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【事件名】タレントの化粧品広告契約事件 【年月日】平成27年6月25日 東京地裁 平成26年(ワ)第19866号 名誉回復措置並びに損害賠償請求事件 (口頭弁論終結日 平成27年5月12日) 判決 原告 Aこと ●(省略)● 被告 B 同訴訟代理人弁護士 岡田功 主文 1 被告は、原告に対し、20万5000円を支払え。 2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用はこれを10分し、その1を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は、別紙謝罪広告媒体記載の謝罪広告媒体に別紙被告謝罪文記載の謝罪文を1年9か月間掲載せよ。 2 被告は、原告に対し、180万円を支払え。 第2 事案の概要 本件は、別紙原告著作物目録記載1〜17の各写真(以下、これらを「本件各写真」と総称し、各写真を目録記載の番号により「本件写真1」などという。)及び同18〜25の各コラム(以下「本件各コラム」と総称する。)の著作者であると主張する原告が、被告に対し、(1)被告が本件各写真をパンフレット及びウェブサイトに掲載したことが原告の著作権(複製権及び送信可能化権)の侵害に当たるとして、不法行為による損害賠償金(使用料相当額)80万円の支払を求め、(2)被告が本件各コラムに付されていたタイトルを変更したことが原告の著作者人格権(同一性保持権)の侵害に当たるとして、不法行為による損害賠償金(慰謝料)100万円の支払を求めるとともに、著作権法115条に基づき謝罪広告の掲載を求めた事案である。 1 争いのない事実等(後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実を含む。) (1) 当事者等 ア 原告は、「A」の芸名でタレント活動、プロデュース業等を行っている者である。 イ 被告は、株式会社C(以下「本件会社」という。)の代表取締役である。本件会社は、化粧品の企画、販売、PR及びコンサルティング等を目的とする株式会社である。(甲22) (2) 原告と本件会社の間の顧問契約 ア 原告と本件会社は、平成24年11月1日、原告が本件会社の顧問となり、本件会社が展開する事業の商品開発やPR業務における助言、支援及びこれに付随する業務を行うこと、本件会社は原告に対し顧問料として月額20万円を支払うことなどを内容とする顧問契約(以下「本件顧問契約」という。)を締結した。(甲23、乙9) イ 原告は、平成26年5月23日頃、本件会社に対し、顧問料不払等を理由に本件顧問契約を同年3月末日をもって解除したとみなす旨通知した。なお、被告は本件顧問契約がこの通知により終了したことを争っていない。 (3) 本件各写真 ア 原告は、本件会社の販売する女性用ローション(以下「本件商品」という。)の宣伝等に使用するため、平成24年9月頃、別紙原告著作物目録記載1〜4のとおり本件写真1〜4を撮影した。本件写真1〜4は、原告の思想又は感情を創作的に表現したものであり、原告の著作物である。 イ 原告は、平成25年2月11日、4月26日及び10月30日に開催された本件商品の宣伝のためのトークショー等のイベントにおいて、本件写真5〜17のとおりイベントの様子を撮影した(ただし、その著作物性及び著作者については争いがある。)。 ウ 被告は、本件写真1〜4を複製して本件商品のパンフレットに掲載した。また、本件各写真を複製して本件会社のウェブサイトに掲載した。原告は、本件顧問契約の期間中、被告が本件各写真を複製し、送信可能化することを許諾していた。 エ 原告は、本件顧問契約の終了後、被告に対し、本件各写真を上記ウェブサイト等から削除することを求めたが、被告はこれに応じず、本件各写真の複製及び送信可能化を継続した。 (4) 本件各コラム ア 本件顧問契約の期間中、本件各コラムが本件会社のウェブサイトに掲載された。本件各コラムは、文章部分とアンケート結果をまとめたグラフ部分から成り、別紙原告著作物目録記載18〜25のタイトルが付されていた。 イ 原告は、本件顧問契約の終了後、被告に対し、上記ウェブサイトに掲載されている本件各コラムを削除するよう求めた。被告は、平成26年6月7日ないし8日頃、本件各コラムのタイトルを別紙タイトル変更状況の「変更前」のものから「変更後」のものへとそれぞれ変更し、これを引き続き上記ウェブサイトに掲載した。 2 争点及び争点に関する当事者の主張 著作権侵害に係る請求につき、被告が原告による許諾がなくなった後も本件各写真の複製及び送信可能化を行ったこと、本件写真1〜4が原告の著作物であることは争いがないので、争点は、本件写真5〜17の著作物性及び著作者(争点(1))並びに原告の損害額(争点(3)ア)となる。 また、著作者人格権侵害に係る請求につき、被告が本件各コラムのタイトルを変更したことは争いがないので、これが原告の同一性保持権を侵害するか、すなわち、原告が本件各コラムの著作者であり上記変更が原告の意に反するか(争点(2))と、原告の損害額(争点(3)イ)及び謝罪広告の要否(争点(4))が争点となる。 争点に関する当事者の主張は、次のとおりである。 (1) 争点(1)(本件写真5〜17の著作物性及び著作者)について (原告の主張) ア 原告は、本件写真5〜17を撮影するに際し、トークイベントであれば出演者全員が入るように、あるいは、イベントへの一般参加者の顔が写らず、かつ、楽しんでいる様子が分かるように、適切な構図を考え、露出を調整し、ベストショットになるようタイミングを計って撮影した。 したがって、上記各写真には創作性がある。 イ また、撮影者が原告である以上、著作権は原告にある。 (被告の主張) ア 本件写真5〜17は、イベント会場における単なるスナップ写真にすぎず、会場及び参加者の状況等イベントの開催状況を記録するために撮影されたものであり、思想又は感情を創作的に表現したものではないから、著作物ではない。 イ 仮に本件写真5〜17が著作物であったとしても、これら各写真は、本件会社が主催したイベントの際、被告が、イベントの手伝いとして参加していた原告に対し、「(イベントの)会場の様子を適当に撮っといてくれる?」と述べてスナップ写真の撮影を依頼し、原告が了解して撮影したものである。すなわち、原告は、本件会社の業務として、被告の補助者的立場で本件写真5〜17を撮影したのであるから、原告はこれら写真の著作者ではない。 (2) 争点(2)(同一性保持権の有無)について (原告の主張) 本件各コラムの文章は全て心理カウンセラーである原告が書いており、原告にしか書けないものであった。被告はコラム中に使用しているアンケートを作成し、サイト掲載に当たって文章の校閲をしたにすぎず、文章の中に被告の思想又は感情を創作的に表現した部分は皆無である。 したがって、本件各コラムは原告の著作物であり、そのタイトルを無断で変更した被告の行為は原告の著作者人格権(同一性保持権)を侵害する。 なお、被告の指摘するメールは、本件顧問契約期間中のものであり、契約終了後にタイトルを無断改変してよい根拠にはならない。 (被告の主張) 本件各コラムは、被告が本件会社の業務として作成したものであるから、著作者は本件会社である。 すなわち、被告は、本件商品の販売促進活動としてウェブサイトに記事を掲載するに際し、被告が収集したアンケート結果等を原告に送付し、原告がそれに文案素材を付加して被告に提供するなどしていたが、最終的な記事の内容は原告の承諾なく被告が自由に確定できるものであった。また、タイトルは、全て、原告の素案を被告が変更したものであった。したがって、一旦ウェブサイトに掲載された記事についても、随時、被告が自由に変更を加えることが可能であった。原告自身、被告へのメールで、コラムへのアクセスがあまりなければ被告が好きなようにタイトルを変えてよい旨述べており、たとえ被告が原告の意に反して本件各コラムの内容を変更しても同一性保持権を侵害するものでないこと、すなわち、本件各コラムの著作者が原告ではないことを自認していた。 (3) 争点(3)(原告の損害額)について (原告の主張) ア 著作権侵害について (ア) 原告は、平成26年3月末日をもって本件顧問契約を打ち切ったが、被告は、同年4月1日以降も本件各写真の無断掲載を続けている。 原告は、これらの掲載により、本来、月額20万円を受け取ることができるはずであったから、同日から同年7月末まで4か月分として、合計80万円の損害を被った。 (イ) なお、写真使用料の相場は、本件のように2700部発行のパンフレットの裏表紙に掲載する場合には1年間で4万5000円、インターネットに掲載する場合で撮影のため丸一日拘束されるときは1日当たり約10万円である。本件の場合、パンフレット掲載期間は2年3か月、原告が写真撮影に要した期間は5日であるから、上記相場によっても、パンフレット掲載について10万1250円、インターネット掲載について50万円となる。 しかも、本件においては、被告は原告が本件会社のために撮影した写真を独占的に使用することができる、原告はタレントであり無名のプロ写真家より撮影した写真の値段が高くなるなどの事情があるから、損害額が上記(ア)の請求額を下ることはない。 イ 著作者人格権侵害について 被告は、本件顧問契約終了後も、原告の著作物を無断で広告等に利用し、原告がそれらの削除を求める警告書を再三送付したにもかかわらず、削除するどころか無断で本件各コラムのタイトルを変更したもので、その悪質性は高い。また、これにより、原告が先に別のウェブサイトで発表していたコラムと本件各コラムとの同一性を図ることもできなくなった。さらに、原告は、被告に対し繰り返し警告を行うなど費用と労力を要した。 したがって、同一性保持権侵害についての慰謝料としては100万円が相当である。 (被告の主張) ア 著作権侵害について (ア) 原告の主張する月額20万円とは本件顧問契約に基づく月額顧問料の額と思われるが、原告の顧問業務の内容は、本件会社が展開する事業の商品開発やPR業務における適切な助言及びサポート支援とこれに付随する業務という広いものであって、原告が撮影した写真を本件会社のウェブサイトに掲載することにとどまるものではない。したがって、本件各写真の使用料相当額が月額20万円とされることはあり得ない。 (イ) 写真素材については、現在は、プロカメラマンの撮影によるものであっても1枚2000円前後の対価で提供されているところ、原告はプロの写真家ではなく、本件写真5〜17はスマートフォンを用いて撮影したにすぎず、1枚2000円の価値があるかどうかも疑問である。 また、本件は、著作権侵害を理由とする損害賠償請求であり、そもそも、撮影業者に撮影を依頼した場合の費用の相場を考慮すること自体相当ではない。 イ 著作者人格権侵害について 仮に本件各コラムが原告の著作物であったとしても、本件において原告が主張するのはタイトルを変更した行為のみであり、その内容は別紙タイトル変更状況記載のとおり軽微なものである。このような態様・程度によるタイトル変更をもって原告に慰謝料請求権が発生するほどの精神的苦痛が生じたとは認め難い。 (4) 争点(4)(謝罪広告の要否)について (原告の主張) 原告が被告から受けた精神的苦痛は耐え難く、原告は、被告による謝罪文の発表を何よりも重視している。また、謝罪文を掲載する媒体として無料で掲載できる媒体を選び、被告に配慮している。 したがって、謝罪文の掲載が認められるべきである。 (被告の主張) 原告の謝罪広告請求は同一性保持権の侵害を理由とするものであるところ、本件で問題となる改変の具体的な態様は別紙タイトル変更状況記載のとおりであって、このような態様・程度による改変をもって著作者の社会的名誉が傷つけられることはおよそ考えられないから、謝罪広告を認めるべきではない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(本件写真5〜17の著作物性及び著作者)について (1) 前記争いのない事実等に加え、後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 ア 原告は、本件顧問契約締結後、本件会社が主催し、あるいは出店する各種イベントの事前準備や当日の運営に協力しており、その一環として、イベント会場の様子を写真撮影した。原告は、本件会社のウェブサイト等に当該イベントの紹介記事と共に掲載し会場の雰囲気を伝えるという写真撮影の目的を踏まえ、ゲストを招いてのトークショーの際には出演者がはっきり分かるよう、逆に、一般人が参加している様子を撮影する際は顔が写らないようにし、また、会場が盛り上がっている様子が分かるようにして、テーマのあるイベントの場合は何のイベントか分かるような写真とすることを心掛けた。他方、被告が原告に対し写真撮影の方法、構図等について具体的な指示を行うことはなかった。(甲3、4、14〜17、26、乙10) イ 本件写真5〜10は、平成25年2月11日に行われたイベントにおいて原告が撮影したものである。 いずれの写真も会場前方の舞台でトークショーに出演している出演者を客席の後方から撮影したもので、本件写真9及び10は、横長の画面を用い、舞台上の出演者の位置や多数の観客が入っている様子が分かるようになっており、本件写真9には出演者がスライド様の画像を用いながら観客に向かって話をしている様子、本件写真10には3人の女性出演者が楽しそうに笑っている様子が写されている。本件写真5及び6は、それぞれ本件写真10及び9の出演者の部分を拡大したものである。本件写真7には一人の出演者が本件商品を用いて他の出演者の手をマッサージしている様子が、本件写真8には熱心に話す中央の出演者を両側の出演者が見守っている様子が、それぞれ写されている。 (甲13、14、17) ウ 本件写真11〜13は、同年4月26日に行われたイベントにおいて原告が撮影したものである。 本件写真11は、本件会社のブースを写したものであり、机の上に本件商品、本件会社のウェブサイトを表示したノートパソコン、雑誌、ポスター等が整然と展示されている様子が写されている。本件写真13には上記ウェブサイトを閲覧している女性とそれを見ている女性が写されているが、両名の顔が写らず、上記商品、雑誌、ポスター等が大きく写る構図になっている。本件写真12にはイベント会場でパーティーを楽しむ多数の参加者の様子が写されているが、各人の顔部分にはぼかしが施されている。 (甲13、15) エ 本件写真14〜17は、同年10月30日に行われたイベントにおいて原告が撮影したものである。 本件写真14は、会場のバーカウンターを写したものであり、カウンター内のバーテンダーのほか、天井からつり下げられたジャック・オー・ランタンを模した大きな飾り2個、カウンターの上の魔法使い風の帽子をかぶせられたどくろのレプリカ等が写され、ハロウィンのイベントであることが分かるようになっている。本件写真15は、本件会社のブースを写したものであり、本件商品、本件会社のウェブサイトを表示したノートパソコン等が整然と展示されている様子が写されている。本件写真16は、上記ブースで、上記ウェブサイトを閲覧している女性を写したものであり、顔が写らず、本件商品等が大きく写る構図となっている。本件写真17は、左手に本件商品を持ち、笑顔でポーズを取っている仮装した参加者女性の上半身を大写しにしたものである。 (甲13、16) (2) 上記認定事実によれば、原告は、本件写真5〜17の撮影に当たり、写真を撮影する目的を踏まえて撮影対象を選び、背景、構図、撮影のタイミング等に工夫を加えて撮影しており、その画面上に原告の個性が表現されているということができる。したがって、これら各写真は原告の思想又は感情を創作的に表現したものとして著作物性を有すると認めるのが相当である。 これに対し、被告は、本件写真5〜17はスナップ写真にすぎず著作物とは認められない旨主張するが、スナップ写真であっても思想又は感情が創作的に表現されていれば著作物性を認めることができるから、被告の主張は失当というべきである。 (3) 次に、本件写真5〜17の著作者についてみるに、これらを撮影したのは原告であるから、原告がその著作者であると認められる。 これに対し、被告は、これらの写真は原告が本件会社の業務として、被告の補助者的立場で撮影したものであるから、原告が著作者であるとはいえない旨主張する。しかし、原告は本件会社の従業員ではなく、本件において職務著作の規定を適用すべき事情は見当たらない。また、被告主張によっても、被告は原告に対し、イベント会場の様子を適当に撮っておいてほしいという程度の依頼しかしていないというのであり、撮影対象の選定、構図の決定等は全て原告の判断で行われたことは前記(1)認定のとおりであるから、原告が本件写真5〜17の撮影に当たり被告の補助者的な立場にあったとは認められない。したがって、被告の主張を採用することはできない。 2 争点(2)(同一性保持権侵害の有無)について (1) 前記争いのない事実等に加え、後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 ア 本件各コラムは、文章部分とアンケート結果を示すグラフ部分から成り、別紙原告著作物目録18〜25の各タイトルが付されている。文章部分には、プロローグ、心理テスト(アンケート項目)、アンケート結果の紹介、心理分析等が含まれている。(甲20、39、乙6〜8の各2) イ 本件各コラムは、本件顧問契約の期間中に、おおむね以下の過程を経て作成された。(甲2、38、40〜42、55、57〜59、61、63、乙2、6〜8の各1及び2、18) (ア) 原告と被告は、本件各コラムの各回のテーマに沿うアンケートの内容を打ち合わせ、原告の提案を一部被告が修正したアンケート項目につき本件会社がインターネットを利用してアンケートを実施した。被告は、アンケート結果をエクセルデータの形で原告に提供した。 (イ) 原告は、被告から提供を受けたアンケート結果を踏まえ、メンタル心理カウンセラーとしての知識経験を生かしながら、文章部分を作成した。そして、この文章とアンケート結果を示す棒グラフから成る原稿を作成し、タイトルの案を付して被告に送付した。 (ウ) 被告は、原告から送付された本件各コラムのタイトルに修正を加え、また、グラフの体裁を色分けした円グラフにするなどした上で、本件各コラムを本件会社のウェブサイトに掲載した。原告は、タイトルの変更につき被告から連絡を受けたが、異議を唱えることはなかった。 ウ 原告は、被告に対し、本件顧問契約を解除する旨の通知をした後、本件会社のウェブサイトから本件各コラムを削除するよう求めたが、被告はこれに応じることなく、そのタイトルを変更した上で(前記争いのない事実等(4)イ)、掲載を続けた。原告は、上記変更の事実を知ると、直ちに被告代理人弁護士に対し抗議のメールを送信した。(甲7、10〜12、20) (2) 上記認定事実によれば、本件各コラムは、文章部分を主、グラフ部分を従とするウェブサイト上の記事であり、文章部分を執筆した原告が著作者であると認めることができる。そして、前記(1)ウ認定事実によれば、被告によるタイトルの変更が原告の意に反していることは明らかであるから、被告の行為は、著作物の題号を著作者の意に反して改変したものとして、原告の同一性保持権侵害に当たる(著作権法20条1項)と判断すべきである。 なお、本件各コラムの上記作成過程に照らし、被告がその表現に創作的関与をしたと認めることができるとしても、原告は共同著作物の著作者となるから、被告が原告の意に反してそのタイトルを変更することはできないと解される。 (3) これに対し、被告は、原告の被告に対する平成25年8月5日付けメール(乙2)の中に「アクセスがあんまりなかったら被告が好きなようにタイトル変えてみるとか?」という趣旨の記載があることを指摘して、原告が被告によるタイトルの改変を許容していた旨主張するが、当該メールは、本件顧問契約の期間中のタイトル変更に言及するものにとどまり、その終了後のタイトル変更を正当化する根拠となるものではない。したがって、被告の上記主張は失当である。 3 争点(3)ア(著作権侵害による原告の損害額)について (1) 原告は、本件顧問契約終了後の被告による本件各写真の複製及び送信可能化が原告の著作権を侵害するとし、その使用料相当額の損害金は、@月額20万円の4か月分である80万円であり、又は、A写真をパンフレット及びインターネットに掲載する場合の使用料等に照らせば80万円を下ることはない旨主張する。 (2) そこで判断するに、前記(1)@について、使用料が月額20万円であることの根拠は明らかでない上、仮にこれが本件顧問契約に基づく顧問料相当額であるとしても、前記争いのない事実等(2)アのとおり顧問料は諸種の顧問業務を行うことの対価であって、これを本件各写真の使用料と同視することはできない。したがって、原告主張は失当である。 (3) 次に前記(1)Aについてみるに、後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 ア 写真素材を提供する業者は、その用途、大きさ、使用期間又は回数、独占使用の可否等に応じて、写真素材の使用料を定めている。その例として、発行部数3000部程度のパンフレットの裏表紙に独占的に1年間使用する場合は4万8600円(消費税込み。以下同じ)とするもの、写真素材の単品の使用料をその大きさにより540円〜5400円とするもの、独占使用はできないが期間制限なく繰り返し使用ができる場合の使用料をその大きさにより1万0260円〜3万2400円とするものがある。(甲51、乙11〜13) イ 職業写真家を撮影場所に派遣して写真撮影を行う業者は拘束時間等に応じてその料金を定めており、1日(8時間)拘束の場合の料金を10万円程度とする例があるが、その料金と別に写真の使用料を徴収することはないとされている。(甲49、50、乙14) ウ 本件写真1〜4は、構図、背景、光線の加減等に工夫が凝らされており、本件商品のパンフレットに用いられたものは、共に用いられている職業写真家の撮影した写真と比較しても特に違和感を感じさせない画質を備えている。(甲18、31、32、52、乙1) エ 本件写真5〜17は、前記1(1)認定のとおり、本件会社のイベントの様子を撮影したスナップ写真であり、原告の許諾に基づき本件会社のウェブサイトにおいて利用されていた。 (4) 上記事実関係に基づき、本件における使用料相当損害金の額についてみるに、本件写真1〜4は、その用途、画質等に照らし、1枚当たり1万円とするのが相当である。一方、本件写真5〜17については、撮影目的及び被写体の性質上本件会社のウェブサイトへの掲載以外の使途がないことといった事情に鑑み、1枚当たり5000円とするのが相当と解される。 そうすると、著作権侵害による原告の損害は、合計10万5000円(1万円×4+5000円×13)であると認められる。 4 争点(3)イ(著作者人格権侵害による原告の損害額)について 原告は、同一性保持権侵害に係る慰謝料の額は100万円が相当であると主張する。 そこで判断するに、前記2(1)ウのとおり、被告が本件各コラムのタイトルを変更したのは、本件顧問契約が被告による顧問料不払等を理由に解約され、原告から本件各コラムを削除するよう要求された後のことであり、被告の行為は軽率かつ不適切とのそしりを免れない。しかし、変更の具体的内容は別紙タイトル変更状況のとおりであり、変更後の各タイトルは特段不適切な表現ではない上、従前のタイトルと全く異なっているというものではない。これに加え、前記2(1)イのとおり、変更前のタイトルが原告の提案に被告の修正を取り入れたものであったことなど本件の諸事情に鑑みると、同一性保持権侵害による慰謝料の額は10万円と認めるのが相当である。 5 争点(4)(謝罪広告の要否)について 原告は、名誉回復措置としての謝罪広告の掲載を求めているところ、本件において原告が主張する著作者人格権侵害は本件各コラムのタイトルを変更した行為のみであり、変更の程度が小さなものであることは上記4で指摘したとおりである。そして、このような変更により原告の社会的な評価ないし声望が害されていることをうかがわせる証拠はないから、謝罪広告の掲載を求める請求は理由がない。 なお、原告は、著作権侵害をも理由として謝罪広告の掲載を求めるようであるが、謝罪広告掲載請求は著作者人格権侵害のみがその根拠となるから(著作権法115条参照)、原告の主張は失当である。 第4 結論 以上によれば、原告の本件請求は損害賠償金20万5000円の支払を求める限度で理由があるので、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官 長谷川浩二 裁判官 清野正彦 裁判官 藤原典子 別紙 謝罪広告媒体 1:共同通信社経由による報道機関への謝罪文発表(無料) 2:被告自身のプログに1年9ヶ月間のTOPページ掲載(無料) ブログ http://<以下略> 3:被告の会社サイトやFacebook、ブログ、メールマガジンに掲載(すべて無料) ・会社の通販サイトに1年9ヶ月間掲載 http://<以下略> https://<以下略>のTOPに1年9ヶ月間掲載 ・プログ http://<以下賂>のTOPページ掲載1年9ヶ月間 ・http://<以下賂> の会員向けメールマガジンに掲載 被告謝罪文 陳謝 わたくしB(株式会社C・株式会社D 代表取締役)は、タレントであるA氏の下記の著作物を無断掲載致しました。 @ A氏が撮影した複数枚の写真を、再三に渡る警告を受けたにも関わらず、自社PRウェブサイトなどに無断掲載をしました。 A A氏が作成した複数点の文章を、再三に渡る警告を受けたにも関わらず、自社PRウェブサイトなどに無断掲載をしました。 また、A氏の著作物のタイトルや内容を無断で変更したことで、著作者人格権同一性保持権を侵害する行為を私は行いました。 上記に関しましては、束京地方裁判所より平成@@年@@月@@日に「被告:Bによる謝罪広告掲載を行え」との判決が下されました。 今後、このような行為を行わないことを誓約し、A氏に対し、心よりお詫び申し上げます。 平成@@年@@月@@日 株式会社D・株式会社C 代表取締役 B 以上 原告著作物目録 省略 (※3〜17中略) 18 コラム「恋の持続力と気温の関係」 19 コラム「男女で異なる恋愛疲れ」 20 コラム「玉の輿を引き寄せるためには…」 21 コラム「あなたはアゲマン?それともサゲマン?」 22 コラム「婚活に成功するためには?」 23 コラム「彼の浮気レベルをチェック!」 24 コラム「周囲に流されない恋愛の見極め方」 25 コラム「恋愛の大掃除をする方法」 以上 タイトル変更状況
※別紙原告著作物目録記載の番号 |
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