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【事件名】レンタルフォトの画像無断使用事件
【年月日】平成27年4月15日
 東京地裁 平成26年(ワ)第24391号 損害賠償請求事件
 (口頭弁論終結日 平成27年2月16日)

判決
原告 株式会社アマナイメージズ(以下「原告アマナイメージズ」という。
原告 A(以下「原告A」という。
原告 B(以下「原告B」という。
原告 C(以下「原告C」という。
上記4名訴訟代理人弁護士 野間自子
同 浅田登志雄
被告 弁護士法人ボストン法律経済事務所
同訴訟代理人弁護士 小幡靖弥


主文
1 被告は、原告アマナイメージズに対し、19万6400円及びこれに対する平成26年1月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告は、原告Aに対し、4万6000円及びこれに対する平成26年1月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告は、原告Bに対し、2万9800円及びこれに対する平成26年1月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 被告は、原告Cに対し、1万1000円及びこれに対する平成26年1月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
6 訴訟費用は、原告アマナイメージズと被告との間に生じた費用については、これを10分し、その3を同原告の負担、その余を被告の負担とし、原告Aと被告との間に生じた費用については、これを5分し、その4を同原告の負担、その余を被告の負担とし、原告Bと被告との間に生じた費用については、これを20分し、その17を同原告の負担、その余を被告の負担とし、原告Cと被告との間に生じた費用については、これを20分し、その19を同原告の負担、その余を被告の負担とする。
7 この判決は、第1項ないし第4項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求
1 被告は、原告アマナイメージズに対し、28万1440円及びこれに対する平成25年7月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 被告は、原告Aに対し、22万1600円及びこれに対する平成25年7月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被告は、原告Bに対し、21万7280円及びこれに対する平成25年7月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 被告は、原告Cに対し、21万7280円及びこれに対する平成25年7月5日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
1 事案の要旨
 本件は、被告が、平成25年7月5日から平成26年1月15日までの期間、別紙写真目録記載1ないし6の各写真(以下、同目録記載の番号に従い「本件写真1」などといい、これらを併せて「本件各写真」という。)を「BOSTON law firm(ボストンローファーム)」の名称で被告が運営するウェブサイト(以下「被告ウェブサイト」という。URLは、<以下略>である。)に掲載したことに関して、本件写真の著作権者、独占的利用権者又は著作者であると主張する原告らが、被告に対し、それぞれ、次のとおり、不法行為に基づく損害賠償請求をするとともに、当該請求の一部と選択的に不当利得返還請求をした事案である。
 被告は、請求棄却を求め、主として、故意・過失、損害及び利得について、争った。
(1) 原告アマナイメージズ(本件写真1及び2の著作権者、本件写真3ないし6の著作権の独占的利用権者)(前記第1の1)
ア 不法行為による損害賠償請求(民法715条1項又は709条)
(ア) 損害賠償金28万1440円(下記@ないしBの合計)
@ 本件写真1及び2の著作権(複製権、公衆送信権)の侵害による損害8万6400円(本件写真1及び2につき各4万3200円)
A 本件写真3ないし6の著作権(複製権、公衆送信権)に係る独占的利用権(及び本件営業権〔後に定義する。〕)の侵害による損害9万5040円(本件写真3及び4につき各2万1600円、本件写真5及び6につき各2万5920円)
B 弁護士費用10万円
(イ) 上記(ア)に対する平成25年7月5日(不法行為開始日)から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金
イ 不当利得返還請求(民法703条及び704条前段、上記ア(ア)@及びA並びにこれらに対する遅延損害金との選択的請求)
(ア) 不当利得金18万1440円(下記@及びAの合計)
@ 本件写真1及び2の著作権(複製権、公衆送信権)に係る利得8万6400円(本件写真1及び2につき各4万3200円)
A 本件写真3ないし6の著作権(複製権、公衆送信権)に係る独占的利用権に係る利得9万5040円(本件写真3及び4につき各2万1600円、本件写真5及び6につき各2万5920円)
(イ) 上記(ア)に対する平成25年7月5日(利得行為開始日)から支払済みまでの年5分の割合による法定利息
(2) 原告A(本件写真3及び4の著作権者・著作者)(前記第1の2)
ア 不法行為による損害賠償請求(民法715条1項又は709条)
(ア) 損害賠償金22万1600円(下記@ないしBの合計)
@ 本件写真3及び4の著作権(複製権、公衆送信権)の侵害による損害2万1600円(本件写真3及び4につき各1万0800円)
A 本件写真3及び4の著作者人格権(氏名表示権)の侵害による慰謝料10万円
B 弁護士費用10万円
(イ) 上記(ア)に対する平成25年7月5日(不法行為開始日)から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金
イ 不当利得返還請求(民法703条及び704条前段、上記ア(ア)@及びこれに対する遅延損害金との選択的請求)
(ア) 不当利得金2万1600円
 ただし、本件写真3及び4の著作権(複製権、公衆送信権)に係る利得(本件写真3及び4につき各1万0800円)
(イ) 上記(ア)に対する平成25年7月5日(利得行為開始日)から支払済みまでの年5分の割合による法定利息
(3) 原告B(本件写真5の著作権者・著作者)(前記第1の3)
ア 不法行為による損害賠償請求(民法715条1項又は709条)
(ア) 損害賠償金21万7280円(下記@ないしBの合計)
@ 本件写真5の著作権(複製権、公衆送信権)の侵害による損害1万7280円
A 本件写真5の著作者人格権(氏名表示権)の侵害による慰謝料10万円
B 弁護士費用10万円
(イ) 上記(ア)に対する平成25年7月5日(不法行為開始日)から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金
イ 不当利得返還請求(民法703条及び704条前段、上記ア(ア)@及びこれに対する遅延損害金との選択的請求)
(ア)  不当利得金1万7280円
 ただし、本件写真5の著作権(複製権、公衆送信権)に係る利得
(イ) 上記(ア)に対する平成25年7月5日(利得行為開始日)から支払済みまでの年5分の割合による法定利息
(4) 原告C(本件写真6の著作権者・著作者)(前記第1の4)
ア 不法行為による損害賠償請求(民法715条1項又は709条)
(ア) 損害賠償金21万7280円(下記@ないしBの合計)
@ 本件写真6の著作権(複製権、公衆送信権)の侵害による損害1万7280円
A 本件写真6の著作者人格権(氏名表示権)の侵害による慰謝料10万円
B 弁護士費用10万円
(イ) 上記(ア)に対する平成25年7月5日(不法行為開始日)から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金
イ 不当利得返還請求(民法703条及び704条前段、上記ア(ア)@及びこれに対する遅延損害金との選択的請求)
(ア) 不当利得金1万7280円
 ただし、本件写真6の著作権(複製権、公衆送信権)に係る利得
(イ) 上記(ア)に対する平成25年7月5日(利得行為開始日)から支払済みまでの年5分の割合による法定利息
2 原告らの主張
 原告らは、請求原因及び重要な間接事実、並びに被告の主張に対する反論として、次のとおり述べた。
(1) 原告ら及びその権利
ア 原告アマナイメージズは、昭和59年10月25日に設立されたビジュアル・コミュニケーション事業、エンタテインメント映像事業等を行う株式会社であり、その運営に係るウェブサイト(以下「原告ウェブサイト」という。URLは、<以下略>である。)において、写真、イラスト、映像素材など2500万点以上のコンテンツを揃えて、利用者がこれらのコンテンツを購入、ダウンロードできるサービス(以下「本件サービス」といい、これに係る原告アマナイメージズの営業権を「本件営業権」という。)を提供している(甲1)。
イ 原告A、原告B及び原告C(以下、この3名を併せて「原告Aら」という。)は、いずれも写真家である。
ウ 本件各写真は、いずれも写真の著作物である。
エ 本件写真1及び2の著作者(撮影者)は、D1ことD(以下「D」という。)であるところ、原告アマナイメージズは、平成20年3月17日までに、Dから、これらの写真の著作権を譲り受け(甲3、4)、本件サービスに供している。
オ A1こと原告Aは、本件写真3及び4の著作者(撮影者)であり、これらの写真の著作権及び著作者人格権を有する。原告アマナイメージズは、平成20年10月1日、株式会社アイリード(以下「アイリード」という。)を通じ、原告Aからこれらの写真の著作権につき、それぞれ独占的利用権の許諾を受け(甲5、6、14の1・2)、本件サービスに供している。
カ B1こと原告Bは、本件写真5の著作者(撮影者)であり、同写真の著作権及び著作者人格権を有する。原告アマナイメージズは、平成15年7月13日、原告Bから同写真の著作権につき独占的利用権の許諾を受け(甲7、15)、本件サービスに供している。
キ C1こと原告C(ペンネームC2)は、本件写真6の著作者(撮影者)であり、同写真の著作権及び著作者人格権を有する。原告アマナイメージズは、平成18年9月8日、原告Cから同写真の著作権につき独占的利用権の許諾を受け(甲8)、本件サービスに供している。
ケ 本件サービスに供する写真その他のコンテンツは、使用媒体・使用期間・エンドユーザーの履歴を管理しているライツマネージドとよばれる種類の作品(以下「RM作品」という。)とエンドユーザーの履歴を管理せず、他社でも販売しているロイヤリティフリーとよばれる作品(以下「RF作品」という。)とからなるが、原告アマナイメージズは、本件各写真(本件写真1及び2については、上記エのとおり、原告アマナイメージズが当該写真の著作権を有しており、本件写真3ないし6については、上記オないしキのとおり、原告アマナイメージズが当該写真の著作権を独占的に利用する権限〔第三者に再利用許諾する権限を含む。〕を有している。)をRM作品として本件サービスに供している。
(2) 被告及びその行為
ア 被告は、訴訟事件、非訟事件及び行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他の一般の法律事務等を目的とし、平成24年9月3日に設立された弁護士法人である(甲2)。
イ 被告又は被告の被用者であるE1ことE(以下「E」という。)は、本件各写真(なお、本件写真3ないし6につき、著作者の氏名が表示されることはなかった。)を別紙「被告ウェブサイトにおける使用態様」に示される態様により、少なくとも平成25年7月5日から平成26年1月15日までの期間、被告ウェブサイトに掲載した。
(3) 侵害行為及び故意・過失
ア 被告又はその被用者であるEの上記(2)イの行為は、下記イのとおり、原告らの権利を侵害するものであり、被告又はEには、後記ウのとおり、当該侵害につき故意又は少なくとも過失があるから、被告は、民法709条又は同法715条1項により、原告らに生じた損害を賠償する義務を負う。
イ(ア) 本件写真1及び2の掲載により、原告アマナイメージズが有する本件写真1及び2の著作権(複製権、公衆送信権)が侵害された。
(イ) 本件写真3及び4の掲載により、原告Aが有するこれらの写真の著作権(複製権、公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権)が侵害され、また、原告アマナイメージズが有するこれらの写真の著作権に係る独占的利用権及び本件営業権が侵害された。
(ウ) 本件写真5の掲載により、原告Bが有する同写真の著作権(複製権、公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権)が侵害され、また、原告アマナイメージズが有する同写真の著作権に係る独占的利用権及び本件営業権が侵害された。
(エ) 本件写真6の掲載により、原告Cが有する同写真の著作権(複製権、公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権)が侵害され、また、原告アマナイメージズが有する同写真の著作権に係る独占的利用権及び本件営業権が侵害された。
ウ 一般に、他人の著作物を利用するには、その著作権者の許諾を得ることが必要であるから(著作権法63条1項及び2項)、他人の著作物を利用しようとする者は、当該著作物に係る著作権の帰属等について調査・確認する義務がある(なお、被告は、法律上の専門的知識を有する弁護士法人であるから、更に高度の注意義務がある。)。したがって、被告(端的に法人としての被告について検討すればよく、その代表者について検討する必要はない。)又はEには、本件各写真の掲載に関し、少なくとも本件各写真に係る著作権その他の権利(以下「著作権等」という。)について調査・確認する義務を怠ったという過失がある。
 のみならず、@被告又はEは、本件サービスにおいて、RM作品として供されている本件各写真のほかに、RF作品として供されているコンテンツ6点をも利用していること、A原告ウェブサイトにアクセスした者が利用料金を支払うことなく、画像の見本(以下「サムネイル画像」という。)をコピーしようとした場合、「作品の本使用には料金が発生します。事前に使用条件をご確認ください。」との注意事項が表示されるため、本件各写真が使用料無料のコンテンツ(以下「フリー素材」という。)を扱うウェブサイト等(以下「フリーサイト」という。)に掲載されることは、あり得ないこと、B被告は、Eがフリーサイトから本件各写真を取得した旨主張するものの、具体的にどのフリーサイトから本件各写真を取得したのかを明らかにしていないことからすれば、被告又はEが本件各写真をフリーサイトから取得したとは到底考えられないところであって、原告ウェブサイトから「作品の本使用には料金が発生します」との注意事項を十分認識した上で不正に本件各写真を直接コピーしたか、「YAHOO!」等のウェブサイトの画像検索結果から本件各写真をダウンロードした蓋然性が極めて高いのであって、被告又はEには、本件各写真の無断利用につき故意があるか、本件各写真の著作権等について調査・確認する義務を怠ったという重大な過失がある。
(4) 損害額等
ア 著作権侵害又は独占的利用権及び本件営業権侵害による損害額
(ア) 被告は、少なくとも平成25年7月5日から平成26年1月15日まで6か月を超える期間にわたり、被告ウェブサイト上で本件各写真を利用した。本件各写真は、いずれもRM作品であり、6か月超12か月以内の期間の利用料金は、1作品4万3200円(消費税8パーセント込)である(著作権侵害による損害賠償金は、消費税の課税対象となるから、損害額は、税込で算定すべきである。)。
(イ) 本件写真1及び2について、その著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額(著作権114条3項)は、原告アマナイメージズにつき合計8万6400円(税込)となる。
(ウ) 原告Aは、本件写真3及び4につき、原告Bは、本件写真5につき、原告Cは、本件写真6につき、それぞれ原告アマナイメージズに独占的利用権を許諾しているところ、原告アマナイメージズは、本件写真3ないし6につき利用料金を得た場合には、次のとおり原告Aらに分配することになっている。
@ 本件写真3及び4については、原告Aが利用料金の25パーセント相当額を受け取る(原告アマナイメージズは、アイリードに利用料金の50パーセントを支払い、アイリードが原告Aにその2分の1を支払う。)。
A 本件写真5については、原告Bが利用料金の40パーセント相当額を受け取る。
B 本件写真6については、原告Cが利用料金の40パーセント相当額を受け取る。
 したがって、本件写真3及び4について、その著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額は、原告Aにつき合計2万1600円(税込)、原告アマナイメージズにつき合計4万3200円(税込)となり、本件写真5について、その著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額は、原告Bにつき1万7280円(税込)、原告アマナイメージズにつき2万5920円(税込)となり、本件写真6について、その著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額は、原告Cにつき1万7280円(税込)、原告アマナイメージズにつき2万5920円(税込)となる。
(エ) したがって、損害賠償金の額は、次の表のとおり、原告アマナイメージズにつき合計18万1440円、原告Aにつき合計2万1600円、原告Bにつき1万7280円、原告Cにつき1万7280円である。
                                (単位:円・税込)
  種類 原告
アマナイメージズ
原告
原告
原告
合計
本件写真1 RM 43,200       43,200
本件写真2 RM 43,200       43,200
本件写真3 RM 21,600 10,800     32,400
本件写真4 RM 21,600 10,800     32,400
本件写真5 RM 25,920   17,280   43,200
本件写真6 RM 25,920     17,280 43,200
合計(税込)   181,440 21,600 17,280 17,280 237,600
イ 著作者人格権侵害による慰謝料
 被告は、被告の広告・宣伝のために営利目的で開設した被告ウェブサイトにおいて、6か月を超える長期間にわたり本件写真3ないし6を無断利用したものであり、著作者人格権の悪質な侵害態様に照らし、原告Aらの慰謝料としては、それぞれ10万円を下らない。
ウ 弁護士費用
 原告らは、被告による著作権等の侵害行為のため本訴提起を余儀なくされ、弁護士に訴訟を委任した。本件では、訴訟前から弁護士に対応を委任することにより、損害賠償のみならず、被告が再び本件各写真を被告ウェブサイト上で利用する等の新たな著作権侵害を防止して、事実上差止請求が認容されるのと同様の効果をもたらしたものであって、原告らが負担する弁護士費用はそれぞれ10万円を下らない。
エ 小括
 以上より、原告らが被告に請求する損害賠償金は、次のとおりとなる。
 なお、原告らは、被告に対し、附帯請求として、損害賠償金に対する平成25年7月5日(不法行為開始日)から支払済みまでの民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を併せて求める。
(ア) 原告アマナイメージズ  28万1440円
(イ) 原告A  22万1600円
(ウ) 原告B  21万7280円
(エ) 原告C  21万7280円
オ 不当利得返還請求(著作権侵害又は独占的利用権及び本件営業権侵害による損害額に係る請求〔附帯請求を含む。〕との選択的請求)
 本件各写真を利用するには、本件写真1及び2の著作権者であり、本件写真3ないし6の独占的利用権者である原告アマナイメージズの許諾を受けて、正当な対価(原告アマナイメージズの定めた利用料金)を支払う必要があるところ、被告は、当該許諾を受けず、正当な対価を支払うこともなく、被告ウェブサイト上に本件各写真を掲載したものであるから、被告は、法律上の原因に基づかずに、原告らの財産によって利益を受けたものであり、これによる原告らの損失(被告の不当利得金の額)は、上記アのとおり、原告アマナイメージズにつき合計18万1440円、原告Aにつき合計2万1600円、原告Bにつき1万7280円、原告Cにつき1万7280円であるから、原告らは、それぞれ、被告に対し、上記不当利得金の支払を求める。
 なお、被告は、著作権を含む権利関係について一般人よりもはるかに法律上の専門的知識を有している弁護士法人であり、他人の著作物を利用するには、その著作権者の許諾を得ることが必要であることを当然認識していたはずであるから、本件各写真を利用する正当な権原がないことを知っていたか、少なくとも重大な過失があり、悪意の受益者(民法第704条)に当たるから(最高裁判所昭和49年9月26日判決・民集28巻6号1243頁参照)、原告らは、それぞれ、附帯請求として、不当利得金に対する平成25年7月5日(利得開始後の日)から支払済みまでの年5分の割合による法定利息の支払を併せて求める。
(5)  失相殺の主張に対する反論
 ホームページ上で見本用のサムネイル画像をコピーできるようにしておくことは、写真を利用しようとする顧客において購入を検討する際に必要となるため、原告アマナイメージズのみならず、競合他社でも通常行っているところであり、また、原告アマナイメージズは、第三者がサムネイル画像をコピーしようとした際に、「作品の本使用には料金が発生します。事前に使用条件をご確認ください。」との注意事項が表示される措置を講じているところであるから、過失相殺は許されない。
3 被告の主張
 被告は、原告らの主張に対する認否及び被告の主張(抗弁等)として、次のとおり述べた。
(1) 原告らの主張(1)に対する認否
 不知。
 ただし、原告らが本件各写真の著作権等を保有等していることを積極的に争うものではない。
(2) 原告らの主張(2)に対する認否
ア 原告らの主張(2)アは、認める。
イ 原告らの主張(2)イは、認める(ただし、実行行為者は、被告の従業員のEである。)。
(3) 原告らの主張(3)について
ア 認否
 事実については不知ないし否認し、主張については争う(なお、法人である被告の故意・過失は、代表者について検討すべきである。)。
 なお、被告は、被告が管理するサーバーに写真データを入力し、被告ウェブサイト上に本件各写真を掲載したものであり、被告ウェブサイトの閲覧者が被告ウェブサイトを見るときに写真のデータが自動送信されて閲覧者のパソコンに表示されることになるものであるから、本件では、自動公衆送信(著作権法2条1項9号の4)又は送信可能化(著作権法2条1項9号の5)が問題となるにすぎない。
 また、本件では、ホームページ作成者としての注意義務を問題とすべきであって、被告ウェブサイトの作成者が弁護士法人の職員であるとか、同サイトが弁護士法人の運営に係るものであるという理由で、注意義務の程度が加重されるものではない。ところで、被告ウェブサイトを作成するに当たり、同サイトに本件各写真を掲載したのは、被告の従業員のEであるが、同人は、第三者が原告アマナイメージズから購入し、又は何らかの方法で取得した後、フリー素材としてウェブサイト上に流出させたものを「フリー素材である」と誤信したものと思われる(Eは、被告ウェブサイトのデザインを検討するうえで、様々なところから写真を取得しており、かつ、既に一定期間経過していることから、本件各写真のデータをどのように手に入れたか記憶していないが、ヤフーやグーグルの画像検索をした結果表示されるサムネイル画像をコピーして写真を集めたことはなく、本件各写真についてもそのような方法で取得したものではない。)。Eは、ホームページの作成に当該写真を使うことにより経済的利益を侵害したものの、著作権者の身体・人格権等の侵害を行ったものではないこと、本件各写真には原告らの著作物であることを示す情報(以下「識別情報」という。)がなく、原告らの著作物である旨の認識がないことから、過失は認められない(著作物に識別情報が存在していないにもかかわらず、調査義務があるとすれば、ウェブサイト上に存在する写真を使用・取得する場合には、原告らだけでなく、写真家その他の映像事業等を生業とするすべての者に対して権利侵害の有無を確認しなければならないという不可能を強いられることになり、フリー素材を使用することが事実上できなくなり、表現の自由〔憲法21条〕が侵害される。一般的にも、フリー素材を使用することが禁止されているわけではなく、著作権侵害であると注意を受ければ写真を削除する注意義務があるとされており、被告はこれに従い、原告らの指摘の後、速やかに本件各写真を被告ウェブサイトから削除している。)。
イ 著作者人格権侵害に対する被告の主張
 原告Aらは、その氏名が表示されない状態で本件写真3ないし6が使用されることを認めていたのであるから、著作権法19条3項により氏名表示権の侵害は成立しない。
(4) 原告らの主張(4)について
ア 認否
 事実については不知ないし否認し、主張については争う。
 なお、著作権法114条3項にいう、その著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額とは、客観的に相当な使用料相当額であり、その算定には、業界の一般相場、権利者の他の使用許諾契約、著作物使用料規定等が使用されるが、正規の使用料にとらわれる必要はないところ、原告ら主張の使用料金は、他社と比べて高額であり、仮に、原告らの請求が認められるとしても、その半額程度が相当である。
 また、原告Aらは、慰謝料の請求もするが、本件では、財産的損害とは別に、賠償に値する精神的損害を受けたというような特段の事情はないから、当該請求は認められない。
 さらに、原告Aらが原告ら代理人の弁護士との間で着手金を支払う等の約束をしたとは考えにくい。仮に、弁護士費用の請求が認められるとしても、認容額の10パーセント程度が相当である。
イ 不法行為による損害賠償請求に対する被告の主張(過失相殺)
 原告ウェブサイトには、サムネイル画像をコピーして写真を集めることができるという欠陥があり、また、同サイト上の写真自体には識別情報がなく、流出した場合に著作権の帰属が不明となる問題があったから、仮に、原告らの請求が認められるとしても、過失相殺がされるべきである(民法722条2項)。
第3 当裁判所の判断
1 原告らの主張(1)について
 証拠(甲1、3ないし8)及び弁論の全趣旨によれば、原告らの主張(1)に係る事実関係は、いずれも認められる。
2 原告らの主張(2)について
 原告らの主張(2)ア、及び原告らの主張(2)イのうち、被告の被用者であるEが本件各写真を別紙「被告ウェブサイトにおける使用態様」に示される態様により、平成25年7月5日から平成26年1月15日までの期間、被告ウェブサイトに掲載したこと、被告ウェブサイトに掲載された本件写真3ないし6につき著作者の表示をしない状態であったことは、当事者間に争いがない。
3 原告らの主張(3)について
(1) 侵害行為について
ア 著作権(複製権、公衆送信権)の侵害について
 前記1及び2によれば、被告の被用者であるEが行った本件各写真の被告ウェブサイトへの継続的な掲載行為(以下「本件掲載行為」という。)によって、@原告アマナイメージズが有する本件写真1及び2の著作権(複製権、公衆送信権)が侵害されたこと、A原告Aが有する本件写真3及び4の著作権(複製権、公衆送信権)が侵害されたこと、B原告Bが有する本件写真5の著作権(複製権、公衆送信権)が侵害されたこと、C原告Cが有する本件写真6の著作権(複製権、公衆送信権)が侵害されたことが認められる。
 この点、被告は、問題となるのは専ら公衆送信権であって、複製権でない旨主張するようであるが、本件写真を複製することなく、被告ウェブサイトに本件各写真を掲載することは不可能であり、本件掲載行為に伴って本件各写真が複製されたことは明らかというべきである(すなわち、被告の被用者であるEは、何らかの手段により本件各写真を複製し、これを公衆の用に供されている電気通信回線に接続された自動公衆送信装置に入力したはずである。)から、被告の上記主張は採用することができない。
イ 独占的利用権の侵害について
 前記1によれば、原告アマナイメージズは、原告Aらから本件写真3ないし6の著作権の独占的利用権の許諾を受け、当該著作権を独占的に利用する権限(第三者に再利用許諾する権限を含む。)を有する者であることが認められる。
 したがって、原告アマナイメージズは、事実上、第三者との関係において本件写真3ないし6の複製物を販売することによる利益を独占的に享受し得る地位にあると評価することができるところ、このような事実状態に基づき同原告が享受する利益は、法的保護に値するものというべきである。
 そして、前記2によれば、本件掲載行為により、原告アマナイメージズの上記利益(本件写真3ないし6の著作権の独占的利用権)が侵害されたことが認められる。
ウ 本件営業権の侵害について
 原告アマナイメージズは、本件営業権が侵害された旨の主張もするが、上記イで検討した本件写真3ないし6の著作権の独占的利用権とは別個独立の法的保護に値する同原告の利益が侵害されたとは認められない。
エ 著作者人格権の侵害について
(ア) 前記1、2によれば、本件掲載行為により、@原告Aが有する本件写真3及び4の著作者人格権(氏名表示権)が侵害されたこと、A原告Bが有する本件写真5の著作者人格権(氏名表示権)が侵害されたこと、C原告Cが有する本件写真6の著作者人格権(氏名表示権)が侵害されたことが認められる。
(イ) この点、被告は、原告Aらがその氏名表示のない状態で本件写真3ないし6が使用されることを認めていたとか、著作権法19条3項により著作者人格権の侵害は成立しないなどと主張する。
 しかし、原告Aらにおいて、その著作物が違法に利用されるような場合についてまで、氏名の表示を省略することを承諾していたと認めるに足りる証拠はない。
 また、同項は、「著作物の利用の目的及び態様に照らし著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれがないと認められるとき」であって、かつ、「公正な慣行に反しない限り」において、著作者の氏名の表示を省略することができる旨を定めたものであるところ、原告Aらは、本件掲載行為に関し、「創作者であることを主張する利益」を害されているというべきであるし、本件掲載行為が「公正な慣行に反しない」と認めるに足りる証拠もない。
 したがって、被告の上記主張は、採用することができない。
(2) 故意・過失について
ア 被告の被用者であるEは、前記(1)アのとおり、本件掲載行為に際し、何らかの手段により本件各写真を複製し、これを公衆の用に供されている電気通信回線に接続された自動公衆送信装置に入力したものであって、本件各写真を複製し、送信可能化した直接の主体者である。
イ Eがどのような手段により本件各写真にアクセスしたのかは明らかでないが、証拠(乙2、24)及び弁論の全趣旨によれば、Eは、ホームページを作成する会社に勤務してホームページ作成技術を学んだ後、平成20年に独立してホームページの作成を業務として行うようになり、平成21年にコンピューターシステムの設計、開発及び販売のほか、インターネットのホームページの作成、企画、立案及び運営などを目的とする株式会社オプティクリエイションを設立して、平成24年まで同社の事業としてホームページの作成業務を行っていたところ、同年10月からは、弁護士法人である被告の従業員として被告ウェブサイトの作成業務を担当していたことが認められるから、このようなEの経歴及び立場に照らせば、Eは、本件掲載行為によって著作権等の侵害を惹起する可能性があることを十分認識しながら、あえて本件各写真を複製し、これを送信可能化し、その際、著作者の氏名を表示しなかったものと推認するのが相当であって、本件各写真の著作権等の侵害につき、単なる過失にとどまらず、少なくとも未必の故意があったと認めるのが相当というべきである。
ウ この点、被告は、フリーサイトから写真等を入手する際に、識別情報のない著作物についてまで権利関係の調査を要するとすれば、表現の自由(憲法21条)が害されるとし、警告を受けて削除すれば足りるかのような主張をする。
 しかし、仮に、Eが本件写真をフリーサイトから入手したものだとしても、識別情報や権利関係の不明な著作物の利用を控えるべきことは、著作権等を侵害する可能性がある以上当然であるし、警告を受けて削除しただけで、直ちに責任を免れると解すべき理由もない。被告の上記主張は、いずれも独自の見解に基づくものであって、採用することができない。
エ 以上検討したところによれば、被告の被用者であるEは、被告の業務に関する広告のため、本件掲載行為に及んだものと認められるから、被告は、民法715条1項に基づき、使用者責任を負うものというべきである(したがって、原告らの民法709条の主張については、判断を要しない〔民法709条について検討しても、認定し得る損害額が後記4で認定する損害額を超えるものではない。〕)。
4 原告らの主張(4)について
(1) 著作権又は独占的利用権の侵害による損害について
ア(ア) 前記1、2に加え、証拠(甲13、17、21の1ないし6)及び弁論の全趣旨によれば、本件各写真は、いずれも原告ウェブサイトにおいてRM作品として提供されるコンテンツであり、本件掲載行為の態様及び期間(6か月を超える期間である。)に対応する正規の使用料金(同原告は、通常、税抜の使用料金に消費税を加えたものを購入者から受領していると認められ、本件掲載行為の期間中の消費税の税率が5パーセントであることは公知であり、8パーセントとすべき理由はない。)は、1作品につき4万2000円(税込。以下、同じ。)であることが認められるから、その著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額(著作権法114条3項)は、これを下回るものではないと認めるのが相当である。
(イ) この点、被告は、原告アマナイメージズの使用料金が著作権法114条3項のその著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額を上回る旨主張するようである。
 しかし、前記1に加え、証拠(甲1、27の2、27の5、28の2、29、乙22)及び弁論の全趣旨によれば、原告アマナイメージズは、原告ウェブサイト上で、写真、イラスト、映像素材など2500万点以上のコンテンツを揃えて、利用者がこれらのコンテンツを購入、ダウンロードできる本件サービスを提供するなど、相当な市場開発努力をしているばかりか、当該市場において相当程度の信頼を勝ち取っていることが認められるのであり、また、その使用料金が当該市場において特に高額なものとも認められない。したがって、被告の上記主張は、採用することができない。
イ そうすると、本件写真1及び2の著作権(複製権、公衆送信権)の侵害による原告アマナイメージズの損害は、合計8万4000円(本件写真1及び2につき各4万2000円)と認められる。
ウ(ア) 原告アマナイメージズが有する本件写真3ないし6の著作権の独占的利用権が法的保護に値するものであることは、前記3(1)イのとおりであり、同原告は、被告に対して、当該独占的利用権の侵害による損害賠償請求をし得るというべきところ、同原告が、事実上、本件写真3ないし6の複製物を販売することによる利益を独占的に享受し得る地位にあり、その限りで、著作物を複製する権利を専有する著作権者と同様の立場にあることに照らせば、同原告の損害額の算定に当たり、著作権法114条3項を類推適用することができると解するのが相当である。
(イ) 前記1に加え、証拠(甲14の1・2)及び弁論の全趣旨によれば、本件写真3及び4については、原告アマナイメージズが収受する利用料金の50パーセントを同原告が取得し、残りの50パーセントを同原告からアイリードが収受すること、原告Aは、アイリードが収受した金員の50パーセント(原告アマナイメージズが収受する利用料金の25パーセント)を取得することが認められる。
 そうすると、本件写真3及び4の著作権(複製権、公衆送信権)の侵害による原告Aの損害は、2万1000円(本件写真3及び4につき各1万0500円)であり、同著作権の独占的利用権の侵害による原告アマナイメージズの損害は、合計4万2000円(本件写真3及び4につき各2万1000円)であるというべきである。
(ウ) 前記1に加え、証拠(甲15)及び弁論の全趣旨によれば、本件写真5については、原告アマナイメージズが収受する使用料金の60パーセントを同原告が取得し、残りの40パーセントを原告Bが取得することが認められる。
 そうすると、本件写真5の著作権(複製権、公衆送信権)の侵害による原告Bの損害は、1万6800円であり、同著作権の独占的利用権の侵害による原告アマナイメージズの損害は、2万5200円であるというべきである。
(エ) 前記1に加え、証拠(甲16、19、20)及び弁論の全趣旨によれば、本件写真6については、原告アマナイメージズが収受する使用料金の60パーセントを同原告が取得し、残りの40パーセントを株式会社Cスタジオ(以下「Cスタジオ」という。)に支払われることが認められるが、原告Cと同人が代表取締役を務めるCスタジオが法人格を異にすることは明らかであるところ、本件全証拠によるも、原告CとCスタジオとの間にいかなる取り決めがあるかは不明である(仮に、原告アマナイメージズからCスタジオに支払われる金員の全部又は一部を原告Cが取得することとされているのであれば、同原告は、容易にその立証をし得るはずであるが、同原告がこれを行わないのは、不可解である。)。
 そうすると、本件写真5の著作権(複製権、公衆送信権)の侵害による原告Cの損害は、その証明がなく、同著作権の独占的利用権の侵害による原告アマナイメージズの損害は、2万5200円であるというべきである。
エ 以上より、著作権又は独占的利用権の侵害による原告らの損害は、原告アマナイメージズにつき合計17万6400円、原告Aにつき合計2万1000円、原告Bにつき1万6800円となり、原告Cについては認められない。
(2) 著作者人格権の侵害による損害について
ア 前記1、2により認められる被告ウェブサイトにおける本件写真3ないし6の掲載期間、使用態様等にかんがみると、原告Aらの著作者人格権の侵害による損害として、本件写真3ないし6の著作者人格権の侵害による慰謝料としては、1作品につき1万円とするのが相当である。
 したがって、著作者人格権の侵害による原告Aらの損害は、原告Aにつき2万円、原告Bにつき1万円、原告Cにつき1万円となる。
イ この点、被告は、財産的損害の賠償と別途に賠償に値する精神上の損害を受けたというような特段の事情がない限り、慰謝料の請求は認められない旨主張する。
 しかし、原告Aらは、著作者人格権の侵害に基づく慰謝料を請求しているのであって、財産権たる著作権侵害による慰謝料を請求しているものではない。もともと著作権法の規定する著作者人格権は、著作物の創作者として著作者が有する名誉権等の人格的利益を保護する権利であり、その侵害行為によって生ずる損害は財産以外の損害(民法710条)であるから、被告の上記主張は、主張自体失当である。
(3) 過失相殺について
 被告は、原告ウェブサイトには、サムネイル画像(画像検索により表示される小さな画像)をコピーして写真を集めることができるという欠陥があり、また、同サイト上の写真自体に識別情報がなく、流出した場合に著作権の帰属が不明となる問題があったとして、過失相殺を主張する。
 しかし、原告ウェブサイトにおいて、本件各写真のサムネイル画像のコピーが可能であったとか、当該ウェブサイト上の写真自体に識別情報がなかったとしても、そのことによって、本件掲載行為に際して、被告の被用者であるEが尽くすべき注意義務が軽減されるものとはいえないから、被告の主張する事由は、そもそも、過失相殺の理由とはならないというべきである。
 のみならず、証拠(甲1、21の1ないし6、26、27の3・4、28の3・4)によれば、@原告ウェブサイト上の写真は、販売見本用に、小さなデータ容量の画像(サムネイル画像)を示して販売されているが、サムネイル画像をコピーしようとすると、「作品の本使用には料金が発生します。事前に使用条件をご確認ください。」との注意事項が表示され、当該表示に示された「OK」ボタンをクリックした後であれば、使用料を支払わなくても、当該サムネイル画像の小さな画像データのまま、写真をコピーすることが可能となること、Aこのように見本用のサムネイル画像をコピーできるようにしておくことは、当該画像の購入を検討する際に必要となるため、原告アマナイメージズの競合他社においても行われていること、Bサムネイル画像は、あくまでも見本用の画像データであるため、サムネイル画像のコピーを拡大すると画像の解析度は極めて粗くなること、C原告ウェブサイト上に掲げられた販売用の写真は、作品詳細画面において、当該写真を拡大したものと詳細情報を確認することができ、拡大された写真には透かし文字で「amanaimages」との文字が1枚の写真に数か所にわたって表示されていること、D当該作品詳細画面には、各写真がRM作品であるかRF作品であるかが管理番号と共に明示されているほか、作品情報として、作品タイトル、作品番号、カタログNO、クレジット、作家名、撮影地及び撮影日が記載されていることが認められるのであって、本件サービスにおける本件各写真を含むコンテンツ管理に関し、原告アマナイメージズに過失があるということはできない。
 したがって、本件において、過失相殺をする余地はない。
(4) 弁護士費用
ア 上記(1)ないし(3)によれば、弁護士費用を除く原告らの損害額は、原告アマナイメージズにつき17万6400円、原告Aにつき4万1000円、原告Bにつき2万6800円、原告Cにつき1万円となる。
イ 証拠(甲9ないし12、乙24)及び弁論の全趣旨によれば、被告は、原告アマナイメージズの担当者からの電子メールによる照会を受けて、本件掲載行為それ自体については中止したものの、過失がなかった旨主張して、損害賠償に応じなかったことが認められるから、原告らは、原告ら代理人の弁護士に委任して、本件訴訟を提起せざるを得なかったものというべきである。
 事案の難易、請求額、認容された額(上記ア)、その他諸般の事情を考慮すると、被告の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は、原告アマナイメージズにつき2万円、原告Aにつき5000円、原告Bにつき3000円、原告Cにつき1000円と認めるのが相当である。
 なお、原告らは、事実上、差止請求が認容されるのと同様の効果をもたらしたなどと主張するが、上記のとおり、被告が原告アマナイメージズの担当者からの電子メールによる照会を受けて本件掲載行為を中止していることにかんがみると、被告の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は、上記の限度にとどまるものというべきである。
(5) 不法行為による損害賠償請求についてのまとめ
 以上によれば、原告らが被告に請求することができる損害賠償金の合計額は、原告アマナイメージズにつき19万6400円、原告Aにつき4万6000円、原告Bにつき2万9800円、原告Cにつき1万1000円となる。
 なお、原告らは、本件掲載行為全体による損害を主張しているから、遅延損害金の始期は、原告ら主張に係る最終の不法行為日である平成26年1月15日とすべきである。
(6) 不当利得返還請求について
 原告らは、著作権侵害又は独占的利用権及び本件営業権侵害による損害額に係る請求(附帯請求を含む。)との選択的請求として、不当利得返還請求(附帯請求を含む。)をするが、後者について検討したとしても、前者に係る認容額を超えるものとは認められない。
第4 結論
 以上によれば、原告らの本件各請求は、それぞれ主文第1項ないし第4項の限度で理由があるからこれらを認容し、その余は理由がないからこれらを棄却することとして、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第29部
 裁判長裁判官 嶋末和秀
 裁判官 鈴木千帆
 裁判官本井修平は、転補のため、署名押印できない。
裁判長裁判官 嶋末和秀


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