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【事件名】NTTコムへの発信者情報開示請求事件B
【年月日】平成27年4月27日
 東京地裁 平成26年(ワ)第26974号 発信者情報開示請求事件
 (口頭弁論終結日 平成27年2月27日)

判決
原告 創価学会
同訴訟代理人弁護士 中條秀和
同 甲斐伸明
被告 エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
同訴訟代理人弁護士 五島丈裕


主文
1 被告は、原告に対し、別紙発信者情報目録記載の情報を開示せよ。
2 訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
 主文同旨
第2 事案の概要
1 本件は、別紙写真目録記載の写真(以下「本件写真」という。)の著作権を有する原告が、被告の提供するインターネット接続サービスを経由して、インターネット上の電子掲示板「Yahoo!知恵袋」(以下「本件掲示板」という。)に投稿された別紙投稿記事目録記載1ないし29の各記事(以下、同目録の番号に対応して「本件記事1」などという。また、本件記事1ないし29を併せて「本件各記事」という。)中に掲載された写真は、いずれも本件写真を複製又は翻案したものであり、本件各記事を投稿した行為は原告の著作権(公衆送信権)を侵害するところ、本件各記事の投稿者に対する損害賠償請求権の行使のためには、本件各記事に係る別紙発信者情報目録記載の情報(以下「本件発信者情報」という。)の開示が必要であると主張して、経由プロバイダである被告に対し、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「法」という。)4条1項に基づき、本件発信者情報の開示を求める事案である。
2 前提事実等(証拠等を付記しない事実は、当事者間に争いがない。なお、書証の枝番は、省略することがある。)
(1) 当事者
ア 原告は、昭和27年9月8日、宗教法人法に基づいて設立された宗教法人である。
イ 被告は、電気通信事業を営む株式会社であり、法4条1項の開示関係役務提供者に該当する。
ウ A氏は、原告の名誉会長である(以下、同氏を「A名誉会長」という。)。
(2) 本件各記事の投稿
ア 氏名不詳者は、別紙投稿記事目録「投稿日時」欄記載の各日時に、株式会社ヤフーが開設、運営している本件掲示板に、本件各記事を投稿した(甲1、3、5、10)。
イ 本件各記事には、別紙1ないし29(別紙の番号は、本件各記事の番号に対応している。)の赤枠内のA名誉会長の写真(以下、別紙の番号に対応して「本件写真1」などという。また、本件写真1ないし29を併せて「本件各写真」という。)及び記述が掲載されている(甲1、3、5)。
ウ 別紙投稿記事目録「IPアドレス」欄記載のIPアドレスは、いずれも被告が使用しているものである(甲4)。
3 争点及び争点に対する当事者の主張
(1) 権利侵害の明白性
ア 本件写真の職務著作該当性
(原告の主張)
 本件写真は、原告に雇用され、撮影当時、聖教新聞社に所属していたB(以下「B」という。)が撮影したものである。
 聖教新聞社は、原告の宗教法人「創価学会」規則及び「創価学会聖教新聞社管理運営規程」に基づいて運営されており、原告の一事業部門に当たるから、Bは原告の職員である。そして、本件写真は、平成19年12月25日、Bが、勤務時間中に、原告の業務として、原告施設においてA名誉会長を撮影したものであり、原告の発意に基づき職務上撮影した写真といえる。さらに、本件写真は、聖教新聞社が発行するグラフSGI2013年1月号に掲載され、原告の名義で公表された。なお、原告の就業規則には、職員が職務上作成した著作物の著作権が原告に帰属することを確認する規定がある。
 したがって、本件写真は、原告の業務に従事する者が職務上作成した著作物であるから、著作権法15条1項に基づき、本件写真の著作者は原告であり、本件写真の著作権は原告に帰属する。
(被告の主張)
 不知。ただし、本件写真の著作物性は争わない。
イ 本件各記事の投稿による原告の公衆送信権侵害
(原告の主張)
 本件各写真はいずれも、以下のとおり、本件写真を複製又は翻案したものであるから、本件各写真を掲載した本件各記事を本件掲示板に投稿した行為は、原告の公衆送信権を侵害する。
(ア) 本件写真1及び2について
 本件写真1と本件写真を比較すると、写真の縦横比が僅かに異なるほかは、被写体であるA名誉会長の服装、髪型及び表情、並びに背景及びアングルが同一である。また、本件写真1のA名誉会長の額には本件写真には存在しない目が書き加えられているが、これだけでは本件写真と「同一性ある部分が新しい著作物の中で埋没してしまい、表現上の本質的な特徴を直接感得することができないほど色あせた状態」であるとは到底いえず、本件写真1からは、本件写真を撮影したBが、被写体であるA名誉会長の品格の高さや柔和で温厚な表情を引き立たせるために、背景、照明、光量、アングル、絞り等に工夫を加えた本件写真の表現上の本質的な特徴を直接感得することができる。したがって、本件写真1が本件写真を複製又は翻案したものであることは明白である。
 また、本件写真2は、本件写真1と同一のものであるから、上述のとおり、本件写真を複製又は翻案したものであるといえる。
(イ) 本件写真3ないし9について
 本件写真3は、本件写真1と比べて、A名誉会長の額に書き加えられた目の数が一つ少ないほかは、本件写真1と同一である。したがって、上記(ア)で述べたところと同様の理由により、本件写真3は本件写真を複製又は翻案したものであるといえる。
 また、本件写真4ないし9はいずれも、本件写真3と同一のものであるから、上述のとおり、本件写真を複製又は翻案したものであるといえる。
(ウ) 本件写真10ないし14について
 本件写真10は、本件写真1と比べて、A名誉会長の額に書き加えられた目の数が二つ少ないほかは、本件写真1と同一である。したがって、上記(ア)で述べたところと同様の理由により、本件写真10は本件写真を複製又は翻案したものであるといえる。
 また、本件写真11ないし14はいずれも、本件写真10と同一のものであるから、上述のとおり、本件写真を複製又は翻案したものであるといえる。
(エ) 本件写真15ないし18、20、24、26、29について
 本件写真15と本件写真を比較すると、A名誉会長の服装、髪型、表情、背景、アングル及び構図が同一である。したがって、本件写真15が本件写真を複製したものであることは明白である。
 また、本件写真16ないし18、20、24、26、29は、本件写真15と同一のものであるから、上述のとおり、本件写真を複製したものといえる。
(オ) 本件写真19、22、23、27について
 本件写真19と本件写真を比較すると、写真の縦横比が異なるほかは、A名誉会長の服装、髪型、表情、背景、アングルは全く同一である。また、本件写真19では、A名誉会長の目の周囲が茶色に、頬の皺が赤く塗られているが、これだけでは、本件写真と「同一性ある部分が新しい著作物の中で埋没してしまい、表現上の本質的な特徴を直接感得することができないほど色あせた状態」とは到底いえず、本件写真19からは本件写真の表現上の本質的な特徴を直接感得することができる。したがって、本件写真19が本件写真を複製又は翻案したものであることは明白である。
 また、本件写真22、23、27はいずれも、本件写真19と同一のものであるから、上述のとおり、本件写真を複製又は翻案したものであるといえる。
(カ) 本件写真21、25、28について
 本件写真21と本件写真を比較すると、写真の縦横比が異なるほかは、A名誉会長の表情、アングルは全く同一である。また、本件写真21では、A名誉会長の顔の周囲で写真が切り取られているが、これだけでは、本件写真と「同一性ある部分が新しい著作物の中で埋没してしまい、表現上の本質的な特徴を直接感得することができないほど色あせた状態」とは到底いえず、本件写真21からは本件写真の表現上の本質的な特徴を直接感得することができる。したがって、本件写真21が本件写真の複製又は翻案したものであることは明白である。
 また、本件写真25及び28はいずれも、本件写真21と同一のものであるから、上述のとおり、本件写真を複製又は翻案したものであるといえる。
(被告の主張)
 争う。
ウ 権利制限事由がないこと
(原告の主張)
 本件において、原告の公衆送信権を制限する事由は存在しない。
 被告は、本件各写真の掲載が、著作権法32条1項の引用に該当する余地があると主張するが、本件各記事中の記述は、いずれも本件各写真には何ら言及しておらず、本件各写真は、単に、本件各記事中の記述によりA名誉会長を揶揄し、その対象であるA名誉会長の容貌を晒すためだけに用いられたことは明白であるから、本件各記事において、本件各写真を引用する必要性、必然性はない。そして、本件各写真は、それ自体が鑑賞性、独立性を有しているものといえるから、本件各記事中の記述と本件各写真との間に主従の関係は認めることができず、本件各写真の引用が、引用の目的上必要最小限度の範囲内のものであるともいえない。
 したがって、本件各写真の掲載による公衆送信権侵害につき、著作権法32条1項の引用の主張は成立せず、その他原告の権利を制限する事由はない。
(被告の主張)
 争う。本件写真は既に公表されたものであり、本件各写真の掲載は、著作権法32条1項の引用としての利用に該当する可能性もある。
 本件各記事中には、「A大聖人のすばらしいところを伝えていく光の伝道師になりたいと思います。」(本件記事1)、「IQ134の日蓮大聖人を遥かに超える大聖人 大宇宙の最高指導者」(本件記事2)、「宇宙の中心者よりも態度が大きくて偉いということは、超宇宙的存在であり8次元以上の存在と思われる。宇宙外生命体の一種なのだろうか?」(本件記事5)、「A大聖人による「第4の目」の開眼は、日蓮大聖人でさえ成しえなかった人類史上初めてとなる大偉業である。『人類史上最大の大偉人』と全世界から称賛される理由である。」(本件記事6、7)、「A大聖人の珠玉のお言葉  A先生を全世界の人々が手本にして見習うべきですね。」(本件記事11)、「青春の志に生き抜く、大情熱の人生は崇高である。素晴らしいメッセージですね。A先生の若い青年に向けて心温かいお言葉ですね。A先生は若いうちにがむしゃれくに生きなさいと分かりやすく説明されています。先生を全席の人々が手本にして見習うべきですね。」(本件記事13)、「創価学会は永遠に不滅です。2014年も素晴らしく大活躍することは魔違いないでしょう」(本件記事29)など、原告ないしA名誉会長に対する意見、批評を記載したものということもできる記述があり、本件各写真は、意見、批評の対象を明示するために必要な資料として本件各記事に掲載されたものといえるから、引用としての利用に該当する余地もある。
(2) 開示を受けるべき正当な理由
(原告の主張)
 原告は、本件各記事を投稿した者に対し、著作権(公衆送信権)侵害の不法行為に基づき、損害賠償等を求めるため、被告に対し、投稿した者に係る本件発信者情報の開示を求めるものであるから、正当な理由がある。
(被告の主張)
 否認ないし争う。
第3 当裁判所の判断
1 前記前提事実等、後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
(1) 本件写真は、平成19年12月25日、その当時聖教新聞社に所属していたBが、A名誉会長を撮影したものであり、平成25年1月1日に聖教新聞社が発行した「グラフSGI 1月号」に掲載された。「グラフSGI」は、原告の機関誌であり、聖教新聞社が発行所として記載されている(甲6、8)。
(2) 聖教新聞社は、原告の機関誌その他の出版及び販売を行う原告の事業部門である(甲6)。
(3) 本件写真は、Bの思想、感情が創作的に表現された写真の著作物である(甲7)。
(4) 被告は、本件各記事が投稿された際の経由プロバイダであり、本件各記事に係る本件発信者情報を保有している(甲3、4、5の1、10)。
2 争点(1)(権利侵害の明白性)について
(1) 争点(1)ア(本件写真の職務著作該当性)について
 上記1(1)及び(2)で認定した事実に加え、本件写真の被写体が原告の名誉会長であるA名誉会長であること(前記前提事実(2)イ)を考慮すれば、本件写真がBにより個人的に撮影されたものであるとか、本件写真の撮影がBの発案で行われたものであるとは認め難い。そして、聖教新聞社は原告の一事業部門であるから、Bは、原告の業務に従事する原告の職員であり、その業務として本件写真を撮影したものといえ、本件写真は、聖教新聞社を発行者とする原告の機関誌に掲載され、原告の名義の下に公表されたものと認められる。そうすると、本件写真は、原告の発意により、原告の業務に従事する職員であったBが職務上撮影し、原告の名義の下に公表されたものと認めるのが相当であり、本件写真の著作者は、著作権法15条1項に基づき、原告であるといえる。
(2) 争点(1)イ(本件各記事の投稿による原告の公衆送信権侵害)について
 本件各写真は、以下のとおり、いずれも本件写真の複製物であるから、本件各記事を本件掲示板に投稿した行為は、原告の公衆送信権を侵害するものと認められる。
ア 本件写真1及び2
 本件写真1及び2(以下、これらを併せて「本件写真1等」という。)は同一の写真である(甲1の1、1の2)。そして、証拠(甲1の17)によれば、本件写真1等は、本件写真のうち、A名誉会長の肩から上の部分だけを切り出し、A名誉会長の額に大きさの異なる三つの目のような模様を縦に描き加えたものであると認めることができる。本件写真1等を見るに、上記のような違いはあるものの、本件写真におけるA名誉会長の表情をはっきりと確認することができることからすれば、本件写真1等からは、本件写真の表現上の本質的特徴を直接感得できるものと認めるのが相当である。一方で、上記の本件写真1等における本件写真からの改変部分に、新たな創作性が付加されていると認めることはできない。したがって、本件写真1等は本件写真の複製物である。
イ 本件写真3ないし9
 本件写真3ないし9(以下、これらを併せて「本件写真3等」という。)は同一の写真である(本件写真5とそれ以外の写真は縦横比が異なるが、写真としての同一性を失うまでのものとはいえない。)(甲1の3ないし1の9)。そして、証拠(甲1の3、7)によれば、本件写真3等は、本件写真のうち、被写体であるA名誉会長の肩から上の部分を切り出し、A名誉会長の額に大きさの異なる二つの目のような模様を縦に描き加えたものであると認めることができる。本件写真3等を見るに、上記のような違いはあるものの、本件写真におけるA名誉会長の表情をはっきりと確認することができることからすれば、本件写真3等からは、本件写真の表現上の本質的特徴を直接感得できるものと認めるのが相当である。一方で、上記の本件写真3等における本件写真からの改変部分に、新たな創作性が付加されていると認めることはできない。したがって、本件写真3等は本件写真の複製物である。
ウ 本件写真10ないし14
 本件写真10ないし14(以下、これらを併せて「本件写真10等」という。)は同一の写真である(本件写真10、12及び14と本件写真11及び13は縦横比が異なるが、写真としての同一性を失うまでのものとはいえない。)(甲1の10ないし1の14)。そして、証拠(甲1の10、7)によれば、本件写真10等は、本件写真のうち、被写体であるA名誉会長の肩から上の部分を切り出し、A名誉会長の額に目のような模様を描き加えたものであると認めることができる。本件写真10等を見るに、上記のような違いはあるものの、本件写真におけるA名誉会長の表情をはっきりと確認することができることからすれば、本件写真10等からは、本件写真の表現上の本質的特徴を直接感得できるものと認めるのが相当である。一方で、上記の本件写真10等における本件写真からの改変部分に、新たな創作性が付加されていると認めることはできない。したがって、本件写真10等は本件写真の複製物である。
エ 本件写真15ないし18、20、24、26、29
 本件写真15ないし18、20、24、26、29(以下、これらを併せて「本件写真15等」という。)は同一の写真である(甲1の15ないし1の18、1の20、1の24、1の26、1の29)。そして、証拠(甲1の15、7)によれば、本件写真15等は、本件写真と同一の写真であると認められるから、本件写真の複製物である。
オ 本件写真19、22、23、27
 本件写真19、22、23、27(以下、これらを併せて「本件写真19等」という。)は同一の写真である(甲1の19、1の22、1の23、1の27)。そして、証拠(甲1の19、7)によれば、本件写真19等は、本件写真のうち、被写体であるA名誉会長の首から上の部分を切り出し、A名誉会長の眼鏡の部分を茶色く塗り、頬の皺に沿って赤色の線を引いたものであると認められる。本件写真19等を見るに、上記のような違いはあるものの、未だ、本件写真におけるA名誉会長の表情を確認することができるものというべきであるから、本件写真19等からは、本件写真の表現上の本質的特徴を直接感得できるものと認めるのが相当である。一方で、上記の本件写真19等における本件写真からの改変部分に、新たな創作性が付加されていると認めることはできない。したがって、本件写真19等は本件写真の複製物である。
カ 本件写真21、25、28
 本件写真21、25、28(以下、これらを併せて「本件写真21等」という。)は同一の写真である(甲1の21、1の25、1の28)。そして、証拠(甲1の21、7)によれば、本件写真21等は、本件写真のうち、被写体であるA名誉会長の顔の部分のみを大きく切り出したものであることが認められる。本件写真21等を見るに、上記のような違いはあるものの、本件写真におけるA名誉会長の表情をはっきりと確認することができることからすれば、本件写真21等からは、本件写真の表現上の本質的特徴を直接感得できるものと認めるのが相当である。一方で、上記の本件写真21等における本件写真からの改変部分に、新たな創作性が付加されていると認めることはできない。したがって、本件写真21等は本件写真の複製物である。
(3) 争点(1)ウ(権利制限事由がないこと)について
 原告は、本件において、著作権法が規定する権利制限事由はないと主張するのに対し、被告は、本件各記事中の一部の記述(本件記事1ないし7、11、13、29に記載の記述)が、原告ないしA名誉会長に対する意見、批評に当たり、本件各写真はその対象であるA名誉会長を明示するために必要な資料として掲載されたものであるとして、本件各記事における本件各写真の掲載行為が著作権法32条1項の引用に該当する余地があると主張する。
 しかし、上記2で認定したとおり、本件写真1ないし7、11、13に掲載された写真には、本件写真の被写体であるA名誉会長の額に、一つないし三つの目のような模様が描き加えられていることからすれば、このような写真の掲載が、被写体であるA名誉会長に対する意見、批評のために、正当な範囲内で行われたものであると認めることはできない。また、上記2で認定したとおり、本件写真29は本件写真と同一であるものの、本件記事29の「創価学会は永遠に不滅です。2014年も素晴らしく大活躍することは魔違いないでしょう」との記述が、原告やA名誉会長に対する意見、批評に当たるとか、この記述のために本件写真29を掲載することが必要であったと認めることはできない。そして、本件各写真のうち上述したもの以外の写真については、被告において、その掲載が引用に当たることについて、具体的な主張をしておらず、これらの写真の掲載が引用に当たると認めることはできない。
 したがって、本件各写真の掲載が著作権法32条1項の引用に当たる余地があるという被告の主張は、採用することができない。
(4) 以上によれば、本件各記事の投稿により原告の権利が侵害されたことは明白である。
3 争点(2)(開示を受けるべき正当な理由)について
 弁論の全趣旨によれば、原告は、本件各記事を投稿した者に対して、本件写真に係る公衆送信権侵害の不法行為に基づき、損害賠償請求を行うため、上記投稿者の本件発信者情報の開示を求めていることが認められるから、原告には、本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるというべきである。
4 小括
 したがって、本件各記事の投稿により原告の権利が侵害されたことは明白であり、原告には本件発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるから、原告は、法4条1項に基づき、同項が規定する開示関係役務提供者に該当し、本件各記事が投稿された際の経由プロバイダとして本件発信者情報を保有する被告に対し、本件発信者情報の開示を求めることができる。
第4 結論
 以上によれば、原告の請求はいずれも理由があるから、これらを認容することとし、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第29部
 裁判長裁判官 嶋末和秀
 裁判官 鈴木千帆
 裁判官 本井修平は、転補のため署名押印することができない。
裁判長裁判官 嶋末和秀


別紙 発信者情報目録
 別紙投稿記事目録記載の記事(以下「侵害情報」という)に関する以下の情報
1 発信者その他侵害情報の送信に係る者の氏名又は名称
2 発信者その他侵害情報の送信に係る者の住所
3 発信者の電子メールアドレス(電子メールの利用者を識別するための文字、番号、記号その他の符号)
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日本ユニ著作権センター
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