裁判の記録 line
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2010年
(平成22年)
[7月〜12月]
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7月1日 元逗子市長“セクハラ”報道事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 民主党の長島一由衆議院議員が、神奈川県逗子市長時代に宴席に同席した女性二人にセクハラをしたと報じた「週刊新潮」2008年10月8日号の記事で名誉を傷つけられたとして発行元の新潮社に1千万円の損害賠償などを求めた事件。
 判決は、一人に対するセクハラは「事実と認められる」と判断したが、もう一人へのセクハラは事実ではないとして記事の一部の真実性を否定し、新潮社に対して50万円の支払いを命じた。

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7月1日 社内利用ソフト違法コピー事件
   ビジネスソフトウエアアライアンス/和解
 ソフトウエアメーカー数十社で構成されるビジネスソフトウエアアライアンス(BSA)は、BSAメンバーのソフトウエアメーカーと、社内でソフトウエアの違法コピーを使用していた国内企業とが、3億1520万円強で和解したと発表した。侵害はBSAへの通報によって発覚したもので、和解額は世界的に過去最高額だという。この企業内では、ILLUSTRATOR、AutoCAD、FileMaker Pro、Microsoft Officeなど、のべ3913本の違法コピーが使用されていた。

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7月5日 ファイル交換ソフト事件(WinMX)C
   東京地裁/判決・請求認容(確定)
 大阪市在住の男性が、ファイル共有ソフトWinnMXを使って2008年11月から2009年3月までの4ヶ月間に、権利者の許諾を得ずに約150の音楽ファイルをアップロードして著作権侵害をしていたとして、レコード会社4社が損害賠償等を求めた事件。
 法廷は被告の著作権侵害を認め、原告の請求通り損害賠償金等538万1280円の支払いを命じた。

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7月5日 ライトノベル「ユヴェール学園諜報科」盗用事件
   自主回収
 角川書店は、角川ビーンズ文庫刊行のライトノベル『ユヴェール学園諜報科』(葵ゆう著)のシリーズ2作品に、同じ文庫から刊行されている別な著者の作品からの表現の流用が見つかり、著者もその事実を認めたとして、同作品の出荷停止、絶版、自主回収を発表した。近刊予定だった最終第3巻も発刊を中止するという。

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7月6日 “県立美術館長賞”授賞取消し事件
   授賞取消
 今年度の福島県総合美術展覧会で日本画部門の「県立美術館長賞」を受賞した作品が、1987年の院展奨励賞受賞作品と良く似ているとして、同展覧会の臨時審査員会議が授賞を取り消した。受賞作は川をモチーフにした作品で、那波多目功一さんの「せせらぎ」と多数の類似点が見つかったという。

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7月7日 トヨタのロゴ無断使用事件(刑)
   愛知県警/逮捕
 自動車の盗難を防ぐための装置を解除する小型装置「イモビカッター」に、トヨタ自動車の登録商標を不正につけてネット販売しようとしたとして、愛知県警は北海道在住の男性を商標法違反(販売目的所持)の疑いで逮捕した。イモビカッターはトヨタの高級車セルシオなどの盗難事件に悪用されているが、装置の流通に法規制がないため、愛知県警はトヨタのロゴを不正使用した商標法事件として摘発したという。

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7月8日 医学書の表紙デザイン類似事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 医学系出版社の南江堂が、自社刊行物『入門漢方医学』の表紙デザインをブレーン出版の刊行物『入門歯科東洋医学』の表紙に無断で複製又は翻案、改変して使用されたとして、印刷、出版等の差し止め、損害金の賠償、謝罪広告の掲載を求めて訴えた事件。原告書籍の表紙は3か所に大きな正方形を配し、周辺に8本の横棒や縦棒を組み合わせたもので、被告書籍は正方形を円に変えたにすぎないと主張していた。
 裁判所は、原告書籍表紙デザインの著作物性を認め、被告書籍は「図形の配置などの同一性を維持し、具体的な形状を変更するなどしたデザインは、南江堂側の表紙の本質的な特徴を感じ取れる著作権法上の『翻案物』に当たる」として著作権侵害を肯定して、被告書籍の印刷、出版、販売、頒布の差し止めを認めた。また損害賠償金等50万円の支払いは命じたが、謝罪広告の必要性は否定した。
判例全文
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7月14日 松沢成文神奈川県知事の著作権侵害事件(2)
   知財高裁/判決・取消、附帯控訴棄却(上告受理申立)
 松沢成文神奈川県知事の著書『破天荒力 箱根に命を吹き込んだ「奇妙人」たち』に、自作と似た表現があるとしてノンフィクション作家が県知事と版元の講談社に損害賠償などを求めた事件の控訴審。原審では、箱根富士屋ホテルの経営者についての「ホテルと結婚したようなものだったのかもしれない」との記述が原告の著書と同一だとして著作権侵害を認め、賠償金支払いと該当部分を削除するまでの販売停止を命じていた。県知事側が控訴した。
 判決は複製や翻案の意義について最高裁判決に言及した上で、県知事とノンフィクション作家の書籍の記述を対比検討し、「表現上の創作性がない部分で共通点があるにすぎない」として知事の書籍の侵害性を否定、一審判決を取り消し、ノンフィクション作家の請求を棄却した。
判例全文
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7月16日 「サーキットの狼」DVD化事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 漫画「サーキットの狼」を題材にしたテレビ番組の製作業務の下請をした原告会社および同番組でナレーションを担当した原告実演家が、同番組がDVD化されることを承諾していないのに、同番組製作発注者であるA社からDVD化再許諾権を受けた被告映像製作会社=著作権管理会社が、B社とDVD化許諾契約を締結してB社を通じて同番組のDVDを製作販売したと主張して、原告会社においては追加請負代金の支払いを、原告実演家においては追加の出演料と損害賠償金を、被告映像製作会社=著作権管理会社に要求した事件。
 裁判所は原告会社と被告会社との間に、番組製作請負契約など債務負担の原因となりうる特段の事実が認められず、また原告実演家と被告会社との間に出演契約など債務負担の原因となりうる特段の事実が認められないとして、原告らの主張を受け入れず、請求を棄却した。
判例全文
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7月16日 商標“シルバーヴィラ”侵害事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(確定)
 登録商標を「シルバーヴィラ」とする商標権を持ち、「シルバーヴィラ向山」の名称の老人ホームを運営する会社が、「シルバーヴィラ揖保川」及び「シルバーヴィラ居宅介護支援事業所」の名称で介護保険に係わる施設を運営する医療法人に対し、商標権侵害による使用差し止めや損害賠償金を求めた事件。
 判決は、「シルバーヴィラ」と地名を組み合わせた名称について「全体として類似しており、混同を生じさせる」と判断し、被告に介護事業での使用禁止と、使用料相当額576万円の支払いを命じた。
判例全文
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7月28日 漫画「ゼロハン」肖像権侵害事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 漫画雑誌「週刊少年マガジン」の掲載作品に自分の外観に酷似する人物を描かれて名誉を傷つけられたとして、都内に住む男性が、発行元の講談社に対して440万円の損害賠償等を求めた事件。原告男性はアパレル企業の代表取締役で、「悪羅悪羅系」と呼ばれるジャンルのファッションリーダーとして知られているが、同誌09年11月4日号掲載の「ゼロハン」第47話では、雑誌で紹介された原告男性の写真をもとに作画された登場人物が暴力的台詞とともに描かれていた。
 判決は作品中の人物について「読者は架空の人物と分かる」と名誉棄損の成立は否定したが、「登場人物は男性を連想させるもので、容姿を描写した漫画をみだりに公表されない肖像権を侵害した」として、精神的苦痛に対する慰謝料など55万円の支払いを命じた。
判例全文
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7月30日 女子プロレスの放映権事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 全日本女子プロレス興業株式会社(以下、全女)が主催した女子プロレス興行を中継するテレビ番組を制作し放送した株式会社フジテレビジョンと、同番組を収録した映像素材を編集して衛星放送を行った株式会社スカパー・ブロードキャスティングに対して、全女に前払い金返還請求権を有する債権者である写真集制作業者が、全女はフジテレビに地上波放送は許諾したがCS放送については許諾しておらず、またCS放送には実演家である女子レスラーの報酬請求権が発生し、これは全女に帰属すると主張して、損害賠償金など160万円の支払いを求めた事件。被告らはプロレス興行を中継した映像素材を利用して無償でCS放送することについて全女側と合意があったと主張した。
 裁判所は、契約書その他の書面はないものの、証人の供述から全女と放送会社との間で映像素材の無償提供の合意があったと認定し、また実演家の報酬請求権は発生しないとして、原告の主張を否定し、請求を棄却した。
判例全文
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8月4日 環境調査報告書の職務著作事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却(確定)
 北見工業大学と北見市等が、環境調査等を共同研究していたところ、平成15年度まで研究代表者を務めていた北見工業大学准教授が、自分の参加していない16年17年度の報告書に北見工大が15年度報告書の考察部分などを引きうつして複製頒布したのは著作権侵害だと訴えた事件の控訴審。原審では雇用契約や研究契約からみて、15年度の報告書は職務著作であるとして、准教授の請求を棄却し、准教授が控訴していた。
 判決は原審同様、15年度報告書について被告大学側に法人著作の成立を肯定してこれを職務著作物と認定し、准教授の著作権および著作者人格権に基づく主張は認めずに、控訴を棄却した。
判例全文
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8月4日 「北朝鮮の極秘文書」翻訳書の貸与権事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却(上告受理申立)
 韓国で発行された書籍「米國・國立公文書館所蔵北韓解放直後極秘資料」が日本で発行された書籍「米国・国立公文書館所蔵北朝鮮の極秘文書」の著作権を侵害するものであることを前提に、日本書籍の編集・解説者が、東京大学図書館はじめ8つの大学図書館等に対して、韓国書籍を所蔵して利用者に閲覧・貸与させているのは著作権・著作者人格権の侵害だとして訴えた事件の控訴審。原審は原告の請求を棄却し、原告が控訴していた。
 判決は原審同様、貸与権侵害を認めず、複製権侵害も否定した。また著作者人格権侵害性の成立も否定して、控訴を棄却した。
判例全文
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8月4日 “イカタコウイルス”器物損壊事件(刑)
   警視庁/逮捕
 コンピュータウイルス「イカタコウイルス」を仕込んだ偽の音楽ファイルをファイル共有ソフトを通じてダウンロードさせ、パソコン内のファイルを壊したとして、大阪府在住の会社員男性が器物損壊の疑いで警視庁に逮捕された。同ウイルスが仕込まれたファイルを開くと、ハードディスク内に保存されているすべてのファイルが感染し、イカやタコなどの漫画画像が上書きされ、どのファイルを開いても同じ画像が現れるというもの。ファイルを「器物」としてとらえ、ウイルスを感染させる行為に初めて器物損壊罪が適用された。

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8月17日 ルイ・ヴィトンのロゴ転写事件(刑)
   岸和田署/書類送検
 大阪・岸和田署は、ルイ・ヴィトンのロゴを転写したステッカーを販売したとして、岸和田市在住の男性を商標法違反で書類送検した。男性は雑誌からスキャナーで取り込んだロゴを転写してステッカーを作り、自分の車に取り付けて写真を取り、その写真をインターネットのサイトに掲載して、購入希望者にステッカーを販売していた。

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8月26日 横浜市長“合コン”報道事件(週刊現代)(刑)
   東京地検特捜部/不起訴
 合コンで女性に猥褻な行為をしたとする「週刊現代」の報道で名誉を傷つけられたとして、中田宏前横浜市長が発行元の講談社社長らを刑事告訴していた事件で、東京地検特捜部は社長ら11人を不起訴処分とした。起訴するだけの十分な証拠がないと判断したと考えられる。

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8月30日 商標“有田焼”登録事件(中国)
   中国商標局/商標登録
 日本を代表する磁器のひとつである「有田焼」の名称が中国で商標登録されていることが判明した。佐賀県流通課によると、中国福建省に住む個人が中国商標局に2002年11月に申請、04年11月に10年間の期限で商標登録されたという。県などが上海万博に合わせた物産展を現地の百貨店で開催するにあたって明らかになったもの。「有田焼」の名称は現地では使えない状況になっている。

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8月31日 商標“Chupa Chups”侵害事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 
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9月3日 セキュリティソフトの著作権移転登録事件
   東京地裁/判決・請求認容
 情報漏洩対策ソフトに関し、原告・システムパッケージ開発販売会社と被告・セキュリティソフト開発販売会社は、業務提携契約(ライセンス使用許諾契約)を締結していたが、被告に対して差押え手続きがあったことから、原告が契約の解除条項に基づいて著作権移転登録を請求した事件。
 被告は、移転する著作物の範囲は本件プログラムの著作物の改変物である二次的著作物に限定されると主張したが、裁判所は契約の解除条項によれば移転するのはあくまで本件著作物そのものを意味するとし、本件差押えにより本件著作物の著作権は被告から原告に移転していると判断して、原告の請求を認容した。
判例全文
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9月8日 動画共有サイトの著作権侵害事件(TVブレイク)(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却(上告受理申立)
 インターネットの動画共有サイト「TVブレイク」で音楽を無断配信され、著作権を侵害されたとして、日本音楽著作権協会(JASRAC)が、サイトを運営するジャストオンライン等に配信の差し止めと約1億2000万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審。ジャストオンライン側は一審判決に対し、著作権侵害をした主体およびプロバイダ責任制限法にいう「発信者」の解釈・適用に誤りがあるとして控訴していた。
 判決は「著作権を侵害する動画が多数投稿されていることを認識しながら防止措置を講じなかった」として、第一審同様控訴人側の著作権侵害主体性を認め、配信差し止めと約9000万円の支払いを命じた一審を支持して、控訴を棄却した。
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9月9日 「スポーツニッポン」掲載写真事件
   大阪地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 スポーツ新聞社に依頼されて撮影したフィルムが返還されず、また掲載された写真が無断二次使用されたとして、写真フィルム管理会社とカメラマン二人が、合計約5700万円の損害賠償金を求めた事件。
 裁判所は、フィルム返還に関してはその約束があったという事実を認めず、写真フィルム管理会社の請求は理由がないとして認めなかったが、写真の再掲載に関しては「同一写真を複数回にわたって掲載したり、一定期間継続して掲載することは、日刊新聞の性格から通常は予定していない」として、また別カット写真の掲載については、記事に使用しなかった写真を後に別の記事に転用することは許諾の範囲を超えるものとして、スポーツ新聞社の主張を退けた。そしてカメラマン二人に対する侵害による損害額を算定して、一人に対して約10万円、もう一人に対して約45万円の支払いを、スポーツ新聞社に命じた。
判例全文
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9月10日 映画「やわらかい生活」シナリオ収録拒否事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 芥川賞受賞作家の著作である小説を原作とする映画「やわらかい生活」のシナリオを、シナリオ作家協会が発行する『年鑑代表シナリオ集』に収録・刊行しようとしたところ、作家に拒絶されたが、その拒絶は「一般的な社会慣行並びに商習慣等」に反するもので、本映画化に関して締結された原作使用許諾契約の趣旨からすれば、年鑑収録の合意があったと認められるとして、シナリオを執筆した脚本家とシナリオ作家協会が、作家に対して収録を妨害しないよう求めた事件。作家はこの脚本に対し強い不満を抱いており、「脚本は活字として残したくない」としていた。
 判決は、原作者は脚本の収録や出版に対して許諾するかどうかの自由を有しているから収録を許諾しなかったことに違法性はないとし、また、この原作使用許諾契約は、原作の著作権を管理する文藝春秋社と映画プロダクションとの間で結ばれたものであり、原告は契約当事者でないから、契約に基づいて二次使用の許諾を求めることはできないとして、原告の請求を棄却した。
判例全文
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9月27日 「ロス疑惑」三浦元社長防犯カメラ事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 ロス銃撃事件で逮捕され、拘留中に自殺した三浦和義・元輸入雑貨会社社長の妻が、元社長が映ったコンビニエンスストアの監視カメラ映像を不特定多数に流され肖像権を侵害されたなどとして、コンビニ経営会社と防犯システム開発販売会社に1650万円の損害賠償を求めた事件。コンビニ経営会社は店の監視カメラ映像を「万引き増加を題材にした番組に使いたい」と申し出たテレビ局に提供、防犯システム開発販売会社は自社の宣伝のため元社長の映ったテレビ番組を編集してホームページで公開するなどしていた。
 裁判所はコンビニ経営会社に対する請求については、犯罪防止に繋がる公共性があったとして退けたが、防犯システム開発販売会社に対しては名誉棄損や肖像権の侵害を認定して、110万円の支払いを命じた。

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9月30日 「ウルトラマン」商品化事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 ウルトラマンの関連商品を海外で販売できる独占利用権を侵害されたとして、東京の企画デザイン会社が円谷プロダクションに1億円の損害賠償を求めた事件。
 裁判所は、企画会社に権利を譲渡したタイの映画制作会社と円谷プロが1976年に結んだ海外での独占利用契約は有効だとする別訴訟の判決が、2004年に確定したことを根拠に、円谷プロが海外での利用権を別の会社に与えるなどして得た金額のうち約1600万円を、企画デザイン会社に支払うよう命じた。
 尚、76年契約の有効性は海外の裁判所でも争われ、タイ最高裁では契約は無効だとする円谷プロ側勝訴の判決が確定している。
判例全文
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9月30日 「読むサプリ」出版事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 医療器具の製造販売会社(原告)が、出版社(被告)に対して、出版権設定契約を交わした書籍「読むサプリ」シリーズ(全24種)の未払い代金約700万円の支払いと、引き渡した原稿の返却を求めて提訴した事件。原告会社は、株主である株式会社への納品を目的として出版コードを持たない書籍を作成したが、株主である株式会社への納入後に大量の在庫を抱えていた。そこで被告出版社と契約を締結し、被告出版社は出版コードを取得し表紙および奥付に修正シールを添付して、自社の書籍として販売していた。
 裁判所は原告医療器具製造販売会社の主張をほぼ認め、出版社に対し約600万円の支払いと、引き渡した増刷用原稿の返却(引渡し)を命じた。
判例全文
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9月30日 経営戦略書の職務著作事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 医療・福祉経営コンサル会社(原告)が、この会社の元従業員である被告がある出版社から発行しようとした『病院の新経営管理項目読本(仮題)』と題する著作物は、職務著作物であり原告に著作権があるとして、その書籍の出版差止めと損害賠償を求めて提訴した事件。取締役であった被告は、部下等に分担執筆を依頼していた。
 裁判所は、被告らが原告会社の業務時間内に執筆の打ち合わせをしていたことや、原告会社のPCを使って執筆した者がいた事実は認めたが、原告会社と出版社との間で契約された事実はないこと、この著作物を含む出版社の書籍シリーズがいずれも個人の名義で公表されていること、原稿料が出版社から被告個人に支払われていることから、この書籍の執筆は被告個人に依頼されたものであり、各分担執筆者は被告からの個人的な依頼で執筆したものであるとして、本件著作物は原告会社の発意に基づき職務上作成されたものではないと判断し、職務著作物性を否定して、原告の請求を棄却した。
判例全文
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10月8日 「文藝賞」内定取消し事件
   授賞内定取消
 河出書房新社の文芸雑誌「文藝」は、この日発売の冬号で、公募の新人文学賞「文藝賞」の、一旦内定した今期の受賞作の授賞を取り消したことを発表した。作品は授賞内定後モチーフの重要な部分をあるインターネットのサイトに負っていることが明らかになったという。タイトルおよび著作者名は公表されていない。

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10月13日 絵画の鑑定証書事件(2)
   知財高裁/判決・取消(上告受理申立)
 絵画の鑑定証書にカラーコピーをつけたのは著作権侵害に当たるとして、洋画家の遺族が美術品鑑定会社に対し、12万円の損害賠償を求めた事件の控訴審。第一審では「縮小コピーには絵画の本質的な特徴部分が再現されており、複製に当たる」として著作権侵害を認め、6万円の賠償金支払いを命じていたが、被告がこれを不服として控訴していた。
 判決は原審同様、カラーコピーは絵画の複製に当たるとしたが、32条1項の条文に添った解釈を示し、カラーコピーの必要性・有用性を認めて引用と判断、著作権侵害を否定、原判決を取り消して、被控訴人の請求を棄却した。尚、判決は、争点となっていたこの使用がフェアユースに当たるかどうかについては判断しなかった。
判例全文
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10月15日 少女による詩の盗作事件
   授賞取消
 複数のコンクール等で受賞が決定した秋田市の少女の詩作品が、ネット上に掲載された作品の盗作であることが分かり、相次いで授賞を取り消された。
 15日発表、土曜美術社出版販売主催「詩と思想」新人賞。19日発表、前橋市主催「若い芽のポエム」中学生の部金賞。19日発表、柳川市主催「白秋献詩」昨年度文部科学大臣賞。20日発表、栗原市教育委員会主催「白鳥省吾賞」小・中学生の部特別賞。
 応募作品はいずれもインターネット上の詩投稿サイトなどに掲載されたもの等を丸写ししていた。

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10月19日 元「コメディNo.1」前田五郎氏への名誉棄損事件
   大阪地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 漫才師の中田カウスさんに脅迫状が送られた事件に関するスポーツ紙「デイリースポーツ」の記事で、犯人と疑われるような書き方をされ、名誉を傷つけられたとして、元「コメディNo.1」の前田五郎氏が発行元の神戸新聞社に約1100万円の損害賠償を求めた事件。記事には前田氏が「大阪府警から数回の事情聴取を受けた」と書かれていた。
 裁判所は、記事は真実と認められない、また真実と信じた理由も認められないとして名誉毀損の成立を認め、同社に280万円の支払いを命じた。

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10月21日 大相撲「八百長疑惑」報道事件AB(3)
   最高裁(一小)/判決・上告棄却(確定)
 大相撲の八百長疑惑を報じた「週刊現代」の記事で名誉を傷つけられたとして、日本相撲協会や北の湖元理事長らが発行元の講談社や執筆者に賠償を求めた事件2件の上告審。講談社側は、記事の取消し広告を掲載するよう命じた一、二審の判決について、掲載の強制は表現の自由を保障した憲法に違反すると主張していた。
 最高裁第一小法廷は「広告が事態の真相を告白し、報道内容を取り消すと表明するに留まるならば違憲ではない」として、講談社側の上告を棄却した。講談社側に合計4400万円の賠償と取消し広告の掲載を命じた二審の判決が確定した。

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10月21日 ヨン様パブリシティ権侵害事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 韓国人気俳優のペ・ヨンジュンさんが、雑誌「ペ・ヨンジュン来日特報It’s KOREAL7月号増刊」に大量の写真を無断で掲載され、パブリシティ権を侵害されたとして、版元の出版社らに、合計約2700万円の損害賠償を求めた事件。
 裁判所は「著名人の氏名、肖像は、顧客吸引力を有し、経済的利益、価値を生み出すものであるということができるのであり、著名人は、人格権に由来する権利として、このような経済的利益、価値を排他的に支配する権利(以下、「パブリシティ権」という。)を有すると解するのが相当である」と、パブリシティ権の意義を述べ、本件雑誌による原告氏名、写真の利用態様を検討して侵害を認め、版元らに440万円の支払いを命じた。
判例全文
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10月21日 商標“ドーナツ”侵害事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 
判例全文
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10月21日 ミッフィー模倣事件
   蘭アムステルダム地裁/仮処分申請
 日本でも人気のウサギのキャラクター「ミッフィー」の作者ディック・ブルーナ氏の著作権を管理する会社が、日本のサンリオが製造販売しているキャラクター商品「キャシー」がミッフィーを模倣し著作権を侵害しているとして、オランダ・アムステルダムの裁判所に、商品の製造販売の差し止めを求めて仮処分申請した。要求に応じなければ1日5万ユーロの支払いをサンリオに要求するとしている。

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10月22日 朝日新聞「マニ教宇宙図」事件
   謝罪声明発表
 朝日新聞19日付け朝刊に掲載された「マニ教の宇宙図が国内で発見された」という記事の中で、共同通信配信の記事と酷似する部分があったことが分かり、朝日新聞大阪本社は、執筆した記者が「表現が引きずられた」と話している、「盗用と受け取られても仕方がない」として、謝罪した。

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10月26日 「北海道警裏金疑惑」名誉棄損事件(2)
   札幌高裁/判決・控訴棄却(上告)
 北海道警の裏金問題を追及した書籍2冊に事実と異なる記述があり、名誉を傷つけられたとして、元道警総務部長が、著者である北海道新聞社と記者2名および発行元の出版社2社に、計600万円の損害賠償を求めた事件の控訴審。一審は原告が捏造を指摘した箇所について真実と認めるには足りないとして、被告側に計72万円の支払いを命じ、双方が控訴していた。
 札幌高裁は、記述について当事者に取材しておらず、真実であると信じるに足りる取材をしたと認めるのは困難であるなどと指摘して北海道新聞側の主張を退け、一審判決を支持して、双方の控訴を棄却した。

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10月26日 商標“十二単の招福巻”侵害事件(3)
   最高裁(三小)/決定・上告不受理(確定)
 節分用巻きずし「招福巻」を商標登録した大阪の老舗すし店が、スーパー大手「イオン」が販売した「十二単の招福巻」の名称差し止めを求めた訴訟で、最高裁第三小法廷は、すし店の上告を受理しない決定をし、イオン側の勝訴が確定した。一審はイオンに使用差し止めと賠償金の支払いを命じたが、二審の大阪高裁はイオンによる販売時には「招福巻」の名称は普通名詞化しており商標権の効力が及ばないとして一審を取消していた。

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10月27日 JR総連元特別顧問への名誉棄損事件(2)
   東京高裁/判決・変更(上告、上告棄却・確定)
 JR東日本をめぐる「週刊現代」の記事で名誉を傷つけられたとして、JR総連の元幹部が、発行元の講談社と執筆者に合計1億1000万円の損害賠償を求めた事件の控訴審。問題の記事は2006年7月から07年1月まで連載された「テロリストに乗っ取られたJR東日本の真実」で、一審では原告の請求を認め、被告側に550万円の支払いを命じていた。
 裁判所は、記事は元幹部が列車妨害に関与したような印象を読者に与えるとして、名誉毀損の成立を認めたが、労組私物化を批判した記事の一部は「真実と信じる相当の理由がある」と判断して、一審の判決を変更し、賠償額を330万円に減額した。

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10月28日 見本版CDの無断販売事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 対象となったCDのレコード製作者であり、当該CDのジャケットの著作権者である原告が、被告である音楽CD制作会社が無断で本件CD依頼枚数以上に複製して販売したとして、著作隣接権および著作権侵害で510万円の損害賠償等を求めた事件。一審は見本CDの無断販売による著作隣接権侵害および著作権侵害は認めたが、各CDにつき3枚程度の見本の作成は通常のことであって、違法に複製したものではないと判断し、14700円を損害額と認定、被告に支払いを命じた。原告が控訴していた。
 控訴審は、出来上がり見本以外にも被告はCDを複製していたとする原告の主張を退け、一審の判断を維持して、控訴を棄却した。
判例全文
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10月28日 JAL労組プライバシー侵害事件
   東京地裁/判決・請求認容
 日本航空の客室乗務員ら193人が、JAL労働組合に思想信条や容姿・病歴などの個人情報を無断で収集されファイル化されたことによりプライバシーを侵害されたとして、同労組らに損害賠償を求めた事件。
 裁判所は労組側の情報収集によるファイル化には正当な目的があるとは言えず、プライバシーの侵害に当たるとして、請求通り原告一人につき1万円、合計193万円の支払いを命じた。
 尚、原告は当初、同労組に情報を提供していた日本航空にも損害賠償を求めていたが、同社は第一回口頭弁論で原告の請求を認め、原告側に一人当たり22万円を支払った。

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10月29日 横浜市長“合コン”報道事件(週刊現代)
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 2007年10〜11月発行の「週刊現代」の記事3本で、合コンの席で女性に猥褻な行為をしたなどと報道され、名誉を傷つけられたとして、前横浜市長が発行元の講談社に5500万円の損害賠償を求めた事件。
 裁判所は、強く口止めされていた被害女性が、突然の取材依頼に応じたのは不自然などと指摘して、記事は真実と認められないし、週刊現代側が真実と信じた理由もなかったとして、講談社側に550万円の支払いと謝罪広告の掲載を命じた。

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10月29日 ネット掲示板の中傷事件(立命館大准教授)
   京都地裁/判決・請求認容
 インターネットの掲示板に虚偽の書き込みをされ、社会的評価を傷つけられたとして、立命館大学経営学部の男性准教授が、通信業者「イーモバイル」に、プロバイダー責任法に基づき、投稿者の氏名や住所などの開示を求めた訴訟。
 裁判所は、書き込みは事実ではなく、准教授は損害賠償を請求するために投稿者情報を求める正当な理由があるとして、通信業者に投稿者情報の開示を命じた。判決によると、掲示板には、准教授が女子大学院生と不適切な関係を持ち、懲戒処分を受けたと伺わせる書き込みがあったという。
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11月2日 ミッフィー模倣事件
   蘭アムステルダム地裁/決定・仮処分認容(異議申立)
 ウサギの女の子のキャラクター「ミッフィー」のオランダ人作者ディック・ブルーナ氏の著作権を管理する会社が、サンリオのキャラクター「キャシー」はミッフィーを模倣し著作権を侵害しているとして差止めを求めた係争で、アムステルダムの裁判所はサンリオによる模倣を認定、オランダなど3ヶ国でのキャシーの生産の即時停止を命じた。サンリオがこれに応じない場合は、最大で2億2400万円の罰金が科せられるという。

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11月10日 鉄道DVD無断編集・販売事件(2)
   知財高裁/判決・変更(確定)
 100円ショップ「ダイソー」を経営する企業が販売した世界のSLを映したDVD「SL世界の車窓」をめぐって、旅行作家が無断で映像を使われたとして販売差し止めや損害賠償を求めた事件の控訴審。原審では旅行作家が映像制作会社に著作権を譲渡したとは認められないとして著作権侵害を認め、被告に約300万円の支払いを命じていたが、原告が判決を不服として控訴していた。
 裁判所は原判決と異なり過失相殺に関する被告の主張を採用しなかった他は原審の判断をほぼ踏襲し、支払額を約330万円と変更する判決を下した。
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11月10日 NHKニュース番組の写真無断使用事件
   札幌地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 2008年4月にNHKが企業の風力発電事業に関するニュースを全国に放送した際に、道内の風車を撮影した写真作品を無断で使用されたとして、写真家がNHKと取材を担当した記者などに合計約1080万円の損害賠償などを求めた事件。
 裁判所はNHKなどが著作権・著作者人格権を侵害したと認めて、40万円の支払いを命じた。

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11月15日 商標“喜多方ラーメン”審決取消事件(2)
   知財高裁/判決・請求棄却(上告受理申立)
 福島県喜多方市のラーメン店約40店が加盟する協同組合「蔵のまち喜多方老麺会」が、「喜多方ラーメン」の地域団体商標登録を認めなかった特許庁の審決を取り消すよう求めた事件。06年に創設された地域団体商標制度をめぐる司法判断は初めて。老麺会は制度発足と同時に登録を申請したが特許庁は認めず、同会の不服申し立てに対しても、申し立てを退ける審決を下していた。
 裁判所は、同会会員でなくても長期にわたって「喜多方ラーメン」の名称を使用している店があるなどとして、特許庁の審決を妥当と判断し、請求を棄却した。
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11月16日 立体商標“ヤクルト”事件B(2)
   知財高裁/判決・請求認容(確定)
 ヤクルト本社が販売する乳酸菌飲料の、特徴的なくびれのあるプラスチック容器の立体商標登録をめぐって、同社が特許庁に対し、登録を認めなかった審決の取消しを求めた事件。同社は08年9月に登録を出願したが、特許庁は登録を認めず、今年4月の審決でも同社の不服申し立てを退けていた。
 裁判所は容器の形状だけで商品識別力を獲得しているとして、審決を取り消した。文字や図柄のない容器の形そのものが立体商標として認められたのは、08年5月のコカ・コーラの瓶に続いて2度目。
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11月16日 飯島勲元首相秘書官への名誉棄損事件(毎日新聞)(2)
   東京高裁/判決・控訴棄却
 小泉純一郎元首相の元秘書官飯島勲氏が、発言内容の誤報で名誉を傷つけられたとして毎日新聞社に1000万円の損害賠償を求めた事件の控訴審。毎日新聞は08年9月26日付朝刊の記事で「次期衆院選で小泉氏が応援しても小泉チルドレンは負けるだろう」と飯島氏が発言したと報道。原審は名誉毀損を認めて100万円の支払いを命じたが、毎日新聞社側が控訴していた。
 高裁は「記事は正確性を欠いたまま要約された」と指摘して原審を支持し、控訴を棄却した。

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11月18日 類似“子供椅子”事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 子供用椅子の形態類似性があるとして、ノルウェーのデザイナーの権利保有者と家具製造販売会社が、育児用品国内大手会社に対して、著作権や著作権の独占使用権侵害による、また不正競争防止法に基づく製造販売の差し止めと約5780万円の損害賠償などを求めた事件。椅子はどちらも背もたれの角度が65°前後、足を置く板の高さを変える溝が13、4本であった。
 裁判所は、著作物性については応用美術論に言及して、著作権法による保護の対象とは認めなかったが、形態模倣行為の不正競争行為性については、形態の周知性、類似性、混同のおそれを認めて、国内大手会社に製品の製造販売の差し止めと廃棄、および約245万円の支払いを命じた。
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11月18日 「弁護士のくず」著作権侵害事件(3)
   最高裁(一小)/決定・上告不受理(確定)
 漫画雑誌ビッグコミックオリジナルの人気漫画「弁護士のくず」に自分の小説と類似した部分があるとして、小説の作者である弁護士が漫画家と発行元の小学館に対し、著作権侵害による損害賠償などを求めた事件。一審二審とも著作権侵害を認めず請求を棄却していたが、最高裁は18日付で、弁護士の上告を受理しない決定をし、一、二審判決が確定した。

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11月22日 商標“どん兵衛”侵害事件
   大阪地裁/和解
 カップ入り即席うどんとして知られる「どん兵衛」の製造元である日清食品が、山口県の外食チェーン「どん兵衛」に対して、名称を勝手に使われたとして、使用差し止めなどを求めた事件。日清側は08年に外食チェーンの存在を知り、原告商品の顧客吸引力にただ乗りして利益を得ようとしているとして10年7月に提訴した。
 両者は、外食チェーン側が店名や社名を変更することを条件に、22日和解が成立した。

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11月24日 「日経新聞の黒い霧」名誉棄損事件(2)
   東京高裁/判決・控訴棄却(上告)
 日本経済新聞社が、同社元部長の著書『日経新聞の黒い霧』など2冊は虚偽の内容を含んでおり名誉毀損だとして、元部長に対して損害賠償などを求めた事件の控訴審。原審は名誉毀損を認め、元部長に200万円の損害賠償を命じたが、元部長側が控訴していた。
 裁判所は一審判決を支持、元部長側の控訴を棄却した。

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11月24日 「週刊新潮」の吉本興業社長への名誉棄損事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 「週刊新潮」の記事で名誉を傷つけられたとして、吉本興業と同社社長が発行元の新潮社に対して計2200万円の損害賠償などを求めた事件。問題となったのは09年7月2日号の「『吉本興業社長』の口座に振り込まれた不審な1800万円」と題する記事で、吉本興業の子会社で約20億円の資金が消え、社長が不正な利益を得たなどと報じた。
 判決は資金が減ったのは別の理由であり、記事は真実とは認められないとして名誉毀損を認め、新潮社に約440万円の支払いを命じた。

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11月24日 JASRAC vs KTJAPAN事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 JASRACが、音楽著作物のダウンロードサービスを行っていたKTJAPANとその代表者に対して、管理楽曲利用許諾契約に基づく著作物使用料の支払いを遅滞したとして、支払いを求めた事件。
 裁判所は被告会社KTJAPANの不履行を認め、未払い使用料と遅滞損害金の支払い約300万円を命じたが、被告会社代表者に対する任務懈怠を理由とする損害賠償請求は認めなかった。
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11月25日 商標“塾なのに家庭教師”侵害事件
   東京地裁/判決・請求棄却(確定)
 
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11月29日 公安テロ資料流出書籍の出版差止事件
   東京地裁/決定・仮処分認容
 インターネット上に流出した警視庁公安部などが作成したとみられる国際テロ捜査関連文書を、東京の出版社・第三書館が出版したことに対し、個人データを掲載されたイスラム教徒らが出版と販売を差し止める仮処分を申し立てていた事件。
 裁判所は、仮に情報流出を問題にするとしても個人情報自体は公共の利益に関わらないとし、また「容疑」と記載されてテロ犯罪の容疑者であるかのような記述がある、として申し立てを認め、データを削除しない限り出版と販売を禁じる決定をした。

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11月30日 「週刊新潮」の横峯良郎参院議員への名誉毀損事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 賭けゴルフをしたなどと報じた「週刊新潮」の記事で名誉を傷つけられたとして、民主党の横峯良郎参院議員が発行元の新潮社などに5500万円の損害賠償などを求めた事件。問題となったのは2007年8月30日号から4回にわたって掲載された記事で、横峯氏が知人らと高額の賭けゴルフをし、飲食店で品位を欠くふるまいをしたなどと報じていた。
 裁判所は、記事の重要部分は真実で、掲載は公益目的であったと認めて、横峯氏の請求を棄却した。

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11月30日 切り餅の「切り込み」特許事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 側面に切込みを入れた切り餅を製造販売している食品製造販売会社が、側面と上下の面に切込みを入れた切り餅を販売している同業の食品会社を、特許権を侵害されたとして、製造販売の差し止めや14億8500万円の損害賠償を求めた事件。原告会社は焼いても形が崩れずふっくら焼きあがるように側面に切込みを入れた切り餅を開発し、03年より販売、08年に特許登録された。一方被告会社は側面以外に上下面にも十字の切込みを入れて販売していた。
 裁判所は原告会社の特許の範囲を側面部分の切り込みと判断し、被告会社の切り込みは上下面にもあるから特許権の侵害にならないとして、請求を棄却した。
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12月6日 ナビシステムの特許事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 カーナビ装置に関する特許を得ている電機メーカーのパイオニアが、携帯電話向けのナビゲーションサービスを提供しているナビタイムジャパンに対して、特許権を侵害されたとして訴えた事件。被告会社のシステムは車の同乗者が目的地を検索できる「EZ助手席ナビ」。
 判決は、被告会社のサービスは車外サーバとの通信で得られた情報が携帯電話に提供されるもので、車外サーバを使用しない原告会社の装置とは異なると判断して、請求を棄却した。
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12月7日 駒込大観音の頭部すげ替え事件(3)
   最高裁(三小)/決定・上告棄却(確定)
 東京都文京区の光源寺にある駒込大観音の頭部を無断ですげ替えたのは著作権侵害に当たるとして、制作者の遺族が寺に対して元の頭部に戻すよう求めた事件の上告審。一審は元の頭部に戻すよう命じ、二審は著作権侵害は認めて広告文の新聞掲載は命じたが、頭部の原状回復については退け、遺族側が上告していた。
 最高裁は7日付で遺族側の上告を棄却する決定をし、二審の判決が確定した。

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12月7日 商標“讃岐”取消事件(台湾)
   台湾知的財産局/決定・申立認容(控訴)
 台湾の食品会社が「讃岐」を商標登録したことに対し、台湾に進出した日本の讃岐うどん店経営者が、地名を一企業が独占するのはおかしいとして審判を申し立てた事件。
 判決は、台湾の消費者は「讃岐」をうどんで有名な日本の地名と認識している、商標登録は産地を誤認させる恐れがある、として、登録を無効とした。

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12月10日 広告文言の著作物性事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 PCデータ復旧請負会社(原告)がコンピュータ機器開発販売会社(被告)に対して、被告がネット上の自社サイトに掲載したデータ復旧サービスに関する文章は、原告が創作し自社サイトに掲載したものを無断で複製または翻案したものであり著作権侵害および著作者人格権侵害だとして、損害賠償金約1650万円等と謝罪広告の掲載を請求し、同時に予備的に、一般不法行為に当たるとして同等の請求をした事件。
 裁判所は、原告文章と被告文章を対比・検討し、このような構成や記述順序は広く一般的な表現であり、文章の類似部分には創作性がないとして、侵害を認めず、一般不法行為の訴えに対しては、被告文章の原告文章への依拠性は認めつつも、社会的に許容される限度を超えた行為とは言えないとして、不法行為の成立も否定した。
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12月13日 女子プロレスの放映権事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 全日本女子プロレス興業株式会社(以下、全女)が主催した女子プロレス興行を中継するテレビ番組を制作し放送した株式会社フジテレビジョンと、同番組を収録した映像素材を編集して衛星放送を行った株式会社スカパー・ブロードキャスティングに対して、全女に前払い金返還請求権を有する債権者である写真集制作業者が、全女はフジテレビに地上波放送は許諾したがCS放送については許諾しておらず、またCS放送には実演家である女子レスラーの報酬請求権が発生し、これは全女に帰属すると主張して、損害賠償金など160万円の支払いを求めた事件の控訴審。原審は、契約書その他の書面はないものの、証人の供述から全女と放送会社との間で映像素材の無償提供の合意があったと認定し、また実演家の報酬請求権は発生しないとして、原告の主張を否定し、請求を棄却したが、原告側が控訴した。
 裁判所は原審の判断を維持し、控訴を棄却した。
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12月15日 銚子市長選候補者“市税滞納”報道事件
   東京地裁/判決・本訴請求一部認容、一部棄却、反訴請求棄却
 (控訴・一部変更、一部控訴棄却・上告受理申立)
 2009年5月の銚子市長選に立候補して落選した候補者をめぐる市税滞納問題を報じた読売新聞社に対して、候補者が事実無根だとする記者会見やビラ配布をしたのは名誉毀損であるとして、読売新聞社が候補者に対して1100万円の損害賠償等を求めた事件。
 裁判所は、報道は事実無根とはいえないとして、被告の行為は原告の報道機関としての信用を毀損するものと判断、被告に330万円の支払いを命じた。

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12月21日 廃墟写真の模倣事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 廃墟写真を手がけるプロ写真家(原告)が、同業の写真家(被告)に自分の作品を真似されたとして、著作権・著作者人格権侵害および名誉毀損を主張して訴えた事件。原告写真家は、被告写真家の写真集に掲載された5点の廃屋等の写真が自分の写真に似ているとして提訴、また被写体発見には多大な労力がかかるのに自ら発見したように発表され名誉を毀損されたと主張した。
 判決は、被写体の選択はアイデアであって表現ではなく、写真全体の印象は双方に大きな違いがあるとして著作権侵害を認めず、また被写体発見に多大な労力を要したとしても、他社の撮影を制限はできず法的保護には値しないとして、原告の請求を棄却した。
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12月21日 “住宅ローン金利比較表”の著作物性事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 金融情報サイトの運営者(原告)が、住宅金融普及協会(被告)がウェブ上に公開している情報ページに掲載されている図表は原告の著作物である図表を複製したものであり、著作権侵害だとして、約700万円の損害賠償等を求めた事件。
 裁判所は当該図表の著作物性を否定、更に原告の主張する編集著作物性やデータベース著作物性もありふれたものとして否定し、原告の請求を棄却した。
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12月22日 診療報酬プログラムの著作権確認事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 医療に関するコンサルティング業務等を行う会社(原告)が、同会社の取締役であった被告に対し、被告が取締役就任前後に作成した、診療報酬に関する診断群分類別包括評価制度の元でコンサルティング業務を行うために用いられる各プログラムについて、職務著作に該当するとして、原告が著作権を有することの確認を求めた事件。
 裁判所は、各プログラムのうち、元著作物であるDAVE02については、被告が作成当時に業務に従事する者に当たったかどうかを検討し、本業とは別にプログラムを開発していたので職務著作には当たらないと判断した。そして被告が原告会社の取締役として本格的に関わったDAVE02をヴァージョンアップした3つのプログラムについては、職務著作として、原告が著作権を有することを認容した。
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12月24日 “ひこにゃん”瓜二つ事件
   大阪地裁/決定・申立棄却(抗告)
  滋賀県彦根市の人気キャラクター「ひこにゃん」は、彦根市が原作者から著作権を買い取って商標登録しているが、原作者は07年11月に、自分が考案した3ポーズの図柄以外のグッズが出回っているとして、彦根簡裁に民事調停を依頼し、市側は3ポーズに限り業者に製造販売を依頼する、原作者は「ひこにゃん」以外の創作活動をするという形で合意した。だが、原作者の考案した「ひこねのよいにゃんこ」のグッズが出回るようになり、市はこのグッズに対して不正競争防止法に基づき販売差止めを求める仮処分を申請した。
 大阪地裁は、市が合意に違反して3ポーズ以外のグッズを許可し続けているとし、差し止め請求を権利の乱用として却下した。

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12月27日 “私的録画補償金”不払い事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 映画や音楽関係の団体で作る社団法人「私的録画補償金管理団体(SARVH)」が、家電大手の東芝がデジタル放送専用DVDレコーダーの代金に上乗せして課金する「私的録画補償金」を納付していないとして、約1億4600万円の損害賠償を求めた事件。東芝は機器はダビング10に対応しており、著作権は保護されていると主張していた。
 裁判所は、補償金の支払いは法的強制力を伴わない抽象的な義務に過ぎないとして、SARVHの請求を棄却した。同協会は判決を不服として翌28日に控訴した。
判例全文
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12月28日 「サーキットの狼」DVD化事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却、追加請求棄却
 漫画「サーキットの狼」を題材にしたテレビ番組のDVD商品化許諾をめぐって、下請け制作会社とナレーション実演家が、映像製作会社=著作権管理会社に追加請負代金の支払い等を求めた事件の控訴審。
 裁判所は原告の請求を棄却した一審の判断を維持し、また原告らの期待権侵害という新たな主張も認めず、控訴を棄却した。
判例全文
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