裁判の記録 line
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2012年
(平成24年)
[1月〜6月]
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1月12日 東国原前宮崎県知事の「たけし軍団」名誉棄損事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 東国原前宮崎県知事の著書やホームページの記述で名誉を傷つけられたとして、前知事の芸能人時代の後輩だった男性が前知事や出版社に500万円の慰謝料支払い等を求めた事件。
 裁判所は、元後輩に関する記述について、前知事がこうした事実を真実だったと信じるだけの理由は認められないとして、前知事と出版社に合計50万円の支払いを命じた。著書の販売差止めと謝罪広告掲載の請求については棄却した。

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1月12日 商標“ゆうメール”侵害事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 「ゆうメール」の名称でダイレクトメール(DM)サービスを展開する札幌市のDM企画・発送代行会社「札幌メールサービス」が、同じ名称を使用する郵便事業会社(日本郵便)によって商標権を侵害されたとして、日本郵便に対し広告物配布での名称の使用差し止めを求めた事件。札幌メールサービスは「各戸に対する広告物の配布など」の分野の商標として平成15年に「ゆうメール」を特許庁に出願、16年に商標登録されており、日本郵便側も16年に同分野で出願したが、すでに札幌メールが出願していたために認められずに、「郵便、メッセージの配達など」の分野で登録した。
 裁判所は、日本郵便が「ゆうメール」について、広告物もサービスの対象になると宣伝していることなどから、サービス内容が類似していると判断し、日本郵便の商標権侵害を認め、DMなど広告物を配達する際の使用中止を命じた。
判例全文
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1月12日 販促ツールのデザイン画事件
   大阪地裁/判決・請求棄却
 被告販促企画製作会社Aは、被告衣料会社から女性用ストッキングの販促ツールの制作と製造を従来より請け負っていた。被告Aは08年からの制作と製造を、新たに販促物企画製作会社Bに請け負わせることにしたが、他社見積もりの低廉さにより製造部分はB以外の他社に発注した。B(原告)は、Aおよび衣料会社(被告ら)が本件デザイン画の著作権や同一性保持権を侵害しているとして2356万円余の損害賠償等を求め、契約途中解除による損害賠償としての1521万円余の支払い又は契約締結上の過失に基づく1015万円余の損害賠償金支払いを求めた。これに対し被告Aは反訴として、原告Bに対し、債務不履行又は不法行為に基づく443万円余の損害賠償を求めた。
 裁判所は本件デザイン画に関して、素材は被告らによって提供されたものであり、原告が行った作業には著作物性が認められないとして、著作権・著作者人格権による損害賠償請求を認めず、また、製造に関する契約の締結や契約締結上のAの過失も認めなかった。更に被告Aによる反訴請求も認めず、双方の請求を棄却した。
判例全文
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1月17日 邦画3作品の格安DVD事件(3)
   最高裁(三小)/判決・破棄差戻し
 映画「暁の脱走」「また逢う日まで」「おかあさん」の著作権を有する映画会社が、これら作品を複製したDVD商品を海外で作成し輸入販売した格安DVD製造販売会社に対して、著作権法違反として1350万円の損害賠償等を求めた事件の上告審。
 各映画は旧著作権法時代の製作で、その著作者および著作名義者がそれぞれその監督にあるとした場合には、著作権の保護期間は最短平成34年まで続くことになるが、著作名義者が映画製作会社であるとされた場合には、著作権保護期間は平成14年までには切れていることになる。一審東京地裁は著作権侵害を認めて損害賠償金108万円の支払いを命じ、二審の知財高裁は、同じく各監督が著作者であると判断して、旧著作権法第6条が定める団体名義の著作物には当たらないとし、著作権侵害等を認めた1審を支持したが、被告が著作権保護期間が満了したと考えたことは許容されるとして、一審判決のうち損害賠償請求を一部認容した部分を取り消し、請求を棄却した。これに対し、映画会社側が上告した。
 最高裁第三小法廷は被告側の過失の有無について、被告の本件行為の時点において、本件各映画の著作権の存続期間について、少なくとも各監督が著作者の一人として旧法が適用されることを認識し得たから、各映画の著作権が存続していたことも認識し得たとして、二審の判断には法令違反があるとして、二審判決中の原告敗訴部分を破棄、差し戻した。
判例全文
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1月25日 自動連結システムの著作権確認事件(2)
   知財高裁/判決・取消
 通信機器製造販売会社(一審原告)が、鉄工会社(一審被告A)や物流会社(一審被告B)に対し、被告Bが使用する装置に組み込まれたプログラムの著作権が原告に帰属することの確認と、本件プログラムの使用料支払い契約に基づく使用料ないし不当利得相当額の支払いを求めて提訴した事件。
 一審は、本件プログラムの新規な表現、選択配列に現れた作成者の個性を認めて著作物性を認め、著作権の帰属については平成11年ころまでに作成者から原告に譲渡されており原告に帰属するとしたが、金銭の支払いについては使用料支払い契約の合意が確認できないとして原告の請求を棄却した。原被告双方が控訴していた。
 裁判所は、本件プログラムの著作物性について改めて検討し、その創作性を否定、使用料支払い契約に拘る合意も否定して、一審原告側の全面敗訴となった。
判例全文
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1月31日 「生命の實相」復刻出版事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却、附帯控訴棄却
 (上告・上告受理申立、上告棄却・上告不受理、確定)
 この裁判には3つの訴訟が絡んでいる。
【第1事件】 財団法人である生長の家社会事業団が、生長の家の創始者である故谷口雅春が戦前に創作した多数の著作物の集合体としての「生命の實相」の著作権は、創始者が財団法人の設立者として行なった寄付行為により財団法人に帰属しているが、出版契約を締結して「生命の實相」復刻版を刊行した日本教文社には印税に未払いがある上、復刻版に無断で真実と異なる著作権表示をしたとして、財団法人が日本教文社を訴えた事件。
【第2事件】 生長の家および創始者の遺族が、「生命の實相」の著作権は生長の家に帰属すると主張して、財団法人及び出版社光明思想社(以下、出版社)が出版した谷口雅春の書籍は著作権・著作者人格権を侵害したものであるとして、財団法人と出版社を訴えた事件。
【第3事件】 日本教文社が、財団法人から出版権の設定を受けたにもかかわらず、財団法人と出版社が日本教文社に無断で谷口雅春の書籍を刊行し又は刊行しようとしているとして、財団法人に対しては出版権が日本教文社に帰属することの確認を、財団法人と出版社の双方に対しては出版等の差し止めを求めた事件。
 一審東京地裁は、【第1事件】について、創始者の寄付行為により著作権は財団法人に帰属していると認め、印税支払いについては消滅時効を援用して50万円の限度で認めた。著作権表示については日本教文社の不法行為と判断したが、謝罪広告掲載は認めなかった。【第2事件】【第3事件】については請求を棄却した。生長の家、遺族、日本教文社が控訴し、財団法人が附帯控訴した。
 知財高裁は、控訴、附帯控訴を棄却した。
判例全文
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1月31日 テレビ番組送信サービス事件(まねきTV)(2)
   知財高裁/判決・取消(上告)
 インターネットを通じて日本のテレビ番組を海外で視聴できるようにした有料サービス事業「まねきTV」は著作権法に違反するとして、NHKと在京民放5社が、運営会社にサービスの停止と計約1000万円の損害賠償を求めた事件。
 一審・二審とも、ベースステーションは「1対1」の送信を行う機能しか有しておらず、「公衆」に対する送信ではないので運営会社は公衆送信行為を行っておらず、また、入力の主体は顧客であるとしていたが、最高裁第三小法廷は、装置が1対1の送信を行う機能しか有していないにしても、顧客からのリクエストを受けてネットを通じて自動的に送信する機能を持つ装置は自動公衆送信装置に当たり、また、送信の主体も装置に入力している者=運営会社であるとして、原判決を破棄、事件を知財高裁に差し戻した。
 差し戻し審になる知財高裁は原判決を取消し、運営会社は送信の主体であり、著作権を侵害した過失が認められるとして、サービスの停止と、賠償金合計約160万円の支払いを命じた。
判例全文
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1月31日 テレビ番組送信サービス事件(ロクラクU)(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却、附帯控訴一部認容、一部棄却(上告)
 テレビ番組を録画し、ネット経由で転送して海外でも視聴可能にした機器「ロクラクU」を使ったサービスを行っている業者に対して、著作権侵害であるとして、NHKと民放9社がサービスの停止と1億3800万円の損害賠償等を求めた事件。業者は顧客にレンタルした親機を国内に設置して管理し、顧客は購入またはレンタルされた手元の子機を使ってネット経由で親機に録画を指示したのち、親機から録画のデータの送信を受けて再生視聴できるというもの。
 一審判決は業者を録画を行う主体であるとし、業者が控訴した二審では業者は顧客が複製を容易にするための環境等を提供しているに過ぎないから主体ではないとしてNHKらの請求を棄却したが、最高裁第一小法廷は、業者がその管理下で放送を複製機器に入力している場合には、顧客が指示をしているとしても、業者が複製の主体であると解するのが相当であるとして、原判決を破棄、事件を知財高裁に差し戻した。
 差し戻し審になる知財高裁は、業者の控訴を棄却し、業者に対し、サービスの停止と賠償金合計約1570万円の支払いを命じた。
判例全文
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1月31日 “入れ墨”の著作物性事件(2)
   知財高裁/判決・変更
 書籍執筆者が自らの左大腿部に施した十一面観音立像の入れ墨の画像を、彫り師に無断で自著『合格! 行政書士 南無刺青観世音』の表紙や扉に使用し、またその表紙画像を自らや出版社のホームページに掲載したのは著作者人格権侵害であるとして、入れ墨の彫り師が書籍執筆者と出版社を訴えた事件。
 一審はまず入れ墨の著作物性を肯定し、次に著作者人格権のうち公表権侵害性は否定したが、氏名表示権侵害性と同一性保持権侵害性を認め、書籍による侵害に対して著者に24万円、ホームページによる侵害に対して著者と出版社に各12万円の支払いを命じたが、著者と出版社が控訴した。
 裁判所は一審の判断を引き継いで被告らの主張を退け、賠償金額を、書籍による侵害に対して連帯して12万円、ホームページによる侵害に対して著者と出版社に各6万円に変更した。
判例全文
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1月31日 商標“喜多方ラーメン”審決取消事件(3)
   最高裁(三小)/決定・上告不受理(確定)
 福島県喜多方市のラーメン店約40店が加盟する協同組合「蔵のまち喜多方老麺会」が、「喜多方ラーメン」の地域団体商標登録を認めなかった特許庁の審決を取り消すよう求めた事件。一審の知財高裁は、同会会員でなくても長期にわたって「喜多方ラーメン」の名称を使用している店があるなどとして、特許庁の審決を妥当と判断し、請求を棄却したが、組合が上告した。
 最高裁第三小法廷は31日付で、組合側の上告を受理しない決定をした。登録を認めなかった知財高裁判決が確定した。

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1月31日 測量ソフト「おまかせ君プロ」事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却、附帯控訴一部認容、一部棄却
 「おまかせ君プロVer.2.5」という名称の測量業務用ソフト(原告ソフト)を製造し、これを使用して測量業務等を行なっている原告会社が、同様のソフト(被告ソフト)を製造し、これを使用して測量業務等を行なっている測量サービス会社(被告A)とその関連会社(被告B)、および被告会社Aの取締役(被告C)と原告元従業員(被告D)に対して、被告ソフトはプログラムの著作物である原告ソフトを複製又は翻案したものであり著作権侵害であると主張し、ABに対して被告プログラムの製造等の差止めと廃棄を求めると同時に、被告らに6000万円の損害賠償金支払いを求めた事件。
 一審東京地裁は原告ソフトの著作物性を肯定し、被告プログラムが原告プログラムを複製又は翻案したものであると判断、更に被告らの共同不法行為責任を認め、ABに被告プログラムの差止めと廃棄を、被告ら全員に約3227万円の支払いを命じたが、被告らが控訴、原告が附帯控訴した。
 知財高裁は原審の判断を維持して控訴を棄却し、附帯控訴に基づき賠償金を3943万円余に変更した。
判例全文
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1月31日 「北朝鮮の極秘文書」翻訳書の譲渡権事件
   東京地裁/判決・本訴請求一部認容、一部棄却、
            反訴請求一部認容、一部棄却(控訴)
 韓国で発行された書籍「米國・國立公文書館所蔵北韓解放直後極秘資料」が日本で発行された書籍「米国・国立公文書館所蔵北朝鮮の極秘資料」の著作権および著作者人格権を侵害するものだとして、日本書籍の著作権を有するとする作家が、韓国側の出版社およびその役員らに対し、3687万円余の損害賠償を求めた事件。
 被告側は原告のビラ配布行為などによって名誉信用を毀損されたなどとして1375万円余の損害賠償を求める反訴をした。
 これは控訴審判決が出ている同書の図書館蔵書をめぐる貸与権事件の別件訴訟でもある。
 裁判所は被告出版社らの韓国語翻訳版侵害書籍製作への直接の関与は認めなかったが、侵害書籍販売の点で過失を認め、被告側に30万円の支払いを、また原告行為による被告の名誉毀損を認めて原告に33万円の支払いを命じた。
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2月1日 貴乃花親方夫妻への名誉棄損事件(フライデー)(3)
   最高裁(二小)/決定・上告不受理(確定)
 雑誌「フライデー」の記事で名誉を傷つけられたとして、元横綱の貴乃花親方夫妻が発行元の講談社らに損害賠償を求めた事件。問題になったのは2005年6月〜8月に掲載された故二子山親方の遺産をめぐる記事と写真。
 最高裁第二小法廷は講談社側の上告を退ける決定をし、同社側に715万円の賠償金支払いを命じた二審判決が確定した。

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2月2日 ピンク・レディのパブリシティ権事件(3)
   最高裁(一小)/判決・上告棄却(確定)
 元ピンク・レディの2人が、光文社が週刊誌の記事中に「ピンク・レディdeダイエット」と題する舞台写真14枚を無断掲載し、「パブリシティ権」を侵害したとして損害賠償を求めた事件の上告審。
 最高裁第一小法廷は、著名人らの氏名や肖像は顧客を引き付けて商品の販売を促進する場合があり、これを独占的に利用できる権利はパブリシティ権として保護できるという判断を示した。一方、著名人は肖像などを時事報道、論説、創作物など正当な表現行為に使用されることを受け入れなければならない場合もあると述べ、同誌の記事については侵害にあたらないと判断して、請求を棄却した一審二審判決を支持して上告を棄却した。
判例全文
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2月13日 少年供述調書の流出事件(刑)(3)
   最高裁(二小)/決定・上告棄却(確定)
 
判例全文
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2月14日 商標“Chupa Chups”侵害事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 棒つきキャンディーで知られる「チュッパチャプス」の商標権を持つイタリアの会社が、インターネット上のショッピングモールの出店者に類似のロゴマークをつけた商品を販売されたとして、サイトを運営する「楽天」に販売差し止めなどを求めた事件の控訴審。
 一審東京地裁は、楽天は売買の当事者ではないとして、会社の請求を退けた。
 知財高裁は、サイト運営者が出店者の商標権侵害を知った場合、合理的期間内に削除しなければ、サイトの運営者も侵害の責任を負い、商標権者は運営者に差止めの請求をすることができる、という判断を示した上で、楽天は、商標権侵害の警告を受けたあと8日以内にサイトから問題商品を削除していたとして、会社の請求を棄却した。
判例全文
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2月14日 カラオケ「冬のソナタ」事件(2)
   知財高裁/判決・A事件控訴棄却、B事件変更
 ドラマ「冬のソナタ」の主題歌など、韓国の約1200曲を無断でカラオケ使用したとして、著作権管理会社「アジア著作協会」が大手カラオケ業者に9億円余の損害賠償を求めた事件の控訴審。
 一審東京地裁は、作詞については289曲、作曲については275曲の請求権を原告に認め、約2300万円の賠償を被告に命じたが、判決を不服として、原被告双方が控訴した。
 裁判所は、原告が主張する権利の一部は、仲介した会社との契約終了により存在しないと判断し、原告の請求権を作詞について37曲、作曲について123曲に減らした。そして原告控訴事件については請求棄却、被告控訴事件については、被告に642万円余の支払いを命じる原判決変更を言い渡した。
判例全文
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2月15日 「坂の上の雲」解説本事件
   東京地裁/決定・仮処分認容
 司馬遼太郎の代表作を紹介した雑誌風の書籍「『坂の上の雲』大事典」により無断で原典を複製されたとして、司馬遼太郎夫人ら著作権者側が、出版元の洋泉社への出版差し止めを求める仮処分申請をした事件。
 東京地裁は申し立てを認め、出版の差止めと書籍の差し押さえを命じる仮処分決定を出した。

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2月16日 漢検vs前理事長 問題集の著作権帰属事件
   大阪地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 原告・財団法人日本漢字能力検定協会が、被告教材制作会社や、その代表者である原告元理事長に対して、漢字能力検定対策問題集の編集著作権が協会に属することの確認と、不正競争防止法に基づいて被告らの編集著作権主張行為の禁止を求めた事件。
 裁判所は対策問題集の編集著作権の帰属について検討を加え、権利者は原告であると認め、被告らの編集への具体的関与を認定しなかった。また、被告らが編集著作権を主張する行為は、原告の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知・流布となるとして、営業誹謗行為の差止めを認めた。
判例全文
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2月22日 アトラクション“スペースチューブ”事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却、追加請求棄却、附帯控訴認容
 スペースチューブという体験型巨大チューブ(控訴人装置)を使い世界中でイベントを開催する団体を主宰する者(控訴人)が、同様の装置をイベント会場などにレンタルする会社(被控訴人)に対する注意書きをウェブサイトに載せたところ、被控訴人はその注意書きが虚偽の事実を含み営業妨害であるとして差止め請求を行って仮処分が決定した。控訴人は著作権が控訴人に存することの確認と、被控訴人の著作権侵害による損害賠償金1710万円を要求して提訴した。
 一審の東京地裁は、控訴人の装置には著作物性を認め控訴人が著作権を有することを認めたが、被控訴人の装置は控訴人装置の創作性の認められる部分においては異なっているので著作権侵害に当たらないとして、著作権の確認以外の請求は棄却した。
 装置に著作物性を認めた第一審に対し、控訴審である知財高裁は、控訴人装置は応用美術に属するものというべきであるから、それが純粋美術や美術工芸品と同視できるような美的特性を備えている限りにおいて著作物性を認めることができると述べた上で、控訴人装置の諸特性を検討、結論として創作性を否定した。
判例全文
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2月23日 DeNA vs グリー 類似「ソーシャルゲーム」事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 インターネットを使ったゲームソフト開発会社グリーが、同業競合相手のDeNAとゲーム開発会社に、携帯電話用のオンライン釣りゲームを模倣され、著作権を侵害されたとして、ゲーム配信の差止めと約9億4000万円の賠償金支払いを求めた事件。問題となったのはDeNAが09年2月から配信する「釣りゲームタウン2」で、グリー社が07年5月に配信を開始した「釣り★スタ」と画面が類似しているとグリー社は主張した。
 裁判所は、水中に三重の同心円を描き、魚がその中に入った時にボタンを引き寄せるなどの点で類似するというグリー社の主張を認め、DeNA社の画面はグリー社の画面に依拠して作成されたと言えると判断し、被告側に配信の差止めと、合計約2億3500万円の賠償金支払いを命じた。携帯電話で他人と交流しながら遊ぶ「ソーシャルゲーム」で著作権侵害が認められたのは初めて。敗訴した2社は即日控訴した。
判例全文
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2月28日 「押し紙報道」名誉毀損事件(週刊新潮)(2)
   東京高裁/判決・控訴棄却
 新聞販売店に実売部数を上回る新聞を押しつけて売り上げ部数のかさ上げを図っているなどとする虚偽の記事を「週刊新潮」に掲載されて名誉を傷つけられたとして、読売新聞の東京、大阪、西部の3本社が、版元の新潮社と記事を書いたジャーナリストに対して、損害賠償金5500万円の支払い等を求めた事件の控訴審。問題となったのは2009年6月11日号の「『新聞業界』最大のタブー『押し紙』を斬る!」という記事で、「読売新聞の場合、全国レベルでは30%から40%くらいの“押し紙”がある」「紙面広告の価値を上げている」と記されていた。
 一審東京地裁は調査データの客観的裏付けがないとして、被告側に385万円の支払いを命じた。
 東京高裁は一審の判断を維持して被告側の主張を退け、控訴を棄却した。

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2月28日 DVD「中国の世界遺産」日本語版契約事件(2)
   知財高裁/判決・変更(上告、上告不受理・確定)
 中華人民共和国の国営放送である中国中央電視台(以下CCTV)のグループ会社で中国法人である映像制作会社が、CCTVの放送用として製作された記録映画の著作権を有するとして、日本の出版社(被告)が製作・販売した『中国の世界遺産』と題するDVDは当該記録映画を複製又は翻案したものであると主張して、被告に対し2500万円の損害賠償を求めた事件の控訴審。
 一審は当該記録映画の著作権が原告に帰属することを認め、被告の主張する利用許諾権限取得は否定して被告の過失を認めた。その上で平成16・17年にかけての販売分に対する被告の消減時効の抗弁を認めて、平成18年8月販売の100部についてのみ損害賠償請求を認め10万5000円の支払いを命じた。原被告双方が各敗訴部分の取り消しを求めて控訴した。
 二審は基本的に原審の判断を維持したが、平成16・17年にかけての販売分についての被告の利益も原告に同額の損失をもたらしていたと認定、原審の認定した10万5000円にその分を加えた1065万円の支払いを命じた。
判例全文
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2月28日 マンション設計図の著作権事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 建築の設計、工事および工事監理を業とする原告会社が、自動車運送事業等を業とする被告会社から店舗付きマンションの設計、工事および監理を請け負い、設計図書や完成予想パースを完成させてこれを被告に渡して着工したところ、被告が設計、管理の報酬を支払わないため請負契約を解除したにもかかわらず、被告が設計図書等を複製して使い続ける等の行為を行ったのは、原告に対する著作権侵害であるなどとして、1500万円の支払いを求めた事件。
 裁判所は、原被告の間で争いとなり、23年9月に結審した請負代金請求事件において、本件契約における報酬が設計・監理料等を含むことを理由とした判決が確定し、原告は設計・監理料等の請負代金請求権を持たない旨の既判力が生じているから、原告が後訴にあたる本訴で、上記報酬が設計・監理料等を含まないと主張して、設計・監理料等の請負代金請求権がある旨を主張することは許されない、従って、その前提での原告の主張は採用できないとして、請求を棄却した。
判例全文
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2月28日 映画「Shall we ダンス?」の振り付け侵害事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 映画「Shall We ダンス?」のダンスシーンで用いられた社交ダンスの振り付けを創作したと主張する原告が、当該映画の著作権を有している製作委員会の幹事会社である角川映画(被告)による当該映画のビデオグラム販売、テレビ放映等の二次利用によって、原告の有するダンス振り付けに拘る著作権を侵害されたとして、被告に対して5276万円余の支払いを求めた事件。当該映画のエンドクレジットには、「ダンス演出・振付」として原告の名前が記されている。
 争点のポイントは当該映画のダンス振り付けに著作物性が認められるか、という点に集約されたが、裁判所は原告の主張する個々の振り付けの著作物性を点検し、いずれも独創性が認められるほどの顕著な特徴を有することになるということも困難である等と判断して著作物性を否定し、その結果、原告の請求には理由がないとして、棄却した。
判例全文
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2月29日 レンタルサーバー付随プログラムの無断使用事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 レンタルサーバ会社が、サーバレンタルサービスに付帯して許諾されたプログラムの利用に関して、契約解除後もホームページ制作会社に利用されたとして、本件プログラムの複製物の譲渡および公衆送信の差止めと、70万円の損害賠償を求めて、ホームページ制作会社を訴えた事件の控訴審。
 一審は被告が原告の著作権を侵害するおそれは十分にあると認め、本件プログラムの複製物の譲渡および公衆送信の差止めを認めて、損害額については10万円の支払いを命じたが、原告がこれを不服として控訴した。
 裁判所は損害額について、原判決が認容した10万円を超えるものではないとして、70万円とする控訴人の主張を容れず、控訴を棄却した。
判例全文
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3月13日 商標“クレヨンしんちゃん”審決取消事件(中国)
   中国北京市第一中級人民法院/判決・請求棄却
 中国企業が中国で商標登録していた「クレヨンしんちゃん」の中国語名とデザインについて、3年間使用されなかったとして中国当局が登録を取り消した。広東省広州市の会社が1996年に申請し翌年に登録、その後譲渡を繰り返して、最終的には江蘇省の服飾会社が取得していたもの。2010年に取り消しが決定し、服飾会社が不服を申し立てていたが、裁判所はその申立を退けた。

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3月16日 アニメ「聖闘士星矢」著作権侵害事件(米)
   米コロンビア特別区連邦地裁/判決・請求却下
 東映アニメーションのアメリカの子会社であるTOEI ANIMATION INCORPORATEDとアメリカ合衆国は、「Zodiac Knights 2000」という描画の著作権者男性から著作権および商標権を侵害したとして、侵害差止めと10億ドルの損害賠償を求められていたが、コロンビア特別区連邦地裁は請求原因についての充分な記載がないとする被告側の却下申立を認め、訴訟を却下した。

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3月22日 切り餅の「切り込み」特許事件(2)
   知財高裁/判決・取消(上告、上告棄却)
 側面に切り込みを入れた切り餅を製造販売している食品製造販売会社が、側面と上下の面に切り込みを入れた切り餅を販売している同業の食品会社を、特許権を侵害されたとして、製造販売の差し止めや14億8500万円の損害賠償を求めた事件の控訴審。
 知財高裁は昨年9月の中間判決で被告会社による特許権の侵害を認めており、この日の判決で被告会社に販売の中止と約8億円の損害賠償を命じた。
判例全文
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3月22日 鉄道DVD無断編集・放送事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 世界各地の蒸気機関車を撮影したビデオ映像の著作者・著作権者である紀行作家(原告)が、当ビデオ映像がテレビ番組制作会社ら(被告ら)によってテレビ放送用の番組に編集され、テレビ局に販売されてテレビ放映されたことにより、著作権・著作者人格権を侵害されたとして、各被告に2000万円の損害賠償金支払いを求めた事件。
 裁判所は、原告の黙示の許諾があったとする被告らの主張を認めず、被告側の著作権侵害および著作者人格権侵害を認めて、被告らに連帯して110万円を支払うよう命じた。
判例全文
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3月22日 調理器具デザイン図面の著作物性事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却、拡張請求棄却
 商品企画製造販売会社(一審被告)が製造販売する三徳包丁等のデザインが、デザイナー(一審原告)の提案した片手鍋のグリップ部分のデザインを流用しているなどとして、本件商品化実施契約に基づく請求、本件鍋シリーズに拘るデザイナー表示に関連した請求、著作権侵害に基づく請求等を行った訴訟の控訴審。一審は原告の請求を棄却したが、原告側が控訴した。
 裁判所は、著作権侵害に基づく請求に対して、実用品である鍋の持ち手のデザインは美術工芸品と同視できるような美的な効果を有するものとまでは言えず、著作権法の保護の対象となる美術の著作物に当たるとすることはできないと判断するなど、控訴人の請求をすべて退け、控訴を棄却した。
判例全文
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3月23日 カード決済プログラムの著作権侵害事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 通信機器製造販売会社(原告)が、クレジットカード決済システムの製品評価・機能評価のため一時的に使用させる目的で被告NTTコムのサーバにプログラムをインストールしたにもかかわらず、被告NTTコムが被告GPネットに本件プログラムがインストールされたサーバを無許諾で譲渡し、上記目的が終了した後も被告らにおいて本件プログラムを使用していることは、原告の譲渡権を侵害するとして損害賠償を求めた事件。
 裁判所は、NTTコムによるGPネットへの譲渡は公衆への提供を意味する譲渡権を侵害したものとはいえないと判断して、原告の請求を棄却した。
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3月23日 「クレヨンしんちゃん」著作権侵害事件(中国)
   中国上海市第一中級人民法院/判決・請求一部認容、一部棄却
 「クレヨンしんちゃん」の著作権を侵害されたとして、発行元の双葉社が中国企業3社に約106万元(約1400万円)の賠償を求めた訴訟の判決が上海の中級人民法院(地裁)であり、名前やイラストを使って衣類や靴などを販売していた企業の著作権侵害を認定して、侵害行為の停止と30万元(約400万円)の支払いを命じた。

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3月23日 読売西部本社名誉毀損事件(3)
   最高裁(二小)/判決・破棄差戻し
 フリーのジャーナリストがネット上のサイトに掲載した記事で名誉を傷つけられたとして、読売新聞西部本社と社員3人が損害賠償を求めた事件の上告審。記事は、新聞販売店が実際の配達部数とは異なる報告をしたことを理由に販売店契約の解除を通告した際に、記者が販売店からチラシ類を了解なく持ち去った、というもの。
 最高裁第二小法廷は、記事は真実ではなく、西部本社などの名誉を傷つけたとして、読売新聞社側の請求・控訴を棄却していた一審・二審の判決を破棄し、賠償額を決めるため東京地裁に差戻した。
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3月25日 “円周率”から作ったメロディーの著作権事件(米)
   米オレゴン地区連邦裁判所/判決・請求棄却
 A氏は昨年アメリカで円周率の数字を音程に置き換えて作曲した曲を発表して話題になったが、20年前に同じ発想で曲を作ったというB氏が、円周率を元に作曲された曲は著作権で保護されるべきだとして提訴していた。米オレゴン地区連邦裁判所は、円周率を音程に置き換えたことにより得られる音符の配列に著作権は認められないと裁定した。

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3月26日 自衛隊による個人情報収集・監視事件
   仙台地裁/判決・請求一部認容、一部棄却、一部却下
 東北6県の106人が、自衛隊のイラク派遣に反対する活動等を当時の陸上自衛隊情報保全隊によって監視されて情報を収集されたことにより精神的苦痛を受けたとして、国に対し情報保全隊による監視等の差止めと慰謝料の支払いを求めた事件。
 裁判所は、自己の個人情報を正当な目的や必要性によらず収集保有されないという意味での自己の個人情報をコントロールする権利たる人格権を侵害しているとして、5人に対して合計約30万円の賠償金支払いを国に命じた。但し差止め請求は却下した。
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3月26日 “イカタコウイルス”器物損壊事件(刑)(2)
   東京高裁/判決・変更
 「イカタコウイルス」と呼ばれるコンピュータウイルスでパソコン内のデータを使用不能にしたとして、大阪府在住の無職男性が器物損壊罪に問われた事件の控訴審。
 裁判所は一審に続き器物損壊罪の成立を認めたが、懲役2年6ヶ月の一審判決を破棄、改めて懲役2年4ヶ月を命じた。

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3月27日 亀田興毅選手不正疑惑報道事件(週刊ポスト)
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 プロボクサーの亀田興毅選手が「週刊ポスト」の記事で名誉を傷つけられたとして、発行元の小学館などに約2000万円の損害賠償金の支払い等を求めた事件。問題となったのは2010年5月14日号に掲載された「不自然な『バンデージの封印』を徹底追及!」と題された、亀田選手が内藤大助選手を破った世界フライ級タイトル戦で不正があったのではないかと報じた記事。
 裁判所は記事本文については名誉毀損を認めなかったが、見出しと本文への導入文については、本文の趣旨とは異なるもので、誇張表現として許される範囲を逸脱しているとして、小学館側に約300万円の賠償金支払いを命じた。

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3月28日 大河ドラマ「龍馬伝」題字デザイン事件
   京都地裁/判決・請求棄却
 京都市の書道家が、NHK大河ドラマ「龍馬伝」の題字の漢字と英文字を組み合わせたデザインにより作品を盗用され、著作権を侵害されたとして、NHKに約1000万円の損害賠償金支払いを求めた事件。
 裁判所は、漢字と英文字を組み合わせて配置することは一般的なありふれたことであって、創作性が認められないとして、原告の請求を棄却した。

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3月28日 “プレゼン資料”等社内文書の無断複製事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 企業の経営やリスクマネジメントに関するコンサルティング業務を行い、焼き肉店を経営する会社(原告)が、原告元従業員やその家族および焼き肉店元アルバイト、外国為替取引業会社(以上、被告ら)が、ホームページ制作・リニューアル業務やWeb管理業務に関して、(1)不正競業、兼職、(2)横領、背任、(3)営業妨害、業務懈怠、(4)情報管理義務違反、(5)著作権侵害、(6)営業秘密の侵害、(7)原告らの被害回復に対する妨害行為、(8)契約の不当破棄に該当する行為を行ったとして、1億7000万円の賠償金支払いを求めた事件。
 裁判所はそれぞれ、具体的事実が明白でない等として原告の主張を認めず、著作権侵害の主張に対しても、著作物性の否定や、創作性のない部分での共通の指摘により主張を退け、請求を棄却した。
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3月29日 挿絵の著作権譲渡事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 14人の画家(原告ら)が、学習教室を経営し教育関係の出版を行っている被告会社に対し、被告会社が出版した原告らの絵画を収録した幼児教育教材1を無断で増刷販売して原告らの著作権を侵害しており、同様に幼児教育教材2についても無断で増刷販売する恐れがあるとして、1・2の印刷、出版の差止めと、損害賠償金1500万円の支払いを求めた事件。本件原画の引き渡しに際しては、被告会社より原告らに画料が支払われており、この画料が譲渡の対価であるか、初刷り部数における使用の対価であるかが争われた。
 裁判所は、本件幼児教育教材1の制作に至る経緯を分析し、原告らと被告会社の交渉の経緯、原告らが本件以前に絵本の挿絵を制作した経験がなかったことなどを考慮したうえで、被告会社は著作権者である原告らの許諾なしに幼児教育教材1を増刷販売していると判断して、1・2の印刷、出版の差止めと、損害賠償金約900万円の支払いを被告会社に命じた。
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3月29日 動画共有サイトの著作権侵害事件(TVブレイク)(3)
   最高裁(一小)/決定・上告不受理(確定)
 インターネットの動画共有サイト「TVブレイク」で音楽を無断配信され、著作権を侵害されたとして、JASRAC(日本音楽著作権協会)が、サイトを運営するジャストオンライン等に配信の差し止めと約1億2000万円の損害賠償を求めた事件。一審東京地裁はジャストオンライン側の著作権侵害主体性を認めて配信差し止めと約9000万円の支払いを命じ、二審知財高裁もこれを支持して控訴を棄却したが、ジャストオンライン側が上告受理の申し立てをした。
 最高裁第一小法廷は申し立てを受理しない決定をし、一審二審の判決が確定した。

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4月12日 新聞見出し“毒あんこ”事件(2)
   東京高裁/判決・控訴棄却
 長野市の食品会社「丸富士」が新聞社の不適切な報道で名誉を傷つけられたとして、産経新聞社とスポーツニッポン新聞社に1千万円の損害賠償を求めた事件の控訴審。問題となったのは食品会社が納入した中国製のあんに異臭を感じた従業員が味見したあとに嘔吐したことを報じた記事で、2社はそれぞれの発行するスポーツ新聞で、共同通信の配信記事に「毒あんこ」などの見出しをつけて掲載した。
 一審長野地裁は両社に330万円の賠償金支払いを命じ、両社が控訴していたが、東京高裁は一審を支持して控訴を棄却した。

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4月18日 「2ちゃんねる」リンク事件(2)
   東京高裁/判決・取消
 インターネット掲示板に、学生時代にセクハラをしたとの書き込みがされたスレッドへのリンクを張られた男性が、虚偽の書き込みへのリンクによって名誉を傷つけられたとして、プロバイダーに発信者情報の開示を求めた事件の控訴審。男性はスレッドのタイトルとリンク先のURLを書き込むだけでも名誉毀損だとしたが、一審東京地裁はリンクを張っただけでは名誉毀損に当たらないとして請求を棄却、男性側が控訴していた。
 東京高裁は書き込みを見る人がリンクをクリックして別の書き込みを読むことは容易に想像できるとして、スレッドのタイトルとURLを書き込むことによる名誉毀損の成立を認め、プロバイダーに発信者情報の開示を命じた。

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4月22日 You Tubeの違法コンテンツ事件(独)
   独ハンブルグ地裁/判決・請求認容
 ドイツの作曲家や音楽出版社が加盟する音楽著作権管理団体GEMAの発表によると、同団体がGoogle傘下のYouTubeと争っている裁判で、ハンブルクの地方裁判所が、YouTubeにはユーザーが投稿した著作権侵害コンテンツに対して責任があるという判決を下したという。裁判では、ユーザーが投稿した動画が他人の著作権を侵害していた場合にYouTubeに責任があるかどうかが争われていた。同裁判所はYouTubeに対し、著作権保護のための特別な機能を追加するよう命じた。

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4月24日 仙谷政調会長代行への名誉毀損事件(2)
   東京高裁/判決・変更(上告・上告不受理、確定)
 民主党の仙石由人政調会長代行が、暴力団関係者と交際があるかのように報じた「週刊新潮」の記事で名誉を傷つけられたとして、発行元の新潮社に1150万円の賠償金等を求めた事件の控訴審。問題の記事は仙石氏が官房長官だった時期である2010年10月28日号の「赤い官房長官『仙石由人』の研究」で、一審東京地裁は仙石氏側の請求を一部認め、賠償金100万円を命じていた。
 東京高裁は、暴力団関係者との深い交際を伺わせる事実は認められず、仙石氏の社会的評価を著しく低下させたとして、一審判決に続いて名誉毀損を認めた上で、一審判決を変更、賠償額を330万円に増額して新たに「週刊新潮」への謝罪広告掲載を命じた。

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4月25日 “編み物と編み図”の著作物性事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 手編み物作家である原告が、編み物団体主催者である被告が被告繊維製品製造加工販売業者に編み物・編み図を納入し、その写真を目録に掲載させたことに関して、その被告編み物・編み図は原告の編み物・編み図を複製、翻案したものであると主張して、被告らに対し、被告作品・被告作品写真の展示、販売の差止め、損害賠償金660万円の支払い、および謝罪広告の掲載を求めた事件。
 一審東京地裁は、原告編み物および編み図の著作物性をいずれも否定して請求を棄却したが、原告が控訴していた。
 控訴審においても裁判所は、原告の編み物および編み図の構成は構成又はアイディアに留まるものとして著作物性を認めず、控訴を棄却した。
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4月25日 “永久凍土マンモス”CGイラスト事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 医科大学教授(一審原告)が、一審被告出版社が発行した書籍の本文中およびカバーに掲載された画像は、一審原告が「マンモス」の標本のX線CTデータ等を元に3次元CGで作成した著作物を、無断で一部改変して使用したものであり、著作権および著作者人格権侵害であるとして、発行差止めと損害賠償等を求めた事件。
 一審東京地裁は、画像は作者の個性が表現されていると判断して著作物性を認め、本書籍の発行の差し止めと画像削除請求を認容、出版社に50万円の支払いを命じたが、出版社側が控訴した。
 知財高裁は画像作成の経過や本書籍での画像使用の経過を分析し、原判決は相当であると判断して、控訴を棄却した。
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4月26日 「ウルトラマン」商品化事件(3)
   最高裁(一小)/決定・上告不受理(確定)
 ウルトラマンの関連商品を海外で販売できる独占利用権を侵害されたとして、東京の企画デザイン会社が円谷プロダクションに1億円の損害賠償を求めた事件。第一審では、原告会社の損害を認定して、被告が海外での利用権を別の会社に与えるなどして得た金額のうち約1600万円を、原告会社に支払うよう命じたが、第二審知財高裁は一審同様、被告による債務不履行は認めたものの、損害が生じたことを認定できないとして損害の発生を否定、原告会社の主張をみとめず、一審判決の被告敗訴部分を取り消して原告会社の請求を棄却した。
 最高裁第一小法廷は、原告会社の上告を受理しないことを決定し、同社の請求を棄却した二審の判決が確定した。

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4月26日 安井金比羅宮の「縁切り縁結び碑」と「形代」事件
   大阪地裁/判決・請求棄却
 金毘羅宮の境内に設置された縁切り祈願の石碑や、宮で頒布している御幣を描いたお札の作者が、金毘羅宮が碑を「縁切り・縁結び碑」と名付け、お札を「形代」と名付けて展示や頒布を行っているのは著作権および著作者人格権の侵害であるとして、金毘羅宮に対して、名称の使用の差止めと、展示や頒布の差止め等を求めた事件。
 裁判所は、碑の題号が「断叶の碑」であり、お札の題号が「神札」であるとする原告の主張を、ともに証拠がない、また一般名詞であるとして退け、展示や頒布についても、これまでの経緯から原告の許諾があった等として差止めの必要を認めず、原告の名誉声望を毀損されたとする主張を否定して、請求を棄却した。
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4月27日 郵便不正記事の名誉毀損事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 民主党の牧義夫衆議院議員が、障害者団体向け郵便割引制度の悪用事件をめぐる虚偽の記事で名誉を毀損されたとして、報道した朝日新聞社に1650万円の損害賠償等を求めた事件。問題となったのは「郵便不正、一度は拒否 日本郵便 牧氏来訪後覆す」の見出しで報じられた2009年4月19日付の記事で、郵便局で一度は断られた自称障害者団体のダイレクトメールの不正な発送が、牧議員の秘書が日本郵便の支社を訪問したあとに認められたとするもの。その後、発送が秘書の訪問前だったことが判明して、朝日新聞社は訂正記事を出した。
 裁判所は、一部の報道記事について、内容が真実でなく、真実と信じるに足りる理由もなかったと判断して、同社に110万円の支払いを命じた。謝罪広告の掲載要求に対しては、訂正記事があることから、その必要性を否定した。

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4月27日 “自炊”代行事件
   東京地裁/認諾
 書籍をスキャンして電子ファイルを作成する「自炊」を個人ユーザーに代わって行うスキャン代行業は、著作権法違反であるとして、浅田次郎、大沢在昌、永井豪、林真理子、東野圭吾、弘兼憲史、武論尊の作家7名が業者2社に対して複製行為の差止めを求めた提訴に関して、提訴されていたうちの1社が「自炊」の中止を決め、請求を認める「認諾」を表明した。これにより、この業者に対する訴訟は、判決が下る前に終了することになった。
 なお、残る1社もスキャン事業を中止、会社を解散したため、原告弁護団は訴訟を取り下げると5月22日に発表した。これで原告側の実質的勝訴が確定した。

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5月9日 邦画3作品の格安DVD事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 映画「暁の脱走」「また逢う日まで」「おかあさん」の著作権を有する映画会社が、これら作品を複製したDVD商品を海外で作成し輸入販売した格安DVD製造販売会社に対して、著作権法違反として1350万円の損害賠償等を求めた事件の差戻し審。
 旧著作権法時代製作の各映画の著作権保護期間をめぐる争い。一審東京地裁は著作権侵害を認めて損害賠償金108万円の支払いを命じ、二審の知財高裁は著作権侵害等を認めた一審を支持したが、被告が著作権保護期間が満了したと考えたことは許容されるとして、一審判決のうち損害賠償請求を一部認容した部分を取り消し、請求を棄却した。これに対し最高裁第三小法廷は、被告側は本件各映画の著作権の存続期間について、少なくとも各監督が著作者の一人として旧法が適応されることを認識し得たから、各映画の著作権が存続していたことも認識し得たとして、二審の判断には法令違反があるとして、二審判決中の原告敗訴部分を破棄、差戻した。
 差戻し法廷は上告審の過失肯定を受けて被告の控訴を棄却、損害額は1審と同額となった。
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5月23日 「光市母子殺害事件」被告少年の実名本事件
   広島地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 山口県光市で起きた母子殺害事件で死刑が確定した死刑囚が、自分の実名を出して事件を報じた書籍の著者と版元に対して、出版の差止めと慰謝料など1300万円の損害賠償を求めた事件。本は2009年に出版された『福田君を殺して何になる』で、死刑囚は今年2012年3月に死刑が確定している。
 裁判所は、死刑が確定しており、原告が重大な損失を受ける恐れはないとして差止め請求は退けたが、著者らに計66万円の損害賠償金支払いを命じた。

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5月31日 韓国楽曲のカラオケ“信託譲渡”事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 韓国国籍を有する作詞家・作曲家9名(原告ら)が、業務用カラオケ事業者ら(被告ら)に対して、被告らが原告らの作詞・作曲した楽曲のデータを通信カラオケ装置で利用したのは、原告らの著作権の侵害であるとして損害賠償金の支払いを求めた事件。韓国では韓国音楽著作権協会(KOMCA)が1973年に著作権信託契約約款を制定し、原告らは1980年にKOMCAと信託契約を結んでいる。
 裁判所は本件にはKOMCAの2002年約款が適用されるとした上で、2002年約款は委託者が現に保有し将来保有することになるすべての音楽著作物を信託譲渡の対象にしていると判断。KOMCAとJASRACが相互管理契約を締結したのは2007年だから、本件楽曲の著作権は相互管理契約発効前に原告らからKOMCAへ信託譲渡されていて、原告らは有していなかったと認められるとして、原告らの損害賠償要求はいずれも理由がないとした。
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6月7日 雑誌標章“HEART nursing”事件
   大阪地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 被告出版社は平成23年より「Heart」という題号の雑誌を刊行しているが、この標章は、原告出版社が昭和62年より刊行している循環器疾患に係わる医療に従事する看護師を主な読者とする雑誌「Heart nursing」の題号の「Heart」部分と同一または類似の表示をしているとして、原告出版社が被告標章の使用差止めと廃棄、および100万円の損害賠償を求めた事件。
 裁判所は原告雑誌の歴史、発行形態、発行部数、周知性を検討して原告の主張を認め、被告雑誌の販売の差止めと廃棄、および賠償金50万円の支払いを命じた。
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6月11日 印刷受発注システムの複製権侵害事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 印刷物デザイン会社(原告)が、原告の元従業員で別会社(被告会社)に就職した被告らが、(1)原告がA会社に保管していたフィルムに対し無断で廃棄の指示をし、かつ一部隠匿し、(2)原告の印刷受発注システムのプログラムを持ち出し被告会社に漏洩して利用させ、(3)原告から顧客情報を持ち出し被告会社に漏洩して利用させ、(4)原告がB会社に保管していた印刷用フィルムを被告会社のために無断で使用し、(5)C会社が保管していた原告のNPiフォームを無断で被告会社のために使用したとして、それらの行為は、(2)の著作権侵害を含む不法行為等に該当するとして、被告会社及び被告らに合計約850万円の損害賠償等を求めた事件。
 裁判所は(4)と(5)の行為に違法性を認め、被告ら及び被告会社に連帯して8万401円および5千円支払うよう命じた。
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6月12日 JASRAC「包括利用許諾契約」事件
   公正取引委員会/審決・排除命令取消
 テレビ・ラジオ等放送での音楽使用料の徴収方法に関する公正取引委員会の排除措置命令を不服として、日本音楽著作権協会(JASRAC)が命令の取り消しを求めた審判で、公取委は命令を取り消す審決を下した。

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6月12日 仙谷元官房長官セクハラ報道事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 セクハラ発言をしたと報じた「週刊新潮」と「週刊文春」の報道で名誉を傷つけられたとして、民主党の仙石由人元官房長官が発行元の新潮社と文藝春秋を相手に各1000万円の損害賠償を求めた事件。
 裁判所は、記事の重要部分は真実と認定し、請求を棄却した。

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6月13日 暴力団マンガ撤去事件
   福岡地裁/判決・請求棄却
 作家の宮崎学さんが、暴力団を扱った記事を掲載する雑誌などの販売中止を福岡県警が県内のコンビニや書店に要請したのは、表現や出版の自由を保障する憲法に違反するとして、県に550万円の損害賠償を求めた事件。撤去要請の中には、指定暴力団元組長を題材とする宮崎さんの作品を原作としたコミックも含まれていた。
 裁判所は、暴力団排除の風潮の中、店頭から自主的に撤去する措置は不自然ではないとし、要請は自主的な措置をとることを求めたものにすぎず、撤去の強制とは言えないとして、請求を棄却した。
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6月21日 「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」ドラマ化事件
   東京地裁/提訴
 NHKはBSプレミアムで放送予定だったドラマが、撮影開始直前に原作の発行元である講談社に映像化許諾を白紙撤回されたことにより、制作・放送の中止を余儀なくされたとして、同社に対し約6000万円の損害賠償を求める訴訟を起こした。作品は「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」。昨年11月にドラマ化の正式許諾があり、準備を進めていたが、原作者が脚本の内容に納得せず、話し合いを続けてきたという。
 NHKは経済的損失の大きさと信用の毀損をコメントし、講談社は合意に至らず残念だとコメントした。

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6月22日 Klab vs クルーズ 類似「ソーシャルゲーム」事件
   東京地裁/和解
 ネットサービス企業クルーズのソーシャルゲーム「チーム×抗争!ギャングキング」が、携帯電話関連の技術開発会社KLabのRPG「真・戦国バスター」に関する著作権を侵害しているとして、KLabが「チーム×抗争!」の配信の差止めと5500万円の損害賠償を求める訴訟を起こしていたが、両社の間に和解が成立した。和解内容は互いに公表しないことで合意とのことだが、クルーズがKLabに対して和解金を払うという。

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6月27日 商標“ターザン”侵害事件(2)
   知財高裁/判決・請求認容
 小説「ターザン」およびその派生作品の管理をしている原告会社が、カタカナ名「ターザン」の商標登録無効審判請求を不成立とした審決の取り消しを求めた事件。「ターザン」は被告会社により平成22年1月20日に指定商品第7類「プラスチック加工機械器具」等で出願され、7月16日に商標登録された。原告は23年2月4日に特許庁に登録無効審判を請求したが、特許庁は同年7月28日に同請求を不成立とする旨の審決をしていた。
 知財高裁は、小説「ターザン」およびその派生作品に関する事実関係を述べたのち、本件登録査定時における周知性を検討し、結論として、その商標登録は「ターザン」のイメージやその顧客吸引力に便乗しようとする不正の意図に基づく剽窃行為であるとはいえないが、国際信義に反し、かつ、公正な取引秩序を乱すものとして、商標法4条1項7号の公序良俗を害する恐れのある商標に該当すると判断し、審決を取り消した。
判例全文
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6月27日 商標“Tarzan”侵害事件(2)
   知財高裁/判決・請求認容
 上記と同一の、「Tarzan」の商標登録に関する裁判。同様の判断が下された。
判例全文
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6月28日 レンタルサーバー事業者への発信者情報開示請求事件
   東京地裁/判決・請求認容
 オフィス家具や文具等の製造・販売を行う原告会社が、被告会社の持つレンタルサーバーに記録されたウェブページによって権利を侵害されたとして、被告会社に対し、プロバイダ責任制限法に基づき、ウェブページに情報を記録した者についての情報を開示するよう求めた事件。記録された情報は、実在しない人材派遣会社に関するもので、原告会社は、ウェブページ上で使われているこの人材派遣会社の標章は、原告会社の商標権を侵害しており、また原告の称号の略称に類似して営業上の利益を侵害する不正競争行為であると主張した。
 裁判所は、原告会社の商標を検討してその周知性を認め、ウェブページ上の標章の使用は原告の営業と混同を生じさせ、原告の権利を侵害すると判断して、被告に対して発信者情報の開示を命じた。
判例全文
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6月29日 「光市母子殺害事件」精神鑑定医名誉毀損事件(2)
   大阪高裁/判決・控訴棄却
 山口県光市の母子殺害事件の差し戻し控訴審で、被告の元少年を精神鑑定した野田正彰関西学院大学教授が、日本テレビの情報番組で法廷での証言をゆがめて報じられ、名誉を傷つけられたとして、日本テレビに1100万円の損害賠償金支払いと謝罪放送を求めた事件。日テレの「The・サンデー」は2007年7月、差し戻し控訴審に出廷した野田教授が、鑑定資料について全部読むのは面倒くさいと証言した内容を放送した。一審京都地裁は、報道された事実の主要部分は真実であり、名誉毀損の不法行為は成立しないとして、野田教授の請求を棄却した。
 二審大阪高裁も報道は真実であると判断、一審判決を支持して控訴を棄却した。

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