著作物であること、原告教本は、原告の業務上の名誉、信用を表象するものであること等を総合すれば、著作者人格権侵害による損害額は150万円が相当である。
〔被告アドバンサーブの主張〕
ア 著作権侵害による損害
(ア) 以下のとおり、原告には、原告教本の全部に相当する数量を原告が販売することができないとする事情があるから、原告に損害はない(著作権法114条1項ただし書)。
a 原告教本を購入する者は、CCNA試験の問題傾向の変更等に伴って原告教本が改訂されていくことを期待している。原告は、原告教本を作成した社員のほとんどが原告を退社したため、原告教本を改訂する能力を失った。また、原告教本は、講義を分かりやすくするための補助的なものにすぎず、教本単体としての価値はない。原告は、ネットワーク研修の講師を担当していた社員のほとんどが原告を退社したため、講義を提供する能力を失った。
 原告が原告教本を販売することができなかったのは、被告アドバンサーブが被告教本を作成し、販売したからではなく、原告に原告教本を改訂する能力及び販売する能力がなかったからである。
b CCNA試験は年に数回、継続的に変更されること、IT技術の革新は非常にめまぐるしく、新しい技術が生まれても、すぐにより優れた高度な技術が生まれることから、原告教本の価値はない。原告が原告教本を販売できなかったのは、原告教本の価値がなかったからである。
(イ) 仮に、原告に原告教本を販売することができないとする事情があったとはいえないとしても、被告アドバンサーブは、被告ウチダに対し、被告教本を1冊4000円で販売し(乙7の1ないし3)、被告教本1冊にかかる印刷代等の製造原価は2586円であるから(乙10)、被告アドバンサーブが被告教本を作成し、販売したことによって得た被告教本1冊当たりの利益の額は、1414円であり、これに販売数79冊を乗じた利益の額である11万1706円が、原告の被った損害額というべきである。
イ 著作者人格権侵害による損害
 別件被告教本の作成及び販売による著作者人格権侵害によって生じた原告の精神的損害と、被告教本の作成及び販売による著作者人格権侵害によって生じた原告の精神的損害は、同一の人格権侵害が同一の法人の同一の行為によって生じたものであるから、別個に観念することはできない。したがって、原告の主張する精神的損害は、別件訴訟における和解の成立により既に慰謝されている。
5 争点(5)(被告ウチダに対する差止請求の可否)について
(1) みなし侵害(著作権法113条1項2号)の成否
〔原告の主張〕
 被告ウチダは、平成14年から平成16年まで、原告の社員が講師を担当するネットワーク研修を継続的に行ってきたにもかかわらず、Aから原告の教育事業を被告アドバンサーブが承継するとの説明を受けると、Aの説明の真偽を原告に問い合わせるなどして確認することなく、平成17年のネットワーク研修の講師派遣並びに教材の作成及び販売を被告アドバンサーブに依頼し、同被告から被告教本を購入して販売した。被告ウチダは、原告教本に著作権者が原告であるとの表示があることを知っており、原告教本とほぼ同一内容の被告教本には著作権者が被告アドバンサーブであるとの表示があるから、被告ウチダは、著作権者の表示の変更が不合理であることを容易に認識することができた。
 また、原告は、平成17年10月7日、被告ウチダを訪れ、新しい人材を採用したので教育事業を継続できる旨伝え、講師派遣の受注を依頼した。これに対し、被告ウチダは、被告アドバンサーブに講師の派遣を依頼した事実を原告に隠し、顧客からの受注が減少し、講師を独自調達できる状況にもなっているので、希望には沿えないなどと説明した。被告ウチダは、原告の訪問により、原告が従前どおり教育事業を継続して行っていることを知り、原告の教育事業を承継するというAの説明が虚偽であることを知ったにもかかわらず、被告アドバンサーブに講師の派遣を依頼した事実を原告に告げなかった。
 これらの事実によれば、被告ウチダは、被告教本が原告教本を無断で複製したものであり、原告の著作権及び著作者人格権を侵害するものであることを知っていたというべきであるから、被告ウチダが被告教本を販売した行為は、著作権侵害とみなされる行為(著作権法113条1項2号)に該当する。
〔被告ウチダの主張〕
ア 被告ウチダは、Aの説明に基づき、被告アドバンサーブが原告の教育事業を承継したとの認識のもとに、被告アドバンサーブに講師派遣及び教本の販売を依頼したものである。教本については、講師の裁量で講義が進んでいく関係もあって、被告アドバンサーブの講師に任せており、教本の内容を、逐一確認していなかった。被告ウチダは、原告の教育事業を被告アドバンサーブが承継したとの説明を信じていたものであり、被告教本が著作権及び著作者人格権を侵害するものであるとの認識は全くなかった。
イ 平成17年10月7日、原告の担当者が被告ウチダに来社したことは事実である。しかし、この時期は、被告教本が使用された研修の2回目が終了し、まもなく3回目が到来する時期であった。このとき、原告の担当者からは、新しい人材を採用しており、教育事業は継続できるので、今後ともよろしくお願いしたい旨の挨拶があり、原告でも教育事業を行うことになった程度の話しかなく、被告ウチダの担当者が、新しい講師を連れて来社してほしい旨の話をしたところ、その後、原告からの連絡は全くなかった。被告ウチダとしては、原告を研修事業の有効なパートナーであると到底理解することはできなかった。この時点においては、既に被告教本が使用された研修が行われ、終了間近となっているのであり、原告の担当者の話も前記のとおりであるから、被告ウチダにおいては、被告教本の著作権が問題となるなどと認識するはずもない。また、被告ウチダが、原告に対し、どの会社に何を依頼したかを告知する義務などない。
(2) 差止めの必要性
〔原告の主張〕
 被告ウチダは、被告アドバンサーブが被告教本に代わる新たな教本を作成した後も、平成18年8月ころ、NTTラーニングからの購入の申込みを受けて、被告アドバンサーブに対し、被告教本100冊の購入の申込みをし、被告アドバンサーブから被告教本の販売を断られると、今度は、原告に対して、原告教本100冊の購入の申込みをした。被告ウチダは、NTTラーニングが主催する多くの研修に関して取引があるため、今後も、NTTラーニングの要請に応じるため、原告教本を複製し、販売するおそれがある。
〔被告ウチダの主張〕
 被告ウチダは、被告教本に著作権侵害の問題があると知ったからこそ、原告に対して原告教本の購入の申込みをしたのであり、これは、被告ウチダが、今後、原告に無断で原告教本及び被告教本を使用し、販売することがないことを意味するものである。実際にも、被告ウチダは、原告から原告教本を購入することができず、NTTラーニングへの販売を断念し、現在は、被告ウチダが独自に作成した教本を使用して研修を実施している(丙3)。また、ネットワーク研修では、教本は補助的なものにすぎず、原告教本を使用する必要はない。以上によれば、被告ウチダが、今後、原告教本を複製し、販売して原告の著作権を侵害するおそれはない。
6 争点(6)(被告ウチダに対する損害賠償請求の可否)について
(1) 不法行為の成否
〔原告の主張〕
 被告ウチダに著作権侵害及び著作者人格権侵害についての故意があるというべきことは、前記5(1)〔原告の主張〕記載のとおりである。
 被告ウチダは、原告の社員が講師を担当するネットワーク研修を継続的に行ってきたのであるから、Aから原告の教育事業を承継するとの説明を受けた際、Aの説明の真偽を確認する義務があったのに、その義務を怠り、被告アドバンサーブとの間でネットワーク研修についての契約を締結した過失がある。また、被告ウチダは、原告教本に著作権者が原告であるとの表示があることを知っており、被告教本には著作権者が被告アドバンサーブであるとの表示があるから、被告ウチダは、著作権者の表示の変更が不合理であることを容易に認識することができたのであり、被告ウチダには、著作権者の表示の変更がいかなる経緯によってされたのかについて確認すべき義務があったのに、その義務を怠った過失がある。さらに、原告が、平成17年10月7日、被告ウチダを訪れた際、新しい人材を採用したので教育事業を継続できる旨伝えており、被告ウチダは、この時点で、少なくとも原告の教育事業を承継するというAの説明が虚偽であることを知り得たものであるから、被告ウチダには、被告アドバンサーブによる著作権侵害及び著作者人格権侵害を看過したことについての過失がある。
〔被告ウチダの主張〕
 被告ウチダに著作権侵害及び著作者人格権侵害についての故意があったといえないことは、前記5(1)〔被告ウチダの主張〕記載のとおりである。
 被告ウチダは、原告と被告アドバンサーブ及びAらとの関係について関知するものではないから、被告ウチダにAの説明の真偽を確認する義務はない。また、被告ウチダやNTTラーニングにとって関心があるのは、研修の質であり、教本は研修を理解させるための補助的なものにすぎないこと、被告ウチダは、これまでの実績から原告を高く評価していたこと、研修は、講師の裁量で進められるものであることから、被告ウチダは、教本の内容を原告の講師らに一任していた。被告教本は、ネットワーク研修の講義があってこそ価値のあるものであり、被告ウチダは、被告教本を教本単体で購入することを考えていなかったから、被告教本の内容を逐一確認する必要がなかった。さらに、原告の担当者が被告ウチダに来社した平成17年10月7日の時点においては、既に被告教本が使用された研修が行われ、終了間近となっており、また、原告の担当者の話も挨拶程度のものであったから、被告ウチダにおいて、被告教本の著作権が問題となるなどと認識できたはずもなく、また、被告ウチダが、原告に対し、どの会社に何を依頼したかを告知する義務はない。これらの事実に照らせば、被告ウチダが著作権者の表示が変更された経緯を確認しなかったことに過失はない。
(2) 損害額(著作権法114条1項)
〔原告の主張〕
ア 原告は、原告教本を、講師の派遣と一体のものとして被告ウチダに販売している。これにより得られる原告教本1冊当たりの利益の額は、2万2298円である。
 被告ウチダは、被告アドバンサーブから購入した被告教本79冊を、NTTラーニングに対し、講師の派遣と一体のものとして販売しており、この販売数に上記原告教本1冊当たりの利益の額を乗じると、176万1542円となる。
イ 仮にそうでないとしても、原告教本を教本単体で販売した場合に得られる原告教本1冊当たりの利益の額は、原告教本1冊の販売額5500円(甲9ないし13)から、原告教本1冊にかかる印刷代等の製造原価2586円(甲16ないし21)を引いた、2914円である。
 被告ウチダは、被告教本79冊をNTTラーニングに販売しており、この販売数に教本単体で販売した場合の上記原告教本1冊当たりの利益の額を乗じると、23万0206円となる。
〔被告ウチダの主張〕
ア 以下のとおり、原告には、原告教本の全部に相当する数量を原告が販売することができないとする事情があるから、原告の損害はない(著作権法114条1項ただし書)。
(ア) ネットワーク研修では、研修の質が重要であり、教本は補助的なものにすぎず、原告教本を使用する必要はなかった。また、Aらの退社により、原告にはネットワーク研修の講師を担当することのできる者がいなかった。さらに、平成17年10月7日、原告の担当者が被告ウチダに来社した際、被告ウチダの担当者が、原告の担当者に対し、講師を連れて来社してほしいと伝えたものの、原告からの連絡はなかった。
(イ) 被告ウチダは、平成17年度のネットワーク研修に関し、仮に、被告アドバンサーブとの間で講師の派遣及び教本の作成等に関する契約を締結しなかったとしても、原告と同契約を締結することはなかった。
イ 仮に、原告に原告教本を販売することができないとする事情があったとはいえないとしても、被告ウチダは、被告アドバンサーブから、被告教本を1冊4000円で購入し(乙7の1ないし3)、NTTラーニングに対し、1冊5000円で販売したから(丙4の1ないし4)、被告ウチダが被告教本を販売したことによって得た被告教本1冊当たりの利益の額は、1000円であり、これに販売数79冊を乗じた利益の額である7万9000円が、原告の被った損害額というべきである。
第4 当裁判所の判断
1 認定事実
 上記争いのない事実等並びに証拠(甲1ないし3、甲31ないし35、乙1、2、乙3の1、2、乙6ないし10、丙1ないし4の4、丙8、10)及び弁論の全趣旨を総合すると、以下の事実が認められる。
(1) 被告ウチダは、平成14年ころ、NTTラーニングとの間で、被告ウチダが、ネットワーク研修の講師の派遣に関する業務を行い、NTTラーニングが、同業務に対する報酬を支払うとの契約を締結し、また、同じころ、原告との間で、原告が、その社員をネットワーク研修の講師として派遣し、被告ウチダが、講師派遣に対する報酬を支払うとの契約を締結した。
 平成14年に実施されたネットワーク研修においては、NTTラーニングの準備した「LANネットワーク設計コース」と題する教本及び副読本として「CCNA認定ガイド」と題する教本が使用された。同研修に派遣された原告の講師らは、自己が担当する講義を分かりやすくするため、マイクロソフト社のパワーポイントを用いて資料(以下「平成14年資料」という。)を作成し、これを講義の補足資料として使用した。
(2) 被告ウチダは、平成15年にも、NTTラーニング及び原告との間で、上記(1)と同一の内容の契約を締結した。
 また、被告ウチダは、NTTラーニングとの間で、被告ウチダが、ネットワーク研修で使用する教本をNTTラーニングに販売し、NTTラーニングが、その代金を支払うとの契約を締結し、さらに、原告との間で、原告が、上記教本を作成して販売し、被告ウチダが、教本の作成費用及び代金を支払うとの契約を締結した。
 原告は、教本の作成及び販売に関する上記契約に基づき、平成15年教本(丙2)を作成した。平成15年教本は、平成14年資料に、講師のコメントが加筆されるとともに、別紙被告教本目録記載の第7章「顧客のニーズと目標の識別」と同一の内容の章が追加されたものである。
 原告は、平成15年教本の電子データを被告ウチダ及びNTTラーニングに交付した。NTTラーニングは、この電子データに基づき、受講者の人数分の平成15年教本の印刷を行った。原告は、平成15年8月22日、被告ウチダに対し、平成15年教本の作成費用として42万円を請求し(丙1)、同被告から同額の金員の支払を受けた。
(3) 原告のシステム技術部に所属していたAらは、CCNA試験の内容が変更されたことを機に、平成16年2月ころ、平成15年教本の内容を改訂し、「ネットワーク基礎」と題する教本(第1版、甲32)を作成した。同教本は、Aが原告教本の製本化にかかる費用等を原告代表者に報告し、その承諾を得た上で作成された。また、原告から派遣された講師らは、上記教本の印刷及び使用、取引先への販売等を原告代表者に報告していた。上記教本は、平成16年5月ころ(第2版、甲33)及び平成17年7月ころ(第3版、甲1)、それぞれ改訂された。原告教本は、上記の第3版に当たるものである。
 これらの教本(第1版ないし第3版)の表紙を除くページの欄外には、「(c) Kyosai Create, Inc. All Rights Reserved.」との記載があり、末尾のページには「著者 京西クリエイト株式会社 システム技術部」との記載がある。
(4) 被告ウチダは、平成16年にも、NTTラーニング及び原告との間で、上記(2)と同一の内容の契約を締結した。
 原告は、教本の作成及び販売に関する上記契約に基づき、平成16年度のネットワーク研修で使用する教本として、「LAN・ネットワーク設計コース」と題する教本(以下「平成16年教本」という。)を作成した。
 平成16年教本は、上記(3)の各教本(第1版又は第2版)に、第7章「顧客のニーズと目標の識別」と題する章が追加されたものである。
 原告は、平成16年教本の電子データを被告ウチダに交付し、被告ウチダは、この電子データに基づき、平成16年教本の印刷を行い、合計100冊をNTTラーニングに納品した。
 原告は、被告ウチダに対し、平成16年教本の作成費用として3万2000円を請求し、同被告から同額の金員の支払を受けた。
(5) Aは、平成17年6月20日、原告を退社し、同年9月7日、被告アドバンサーブを設立し、同被告の代表取締役に就任した。また、B、C及びDは、同被告の取締役に就任し、その後、原告を退社した。
 Aは、平成17年8月中旬ころ、被告ウチダを訪れ、同被告の担当者に対し、原告を退社し、原告の教育事業を承継する新会社を設立し、そこで今後もネットワーク研修に講師を派遣することは可能である、などと説明した。
 被告ウチダは、同じころ、NTTラーニングから、これまでと同様のネットワーク研修を実施したいとの提案を受けていたことから、NTTラーニングとの間で、ネットワーク研修の講師の派遣に関し、上記(4)と同一の内容の契約を締結するとともに、被告アドバンサーブとの間で、被告アドバンサーブが、その社員をネットワーク研修の講師として派遣し、被告ウチダが、講師派遣に対する報酬を支払うとの契約を締結した。
 また、被告ウチダは、ネットワーク研修で使用する教本に関し、NTTラーニングとの間で、上記(4)と同一の内容の契約を締結するとともに、被告アドバンサーブとの間で、被告アドバンサーブが、上記教本を作成して販売し、被告ウチダが、教本の作成費用及び代金を支払うとの契約を締結し、同年9月以降に実施したネットワーク研修については、被告アドバンサーブに依頼し、原告には依頼しなかった。被告ウチダは、これらの契約の締結に当たって、Aが原告の教育事業を承継するとの説明の真偽について、原告に問い合わせをするなどして確認することをしなかった。
(6) 被告ウチダは、平成17年度のネットワーク研修では平成16年度のネットワーク研修の内容にセキュリティ分野を加えたいとのNTTラーニングの要望を受けて、被告アドバンサーブに対し、平成16年教本にセキュリティ分野に関する記述を加えたものを、平成17年度のネットワーク研修の教本とするよう、依頼した。
 上記依頼を受けて、被告アドバンサーブの代表取締役及び取締役であるAらは、原告に無断で、原告教本に依拠し、これを複製して被告教本を作成した。
 被告教本の本文及び目次は、別紙被告教本目録記載の第7章「顧客のニーズと目標の識別」及び第12章「セキュリティ」が加えられているほかは、原告教本の本文及び目次と同一である。被告教本には、原告教本の書名とは異なる「LAN・ネットワーク設計コース」との書名が付され、「本書の著作権は株式会社アドバンサーブにあります。」との記載があり、原告の名称は記載されていない。
 被告アドバンサーブは、被告教本の印刷を行い、合計79冊の被告教本を被告ウチダに販売し、直接、NTTラーニングに納品した。
 被告アドバンサーブは、被告ウチダに対し、被告教本の作成費用として20万円を、同教本の代金として1冊当たり4000円を請求し(乙7の1ないし3)、同被告から、上記20万円と被告教本57冊分の代金22万8000円(被告アドバンサーブは、22冊分の代金8万8000円の請求を失念していたものである。)の支払を受けた。
 一方、被告ウチダは、上記(5)の契約に基づき、被告アドバンサーブから購入した被告教本79冊のうち、受講者の人数と同数の63冊をNTTラーニングに販売し、NTTラーニングに対し、被告教本の代金として1冊当たり5000円の請求を行い(丙4の1ないし4)、NTTラーニングから、31万5000円の支払を受けた。
(7) 被告ウチダの担当者は、平成17年10月7日に原告の担当者が被告ウチダに来社した際、ネットワーク研修の講師派遣を被告アドバンサーブに依頼した事実を告げなかった(原告は、被告ウチダが原告の受注の依頼に対して虚偽の説明をした旨主張し、甲第3号証等にその旨の記載があるものの、丙第3号証に照らし、原告の上記主張は採用することができない。)。
(8) 原告は、被告アドバンサーブに対し、平成18年1月19日付け書面で、別件被告教本が原告教本を複製したものであって、原告の著作権及び著作者人格権を侵害しているとして、別件被告教本の作成、販売を中止することを求めた。これに対し、被告アドバンサーブは、同月26日付け書面で、別件被告教本を既に販売しておらず、今後も使用、販売をすることはない旨を回答した。
 原告は、同年2月2日、被告アドバンサーブが別件被告教本を作成、販売することにより、原告教本に係る著作権及び著作者人格権を侵害したとして、東京地方裁判所に別件訴訟を提起した。別件訴訟においては、被告アドバンサーブが原告の著作権及び著作者人格権を侵害したことを認め、別件被告教本を作成、販売しないことを約するとともに、慰謝料を含む損害賠償金として100万円を支払うことを内容とする訴訟上の和解が成立した。被告アドバンサーブは、別件訴訟において、被告教本についても一括して和解による解決を求めていたものの、この点については合意に至らなかった。
(9) 被告アドバンサーブは、被告教本及び別件被告教本を平成17年12月まで販売していたものの、それ以降は、これらの教本を作成、販売しておらず、被告教本とは全く内容の異なる新教本を作成、販売している。
 Aは、上記(8)の通知が原告から被告アドバンサーブにされたことから、平成18年2月下旬ころ、被告ウチダの担当者に対し、被告教本が原告の著作権を侵害している可能性があるので、今後、被告教本を販売することはできないと伝えた。
(10) 被告ウチダは、平成18年8月18日、NTTラーニングから、平成17年度のネットワーク研修の受講者が講師を担当する研修に使用するためとして、同年度のネットワーク研修で使用した被告教本100冊の購入の申込みを受けた。
 そこで、被告ウチダが、被告アドバンサーブに対し、被告教本100冊の購入を申し込んだところ、被告アドバンサーブは、被告教本には著作権侵害の問題があるという理由で、被告教本の販売を断った。このため、被告ウチダは、原告に対しても、原告教本100冊の購入を申し込んだものの、原告は、原告教本の販売を拒否した。このため、被告ウチダは、原告教本及び被告教本の入手を断念し、被告ウチダが作成し市販されている教本をNTTラーニングに販売した。その後、被告ウチダは、原告教本及び被告教本を使用しておらず、現在は、独自に作成した新教本を使用して研修を実施している。
2 争点(1)(原告教本の職務著作性)について
 前記争いのない事実等及び前記1で認定した事実によれば、原告教本は、原告のネットワーク研修に関する業務を担当する部署であるシステム技術部に所属する社員らが、ネットワーク研修に用いる教材として作成したものであり、同教本には著作者として原告名が表示されているのであるから、原告の発意に基づき、原告の社員が職務上作成し、原告の名義の下に公表された職務著作であると認められる。したがって、原告は、原告教本の著作者として著作権及び著作者人格権を有する(著作権法15条1項)。
3 争点(2)(被告アドバンサーブによる著作権侵害及び著作者人格権侵害の成否)について
(1) 著作権侵害の成否
 前記1で認定したとおり、被告アドバンサーブの代表取締役及び取締役であるAらは、原告に無断で、原告教本に依拠し、これを複製して被告教本を作成したものである(このことは、原告と被告アドバンサーブとの間で争いがない。)から、被告アドバンサーブは、原告の著作権(複製権)を侵害したということができる。
 これに対し、被告ウチダは、原告から平成15年教本(丙2)の複製、改変を許諾されており、被告教本は、同許諾に基づき、平成15年教本(丙2)を複製し、改変したものであって、原告教本を複製したものではないと主張する。しかしながら、証拠(甲1、丙2)によれば、そもそも、被告教本と平成15年教本とでは、記述内容が相当に異なっていることが認められるのであって、被告教本が平成15年教本に依拠して作成されたものであると認めることはできない。前記1で認定した原告教本と被告教本との記述内容の同一性に照らすと、被告教本は、原告教本を複製したものと認めるのが相当である。被告ウチダの主張は、採用することができない。
(2) 著作者人格権侵害の成否
 前記争いのない事実等及び前記1で認定した事実によれば、被告教本が、原告に無断で、被告アドバンサーブの代表取締役及び取締役であるAらにより原告教本に依拠して複製されたものであり、かつ、被告教本には原告教本と異なる書名が付されており、被告教本には原告の名称が表示されていないというのであるから、被告アドバンサーブは、被告教本を作成したことにより、原告が原告教本について有する著作者人格権(同一性保持権及び氏名表示権)を侵害したということができる。
 被告アドバンサーブは、原告は、従前、ネットワーク研修で使用する目的で被告ウチダに販売する教本に関し、被告ウチダの依頼により、「LAN・ネットワーク設計コース」という書名で販売していたのであり、被告アドバンサーブが原告教本の書名を「LAN・ネットワーク設計コース」と変更したのではないと主張する。しかしながら、これまでのネットワーク研修で使用された教本について、被告ウチダの依頼により「LAN・ネットワーク設計コース」という書名で販売されてきたとしても、被告アドバンサーブが、被告教本の作成に関して、原告に無断で、原告教本の書名である「ネットワーク基礎」を「LAN・ネットワーク設計コース」に改変することが許されることにはならないというべきである。被告アドバンサーブの上記主張は、採用することができない。
4 争点(3)(被告アドバンサーブに対する差止めの必要性)について
 前記1で認定した事実によれば、被告アドバンサーブは、被告教本に代わる新教本を作成したため、平成17年12月を最後に、被告教本の作成及び販売を行っておらず、現在は被告教本とは全く異なる内容の上記新教本を使用していること、別件訴訟において、被告教本と類似する別件被告教本を作成、販売しないこと等を内容とする訴訟上の和解をしており、被告教本についても上記和解と一括しての解決を求めていたこと、平成18年8月に、被告ウチダから被告教本の購入の申込みを受けたものの、著作権侵害の問題があることを理由に、被告教本の販売を断っていることが認められる。また、被告ウチダは、同じころ、原告に対し、原告教本の購入の申込みをし、原告から販売を拒否された後は、顧客であるNTTラーニングからの依頼であるにもかかわらず、原告教本の入手を断念し、市販されている教本をNTTラーニングに販売したこと、現在では、独自に作成した教本を使用して研修を実施しており、被告教本を使用していないことが認められる。
 以上によれば、被告アドバンサーブは、現在、被告教本を作成、販売しておらず、同被告において、今後、被告教本を作成及び販売することにより原告の著作権及び著作者人格権を侵害するおそれがあると認めることはできないから、原告の被告アドバンサーブに対する差止請求は理由がない。
5 争点(4)(被告アドバンサーブに対する損害賠償請求の可否)について
(1) 被告アドバンサーブの故意又は過失の有無
 上記争いのない事実等及び前記1で認定した事実によれば、原告教本は、原告のネットワーク研修に関する業務を担当する部署であるシステム技術部に所属していた原告の社員らが、ネットワーク研修の教材として使用することを前提として職務上作成したものであり、同教本には著作者として原告名が表示されているのであり、原告の社員であったAらは、このことを認識していたものと認められる。
 そうすると、被告アドバンサーブの代表取締役及び取締役であるAらは、被告教本の作成当時、原告教本の著作権及び著作者人格権が原告に帰属することを認識していたと推認するのが相当であり、被告アドバンサーブには前記の著作権侵害及び著作者人格権侵害についての故意が認められるというべきである。
 被告アドバンサーブは、Aらは、原告教本の著作権及び著作者人格権が自己に帰属していると信じていたと主張するが、上述したところに照らし、採用することができない。
(2) 損害額
 上記(1)で説示したところによれば、被告アドバンサーブが、@原告の許諾を得ずに原告教本を複製して被告教本を作成し、同教本を販売した行為は、原告の有する著作権(複製権)を侵害するものであり、A原告教本に原告の名称を記載しなかった行為は、原告の氏名表示権を侵害するものであり、B原告教本の書名を「LAN・ネットワーク設計コース」と改変した行為は、原告の同一性保持権を侵害するものであり、原告は、被告アドバンサーブに対し、著作権侵害及び著作者人格権侵害に基づく損害賠償請求権を有する。
ア 著作権侵害による損害(著作権法114条1項)
(ア) 証拠(甲8、35)によれば、原告は、平成16年6月ころから平成17年5月までの1年間に、被告ウチダに対し、原告教本を合計365冊販売し、合計193万2000円の支払を受けたことが認められる。これによれば、原告教本1冊当たりの平均販売価格は、約5293円(上記販売価格合計193万2000円÷上記販売数合計365冊)となる。また、証拠(甲16ないし甲21)によれば、原告教本1冊にかかる印刷代等の製造原価は2586円であることが認められる。そこで、上記平均販売価格5293円と上記製造原価2586円との差額2707円が、原告教本1冊当たりの利益であると認められ、これに被告教本の販売数79冊を乗じた21万3853円を、原告の受けた損害額とするのが相当である(著作権法114条1項)。
(イ) 原告は、原告教本を講師の派遣と一体のものとして販売した場合の原告教本1冊当たりの利益額は2万2298円であり、これに被告教本の販売数79冊を乗じた176万1542円が、原告の被った損害額であると主張する。しかしながら、講義の実施自体は著作権を侵害する行為とはいえないから、講義実施の対価まで著作権侵害による損害額の算定の基礎となる利益の額に含めるのは相当ではないというべきである。原告の上記主張は、採用することはできない。
 被告アドバンサーブは、被告ウチダに対し、被告教本を1冊4000円で販売し、被告教本1冊にかかる印刷代等の製造原価は2586円であるから、被告教本1冊当たりの利益の額は1414円となり、これに販売数79冊を乗じた利益の額である11万1706円が、原告の被った損害額であると主張する。しかしながら、原告は、著作権法114条1項に基づく損害を主張しているものであるから、被告アドバンサーブの受けた利益の額の主張は、失当である。
(ウ) 被告アドバンサーブは、原告には原告教本を改訂又は販売する能力がないこと、原告教本の価値はないことから、原告が上記数量を販売することができなかった(著作権法114条1項ただし書)と主張する。しかしながら、原告が原告教本を改訂又は販売する能力がないことについては、これを認めるに足りる証拠はない。また、原告は、原告教本の複製物である被告教本の譲渡数量79冊を算定の基礎としているのであるから、原告教本に価値がないから販売することができないとの主張が失当であることは明らかである。
イ 著作者人格権侵害による損害
 前記認定に係る侵害の態様等、本件に現れた一切の事情を勘案すると、原告が、被告アドバンサーブの著作者人格権侵害の行為による損害賠償額は50万円とするのが相当である。
 被告アドバンサーブは、本件の精神的苦痛は別件訴訟における訴訟上の和解に基づく金員の支払によって既に慰謝されていると主張する。しかし、被告教本と別件被告教本は、内容が類似するものであっても、別個の教本というべきであるから、被告アドバンサーブによる被告教本の複製及び販売によって、新たに原告の著作者人格権が侵害されたものと認めることができる。被告アドバンサーブの上記主張は、失当である。
6 争点(5)(被告ウチダに対する差止請求の可否)について
 原告は、被告ウチダが、被告教本が原告の著作権を侵害する行為によって作成されたものであることを知りながら同教本を販売したものであるから、原告の著作権を侵害するものであるとみなされる(著作権法113条1項2号)と主張する。
 前記1で認定した事実によれば、被告ウチダは、平成14年から平成16年まで、原告との契約関係に基づき、原告の社員が講師を担当するネットワーク研修を行っており、平成15年及び平成16年に実施した研修においては、原告から購入した教本を使っていたところ、平成17年8月に、Aから、原告を退社して原告の教育事業を承継する新会社を設立し、そこで今後もネットワーク研修に講師を派遣することが可能であるとの説明を受けて、被告アドバンサーブとの間で、平成17年度のネットワーク研修への講師の派遣並びに研修に使用する教本の作成及び販売に関する契約を締結し、平成17年9月以降に実施したネットワーク研修について、被告アドバンサーブから講師の派遣を受けるとともに被告教本を購入したこと、被告ウチダは、Aの上記説明の真偽を原告に確かめなかったこと、被告教本の内容は原告教本の内容とほぼ同一であるものの、著作権者の表示が異なっていたこと、原告の担当者が平成17年10月7日に被告ウチダに来社した際、同被告の担当者が、原告の担当者に対し、平成17年のネットワーク研修の講師の派遣を被告アドバンサーブに依頼したことを言わなかったことが認められる。
 しかしながら、上記の事情だけでは、被告ウチダが、原告教本及び被告教本の著作権の帰属関係について、明確な認識を有していたと認めることはできない。また、被告ウチダが、原告に対し、ネットワーク研修についての契約を締結する義務を負っているとは認められず、同被告において、ネットワーク研修を原告に依頼するか、被告アドバンサーブに依頼するかは基本的に自由であるといえるから、被告アドバンサーブとの間で契約を締結するに当たり、原告にAの説明の真偽を問い合わせたり、他社にネットワーク研修を依頼したことを告げるべき義務があったということはできない。被告ウチダが原告に上記確認行為をしなかったからといって、同被告が著作権侵害の事実を認識していたと認めることはできない。他に、被告ウチダにおいて、被告アドバンサーブが原告の著作権を侵害して被告教本を作成したことを認識していたことを認めるに足りる証拠はない。
 そうすると、被告ウチダにおいて、被告教本が原告の著作権を侵害する行為によって作成されたものであることを知りながら同教本を販売したということはできず、著作権法113条1項2号により原告の著作権を侵害するものとみなすことはできない。
 以上のとおりであるから、被告ウチダに対する差止請求は理由がない。
7 争点(6)(被告ウチダに対する損害賠償請求の可否)について
 原告は、被告ウチダに、故意に被告教本を販売したことによる著作権侵害の不法行為が成立する旨主張する。しかしながら、上記6で説示したとおり、被告ウチダにおいて、被告教本が原告の著作権を侵害したことを知りながらこれを販売したと認めることはできず、被告ウチダの販売行為を著作権法113条1項2号により原告の著作権を侵害する行為とみなすことはできないから、みなし侵害行為であることを根拠とする不法行為に基づく損害賠償請求は理由がない。
 原告は、被告ウチダが著作権侵害の事実を看過して被告教本を購入し、販売したことについて、過失による著作権侵害の不法行為があると主張する。しかしながら、著作権を侵害する行為によって作成された被告教本を侵害の事実を知らないまま購入した被告ウチダの行為については、これを著作権侵害行為であるとも、幇助行為であるともいうことはできないから、過失による著作権侵害の不法行為を構成すると認めることはできない。
8 結論
 以上によれば、原告の本訴請求は、被告アドバンサーブに対し71万3853円及びこれに対する不法行為の後である平成18年12月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、これを認容し、被告アドバンサーブに対するその余の請求及び被告ウチダに対する請求は理由がないから、これらを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法64条1項本文、61条、65条1項本文を、仮執行の宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第47部
 裁判長裁判官 阿部正幸
 裁判官 平田直人
 裁判官 瀬田浩久


(別紙)原告教本目録
教本
書名 ネットワーク基礎
発行日 平成17年7月1日 3版
著作権者の表示 原告
目次
第1章 OSI参照モデル概要
 1−1 OSI参照モデル概要
 1−2 階層化モデル
 1−3 プロトコル・階層化モデルの例
 1−4 OSI参照モデルにおけるデータの動き
 1−5 データのカプセル化
 1−6 アプリケーション層の役割
 1−7 プレゼンテーション層の役割
 1−8 セッション層の役割
 1−9 トランスポート層の役割
 1−10 ネットワーク層の役割
 1−11 データリンク層の役割
 1−12 物理層の役割
 1−13 物理層で定義されるデバイス
 1−14 データリンク層で定義されるデバイス
 1−15 ネットワーク層で定義されるデバイス
第2章 Ethernet
 2−1 イーサネットの概要
 2−2 MACアドレス
 2−3 Ethernetの種類
 2−4 Fast Ethernet
 2−5 Gigabit Ethernet
 2−6 メディア ツイストペアケーブル
 2−7 メディア 同軸ケーブル
 2−8 メディア 光ファイバーケーブル
 2−9 ケーブリング クロス/ストレート
 2−10 デバイス間の接続
 2−11 コリジョン
 2−12 CSMA/CD方式
 2−13 データトラフィック
 2−14 コリジョンドメイン
 2−15 ブロードキャストドメイン
 2−16 全二重/半二重@
 2−17 全二重/半二重A
第3章 CiscoIOS基礎
 3−1 CiscoIOS設定インターフェースへの接続
 3−2 ターミナルエミューション
 3−3 CiscoIOSコマンドラインインターフェース
 3−4 コマンドライン モード
 3−5 コマンド設定の補助機能
 3−6 ヘルプ機能
 3−7 エラーメッセージ
 3−8 ヒストリーバッファ
 3−9 その他のコマンド設定の補助機能
第4章 L2スイッチング
 4−1 ハブとスイッチングハブの違い
 4−2 L2スイッチング
 4−3 MACアドレス学習
 4−4 MACアドレス学習の確認
 4−5 スイッチング方式
 4−6 ブロードキャストとマルチキャスト
 4−7 輻輳
 4−8 マイクロセグメンテーション
 4−9 L2セキュリティ
 4−10 ポートセキュア設定
第5章 スパニングツリー
 5−1 冗長リンク
 5−2 ブロードキャストフレーム
 5−3 ユニキャストフレームのループ
 5−4 STPとは
 5−5 BPDUとは
 5−7 ルートパスコスト
 5−7 スパニングツリーの動作
 5−8 ルートブリッジの選択
 5−9 ルートポートの選択
 5−10 代表・非代表ポートの選択
 5−11 ポート状態
 5−12 STPの再計算
 5−13 STP動作確認
第6章 VLAN
 6−1 フラットなネットワーク
 6−2 VLANの機能
 6−3 VLANを利用したネットワーク
 6−4 VLANの利点
 6−5 スタティックVLAN
 6−6 スタティックVLAN設定
 6−7 Untagポート(アクセスリンク)
 6−8 Tagポート(トランクリンク)
 6−9 VLANトランク設定
 6−10 VTP(VLAN Trunking Protocol)
 6−11 VTP動作モード
 6−12 VTPの動作
 6−13 VTPリビジョン番号
 6−14 VTP設定
第7章 TCP/IP
 7−1 TCP/IPモデル
 7−2 TCP/IPプロトコルスタック
 7−3 アプリケーション層
 7−4 DNS(Domein Name System)
 7−5 トランスポート層
 7−6 ポート番号
 7−7 ウェルノウンポート番号
 7−8 コネクション型通信
 7−9 確認応答
 7−10 ウインドウ制御
 7−11 フロー制御
 7−12 TCPヘッダ
 7−13 UDPヘッダ
 7−14 インターネット層
 7−15 ICMP
 7−16 ICMPを利用したコマンド(ping)
 7−17 ICMPを利用したコマンド(traceroute)
 7−18 ARP
第8章 IPアドレッシング
 8−1 IPアドレス
 8−2 ネットワーク部/ホスト部
 8−3 2進数からの変換
 8−4 10進数からの変換
 8−5 練習:2進数からの変換例
 8−6 練習:10進数からの変換例
 8−7 ネットワーク/ブロードキャストアドレス
 8−8 クラス
 8−9 クラスで使用するアドレス範囲
 8−10 サブネットマスク
 8−11 サブネット(1)
 8−12 サブネット(2)
 8−13 サブネット(3)
 8−14 サブネットの計算
 8−15 練習:サブネットの計算(クラスC)
 8−16 練習:サブネットの計算(クラスB)(1)
 8−17 練習:サブネットの計算(クラスB)(2)
 8−18 IPアドレスに関するネットワーク設計
 8−19 グローバル/プライベートアドレス
 8−20 VSLM
 8−21 練習:VSLMの計算
 8−22 NAT
 8−23 NAT Overload
第9章 Ciscoルータ基本設定
 9−1 ルータの識別
 9−2 設定の確認
 9−3 インターフェースの指定
 9−4 IPアドレスの設定
 9−5 インターフェースの有効化
 9−6 インターフェースの確認
 9−7 インターフェースステータス
 9−8 ホスト名・IPアドレス設定
 9−9 pingとtraceroute
第10章 ルーテイング
 10−1 ルーティング概要
 10−2 イPアドレスとMACアドレスへの通信
 10−3 リモートネットワークへの通信
 10−4 ルータの機能
 10−5 VLAN間通信
 10−6 VLAN間ルーティング設定
 10−7 ルーティングテーブル
 10−8 直接接続例
 10−9 スタティックルーティング
 10−10 スタティックルート設定
 10−11 デフォルトルーティング
 10−12 デフォルトルート設定
 10−13 ダイナミックルーティング
 10−14 ルーティング/ルーテッドプロトコル
 10−15 アドミニストレーティブディスタンス
 10−16 メトリック
 10−17 ディスタンスベクタ型
 10−18 リンクステート型
 10−19 ハイブリッド型
 10−20 クラスフルとクラスレスルーティング
 10−21 RIP
 10−22 RIPメトリック
 10−23 ルーティンググループ
 10−24 ルーティンググループの防止
 10−25 最大ホップ数
 10−26 スプリットホライズン
 10−27 ルートポイズニング
 10−28 ホールドダウンタイマ
 10−29 RIP設定
 10−30 IGRP
 10−31 IGRP設定
 10−32 リンクステートアルゴリズムの特徴
 10−33 リンクステートとディスタンスベクターの相違
 10−34 OSPF(Open Shortest Path First)の概要
 10−35 LSDBとルーティングテーブル
 10−36 HelloとNeighborの関係
 10−37 隣接関係
 10−38 ルーティングテーブルの作成
 10−39 OSPFがサポートしているトポロジ
 10−40 OSPF設定
 10−41 EIGRPの概要
 10−42 EIGRPの特徴
 10−43 EIGRPのメトリック
 10−44 EIGRPのテーブル
 10−45 EIGRPのアルゴリズム
 10−46 EIGRP設定
 10−47 EIGRPとIGRPの再配送設定例
第11章 Ciscoのアクセスリスト
 11−1 Cisco アクセスリストの設定
 11−2 Cisco アクセスリストの処理
 11−3 Cisco アクセスリストのルール@
 11−4 Cisco アクセスリストのルールA
 11−5 Cisco アクセスリストのルールB
 11−6 Cisco IPアクセスリストの種類
 11−7 ワイルドカードマスク@
 11−8 ワイルドカードマスクA
 11−9 ワイルドカードマスクB
 11−10 Cisco アクセスリストの適用
 11−11 標準IPアクセスリスト設定
 11−12 拡張IPアクセスリスト設定
 11−13 名前付き拡張アクセスリスト設定
第12章 WAN
 12−1 WANの概要
 12−2 専用網型サービス
 12−3 交換網型サービス
 12−4 WANと物理層
 12−5 同期シリアル接続
 12−6 WANとデータリンク層 〜カプセル化〜
 12−7 HDLC
 12−8 PPP(Point-to-Point Protocol)
 12−9 PPPプロトコルスタック
 12−10 PPP LCP機能
 12−11 PPPのフェーズ
 12−12 RAP
 12−13 CHAP
 12−14 シリアルインターフェイス設定
 12−15 拠点間接続(Point-to-Point)
 12−16 拠点間接続(フレームリレー)
 12−17 フレームリレーとシリアル専用線の相違
 12−18 フレームリレー回線
 12−19 DLCI
 12−20 アドレスマッピング
 12−21 ローカル管理インターフェイス(LMI)
 12−22 フレームリレートポロジー
 12−23 フレームリレーと輻輳
 12−24 フレームリレーと設定例
 12−25 ISDN
 12−26 ISDNアクセスインターフェイス
 12−27 ISDN機能と参照点
 12−28 ISDNプロトコルレイヤ
 12−29 DDR設定例
第13章 CiscoIOS管理
 13−1 特権モードパスワード
 13−2 ログインパスワードの設定
 13−3 接続ユーザの確認
 13−4 Telnetの中断・復帰・終了
 13−5 ルータのコンポーネント
 13−6 ルータ起動順序(デフォルト)
 13−7 CiscoIOSイメージの検索とロード
 13−8 設定情報の保存と再格納
 13−9 ファイルの管理
 13−10 設定情報の管理
 13−11 TFTPサーバへの保存・再格納
 13−12 ファイル名の確認
 13−13 show version
 13−14 IOSのバックアップとアップグレード
 13−15 copy flash tftp
 13−16 copy tftp flash
 13−17 デバイスの設定情報のロード
 13−18 コンフィグレーション レジスタ値
 13−19 コンフィグレーション レジスタ値の設定
 13−20 パスワードリカバリ
 13−21 パスワードリカバリの手順
 13−22 CDP(Cisco Discovery Protocol)
 13−23 show cdp neighbors
 13−24 show cdp neighbors detail
頁構成 1頁〜306頁
(内訳)
 1頁 はじめに
 2頁〜9頁 目次
 10頁 空白
 11頁〜293頁 本文
 294頁 空白
 295頁〜304頁 索引
 305頁 空白
 306頁 奥付

(別紙)被告教本目録
教本
書名 LAN・ネットワーク設計コース
著作権者の表示 被告アドバンサーブ
目次
第1章 OSI参照モデル
 1−1 OSI参照モデル概要
 1−2 階層化モデル
 1−3 プロトコル・階層化モデルの例
 1−4 OSI参照モデルにおけるデータの動き
 1−5 データのカプセル化
 1−6 アプリケーション層の役割
 1−7 プレゼンテーション層の役割
 1−8 セッション層の役割
 1−9 トランスポート層の役割
 1−10 ネットワーク層の役割
 1−11 データリンク層の役割
 1−12 物理層の役割
 1−13 物理層で定義されるデバイス
 1−14 データリンク層で定義されるデバイス
 1−15 ネットワーク層で定義されるデバイス
第2章 Ethernet
 2−1 イーサネットの概要
 2−2 MACアドレス
 2−3 Ethernetの種類
 2−4 Fast Ethernet
 2−5 Gigabit Ethernet
 2−6 メディア ツイストペアケーブル
 2−7 メディア 同軸ケーブル
 2−8 メディア 光ファイバーケーブル
 2−9 ケーブリング クロス/ストレート
 2−10 デバイス間の接続
 2−11 コリジョン
 2−12 CSMA/CD方式
 2−13 データトラフィック
 2−14 コリジョンドメイン
 2−15 ブロードキャストドメイン
 2−16 全二重/半二重@
 2−17 全二重/半二重A
第3章 CiscoIOS基礎
 3−1 CiscoIOS設定インターフェースへの接続
 3−2 ターミナルエミューション
 3−3 CiscoIOSコマンドラインインターフェース
 3−4 コマンドライン モード
 3−5 コマンド設定の補助機能
 3−6 ヘルプ機能
 3−7 エラーメッセージ
 3−8 ヒストリーバッファ
 3−9 その他のコマンド設定の補助機能
第4章 L2スイッチング
 4−1 ハブとスイッチングハブの違い
 4−2 L2スイッチング
 4−3 MACアドレス学習
 4−4 MACアドレス学習の確認
 4−5 スイッチング方式
 4−6 ブロードキャストとマルチキャスト
 4−7 輻輳
 4−8 マイクロセグメンテーション
 4−9 L2セキュリティ
 4−10 ポートセキュア設定
第5章 スパニングツリー
 5−1 冗長リンク
 5−2 ブロードキャストフレーム
 5−3 ユニキャストフレームでのループ
 5−4 STPとは
 5−5 BPDUとは
 5−6 ルートパスコスト
 5−7 スパニングツリーの動作
 5−8 ルートブリッジの選択
 5−9 ルートポートの選択
 5−10 代表・非代表ポートの選出
 5−11 ポート状態
 5−12 STPの再計算
 5−13 STP動作確認
第6章 VLAN
 6−1 フラットなネットワーク
 6−2 VLANの機能
 6−3 VLANを利用したネットワーク
 6−4 VLANの利点
 6−5 スタティックVLAN
 6−6 スタティックVLAN設定
 6−7 Untagポート(アクセスリンク)
 6−8 Tagポート(トランクリンク)
 6−9 VLANトランク設定
 6−10 VTP(VLAN Trunking Protocol)
 6−11 VTP動作モード
 6−12 VTPの動作
 6−13 VTPリビジョン
 6−14 VTP設定
第7章 顧客のニーズと目標の識別
 7−1 顧客のニーズと目標の識別
 7−2 技術上の目標の識別
 7−3 ネットワークパフォーマンス
 7−4 既存ネットワークのデータ収集
第8章 TCP/IP
 8−1 TCP/IPモデル
 8−2 TCP/IPプロトコルスタック
 8−3 アプリケーション層
 8−4 DNS(Domein Name System)
 8−5 トランスポート層
 8−6 ポート番号
 8−7 ウェルノウンポート番号
 8−8 コネクション型通信
 8−9 確認応答
 8−10 ウィンドウ制御
 8−11 フロー制御
 8−12 TCPヘッダ
 8−13 UDPヘッダ
 8−14 インターネット層
 8−15 ICMP
 8−16 ICMPを利用したコマンド(ping)
 8−17 ICMPを利用したコマンド(traceroute)
 8−18 ARP
第9章 IPアドレッシング
 9−1 IPアドレス
 9−2 ネットワーク部/ホスト部
 9−3 2進数からの変換
 9−4 10進数からの変換
 9−5 練習:2進数からの変換例
 9−6 練習:10進数からの変換例
 9−7 ネットワーク/ブロードキャストアドレス
 9−8 クラス
 9−9 クラスで使用するアドレス範囲
 9−10 サブネットマスク
 9−11 サブネット(1)
 9−12 サブネット(2)
 9−13 サブネット(3)
 9−14 サブネットの計算
 9−15 練習:サブネットの計算(クラスC)
 9−16 練習:サブネットの計算(クラスB)(1)
 9−17 練習:サブネットの計算(クラスB)(2)
 9−18 IPアドレスに関するネットワーク設計
 9−19 グローバル/プライベートアドレス
 9−20 VSLM
 9−21 練習:VSLMの計算
 9−22 NAT
 9−23 NAT Overload
第10章 Ciscoルータ基本設計
 10−1 ルータの識別
 10−2 設計の確認
 10−3 インターフェースの指定
 10−4 IPアドレスの設定
 10−5 インターフェースの有効化
 10−6 インターフェースの確認
 10−7 インターフェースステータス
 10−8 ホスト名・IPアドレス設定
 10−9 pingとtraceroute
第11章 ルーティング
 11−1 ルーティング概要
 11−2 IPアドレスとMACアドレスの役割
 11−3 リモートネットワークへの通信
 11−4 ルータの機能
 11−5 VLAN間通信
 11−6 VLAN間ルーティング設定
 11−7 ルーティングテーブル
 11−8 直接接続例
 11−9 スタティックルーティング
 11−10 スタティックルート設定
 11−11 デフォルトルーティング
 11−12 デフォルトルート設定
 11−13 ダイナミックルーティング
 11−14 ルーティング/ルーテッドプロトコル
 11−15 アドミニストレーティブディスタンス
 11−16 メトリック
 11−17 ディスタンスベクタ型
 11−18 リンクステート型
 11−19 ハイブリッド型
 11−20 クラスフルとクラスレスルーティング
 11−21 RIP
 11−22 RIPメトリック
 11−23 ルーティングループ
 11−24 ルーティングループの防止
 11−25 最大ホップ数
 11−26 スプリットホライズン
 11−27 ルートポイズニング
 11−28 ホールドダウンタイマ
 11−29 RIP設定
 11−30 IGRP
 11−31 IGRP設定
 11−32 リンクステートアルゴリズムの特徴
 11−33 リンクステートとディスタンスベクターの相違
 11−34 OSPF(Open Shortest Path First)の概要
 11−35 LSDBとルーティングテーブル
 11−36 HelloとNeighbor関係
 11−37 隣接関係
 11−38 ルーティングテーブルの作成
 11−39 OSPFがサポートしているトポロジ
 11−40 OSPF設定
 11−41 EIGRPの概要
 11−42 EIGRPの特徴
 11−43 EIGRPのメトリック
 11−44 EIGRPのテーブル
 11−45 DUALアルゴリズム
 11−46 EIGRP設定
 11−47 EIGRPとIGRPの再配送設定例
第12章 セキュリティ
 12−1 セキュリティ対策の必要性
 12−2 ウィルス
 12−3 セキュリティホール
 12−4 セキュリティ対策
第13章 Ciscoアクセスリスト
 13−1 Cisco アクセスリストの設定
 13−2 Cisco アクセスリストの処理
 13−3 Cisco アクセスリストのルール@
 13−4 Cisco アクセスリストのルールA
 13−5 Cisco アクセスリストのルールB
 13−6 Cisco IPアクセスリストの種類
 13−7 ワイルドカードマスク@
 13−8 ワイルドカードマスクA
 13−9 ワイルドカードマスクB
 13−10 Cisco アクセスリストの適用
 13−11 標準IPアクセスリスト設定
 13−12 拡張IPアクセスリスト設定
 13−13 名前付きアクセスリスト設定
第14章 WAN
 14−1 WAN概要
 14−2 専用網型サービス
 14−3 交換網型サービス
 14−4 WANと物理層
 14−5 同期シリアル接続
 14−6 WANとデータリンク層 〜カプセル化〜
 14−7 HDLC
 14−8 PPP(Point-to-Point Protocol)
 14−9 PPPプロトコルスタック
 14−10 PPPLCP機能
 14−11 PPPのフェーズ
 14−12 RAP
 14−13 CHAP
 14−14 シリアルインターフェース設定
 14−15 拠点間接続(Point-to-Point)
 14−16 拠点間接続(フレームリレー)
 14−17 フレームリレーとシリアル専用線の相違
 14−18 フレームリレー回線
 14−19 DLCI
 14−20 アドレスマッピング
 14−21 ローカル管理インターフェース(LMI)
 14−22 フレームリレートポロジー
 14−23 フレームリレーと輻輳
 14−24 フレームリレー設定例
 14−25 ISDN
 14−26 ISDNアクセスインターフェース
 14−27 ISDN機能と参照点
 14−28 ISDNプロトコルレイヤ
 14−29 DDR設定例
第15章 CiscoIOS管理
 15−1 特権モードパスワード
 15−2 ログインパスワードの設定
 15−3 接続ユーザの確認
 15−4 Telnetの中断・復帰・終了
 15−5 ルータのコンポーネント
 15−6 ルータ 起動順序(デフォルト)
 15−7 CiscoIOSイメージの検索とロード
 15−8 設定情報の保存と再格納
 15−9 ファイルの管理
 15−10 設定情報の管理
 15−11 TFTPサーバへの保存・再格納
 15−12 ファイル名の確認
 15−13 show virsion
 15−14 IOSのバックアップとアップグレード
 15−15 copy flash tftp
 15−16 copy tftp flash
 15−17 デバイスの設定情報のロード
 15−18 コンフィグレーション レジスタ値
 15−19 コンフィグレーション レジスタ値の設定
 15−20 パスワードリカバリ
 15−21 パスワードリカバリの手順
 15−22 CDP(Cisco Discovery Protocol)
 15−23 show cdp neighbors
 15−24 show cdp neighbors detail
頁構成 1頁〜306頁
(内訳)
 1頁 はじめに
 2頁〜10頁 目次
 11頁〜305頁 本文
 306頁 奥付

以上
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