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【事件名】漢検vs前理事長 問題集の著作権帰属事件 【年月日】平成24年2月16日 大阪地裁 平成21年(ワ)第18463号 著作権確認等請求事件 (口頭弁論終結日 平成23年11月21日) 判決 原告 財団法人日本漢字能力検定協会 同訴訟代理人弁護士 中務尚子 同 山田威一郎 同 角野佑子 被告 株式会社 オーク(以下「被告オーク」という。) 被告 P1 被告ら訴訟代理人弁護士 山下忠雄 同 佐藤歳二 同 菱田健次 同 菱田基和代 同 松村信夫 同 塩田千恵子 同 坂本優 同 藤原正樹 同 永田貴久 主文 1 原告が別紙書籍目録記載12ないし33の各書籍につき編集著作権を有することを確認する。 2 被告らは、第三者に対し、別紙書籍目録記載12ないし33の各書籍の編集著作権が被告オークに帰属する旨及び同書籍を制作販売する原告の行為が被告オークの著作権を侵害している旨を告知、流布してはならない。 3 原告のその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用は被告らの負担とする。 5 この判決は、2項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 原告 (1) 主文1項同旨 (2) 被告らは、第三者に対し、別紙書籍目録記載の各書籍の編集著作権が被告オークに帰属する旨及び同書籍を制作販売する原告の行為が被告オークの著作権を侵害している旨を告知、流布してはならない。 (3) 前記(2)につき仮執行宣言 2 被告ら (1) 原告の請求をいずれも棄却する。 (2) 訴訟費用は、原告の負担とする。 第2 事案の概要 1 前提事実(当事者間に争いがないか、掲記の証拠により容易に認められる。) (1) 当事者 ア 原告 原告は、日本漢字能力検定の実施等を業とする、平成4年6月16日に平成16年法律第147号による改正前の民法34条に基づき設立された財団法人であり、現在は一般社団法人及び一般財団法人に関する法律に基づく特例財団法人となっている。 イ 被告ら 被告オークは、昭和46年1月20日に設立された、教材の開発、制作、出版及び販売等を目的とする株式会社である。 被告P1は、被告オークの代表取締役であり、原告の設立当初から平成21年4月16日まで、原告の代表者(理事長)であった者である。 (2) 日本漢字能力検定 日本漢字能力検定は、漢字に関する知識・能力を測定する技能検定である。級ごとに審査基準及び配当漢字が定められており、現在は、1級、準1級、2級、準2級、3級から10級の12段階にレベル分けされている(甲36)。従前は、被告オークが実施していたが、原告設立後は原告が実施している。 (3) 本件各書籍 原告は、日本漢字能力検定の検定対策用問題集として、下記アないしエの、別紙書籍目録記載の各書籍(以下「本件各書籍」といい、個々の書籍は「本件書籍1」などという。)を発行した。 また、本件各書籍の販売を継続するため、印刷会社に対して、それらの印刷を依頼している。 ア 本件書籍1ないし11(甲1〜11) 日本漢字能力検定の検定問題及び回答を、級別、開催回ごとにまとめた問題集(以下「過去問題集」という。)の平成21年度版である。 イ 本件書籍12ないし21(甲12〜21) 日本漢字能力検定の各級の配当漢字を、50音順にすべて掲載し、複数の漢字をまとめて1単元(1ステップ)として、単元ごとに、漢字表(漢字一覧表)と、その漢字を使った種々の問題(読み問題、書き取り問題など)を掲載した問題集(以下「ステップシリーズ」という。)の初版(9級、10級)、改訂版(準2級、5級〜8級)及び改訂二版(2級〜4級)である。 ウ 本件書籍22ないし27(甲22〜27) 日本漢字能力検定の各級に対応する配当漢字を用いた問題を、読み問題、部首を答える問題、画数・筆順を答える問題、熟語問題、対義語・類義語を答える問題、送りがなを答える問題、書き取り問題といった出題形式ごとに配列した問題集(以下「分野別シリーズ」という。)の初版(準2級、5級、6級)及び改訂版(2級〜4級)である。 エ 本件書籍28ないし33(甲28〜33) 分野別シリーズと同様、出題形式ごとに問題を配列するが、持ち運びしやすいように小型化され、赤い下敷きで覆うと一部の文字(赤色で記載された文字)が消えたように見える問題集(以下「ハンディシリーズ」という。)の初版である。 (4) 奥書の記載 本件各書籍の奥書は、発行当初、次のとおりの記載であった(なお、「日本漢字教育振興会」とは、被告オークの事業部門の名称である。)。 編者 日本漢字教育振興会 監修 財団法人日本漢字能力検定協会 発行者 P1 発行所 財団法人日本漢字能力検定協会 (5) 本件各書籍の著作物性 本件各書籍は、いずれも著作権法上の編集著作物であることについて、当事者間に争いがない。 (6) 本件売買契約の締結 被告オークと原告は、平成16年1月15日付けで、被告オークが原告に対し、原告が出版する問題集を含む商品を供給する商品売買基本契約(以下「本件売買契約」という。)を締結した(甲34)。 その際、被告P1は、被告オーク及び原告の双方の代表者として上記契約を締結した。 (7) 被告らの行為 ア 印刷会社への告知 被告オークの取締役であるP2は、平成21年9月28日に、本件各書籍の印刷会社を訪問し、本件各書籍の著作権が被告オークに帰属しており、原告からの依頼を受けて本件各書籍の印刷を行った場合、著作権侵害に基づき刑事的手続をとると告知した。 イ 原告の理事らに対する警告書の送付(甲38) 被告らは、原告の理事や評議員に対し、平成21年10月22日付けの内容証明郵便で、本件各書籍の著作権が被告オークに帰属しており、本件各書籍を印刷する行為は被告オークの著作権を侵害すると告知した。 ウ 印刷会社等に対する警告書の送付(甲39) 被告らは、本件各書籍の印刷・製本会社及び書籍物流会社に対し、平成21年10月26日付けの内容証明郵便で、本件各書籍の著作権が被告オークに帰属しており、本件各書籍を印刷する行為は被告オークの著作権を侵害すると告知した。 (8) 請求の一部認諾 被告らは、本件第3回弁論準備手続期日(平成22年4月19日)において、原告が本件書籍1ないし11の編集著作権を有する旨の確認を求める請求を認諾した。 2 原告の請求 原告は、本件各書籍の編集著作権は原告に帰属しており、被告らの前記1(7)の各行為は不正競争防止法2条1項14号の営業誹謗行為にあたるとして、被告らに対し、@ 本件書籍12ないし33(以下「本件対策問題集」という。)の編集著作権が原告にあることの確認を求め、A 不正競争防止法3条1項に基づき、本件各書籍の編集著作権が被告オークに帰属する旨、及び本件各書籍を制作・販売する原告の行為が被告オークの著作権を侵害している旨の告知・流布行為の禁止を求めている。 3 争点 本件対策問題集の編集著作権の帰属 第3 争点に関する当事者の主張 【原告の主張】 以下のとおり、本件対策問題集は、原告の発意に基づき、原告の従業員が職務上作成したものであり、原告名義で公表されるはずのものであったから、その編集著作権は、著作権法15条1項により、原告に帰属している。 仮に、本件対策問題集が、原告と編集プロダクションとの共同著作物であるとしても、原告は、編集プロダクションから被告オークへの著作権譲渡に同意していないから、被告オークに著作権が帰属することはない(著作権法65条1項)。 1 原告における編集作業 本件対策問題集は、いずれも、原告の従業員が、編集方針を決定し、全体の構成、台割、頁数、各頁の問題で使用する漢字及び出題形式を決定した。 なお、作業の一部は、被告オーク名義で編集プロダクションに委託されたが、この委託契約は、被告オークに利益を付けるための形式上のものであり、発注、問題の選択、具体的な配列等の指示は、原告の従業員が、原告名下で行っていた。また、編集プロダクションは、従属的な立場、すなわち創作的寄与に及ばない単なる協力者に過ぎない。 (1) ステップシリーズについて ア 創作性が発揮される作業 ステップシリーズの制作にあたっては、各ステップ(単元)の漢字表を見やすく作成するほか、各級の新出配当漢字、問題全体の構成、各領域の問題数の比重や難易度に合致するよう、各ステップに、どのような分量、出題形式、バランスで問題を選択・配列していくかが重要であり、この点に編集著作物性が認められる。 イ 初版 ステップシリーズの前身として、原告の設立前、被告オークの制作に係る「級別ステップ式 漢字学習シート」(以下「ステップ式学習シート」という。)が存在したが、平成4年に原告が設立され、日本漢字能力検定の級が再編成されたことに伴い、同年8月に、ステップシリーズの初版(2級〜7級)が発行された。 ステップ式学習シートとステップシリーズの初版とでは、頁の構成、漢字表の内容、問題の種類及び配列、掲載されている個々の問題等が、まったく異なる。 ウ 第一次全面改訂 平成9年に行われたステップシリーズの第一次全面改訂では、原告の従業員が、株式会社三省堂の担当者との間で編集会議を行い、制作方針及び企画案を決めていった。 そして、原告の従業員が、各ステップの配当漢字、頁の構成、台割、各頁のレイアウト、ステップごとに掲載する問題の種類を指示し、過去の検定問題(以下「過去問」という。)のデータを供与し、原告の指示に基づき、株式会社三省堂及び編集プロダクションである株式会社大栄企画(以下「大栄企画」という。)がラフな形の原案を作成し、これに原告の従業員が修正を加えていったものであり、編集作業の主体は原告であった。 第一次全面改訂の結果、体裁、漢字表の構成、問題の配列が、初版とは異なるものとなったほか、漢字表について、すべての級でステップごとに掲載されるようになり、項目に漢字の意味が追加され、各項目の順番も変更された。個々の小問も、過去問等をもとに、全面的な差替えがされた。 エ 第二次全面改訂 ステップシリーズは、平成18年に発行された9級及び10級の初版(本件書籍20、21)において、まったく新しい形態が採用され、その後、他の級について、上記形態に沿う大幅な改訂作業が行われた(第二次全面改訂)。 第二次全面改訂では、編集プロダクションである株式会社一校舎(以下「一校舎」という。)や、株式会社冬陽社等の協力を得たが、第一次全面改定と同じく、原告の従業員が、各ステップの配当漢字、頁の構成、台割、各頁のレイアウト、ステップごとに掲載する問題の種類を指示し、過去問のデータを供与し、原告の指示に基づき、編集プロダクションがラフな形の原案を作成し、これに原告の従業員が修正を加えていったものであり、編集作業の主体は原告である。 第二次全面改訂では、漢字表の後に各種の問題を掲載するという構成に変更はなかったが、問題形式の変更や各頁のデザイン、レイアウトの変更がされ、ほぼ全面的に問題の差替えがされている。 (2) 分野別シリーズについて ア 創作性が発揮される作業 分野別シリーズの制作にあたっては、各級の配当漢字、問題全体の構成、各領域の問題数の比重や難易度に合致するよう、そして各級の配当漢字を効果的に学習できるよう、どのような配列で、どの漢字を使って出題するかが重要であり、この点に編集著作物性が認められる。 イ 初版 分野別シリーズは、原告の内部組織である日本語教育研究所に所属していたP3の発案で企画され、平成8年5月に初版が発行された。 初版では、編集プロダクションは利用せず、P3が企画案を作成し、原稿の作成・校正作業をほぼ独力で行った。編集プロダクション(株式会社プランディット)には、平成12年に発行された2級から4級の改訂版と準2級の新版について、編集協力を依頼したに過ぎない。 ウ 改訂 平成12年以降の改訂作業あるいは初版制作作業は、P3あるいはP4を中心とした原告の従業員が、各分野の配当漢字、頁の構成、台割、各頁のレイアウト、分野ごとに掲載する問題の種類を指示し、過去問のデータを供与し、原告の指示に基づき、編集プロダクションがラフな形の原案を作成し、これに原告の従業員が修正を加えていったものであり、編集作業の主体は原告である。 (3) ハンディシリーズについて ア 創作性が発揮される作業 ハンディシリーズの制作にあたっては、分野別シリーズと同様、各級の配当漢字、問題全体の構成、各領域の問題数の比重や難易度に合致するよう、そして各級の配当漢字を効果的に学習できるよう、どのような配列で、どの漢字を使って出題するかが重要であり、この点に編集著作物性が認められる。 イ 初版 ハンディシリーズは、大栄企画の提案により企画されたため、本件書籍28から31の発行時には、編集協力を大栄企画に依頼した(平成20年の本件書籍32及び33の発行時には、一校舎に依頼した。)。 ハンディシリーズは、問題の7割以上に過去問をそのまま使用しているため、編集作業にあたっては、原告の従業員が、過去問から適切な問題を選び、正答率の低い問題にアスタリスクマークを付した初稿を作成し、原告の出版部・編集企画課が、練習問題については、単元、台割、検定問題パターンを示した設問形式等を指示し、模擬テストについても同様に形式を指示し、原告の指示に基づき、編集プロダクションがラフな形の原案を作成し、これに原告の従業員が修正を加えていった。 ハンディシリーズの編集にあたっても、原告の従業員が、各出題形式の配当漢字、頁の構成、台割、各頁のレイアウト、出題形式ごとに掲載する問題の種類を指示し、過去問のデータを供与し、原告の指示に基づき、編集プロダクションがラフな形の原案を作成し、これに原告の従業員が修正を加えていったものであり、編集作業の主体は原告である。 2 奥書の記載が虚偽であること 本件対策問題集の奥書にある、編者を日本漢字教育振興会とする記載は、本来であれば原告と記載されるべきところを、原告代表者と被告オークの代表者を兼ねていた被告P1が独断で行った虚偽の記載であり、被告オークに編集著作権が帰属することの根拠とはならない。 日本漢字教育振興会は、原告設立以降は実体がなく、従業員やスタッフも存在しなかったのであり、日本漢字教育振興会が本件対策問題集の制作を行ったことはない。 3 被告オークの関与について 原告の設立に際し、被告オークがそれまで行ってきた日本漢字能力検定に関連する事業は原告が引き継ぎ、被告オークは同事業を行わないこととされた。原告の設立以降、被告オークには、日本漢字能力検定あるいは同検定に関連する書籍の制作、販売業務を行う従業員はおらず、本件各書籍の制作について関与していない。 なお、原告と被告オークとの間で締結された本件売買契約では、被告オークが書籍を制作し、これを原告が購入することになっている。しかし、上記契約は、契約当事者の代表者が同一人物(P1)であったため、利益相反行為であるにもかかわらず、原告の理事会の承認なく締結されたものである。また、上記契約は、被告オークに書籍代金を流出させるために締結されたものであって、被告オークが書籍の制作を行った事実はなく、原告への販売を行った事実もない。 4 編集プロダクションの関与について 本件対策問題集の編集作業に際し、いくつかの編集プロダクションが関与しているが、いずれも、従属的な立場、すなわち創作的寄与に及ばない単なる協力者として関与したに過ぎず、その関与した作業により、編集プロダクションに編集著作権が発生することはない。 したがって、編集プロダクションから被告オークに対する編集著作権の譲渡もない。 仮に、編集プロダクションに編集著作権が発生したとしても、前述したとおり、原告は、被告オークへの譲渡を承諾していないので、被告オークに本件対策問題集の編集著作権が帰属することはない。 【被告らの主張】 以下のとおり、本件対策問題集の編集著作権は被告オークに帰属している。 そうでないとしても、本件対策問題集は、原告と被告オークの共同著作物であり、その編集著作権は、原告のみならず被告オークにも帰属している。 1 奥書の記載による推定 本件対策問題集の奥書において、編者は被告オークの一事業部門である日本漢字教育振興会とされているから、本件対策問題集の編集著作者は被告オークと推定される(著作権法14条)。 原告設立以降、原告は、日本漢字能力検定の実施及び問題の作成、教材の販売窓口を、被告オークは、旧来どおり教材の開発(編集)等を、それぞれ分担していたのであり、書籍の制作費・発注費は被告オークが負担し、P2が制作方針や編集方針を策定してきた。上記奥書の記載は、本件対策問題集が、被告オークの費用、労力によって制作されたことを反映したものである。 2 被告オークにおける著作権の発生 (1) 被告オークの取締役であるP2が、本件対策問題集の作成を発案し、その制作方針、編集方針を策定した上、これらを作成していたのであるから、本件対策問題集の編集著作権は被告オークに帰属する。 (2) ステップシリーズについて ステップシリーズの初版(平成4年8月発行)は、被告オークが、自ら発案した学習法(ステップ式)を具体的に表現し作成した教材であるステップ式学習シート(漢字を50音順に配列し、読み問題・書き取り問題・応用問題を提示)をもとに、編集したものであり、ステップシリーズの内容は、ステップ式学習シートと同一である。しかも、日本漢字教育振興会による上記初版の編集作業は、原告設立(平成4年6月設立)までに完了していたから、その編集著作者であり編集著作権の帰属主体となるのは、被告オークである。 その後、ステップシリーズについては、改訂版、改訂二版が作成されているが、50音順に配列された各ステップの漢字は同一であり、問題についても、同一の内容が継続して使用されている。 このように何度かの改訂を重ねても、内容が一新されているということはなく、ステップ式学習シート及びステップシリーズの初版について編集著作権を有する被告オークが、その後の改訂版についても編集著作権を有している。 (3) その他の書籍について 本件対策問題集の前身となった書籍は、被告オークの編集方針に基づいて編集されており、編集上の創作性がある部分は同じであるから、本件対策問題集は、被告オークの著作物の複製物にすぎない。 また、ハンディシリーズの末尾に付属している漢字表は、被告オークが版権を持つ「大栄企画 現代版漢字辞典」に基づき制作し、被告オークが著作権を有する「漢検 常用漢字辞典」の複製物である。 3 編集プロダクションにおける著作権の発生 被告オークは、自己の編集方針に基づく編集作業を編集プロダクションに依頼しており、本件対策問題集の編集作業は、被告オークから委託を受けた編集プロダクションが行った。 編集プロダクションが行った作業は、出版企画から、流通(販売)計画を検討し、編集企画、原稿執筆、デザイン等を制作した上、組版、製版、印刷・製本、販売に至るものである。編集プロダクションに対しては、一冊あたり300万円から400万円の委託費用が被告オークから支払われているのであって、その作業が機械的なものであったはずがない。 したがって、本件対策問題集の編集著作権は、編集プロダクションにおいても発生している。 そして、被告オークと編集プロダクションとの業務委託契約に基づき、編集プロダクションにおいて発生した本件対策問題集の編集著作権は、被告オークに譲渡された。 4 原告における著作権の不発生 原告が行った作業は校正・校閲であり、作業の具体的内容は、その級では使わない漢字、意味が不適切なもの、書き順が違うものを省く、漢字のハネ・トメ等を付け加えるといった、出版に際しての間違いチェックにすぎず、上記作業により原告に著作権が発生するものではない。 仮に、本件対策問題集について、原告により新たな創作性が加わっていたとして、これらの書籍の編集著作権が原告にあると判断されたとしても、前記2(2)、(3)のとおり、本件対策問題集は、その前身となった被告オークが編集著作権を有する書籍の二次的著作物に過ぎない。 原告は被告オークの許諾を得ずに、翻案及び複製等の行為をしており、被告オークの原著作権を侵害していることは明らかである。 第4 当裁判所の判断 1 本件対策問題集の制作・編集の経緯 証拠(甲112〜116、乙24、31、証人P4、同P5、同P2、以下個別に掲記した証拠)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 (1) 被告オークによる検定事業及びその関連事業 被告オークは、日本漢字能力検定協会の名称を使用して、昭和50年11月から日本漢字能力検定を開始し、これに伴い、「段階的に学べる 漢字学習シート」(乙74)や、ステップ式学習シート(甲53、117、118、乙35〜42)、その他の教材(乙34、43)の制作・販売を行っていた。 当時、日本漢字能力検定のレベル分けは、初段から5段と、1級から15級の20段階となっていた。 (2) 原告の設立 被告オークの漢字検定部門において行われていた漢字検定は、多くの受験者が参加するようになり、平成3年度には年間約9万3000人に及んだ(甲54)。 被告P1は、平成4年6月に、1億円を寄付して、被告オークの漢字検定部門を財団化した原告を設立した。当時、被告オークの従業員は20名程度(漢字検定事業に従事する者が10名程度、出版事業に従事する者が3、4名、他の業務に携わっている者が5名程度)であったところ、このうち漢字検定事業に従事していた従業員は、原告の従業員となった。 なお、原告の設立後は、日本漢字能力検定の実施主体や、書籍刊行などの業務は、原告に移行することが決まっていた(甲46)。 (3) 原告における書籍制作担当部署 原告の設立後、原告内部において、原告発行に係る問題集などの書籍の制作、編集については、次のとおりの部署が設立され、これを担当した。 ア 平成4年6月から平成8年3月ころまで(甲40) 原告の設立後、総務部企画室と出版部編集課において書籍の制作、編集を担当した。これに関与する従業員は3名であった。 イ 平成8年4月から平成16年8月ころまで(甲41、42) 平成8年4月、前記アの出版部編集課が廃止され、これに代わる部署として、検定部編集課が新設され、書籍の制作、編集を担当することとなった。これに関与する従業員は3名であった。 また、この間の平成9年に、日本語教育研究所が設立され、前記アの従業員のうち2名が、上記3名とは別途、同研究所における業務に従事し、原告発行に係る書籍の制作、編集に関与していた。 ウ 平成16年9月以降(甲43、44) 平成16年9月、前記イの検定部編集課は、検定問題の作成を担当することとし、原告発行に係る問題集などの書籍の制作、編集については、原告の出版部に編集企画課を新設し、同課において担当することとなった。これに関与する従業員は3名であった。 (4) ステップシリーズ ア ステップシリーズ初版 被告オークの一事業部門である日本漢字教育振興会は、原告の設立前、ステップ式学習シートを発行していた。 原告の設立後、日本漢字能力検定のレベル分けは、1級、準1級、2級、準2級、3級から10級の12段階に変更された。そのため、上記ステップ式学習シートを参考に、上記変更後のレベルに沿った形で、ステップシリーズの初版(2級、3級〜7級)が、平成4年8月に発行された(甲54、55、乙56〜61、65)。 ステップシリーズは、級別の配当漢字を50音順に並べた上、複数の漢字を括って1ステップとし、各ステップにつき練習問題を掲載するというものである。 初版では、各ステップに2頁を割り当てて練習問題を掲載し、さらに力だめし問題を織り込むという点では、各級とも共通していたが、大問の出題形式、大問の数、各大問に割かれる小問の数などに定型的なものはなかったほか、漢字表が付属している級と付属していない級が存在した。 その後、準2級、8級から10級についてもステップシリーズを発行することになり、順次、平成11年5月に準2級の初版、平成12年8月に8級の初版、平成18年4月に9級及び10級の初版(本件書籍20、21)が発行されたが、これらについては、改訂版(後記イ)の体裁が採用された。 イ ステップシリーズ改訂版 平成8年に入り、ステップシリーズの改訂版を発行することが決まったが、改訂版の発行に当たっては、初版の制作においては利用していなかった外部の編集プロダクションを利用することになった。そして、被告オークと編集プロダクションである株式会社三省堂教材システムとの間で、ステップシリーズ2級、3級、4級の改訂版について、同年10月2日付けで、原稿作成または原稿整理に始まる一切の業務についての業務委託契約が締結された(乙1)。 改訂版では、ステップごとに4頁が割り当てられ、1頁目に漢字表が掲載され、2頁目から4頁目に、練習問題(大問)として、読み問題(2頁目)、応用問題2種(3頁目)、書き取り問題(4頁目)が掲載されるという形式で統一された(甲56)。また、個々の小問も、その多くが初版とは異なるものとなった。 これらの形式に従い、改訂作業が行われ、平成9年3月に3級の改訂版、同年4月に2級及び4級の改訂版が発行された。 また、5級から7級についても、改訂作業に向けた内外関係者との打合せが進み(甲57、59)、原告の従業員が執筆要項(甲57)や台割表(甲58)を作成し、これらをもとに、大栄企画が原稿作成を行った。 その結果、平成9年10月に5級から7級の改訂版(本件書籍16〜18)が発行された。 そして、平成19年4月には、同様の作業が行われた結果、準2級及び8級の改訂版(本件書籍13、19)が発行された。 ウ ステップシリーズ改訂二版 平成19年4月、2級の改訂二版(本件書籍12)が、平成21年3月、3級及び4級の改訂二版(本件書籍14、15)が発行された。 エ ステップシリーズにおける直近の制作、編集の経過 上述したとおり、ステップシリーズでは、3級及び4級の改訂二版が、直近の制作、編集となる。その経過は、次のとおりである。 平成20年に入り、3級及び4級についても改訂二版(本件書籍14、15)の発行が企画され、台割表(3級につき甲63)が作成された。改訂二版では、コンセプトや構成要素、ステップ数や各ステップに収録される配当漢字は改訂版を踏襲した上、問題、用例、出題形式について、日本漢字能力検定の現出題傾向に沿ったものとする見直し・変更・入替えが行われることになっていた(甲62)。そして、被告オークは、4級について同年5月30日に一校舎との間で、3級について同年9月2日に編集プロダクションである株式会社エイティエイトとの間で、それぞれ業務委託契約を締結した(乙50、53)。 編集作業にあたっては、原告の従業員が作成した執筆要項(甲64)、編集要項(甲65)、表記統一表(甲66)、大問パターン一覧表(3級につき甲67)、配当漢字一覧表(3級につき甲68)、応用問題の割付表(3級につき甲69)、平成16年に作成されていた小問の素案(3級につき甲70)、出題形式別の過去問リスト(3級の読み問題につき甲71)が、各編集プロダクションに交付された。そして、これに基づいて、編集プロダクションが原稿(漢字表に記載する漢字の意味や用例、小問の問題文や選択問題における選択肢の案)を作成し、原告の従業員が、内部基準(甲75)に基づき、執筆要項に従っているか、配当漢字が正しく使用されているか、級の難易度に合っているか、対象年齢に相応しい表現がされているかといった観点からチェックを行い、問題文の内容や配列順の修正・変更を行い、これに沿った形で編集プロダクションが再度原稿を作成するという作業が、数次にわたって行われた(3級につき甲72〜74)。 (5) 分野別シリーズ ア 分野別シリーズ初版 平成6年ころ、原告の従業員で、原告の内部組織である日本語教育研究所に所属していたP3の発案により、分野別シリーズの発行が企画された。分野別シリーズでは、級ごとの配当漢字について、「漢字の読み」「漢字の部首」「熟語の構成」「対義語・類義語」「四字熟語」「送りがな」「書きとり」などの出題分野(出題形式)ごとに、練習問題、演習問題が編集されることとなった。P3は、同研究所に所属していたP6の指導のもと、短期アルバイトの協力を得て、過去問の頻出問題を抽出するなどの作業を行った(甲45)。その後、印刷会社と装丁などについて打ち合わせた結果、平成8年5月に2級及び3級の初版、同年11月に4級の初版が発行された。 また、これらの改訂版が発行されたころ、準2級についても発行することとなり、平成12年3月、準2級の初版(本件書籍23)が発行された。 さらに、平成19年4月、5級及び6級の初版(本件書籍26、27)が発行された。 イ 分野別シリーズ改訂版 分野別シリーズの改訂版を発行することが企画され、平成12年7月、2、3級の改訂版(本件書籍22、24)が、同年11月に4級の改訂版(本件書籍25)がそれぞれ発行された。 ウ 分野別シリーズにおける直近の制作、編集の経過 上述したとおり、分野別シリーズでは、5級及び6級の初版が直近の制作、編集となる。その経過は、次のとおりである。 平成18年に入り、分野別シリーズについて、新たに5級及び6級の制作が企画され(甲86)、台割表(甲87)が作成された。そして、同年6月には、執筆要項(甲88)、編集要項(甲89)、検定問題パターン一覧(甲90)が作成され、これらをもとに、同月14日付けで被告オークとの間で業務委託契約(乙19)を締結していた株式会社アスクが、解説(コラム)、問題、解答・解説の原稿を作成した。執筆要項(甲88)においては、分野ごとの留意点として、読み問題、書き取り問題、送りがな問題については、過去問において出題回数が多いものを問題形式ごとに集めた「問題使用語リスト」を中心に出題することや、書き取り問題に「誤字訂正」問題を含めることが定められていた。 そして、前記(4)エで詳述するところと同様、株式会社アスクによる原稿作成と、原告の従業員による原稿の修正・変更が、数次にわたり行われた。 (6) ハンディシリーズ ア ハンディシリーズの発行 原告において、分野別シリーズと同様、出題形式ごとに練習問題を配列したもので、携帯に便利な小型の問題集であるハンディシリーズの発行が企画された。制作、編集作業が行われた結果、平成10年10月に2級、3級、4級の初版(本件書籍28、30、31)、平成12年3月に準2級の初版(本件書籍29)、平成20年4月に5級及び6級の初版(本件書籍32、33)が発行された。 イ ハンディシリーズにおける直近の制作、編集の経過 上述のとおり、ハンディシリーズでは、5、6級の初版が直近の制作、編集となる。その経過は、次のとおりである。 平成19年に入り、ハンディシリーズ5級及び6級の制作が企画され、同年7月には、執筆要項(甲93)、編集要項(甲94。内容は分野別シリーズ5級及び6級の編集要項〔甲89〕とほぼ同じ。)、検定問題パターン一覧(甲95。内容は分野別シリーズ5級及び6級の検定問題パターン一覧〔甲90〕とほぼ同じ。)、過去問リスト(甲96〜105)が作成され、同年8月6日付けで被告オークとの間で業務委託契約(乙22)を締結していた一校舎に交付された。執筆要項においては、問題作成にあたり、過去問を7割程度使用し、残りの3割程度を新規に作成すること、使用する過去問のうち約半数を、正答率が低い問題として、原告の従業員が1個ないし2個のアスタリスクマークを付した過去問の中から選択することが定められていた(甲93)。 そして、一校舎が、練習問題及び模擬テストの問題と解答の原稿を作成して、そのデータを原告に送付し、P4ら原告の従業員数名が修正・変更を行って、そのデータを一校舎に送付し、これに沿った形で一校舎が再度原稿を作成するという作業が、何度か繰り返された。なお、一校舎において修正内容に従った原稿を作成するにあたっては、一校舎の担当者とP4との間で、修正内容の確認や相談が行われていた。 (7) 本件売買契約 被告P1は、平成16年1月15日付けで、被告オーク及び原告の双方の代表者として、本件売買契約を締結し(甲34)、対象商品の掛け率を、「小売定価の50%(過去問題集については原則40%)+消費税」とする覚書を交わした(甲35)。 2 争点(本件対策問題集の編集著作権の帰属)について 本件対策問題集の奥書には、編者として、被告オークの一事業部門である日本教育振興会が記載されているから、編集著作者は被告オークであると推定されることになる(著作権法14条)。 そこで、上記推定が覆されるかが問題となるところ、原告は、本件対策問題集について、@ 原告の発意に基づき、A 原告の従業員が職務上作成したものであり、B 原告名義で公表されるはずのものであったから、その編集著作権は、著作権法15条1項に基づき、原告に帰属すると主張するので、以下検討する。 (1) 発意者 著作権法15条1項にいう「法人等の発意に基づく」とは、当該著作物を創作することについての意思決定が、直接又は間接に法人等の判断により行われていることを意味すると解され、発案者ないし提案者が誰であるかによって、法人等の発意に基づくか否かが定まるものではない。つまり、本件対策問題集の制作が原告の判断で行われたのであれば、「原告の発意に基づく」といえるのであって、最初に作成を思いついた人物や企画を出した人物が、原告の主張するようにP3(分野別シリーズ)あるいは大栄企画(ハンディシリーズ)であったか、あるいは被告らが主張するようにP2であったかは、この点を左右しない。 また、前記1(2)、(3)のとおり、原告は、日本漢字能力検定及びこれに係る書籍の発行を業務としているところ、日本漢字能力検定の主催者として行う「書籍の発行」業務とは、書籍の販売のみならず、主催者(出題者)としてのノウハウを生かした書籍の制作業務を当然含んでいるものと考えられる。 そうしたところ、ステップシリーズについては、5級から7級の改訂版(本件書籍16〜18)について、執筆要項が原告名義で作成され(甲57)、外部業者との編集会議に出席していたのも原告の従業員らであるし(甲59)、3級及び4級の改訂二版(本件書籍14、15)についても、見積依頼書(甲60)、執筆要項(甲64)、編集要項(甲65)、組版にあたっての指示文書(甲76)等の外部業者に渡す書面が、原告名義で作成されている。さらに、分野別シリーズ5級及び6級(本件書籍26、27)に係る執筆要項(甲88)、編集要項(甲89)、見積依頼書(甲91、92)や、ハンディシリーズ5級及び6級(本件書籍32、33)に係る執筆要項(甲93)、編集要項(甲94)、印刷会社に対する発注書(甲109、110)等も、同様に原告名義で作成されている。 したがって、本件対策問題集のうちこれら9冊(本件書籍14〜18、26、27、32、33)の作成は、原告の意思によって行われたものと認められる。 そして、本件対策問題集のうち上記9冊以外のものについては、執筆要項などの証拠が残っていなかったものの、いずれも3種類のシリーズに属する問題集であることや、上記9冊のうち最も早く制作されたステップシリーズ5級から7級の改訂版(平成9年10月1日発行)と、最も遅く制作されたステップシリーズ3級及び4級の改訂二版(平成21年3月20日発行)との間の時期に制作されたものであることからして、上記9冊と同様に、原告の意思により作成されたものと考えられるところ、これに反する証拠もない。 一方、上記編集作業について被告オークが関与したことを窺わせる事情は、編集プロダクションとの業務委託契約を締結したというだけであり、それ以上に、被告オークが上記編集作業に関与したことを認めるに足る証拠はない。 以上のとおりであるから、本件対策問題集の制作に係る意思決定は、原告の判断により行われていたといえ、本件対策問題集は、原告の発意に基づき制作されたものと認められる。 (2) 作成者 前記1で認定したとおり、本件対策問題集の制作には、原告、編集プロダクション、被告オークが関与している。そこで、それぞれの関与の態様について、編集著作権を発生させるものといえるかについて検討する。 ア 創作性が発揮される作業 (ア) 漢字を級別に割り当てる作業等 本件対策問題集は、いずれも級別に編集されているが、各級の配当漢字や、そこで要求されるレベル(出題形式の範囲)は、「日本漢字能力検定 審査基準」において予め決定されていたものであり(甲36)、この点に編集における創作性が発揮されることはない。 また、編集著作物性の判断にあたっては、小問に係る文章表現の創作性も問題とはならない。 (イ) ステップシリーズ ステップシリーズは、各級の配当漢字をすべて50音順に配列した上、一定数の漢字ごとに分け、これらを各ステップとして、ステップごとに各種の練習問題を作成したものであるが、その配列やステップの分類自体には創作性が認められず、編集において創作性の発揮される作業は、ステップごとの大問(出題形式)や小問(具体的な問題)の選択・配列であるといえる。 すなわち、50音順配列の採用が被告オークの知見に基づくものであったとしても、それ自体はアイデアに過ぎない。各ステップに、どの漢字をいくつ割り当てるかについても、50音順配列を採用していることや、ステップごとに定められた頁数を割り当てる関係上、自ずと決まる。 なお、大問は、「読み」「書き取り」「同音・同訓」「漢字識別」「熟語」「部首」「対義語・類義語」に関する問題など、出題形式ごとによる小問の集合体のことをいうが、その選択や配列が、結果として、素材である小問の選択と配列に大きな影響を与えるという関係にある(1つの漢字について用意された、いくつかの種類の小問のうち、応用問題の問題形式が決まることにより、小問の種類は決まる。また、出題される漢字は、既に50音順で並べたものを一定の数ごとに各ステップに割り当てられている。)。 (ウ) 分野別シリーズ及びハンディシリーズ 分野別シリーズ及びハンディシリーズは、各級の配当漢字に係る小問を、当該級の検定において出題されうる出題分野・出題形式ごとにまとめたものであるが、実際の検定において出題された出題分野や出題形式に依ることとなる結果、出題分野・出題形式(大問)の選択には創作性が認められず、編集において創作性の発揮される作業は、小問及びそこで使用する配当漢字の選択・配列であるといえる。 イ 原告の関与 前記アを前提とすると、原告の従業員は、本件対策問題集の編集にあたり、次のとおり創作性の発揮される作業を行ったといえる。 (ア) 編集方針の決定 本件対策問題集は、日本漢字能力検定において当該級に合格できるよう、学習効果を上げることを目的として制作されたものであるところ、制作当時において日本漢字能力検定の主催者であり、出題内容を決定する立場にあった原告は、最もよく、そのためのノウハウを持っていたといえる。 そして、上記のような立場にある原告において、その従業員が、前記1で認定したとおり、原稿作成を行う編集プロダクションに対し、執筆要項及び編集要項を作成・交付して、原稿作成にあたっての指示を与えており、編集方針を定めていたのは原告であったといえる。なお、原告の編集方針は、執筆要項等に具体化されていたものであって(たとえば、ステップシリーズ3級及び4級改訂二版の執筆要項〔甲64〕では、読み問題及び書き取り問題における小問の内容・順序まで指定されている。)、単なるアイデアに留まるものではない。 なお、本件売買契約(甲34)においては、原告が発行する書籍の制作を被告オークが行うことになっているが、上記契約内容だけから、本件各書籍の制作を被告オークが行っていたと認定することはできない。編集著作権の発生は、編集作業を誰が行ったかという観点から認定すべきであり、契約の内容がこれを左右するものではない。したがって、上記契約が、利益相反となり、その効果が原告に帰属するかどうかという点についても、編集著作権の発生の認定には関係がないというべきである。 (イ) 選択・配列の決定権 また、原告の従業員は、編集プロダクションが作成した原稿が、原告の編集方針に沿うものとなるよう修正・変更作業を行っていたのであるから、小問の選択・配列(ステップシリーズ)や、小問及びそこで使用する配当漢字の選択・配列(分野別シリーズ及びハンディシリーズ)について、最終的な決定権を有していたのも原告であったといえる。 被告らは、原告の従業員が行ったのは創作性のない校正作業であると主張するが、前記1で認定したとおり、原告の従業員は、編集プロダクションの作成した原稿について、自ら小問の内容や配列順の変更などを行い、編集プロダクションにそのとおりの内容に作り替えさせていたのであるから、創作性のある部分の決定を行っていたものといえる。被告らの上記主張は、原告従業員の行った作業を正しく評価するものではない。 (ウ) 具体的な選択・配列作業 さらに、原告の編集方針に基づく具体的な素材の選択・配列について、原告の従業員は次のような関与を行っている。なお、修正・変更した原稿や編集プロダクションに交付した資料などの、原告の従業員が行った作業を示す証拠が提出されているのは、本件対策問題集のうち一部についてのみであるが、本件対策問題集の制作には、いずれも編集プロダクションが関与しているところ、その場合の原告における作業内容は、少なくともステップシリーズ、分野別シリーズ、ハンディシリーズの各シリーズ内においては、共通するものと認められる。 a ステップシリーズについて 原告従業員であるP4は、平成20年5月ころに行われたステップシリーズの改訂作業に際し、各ステップにおける、大問の選択・配列について、読み問題・書き取り問題以外から任意に採用する応用問題2種の割付けを決定している(甲67、69、証人P4)。この点、被告らは、P4による応用問題の決定が行われたとは考えにくいと主張するが、原告から編集プロダクションに交付された執筆要項(甲64)には、大問については「別紙『大問パターン一覧』を参照。」との指示があるところ、「大問パターン一覧」とは甲67のことであり、甲67に記載されている「旧原稿」とは甲69のことであると考えられるから、これらは編集作業を委託するに先立って、原告において作成されたものといえる。したがって、甲69を自ら作成したとのP4の証言は信用でき、応用問題の割付けを決定したのはP4であると認められる。 また、小問の選択・配列に関し、原告は、編集プロダクションに対し、素材となる小問のデータ(過去問リスト及び3級の改訂二版については小問の素案〔甲70〕)を提供している。そして、原告において作成された小問の素案については、原告従業員が素材の選択を行ったといえるし、過去問リストも、過去問のすべてを集めたものではなく、過去問で頻繁に使われている語をP4が集めたものであるから(証人P4)、やはり、原告従業員において素材の選択を行ったといえる。なお、被告らは、甲70に同一の問題文が二行にわたって記載されているのは不自然であるから、これは原告従業員が作成したものでないと主張するが、甲70の体裁から見て、同一の問題文が二行にわたって記載されているのは、同一の問題文に二種の漢字が使用されている場合に、それを個別に取り上げているからと考えられるし、編集プロダクションの作成する原稿においても同様の体裁となっているのであって(甲72〜74)、被告らが主張する点は、原告従業員による作成の事実を否定する事情とはならない。また、被告らが主張するように、甲70に記載された小問が、原告において使用されていたソフトウェアによって、データベースから抽出されたものであったとしても、小問の文章表現自体が原告従業員の創作によるものでないことは、編集著作権が争点となっている本件では問題とならないし、甲70は、ステップ及び大問ごとに小問をまとめたものであるから、抽出結果の機械的な羅列とはいえず、原告従業員により素材の選択が行われていたといえる。 すなわち、前記ア(イ)で指摘したとおり、どのステップにどの大問を選択、配列するか(読み問題と書き取り問題は、各ステップの2頁目と4頁目に配列されることが、予め定められており、3頁目の応用問題の2種類をどのように選択、配列するか)によって、小問の選択と配列の多くの部分が決まるという関係にあるが、上述したとおり、大問の選択と配列は原告従業員が行っている。 b 分野別シリーズについて 原告は、平成18年6月ころ行われた分野別シリーズの5級及び6級の原稿作成作業に際し、執筆要項(甲88)を作成し、小問で使用する配当漢字の選択・配列に関し、分野ごとの留意点を定め、その中で、「問題使用語リスト」を中心に出題することを指示している。 上記リストの内容は証拠上明らかでないものの、平成8年に行われた初版(2級〜4級)の制作にあたっては、原告従業員であるP3が、1級から10級の過去問で頻出する漢字を調査し、短期アルバイトを雇って、手集計で半年をかけて作業を完了させたというのであり(甲45)、上記5級及び6級のリストに関しても、調査範囲が同じであったかや、手作業であったかはともかくとして、同種の抽出作業が行われたものと考えられる。 したがって、原告従業員は、小問で使用する配当漢字について、選択を行っていたものといえる。 c ハンディシリーズについて 原告は、ハンディシリーズの制作、編集に際し、小問において使用する過去問の割合を決定し、使用すべき過去問のリストを、編集プロダクションに提供している。そして、この過去問リストは、過去問で頻出しているものを、原告の従業員において選択して作成したものである(証人P4、17頁)。したがって、原告従業員は、小問で使用すべき過去問について、素材の選択を行っていたものといえる。 さらに、原告の従業員は、配当漢字の選択・配列について、編集プロダクションに対し、正答率の低い問題を、1個ないし2個のアスタリスクマークで明らかにし、過去問のうち半数をこの中から選択するよう指示しているところ、実際に発行された書籍(甲28〜33)にも、正答率の低い問題に1個ないし2個のアスタリスクマークが付されている。したがって、原告従業員は、小問で使用する配当漢字についても、選択を行っていたものといえる。 ウ 編集プロダクションの関与 (ア) 選択・配列作業について 前記1のとおり、編集プロダクションは、本件対策問題集の原稿作成作業に関与しており、当初段階における小問の選択・配列の作業を行っていたといえる。 もっとも、前記イのとおり、編集プロダクションによる選択・配列は、原告の従業員が選択した素材の中から、原告の指定する配列方針に従って行われていたものであり、編集プロダクションが作成した原稿のチェックにあたって原告の従業員が一番気にしていたのも、原告の作成した執筆要項に従っているかどうかである(証人P4、27頁)。したがって、編集プロダクションは、原告の方針に反して選択・配列に創作性を発揮することが許されない立場にあったといえる。 なお、執筆要項において選択・配列に個別具体的な指定がなかった部分に関しては、編集プロダクションに、選択・配列における裁量が存在したと考えられる。しかしながら、ステップシリーズ及びハンディシリーズについては、執筆要項(甲64、甲93)において、できるかぎり満遍なく配当漢字を使用する、できるかぎり異なる熟語・単語で使用するといった観点からの選択・配列が要求されていたところ、このような観点から行われたにすぎない小問及びそこで使用する配当漢字の選択・配列については、編集プロダクションの裁量により行われたものであっても、原告の編集方針を超える独自の創作性があったとはいいがたい。また、分野別シリーズについては、執筆要項(甲88)において特別な指示はされていないが、原告が主催する日本漢字能力検定の検定対策用問題集という性格からして、やはり、編集プロダクション独自の創作性は発揮されないと考えられる。 したがって、編集プロダクションが行った選択・配列は、原告の指示の下で、いわば原告の手足となって行ったものであり、編集プロダクションにおいて独自に編集著作権を獲得するようなものではなかったといえる。 (イ) 対価について 被告らは、被告オークから編集プロダクションに支払われた金額の大きさからして、編集プロダクションの行った作業は機械的なものではなかったと主張する。 しかしながら、小問の7割を過去問から選択するハンディシリーズ(5級及び6級)ですら、編集プロダクションの行った作業には、3か月程度の時間を要したのであるから(証人P5、17頁)、これに対する対価133万1400円は、客観的な作業量に比して決して多額とはいえず、創作性の発揮されない作業に対する対価であるとしても、十分説明のつく金額である。 なお、編集プロダクションには、証拠上明らかになっている限りにおいて、下記aないしcの対価が支払われているところ、ステップシリーズ及びハンディシリーズ2級から4級の対価は、上記ハンディシリーズ5級及び6級の対価よりも明らかに多額である。しかしながら、ステップシリーズについては、2級から4級の改訂版の対価には版下一式の費用や営業費50万円が含まれ(乙1)、8級の改訂版の対価には組版作業の対価が含まれ(乙15、甲113)、3級及び4級の改訂二版の対価には製版の対価が含まれているところ(甲61)これらは編集作業の対価ではない。さらに、ハンディシリーズ2級から4級の対価は、企画料・原稿料・編集料・写植代・製版代・色校正刷代・営業費等を含むものである(乙5の3)。そして、合計金額において各作業が占める割合は明らかでないものの、合計金額のうち原稿作成関係の作業が占める部分は、いずれの契約についても、編集プロダクションが数か月の労力を割くことになる作業の対価としては、決して不相当に高額なものではないと考えられる。 a ステップシリーズ 2級改訂版 432万5500円(乙1) 3級改訂版 378万2500円(乙1) 4級改訂版 419万4500円(乙1) 8級改訂版 424万5465円(乙15、甲113) 3級改訂二版 340万5100円(乙50、甲61。ただし見積金額) 4級改訂二版 377万4800円(乙53、甲61。ただし見積金額) b 分野別シリーズ 5級・6級 508万4100円(乙19、甲115の1・2) c ハンディシリーズ 2級 477万4050円(乙5の3) 3級 449万0800円(乙5の3) 4級 466万0750円(乙5の3) 5級・6級 133万1400円(乙22、甲114) (ウ) 契約書の文言 被告オークと編集プロダクションとの間で締結された業務委託契約に係る契約書には、「本著作物の著作権・出版権は甲(被告オーク)に帰属する。」あるいはこれに類する記載がある(乙1〜3、乙5の1・3、乙6の1・3、乙7の1、乙8の1、乙9の1、乙10の1、乙11の1、乙12の1、乙13〜23)。 しかし、著作権の発生しない場合においても、将来、契約の相手方から著作権を根拠とする内容の紛争が生じることを未然に防止するため、契約書上にこのような文言を記載することは、よくあるものと考えられ、上記記載をもって、契約に係る書籍の制作、編集に関与した編集プロダクションに、当該書籍の編集著作権が発生したと認めることは相当ではなく、また、被告オークに編集著作権が帰属する根拠ともならない。 (エ) 被告オークへの編集著作権の譲渡 以上のとおり、本件対策問題集について、編集プロダクションに編集著作権が発生しているとは認められないから、編集プロダクションとの間で著作権譲渡の合意をしていても、被告オークが編集プロダクションから編集著作権を取得することはない。 エ 被告オークの関与 被告らは、被告オークの取締役であるP2が、本件対策問題集の作成を発案し、その制作方針、編集方針を策定した上、これらを作成していたのであるから、本件対策問題集の編集著作権は被告オークに帰属すると主張するが、制作方針や編集方針を策定しただけでは、当該書籍の編集著作権が発生するわけでないことについては、前述したとおりであり、それ以上に、被告オークが本件対策問題集の編集について関与したという具体的な主張や立証はない。 さらに、被告らは、本件対策問題集について、被告オークが著作権を有する書籍の複製物もしくは翻案物であると主張するので、以下検討する。 (ア) ステップシリーズについて 被告らは、ステップシリーズの初版は、被告オークが著作権を有するステップ式学習シートを元に、被告オークが発案した、読み問題、応用問題(2〜3類型)、書き取り問題を配置するというステップ式編集方針を採用して、被告オークが編さんしたものであり、被告オークが著作権を有するところ、本件対策問題集は、その複製物もしくは翻案物にすぎないと主張する。 しかしながら、ステップシリーズにおいて、上記ステップ式編集方針が抽象的なアイデアとして引き継がれているとしても、これらは編集著作物として保護される具体的な表現とはいえない。 前記アのとおり、本件対策問題集において、編集著作物として保護される具体的な表現は、大問・小問の具体的な選択・配列であるが、次のとおり、本件対策問題集のうちステップシリーズ(本件書籍12〜21)の大問・小問の具体的な選択・配列は、ステップシリーズ初版に類似しているとは認めがたい。たとえば、被告らも乙70において対比しているステップシリーズ4級の初版(乙65)と改訂版(乙69)は、各ステップの練習問題について、分量(前者は2頁、後者は3頁)、大問の数(前者は6問から8問で不定、後者は4問で固定)、小問の数(各ステップに共通する読み問題・書き取り問題を比較してみると、前者は、読み問題が8問〔ステップ24等〕から15問〔ステップ9〕で不定、書き取り問題が8問〔ステップ4等〕から12問〔ステップ5〕で不定、後者は読み問題・書き取り問題とも25問ずつで固定)が違っている。また、両者における小問の選択・配列を比較しても、たとえばステップ1の読み問題であれば、第1問こそ同じであるが、前者の第2問は後者の第12問に相当するし(配列の相違)、後者の第13問、第25問に相当する問題は、前者には存在しない(選択の相違)。同様の違いは、書き取り問題についてもいえる。 このように、上記ステップ式編集方針に基づくシリーズとしての共通性が初版と改訂版との間に存在するとしても、ステップシリーズの改訂版が初版の複製物であるとみることはできない。そもそも、本件対策問題集のような問題集の改訂では、意図的に旧版と異なる素材を選択することが求められるといってよく、そのような事情も考慮すると、翻案物とみることもできない。 また、分野別シリーズ、ハンディシリーズについては、そもそもステップシリーズとは編集方針が異なるから、これらをステップシリーズ初版の複製物であるという被告らの主張には理由がない。 (イ) ハンディシリーズについて 被告らは、ハンディシリーズの末尾に付属している漢字表が、被告オークが著作権を有する「漢検 常用漢字辞典」(乙75の2)の複製物であると主張する。 しかしながら、上記辞典は、常用漢字をグループ分けした上で(乙75の2は抜粋であるため全体の構成は不明であるが、各頁の下部に「第一部 学習漢字」との記載があり、各漢字に1年から6年までの学年の記載があることからして、少なくとも、小学校で学習する漢字とそうでない漢字とを別グループにしてあることが窺える。)、50音順に並べ、漢字の意味、熟語、用例などを挙げたものであるところ、ハンディシリーズの漢字表は、当該級の配当漢字のみを取り上げている点で、そもそも、上記辞典とは漢字の具体的な選択・配列を異にする。また、漢字の読み、画数、意味、熟語、用例、書き順などを掲載することは、漢字辞典や漢字学習のための漢字一覧表において、極めてありふれたものである(たとえば、ステップシリーズの各ステップに掲載された漢字表にも、同じ要素が掲載されている。)。 たしかに、被告らが同一性を指摘する箇所(ハンディシリーズ5級の漢字表〔乙75の1〕と、上記辞典における対応部分〔乙75の2〕)を比較すると、意味、語句(熟語)、用例の欄の記載について、前者が後者の一部を抜粋しているようにも見える。しかしながら、意味及び語句(熟語)に関していえば、ハンディシリーズ5級の漢字表に記載された漢字の意味及び語句(熟語)は、ステップシリーズ5級改訂版(甲16)の漢字表に記載されている意味及び語句(熟語)と同一である。そして、ステップシリーズ5級改訂版の発行日は平成9年10月1日であり、上記辞典の発行日(奥書によれば平成10年3月10日)より前であるから、既にこの点において、ハンディシリーズの漢字表が上記辞典の複製物であるということはできない。また、P2は、ハンディシリーズの漢字表は、被告オークが版権を買い取った「大栄企画 現代版漢字辞典」から抜粋したものであると証言するが、両者に掲載されている漢字の意味、熟語、用例は同一ではなく(乙70の23頁)、同証言も採用できない。 そして、用例について、ハンディシリーズの漢字表に記載された各漢字の用例が、「漢検 常用漢字辞典」に記載された用例の一部を抜粋したものであるとしても、用例が全体に占める部分はわずかであり、これをもって、ハンディシリーズの漢字表が同辞典の複製物であるということもできない。 オ まとめ 以上のとおりであるから、本件対策問題集について、素材の選択・配列について創作性のある作業を行ったのは、原告の従業員であると認められる。 (3) 名義人 著作権法15条1項の、「法人等が自己の著作の名義の下に公表するもの」とは、その文言からして、結果として「法人等の名義で公表されたもの」ではなく、創作の時点において「法人等の名義で公表することが予定されていたもの」と解釈するのが相当である。そして、前記(1)、(2)のとおり、本件では、原告の発意により、原告の従業員が本件対策問題集の編集著作を行ったものであるから、本件対策問題集は、創作の時点において、原告が、その編集著作物を利用、処分する権利を有しており、その名義により公表することが予定されていたということができる(実際に編集作業に携わった、個々の従業員の名義の下に公表されることが予定されていたことを窺わせる事情はない。)。 この点、本件対策問題集は、当初発行に当たり、編集著作者を意味する「編者」が日本漢字教育振興会と表記されていたものであるが、前記(2)のとおり、その編集著作者は、原告の従業員であり、日本漢字教育振興会を編者とする上記記載は実態に合致せず、上記記載のみをもって、日本漢字教育振興会(被告オーク)を本件対策問題集の編集著作者であるとみなすことはできない。 (4) まとめ 以上のとおりであるから、本件においては、被告オークが編集著作者であるとの著作権法14条の推定を覆す事情が存在するといえ、本件対策問題集の編集著作者は、著作権法15条1項により原告であると認められる。 3 原告の請求について (1) 編集著作権の確認請求について 前記2のとおり、本件書籍12ないし33(本件対策問題集)の編集著作権は原告に帰属すると認められるところ、被告らはこれを争っているから、この点の確認を求める原告の請求(請求の趣旨(1))には理由がある。 (2) 不正競争防止法に基づく請求について 前記2のとおり、本件書籍12ないし33(本件対策問題集)の編集著作権は原告に帰属し、被告オークには帰属しないと認められるから、被告らが、第三者に対し、その編集著作権が被告オークに帰属する旨及び同書籍を制作販売する原告の行為が被告オークの著作権を侵害している旨を告知、流布することは、教材の制作・販売等において競争関係にあると認められる原告の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知、流布となる。 もっとも、被告らは、第3回弁論準備手続期日において、本件書籍1ないし11の編集著作権を有することの確認を求める原告の請求を認諾したから、本件書籍1ないし11に関しては、もはや被告らの告知、流布行為により原告の利益が侵害されるおそれがあるとはいえず、被告らの行為の差止めを求める原告の請求(請求の趣旨(2))のうち、本件書籍1ないし11に係る部分は理由がない。 第5 結論 よって、主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第26民事部 裁判長裁判官 山田陽三 裁判官 達野ゆき 裁判官 西田昌吾 (別紙)書籍目録
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