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【事件名】ダイエット本の類似事件B(2)
【年月日】平成27年1月29日
 知財高裁 平成26年(ネ)第10095号 不正競争行為差止等請求控訴事件
 (原審・東京地裁平成25年(ワ)第28860号)
 (口頭弁論終結日 平成26年12月17日)

判決
控訴人(一審原告)  X
訴訟代理人弁護士 勝部環震
被控訴人(一審被告)  Y
被控訴人(一審被告) 株式会社宝島社
両名訴訟代理人弁護士 芳賀淳


主文
1 本件各控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由
 用語の略称及び略称の意味は、本判決で付するもののほか、原判決に従い、原判決で付された略称に「原告」とあるのを「控訴人」に、「被告」とあるのを「被控訴人」と読み替えるほか、適宜これに準じる。
第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人らは、原判決別紙被告商品等表示目録記載の表示又は原判決別紙被告製品目録記載の被控訴人製品を付した原判決別紙被告書籍目録記載の書籍を製造し、販売し又は販売のために展示してはならない。
3 被控訴人らは、原判決別紙被告商品等表示目録記載の表示又は原判決別紙被告製品目録記載の被控訴人製品を付した原判決別紙被告書籍目録記載の書籍を廃棄せよ。
4 被控訴人らは、控訴人に対し、連帯して、386万1000円及びこれに対する平成25年5月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5 訴訟費用は、第1、2審とも、被控訴人らの負担とする。
第2 事案の概要
1 事案の要旨
(1) 本件請求の要旨
 本件は、被控訴人Yが著述し、被控訴人会社が発行する被控訴人書籍における表示(「お腹が凹む! 巻くだけダイエット」との題号)又はその形態(折り畳んだバンドを書籍に添付したもの)が、控訴人の著名な商品等表示(「巻くだけダイエット」との表示及び折り畳んだバンドを書籍に添付した形態)を冒用するものであるとして、被控訴人らに対し、不正競争防止法3条(2条1項2号適用)に基づき、被控訴人書籍の製造、販売又は販売のための展示の差止め及びその廃棄を求めるとともに、不正競争防止法4条(5条1項適用)に基づき、損害賠償金386万1000円及びこれに対する不法行為後の日である平成25年5月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める事案である。
(2) 原審の判断
 原判決は、控訴人の主張する表示及び形態は、いずれも、不正競争防止法2条1項2号の著名商品等表示とは認められないとして、控訴人の請求をいずれも棄却した。
2 前提となる事実
 本件の前提となる事実は、次のとおり補正するほかは、原判決の「事実及び理由」欄の第2(事案の概要)の「2 前提事実」に記載のとおりである。
 @ 原判決2頁24行目の「目録1記載」の次に「2及び同3」を、同25行目の「目録2記載」の次に「2及び同3」をそれぞれ加える。
 A 原判決3頁9行目の「目録記載」の次に「2及び同3」を加える。
3 争点
 本件の争点は、原判決の「事実及び理由」欄の第2(事案の概要)の「3 争点」に記載のとおりである。
第3 当事者の主張
 当事者の主張は、次のとおり補正するほかは、原判決の「事実及び理由」欄の第3(争点に関する当事者の主張)に記載のとおりである。
 @ 原判決4頁22行目の「『巻くだけダイエット』」の次に「(原判決別紙原告商品等表示目録1記載1及び同目録2記載1)」を加える。
 A 原判決5頁4行目から同5行目にかけての「付されたものであるから、」の次に「原判決別紙被告商品等表示目録記載1の『巻くだけダイエット』は、」を加える。
 B 原判決6頁16行目の「(甲4)。」の次に「これは、」を、同行目の「及び」の次に「原告の商品等表示を使用した商品の」をそれぞれ加える。
第4 当裁判所の判断
 当裁判所は、当審における控訴人の主張を踏まえても、控訴人の請求は、いずれも棄却すべきものと判断する。
 その理由は、次のとおり補正するほかは、原判決の「事実及び理由」欄の第4(当裁判所の判断)の1及び2に記載のとおりである。
 @ 原判決13頁4行目の次に次のとおり加える。
 「そこで、検討するに、被控訴人Yが、被控訴人書籍発行前に『巻くだけダイエット』との表示を使用した商品の販売に関与したり、同人が『巻くだけダイエット』との表示を使用して業務を行った事実は認められず(乙2から4まで、5の1〜10、6の1〜4、7参照)、また、被控訴人書籍の『お腹が凹む! 巻くだけダイエット』との表示が、書籍の内容を表示することを超えて、その著者又は発行元など、その出所を識別する態様で用いられていることをうかがわせるような事実も認められない。
 したがって、被控訴人らが、『巻くだけダイエット』を自己の商品等表示(不正競争防止法2条1項2号)として使用しているとは認められない。」
 A 原判決13頁6行目冒頭に「ア 」を加え、同行目の「これを本件についてみると、」を削り、同17行目の「1日」を「10日」に、同25行目の「のダイエット法についての」を「と題する」にそれぞれ改める。
 B 原判決14頁22行目から同15頁11行目までを次のとおり改める。
 「イ 以上によれば、控訴人書籍の発行部数や控訴人のテレビ出演経験にかんがみて、『巻くだけダイエット』と称されるダイエット手法を控訴人が提唱していることは広く知られたとはいえるが、それ以上の事実はうかがわれない。
 そして、バンド類を巻くことのみを強調したダイエット手法は、控訴人書籍発行時(平成21年6月25日)よりも前に、相当程度、広まっていたものと推認されるほか(乙9)、控訴人の立ち上げたウェブサイトやホテル又は六本木ヒルズで開催したセミナーの名称は、『Xの健康キレイ塾』又は『X(の)巻くだけダイエット(セミナー)』と、あくまで控訴人自身の名称を含むものであり(甲13、14、16)、控訴人が商標登録したものとうかがわれる商標も、『Chihiro』(甲1、2)である。また、控訴人書籍の題号も、『バンド1本でやせる! 巻くだけダイエット』『スーパーChihiroバンド 巻くだけダイエット』と記述的度合いが高いものであり、『巻くだけダイエット』との部分が、書籍の内容を表示することを超えて、その著者又は発行元など、その出所を識別する態様で用いられていることをうかがわせるような事実も認められない。
 以上からすると、『巻くだけダイエット』との表示は、数あるダイエット手法の中において、控訴人が提唱しているダイエットの方法を表示したもの、すなわち、控訴人の業務の内容を需要者に示しているものにすぎず、『巻くだけダイエット』が控訴人の業務を表示するもの、すなわち控訴人の業務の出所を指し示すものとして使用されていたとはいえないというべきである。しかも、『巻くだけダイエット』が、控訴人の業務を表示するものとして、需要者の間で著名であったことも認められない。」
 C 原判決15頁12行目冒頭の「(5)」を「ウ」に改める。
 D 原判決16頁2行目の「これを本件についてみると、」の次に「書籍に物品等の付録を添付することは、控訴人書籍1の発行時(平成21年6月25日)において全くありふれた形態にすぎないものであり(公知の事実)、これを、ゴム製バンドというものに限定して考察したとしても、」を加え、同11行目の「207万7000部」の次に「近く」を加える。
第5 結論
 よって、本件各請求をいずれも棄却した原判決は相当であり、本件各控訴はいずれも理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。

知的財産高等裁判所第2部
 裁判長裁判官 清水節
 裁判官 中村恭
 裁判官 中武由紀
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