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【事件名】ソフトウェアのライセンス契約事件
【年月日】平成27年5月27日
 東京地裁 平成27年(ワ)第2946号 著作権ライセンス契約確認等請求事件
 (口頭弁論終結日 平成27年5月13日)

判決
原告 株式会社ブールソフトウェア
被告 トラムシステム株式会社
同訴訟代理人弁護士 鬼頭治雄
同 竹内裕美


主文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
1 別紙「著作権ライセンス契約(著作権使用許諾契約)」記載の著作権ライセンス契約が、原告と被告との間で締結されていることを確認する。
2 被告は、原告に対し、39万4200円を支払え。
第2 事案の概要
 本件は、原告が、別紙「著作権ライセンス契約(著作権使用許諾契約)」記載の著作権ライセンス契約(以下「本件契約」という。)を被告との間で締結したと主張して、被告に対し、本件契約が締結されていることの確認と、本件契約に基づく著作権使用料39万4200円の支払を求める事案である。
1 前提事実(証拠等を掲げていない事実は当事者間に争いがない。)
(1) 原告は、コンピュータソフトウェアの開発、販売等を目的とする株式会社であり、被告は、通信機器、ネットワーク機器及びその周辺機器の販売、リース、レンタル及び施工保守等を目的とする株式会社である。〔弁論の全趣旨〕
(2) 原告と被告との間では、遅くとも平成26年9月頃までの間、被告が原告に対して継続的にソフトウェアの発注をし、原告はこれを製作した上、被告又はその指定する納品先に納品して、報酬を受け取っていた。
2 争点
 本件契約の締結の有無
3 争点に関する当事者の主張
〔原告の主張〕
 別紙「納品ソフトウェア一覧」記載のソフトウェア(以下「本件ソフトウェア」という。)の著作権は原告に帰属しているところ、被告はこのうちいくつかを使用しており、今後も使用する意思があることを示唆していた。そして、原告は被告に対して平成26年10月26日付け通知書(甲7。以下「本件通知書」という。)により本件契約の内容を示したところ、被告は正当性のある不服の通知をしなかった。
 したがって、被告は、本件契約を承諾したものとみなされ、平成26年9月分から11月分までの著作権使用料39万4200円の支払義務を負う。
〔被告の主張〕
 被告が原告の本件契約の申込みを承諾しなかった以上、本件契約が成立していないことは明白である。なお、本件ソフトウェアのうち、実際に完成して原告に著作権が帰属するのは、同記載1から9までのものに限られる。
第3 当裁判所の判断
1 証拠(甲2、5、7、8)によれば、次の各事実が認められる。
(1) 原告は、平成26年9月23日付けで、被告に対し、被告との「契約終了」(前記第2、1(2)のソフトウェアの継続的な発注及び納品という関係が終了することをいう。)に当たり、「今後当社ソフトウェアの著作権をトラム様〔被告〕が使用するご意思がある場合、当社と著作権ライセンス契約(著作権使用許諾契約)を締結して頂く必要がございます。」、「著作権ライセンス契約の著作権使用料(ロイヤリティ)は月額150、000円とし、著作権使用月の開始日までにお振込みにてお支払いいただきます。」などと記載された通知書を被告に送付した。
 これに対し、被告は、同年10月10日付けで、原告に対し、被告が原告に「ロイヤリティ」なる金銭を支払うべき契約上ないし法律上の義務はなく、したがって原告の請求に応ずることはできない旨の回答書を送付した。〔甲2、5〕
(2) 原告は、平成26年10月13日付けで、被告に対し、被告は原告に「ロイヤリティ」を支払う義務がある旨を通知するとともに、同月26日付けで本件通知書を送付し、本件契約の規定を示した。
 これに対し、被告は、同月29日付けで、「貴社の主張は、およそ民法、民事訴訟法及び著作権法等関連法令を正解したものとはいえません。」、「貴社に対する回答は、当社の平成26年10月10日付回答に尽きるものですから、本書面をもって、この点をあらためて通知します。」との回答書を送付した。〔甲7、8〕
2 以上によれば、原告の本件契約の申込みを被告が承諾した事実については、これを認めるに足りず、かえって被告は同申込みを明示的に拒絶していることが明らかである。
 したがって、本件契約が締結されたとの原告の主張は、理由がない。
 この点に関して原告は、本件ソフトウェアの著作権は原告に帰属するところ、被告がこのうちいくつかを使用していることなどを指摘する。
 しかし、本件ソフトウェアの著作権の帰属については当事者間に争いがあるものの、この点を措くとしても、そもそも被告が原告に対してソフトウェアの発注をし、原告がこれを製作した上、被告又はその指定する納品先に納品して、報酬を受け取っていたというのであるから(前記第2、1(2))、被告又はその指定する納品先は、納品されたソフトウェアを当然に使用する権限を有しているものと解されるのであって(原告も、上記1(1)よりも前の時点においては、被告に対して著作権使用料等の支払を求めていなかった〔甲2、3〕。)、被告が本件ソフトウェアのうちいくつかを使用しているとの事実をもって、原告と被告が本件契約を締結したことの証左とすることはできない。
3 よって、その余の点について判断するまでもなく、本訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第40部
 裁判長裁判官 東海林保
 裁判官 今井弘晃
 裁判官 廣瀬孝


別紙「著作権ライセンス契約(著作権使用許諾契約)」及び別紙「納品ソフトウェア一覧」は省略
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