判例全文 | ![]() |
|
![]() |
【事件名】子供椅子のデザイン類似事件(2) 【年月日】平成27年4月14日 知財高裁 平成26年(ネ)第10063号 著作権侵害行為差止等請求控訴事件 (原審・東京地裁平成25年(ワ)第8040号) (口頭弁論終結日 平成27年2月10日) 判決 控訴人 ピーター・オプスヴィック・エイエス(以下「控訴人オプスヴィック社」という。) 控訴人 ストッケ・エイエス(以下「控訴人ストッケ社」という。) 上記2名訴訟代理人弁護士 三村量一 同 小原淳見 同 中島慧 同 澤田将史 被控訴人 株式会社カトージ 訴訟代理人弁護士 後藤昌弘 同 川岸弘樹 同 鈴木智子 同 古谷渉 同弁理士 松原等 同補佐人弁理士 北M壮太郎 主文 1 控訴人らの控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は控訴人らの負担とする。 3 この判決に対する上告及び上告受理申立てのための付加期間を30日と定める。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 被控訴人は、別紙2「被控訴人製品目録」記載の各製品(以下「被控訴人製品」と総称し、それぞれの製品を「被控訴人製品1」などという。)を製造し、販売し、又は販売のために展示してはならない。 3 被控訴人は、被控訴人製品を破棄せよ。 4 被控訴人は、控訴人オプスヴィック社に対し、金1592万6856円及びこれに対する平成25年6月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 被控訴人は、控訴人ストッケ社に対し、金1億1945万1420円及びこれに対する平成25年6月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 6 被控訴人は、別紙5「謝罪広告目録」記載の謝罪文を同目録記載の要領で同目録記載の新聞に掲載せよ。 第2 事案の概要 1 訴訟の概要 (1) 本件は、控訴人らが、被控訴人に対し、被控訴人の製造、販売する被控訴 人製品の形態が、控訴人らの製造等に係る別紙1「控訴人ら製品目録」記載の製品(以下「控訴人製品」という。)の形態的特徴に類似しており、被控訴人による被控訴人製品の製造等の行為は、@控訴人オプスヴィック社の有する控訴人製品の著作権(以下「控訴人オプスヴィック社の著作権」ともいう。)及び同著作権について控訴人ストッケ社の有する独占的利用権(以下「控訴人ストッケ社の独占的利用権」ともいう。)を侵害するとともに、A控訴人らの周知又は著名な商品等表示に該当する控訴人製品の形態的特徴と類似する商品等表示を使用した被控訴人製品の譲渡等として、不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項1号又は2号の「不正競争」に該当する、仮に、上記侵害及び不正競争に該当すると認められない場合であっても、少なくともB控訴人らの信用等を侵害するものとして民法709条の一般不法行為が成立する旨主張して、@控訴人らにおいて、不競法3条1項及び2項に基づき、控訴人オプスヴィック社において、著作権法112条1項及び2項に基づき、被控訴人製品の製造、販売等の差止め及び破棄を求め、A控訴人オプスヴィック社において、著作権法114条3項、不競法4条、5条3項1号、民法709条に基づき、控訴人ストッケ社において、著作権法114条2項、不競法4条、5条2項、民法709条に基づき、それぞれの損害賠償金及びこれらに対する原審訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め、B控訴人らにおいて、不競法14条に基づき、謝罪広告の掲載を求めた事案である。 (2) 原審は、@控訴人製品のデザインは、著作権法の保護を受ける著作物に当たらないと解されることから、控訴人らの著作権又はその独占的利用権の侵害に基づく請求は、理由がない、A控訴人製品は、従来の椅子には見られない顕著な形態的特徴を有しているから、控訴人製品の形態が需要者の間に広く認識されているものであれば、その形態は、不競法2条1項1号にいう周知性のある商品等表示に当たり、同号所定の不正競争行為の成立を認める余地があるものの、被控訴人製品の形態が控訴人製品の商品等表示と類似のものに当たるということはできず、よって、控訴人らの不競法2条1項1号に基づく請求は、理由がない、B本件の各関係証拠上、控訴人製品の形態が控訴人らの著名な商品等表示になっていたと認めることはできず、また、上記のとおり、被控訴人製品の形態が控訴人製品の商品等表示と類似のものに当たるとはいえないことから、控訴人らの同項2号に基づく請求は、理由がない、C被控訴人製品の形態が控訴人製品の形態に類似するとはいえず、また、取引者又は需要者において、両製品の出所に混同を来していると認めるにも足りないから、被控訴人製品の製造・販売によって控訴人らの信用等が侵害されたとは認められず、したがって、上記製造・販売が一般不法行為上違法であるということはできない旨判示し、控訴人らの請求をいずれも棄却した。 控訴人らは、原判決を不服として、控訴を提起した。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実及び証拠により容易に認定できる事実。弁論の全趣旨により認められる事実を含む。) (1) 当事者ら 控訴人らは、いずれもノルウェー法人である。 被控訴人は、日本法人であり、各種育児用品、家具の販売等を目的とする株式会社である。 (2) 控訴人製品は、乳児等も利用可能であるが主として、幼児を対象とした椅子(以下、単に「幼児用椅子」ということもある。)であり、その外観、構成部材並びに性状及び形状は、別紙1「控訴人ら製品目録」及び別紙3「控訴人製品及び被控訴人製品の概要」のTのとおりである。 控訴人オプスヴィック社代表者は、現在のノルウェーを代表する椅子のデザイナーとして著名であり、昭和47年頃、控訴人製品をデザインして控訴人ストッケ社から発表した。その後、控訴人ストッケ社が、控訴人製品を製造、販売、輸出している。 控訴人製品は、日本国内においては、昭和49年から、輸入、販売されるようになり、現在に至っている(甲2から甲10)。 (3) 被控訴人製品も、幼児用椅子であり、その外観、構成部材並びに性状及び形状は、別紙2「被控訴人製品目録」及び別紙3「控訴人製品及び被控訴人製品の概要」のUのとおりである。 被控訴人は、遅くとも、平成23年1月以降被控訴人製品1を、平成24年5月以降被控訴人製品2を、平成18年2月以降被控訴人製品3を、平成22年8月以降被控訴人製品4を、それぞれ製造、販売しており、さらに、現在、被控訴人製品5及び6を製造、販売している。なお、被控訴人製品1については、平成25年2月に製造を終了した。 3 争点 (1) 著作権又はその独占的利用権の侵害の有無 ア 控訴人製品の著作物性の有無並びに著作権及び独占的利用権の存否 イ 侵害の有無 (2) 不競法2条1項1号の不正競争行為該当性の有無 ア 控訴人製品に係る「商品等表示」に該当する形態 イ 控訴人製品に係る「商品等表示」の周知性の有無 ウ 控訴人製品に係る「商品等表示」の形態と被控訴人製品の形態との類似性の有無 エ 「混同を生じさせる行為」該当性の有無 (3) 不競法2条1項2号の不正競争行為該当性の有無 ア 控訴人製品に係る「商品等表示」の著名性の有無 イ 前記(2)ア及びウと同一 (4) 一般不法行為の成否 (5) 各請求の当否 ア 差止請求の当否 イ 損害賠償請求の当否 ウ 謝罪広告掲載請求の当否 4 争点についての当事者の主張 (1) 著作権又はその独占的利用権の侵害の有無 ア 控訴人製品の著作物性の有無並びに著作権又は独占的利用権の存否 (ア) 控訴人らの主張 a 控訴人製品の著作物性の有無 (a) 原審における主張 控訴人製品の全体的な形状は、一見して驚くべきシンプルさで見る者の芸術的感性に訴えかけてくるものであり、日本を含む各国で数々のデザイン賞を受賞するなど、一定の美的感覚を備えた一般人を基準として純粋美術と同視し得る程度の美的創作性を備えており、「美術の著作物」(著作権法2条2項、10条1項4号)に該当する。 また、文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約(以下「ベルヌ条約」という。)は、その2条1項中、「応用美術の著作物」を保護の対象として挙げており、日本は、ベルヌ条約加盟国であるから、控訴人製品は、日本の著作権法上、応用美術として保護されるべきである(著作権法6条3号)。 (b) 当審における主張 @ 応用美術について、著作物性が認められるためには通常よりも高度の創作性を要すると考えることは相当ではなく、それ以外の美術の著作物と同程度の創作性、すなわち、表現者の個性が何らかの形で表れていることが認められれば著作物性が肯定されるものと解すべきである。 A@ この点に関し、原判決は、「原告製品は工業的に大量に生産され、幼児用の椅子として実用に供されるものであるから(弁論の全趣旨)、そのデザインはいわゆる応用美術の範囲に属するものである。そうすると、原告製品のデザインが思想又は感情を創作的に表現した著作物(著作権法2条1項1号)に当たるといえるためには、著作権法による保護と意匠法による保護との適切な調和を図る見地から、実用的な機能を離れて見た場合に、それが美的鑑賞の対象となり得るような美的創作性を備えていることを要すると解するのが相当である。」と判示する。 しかしながら、以下のAからCの点に鑑みると、原判決の判示する内容は、応用美術が著作物として保護されるためには、「美的鑑賞の対象となり得るような美的創作性」を要すると解すべき根拠となるものではない。 A 著作権法上、応用美術につき、著作物として保護されるためには「美的鑑賞の対象となり得るような美的創作性」を要する旨定めた規定は、存在しない。 B 著作権法は、書籍やCDなど大量生産される物についても、著作物として保護されるために特別の要件を課すことはしておらず、学説及び裁判例においても、そのような要件が必要とは考えられていない。 また、例えば、茶の湯に用いられる茶わんなどの茶器は、実用品であるが、美術の著作物として著作権法によって保護されることは明らかである。 これらの点に鑑みると、応用美術が、量産される実用品に用いる目的で作成されることは、著作物として保護されるために特別の要件を課す根拠とはならない。 C 意匠法との関係についても、応用美術を著作物として著作権法の保護対象とすると、直ちに意匠法の存在意義や意匠登録のインセンティブが減殺されるとはいえず、したがって、上記存在意義やインセンティブの確保は、創作性のある表現について著作権法による保護を自制しなければならないことを正当化する理由になるとはいえない。 すなわち、ある客体が、著作権法及び意匠法の保護要件を満たす場合は、これらのいずれの法律の趣旨にも適合しているといえるから、両法による重複的保護が与えられるべきであり、各法は制度趣旨を異にするものであることを考慮すれば、重複的保護を与えることにつき、何ら問題はない。また、意匠権は、絶対的独占権であり、他人の意匠に依拠することなく独自に同一の意匠を創作しても意匠権侵害が成立するという点において、著作権よりも強い保護を与えるものといえるから、上記重複的保護により、意匠法の存在意義や意匠登録のインセンティブが減殺されるとは、必ずしもいえない。 B 本件についてみると、以下の点によれば、控訴人製品については、応用美術以外の美術の著作物と同程度の創作性があること、すなわち、表現者の個性が何らかの形で表れていることが明らかといえるから、著作物性が肯定されるべきである。 @ 控訴人製品は、後記の控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴を備え、見る者に脚立を連想させるものであり、そのデザインには、デザイナーである控訴人オプスヴィック社代表者の個性が表れている。しかも、控訴人製品は、その優れたデザイン性につき、種々の賞を受けるなど高く評価されており、その創作性の程度は高いものということができる。 A 後記の控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴は、一般的な幼児用椅子の機能とは関係のないところから表れており、実用的機能とは結び付いていない。 b 著作権及び独占的利用権の存否 控訴人オプスヴィック社は、昭和47年頃、控訴人オプスヴィック社代表者から、控訴人製品に関する著作権の譲渡を受け、控訴人ストッケ社(当時の商号は、ストッケ・ファブリカ−・エイエス)に対し、同著作権の独占的利用を許諾した。 したがって、控訴人オプスヴィック社は、控訴人製品に関する著作権(「控訴人オプスヴィック社の著作権」)を有し、控訴人ストッケ社は、同著作権の独占的利用権(「控訴人ストッケ社の独占的利用権」)を有する。 (イ) 被控訴人の主張 a 応用美術の著作物性が肯定されるためには、著作権法による保護と意匠法による保護との適切な調和を図る見地から、実用的な機能を離れて見た場合に、それが美的鑑賞の対象となり得るような美的創作性を備えていることを要する。 (a) 著作権法及び意匠法の重複適用は相当ではなく、両者のすみ分けについての体系的な判断は、不可避である。 すなわち、上記重複適用を認めると、存続期間を短く定めた意匠法の趣旨が没却されることになる。また、意匠権は経済財であるところ、上記重複適用を認めれば、事実上、意匠権に人格権を認めたのに近い状況が生じ、それは、経済財としての流通、利用にとって好ましくない。 現行著作権法の立法過程においても、応用美術の保護の在り方につき、意匠権とのすみ分けの必要性を強く意識して検討されたという経緯がある。 (b) また、応用美術とされる商品に著作権法を適用することについては、それによって、関連産業の発展の阻害や改良商品の開発等に対する不当な制約が生じ、ひいては国民生活の利便性の向上にも悪影響を及ぼすなど、当該商品の分野の生産的側面及び利用的側面において弊害を招く可能性等を考慮して、判断すべきである。 (c) 以上に鑑みると、純粋美術が、何らの制約を受けることなく美を表現するために創作されるのに対して、応用美術は、実用目的又は産業上の利用目的という制約の下で創作されることから、その制作、流通の実情を考慮して意匠法的に保護するというのが、創作法の基本的な考え方といえる。 すなわち、@著作権は、創作のみによって発生し、公示制度は存在しないこと、A著作権には、長期の保護期間が認められていること、B著作者人格権等の支分権が存在することなどから、応用美術に著作権法上の保護を付与すれば、当該応用美術の利用、流通が妨げられる。この点に鑑みると、応用美術については、そのような利用、流通に係る支障を甘受してもなお、著作権法を適用する必要性が高いものに限り、著作物性を認めるべきである。 b 控訴人らの主張によれば、美的創作性に重点が置かれていない工業製品一般に広く著作権を認めることになり、結果として、美的創作性に乏しい作品につき、著作権や著作者人格権が不必要に長期間にわたり存続すること、大量生産により社会に流通することから、著作権の氾濫という事態を招来する。 特に、控訴人製品は、椅子という実用品であり、しかも、後記の控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴は、椅子に必須の基本的構成である脚部の形状に関するものである。このように創作の幅が制限されたものを一般的に著作物として保護すれば、同一又はわずかに異なる多くの椅子について著作権が乱立し、審査及び登録の制度がないことから、それらの著作権の存否も容易に確認できなくなるなどといった弊害が生じる。そのような事態を招くことは、著作権法及び意匠法のいずれの目的(著作権法1条、意匠法1条)にも沿わないことである。 c 控訴人製品は、量産を前提とした実用品であり、そのデザインも、人間工学又は機能性に基づく形態を有しており(甲5、甲7等)、実用面及び機能面を離れて、それ自体、完結した美術品として、専ら美的鑑賞の対象とされるものではない。 d 以上によれば、控訴人製品の著作物性は、認められない。 イ 侵害の有無 (ア) 控訴人らの主張 後記(2)ウ(ア)によれば、被控訴人製品は、全体的な印象において控訴人製品と共通しており、控訴人製品に依拠し、かつ、その表現形式上の本質的な特徴を直接感得できるものといえる。 したがって、被控訴人製品の製造、販売は、控訴人オプスヴィック社の著作権、すなわち、複製権(著作権法21条)又は翻案権(同法27条)並びに譲渡権(同法26条の2)及び二次的著作物の譲渡権(同法28条、26条の2)を侵害するとともに、控訴人ストッケ社の独占的利用権も侵害している。 (イ) 被控訴人の主張 a 被控訴人製品の製造等が、控訴人製品に係る著作権を侵害するか否かは、被控訴人製品が、控訴人製品の内容及び形式を覚知させるものか否か、又は、控訴人製品の本質的な特徴を直接感得させるものであるか否かによって決められる。 前述したとおり、控訴人製品が、実用目的又は産業上の利用目的という制約を受けつつ創作されたものであり、加えて、後記の控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴を有する箇所は、椅子の必須の基本的構成である脚部の形状に関するものであるから、創作性が認められる部分は、限定的に解するべきである。 以上に鑑みると、後記の被控訴人主張に係る控訴人製品の形態的特徴をもって、控訴人製品の本質的な特徴と解するべきである。 b 被控訴人製品は、いずれも安定感、安心感を与えるデザインを備えており、控訴人製品に見られるような不安定感はない。また、被控訴人製品は、@その多くの部材が丸みを帯びた作りであること、A安全性、安定性及び機能性を最優先した結果、部材の数が多いことから、控訴人製品の有する、直線的でシンプルかつスタイリッシュなデザインを覚知できず、控訴人製品の主要な形態的特徴は、認められない。 以上によれば、仮に、控訴人製品の著作物性が肯定されても、被控訴人製品の製造等は、控訴人製品に係る著作権を侵害せず、したがって、その独占的利用権も侵害しない。 (2) 不競法2条1項1号の不正競争行為該当性の有無 ア 控訴人製品に係る「商品等表示」に該当する形態 (ア) 控訴人らの主張 a 原審における主張 控訴人製品は、「赤ちゃんから大人まで、成長する椅子」というコンセプトの下で販売されており、その最大の特徴は、子供の成長に合わせた「部材G(座面)」及び「部材F(足置き台)」の高さ及び奥行きの調整機能に加え、それを可能にするために考案された独創的かつ特徴的な形態にある。 すなわち、控訴人製品は、@側面部分が「部材A」及び「部材B」で構成されており、「部材B」は地面と平行に配置され、「部材B」の先端と「部材A」の下端が接続されている、A側面から見た場合、「部材A」と「部材B」とで略L字型の形状を形成しており、「部材A」と「部材B」の成す角度は約66度である、B「部材A」と「部材B」とから構成される側面部分は二組あり、いずれも地面に対して垂直に配置され、また、二組の上記側面部分は並行に配置されている、C「部材A」に地面と平行に14本の溝が形成されており、1枚ずつある「部材G」及び「部材F」は、この溝に挿入されて配置されている、D「部材A」の下部及び中央部に、「部材L」及び「部材D(金属棒)」が配置されている、E「部材A」の上部に「部材H(背板)」が配置されている、Fアクセサリーとして、「部材A」に「部材I(転落防止用のベビーガード)」を装着することが可能になっているという、製作当時の同種の製品には見られない特異な形態的特徴(以下「原審における控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴」という。)を有している。 b 当審における主張 控訴人製品は、一般的な椅子とは異なり、見る者に脚立を連想させる、別紙3「控訴人製品及び被控訴人製品の概要」のT(2)のとおり「左右一対の部材Aの内側に床面と平行な溝が複数形成され、その溝に沿って部材G(座面)及び部材F(足置き台)をはめ込んで固定し、部材Aは床面から斜めに立ち上がっている」という形態的特徴(以下「控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴」という。)を有しており、これは、控訴人製品を他の同種製品と識別し得る顕著な形態的特徴といえ、控訴人らの「商品等表示」に該当する。 この点について、原判決は、控訴人製品は、@側板が左右一対の「部材A」及び「部材B」によりそれぞれ略L字状(これらが成す角度は約66度)に構成されるという「第1の形態的特徴」と、A幼児の成長に合わせて「部材G(座面)」及び「部材F(足置き台)」の固定位置を調整することができるよう、左右一対の「部材A」の内側に床面と平行な溝が多数形成され、この溝に沿って「部材G」及び「部材F」をはめ込んで固定するという「第2の形態的特徴」とを組み合わせた点において、従来の椅子には見られない顕著な形態的特徴を有している旨認定しているが、同認定は、誤りである。 (判決注:なお、控訴人らは、原審における主張に替えて、当審における主張をするものと解される。) (a) 控訴人製品の全体的な印象 控訴人製品は、控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴により、外観において脚立に類似しているという印象を与えるものであり、椅子としては特異なデザインを備えている。現に、控訴人製品を脚立と誤認した者なども存在する。 (b) 需要者の視点からの分析 @ 控訴人製品の主な需要者は、幼児の親であり、幼児用椅子を選択する際、安全性の観点から、幼児が直接座る座面の高さ及び構造並びに足置き台の有無及び高さに着目する。 したがって、需要者は、控訴人製品に接した際、座面(「部材G」)及び足置き台(「部材F」)並びにそれらを固定する「部材A」の部分に、特に着目するものと考えられる。現に、幼児用椅子の売場においては、座面及び足置き台並びにそれを固定する部材が見えやすいように、商品が前向きに陳列されている。 そして、前記部分は、前述したとおり、脚立に類似しているという印象を与える控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴を構成するものであるから、需要者は、控訴人製品の印象から、脚立を連想する。 他方、幼児用椅子の側面の形状は、需要者である幼児の親がこれに着目する理由はなく、また、通常は目に入らない部分であるから、控訴人製品の形態的特徴の認定に影響を及ぼすものではない。 A 原判決は、控訴人製品につき、視覚的に不安定さを感じさせる構成となっている旨判示するが、甲71号証から甲79号証にそのような記載はなく、控訴人製品を脚立代わりに使用する者もいること(甲81から甲83)、需要者は、控訴人製品に接する際、その素材が優れて頑丈であることも同時に目にすることから、控訴人製品は、不安定な印象を与えるものではない。 (c) 日本における控訴人製品販売開始前後の幼児用椅子市場の状況 日本において、控訴人製品が昭和49年に初めて販売された以前は、市販の幼児用椅子の大半が、4本の脚部で座面を支え、かつ、座面が固定されているという形態のものであり、控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴と同様の特徴を備え、見る者に脚立を連想させる製品は、存在しなかった(甲32、甲84)。日本において上記特徴を備えた幼児用椅子が販売されるようになったのは、控訴人製品の販売開始後である(甲42)。 以上によれば、控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴は、日本において、控訴人製品の販売開始当時は、他の同種製品と一見して区別される顕著な形態的特徴であったといえる。控訴人製品は、控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴を備えた脚立ふうの椅子のパイオニアであり、その発売後に販売された同様の特徴を有する製品は、控訴人製品を模倣したものにすぎない。 (d) 控訴人製品の機能との関係 控訴人製品は、成人も利用可能という機能を有するところ、同機能自体は、「部材G(座面)」及び「部材F(足置き台)」の高さ及び奥行きを調節できれば実現可能であり、「部材G(座面)」及び「部材F(足置き台)」を「部材A」のみによって固定すること並びに「部材A」が床面から斜めに立ち上がっていることは、上記機能に関して必然的なものではない。 したがって、控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴は、控訴人製品の機能及び効果と必然的に結びつくものではなく、商品等表示としての保護を受け得る形態的特徴である。 (e) 被控訴人が後記(イ)aにおいて掲げる他の同種製品は、いずれも控訴人主張に係る控訴人製品の形態的特徴を備えておらず、控訴人製品の形態的特徴の顕著性の判断に当たって参考とならないものである。 (イ) 被控訴人の主張 「商品等表示」としての保護については、登録等の公示制度が存在せず、意匠権と比較しても権利の外延が明確とはいえないにもかかわらず、同保護が認められれば、基本的に、永久に保護されることになる。 したがって、商品の形態につき、「商品等表示」該当性を認めること及びその上で他の商品との類似性を肯定することについては、それによって、関連産業の発展の阻害や改良商品の開発等に対する不当な制約が生じ、ひいては国民生活の利便性の向上にも悪影響を及ぼすなど、当該商品の分野の生産的側面及び利用的側面において弊害を招く可能性等を考慮して、慎重かつ厳格に判断すべきである。 a 控訴人製品の形態的特徴 (a) 商品の形態が、不競法2条1項1号所定の「商品等表示」に該当するためには、他の同種商品とは異なる顕著な外観的特徴を要するところ、相応の高さを有する乳児用ハイチェアにおいて、安定性を確保する上では、脚部が上方に向けてすぼまる形態、すなわち、脚部を構成する「部材A」及び「部材C」が床面から斜めに立ち上がっている形態にならざるを得ない(財団法人製品安全協会の「乳幼児用ハイチェアの認定基準及び基準確認方法〔乙30〕等参照。)。 また、日本において市販されている椅子には、以下の@からCのとおり、構造の一部において控訴人製品と共通するものが存在する。 このことから、控訴人製品において、「商品等表示」に該当し得る形態的特徴、すなわち、「他の同種商品とは異なる顕著な外観的特徴」といい得るのは、他の椅子には見られない構造である、「側板が左右一対の部材A及び部材Bによりそれぞれ略L字(これらが成す角度は約66度)に構成される点、すなわち、椅子の基本的構成態様である脚部が、部材Aと部材B(いずれも角が角ばり、辺が直線上の等幅の部材)『のみ』によって構成され、側面から見て略L字状の形状となっているという点」(以下「被控訴人主張に係る控訴人製品の形態的特徴」という。)に尽きるというべきである。 (b)@ 乙10号証及び乙11号証のパイプ椅子は、座板(「部材G」に相当)の辺を、4本の脚部ではなく、前側の脚部(「部材A」に相当)で支える構造において、控訴人製品と共通する。 A 乙12号証の「ダックチェア」、乙13号証の「パロットチェア」、乙14号証の「コイノドチェア」及び乙15号証の「T−5427」は、いずれも斜めの2本脚であり、「部材A」が「部材G」を単独で直接固定するとともに、その上部で部材Hを直接固定する形態において、控訴人製品と共通しており、特に、「ダックチェア」、「パロットチェア」及び「T−5427」は、いずれも側面形状が控訴人製品と同様の略L字型となっている。 B また、前記A記載の乙号証に係る椅子及び乙16号証の椅子は、いずれも「部材Aは床面から斜めに立ち上がっている」という形態において、控訴人製品と共通する。 このうち、乙16号証の椅子は、「左右一対の部材Aに部材G (座面)及び部材F(足置き台)をはめ込んで固定し、部材Aは床面から斜めに立ち上がって」いるという点において、控訴人製品と同様の構造を備えている。このような形態の椅子は多数存在し(甲42)、被控訴人自身も、遅くとも昭和56年から、同様の形態の椅子を販売している(乙20から乙22)。 C 控訴人製品の形態のうち、脚部(「部材A」)に複数の溝があり、そこに板(「部材F」及び「部材G」)を差し込むことによって高さ等の調整が可能となる形態については、同様の形態を備えた椅子は多数存在し、ありふれたものといえる(乙8の1から25、乙12、乙17の1から3)。 この点に鑑みると、上記形態は、控訴人製品の使用上の機能や目的に由来するものにすぎず、他の同種製品と識別する形態ということはできない。 b 取引の実情、需要者の視点からの分析 (a) 取引の実情、需要者の視点からは、まず、控訴人ら及び控訴人製品販売業者において、宣伝広告、売場における展示等に当たり、控訴人製品の形態をどのようにアピールしているかという点が重要であるところ、控訴人製品の宣伝広告及び売場における展示は、控訴人製品の側面形状が際立つ態様でされていることが多い(甲1、甲3、乙23、乙24等)。 そして、上記宣伝広告及び展示においては、控訴人製品の側板が左右一対の「部材A」及び「部材B」によりそれぞれ略L字に構成される点について強く印象付けられる一方、左右一対の「部材A」の内側に床面と平行な溝が複数形成されている点は、ほとんど看取できず、「部材G (座面)」及び「部材F (足置き台)」についても、注意を惹きにくいものである。 控訴人製品につき、上記のような宣伝広告及び展示が行われているのは、控訴人ら及び控訴人製品販売業者において、控訴人製品の特徴は、側板が左右一対の「部材A」及び「部材B」によりそれぞれ略L字に構成されるという側面形状にあり、それをもって、他の同種製品とは異なる形態上のアピールポイントとして認識しているからである。現に、控訴人ら自身、原審等においては、控訴人製品の側面形状を「商品等表示」に該当する形態的特徴として主張していた。 (b) 控訴人製品の主な需要者である幼児の親は、商品の選択に当たり、椅子の構造上の安全性に着目するところ、その際に重要なポイントとなるのは、控訴人製品においては、@椅子の基本的構成態様である脚部につき、「部材A」と「部材B」とが一体となり、それらのみで構成されていること及びA「部材C」の有無であり、脚部の一部にすぎない「部材A」という構造ではない。 そして、需要者又は取引者は、控訴人製品につき、一般的な4本脚の椅子や被控訴人製品と異なり、荷重を支える「部材C」がなく、側面から見て略L字状の2本脚の椅子であるという点をもって、シンプルなものであるという強い印象を受ける。 他方、椅子の基本的構成態様であり、構造上の安全性にも関わる脚部に比べれば、「部材A」に配された溝並びに座面(「部材G」)及び足置き台(「部材F」)は、それ自体、特異な形状を有するものではない以上、需要者の注意を惹く部分ではない。 (c) 以上によれば、控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴は、出所表示機能を果たし得ない。 c 控訴人らの当審における主張について (a) 商品の形態が「商品等表示」に該当するための要件である「顕著な外観的特徴」は、他の同種製品の形態との比較において抽出されるべきものであり、他の物品等を連想させるという抽象的な観点から抽出されるものではない。 したがって、幼児用椅子である控訴人製品につき、「脚立」という、同種製品ではない物品を「連想」させる形態的特徴をもって、「商品等表示」に該当するという控訴人らの主張は、その判断手法自体が誤りといえる。 (b) しかも、控訴人製品の形態は、脚立を連想させるものとはいえない。 すなわち、脚立は、ほぼすべてが、4本の脚部で荷重を支える形状であり、2本脚の控訴人製品とは、基本的構成態様において異なる。また、控訴人製品における必須部材といえる「部材B」は、脚立においては、折り畳みの妨げになることから、存在しない。 イ 控訴人製品に係る「商品等表示」の周知性の有無 (ア) 控訴人らの主張 以下によれば、控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴は、遅くとも被控訴人製品3の製造、販売が開始された平成18年2月頃までには、控訴人らの商品等表示として周知されていたものと認められる。 a 宣伝、広告 控訴人製品は、日本における昭和49年の販売開始以来、多数の家具、インテリア雑誌、幼児保育雑誌等を中心に大きく採り上げられ(甲3、甲7等)、また、販売店等による宣伝、広告も行われた(甲1、甲15等)。 b 販売実績 控訴人製品は、昭和49年から、株式会社松屋(以下「松屋」という。)によって輸入、販売され、平成2年には、松屋と控訴人ストッケ社との合弁会社である株式会社スキャンデックス(以下「スキャンデックス社」という。)が販売を開始した。同社は、平成2年度から平成17年度までの間、約37万台の控訴人製品を販売した。 このような販売実績に加え、前述した宣伝、広告により、控訴人製品は、子供を持つ家庭を中心に、広く知られるようになった。 c 販路 控訴人製品は、日本における販売開始の当初から、家具の販売ルート及びベビー・子供用品の販売ルートという複数の販売ルートに流通し、遅くとも平成19年頃までには、日本全国に散在する約1000店舗において販売されるに至り、需要者は、種々の機会において頻繁に控訴人製品に接している。 (イ) 被控訴人の主張 争う。 ウ 控訴人製品に係る「商品等表示」の形態と被控訴人製品の形態との類似性の有無 (ア) 控訴人らの主張 以下のとおり、被控訴人製品の形態は、控訴人製品に係る「商品等表示」の形態、すなわち、控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴に類似している。 a 原審における主張 被控訴人製品は、「部材B」の後方部分から「部材A」の中央部(被控訴人製品1、3及び5)又は上部(被控訴人製品2、4及び6)に延びる「部材C」が存在することを除き、いずれも、その素材、大きさ及び色において控訴人製品と類似しており、かつ、原審における控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴をすべて備えていることから、控訴人らの商品等表示と類似するものというべきである。 被控訴人製品の「部材C」は、正面又は斜め上方からは、ほぼ見えないか、又は見えにくい位置にあり、側面から見ても、「部材A」に掛かる荷重を支えるための補助的な板程度の印象しか与えないものといえ、この点に鑑みると、「部材C」の存在は、上記の類似性を否定することはできない。 また、被控訴人製品の形態の採用には、いわゆるフリーライドの意図が認められ、この点は、類似性を肯定する事情として考慮されるべきである。 b 当審における主張 (a) 製品の形態の類似性について判断するに当たっては、全体的かつ離隔的に考察すべきであり、比較対象の製品の形態が取引者又は需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して、同製品のイメージを構成する主要な特徴部分において共通すれば、両製品は全体として類似するものと解すべきである。すなわち、需要者が控訴人製品及び被控訴人製品について抱く各イメージを基準として、類似性の有無を判断すべきである。 控訴人製品及び被控訴人製品は、いずれも幼児用椅子であるから、主な需要者は、幼児を持つ親であり、この点を前提として類似性の有無を検討する。 (b)@ 別紙3「控訴人製品及び被控訴人製品の概要」のとおり、被控訴人製品は、いずれも「左右一対の部材Aの内側に床面と平行な溝が複数形成され、その溝に沿って部材G(座面)及び部材F(足置き台)をはめ込んで固定し、部材Aは床面から斜めに立ち上がっている」という、控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴と同様の形態的特徴を備え、脚立を連想させるというイメージを構成する主要な特徴部分において控訴人製品と共通している。 加えて、被控訴人製品は、木製である点並びに「部材A」の下部及び中央部に金属製部材が存在する点においても、控訴人製品と共通している。 さらに、多くの需要者も、控訴人製品と被控訴人製品との類似性を指摘している。 A 確かに、被控訴人製品の構成には、控訴人製品において対応する部材がない「部材C」が含まれる。 しかしながら、需要者が控訴人製品及び被控訴人製品と接する際は、まず脚立を連想するところ、「部材C」の有無は、脚立ふうであるか否かという点に影響するものではなく、したがって、全体的な印象の類似性に影響を及ぼさない程度の些細な差異にすぎない。 B また、被控訴人製品3、4及び6の肘掛け(被控訴人製品3及び4においては、「部材K」として表示されている。被控訴人製品6には、「部材K」の表示はないものの、甲63によれば、「部材K」に相当する肘掛けを備えていることは明らかといえる。以下、被控訴人製品3、4及び6の肘掛けにつき、「部材K(肘掛け)」と表記する。)又は「部材J(テーブル)」並びに被控訴人製品6のスタビライザーは、いずれも控訴人製品には存在しない部材である。 しかしながら、「部材K(肘掛け)」及びスタビライザーの有無は、「部材C」同様、全体的な印象の類似性に影響を及ぼさない程度の些細な差異にすぎない。 「部材J(テーブル)」は、着脱可能な付属品であり、被控訴人製品3、4及び6は、同部材を装着しない状態であっても、使用できる。加えて、被控訴人製品は、「大人まで使える」ことをセールスポイントとし、当初の組立時において同部材を装着しても、子供がある程度成長した時点において取り外すことが当然に予定されており、このことから、被控訴人製品3、4及び6につき、「部材J」が装着されていない状態は、通常の使用態様の1つといえる。 C 以上によれば、取引者又は需要者は、控訴人製品と被控訴人製品の各形態の外観に基づく印象、記憶、連想等から、両者を全体的に類似のものとして受け取るものであり、両製品の間に類似性が認められる。 (イ) 被控訴人の主張 被控訴人製品の形態は、以下のとおり、被控訴人主張に係る控訴人製品の形態的特徴とは異なり、両者が類似しているとはいえない。 a 控訴人製品は、通常の椅子が備えている「部材C」に相当する脚がないことから、一見すると不安定な印象を与えるとともに、直線を基調とした最小限の部材で構成されていることによって、シンプルかつスタイリッシュな印象をも与えている。 b 上記の点に鑑みると、「部材C」に相当する脚がないことは、控訴人製品の形態的特徴において重要な要素といえるところ、他方において、被控訴人製品には、いずれも椅子の基本的構成態様として、「部材A」及び「部材B」のみならず、「部材C」が存在することから、合計4本の脚があり、側面形状は、略正三角形型(被控訴人製品1、3及び5)、略A字型(被控訴人製品2)、略二等辺三角形型(被控訴人製品4及び6)である。 また、前記aのとおり、控訴人製品が直線を基調とした部材で構成されているのに対し、被控訴人製品を形成する個々の部材は、丸みを帯びている。 以上のとおり、被控訴人製品は、いずれも主要な特徴部分において控訴人製品とは大きく異なるものである。 c さらに、前記aのとおり、控訴人製品は、最小限の部材で構成されていることにより、シンプルかつスタイリッシュな印象を与えるものであるから、椅子としての効用又は安全性の確保に必須ではなく、機能性、快適性を高めるための部材は、控訴人製品において存在してはならないものといえる。 この点に関し、被控訴人製品3、4及び6の「部材K(肘掛け)」又は「部材J(テーブル)」並びに被控訴人製品6のスタビライザーは、いずれも椅子としての効用又は安全性の確保に必須ではない、機能性、快適性を高めるための部材であり、この点においても、控訴人製品と異なっている。 エ 「混同を生じさせる行為」該当性の有無 (ア) 控訴人らの主張 前述したとおり、被控訴人製品の形態は、控訴人製品に係る「商品等表示」に該当する控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴に類似している。 加えて、控訴人製品と被控訴人製品は、@幼児用椅子である点、A主な需要者が幼児を持つ親である点、B幼児の成長に合わせて調節することができ、大人になるまで使用可能というコンセプトを有する点において共通している。 以上によれば、被控訴人による被控訴人製品の販売等の行為は、控訴人製品と混同を生じさせる行為に該当する。 (イ) 被控訴人の主張 a 前述したとおり、被控訴人製品は、いずれも控訴人製品の主要な特徴部分につき、控訴人製品と大きく異なっており、加えて、両製品の主な需要者である幼児の親は、子供のために選ぶ商品の差異には敏感であるから、両製品が混同されるおそれはない。現に、育児雑誌(乙18)の特集記事においても、控訴人製品と被控訴人製品は、明確に区別して紹介されている。 b 控訴人ストッケ社は、控訴人製品の販売に当たり、「STOKKE」(ストッケ)や「TRIPP TRAPP」(トリップ トラップ)の表示を前面に押し出して、宣伝広告を行い、実店舗においても上記を表示している。 他方、被控訴人は、日本のベビーチェアの分野において、業界1、2位を争うシェアを確保しており、「カトージ」又は「KATOJI」は、著名ブランドであるから、被控訴人製品が、控訴人製品やそのセカンドラインと誤信される可能性はない。 以上によれば、被控訴人による被控訴人製品の販売等の行為は、控訴人製品と混同を生じさせる行為に該当しない。 (3) 不競法2条1項2号の不正競争行為該当性の有無 ア 控訴人らの主張 前記(2)ア(ア)及びイ(ア)によれば、控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴は、「商品等表示」として、遅くとも平成18年2月頃から、少なくとも「著名」なものであったといえる。 そして、前記(2)ウ(ア)のとおり、被控訴人製品の形態は、控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴に類似している。 以上によれば、被控訴人による被控訴人製品の販売等の行為は、不競法2条1項2号所定の不正競争行為に該当する。 イ 被控訴人の主張 前記(2)ウ(イ)のとおり、被控訴人製品は、いずれも控訴人製品と非類似であるから、被控訴人による被控訴人製品の販売等の行為は、不競法2条1項2号所定の不正競争行為に該当しない。 (4) 一般不法行為の成否 ア 控訴人らの主張 仮に、被控訴人による被控訴人製品の販売等の行為が、控訴人オプスヴィック社の著作権及び控訴人ストッケ社の独占的利用権を侵害するものとはいえず、かつ、不競法2条1項1号及び2号所定の不正競争行為に該当しなかったとしても、以下のとおり、被控訴人の上記行為については、少なくとも一般不法行為が成立する。 (ア) 公正かつ自由な競争原理によって成り立つ取引社会においては、著しく不公正な手段を用いて他人の法的保護に値する営業活動上の利益を侵害するものとして、不法行為を構成する場合が存在する。 (イ)a 控訴人らは、@控訴人オプスヴィック社において、控訴人製品の デザインを保護するために厳格な管理体制を構築し、控訴人製品に対する一般消費者の信用を損なわないように努め、A控訴人ストッケ社において、控訴人製品のコンセプトを遵守し、最高の品質を目指して多額の費用を掛けて控訴人製品を製造するとともに、日本国内における販売開始から40年以上にわたり、松屋又はスキャンデックス社を通じて様々な広告を展開するなど、控訴人製品を販売するために多大な企業努力を費やし、控訴人製品を周知・著名なものとした。 他方、被控訴人製品も、幼児用椅子であり、同じく幼児用椅子である控訴人製品とは、市場において競合関係にあるところ、被控訴人は、故意に、控訴人製品の形態的特徴を模倣して被控訴人製品を製作し、大人になるまで使用可能という控訴人製品のコンセプトと同じコンセプトを採用した上、被控訴人製品を不当に廉価で販売して、控訴人らの顧客獲得の機会を奪っている。 また、前記(2)エ(ア)のとおり、被控訴人による被控訴人製品の販売等の行為は、控訴人製品と混同を生じさせる行為に該当することから、控訴人らは、同行為によって、その信用、ブランド、イメージ等を著しく侵害されたものといえる。 b 以上によれば、被控訴人による被控訴人製品の販売等の行為は、取引における公正かつ自由な競争として許される範囲を甚しく逸脱し、法的保護に値する控訴人らの営業活動を侵害するものとして不法行為を構成するというべきである。 イ 被控訴人の主張 前記(2)ウ(イ)のとおり、控訴人製品と被控訴人製品とは、形態において全く類似しておらず、両製品について出所混同は生じていない。 したがって、被控訴人において、控訴人製品の形態を故意に模倣することはあり得ず、著しく不公正な手段を用いて控訴人らの法的保護に値する営業活動上の利益を侵害した事実もない。 以上によれば、被控訴人による被控訴人製品の販売等の行為につき、一般不法行為は成立しない。 (5) 各請求の当否 ア 差止請求の当否 (ア) 控訴人らの主張 被控訴人は、現在も、被控訴人製品2から6の製造及び被控訴人製品1から5の販売を継続しており、被控訴人製品1の製造についても、容易に再開し得る。 したがって、被控訴人は、今後、被控訴人製品の製造及び販売を行う可能性が高く、上記製造及び販売により、控訴人らの営業上の利益が侵害されるおそれがある。 また、被控訴人製品をすべて破棄しない限り、被控訴人製品が市場に流通する可能性は否定できず、上記流通により、控訴人らの営業上の利益が侵害されるおそれが存在する。 以上によれば、被控訴人製品の製造、販売等の差止め及び被控訴人製品すべての破棄を求める必要性が存在する(控訴人らにつき、不競法3条1項、2項。控訴人オプスヴィック社につき、著作権法112条1項、2項)。 (イ) 被控訴人の主張 争う。 イ 損害賠償請求の当否 (ア) 控訴人らの主張 a 控訴人オプスヴィック社の損害 (a) 控訴人オプスヴィック社は、被控訴人製品の各販売月から平成24年12月末日までの間(以下「本件損害賠償期間」という。)、被控訴人による被控訴人製品の販売等の行為により、通常受けるべき使用料に相当する額の損害を被っており(著作権法114条3項、不競法4条、5条3項1号、民法709条)、その額は、被控訴人製品の販売額の4パーセントとして算定するのが相当である。 したがって、控訴人オプスヴィック社の上記損害額は、別紙4「控訴人ら損害額計算表」の(A)欄のとおり、1447万8960円となる。 (b) また、控訴人オプスヴィック社は、被控訴人の上記行為と相当因果関係のある弁護士費用相当の損害も被っており、その額は、144万7896円である。 (c) 以上によれば、控訴人オプスヴィック社の損害の総額は、1592万6856円(1447万8960円+144万7896円)である。 b 控訴人ストッケ社の損害 (a) 被控訴人は、本件損害賠償期間中、被控訴人製品の販売等の行為により、少なくとも販売額の30パーセントに相当する利益を得ている。 この点に鑑み、控訴人ストッケ社は、被控訴人の上記行為によって上記利益に相当する額の損害を被ったものといえる(著作権法114条2項、不競法4条、5条2項、民法709条)。 したがって、控訴人ストッケ社の上記損害額は、別紙4「控訴人ら損害額計算表」の(B)欄のとおり、1億0859万2200円となる。 (b) また、控訴人ストッケ社は、被控訴人の上記行為と相当因果関係のある弁護士費用相当の損害も被っており、その額は、1085万9220円である。 (c) 以上によれば、控訴人ストッケ社の損害の総額は、1億1945万1420円(1億0859万2200円+1085万9220円)である。 (イ) 被控訴人の主張 争う。 ウ 謝罪広告掲載請求の当否 (ア) 控訴人らの主張 被控訴人は、前記(3)アによれば、故意によって不正競争行為に及んで控訴人らの営業上の信用を害したことから、不競法14条に基づき、上記信用を回復するのに必要な措置として、別紙5「謝罪広告目録」記載の謝罪文を同目録記載の要領で同目録記載の新聞に掲載するべきである。 (イ) 被控訴人の主張 争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1) 著作権又はその独占的利用権の侵害の有無について (1) 控訴人製品の著作物性の有無並びに著作権及び独占的利用権の存否について ア 控訴人製品の著作物性の有無 (ア)a(a) 著作権法は、同法2条1項1号において、著作物の意義につき、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と規定しており、同法10条1項において、著作物を例示している。 控訴人製品は、幼児用椅子であることに鑑みると、その著作物性に関しては、上記例示されたもののうち、同項4号所定の「絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物」に該当するか否かが問題になるものと考えられる。 この点に関し、同法2条2項は、「美術の著作物」には「美術工芸品を含むものとする。」と規定しており、前述した同法10条1項4号の規定内容に鑑みると、「美術工芸品」は、同号の掲げる「絵画、版画、彫刻」と同様に、主として鑑賞を目的とする工芸品を指すものと解される。 しかしながら、控訴人製品は、幼児用椅子であるから、第一義的には、実用に供されることを目的とするものであり、したがって、「美術工芸品」に該当しないことは、明らかといえる。 (b) そこで、実用品である控訴人製品が、「美術の著作物」として著作権法上保護され得るかが問題となる。 この点に関しては、いわゆる応用美術と呼ばれる、実用に供され、あるいは産業上の利用を目的とする表現物(以下、この表現物を「応用美術」という。)が、「美術の著作物」に該当し得るかが問題となるところ、応用美術については、著作権法上、明文の規定が存在しない。 しかしながら、著作権法が、「文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを目的と」していること(同法1条)に鑑みると、表現物につき、実用に供されること又は産業上の利用を目的とすることをもって、直ちに著作物性を一律に否定することは、相当ではない。同法2条2項は、「美術の著作物」の例示規定にすぎず、例示に係る「美術工芸品」に該当しない応用美術であっても、同条1項1号所定の著作物性の要件を充たすものについては、「美術の著作物」として、同法上保護されるものと解すべきである。 したがって、控訴人製品は、上記著作物性の要件を充たせば、「美術の著作物」として同法上の保護を受けるものといえる。 b 著作物性の要件についてみると、ある表現物が「著作物」として著作権法上の保護を受けるためには、「思想又は感情を創作的に表現したもの」であることを要し(同法2条1項1号)、「創作的に表現したもの」といえるためには、当該表現が、厳密な意味で独創性を有することまでは要しないものの、作成者の何らかの個性が発揮されたものでなければならない。表現が平凡かつありふれたものである場合、当該表現は、作成者の個性が発揮されたものとはいえず、「創作的」な表現ということはできない。 応用美術は、装身具等実用品自体であるもの、家具に施された彫刻等実用品と結合されたもの、染色図案等実用品の模様として利用されることを目的とするものなど様々であり(甲90、甲91、甲93、甲94)、表現態様も多様であるから、応用美術に一律に適用すべきものとして、高い創作性の有無の判断基準を設定することは相当とはいえず、個別具体的に、作成者の個性が発揮されているか否かを検討すべきである。 c そして、著作権侵害が認められるためには、応用美術のうち侵害として主張する部分が著作物性を備えていることを要するところ、控訴人らは、控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴、すなわち、別紙3「控訴人製品及び被控訴人製品の概要」のT(2)(以下「控訴人製品の概要」という。)のとおり「左右一対の部材Aの内側に床面と平行な溝が複数形成され、その溝に沿って部材G(座面)及び部材F(足置き台)をはめ込んで固定し、部材Aは床面から斜めに立ち上がっている」という形態に係る著作権が侵害された旨主張するものと解される。 そこで、控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴につき、著作物性の有無を検討する。 (イ)a オフィスチェア、ソファ、スツール等を別として、ダイニングチェア、リビングチェア、学習用の椅子など、一般的に家庭で用いられる1人掛けの椅子は、子供用のものも含め、4本脚のものが比較的多い(甲45、甲84、乙17の1から3、乙21、乙22等)。独立行政法人国民生活センターが実施した乳幼児用チェアの安全性のテストに係る報告書においても、4本脚の乳幼児用チェアが図示されている一方、2本脚のものは示されていないこと(乙29の1、2)にも鑑みると、控訴人製品及び被控訴人製品が属する幼児用椅子の市場においても、4本脚の椅子が比較的多いものと推認できる。 以上によれば、控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴は、「左右一対の部材A」の2本脚である点において、特徴的なものといえる。 b(a) この点に関し、平成18年1月発行の雑誌「BabyLife no.1」(甲42)に掲載されている、当時日本国内で流通していた幼児用のハイチェアのうち、「ウィッパーズ スウィングチェアー」(以下「ウィッパーズ」という。)、「ゴイター キッドヒット」(以下「ゴイター」という。)、「スクスク すくすくチェアFX」(以下「スクスク」という。)、「シャート スターハイチェア」(以下「シャート」という。)及び「アップリカUN マミーズカドル」(以下「アップリカUN」という。)、平成5年11月発行の雑誌「狭さ克服センスアップ・レッスン 夢を育む子供部屋」(乙12)に掲載されている「ダックチェア」、株式会社匠工芸のホームページ(乙13)に掲載されている「パロットチェア」(同ホームページ開設日及び掲載日のいずれも、不明。)、平成14年11月発行の文献「近代椅子学事始」(乙14)に掲載されている「コイノドチェア」並びに平成2年10月発行の文献「家具デザインの潮流 チェアデザイン・ウォッチング 愛知県」(乙15)に掲載されている「T−5427」は、いずれも2本脚の椅子であり、「左右一対の部材A」が「床面から斜めに立ち上がっている」構成を有している。 (b)@ 「シャート」、「ダックチェア」、「パロットチェア」、「コイノドチェア」及び「T−5427」は、いずれも「部材Aの内側」に形成された「床面と平行な」「複数」の「溝に沿って部材G(座面)及び部材F(足置き台)」の両方を「はめ込んで固定し」たものでないことは、明らかといえる。 A 他方、「ウィッパーズ」、「ゴイター」、「スクスク」及び「アップリカUN」は、「部材G(座面)」及び「部材F(足置き台)」については、控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴と同様の特徴を備えているとみられる(ただし、「ゴイター」の足置き台は、固定されている可能性がある。)。 しかしながら、控訴人製品は、「部材A」と「部材B」の成す角度が約66度であるところ(弁論の全趣旨)、「ウィッパーズ」及び「ゴイター」のいずれも、「部材A」と「部材B」の成す角度は、より直角に近いことが看取できる。また、控訴人製品は、「部材A」が「部材B」前方の斜めに切断された端面でのみ結合され、直接床面に接しているところ、このような形態は、「ウィッパーズ」、「ゴイター」、「スクスク」及び「アップリカUN」のいずれにおいても、見られない。すなわち、「ウィッパーズ」は、「部材A」と「部材B」の各先端が黒色の留め具のようなもので結合されており、「ゴイター」及び「アップリカUN」は、「部材A」が「部材B」上面の中ほどから前方寄りの部分に結合されており、床面には接していない。「スクスク」は、「部材A」と「部材B」の結合部分が三角形状となっている。 以上に鑑みると、「ウィッパーズ」、「ゴイター」、「スクスク」及び「アップリカUN」は、「部材A」が「床面から斜めに立ち上がっている」客観的形態において、鋭角を形成している控訴人製品とは異なるものといえる(なお、「アップリカUN」の形態については、控訴人らが、アップリカ・チルドレンプロダクツ株式会社を被告として提起した別件の著作権侵害行為差止請求事件〔東京地方裁判所平成21年(ワ)第1193号〕につき、平成22年11月18日に言い渡された判決において、不競法2条1項1号の「商品等表示」として控訴人製品の形態と類似する旨判断されており、同判決は確定しているが〔甲50及び弁論の全趣旨〕、この点は、上記認定を左右するものではない。)。 B 控訴人製品における「部材A」と「部材B」の成す角度は、前述した「シャート」、「ダックチェア」、「パロットチェア」、「コイノドチェア」及び「T−5427」に比しても、小さい。また、「部材A」と「部材B」の結合態様についても、控訴人製品と同様のものは、上記のうち「シャート」のみである。 控訴人製品は、上記の「部材A」と「部材B」の成す角度及び結合態様によって、他の2本脚の椅子に比して、鋭角的な鋭い印象を醸し出している。 c 幼児用椅子としての機能に着目してみると、財団法人製品安全協会作成に係る「乳幼児用ハイチェアの認定基準及び基準確認方法」(乙30)において、乳幼児用ハイチェアの安全性品質につき、「項目」、「認定基準」及び「基準確認方法」(以下「安全性品質基準」という。)が定められているところ、「外観、構造及び寸法」の項目の「認定基準」においては、「(1) 各部の組付けが確実であること。」などの抽象的記載や、「床面から座前縁中央までの最高位の高さは450o以上600o以下であること。」など安全性の観点から許容される高さや各部材の寸法の範囲、強度などの記載がみられるにとどまり、具体的な形態を指定する記載はない。 また、幼児用椅子という用途に鑑みると、使用する幼児の身体の成長に合わせて座面及び足置き台の高さを調節する必要性は認められるが、同調節の方法としては、控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴における方法、すなわち、「左右一対の部材Aの内側に床面と平行な溝」を「複数形成」し、「その溝に沿って部材G(座面)及び部材F(足置き台)をはめ込」み、適宜、「部材G(座面)及び部材F(足置き台)」をはめ込む溝を変えて高さを調節するという方法以外にも、ボルトやフック、ねじ等の留め具を用いるなど種々の方法が存在する(乙8の4、5など)。 以上に鑑みると、控訴人製品の概要のとおりの、控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴が、幼児用椅子としての機能に係る制約により、選択の余地なく必然的に導かれるものということは、できない。 d 以上によれば、控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴は、@「左右一対の部材A」の2本脚であり、かつ、「部材Aの内側」に形成された「溝に沿って部材G(座面)及び部材F(足置き台)」の両方を「はめ込んで固定し」ている点、A「部材A」が、「部材B」前方の斜めに切断された端面でのみ結合されて直接床面に接している点及び両部材が約66度の鋭い角度を成している点において、作成者である控訴人オプスヴィック社代表者の個性が発揮されており、「創作的」な表現というべきである。 したがって、控訴人製品は、前記の点において著作物性が認められ、「美術の著作物」に該当する。 (ウ)a 被控訴人は、応用美術の著作物性が肯定されるためには、著作権法による保護と意匠法による保護との適切な調和を図る見地から、実用的な機能を離れて見た場合に、それが美的鑑賞の対象となり得るような美的創作性を備えていることを要する旨主張する。 (a) しかしながら、前述したとおり、応用美術には様々なものがあり、表現態様も多様であるから、明文の規定なく、応用美術に一律に適用すべきものとして、「美的」という観点からの高い創作性の判断基準を設定することは、相当とはいえない。 また、特に、実用品自体が応用美術である場合、当該表現物につき、実用的な機能に係る部分とそれ以外の部分とを分けることは、相当に困難を伴うことが多いものと解されるところ、上記両部分を区別できないものについては、常に著作物性を認めないと考えることは、実用品自体が応用美術であるものの大半について著作物性を否定することにつながる可能性があり、相当とはいえない。 加えて、「美的」という概念は、多分に主観的な評価に係るものであり、何をもって「美」ととらえるかについては個人差も大きく、客観的観察をしてもなお一定の共通した認識を形成することが困難な場合が多いから、判断基準になじみにくいものといえる。 (b) 被控訴人は、前記主張の根拠として、@著作権法及び意匠法の重複適用は相当ではないこと、A応用美術とされる商品に著作権法を適用することについては、それによって、当該商品の分野の生産的側面及び利用的側面において弊害を招く可能性を考慮して判断すべきであり、この点に鑑みると、純粋美術が、何らの制約を受けることなく美を表現するために制作されるのに対し、応用美術は、実用目的又は産業上の利用目的という制約の下で制作されることから、著作権法上保護されることによって当該応用美術の利用、流通に係る支障が生じることを甘受してもなお、著作権法を適用する必要性が高いものに限り、著作物性を認めるべきである旨を述べる。 @ 確かに、応用美術に関しては、現行著作権法の制定過程においても、意匠法との関係が重要な論点になり、両法の重複適用による弊害のおそれが指摘されるなどし、特に、美術工芸品以外の応用美術を著作権法により保護することについては反対意見もあり、著作権法と意匠法との調整、すみ分けの必要性を前提とした議論が進められていたものと推認できる(甲90、甲91、甲93、甲94)。 しかしながら、現行著作権法の成立に際し、衆議院及び参議院の各文教委員会附帯決議において、それぞれ「三 今後の新しい課題の検討にあたっては、時代の進展に伴う変化に即応して、(中略)応用美術の保護等についても積極的に検討を加えるべきである。」、「三 (中略)応用美術の保護問題、(中略)について、早急に検討を加え速やかに制度の改善を図ること。」と記載され(甲92)、応用美術の保護の問題は、今後検討すべき課題の1つに掲げられていたことに鑑みると、上記成立当時、応用美術に関する著作権法及び意匠法の適用に関する問題も、以後の検討にゆだねられたものと推認できる。 そして、著作権法と意匠法とは、趣旨、目的を異にするものであり(著作権法1条、意匠法1条)、いずれか一方のみが排他的又は優先的に適用され、他方の適用を不可能又は劣後とするという関係は、明文上認められず、そのように解し得る合理的根拠も見出し難い。 加えて、著作権が、その創作時に発生して、何らの手続等を要しないのに対し(著作権法51条1項)、意匠権は、設定の登録により発生し(意匠法20条1項)、権利の取得にはより困難を伴うものではあるが、反面、意匠権は、他人が当該意匠に依拠することなく独自に同一又は類似の意匠を実施した場合であっても、その権利侵害を追及し得るという点において、著作権よりも強い保護を与えられているとみることができる。これらの点に鑑みると、一定範囲の物品に限定して両法の重複適用を認めることによって、意匠法の存在意義や意匠登録のインセンティブが一律に失われるといった弊害が生じることも、考え難い。 以上によれば、応用美術につき、意匠法によって保護され得ることを根拠として、著作物としての認定を格別厳格にすべき合理的理由は、見出し難いというべきである。 かえって、応用美術につき、著作物としての認定を格別厳格にすれば、他の表現物であれば個性の発揮という観点から著作物性を肯定し得るものにつき、著作権法によって保護されないという事態を招くおそれもあり得るものと考えられる。 A また、応用美術は、実用に供され、あるいは産業上の利用を目的とするものであるから、当該実用目的又は産業上の利用目的にかなう一定の機能を実現する必要があるので、その表現については、同機能を発揮し得る範囲内のものでなければならない。応用美術の表現については、このような制約が課されることから、作成者の個性が発揮される選択の幅が限定され、したがって、応用美術は、通常、創作性を備えているものとして著作物性を認められる余地が、上記制約を課されない他の表現物に比して狭く、また、著作物性を認められても、その著作権保護の範囲は、比較的狭いものにとどまることが想定される。 以上に鑑みると、応用美術につき、他の表現物と同様に、表現に作成者の何らかの個性が発揮されていれば、創作性があるものとして著作物性を認めても、一般社会における利用、流通に関し、実用目的又は産業上の利用目的の実現を妨げるほどの制約が生じる事態を招くことまでは、考え難い。 (c) 以上によれば、被控訴人の前記主張は、採用できない。 b 被控訴人は、美的創作性に重点が置かれていない工業製品一般に広く著作権を認めることになれば、著作権の氾濫という事態を招来する、特に、控訴人製品は、椅子という実用品であり、しかも、控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴は、椅子に必須の基本的構成である脚部の形状に関するものであるから、このように創作の幅が制限されたものを一般的に著作物として保護すれば、同一又はわずかに異なる多くの椅子について著作権が乱立するなどの弊害が生じる旨主張する。 しかしながら、著作物性が認められる応用美術は、まず「美術の著作物」であることが前提である上、前記a(b)Aのとおり、その実用目的又は産業上の利用目的にかなう一定の機能を発揮し得る表現でなければならないという制約が課されることから、著作物性が認められる余地が、応用美術以外の表現物に比して狭く、また、著作物性が認められても、その著作権保護の範囲は、比較的狭いものにとどまるのが通常であって、被控訴人主張に係る乱立などの弊害が生じる現実的なおそれは、認め難いというべきである。 以上によれば、被控訴人の前記主張は、採用できない。 イ 著作権及び独占的利用権の存否 証拠(甲14)及び弁論の全趣旨によれば、控訴人オプスヴィック社は、昭和47年頃、控訴人オプスヴィック社代表者から、控訴人製品の著作権を譲り受け、控訴人ストッケ社に対し、同著作権の独占的利用を許諾したことが認められる。 したがって、控訴人オプスヴィック社は、控訴人製品の著作権を有し、控訴人ストッケ社は、同著作権の独占的利用権を有する。 (2) 侵害の有無 ア 前述したとおり、控訴人製品は、控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴につき、@「左右一対の部材A」の2本脚であり、かつ、「部材Aの内側」に形成された「溝に沿って部材G(座面)及び部材F(足置き台)」の両方を「はめ込んで固定し」ている点並びにA「部材A」が、「部材B」前方の斜めに切断された端面でのみ結合されて直接床面に接している点及び両部材が約66度の鋭い角度を成している点において著作物性が認められる。 このことから、控訴人オプスヴィック社の著作権及び控訴人ストッケ社の独占的利用権の侵害の有無を判断するに当たっては、控訴人製品において著作物性が認められる前記の点につき、控訴人製品と被控訴人製品との類否を検討すべきである。 イ(ア) 前記のとおり、控訴人製品は、控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴につき、@「左右一対の部材A」の2本脚であり、かつ、A「部材Aの内側」に形成された「溝に沿って部材G(座面)及び部材F(足置き台)」の両方を「はめ込んで固定し」ている点に著作物性が認められるところ、被控訴人製品は、いずれも4本脚であるから、上記@の点に関して、控訴人製品と相違することは明らかといえる。 他方、被控訴人製品は、4本ある脚部のうち前方の2本、すなわち、控訴人製品における「左右一対の部材A」に相当する部材の「内側に床面と平行な溝が複数形成され、その溝に沿って部材G(座面)及び部材F(足置き台)をはめ込んで固定」しており、上記Aの点に関しては、控訴人製品と共通している。また、被控訴人製品3、4及び6は、「部材A」と「部材B」との結合態様において、控訴人製品との類似性が認められる。 しかしながら、脚部の本数に係る前記相違は、椅子の基本的構造に関わる大きな相違といえ、その余の点に係る共通点を凌駕するものというべきである。 以上によれば、被控訴人製品は、控訴人製品の著作物性が認められる部分と類似しているとはいえない。 (イ) 証拠(甲71から甲78)によれば、相当数の需要者が、「TRIPP TRAPPと、カトージは形がほとんど一緒で」(甲73)など、控訴人製品と被控訴人製品とが類似しているという趣旨に理解し得る意見や感想を述べているが、これらは、いずれも控訴人製品において著作物性が認められる点に着目したものであるか否かは不明であり、前記結論を左右するものとはいえない。 ウ したがって、被控訴人による被控訴人製品の製造、販売は、控訴人オプスヴィック社の著作権及び控訴人ストッケ社の独占的利用権のいずれも、侵害するものとはいえない。 2 争点(2) 不競法2条1項1号の不正競争行為該当性の有無について (1) 控訴人製品に係る「商品等表示」に該当する形態 ア 不競法2条1項1号の趣旨は、事業者間の公正な競争を確保するために(同法1条)、他人の周知の商品等表示と同一又は類似の商品等表示の使用等により当該他人の営業上の信用を自身のものと混同、誤認させる行為を禁止し、周知性ある商品等表示の有する出所表示機能を保護するものである。 商品の形態は、不競法2条1項1号が商品等表示として例示する商号、商標などとは異なり、一次的には、当該商品自体の機能の発揮、美観の向上などの見地から選択されるものであり、出所識別を本来の目的とするものではない。 もっとも、商品の形態が、客観的にみて明らかに他の同種商品と識別し得る特徴的なものであれば、取引の過程において、特定の出所を示すものとして需要者に認識され、二次的に、出所表示機能を備えるに至ることもあるものといえる。 以上に鑑みると、商品の形態が、@客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有しており(特別顕著性)、A特定の事業者による長期間に及ぶ継続的かつ独占的な使用、強力な宣伝広告等により、需要者において、当該特定の事業者の出所を表示するものとして周知されるに至れば(周知性)、不競法2条1項1号の「商品等の表示」に該当するものといえる。 イ そして、前記1(1)アによれば、控訴人製品は、作成者である控訴人オプスヴィック社代表者の個性が発揮されている点、すなわち、控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴のうち、@「左右一対の部材A」の2本脚であり、かつ、「部材Aの内側」に形成された「溝に沿って部材G(座面)及び部材F(足置き台)」の両方を「はめ込んで固定し」ている点並びにA「部材A」が、「部材B」前方の斜めに切断された端面でのみ結合されて直接床面に接している点及び両部材が約66度の鋭い角度を成している点において、特別顕著性が認められる。 さらに、後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば、控訴人製品は、日本国内において、@昭和49年の販売開始当初の頃から、その形状を撮影した写真等と共に、全国的に宣伝、広告されていたこと(甲1、甲4、甲5、甲7、甲9、甲15から甲23など)が認められ、Aまた、需要者である幼児用椅子の購入者間における人気も高く、これまでに幅広い販路において相当多数が販売されてきたこと(甲79から甲83)が推認できる。 以上によれば、控訴人製品は、被控訴人が被控訴人製品3の製造、販売を始めた平成18年2月頃までには、控訴人らの出所を表示するものとして周知されるに至ったものと認められる。 したがって、控訴人製品は、平成18年2月頃までには、控訴人らの「商品等表示」に該当するに至ったものということができる。 ウ(ア) 被控訴人は、相応の高さを有する乳児用ハイチェアにおいて、安定性を確保する上では、脚部を構成する「部材A」及び「部材C」が床面から斜めに立ち上がっている形態にならざるを得ない旨主張する。 しかしながら、前記1(1)ア(イ)cのとおり、安全性品質基準には、具体的な形態を指定する記載はなく、同基準から、上記形態が直ちに導かれるものでないことは明らかである。そして、他に、安全性確保の観点から、必然的に上記形態が導かれると認めるに足りる証拠はない。 したがって、被控訴人の前記主張は、採用できない。 (イ)a 被控訴人は、@乙10号証及び乙11号証のパイプ椅子、「ダックチェア」(乙12)、「パロットチェア」(乙13)、「コイノドチェア」(乙14)、「T−5427」(乙15)及び乙16号証の椅子は、いずれも控訴人製品と共通する形態を含むものである、A脚部(「部材A」)に複数の溝があり、そこに板(「部材F」及び「部材G」)を差し込むことによって高さ等の調整が可能となる形態については、同様の形態を備えた椅子は多数存在し、ありふれたものといえるとして、控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態は、他の同種製品と識別するものということはできない旨主張する。 b(a) 乙10号証及び乙11号証のパイプ椅子並びに乙16号証の椅子は、いずれも4本脚である点において、前述した控訴人製品に係る特別顕著性が認められる点と、相違する。 「ダックチェア」、「パロットチェア」、「コイノドチェア」及び「T−5427」については、前記1(1)ア(イ)のとおり、いずれも「部材Aの内側」に形成された「床面と平行な」「複数」の「溝に沿って部材G(座面)及び部材F(足置き台)」の両方を「はめ込んで固定し」たものではない点において、前述した控訴人製品に係る特別顕著性が認められる点と、相違する。 これらの相違は、いずれも前述した控訴人製品に係る特別顕著性が認められる点の中でも、製品全体の形態に関わる特に大きな点に係る相違といえるから、他の点において共通性が存在するとしても、これを凌駕して、控訴人製品との類似性を否定するものというべきである。 (b) 仮に、脚部(「部材A」)に複数の溝があり、そこに板(「部材F」及び「部材G」)を差し込むことによって高さ等の調整が可能となる形態を採用した椅子が相当数あったとしても、本件証拠上、控訴人製品と同様に、2本脚で上記形態を備えているとみられるものは、「ウィッパーズ」、「ゴイター」、「スクスク」及び「アップリカUN」のみであり、更に加えて、控訴人製品と同様に、「部材A」が、「部材B」前方の斜めに切断された端面でのみ結合されて直接床面に接している構成、両部材が約66度の鋭い角度を成している構成を採用している椅子は、見当たらない。 c 以上によれば、控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴のうち特別顕著性が認められる点は、ありふれたものとはいえず、被控訴人の前記主張は、採用できない。 (ウ)a 被控訴人は、@控訴人製品の宣伝、広告等は、その側面形状が際立つ態様でされていることが多く、控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴を構成する、「左右一対の部材Aの内側に床面と平行な溝が複数形成され」ている点は、ほとんど看取できず、「部材G(座面)」及び「部材F(足置き台)」についても、注意を惹きにくい、A控訴人製品の主な需要者である幼児の親は、商品の選択に当たり、椅子の構造上の安全性に着目するところ、その際に重要なポイントとなるのは、脚部の一部にすぎない「部材A」という構造ではなく、また、同部材に配された溝並びに「座面(部材G)」及び「足置き台(部材F)」も、需要者の注意を惹く部分ではないことなどから、控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴は、出所表示機能を果たし得ない旨主張する。 b(a) この点に関し、控訴人製品の宣伝、広告等に当たり、常に側面形状のみが強調されているとはいえず、正面から見た形態を紹介するもの(甲71、甲72、甲89、乙6、乙7、乙24の2等)も、少なからず存在する。 したがって、控訴人製品の宣伝、広告等が、「左右一対の部材Aの内側に床面と平行な溝が複数形成され」ている構成並びに「部材G(座面)」及び「部材F(足置き台)」の存在が、需要者に看取されない、又は、需要者の注意を惹きにくい態様によって実施されているとは、必ずしもいうことができない。 (b)@ 控訴人製品の主な需要者である幼児の親にとって、幼児用椅子の安全性は、通常、購入時に最も重視する要素であるところ、控訴人製品の座面を支える脚部である「部材A」の構造は、安全性確保のために重要な意義を有するものといえるから、需要者は、控訴人製品の選択に際し、「部材A」の構造に強い関心を持つものと考えられる。 A 座面(「部材G」)は、椅子に必須の構成であり、幼児が直接腰を掛ける部位、すなわち、幼児の身体が触れる部位であるから、安全性、安定性の観点から重視されることは、明らかといえる。 足置き台(「部材F」)は、椅子一般に必須のものとはいえないが、着席時に足先が床まで届かない幼児にとっては、安定感を得るために必要なものである。 また、座面の高さ及び奥行きの調節は、正しい姿勢の保持に、足置き台の高さ及び奥行きの調節は、安定感の保持に、それぞれ有用なものといわれており(甲1、甲5等)、特に幼児用椅子においては、幼児の身体的成長に合わせて座面及び足置き台の高さを変えていくことが、求められる。 以上に鑑みると、需要者は、控訴人製品の選択に際し、座面(「部材G」)及び足置き台(「部材F」)にも着目し、また、その高さの調節方法に関わる「左右一対の部材Aの内側」に「複数形成された」「床面と平行な溝」に「沿って部材G(座面)及び部材F(足置き場)」が「はめ込」まれている状況にも、強い関心を寄せるものと推認できる。 c 以上によれば、被控訴人の前記主張は、採用できない。 (2) 控訴人製品に係る「商品等表示」の周知性の有無 前記(1)イによれば、控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴に係る特別顕著性が認められる点は、控訴人らを表示するものとして周知されていることが認められる。 (3) 控訴人製品に係る「商品等表示」の形態と被控訴人製品の形態との類似性の有無 ア 前記1(2)によれば、控訴人製品に係る「商品等表示」の形態、すなわち、控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴のうち特別顕著性が認められる点と、被控訴人製品の形態との間に、類似性を認めることはできない。 イ(ア) 控訴人らは、@被控訴人製品は、控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴と同様の形態的特徴を備え、脚立を連想させるというイメージを構成する主要な特徴部分において、控訴人製品と共通し、また、木製である点並びに「部材A」の下部及び中央部に金属製部材が存在する点においても、控訴人製品と共通している、A多くの需要者も、控訴人製品と被控訴人製品との類似性を指摘している、B被控訴人製品の構成には、控訴人製品において対応する部材がない「部材C」が含まれるという相違点が存在するものの、これは、全体的な印象の類似性に影響を及ぼさない程度の些細な差異にすぎない、C被控訴人製品の形態の採用には、フリーライドの意図が認められ、この点は、類似性を肯定する事情として考慮されるべきである旨主張する。 (イ)a(a) 前記1(2)のとおり、控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴のうち、@「左右一対の部材A」の2本脚であり、かつ、A「部材Aの内側」に形成された「溝に沿って部材G(座面)及び部材F(足置き台)」の両方を「はめ込んで固定し」ている点に特別顕著性が認められるところ、被控訴人製品は、いずれも4本脚であるから、上記@の点に関して、控訴人製品と相違することは明らかといえる。そして、脚部の本数に係る前記相違は、椅子の基本的構造に関わる大きな相違といえ、その余の点に係る共通点を凌駕するものというべきである。 (b) 脚部の数の相違は、実質において、「部材C」の有無の問題と同視し得るところ、控訴人らは、同有無につき、全体的な印象の類似性に影響を及ぼさない程度の些細な差異にすぎない旨主張する。 しかしながら、前記1(2)のとおり、脚部の数の相違は、椅子の基本的構造に関わる大きなものであり、外観上にも顕著な差異をもたらすものといえるから、控訴人らの上記主張は、失当といわざるを得ない。 b 控訴人らは、多くの需要者も、控訴人製品と被控訴人製品との類似性を指摘する旨主張し、前記1(2)のとおり、確かに、本件証拠上、相当数の需要者が、上記類似性を指摘する趣旨と理解し得る意見や感想を述べていることが認められる。 しかしながら、不競法2条1項1号の不正競争に該当するためには、他人の商品等表示、すなわち、本件においては、控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴のうち特別顕著性が認められる点について、控訴人製品と被控訴人製品とが類似していることを要するところ、上記意見又は感想が、上記特別顕著性が認められる点に着目したものか否かは、証拠上不明である。 c なお、控訴人らは、被控訴人製品の形態の採用には、フリーライドの意図が認められる旨主張するが、そのような意図の存在を認めるに足りる証拠はない。 (ウ) 以上によれば、控訴人らの前記主張は、採用できない。 (4) 「混同を生じさせる行為」該当性の有無 前記(3)のとおり、控訴人製品の商品等表示に当たる、控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴のうち特別顕著性が認められる点と、被控訴人製品の形態との間に類似性を認めることはできないから、被控訴人による被控訴人製品の製造、販売等の行為が、「混同を生じさせる行為」に該当する余地はない。 3 争点(3) 不競法2条1項2号の不正競争行為該当性の有無について 前記2(3)のとおり、控訴人製品の商品等表示に当たる、控訴人ら主張に係る控訴人製品の形態的特徴のうち特別顕著性が認められる点と、被控訴人製品の形態との間に類似性を認めることはできないから、被控訴人による被控訴人製品の製造、販売等の行為は、不競法2条1項2号の不正競争行為に該当しないことは、明らかである。 4 争点(4) 一般不法行為の成否について 前記2及び3によれば、被控訴人製品は、控訴人製品を模倣したものとは認められず、被控訴人製品の販売等の行為が、控訴人製品と混同を生じさせる行為ということもできないから、一般不法行為が成立しないのは、明らかである。 第4 結論 以上によれば、その余の点について判断するまでもなく、原判決は、結論においては相当であり、本件控訴はいずれも理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部 裁判長裁判官 清水節 裁判官 新谷貴昭 裁判官 鈴木わかな 別紙1 控訴人ら製品目録 製品名:「TRIPP TRAPP」 カラー:ヨーロピアンオーク、アメリカンウォールナット、ウォールナット ブラウン、ナチュラル、ホワイト、ホワイトウォッシュ、チェリー、ブラック、レッド、グリーン、パープル、ダークブルー、ペールピンク 形態:下記の写真のとおり。<写真省略> 別紙2 被控訴人製品目録 1 被控訴人製品1 製品名:スタイリッシュハイチェアNewYorkBaby 形態:下記の写真のとおり。<写真省略> 2 被控訴人製品2 製品名:エースチェア 形態:下記の写真のとおり。<写真省略> 3 被控訴人製品3 製品名:スーパーベビーチェア1又は2(1と2の違いは、付属品のクッションの有無による。) 形態:下記の写真のとおり。<写真省略> 4 被控訴人製品4 製品名:プレミアムベビーチェア 形態:下記の写真のとおり。<写真省略> 5 被控訴人製品5 製品名:トライアングルチェア 形態:下記の写真のとおり。<写真省略> 6 被控訴人製品6 製品名:プレミアムベビーチェア2 形態:下記の写真のとおり。<写真省略> 別紙3<省略> 別紙4 控訴人ら損害額計算表
別紙5 謝罪広告目録 1 掲載の内容 謝罪広告 弊社は、貴社の製品(TRIPP TRAPP)に類似した製品を製造・販売し、貴社に対し多大のご迷惑をおかけしてきました。弊社の行為は、著作権法違反、不正競争防止法違反及び民法上の不法行為に該当する行為であり、弊社はただちに弊社製品の製造及び販売を中止し、今後貴社に上記のようなご迷惑をかけないことを誓約し、陳謝の意を表します。 平成 年 月 日 愛知県<以下略> 株式会社カトージ 代表取締役 C ノルウェー王国<以下略> ピーター・オプスヴィック・エイエス 代表者 A殿 ノルウェー王国<以下略> ストッケ・エイエス 代表者 B殿 2 掲載の要領 (1) 広告の大きさ 縦2段、幅20センチメートル (2) 使用活字 表題 18級(12ポ)ゴシック体活字 名義人・名宛人 16級(11ポ)ゴシック体活字 本文 13級(9ポ) 明朝体活字 日付・住所 12級(8ポ) 明朝体活字 なお、広告中、空欄となっている年月日については、新聞掲載日を表示する。 3 掲載の新聞及び掲載回数 名称 日本経済新聞夕刊の広告欄 掲載回数 1回 |
![]() 日本ユニ著作権センター http://jucc.sakura.ne.jp/ |