裁判の記録 line
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2015年
(平成27年)
[1月〜6月]
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1月22日 上林暁作品集の編集著作権事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 戦後を代表する私小説家・故上林暁の「同人誌時代の創作から晩年の随筆まで、新発見原稿を含む、全集未収録作品125篇」を集めた書籍『ツェッペリン飛行船と黙想』に関して、その刊行に協力し、解説を執筆した著作者の孫(著作権者の一人である長女の子供・原告)が、本件書籍は編集著作物であり、原告がその編集著作権者であるとして、発行元の出版社(被告)に対し、本件書籍の複製および販売は原告の編集著作権および著作者人格権の侵害であるとして、複製・販売の差し止めと書籍等の廃棄、損害賠償金238万円の支払い、および謝罪広告の掲載を求めた事件。被告は長女ら著作権者に印税を、原告には解説の原稿料を支払っていた。
 東京地裁は原告が本件書籍の編集著作権者とは認められないとして請求を棄却した。
判例全文
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1月29日 「週刊実話」の女性タレント合成写真事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 映画、TV、写真集などで芸能活動する女優・タレント等8人(原告)が、日本ジャーナル出版(被告出版社)が、原告らの肖像写真に裸の胸部のイラストを合成した画像を用いた記事を掲載した雑誌を出版販売したことについて、原告らのパブリシティ権並びに人格権及び人格的利益が侵害されたとして、被告出版社とその代表者、発行人、編集人に対し、雑誌の印刷・販売の停止と廃棄、賠償金1100万円の支払いを求めた事件。合成画像には「勝手に品評!!」等の見出しと、それぞれに対するコメント等が付いていた。
 裁判所は、本件記事の扱われ方を判断してパブリシティ権の侵害は認めず、原告らの人格権としての氏名権及び肖像権並びに人格的利益としての名誉感情を侵害するものとして、被告会社代表者を除く3者に連帯して合計80万円の支払いを命じた。雑誌の廃棄等は必要性がないとして認めなった。
判例全文
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1月29日 “健康松下21”イメージキャラクター事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 健保組合等の広報誌制作等を請け負っている会社(原告)が、パナソニック健康保険組合(被告)に対して、被告は原告が著作権を有するイラストを無断で利用して原告の著作権および著作者人格権を侵害したとして、賠償金3355万円を請求した事件。原被告間ではイメージキャラクターの制作と使用に関する契約が結ばれ、原告はイメージキャラクターを制作してイラストを被告に納品していたが、被告が、プロダクツを優先的に原告に発注するという合意に反して、キャラクターを使用したマウスパッド、クリアファイル、タオル、ポスター等を原告に発注せずに制作したとされた。
 裁判所は、本件イラストの著作物性を認め、原告がその著作権者であるとし、被告が諸プロダクツを制作するに当たり原告から本件イラストの利用許諾を受けていたかを検討し許諾は受けていなかったと判断した。その上で損害を検討して、マウスパッドとタオルについては損害の発生を認めず、クリアファイルとポスターに発生を認めて、被告に対し、原告への合計84万円余の支払いを命じ、その他の原告の請求は棄却した。
判例全文
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1月29日 ダイエット本の類似事件B(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 『バンド1本でやせる! 巻くだけダイエット』および『スーパーChihiroバンド 巻くだけダイエット』という書籍を著作したカイロプラクター(一審原告)が、内科医(一審被告)が著作し宝島社(一審被告出版社)が出版した『お腹が凹む! 巻くだけダイエット』という書籍の発行は、自らの著作した書籍の著名な商品等表示を冒用するものであるとして、不正競争防止法に基づき、製造販売の差し止めと廃棄、および386万円強の損害賠償金支払いを求めた事件。原告書籍・被告書籍とも、付録として折り畳んだバンドがついている。一審東京地裁は、「巻くだけダイエット」という表示および折り畳んだバンドを添付する形態の著名性を検討して、著名であったとは認められないとして、原告の請求を棄却したが、原告が控訴した。
 知財高裁は請求を棄却した一審の判断を相当と認め、控訴は理由がないとしてこれを棄却した。
判例全文
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1月29日 IKEA製品写真事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 オランダの家具製造販売会社である原告がECサイト運営業者である被告に対し、被告がドメイン名「IKEA―STORE.JP」等を使ったサイトに原告製品の写真と文章を掲載したことは原告の著作権の侵害であり、被告が使用した標章は原告の商標権を侵害し不正競争に当たるとして、写真データおよび文章の掲載の差し止め、送信可能化の差し止めと廃棄、各標章の使用の差し止めと除去、並びに賠償金1373万円余の支払いを求めた事件。
 裁判所は被告が被告サイトの運営に関する責任を負うと判断した上で、原告各写真の著作物性と、被告による原告著作権の侵害性を認め、また被告各標章は原告商標に類似し、被告の標章使用は商標的使用であると判断して、原告請求の差し止めや廃棄を認容した。損害額については写真や文章の創作性の程度を斟酌して、被告に24万円の支払いを命じた。
判例全文
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1月30日 司法書士試験対策本の著作物性事件B
   東京地裁/判決・請求棄却
 資格試験受験予備校である原告が、当予備校で講師を務める被告に対し、被告がネット上に被告の講座内容を表示し、それを製本化して販売した行為は、原告が著作権を有する不動産登記法に関する書籍の著作権(複製権、譲渡権、送信可能化権)を侵害するものだとして、書籍の販売・頒布と送信可能化の差し止め、製本書籍の廃棄、損害賠償金210万円の支払いを求めた事件。尚、原被告は民法テキストについて前訴で争い、請求棄却の判決が確定している。
 裁判所は、前訴の蒸し返しであり本件訴えは不適法であるとの被告の主張を退けた上で、原告書籍に対する著作権侵害性を検討し、法令の規定や実務の手続きに従った記述、法律問題に関する見解等は、個性的表現や独自の観点からの説明において同一性を有しない限り、侵害は成立しないとして、被告による著作権侵害性を否定し、請求を棄却した。
判例全文
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2月5日 ヤフーへの発信者情報開示請求事件B
   神戸地裁尼崎支部/判決・請求一部認容、一部棄却
 ビジネススクールを運営する芦屋市在住の男性が、ヤフーの運営するサイト上のブログの書き込みで名誉を傷つけられたとして、ヤフーに対して、記事の削除、損害賠償を請求するためブログ発信者の情報7項目の開示、記事の削除に応じなかったことに対する慰謝料50万円の支払いを求めた事件。
 男性はブログ上に実名を挙げて「詐欺師」「ネズミ講」などと書き込まれ、ヤフーに発信者情報の開示と記事の削除を求めたが、ヤフーは応じなかった。
 裁判所は、男性の事業に違法行為はなく、ブログの内容は男性の社会的評価を低下させるとして、ヤフーに対し、記事の削除と発信者のメールアドレス、IPアドレス、発信日時の3項目の情報開示、および慰謝料30万円の支払いを命じた。

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2月6日 モデル事務所の宣材写真事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 モデルエージェント業者である原告が、原告を退職して新たにモデル事務所を立ち上げた被告らに対し、被告らが原告に所属するモデルらを違法な方法で引き抜いたとして、不法行為による賠償金881万円余を請求するとともに、被告らの会社がモデルらの写真を被告サイト上に掲載したのは、原告の有する写真の著作権を侵害する行為だとして,送信可能化の差し止めと写真データの廃棄を求めた事件。
 裁判所は、原告会社は正常な運営が立ち行かない状況にあったとする被告らの主張を退け、被告らの行為は自由競争の範囲を逸脱した違法なモデル引き抜き行為であるというべきとして、賠償金157万円余の支払を命じたが、写真著作権侵害に関しては、原告がカメラマンから本件写真の著作権を取得したとは認められないとして、原告の主張を認めない判断をした。
判例全文
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2月12日 CADソフトの違法コピー販売事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 建築設計関係のプログラム開発を業とする会社(原告)が、原告の開発販売する建築CADソフトを訴外ネットオークションサイトのヤフオクで販売すると宣伝して一部改変したソフトをダウンロード販売していた個人(被告)に対して、1117万円余の損害賠償金支払いを請求した事件。
 被告は口頭弁論に出頭せず、答弁書その他書面も提出しなかったので、擬制自白とみなされ、損害論となった。
 原告は、本件ソフト商品の標準小売価格である19万円余に正規販売する機会を失った回数である56を乗じて1117万円余を損害の額としたが、裁判所は、損害額としては原告の受けるべき使用料相当額を算定すべきであり、それには標準小売価格に実施料率を乗ずるとし、実施料率を50%相当とし、被告に558万円余の支払いを命じた。
判例全文
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2月23日 “隠れ家的バー”口コミサイト掲載事件
   大阪地裁/判決・請求棄却(控訴)
 大阪市で数店の飲食店を経営する原告が、ネット上に口コミグルメサイトAを開設して運営している被告に対して、被告が会員ユーザーの登録・投稿により原告の経営する店舗Bの情報や口コミおよび写真をAに掲載し、原告からの削除要求に応えなかったことにより、営業権および情報コントロール権を侵害されたとして、情報の削除と330万円の賠償金支払いを求めた事件。Bは隠れ家的空間のバーとして演出され、口コミサイトへの投稿お断りという告知を行っていたが、原告はBのホームページを作成し、写真、メニュー、地図等の情報を公開していた。
 裁判所は、被告が原告の削除要請に応じなかったとしても、一般的に公開されている情報であれば掲載するという方針によるものであって、作為義務が発生するとは言えず、違法と評価することはできないとして、原告の請求を棄却した。
判例全文
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2月25日 ダイエット本の類似事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 『バンド1本でやせる! 巻くだけダイエット』および『スーパーChihiroバンド 巻くだけダイエット』という書籍を著作したカイロプラクター(一審原告)が、鍼灸医(一審被告)が著作し日本文芸社(一審被告出版社)が出版した『巻くだけでやせる!』および『巻くだけで痛みをとる!』は、原告書籍の著作権および著作者人格権を侵害し、また不正競争行為にあたるとして、被告らに対し、被告書籍の製造販売の差し止めと4546万円強の損害賠償金支払い等を求めた事件の控訴審。一審東京地裁は著作権および著作者人格権の侵害を否定、不正競争行為も否定して、原告の請求を棄却したが、原告が控訴した。
 知財高裁はいずれについても原審の判断を維持し、控訴を棄却した。
判例全文
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2月25日 歴史小説の“参考文献”事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 歴史小説作家(原告)が、テレビ番組企画制作会社(被告)が制作したテレビ番組(シリーズ作品中の5作品)に原告の3小説を無断で翻案ないし複製して使ったのは著作権および著作者人格権の侵害であるとして、被告に対し、番組放送と番組収録DVDの複製・頒布の差し止めと、損害賠償金3200万円の支払いを求めた事件。
 裁判所は原告各小説の記述部分にかかる創作性等に関して、個別に著作権侵害性を検討し、3か所の表現部分に侵害性を認めたが、著作者人格権侵害は認めなかった。また、被告の、番組制作にあたって原告に出演を求め、あるいは原告各小説を参考文献とすることについて許諾を求め、同意を得た上で制作したものであるとの主張に対しては、被告が原告から原告各小説の記述内容を用いることについて許諾を得ていたと認めることはできないとした。その上で財産的損害を小説使用料相当額に侵害性認定部分の分量を頁割りで算定し、弁護士費用相当額との合計30万円余の支払を被告に命じた。
判例全文
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2月26日 販促物「美術額絵シリーズ」事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 故人である版画家の作品24点に係る著作権の共有者である原告(亡長男の妻)が、被告ら(次男および次男が取締役を務める広告制作会社)が原告に無断で本件作品を新聞社の販促物「美術額絵シリーズ」に使用することを許諾したことにより、原告は本件著作権の2分の1の共有持分権を侵害され損害を被ったとして、被告らに対して1260万円の支払いを求めた事件。
 裁判所は、本件著作物の著作権については原告と被告個人がそれぞれ2分の1の共有持分権を有しており、その行使は両者の合意によることが必要なところ、本件許諾にはその合意があったことを認めるに足りる証拠がないとして、複製行為により原告の著作権共有持分権が侵害されたこと、また許諾に被告らの過失があったことを認め、損害額を許諾の対価の80%と算定して、被告らに1008万円の支払いを命じた。
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2月27日 “原子力ムラ”名誉毀損(毎日新聞)
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 東京工業大学の名誉教授が、日本原子力学会が議決した検査基準をめぐる新聞の記事で名誉を傷つけられたとして、記事を掲載した毎日新聞社に対して600万円の損害賠償金支払い等を求めた事件。問題となったのは2012年2月12日付け朝刊の「寄付企業に有利な基準」との見出しの記事で、業者から1485万円の奨学寄付金を受けていた名誉教授が学会の審議を主導し、国の規制よりも緩い内容の基準をまとめたとするもの。
 裁判所は、審議で名誉教授が果たした役割を明確にしないまま関係者からの情報提供に頼った記事だったとして、公正とは言えないと指摘し、毎日新聞社に165万円の支払いを命じた。

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2月27日 長嶋監督のインタビュー原稿漏洩事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
       (控訴・控訴棄却、上告・上告棄却、確定)
 読売新聞東京本社(原告)が、プロ野球・読売巨人軍の元球団代表(被告)に対して、被告が球団代表就任後の2010年12月に読売新聞の大量の未公表原稿を不正に取得して外部に送信したとして、原稿の複製頒布の差し止めと廃棄、1100万円の損害賠償金支払いを求めた事件。原稿は長嶋茂雄終身名誉監督に関するインタビュー内容などからなるもの。
 裁判所は、原稿はメモが大半で著作物と言えないとする被告の主張を退けて著作物性を認め、被告の行為を著作権侵害と判断、複製頒布の差し止めと原稿の廃棄を命じたが、原稿は未公表とは言えないとして、賠償額は30万円にとどめた。
判例全文
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3月12日 「生命の實相」復刻出版事件C
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 亡Aの創始した宗教団体「生長の家」をめぐる事件。生長の家の宗教的理念に基づき社会厚生事業を行う公益財団法人(原告事業団)と原告出版社が、亡Aの執筆した多数の論文を分類してまとめた本件著作物1と亡Aの長編自由詩である本件著作物2について、原告事業団が著作権を、原告出版社が出版権を有するとして、亡Aの著作物を出版する被告出版社の出版する被告書籍1(本件著作物1の一部を抜き出してまとめたもの)と、被告宗教法人・生長の家が作成した被告書籍2(肌守り用として信徒に頒布したもの)の出版は、それぞれ原告らの著作権および出版権を侵害するとして、被告書籍1・2の複製・頒布の差し止めと、原告それぞれに対する賠償金50万円の支払いを求めた事件。
 裁判所は、原告事業団設立時の寄付行為規定、原被告間の覚書、出版契約書や終了書、解約意思表示を検討し、被告書籍1および2による著作権侵害を認め、複製・頒布等の禁止と在庫の廃棄、および被告らそれぞれに原告それぞれに対する20万円の賠償金支払いを命じた。
判例全文
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3月16日 アニメ映画「三人の騎士」日本語版事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 著作権保護期間が終了したディズニーのアニメ映画「三人の騎士」に、日本語吹き替え、字幕を付したDVDをめぐって、映像ソフト企画製造販売会社ら(原告ら)が、同ソフトを販売していた出版社(被告)に対して、著作権侵害により同ソフトの輸入、複製、頒布の差し止めと、各400万円の賠償金支払いを求めた事件。
 裁判所は日本語の台詞原稿及び字幕部分は著作物であり、著作権が原告らにあることを認め、被告DVDの同部分は原告DVDのそれと同一であることから、被告が原告らの著作権を侵害していることを認め、被告に販売の差し止めと、原告らに対するそれぞれ79万円余の賠償金支払いを命じたが、輸入、複製については差し止めの必要性を認めなかった。
判例全文
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3月20日 英会話教材キャッチフレーズの著作物性事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 外国語教材企画開発販売会社(原告)が、教育関連事業やウェブ関連事業を営む被告会社がその社の販売する英会話教材につけた広告キャッチフレーズは、原告会社が販売する英会話教材につけた広告キャッチフレーズの著作権を侵害するとして、被告に対して、被告キャッチフレーズの複製、公衆送信、複製物の頒布の差し止めと、損害賠償金60万円の支払いを求めた事件。原告キャッチフレーズは「音楽を聞くように英語を聞き流すだけ英語がどんどん好きになる」等であり、被告キャッチフレーズは「音楽を聞くように英語を流して聞くだけ 英語がどんどん好きになる」等であった。
 裁判所は、原告キャッチフレーズはありふれた言葉の組み合わせ、ありふれた表現で、思想感情を創作的に表現したものとは認められないとして、その著作物性を否定、被告による著作権侵害を否定した。また不正競争の成否についても、原告キャッチフレーズは長期間にわたって使用されているとはいえ、需要者は商品名で原告商品を識別でき、原告キャッチフレーズが単なるキャッチフレーズを超えて原告の営業を表示するものとして認識されて自他識別機能ないし出所表示機能を獲得するに至ってはいないとして、被告の不正競争行為性を否定し、原告の請求を棄却した。
判例全文
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3月24日 アニメ映画「三人の騎士」日本語版事件B
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 著作権保護期間が終了したディズニーのアニメ映画「三人の騎士」に、日本語吹き替え、字幕を付したDVDをめぐって、映像ソフト企画製造販売会社ら(原告ら)が、同ソフトを販売していた記録媒体企画製造販売会社(被告)に対して、著作権侵害により同ソフトの輸入、製造、販売の差し止めと、各675万円の賠償金支払いを求めた事件。
 裁判所は日本語の台詞原稿および日本語字幕に著作物性があり、原告らに著作権があると判断、被告による著作権侵害を認め、輸入、製造、販売の差し止めと、原告それぞれに対する84万円余の支払いを命じた。
判例全文
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3月25日 小池一夫氏作品の独占的利用許諾契約事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 「子連れ狼」の原作者である被告漫画家から著作物独占的利用権の設定を受けたと主張する原告会社が、被告らに対して、独占的利用権の侵害に基づく損害賠償金総額約3億円の支払い等を求めた事件。被告漫画家が原告会社に作品の利用許諾をしている状況下で、被告漫画家が作品の著作権を複数の被告他社に譲渡するなどして、権利関係が錯綜した。
 裁判所は本件独占的利用許諾契約の成立を認めたが、過去の作品のみならず将来の著作物までを包括的に対象とした際に、契約期間が長期にわたる場合や契約終了できる余地が狭い場合、また対価支払いに不均衡がある場合には公序良俗違反になるとして、契約の一部が無効になると判断し、原告の請求をその部分で認めず、被告漫画家およびその他の被告の一部に総計約2億4千万円の支払いを命じた。
判例全文
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3月26日 ネーミング辞典の著作権侵害事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 原告出版社が、被告出版社の発行する『幻想世界11カ国語ネーミング辞典』は、原告の発行する『幻想ネーミング辞典』を複製または翻案したものであり、著作権および著作者人格権を侵害しているとして、印刷・出版・販売・頒布の差し止めと廃棄、および損害賠償金7000万円余の支払いを求めた事件。
 裁判所は原告書籍の原告従業員らによる編集著作物性を認め、被告は少なくとも過失により原告の著作権と著作者人格権を侵害したとして、被告に対し、被告書籍の印刷・出版・販売・頒布を禁じ、廃棄を命じるとともに、損害賠償金の支払いを命じた。
判例全文
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3月26日 バックアップソフトの著作権侵害事件B(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 ソフト開発販売会社である一審原告が、同じくソフト開発販売会社である一審被告との間で、業務委託契約、システム・エンジニアリング・サービス契約、および機密保持契約を結んで、被告に対し原告ソフトの製作を委託、更にその中国市場における販売業務を委託したが、被告は業務委託契約上の義務に違反して、開示された情報を利用して被告ソフトを製作し中国に売り込むなどの競業作業を行ったとして、被告に対し、ソフトに使用されているプログラムの製造・譲渡の差し止めと廃棄、1500万円余の損害賠償金の支払いを求めるとともに、被告会社の代表取締役にも同額の賠償金支払いを求めた事件の控訴審。
 一審東京地裁は原告の主張する情報は秘密保持の対象たりえない、また被告は原告ソフトと同種のソフトを製造・販売してはならない義務を負っていたとは認められないなどと判断して、原告の請求を棄却したが、原告が控訴した。
 知財高裁は、一審同様、機密保持義務違反、競業禁止義務違反、両プログラムの類似性等を認めず、控訴人の控訴を棄却した。
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3月27日 著作権法論文の同一表現事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 論文「通信と放送の融合に伴う著作権問題の研究」を執筆した研究者(原告)が、被告Aおよび被告Bが共同で執筆した論文の中に原告論文とほぼ同一の記述があることを前提に、(1)被告A・Bには著作権および著作者人格権侵害に基づき、Aが勤める学校法人(被告学園)にはAに対する使用者責任に基づき、共同して慰謝料等330万円の支払いを求め、(2)Aに対して論文を盗用・剽窃されない権利の侵害等に基づき、被告学園にはその使用者責任に基づき、共同して慰謝料等220万円の支払いを求め、(3)A・Bに対して人格権侵害に基づく名誉回復措置請求として謝罪広告の掲載を求め、(4)被告論文をウェブ上に掲載した学術学会(被告学会)に対して、著作権および著作者人格権を侵害するとして、ウェブサイトからの被告論文の削除を求め、(5)原告論文の著作権を譲渡した相手の被告学会に対して、債務不履行により譲渡契約を解除したと主張して、原告が原告論文の著作権を有することの確認を求めた事件。
 裁判所はまず5の譲渡契約に関して、被告学会がこの契約に基づいて著作権侵害疑義に対して法的措置を取る義務までは規定していないとして、解除の意思表示の効力を認めず、原告が著作権を有することの確認を求める請求を棄却した。その上で、(1)(4)における著作者人格権侵害の中の氏名表示権侵害だけを認め、被告A・Bに対する連帯しての22万円の損害賠償金支払いと、被告学会に対するウェブ上からの被告論文の削除を命じ、その他の請求は棄却した。
判例全文
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4月14日 子供椅子のデザイン類似事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 ノルウェーの家具製造販売会社および工芸デザイン権利保有会社が、一審被告家具会社に対し、被告の製造販売する家具の形態が一審原告らの製造等に係るTRIPP TRAPPという椅子の形態に酷似するとして、著作権侵害・不正競争行為により、製造販売の差し止め、損害賠償金の支払い、謝罪広告の掲載を求めた事件。一審東京地裁はこの椅子のデザインは著作権法の保護を受ける著作物に当たらないとして、原告らの請求を棄却したが、原告らが控訴した。
 知財高裁は、応用美術に著作物性を認める判断基準について述べた上で、原告製品のある部分に著作物性を認めたが、被告製品は原告製品が著作物性を有する部分と類似していないとして侵害性を否定、控訴を棄却した。
判例全文
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4月15日 レンタルフォトの画像無断使用事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(確定)
 大量の写真素材を揃えて利用者に購入・ダウンロードさせるサービスを行っている会社と3人のカメラマン(原告ら)が、弁護士法人である被告が、原告らが著作権・独占的利用権・著作者人格権等を有している写真を無断で被告のウェブサイトに掲載したとして、原告会社に28万円余、原告カメラマンAに22万円余、同BとCに21万円余の不法行為による損害賠償金および不当利得返還を求めた事件。被告法人はウェブサイトを作成するに当たり、被用者が写真をフリー素材と誤信して使用したと思われるから、作成者の注意義務を問題とすべきである等と主張した。
 裁判所は、被告の主張を採用できないとし、原告らの主張を認めて、被告に対し、原告会社に対する19万円余の、原告Aに対する4万円余の、Bに対する2万円余の、Cに対する1万円余の支払いを命じた。
判例全文
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4月24日 ブログ記事の無断複製事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 共に投資情報提供サービスを行う会社である原被告間で、原告のブログ掲載記事を、被告が複製して被告ブログに掲載し公衆送信を行ったとして、原告が被告および被告会社代表取締役に、連帯して賠償金297万円を支払うよう請求した事件。被告らは口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の書面も提出しなかった。
 裁判所は、被告が原告の主張を自白したものと認め、損害額について40万円と認定、被告に対して、原告の被った信用毀損額等を含め、100万円の支払いを命じた。
判例全文
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4月27日 NTTコムへの発信者情報開示請求事件B
   東京地裁/判決・請求認容
 池田大作名誉会長の写真の著作権を有する創価学会が、被告NTTコミュニケーションズの提供するネット接続サービスを利用して、電子掲示板「Yahoo!知恵袋」に投稿掲載された記事中の写真は、原告の著作権を侵害しているが、投稿者に対する損害賠償請求権の行使のためには、記事発信者に関する情報の開示が必要だとして、プロバイダである被告に対して、プロバイダ制限責任法に基づき、発信者情報の開示を求めた事件。
 裁判所は、写真掲載における引用の成立を否定して公衆送信権の侵害と判断し、原告には発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとして、被告に情報開示を命じた。
判例全文
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4月28日 JASRAC「包括利用許諾契約」事件(3)
   最高裁(三小)/判決・上告棄却(確定)
 楽曲の放送使用料を放送局から定額徴収するJASRACの「包括契約」は独占禁止法違反に当らないとした公正取引委員会(被告)の審決を不服として、新規参入業者のイーライセンス(原告)が審決の取り消しを求めて提訴した事件の上告審。
 JASRACは音楽を大量に使う放送局と楽曲利用に関して包括契約を結んでいて、放送局は放送事業収入の一定割合を支払うことで、楽曲数や使用頻度に関係なく自由に使用することができる。放送局は楽曲ごとの利用状況を報告する手間が省け、JASRAC側のチェック業務も軽減される。双方にとって便利な契約である。しかし新規参入した音楽著作権管理事業者の場合は、使用数と頻度によって支払額も違ってくることから、放送局側が手続きの煩雑さや新たな負担を嫌って、JASRAC以外の管理事業者管理の楽曲の使用を見合わせる傾向もあるという。
 当初、公正取引委員会はJASRACに対し当契約排除命令を出したが、JASRACは取消を求め、委員会は審判で当契約排除命令を取消す審決を下していた。第一審となる東京高裁は、JASRACの包括契約が業者の新規参入を妨げていると指摘し、被告公取委の審決を取り消したが、被告が上告した。
 最高裁第三小法廷は、5人の裁判官全員一致で、東京高裁判決を支持し、公正取引委員会の上告を棄却する判決を下した。
判例全文
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4月28日 「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。」ドラマ化事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 NHKが、直木賞作家・辻村深月さんの小説のドラマ化許諾を、撮影開始直前になって白紙撤回されたとして、出版元の講談社に対して約6000万円の損害賠償金支払いを求めた事件。NHKは著作権管理委託されている講談社から2011年11月にドラマ化の了承を得て配役などを進めたが、その後、講談社は脚本に納得できない作者の意向を受けて白紙にすると申し入れていた。
 裁判所は、原作者側から脚本の承認がされていない以上、許諾契約が成立したとは言えないとして、NHKの請求を棄却した。

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4月28日 作詞家 vs 歌手 CD売買契約事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 ある楽曲に関して、レーベル(一審原告)が歌手(一審被告)に対して当楽曲収録CDを売り渡したと主張して、売買契約に基づき代金144万円の支払いを求めるとともに、原告は原告の代表を務める当楽曲の作詞者から著作権の譲渡を受けているが、被告による本楽曲の歌唱は原告の有する演奏権を侵害すると主張して、歌唱の差し止めを求めた事件の控訴審。一審東京地裁は、原告主張の売買契約は成立していないと判断して、原告の主張を否定し、演奏権侵害の主張に関しても、Bは被告Aに許諾を与えていたとして原告の主張を否定し、請求を棄却した。原告は歌唱の差し止めについて控訴するとともに、金額に関しては134万円余の支払い限度に変更して控訴した。
 裁判所は原判決の判断を維持して、控訴を棄却した。
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4月28日 商標“南京町”侵害事件(2)
   大阪高裁/和解
 神戸市の中華街「南京町」の商標権を保有する南京町商店街振興組合が、「南京町」を含む商品名の中華麺を製造する業者に商標権を侵害されたとして、1650万円の損害賠償を求めた事件の控訴審は、大阪高裁で28日までに和解が成立した。
 一審大阪地裁は、商品名の表記は標準的な字体であって特徴的字体の組合の商標とは似ていないと判断、「南京町」は一般的な名称であるから、組合の商標が持つ特徴的な字体で表した場合のみ商標権があるとして、組合の請求を棄却したが組合側が控訴し、業者側も損害賠償を求めた訴訟を新たに神戸地裁に起こしていた。この提訴も取り下げられた。

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4月28日 “聖経”著作権使用契約事件(2)
   知財高裁/判決・変更
 一審原告・公益財団法人生長の家社会事業団が、一審被告・財団法人世界聖典普及協会に対し、(1)被告による谷口雅春氏の著作物のカセットテープ複製・販売について、主位的に、印税約2100万円の支払い、予備的に、著作権侵害に基づく頒布の差止めと廃棄および損害金2450万円の支払い、又は不当利得金2250万円の支払いを求め、(2)被告によるコンパクトディスクの販売について、表示が著作権使用契約に定められたものと異なるとして、その表示の削除を求めた事件の控訴審。
 一審東京地裁は、著作権が原告に譲渡されていることは認めたが、被告による本件カセットテープの複製・頒布は、印税相当額が許諾の条件に従い谷口氏の相続人に支払われており、原告の著作権を侵害せず、不当に利得したということはできないとし、本件CDの著作権表示についてのみ、著作物使用契約に違反すると判断して、表示の削除請求を認めた。原告が控訴した。
 知財高裁は黙示の許諾契約の成否を検討して、許諾契約は成立していないと判断、一審判決を変更して著作権侵害性を認め、原告(控訴人)の予備的請求を認めて、被告(被控訴人)にテープ頒布の禁止と廃棄を命じ、損害金374万円余を支払うよう命じた。
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5月13日 “日航機墜落事故”ノンフィクションの表現類似事件(3)
   最高裁(一小)/決定・上告棄却(確定)
 1985年の日航機墜落事故で夫を亡くし、手記『雪解けの尾根』を刊行した遺族が、同事故を題材にしたノンフィクション作家・門田隆将氏の著書『風にそよぐ墓標』に表現を盗用されたとして、氏と版元の集英社に対し、出版差し止めと賠償金518万円の支払いを求めた事件の控訴審。一審東京地裁は17か所に著作権侵害を認め、出版差し止めと書籍の廃棄、58万円余の損害賠償金支払いを命じ、二審 知財高裁は14か所に変更して著作権侵害を認め、出版差し止めと書籍の廃棄、58万円余の損害賠償金支払いを命じたが一審被告側が上告していた。
 最高裁第一小法廷の上告棄却決定により、二審判決が確定した。

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5月15日 AOLへの発信者情報開示請求事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 ネット上のデザインの企画・制作・販売等を手掛ける原告が、ブログ開設会社が運営するサイトに掲載された記事に、原告ロゴマーク及び原告社内写真を掲載されたことにより原告の著作権が侵害されたとして、記事発信者に対する損害賠償請求のため、東京地裁にブログ開設会社に発信者のメールアドレス開示を求める訴訟を提起し、裁判所より請求を認める判決を得た。この裁判は、その判決により発信者メールアドレスを得た原告が、ブログ開設会社にネット接続サービスを提供している被告AOLオンラインに対し、プロバイダ制限責任法に基づき、発信者の氏名住所等の情報の開示を求めた事件。
 裁判所は被告が開示関係役務提供者であることを認め、発信者による権利侵害を認めて、被告に発信者の氏名住所情報を開示するよう命じた。その余の情報開示は認めなかった。
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5月21日 風俗記事の漫画化事件(2)
   知財高裁/判決・変更
 フリーライターX(一審原告・反訴被告)がブログに掲載した風俗記事を元に、出版社Y1(二審被告・反訴原告)が編集プロダクションY2(被告・反訴原告)に依頼して漫画を作画した上で、Y1発行の雑誌に掲載した。Xはこれを著作権および著作者人格権の侵害だとして、Y1およびY2に損害賠償金131万円の連帯支払いと、Y1に謝罪広告の掲載を求め(本訴)、Y1およびY2は、Xがブログに記事を掲載したことが彼らの名誉を毀損したとして、Xに損害賠償金100万円を要求した(反訴)事件の控訴審。
 一審東京地裁は本訴に関して、記事と漫画を対比の上、一部について表現上の本質的特徴を直接感得できるとして、翻案権の侵害を認め、著作者人格権の侵害も認めて損害額6万6000円の支払いをY1およびY2に命じ、謝罪広告の掲載は認めなかった。反訴に関しては、XのY1に対する名誉毀損行為を認め、40万円の賠償金支払いを命じた。原被告双方が一審判決を不服として控訴した。
 知財高裁は、一審同様著作権・著作者人格権の侵害を認めたが、被告らの支払うべき損害額を55万円とする増額の変更をした。
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5月25日 マンション設計図の著作物性事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 建築設計会社(一審原告)が、かつてあったマンションの建て替えに際して、そのマンションの所有者らが、不動産会社、建築設計会社および建築設計会社代表と共同して(一審被告所有者ら)、原告が作成した図面に依拠して本件建物の設計図である被告図面を作成し、原告の有する原告図面の著作権を侵害したとして、被告らに連帯して3285万円の損害金支払いを求めた事件。原告図面は、当初図面作成を依頼されて作成されたものであり、被告図面はのちに被告所有者らが立て替えを依頼した不動産会社が建築設計会社に依頼して作成されたものである。
 一審東京地裁は、原告の主張する創作性は設計思想の創作性に過ぎないとして原告図面の著作物性を認めず、請求を棄却したが、原告が控訴した。
 知財高裁は、原告図面と被告図面を比較し、元々原告図面も通常のマンションにおいて見られるありふれた形状や組み合わせと大きく相違するものでないことを考えれば、被告図面と実質的に同一であるとは言えないとして、著作権侵害性を否定、控訴を棄却した。
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5月27日 ソフトウェアのライセンス契約事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 コンピュータソフトウェアの開発・販売会社である原告が、通信機器や周辺機器の販売やリースを手掛ける被告会社との間で著作権ライセンス契約(使用許諾契約)を締結したと主張して、被告に対し、契約締結確認と、本件契約に基づく著作権使用料39万円余の支払いを求めた事件。原被告間では、かつて、被告が原告に対して継続的にソフトウェアの発注をし、原告はこれを製作し被告又は被告の指定する納品先に納品していた。
 裁判所は、原告による本件契約の申込みを被告が承諾した事実は認めるに足りず、かえって被告は同申込みを明示的に拒絶しているとして原告の主張を退け、原告が著作権を有するソフトウェアを被告は使用しているとの原告の主張に対しては、そもそも発注、製作、納入、支払の関係において、発注側が納入された製品を使用している事実をもって、原被告が契約を締結したことの証左とはならないとして、原告の請求を棄却した。
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5月28日 清武元巨人取締役著書の復刊事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却(上告、上告棄却・確定)
 読売新聞東京本社(一審原告)が、かつて「読売新聞社会部」を著作者とし『会長はなぜ自殺したか―金融腐敗=呪縛の検証』と題して単行本版、文庫版が出版された書籍を、七つ森書館(一審被告)が2012年5月に復刊したことに関して、著作権侵害に基づく当該書籍の頒布の禁止と688万円の損害賠償金支払い(A事件)、および当該書籍の出版権が被告に存しないことの確認(B事件)を求めた事件。被告は復刊に際し、著作者名を「読売社会部C班」と改め、著作者の書いた「本シリーズにあたってのあとがき」を追加しており、原告の社会部次長であったFと出版契約書を締結していた。
 一審東京地裁は、A事件に関し、本件書籍は執筆者による職務著作であるとして、原告に著作権があることを認め、出版契約書署名者のFは原告を代理する権限を有しておらず、本件出版契約が原告と被告との間で成立したと認めることはできないとして、被告の発売頒布行為は原告の著作権を侵害するものと判断した。更に、当該書籍への新たなあとがきの付与は著作者人格権・同一性保持権の侵害、著作者名の変更は同・氏名表示権の侵害であるとして、損害賠償金171万円の支払いを命じた。また、B事件に関しては被告には出版権は存しないと認めた。被告が判決を不服として控訴した。
 知財高裁は一審判決の判断を支持し、控訴を棄却した。
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5月28日 業務管理プログラムの無断インストール事件
   大阪地裁/判決・請求棄却(控訴)
 ソフトウェア開発会社である原告が、原告が著作権を有する業務管理のプログラムを、同じくソフトウェア配発会社である被告が無断でインストールして使用するなどしたことは、原告の著作権を侵害するものだとして、被告に対し、プログラム等の使用等の差し止めと廃棄、および損害賠償金1億941万円余の支払を求めた事件。原被告両社は人事交流もあり、被告会社は原告会社の一部門のような密接な関係にあった。
 裁判所は、両社の密接な関係から、本件インストールは原告代表取締役の決済を経るべき事項であったとは認められず、原告システム開発部長による本件インストール命令は原告からの授権によるものであり、原告の許諾があったものと判断され、被告による本件プログラムの利用は原告の著作権を侵害したものとは言えないとして、原告の請求を棄却した。
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6月11日 死刑囚の手記無断複製事件
   大阪地裁/判決・請求棄却
 大阪拘置所に収容中の死刑確定者である原告は、原稿同封信書の発信申請を不許可とした件を巡って拘置所長と争っていた(別件訴訟)が、その過程において、拘置所職員が原告の著作物を騙して提出させて許諾なく写しを作成し、法務局職員に公布して同職員がその写しに基づき書面を作成した行為は著作権侵害行為を含む違法行為であるとして、国に対して300万円の損害賠償金を請求した事件。
 裁判所は、本件原稿を提出させた拘置所職員の行為は発受できない信書発信の求めへの対処として適法であり、本件原稿の写しの作成とそれに基づく書面の作成は行政目的のため、または裁判手続きのために必用と認められる場合に該当するとして、原告の主張を認めず、請求を棄却した。
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6月18日 CADソフトの違法コピー販売事件(2)
   知財高裁/判決・変更
 建築設計関係のプログラム開発を業とする会社(一審原告)が、原告の開発販売する建築CADソフトを訴外ネットオークションサイトのヤフオクで販売すると宣伝して一部改変したソフトをダウンロード販売していた個人(一審被告)に対して、1117万円余の損害賠償金支払いを請求した事件。被告は口頭弁論に出頭せず、答弁書その他書面も提出しなかったので、擬制自白とみなされ、損害論となった。一審東京地裁は、本件ソフト商品の標準小売価格である19万円余に正規販売する機会を失った回数である56を乗じて1117万円余を損害の額とする原告の主張に対し、損害額としては原告の受けるべき使用料相当額を算定すべきであり、それには標準小売価格に実施料率を乗ずるとし、実施料率を50%相当とし、被告に558万円余の支払いを命じたが、原告が控訴した。
 知財高裁は一審判決を変更し、実施料率を0.9とする判断を示した。
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6月18日 不正CADソフトの損害賠償請求権事件
   大阪地裁/判決・本訴請求却下、反訴請求棄却
 本訴は鋼構造物製品製作会社である原告が、建築建設業界向けソフト開発会社である被告に対し、原被告間に損害賠償債務が存在しないことの確認を求めた事件であり、反訴は原告による本訴事件の提起及び訴訟追行は原告代表者による不法行為であるとして損害賠償金100万円の支払いを求めた事件。原告は被告以外の業者から建設建築業界向け構造詳細設計用3D CADソフト(本件ソフト)の不正コピー品であるインストール用DVDを購入し、本件ソフトをインストールして業務として図面設計等を行っていたが、被告会社社員より本件ソフトの不正コピーによる複製と利用の確認についての連絡を受けた。原告はそれを認め、被告との間で損害賠償の協議を行ったが合意に至らず、原告は賠償債務が15万1433円を超えないことの確認を求めて本訴を提起、その後、被告は本件ソフトの著作権者でなく、著作権者であるフィンランド法人の100%子会社であるから被告は原告に対して損害賠償請求権を有しない旨を被告が主張したことにより、原告は訴えを変更して、原被告間に損害賠償債務が存在しないことの確認を求めるようになった。
 裁判所は、原告は本件ソフトの不正使用を理由とする損害賠償を親会社にしなければならないことが明らかになっている以上、あえて原告が原被告間に損害賠償債務が存在しないことの確認をすることが必要かつ適切であるとは認められないとして原告の本訴請求を却下した。また、原告による本訴提起が著しく相当性を欠くとは言えず、不法行為を構成するとは言えないから、被告の反訴請求には理由がないとしてこれを棄却した。
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6月18日 商標“山頭火”侵害事件
   札幌地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 国内外で「ラーメン山頭火」を運営し、「山頭火」のロゴの商標権を持つ札幌市内の会社が、同じロゴでラーメン店を営業され商標権を侵害されたとして、同市内の別会社を訴えた訴訟の判決で、札幌地裁は18日、被告の会社にロゴの使用差し止めを命じた。ロゴをとりいれた看板やのれん、のぼり、メニュー、制服の使用も禁じたが、原告会社が求めいていた別のロゴによる「山頭火」の文字の使用禁止は退けた。

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6月23日 韓国人気作家「憂国」盗作事件
   謝罪声明発表
 韓国の人気女性作家・申京淑さんが1990年代に発表した短編「伝説」が、三島由紀夫の短編「憂国」の一部を盗作しているとの疑惑が浮上した。韓国の別の作家が、「伝説」のある描写が「憂国」の文章と酷似しているとインターネットで指摘し、申さんは当初、「三島作品は代表作『金閣寺』以外読んだことがない」と述べて否定していたが、騒動が広がった。申さんは23日付の紙面でインタビューに答えて「『憂国』を読んだ記憶はないが、読み比べた結果、指摘は当たっている」として盗作を事実上認め、謝罪した。

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6月24日 ソーシャルゲーム「プロ野球ドリームナイン」侵害事件(2)
   知財高裁/判決・変更
 「プロ野球ドリームナイン」というゲームをSNS上で提供配信している一審原告会社が、主位的に、(1)一審被告会社の提供配信するゲームは原告の有する原告ゲームの著作権(複製権、翻案権、公衆送信権〉を侵害し、(2)被告ゲームの映像や構成等は不正競争に該当するとして、被告に対し損害賠償金約5855万円余の支払いを求め、また(3)被告ゲームの配信の差し止めを請求、予備的に(4)不法行為に基づく損害賠償金1716万円余の支払いを求めた事件。一審東京地裁は原告の請求をいずれも棄却したが、原告が(1)(4)の部分を不服として控訴した。(2)(3)については不服を申し立てず、二審審理の対象となっていない。
 控訴審では、裁判所は両ゲームを比較検討し、それぞれの選手ガチャ(数秒の動画)においては著作権侵害を否定したが、4人の選手カードにおける比較において、中島選手とダルビッシュ選手のカードに被告ゲームによる翻案権侵害を認めた。それ以外の要素およびゲーム全体についての著作権侵害は認めず、不法行為にも該当しないとして原告の主張を退け、2選手カードの販売により被告が得た利益を計算して、原告の損害を12万円余と算出し、一審判決を変更して、被控訴人(一審被告)に賠償金32万円余の支払いを命じた。
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6月25日 タレントの化粧品広告契約事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 心理カウンセラーの経験を持つ原告女性タレントは、被告が代表を務める化粧品企画販売会社と、その社が展開する事業の商品開発やPR業務における助言・支援等を行う顧問契約を締結し、その仕事の中で原告が撮影した写真を会社のパンフレットやウェブサイトに掲載し、執筆したコラムをウェブサイトに掲載していた。原告は、被告が顧問契約解消後も写真をウェブサイトに掲載し続けたのは原告の著作権を侵害するものであり、またコラムのタイトルを変更してウェブサイトに掲載し続けたことは原告の著作者人格権を侵害するものであるとして、合計180万円の損害賠償金支払いと、謝罪広告の掲載を求めた。
 裁判所は、原告の主張を認めて、被告の行為を複製権及び公衆送信権侵害と同一性保持権侵害と判断し、損害額合計20万円余の支払いを命じたが、謝罪の掲載は認めなかった。
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6月25日 類似“映画字幕制作ソフト”事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 字幕制作システム開発会社である原告が、同じく字幕制作ソフト開発会社である被告が製造販売する「Babel」というソフトは、原告の著作物であるプログラムSSTG1を複製または翻案したものであるとして、著作権侵害により被告プログラムの複製販売の差し止めと廃棄、および損害賠償金4800万円余の支払を求めた事件。
 裁判所は、被告プログラムが原告のそれを翻案したものであることを一定程度推認しながらも、両プログラムそれぞれの具体的表現が不明であること、一定程度の相違点があることなどから、被告プログラムは原告プログラムの表現形式上の本質的特徴を直接感得できる著作物ではない可能性が十分にあるとして、原告の主張を認めず、請求を棄却した。
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6月26日 ゲームソフト“サンダーストーム”BGM事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 作曲家である原告が、アニメ制作会社である被告に対し、原被告は、原告が作曲した4つの楽曲について、被告がホームユースゲーム用VHDソフト「サンダーストーム」のバック・グラウンド・ミュージックとして使用することを許諾する旨の使用許諾契約を締結したが、(1)この契約では出庫枚数を3000枚に限定して著作権使用料15万円が支払われたにもかかわらず、7000枚を超えて販売し、(2)ホームユース用でないゲームセンター用も8000台販売され、(3)海外版「Cobra Command」としても販売され、(4)レーザーディスク用ゲームにも複製され、(5)違法ダウンロードもされたとして、(1)〜(5)に基づく損害につき、総計6635万円の支払いを求めた事件。
 裁判所は、VHD式カートリッジが3000枚を超えて被告から出庫されたという証拠が原告から出されていないこと、(2)〜(5)に関しても、著作権侵害等が行われたことを認めるに足る証拠が何ら提出されていないこと等から、原告の主張を認めず、請求を棄却した。
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