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【事件名】“聖経”著作権使用契約事件(2) 【年月日】平成27年4月28日 知財高裁 平成25年(ネ)第10109号 損害賠償等請求控訴事件 (原審・東京地裁平成23年(ワ)第37319号) (口頭弁論終結日 平成27年3月5日) 判決 控訴人 公益財団法人生長の家社会事業団 訴訟代理人弁護士 内田智 被控訴人 一般財団法人世界聖典普及協会 訴訟代理人弁護士 脇田輝次 主文 1 原判決中控訴人敗訴の部分を次のとおり変更する。 2 控訴人の主位的請求を棄却する。 3 被控訴人は、原判決別紙物件目録第1記載の各カセットテープを頒布してはならない。 4 被控訴人は、前項の各カセットテープを廃棄せよ。 5 被控訴人は、控訴人に対し、374万7600円及びこれに対する平成26年8月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 6 控訴人のその余の予備的請求を棄却する。 7 訴訟費用は、第1、2審を通じてこれを2分し、その1を被控訴人の負担とし、その余を控訴人の負担とする。 8 この判決は、第3項ないし第5項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。 2 (主位的請求) 被控訴人は、控訴人に対し、2222万2300円及び別紙1請求金額目録の番号1ないし109の「請求金額」欄記載の各金員に対する「遅延損害金始期」欄記載の各年月日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え(控訴人は、当審において、原審における2098万8000円及び原判決別紙請求金額目録の番号1ないし251の「請求金額」欄記載の各金員に対する「遅延損害金始期」欄記載の各年月日から各支払済みまで年5分の割合による金員の支払請求を、このように拡張した。)。 3 (予備的請求) (1) 被控訴人は、原判決別紙物件目録第1記載の各カセットテープを頒布してはならない。 (2) 被控訴人は、前記(1)記載の各カセットテープを廃棄せよ。 (3) 被控訴人は、控訴人に対し、3480万6300円及びこれに対する平成26年8月27日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え(控訴人は、当審において、原審における2450万円及びこれに対する平成23年12月6日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払請求を、このように拡張した。)。 第2 事案の概要(略称は、特に断らない限り、原判決に従う。) 1 本件は、控訴人が、被控訴人に対し、@被控訴人による原判決別紙物件目録第1記載の各カセットテープ(以下「本件カセットテープ」という。)の複製、頒布について、T)主位的に、著作権使用契約に基づき、昭和61年8月から平成23年10月までの未払印税として合計2098万8000円及び原判決別紙請求金額目録の番号1ないし251の「請求金額」欄記載の各金員に対する約定支払期日の翌日である「遅延損害金始期」欄記載の各年月日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め、U)予備的に、別紙2著作物目録記載の各著作物(以下「本件原著作物」という。)に係る著作権を侵害するものであるとして、著作権法112条に基づき、本件カセットテープの頒布の差止め及びその廃棄を求めるとともに、@)不法行為による損害賠償請求権に基づき、平成23年10月までに受けた損害として本件カセットテープの印税(定価の10%)相当額2250万円と弁護士費用相当額200万円の合計2450万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成23年12月6日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払、又は、A)被控訴人は控訴人に支払うべき本件カセットテープの印税の支払をしなかったため、控訴人に平成23年10月までに支払われるべき本件カセットテープの印税(定価の10%)相当額2250万円の損害が生じ、被控訴人は法律上の原因なく同額の利得を得たとして、不当利得返還請求権に基づき、2250万円と弁護士費用相当額200万円の合計2450万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成23年12月6日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め、併せて、A被控訴人による原判決別紙物件目録第2記載のコンパクト・ディスク(以下「本件CD」という。)の販売について、(C)表示が著作権使用契約により定められたものと異なるとして、著作権使用契約に基づき、表示(「Seicho Taniguchi、 Emiko Taniguchi、 2006」)の削除を求めた事案である。 2 原判決は、@に関し、本件原著作物に係る著作権はいずれも控訴人に帰属するとした上で、T)主位的請求については、控訴人と被控訴人との間で著作権使用契約が成立したとは認められないとして、U)予備的請求については、控訴人は、昭和61年8月頃、本件原著作物の著作者である亡A(以下「亡A」という。)の相続人であるB(以下「B」という。)らに印税に相当する額を支払うことを条件に本件カセットテープの複製・頒布を被控訴人に許諾したものと認められるから、被控訴人による本件カセットテープの複製・頒布は、控訴人の有する本件原著作物に係る著作権を侵害せず、また、被控訴人はBらに印税に相当する額を支払っているから、被控訴人が印税に相当する額を利得したということはできないとして、控訴人の請求をいずれも棄却し、Aに関し、本件CDの表示は、著作権使用契約に違反するとして、本件CDに表記された「Seicho Taniguchi、 Emiko Taniguchi、 2006」との表示の削除を求める控訴人の請求をその限度で認容した。 そこで、原判決を不服として、控訴人が控訴したものであり、当審における審理の対象は、原判決が棄却した上記@に関する請求の当否である。 3 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに各項末尾掲記の証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実) (1) 当事者等 ア 控訴人は、生長の家の創始者である亡Aの宗教的信念に基づき、諸種の社会事情による困窮家庭の援護、これに伴う社会福祉施設の経営、その他社会情勢の変遷に応じて社会の福利を図るための文化科学的研究の助成又は社会事業を営む世界各国団体との親善提携等により社会厚生事業並びに社会文化事業の発展強化を図ることを目的として、昭和21年1月8日に設立された財団法人であり、平成24年4月1日、公益財団法人に移行した。(甲1、42、弁論の全趣旨) イ 被控訴人は、亡Aの提唱により、宗教聖典及び生長の家教義に関する月刊誌・書籍等の普及頒布事業等を行うことを目的として、昭和26年5月25日に設立された財団法人であり、平成26年4月1日、一般財団法人に移行した。(弁論の全趣旨) (2) 亡Aによる本件原著作物の創作等 ア 別紙2著作物目録記載1の「聖経 甘露の法雨」(以下「本件原著作物1」ともいう。)は、生長の家の創始者である亡Aが創作した著作物(著作物の種類:詩、著作物の内容又は体様:生長の家の基本真理をうたった宗教詩)であり、その著作権登録(甲2)上「昭和11年2月1日」を最初に公表された年月日とするものである。 本件原著作物1(詩編「甘露の法雨」)は、昭和12年頃に発行された「生命の實相」(亡Aが、昭和5年に創刊した月刊雑誌「生長の家」に発表した著作物の内容を整理し、順序立て、説明を補うなどして編纂した書籍)中に収録されていた。 本件原著作物1につき、昭和21年1月8日に亡Aから控訴人に著作権(著作権法27条及び28条に規定する権利を含む)の譲渡があったことを原因とする、昭和63年4月27日付け著作権の譲渡登録がある。(甲2、16、弁論の全趣旨) イ 別紙2著作物目録記載2の「聖経 天使の言葉」(以下「本件原著作物2」ともいう。)は、亡Aが創作した著作物(著作物の種類:詩、著作物の内容又は体様:生長の家の基本真理をうたった宗教詩「甘露の法雨」の続編その一)であり、その著作権登録(甲3)上「昭和23年12月10日」を最初に公表された年月日とするものである。 本件原著作物2につき、昭和23年12月10日に亡Aから控訴人に著作権(著作権法27条及び28条に規定する権利を含む)の譲渡があったことを原因とする、昭和63年4月27日付け著作権の譲渡登録がある。(甲3、弁論の全趣旨) ウ 別紙2著作物目録記載3の「聖経 続々甘露の法雨」(以下「本件原著作物3」ともいう。)は、亡Aが創作した著作物(著作物の種類:詩、著作物の内容又は体様:生長の家の基本真理をうたった宗教詩「甘露の法雨」の続編その二)であり、その著作権登録(甲4)上「昭和25年12月20日」を最初に公表された年月日とするものである。 本件原著作物3につき、昭和25年12月20日に亡Aから控訴人に著作権(著作権法27条及び28条に規定する権利を含む)の譲渡があったことを原因とする、昭和63年4月27日付け著作権の譲渡登録がある。(甲4、弁論の全趣旨) (3) 亡Aの死亡等 ア 亡Aは、昭和60年6月17日死亡した。 イ 亡Aの相続人であるC(以下「C」という。昭和63年4月24日死亡)、B及びD(以下「D」という。)は、昭和60年12月13日、亡Aの遺産について、同日付け遺産分割協議書添付の「第3遺産目録(著作権)」(以下「本件遺産目録」という。)記載の著書及び録音テープに対する著作権の共有持分2分の1をCが、各4分の1をB及びDがそれぞれ取得することを含む遺産分割協議を行った。(乙4、25、弁論の全趣旨。以下、「本件遺産分割協議」という。) (4) 「著作権使用契約書」(甲51、52)の作成等 ア 控訴人及び被控訴人は、権利者を控訴人、使用者を被控訴人とする、以下の内容の記載された昭和61年8月6日付け「著作権使用契約書」(甲51)にそれぞれ記名押印し、これを作成した。 第1条(権利保有の保証) 控訴人は、下記著作物の著作権を、その著作者から承継取得し、現に、保有中であることを保証する。 記 亡A 著 聖経「甘露の法雨」 亡A 著 聖経「天使の言葉」(録音版) 第2条(使用の許諾) 控訴人は、表記の著者名及び題名をもって表示せられる著作物を録音物として複製・頒布するために、被控訴人に対し、この契約の条項に従って、表記の著作物を使用することを許諾する。 第3条(使用権の独占・複製・頒布権の専有) 被控訴人はこの契約に基づいて、表記の著作物の録音物としての使用権を独占し排他的に複製・頒布するものとする。したがって、控訴人はこの契約の存続する限り、同一又は明らかに類似と認められる他の著作物を、録音物として被控訴人の許諾なくして自ら又は他人をして他に転用若しくは複製・頒布することはできないものとする。 第4条(契約期間) この契約は、昭和61年8月6日から昭和64年8月5日までの満3年間とする。ただし、この契約は、当事者いずれか一方より書面による廃棄の通告がない限り、順次自動的に表記の契約期間ずつ延長せられるものとする。 第5条(製造・販売) 被控訴人は、著作物をカセットテープその他の体裁の録音物として複製し、国の内外を問わず、頒布することができる。 (以下略) 第7条(印税の支払) 被控訴人は、控訴人に対し、録音物の定価の10%を印税として支払う。 印税の計算は、録音物製品の製作された月の翌月末ごとに、計算報告書を作成提出すると共に、控訴人の指定銀行口座へ振り込む方法をとるものとする。 第14条(特別の確認) この契約は、本件著作物の著作権の帰属に関する既往の資料(控訴人の寄付行為を含む)をもとに関係者が今般点検調査したことに伴い、その帰属者が控訴人であることが判明したため、新たに、控訴人、被控訴人間で締結されるに至った経緯に鑑み、被控訴人が、従前、著作者本人ないしその相続人代表との間に契約を締結し、これに基づき行ってきた録音物の製造頒布の業務は、善意無過失の処理として、その効力は害されないものとし、被控訴人の既往の処理を変更するなど特別の処置の必要は一切ないものとする。 イ 控訴人及び被控訴人は、権利者を控訴人、使用者を被控訴人とする、以下の内容の記載された昭和61年8月6日付け「著作権使用契約書」(甲52。以下、前記アの「著作権使用契約書」(甲51)と併せて、「本件契約書」といい、その写しを併せて「本件契約書写」という。)にそれぞれ記名押印し、これを作成した。 なお、第2条(使用の許諾)、第3条(使用権の独占・複製・頒布権の専有)、第4条(契約期間)、第5条(製造・販売)については、甲51における上記アと同じである。 また、甲52には、甲51における第14条に相当する条項は存しない。 第1条(権利保有の保証) 控訴人は、下記著作物の著作権を、その著作者から承継取得し、現に、保有中であることを保証する。 記 亡A 著 聖経「続々甘露の法雨」(録音版) 第7条(印税の支払) 被控訴人は、控訴人に対し、録音物の定価の10%を印税として支払う。 印税の計算は、録音物製品の製作された月の翌月末ごとに、計算報告書を作成提出すると共に、控訴人の指定銀行口座へ振り込む方法をとるものとする。 ただし、宣伝用・贈呈用の無印税の部数は、100巻とする。 (5) 亡A又はその相続人らに対する印税の支払等 ア 被控訴人は、昭和59年6月28日、亡Aとの間で、同人が被控訴人に対し、本件原著作物1(「聖経 甘露の法雨」)を録音物として複製し、頒布すること(頒布物の体裁はカセットテープ)を許諾し、被控訴人が亡Aに対し、印税として定価の20%を、複製品を製作した月の翌月末に支払うこと等を内容とする著作権使用契約を締結した(乙1。なお、控訴人は乙1の成立を否認するものの、亡A名下の印影が亡Aの印章により顕出されたものであることにつき争いはない。したがって、反証のない限り、亡Aの印影は同人の意思に基づいて顕出されたものと事実上推定されるところ、本件全証拠によるも、かかる反証があると認めることはできないから、乙1は真正に成立したものと認められる。)。 被控訴人は、昭和59年8月頃以降、本件原著作物1を原著作物としてEが口述した著作物をカセットテープに複製して、頒布しているが、亡A又はその相続人らに対し、「印税」として金銭を支払ってきた。(甲11の1・2、乙1、弁論の全趣旨) イ 被控訴人は、亡Aの死亡後である昭和60年11月11日、亡Aの相続人代表であるBとの間で、同人が被控訴人に対し、本件原著作物2(「聖経 天使の言葉」(録音版))を複製し、頒布すること(頒布物の体裁はカセットテープ)を許諾し、被控訴人が亡Aの相続人らに対し、印税として定価の20%(印税配分は、C10%、B5%、D5%)を複製品を製作した月の翌月末に支払うこと等を内容とする著作権使用契約を締結した(乙2)。 被控訴人は、昭和60年8月頃以降、本件原著作物2を原著作物としてEが口述した著作物をカセットテープに複製して、頒布しているが、亡Aの相続人らに対し、「印税」として金銭を支払ってきた。(甲12の1ないし3、乙2、弁論の全趣旨) ウ 被控訴人は、亡Aの死亡後である昭和61年8月13日、亡Aの相続人代表であるBとの間で、同人が被控訴人に対し、本件原著作物3(「聖経 続々甘露の法雨」(録音版))を複製し、頒布することを許諾し、被控訴人が亡Aの相続人らに対し、印税として定価の20%(印税配分は、C10%、B5%、D5%)を複製品を製作した月の翌月末に支払うこと等を内容とする著作権使用契約を締結した(乙3、24)。 被控訴人は、昭和61年8月頃以降、本件原著作物3を原著作物としてEが口述した著作物をカセットテープに複製して、頒布しているが、亡Aの相続人らに対し、「印税」として金銭を支払ってきた。(甲13の1ないし3、乙3、弁論の全趣旨) (6) 前訴の経緯等 ア 訴訟の提起 (ア) 前訴第1事件 控訴人は、亡Aが戦前に創作した多数の著作物の集合体としての「生命の實相」の著作権は、亡Aが控訴人の設立者として行った寄附行為の寄附財産であって、控訴人に帰属しているところ、控訴人は、「生命の實相」に属する書籍をそれぞれ復刻した「初版革表紙 生命の實相 復刻版」(以下「復刻版1」という。)及び「初版革表紙 生命の實相第2巻「久遠の實在」復刻版」(以下「復刻版2」という。)について、株式会社日本教文社(以下「日本教文社」という。)との間で昭和49年1月31日付け著作権使用(出版)契約(以下「本件昭和49年契約」という。)を締結したが、印税に未払があるとして、日本教文社に対し、未払印税2740万円の支払を求めるとともに、復刻版1に真実と異なる著作権表示をしたとして、民法723条に基づく謝罪広告を求める訴えを提起した(東京地裁平成21年(ワ)第6368号事件。前訴第1事件)。(甲24) (イ) 前訴第2事件 生長の家及び亡Aの遺族であるDは、控訴人及び株式会社光明思想社(以下「光明思想社」という。)を被告として訴えを提起した(東京地裁平成21年(ワ)第17073号事件。前訴第2事件)。 前訴第2事件の請求は、@亡Aが戦前に創作した著作物である「生命の實相〈黒布表紙版〉」(全20巻)及び復刻版1について、生長の家が亡Aの共同相続人から著作権の遺贈及び売買による譲渡を受けたから、上記著作物に係る著作権は生長の家に帰属する、A「古事記と日本国の世界的使命−甦る「生命の實相」神道篇」と題する書籍(発行所:光明思想社)は、控訴人及び光明思想社が「生命の實相〈黒布表紙版〉」の第16巻として出版された「神道篇 日本国の世界的使命」から「第1章 古事記講義」を抜き出し、別の題号を付して共同で出版したものであるところ、第16巻は戦後に「生命の實相」として出版された書籍から亡Aによって削除されているから、控訴人及び光明思想社による上記書籍の出版は、生長の家の著作権(複製権)を侵害するとともに、亡Aが存命であればその著作者人格権(同一性保持権)の侵害となるべき行為に該当し、これにより亡Aの声望が害された、B生長の家と控訴人は、本件原著作物を含む書籍等について、生長の家がこれらの書籍の出版その他の利用の管理を決定する旨の合意をしたなどとして、生長の家及びDにおいて控訴人及び光明思想社に対し、著作権法112条1項、2項(Dにつき、更に同法116条1項)に基づき、上記Aの書籍の出版等の差止め及び廃棄を、民法723条又は著作権法115条及び116条1項に基づき、謝罪広告の掲載を、生長の家において控訴人及び光明思想社に対し、不法行為に基づく損害賠償を、生長の家において控訴人に対し、生長の家が復刻版1の著作権を有することの確認を、上記Bの合意に基づき、上記Bの各書籍について生長の家の承諾なく、その出版権の設定及び消滅を行うことの禁止を求めたものである。(甲24) (ウ) 前訴第3事件 日本教文社は、本件原著作物を含む書籍等について、控訴人との間の出版契約に基づいて日本教文社が出版権の設定を受けたにもかかわらず、控訴人及び光明思想社が、日本教文社に無断で、上記書籍等の一部について現に出版及び販売を行い、また、上記書籍等の一部について今後出版を行うおそれがあるとして、控訴人に対し、日本教文社が本件原著作物を含む書籍等について出版権を有することの確認を求めるとともに、控訴人及び光明思想社に対し、本件原著作物を含む書籍の出版等の差止を求める訴えを提起した(東京地裁平成21年(ワ)第41398号事件。前訴第3事件)。(甲24) イ 前訴第1審判決 東京地方裁判所は、前訴第1ないし第3事件を併合の上、平成23年3月4日、前訴第1事件の請求につき、控訴人が日本教文社に対し、50万円及びこれに対する平成21年3月12日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で控訴人の請求を認容し、その余は理由がないから棄却し、前訴第2事件の請求及び前訴第3事件の請求はいずれも理由がないとして棄却する旨の判決を言い渡した(前訴第1審判決)。(甲24) (ア) 前訴第1事件の本件昭和49年契約に基づく未払印税請求に係る判断の要旨 控訴人は、亡Aが設立者として寄附行為を行い、昭和21年1月8日に設立されたものであるところ、控訴人は、控訴人の設立により、同日、亡Aから、亡Aを著作者とする「生命の實相」の著作権の移転を受けたものと認められる。 そして、控訴人の設立により、その基本資産となった「「生命の實相」ノ著作権」の対象著作物である「生命の實相」は、戦前に「生命の實相」の題号を付した書籍として出版された10書籍(「生命の實相<革表紙版>」(全1巻)(初版発行昭和7年1月1日)、「久遠の實在」(副題「生命の實相第2巻」)(初版発行昭和8年12月25日)、「生命の實相<黒布表紙版>」(全20巻)(初版発行昭和10年1月25日から昭和16年12月25日)、「生命の實相〈革表紙版(地・水・火・風・空・教・行・信・證)〉」(全9巻)(初版発行昭和10年10月1日から昭和14年3月15日)、「生命の實相<豪華大聖典>」(全1巻)(初版発行昭和11年11月22日)、「生命の實相<縮刷中聖典>」(全1巻)(初版発行昭和12年6月1日)、「生命の實相<ビロード表紙版>」(全9巻)(初版発行昭和13年3月20日から昭和14年3月15日)、「生命の實相<菊版>」(全13巻)(初版発行昭和14年5月20日から昭和16年10月15日)、「生命の實相<人造羊皮版>」(全9巻)(初版発行昭和14年11月20日から昭和15年6月20日)、「生命の實相<満州版(乾・艮・兌・離)>」(初版発行昭和18年8月15日から昭和20年5月5日))の全てであると解されるところ、復刻版1は「生命の實相〈革表紙版〉」(全1巻)の復刻版、復刻版2は「久遠の實在」(副題「生命の實相第2巻」)の復刻版であるから、復刻版1及び2の著作権は、控訴人の設立により、控訴人に帰属したものと認められる。 控訴人と日本教文社は、昭和49年1月31日、控訴人が日本教文社に対し、控訴人が著作権を有する契約書添付の別紙一覧表に掲記された著作物を出版するための独占的排他的使用権を設定し、日本教文社が控訴人に対し出版時に定価の10%を印税として支払う旨の契約(本件昭 和49年契約)を締結したことが認められ、復刻版1の復刻の元となった「生命の實相〈革表紙版〉」(全1巻)、復刻版2の復刻の元となった「久遠の實在」(副題「生命の實相第2巻」)は、上記一覧表中に記載された「生命の実相 全巻(各種各判)」に含まれるものと認められる。 したがって、日本教文社は、本件昭和49年契約に基づいて、控訴人に対し、@昭和57年5月から平成20年5月までの間に出版した復刻版1の印税として合計2820万円の、A昭和59年3月から同年5月までの間に出版した復刻版2の印税として合計1200万円の、合計4020万円の支払義務を負ったものと認められるところ、このうち、2740万円については、控訴人に対する支払をしていない。 日本教文社は、未払印税2740万円のうち復刻版1の19版(平成20年5月1日出版)の未払印税50万円分を除く2690万円について消滅時効を主張し、これを援用したところ、商事債権の消滅時効期間である5年が経過し、時効は完成しているから、控訴人の日本教文社に対する上記2740万円の印税請求権のうち、消滅時効の援用に係る2690万円については時効により消滅したものと認められる。 したがって、控訴人の日本教文社に対する復刻版1及び2についての印税請求は、50万円(復刻版1の19版の未払分)及びこれに対する平成21年3月12日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。 (イ) 前訴第2事件に係る判断の要旨 生長の家は、復刻版1等について亡Aの共同相続人から著作権の譲渡を受けたと主張するが、復刻版1等の著作権は亡Aから控訴人に移転したものであるから、生長の家の主張は前提を欠き、また、光明思想社が出版した書籍は亡Aの著作者人格権を侵害すると主張するが、同出版は亡Aの意思を害しないものと認められる。 生長の家は、生長の家と控訴人とは、昭和63年5月10日、本件原著作物を含む書籍について、生長の家においてその出版その他利用の管理の決定を行うことを確認的に合意した旨主張するが、上記合意が成立したことを認めるに足りる証拠はない。 したがって、生長の家及びDの控訴人及び光明思想社に対する前訴第2事件の請求はいずれも理由がない。 (ウ) 前訴第3事件に係る判断の要旨 日本教文社は、日本教文社、生長の家及び控訴人が、昭和63年3月22日付け確認書(甲7)が作成されたのと同時期に、それまで亡Aが行っていた同確認書添付の「著作物の表示」に記載された各書籍の出版に関する指揮・監督を、生長の家が全面的に引き継ぎ、爾後の出版については生長の家が一元的に管理すること、日本教文社は生長の家の指示の下にその出版を行うこと、控訴人は、上記各書籍の出版によって発生する著作権収入を取得し、これを基本財産として社会福祉事業を行うこと、上記各書籍の出版はすべて日本教文社において行うことを内容とする合意をした旨主張するが、かかる合意の事実を認めるに足りる証拠はない。 日本教文社と控訴人との間において、本件書籍について出版使用許諾契約を締結したことが認められるものの、出版使用許諾契約における許諾の内容が独占的排他的な出版権を設定するものであることを認めるに足りる証拠はない。かえって、出版使用許諾契約に係る契約書1条に、「甲(判決注・控訴人)は、乙(判決注・日本教文社)に対し、この契約の表記の記載事項と約款に従い、本著作物に係る著作権を出版使用することを、著作権法第63条に基づき許諾する。」との規定があり、同規定中に「著作権法第63条に基づき」と明示されているとおり、同契約における許諾は、著作権法79条の出版権を設定する内容のものではなく、同法63条に基づく利用許諾にすぎないというべきであるから、独占的排他的なものであるとはいえない。 したがって、独占的排他的な出版権の設定を受けたとの日本教文社の主張は採用することができない。 日本教文社は、出版権確認請求及び出版等の差止請求の対象書籍のうち、「生活改善の鍵」「希望実現の鍵」「人生調和の鍵」(前訴第1審判決の別紙第3書籍目録記載31、33及び34の書籍)については、本件昭和49年契約に基づき、独占的排他的な出版権を取得したものと認められる。しかしながら、日本教文社は、控訴人に対し、復刻版1の未払印税として1540万円の支払義務を負っていたところ、控訴人から平成21年1月14日到達の内容証明郵便をもって、2週間以内にこれを支払うよう催告され、期限までに支払がないときは、本件昭和49年契約を将来に向かって解約する旨の意思表示をされたにもかかわらず、これを支払わなかったのであるから、本件昭和49年契約は控訴人の解約により同月29日以降効力を失ったものというべきである。 以上によれば、日本教文社の前訴第3事件に係る請求はいずれも理由がない。 ウ 前訴第2審判決 前訴第1審判決に対し、生長の家、D及び日本教文社がそれぞれ控訴し、控訴人も附帯控訴をした(知財高裁平成23年(ネ)第10028号、10039号事件。なお、控訴人の附帯控訴は、日本教文社に対し、債務不履行又は不法行為に基づき、復刻版1の18版及び19版の誤った著作権表示の訂正、弁護士費用及び誤った著作権表示による権利侵害状態についての損害賠償を求めるものである。)。 知的財産高等裁判所は、平成24年1月31日、各控訴及び附帯控訴に係る請求をいずれも棄却する旨の判決をした(前訴第2審判決)。(甲33) エ 上告棄却決定等 前訴第2審判決に対し、生長の家、D及び控訴人はそれぞれ上告及び上告受理申立てをした(最高裁平成24年(オ)第830号、平成24年(受)第1006号事件)。 最高裁判所は、平成25年5月27日、上告を棄却し、本件を上告審として受理しない旨の決定をした。(当裁判所に顕著) (7) 被控訴人による消滅時効の援用 ア 主位的請求について 被控訴人は、平成26年10月29日の本件弁論準備手続期日において、控訴人に対し、「著作権使用契約書」(甲51、52)に基づく印税請求権のうち、控訴人が被控訴人にその履行を請求した平成24年10月9日の5年前までに発生した請求権について、消滅時効期間である5年が経過したとして、消滅時効を援用する旨の意思表示をした。(当裁判所に顕著) イ 予備的請求について (ア) 不法行為に基づく損害賠償請求について 被控訴人は、平成26年10月29日の本件弁論準備手続期日において、控訴人に対し、不法行為に基づく損害賠償請求権のうち、控訴人が本訴を提起した平成23年11月17日の3年前までに発生した請求権について、消滅時効期間である3年が経過したとして、消滅時効を援用する旨の意思表示をした。(当裁判所に顕著) (イ) 不当利得返還請求について 被控訴人は、平成26年10月29日の本件弁論準備手続期日において、控訴人に対し、不当利得返還請求権のうち、控訴人が本訴を提起した平成23年11月17日の10年前までに発生した請求権について、消滅時効期間である10年が経過したとして、消滅時効を援用する旨の意思表示をした。(当裁判所に顕著) 4 争点 (1) 控訴人は本件原著作物の著作権を有するか否か(争点1) (2) 主位的請求について ア 控訴人と被控訴人との間で本件契約書(甲51、52)記載の内容の著作権使用契約が成立したか否か(争点2−1) イ 著作権使用契約が成立した場合、同契約が合意解約されたか否か(争点2−2) ウ 未払印税債権の額(争点2−3) エ 消滅時効の成否(争点2−4) (ア) 各未払印税債権につき消滅時効期間が経過したか否か(争点2−4−1) (イ) 時効の中断の有無(争点2−4−2) (ウ) 時効援用権の喪失又は濫用の有無(争点2−4−3) (3) 予備的請求について ア 控訴人と被控訴人との間で、本件カセットテープの複製・頒布に係る許諾契約が成立したか否か(争点3−1) イ 不法行為による損害賠償請求権の有無(争点3−2) (ア) 著作権侵害につき被控訴人の故意又は過失の有無(争点3−2−1) (イ) 損害の発生及びその額(争点3−2−2) (ウ) 消滅時効の成否(争点3−2−3) a 時効の中断の有無(争点3−2−3−1) b 時効援用権の喪失又は濫用の有無(争点3−2−3−2) ウ 不当利得返還請求権の有無(争点3−3) (ア) 利得の有無及びその額(争点3−3−1) (イ) 消滅時効の成否(争点3−3−2) a 時効の中断の有無(争点3−3−2−1) b 時効援用権の喪失又は濫用の有無(争点3−3−2−2) 第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(控訴人は本件原著作物の著作権を有するか否か)について 〔控訴人の主張〕 (1) 本件原著作物1(「聖経 甘露の法雨」)が、戦前に各版として発行されてきた亡Aの著作物「生命の實相」に含まれることは明らかであり、本件原著作物1に係る著作権は、著作権法27条及び28条に規定する権利を含めて、控訴人の設立日である昭和21年1月8日に、亡Aの寄附行為により控訴人に帰属した。 また、本件原著作物2(「聖経 天使の言葉」)及び本件原著作物3(「聖経 続々甘露の法雨」)は、本件原著作物1と内容的連続性ないし一体性を有するものであり、本件原著作物2及び3に係る著作権は、著作権法27条及び28条に規定する権利を含めて、それぞれその初版発行日(本件原著作物2につき昭和23年12月10日、本件原著作物3につき昭和25年12月20日)に亡Aから控訴人に譲渡(寄附)され、控訴人に帰属するに至った。 (2) 被控訴人は、本件遺産目録の記載を根拠に、本件カセットテープを複製・頒布する権利は亡Aの相続人らに留保されている旨主張する。 しかしながら、本件遺産分割協議は、亡Aらの相続人らが行ったものにすぎず、本件原著作物に係る著作権を有する控訴人が行ったものではないから、これにより、本件原著作物に係る著作権の帰属が決まるものではない。控訴人が有する本件原著作物に係る著作権は、録音物を複製・頒布する権利を除くというような制限付きのものではなく、上記のとおり、著作権法27条及び28条に規定する権利を含む、原著作物に係る著作権の全てである。 〔被控訴人の主張〕 (1) 否認ないし争う。 (2) 亡Aは、控訴人の設立趣意書において、「恒久的流動資金として「生命の實相」の著作権収入を寄付行為す。」としていたのであり、亡Aが寄附行為により控訴人に移転した権利は、著作権ではなく「著作権収入」であり、移転の対象となる書籍も「生命の實相」であって、本件原著作物ではない(乙20、21、22等)。 (3) 亡Aの生前、「生命の實相」を含め同人の著作物の出版については、亡Aが編成や体裁、書体に至るまで事細かに指示し、印税の支払先もその一存で決定しており、契約書等の作成はされていなかったため、著作権の帰属や印税の支払等に関してあいまいな状況にあった。そこで、亡Aの死後、同人の著作物に係る著作権の帰属等に関し、亡Aの相続人ら、生長の家及び控訴人の間で、協議や調整が行われ、本件遺産目録(乙4)や控訴人と亡Aの相続人らとの間における昭和63年3月22日付け確認書(甲7、乙18。以下「本件確認書」という。)が作成されたものである。 本件遺産目録には、亡Aの遺産として「録音テープ」の項目があり、「127 聖経甘露の法雨」、「129 その他被相続人を著作者とする一切の言語の著作物」が挙げられている。これに対し、本件確認書には、録音テープに関する記載は一切ない。 本件遺産目録及び本件確認書の記載、並びにこれらの作成の経緯に照らせば、仮に、控訴人に本件原著作物の著作権が譲渡されていたとしても、本件カセットテープの複製や頒布に係る権利については、亡Aの相続人らに留保されていたものと解すべきである。 2 主位的請求について (1) 争点2−1(控訴人と被控訴人との間で本件契約書(甲51、52)記載の内容の著作権使用契約が成立したか否か)について 〔控訴人の主張〕 ア 被控訴人は、昭和61年8月6日、控訴人との間で、本件原著作物1(「聖経 甘露の法雨」)及び本件原著作物2(「聖経 天使の言葉」)につき、著作権使用契約を締結し(甲51)、本件原著作物1及び2を録音物として複製・頒布するために使用することの許諾を受ける対価(印税)として、控訴人に対し、録音物の定価の10%を、録音物の製品の製作された月の翌月末ごとに支払うことを約した。 また、被控訴人は、同日、控訴人との間で、本件原著作物3(「聖経 続々甘露の法雨」)につき、著作権使用契約を締結し(甲52)、本件原著作物3を録音物として複製・頒布するために使用することの許諾を受ける対価(印税)として、控訴人に対し、録音物の定価の10%を、録音物の製品の製作された月の翌月末ごとに支払うことを約した(以下、控訴人の主張する両著作権使用契約を併せて「本件著作権使用契約」という。)。 イ 控訴人と被控訴人との間で本件著作権使用契約が成立したことは、以下の点から明らかである。 (ア) 本件契約書(甲51及び52)が真正に成立したものであることにつき、当事者間に争いはない。 そして、本件契約書を作成した後、控訴人及び被控訴人がこれを白紙に戻したり、無効にしたりすることについて合意したことを証する書面はない。 (イ) 本件著作権使用契約が締結された経緯は以下のとおりである。 すなわち、生長の家の顧問であるF弁護士(以下「F弁護士」という。)の作成に係る鑑定書(甲16)及び意見書(甲17)が提出されたことにより、本件原著作物の著作権が控訴人に帰属することが生長の家の関係者の間で決着した(甲35)。 そこで、控訴人及び被控訴人を含め関係者間において、F弁護士の法的見解に沿って、本件原著作物の著作権者が控訴人であることを明確にし、それまでの被控訴人による本件カセットテープの無断での複製・頒布行為をいわば不問に付すための善後策を講じること等の必要性が認識され、本件著作権使用契約が締結されたものである。かかる経緯は、契約書(甲51)に14条の規定が設けられていることからも明らかである。 本件著作権使用契約締結の直前である昭和61年8月4日には、F弁護士から契約書の原案が示され(甲49、50)、これを基にして、被控訴人が印字したものが本件契約書(甲51、52)である。 (ウ) 「覚書」(甲65)及び「方針協議書」(甲66)は、本件契約書等(甲49ないし52)及びかつて控訴人の事務長であったG作成の報告書(甲67の1・2、甲68の1・2)とともに同封されて、控訴人の倉庫で保管されていた資料である。 本件契約書と同じ昭和61年8月6日付けで作成された「覚書」(甲65)には、「本件原著作物1及び2について、今後はその著作権帰属者である控訴人が、被控訴人との間で、著作権使用契約を締結し、印税は控訴人に支払われることにつき亡Aの相続人であるBは異存がない」旨の記載があり、控訴人及び被控訴人の各代表者の記名、代表者印及び団体印の各押印がされている。 上記のように、控訴人と被控訴人との間では、本件原著作物に係る印税は、爾後は控訴人に支払うことが合意されていたのであり、控訴人と被控訴人との間で、本件契約書のとおり本件著作権使用契約が締結されたものと認められるべきである。 ウ 被控訴人の主張について (ア) 被控訴人は、本件契約書の作成日である昭和61年8月6日の1週間後である同月13日に、被控訴人とBとの間で、本件原著作物3について著作権使用(複製・頒布)契約書(乙3)が作成されたことを根拠に、本件契約書には効力がない旨主張する。 しかしながら、Bは、本件原著作物に係る著作権者ではなく、単に、著作者の相続人の一人にすぎない。被控訴人が、著作権者ではない者との間で上記契約書(乙3)を作成したからといって、本件契約書の効力に何らの影響も及ぼさない。 (イ) 被控訴人が本件原著作物に係る印税をBに支払ってきたとの点も、被控訴人が控訴人の預かり知らないところで、被控訴人の判断により、Bらに対して印税と称する金員を支払っていたというにすぎない。 控訴人は、被控訴人によるBらへの印税の支払を控訴人に対する印税の支払に相当するものとして承認したり、Bらへの支払により控訴人に対する印税の支払義務を免除したりしたことは一切ない。 (ウ) 被控訴人は、被控訴人の理事長であり控訴人の理事長も兼務していたH(以下「H」という。)が、生長の家の常任理事会に本件カセットテープの複製計画書を提出し、承認を得ていたこと、控訴人の理事長であり、生長の家の理事でもあったI(以下「I」という。)は上記経過を認識していたにもかかわらず、異議を述べなかったことは、控訴人において、被控訴人が本件カセットテープの印税をBらに支払うことを承認していたことの証左である旨主張する。 しかしながら、Hが被控訴人の理事長として作成し、生長の家に提出した書面(乙5ないし16の各枝番)は、あくまでも被控訴人の作成に係る書面であって、控訴人が作成したものではない。また、同書面中には、本件カセットテープの印税がBに支払われることを前提とする複製計画案など添付されていない。そもそも、財団法人である控訴人が、その基本財産である本件原著作物の著作権に関し、被控訴人が主張するような印税の放棄や第三者への譲渡に等しい行為を行うとすれば、これを理事長の一存で行うことはできず、機関決定が必要であるが、このような決定がされた事実はない。 (エ) 控訴人は、昭和61年当時においても、被控訴人に対し、本件カセットテープの複製・頒布について、繰り返し抗議をし、契約の締結と印税の支払を要求していた(甲51の14条参照、甲58)。 その後も、控訴人は、被控訴人との間で、遅くとも平成16年以降、本件カセットテープの複製・頒布について、著作権の使用及び印税の支払に関する問題があることを前提として、被控訴人と交渉してきた(甲9、10、甲18ないし22)。 被控訴人もかかる交渉に応じていたが、仮に、被控訴人が主張するように、控訴人が、昭和61年8月頃、被控訴人に対して本件カセットテープの複製・頒布を許諾した事実があったとすれば、被控訴人が控訴人との間で上記のような交渉を行うはずがない。 〔被控訴人の主張〕 ア 否認する。 控訴人の主張する本件著作権使用契約は成立していない。 イ 被控訴人は、本件契約書が、控訴人及び被控訴人双方の記名押印によって作成されたものであることについては争わない。 しかしながら、以下の事情に照らせば、本件契約書は一旦作成されたものの、控訴人及び被控訴人間の協議により、すぐに白紙に戻されたものであることが明らかである。 したがって、本件契約書は、契約書としての効力を有しないものであるから、本件契約書を根拠に、控訴人と被控訴人との間で本件著作権使用契約が成立したとの事実を認めることはできない。 (ア) 本件契約書の原本が存在しないこと 控訴人は、本件契約書の原本を保有しておらず、本件契約書写についても、本訴の提起後に控訴人の事務所の建替工事に伴って保管物を整理した際、偶然に発見されたということである。 本件契約書写が本訴において書証として提出された後、被控訴人においても、その保有する契約書類等を調査したが、原本も写しも発見することはできなかった。 著作権使用契約に係る契約書は重要な書類であって、当事者間において有効と考えられている契約書の原本を、当事者双方が同じように紛失するなどということは有り得ないことである。 したがって、控訴人及び被控訴人の双方が本件契約書の原本を保持していないのは、本件契約書は一旦作成されたものの、その後、控訴人及び被控訴人において、これが有効な契約書として成立していないことが確認され、それに伴い、双方において契約書を破棄することになったためと推認される。 (イ) 被控訴人とBとの間の著作権使用契約(乙3)の締結 被控訴人は、昭和61年8月13日、亡Aの相続人代表であるBとの間で、本件原著作物3について、著作権使用契約(乙3)を締結した。 被控訴人が、本件契約書(甲51、52)の作成日である昭和61年8月6日のわずか1週間後に、本件原著作物3について、Bとの間で著作権使用契約(乙3)を締結していることからすれば、生長の家、控訴人、被控訴人及び日本教文社の4者による協議により、本件カセットテープに係る著作権は亡Aの相続人らに帰属し、その印税は亡Aの相続人らが受領するとの調整がされ、控訴人及び被控訴人がこれを受け入れて、一旦作成した本件契約書(甲51、52)を白紙に戻したものと認められるべきである。 (ウ) 本件契約書の作成後における印税の支払状況 被控訴人は、本件原著作物3に係るカセットテープを昭和61年8月15日から頒布しているが、その印税については、亡Aの相続人らに対して支払っており、控訴人に対しては一切その支払をしていない。 また、被控訴人は、本件原著作物1及び2に係るカセットテープの印税についても、本件契約書(甲51)の作成日以降もその支払先を控訴人に変更することなく、従来通り、亡Aの相続人らに対して支払っており、控訴人に対しては一切その支払をしていない。 被控訴人は、乙1ないし3の契約書に基づいて、本件カセットテープの発行の都度、亡A又はその相続人らに対して印税を支払っており、その支払の事実は支払明細書として正確に記録されてきた(乙31の1ないし3、乙38の1ないし26、乙46の1・2、乙47、乙48の1ないし4)。 被控訴人が、本件契約書が作成された後も、一度も控訴人に対して印税を支払っていないのは、本件契約書(甲51、52)は、一旦作成された後すぐ反故にされたためであると推認される。 (エ) 控訴人から被控訴人に対し、本件著作権使用契約に基づく印税の支払請求がされたことはないこと 被控訴人は、控訴人から、本件著作権使用契約に基づく印税の支払請求を受けたことはない。控訴人の平成24年10月9日付け準備書面(4)において初めて、控訴人から、本件著作権使用契約に基づく印税の支払請求を受けたものである。 また、被控訴人は、本件カセットテープの発売に関する宣伝広告活動を大々的に行うとともに、その宣伝広告文が掲載された書籍等や本件カセットテープの献本品を控訴人に送付するなどして、公然とその発行を開始し、継続してきたが(乙39の1ないし4、乙40の1・2、乙41ないし44、乙45の1・2)、控訴人から本件カセットテープについて印税等の請求を受けたことはない。 控訴人において、本件契約書写に係る契約が有効に成立していると認識していたのであれば、その原本の有無にかかわらず、本件著作権使用契約に基づく印税の支払請求をしたはずであるが、控訴人はかかる請求をしなかったのであるから、控訴人も、本件著作権使用契約が成立したとは考えていなかったものと推認される。 (オ) 本件契約書の作成当時、著作権の帰属問題は未解決の状態にあったこと F弁護士から昭和61年7月5日付け鑑定書(甲16)と同月25日付け意見書(甲17)が提出されたものの、同月29日に開催された生長の家の常任理事会では、F弁護士の意見書等に基づいて本件カセットテープに関する契約関係を調整する旨の決議はされず、かえって、「「甘露の法雨」の著作権の帰属者と、お守り「甘露の法雨」(仏語訳)の発行について」の議題に関し、「なお、この提案に関連し「A先生の著作物の著作権の帰属と印税等の諸問題」について、さらに専門家の意見を聞くことが確認された。また、本部、生長の家社会事業団、日本教文社、世界聖典普及協会の四者で協議するよう理事長が勧告することとなった。」とされている(甲35)。これは、上記常任理事会の開催時においては、著作権の帰属と印税等の諸問題が未だ解決しておらず、その解決に向け他の専門家の意見を聞き、生長の家、日本教文社、控訴人及び被控訴人の4者で協議することが必要とされる状態にあったことを示すものである。 実際に、上記常任理事会の後、専門家の意見が求められ、昭和61年10月14日付けでJ弁護士(以下「J弁護士」という。)作成の意見書(乙23)が、昭和62年10月19日付けでJ弁護士ら作成の鑑定意見書(甲36)が、同年11月30日付けでK弁護士(以下「K弁護士」という。)の鑑定意見書(甲34)がそれぞれ作成されている。 以上の経過に照らせば、本件契約書(甲51、52)の作成日である昭和61年8月6日の時点においては、関係者の間で本件原著作物に係る著作権の帰属問題は未解決の状態にあったことが明らかである。 (カ) 「覚書」(甲65)について 「覚書」(甲65)は、控訴人、被控訴人及び亡Aの相続人代表であるBを当事者とするものであり、@乙1及び2に係る契約を合意解約すること、A乙1及び2に係る契約の合意解約前に同契約に基づいてされた個々の処理の有効性に変更はないものとすること、B覚書作成後は控訴人と被控訴人との間で著作権使用契約を締結し、印税は控訴人に支払われることについて、Bに異存はないこと等を内容とするものである。 「覚書」の上記内容に照らせば、これが控訴人、被控訴人及びBの三者間で締結された後に、控訴人と被控訴人との間で、本件契約書(甲51、52)が作成されることになっていたものと考えられる。 しかるに、「覚書」(甲65)にはBの押印がないことからして、「覚書」に係る契約が、控訴人、被控訴人及びBの三者間で締結されたとは認められない。 本件著作権使用契約の成立の前提となる「覚書」(甲65)が有効な契約として成立していない以上、本件契約書(甲51、52)に控訴人及び被控訴人の記名・押印があることをもって、本件著作権使用契約が有効に成立したと認めることはできないというべきである。 (キ) 生長の家の常任理事会における承認 被控訴人は、Bの指示により、平成9年7月から平成11年8月まで、本件カセットテープの複製計画案を生長の家の常任理事会に提出し、その承認を得ていた。 その当時の被控訴人の理事長であったHは、平成7年1月から平成10年11月までは、控訴人の理事長も兼務していたから、控訴人は、被控訴人が乙1ないし3に係る契約に基づいて本件カセットテープを複製・頒布し、その印税をBらに支払うことを異議なく承認していたものというべきである(乙5ないし乙16の各枝番)。 また、控訴人の理事長であったIは、平成6年6月から平成12年5月まで、生長の家の理事に就任しており、上記常任理事会に出席して議事録にも署名押印しているから、上記経過を承知していた。 これらの状況にありながら、控訴人は、被控訴人に対し、印税の取り扱いについて、一切の異議を述べたことはなかった。 (ク) 入金台帳を作成していなかったこと 控訴人は、本件カセットテープの印税に関する入金台帳を作成しておらず、本件契約書(甲51、52)に基づく印税収入を予定していたとは認められない。 (2) 争点2−2(著作権使用契約が成立した場合、同契約が合意解約されたか否か)について 〔被控訴人の主張〕 仮に、控訴人と被控訴人との間で本件契約書が作成されたことにより、本件著作権使用契約が成立したと認められるとしても、前記(1)の被控訴人の主張イ(ア)ないし(ク)の事情に照らせば、本件著作権使用契約は、乙3の契約書が作成された昭和61年8月13日頃、控訴人と被控訴人との間で合意解約されたというべきである。 〔控訴人の主張〕 否認ないし争う。 (3) 争点2−3(未払印税債権の額)について 〔控訴人の主張〕 控訴人は、本件著作権使用契約に基づき、被控訴人に対し、同人が昭和61年8月6日以降に複製頒布した本件カセットテープについて、録音物製品の製作された月の翌月末ごとに、定価の10%に相当する額の印税支払請求権を有する。 被控訴人が昭和61年8月6日以降平成20年2月までに製作した本件カセットテープに係る印税額は、別紙1請求金額目録記載のとおり、合計2222万2300円である。 〔被控訴人の主張〕 否認ないし争う。 (4) 争点2−4(消滅時効の成否)について ア 争点2−4−1(各未払印税債権につき消滅時効期間が経過したか否か)について 〔被控訴人の主張〕 本件著作権使用契約に基づく印税債権は、商事債権であるから、その消滅時効期間は5年である。 〔控訴人の主張〕 控訴人及び被控訴人は、いずれも財団法人であって商人ではなく、また、営利事業を営むことは許されないから、本件著作権使用契約に基づく印税債権は、商事債権には該当しない。 したがって、その消滅時効期間は10年である。 イ 争点2−4−2(時効の中断の有無)について 〔控訴人の主張〕 (ア) 債務承認1 被控訴人は、平成20年7月17日頃、本件カセットテープに係る未払印税について、「著作物使用(複製・頒布)契約書」(甲18)を浄書し、控訴人に対して交付した。 上記契約書には、「昭和59年7月以降、本契約前まで、控訴人の権利を侵害したことについて、被控訴人は謹んで謝罪するとともに、同月初版発行以降の既発行物の印税を平成20年7月末までに一括して控訴人に支払う」旨の記載がある(17条)。 これは、被控訴人による債務承認に該当し、これにより消滅時効は中断した。 なお、被控訴人は、契約書案(甲18)の修正経過が被控訴人が著作権侵害を前提とする契約書案に対して明確に異議を述べてきたことを示すものであるなどと主張するが、被控訴人が控訴人との交渉に応じて、契約書案について対案を示したり、契約書案の文言を修正したりすること自体が、被控訴人による債務承認に該当するというべきである。 (イ) 債務承認2 平成20年10月17日付け「念書」(甲20)は、控訴人と被控訴人との間で、正式に調印されてはいないが、同書面に記載された内容につき、控訴人と被控訴人との間で事実上合意がされた。 すなわち、被控訴人は、控訴人に対し、@被控訴人の不注意により、昭和59年7月以降、本契約前まで、控訴人の権利を侵害したことについて、被控訴人は、謹んで謝罪するとともに、同月初版発行以降の既発行物の印税の支払について、被控訴人は控訴人に対して誠実に対処することを約し、A平成20年10月1日付けで本件原著作物の各カセットテープの複製・頒布に関する契約を締結することを前提として、初版発行以降の既発行物の未払印税のうち、法的諸問題が生起することを勘案して、5年以内に200万円を支払う旨を表明した。 これは、被控訴人による債務承認に該当し、これにより消滅時効は中断した。 また、被控訴人が控訴人との間で「念書」(甲20)について推敲したり、議論したりしたこと自体が、被控訴人による債務承認に該当するというべきである。 (ウ) 債務承認3 平成16年から平成19年頃にかけて、被控訴人の当時の理事長であるL(以下「L」という。)は、控訴人に対し、本件カセットテープに係る未払印税債務の支払を約束する言動をしていた。 これは、被控訴人による債務承認に該当し、これにより消滅時効は中断した。 (エ) 一部弁済 被控訴人は、控訴人に対し、本件カセットテープに係る印税債務の一部の代物弁済として、@平成20年11月、デル社製のデスクトップ型パソコン「DELL Vostro(TM)200スリムタワー」2台とモニター等附属品(合計11万4460円相当)を、A平成21年2月、デル社製のデスクトップ型パソコン「DELL Vostro1510」3台(合計約21万円相当)を、B平成23年4月27日、ヒューレット・パッカード社製のパソコン「HP Compaq 6000 Pro Aio」3台(合計約24万円相当)を、それぞれ引き渡した。 上記代物弁済は、被控訴人による債務承認に該当し、これにより、消滅時効は中断した。 〔被控訴人の主張〕 (ア) 否認ないし争う。 (イ) 債務承認1について 「著作物使用(複製・頒布)契約書」(甲18)は、控訴人において、「著作物使用(複製・頒布)契約書」(甲9)を基に、同人が希望する文言・条項を加入修正したものにすぎず、被控訴人はその作成に関わっていない。 被控訴人としては、本件カセットテープに関し、控訴人と契約を締結する必要はないものと考えていたが、仮に契約書を作成するとしても、被控訴人が修正した契約書案(甲18)を受け入れることはできなかった。 そこで、対案として被控訴人の契約書案(乙49)を控訴人に示し、その後も、被控訴人の修正の申入れを受けて、控訴人から、修正案(甲21、22)が示されるなどした。 上記の契約書案の修正経過は、被控訴人が著作権侵害を前提とする契約書案に対して明確に異議を述べ、控訴人がこれに応ずる姿勢を示してきたことを示すものである。 (ウ) 債務承認2について 「念書」(甲20)は、控訴人が一方的に作成したものにすぎず、被控訴人はその作成に全く関与していない。 被控訴人は、著作権の侵害があったことを前提とする上記書面の作成に応じていない。 被控訴人が、控訴人との打合せの経過においてその内容に同意することを明言したり、表明したりしたこともない。 (エ) 債務承認3について 被控訴人の理事長であったLが、控訴人に対し、本件カセットテープに関する印税債務の支払を約したことはない。 被控訴人が、控訴人の要求した契約書(甲18)や「念書」(甲20)等の作成に応じていないことからも明らかである。 (オ) 一部弁済について 被控訴人が、控訴人に対し、平成21年2月にパソコン3台を、平成23年4月にパソコン3台を、それぞれ提供したことは事実である。 しかしながら、かかるパソコンの提供は、本件カセットテープに関する債務の一部に対する代物弁済としてされたものではない。 控訴人の運営する神の国寮の要保護児童の支援のために貸与したものである(乙37の1・2)。 なお、控訴人が平成20年11月に提供を受けたとするパソコン2台は、控訴人の依頼により被控訴人がその発注を手伝ったにすぎず、控訴人がその購入代金を取扱店に直接支払っている(乙56の1・2)。 ウ 争点2−4−3(時効援用権の喪失又は濫用の有無)について 〔控訴人の主張〕 (ア) 前記イの控訴人の主張(ア)ないし(エ)記載のとおり、被控訴人は、消滅時効期間の経過後に債務を承認したことにより、時効援用権を喪失した。 (イ) また、前記イの控訴人の主張(ア)ないし(エ)記載の被控訴人の行為は、控訴人に対し、被控訴人が本件カセットテープに係る印税債務の存在を認めているものと確信させる行為である。 したがって、控訴人において権利行使を怠ったということはできず、被控訴人による消滅時効の援用は権利濫用にわたるものとして許されないというべきである。 〔被控訴人の主張〕 否認ないし争う。 前記イの被控訴人の主張(イ)ないし(オ)記載のとおり、被控訴人が控訴人に対し、債務の承認に該当する行為を行ったことはない。 3 予備的請求について (1) 争点3−1(控訴人と被控訴人との間で、本件カセットテープの複製・頒布に係る許諾契約が成立したか否か)について 〔被控訴人の主張〕 ア 控訴人は、被控訴人に対し、本件カセットテープの複製・頒布について、以下のとおり、明示又は黙示に許諾した(以下、被控訴人の主張する著作権使用許諾契約を「本件許諾契約」という。)。 (ア) 本件原著作物1に係るカセットテープ 許諾の時期 被控訴人と亡Aとの間で「著作権使用(複製・頒布)契約書」(乙1)が作成された昭和59年6月28日頃、又は被控訴人とBとの間で「著作権使用(複製・頒布)契約書」(乙3)が作成された昭和61年8月13日頃 許諾の期間 生長の家の文書伝道のために必要とされる期間(乙1ないし3に係る契約が存続している全期間) 印税支払先 亡Aないしその相続人ら (イ) 本件原著作物2に係るカセットテープ 許諾の時期 被控訴人とBとの間で「著作権使用(複製・頒布)契約書」(乙2)が作成された昭和60年11月11日頃、又は被控訴人とBとの間で「著作権使用(複製・頒布)契約書」(乙3)が作成された昭和61年8月13日頃 許諾の期間 生長の家の文書伝道のために必要とされる期間(乙1ないし3に係る契約が存続している全期間) 印税支払先 亡Aの相続人ら (ウ) 本件原著作物3に係るカセットテープ 許諾の時期 被控訴人とBとの間で「著作権使用(複製・頒布)契約書」(乙3)が作成された昭和61年8月13日頃 許諾の期間 生長の家の文書伝道のために必要とされる期間(乙1ないし3に係る契約が存続している全期間) 印税支払先 亡Aの相続人ら イ 前記2(1)の被控訴人の主張イ(ア)ないし(ク)の事情によれば、控訴人は、乙1ないし3の契約書に係る契約を有効なものと認め、同契約に基づいて、被控訴人が本件カセットテープを複製・頒布し、その印税を亡A又はその相続人らに対して支払うことを明示又は黙示に許諾していたものと認められるべきである。 〔控訴人の主張〕 ア 否認する。 控訴人が、被控訴人に対し、本件原著作物の複製や頒布について許諾した事実はない。 イ 控訴人が被控訴人の主張する本件許諾契約を締結したとすれば、それは、控訴人の寄附行為上、「基本資産の処分」に該当し、理事会決議及び主務官庁の承認を要することになる(甲41の6条)。 しかしながら、控訴人において、かかる許諾について理事会決議や主務官庁の承認を得た事実はない。控訴人が、寄附行為に定められた手続を経ることなく本件許諾契約を締結することはあり得ない。 また、仮に、控訴人が本件許諾契約を締結したのであれば、被控訴人は、亡Aの相続人らへの印税の支払を、その都度、控訴人に開示しなければならないし、控訴人は、毎年の会計報告等でその「寄附」の内容を対内的にも対外的にも明らかにしなければならないはずである。 しかしながら、被控訴人は、本訴において、印税支払明細書(乙38の1ないし26等)を提出するまで、控訴人に対し、亡A又はその相続人らに対する印税の支払について一切報告をせず、したがって、控訴人においても、亡A又はその相続人らに対する印税の支払を「寄附」として会計処理したり、監督官庁に報告したりしたことはない。 これらのことからも、控訴人が、本件許諾契約など締結していないことは明らかである。 ウ 被控訴人は、控訴人の許諾を得ることなく、昭和59年8月頃から本件カセットテープを複製・頒布し、控訴人の有する本件原著作物に係る著作権を侵害したものである。 (2) 争点3−2(不法行為による損害賠償請求権の有無)について ア 争点3−2−1(著作権侵害につき、被控訴人の故意又は過失の有無)について 〔控訴人の主張〕 被控訴人は、本件原著作物に係る著作権が、録音物による複製・頒布の権利を含め、控訴人に帰属していることを、著作権侵害行為の当初から認識していた。 しかも、本件原著作物に係る著作権が、録音物による複製・頒布の権利を含め、控訴人に帰属していたことは、既に、F弁護士が作成した昭和61年7月5日付け鑑定書(甲16)や同月25日付け意見書(甲17)等においても明らかとされていた。 したがって、被控訴人には著作権侵害について、故意又は過失がある。 〔被控訴人の主張〕 否認ないし争う。 被控訴人が昭和59年8月頃から本件原著作物の複製物である本件カセットテープを頒布してきたことは認めるが、被控訴人は、本件カセットテープを複製・頒布する権利は、亡Aやその相続人らにあるものと信じて、これらの者と著作権使用契約を締結し、同契約に基づいて、本件カセットテープの複製・頒布を行い、しかも、その印税を亡Aやその相続人らに支払ってきたのであるから、被控訴人には、著作権侵害について故意も過失も存しない。 イ 争点3−2−2(損害の発生及びその額)について 〔控訴人の主張〕 控訴人は、被控訴人による本件カセットテープの複製・頒布により、以下の損害を被った。 (ア) 印税相当額の損害 控訴人が本件原著作物に係る著作権の行使につき受けるべき金銭の額は、本件カセットテープの定価の10%に相当する額である(著作権法114条3項)。 a 亡Aに支払われた印税合計1076万4000円(印税率20%。甲73)の半額に相当する538万2000円 b Cに昭和60年7月20日から昭和61年5月20日までの間に支払われた印税のうち定価の10%に相当する額の合計322万2000円 c Bに昭和61年5月31日及び同年8月31日に支払われた印税を定価の10%に換算した額の合計198万円 d 昭和61年8月6日以降平成20年2月までに製作した本件カセットテープについて、定価の10%に相当する額の合計2222万2300円 e 小計 3280万6300円 (イ) 弁護士費用 控訴人は、被控訴人による著作権侵害行為により、本件訴訟の提起を余儀なくされ、弁護士費用相当額として200万円の損害を被った。 (ウ) 合計 3480万6300円 〔被控訴人の主張〕 否認ないし争う。 ウ 争点3−2−3(消滅時効の成否)について (ア) 争点3−2−3−1(時効の中断の有無)について 〔控訴人の主張〕 前記2(4)イの控訴人の主張と同じ。 〔被控訴人の主張〕 前記2(4)イの被控訴人の主張と同じ。 (イ) 争点3−2−3−2(時効援用権の喪失又は濫用の有無)について 〔控訴人の主張〕 前記2(4)ウの控訴人の主張と同じ。 〔被控訴人の主張〕 前記2(4)ウの被控訴人の主張と同じ。 (3) 争点3−3(不当利得返還請求権の有無)について ア 争点3−3−1(利得の有無及びその額)について 〔控訴人の主張〕 (ア) 被控訴人は、本件カセットテープを複製・頒布しながら、本件原著作物の著作権者である控訴人に対し、その印税の支払をしなかった。 被控訴人による本件カセットテープの複製・頒布により、控訴人は、印税相当額(定価の10%)の損失を被る一方、被控訴人は、法律上の原因なく、著作権者に対して支払うべき印税相当額(定価の10%)と同額の利得を得た。 (イ) 被控訴人は民法704条の悪意の受益者に当たる。 (ウ) 本件カセットテープの複製・頒布により、被控訴人が得た利得額は、前記(2)イの控訴人の主張(ア)eと同額の3280万6300円である。 (エ) なお、前記(2)イの控訴人の主張(イ)記載のとおり、控訴人は、被控訴人による著作権侵害行為により、本件訴訟の提起を余儀なくされ、弁護士費用相当額として200万円の損害を被った(請求額合計3480万6300円)。 〔被控訴人の主張〕 (ア) 否認ないし争う。 (イ) 被控訴人は、亡A及びその相続人らとの間の著作権使用契約に基づき、本件カセットテープを複製・頒布したものであり、その印税(定価の20%)を亡A及びその相続人らに対して支払った。 したがって、被控訴人が、本件カセットテープの複製・頒布により得た利益には法律上の原因があり、また、被控訴人は、本件カセットテープの複製・頒布に係る印税を亡A及びその相続人らに対して支払ったのであるから何らの利得も得ていない。 イ 争点3−3−2(消滅時効の成否)について (ア) 争点3−3−2−1(時効の中断の有無)について 〔控訴人の主張〕 前記2(4)イの控訴人の主張と同じ。 〔被控訴人の主張〕 前記2(4)イの被控訴人の主張と同じ。 (イ) 争点3−3−2−2(時効援用権の喪失又は濫用の有無)について 〔控訴人の主張〕 前記2(4)ウの控訴人の主張と同じ。 〔被控訴人の主張〕 前記2(4)ウの被控訴人の主張と同じ。 第4 当裁判所の判断 1 前提事実に証拠(甲2ないし5、7ないし10、16ないし22、24、33ないし42、44、51、52、甲53の1・2、甲54の1・2、甲55の1・2、甲56の1・2、甲57、65、66、甲68の1・2、乙1ないし4、18、24、27、乙28の1ないし10、乙36、乙38の1ないし26、乙46の1・2、乙47、乙48の1ないし4、乙49、原審証人M、原審控訴人代表者I本人、原審被控訴人代表者本人)及び弁論の全趣旨を総合すると、以下の事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。 (1) 亡Aは、昭和5年に月刊雑誌「生長の家」を創刊すると、それ以降、同誌に数々の論文等の言語の著作物を発表してきた。 亡Aが月刊雑誌「生長の家」に発表した著作物の内容を整理し、順序立て、説明を補うなどして編纂した書籍が、「生命の實相」の題号を付して、戦前に10書籍(「生命の實相<革表紙版>」(全1巻)(初版発行昭和7年1月1日)、「久遠の實在」(副題「生命の實相第2巻」)(初版発行昭和8年12月25日)、「生命の實相<黒布表紙版>」(全20巻)(初版発行昭和10年1月25日から昭和16年12月25日)、「生命の實相〈革表紙版(地・水・火・風・空・教・行・信・證)〉」(全9巻)(初版発行昭和10年10月1日から昭和14年3月15日)、「生命の實相<豪華大聖典>」(全1巻)(初版発行昭和11年11月22日)、「生命の實相<縮刷中聖典>」(全1巻)(初版発行昭和12年6月1日)、「生命の實相<ビロード表紙版>」(全9巻)(初版発行昭和13年3月20日から昭和14年3月15日)、「生命の實相<菊版>」(全13巻)(初版発行昭和14年5月20日から昭和16年10月15日)、「生命の實相<人造羊皮版>」(全9巻)(初版発行昭和14年11月20日から昭和15年6月20日)、「生命の實相<満州版(乾・艮・兌・離)>」(初版発行昭和18年8月15日から昭和20年5月5日))出版された。 (2) 控訴人は、亡Aの宗教的信念に基づき、困窮家庭の援護、社会福祉施設の経営等を目的として、昭和21年1月8日に設立された財団法人(平成24年4月1日、公益財団法人に移行)であり、亡Aが設立者として寄附行為を行い、東京都長官の許可を受けて設立された。 控訴人の書面としての寄附行為である「財団法人生長の家社會事業団寄附行為」(甲39、40)には、控訴人の基本資産として「A著作「生命の實相」ノ著作権」が、流動資産として「基本資産ヨリ生スル収入」が規定され(5条)、また、基本資産は社会環境の自然的変化による減価滅失等による外、人為的には消費又は消滅せしめることを得ない旨(7条)、控訴人の経費は流動資産をもって支弁する旨(9条)規定されている。 そして、亡Aが作成した昭和22年8月1日付け「證明書」(甲38)には、「A著作「生命の實相」ノ著作権」を昭和21年1月8日控訴人へ寄附行為したことを証明する旨の記載がある。 なお、上記寄附行為は、その後、主務官庁の認可を経て変更されており、そこでは、控訴人の資産として、「A著「生命の實相」等の著作権」、「資産から生ずる収入」と規定されている(5条。甲41)。 また、控訴人は、平成24年4月1日、公益財団法人に移行したが、その定款(甲42)には、亡Aの著作した「生命の實相」、「真理」などの著作権とともに、「聖経 甘露の法雨」、「聖経 天使の言葉」及び「聖経 続々甘露の法雨」の著作権が控訴人の公益目的事業を行うために不可欠な特定の財産と規定されている(5条)。 (3) 日本教文社は、亡Aの提唱により、昭和9年11月25日に設立されたものであり、その設立後は、日本教文社において、亡Aの著作物の編集、出版を行うようになった。 生長の家、控訴人及び日本教文社は、控訴人が亡Aから、同人の著作した「聖経 甘露の法雨」の著作権を寄附され、その著作権を控訴人が有することを前提に、控訴人及びその出版権者である日本教文社が、生長の家に対し、その信徒に対して「聖経 甘露の法雨」を肌守り用等に非売品として複製、交付することに同意すること等を内容とする昭和34年11月22日付け「聖経「甘露の法雨」の複製承認に関する覚書」(甲44)を作成した。 (4) 亡Aは、寄附行為により「生命の實相」の著作権を控訴人に移転した以外にも、控訴人の社会厚生事業の運営を援助するため、長年にわたり、多数の書籍について、著作権を移転するなどしてその印税を控訴人に得さしめていた。 (5) 亡Aと被控訴人は、昭和59年6月28日、亡Aが被控訴人に対し、本件原著作物1(「聖経 甘露の法雨」)を録音物として複製し、頒布すること(頒布物の体裁はカセットテープ)を許諾し、被控訴人が亡Aに対し、印税として定価の20%を、複製品を製作した月の翌月末に支払うこと等を内容とする著作権使用契約を締結した(乙1)。 (6) 亡Aは、昭和60年6月17日死亡した。 (7) 亡Aの死亡後、亡Aの相続人代表であるBと被控訴人は、昭和60年11月11日、Bが被控訴人に対し、本件原著作物2(「聖経 天使の言葉」(録音版))を複製し、頒布すること(頒布物の体裁はカセットテープ)を許諾し、被控訴人が亡Aの相続人らに対し、印税として定価の20%(印税配分は、C10%、B5%、D5%)を複製品を製作した月の翌月末に支払うこと等を内容とする著作権使用契約を締結した(乙2)。 (8) 亡Aの相続人であるC、B、Dは、昭和60年12月13日、亡Aの遺産について、本件遺産目録記載の著作物並びに録音テープに対する著作権の共有持分2分の1をCが、各4分の1をB及びDがそれぞれ取得することを含む本件遺産分割協議を行った。 本件遺産目録には、「録音テープ」として、「127 聖経甘露の法雨」、「129 その他被相続人を著作者とする一切の言語の著作物」との記載がある(乙4)。 (9) 昭和61年3月14日に開催された生長の家の常任理事会において、「お守り「甘露の法雨」(仏語訳)の発行について」の議案が審議された際、「甘露の法雨」の著作権等の帰属が不明確であるとの意見があったため、これを明確にする目的で、生長の家は、F弁護士に、「甘露の法雨」の著作権の帰属について鑑定意見を求めた。 (10) F弁護士は、昭和61年7月5日付け「鑑定書」(甲16)及び同月25日付け「意見書」(甲17)を生長の家宛に提出した。 上記鑑定書には、鑑定結果として、亡A著作の本件原著作物1(詩編「甘露の法雨」)に係る著作権は、著作権法27条及び同法28条に規定する権利を含めて、控訴人に帰属する旨が記載されていた。 また、上記意見書には、@本件原著作物1(詩編「甘露の法雨」)を含む「生命の實相」の著作権は、控訴人の設立行為の寄附財産とされ、昭和21年1月8日、控訴人の設立により、控訴人に帰属するに至ったが、控訴人の寄附行為において、「生命の實相」の著作権を基本財産とするとのみ記載されていることなどから、録音物による複製・頒布権が亡Aに留保されたものとは考えられないこと、A寄附行為により「生命の實相」の著作権全部が控訴人に帰属したものと解され、昭和59年6月28日に亡Aと被控訴人との間で締結された著作権使用契約(乙1)は無効であること、B今後の処理については、早急に控訴人と被控訴人との間で、録音物による複製・頒布に関する著作権使用許諾契約を新規に締結すべきであること、C本件原著作物1に係る著作権全部が控訴人に帰属していることについて、関係者の認識が十分ではなく、かつ、控訴人もこれを看過していたこと等の諸事情を考慮して、控訴人は、既発行分の印税については償還を免除し、控訴人において新規契約締結時以降の印税の支払を受けるものとするのが妥当であること、が記載されていた。 (11) 昭和61年7月29日に開催された生長の家の常任理事会において、「「甘露の法雨」の著作権の帰属者と、お守り「甘露の法雨」(仏語訳)の発行について」の議案が審議された際、F弁護士から提出された鑑定書及び意見書の内容を踏まえて、外国語に翻訳された「甘露の法雨」を宗教上の授与品として調製・下附するために、著作権者である控訴人及び出版権者である日本教文社から、著作権及び出版権の無償使用許諾を受ける旨議決したが、その際、亡Aの著作物の著作権の帰属と印税等の諸問題について、さらに専門家の意見を聞くことが確認され、また、生長の家、控訴人、日本教文社及び被控訴人の4者で協議するよう生長の家理事長が勧告することとされた(甲35)。 (12) 控訴人、日本教文社及び生長の家は、控訴人が著作権者、日本教文社が出版権者であることを前提に、控訴人及び日本教文社が、生長の家に対し、日本語以外の言語に翻訳した著作物(宗教上の授与品に限る。)に係る控訴人の有する著作権及び日本教文社の出版権の使用(調製・授与)を、昭和34年11月22日付け「覚書」(甲44)と同様に、無償で許諾すること等を内容とする昭和61年8月2日付け「著作権及び出版権の無償使用許諾契約書」(甲57)を作成した。 (13) 控訴人と被控訴人とは、本件原著作物1及び2の録音物の複製・頒布に関し、昭和61年8月6日付け「著作権使用契約書」(甲51)を、本件原著作物3の録音物の複製・頒布に関し、同日付け「著作権使用契約書」(甲52)をそれぞれ作成した。 また、亡Aの相続人代表B、控訴人及び被控訴人の三者を作成名義とする、以下の内容を有する昭和61年8月6日付け「覚書」(甲65)については、控訴人及び被控訴人は、これに押印したものの、Bはこれに押印せず、「覚書」の締結には至らなかった。 ア 本件原著作物1(聖経「甘露の法雨」)に関する昭和59年6月28日付け著作権使用契約書(乙1)、本件原著作物2(聖経「天使の言葉」)に関する昭和60年11月11日付け著作権使用契約書(乙2)は、昭和61年8月6日限りをもって、B、被控訴人の双方において合意解約する。 イ 上記既存の契約に基づき、上記解約日までにされた個々の処理は、B、被控訴人、控訴人の関係者間では、その効力に変更はないものとする。 ウ 本件原著作物1及び2につき、今後は、その著作権帰属者である控訴人が、被控訴人との間で、著作権使用契約を締結し、印税は控訴人に支払われることにつき、Bは異存はない。 (14) 被控訴人は、昭和61年8月13日、亡Aの相続人代表であるBとの間で、同人が被控訴人に対し、本件原著作物3(「聖経 続々甘露の法雨」(録音版))を複製し、頒布することを許諾し、被控訴人が亡Aの相続人らに対し、印税として定価の20%(印税配分は、C10%、B5%、D5%)を複製品を製作した月の翌月末に支払うこと等を内容とする著作権使用契約を締結した(乙3)。 (15) 昭和61年9月頃には、生長の家の関係者により、亡Aの相続人代表であるB、控訴人、日本教文社、被控訴人の4者間において、聖経「甘露の法雨」、聖経「天使の言葉」、聖経「続々甘露の法雨」の著作権の帰属について、今後は、@出版物として複製することを日本教文社に許諾する権利は控訴人に帰属する、A著作権のうち、上記@以外の利用権は亡Aの相続人に帰属する、B亡Aの相続人代表は、録音物として複製・頒布する排他的許諾を被控訴人に付与する、C被控訴人は、許諾の対価(印税等)を相続人に支払う、と取り扱うこととすることを合意する旨が記載された「方針協議書」(甲66)も起案されたが、これは作成されるに至らなかった。 また、控訴人は、昭和61年11月頃にも、F弁護士から、聖典や聖経の著作権や印税の問題について、生長の家の経典に係る問題であるので、Bや生長の家との間で方針を話し合う方がよいなどの助言を得た(甲68の1・2)。 (16) その後も、生長の家の予算委員会において、亡Aから生長の家に対して著作権の譲渡はされておらず、印税が寄贈されていただけではないか、現在、生長の家と日本教文社との間で締結されている出版契約の内容にも不備があるのではないかなどという意見が出されるなどした。 そこで、生長の家では、亡Aの著作物の著作権の帰属と印税等の諸問題に関し、F弁護士から、著作権の贈与があったと考えるのが妥当であると思われるとの意見やこの際著作権の帰属について確認をとっておいた方がよいとの助言を、K弁護士から、昭和62年11月30日付け「著作権の帰属とその範囲に関する鑑定意見書」(甲34)を、それぞれ得るなどの過程を経て、昭和63年2月23日に開催された常任理事会において、「宗教法人「生長の家」へ御寄贈された著作物に関する件」の議案が審議され、上記弁護士らの意見を踏まえ、議案書に添付された一覧表記載の亡Aの著作に係る著作物(なお、これに本件カセットテープは含まれていない。)の著作権使用の対価を収受する権利(著作財産権)を、亡Aから譲渡されていることを確認するため、関係者を交えて確認書を作成すること、確認書は著作物ごとに作成することなどが議決された(甲36)。 (17) 控訴人は、昭和63年3月22日、亡Aの相続人らと控訴人とが、生長の家の理事長であるNの立会いの上で、@亡Aの著作に係る添付の「著作物の表示」記載の著作物(「聖経 甘露の法雨(大型)」、「聖経 甘露の法雨(中型)」、「聖経 天使の言葉」、「聖経 続々甘露の法雨」を含む。)の著作権が、著作権法27条に定める翻訳権、翻案権等及び同法28条に定める二次的著作物利用に関する原著作者の権利を含めて全て、亡Aから控訴人に基本財産と指定して寄附され、控訴人に帰属していること、A著作権移転の登録について、登録義務者として必要な一切の件につき、控訴人理事長に委任すること、を相互に確認することを内容とする「確認書」(甲7、乙18)を、亡Aの相続人らにおいて共有著作権の代表行使者と定められたBとの間で作成した。 また、代表行使者と定められたBと控訴人とは、同日、上記「確認書」記載の著作物について、亡Aから控訴人に著作権譲渡がされた年月日について「覚書」(甲8)を作成したが、同書面において、「聖経 甘露の法雨(大型)」及び「聖経 甘露の法雨(中型)」の著作権譲渡日は昭和21年1月8日、「聖経 天使の言葉」の著作権譲渡日は昭和23年12月10日、「聖教 続々甘露の法雨」の著作権譲渡日は昭和25年12月20日とされた。 (18) 控訴人及び亡Aの相続人らは、F弁護士を代理人として、昭和63年4月18日、本件原著作物について著作権の譲渡登録の申請をし、@本件原著作物1につき、昭和21年1月8日に亡Aから控訴人に著作権(著作権法27条及び28条に規定する権利を含む)の譲渡があったことを原因とする、昭和63年4月27日付け著作権の譲渡登録が、A本件原著作物2につき、昭和23年12月10日に亡Aから控訴人に著作権(著作権法27条及び28条に規定する権利を含む)の譲渡があったことを原因とする、昭和63年4月27日付け著作権の譲渡登録が、B本件原著作物3につき、昭和25年12月20日に亡Aから控訴人に著作権(著作権法27条及び28条に規定する権利を含む)の譲渡があったことを原因とする、昭和63年4月27日付け著作権の譲渡登録が、それぞれされた(甲2ないし5)。 (19) 昭和63年4月19日に開催された生長の家の常任理事会において、「財団法人「生長の家社会事業団」に帰属している著作権の管理について」との議案が審議され、@確認書(甲7、乙18)添付の「著作物の表示」に記載された著作物に関して、各出版毎に一点づつ管理することを生長の家に委任する形態にすること、A控訴人と日本教文社の間で締結している現行の出版契約に、生長の家が控訴人からの受任者として新たに加わる形態に変えることを、出版使用許諾契約に係る契約書の書式案や用いる委任状の書式案とともに、賛成多数で可決した(乙27)。 (20) 控訴人は、生長の家を代理人として、日本教文社との間で、上記常任理事会に提出された提案書面に添付された委任状及び契約書の書式を用い、昭和63年7月頃以降順次、本件原著作物について、書籍(「聖経 甘露の法雨(大型)」、「聖経 甘露の法雨(中型)」、「聖経 天使の言葉」、「聖経 続々甘露の法雨」等)ごとに、出版使用許諾契約を締結した(乙28の1ないし10)。 (21) 控訴人は、生長の家の理事長を代理人として、@平成11年9月頃には、著作権者である控訴人が生長の家ブラジル伝道本部に対して本件原著作物1(「聖経 甘露の法雨」)を海外において録音物として複製し、頒布することを許諾する旨の著作権無償使用(複製・頒布)許諾契約を締結し(甲53の1・2)、A平成12年10月頃には、著作権者である控訴人が生長の家ブラジル伝道本部に対して本件原著作物2(「聖経 天使の言葉」)及び3(「聖経 続々甘露の法雨」)を海外において録音物として複製し、頒布することを許諾する旨の著作権無償使用(複製・頒布)許諾契約を締結した(甲54、甲55の各枝番)。 (22) 控訴人と被控訴人は、平成16年10月20日、控訴人が被控訴人に対し、題号を「邦楽交声曲「甘露の法雨」」とする著作物(本件原著作物1(「聖経 甘露の法雨」)を原著作物として、Oが作曲し、O社中が演奏したものの歌詞)を録音物として複製し、頒布すること(頒布物の体裁はコンパクトディスク)を許諾し、被控訴人が控訴人に対し、印税として税抜価格の5%を、複製品を製作した月の翌月末に支払うこと等を内容とする著作権使用契約を締結した(甲10)。 控訴人と被控訴人は、平成18年8月11日、控訴人が被控訴人に対し、題号を「聖経 甘露の法雨」とする著作物(本件原著作物1を原著作物としてEが謹誦したもの)を録音物として複製し、頒布すること(頒布物の体裁はコンパクトディスク)を許諾し、被控訴人が控訴人に対し、印税として税抜価格の10%を、複製品を製作した月の翌月末に支払うこと等を内容とする著作権使用契約を締結した(甲9)。 また、控訴人は、平成18年頃以降、被控訴人に対し、本件カセットテープの複製・頒布について著作権使用契約を締結することを求め、被控訴人との間で契約書案の提示など交渉が行われたが、結局、契約書を取り交わすには至らなかった(甲18ないし22、乙49)。 (23) 被控訴人は、昭和59年8月頃以降、本件カセットテープを複製し、頒布しているが、控訴人に対し、その印税を支払わず、亡A又はその相続人らに対して、「印税」として金銭を支払ってきた。 2 争点1(控訴人は本件原著作物の著作権を有するか否か)について (1) 控訴人は、本件原著作物1(「聖経 甘露の法雨」)に係る著作権は、著作権法27条及び28条に規定する権利を含めて亡Aの寄附行為により控訴人に帰属し、本件原著作物2及び3に係る著作権は、同法27条及び28条に規定する権利を含めて、それぞれその初版発行日に亡Aから控訴人への寄附により控訴人に帰属した旨主張する。 (2) 本件原著作物の著作権の帰属について ア 本件原著作物1について (ア) 前記1認定事実によれば、亡Aが保有していた「生命の實相」の題号を付して戦前に出版された10書籍の著作物に係る著作権は、亡Aが行った控訴人の設立行為の寄附財産であって、昭和21年1月8日に控訴人が設立されたことにより、亡Aから控訴人へ移転し、控訴人の基本資産となったものと認められる。 そして、前記第2の3(2)ア記載のとおり、本件原著作物1(「聖経 甘露の法雨」)は、亡Aが創作した著作物であり、昭和12年頃に発行された「生命の實相」中に収録されていたものであるから、控訴人の設立により、その基本資産となった「生命の實相」に含まれる著作物であるといえる。 (イ) また、寄附行為には、控訴人の基本資産として「A著作「生命の實相」ノ著作権」が、流動資産として「基本資産ヨリ生スル収入」が規定され(5条)、基本資産は社会環境の自然的変化による減価滅失等による外、人為的には消費又は消滅せしめることを得ない旨(7条)、控訴人の経費は流動資産をもって支弁する旨(9条)規定されていたこと、寄附行為や亡A作成に係る「證明書」(甲38)には、「生命の實相」に係る著作権そのものではなく、著作権収入を取得する権利のみを寄附財産とする意思であったことをうかがわせるような記載はないことからすれば、控訴人の設立によりその基本資産となった権利は、著作権収入を取得する権利に限られるものではなく、これを含めて、「生命の實相」に係る著作権そのものであったと認められる。 (ウ) さらに、寄附行為や亡A作成に係る「證明書」(甲38)には、寄附行為による移転の対象とする著作権を特定の支分権に限る旨の記載はないことに加え、前記1認定のとおり、@亡Aの死亡後、生長の家の常任理事会において本件原著作物1に係る著作権等の帰属が不明確であるとの意見があったため、これを明確にする目的で弁護士から鑑定意見の提出を受けるなどの経過を踏まえた上、控訴人と亡Aの相続人ら(代表行使者B)との間で、本件原著作物に係る著作権が、著作権法27条に定める翻訳権、翻案権等及び同法28条に定める二次的著作物利用に関する原著作者の権利を含めて全て亡Aから控訴人に基本財産と指定して寄附され、控訴人に帰属していることを確認する旨の確認書(甲7)が作成されたこと、A控訴人と亡Aの相続人ら(代表行使者B)との間で、本件原著作物の著作権譲渡日についての「覚書」(甲8)を作成後、控訴人及び亡Aの相続人らは、F弁護士を代理人として、本件原著作物について著作権の譲渡登録の申請をし、本件原著作物1につき、昭和21年1月8日に亡Aから控訴人に著作権(著作権法27条及び28条に規定する権利を含む)の譲渡があったことを原因とする、昭和63年4月27日付け著作権の譲渡登録が、本件原著作物2につき、昭和23年12月10日に亡Aから控訴人に著作権(著作権法27条及び28条に規定する権利を含む)の譲渡があったことを原因とする、昭和63年4月27日付け著作権の譲渡登録が、本件原著作物3につき、昭和25年12月20日に亡Aから控訴人に著作権(著作権法27条及び28条に規定する権利を含む)の譲渡があったことを原因とする、昭和63年4月27日付け著作権の譲渡登録が、それぞれされたことに照らせば、控訴人の設立によりその基本資産となった権利は、著作権法27条及び28条に規定する権利を含めた「生命の實相」に係る著作権の全てであると認められる。 (エ) 以上のとおり、本件原著作物1に係る著作権(著作権法27条及び28条に規定する権利を含む。)は、昭和21年1月8日、亡Aから控訴人への譲渡により、控訴人に帰属したものと認められる。 イ 本件原著作物2及び3について 前記1認定のとおり、亡Aは、寄附行為により「生命の實相」の著作権を控訴人に移転した以外にも、控訴人の社会厚生事業の運営を援助するため、長年にわたり、多数の書籍について、著作権を移転するなどしていたこと、本件原著作物2(「聖経 天使の言葉」)及び3(「聖経 続々甘露の法雨」)は、いずれも本件原著作物1(「聖経 甘露の法雨」)の続編であること(甲3、4、甲12の3)に加え、前記ア(ウ)@及びA記載の事実に照らせば、本件原著作物2に係る著作権(著作権法27条及び28条に規定する権利を含む。)は、本件原著作物2が最初に公表された昭和23年12月10日に、本件原著作物3に係る著作権(著作権法27条及び28条に規定する権利を含む。)は、本件原著作物3が最初に公表された昭和25年12月20日に、亡Aから控訴人への譲渡により、それぞれ控訴人に帰属したものと認められる。 (3) 被控訴人の主張について ア 被控訴人は、亡Aが、控訴人の設立趣意書(乙19)に「恒久的流動資金として「生命の實相」の著作権収入を寄付行為す。」と記載したこと等を根拠に、亡Aが寄附行為により控訴人に移転した権利は、著作権ではなく「著作権収入」であったなどと主張する。 しかしながら、亡A作成の「設立趣意書」(乙19)中の「恒久的流動資金として、「生命の實相」の著作権収入を寄附行為す。」との記載は、前記(2)ア(イ)記載の寄附行為の5条、7条及び9条の規定を前提とすれば、基本資産である「生命の實相」の著作権から得られる著作権使用料を「恒久的流動資金」と表現し、亡Aが「生命の實相」の著作権を基本資産を組成する寄附財産として出捐することを、著作権収入という観点から説明したものであると自然に理解することができる。 そして、寄附行為や亡A作成に係る「證明書」(甲38)には、「生命の實相」に係る著作権そのものではなく、著作権収入を取得する権利のみを寄附財産とする意思であったことをうかがわせるような記載はないことからすれば、前記(2)ア(イ)記載のとおり、控訴人の設立によりその基本資産となった権利は、著作権収入を取得する権利に限られるものではなく、これを含めて、「生命の實相」に係る著作権そのものであったと認められる。 したがって、被控訴人の上記主張は理由がない。 イ 被控訴人は、亡Aの死後、同人の著作物に係る著作権の帰属等に関し、亡Aの相続人ら、生長の家及び控訴人との間で、協議や調整が行われた結果、本件遺産目録(乙4)や本件確認書(甲7)が作成されたものであるが、本件遺産目録には、亡Aの遺産として「録音テープ」の項目があり、「127 聖経甘露の法雨」、「129 その他被相続人を著作者とする一切の言語の著作物」が挙げられているのに対し、本件確認書には、録音テープに関する記載はないことから、本件カセットテープの複製や頒布に係る権利については、亡Aの相続人らに留保されていたものと解すべきであるなどと主張する。 しかしながら、本件遺産目録の作成及びこれを前提とした本件遺産分割協議は、亡Aの相続人らの行為にすぎず、これに控訴人が関与したことを認めるに足りる証拠はない。 かえって、本件確認書(甲7)は、添付された「著作物の表示」に表示された題号「聖経 甘露の法雨(大型)」の言語の著作物、題号「聖経 甘露の法雨(中型)」の言語の著作物、題号「聖経 天使の言葉」の言語の著作物、題号「聖経 続々甘露の法雨」の言語の著作物に関する著作権は、著作権法27条に定める翻訳権・翻案権等及び同法28条に定める二次的著作物利用に関する原著作者の権利を含めて全て亡Aから控訴人に基本財産と指定して寄附され、控訴人に帰属していることを確認することを内容とするものであり、かつ、控訴人及び亡Aの相続人らは、F弁護士を代理人として、本件原著作物について、亡Aから控訴人に対し、「著作権(著作権法27条及び28条に規定する権利を含む)」の譲渡があったことを原因とする著作権譲渡登録の申請をし、かかる譲渡登録がされていることからすれば、控訴人と亡Aの相続人らとの間で、本件原著作物の録音物(本件カセットテープ)としての複製や頒布に係る権利が亡Aの相続人らに帰属するものと確認されていたとは考え難い。 そして、寄附行為や亡A作成に係る「證明書」(甲38)には、寄附行為による移転の対象が、著作権のうち特定の支分権に限られることをうかがわせるような記載はないことからすれば、前記(2)ア(ウ)記載のとおり、亡Aから控訴人に譲渡された権利は、著作権法27条及び28条に規定する権利を含めた本件原著作物に係る著作権の全てであると認められる。 したがって、被控訴人の上記主張は理由がない。 (4) 小括 以上によれば、控訴人は、本件原著作物1に係る著作権(著作権法27条及び28条に規定する権利を含む。)を昭和21年1月8日以降、本件原著作物2に係る著作権(著作権法27条及び28条に規定する権利を含む。)を昭和23年12月10日以降、本件原著作物3に係る著作権(著作権法27条及び28条に規定する権利を含む。)を昭和25年12月10日以降、それぞれ有するものと認められる。 3 主位的請求について (1) 争点2−1(控訴人と被控訴人との間で本件著作権使用契約が成立したか否か)について ア 控訴人は、被控訴人との間で、本件契約書(甲51、52)記載の内容の著作権使用契約(本件著作権使用契約)が成立した旨主張する。 イ 本件契約書については、その原本が証拠として提出されていないものの、被控訴人は、控訴人との間で、本件契約書を作成したものと認められる。 処分証書である本件契約書については、その成立が認められれば、特段の事情がない限り、これに記載されたとおりの内容の契約が成立したものと認めるべきであるから、以下、上記特段の事情が存するか否かにつき検討する。 ウ 特段の事情の存否について (ア) 控訴人は、本訴の訴状において、その請求原因として、本件原著作物に係る著作権を控訴人が有しており、被控訴人による本件カセットテープの複製・頒布は、かかる著作権を侵害する行為であるから、著作権法112条に基づき、本件カセットテープの頒布の差止め及び廃棄を求めるとともに、不法行為による損害賠償請求権又は不当利得返還請求権に基づき、本件カセットテープの印税相当額の金銭等の支払を求める旨主張していたのであって、本件著作権使用契約に基づく未払印税の請求はおろか、本件契約書が作成された事実すら一切主張していなかったが、原審における審理の途中で、控訴人の事務所の建替工事に伴って保管物を整理した際、偶然に発見されたとして、控訴人は、本件契約書写を証拠として提出するとともに、本件著作権使用契約に基づく未払印税請求を主位的請求として追加する訴えの変更をしたものである。 以上のとおり、控訴人及び被控訴人は、本件契約書の原本を保管・所持していないことに加え、両者とも、長らく本件契約書が作成された事実や本件契約書写の存在すら認識していなかったものと認められる(原審証人M、原審控訴人代表者I本人、原審被控訴人代表者本人、弁論の全趣旨)。 また、@控訴人は、被控訴人が昭和59年8月頃から本件カセットテープの複製・頒布を開始し、その後もこれを継続していることを認識していながら、本件契約書を作成した後も、被控訴人に対して、本件著作権使用契約に基づく印税の請求をしたことはないこと(乙5ないし16、39ないし45の各枝番、弁論の全趣旨)、前記1認定のとおり、A被控訴人において、本件契約書を作成した後も、控訴人に対し、本件カセットテープの印税を支払ったことはないこと、B控訴人は、本件契約書を作成した後である昭和61年11月頃にも、F弁護士から、聖典や聖経の著作権や印税の問題について、生長の家の経典に係る問題であるので、Bや生長の家との間で方針を話し合う方がよいとの助言を受けるなどしていたこと、C控訴人は、平成18年頃以降、本件カセットテープの複製・頒布について著作権使用契約を締結することを求め、被控訴人との間で交渉を行っていたこと等の事実も認められる。 さらに、前記1認定のとおり、被控訴人が亡A又はその相続人代表であるBとの間で締結した著作権使用契約(乙1、2)の合意解約や、その後は、控訴人と被控訴人との間で本件原著作物1及び2に係る著作権使用契約を締結し、控訴人に対して印税が支払われることについてBに異存がないことを等を内容とする、B、控訴人及び被控訴人の三者間での昭和61年8月6日付け「覚書」(甲65)の作成を予定していたが、控訴人及び被控訴人は「覚書」(甲65)に押印したものの、Bの押印は得られず、結局、上記覚書の締結には至らなかったものである。 このように、本件契約書作成後の控訴人や被控訴人の言動は、いずれも本件著作権使用契約が成立していないことを推認させるものであるから、本件契約書(甲51、52)に記載されたとおりの内容の契約が成立したものとは認められない特段の事情があるというべきである。 (イ) 控訴人は、本件契約書が、F弁護士の作成に係る鑑定書(甲16)及び意見書(甲17)が提出されたことにより、本件原著作物の著作権が控訴人に帰属することが生長の家の関係者の間で決着したことを踏まえ、同弁護士の法的見解に沿って作成されたものであるという経緯に鑑みれば、本件契約書に記載されたとおりの内容の契約が成立したものとは認められない特段の事情があるとはいえず、本件著作権使用契約の成立が認められるべきである旨主張する。 しかしながら、前記1認定事実によれば、@昭和61年3月14日に開催された生長の家の常任理事会において、本件原著作物1の著作権等の帰属が不明確であるとの意見があったため、これを明確にする目的で、F弁護士に、本件原著作物1に係る著作権の帰属について鑑定意見を求めることになったこと、AF弁護士は、昭和61年7月5日付け「鑑定書」(甲16)及び同月25日付け「意見書」(甲17)を生長の家宛に提出し、同月29日に開催された生長の家の常任理事会において、F弁護士から提出された鑑定書及び意見書の内容を踏まえて、外国語に翻訳された「甘露の法雨」を宗教上の授与品として調製・下附するために、著作権者たる控訴人及び出版権者たる日本教文社から、著作権及び出版権の無償使用許諾を受ける旨の議決がされたが、その際、亡Aの著作物の著作権の帰属と印税等の諸問題について、さらに専門家の意見を聞くことが確認され、また、生長の家、控訴人、日本教文社及び被控訴人の4者で協議するよう生長の家理事長が勧告することとされたこと、B控訴人、日本教文社及び生長の家は、日本語以外の言語に翻訳した著作物(宗教上の授与品に限る。)に関し、昭和61年8月2日付け「著作権及び出版権の無償使用許諾契約書」(甲57)を作成したこと、C亡Aの相続人代表であるB、控訴人及び被控訴人の3者を作成名義とする昭和61年8月6日付け前記「覚書」(甲65)については、控訴人及び被控訴人は、これに押印したものの、Bはこれに押印せず、「覚書」の締結には至らなかったこと、D被控訴人は、昭和61年8月13日、亡Aの相続人代表であるBとの間で、本件原著作物3(「聖経 続々甘露の法雨」(録音版))に関し、著作権使用契約(乙3)を締結したこと、Eその後も、生長の家の予算委員会において、亡Aから生長の家に対して著作権の譲渡はされておらず、印税が寄贈されていただけではないかなどの意見が出されたことから、生長の家では、亡Aの著作物の著作権の帰属と印税等の諸問題に関し、F弁護士やK弁護士に意見を求めるなどした上で、昭和63年2月23日に開催された常任理事会において、上記弁護士らの意見を踏まえた処理を行うことが議決されたこと、Fその後、控訴人と亡Aの相続人らは、生長の家の理事長の立会いの上で、昭和63年3月22日付け「確認書」(甲7)を作成し、ようやく昭和63年4月27日になって、本件原著作物について、亡Aから控訴人に著作権(著作権法27条及び28条に規定する権利を含む)の譲渡があったことを原因とする著作権譲渡登録(甲2ないし4)がされたこと、以上の経過が認められる。 上記経過に鑑みれば、本件契約書が作成された昭和61年8月6日当時、控訴人、被控訴人及び亡Aの相続人らを含めた生長の家の関係者間において、本件原著作物の著作権が控訴人に帰属すること及び印税の問題を含めこれを前提とした処理をすることが共通認識になっておらず、本件原著作物について、控訴人に著作権(著作権法27条及び28条に規定する権利を含む)の譲渡があったことを確定し登録したのは昭和63年4月になってからのことである。 したがって、控訴人の上記主張は理由がない。 (ウ) 控訴人は、本件契約書と同じ昭和61年8月6日付けで作成された「覚書」(甲65)に控訴人及び被控訴人の押印がされていることからすれば、本件契約書に記載されたとおりの内容の契約が成立したものとは認められない特段の事情があるとはいえず、本件著作権使用契約の成立が認められるべきである旨主張する。 しかしながら、前記(ア)記載のとおり、上記「覚書」にBの押印を得られなかったことは、むしろ、上記特段の事情を肯定すべき一事情であり、その他前記(ア)記載の事情を総合すると、控訴人の上記主張は理由がない。 エ 小括 以上によれば、控訴人と被控訴人との間で本件著作権使用契約が成立したとの事実は認められない。 (2) したがって、その余の点について判断するまでもなく、控訴人の主位的請求は理由がない。 4 予備的請求について (1) 争点3−1(控訴人と被控訴人との間で、本件カセットテープの複製・頒布に係る許諾契約が成立したか否か)について ア 被控訴人は、控訴人と被控訴人との間で、控訴人が被控訴人に対し、本件カセットテープを複製・頒布することを許諾し、その印税については、被控訴人から亡Aないしその相続人らに対して支払うことを内容とする本件許諾契約を明示又は黙示に締結したから、被控訴人による本件カセットテープの複製・頒布行為は、本件原著作物に係る著作権を侵害する行為には該当しない旨主張する。 この点については、控訴人が被控訴人に対し、本件カセットテープの複製・頒布を明示的に許諾したことを認めるに足りる証拠はない。そこで、被控訴人の主張する事情によって、これを黙示的に許諾した、すなわち、黙示の本件許諾契約が成立したものと認められるか否かについて、以下検討する。 イ 被控訴人の主張する事情について (ア) 被控訴人は、控訴人及び被控訴人との間で、本件契約書が一旦は作成されたものの、その後、これを有効な契約書として扱わないことが確認され、本件契約書の作成日である昭和61年8月6日のわずか1週間後には、被控訴人とBとの間で本件原著作物3に係る著作権使用契約(乙3)が締結されていることからすれば、この頃、生長の家、控訴人、被控訴人及び日本教文社の4者による協議により、本件カセットテープに係る著作権は亡Aの相続人らに帰属し、その印税は亡Aの相続人らが受領するとの調整がされ、控訴人及び被控訴人がこれを受け入れたものと認められるべきである旨主張する。 しかしながら、上記著作権使用契約(乙3)は、被控訴人とBとの間の契約にすぎず、控訴人がその当事者となっているものではないし、また、かかる契約の締結に控訴人が関与していた、あるいは、これを了承していたなどの事実を認めるに足りる証拠はない。 したがって、被控訴人がBとの間で昭和61年8月13日に著作権使用契約(乙3)を締結したとの事実から、控訴人と被控訴人との間で本件許諾契約が成立したとの事実を認めることはできない。 (イ) また、被控訴人は、被控訴人において、本件カセットテープの発行を公然と開始し、継続してきたが、控訴人は、本件カセットテープの複製・頒布が行われていることを認識していながら、被控訴人に対してその印税の支払を請求したことはないこと、控訴人において、被控訴人が本件カセットテープの印税を亡A又はその相続人らに対して支払っていることを知りながら、これに異議を述べず、むしろ、生長の家の常任理事会への本件カセットテープの複製計画案の提出及び同計画案の承認の経過に照らせば、被控訴人における上記印税の取扱いを承認していたものといえること、からすれば、控訴人と被控訴人との間で、本件許諾契約が黙示に成立したものと認められるべきである旨主張する。 しかしながら、被控訴人による亡A又はその相続人らに対する金銭の支払は、被控訴人の行為であって、控訴人が行ったものではない。被控訴人から控訴人に対し、本件カセットテープの印税が亡A又はその相続人らに対して支払われていることを報告した上で、被控訴人の上記取扱いについて、控訴人から了承を得ていたとの事実を認めるに足りる証拠はない。 そして、前記1認定のとおり、控訴人は、亡Aの相続人らとの間で、昭和63年3月22日付け「確認書」(甲7)を作成し、本件原著作物について、亡Aから控訴人に著作権(著作権法27条及び28条に規定する権利を含む)の譲渡があったことを原因とする著作権譲渡登録(甲2ないし4)を経た後は、@日本教文社との間で、昭和63年7月頃以降順次、本件原著作物について、契約書(乙28の1ないし10)を作成して、書籍ごとに出版使用許諾契約を締結し、A本件原著作物を海外において録音物として複製・頒布することにつき、著作権の無償使用を許諾することに関しても、生長の家ブラジル伝道本部との間で、平成11年9月頃及び平成12年10月頃、契約書(甲53ないし55の各枝番)を作成して、著作権無償使用(複製・頒布)許諾契約を締結し、B本件原著作物1を録音物(コンパクトディスク)として複製・頒布することにつき、被控訴人から印税の支払を受けて、著作権の使用を許諾することに関しても、被控訴人との間で、平成16年10月20日及び平成18年8月11日、契約書(甲9、10)を作成して、著作権使用契約を締結し、C平成18年頃以降、被控訴人に対し、本件カセットテープの複製・頒布について、著作権使用契約を締結することを求め、被控訴人との間で契約書案の提示など交渉を行っていたのであるから、これらの経過に照らすと、控訴人が契約書を作成することなく、黙示的に本件原著作物に係る著作権の使用を許諾するとは考え難い。 したがって、被控訴人の主張するこれらの事実をもって、黙示の本件許諾契約が成立していたものと認めるのは困難である。 (ウ) その他、被控訴人は、控訴人と被控訴人との間で本件許諾契約が黙示に成立したとして、るる主張するが、いずれも、上記事実を認めるに足りない。 ウ 以上のとおり、被控訴人の主張する事情をもって、本件許諾契約が黙示に成立したとの事実を認めるに足りず、他に上記事実を認めるに足りる証拠は存しないから、被控訴人の上記主張は理由がない。 エ 小括 以上によれば、被控訴人による本件カセットテープの複製・頒布行為は、本件原著作物に係る著作権を有する控訴人の許諾を得ることなく行われたものであり、上記著作権を侵害する行為であると認められる。 したがって、控訴人は、被控訴人に対し、著作権法112条1項に基づき、本件カセットテープの頒布の差止めを求めるとともに、同条2項に基づき、本件カセットテープの廃棄を求めることができる。 (2) 次に、控訴人は、不法行為による損害賠償請求権又は不当利得返還請求権に基づき、被控訴人に対し、本件カセットテープの定価の10%に相当する金銭及び弁護士費用の支払を求めているのに対し、被控訴人は不法行為による損害賠償請求権(消滅時効期間は3年)及び不当利得返還請求権(消滅時効期間は10年)のいずれについても消滅時効を援用しているので、事案に鑑み、争点3−3(不当利得返還請求権の有無)から判断することとする。 (3) 争点3−3−1(利得の有無及びその額)について ア 控訴人は、被控訴人による本件カセットテープの複製・頒布により、控訴人が、印税相当額(定価の10%)の損失を被る一方、被控訴人は、法律上の原因なく、著作権者に対して支払うべき印税相当額(定価の10%)と同額の利得を得たところ、被控訴人は悪意の受益者に該当する旨主張する。 イ 前記1認定のとおり、被控訴人は、本件カセットテープの複製・頒布につき、控訴人に対して一切印税を支払わず、亡A又はその相続人らとの間で、著作権使用契約(乙1ないし3)を締結し、亡A又はその相続人らに対して「印税」として本件カセットテープの定価の20%を支払ってきた。 控訴人は、前記2認定のとおり、本件原著作物1に係る著作権を昭和21年1月8日以降、本件原著作物2に係る著作権を昭和23年12月10日以降、本件原著作物3に係る著作権を昭和25年12月10日以降、有する者であるが、被控訴人は、著作権者から許諾を得ることなく、昭和59年8月頃以降、本件カセットテープを複製・頒布し、これにより、法律上の原因なく、少なくとも、著作権者である控訴人に支払うべき印税に相当する額の利得を得たものと認められる。 これに対し、控訴人は、被控訴人が著作権者である控訴人から許諾を得ることなく本件カセットテープを複製・頒布したことにより、印税に相当する額の損失を被ったものと認められる。 そして、前記第2の3(5)記載の事実及び前記1認定事実によれば、本件カセットテープの複製・頒布につき、著作権者である控訴人に支払われるべき印税額は、その定価の10%に相当する額であると認めるのが相当である。 また、前記1認定のとおり、@F弁護士から、昭和61年7月5日付け「鑑定書」(甲16)及び同月25日付け「意見書」(甲17)が生長の家宛に提出され、同月29日に開催された生長の家の常任理事会において、亡Aの著作物の著作権の帰属と印税等の諸問題について、生長の家、控訴人、日本教文社及び被控訴人の4者で協議するよう生長の家理事長が勧告することとされたこと、Aその後も、亡Aの著作物の著作権の帰属と印税等の諸問題に関し、F弁護士やK弁護士に意見を求めるなどした上で、昭和63年2月23日に開催された生長の家の常任理事会において、上記弁護士らの意見を踏まえた処理を行うことが議決されたこと、Bその後、控訴人と亡Aの相続人らは、生長の家の理事長の立会いの上で、昭和63年3月22日付け「確認書」(甲7)を作成し、同年4月27日には、本件原著作物について、亡Aから控訴人に著作権(著作権法27条及び28条に規定する権利を含む)の譲渡があったことを原因とする著作権譲渡登録(甲2ないし4)がされたこと、からすれば、被控訴人は、遅くとも、上記著作権譲渡登録がされた後は、亡Aの相続人らは本件原著作物の著作権を有さず、本件カセットテープの複製・頒布を被控訴人に許諾する権原を有しないことを認識していたものと認められるから、昭和63年4月27日以降の本件カセットテープの複製・頒布について、被控訴人は民法704条の悪意の受益者に該当する。 ウ 以上によれば、控訴人は、被控訴人に対し、昭和63年4月27日以降の本件カセットテープの複製・頒布について、その定価の10%に相当する額の不当利得返還請求権を有する。 (4) 争点3−3−2(消滅時効の成否)について ア 争点3−3−2−1(時効の中断の有無)について (ア) 前記第2の3(7)イ(イ)記載のとおり、被控訴人は、平成26年10月29日の本件弁論準備手続期日において、控訴人に対し、不当利得返還請求権のうち、控訴人が本訴を提起した平成23年11月17日の10年前までに発生した請求権(平成13年11月16日以前に発生した請求権)について、消滅時効を援用する旨の意思表示をした。 これに対し、控訴人は、被控訴人の債務承認により消滅時効が中断した旨主張するので、以下において検討する。 (イ) 債務承認1について 控訴人は、「著作物使用(複製・頒布)契約書」(甲18)を交付したこと、被控訴人が控訴人の求めに応じて契約書の締結に向けて交渉したことが、被控訴人による債務承認に該当する旨主張する。 しかしながら、そもそも「著作物使用(複製・頒布)契約書」(甲18)が被控訴人の起案に係るものであることを認めるに足りる証拠はなく、また、同書面に被控訴人の押印はないから(なお、同書面には控訴人の押印もない。)、被控訴人が、控訴人に対し、上記書面に記載された内容を通知したものと認めることはできない。 また、前記1認定のとおり、控訴人は、平成18年頃以降、被控訴人に対し、本件カセットテープの複製・頒布について著作権使用契約を締結することを求め、被控訴人との間で契約書案の提示など交渉が行われたものの、結局、契約書を取り交わすには至らなかったのであり、被控訴人が控訴人からの求めに応じて契約の締結交渉を行ったこと自体が、債務承認に該当するということはできない。 よって、控訴人の上記主張は理由がない。 (ウ) 債務承認2について 控訴人は、「念書」(甲20)に記載された内容につき、控訴人と被控訴人との間で事実上合意がされたこと、被控訴人が控訴人との間で「念書」(甲20)の作成に向けて交渉したことが、被控訴人による債務承認に該当する旨主張する。 しかしながら、そもそも「念書」(甲20)が被控訴人の起案に係るものであることを認めるに足りる証拠はなく、また、同書面に被控訴人の押印はないから(なお、同書面には控訴人の押印もない。)、被控訴人が、控訴人に対し、上記書面に記載された内容を通知したものと認めることはできない。 また、被控訴人が控訴人からの求めに応じて、上記書面の作成、すなわち、著作権使用契約の締結交渉を行ったこと自体が、債務承認に該当するということはできない。 よって、控訴人の上記主張は理由がない。 (エ) 債務承認3について 控訴人は、平成16年から平成19年頃にかけて、被控訴人の当時の理事長であるLが、控訴人に対し、本件カセットテープに係る未払印税債務の支払を約束する言動をしていたことが、被控訴人による債務承認に該当する旨主張する。 しかしながら、控訴人の主張する上記事実を認めるに足りる証拠はないから、控訴人の上記主張は理由がない。 (オ) 一部弁済について 控訴人は、被控訴人が、控訴人に対し、本件カセットテープに係る印税債務の一部の代物弁済として、@平成20年11月、デル社製のパソコン2台とモニター等附属品(合計11万4460円相当)を、A平成21年2月、デル社製のパソコン3台(合計約21万円相当)を、B平成23年4月27日、ヒューレット・パッカード社製のパソコン3台(合計約24万円)を、それぞれ引き渡したことが、被控訴人による債務承認に該当する旨主張する。 控訴人の主張に沿う証拠として控訴人の理事であるP作成に係る陳述書(甲76)があるが、それ自体、平成23年3月当時の控訴人の理事長であったIから伝聞した内容が記載されているにすぎず、これを裏付ける客観的な証拠は存しないこと、かえって、上記陳述書に記載されている内容と矛盾する内容である「生長の家神の国寮の要保護児童のパソコン教育を支援する為、パソコンを購入し貸与する」旨が記載された、上記A及びBの当時の被控訴人の理事長であったL作成に係る書面(乙37の1・2)や上記@のパソコンの購入者が控訴人であり、その購入費用を控訴人が負担することを表明する電子メール(乙56の1・2)が存することからすれば、上記陳述書の記載を直ちに信用することはできず、他に、控訴人の主張に係るパソコンが本件カセットテープに係る印税債務の一部の代物弁済として引き渡されたものであるとの事実を認めるに足りる証拠はない。 よって、控訴人の上記主張は理由がない。 (カ) 以上のとおり、控訴人の時効の中断に係る上記主張はいずれも理由がない。 イ 争点3−3−2−2(時効援用権の喪失又は濫用の有無)について (ア) 控訴人は、被控訴人が消滅時効期間の経過後に債務承認をしたことにより時効援用権を喪失した旨主張するが、前記ア記載のとおり、被控訴人が、控訴人の主張する債務承認をしたとの事実を認めることはできないから、控訴人の上記主張は理由がない。 (イ) また、控訴人は、被控訴人には、控訴人に対して、被控訴人が本件カセットテープに係る印税債務の存在を認めているものと確信させる行為があったから、被控訴人による消滅時効の援用は権利濫用にわたるものとして許されない旨主張する。 しかしながら、前記アに記載したところによれば、被控訴人が、「本件カセットテープに係る印税債務の存在を認めていることを控訴人に確信させる行為」を行ったなどとはいえず、他に、被控訴人による消滅時効の援用が権利濫用にわたるものであるとすべき事情があるともいえない。 よって、控訴人の上記主張は理由がない。 (ウ) 以上によれば、控訴人の時効援用権の喪失及び濫用に係る上記主張はいずれも理由がない。 ウ 以上検討したところによれば、控訴人の不当利得返還請求権のうち、平成13年11月16日以前に発生した請求権は、時効により消滅したものと認められるから、控訴人は、被控訴人に対し、平成13年11月17日以降の本件カセットテープの複製・頒布について、その定価の10%に相当する額の不当利得返還請求権を有することになる。 エ 不当利得額について 証拠(乙38の19ないし26)によれば、平成13年11月17日以降に被控訴人が発行した本件カセットテープの数量は、別紙3発行部数目録記載のとおり合計1万9600本であり、その単価は、いずれも1810円である(なお、乙1ないし3によれば、被控訴人は、亡Aの相続人らに対し、複製品を製作した月の翌月末に「印税」として金銭を支払っていたものと認められるから、平成13年11月17日以降の発行分は、平成13年12月以降の支払分となる。)。 そうすると、定価の10%に相当する額は、合計354万7600円となる(1810円×1万9600本×10%)。 オ したがって、控訴人は、被控訴人に対し、354万7600円の不当利得返還請求権を有する。 (5) 争点3−2(不法行為による損害賠償請求権の有無)について ア 争点3−2−1(著作権侵害につき被控訴人の故意又は過失の有無)について 前記(3)イ記載のとおり、被控訴人は、本件カセットテープの複製・頒布について、悪意の受益者に該当するから、被控訴人には、本件原著作物に係る著作権を侵害したことについて過失があると認めるのが相当である。 イ 争点3−2−3(消滅時効の成否について) (ア) 争点3−2−3−1(時効の中断の有無)について 前記第2の3(7)イ(ア)記載のとおり、被控訴人は、平成26年10月29日の本件弁論準備手続期日において、控訴人に対し、不法行為に基づく損害賠償請求権のうち、控訴人が本訴を提起した平成23年11月17日の3年前までに発生した請求権について、消滅時効期間である3年が経過したとして、消滅時効を援用する旨の意思表示をした。これに対し、控訴人は、被控訴人の債務承認により消滅時効が中断した旨主張するが、前記(4)ア(イ)ないし(オ)記載のとおり、控訴人の時効の中断に係る主張はいずれも理由がない。 (イ) 争点3−2−3−2(時効援用権の喪失又は濫用の有無)について 控訴人は、時効援用権の喪失又は濫用を主張するが、前記(4)イ(ア)及び(イ)記載のとおり、控訴人の主張はいずれも理由がない。 ウ 争点3−2−2(損害の発生及びその額)について 以上検討したところによれば、控訴人の不法行為による損害賠償請求権のうち、平成20年11月16日以前に発生した請求権は、時効により消滅したものと認められるから、控訴人は、被控訴人に対し、同月17日以降の本件カセットテープの複製・頒布について、その定価の10%に相当する額の損害賠償請求権を有する。 平成20年11月17日以降に複製・頒布された本件カセットテープの本数は、別紙3の発行部数目録記載のとおり、平成22年3月を支払月とする400本であり、その定価の10%に相当する印税相当額は7万2400円であると認められる(なお、これについては不当利得返還請求権と競合する。)。 (6) 弁護士費用相当額の損害について 著作権侵害を理由とする本件カセットテープの頒布の差止め及び廃棄請求が理由のあるものであること、不法行為による損害賠償請求のうち理由のある額、その他本件に顕れた一切の事情を総合すると、被控訴人の著作権侵害行為と相当因果関係のある弁護士費用相当額は、20万円と認めるのが相当である。 (7) まとめ 以上によれば、控訴人は、被控訴人に対し、不当利得返還請求権に基づき354万7600円(うち7万2400円については、不法行為による損害賠償請求権と競合する。)及び不法行為による損害賠償請求権に基づき20万円の合計374万7600円の支払を求めることができる。 5 結論 以上の次第で、原判決中控訴人敗訴の部分に係る請求のうち、主位的請求は理由がないから棄却し、予備的請求は、被控訴人に対し、本件カセットテープの頒布の差止め及び廃棄、並びに、374万7600円及びこれに対する平成26年8月27日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないから棄却すべきである。 したがって、以上と異なる原判決は変更することとし、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官 富田善範 裁判官 田中芳樹 裁判官 柵木澄子 (別紙1)請求金額目録
(別紙2)著作物目録 1 題号「聖経 甘露の法雨」(著作者 A) 2 題号「聖経 天使の言葉」(著作者 A) 3 題号「聖経 続々甘露の法雨」(著作者 A) 以上 (別紙3) 発行部数目録
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