裁判の記録 line
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2006年
(平成18年)
[7月〜12月]
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7月3日 ファイル交換ソフト事件(刑)(Winny)
   京都地裁/第24回公判
 ファイル交換ソフト「Winny(ウイニー)」の開発者で元東大大学院助手の被告に対する著作権法違反幇助罪の第24回公判が京都地裁(氷室真裁判長)で開かれ、検察側は懲役1年を求刑した。
 検察側は、「ウイニーは、違反行為を助長するために作られており、高度の匿名性で利用者に摘発を免れ得るとの安心感を与え、インターネット社会での無政府状態を引き起こした」として、社会的影響は深刻であるとし、懲役刑を求刑した。

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7月4日 人気アニメの無断配信事件(刑)
   福岡県警/逮捕
 04年11月ごろから05年8月頃にかけて、「ドラえもん」や「機動戦士ガンダム」など5本のアニメをストリーミングという手法を使って会員に無断配信したとして、福岡県警は著作権を侵害した疑いで男を逮捕した。

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7月4日 偽アディダス製造・販売事件(刑)
   兵庫県警/逮捕
 兵庫県警は、アディダスの偽ブランドを製造・販売したとして婦人子供服卸会社の大阪支店長等2人を商標法違反(商標権侵害)の疑いで逮捕した。
 05年8月末、「アディダス」や「プーマ」の偽商品のジャージを宝塚市内の服飾製造販売会社に販売した疑い。大阪支店から偽商品250着、東京本社からはダンボール約600個の商品を押収しており、容疑者等の余罪を追及するという。

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7月4日 鹿砦社社長の名誉棄損事件(刑)
   神戸地裁/判決・有罪(控訴)
 兵庫県西宮市「鹿砦社」の社長は、阪神球団関係者や遊技機メーカー社長に対する名誉毀損の疑いで、2005年7月12日、起訴されていたが、この日、神戸地方裁判所は懲役1年2ヶ月、執行猶予4年の有罪判決を言い渡した。
 阪神球団案件について、実名表記は専ら公益を図る目的があったと認めたが、記述内容については真実であるとの立証はされていないし、真実であると信じたことに相当な理由があるとは認められないとした。
 遊技機案件については、競合他社と手を組んで資金提供を受ける目的であり、公共目的は認められないとした。
 鹿砦社は、7月12日に大阪高裁に控訴した。

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7月11日 「ローマの休日」他’53年作品の保護期間事件
   東京地裁/決定・申立却下
 6月25日、パラマウント・エンタテインメント・ジャパンは、映画「ローマの休日」などの格安DVDを販売していたファーストトレーディングに対し、製造販売中止の仮処分申請をしていたが、この日、東京地裁(高部眞規子裁判長)は、申請を却下する決定を下した。
 53年公開の映画は03年12月31日に保護期間50年が満了するが、04年1月1日から施行される改正著作権法によって、更に20年保護期間が延長されるのかどうか、その法解釈をめぐるはじめて司法判断である。
 文化庁著作権課は、03年12月31日午後12時と04年1月1日午前0時は接着しているために改正法が適用されるとする解釈をしており、パラマウントもこの解釈に立脚して著作権の存在を主張していた。
 しかし、東京地裁は、著作権の保護期間は「年」によって期間を定められているので、保護期間の単位は「時間」ではなく「日」であり、したがって民法141条により12月31日の経過によって満了するとして、従来の解釈を否定し、パラマウントの請求申立てには理由がないとした。
 また、従来の解釈を変えることは法解釈の安定性を害することになるという主張に対しても、誤った解釈を前提とする法の運用を将来において維持することが、法的安定性に資しすることにはならないとして退けた。
判例全文
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7月21日 韓国版オンライン野球ゲーム事件
   ソウル中央地裁/判決・請求棄却(控訴)
 コナミは昨年8月25日、自社の「実況パワフルプロ野球」にそっくりなキャラクターを登場させて著作権を侵害されたとして、韓国のオンライン野球ゲーム「新野球」の配信差止を求めて提訴していたが、21日、ソウル中央地裁は原告請求の棄却判決を下した。

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7月21日 「ローマの休日」他’53年作品の保護期間事件(2)
   知財高裁/即時抗告
 パラマウント・ピクチャーズ・コーポレーションは、「ローマの休日」他53年作品の格安DVDの製造販売中止仮処分申請に対する東京地裁の申請却下決定を不服として、この日、知財高裁に即時抗告した。

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7月21日 チャップリン映画の格安DVD事件
   東京地裁/提訴
 「モダン・タイムズ」などチャップリン(1889〜1977)の映画9作品について、著作権を侵害されたとして、リヒテンシュタインのロイ社が、販売差止と損害賠償を求めて、東京のDVDメーカーや販売会社を東京地裁に提訴した。
 ロイ社によれば、"旧著作権法による存続期間が、現行法の映画の著作物の存続期間より長いので、附則7条によって旧法が適用され、短くとも2015年まで存続する"と主張している。

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7月24日 外務省機密漏洩事件をめぐる元毎日記者の名誉棄損事件
   情報公開・個人情報保護審査会/答申・決定取消
 沖縄返還をめぐる外交機密を漏洩したとして、国家公務員法違反の罪で有罪判決を受けた元毎日新聞記者が、「誤った判決で名誉を傷つけられた」と、国に損害賠償を求めて起こした訴訟に関心を持った人が、法務省に対して訴状や答弁書の開示請求をしたところ、「特定の個人が訴訟に関係しているかどうかはプライバシー情報である」として、国が訴えられたかどうかについても回答しないまま不開示と決定した。
 これに対し、情報公開・個人情報保護審査会は決定を取り消すよう答申した。

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7月26日 類似ロレックス事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 スイスの時計メーカーのロレックスは、東京都世田谷区の時計製造販売会社に対して、類似品の製造販売禁止と損害賠償を求めて提訴していたが、この日、東京地方裁判所は、請求10品目中9品目について文字盤のデザインなど細かく検討した結果、類似であると認めて製造・販売等を禁止し、1400万円余の損害賠償を命じた。
 これら9種の類似品は、ロレックス製品の形状と比較して、その相違点は全体から見ると些細な相違に過ぎないとして、不正競争防止法に抵触するとした。
判例全文
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7月27日 類似「正露丸」販売事件
   大阪地裁/判決・請求棄却(控訴)
 「ラッパのマーク」で知られる胃腸薬「正露丸」の製造販売業者大幸薬品が、ひょうたんマークの「イズミ正露丸」を製造販売する和泉薬品工業に対し、「類似性は明らかで、製品の混同を生じる恐れがある」と、不正競争防止法に違反するとして、販売差止めや損害賠償を求めて起こした訴訟の判決が、この日、大阪地裁であった。
 判決は、大幸薬品の製品の識別は、包装箱に記載された社名とラッパの図柄によって初めて可能になるので、図柄が違えば和泉工業の製品との誤認混同のおそれはないとし、「正露丸」という語も業者の間では一般名称として受けとめられており、普通名称であるから、商標権の侵害には当たらないとした。
判例全文
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7月27日 「極真会館」の商標事件B
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 育英、学術研究の助成を目的とする財団法人が、極真会館の館長に対し館長が保有しているとされる商標権について移転登録手続をせよと請求していた訴訟について、その請求の一部を認め、その余の請求については棄却した。
 財団法人から譲渡されたとして館長名義で登録されその後存続期間の更新登録がなされて今日にいたっている商標権については、譲渡を認めるに足る証拠がないので財団は移転登記請求権を有する。その余については、移転登記請求を認める理由がないとした。
判例全文
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7月28日 広末涼子さんに対する名誉毀損事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 女優の広末涼子さんは、講談社発行「週刊現代」に、育児をおろそかにして、ホストクラブで泥酔しているとの記事を掲載され、名誉を傷つけられたとして講談社側に2370万円の損害賠償を求めていた。
 記事が広末涼子さんの社会的評価を低下させたのかどうかが争われた。
 この日、東京地裁片田信宏裁判長は、既存の評価自体が週刊誌等によって作られたものであってこれをもって社会的評価とするのは不当である、記事の真実性が証明されていないとして、名誉毀損と認め、440万円の支払を命じた。

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7月31日 「文藝春秋」の日本道路公団財務諸表事件B
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴・上告)
 旧日本道路公団藤井治芳元総裁が旧道路公団の債務超過を示す財務諸表を隠蔽したと、月刊「文藝春秋」誌が報じたことに対して、名誉を傷つけられたとして、文藝春秋や内部告発した元公団幹部らに損害賠償を求めていた。
 東京地裁野山宏裁判長は、31日、財務諸表は資本欠損か債務超過であり、意に沿わない職員を異動させた「恐怖人事」との記述も真実であると認定し、また、真剣な議論に対しては言論をもって反論すべきであり、「人身攻撃」だと裁判を起こすのは筋違いだと指摘し、請求を棄却した。
判例全文
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7月31日 無断生演奏に対する賠償請求事件
   名古屋地裁/提訴
 日本音楽著作権協会(JASRAC)は、使用料を払わずに生演奏を続けていたとする著作権法違反容疑で去る5月に有罪が確定している名古屋の元飲食店女性社長に対し、使用料など約1600万円の支払を求める訴えを起こした。

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8月1日 プロ野球選手の肖像権侵害事件(野球カード)
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 市販の野球カードやゲームソフトに選手の氏名や写真の使用を許諾したプロ野球10球団を相手取り、プロ野球選手34人が氏名や肖像の使用許諾権限は選手側にあることの確認を求めた訴訟で、選手側の請求を棄却する判決がくだされた。
 野球カードやゲームソフトへの肖像や氏名の使用は、野球選手契約に用いられる統一契約書第16条で言う「宣伝目的」に含まれるとして、球団が使用許諾権限を持つとした。また、長年にわたって変更されていない本契約条項は時代に即して再検討する余地があると付言している。
判例全文
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8月4日 テレビ番組送信サービス事件(まねきTV)
   東京地裁/決定・申立却下(抗告)
 NHK他在京民放5局は、海外出張先などで日本のテレビ番組をネット経由で試聴できるサービス「まねきTV」を提供している民間サービス業者に対して、送信可能化権などの著作隣接権を侵害しているとしてサービス中止を求める仮処分申請をしていたが、東京地裁は申請を却下する決定を下した。
 このサービスは、利用者が専用ソフトを組み込んだソニー製の市販装置を購入し、ベースステーションとして永野商店に管理を依頼する。海外在住の利用者はインターネット回線に接続し、回線を通じてテレビ番組を視聴できるというものである。
 放送波をデジタル化するベースステーションは「名実ともに利用者が所有するものであ」り、送信も受信も利用者本人が行っており、また、1台のベースステーションから受信できるのは同一利用者が持つ1台のモニターかパソコンであるから、不特定又は特定多数への送信にはあたらないので、自動公衆送信にはあたらない、永野商店は管理行為を代行しているに過ぎずないとした。
判例全文
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8月9日 韓国版オンライン野球ゲーム事件(2)
   ソウル高裁/控訴
 コナミデジタルエンタテインメントは、著作権侵害であるとして韓国のオンラインゲーム「新野球」の配信差止を求めた請求が棄却された地裁判決を不服として、ソウル高等裁判所に控訴した。
 原判決は、細部の差異に着目し、全体としての類似性を看過しているとし、ゲームソフトにおけるキャラクターの重要性を考慮すると、今後のビジネスの展開にとって好ましくないと判断し、控訴に踏み切ったという。

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8月15日 プロ野球選手の肖像権侵害事件(野球カード)(2)
   東京高裁/控訴
 氏名や肖像の許諾権限は球団側にあるとする8月1日の東京地裁判決を不服として、選手側は東京高等裁判所に控訴した。

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8月22日 商標“あげたい”侵害事件
   青森地裁/提訴
 青森県五所川原市のたい焼き屋が、お店の人気商品「あげたい」に類似した商品、「あげたい焼」を製造・販売して商標権を侵害したとして、大手コンビニエンスストアに対して500万円の損害賠償を訴訟を起こした。
 たい焼き屋は、油で揚げたたい焼きを「あげたい」の名で1978年ごろから販売し、人気商品となった。一方、コンビニエンスストアは、「あげたい焼」として2005年7月から青森県内に限定して販売し、2005年いっぱいで販売を中止したという。

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8月25日 改造ボーダフォン不正販売事件(刑)
   警視庁/逮捕
 ボーダフォンの携帯電話を不正に改造し、販売したとして、警視庁は、東京都新宿区の会社社長ら4人を、商標法違反や不正競争防止法違反の容疑で逮捕した。
 国内の携帯電話は、回線情報などを記録した自社独自のSIMカードを使っており、自社のSIMカード以外では作動しないようにロックされている。この「SIMロック」を不正に解除した状態でボーダフォン端末として販売したことによる、商標権侵害、不正競争防止法違反の疑いである。

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8月31日 振動制御プログラム侵害事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却(確定)
 振動制御のソフトウエアプログラム開発業務委託者である機械製造メーカーが新たにシステムを開発・販売した行為が、原システムの開発業務受託者であるソフト開発会社の著作権(翻案権)を侵害したとして、受託者である開発会社が販売差止、損害賠償を求めた控訴審判決で、知財高裁は控訴を棄却した。
 プログラムの翻案権の帰属、翻案権は留保されたのか等が争われたが、両者間には著作権の譲渡契約があり、交渉の経緯から委託者による翻案権を前提としていたと解されるとし、ソフト開発会社の請求は退けられた。
判例全文
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8月31日 埼玉医科大教授セクハラ報道事件(2)
   東京高裁/判決・取消(上告)
 埼玉医科大学の男性教授が、診察した女性からセクハラ行為を受けたと提訴された事件を実名で報道され、名誉を傷つけられたと毎日新聞などに損害賠償を求めた控訴審判決で、東京高裁西田美昭裁判長は、一審判決を取り消し、教授の請求を棄却した。
 実名報道は専ら公益を図る目的で違法性はなく、高度の専門的職業にある者の職業上の行為が問題とされており、個人の私的領域に属する事柄ではないとして、プライバシーの侵害にも当たらないとした。

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9月1日 歌手・演奏家らの著作権料返還請求事件
   東京簡裁/調停申立
 ジャズ歌手や演奏家らが組織する、文化庁所管の公益法人「日本音楽家協会」(東京都港区)が、歌手等に支払われるべき著作権料を分配せず、協会事業費などに流用していたとして、文化庁から業務改善を指導されていたことがわかった。
 未分配金は主にCDなどの放送使用料、私的録音補償金などで、「実演家著作隣接権センター(CPRA)」が放送局やレンタル店から代理徴収し、日本音楽家協会を通じて各権利者に分配する仕組みになっているが、日本音楽家協会はCPRAから受け取った金の一部しか分配していなかったという。
 CPRAは、同協会に著作権料の返還を求めていたが、一部しか戻らなかったため、未返還部分の返還請求の調停を東京簡易裁判所に申立てた。

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9月4日 ファイル交換ソフト事件(刑)(Winny)
   京都地裁/結審
 ファイル交換ソフト「ウィニー」の開発者で著作権法違反幇助の罪に問われている元大学院助手の公判が4日、結審した。
 判決は、12月13日に言い渡される。

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9月6日 韓国製化粧品の商標権侵害事件
   ソウル南部地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 低価格戦略で若者の人気を集めている化粧品ブランド・ミシャを展開する韓国のエイブルC&Cに対し、日本のマリークワントコスメティックスジャパンは、類似商標の使用禁止と損害賠償1億ウォンの支払いを求めて提訴していた。
 マリークワントコスメティックスは、英国人デザイナーの花柄のロゴマークを使用しているが、ミシャのロゴマークは色が異なるものの他の構成要素が同じであり、同一商標であると認定し、一方、損害賠償については認定の根拠がないとして棄却された。

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9月6日 貴乃花親方夫妻への名誉棄損事件(光文社)
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 写真週刊誌「FLASH」の記事で名誉を傷つけられたとして、貴乃花親方夫妻が光文社と同誌編集長に対し、1億5000万円の賠償請求と謝罪広告を求めていた訴訟の判決があり、光文社側に200万円の支払いを命じた。
 「一部の記事は真実でないか、真実と信じた相当な理由がない」とし、一方、「原告は名声の高い横綱で、批判を甘んじて受ける範囲は広く、一私人とは異なる」とした。

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9月7日 公明党元衆議院議員への名誉毀損事件
   神戸地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 公明党元衆議院議員の渡辺一郎氏が、週刊新潮の記事で名誉を傷つけられたとして、新潮社と同誌編集長に対し2300万円の損害賠償を求めていた訴訟で、神戸地裁は330万円の支払いを命じた。
 記事は、NPO法人の幹部だった渡辺氏が投資家をだまして金を集めたという印象を与えるが、「取材過程に落度があり、内容が不十分」とし、「記事の断定的表現を読んだ読者が、嫌疑が強いという印象を抱くことは容易に想像できる」とした。

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9月11日 NHK元海外支局長への名誉毀損事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 月刊誌「テーミス」は2005年7月号に、NHK元ワシントン支局長手嶋龍一氏に関する記事を掲載したが、手嶋氏は名誉を傷つけられたとして、名誉毀損で3300万円の損害賠償の訴訟を起こしていた。
 東京地裁は、記事は手嶋氏が不正経理を行い、個人的利益を得たかのように報じていたが、「信頼性の高い具体的情報を得ておらず、真実でない記事を掲載した」として、発行元のテーミスに440万円の支払を命じた。

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9月13日 「キャロル」コンサートのDVD化事件(2)
   知財高裁/判決・一部取消、一部控訴棄却、追加請求棄却(上告)
 矢沢栄吉さんらが所属したバンド「キャロル」の解散ライブを撮影したビデオとDVDを巡り、映像制作会社(東京都渋谷区)が、大手レコード会社(東京都港区)に製造販売の中止などを求めた控訴審で、知財高裁は、一審判決を取り消し、原告敗訴の逆転判決を言い渡した。
 知財高裁塚原朋一裁判長は、制作会社は著作権者であったが、「撮影代金の支払を受けてマスターテープを渡し、権利を譲渡した」と認定し、販売差止と映像会社への約4900万円の支払いを命じた一審判決を取り消した。
 また、宣伝用DVDについては、大手レコード会社が無断改変をしたとして、一審と同じく配布差止と賠償金の支払いを命じた。
判例全文
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9月13日 DION顧客情報流出事件(刑)
   警視庁/書類送検
 KDDIのインターネット接続サービス「DION」の顧客情報約400万件が流出し、この情報をもとにKDDIから現金を脅し取ろうとした恐喝未遂事件(公判中)が起きているが、この顧客情報データベースを不正にコピーし流出させたとして、システム開発会社の元社員(千葉県松戸市)とその友人を、著作権法違反の疑いで、書類送検した。
 顧客情報の流出事件に対して、著作権法を適用したのははじめてのケース。

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9月15日 画廊への名誉毀損事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 日動画廊(東京)が、週刊誌「週刊新潮」や月刊誌「政界往来」の発行元を名誉毀損で訴え、約1億400万円の損害賠償を求めた訴訟で、この日、東京地裁は、両社にそれぞれ440万円の支払いを命じた。
 記事はいずれも「主要部分が真実でなく」、「十分な裏づけ取材もなく」、「原告の信用を損なった」とした。

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9月15日 商標“無印良品”侵害事件(中国)(2)
   中国北京市第一中級人民法院/判決・請求棄却
 香港企業JBIが、25類(被服、履物)を指定商品とする商標「無印良品」「MUJI」を中国で先行取得していたが、良品計画が無効取消を求めた結果、商標評審委員会が2005年8月31日付で登録無効の審決を下していた。
 JBIはこれを不服として、北京市第一中級人民法院に出訴していたが、第一中級人民法院は原審決をする維持する判決を下した。

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9月20日 商標“Anne of GreenGables”侵害事件(2)
   知財高裁/判決・請求棄却
 カナダの映画会社が「赤毛のアン」の原題「Anne of GreenGables」を、9類を指定商品(スロットマシンやテレビゲーム)として日本で商標登録していたが、小説の舞台であるプリンス・エドワード・アイランド州政府が登録無効を日本の特許庁に訴えたのに対して、特許庁は登録無効の審決を下した。
 カナダの映画会社は、この審決の取消を求め控訴した。塚原朋一裁判長は、原作は世界的に有名で、日本とカナダの国際信義に反するもので、公序良俗に反するおそれのある商標(商標法第4条1項七号)として、特許庁の取消審決を支持し、請求を棄却した。
判例全文
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9月22日 「武富士」の言論抑圧事件(週刊金曜日)
   東京地裁/判決・請求認容
 フリーランスの記者が「週刊金曜日」に武富士の事業活動を批判する記事を書いたとして武富士が起こした名誉毀損訴訟は「武富士の不当提訴」であると、逆に武富士に賠償を求めた反訴に対して、東京地裁は、「武富士の提訴は言論・執筆活動の抑制、けん制が目的で違法」とし、原告勝訴の判決を下した。

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9月25日 ファイル交換ソフト事件(WinMX)B
   東京地裁/判決・請求認容
 レコード会社14社は、ファイル交換ソフトを使って、インターネットで不正に音楽データを公開している人の名前と住所を公開するよう求めて、プロバイダーを提訴していた。
 新井勉裁判長は、「自社の判断による開示は控える」とする立場を取るプロバイダー大手3社に対し、レコード会社の著作隣接権侵害を認め、請求どおり19人の氏名と住所を開示するよう命じた。
判例全文
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9月26日 「キューピー」不正競争事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(確定)
 被告企業がキューピーのライセンス業務を行うとして、キューピーの著作権ライセンス業務を行う先発企業である原告ローズオニールキューピー・インターナショナルの取引会社やライセンシーに資料を配布したが、これが不正競争行為に当るとして、原告は、賠償請求と謝罪広告の掲載を求めて提訴した。
 配布資料は米国における事実や経緯を伝えたに過ぎないとしたが、「全ての権利」という文言が使用されており、これが不正競争防止法第2条の「虚偽の事実を告知し、又は流布する行為」であるとして、損害賠償の支払いを命じ、謝罪広告の請求は退けた。
判例全文
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9月26日 『図説江戸考古学研究辞典』の著作権侵害事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却、附帯控訴一部認容、一部棄却
 江戸風俗画家が、柏書房が発行した『図説江戸考古学研究辞典』は、画家の模写による絵画の著作権を侵害したとして、同書籍の販売の停止と損害賠償を求めた一審判決を不服とし控訴していた。
 佐藤久夫裁判長は、模写絵の著作物性を「その成果物が著作物であるかどうかは、制作結果ではなく、その制作過程において、制作者自身の『精神的創作』行為が発揮されたかどうかで判断」すべきであるとし、控訴棄却、損害賠償金を減額した。
判例全文
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9月27日 類似薬剤の不正競争事件J(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却、予備的請求棄却
 製薬会社エーザイは、自社の胃腸薬のジェナリック薬を販売する12社に対して、カプセルとPTPシートが類似しているため商品の誤認混同を生じさせるとして、不正競争防止法に基づき提訴した裁判での東京地裁の判決を不服として、知財高裁に控訴していた。
 しかし、知財高裁は、カプセルやPTPシートの色などの外観には商品識別の機能はないとして請求を棄却した。
判例全文
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9月27日 類似薬剤の不正競争事件G(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却、予備的請求棄却
 
判例全文
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9月27日 類似薬剤の不正競争事件B(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却、予備的請求棄却
 
判例全文
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9月28日 類似薬剤の不正競争事件A(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却、予備的請求棄却
 
判例全文
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9月28日 類似薬剤の不正競争事件F(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却、予備的請求棄却
 
判例全文
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9月28日 類似薬剤の不正競争事件C(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却、予備的請求棄却
 
判例全文
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9月28日 類似薬剤の不正競争事件E(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却、予備的請求棄却
 
判例全文
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9月29日 観光パンフレットのイラスト事件
   東京地裁/提訴
 新潟県観光協会は「花」という文字をモチーフにしたイラストを、観光キャンペーンの宣伝用パンフレットなどに使用した。
 このイラスト全体が2002年発表の自作に似ているとして、グラフィック・デザイナーがイラストの不使用を求めて東京地裁に仮処分申請をしたところ、パンフレットの配布は中止されたが、謝罪がないため、同協会と広告代理店に損害賠償請求の訴を提起した。

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9月30日 商標“クレヨンしんちゃん”侵害事件(中国)
   中国北京市第一中級人民法院/判決・請求棄却(控訴、控訴棄却)
 人気漫画「クレヨンしんちゃん」の中国名「蝋筆小新」が、既に中国企業が商標登録していたために、出版元の双葉社が中国でキャラクターグッズの販売が出来なくなった。
 双葉社は商標登録取消の訴訟を提起していたが、北京市第一中級人民法院は双葉社の訴えを退ける判決を下した。
 双葉社は北京市高級人民法院に控訴した。

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10月3日 「住基ネット侵入実験」発表中止事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 
判例全文
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10月6日 「シェーン」格安DVD事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 米映画会社パラマウントと東北新社は、昭和28年に公開された映画「シェーン」の格安DVDを製造販売する東京都内の業者2社に対して、映画「シェーン」は改正著作権法54条1項が適用され、保護期間内であるとして、製造販売禁止と損害賠償の支払いを求めて提訴していた。
 著作権の保護期間は年をもって定められているから末日の終了をもって満了する。平成15年12月31日は、平成16年1月1日とは異なる日であり、保護期間は平成15年12月31日で満了するとし、改正著作権法は適用されないとして、請求は棄却された。
判例全文
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10月10日 「ローマの休日」他’53年作品の保護期間事件(2)
   知財高裁/申請取下
 米映画会社パラマウントは、「ローマの休日」を含む1953年公開映画の保護期間をめぐる、格安DVDの製造販売の禁止を求める仮処分の申立てを、東京地裁に棄却されたことを不服として、知財高裁に即時抗告していたが、この日、仮処分の申立てを取下げた。

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10月10日 楽曲の使用料事件(ケーブルテレビ3社)(3)
   最高裁(三小)/決定・上告不受理
 成田ケーブルテレビ等CATV3社は、他のテレビ局等から受信、同時再送信する放送の際に、無許諾で音楽著作物を利用したとして、JASRACが使用差止めと損害金支払いを求めた控訴審は、JASRACの主張を認める判決となったため、CATV3社は上告していた。
 最高裁は、上告不受理を決定した。

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10月17日 ホンダ等3ブランド名の「馳名商標」認定事件
   中国国家工商行政管理総局/馳名商標認定
 中国国家工商行政管理総局は、「HONDA」「豊田」「Panasonic」を「馳名商標」に認定した。
 馳名商標制度は、中国で広く知られた著名なブランド名を保護する制度で、TRIPS協定、WTOへの適合を図るため2001年に商標法の大改定によって、2003年から外国企業にも適用されるようになった。

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10月18日 虫歯予防ガムの比較広告事件(2)
   知財高裁/判決・変更
 江崎グリコが「ポスカム」を発売するにあたり、「再石灰化」効果を「一般的なキシリトールガムと比べ約5倍の効果」と謳ったことに対して、ロッテがこの比較広告で損害を受けたとして、不正競争防止法に基づき、広告の差止と10億円の損害賠償を求めた控訴審の判決があった。
 一審判決は、江崎グリコの広告を適法としたが、知財高裁は、「根拠となった実験は合理性を欠いており、虚偽の事実を流布する違法な広告」であるとして、広告差止めを命じ、賠償請求は退けた。
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10月18日 インクカートリッジの特許権侵害事件(エプソン)
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 エプソンは、大阪市のリサイクル品販売業者を、特許を侵害したとして販売差止め等を求め提訴したが、東京地裁はエプソンの「特許は新規性がなく無効」として、棄却した。
 同様の裁判は1月、キャノンとリサイクル業者の間で争われ、キャノンが勝訴した。
 キャノン訴訟では両者がキャノンの特許を認めた上で、業者の行為が特許侵害に当るかどうかで争われたが、エプソンの場合は、特許そのものの有効性が争われた。
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10月19日 講習会資料の職務著作事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 高砂熱学工業株式会社の従業員だった控訴人が、会社在職中に平成12年度講習会の講師を努めるために執筆した講習資料は職務著作物ではなく自身の著作物であり、著作権は自分にあるにも拘わらず、次年度以降の講習会に複製して他の従業員等を使って講習会を行い、著作権及び著作者人格権を侵害されたとして、資料の廃棄、損害賠償、不当利得返還請求などを起したが、一審判決で請求を棄却されたので、控訴していた。
 知財高裁は、資料の著作者は控訴人であるが、その後の経緯を見るに、12年度以降の講習会資料の作成に当って変更、追加、切除して複製することを黙示的に許諾していたとして、控訴を棄却した。
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10月19日 ジョン・レノンの著作権使用料請求事件
   ニューヨーク州地裁/提訴
 ジョン・レノンの未亡人オノ・ヨーコさんは、音楽産業大手のEMIが、ジョン・レノンの音楽関連商品の販売で「音楽が実際にどのように使われたのかを隠し」「故意に著作権使用料を少なく支払った」として1000万ドルの支払いを求めて提訴した。

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10月24日 「函館新聞」商標登録事件
   東京地裁/和解
 「函館新聞」などの題字を、1994年、北海道新聞社が商標登録を出願した。「公序良俗に反する」として特許庁は登録を認めなかったが、北海道新聞社は、創刊を計画していた函館新聞社にこの題字の使用中止を求めた。
 函館新聞社は新規参入を妨害されたとして約12億7600万円の損害賠償を求めて訴訟を起こしていたが、2億2000万円を支払うこと等の条件で和解した。

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10月24日 機械の設計図の著作物性事件
   東京地裁/判決・請求却下(控訴)
 
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10月26日 商標“一枚甲”侵害事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 
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11月8日 類似薬剤の不正競争事件H(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 
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11月8日 類似薬剤の不正競争事件D(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 
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11月8日 類似薬剤の不正競争事件I(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 
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11月10日 福井市職員の自殺を巡る名誉毀損事件
   福井地裁/判決・請求棄却
 福井市農林水産部長の自殺をめぐり、自殺の原因を調査した市議会の百条委員会が、同市市議の1人が部長に圧力をかけたとする調査結果を公表したこと、および百条委員会での虚偽陳述で告発したことは名誉毀損にあたるとして、同市議が提訴した。
 福井地裁は、「不当な圧力があったと百条委員会が信じる相当な理由があった」、「故意に虚偽事実を述べた疑いがある」として、同市議の訴えを棄却した。

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11月15日 “中小企業診断士”教材の侵害事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 経営戦略研究所から中小企業診断士試験用教材の執筆を依頼された筆者が原稿を渡したところ、同研究所代表が筆者に無断で約2分の1に省略し、順序を入れ替えた別原稿を作成して教材発行会社に引き渡した。そこで、筆者は、同研究所と代表および教材出版社に対して、複製権侵害と著作者人格権侵害による損害賠償を求める訴えを起こしていた。
 東京地裁市川正巳裁判長は、同代表は筆者の承諾を得なければならないことを認識しつつ無許諾で改変したとして、著作権侵害を認めた。一方、教材出版社に対しては、著作権侵害がないように確認する義務を怠った過失があったとした。
 複製権侵害に6万円、著作者人格権侵害に11万円、合計17万円の支払を命じた。
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11月17日 彦根市長への名誉毀損事件(週刊新潮)
   大津地裁/提訴
 飲酒運転をした職員の処分に関し、彦根市長は、事故で摘発されても、憲法38条「自己に不利益な供述を強要されない」を根拠として「上司への報告義務はない」とした。
 この発言を取り上げた「週刊新潮」は、「歯に衣着せない『バカ発言』」等と書いたが、これが名誉毀損にあたるとして、2200万円の損害賠償と謝罪広告の掲載を求める訴えを大津地裁に起こした。

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11月17日 「オリコン」中傷記事事件
   東京地裁/提訴
 ヒットチャートなど音楽情報提供の最大手のオリコンは、2006年3月発行の月刊誌「サイゾー」に「明かに事実誤認に基づく誹謗中傷記事を掲載」したとして、フリーライター烏賀陽氏のみに対して5000万円の損害賠償請求の訴訟を起こした。
 オリコンは、「明かな事実誤認の誹謗中傷」は、烏賀陽氏のコメント部分のみに見られ、烏賀陽氏が「自分が責任を持って行った発言と明言」しているので、烏賀陽氏のみを提訴したとしている。

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11月27日 着メロ無断配信事件(刑)
   長崎県警/逮捕
 日本音楽著作権協会(JASRAC)が管理する楽曲を着メロに加工し、自分のホームページから自由にダウンロード出来るようにしていた男性が、著作権法違反(公衆送信権侵害)の疑いで告訴され、逮捕された。
 JASRACは、2002年以来、無断掲載を繰り返し警告していたが、無視されたり、別のホームページで送信を続けるなど、侵害行為が繰り返され、警告メールを送っても送信を止めなかったので、長崎県警に告訴した。
 着メロの無許可配信での逮捕は初めてだという。

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11月29日 銘菓「ひよ子」立体商標登録取消事件(2)
   知財高裁/判決・請求認容(上告)
 特許庁が福岡市の老舗製菓会社「ひよ子」の立体商標登録を認めたのは不当であるとして、同じ福岡市の製菓会社「二鶴堂」が登録の取消しを求めていたが、特許庁は請求不成立の審決を下したため、「二鶴堂」がこの審決取消しを求めて訴訟を起こしていた。
 知財高裁は、同種の形状の鳥の菓子は全国に多数存在し、その形状は和菓子としてはありふれたものであること、販売状況は九州北部と関東などであって必ずしも全国に展開していない等として、立体商標を認めた特許庁の審決を取り消す判決を言い渡した。
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11月29日 模写絵画の著作権侵害事件(商品パッケージ)(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 江戸時代に描かれた風俗図を模写して書籍として出版した研究家の未亡人が、亡夫の模写絵を、被告豆腐製造会社が自社製品のパッケージに無断使用して著作権を侵害したとして求めた損害賠償請求に対する東京地裁の請求棄却判決を不服として、控訴していた。
 知財高裁の塚原朋一裁判長は、模写絵に「新たな創作的表現が付与されたものと認められない場合」には原画の複製物であって著作物性はない、モチーフが違うからといって当然に著作物性を認めることは出来ないとして、原判決を維持し、控訴を棄却した。
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11月29日 類似商号事件(スポーツ・マーケティング)
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴)
 
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11月30日 住基ネット・プライバシー侵害事件(関東、近畿66人)(2)
   大阪高裁/判決・控訴棄却、追加請求一部認容、一部棄却
        (一部確定、一部上告)
 
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12月6日 国語テストへの作品無断使用事件(教材出版6社)(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却
 小学生用国語教科書に掲載された作品の著作権者である詩人、作家、児童文学者、学者、翻訳家ら計23人が、「作品を国語のテストに無断で使われ、著作権を侵害された」として、教材出版社6社に損害賠償を求めた訴訟で、請求の一部のみを認めた東京地裁判決を不服として、控訴していた。
 知財高裁は、請求の多くについて時効の成立を認め、損害賠償の増額を求める追加請求について時機に後れた攻撃防御方法であるなどとした原審を維持し、控訴棄却を言い渡した。
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12月7日 不登校児矯正施設の軟禁・実名報道事件
   名古屋地裁/判決・請求棄却(控訴)
 
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12月11日 住基ネット・プライバシー侵害事件(金沢)(2)
   名古屋高裁金沢支部/判決・取消
 
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12月13日 ファイル交換ソフト事件(刑)(Winny)
   京都地裁/判決・有罪(控訴)
 ファイル交換ソフト「ウィニー」の開発者で著作権法違反幇助の罪に問われていた元大学院助手に対して判決が言い渡された。
 京都地裁氷室真裁判長は、ウィニーが「著作権侵害に利用されていることを明確に認識、認容しており、非難は免れない」が、「インターネット上で著作権侵害をことさら生じさせることを積極的に意図したわけではない」として、懲役1年の求刑に対して罰金150万円を言い渡した。
 元大学院助手は即日大阪高裁に控訴。また、同月26日、京都地方検察庁も判決を不服として控訴した。
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12月13日 旅行パンフレットの写真流用事件
   警視庁/家宅捜索
 大手旅行会社JTBの子会社JTB東海は、都内の写真家が撮影した十和田湖などの2枚の写真を、JTBと写真家との撮影契約が切れているにもかかわらず、写真家に無断で旅行コースを紹介するパンフレットに使用、各地の支店、営業所に配布して著作権を侵害した疑いで、関係17ヶ所の家宅捜索を受けた。

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12月18日 プロ野球選手の肖像権侵害事件(野球カード)(2)
   知財高裁/第2回口頭弁論
 プロ野球選手34人が、野球カードやゲームソフトについて、氏名や肖像の使用許諾権限が選手側にあることの確認を求めた訴訟で、東京地裁が下した請求棄却判決に対して知財高裁に控訴している。
 この日、第2回口頭弁論が開かれ、労組日本プロ野球選手会前会長の古田敦也ヤクルト監督が3月27日、 公判で証人として出廷することが決定した。

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12月19日 商標“ほっかほっか亭”侵害事件
   東京地裁/提訴
 持ち帰り弁当「ほっかほっか亭」をフランチャイズ展開する「プレナス(福岡)」は、フランチャイズ店から契約料を徴収する「ほっかほっか亭総本部(東京)」に対して、商標権が侵害されたとして約9500万円の損害賠償請求の訴訟を起こした。
 プレナスは、「ほっかほっか亭」をダイエーから取得する際に弁当販売の商標権も取得したとしており、「ほっかほっか亭」創業者が設立した「ほっかほっか亭総本部」に対して商標使用料を求めていた。
 関連企業同士で商標使用料が争われることとなった。

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12月21日 「スナップ写真」無断使用事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却(控訴)
 角川書店発行のノンフィクション作品「東京アウトサイダーズ」に、自分が撮影した家族のスナップ写真が無断で掲載されたとして、米国在住の女性が、同書籍の出版・販売の差止め等を求めて提訴していた。
 東京地裁は、写真部分の廃棄と販売の差止め、賠償金45万円の支払いを命じた。
 設楽隆一裁判長は、「被写体の構図やシャッターチャンスの捉え方において撮影者の創作性」が認められ、著作物性を有するとして、「素人が日常生活の中で無造作に撮影したと思われるスナップ写真」には著作物性が希薄であるとする角川書店の主張を退けた。
 また、書籍全体の差止め・廃棄については、「全体として一冊として出版発行されている限りは」「印刷・出版発行の差止めを認めざるを得ない」が、今回の場合は、本文と写真の大半は本件写真の著作権侵害と無関係がないので、侵害写真の箇所に限って廃棄を認めるとした。
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12月22日 テレビ番組送信サービス事件(まねきTV)(2)
   知財高裁/決定・抗告棄却、追加申立却下(許可抗告申立・申立却下)
 NHKと在京民放5局は、「まねきTV」のシステム全体が一つの自動公衆送信装置であり、送信可能化権を侵害しているとして、サービス中止の仮処分を申立てたが、東京地裁は却下の決定を下した。これに対して原告側が抗告していた。
 知財高裁の三村量一裁判長は、ベースステーションは「一対一」の送信を行う機能のみしか持たず自動公衆送信装置には当たらないとし、ユーザーの端末への番組送信もユーザーの指示に従って行われているとして、原決定を支持し、抗告を棄却し、追加申立てを却下した。
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12月22日 テレビ番組送信サービス事件(まねきTV)B(2)
   知財高裁/決定・抗告棄却、追加申立却下(許可抗告申立・申立却下)
 
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12月22日 テレビ番組送信サービス事件(まねきTV)C(2)
   知財高裁/決定・抗告棄却、追加申立却下(許可抗告申立・申立却下)
 
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12月22日 テレビ番組送信サービス事件(まねきTV)D(2)
   知財高裁/決定・抗告棄却、追加申立却下(許可抗告申立・申立却下)
 
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12月22日 テレビ番組送信サービス事件(まねきTV)E(2)
   知財高裁/決定・抗告棄却、追加申立却下(許可抗告申立・申立却下)
 
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12月22日 テレビ番組送信サービス事件(まねきTV)F(2)
   知財高裁/決定・抗告棄却、追加申立却下(許可抗告申立・申立却下)
 
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12月22日 商標“ラブandベリー”侵害事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 
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12月22日 「将棋ソフト」瓜二つ事件
   東京地裁/和解
 プロ棋士の武者野勝巳氏は、自社で開発した初心者用将棋ソフトの類似品を販売され、著作権を侵害されたとして、日本将棋連盟の米長邦雄会長とソフト販売会社に対して、約4100万円の損害賠償を求める訴訟を起こしていた。
 この日、東京地裁において、米長会長側が著作権侵害を認め、解決金800万円を払い、将棋専門誌2誌に謝罪広告を掲載することで和解した。

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12月26日 人工衛星設計プログラムの職務著作事件(2)
   知財高裁/判決・控訴棄却(上告)
 宇宙開発事業団(現宇宙航空研究開発機構)の職員が、ロケットや人工衛星の制御データ解析プログラムについて著作権、著作者人格権が自分にあることの確認を求めた訴訟で、東京地裁が下した請求棄却の判決を不服として控訴していた。
 知財高裁は、「プログラムに著作物性があるといえるためには、指令の表現自体、その指令の表現の組合せ、その表現順序からなるプログラム全体に選択の幅が十分にあり」「それがありふれた表現ではなく、作成者の個性が表れているものであること」を要し、「プログラムの表現に選択の余地がないか、選択の幅が著しく狭い場合には、作成者の個性表現の余地もなくなり、著作物性を有しないことになる」として、プログラムの創作者が誰であるかを検討した。その上で、『「職務上作成する著作物」の要件については、業務に従事する者に直接命令されたもののほかに、業務に従事する者の職務上、プログラムを作ることが予定または予期される行為も含まれる』として、著作物と認定したプログラムは法人著作物であるとし、控訴を棄却した。
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12月26日 外務省機密漏洩事件をめぐる元毎日記者の名誉棄損事件
   東京地裁/結審
 1972年、沖縄返還協定を巡って、外務省の機密文書を漏洩した疑いで、毎日新聞社政治部記者と外務省女性事務官が逮捕された。報道の自由について、取材方法が裁判上の争点となったが、記者、女性事務官はそれぞれに有罪が確定した。
 当時、佐藤栄作首相は「密約なし」と否定し続けたたが、事件後30年、「米国立公文書館保管文書の秘密指定解除措置」で公開された「ニクソン政権関連公文書」の中から密約の存在を示す文書が見つかった。そこで、記者は名誉回復を求めて、2005年、国に謝罪と損害賠償を求める訴訟を起こした。
 その後、沖縄返還交渉の日本側事務方最高責任者だった元外務省アメリカ局長吉野文六氏が密約の存在を認める発言をするなど波紋が広がっている。
 判決は、2007年3月27日。

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12月27日 パチンコ「大ヤマト」事件
   東京地裁/判決・請求棄却
 東北新社は、アニメ「宇宙戦艦ヤマト」の映画の著作権を、製作総監督であったプロデューサーから譲渡された著作権所有者であるとし、「似た戦艦や人物の映像が使われて、著作権を侵害された」として、パチンコメーカーなど4社に、アニメ「大ヤマト」関連製品の製造・販売の差止め、損害賠償を求めて提訴していた。
 しかし、東京地裁清水節裁判長は、経緯や契約から判断して、映画の著作権者は、プロデューサー個人ではなくプロデューサーの属する法人であると判断し、プロデューサー個人からの譲渡契約によった東北新社は著作権者ではなく、たとえ著作権者であったとしても、譲渡契約には翻訳権・翻案権譲渡が特掲されていないので翻案権の侵害にもあたらないとした。 
 また、「宇宙戦艦ヤマト」と「大ヤマト」の映像を比較し、本件映画の製作以前から戦艦が宇宙を飛ぶモチーフが作品化されていたとして、「特に目新しい表現ということはできない」と指摘して、東北新社の請求を棄却した。
判例全文
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12月27日 パチスロ「大ヤマト」事件
   東京地裁/判決・請求棄却(控訴・和解)
 東北新社は、パチスロゲーム機の製造メーカーなど3社に対し、アニメ「宇宙戦艦ヤマト」の映像を複製又は翻案した映像を用いてパチスロゲーム機を製造販売したとして、著作権法違反と不正競争防止法違反による損害賠償請求の訴訟を起こしていた。
 東京地裁清水節裁判長は、パチンコゲーム機の場合と同様、「宇宙戦艦ヤマト」と「大ヤマト」の映像を比較し、ありふれた表現であるとした。また、「商品表示の著名性、周知性については、営業譲渡を伴う場合などの特段の事情がある場合を除き、原則としてこれを譲渡できない」とし、そのような特段の事情も認められないとして、不正競争防止法に基づく請求も棄却した。
判例全文
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12月27日 「週刊ポスト」のイラク運動家への名誉毀損事件
   東京地裁/判決・請求一部認容、一部棄却
 フランス在住のイラク人でイラク民主化運動の活動家である原告は、小学館発行の「週刊ポスト」が「サマワに派遣される自衛隊の安全をサマワの部族が確保することの対価として、日本政府から100億円を原告やサマワ部族長に拠出」することを、小泉首相との面談の際に密約させたとする記事を、同誌や英文ホームページに掲載したことに対し、名誉毀損による損害賠償や記事の削除、同週刊誌及びウェブサイトへの和文・英文での謝罪広告を求める訴えを起こしていた。
 東京地裁定塚誠裁判長は、記事の主要部分は真実と認められず、「原告の日本国内及び国際社会での社会的評価が相当程度低下せしめられたことは明らかである」と述べ、原告の主張をほぼ認め、440万円の損害賠償金の支払いと、ウェブサイトに掲載された記事の削除を命じた。

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