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【事件名】パチンコ「大ヤマト」事件
【年月日】平成18年12月27日
 東京地裁 平成16年(ワ)第13725号 損害賠償等請求事件
 (口頭弁論終結日 平成18年9月21日)

判決
原告 株式会社東北新社
訴訟代理人弁護士 森伊津子
同 高後元彦
同 小川憲久
同 槐惟成
被告 株式会社三共(以下「被告三共」という。)
被告 株式会社ビスティ(以下「被告ビスティ」という。)
被告 インターナショナル・カード・システム株式会社(以下「被告カード・システム」という。)
上記被告ら3名訴訟代理人弁護士 水谷直樹
同 岩原将文
被告 株式会社アニメーションソフト(以下「被告アニメーションソフト」という。)
訴訟代理人弁護士 鬼追明夫
同 山本隆司
同 井奈波朋子
同 永田玲子
被告アニメーションソフト補助参加人 有限会社零時社(以下「補助参加人零時社」という。)
被告 アニメーションソフト補助参加人P 1(以下「補助参加人P1」という。)
上記補助参加人ら2名訴訟代理人弁護士 半田正夫
同 松田政行
同 早稲田祐美子
同 齋藤浩貴
同 山元裕子
同 早川篤志
同 吉羽真一郎
同 池村聡
同 上村哲史
同 大谷惣一
同 佐々木奏
同 林原由佳


主文
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由
第1 請求
1 被告三共は、別紙侵害品目録記載1のパチンコゲーム機の製造、販売、頒布、頒布のための展示、貸与をしてはならない。
2 被告三共は、別紙侵害品目録記載1のパチンコゲーム機を廃棄せよ。
3 被告ビスティは、別紙侵害品目録記載2のパチスロゲーム機の製造、販売、頒布、頒布のための展示、貸与をしてはならない。
4 被告ビスティは、別紙侵害品目録記載2のパチスロゲーム機を廃棄せよ。
5 被告カード・システムは、別紙侵害品目録記載3のプレイステーション2用ビデオゲームソフトの製造、販売、頒布、頒布のための展示、貸与をしてはならない。
6 被告カード・システムは、別紙侵害品目録記載3のプレイステーション2用ビデオゲームソフトを廃棄せよ。
7 被告三共は、原告に対し、被告アニメーションソフトと連帯して金4億4551万円及びこれに対する平成16年7月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
8 被告ビスティは、原告に対し、被告アニメーションソフトと連帯して金7800万4500円及びこれに対する平成16年7月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
9 被告カード・システムは、原告に対し、被告アニメーションソフトと連帯して金933万4000円及びこれに対する平成16年7月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
10 被告アニメーションソフトは、 原告に対し、被告三共と連帯して金4億4551万円及びこれに対する平成16年7月13日から支払済みまで年5分の割合による金員、被告ビスティと連帯して金7800万4500円及びこれに対する平成16年7月13日から支払済みまで年5分の割合による金員並びに被告カード・システムと連帯して金933万4000円及びこれに対する平成16年7月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
第2 事案の概要
 本件は、別紙映画著作物目録記載の各映画(以下「宇宙戦艦ヤマト作品」と総称し、そのうち、同目録1「宇宙戦艦ヤマトTVシリーズ」、同目録3「さらば宇宙戦艦ヤマト」を個別に指すときは、それぞれ、「本件映画1」、「本件映画2」といい、本件映画1と本件映画2を併せて「本件映画」という。)の著作権を有すると主張する原告が、@被告三共、被告ビスティ及び被告カード・システム(以下、被告三共、被告ビスティ、被告カード・システムを併せて「3被告」という。)は、本件映画の中の一部の映像を複製又は翻案した映像を使用してパチンコゲーム機等を製造、販売し、本件映画の複製権又は翻案権を侵害しているとして、A被告アニメーションソフトは、3被告が製造、販売した上記パチンコゲーム機等に使用された映像の基となった映像を制作して、これを3被告に提供し、3被告の上記著作権侵害行為について共同不法行為責任を負うとして、3被告に対しては、著作権法112条に基づく差止等の請求を、3被告及び被告アニメーションソフトに対しては、複製権又は翻案権侵害による不法行為(民法709条、719条)に基づく損害賠償(被告三共及び被告アニメーションソフトに対しては、連帯して、損害額8億9102万円のうちの一部である4億4551万円及びこれに対する訴状送達の日である平成16年7月13日から年5分の割合による遅延損害金、被告ビスティ及び被告アニメーションソフトに対しては、連帯して、損害額1億5600万9000円のうちの一部である7800万4500円及びこれに対する前同日から年5分の割合による遅延損害金、被告カード・システム及び被告アニメーションソフトに対しては、連帯して、933万4000円及びこれに対する前同日から年5分の割合による遅延損害金。)の請求をしている事案である。
 これに対して、被告ら及び補助参加人らは、@原告は本件映画の著作権を有しないこと(3被告及び補助参加人ら)、A原告は本件映画の翻案権を有しないこと(被告ら)、B3被告が製造、販売した上記パチンコゲーム機等に使用した映像は、本件映画の複製にも翻案にも当たらないこと(被告ら及び補助参加人ら)、C原告は、原告と補助参加人P1との間で成立した合意により、3被告が製造、販売した上記パチンコゲーム機等に対しては権利行使できないこと(被告ら及び補助参加人ら)などを主張している。
1 争いのない事実等(証拠によって認定した事実は末尾にその証拠番号を摘示した。)
(1) 当事者
ア 原告は、平成13年4月1日、形式上の存続会社株式会社センテスタジオが実質上の存続会社株式会社東北新社を合併するとともに株式会社東北新社に商号変更した会社であるところ、合併前の株式会社東北新社は、平成11年1月1日、株式会社東北新社フィルム(昭和36年4月1日設立)が株式会社東北新社(昭和54年8月30日設立)等を吸収合併して成立した会社であった。
 原告は、映画、テレビ番組、ビデオソフト、ゲームソフト及びコンピューターグラフィックソフト等の各種ソフトウェアの企画、制作、輸出入及び販売などを業務としている。(弁論の全趣旨)
イ 被告三共は、パチンコ機等遊戯具の製造及び販売などを業務とする会社である。
ウ 被告ビスティは、パチンコ機及び遊戯具の製造及び販売などを業務とする会社である。
エ 被告カード・システムは、コンピューターソフトウェアの開発、並びにゲーム機器の製造、販売及び輸出入などを業務とする会社である。
オ 被告アニメーションソフトは、ビデオ、映画及びコマーシャルフィルムについての企画、原盤制作、原盤権の取得、投資、運用業務及び管理業務などを業務とする会社である。被告アニメーションソフトは、平成17年12月1日に、商号を「株式会社ベンチャーソフト」から現在のものに変更し、その後、平成18年6月19日に解散し、現在は清算中の会社である(以下、商号変更前の会社についても「被告アニメーションソフト」という。)。
カ 補助参加人零時社は、雑誌等に掲載するための漫画等の原稿製作販売等を目的とする会社であり、補助参加人P1は、漫画家であり、補助参加人零時社の代表取締役である。
(2) 著作権譲渡の契約
 原告、P2(以下「P2」という。)、株式会社ウエスト・ケープ・コーポレーション(以下「ウエスト・ケープ」という。)及び株式会社ボイジャーエンターテインメント(以下「ボイジャーエンターテインメント」という。)は、平成8年12月20日、本件映画を含む映画の著作権の譲渡等を内容とする契約(以下「甲3契約」といい、その契約書を「甲3契約書」という。)を締結し、同契約により、原告は、P2から、本件映画の著作権の譲渡を受けた(甲3。なお、P2が、本件映画の製作者として本件映画の著作権を取得したか、甲3契約が、翻案権の譲渡も内容としていたかについては、争いがある。)。
(3) 著作権登録
 原告は、平成9年11月19日、本件映画についての著作権の移転の登録をした。
 本件映画の著作権登録原簿には、本件映画の著作権が、平成9年7月4日に、P2からP3(以下「P3」という。)へ、同年11月19日に、P3から原告に譲渡された旨の記載がある。また、上記登録原簿の「登録の原因及びその発生年月日並びに登録すべき権利に関する事項」欄には、上記各譲渡のいずれにも、著作権法27条及び28条に規定する権利の譲渡があった旨の記載がある。(甲1の1ないし9、2)
(4) 原告と補助参加人P1間の合意
 原告と補助参加人P1は、平成11年1月25日付けで、「宇宙戦艦ヤマト等に関する合意書」と題する合意書(丙4。以下「丙4合意書」といい、丙4合意書に係る合意を「丙4合意」という。)を作成し、これに記名、押印した。
 丙4合意書4条の記載は次のとおりである。
ア 1項
 「甲は、乙の対象作品に関する上記の権利の行使が円滑に行われるように、全面的に協力する。」
イ 2項
 「乙は、甲がヤマト作品に関連する新作の企画を希望する場合、これに全面的に協力する。ただし、甲は、乙に対し事前に企画内容の詳細を通知し、説明する。」
(5) 本件 映画のために補助参加人P1が作成した図柄
補助参加人P1は、本件映画の制作のために、本件映画に登場する、メカニックである宇宙戦艦ヤマトの図柄(丁5の150頁、151頁、153頁)、同宇宙戦艦ヤマトの第一艦橋の図柄(丁4の76頁、丁5の152頁)、キャラクターである沖田十三の図柄(丁4の41頁)、キャラクターである佐渡酒造の図柄(丁4の46頁)、キャラクターであるアナライザーの図柄(丁4の47頁)を作成した(以下、これらの図柄を「本件原図柄」という。)。
(6) 被告らの行為
ア 被告三共
 被告三共は、平成14年12月ころから、別紙侵害品目録記載1のパチンコゲーム機(以下「被告パチンコゲーム機」という。)を製造し、全国のパチンコホールに販売している。
 被告パチンコゲーム機は、前面にパチンコ装置、液晶画面等を備え、背面には、映像面、音声面を含めパチンコゲームの展開を生起させ、制御するためのソフトウエアを格納したROM を含む数個のマイクロコンピューターが装着され、全体として一体を成している。
 被告パチンコゲーム機の液晶画面上には、パチンコゲームの進行に伴って、上記ROM に収録されたプログラムに基づいて抽出された影像についてのデータが液晶画面上の指定された位置に順次表示されることによって、全体が動きのある連続的映像となって表示される。この映像は、パチンコゲーム機が操作されない状態における待機映像、通常のプレイの状態における映像、大当たりとなった状態における映像から構成される。
 被告パチンコゲーム機には、別紙侵害品目録記載1のとおり、CR フィーバー大ヤマトMX、同JX 及び同FX の種類があるが、これらの機種の液晶画面上に上映される映像は、共通している(被告パチンコゲーム機の液晶画面上に上映される映像を、 以下「被告パチンコ映像」という。)。
イ 被告ビスティ
 被告ビスティは、平成15年10月ころから、別紙侵害品目録記載2のパチスロゲーム機(以下「被告パチスロゲーム機」という。)を製造し、全国のパチンコホールに販売している。
 被告パチスロゲーム機は、前面にパチスロ装置、液晶画面等を備え、内部には、映像面、音声面を含めパチスロゲームの展開を生起させ、制御するためのソフトウエアを格納したROM を含む数個のマイクロコンピューターが装着され、全体として一体を成している。
 被告パチスロゲーム機の液晶画面上には、パチスロゲームの進行に伴って一定の動画映像が上映されるが、同映像は、パチスロゲーム機が操作されない状態における待機映像、通常のプレイの状態における映像、及び大当たりとなった状態における映像から構成される(被告パチスロゲーム機の液晶画面上に上映される映像を、以下「被告パチスロ映像」という。)。
ウ 被告カード・システム
 被告カード・システムは、平成15年3月ころから、別紙侵害品目録記載3のビデオゲームソフト(以下「被告ゲームソフト」といい、被告パチンコゲーム機、被告パチスロゲーム機及び被告ゲームソフトを併せて「被告製品」という。)を製造し、一般消費者向けに販売している。
 被告ゲームソフトは、専用のゲーム機であるプレイステーション2にセットされると、被告パチンコゲーム機の攻略シミュレーションゲームが利用でき、同ゲームは、「攻略モード通常研究」、「攻略モードモニター研究」、その他のゲーム構成となっている。遊戯者が、「攻略モード通常研究」を選択すると、被告パチンコゲーム機に模した画面が「プレイステーション2」に接続されたテレビモニター上に表示され、コントローラーを使用して実際の被告パチンコゲーム機でのパチンコゲームと同様のシミュレーションゲームを行うことができる。「攻略モード通常研究」を選択してその後の操作を行わないと、テレビモニター上のパチンコゲーム機の液晶画面相当部分に「待機映像」が表示されるが、この待機映像は、被告パチンコゲーム機における待機映像と同一の動画である。上記ビデオゲームには、「攻略モード」の本来の構成のほかに「おまけ」モードが組み込まれており、この「おまけ」を選択すると、デモ映像として上記待機映像がテレビモニター画面全体に動画として再生される。「攻略モード通常研究」を選択して擬似的にパチンコゲーム機を操作することによって大当りとなった場合の液晶画面相当部分に表示される映像も、実際の被告パチンコゲーム機の場合と同一の動画である。「攻略モードモニター研究」を選択した場合には、上記の待機映像、大当り映像が動画として再生される(被告ゲームソフトをセットしたプレイステーション2に接続されたテレビモニター上に上映される映像を、以下「被告プレステゲーム映像」といい、被告パチンコ映像、被告パチスロ映像及び被告プレステゲーム映像を併せて「被告映像」という。)。
エ 被告アニメーションソフト
 被告アニメーションソフトは、「大銀河シリーズ大ヤマト零号」という題名の映像作品(以下「本件大ヤマト作品」という。)を制作し、3被告に対し、本件大ヤマト作品に登場するキャラクター等の使用許諾をし、同キャラクター等に関するデータを提供した。3被告は、同契約に基づき、被告映像を制作した(乙52、丙3の1及び3の2)。
2 争点
(1) P2は、本件映画の映画製作者として、著作権法29条1項に基づき、本件映画の著作権を取得したか。
(2) 原告は、甲3契約により、本件映画の翻案権を取得したか。
(3) 被告映像は、本件映画を複製又は翻案したものといえるか。
(4) 被告アニメーションソフトに不法行為は成立するか。
(5) 原告は、被告製品について、本件映画の著作権の権利行使をすることができるか。
(6) 損害額
3 争点に対する当事者の主張
(1) P2は、本件映画の映画製作者として、著作権法29条1項に基づき、本件映画の著作権を取得したか(争点(1))について
(原告)
ア 本件映画は、既存の確立した映画製作会社が製作したものではない。当時、比較的無名であったP2が、その構想を練り、企画書を作成し、スタッフの人選をし、内容面にも関与し、また、資金的工面もするとの我が国では比較的珍しい「アメリカ型プロデューサー」の方式で製作したものである。
 すなわち、本件映画の製作の経緯は、次のとおりであった。
 P2は、本件映画1の企画書をよみうりテレビに持ち込み、同テレビ局が昭和49年10月から放映するよう交渉をした。本件映画1は、実際にテレビ放映されたが、低視聴率であったため、P2は、赤字を背負い込むことになった。しかし、P2は、更に、自らの資金を投入して本件映画2を製作した上、上映先となる映画館回りをする等の努力をして、配給会社のない自主上映を実現した。P2は、本件映画の製作に当たっても、補助参加人P1その他のスタッフの人選、体制作りを自ら行った。
 上記事実は、P2と補助参加人P1との間で、本件映画の著作者が誰であるかが争われた東京地裁平成11年(ワ)第20820号事件(以下「P1P2訴訟」という。)の判決(以下「P1P2訴訟判決」という。)の判決内容からも裏付けられる。すなわち、P1P2訴訟判決は、本件映画1の著作者の認定において、「被告(P2)は、本件企画書を持ち込んで、よみうりテレビと交渉した結果、同局において、昭和49年10月6日から、週1回全39回(39話)を放映することが決まった。」、「被告は、ジェネラル・プロデューサーに就任して、製作に関して決定権限を一元化する体制を整え、被告の企画方針を実現するためのスタッフを選定することにした。」、「被告は、自身が製作のすべてに関与し、全体的な観点から具体的な指示、決定を行うべく、すべての決定権限を集中させる体制を採った。そして、被告は、練馬区桜台にスタジオを借り、常駐して製作を続けることにした。」と判示している。
イ この点、甲3契約書別紙(一)の本件映画の「製作者」欄には、株式会社オフィス・アカデミー(以下「オフィス・アカデミー」という。)及びウェスト・ケープが表示されているが、上記各会社は、いずれもP2のダミー会社であり、その実態はP2個人であるから、対外的にはこれらの会社が本件映画の映画製作者として表示されていても、実態はP2個人が本件映画の映画製作者である。
ウ したがって、P2は、本件映画の構想立案、企画書作成に始まり、本件映画の製作に主導的役割を果たし、かつ、自らの経済的危険と負担において本件映画を製作した者であるから、本件映画の映画製作者に該当することは明らかである。
 なお、観念的には、著作者としてのP2が、映画製作者としての同人との間の参加約束に基づいて本件映画の製作に参加し、その結果、本件映画の著作権は、著作権法29条1項に基づき、映画製作者としてのP2に帰属した。
(3被告)
 本件映画の製作者は、オフィス・アカデミー又はウエスト・ケープであり、その著作権は、本件映画の共同著作者である補助参加人P1とP2が製作に参加することを約していたので、その完成と同時に製作者であるオフィス・アカデミー又はウエスト・ケープに帰属したものであり、P2が映画製作者として本件映画の著作権を取得したとはいえない。
(補助参加人ら)
 甲3契約書の別紙(一)の本件映画の「製作者」欄には、「オフィス・アカデミー」又は「ウェストケープ」と記載されているところ、原告は甲3契約の当事者であるとともに、甲3契約の締結に至るまで、P2との間で3か月にもわたる契約交渉を行っていることからすれば、甲3契約書における上記記載が不正確なものとは考えられず、したがって、本件映画の製作者は、オフィス・アカデミー又はウエスト・ケープであり、P2ではない。
 原告は、オフィス・アカデミー及びウェスト・ケープは、P2のダミー会社であると主張する。しかし、甲3契約書の1条6号では、「既存契約」とは、「乙(P2)又は丙丁(ウェストケープ、株式会社ボイジャーエンターテインメント)などが1996年9月10日以前に対象作品につき締結した契約であって、本書に添付され本書の一部を成す別紙(二)に列記され、その内容が同表記載のものである契約をいう。」と定義され、4条において、「乙(P2)は甲(原告)に対し既存契約の契約上の地位を本契約締結日を有効日として譲渡し、甲はこれを譲り受ける。既存契約の当事者が乙でない場合には、乙は、これらの者に上記譲渡をさせる。」と記載される以上、オフィス・アカデミー及びウエスト・ケープは、甲3契約書別紙(二)記載の会社と契約を締結できるような実体を有する会社であると判断される。したがって、原告の上記主張は失当である。
(2) 原告は、甲3契約により、本件映画の翻案権を取得したか(争点(2))について
(原告)
 甲3契約において、本件映画の翻案権は譲渡の対象となっていた。理由は以下のとおりである。
ア 著作権法61条2項の「特掲」があったというためには、翻案権が当該譲渡の目的に含まれていることを終局的一義的文言で記載する必要はなく、翻案権も譲渡の目的に含まれていることを十分認識できる程度の記載で足りるというべきである。
 そして、甲3契約書では、2条が、「対象権利」が譲渡の目的となる旨規定し、1条の4が、「対象権利」の定義として、「対象作品に対する著作権および対象作品の全部又は一部のあらゆる利用を可能にする一切の権利」と規定しており、同規定からすると、甲3契約の対象には、翻案権も含まれていることは明らかである。
イ 甲3契約書9条2項は、P2が、対象権利の行使に関して原告が第三者から異議を申し立てられ、請求をされることがないことを保証する旨規定しているから、P2は、甲3契約により、対象作品の全部又は一部のあらゆる利用を、第三者から異議を述べられずに行うことが可能であるという権利を譲渡したことになる。そのような権利保証をすることは、翻案権の譲渡をせずしては不可能である。
ウ 本件映画の著作権に係る譲渡証書の記載
 原告は、甲3契約締結後、本件映画の著作権譲渡登録の準備を平成9年に開始した段階で、本件映画を含む甲3契約の対象著作物の一部についての著作権が、既に、P2からP3へ譲渡された旨の移転登録がされていることを知った(P2からP3へ著作権移転登録がされた著作物を、以下「本件P3経由著作物」という。)。そこで、原告がP2に強く抗議したところ、P2は、本件P3経由著作物の著作権をP3に預けてあるだけである旨説明したため、本件P3経由著作物の著作権は、甲3契約締結日にP3から原告に譲渡があったものとして移転登録することになった。
 そこで、原告担当者は、P2及びP3と会合し、同人らから、その席上、平成8年11月27日付けのP2からP3への本件P3経由著作物の著作権に係る著作権登録申請書の写しの交付を受け、さらに、P3から原告への本件P3経由著作物の著作権に係る譲渡証書(甲33。以下「本件P3譲渡証書」という。)の交付を受けた。本件P3譲渡証書には、譲渡の対象に著作権法27条及び28条に規定する権利が含まれる旨の記載があり、また、本件P3譲渡証書は、P3が一旦P2に交付したものを、P2が原告に交付したものである。このことは、P2が、甲3契約において翻案権も譲渡の対象としていたことを示したことの証左となる。
エ 甲3契約書の10条の第1文の意味は、P2に対し、キャラクターの使用行為は、本来的に本件映画の著作権侵害となり得る場合であっても許すが、キャラクターの使用以外の本件映画の利用行為で本件映画の著作権を侵害することになる行為は認めないというものである。
(3被告)
 本件映画の翻案権は、甲3契約において、譲渡の対象となっていない。理由は以下のとおりである。
ア 翻案権を譲り受けたといい得るためには、著作権法第61条2項により、その旨を特掲する必要があるが、甲3契約書には、何らその旨の特掲がされていない。
 譲渡契約書中に、譲渡対象の権利について「全ての著作権」、「一切の権利」等の記載がされていたとしても、これは上記の「特掲」に当たらない。
イ 甲3契約書10条には、「対象作品に登場するキャラクターを使用し新たな映像作品を制作する権利は乙に留保される」と規定されているところ、この「対象作品に登場するキャラクターを使用して新たな映像作品を制作する権利」とは、本件映画の翻案権を意味するから、本件映画の翻案権がP2に留保されていることは、上記条項により明記されていることになる。
ウ 原告の主張によれば、原告は、著作権管理業務に豊富な経験を有しており、しかも、甲3契約を締結するに当たっては、旧ヤマト作品と新作との権利関係が錯綜しないように特に留意していたとのことであり、また、弁護士に甲3契約書の作成を依頼したとのことである。
 したがって、翻案権の譲渡を受けることになっていたというのであれば、当然にその旨が特掲されているはずであるところ、上述したとおり、最終的に締結された甲3契約書中には、その旨の特掲が全くされていない。
エ P2からP3への、また、P3から原告への本件映画の著作権の各譲渡証書は、取引の実体を反映していない虚偽の譲渡証書であるにすぎず、無効というべきものであるから、上記各譲渡証書に翻案権が譲渡の対象として記載されていたとしても、これを根拠に、甲3契約において翻案権が譲渡の対象となっていたということはできない。
 すなわち、原告の従業員であるP4の陳述書(甲31。以下「P4陳述書」という。)によれば、本件P3経由著作物の著作権登録がP3へと移転していたことは、原告にとっては予想外のことであったため、P2に問い合わせをしたところ、同人から、P3への移転登録は「預けてあるだけ」という回答を得たとのことであり(甲第31号証4頁20ないし28行)、このことから、P2からP3への移転登録は、移転の実体を伴わない架空の登録であることは明らかである。したがって、P2がP3に対して移転登録を行う際に提出した上記譲渡証書は、取引の実体を反映しない架空の内容が記載された文書であるにすぎない。
(被告アニメーションソフト)
 本件映画の翻案権は、甲3契約において、譲渡の対象となっていない。理由は以下のとおりである。
ア 契約書に、単に、「全ての著作権」や「一切の権利」を譲渡する旨の表現があっただけでは、著作権法61条2項の特掲があったということはできないところ、甲3契約書は、譲渡の対象となる権利を「対象作品に対する著作権および対象作品の全部又は一部のあらゆる利用を可能にする一切の権利」と規定するのみであるから、甲3契約書には、著作権法27条の権利の譲渡について、著作権法61条2項に定める「特掲」は存在しない。
 したがって、甲3契約において、本件映画の翻案権は譲渡した者に留保されたものと法律上推定される。
イ 本件映画の著作権登録原簿には、著作権法27条の権利も含む旨記載されているが、著作権移転登録は、著作権譲渡自体の処分証書ではなく、文書に記載された内容が実体的権利関係を示すとは限らないという意味において、証拠力はない。
 また、本件P3譲渡証書は、P3から原告への譲渡であり、P2からP3に対する本件映画の譲渡に係る譲渡証書は存在しない。そもそも、原告の主張によれば、P2からP3への本件映画の著作権の譲渡は仮装譲渡であるのであるから、両者間の著作権譲渡証書ないし著作権譲渡契約において、翻案権の譲渡が特掲されていたとしても、それによって翻案権の譲渡があったと考えることはできない。
 なお、P2から原告への著作権の譲渡証書としては、甲第34号証の譲渡証書があり、同譲渡証書には、著作権法27条の権利も含めて譲渡する旨の記載があるが、同譲渡証書は、本件映画の著作権を対象としていない。
ウ 甲3契約書の10条は「対象作品に登場するキャラクター(人物、メカニック等の名称、デザインを含む)を使用し新たな映像作品(但し、キャラクター使用以外の行為で対象作品の著作権を侵害しないものに限る)を制作する権利は乙に留保されるものとし、・・・」と規定しているところ、本件映画のキャラクターを利用して別の映像作品を作成する行為は、本件映画の翻案行為の主たるものであるから、甲3契約において、P2に本件映画の翻案権が留保されたことは明らかである。なお、上記条項のかっこ内の「但し、キャラクター使用以外の行為で対象作品の著作権を侵害しないものに限る」とは、キャラクターの複製を不可とすること、かつ、対象作品の複製はできないことを規定したものである。
エ 丙4合意書の3条1(1)によれば、「ヤマト作品に登場するキャラクター(人物、メカニック等の名称、デザインを含む)を使用し新たな映像作品(ただし、キャラクター使用以外の行為でヤマト作品の著作権を侵害しないものに限る)を制作する権利はP2に留保されていること」が、原告と補助参加人らとの間で確認されている。本条項は、甲3契約書の10条を前提として作成されているのであり、本件映画の翻案権がP2に留保されているとの権利関係について、原告も認識を有することは明らかである。
(補助参加人ら)
 不知。
(3) 被告映像は、本件映画を複製又は翻案したものといえるか(争点(3))について
(原告)
ア 被侵害映像と侵害映像の対応関係等
(ア) 原告が、本件映画のうち、被告映像により、その複製権又は翻案権が侵害されたと主張する部分は、別紙対比表の「被侵害映像」欄の4つの写真のうち最上段の写真に表示されたタイムコードと最下段の写真に表示されたタイムコードの間の動画部分(以下「本件映画被侵害主張部分」という。)である。そして、本件映画被侵害主張部分と、これと対比すべき被告映像との対応関係は、別紙対比表のとおりである。すなわち、別紙対比表の「侵害映像1」、「侵害映像2」及び「侵害映像」欄に記載された写真のうち、各最上段の写真と各最下段の写真の区間に対応する区間の動画部分(以下「被告映像侵害主張部分」という。)が、同一頁の「被侵害映像」欄の本件映画被侵害主張部分に対応する。
(イ) なお、補助参加人らは、本件映画が本件原図柄の二次的著作物であるから、本件映画の著作権は、原著作物である本件原図柄に新たに付与された創作的部分についてのみ及ぶと主張するが、本件映画は本件原図柄の二次的著作物ではない。
 なぜなら、翻案や複製というためには、著作物に依拠してその本質的部分が再現されている必要があるところ、原作のないアニメーション映画におけるラフ画や設定画等の図柄の本質的部分といえる表現は、アニメーション映画の著作物の本質的部分を構成する一部として創作されたものであって、本質的にアニメーション映画が図柄を翻案したり複製したりするものではないからである。ラフ画等の図柄とアニメーション映画の制作は、事実としての時間的先後関係はあるにしてもアニメーション映画制作という一連の流れの中で行われ、ラフ画等の図柄の本質的部分は同時にアニメーション映画において表現される予定の図柄の本質的部分を意味するものであるから、両者は、観念的には一つの創作行為であって、原著作物、二次的著作物の関係にはないのである。そして、著作権法16条前段の規定は、あくまでも既存の著作物の著作者をクラシカルオーサー(映画の著作物とは別個の著作物の著作者)として保護しようとするものであり、映画のために制作された著作物については、例外的に脚本、映画音楽についてのみ、その著作者をクラシカルオーサーとして保護することが立法者の意思であったのである。
 仮に、原作漫画の存在しないアニメーション映画に使用されている図柄が、当該アニメーション映画の原著作物となり得ると解したとしても、本件映画が本件原図柄の二次的著作物というためには、@P1図柄が独立の著作物性を有すること、A本件著作物からP1図柄の表現上の本質的な特徴を直接感得し得ること、BP1図柄の表現と本件著作物全体の表現とを総合的に考慮するとき本件原図柄の表現が質的・量的に本件著作物全体の表現を規定するだけの重要性を有すること、という三つの要件を満たす必要がある。これを前提に、本件映画のうち、被告映像によって著作権が侵害されていると原告が主張する部分が本件原図柄の二次的著作物といえるかについて検討するに、本件原図柄の中で本件映画の被侵害映像との類似性の存在を認め得るものは、最大限譲歩しても、医師(丁第4号証の46頁)及びロボット(丁第4号証の47頁)の図柄に止まり、それ以外の多くのものについては対応関係さえ存在しない。そして、上記医師に係る本件原図柄は、バンカラ的印象を与えること、単色であって色彩についての指定がないこと、背景を伴わないこと、及び本件映画の被侵害映像中の具体的動きを示す表現も見られないことにおいて、本件映画の被侵害映像と相違するから、本件映画の被侵害映像から本件原図柄の表現上の本質的特徴を直接感得することができるほど、両者が類似しているとはいえない。また、上記ロボットに係る本件原図柄も、ロボットの頭・胴・下半身が分離する動きを示唆する表現は一切ないこと、単色であって色彩についての指定がないこと、及び背景を伴っていないことにおいて、本件映画の被侵害映像と相違するから、本件映画の被侵害映像から上記本件原図柄の表現の本質的な特徴を直接感得することができるほど、両者が類似しているとはいえない。
イ 被告映像侵害主張部分と本件映画被侵害主張部分の同一性ないし類似性
(ア) 被告パチンコ映像との対比
a 大ヤマト砲の発射場面
(a) 総論
@ 被告映像侵害主張部分における戦艦の艦首に設けられた発射口から光線が発射される場面(以下、同光線や同光線を発射するための装置を、「大ヤマト砲」ということもある。)、発射場面の映像と本件映画被侵害主張部分における宇宙戦艦ヤマトの艦首に設けられた発射口から光線が発射される場面(以下、同光線や同光線を発射するための装置を、「波動砲」ということもある。)の映像とは、@現実の戦艦大和にはない艦首の発射口を備えた艦首の映像、A発射に先立ち、艦首の発射口に光の粒子が吸い込まれる映像、B発射に先立ち、金色のシリンダー様のものが接続する映像、C発射時に、艦首の発射口が金色に輝く映像、D発射後に黄白色を帯びた輝度の高い炎状の光線が放射される映像の順を追って表現が推移する点で同一である。
A この点、3被告は、被告映像侵害主張部分の大ヤマト砲発射場面の映像と本件映画被侵害主張部分の波動砲発射場面の映像とでは、描写の視点及びこれに起因する印象の差異により基本的構成が異なる旨主張する。
 しかし、被告映像侵害主張部分の大ヤマト砲発射場面のリーチ映像には、本件映画被侵害主張部分の波動砲発射場面の映像と同様に艦体の斜め前方からの視点で描いた映像が存在する上、待機映像も、画面全体の表現態様、基本的構成及び印象が本件映画被侵害主張部分の波動砲発射場面の映像と共通であるから、描写の視点が異なるとの3被告の上記主張には根拠がない。
B また、3被告は、被告映像侵害主張部分の大ヤマト砲発射場面の映像では大ヤマト砲発射を場面を切り替える手段として表現しているが、本件映画被侵害主張部分の波動砲発射場面の映像では波動砲を武器として表現しており、両者は表現目的が異なる旨主張する。
 しかし、3被告の上記主張は、原告が特定した本件映画被侵害主張部分の範囲外の画像を含めた上で、対比しており、失当である。
 また、表現目的の内容が、同一性ないし類似性の判断において、意味を持ち得るのは、比較の対象となる両映像中にそれぞれの表現目的を示す表現が顕在化して存在していることによって両映像が異なる表現目的を有することが明らかな場合か、又はそれぞれの表現目的を示す表現は顕在化していないがストーリー性がある連続場面において当該場面が前後の場面との間の内在的連関によってそれぞれ異なった役割を果たすことが明らかに認められる場合に限られるところ、本件においては、そのような事情は存在しないから、3被告の上記主張は、この意味からも失当である。
(b) 大ヤマト砲の発射場面における発射口の粒子の状態の場面(別紙対比表1)
@ リーチ映像との対比
α 別紙対比表1の「侵害映像2」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表1リーチ映像部分」という。)と別紙対比表1の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「本件映画対比表1部分」という。)とは、画面の大部分を占めるほどに強調して描写された縦長楕円形の艦首発射口を有する艦首部が極端に大きくデフォルメされて描かれていること、発射口の内部が明るく輝いて描かれていること、背景が宇宙空間として暗青色に描かれ艦体が暗灰色系統で描かれていること、艦首発射口に向かって明るい光の粒子が動いていく様が描かれていること、及び艦首部が画面左側を向いていることにおいて、表現の態様も基本的構成も共通しており、両映像は、表現態様、基本的構成(動き、配色、背景、具体的画面構成も含めて)及び印象が同一である。
β これに対し、3被告は、被告映像対比表1リーチ映像部分は艦首底部に凝縮された光の固まりが出て行くとの印象であるが、本件映画対比表1部分は当初から輝いていた発射口内部が一層輝きを増すとともに、視点が徐々に発射口に接近するために発射口に引き寄せられるとの印象であり、両映像から受ける印象が異なる旨主張する。
 しかし、両映像とも、光の粒子が発射口に吸い込まれるに連れて発射口内部が輝きを増すことにおいて共通しており、また、被告映像対比表1リーチ映像部分における視点の接近は、印象を異にするに足る程度のものではない。
 また、3被告は、発射口内部の明暗表現が、本件映画対比表1部分では、暗黒からオレンジ色へ、オレンジ色から底部の黄変部を除いて暗転へと変化するが、被告映像対比表1リーチ映像部分では、発射口は常に明るいままである旨主張する。
 しかし、このことは、被告対比表1リーチ映像部分が、本件映画対比表1部分の時間的な一部分を複製したことを示すものにほかならないのであり、両映像の同一性、類似性を否定する根拠にはならない。この点、3被告は、原告が一連のまとまりのある映像中のごく一部分のみを取り出して被告映像と対比すべきと主張しているとして論難するが、被告らは、原告が被侵害映像として特定した範囲を恣意的に超えて別の画像を根拠として同一性ないし類似性を否定することができないことは当然であり、3被告の上記主張は失当である。
 また、3被告は、上記両映像では、光の粒子が発射口内に引き込まれる際の表現態様が異なる旨主張する。
 しかし、光の粒子の基本的運動方向は両映像とも共通しているのであり、光の粒子の動きが更に渦巻き状をなすか直線状をなすかの違いは、同一性、類似性の否定の根拠とはならない。
 また、前記αのとおり、被告映像対比表1リーチ映像部分と本件映画対比表1部分の表現態様、基本的構成及び印象の共通性に比すれば、光の粒子の動きが渦巻き状か直線状かの差異(しかも基本的運動方向は共通している。)などは、些細な相違にすぎない。
A 待機映像との対比
α 別紙対比表1の「侵害映像1」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表1待機映像部分」という。)と本件映画対比表1部分とは、画面の大部分を占めるほどに強調して描写された縦長楕円形の艦首発射口を有する艦首部が極端に大きくデフォルメされて描かれていること、発射口の内部が明るく輝いて描かれていること、背景が宇宙空間として暗青色に描かれ艦体が暗灰色系統で描かれていること、及び艦首発射口に向かって明るい光の粒子が動いていく様が描かれていることにおいて、表現の態様と基本的構成が共通しており、表現態様、基本的構成(動き、配色、背景、具体的画面構成も含めて)及び印象が同一である。
β これに対し、3被告は、被告映像対比表1待機映像部分と本件映画対比表1部分とは視点を異にしているので、基本的構成と印象が異なる旨主張する。
 しかし、看者の注意は、全体として暗く描かれた中で明るく描かれた発射口とそれに向かって動く明るい光の粒子に向けられるのであり、相対的に暗く描かれた艦体の向きに向けられるのではないから、映像から受ける印象も、艦体の向きにかかわらず、エネルギーが艦首発射口に集中する印象であって、これは両映像に共通である。被告映像対比表1待機映像部分と本件映画対比表1部分との間の前記αの表現態様、基本的構成及び印象の共通性に比すれば、艦体の向きの差異などは、些細な相違にすぎない。
 したがって、3被告の上記主張は失当である。
 また、3被告は、被告映像対比表1待機映像部分についても、発射口内部の明暗表現が異なること、及び光の粒子の動きの表現態様が異なることを指摘するが、この点についての反論は、前記@βで主張したとおりである。
B したがって、被告映像対比表1リーチ映像部分及び被告映像対比表1待機映像部分は、本件映画対比表1部分の複製物である。
 仮に、被告映像対比表1待機映像部分と本件映画対比表1部分との間に若干の視点の差異、発射口内部の明暗表現、光の粒子の動きの差異、発射口内の「大」字型回転部材の存否等の違いがあるとしても、前記Aαで指摘したとおりの基本的画面、表現態様及び基本的構成上の共通性並びに印象の共通性に比較すれば、これらは、軽微な差異にすぎない。よって、仮に、被告映像対比表1待機映像部分が本件映画対比表1部分の複製物でないとしても、被告映像対比表1待機映像部分は、本件映画対比表1部分と本質的に同一であるから、少なくとも、本件映画対比表1部分の翻案物である。
(c) 大ヤマト砲の発射場面におけるストライカーボルト接続の場面(別紙対比表2)
 別紙対比表2の「侵害映像1」及び「侵害映像2」欄の映像に対応する動画部分と別紙対比表2の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「本件映画対比表2部分」という。)とは、両映像とも、暗い背景の中に画面の大部分を占めて金色に輝く円筒形の部材が描かれていること、この部材が画面右から左に移動する様が描かれていること、及びこの部材が対向して設置されている別の部材に接続しその際に明るさを増す様が描かれていることにおいて共通しており、表現態様と基本的構成が共通している。また、看者の注意は、暗い背景の中に描かれた円筒形の部材とその動きに向けられるのであるから、両映像から受ける印象も共通である。
3 被告は、上記両映像では、描かれている部材の形状と動きが異なり、印象も異なると主張するが、両映像は、映像の表現態様、基本的構成及び印象が共通しており、3被告の指摘する差異は、その枠の中での些細な差異にすぎない。
(d) 大ヤマト砲の発射場面における発射時の場面(別紙対比表3)
@ リーチ映像との対比
α 別紙対比表3の「侵害映像2」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表3リーチ映像部分」という。)と別紙対比表3の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「本件映画対比表3部分」という。)とは、暗い背景の中に縦長楕円形の発射口が大きく黄白色系統に明るく浮き上がって描かれていること、この発射口の輝きは当初は発射口内部に限られているがそれが発射口を越えて拡大する様が描かれていること、及び艦体が画面左側を向いて描かれていることにおいて、表現の態様と基本的構成が、共通しており、表現態様、基本的構成(動き、配色、背景、具体的画面構成を含めて)及び印象が同一である。
β これに対し、3被告は、光の収縮及び強弱の表現の有無を根拠として、上記両映像の同一性及び類似性を否定するが、本件映画対比表3部分のこの表現は、ほとんど瞬間的な表現であって、同一性及び類似性を否定する根拠となり得ない。また、3被告は、被告映像対比表3リーチ映像部分においては、発射後の光線の数、動きが本件映画対比表3部分と異なることも指摘するが、この光線は1秒にも満たない間に一本の光線に収斂するのであるから、上記両映像の同一性及び類似性を否定する根拠となり得ない。
γ また、3被告は、被告映像対比表3リーチ映像部分における光線は図柄を生み出すためのものであるが、本件映画対比表3部分における光線は対象物攻撃のためのものであるから、両映像における光線の役割及び位置付けが異なるとして、その同一性及び類似性を否定する。
 しかし、3被告の上記主張は、原告が被侵害映像であると特定した範囲を超えてその後の映像を取り上げて論じており、不当である。
 また、仮に映像の役割及び位置付けが意味を持つとし、かつ、映像の役割及び位置付けが当該映像の同一性ないし類似性の有無の判断との関係で意味を持つと仮定しても、それは、比較の対象となる両映像中にそれぞれの役割及び位置付けを示す表現が顕在化して存在していることによって両映像が異なる役割及び位置付けを有することが明らかな場合か、又はそれぞれの役割及び位置付けを示す表現は顕在化していないがストーリー性がある連続場面において当該場面が前後の場面との間の内在的連関によってそれぞれ異なった役割及び位置付けを有することが明らかに認められる場合に限られるところ、上記両映像のいずれについても、そのような事情は存在していない。したがって、両映像の対比は、3被告のいう映像の役割及び位置付けなるものに拘泥することなく、映像それ自体の同一性ないし類似性の有無を判断することで足りるのである。
 したがって、3被告の上記主張は失当である。
A 待機映像との対比
α 別紙対比表3の「侵害映像1」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表3待機映像部分」という。)と本件映画対比表3部分とは、暗い背景の中に縦長楕円形の発射口が大きく黄白色系統に明るく浮き上がって描かれていること、この発射口の輝きは当初は発射口内部に限られているがそれが発射口を越えて拡大する様が描かれていることにおいて、表現態様と基本的構成が共通であり、両映像は、表現態様、基本的構成(動き、配色、背景、具体的画面構成も含めて)及び印象が同一である。
β これに対し、3被告は、本件映画対比表3部分は艦首の斜め前方の視点から艦体全体を描いているが、被告映像対比表3待機映像部分はこれと異なると主張する。
 しかし、看者の注意は、全体として暗い背景の中に明るく浮き上がった発射口とその輝きの変化に向けられるのであり、相対的に暗く描かれた艦体の向きに向けられるのではないから、映像から受ける印象も両映像に共通である。上記αのとおりの表現態様、基本的構成及び印象の共通性がある以上、視点の相違は本質的差異ではない。
γ また、3被告は、原告が対比の範囲として特定した部分以外の映像を持ち出して、上記両映像の同一性、類似性を否定するが、このような対比方法は不当である。
B したがって、被告映像対比表3リーチ映像部分及び被告映像対比表3待機映像部分は、いずれも、本件映画対比表3部分の複製物であり、仮に、複製物とはいえないとしても、少なくとも翻案物である。
(e) 大ヤマト砲の発射場面における炎状の光線が描写されている場面(別紙対比表4)
@ リーチ映像との対比
 別紙対比表4の「侵害映像2」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表4リーチ映像部分」という。)と別紙対比表4の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「本件映画対比表4部分」という。)とは、暗い背景の中で輝度の高い光線が描かれていること、この光線が炎状に描かれていること、この光線が次第に画面の大部分を占めるように拡大していくように描かれていること、輝度の高い光線を放射する艦体が画面左側を向いて描かれていることにおいて共通しており、表現態様、基本的構成(動き、配色、背景、具体的画面構成を含めて)及び印象が同一である。
A 待機映像との対比
α 別紙対比表4の「侵害映像1」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表4待機映像部分」という。)と本件映画対比表4部分とは、暗い背景の中で輝度の高い光線が描かれていること、この光線が炎状に描かれていること、この光線が次第に画面の大部分を占めるように拡大していくように描かれていることにおいて、表現態様が共通しており、表現態様、基本的構成(動き、配色、背景、具体的画面構成も含めて)及び印象が同一である。
β これに対し、3被告は、被告映像対比表4待機映像部分には艦体が描かれていないことを根拠に、両映像間の同一性及び類似性を否定する。
 しかし、看者の注意を惹くのは、暗く表現された艦体の有無ではなく、輝いて描かれた光線であり、その拡大であるから、両映像から受ける印象は共通である。また、前記のとおりの両映像間の表現態様、基本的構成及び印象の共通性を踏まえれば、艦体が描かれているか否かは、その枠内での些細な差異にすぎない。
 したがって、3被告の上記主張は失当である。
γ また、3被告は、上記両映像では、光線の表現態様が異なることを主張するが、このような差異も、前記の両映像間の表現態様、基本的構成及び印象の共通性の枠内での差異にすぎず、同一性及び類似性を否定する根拠とはならない。
B したがって、被告映像対比表4リーチ映像部分及び被告映像対比表4待機映像部分は、いずれも、本件映画対比表4部分の複製物であり、仮に、複製物とはいえないとしても、少なくとも翻案物である。
b 主砲発射場面@(別紙対比表13)
(a) 別紙対比表13の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表13部分」という。)と別紙対比表13の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「本件映画対比表13部分」という。)とは、全体として暗い画面中で、暗いながらも相対的に浮き出るように砲身が描かれていること、甲板上に複数の砲塔が描かれていること、各砲塔に3門ずつの砲身が描かれていること、それら砲身が上方に立ち上がる様が仰角で描かれていること、及びその際に砲身が各々の動きをする様を描いていることにおいて、共通している。したがって、両映像は、表現態様と基本的構成が共通しており、また、看者の受ける印象も、薄暗い中で仰角で描かれた主砲の威圧感と力強さであり、共通する。
(b) これに対し、3被告は、被告映像対比表13部分は、砲身全体と砲塔を含み、かつ、異なった視点から描いており、本件映画対比表13部分とは、基本的構成を異にしていること、並びに両映像は、主砲及び艦橋の表現態様を異にしていることを挙げて、両映像の同一性及び類似性を否定する。
 しかし、砲身全体と砲塔を含んで描かれているか否か、及び艦橋と主砲の距離感等は、薄暗い画面においては、看者の注意を惹き付けるものではなく、上記相違点は、前記の両映像の表現態様、基本的構成及び印象の共通性の枠内での些細な相違点にすぎないのである。
 したがって、3被告の上記主張は失当である。
(c) したがって、被告映像対比表13部分は、本件映画対比表13部分の複製物であり、仮に、複製物とはいえないとしても、少なくとも翻案物である。
c 主砲発射場面A(別紙対比表14)
(a) 別紙対比表14の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表14部分」という。)と別紙対比表14の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「本件映画対比表14部分」という。)とは、全体として暗い画面の中で、暗いながらも相対的に浮き出るように砲身が描かれていること、各砲塔に3門ずつの砲身が描かれていること、砲身が仰角で描かれていること、この砲身から青白色の輝度の高い光線が3条発射される様が描かれていること、発射時に青白色の爆焔が描かれていること、及び発射時の青白色の光線によって艦体が一瞬明るく照らされる様が描かれていることにおいて、共通しており、両映像とも表現態様と基本的構成が共通である。また、看者の注意は、暗い画面の中で唯一明るい3条の光線に向けられるのであり、それらから受ける印象は、仰角で描かれた主砲の威力であり、この点でも両映像は共通している。
(b)@ これに対し、3被告は、被告映像対比表14部分は、砲身全体と砲塔を含み、かつ、異なった視点から描いており、本件映画対比表14部分とは基本的構成を異にしていること、上記両映像は、発射時の表現態様を異にしており、印象も異にすること、並びに主砲及び艦橋の表現態様も異にしていることを挙げて、同一性及び類似性を否定する。
 しかし、砲身全体と砲塔を含んで描かれているか否か、並びに主砲及び艦橋の表現態様等は、明るい3条の光線が描かれている薄暗い画面においては、看者の注意を惹き付けるものではなく、上記相違点は、前記の両映像の表現態様、基本的構成及び印象の共通性の枠内での些細な相違点にすぎないのである。
 したがって、3被告の上記主張は失当である。
A また、3被告は、砲身の向き及び光線発射が同時か否かの相違を挙げて、前記両映像の同一性及び類似性を否定する。
 しかし、被告映像対比表14部分も、甲板上の3基の砲塔の各3門の砲身が各々の動きをする様を仰角で描いた映像であること、及びこの動きに続いて砲身から白色を帯びた輝度の高い光線が発射される映像であることにおいて、本件映画対比表14部分と共通している。
 したがって、3被告の上記主張は失当である。
(c) したがって、被告映像対比表14部分は、本件映画対比表14部分の複製物であり、仮に、複製物とはいえないとしても、少なくとも翻案物である。
d パルスレーザー砲発射場面(別紙対比表15)
(a) 別紙対比表15の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表15部分」という。)と別紙対比表15の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「本件映画対比表15部分」という。)とは、全体として暗い中で小砲塔が暗灰色に薄暗く浮かび上がり唯一明るい映像として活発に動く破線が表現されていること、小砲塔がドーム型に描かれていること、及びこの小砲塔の回転に伴って明るい破線が動く様が描かれていることにおいて、表現態様と基本的構成が共通である。また、看者の注意も、暗い画面の中で唯一明るい破線に向けられるのであり、その受ける印象も、単に小砲塔の旋回に伴う破線の動きのみでなく、同一破線上の光の明滅から生ずるリズム感でもあり、この点で、両映像は、共通している。
(b) これに対し、3被告は、上記両映像は、画面構成及び視点を異にしており、その結果、印象及びスピード感が異なることを挙げて、両映像間には、同一性及び類似性がない旨主張する。
 しかし、両映像は、全体として暗い画面中で明滅する光が描かれる以上、画面構成及び視点の相違等は、看者の注意を惹き付けるものではなく、些細な相違にすぎない。両映像とも、リズム感上は大差ないのであるから、スピード感の相違なるものも、同一性及び類似性を否定するに足るものではない。
 したがって、3被告の上記主張は失当である。
(c) したがって、被告映像対比表15部分は、本件映画対比表15部分の複製物であり、仮に、複製物とはいえないとしても、少なくとも翻案物である。
e 艦体の航行場面@(別紙対比表16)
(a) 別紙対比表16の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表16部分」という。)と別紙対比表16の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「本件映画対比表16部分」という。)とは、艦体が画面右奥から左手前に画面を横切って左舷側面を見せながら航行する様が艦体像が次第に拡大していく映像として描かれていること、艦体は発射口を有する艦首が極端に大きく描写され艦首先端上端に円形切れこみを備えていること、主艦橋を3層に分かれたものとして表現していること、艦体が左舷側面から若干仰角気味に描かれていること、及び全体として暗い背景の中で艦体は上部が灰色系統に下部が暗赤色系統に着色されて表現されていることにおいて、共通しており、両映像は、表現態様と基本的構成が共通している。また、看者の受ける印象も、暗い背景の中で相対的に灰色に浮き出して描かれた艦体の航行の勇姿であり、この点も両映像において共通している。
(b)@ これに対して、3被告は、上記両映像では、描かれている場面と映像の基本的構成が異なることを理由に、両映像の同一性及び類似性を否定する。
 しかし、被告映像対比表16部分のうちの天体の描かれていない部分は明らかに本件映画対比表16部分の複製物であり、また、被告映像対比表16部分のそれ以外の部分についても、看者の注意は、暗い背景の中で移動する物体として描かれた灰色の艦体に向けられるのであって天体に向けられるのではないから、天体が描かれているか否かは本質的な点でなく、その相違は副次的なものにすぎない。
 したがって、3被告の上記主張は失当である。
A また、3被告は、被告映像対比表16部分は、視点に近づくにつれて速度が上がり、また、艦橋が注視点であるが、本件映画対比表16部分は、等速のままであり、また、艦体側面が注視点であって、これらの相違点を理由に両映像の同一性及び類似性は否定されると主張する。
 しかし、両映像とも、艦体の移動方向は同一であり、艦橋と艦体側面を含めて描いていることからすれば、これらの点は、両映像の同一性、類似性を否定する根拠にはならない。
 したがって、3被告の上記主張は失当である。
(c) したがって、被告映像対比表16部分は、本件映画対比表16部分の複製物であり、仮に、複製物とはいえないとしても、少なくとも翻案物である。
f 艦体の航行場面A(別紙対比表17)
(a) 別紙対比表17の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表17部分」という。)と別紙対比表17の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「本件映画対比表17部分」という。)とは、全体として暗い背景の中を艦体が画面奥に去っていく様を艦体像が次第に縮小していく映像として描いていること、その際に艦体が右に旋回しながら航行する様が描かれていること、艦尾のロケットエンジンが輝いて描かれていること、及び艦尾の尾翼が放射状に描かれていることにおいて共通しており、両映像は、表現態様と基本的構成が共通している。また、看者が両映像から受ける印象も、暗い宇宙を航行する宇宙戦艦ヤマトの孤独と速力であり、この点においても、両映像は共通する。
(b)@ 3被告は、被告映像対比表17部分は、艦船が地球に帰還する場面であり、地球が描かれているが、本件映画対比表17部分は、周囲に何も存在していない宇宙空間を航行する場面である点で相違し、これを理由に上記両映像の同一性及び類似性は否定されると主張する。
 しかし、被告映像対比表17部分の艦体が航行する様を描いた映像が、本件映画対比表17部分の複製物であることは明かなところ、この結論が、画面上に地球が描かれることによって影響を受けるべき理由はない。
 したがって、3被告の上記主張は失当である。
A また、3被告は、上記両映像では、艦体の尾翼の数が異なり、また、艦体が浮遊している印象か飛行している印象かの相違があり、これを理由に上記両映像の同一性及び類似性は否定されると主張する。
 しかし、上記の相違点は、些細なものにすぎず、また、全体として暗い画面の中で、尾翼の数は必ずしも明瞭に認識されるものではなく、さらに、艦体が浮遊している印象か否かなどは、一方的、主観的印象にすぎず、相対的な差異にすぎない。
 したがって、3被告の上記主張は失当である。
(c) したがって、被告映像対比表17部分は、本件映画対比表17部分の複製物であり、仮に、複製物とはいえないとしても、少なくとも翻案物である。
g 艦橋内部が描写されている場面(別紙対比表18)
(a) 別紙対比表18の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表18部分」という。)と別紙対比表18の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「本件映画対比表18部分」という。)とも、基本的構図が、全体として遠近法を強調したX型であって、広がりのある空間の印象を与え、上方大型パネルは、碁盤目を有し物体を映し出して描かれており、しかも、床上手前に艦長席、床前方にその他の者の席が置かれ、その中間の床中央部に1個の装置が配置され、これを挟んで2席が置かれている。したがって、両映像の表現態様及び基本的構成は同一である。
(b)@ これに対し、3被告は、上記両映像は、基本的構図が異なる旨主張するが、両映像とも全体としてX型(3被告らが主張する糸巻き型)であることは明瞭であり、上記主張は失当である。
A また、3被告は、映像から受ける印象について、被告映像対比表18部分は、上方、前方及び床を青く発光して描いているので開放的印象を与えるが、本件映画対比表18部分は閉鎖的印象を与えると主張し、この相違を理由に両映像の同一性及び類似性は否定されると主張する。
 しかし、3被告が指摘する本件映像の画像も、全体として広がりのある空間の印象を与えることにおいて、被告映像対比表18部分と異なるところはなく、この点の3被告の主張も失当である。
B また、3被告は、上方パネルの表現態様の相違として、同パネルの傾斜度が両映像で相違しており、これを理由に両映像の同一性、類似性は否定されると主張する。
 しかし、この点の相違も何ら本質的なものではなく、両映像とも、パネルには碁盤目が描かれ、物体も映し出されているのであって、同一である。
 したがって、3被告の上記主張は失当である。
(c) したがって、被告映像対比表18部分は、本件映画対比表18部分の複製物であり、仮に、複製物とはいえないとしても、少なくとも翻案物である。
h 艦長が描写されている場面(別紙対比表19、20)
(a) 別紙対比表19及び20の各「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表19・20部分」という。)と別紙対比表19及び20の各「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「本件映画対比表19・20部分」という。)とは、金色の徽章と顎紐のついた白色の軍帽を目深に被っている点、顔面一杯に鬚を蓄えている点、赤色の大きな襟、左胸の碇のマーク、両肩の肩章を有するユニフォームを着用している点、白色のスカーフで首を覆っている点、及び熟年男性である点で共通し、両映像は、表現態様と基本的構成が同一であり、また、これら構成部分の形状と配色も同一である。
(b) 3被告は、上記両映像では、帽子の形状、鬚の形状、鼻の形状、耳、口唇の描き方、及び襟の形状等が異なることから、同一性及び類似性が否定される旨主張する。
 しかし、3被告の挙げる上記相違点は、全く些細な点であって、前記(a)の共通点からすれば、両映像が同一であることは明らかである。
(c) したがって、被告映像対比表19・20部分は、本件映画対比表19・20部分の複製物であり、仮に、複製物とはいえないとしても、少なくとも翻案物である。
i 医師が描写されている場面(別紙対比表21)
(a) 別紙対比表21の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表21部分」という。)と別紙対比表21の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「本件映画対比表21部分」という。)とは、描かれた人物が、はげ頭で(しかも、頭頂部が瘤状に隆起し、また、耳の上には毛髪が残っている。)、頭が大きく( 頭部の縦の長さが胴体の長さの2 分の1 より大きい。)、「八」字眉で、眼鏡を掛け、目は点で表現され、口が出ている中年太りの人物であり、また、服装も少なくとも部分的には白で表現されている。さらに、左右の違いはあるにせよ、一方の腕を上げる動作が描かれている。したがって、両映像とも表現態様と基本的構成が共通している。
(b)@ これに対して、3被告は、上記両映像では、人物の顔の輪郭、眉、眼鏡、目、鼻、口及び服装が異なっていることを根拠に、その同一性及び類似性は否定される旨主張する。
 しかし、3被告の挙げる上記相違点は、いずれも些細な相違にすぎず、両映像の前記の共通点からすれば、上記相違点をもって、両映像の同一性及び類似性が否定されることはない。
A また、3被告は、被告映像対比表21部分の人物と本件映画対比表21部分の人物は、本件映画の作成に先行して補助参加人P1が別々の人物として作成したものであることを理由に、両映像の同一性及び類似性は否定される旨主張する。
 しかし、重要なことは、補助参加人P1の先行作品中で人物が描き分けられていたか否かではなく、被告映像と本件映画のそれぞれにおいて、人物が描き分けられているかどうかでなければならない。そして、被告映像においても、本件映画においても、別々の2人の人物が登場するわけではない。
 したがって、3被告の上記主張は失当である。
B さらに、3被告は、人物の背景及び状況が異なることを挙げて、上記両映像の同一性及び類似性は否定される旨主張する。
 しかし、人物の表現上の基本的特徴が共通であって両映像が少なくとも類似している限り、被告映像対比表21部分は、本件映画対比表21部分の複製物(又は翻案物)なのであって、場面が異なることは、両映像の同一性及び類似性を否定する根拠とはならない。
 したがって、3被告の上記主張は失当である。
(c) したがって、被告映像対比表21部分は、本件映画対比表21部分の複製物であり、仮に、複製物とはいえないとしても、少なくとも翻案物である。
j ロボットが描写されている場面(別紙対比表22、23)
(a) 別紙対比表22、23の各「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表22・23部分」という。)と別紙対比表22、23の各「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「本件映画対比表22・23部分」という。)とは、全体として小太りで寸胴のロボットの映像であること、頭部が半球形で目が離れていること、胴体が円筒形で手がついていること、下半身が短いこと、頭部、胴体及び下半身が時に分離し別々に動く様(しかも、接合部には歯型がある。)を描いた動画映像であること、一般看者が動画映像を見たときに受ける印象も、頭部、胴部及び下半身が別々に動くことについての面白さであることにおいて共通しており、したがって、両映像とも表現態様、基本的構成及び印象が共通である。
(b) これに対し、3被告は、上記両映像は、頭部の形状(胴体部幅より狭いか、縦長か、頭頂部突起物の形状、正面の付属品の形状等)、胴部(頭部より広いか、正面中央の付属品等の形状、ホース様の物で肘と接続しているか)及び下半身(人間の下半身の形状か)等について、差異があるとして、同一性及び類似性が否定される旨主張する。
 しかし、このような顕微鏡的な比較をすればするほど、上記両映像の基本的同一性及び類似性が明らかになるのである。すなわち、頭部が半円形で目が離れている点、寸胴の胴体に手がつき、かつ、頭部、胴体及び下半身が時に分離する(しかも、接合部には歯型がある。)点において、両映像は共通しており、しかも、一般看者が両映像を見たときに受ける印象は、正に、これらの点である。
3 被告が挙げる上記相違点は、いずれも些細なものにすぎない。
 したがって、3被告の上記主張は失当である。
(c) したがって、被告映像対比表22・23部分は、本件映画対比表22・23部分の複製物であり、仮に、複製物とはいえないとしても、少なくとも翻案物である。
(イ) 被告パチスロ映像との対比
a 大ヤマト砲の発射場面
(a) 大ヤマト砲の発射場面における発射口の粒子の状態の場面(別紙対比表5)
 前記(ア)a(b)での主張と同じ理由により、複製権侵害又は翻案権侵害が成立する。
(b) 大ヤマト砲の発射場面におけるストライカーボルト接続の場面(別紙対比表6)
 前記(ア)a(c)での主張と同じ理由により、複製権侵害又は翻案権侵害が成立する。
(c) 大ヤマト砲の発射場面における発射時の場面(別紙対比表7)
 前記(ア)a(d)での主張と同じ理由により、複製権侵害又は翻案権侵害が成立する。
(d) 大ヤマト砲の発射場面における炎状の光線が描写されている場面(別紙対比表8)
 前記(ア)a(e)での主張と同じ理由により、複製権侵害又は翻案権侵害が成立する。
b 主砲発射場面@(別紙対比表24)
 前記(ア)bでの主張と同じ理由により、複製権侵害又は翻案権侵害が成立する。
c 主砲発射場面A(別紙対比表25)
 前記(ア)cでの主張と同じ理由により、複製権侵害又は翻案権侵害が成立する。
d パルスレーザー砲発射場面(別紙対比表26)
 前記(ア)dでの主張と同じ理由により、複製権侵害又は翻案権侵害が成立する。
e 艦体の航行場面@(別紙対比表27)
 前記(ア)eでの主張と同じ理由により、複製権侵害又は翻案権侵害が成立する。
f 艦体の航行場面A(別紙対比表28)
(a) 別紙対比表28の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表28部分」という。)と別紙対比表28の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「本件映画対比表28部分」という。)とは、艦首先端上端に円形切れこみと巨大な艦首発射口を有する艦首が大きくデフォルメして表現されていること、3層に分かれた主艦橋を有する艦体を右舷前方下方から仰角で描かれていること、喫水下のバルジも大きくデフォルメして表現されていること、艦首を画面右肩に向け艦尾を画面左下に向けた構図で艦体が画面の大部分を占める様が描かれていること、及び艦体が上下に灰色系統と赤系統に2分して彩色され、背景が基本的に青く表現されていることにおいて、表現態様及び基本的構成が共通している。
(b)@  これに対し、3被告は、被告映像対比表28部分は宇宙空間航行の場面であるのに対し、本件映画対比表28部分は地上停泊の場面であり、両映像は場面を異にすると主張するが、被告映像対比表28部分の艦体は、時間の経過にかかわらずその大きさに変化がないのであって基本的に艦体自体は静止しているとの印象であり、この点で、両映像は共通している。背景が動く星であるか大地であるかの違いによる場面の相違は、本質的問題ではない。
A また、3被告は、被告映像対比表28部分の艦体が三角形であるのに対し、本件映画対比表28部分の艦体は略長方形に描かれていて、両映像は、表現態様を異にすると主張するが、本件映画対比表28部分の艦体も三角形で表現されており、特に、別紙対比表28の「被侵害映像」欄の3、4コマ目の艦体は、全体の輪郭が三角形に表現されているといって差し支えはない。この点についての両映像の相違は、程度の差にすぎない。
(c) したがって、被告映像対比表28部分は、本件映画対比表28部分の複製物であり、仮に、複製物とはいえないとしても、少なくとも翻案物である。
g 艦体の航行場面B(別紙対比表29)
 前記(ア)fでの主張と同じ理由により、複製権侵害又は翻案権侵害が成立する。
h 艦橋内部が描写されている場面(別紙対比表30)
 前記(ア)gでの主張と同じ理由により、複製権侵害又は翻案権侵害が成立する。
i 天体攻撃場面(別紙対比表31)
(a) 別紙対比表31の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表31部分」という。)と別紙対比表31の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「本件映画対比表31部分」という。)とは、全体として暗青色を基調とする画面の中で艦体を灰色系統の色彩で表現していること、画面上部には半球形の天体(上部に構築物が描かれている。)を下部には艦体前半部を俯瞰的に描いていること、及び主砲を3門描き、この主砲が天体に照準を定める様を描いていることにおいて、基本的表現態様及び基本的構成が共通している。また、看者の注意は、天体と主砲との関係に向けられるのであり、この印象は両映像に共通している。(b)@ これに対して、3被告は、艦体及び主砲と天体とが重なるか否かの点、視点、印象、砲身の放熱カバーの有無、並びに天体下半部の表現方法において相違がある旨主張するが、これらは、いずれも些細な相違にすぎない。
A また、3被告は、被告映像対比表31部分については、遊技者による停止ボタン操作により異なる映像が展開されるから、上記両映像は、同一性及び類似性が否定される旨主張する。
 しかし、遊技者のボタン操作によるにせよ、実際に侵害映像が展開される以上は、3被告指摘の点は、侵害の事実に影響しない。
 したがって、3被告の上記主張は失当である。
(c) したがって、被告映像対比表31部分は、本件映画対比表31部分の複製物であり、仮に、複製物とはいえないとしても、少なくとも翻案物である。
j 艦長が描写されている場面(別紙対比表32)
 前記(ア)hでの主張と同じ理由により、複製権侵害又は翻案権侵害が成立する。
k 医師が描写されている場面(別紙対比表33)
 前記(ア)iでの主張と同じ理由により、複製権侵害又は翻案権侵害が成立する。
(ウ) 被告プレステゲーム映像との対比
a 主砲発射場面@(別紙対比表34)
 前記(ア)bでの主張と同じ理由により、複製権侵害又は翻案権侵害が成立する。
b 主砲発射場面A(別紙対比表35)
 前記(ア)cでの主張と同じ理由により、複製権侵害又は翻案権侵害が成立する。
c パルスレーザー砲発射場面(別紙対比表36)
 前記(ア)dでの主張と同じ理由により、複製権侵害又は翻案権侵害が成立する。
d 艦体の航行場面@(別紙対比表37)
 前記(ア)eでの主張と同じ理由により、複製権侵害又は翻案権侵害が成立する。
e 艦体の航行場面A(別紙対比表38)
 前記(ア)fでの主張と同じ理由により、複製権侵害又は翻案権侵害が成立する。
f 艦橋内部が描写されている場面(別紙対比表39)
 前記(ア)gでの主張と同じ理由により、複製権侵害又は翻案権侵害が成立する。
g 艦長が描写されている場面(別紙対比表40、41)
 前記(ア)hでの主張と同じ理由により、複製権侵害又は翻案権侵害が成立する。
h 医師が描写されている場面(別紙対比表42)
 前記(ア)iでの主張と同じ理由により、複製権侵害又は翻案権侵害が成立する。
i ロボットが描写されている場面(別紙対比表43、44)
 前記(ア)jでの主張と同じ理由により、複製権侵害又は翻案権侵害が成立する。
(3被告)
ア 被告パチンコ映像との対比
(ア) 大ヤマト砲の発射場面
a 別紙対比表1ないし4付近の映像の対比
(a) 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、本件映画のうちの別紙A1−1の静止画に対応する動画映像部分(以下「A1−1映像」という。)と、被告パチンコ映像のうちの別紙A1−2の静止画に対応する動画映像部分(以下「A1−2映像」という。)である。
(b) A1−1映像においては、波動砲発射までの過程(いずれも上記のうちの1ないし6コマ)では、映像は艦体の斜め前方からの視点で描かれており、看者以外の何者かに対して波動砲の照準を合わせて発射するとの態様で描かれているところ、これに続く7、8コマ目では、発射された光線が攻撃対象物に命中する状態が描かれている。上記映像部分は、全体として、看者以外の画面内の攻撃対象物に対して、波動砲が発射されていることを表現している映像であり、波動砲は攻撃対象物を攻撃する武器として表現されている。
 これに対して、A1−2映像においては、艦首を、やや横向きから正面に向けて移動させた上で、大ヤマト砲を発射するまでの過程(上記の1ないし6コマ)を、画面に対峙しているパチンコ機の遊技者からの視点で描いており、対峙する遊技者(看者)に対して、大ヤマト砲の照準を合わせて発射するとの印象を与える映像である。その上で、上記映像部分の7、8コマ目では、原作者名等が表示されており、このことから明らかなとおり、1ないし6コマ目の大ヤマト砲の発射は、7、8コマ目において原作者名等を表示させる前段階として、画面を白色光で満たす(ホワイトアウトさせる)ための画面切り換え手段として表現されているものである。
 したがって、上記両映像は、全体的な一連の流れを検討した場合にも、基本的な構成、表現態様及び表現目的が異なっており、相互に同一であるとはいえず、同様に類似しているともいえない。
b1 別紙対比表1付近の映像の対比(待機映像との対比)
(a) 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、本件映画のうちの別紙A2−1の静止画に対応する動画映像部分(以下「A2−1映像」という。)と、被告パチンコ映像のうちの別紙A2−2の静止画に対応する動画映像部分(以下「A2−2映像」という。)である。
(b) 対比
@ A2−1映像においては、艦首の斜め前方の視点から、艦首が静止した状態で描かれているのに対して、A2−2映像においては、画面に対峙する遊技者の視点で、視点に対して斜めを向いていた艦首を、正面に向けて移動させながら描かれており、両映像は映像の基本的構成を異にしている。
 また、映像から受ける印象についても、A2−1映像においては、看者以外の何者かに波動砲の照準を合わせて描いているとの印象を受けるのに対して、A2−2においては、看者(遊技者)自身に対して大ヤマト砲の照準を合わせて描いているとの印象を受け、両者は映像から受ける印象をも異にしている。
A A2−1映像においては、発射口内部が、暗黒からオレンジ色へ、オレンジ色から底部の黄変部を除いて暗転へと変遷していくのに対して、A2−2映像においては、発射口は常に明るい状態のままであり、両映像は発射口内部の明暗表現を異にしている。
B A2−1映像においては、発射口内部は、等間隔のリブを備えるほかは空洞であり、発射口に光の粒子が直線状に引き寄せられるように表現されているのに対して、A2−2映像においては、発射口内部には、「大」字形状の部材を備え、「大」字形状の部材の回転により、光の粒子が渦巻き状に引き寄せられるように表現されており、両映像は、発射口内部の構造、及び光の粒子が発射口に引き込まれる際の表現態様を異にしている。
C 以上の相違からすれば、上記両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
(c)@ 原告が上記両映像の共通点として主張する部分は、いずれも艦首発射口が際立って大きいことや光の粒子が発射口に吸い込まれること等であって、画像中の一部を抽出した上での概括的事項にすぎない。
 しかし、本件においては、これらが具体的にどのように表現されているのかが、本来検討すべき対象というべきところ、両映像を具体的な表現に着目して対比した場合には、両映像は、前記(b)のとおり、映像の基本的な構成、発射口内部の明暗表現態様、発射口内部の構造、及び光の粒子が引き寄せられる際の表現態様において基本的に相違しているのであるから、両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
A また、原告が指摘する上記両映像の共通点は、先行する漫画、アニメーション作品及びプラモデルの外箱等において、ごく一般的に表現されていた内容のものにすぎず、被侵害映像と被告映像とを対比するに当たって、格別に重要な部分であるとはいえない。
 すなわち、縦長楕円形の艦首発射口を有する艦首部が大きくデフォルメされて描かれていることについては、乙第36号証の4、乙第58号証(55頁)、乙第57号証の1(2、3頁)に、背景が宇宙空間として暗青色に描かれ、艦体が暗灰色系統で描かれていることについては、乙第57号証の1(10頁)、乙第58号証(55頁)に、発射口の内部が明るく輝いて描かれていることについては、乙第57号証の1(9ないし12頁)、乙第57号証の2(6ないし9頁)、乙第59号証に、それぞれ表現されている。
b 別紙対比表1付近の映像の対比(リーチ映像との対比) 2
(a) 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、A2−1映像と、被告パチンコ映像のうちの別紙A2−3の静止画に対応する動画映像部分(以下「A2−3映像」という。)である。
(b) 対比
 A2−1映像においては、当初暗黒であった発射口内部が光の粒子を直線状に吸い込むことにより、艦首底部に凝縮された光の固まりが形成されていくとの印象を受ける映像であるのに対し、A2−3映像においては、当初から光が溢れるばかりに輝いていた発射口内部が、光の粒子を周囲から広く吸い込むことにより、更に光に満ち溢れていくとの印象を受ける映像であるとともに、視点が徐々に発射口に近づいていくことにより、発射口に引き寄せられるとの印象を受ける映像である。
 また、前記b で主張したように、上記両映像は、発射口内部の1明暗表現、及び光の粒子が発射口に引き込まれる際の表現を異にしている。
 したがって、上記両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
(c) 原告が上記両映像の共通点として主張する部分は、前記b1で主張したとおり、概括的事項にすぎない。両映像の対比は、両映像が具体的にどのように表現されているかを検討することによるべきであり、そうすると、前記のとおり、両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
c1 別紙対比表2付近の映像の対比(待機映像との対比)
(a) 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、本件映画のうちの別紙A3−1の静止画に対応する動画映像部分(以下「A3−1映像」という。)と、被告パチンコ映像のうちの別紙A3−2の静止画に対応する動画映像部分(以下「A3−2映像」という。)である。
(b) 対比
@ A3−1映像においては、対向配置される部材が、シリンダー様部材とピストン様部材であるのに対して、A3−2映像においては、釣鐘状突起物が複数形成された円筒様部材と、6個の円筒状突起物が形成された円筒様部材であり、両映像は、対向配置される部材の形状を全く異にしている。
A A3−1映像においては、ピストン様部材が、シリンダー様部材に向かってゆっくりと移動して押し込まれる状態が描かれており、ピストン様部材がシリンダー様部材に接続され、動力がゆっくりと伝達されるという印象を受けるのに対して、A3−2映像においては、円筒状突起物が形成された円筒様部材が、高速で回転しながら、他方の円筒様部材に向かって高速で移動し、激しく衝突、発光する状態が描かれており、衝突により大きなエネルギーが生み出されているという印象を受けるものであり、両映像は、対向配置されている部材の動きが相互に異なり、その結果として、映像から受ける印象を全く異にしている。
B 以上の相違からすれば、上記両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
(c) 原告が上記両映像の共通点として主張する部分は、いずれも円筒形の部材が移動して、接続するという程度の概括的事項にすぎない。本件では、これらが具体的にどのように表現されているかが検討されるべきであるから、原告のこの点に関する主張は失当である。
c 2 別紙対比表2付近の映像の対比(リーチ映像との対比)
(a) 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、A3−1映像と、被告パチンコ映像のうちの別紙A3−3の静止画に対応する動画映像部分である。
(b) 前記c1で主張したのと同様の理由で、上記両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
d1 別紙対比表3付近の映像の対比(待機映像との対比)
(a) 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、本件映画のうちの別紙A4−1−1の静止画に対応する動画映像部分(以下「A4−1−1映像」という。)と、被告パチンコ映像のうちの別紙A4−2の静止画に対応する動画映像部分(以下「A4−2映像」という。)である。
(b) 対比
@ A4−1−1映像においては、艦体の斜め前方の離れた視点から、艦体全体が描かれるとともに、発射口の黄白色をした円が膨張及び収縮を繰り返す状態が描かれており、看者以外の何者かに波動砲を発射しようとしているとの印象を受けるのに対して、A4−2映像においては、艦体全体は描かれておらず、画面に対峙する遊技者の視点で、画面中央に正面を向いた艦首の発射口が大きく描かれるとともに、膨張及び収縮を繰り返すことなく発射口の光の一方的な拡大が描かれており、看者(遊技者)自身に対して、大ヤマト砲を発射しようとしているとの印象を受け、したがって、両映像は、映像の基本的な構成及び映像から受ける印象を基本的に異にしている。
A A4−1−1映像においては、発射口の光(黄白色をした円)が一旦膨張した後に収縮するように描かれているのに対して、A4−2映像においては、発射口の光が一方的に拡大していくように描かれており、両者は発射口における光線の表現態様を基本的に異にしている。
B 以上の相違からすれば、上記両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
(c)@ 原告が上記両映像の共通点として主張する部分は、いずれも映像の一部を概括的に述べているにすぎない。本件では、これらが具体的にどのように表現されているかが検討されるべきであるから、原告のこの点に関する主張は失当である。
A また、原告は、看者の注意は、全体として暗い背景の中に明るく浮き上がった発射口とその輝きの変化に向けられるのであり、相対的に暗く描かれた艦体の向きに向けられるのではないから、映像から受ける印象は上記両映像に共通である旨主張する。
 しかし、原告が主張するとおり、看者の注意が発射口に向けられるとすれば、その発射口が、画面に対峙する看者(遊技者)に向けられ、看者に対して発射されるのか、それ以外の方向を向き、攻撃対象物に発射されるのかという相違は、単なる艦体の向きが異なるという程度の相違に留まらず、映像から受ける印象を大きく異ならせるものであり、印象が共通であるなどとはいえない。
 また、原告が主張するとおり、看者の注意が発射口の輝きの変化に向けられるとすれば、その変化の具体的表現として、膨張、収縮を繰り返すのか、一方的に拡大するのみであるのかという相違は、映像から受ける印象を大きく異ならせるものであり、映像から受ける印象が共通であるとはいえない。
 したがって、原告の上記主張は失当である。
B また、原告が指摘する上記両映像の共通点は、先行する映画、アニメーション作品等において、ごく一般的に表現されていた内容のものにすぎず、被侵害映像と侵害映像を対比するに当たって、格別に重要な部分であるとはいえない。
 すなわち、暗い背景の中に縦長楕円形の発射口が大きく黄白色系統に浮き上がって描かれていることについては、乙第57号証の1(11頁)、乙第57号証の3(4頁)、乙第59号証、乙第60号証に、発射口の輝きが、当初は発射口内部に限られているが、それが発射口を超えて拡大する様が描写されていることについては、、乙第57号証の1(3、4頁)、乙第57号証の2(2、3、8、10、11、12頁)に表現されていた。
d2 別紙対比表3付近の映像の対比(リーチ映像との対比)
(a) 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、本件映画のうちの別紙A4−1−2の静止画に対応する動画映像部分(以下「A4−1−2映像」という。)と、被告パチンコ映像のうちの別紙A4−3の静止画に対応する動画映像部分(以下「A4−3映像」という。被告映像対比表3部分とほぼ同一。)である。
(b) 対比
@ A4−1−2映像においては、発射口の光線(黄白色をした円)が、一旦膨張した後に収縮する状態が描かれ、一旦ON 状態(光の膨張)になったものが、再びOFF 状態(光の収縮)になることが表現されているのに対して、A4−3映像においては、発射口から5本の太い黄白色の光線が、放射状に一方的に拡大する状態が描かれ、一旦ON 状態(光の膨張)になったものが、再びOFF 状態(光の収縮)になることはなく表現されている。
 したがって、両映像は、映像の基本的な構成を異にしている。
A A4−1−2映像においては、膨張したエネルギーを繰り返し凝縮、集中させ、発射に備えた上で、看者以外の何者かに波動砲を発射しようとしているとの印象を受けるのに対して、A4−3映像においては、臨界点に達したエネルギーが、多方向に弾け出し、看者(遊技者)に向かって光線が急接近してくるとの印象を受ける。
 したがって、両映像は、映像から受ける印象を異にしている。
B A4−1−2映像においては、発射口の光(黄白色をした円)が、円形状を維持したまま、膨張及び収縮する様が描かれているのに対して、A4−3映像においては、当初円形状であった発射口の光が、5本の光の帯に分かれて、放射状に一方的に拡大する様が描かれている。
 したがって、両者は、発射口の光の表現態様を異にしている。
C 以上の相違からすれば、上記両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
(c) 原告が上記両映像の共通点として主張する部分は、いずれも映像の一部を概括的に述べたものにすぎず、上記両映像の具体的表現を検討すれば、上記(b)のとおり、両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
 したがって、この点に関する原告の主張は失当である。
e1 別紙対比表4付近の映像の対比(待機映像との対比)
(a) 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、本件映画のうちの別紙A5−1の静止画に対応する動画映像部分(以下「A5−1映像」という。)と、被告パチンコ映像のうちの別紙A5−2の静止画に対応する動画映像部分(以下「A5−2映像」という。)である。
(b) 対比
@ A5−1映像においては、艦体の斜め前方の離れた視点から、艦体全体が描かれるとともに、青白色の光線が発射される状態が描かれているのに対して、A5−2映像においては、そもそも艦体が描かれておらず、画面に対峙する遊技者の視点から、画面中央に正面を向いた大きく描かれた発射口から、看者に向けて5本の白色光線が発射され、この5本の白色光線が絡まりながら、画面全体を白色光で満たす状態が描かれている。
 したがって、両映像は、映像の基本的な構成を異にしている。
A A5−1映像においては、艦体が光線を画面左側に向けて発射しているのを眺めているとの印象であるのに対し、A5−2映像においては、発射口に対峙する看者に向けて光線が発射され、画面全体が真っ白になっていくことにより、看者に命中したとの印象を与えるものであり、両映像は、映像から受ける印象を異にしている。
B A5−1映像においては、暖色系の黄白色の球体の中心部を突き破るように、寒色系の青白色の光線が、短い周期で強弱をつけて、繰り返し発射される状態が描かれており、寒暖や強弱という正反対の表現を組み合わせて表現がされているのに対して、A5−2映像においては、5本の白色光線が、相互に絡まりながら、画面全体を一方的に白色光で満たす状態が描かれており、一方的に発射される様が表現されている。
 したがって、両映像は、光線の表現態様を基本的に異にしている。
C A5−1映像においては、発射された光線が、攻撃対象物へ向かって一直線に進み、対象物に命中した状態が描かれており、対象物を攻撃する武器として描かれているのに対して、A5−2映像においては、大ヤマト砲の発射は、原作者名等を表示する前段階として、画面を白色光で満たす(ホワイトアウトさせる)ための画面切り換え手段として描かれている。
 したがって、両者は、映像における光線の役割、位置付けを異にしている。
D 以上の相違からすれば、上記両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
(c)@ 原告が上記両映像の共通点として主張する部分は、いずれも概括的事項であるにすぎず、上記両映像の具体的表現を検討すれば、上記(b)のとおり、両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
 この点に関する原告の主張は失当である。
A 原告が指摘する上記両映像の共通点は、先行する漫画、映画、アニメーション作品において、ごく一般的に表現されていたものにすぎず、被侵害映像と被告映像を対比するに当たって、格別重要な部分であるとはいえない。
 すなわち、暗い背景の中で輝度の高い光線が発射される様が描かれていること、及びこの光線が炎状に描かれていることについては、乙第28号証、乙第36号証の1、乙第36号証の5、乙第57号証の1(5ないし7頁、12ないし17頁)、乙第59号証に、光線が、次第に画面の大部分を占めるように拡大していくように描かれていることについては、乙第57号証の2(4、5頁)に、それぞれ一般的に表現されていた。
e2 別紙対比表4付近の映像の対比(リーチ映像との対比)
(a) 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、A5−1映像と、被告パチンコ映像のうちの別紙A5−3の静止画に対応する動画映像部分(以下「A5−3映像」という。)である。
(b) 対比
@ A5−1映像においては、艦体全体を描き、青白色の光線が艦首部の黄色円の光の固まりを打ち破って、黄色円の光の固まりと直交する方向に繰り返し短い周期で強弱をつけて発射される状態が描かれた後、発射された光線が攻撃対象物へ向かって一直線に進み、対象物に命中する状態が描かれており、光線により対象物を攻撃しているとの印象を受けるのに対して、A5−3映像においては、艦体は基本的には描かれておらず、画面のほぼ全体に5本の相互に絡まった光線の束が、画面斜め方向に流れる状態が描かれた後、画面のほぼ全体に拡がった光線の束から、順次図柄が生み出されてくる状態が描かれており、光線により図柄が生み出されてくるとの印象を受ける。
 したがって、両映像は、映像の基本的構成が異なり、このため、映像から受ける印象を異にしている。
A A5−1映像においては、収縮した黄白色の光の固まりを、青白色の光線が突き破った上で、繰り返し短い周期で、強弱をつけて発射される状態が描かれており、一旦ON 状態(光の固まりの形成、発射後の強の状態)になったものが、再びOFF 状態(光の固まりが突き破られる、発射後の弱の状態)になることが表現されているのに対して、A5−3映像においては、放射状に拡大した5本の太い黄白色の光線が相互に絡まって、更に太い光線の束となって、うねりながら発射し続けられることが描かれており、一旦ON 状態となったものは、その後にOFF 状態となることなく表現されている。
 また、A5−1映像においては、光の固まりを暖色系の黄白色、突き破って発射される光線を寒色系の青白色とし、光の寒暖のコントラストを強調して描かれているのに対して、A5−3映像においては、光線は全て黄白色で統一されて描かれている。
 したがって、両映像は、光線の表現態様を基本的に異にしている。
B A5−1映像においては、発射された光線が、攻撃対象物へ向かって一直線に進み、対象物に命中した状態が描かれており、対象物を攻撃する武器として描かれているのに対して、A5−3映像においては、画面全体に拡がった光線の中から順次図柄が生み出されてくる状態が描かれており、光線は、対象物を攻撃する武器としてではなく、パチンコ機における大当りを決定するための図柄を表示する背景領域を形成するためのものとして描かれている。
 したがって、両映像は、映像における光線の役割及び位置付けを異にしている。
C 以上の相違からすれば、上記両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
(c) 原告が上記両映像の共通点として主張する部分は、いずれも概括的事項であるにすぎず、上記両映像の具体的表現を検討すれば、上記(b)のとおり、両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
 この点に関する原告の主張は失当である。
(イ) 別紙対比表13付近の映像の対比
a 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、本件映画のうちの別紙A6−1の静止画に対応する動画映像部分(以下「A6−1映像」という。本件映画対比表13部分と同一。)と、被告パチンコ映像のうちの別紙A6−2の静止画に対応する動画映像部分(以下「A6−2映像」という。)である。
b 対比
(a) A6−1映像においては、主砲の砲身の先端部分のみが、発射口を強調した態様で、画面下半分に薄暗く描かれているところ、各砲身が、画面中央奥に薄暗く描かれた艦橋の前方を横切りながら、上方に大きく立ち上がり、左側に3本、右側に3本の各砲身の一部が、左右対称かつ画面全体にわたって配置されるように移動していく様が描かれている。これに対して、A6−2映像においては、画面右奥に艦橋全体が明るく描かれ、その左側に、砲身のみならず砲台を含む1基の砲塔全体が、光のコントラストを強調して画面中央に描かれており、この砲身が艦橋を横切ることなく、わずかに上方に立ち上がるように移動する様が描かれている。
 したがって、両映像は、映像の基本的な構成を異にしている。
(b) A6−1映像においては、全体として光を強調することなく、同系色で薄暗く目立たない態様で描かれているとの印象を受けるのに対し、A6−2映像においては、全体として光のコントラストを強調した態様で描かれているとの印象を受ける。
 したがって、両映像は、映像から受ける印象を基本的に異にしている。
(c) A6−1映像においては、2基の主砲が、砲身全体ではなく、一部のみが描かれており、艦橋を挟んでほぼ左右均等に薄暗く描かれているのに対して、A6−2映像においては、砲塔、砲身を含め、1基の主砲全体を画面中央に大きく描き、その後方にもう1基の主砲を小さく描くことで、前方の主砲をより強調しており、また、光を受けている部分とそうでない部分とで光の明暗のコントラストを強調して描き分けている。
 また、A6−1映像においては、最初は、2基の主砲の各砲身の大きさはばらばらであったが、砲身が艦橋前方を横切って大きく上方に移動することにより、ほぼ同程度の大きさに描かれ、2基の主砲が、艦橋を挟んでほぼ左右対称な位置に移動し、画面全体に配置される状態が描かれているのに対して、A6−2映像においては、画面中央に描かれた1基の主砲の砲身が、若干上方に移動する様子が描かれているにすぎない。
 さらに、A6−1映像においては、艦体正面から艦橋と砲身の一部のみが描かれているため、艦橋と主砲との距離感を認識できないのに対して、A6−2映像においては、艦体略左斜め前方から、主砲の後方に艦橋が描かれるとともに、主砲と艦橋との間の甲板上の物体が描かれているため、艦橋と主砲との距離感を認識できる表現となっている。
 したがって、両映像は、主砲及び艦橋の表現態様を基本的に異にしている。
(d) 以上の相違からすれば、上記両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
c(a) 原告が上記両映像の共通点として主張する部分は、各砲塔に3門ずつの砲身が描かれていること、それらが上方に立ち上がるという程度の概括的事項であるにすぎない。本件においては、これらが具体的にどのように表現されているのかが、本来検討すべき対象というべきであり、このような観点から両映像を対比した場合、両映像は、上記bのとおり、基本的に相違しているものであり、同一であるとも、類似しているともいえない。
(b) また、原告が指摘する上記両映像の共通点は、先行する映画、アニメーション作品中において、ごく一般的に表現されていたものにすぎず、被侵害映像と被告映像を対比するに当たって、格別重要な部分であるとはいえない。
 すなわち、全体として暗い画面中で、相対的に浮き出すように砲身が描かれていること、及び各砲塔に3門ずつの砲身が描かれていることについては、乙第27号証(2、3頁)、乙第30号証、乙第37号証(6頁)及び乙第61号証(3ないし5頁)に、砲身が上方に立ち上がる様を仰角で描いていることについては、乙第61号証(6ないし8頁)に、それぞれ、表現されていた。
(ウ) 別紙対比表14付近の映像の対比
a 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、本件映画のうちの別紙A7−1の静止画に対応する動画映像部分(以下「A7−1映像」という。本件映画対比表14部分と同一。)と、被告パチンコ映像のうちの別紙A7−2の静止画に対応する動画映像部分(以下「A7−2映像」という。)である。
b 対比
(a) A7−1映像においては、主砲の砲台部分及び砲身の根本の部分が艦首に隠れた状態にあり、砲身の一部分のみが、艦体正面からの視点で、艦首及び艦橋の一部とともに薄暗く描かれている。
 これに対して、A7−2映像においては、砲身の一部分のみではなく、砲身及び砲台を含む砲塔全体が画面中央に大きく、光り輝く艦橋及び甲板とともに、艦体の左側方からの視点で描かれている。
 また、A7−1映像においては、主砲から球形の光が広がり、その後に左右交互に、長い光線が左右横斜め上方に発射される状態が描かれている。
 これに対して、A7−2映像においては、光線が左右交互に発射されることはなく、前方中央の主砲から、上方に光線が発射される様が、発射口を強調して描かれている。
 したがって、両映像は、映像の基本的な構成を異にしている。
(b) A7−1映像においては、左右の主砲から交互に光線が発射される状態が描かれているのに対して、A7−2映像においては、前側の主砲から光線が発射される状態のみが描かれている。
 また、A7−1映像においては、発射に先立ち、砲身から暖色系の黄白色を帯びた球形の光が広がり、その後に3本の砲身からそれぞれ黄白色の光線が発射されるのに対して、A7−2映像においては、球形の光が形成されることはなく、画面の約半分を覆う巨大な光が炸裂すると同時に、3本の砲身から寒色系の青白色の光線が発射されている。
 さらに、A7−2映像においては、光線を発射する主砲に近接した視点から、画面手前に向かって発射される光線が描かれているため、A7−1映像とは異なり、看者の頭上を発射された光線が横切っていくかのような、臨場感溢れる印象を受ける映像となっている。
 したがって、両映像は、光線発射時の表現態様を異にしており、映像から受ける印象をも異にしている。
(c) A7−1映像においては、艦体外の艦首前方の位置から描かれているため、艦橋等に比較して、主砲が特に強調されているとの印象を受けないのに対して、A7−2映像においては、艦体略左斜め前方の主砲に近接した位置から描かれているため、艦橋等に比較して、画面中央の主砲が大きく強調されているとの印象を受ける。
 また、A7−1映像においては、砲身の発射口からは光線が発射され、看者の注意を惹くように描かれているが、艦橋は終始薄暗く、看者の注意を惹くようには描かれていない。これに対して、A7−2映像においては、発射される光線と同様に、艦橋の窓も光り輝いて描かれているため、艦橋も光線と同様に、看者の注意を惹くように描かれている。
 また、A7−1映像においては、艦体正面から艦橋と砲身のみが、両方ともに同じように薄暗く描かれているため、艦橋と主砲との距離感を認識することができない。
 これに対して、A7−2映像においては、艦体略左斜め前方から、主砲とともに、その後方に艦橋が描かれており、主砲と艦橋との間の甲板上の物体が描かれているため、艦橋と主砲との距離感を認識できる表現となっている。
 したがって、両者は、主砲及び艦橋の表現態様を異にしている。
(d) 以上の相違からすれば、上記両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
c(a) 原告が上記両映像の共通点として主張する部分は、暗い画面の中に3門の砲身が描かれており、砲身から青白色の輝度の高い光線が発射され、明るく照らされるという程度の概括的事項にすぎない。本件においては、これが具体的にどのように表現されているのかが、本来検討すべき対象というべきであり、このような観点から上記両映像を対比した場合には、上記bのとおり、両映像は、映像の基本的な構成、発射時の表現態様、主砲及び艦橋の表現態様において、基本的に異なっており、同一であるとも、類似しているともいえない。
(b) 原告が指摘する上記両映像の共通点は、先行する漫画、映画、アニメーション作品中において、ごく一般的に表現されていたものにすぎず、被侵害映像と被告映像を対比するに当たって、格別重要な部分であるとはいえない。
 すなわち、全体として暗い画面中で相対的に浮き出すように砲身が描かれていること、各砲塔に3門ずつの砲身が描かれていること、砲身が仰角で描かれていることについては、乙第27号証(2、3頁)、乙第30号証、乙第37号証(6頁)、乙第61号証(3ないし5頁)に、砲身から青白色の輝度の高い光線が3条発射される様が描かれていることについては、乙第36号証の1、乙第37号証(2、3頁)に、発射時に青白色の爆焔が描かれていること、発射時の青白色の光線によって、艦体本体が一瞬明るく照らされる様が描かれていることについては、乙第27号証(4頁)に、それぞれ、表現されていた。
(エ) 別紙対比表15付近の映像の対比
a 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、本件映画のうちの別紙A8−1の静止画に対応する動画映像部分(以下「A8−1映像」という。)と、被告パチンコ映像のうちの別紙A8−2の静止画に対応する動画映像部分(以下「A8−2映像」という。)である。
b 対比
(a) A8−1映像においては、艦体外の固定的な視点から、艦体上に設置された多数の薄暗く描かれた小砲塔から、爆焔等を伴うことなく、暖色系の地味な橙色系の細い光線を、順次淡々と発射している状態を描いているのに対して、A8−2映像においては、画面の下半分に小砲塔1基をコントラストを強調しつつ大きく描き、パチンコ機の遊技者側からの視点で、当該小砲塔が大きな爆焔を伴いながら、寒色系の青白色の太い光線を発射している状態が描かれている。
 したがって、両映像は、画面構成、光線発射の態様、色調、明暗及び視点のいずれの点においても、映像の基本的な構成を異にし、その結果として、A8−1映像からは、発射シーンが客観的に描かれているとの印象を受けるのに対して、A8−2映像からは、パチンコ機の遊技者自身が参加して、画面上に大きく描かれた小砲塔から光線を発射しているとの印象を受けるもので、映像から受ける印象をも異にしている。
(b) A8−1映像においては、艦体外の固定的な視点から、多数の小砲塔が同一方向にゆっくり旋回しながら(具体的には、光線発射の方向が、左上方(1コマ目)から真上(4コマ目)までの約45度旋回するのに、01:05:09:29 から01:05:11:22 までの53フレーム(約2秒)を要している。)、光線を発射している状態が描かれており、スピード感に乏しい映像となっているのに対して、A8−2映像においては、画面の下半部に大きく描かれた小砲塔が、高速で旋回しながら(具体的には、光線発射の方向が、左上方(1コマ目) から右上方( 4 コマ目) までの約9 0 度旋回するのに、01:04:43:25 から01:04:44:23 までの28フレーム(約1秒)しか要しておらず、これを約90度の半分の約45度を旋回する時間に換算すると、14フレーム(約0.5秒)しか要しないこととなり、光線発射の方向が、A8−1映像の4倍の速度で旋回している。)、光線をスピーディーに発射している状態が描かれており、スピード感あふれる映像となっている。
 また、発射された光線自体について見た場合にも、A8−1映像においては、画面のおおよそ縦幅分の4分の1相当を移動するのに、10フレーム(約0.3秒)を要しており、これを、画面の縦幅分を移動する場合に換算すると、40フレーム(約1.3秒)を要することになるのに対して、A8−2映像においては、画面の縦幅分を移動するのに10フレーム(約0.3秒)しか要していない。
 したがって、両映像は、映像のスピード感を異にしており、看者に与える印象が基本的に異なっている。
(c) 以上の相違からすれば、上記両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
c(a) 原告が上記両映像の共通点として主張する部分は、小砲がドーム型に描かれていること、ドーム型の小砲塔から明るい破線が発射されることという程度の概括的事項にすぎない。本件においては、これらが具体的にどのように表現されているのかが、本来検討すべき対象というべきであるが、このような観点から両映像を対比した場合には、上記bのとおり、両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
(b) また、原告が指摘する上記両映像の共通点は、先行する漫画、映画、アニメーション作品等において、ごく一般的に表現されていたものにすぎず、両映像を対比するに当たって、格別重要な部分であるとはいえない。
 すなわち、全体として暗い中で、小砲塔が暗灰色に薄暗く浮かび上がり、明るい映像として活発に動く破線が表現されていることについては、乙第34号証(2頁)、乙第35号証(2頁)、乙第36号証の2に、小砲塔がドーム型に描かれていることについても、ドーム型の小砲塔は、艦体においての一般的なものであった上、乙第29号証(4、5頁)、乙第31号証、乙第32号証、乙第33号証、乙第36号証の2に、小砲塔が回転すること、及びこれに伴って明るい破線が動く様が描かれることについては、乙第62号証(3ないし6頁)に表現されていた。
(オ) 別紙対比表16付近の映像の対比
a 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、本件映画のうちの別紙A9−1の静止画に対応する動画映像部分(以下「A9−1映像」という。)と、被告パチンコ映像のうちの別紙A9−2の静止画に対応する動画映像部分(以下「A9−2映像」という。)である。
b 対比
(a) A9−1映像においては、周囲に何も存在していない宇宙空間を、薄暗く描かれた艦体のみが航行している場面が、仰角気味の視点で描かれているのに対して、A9−2映像においては、太陽と艦体との間に存在する惑星の影に隠れていた艦体が、画面手前側に航行するに従い、惑星の影を脱して、太陽の光に照らされ、次第に明るく輝きながら姿を現す場面が、光のコントラストを強調して、俯角の視点で描かれている。
 したがって、両映像は、描かれている場面及び映像の基本的な構成を異にしている。
(b) A9−1映像においては、艦体の航行速度が、視点からの距離に関係なく、ほぼ等速で画面上を移動するように描かれているのに対して、A9−2映像においては、艦体の航行速度が、視点に近づくにつれて画面上をだんだん速くなるように描かれており、より現実に近い表現態様となっている。
 したがって、両映像は、航行シーンの速度表現の態様を基本的に異にしている。
(c) A9−1映像においては、艦体が画面手前に近づいて来たときに、艦体側面が注視点となるように描かれているのに対して、A9−2映像においては、艦体が画面手前に近づいて来たときに、艦橋が注視点となるように描かれている。
 したがって、両映像は、映像における注視点を異にしている。
(d) A9−1映像においては、艦体には翼、円盤等がなく、船の形状そのものとして描かれているのに対して、A9−2映像においては、艦体側面前方に巨大な円盤、艦体側面後方に巨大な翼が備わっており、飛行物体を想起させる形状として描かれている。
 また、A9−1映像においては、艦体全体が薄暗く描かれており、細部まで十分認識できないように描かれているのに対して、A9−2映像においては、艦橋等の自ら発光している部位のほか、太陽の光を受けて輝いて描かれており、細部まで十分認識できるように、コントラストを強調して描かれている。
 したがって、両映像は、艦体の構成及び表現態様を異にしている。
(e) 以上の相違からすれば、上記両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
c(a) 原告が上記両映像の共通点として主張する部分は、遠近法に従い艦首を大きく描いたこと、3層に分かれた艦橋を有する艦体が手前側に航行していることを描いていること等の概括的な事項にすぎない。本件においては、これが具体的にどのように表現されているのかを検討すべきであるが、このような観点から両映像を対比した場合には、両映像は、上記bのとおり、同一であるとも、類似しているともいえない。
(b) また、原告が指摘する両映像の共通点は、先行する漫画、アニメーション作品、プラモデルの外箱等において、ごく一般的に表現されていたものにすぎず、A9−1映像とA9−2映像とを対比するに当たって、格別重要な部分であるとはいえない。
 すなわち、艦体が画面右奥から左手前に画面を横切って左舷側面を見せながら航行する様が、艦体像が次第に拡大していく映像として描かれていることについては、乙第37号証(4ないし6頁)、乙第63号証(12ないし16頁)、乙第64号証に表現されており、艦体は発射口を有する艦首が極端に大きく描写され、艦首先端上端に円形切れこみを備えていることについては、実在する戦艦等において一般的に採用されていたことである上、乙第36号証の4、乙第38号証、乙第40号証の1、乙第61号証(2頁)、乙第39号証に表現されていた。また、艦体上の3層からなる主艦橋については、既存の戦艦大和を初めとして、数多くの艦体において、主艦橋が実際に採用されていた。また、艦体が左舷側面から若干仰角気味に描かれていることについては、乙第37号証(6頁)、乙第38号証、乙第39号証、乙第40号証の1に表現されており、艦体の上部が灰色系統に、下部が暗赤色系統に着色されて表現されていることについては、戦艦等において一般的に採用されていたことである上、先行するプラモデルの外箱のイラスト中においても、乙第58号証(58頁)、乙第65号証に表現されていた。
(カ) 別紙対比表17付近の映像の対比
a 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、本件映画のうちの別紙A10−1の静止画に対応する動画映像部分(以下「A10−1映像」という。)と、被告パチンコ映像のうちの別紙A10−2の静止画に対応する動画映像部分(以下「A10−2映像」という。)である。
b 対比
(a) A10−1映像においては、周囲に何も存在していない宇宙空間を艦体が航行している場面が描かれているのに対して、A10−2映像においては、艦体が地球に帰還する場面を描いており、画面奥の地球に向かう艦体を、最終的には、斜め後方ではなく、真後ろの視点から描くとともに、艦体全体を地球の逆光で暗く表現していくことで、地球に帰還する印象を強く与えている。
 したがって、両映像は、描かれている場面及び映像の基本的な構成並びにこれから受ける印象を異にしている。
(b) A10−1映像における艦体は、メインエンジンと補助エンジンとを艦尾にのみ備え、また相互に120度の角度で開いた3本の尾翼を備えているのに対して、A10−2映像における艦体は、主翼を備え、かつ、その主翼に2基の補助エンジンを備えているほか、相互に90度の角度で開いた4本の尾翼を備えている。
 また、A10−1映像においては、艦体を斜め後方から仰角の角度で艦底が見えるように描いているため、船が浮遊しているような印象を与えているのに対して、A10−2映像においては、巨大な主翼を有する艦体を、真後ろから俯角の角度で、しかも、発光しているエンジン部分を除き、艦体自体を暗黒のシルエットとして描いているため、飛行機が飛行しているような印象を与えている。
 したがって、両映像は、艦体の構成、表現態様及び描かれた艦体から受ける印象を異にしている。
(c) 以上の相違からすれば、上記両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
c(a) 原告は、上記両映像は、全体として暗い背景の中を艦体が画面奥に去っていく様を、艦体像が次第に縮小していく映像として描かれ、その際に艦体が右に旋回しながら航行する様が描かれていること、艦尾のロケットエンジンが輝いて描かれ、尾翼が放射状に描かれていることにおいて共通している旨主張する。
 しかし、上記の点は、概括的事項にすぎない。本件においては、これらが具体的にどのように表現されているのかを検討すべきであり、このような観点から両映像を対比すれば、両映像は、上記bのとおり、基本的に相違しており、相互に同一であるとも、類似しているともいえない。
(b) また、原告は、上記両映像とも、看者が受ける印象は、暗い宇宙を航行するヤマトの孤独と速力であり、この点も両映像で共通している旨主張する。
 しかし、A10−2映像においては、明るく輝く地球に向かってまっすぐ航行する艦体が描かれており、帰りを待つ地球に帰還するとの印象を看者が受けるものであり、A10−1映像から受ける印象とは全く異なるものであるから、原告の上記主張は理由がない。
(c) さらに、原告が指摘する上記両映像の共通点は、先行する漫画、映画等において一般的に表現されていたものにすぎず、A10−1映像とA10−2映像とを対比するに当たって、格別重要な部分であるとはいえない。
 すなわち、全体として暗い背景の中を、艦体が画面奥に去っていく様を、艦体像が次第に縮小していく映像として描き、その際に艦体が右に旋回しながら航行する様が描かれていることについては、乙第57号証の1(18ないし21頁)、乙第63号証(2ないし11頁)、乙第66号証に、艦尾のロケットエンジンが輝いて描かれていること、尾翼が放射状に描かれていることについては、乙第36号証の3、乙第43号証、乙第44号証、乙第58号証(90頁)に、それぞれ、表現されていた。
(キ) 別紙対比表18の映像の対比
a 対比映像
 以下の対比の主張の対象は、本件映画対比表18部分と被告映像対比表18部分である。
b 対比
(a) 本件映画対比表18部分は、全体的構図で描かれているのに対して、被告映像対比表18部分は、糸巻き型の全体的構図で描かれている。
 したがって、両映像は、基本的な構図を異にしている。
(b) 本件映画対比表18部分においては、上方パネル、格子を有する窓及び床のすべてが、全体的に暗い中に描かれており、また、それぞれの境界を明確に区切って描かれていることから、閉鎖的な室内にいるような印象を受けるのに対して、被告映像対比表18部分においては、上方パネル、前方パネル及び床の全てが、青く発光して描かれており、また、それぞれの境界を明確に区切ることなく一体的に描かれていることから(前方パネルに格子がないのも区切りなく表現するためである。)、全体として広がりのある空間の印象を受ける。
 したがって、上記両映像は、上方パネル、前方パネル及び床の表現態様において異なっており、全体から受ける印象を異にしている。
(c) 本件映画対比表18部分における上方パネルは、床に対して大きく傾斜するように描かれているのに対して、被告映像対比表18部分における上方パネルは、天井と一体となり、かつ、床と平行に近い面として描かれており、両映像は、上方パネルの表現態様を異にしている。
(d) 以上の相違からすれば、上記両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
c(a) 原告は、基本的構図は全体として遠近法を強調したX 型であって全体として広がりのある空間の印象を与えること、上方大型パネルは碁盤目を有し物体を映し出して描かれていること、及び床上手前に艦長席、床前方にその他の者の席が置かれ、その中間の床中央部に1個の装置が配置され、これを挟んで2席が置かれていることにおいて共通している旨主張する。
 しかし、本件映画対比表18部分における構図は、X型とはいい難いものであり、他方で被告映像対比表18部分における構図は、本件映画対比表18部分の構図とも、X型の構図とも異なる糸巻き型の構図であり、両映像は、基本的な構図を異にしている。
 また、両映像は、全体的な色調においても極めて異なっており、これから受ける印象も異にしている。
 また、被告映像対比表18部分においては、上方パネルは碁盤目を有していない。
 したがって、原告の上記主張は失当である。
(b) また、原告が指摘する上記両映像の共通点は、先行する映画、アニメーション作品(乙35(3頁)、乙57の4(2、3頁)、乙62(2頁))中において、一般的に表現されていたものにすぎず、両映像を対比するに当たって、格別重要な事項であるとはいえない。
(ク) 別紙対比表19・20の映像の対比
a 対比映像
 以下の対比の主張の対象は、本件映画対比表19・20部分と被告映像対比表19・20部分である。
b 対比
(a) 本件映画対比表19・20部分における艦長は、垂れ下がった帽子、顔面全体にわたり一体的かつ丸みを帯びた輪郭で生えた真っ白な鬚、襟に張りがない服装をしており、このことから、おおらかな印象を与えるとともに、襟が大きく開いており、顔全体がどの角度からでも見えることから、開放的な印象を与え、全体として慈父のような人物として描かれている。
 これに対して、被告映像対比表19・20部分における艦長は、上部が大きく張りを持って膨らんだ帽子、襟に張りを持った服装をしており、このことから神経質な印象を与えており、これとともに、口髭と顎鬚に分離したギザギザした輪郭をもったくすんだ灰色の鬚、大きな襟がほぼ目の高さまで覆いかぶさり、ほぼ正面からしか顔をみることができない服装をしていることから、閉鎖的で近寄り難い人物として描かれている。
 したがって、両映像は、人物に関する印象を基本的に異にしており、上記両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
(b) 本件映画対比表19・20部分(第3話)においては、艦長は、両腕を後ろで組み、明るい色調の壁を背にした状態で起立しており、和やかに語り掛けているとの印象を受けるのに対して、被告映像対比表19・20部分(大当り映像)においては、手を握りしめ体の横に下げた状態で、口を開くことなく佇んでいる様が描かれており、緊迫した状況を静かに見守っているとの印象を受ける。
 また、本件映画対比表19・20部分(第11話)においては、身を乗り出し、口を大きく開けて話している様が描かれており、大声で作戦を指示しているとの印象を受けるのに対して、被告映像対比表19・20部分(待機映像)においては、艦長及びその後方に描かれた参謀ともに、口を開くことも、身動きすることもなく佇んでいる様が描かれており、戦況を静かに見守っているとの印象を受ける。
 したがって、両映像は、映像から受ける印象を基本的に異にしている。
(c) 以上の相違からすれば、上記両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
c(a) 原告は、上記両映像は、金色の徽章と顎紐のついた白色の軍帽を目深に被り、顔面一杯に鬚を蓄え、赤色の大きな襟、左胸の碇のマーク及び両肩の肩章を有するユニフォームを着用し、白色のスカーフで首を覆った熟年男性であることにおいて共通している旨主張するが、上記両映像では、映像から受ける人物の印象が基本的に異なり、両者を同一であると決めつけることはできない。
(b) また、原告が指摘する上記両映像の共通点は、先行するアニメーション作品中(乙45)において、一般的に表現されていたものにすぎず、本件映画対比表19・20部分と被告映像対比表19・20部分とを対比するに当たって、格別重要であるとはいえない。
(ケ) 別紙対比表21の映像の対比
a 対比映像
 以下の対比の主張の対象は、本件映画対比表21部分と被告映像対比表21部分である。
b 対比
 本件映画対比表21部分における医師と被告映像対比表21部分における医師とでは、顔の輪郭、眉の形状、鼻の形状、口の形状、掛けている眼鏡の形状、眼鏡と目との位置関係、服装が異なっており、全く別人との印象を受ける。
 また、本件映画対比表21部分においては、書斎風の部屋で酒を飲んでいる様が描かれているのに対して、被告映像対比表21部分においては、機械室で佇んでいる様が描かれている。
 したがって、上記両映像は、描かれている人物及び場面を基本的に異にしており、両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
c 原告は、上記両映像が同一であることの根拠の一つとして、両映像は、左右の違いはあるにせよ、一方の腕を上げる動作が描かれている点で共通している点を指摘しているが、本件映画対比表21部分においては、酒を飲む動作をしているのに対して、被告映像対比表21部分においては、挨拶として左腕を上げているものであり、両映像は全く異なっている。
(コ) 別紙対比表22・23付近の映像の対比
a 対比映像
 以下の対比の主張の前提としている各映像は、本件映画のうちの別紙A11−1の静止画に対応する動画映像部分(以下「A11−1映像」という。本件映画対比表22・23部分と同一。)と、被告パチンコ映像のうちの別紙A11−2の静止画に対応する動画映像部分(以下「A11−2映像」という。)である。
b 対比
(a) A11−1映像においてのロボットは、頭部や胴体にアナログ計器を有し、背面と肘部分とがホース様部材で接続され、アナログ的で現代のロボットとの印象を受ける。
 これに対して、A11−2映像においてのロボットは、アナログ計器を有することもなければ、各部がホース様部材で接続されていることもなく、更には下半身に人間の足状のものを有していないため、常に浮遊しているような印象や、未来的なロボットであるとの印象を受ける。
 したがって、両映像は、ロボットの基本的な構成及び印象を異にしている。
(b) A11−1映像においては、頭部が胴体よりも幅狭かつ縦長であり、頭頂部が鶏冠状の3つの部分で分断され、その左右部分は斜面状にガラスで覆われるとともに、正面中央部に3つのアナログ計器が縦に配置され、下部左右端にアンテナ状のものが設けられている。
 これに対して、A11−2映像においては、頭部が胴体と同幅であり、頭頂部に小さな帽子状の突起物が形成され、該突起物の左右に眼球状のものが設けられ、その下部に鼻様のものが設けられており、頭頂部左右部分のガラス、アナログ計器、アンテナ状のものは設けられていない。
 したがって、両映像は、頭部の形状及び構成を基本的に異にしている。
(c) A11−1映像においては、下半身が全体として人間の下半身状であり、人間同様に2本の足状のものが設けられ、地面を歩くというような印象を受ける。
 これに対して、A11−2映像においては、下半身が、人間の下半身状ではなく円錐状であり、人間の足状のものが設けられておらず、常に浮遊しているような印象を受ける。
 したがって、両映像は、下半身の形状、構成及び印象を異にしている。
(d) A11−1映像においては、当初隙間なく接合されていた頭部、胴体及び下半身が、それまでの接合状態が解除されて完全に分離し、頭部及び胴体がそれぞれ独立した物体として、別々の方向へ飛んでいく状態が描かれているのに対して、A11−2映像においては、頭部、胴体及び下半身の間には常時隙間が存在し、この隙間の量が変化することにより、身をよじる状態が描かれている。
 このため、A11−1映像においては、頭部、胴体及び下半身が完全に分離し、頭部及び胴体が、全く別個の物体を形成しているとの印象を受ける。これに対して、A11−2映像においては、頭部、胴体及び下半身の間の隙間の量は変化するものの、頭部、胴体及び下半身が完全分離することはなく、不即不離の関係を保ちつつ、1個のロボットを形成しているとの印象を受ける。
 したがって、両映像は、頭部、胴体及び下半身が分離する際の表現態様及び映像から受ける印象を異にしている。
(e) 以上の相違からすれば、上記両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
c(a) 原告が上記両映像の共通点として主張する部分は、頭部が半球形であり目が離れていること、並びに、寸胴の胴体に手がつき、頭部、胴部及び下半身が分離するという程度の事項にすぎない。本件においては、これらが具体的にどのように表現されているのかが、本来検討すべき対象というべきであるが、このような観点から両映像を対比した場合には、両映像は、前記bのとおり、基本的に相違しており、同一であるとも、類似しているともいえない。
(b) また、原告が上記両映像の共通点として指摘する、寸同の胴体に手足がついていることや、ロボットの頭、胴及び下半身が分離することは、いずれもアイデアにすぎず、それ自体ではA11−1映像の表現上の特徴とはいえない。
(c) さらに、寸同の胴体に手足がついているロボットは、先行作品中にも登場している一般的なものである(乙34)。頭部、胴部及び下半身が分離するロボットも、先行作品中に登場する一般的なものである(乙46)。
イ 被告パチスロ映像との対比
(ア) 別紙対比表28の映像の対比
a 対比映像
 以下の対比の主張の対象は、本件映画対比表28部分と被告映像対比表28部分である。
b 対比
(a) 本件映画対比表28部分においては、画面下部に地面が、その上部に青空が描かれており、艦底が地面に接するように表現されていることにより、艦体が地上に停泊している場面が描かれている。
 これに対して、被告映像対比表28部分においては、多数の星が輝く暗青色の宇宙空間に、画面左奥に星雲、画面中央手前に艦体がそれぞれ描かれているとともに、惑星が左へ移動することにより、艦体が右方向へ移動している様が表現され、艦体が宇宙空間を航行している場面が描かれている。
 したがって、両映像は描かれている場面及び映像の基本的な構成を異にしている。
(b) 本件映画対比表28部分においては、艦体略側方の艦体側面と同じ高さの視点から描かれているため、極端に大きく描かれた艦首部分を除き、艦体が奥行きをほとんど感じさせない略長方形状に表現され、静的な印象(停泊している印象)を与えている。
 これに対して、被告映像対比表28部分においては、艦首斜め前方の視点から仰角の角度で遠近法に忠実に描かれているため、艦体が奥行きを強く感じさせる三角形状に表現され、動的な印象(高速で航行している印象)を与えている。
 したがって、両映像は、艦体の表現態様及び映像から受ける印象を基本的に異にしている。
(c) 以上の相違からすれば、上記両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
c(a) 原告が上記両映像の共通点として主張する部分は、いずれも概括的事項にすぎず、両映像の対比に当たっては、これらが具体的にどのように表現されているのかを検討すべきであり、このような観点から対比した場合には、両映像は、上記bのとおり、基本的に相違しており、同一であるとも、類似しているともいえない。
(b) また、原告は、上記両映像とも、映像的には、画面の中心は明らかに艦体自体であり、その艦体の表現態様が同一である以上、侵害映像は複製物であり、背景はあくまでも副次的な付加物にすぎない旨主張するが、同主張は、およそ画面上に艦体が描かれてさえいれば複製物であるというものであり、失当である。
(c) 原告が指摘する上記両映像の共通点は、先行する漫画、映画、アニメーション作品、プラモデルの外箱等において、ごく一般的に表現されていたものにすぎず、両映像を対比するに当たって、格別重要な部分であるとはいえない。
 すなわち、喫水下のバルジを大きくデフォルメして描いていることについては、実在の戦艦等において一般的に採用されていたことに加え、乙第40号証の1、乙第42号証の1、乙第61号証(9頁)に、表現されていた。
 また、艦首を画面右肩に向け、艦尾を画面左下に向けた構図で、艦体が画面の大部分を占める様に描かれていることについては、乙第42号証の1に表現されていた。
(イ) 別紙対比表31の映像の対比
a 対比映像
 以下の対比の主張の対象は、本件映画対比表31部分と被告映像対比表31部分である。
b 対比
(a) 本件映画対比表31部分においては、左舷斜め後方の視点から、艦首、2基の主砲が天体の一部に重なる態様で描かれているのに対して、被告映像対比表31部分においては、画面中央手前に艦首及び主砲が、岩石と重なることなく描かれている。
 また、本件映画対比表31部分においては、暗青色の背景の中に、天体が暗灰色に描かれるとともに、艦体が灰青色に暗く描かれ、全体的に暗い色調で目立たない態様にて描かれているのに対して、被告映像対比表31部分においては、艦体がメタリック調かつ輝いて描かれているとともに、多数の輝く星が描かれており、全体的に明るい色調でメリハリのある態様にて表現されており、全体の色調が異なっている。
 また、本件映画対比表31部分においては、艦体が主砲の照準を天体に合わせる状態が客観的に描かれているとの印象を受けるのに対して、被告映像対比表31部分では、パチスロ機の遊技者の視点で、画面中央奥に描かれた天体に対して、遊技者自身が主砲を発射しているとの印象を受ける。
 また、本件映画対比表31部分においては、艦首が天体に大きく重なるように描かれており、艦体と天体とがかなり接近しているとの印象を受けるのに対して、被告映像対比表31部分においては、艦首が岩石と重なることなく描かれており、艦体と岩石とが離れているとの印象を受ける。
 以上より、両映像は、映像の基本的な構成及び映像から受ける印象を異にしている。
(b) 本件映画対比表31部分においては、3基の砲塔が、砲身のみならず砲台をも含めて描かれているのに対して、被告映像対比表31部分においては、1基の砲塔が、砲台は描かれずに砲身のみが大きく描かれており、その根本の部分には、本件映画対比表31部分の砲身には存在していない放熱カバーを備えている。
 また、本件映画対比表31部分においての天体は、下半分が滑らかな半球形であり、かつ上部に多数の構造物が描かれており、天体都市との印象を受けるのに対して、被告映像対比表31部分においての岩石は、下半分が大きな凹凸を伴った円錐形であり、かつ、上部には構造物も描かれておらず、巨大な岩石との印象を受ける。
 したがって、両映像は、砲身の構成、攻撃対象物の形状及び印象を異にしている。
(c) 本件映画対比表31部分は、予め展開の決まった映像であり、しかも、主砲が発射される場面は描かれていないのに対して、被告映像対比表31部分は、予め展開の決まった映像ではなく、3つの停止ボタンの操作順序や操作間隔により、光線を発射する砲身の順序や発射間隔が変化し、遊技者の操作手順により、異なる映像が展開される。
 したがって、両映像は、映像展開を異にしている。
(d) 以上の相違からすれば、上記両映像は、同一であるとも、類似しているともいえない。
c(a) 原告が上記両映像の共通点として主張する部分は、艦体を灰色系統の色彩で表現していること、半球形の天体に対して艦体を俯瞰的に描いており、天体に照準を定めていること等という程度の概括的事項であるにすぎない。本件においては、これらが具体的にどのように表現されているのかを検討すべきであり、このような観点から両映像を対比した場合には、両映像は、上記bのとおり、基本的に相違しているから、同一であるとも、類似しているともいえない。
 なお、原告は、上記両映像が、灰色系統の色彩で表現されていること、及び上部に構築物が描かれている半球形の天体が画面上部に描かれていることにおいても共通していると主張する。しかし、被告映像対比表31部分においては、艦体はメタリック調で、かつ、輝いて描かれており、背景とのコントラストを強調して描かれている。また、被告映像対比表31部分における攻撃対象は、上部に構築物が存在しておらず、半球形でもない。したがって、原告の上記主張は、被告映像対比表31部分を正確に捉えた上でのものではなく、失当である。
(b) 原告が指摘する上記両映像の共通点は、先行する漫画、映画、アニメーション作品等において、ごく一般的に表現されていたものにすぎず、両映像を対比するに当たって、格別重要な部分であるとはいえない。
 すなわち、画面上部に半球形の天体を、下部に艦体前半部を俯瞰的に描いていることについては、乙第57号証の4(4頁)、乙第58号証(55頁)に、主砲を3門描き、この主砲が天体に照準を定める様が描かれていることについては、乙第27号証(4頁)に、それぞれ表現されていた。
(ウ) 別紙対比表5ないし8の映像の対比
 前記ア(ア)における主張と同じ理由により、複製権侵害及び翻案権侵害は成立しない。
(エ) 別紙対比表24の映像の対比
 前記ア(イ)における主張と同じ理由により、複製権侵害及び翻案権侵害は成立しない。
(オ) 別紙対比表25の映像の対比
 前記ア(ウ)における主張と同じ理由により、複製権侵害及び翻案権侵害は成立しない。
(カ) 別紙対比表26の映像の対比
 前記ア(エ)における主張と同じ理由により、複製権侵害及び翻案権侵害は成立しない。
(キ) 別紙対比表27の映像の対比
 前記ア(オ)における主張と同じ理由により、複製権侵害及び翻案権侵害は成立しない。
(ク) 別紙対比表29の映像の対比
 前記ア(カ)における主張と同じ理由により、複製権侵害及び翻案権侵害は成立しない。
(ケ) 別紙対比表30の映像の対比
 前記ア(キ)における主張と同じ理由により、複製権侵害及び翻案権侵害は成立しない。
(コ) 別紙対比表32の映像の対比
 前記ア(ク)における主張と同じ理由により、複製権侵害及び翻案権侵害は成立しない。
(サ) 別紙対比表33の映像の対比
 前記ア(ケ)における主張と同じ理由により、複製権侵害及び翻案権侵害は成立しない。
ウ 被告プレステゲーム映像との対比
(ア) 別紙対比表34の映像の対比
 前記ア(イ)における主張と同じ理由により、複製権侵害及び翻案権侵害は成立しない。
(イ) 別紙対比表35の映像の対比
 前記ア(ウ)における主張と同じ理由により、複製権侵害及び翻案権侵害は成立しない。
(ウ) 別紙対比表36の映像の対比
 前記ア(エ)における主張と同じ理由により、複製権侵害及び翻案権侵害は成立しない。
(エ) 別紙対比表37の映像の対比
 前記ア(オ)における主張と同じ理由により、複製権侵害及び翻案権侵害は成立しない。
(オ) 別紙対比表38の映像の対比
 前記ア(カ)における主張と同じ理由により、複製権侵害及び翻案権侵害は成立しない。
(カ) 別紙対比表39の映像の対比
 前記ア(キ)における主張と同じ理由により、複製権侵害及び翻案権侵害は成立しない。
(キ) 別紙対比表40・41の映像の対比
 前記ア(ク)における主張と同じ理由により、複製権侵害及び翻案権侵害は成立しない。
(ク) 別紙対比表42の映像の対比
 前記ア(ケ)における主張と同じ理由により、複製権侵害及び翻案権侵害は成立しない。
(ケ) 別紙対比表43・44の映像の対比
 前記ア(コ)における主張と同じ理由により、複製権侵害及び翻案権侵害は成立しない。
(被告アニメーションソフト)
 以下で主張するほか、3被告の主張を援用する。
ア 本件映画の波動砲発射場面について
(ア) 艦首の形状の映像
 本件映画のうち、艦首に発射口を設けること自体はアイデアである。銃砲の発射口の表現として、発射口正面図が楕円形となっていることと、発射口内部に線条を有していることは、ありふれた表現である。したがって、本件著作物における艦首の発射口には、それ以上の具体的形状の表現においてのみ、創作性が認められ得るにとどまる。
 そこで、具体的な表現について対比するに、被告映像の大ヤマト砲発射場面の艦首の映像には、船体の艦首発射口の奥に「大」の字をかたどったフレームがあるのに対して、本件映画の波動砲発射場面の艦首の映像にはそれがない点で両映像は異なり、また、両映像には、具体的形状の表現において特徴的な類似点は存在しない。
 したがって、両映像間に同一性、類似性はない。
(イ) 発射に先立ち、艦首の発射口に光の粒子が吸い込まれる映像
 波動砲は、波動力学を参考として補助参加人P1が考案した宇宙波動理論というアイデアに基づき、その原型は、1964年の補助参加人P1の作品「潜水艦スーパー99」に「L 動力」として登場する(丙16)。宇宙空間において、タキオン粒子を集めてエネルギー源とする点も、宇宙波動砲理論に基づくアイデアにすぎない。
 このように、艦首の発射口に光の粒子が吸い込まれる表現を用いること自体は、補助参加人P1が考案した宇宙波動理論のアイデアそのものであるから、本件映画において、艦首の発射口に光の粒子が吸い込まれる映像は、それ以上の具体的表現においてのみ、創作性が認められ得るにとどまる。
 そこで、具体的な表現について対比するに、光の粒子が吸い込まれる映像は、被告映像では、画面左右方向一杯に広がった宇宙空間に存在する白金色のタキオン粒子が、白金色の発射口の中心部に向かって渦巻き状に吸い込まれて集められる映像になっているのに対し、本件映画では、オレンジ色に発射口内のみに存在する黄色の光の粒子が艦首前方から後方へと移動していく映像となっている。
 したがって、両映像間に同一性、類似性はない。
(ウ) 発射に先立ち、金色のシリンダー様の物がスライドして接続する映像
 波動エンジンの原型は、既に、「潜水艦スーパー99」(丙16)に登場し、発射時にシリンダー様のものがスライドして接続するという点は、アイデアにすぎない。また、発射に先立ち金色のシリンダー様の物がスライドして接続する動画映像における具体的表現も、大砲に見られる構造及び砲弾発射の際における動きの応用であり、創作性はない。したがって、本件映画のうち、発射に先立ち、金色のシリンダー様の物がスライドして接続する映像は、上記の点以上の具体的表現においてのみ、創作性が認められ得るにとどまる。
 そこで、具体的な表現について対比するに、被告映像においては、拳銃の回転弾倉を想起させる5本の「ストライカーボルト」が存在し、その中心から光線状のものが発射され、次にストライカーボルトが右側から左側へ回転しつつ移動し、ぶつかり合うような形となり、ぶつかる瞬間発光する映像表現となっているのに対し、本件映画においては、大砲のピストンを想起させる一本のシリンダー様のものの一方が他方に挿入される映像表現となっている。
 したがって、両映像間に同一性、類似性はない。
(エ) 発射時に、艦首の発射口が金色に輝く映像
 本件映画のうち、波動砲の発射時に、艦首の発射口が金色に輝くことは、兵器の発射映像としてありふれたものであり、特段の創作性はないから、本件映画の上記部分の映像は、その具体的な表現においてのみ、創作性が認められる。
 そこで、具体的な表現について対比するに、被告映像においては、発射口から5つに分割されたプラズマ状の光線が回転しながら渦巻き状に絡まって1本の光線を形成して発射されるのに対して、本件映画においては、直線的に光線が発射されており、両映像間に同一性、類似性はない。
(オ) 発射後に黄白色を帯びた輝度の高い炎状の光線が放射される映像本件映画のうち、波動砲の発射後に黄白色を帯びた輝度の高い炎状の光線が放射される映像は、兵器の発射映像としてありふれたものであり、特段の創作性はないから、本件映画の上記部分の映像は、その具体的な表現においてのみ、創作性が認められる。
 そこで、具体的な表現について対比するに、被告映像では、5本の黄金色の光線が回転しながら絡まって発射されるのに対して、本件映画では、白色の光線が直線的に発射されるにすぎないから、両映像間に同一性、類似性はない。
イ 主砲発射場面について
 本件映画のうち、艦船が甲板上の3基の砲塔に各3門の砲身を備えていることは、甲板上に3基の砲塔が存在し、それぞれの砲塔に各3門の砲身が存在している戦艦大和の主砲を忠実に再現したにすぎないから、創作性はない。また、本件映画のうち、3門の砲身が各々の動きをするという点も戦艦大和の砲身の動きと同様であり、創作性はない。また、その動きを仰角で描いている点も、ありふれた表現である。
 また、本件映画のうち、主砲発射場面において、砲身から光線が発射されること自体はアイデアにすぎず、また、その具体的表現において、光線が白色を帯びた輝度の高いものであることは、ありふれた表現である。したがって、本件映画の主砲の発射場面において、砲身から白色を帯びた輝度の高い光線が発射される部分には、創作性はない。
 そこで、具体的表現について対比するに、被告映像の主砲発射場面は、一基の砲塔から画面前方斜め上向きに主砲が発射されるのに対して、本件映画の主砲発射場面は、2基の砲塔から、それぞれ斜め左上方向、斜め右上方向に向けて主砲が発射されており、両映像は、主砲発射の表現方法が異なり、同一性、類似性はない。
ウ パルスレーザー砲発射場面
 本件映画のパルスレーザー砲は、実在の戦艦大和の艦橋付近の対空機銃を再現したものであり、創作性はない。また、小砲塔から間欠的な破線状の光線が発射される映像についても、小砲塔(対空機銃)の発射場面をアニメーションで描く場合、間欠的な破線状にならざるを得ないのであるから、創作性はない。さらに、宇宙を舞台としている場合、それが、弾丸でなく光線であることもありふれた表現である。
 そこで、具体的表現について対比するに、被告映像のパルスレーザー砲発射場面は、白色のパルスが左から右へと移動し水平よりやや上部方向に発射され、かつ、パルスの軌道は、直線ではなく緩やかな放射状で下に下降し、さらに、パルス砲は、それぞれ別の動きをしているため、パルスが別々の方向に乱射されているように描かれているのに対し、本件映画のパルスレーザー砲発射場面は、パルスレーザー砲が横2列に並び、パルスの発射方向もすべて同一方向に向けられ、パルスレーザーの軌道も直線的である。また、本件映画のパルスレーザー砲発射場面は、パルスレーザー砲が斜め左上から上部に向けて移動しつつ発射される映像をパルスレーザー砲を正面から見た視点で描いているのに対し、被告映像のパルスレーザー砲発射場では、パルスレーザー砲側から見た視点でパルスレーザー砲発射シーンを描いている。
 したがって、両映像に同一性、類似性はない。
エ 本件映画艦体航行場面@部分(別紙対比表16)
(ア) 発射口を有する艦首を極端に大きく描写し、3層に分かれた主艦橋を有する船体が画面右奥から左手前に航行する様を左舷側から若干仰角気味に描いた部分本件映画の艦体の航行場面@部分において、発射口を有する艦首を極端に大きく描写している点は、美術における遠近法やデフォルメの技法を説明しているにすぎず、技法に創作性はない。また、艦長室、第一艦橋、第二艦橋と3層の主艦橋がある点についても、それぞれ、戦艦大和における主砲射撃指揮所、上部艦橋、下部艦橋に対応したものであり、創作性はない。さらに、船体が画面右奥から左手前に航行する様を左舷側面から若干仰角気味に描いた点についても、ありふれた構図の映像であり創作性はない。
 そこで、艦体航行場面@の具体的表現について対比するに、被告映像の艦体航行場面@では、艦首奥に「大」の文字をかたどったフレームがあり、船体側面前方に円盤が、また、艦橋下の船体側面から左右に伸びるハネがついているのに対し、本件映画の艦体航行場面@では、これがない。また、被告映像の艦体航行場面@においては、天体の影から戦艦が出現し、映像の視聴者自らが戦艦の正面から左側面上部に急接近し艦橋に迫る錯覚を起こす動画映像表現となっているのに対し、本件映画の艦体航行場面@においては、視聴者の視点は固定され、視聴者はそれを仰ぎ見るか正面に見る状態で、単に船体が画面右奥から左手前方向に向け通過する動画表現となっている。
 したがって、両映像の間に、同一性、類似性はない。
(イ) 艦尾にロケット噴射口様の形状を有するメインエンジン1基と補助エンジンがあり、放射状に尾翼を備えた艦体が画面奥に去っていく部分本件映画の艦体航行場面A部分のうち、メインエンジンが船尾に存在すること、メインエンジンが1基存在すること、メインエンジンの形状がロケット噴射口様の形状を有すること、補助エンジンの存在、艦体が尾翼を供えていること、艦体が画面奥に去っていく映像は、いずれも、ありふれた表現である。
 そこで、艦体航行場面Aの具体的表現について対比するに、被告映像の艦体航行場面Aでは、メインエンジン1基、メインエンジンの周囲に補助エンジン4基、主翼左右にそれぞれ1基ずつ合計2基、総計6基の補助エンジンがあるのに対して、本件映画の艦体航行場面Aでは、そのようなエンジンの表現とはなっていない。また、被告映像の艦体航行場面Aにおける戦艦の尾翼は、艦尾から斜め上方に伸びる2本の尾翼と斜下方に伸びる2本の尾翼との計4本からなるのに対して、本件映画の艦体航行場面Aでの尾翼は、艦尾から上方に向け垂直に伸びる1本の尾翼と、艦尾から斜め下方に伸びる2本の尾翼の計3本からなる。さらに、動画映像についても、被告映像の艦体航行場面Aでは、戦艦が右舷側面から現れ、画面中央の天体に向かって、画面中央に向けて航行し、徐々に船体を小さくする動画表現により、船体が遠ざかっていくことを表現しているのに対し、本件映画の艦体航行場面Aでは、「宇宙戦艦ヤマト」が、画面左から右又は右から左方向に向け視聴者の視点を基点としてカーブしつつ遠ざかっていく映像となっている。
 したがって、上記両映像の間に、同一性、類似性はない。
オ 艦橋内部の映像
 本件映画の艦橋内部の映像のうち、全体として遠近法を強調したX 型の構図を有している点については、美術の構図における技法の問題であり、創作性はない。また、天井前方に碁盤目の表示がある大型ビデオパネル(物体が映し出されている。)が設置され、床上手前に艦長席、床前方にその他の者の席が置かれ、その中間の床中央部に1個の装置が配置され、これを挟んで2席が置かれた点、艦橋奥の全体が見渡せる一段高いエリアに艦長席が設けられている点、艦橋における座席や装置の配置は、艦橋内部としてありふれた表現である。
 そこで、艦橋内部部分の具体的表現について対比するに、@被告映像における艦橋は、天井スクリーンの角度がよりフラットであるのに対して、本件映画の艦橋では、天井スクリーンの角度が急斜であること、A被告映像における艦橋は、前方窓に柱状のものは存在しないのに対して、本件映画の艦橋では、前方窓に4本の柱状のフレームが存在すること、B被告映像における艦橋中央装置の位置は、窓よりであり、その床面は中央奥の副長席(艦長席はその奥に存在する。)の床面と連続性を有し、通常の床上には位置しないのに対し、本件映画の艦橋では、中央装置が中心に位置し、通常の床面にはめ込まれ、当該床面と艦長席の床面とは連続性を有しないこと、C被告映像における艦橋は、中央装置横の座席が真横ではなく副長席より(後方)に存在するのに対して、本件映画の艦橋では、中央装置の真横に存在すること、被告映像の艦橋床面は、床自体が、光を発する一つの装置となっているのに対し、本件映画では、碁盤目のラインが入った通常の床であることからすると、上記両映像間に同一性、類似性はない。
(補助参加人ら)
 本件映画は本件原図柄の二次的著作物であり、二次的著作物の著作権は、二次的著作物において原著作物に新たに付与された創作的部分についてのみ及ぶことから、被告映像が本件映画の著作権を侵害しているというためには、被告映像と本件映画とを比較して創作的表現に類似部分があるというだけでは足りず、その類似部分から原著作物である本件原図柄が有していた創作的表現を捨象してもなお、創作的表現において類似性が認められなければならない。すなわち、映画の著作物に翻案され、又は複製されている小説、脚本、音楽等は、当該映画の著作物に吸収されることはなく、依然として当該映画の著作物とは別個独立の著作物として扱われるのである(16条本文前半)。
 この点、原告は、著作権法16条前段の規定の解釈として、同条は、あくまでも既存の著作物の著作者をクラシカルオーサーとして保護しようとするものであり、映画のために制作された著作物については、例外的に脚本、映画音楽についてのみ、その著作者をクラシカルオーサーとして保護することとしたものと主張するが、著作権法上、映画の著作物の原著作物を「脚本、映画音楽のみ」に限定するような文言はないこと、むしろ、「その映画の著作物において翻案され、又は複製された小説、脚本、音楽その他の著作物」という著作権法16条の規定の仕方からは、原著作物としての著作物の種類は限定されないと解釈する方が自然であることから、原告の上記主張は失当である。
 これを前提に、以下、被告映像と本件映画との類似性について検討する。
ア 被告映像のうち大ヤマトの映像について
 本件原図柄においては、現実の戦艦大和にはない、発射口を備えた艦首、艦尾にロケット噴射口様の形状を有するメインエンジン1基と補助エンジンがあり、放射状に尾翼を備えた艦体等の宇宙戦艦ヤマトの外観に関する特徴はすべて表現されており、被告映像が本件映画の複製物又は翻案物に該当するかを検討するに当たっては、本件原図柄の有していた艦体の外観に関する上記特徴を捨象しなければならない。そうすると、被告映像中の大ヤマト砲発射場面、主砲発射場面、パルスレーザー砲発射場面、艦体の航行場面の映像が、本件映画中の波動砲発射場面、主砲発射場面、パルスレーザー砲発射場面、艦体の航行場面の映像の複製物にも翻案物にも該当しないことは明らかである。
 なお、そもそも艦体に関する上記の特徴は、著作権法によっては保護されないアイデアの部類に属するものであるから、これらの特徴の類似をもって、創作的表現の部分が類似しているということはできない。
イ 被告映像のうち艦橋内部の映像について
 本件映画中の艦橋内部の映像のうち、原告が指摘している「全体として遠近法を強調したX型の構図を有し、天井前方に碁盤目の表示がある大型ビデオパネル、床上手前に艦長席、床前方にその他の者の席が置かれ、その中間の床中央部に1個の装置が配置され、これを挟んで2席が置かれている」との特徴は、すべて本件原図柄に表現されているから、本件映画の艦橋内部の映像と被告映像中の艦橋内部の映像とを対比する際は、本件原図柄が有していた上記特徴を捨象する必要がある。そうすると、上記両映像との間に何らの類似性もなく、被告映像の上記部分が本件映画の上記部分の複製物にも翻案物にも当たらないことは明らかである。
 なお、そもそも、原告が指摘する上記特徴は、著作権法によっては保護されないアイデアの部類に属するものであるから、これらの特徴の類似をもって、創作的表現の部分が類似しているということはできない。
ウ 被告映像のうちの登場人物、ロボットの映像について
 本件映画中の艦長、医師、ロボットの映像と、被告映像中の艦長、医師、ロボットの映像とを対比する際は、本件原図柄が有していた特徴を捨象する必要があるところ、そのようにして両映像を対比すると、両映像に類似点は全くない。
 なお、そもそも、原告が指摘する上記両映像の特徴は、著作権法によっては保護されないアイデアの部類に属するものであるから、これらの特徴の類似をもって、創作的表現の部分が類似しているということはできない。
(4) 被告アニメーションソフトに不法行為は成立するか(争点(4))について
(原告)
ア 被告アニメーションソフトは、平成14年4月ころ、「新宇宙戦艦大ヤマト」の標題の下に、本件パチンコゲーム機及び本件パチスロゲーム機の液晶画面上に上映される動画映像及び本件ビデオゲームソフトを用いてテレビモニター画面上に上映される動画映像の基となった、オズマ艦長、タネガシマ医師、ロボット(ティム)の画像を始め多くの主要登場人物の画像及び艦橋の画像、並びに本件パチスロゲーム機の液晶画面上に上映される動画映像の基となった、艦体を右舷前方から描いた画像及び攻撃対象となる天体の画像を作成し、また、同年6月ころ、「大銀河シリーズ大ヤマト零号」に名称を変更するとともに、上記画像の一部を修正し、被告パチンコゲーム機及び被告パチスロゲーム機の液晶画面上に上映される動画映像及び被告ゲームソフトを用いてテレビモニター画面上に上映される動画映像の基となった一連の艦体の画像(本件大ヤマト作品)を作成した。
 その後、被告アニメーションソフトは、3被告に対し、本件大ヤマト作品が宇宙戦艦ヤマトとは別異の作品であるなどとして、その使用を「許諾」するとともに、上記の画像及び画像データを3被告に交付して、3被告に被告映像を使用した被告製品を製作させ、本件映画についての原告の著作権侵害を惹起せしめた。
イ 被告アニメーションソフトは、上記アの行為を行うに当たって、本件映画の著作権者が原告であることを知悉し又は当然知り得る立場にあったから、被告映像が本件映画についての原告の著作権を侵害することについて、故意、少なくとも重過失があった。
ウ したがって、被告アニメーションソフトは、3被告とともに本件映画の著作権侵害の共同不法行為者としての責任を免れない。
(被告アニメーションソフト)
 争う。前記で主張したとおり、そもそも、3被告に本件映画の著作権侵害は成立しない。
(5) 原告は、被告製品について、本件映画の著作権の権利行使をすることができるか(争点(5))について
(3被告)
ア 丙4合意書4条2項の意味
(ア) 原告と補助参加人P1との間で、平成11年1月25日、丙4合意が締結されたが、丙4合意書4条2項は、「乙(原告)は、甲(補助参加人P1)がヤマト作品に関連する新作の企画を希望する場合、これに全面的に協力する。ただし、甲は、乙に対し事前に企画内容の詳細を通知し、説明する。」と定めており、同条項により、原告は、補助参加人P1が原告に対して、事前に企画内容を通知して、説明した場合には、補助参加人P1が作成する、旧ヤマト作品に関連する新作について、全面的に協力する義務を負っている。
(イ) これに対して、原告は、丙4合意書の4条2項は、原告と補助参加人P1との協力関係を一般的に定めたものにすぎないと主張する。
 しかし、同条項は、もともとの原案では、補助参加人P1が旧ヤマト作品に関連する新作を作成するに当たって、原告から「同意を得る必要がある。」と記載されていたものであって、単なる協力関係を一般的に定めたとか、精神的、営業政策的観点から作成された取り決めなどとはいえないものであった。ところが、上記条項中の「同意を得る必要がある。」の部分が、補助参加人P1からの要求により削除されて、「説明する。」と訂正され、旧ヤマト作品に関連する新作に関しては、原告に対する事前の説明を行った場合には原告の許諾を必要とするものではない旨改められた上、合意がされたものである。
 したがって、原告の上記主張は失当である。
(ウ) また、原告は、上記条項の「ヤマト作品に関連する新作」とは、宇宙戦艦ヤマトに関連性のある新作であって、本件映画の翻案物ではない、新たな作品を意味すると主張する。
 しかし、上記条項は、「ヤマト作品に関連する新作」と記載しており、この文言上、同部分にヤマト作品の一部複製物、翻案物、派生物等が含まれていると解するのが自然である。
 また、前記のとおり、もともと原告が用意した上記条項の原案のただし書きでは、「事前に通知し、その同意を得る必要がある。」とされていたが、同文言に対する補助参加人P1の強い反対により、最終的には「通知、説明する。」と変更されて合意されたところ、仮に「ヤマト作品に関連する新作」が、原告が主張するとおり、ヤマト作品の翻案物にも該当しない独立の著作物のみを内容としている場合には、本来的に、補助参加人P1が自由にこれを制作できるはずであるから、原告、補助参加人P1間で、上記条項の文言につき、上記のようなやり取りを行う必要は何らなかったことになる。
 したがって、原告の上記主張は失当である。
イ 丙4合意書4条2項が定めている協力義務は、原告が補助参加人P1に対して、補助参加人P1だけでなく、補助参加人P1から、直接、間接に利用許諾を得た第三者に対しても、権利行使をしないことを約している内容である。
 理由は以下のとおりである。
(ア) 原告が、丙4合意書4条2項により補助参加人P1に対して負う義務は、旧ヤマト作品の新作である本件大ヤマト作品に関する協力義務であるところ、同新作が完成した場合には、それが映像作品であることから、これを補助参加人P1自身が上映することよりも、第三者による映画館での上映や放送局を通じての放送が行われることが通常であり、また、第三者に対して、別途二次的利用が許諾されることも少なくないのであるから、補助参加人P1の新作は、完成後に、製作者以外の第三者によって様々な態様で利用されることが、当然のように予定されていた。
 そして、原告自身も、補助参加人P1の新作につき、第三者による上記多様な利用が予定されていることについて、当然に承知していたというべきである。
 そうすると、丙4合意書4条2項が定めている協力義務は、補助参加人P1に対する直接の協力を含んでいるだけでなく、新作完成後の第三者による上映、放送やDVD 映像作品としての販売、第三者に対する二次的利用の許諾に伴う第三者による各種製品の製造、販売等に対しても、著作権侵害等を理由とする権利行使や、その他の妨害、干渉を行わないことを、その内容として当然包含しているというべきである。
(イ) 原告が、補助参加人P1以外の者に対して、丙4合意書4条2項の制約は受けないとすると、何のために協力義務を約定したのかが不明となる。
(ウ) 丙4合意書4条2項ただし書は、「(原告の)同意を得る必要がある。」と記載されていた部分が、「(原告に)通知、説明する。」と変更されて合意されたのであるが、補助参加人P1以外の者が同条項の制約を受けないとすると、このように文言を変更した趣旨も、実質的に没却されてしまう。
(エ) 補助参加人P1は、新作を自由に制作できる立場と新作の完成後の自由な利用を確保するために丙4合意を締結したものであるところ、補助参加人P1以外の者が丙4合意4条2項の制約を受けないとすると、補助参加人P1において自由に新作を制作等できるとの立場の確保も、実質的に無意味となる。
ウ 本件大ヤマト作品の制作については、補助参加人P1において、原告に対してその旨の説明がされているから、原告は、本件大ヤマト作品に対して、本件映画の著作権に基づく権利行使をすることはできない。そして、3被告は、本件大ヤマト作品の利用につき、被告アニメーションソフトから許諾を受け、本件大ヤマト作品に基づき被告映像を制作したのであるから、原告は、被告映像に対しても、本件映画の著作権に基づく権利行使をすることができない。
エ さらに、本件映画に登場するキャラクターや艦隊等の絵画の著作権は、補助参加人P1に帰属しており、P2に帰属していなかった以上、甲3契約によって、原告がこれを取得するということもあり得ず、したがって、原告は、本件映画の著作権に基づき、上記キャラクターや艦隊を使用している被告映像に対して、権利行使することはできない。
(被告アニメーションソフト)
 丙4合意書3条1(1)によれば、そもそも「上記譲渡契約上、ヤマト作品に登場するキャラクター(人物、メカニック等の名称、デザインを含む)を使用し新たな映像作品(ただし、キャラクター使用以外の行為でヤマト作品の著作権を侵害しないものに限る)を制作する権利はP2に留保されていること。」が、原告、補助参加人P1間において確認されている。すなわち、原告には、ヤマト作品に登場するキャラクターを使用し新たな映像作品を制作する権利(翻案権)がない。そして、丙4合意書4条2項は、「乙(原告)は、甲(補助参加人P1)がヤマト作品に関連する新作の企画を希望する場合、これに全面的に協力する。ただし、甲は、乙に対し事前に企画内容の詳細を通知し、説明する。」と定めている(なお、「同意を得る必要がある」との文言は抹消されている。)。この4条2項の条項は、原告に翻案権がない以上、補助参加人P1が新作を制作する際、原告の許諾を得る必要がないのは当然であることから、その当然の事柄を前提にして、原告の協力義務と補助参加人P1の通知説明義務を定めたのである。仮に、原告に翻案権があった場合であっても、原告は、上記条項によって、補助参加人P1の通知説明を条件として、補助参加人P1が行う翻案に対して禁止権を行使しないという不作為義務を負うのみならず、これに対し全面的に協力する作為義務を負うものである。
 被告アニメーションソフトは、上記条項に従い、補助参加人P1に代わって、原告に本件大ヤマト作品の企画内容の詳細を通知し、説明している(甲22、23、24)。
 したがって、被告映像が本件映画を翻案したものであったとしても、原告は、本件映画の著作権に基づき、被告映像に対する権利行使をすることはできない。
(補助参加人ら)
ア 丙4合意書4条2項は、補助参加人P1が本件映画の新作を制作する場合、原告に対して、その企画内容の詳細を事前に説明したときには、原告が補助参加人P1に対して上記新作の制作に関する包括的な許諾を与える趣旨の条項である。理由は以下のとおりである。
(ア) 丙4合意書4条2項の文言の修正の経緯
 原告は、丙4合意締結に向けての補助参加人P1との交渉内容を踏まえて、丙4合意書の原案を作成し、これを補助参加人P1に提示した。しかし、同原案の4条2項は、補助参加人P1が本件映画の新作を制作するには、原告の同意が必要という条項であったため、補助参加人P1が、この文言では、原告の同意なしに本件映画の新作を制作することができなくなると考えて、原告に対し強く抗議し、その後、1時間もの間、交渉をし、その結果、「同意を得る必要がある」との文言が「説明する」との文言に修正され、修正された文言で丙4合意が成立した。
 このような丙4合意書4条2項の修正の経緯からすれば、同条項は、補助参加人P1が、本件映画の新作の企画内容の詳細について原告に通知して説明を行いさえすれば、補助参加人P1は、自由に同新作を制作することができることを定めた条項と解するのが相当である。
(イ) 丙4合意書4条1項にいう「上記の権利」とは、1条(1)の「対象作品に関する、著作権および対象作品の全部または一部のあらゆる利用を可能にする一切の権利」であって、本件合意書別紙(三)、(四)上欄に記載されているとおり、本件映画についてビデオを販売し(複製権及び頒布権の行使)、TV放送を実施し(公衆送信権の行使)、商品化(マーチャンダイジング=M/D)及びゲーム化を行う(複製権、翻案権、頒布権の行使)権利を含む。
 ところで、本件映画の商品化及びゲーム化を行うためには、本件映画のキャラクターの基となった原図柄の著作権者である補助参加人P1から許諾を得なければならないが、原告と補助参加人P1との間で、本件映画の利用に関する合意は丙4合意しか存在しないから、上記の許諾も丙4合意によってされている必要がある。しかし、丙4合意書において、そのような許諾文言と解することができるのは、4条1項の「全面的に協力する」との文言だけである。したがって、この「全面的に協力する」とは、本件映画の商品化及びゲーム化について、補助参加人らが許諾するものと解するほかない。
 このように、丙4合意書4条1項の「全面的に協力する」とは、本件映画の利用に関して、補助参加人P1が包括的に使用許諾等をするという意味であり、同一条文中の同一文言については同様の解釈をすべきであるから、4条2項の「全面的に協力する」も、包括的に本件映画の使用を許諾することを意味することになる。
(ウ) 上記(イ)のとおり、原告が、丙4合意書4条1項により、補助参加人P1から本件映画の原図柄等の使用許諾等を受けたことと、補助参加人P1が、4条2項により、原告から本件映画の使用を包括的に許諾されたことには、経済的な対価関係があるから、丙4合意書に、4条2項の対価として、補助参加人P1から原告へのロイヤリティーの支払についての約定がなくとも不合理ではない。
(エ) 丙4合意書4条2項は、許諾の範囲等を明確には定めていないが、補助参加人P1の原告に対する使用許諾条項である4条1項も同じであるから、このことをもって4条1項を法的拘束力を有する使用許諾条項でないと解することはできない。
イ 補助参加人P1は、本件大ヤマト作品の制作に当たり、その企画内容の詳細を原告に対して事前に説明しているから、原告は、本件映画の著作権に基づき、被告映像に対して権利行使をすることはできない。
(原告)
ア 丙4合意書4条2項の意味
 丙4合意書4条2項は、原告と補助参加人P1との協力関係を一般的に定めたものにすぎず、補助参加人P1に対して、ヤマト作品に関連する新作の制作を包括的に許諾したものではない。そして、同条項の「ヤマト作品に関連する新作」とは、宇宙戦艦ヤマトに関連性のある新作であって、本件映画の翻案物ではない、新たな作品を意味する。
 理由は以下のとおりである。
(ア) 丙4合意書4条2項のような条項によって、被告らの主張する包括的許諾が与えられることは、取引界の常識に照らして考えられない。(イ) 著作権の許諾を行うに当たっては、ロイヤリティーの金額のほか、許諾の範囲、再許諾の可否及びその手続等について約定するのが当然であるところ、丙4合意書では、上記の点についての条項は存在せず、単に、「乙は、・・・全面的に協力する」と定めるのみである。
(ウ) 補助参加人P1は、丙4合意が成立するに至る過程において、本件映画の新作の制作についての包括的な許諾を原告に対して求めたことはない。
(エ) 丙4合意書は、丙4合意が成立するに至る経緯からすれば、原告と補助参加人P1との友好協力関係全般についての精神的、営業政策的観点から作成されたものであり、丙4合意書4条2項も、法律的な意味はない。
(オ) 補助参加人P1及び被告アニメーションソフト関係者は、丙4合意書作成後の平成14年4月30日、原告を来訪し、「新宇宙戦艦大ヤマト」の企画を説明した上で、「確認書」と題する文書案(甲29)を手交しつつ、これを原告、補助参加人P1間で作成したいと提案した。
 この甲29文書では、本件著作物とストーリー及びキャラクターを異にする著作物として、補助参加人P1が新規に作品の制作を予定している旨の条項があるが、このように、わざわざ「ストーリー及びキャラクターを異にする著作物として」新規に制作する旨記載したことは、当時、補助参加人P1が合意書4条2項によっても本件著作物の著作権を侵害する権利を有していないことを明確に認識していたことを示すものである。
(カ) 丙4合意書4条2項末尾は、当初の「その同意を得る必要がある。」との記載が、「説明する。」と修正されたが、これは、原告と補助参加人P1との良好な協力関係を定める同条において、対決的で法律的な「同意を得る」などとする記述がそぐわないからである。
 同条項の「ヤマト作品に関連する新作」とは、本件映画の翻案物ではない、新たな作品であるから、これを企画するのは補助参加人P1の自由であり、同企画に原告の同意を不要としても問題はない。
イ また、丙4合意書は、原告と補助参加人P1との間の債権債務関係を規定したにすぎず、原告の有する本件映画についての著作権に対して、物権的な制限を加えるものではないから、仮に、丙4合意書4条2項を、原告が補助参加人P1に対して、ヤマト作品の新作を制作することを包括的に許諾したものと解したとしても、被告らは、原告に対して、同条項に基づく権利を有していない。
ウ したがって、丙4合意を根拠に、原告が本件映画の著作権に基づき被告製品に対して権利行使をすることが許されないと解することはできない。
(6) 損害額(争点(6))について
(原告) 請求の拡張申立書
ア 被告三共による損害
 被告三共は、被告パチンコゲーム機を少なくとも8万9102台製造、販売した。
 被告パチンコゲーム機の1台当り販売価格は、20万円を下らない。
 被告パチンコゲーム機に対する著作物利用許諾料は、販売価格の5パーセントが相当であるから、被告パチンコゲーム機に対する著作物利用許諾料は、少なくとも1台当たり1万円を下らない。
 よって、原告が被告三共の前記著作権侵害行為によって被った著作物利用許諾料相当損害額合計は、8億9102万円を下らない(著作権法114条3項)。
 原告は、上記損害額のうち、その一部である4億4551万円を請求する。
イ 被告ビスティによる損害
 被告ビスティは、被告パチスロゲーム機を少なくとも8211台製造、販売した。
 被告パチスロゲーム機の1台当り販売価格は、38万円を下らない。
 被告パチスロゲーム機に対する著作物利用許諾料は、販売価格の5パーセントが相当であるから、被告パチスロゲーム機に対する著作物利用許諾料は、少なくとも1台当たり1万9000円を下らない。
 よって、原告が被告ビスティの前記著作権侵害行為によって被った著作物利用許諾料相当損害額合計は、1億5600万9000円を下らない(著作権法114条3項)。
 原告は、上記損害額のうち、その一部である7800万4500円を請求する。
ウ 被告カード・システムによる損害
 被告カード・システムは、被告ゲームソフトを少なくとも3万5900枚製造、販売した。
 被告ゲームソフトの販売価格は、1 枚当たり5200円である。
 被告ゲームソフトに対する著作物利用許諾料は、販売価格の5パーセントが相当であるから、被告ゲームソフトに対する著作物利用許諾料は、少なくとも1枚当たり260円を下らない。
 よって、原告が被告カード・システムの前記著作権侵害行為によって被った著作物利用許諾料相当損害額合計は、933万4000円を下らない(著作権法114条3項)。
エ 被告アニメーションソフトによる損害
 被告アニメーションソフトは、3被告との共同不法行為により上記アないしウの損害を原告に対して与えたものであるから、原告が被告アニメーションソフトによって被った損害額は、上記アないしウの各行為につき、それぞれ上記アないしウで主張した金額である。
 原告は、上記損害額のうち、被告三共と連帯債務となる部分については、その一部である4億4551万円を、被告ビスティと連帯債務となる部分については、その一部である7800万4500円を、被告カード・システムと連帯債務となる部分は、その全額を、それぞれ請求する。
(被告ら)
 否認する。
第3 当裁判所の判断
1 P2は、本件映画の映画製作者として、著作権法29条1項に基づき、本件映画の著作権を取得したか(争点(1))について
 原告は、本件映画には、著作権法29条1項の映画製作者と参加約束が存在することを前提として、本件映画の映画製作者として本件映画の著作権を取得したP2から、甲3契約に基づき、本件映画の著作権の移転を受けた旨主張するのに対し、3被告及び補助参加人らは、本件映画の製作者はP2ではなく、オフィス・アカデミー又はウエスト・ケープであり、原告は、本件映画の著作権を取得していない旨主張するので、以下、P2が本件映画の映画製作者であったか否かについて検討する。
(1) 本件映画の製作の経緯
 証拠(甲3、4、44ないし46)並びに弁論の全趣旨によれば、以下の各事実が認められ、これに反する証拠はない。
ア 本件映画1について
 本件映画1は、全26話のテレビ放送用アニメーションシリーズであり、昭和49年10月から昭和50年3月まで、よみうりテレビ系列の全国ネットでテレビ放送された。
 本件映画1の企画の立案、企画書の作成、スタッフの人選、及びテレビ放映の実現についてのテレビ局との交渉は、P2が行った。また、本件映画の監督は、映画における表示では補助参加人P1とされていたが、その制作に当たっての実質的な監督業務は、P2が行った。
イ 本件映画2について
 本件映画1のテレビにおける上記放送の視聴率は低迷したが、熱心な漫画ファンやSFファンには、高く評価され、シリーズの放送終了後、次第にその魅力が広く伝わるようになり、人気が出てきたため、本件映画1に基づいて、劇場用映画である別紙映画目録記載2の映画が製作された。同映画は、昭和52年8月に劇場公開され、興行的に大きな成功を収めたため、劇場用映画である本件映画2が製作され、東映洋画系劇場で、昭和53年8月に劇場公開され、これもまた興行的に成功を収めた。
ウ 甲3契約書の記載
 原告、P2、ウエスト・ケープ及びボイジャーエンターテインメントとの間で、平成8年12月20日、甲3契約が締結されたが、甲3契約書の内容は後記2のとおりであり、同契約書には、譲渡の対象権利である「対象作品」を記載した「別紙(一)」が添付されている。その別紙(一)は、「A項:現存作品」、「B項:将来作品」、「制作年月日」、「製作者名」、「著作者名」、「原作者名」、「著作権者」及び「利用の制限」の各欄のある表となっており、「A項:現存作品」欄には、39作品の作品名が記載され(この39作品を以下「甲3契約対象作品」という。)、本件映画もそこに含まれている。そして、本件映画に対応する「製作者名」欄には、「オフィス・アカデミー」、「著作権者」欄には、「P2」との各記載がある。なお、甲3契約書のウエスト・ケープの記名捺印欄には、代表取締役としてP2の記載がある。
(2) 以上の認定事実を前提に判断する。
ア 著作権法2条1項10号は、映画製作者について、「映画の製作に発意と責任を有する者」と規定しているところ、同規定は、映画の製作には、通常、相当な製作費が必要となり、映画製作が企業活動として行われることが一般的であることを前提としているものと解されることから、映画製作者とは、自己の責任と危険において映画を製作する者を指すと解するのが相当である。そして、映画の製作は、企画、資金調達、制作、スタッフ等の雇入れ、スケジュール管理、プロモーションや宣伝活動、配給等の複合的な活動から構成され、映画を製作しようとする者は、映画製作のために様々な契約を締結する必要が生じ、その契約により、多様な法律上の権利を取得し、また、法律上の義務を負担する。したがって、自己の責任と危険において製作する主体を判断するに当たっては、これらの活動を実施する際に締結された契約により生じた、法律上の権利、義務の主体が誰であるかが重要な要素となる。
 そこで、検討するに、前記(1)で認定したとおり、P2は、本件映画1の制作を企画し、スタッフの人選やテレビ局とのテレビ放映についての交渉を行っているが、本件証拠中には、上記スタッフやテレビ局と契約を締結した主体がP2であったと認めるに足る証拠はない。また、本件映画1のための資金の調達についても、本件証拠上、P2が自己の名義で資金調達をしたものと認めるに足りない。
 かえって、甲3契約書に添付された「別紙(一)」の、本件映画1の「製作者」欄には、前記(1)のとおり、オフィス・アカデミーの社名が記載されているところ、P2がP1P2訴訟において提出した陳述書(甲45)には、「映画の著作物の“製作”というのは“作品の制作”実務のことだけをいうのではなく、企画制作を行って出来上がった作品の上映される劇場の確保等配給、又は、テレビの放映される番組の決定等『営業』、“制作費”“宣伝費”“一般管理費”等を含む『資金の負担』、『損益の責任』を持って『作品の制作』を行うことをいうのであります。これを“映画会社”、“テレビ局”に所属をして行うのではなく、私のように“個人の責任”、“個人の会社”に於いて行った場合に、“製作者”と言われるのであって、」と記載されており(43頁)、同記載によれば、P2は、映画製作者の法的意味を十分に認識した上で、「制作」と「製作」を明確に区別して使用していることが認められることから、P2は、上記別紙(一)の「製作者」は「映画製作者」を意味すること、したがって、甲3契約締結に当たっては、本件映画1の映画製作者は、オフィス・アカデミーであると認識していたことが認められる。
 なお、上記の別紙(一)の、本件映画1の「著作権者」欄には、P2の名前が記載されているが、例えば、P2が映画製作者であるオフィス・アカデミーから、本件映画1の著作権の譲渡を受けた場合もあり得るから、上記「著作権者」欄の記載があるからといって、上記別紙(一)の「製作者」を映画製作者を意味すると解することが必ずしも不合理ということはできない。
 したがって、P2が本件映画1の映画製作者であると認めることはできない。
 本件映画2については、その製作の経緯についての証拠が全く提出されていないところ、本件映画1と同様、甲3契約書に添付された、上記別紙(一)には、本件映画2の「製作者」欄にオフィス・アカデミーの社名が記載されていることからすれば、上記のとおり、P2は、甲3契約締結に当たり、本件映画2の映画製作者はオフィス・アカデミーであると認識していたものと認められ、結局、P2が本件映画2の映画製作者であると認めることはできない。
イ この点、P2がP1P2訴訟において提出した陳述書(甲45、46)には、「すべての責任はプロデューサー(製作制作者)である<私>が負うことになり、赤字も背負い、次のテレビシリーズの企画もなく、本当に悲惨な状態でした。」(甲45の57頁)、「私は、『宇宙戦艦ヤマト』という作品について、自分が“発想”、“企画”して、自己の資金で製作を行い、且つ、制作に当たって『適正なる人材』を、その資質を理解して各部門に起用し、」(甲45の58頁)、「私は『宇宙戦艦ヤマト』を劇場で上映する決意をし、これで失敗すれば私自身二度と立ち上がれなくなるかもしれないという背水の陣で『宇宙戦艦ヤマト』の制作を開始したのです。・・・私は、完成した劇場版『宇宙戦艦ヤマト』をもって映画館を回り、上映させて欲しいと頼みました。最終的には、配給会社のない自主上映という形でしたが、東急が上映してくれることになりました。」(甲46の17頁)、「低視聴率で終わり忘れられた作品を、私が辛抱強く、お金をかけて、一文無しになるのも覚悟で劇場作品として配給をして、『宇宙戦艦ヤマト』を有名にした」(甲46の40、41頁)との各記載があるが、上記記載のみからは、P2個人が、スタッフ、テレビ局や映画配給会社との契約を締結するなどの権利、義務の主体となっていたと認めることはできない。むしろ、前記アで認定したとおり、甲3契約書に添付された別紙(一)には、本件映画の映画製作者はオフィス・アカデミーである旨の記載があること、上記のP2の陳述書(甲46)によれば、オフィス・アカデミーはP2が映画製作のために設立した個人会社であると推測されるところ、このように映画製作のための株式会社が存在しているのであれば、映画製作のための各種契約は、その代表者個人で締結するのではなく、会社が主体となって締結するのが一般的であることからすると、P2の上記陳述書のうちの法的責任及び経済的負担に係る部分の記載は、P2が個人の立場ではなく、オフィス・アカデミーの代表者としての立場で記載したものと推測される。
 また、原告は、オフィス・アカデミーはダミー会社であり、その実態はP2個人である旨主張するが、本件においては、オフィス・アカデミーの実態等を示す証拠は全く提出されておらず、オフィス・アカデミーの法人格を否認してこれをP2個人と同視することはできない。
(3) まとめ
 以上のとおり、本件証拠上、本件映画の映画製作者がP2であると認めることはできない。そして、原告は、映画製作者として本件映画の著作権を取得したP2から、甲3契約により、本件映画の著作権の譲渡を受けたと主張するのみで、映画製作者がオフィス・アカデミーなどP2以外の者である場合に、その者から著作権の譲渡を受けた旨の主張、立証をしていないのであるから、結局、原告の本件映画の著作権の取得は認められない。
2 原告は、甲3契約により、本件映画の翻案権を取得したか(争点(2))について
 前記1で判示したように、そもそも、本件証拠上、P2が本件映画の映画製作者であると認めることはできず、したがって、原告が、甲3契約により、本件映画の著作権を取得したものと認めるに足りないが、念のため、P2が本件映画の映画製作者であったか、又は、P2が本件映画の映画製作者から本件映画の著作権の譲渡を受けていたものと仮定した上、争点(2)について、検討する。
(1) 甲3契約締結に至る経緯等
 証拠(甲1の1ないし9、2、3、31、32の1ないし9、33の1及び2、34)並びに弁論の全趣旨によれば、次の各事実が認められ、これに反する証拠はない。
ア 原告は、平成8年9月ころから、P2との間で、宇宙戦艦ヤマト作品等の著作物の著作権を譲り受けるための交渉を始め、同年12月20日、同交渉がまとまり、同日付けで、甲3契約を締結した。なお、甲3契約書の草案は森伊津子弁護士(以下「森弁護士」という。)が作成した。
イ 甲3契約書には、次のとおりの条項がある。
(ア) 前文
 「株式会社東北新社フィルム(以下「甲」という)、P2(以下「乙」という)、株式会社ウエスト・ケープ・コーポレーション(以下「丙」という)、株式会社ボイジャーエンターテインメント(以下「丁」という)とは、以下のとおり合意した。」
(イ) 「第1条定義
 本書において用いられるとき下記の用語は下記の意味を有する。
1.現存作品
 本書に添付され本書の一部を成す別紙(一)のA項記載の映像著作物をいう。
2.将来作品
 本書に添付され本書の一部を成す別紙(一)のB項記載の内容を有する作品であって、甲乙協議の上決定する制作費で乙が完成させる映像著作物をいう。
3.対象作品
 現存作品および将来作品をいう。
4.対象権利
 対象作品に対する著作権および対象作品の全部又は一部のあらゆる利用を可能にする一切の権利。」
(ウ) 「第2条譲渡
 乙は甲に対し、対象権利および権利行使素材の所有権の一切を、本書の日付をもって譲渡し、甲は乙からこれを譲り受けた。但し、対象権利と権利行使素材のうち将来作品に関するものについては、それらの完成を条件に乙は甲に対し譲り渡し甲は乙からこれを譲り受けた。」
(エ) 「第5条著作権登録
 乙は、現存作品に関する著作権の乙から甲に対する譲渡についての著作権登録を本契約締結日から三か月以内に行う。」
(オ) 「第6条対価
 甲は、乙に対して、本契約上行われる一切の譲渡その他の乙の義務履行に対する対価として金450,000,000 円(消費税別)を分割して以下の期日に乙の指定する銀行口座への振込みにより支払う。
 支払期日 本契約締結時               175,000,000 円
 (ただしうち100,000,000円については、乙は、甲より既に受領済みであることを確認する。)
 本契約締結時から1か月後75,000,000円
 本契約締結時から2か月後75,000,000円
 本契約締結時から6か月後75,000,000円
 本契約締結時から8か月後50,000,000円
(カ) 「第7条追加対価の額と支払
1.甲は乙に対し、第6条記載の対価の追加対価として下記の金額を支払う。
『下記(1)(2)及び(3)の合計が450,000,000 円を越えたとき、その超過部分の50%の金額。』
(1) 対象権利の利用から発生するもの。
 甲の総収入(万一、1996年9月11日以降本契約締結時までの間に乙が対象作品につき得た収入(下記(2)によるものを除く)があるときは、これを甲の収入とするよう、乙は甲に対し、収受した金員を本契約締結日から7日以内に引き渡す)の75%から、利用に伴い必要な第三者への配分金及び諸費用を控除した額。
(2) 既存契約から発生するもの。
 甲の総収入(本契約締結日以降第4条の通知の到達日以前に発生する乙の収入は、これを甲の収入とするよう、乙は甲に対し、収受した金員を製造原価を差し引いて14日以内に引き渡す)の85%から、利用に伴い必要な第三者への配分金及び諸費用(販売契約の場合は製造原価を含む)を控除した額。
(3) 将来作品に関するもの。
 甲の総収入から甲乙協議の上決定し乙が支出した制作費を控除した額の85%から、利用に伴い必要な他社への配分金及び諸費用を控除した額(甲乙協議の上決定した制作費分は乙によるリクープのため甲からすみやかに乙に支払われる)。
2.甲は、四半暦年中に発生した追加対価を、四半暦年終了後1か月以内に乙の指定する預金口座への振り込みにより、支払う。」
(キ) 「第9条保証および免責
1.乙は、甲に対し、下記を保証する。
(1) 本契約締結時において乙が対象権利を専有(本書に添付され本書の一部を成す別紙(一)のA項記載の利用制限を除く)していること。但し、将来作品に関する権利については、作品完成時に専有するにいたり、専有権と同時に甲に移転出来るものであること。
(2) 本契約締結時において権利行使素材の所有権を有しており、これにつき何ら制限物権が存在しないこと。
(3) 現存作品につき一切の権利行使素材が存在しており、将来作品については存在し得るにいたること、そして、甲の対象権利の行使に何らの支障がないこと。
(4) 甲による対象権利の全部又は一部の行使が第三者の権利を何ら侵害せず、第三者に対する支払を何ら要しないこと。但し、本書に添付され本書の一部を成す別紙(三)記載の第三者への支払義務を除く。また、既存契約に基づく義務として、本書添付の本書の一部を成す別紙(二)記載の内容(相手方、権利の内容、期間、要支払額、支払日)の制約の存在を甲は承認する。
(5) 既存契約以外の契約が対象作品に関して有効に存在していないこと。
2.乙は甲に対し下記の免責をする。
 万一、甲の対象権利の行使および権利行使素材の利用に関し、甲又は甲の被許諾者が第三者より異議を申し立てられ又は請求を受けたときは、これにより生じた損害および費用の一切を、合理的範囲の弁護士費用を含めて、乙は甲に甲の請求後速やかに支払い、甲に何らの負担迷惑をかけない。
(ク) 「第10条キャラクター使用作品
 対象作品に登場するキャラクター(人物、メカニック等の名称、デザインを含む)を使用し新たな映像作品(但し、キャラクター使用以外の行為で対象作品の著作権を侵害しないものに限る)を制作する権利は乙に留保されるものとし、その場合のM/D権その他の権利の運用については別途協議とする。但し、乙は制作の一か月前までにその内容の詳細を書面で甲に通知する。」
(ケ) 「第12条連帯保証
 丙および丁は、本契約に基づく乙の甲に対する一切の債務の履行につき乙と連帯してその履行の責に任ずる。乙、丙および丁は、丙および丁が本契約を締結することにつき、取締役会の承認を取得済みであることを甲に対し確認する。」
(コ) 別紙(一)
 前記1のとおり。
(サ) 別紙(三)
 甲3契約書に添付された別紙(三)には、「対象控除%(素材−出庫、経費)」、「P2」、「宇宙戦艦ヤマトシリーズのM/D、ゲーム化権のP2とP1の印税配分」、「P1」、「脚本家連盟」等の欄があり、「対象控除%(素材−出庫、経費)」欄には、別紙(一)の「A項:現存作品」の欄に記載された著作物名と同一の著作物名が記載され、「宇宙戦艦ヤマトシリーズのM/D、ゲーム化権のP2とP1の印税配分」欄の宇宙戦艦ヤマト関連作品に対応する部分には、「作品毎の契約のため、現在明確な取決めがない。従って、P2が責任をもって両者分を10〜15%の間で1997年2月28日迄に協議の上決定する。」との記載がある。
ウ 上記イのとおり、甲3契約対象作品の著作権譲渡登録が、甲3契約締結日から3か月以内に行うことと合意されたことから、原告は、平成9年3月に至り、上記著作物の著作権の譲渡登録の手続をしようとしたところ、甲3契約対象作品のうち、本件P3経由著作物の著作権については、平成8年11月25日付けで、P2からP3への譲渡登録がされていることが判明した(なお、本件映画は、本件P3経由著作物に含まれている。)(甲1の1ないし9、31、32の1ないし9)。
 そこで、原告は、P2に、上記の譲渡登録がされていることについての説明を求めたところ、P2から、宇宙戦艦ヤマト作品の著作権はP3に預けてあるだけであるとの説明を受けたことから、森弁護士と相談し、その結果、本件P3経由著作物の著作権については、P3から原告へ譲渡登録をする形をとることとし、その旨P2に連絡して、P2の合意を得た(甲31)。
 その後、原告は、P3に対して、甲3契約対象作品のうち、本件P3経由著作物についての、平成9年3月26日付け著作権譲渡証書(本件P3譲渡証書)2通を作成させ、同人からその交付を受け、P2に対しては、甲3契約対象作品のうち、本件P3経由著作物以外の著作物についての、平成9年3月26日付け著作権譲渡証書(以下「本件P2譲渡証書」という。)を作成させ、同人からその交付を受けた。そこで、原告は、平成9年3月26日、文化庁長官に対し、上記各著作権譲渡証書を添付資料として、甲3対象作品についての著作権譲渡登録の申請をし、その結果、平成9年11月19日付けで、本件P3経由著作物については、P3から原告への著作権譲渡登録が、それ以外の甲3対象作品については、P2から原告への著作権譲渡登録がそれぞれされた(甲1の1ないし9、31、33の1及び2、34)。
エ 本件P3譲渡証書には、2通とも、譲渡人(登録義務者)の欄にP3の記名捺印が、譲受人(登録権利者)の欄に原告の記名捺印があり、「下記の各著作物の著作権(著作権法第27条及び第28条に規定する権利を含む)を平成8年12月20日に譲渡したことに相違ありません。」との記載がある(甲33の1及び2)。
 本件P2譲渡証書には、譲渡人(登録義務者)の欄にP2の記名捺印が、譲受人(登録権利者)の欄に原告の記名捺印があり、「下記の各著作物の著作権(著作権法第27条及び第28条に規定する権利を含む)を平成8年12月20日に譲渡したことに相違ありません。」との記載がある(甲34)。
カ 本件P3経由著作物の一部である宇宙戦艦ヤマト作品の著作権登録原簿には、P2からP3への著作権譲渡の欄には、「この著作物について平成八年十一月二十五日、左記の者の間に著作権(著作権法第二十七条及び第二十八条に規定する権利を含む)の譲渡があった。」との記載、P3から原告への著作権譲渡の欄には、「この著作物について平成八年十二月二十日、左記の者の間に著作権(著作権法第二十七条及び第二十八条に規定する権利を含む)の譲渡があった。」との記載がある(甲1の1ないし9)。
(2) 前記(1)で認定した事実を前提にして、以下、甲3契約において、本件映画の翻案権も譲渡の対象となっていたか否かについて検討する。
ア 著作権法61条2項は、「著作権を譲渡する契約において、第二十七条又は第二十八条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する。」と規定するところ、これは、著作権の譲渡契約がなされた場合に直ちに著作権全部の譲渡を意味すると解すると著作者の保護に欠けるおそれがあることから、二次的な利用権等を譲渡する場合には、これを特に掲げて明確な契約を締結することを要求したものであり、このような同項の趣旨からすれば、上記「特掲され」たというためには、譲渡の対象にこれらの権利が含まれる旨が契約書等に明記されることが必要であり、契約書に、単に「すべての著作権を譲渡する」というような包括的な記載をするだけでは足りず、譲渡対象権利として、著作権法27条や28条の権利を具体的に挙げることにより、当該権利が譲渡の対象となっていることを明記する必要があるというべきである。
 原告は、著作権法61条2項の「特掲」があったというためには、翻案権が当該譲渡の目的に含まれていることを終局的一義的文言で記載する必要はなく、翻案権も譲渡の目的に含まれていることを十分認識できる程度の記載で足りる旨主張するが、上記の説示に照らして、同主張が採用できないことは明らかである。
 そこで、甲3契約書に翻案権譲渡の特掲があったといえるかについて検討するに、前記(1)のとおり、甲3契約書には、「対象権利および権利行使素材の所有権の一切を・・・譲渡し」(2条)との記載、及び「対象権利」の定義として、「対象作品に対する著作権および対象作品の全部又は一部のあらゆる利用を可能にする一切の権利」(1条の4)との記載があるのみであり、「著作権法27条の権利」又は「翻案権」等の文言を具体的に挙げて明記して、同権利を譲渡する旨の記載はない。
 したがって、甲3契約書には、翻案権を譲渡の目的とする特掲があったということはできず、また、契約書に明記はしないが譲渡の対象に含まれる旨が合意されたなどの特段の事情も認められないから、著作権法61条2項により、甲3契約において、本件映画の翻案権は、著作権を譲渡した者、すなわちP2に留保されたものと推定される。
イ 原告は、前記( )で認定し1 た甲3契約締結における事情を基に、甲3契約において、甲3契約対象作品の翻案権も譲渡された旨を主張する。
 しかしながら、以下の理由により、甲3契約によって原告が翻案権を取得したと認めることはできない。
(ア) まず、甲3契約締結当時、原告のように映画、テレビ、ビデオソフトなどの企画、制作、販売等を行い、映像に関わる著作権を日常的に処理する業界においては、高額な対価支払を伴う著作権の譲渡契約を行う場合、当該譲渡の対象である著作権に翻案権を含めて契約を締結するときには、著作権法61条2項の規定が存在する以上、作成される契約書に翻案権が譲渡対象となる旨の特掲がなされていることが一般的であると推測される。
 また、本件においては、甲3契約書の草案の作成に原告側の弁護士が関与しており、このように弁護士などの法律専門家が譲受人側として著作権譲渡契約書の作成に関与する場合、譲渡の対象に翻案権も含める旨の合意が成立しているにも関わらず、その特掲のない契約書を作成し、又は、そのような契約書に署名をすることは、通常、想定し難いというべきである。
 しかも、前記(1)エのとおり、原告が、P3から本件P3経由著作物の著作権譲渡登録をするために、弁護士が関与してP3に作成させた本件P3譲渡証書には、著作権法27条及び同法28条の権利が譲渡対象に含まれていることの特掲があり、本件P2譲渡証書にも、同様の特掲があったのであるから、原告及びその代理人弁護士は、著作権法61条2項の内容を十分理解し、翻案権の譲渡を受ける場合には、その旨の特掲の必要性を十分認識していたものと認められ、それにもかかわらず、甲3契約書に、翻案権譲渡の特掲がなかった以上、当該契約において翻案権の譲渡がなかったものと推測せざるを得ない。
(イ) 原告は、甲3契約書9条2項について、P2は、対象権利の行使に関して原告が第三者から異議を申し立てられ、請求をされることがないことを保証する旨規定していることから、P2は、甲3契約により、対象作品のあらゆる利用を第三者から異議を述べられずに行うことが可能な権利を譲渡したことになるところ、そのような権利保証をすることは、翻案権の譲渡をせずしては不可能である旨主張する。
 しかしながら、甲3契約書9条2項の上記文言は、前記(1)イ(キ)のとおりであり、P2から原告に譲渡された「対象権利の行使」に関して、原告が第三者から異議等を受けた場合に、P2がそれに関する一切の費用負担等を行うことを約するものであり、本件映画に即していえば、映画に関する著作権を行使して複製や上映などをした場合に、第三者から異議を受けたときを念頭においたものと解することも可能であって、上記文言が、原告に翻案権があることを常に前提とするとは限らないから、原告の上記主張は、その前提において誤りがあり、採用することができない。
(ウ) 原告は、本件P3譲渡証書は、P3から一旦P2に交付された後、P2から原告に交付されたものであるところ、本件P3譲渡証書には、譲渡の対象に著作権法27条及び同法28条に規定する権利が含まれる旨の特掲があるのであるから、P2は、本件P3譲渡証書の上記記載内容を認識しており、甲3契約において、上記権利も譲渡の対象とする意思を有していた旨主張する。
 しかしながら、本件P3譲渡証書は、前記(1)ウ認定のとおり、原告がP3に作成させて同人から交付を受けたものと認められ、P2が本件P3譲渡証書の具体的な記載内容を認識していたということができない以上、原告の上記主張は、その前提において誤りである。また、確かに、本件P3譲渡証書には、前記(1)エのとおり、著作権法27条及び同法28条の権利が譲渡対象に含まれていることの特掲があるが、同証書は、甲3契約に利害関係がなく、P2に依頼されて著作権登録原簿上の権利者となっていたにすぎないP3が、原告の依頼により作成したものであり、前記(1)ウで判示した本件P3譲渡証書作成に関する状況からすると、同証書は、原告の利益のために作成されたものと認められ、したがって、その内容も、原告の希望を反映したものとなると考えられることから、本件P3譲渡証書に、上記特掲があるからといって、それが甲3契約締結当時における、当事者間の意思を反映したものであるということはできない。
 いずれにしても、原告の上記主張を採用する余地はない。
 この点、P4陳述書には、本件P3譲渡証書は、P3が一旦P2に交付したものを、P2が原告に交付したものであり、P2は、本件P3譲渡証書の記載内容を認識し、同内容の譲渡証書を交付することを承諾していた旨の記載がある。
 しかしながら、仮に、上記権利も譲渡対象に含まれることについてP2の承諾を得ていたのであれば、P3から原告への譲渡証書ではなく、本件P3経由著作物の著作権登録原簿上の著作権をP2に戻すとともに、P2から原告への上記特掲のある譲渡証書を作成するのが、上記特掲の必要性を認識していた原告にとって確実であり、通常とるべき手段であると考えられるが、実際には、P3から原告への譲渡証書である本件P3譲渡証書が作成されるにとどまり、不自然であるところ、上記の通常とるべき手段が行われなかったことについての合理的な説明はないから、P4陳述書の上記記載部分は採用できない。
(エ) なお、甲3契約により、原告が権利取得の対価として支払義務を負った金額は、4億5000万円であるが、証拠(甲4)及び弁論の全趣旨によれば、甲3契約対象作品の中に含まれている宇宙戦艦ヤマト作品は、その最初の作品である本件映画1が昭和49年に製作され、昭和58年に劇場公開された「宇宙戦艦ヤマト完結編」までの、合計8作のシリーズ作品であり、劇場公開された4本の作品は、21億円ないし43億円と巨額の興行収入をもたらし、また、宇宙戦艦ヤマト作品は、日本中に空前のブームを引き起こしたものであることが認められ、このように、甲3契約対象作品の中に、極めて著名な映画である宇宙戦艦ヤマト作品が含まれていることからすると、同作品が、甲3契約締結時においては、テレビ放映ないし劇場公開がされてから13年ないし22年が経っていることを考慮しても、甲3契約対象作品の複製権の対価が4億5000万円であることが、不自然であるということはできない。
ウ 以上のとおり、甲3契約においては、本件映画の翻案権は譲渡の対象となっていたと認めることはできず、甲3契約によって原告が本件映画の翻案権を取得したと認めることはできない。
3 被告映像は、本件映画を複製又は翻案したといえるか(争点(3))について
 前記1で判示したとおり、P2は本件映画の映画製作者と認めることはできず、したがって、原告は、甲3契約により、本件映画の著作権を取得したものとは認められないが、念のため、P2が本件映画の映画製作者であったか、又は、P2が本件映画の映画製作者から本件映画の著作権の譲渡を受けていたものと仮定して、争点( )について3 も検討する。ただし、前記2で判示したように、原告が、甲3契約によって、P2から本件映画の著作権の譲渡を受けたと仮定したとしても、甲3契約の譲渡の対象となった著作権は複製権のみであり、翻案権は対象となっていなかったのであるから、以下では、被告映像が本件映画の複製権を侵害するか否かについて検討する。
(1) 本件映画の内容について
 証拠(甲1の1及び6、4、30、45、46)並びに弁論の全趣旨によれば、本件映画1の内容は、次のとおりであると認められる。
 本件映画1は、地球が、異星人からの攻撃により放射能に汚染され、地表の大部分は溶岩に覆われて地表に棲息する生物は絶滅したが、人類は、地下都市を築いて生き続けていたところ、地表の放射能が次第に地下を浸食してきたため、地下都市も、あと1年で放射能に汚染される状態となったという設定のもと、放射能汚染消去装置の部品と設計図を求めて、宇宙の遙か彼方のイスカンダル星まで往復するために、かつて海底に沈没していた戦艦大和を改造して建造された宇宙戦艦ヤマトが、イスカンダル星への往復の途中で、数々の戦闘を繰り返しながら、侵略者に立ち向かっていくという物語である。宇宙戦艦ヤマトは、戦闘の際、その最大の兵器である、艦首から発射される波動砲のほか、主砲、パルスレーザー砲等を使用する。
 本件映画2も、設定は異なるものの、宇宙戦艦ヤマト及びその乗組員が、地球ないし人類を滅亡から救出するために、困難に立ち向かう物語となっている。
? 本件映画の被侵害主張部分における映像について
 証拠(甲10の1、15の1、19の1)、上記?で認定した本件映画の内容及び弁論の全趣旨によれば、本件映画被侵害主張部分に描かれている艦船は、宇宙戦艦ヤマトであること、その艦首にある穴は波動砲の発射口であること、その波動砲発射口から発射される光線様のものは波動砲であることが認められる。
(3) 本件映画被侵害主張部分の創作性
 なお、後記(4)で認定する本件映画被侵害主張部分の各部分の表現内容及び形式からすれば、それぞれにつき全体としてみれば、いずれも創作性が認められることは明らかである。
(4) 本件映画と被告パチンコ映像との対比
 甲第10号証の1及び弁論の全趣旨によれば、以下のとおり認められる。
ア 被告映像対比表1リーチ映像部分は本件映画対比表1部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表1部分
 本件映画対比表1部分は、約2秒間の動画映像であり、宇宙空間を背景に、宇宙戦艦ヤマトの艦首部に設置された波動砲発射口内部で、無数のオレンジ色の光の粒子が奥の方へ吸い込まれていき、それに伴い発射口内部の色が変化する様子が、波動砲発射口から見て左斜め前方の離れた位置から、波動砲発射口を拡大して描かれている。
 同部分の画面の8割強は、艦首部の一部が占めており、その中心部に波動砲発射口が描かれ、同発射口は画面の4割程度を占めている。画面の2割弱を占める背景には、暗青色の宇宙空間が描かれている。艦首部は、一部分しか描かれていないが、その存在が明確に認識できる。
 波動砲発射口の内部には、内壁に等間隔のリブが存在しており、最奥部にプロペラ様のものがあるという構造が明確に描かれている。
 波動砲発射口内部では、発射口の出口部分から無数のオレンジ色の光の粒子が発射口奥部に、直線状に、引き寄せられていき(この光の粒子の発生源は、発射口内部に限定されており、発射口外部から発射口内に入ってくるものはない。)、発射口内部の色は、当初、暗いオレンジ色であるのが、徐々にオレンジ色の明るさが増していき、最奥部は、最終的に、黄色に変色するが、最奥部以外の部分は、途中で明るさが減じ、暗いオレンジ色に戻る。
b 被告映像対比表1リーチ映像部分
 被告映像対比表1リーチ映像部分は、約2秒間の動画映像であり、画面中心部に大きく描かれている黄白色に発光した部分に向かって、画面全体から無数の黄白色の光の粒子が吸い込まれていく様子を、正面から描いたものである。
 画面中心部に映されている黄白色の発光した部分は、卵型をしており、徐々に拡大していくが、常に発光しており、光の強弱や色の変化は、あまり見られず、その輪郭は曖昧である。この黄白色の発光部分が何であるか、また、その周囲の映像がどのような映像であるかは、被告映像対比表1リーチ映像部分からは、判別し難いが、前後の映像から、戦艦様の飛行物体の艦首部にある光線の発射口から光線が発射されていることが分かる。被告映像対比表1リーチ映像部分の範囲では、発射口の内部の構造の様子は全く認識できない。
 黄白色の光の周りには、ぼやけたオレンジ色の部分があり、黄白色部分とオレンジ色部分を併せた大きさは、当初、画面全体の2割程度であるのが、最終的には、画面の9割程度となる。背景は、暗青色をしているところ、この部分の映像がどのような映像であるかは、被告映像対比表1リーチ映像部分からは、判別し難いが、前後の映像から、宇宙空間であることが分かる。
 また、黄白色の光の粒子は、中心部の黄白色の光に向かって、画面全体から、渦を巻くように引き寄せられている。
(イ) 対比
 本件映画対比表1部分と被告映像対比表1リーチ映像部分とは、前記(ア)のとおり、画面の中心部に、暗青色の宇宙空間を背景にして、戦艦の艦首に存在する発射口の内部が発光している様子が描かれていること、その発光部分は、画面上、大きな割合を占めていること、発光部分の中心部に向かって光の粒子が移動していく様子が描かれていることが共通している。
 しかしながら、証拠(乙36の1、4及び5、57の1、58)によれば、本件映画が制作された時点で、先端に穴が空いた飛行物体が宇宙を航行している様子を描いた画像、先端に穴の空いた戦艦が海上を航行している様子を描いた画像、先端部から光線を発している飛行物体を描いた画像、及び宇宙空間が暗青色に描かれている画像が存在していることが認められ、このことから、先端部に存在する発射口から光線を発する飛行物体が暗青色の宇宙空間を航行するという映像は、特に目新しい表現ということはできず、したがって、また、そのような飛行物体が艦首の発射口から光線を発射する前段階として、発射口部分が発光することを描いた映像も、特に目新しい表現ということはできない。さらに、艦首の発射口を拡大して描くことも、ありふれた表現方法である。そして、戦艦が宇宙空間を飛行すること自体は、アイデアに属し、また、海中又は宇宙空間を艦船又は飛行物体が進んで行くという表現は、上記同様、特徴あるものとはいえない。
 したがって、上記両映像の上記共通点のうち、暗青色の宇宙空間を背景にして、戦艦の艦首に存在する発射口の内部が発光している様子が拡大して描かれている部分は、両映像にとって特徴的な表現ということはできず、この点が共通することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味を有するということはできない。そして、宇宙空間を背景にして、戦艦の艦首に存在する発射口の内部が発光しているという部分の具体的な表現形式については、前記(ア)の認定から明らかなように、大きな違いがある。
 また、発光部分の中心部に向かって光の粒子が移動していくという部分は、ありふれた表現ということはできないが、その具体的な表現形式は、前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なっている。
 以上の事実を総合考慮すると、被告映像対比表1待機映像部分と本件映画対比表1部分との間に、同一性は認められないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表1リーチ映像部分は、本件映画対比表1部分の複製物ということはできない。
イ 被告映像対比表1待機映像部分は本件映画対比表1部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表1部分
 本件映画対比表1部分の表現内容及び表現形式は、上記ア(ア)aで判示したとおりである。
b 被告映像対比表1待機映像部分
 被告映像対比表1待機映像部分は、0.1秒に満たない動画映像であり、明るい青色の宇宙空間を背景にして、画面の中央部にある戦艦様の飛行物体の艦首部の光線の発射口が白色に発光しており、その発光部分に向かって、画面全体から無数の白色の光の粒子が吸い込まれていく様子が、正面から、発射口を拡大して描かれていている。
 発射口は、画面の3割程度を占め、艦首部は、一部のみ描かれているが、画面の4割程度を占める。発射口内部の白色に発光した部分は、映像の進行に従い若干大きくなるが、その色は変化しない。被告映像対比表1待機映像部分の範囲では、発射口の内部の構造の様子は全く分からない。
 飛行物体には、底部の両側面に翼様のものが設置されており、この翼様のものの前面には、小さな長方形の緑色の光が多数付いており、翼様のものの存在感は大きい。
 また、発射口内部の発光部分に向かって画面全体から吸い寄せられる白色の光の粒子は、渦を巻くようにして吸い寄せられている。
(イ) 対比
 本件映画対比表1部分と被告映像対比表1待機映像部分とは、画面の中心部に、前記(ア)のとおり、宇宙空間を背景にして、戦艦の艦首に存在する発射口の内部が発光している様子が描かれていること、その発光部分は、画面上、大きな割合を占めていること、発光部分の中心部に向かって光の粒子が移動していく様子が描かれていることが共通している。
 しかしながら、前記アで判示したように、飛行物体の艦首部の発射口部分が発光することを描いた映像は、特に目新しい表現ということはできない。また、艦首の発射口を拡大して描くことも、ありふれた表現方法である。そして、戦艦が宇宙空間を飛行すること自体は、アイデアに属し、また、海中又は宇宙空間を艦船又は飛行物体が進んで行くという表現は、上記同様、特徴あるものとはいえない。
 したがって、上記両映像の上記共通点のうち、宇宙空間を背景にして、戦艦の艦首に存在する発射口の内部が発光している様子が拡大して描かれている部分は、両映像にとって特徴的な表現ということはできず、この点が共通することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味を有するということはできない。そして、宇宙空間を背景にして、戦艦の艦首に存在する発射口の内部が発光しているという部分の具体的な表現形式については、前記(ア)のとおり、大きな違いがある。
 また、発光部分の中心部に向かって光の粒子が移動していくという部分は、ありふれた表現ということはできないが、その具体的な表現形式は、前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なっている。
 以上の事実を総合考慮すると、被告映像対比表1待機映像部分と本件映画対比表1部分との間に、同一性は認められないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表1リーチ映像部分は、本件映画対比表1部分の複製物ということはできない。
ウ 被告映像対比表2リーチ映像部分は本件映画対比表2部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表2部分
 本件映画対比表2部分は、約1秒間の動画映像であり、画面左奥側にシリンダー様部材が、画面右側手前側にピストン様部材が、それぞれ対向して配置されており、上記シリンダー様部材の中心部には、上記ピストン様部材の直径と同程度の直径の円筒状の中空部分があり、同中空部分に上記ピストン様部材が、回転することなく、ゆっくりと押し込まれていく様子が描かれている。
 上記シリンダー様部材の断面は、台座に半円が乗ったような形状をしており、所々に光った計器様の円形の部材が配置されている。
 上記シリンダー様部材の中空部分及びピストン様部材は、光に照らされているように、濃いオレンジ色に着色され、また、上記シリンダー部材のその余の部分は、同様に薄いオレンジ色に着色されている。
 上記ピストン状部材が上記シリンダー様部材の中空部分に押し込まれても、画面の明るさに変化はない。
b 被告映像対比表2リーチ映像部分
 被告映像対比表2リーチ映像部分は、約1秒間の動画映像であり、画面右奥側の部材が、回転しながら、画面左手前側の部材に向かっていき、衝突する様子が描かれている。
 画面右奥側には、先端に合計6個の円筒状突起物が設置された円筒状部材が、画面左手前側には、釣り鐘状の突起物が複数設置された円筒状部材が、それぞれ対向して配置されており、右奥側の円筒状部材と左手前側の円筒状部材の各中心部は、細長い円柱状の部材で連結されている。
 そして、右奥側に配置された円筒状部材が高速で回転しながら、左手前側の円筒状部材の方に高速で移動し、右奥側の円筒状部材に設置された6個の円筒状突起物が、左手前側の円筒状部材に設置された複数の釣り鐘状の突起物に激しく衝突し、その際に、強く発光する。
 画面は、当初、全体がオレンジ色の光に照らされているように着色されているが、右奥側に配置された円筒状部材に設置された円筒状突起物が左手前側に配置された円筒状部材に設置された釣り鐘状の突起物に衝突すると、その衝突部分である画面中央部から黄白色の明るい光が発生し、その光が画面全体に広がっていく。
(イ) 対比
 本件映画対比表2部分と被告映像対比表2リーチ映像部分とは、前記(ア)のとおり、画面の右側と左側に、部材が対向して配置され、両部材が近づく様子が描かれている点、オレンジ色の光に照らされているように描かれている点で共通するが、この共通点は、極めて抽象的なものであるから、両映像の同一性の有無の判断においては、大きな意味を有しない。
 そして、上記両映像間の複製権侵害の有無の判断においては、両映像の具体的な表現形式の比較が重要であるところ、その部分は、前記(ア)の認定から明らかなように、大きく相違する。
 したがって、被告映像対比表2リーチ映像部分と本件映画対比表2部分との間に、同一性は認められないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表2リーチ映像部分は、本件映画対比表2部分の複製物ということはできない。
エ 被告映像対比表2待機映像部分は本件映画対比表2部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表2部分
 本件映画対比表2部分の表現内容及び表現形式は、上記ウ(ア)aで判示したとおりである。
b 被告映像対比表2待機映像部分
 被告映像対比表2待機映像部分の表現内容及び表現形式は、上記ウ(ア)bで判示した被告映像対比表2リーチ映像部分とほぼ同様であるが、被告映像対比表2リーチ映像部分が全体的にオレンジ色の光に照らされているように描かれているのに対し、被告映像対比表2待機映像部分で描かれている光の色は黄白色ないし白色となっている。
(イ) 対比
 被告映像対比表2待機映像部分は、上記のとおり、被告映像対比表2リーチ映像部分とほぼ同じであり、上記ウ(イ)の本件映画対比表2部分との対比において検討した結果が当てはまる。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表2待機映像部分は、前記ウの場合と同様に、本件映画対比表2部分の複製物と認めることはできない。
オ 被告映像対比表3リーチ映像部分は本件映画対比表3部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表3部分
 本件映画対比表3部分は、約3秒間の動画映像であり、宇宙空間を背景にして、宇宙戦艦ヤマトの艦首部の波動砲発射口から、波動砲が発射される様子が描かれている。
 本件映画対比表3部分の前半部分は、宇宙戦艦ヤマトの艦首部が、同戦艦から見て左斜め前方の位置から、艦首部を拡大して、同部が画面の中心部付近に位置するよう描かれている。艦首の発射口は、当初、画面全体の約10分の1程度の大きさで、内部は、最奥部が黄白色に、その余の部分はオレンジ色に発光しており、内壁に等間隔のリブや多数の光の粒子が存在していたが、途中で、最奥部の黄白色の光の強度が増すとともに、オレンジ色部分が黄白色に変化していき、画面が切り替わる。
 画面が切り替わると、宇宙戦艦ヤマト全体が、同戦艦から見て左斜め前方の、離れた位置から、艦首の発射口が画面の中心部付近に位置するように描かれている。発射口は、当初、空洞の状態であるが、途中で黄白色に発光し、続いて、その光が徐々に強まっていくとともに、大きくなり、最終的には、画面の約8割程度を占め、宇宙戦艦ヤマトを覆い隠すようになる。
b 被告映像対比表3リーチ映像部分
 被告映像対比表3リーチ映像部分は、1秒弱の動画映像であり、宇宙空間を背景に、戦艦様の飛行物体の艦首部から光線が発射される様子が描かれている。
 同映像部分は、上記飛行物体の全体が、左斜め前方の、少し離れた位置から、艦首の発射口が画面の中心部付近に位置するように描かれている。発射口は、終始、黄白色の光に覆い隠されて見えない。
 黄白色の光は、最初は、画面の4分の1程度の大きさで、上記飛行物体の約3分の1を覆い隠していたが、その後、見る者に向かって、等間隔に5方向に分かれて、渦を巻くように放射状に拡散し、最終的には画面全体が黄白色の光で満たされ、宇宙空間は見えなくなる。
(イ) 対比
 本件映画対比表3部分と被告映像対比表3リーチ映像部分とは、前記(ア)のとおり、宇宙空間を背景に、戦艦全体が左斜め前方の位置から描かれている点、戦艦の艦首の発射口から黄白色の光線が発射され、その黄白色部分が拡大していく様子が描かれている点で共通している。
 しかしながら、前記ア(イ)で判示したとおり、宇宙空間を背景に、先端部に存在する発射口から光線を発する飛行物体を描いた映像は、特に目新しい表現ということはできず、また、艦船の全体を左斜め前方の位置から描くこと、光線を黄白色に描くこと、発射された光線が拡散していくように描くこともありふれた表現方法である。また、宇宙空間を戦艦が飛行すること自体は、アイデアに属し、著作権法により保護すべき表現ということはできない。
 したがって、上記両映像の上記共通点は、両映像にとって特徴的な表現ということはできず、この点が共通することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味を有するということはできない。
 そして、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうちの具体的な部分は、前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なる。
 以上の事実を総合考慮すると、本件映画対比表3部分と被告映像対比表3リーチ映像部分との間に、同一性は認められないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表3リーチ映像部分は、本件映画対比表3部分の複製物ということはできない。
カ 被告映像対比表3待機映像部分は本件映画対比表3部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表3部分
 本件映画対批評3部分の表現内容及び表現形式は前記オ(ア)aのとおりである。
b 被告映像対比表3待機映像部分
 被告映像対比表3待機映像部分は、約1秒間の動画映像であり、宇宙空間を背景に、戦艦様の飛行物体の艦首部の発射口から光線が発射される様子が描かれている。
 上記飛行物体の艦首部にある発射口は、正面から、画面の3分の1程度を占めている。
 上記映像部分の最初の場面では、飛行物体の底部の両側面に翼様のものが設置されている様子が見え、この翼様のものの前面には、小さな長方形の緑色の光が多数付いており、翼様のものの存在感は大きい。
 発射口の内部は、白色に発光しており、この発光部分は、最初は発射口の内部に収まっていたが、その後、画面を見る者に向かって、拡大し、最終的には画面全体を覆うようになり、宇宙空間は見えなくなる。
(イ) 対比
 本件映画対比表3部分と被告映像対比表3待機映像部分とは、前記(ア)のとおり、宇宙空間を背景に、戦艦の艦首の発射口から光線が発射され、その光線が拡大していく様子が描かれている点で共通している。
 しかしながら、前記アで判示したとおり、宇宙空間を背景に、先端部に存在する発射口から光線を発する飛行物体を描いた映像は、特に目新しい表現ということはできない。また、戦艦が宇宙空間を飛行すること自体は、アイデアに属し、また、海中又は宇宙空間を艦船又は飛行物体が進んで行くという表現は、上記同様、特徴あるものとはいえない。
 したがって、上記両映像の上記共通点は、両映像にとって特徴的な表現ということはできず、この点が共通することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味を有するということはできない。
 そして、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうちの具体的な部分は、前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なる。
 以上の事実を総合考慮すると、本件映画対比表3部分と被告映像対比表3リーチ映像部分との間に、同一性は認められないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表3待機映像部分は、本件映画対比表3部分の複製物ということはできない。
キ 被告映像対比表4リーチ映像部分は本件映画対比表4部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表4部分
 本件映画対比表4部分は、約2秒間の動画映像であり、宇宙空間を背景に、宇宙戦艦ヤマトの艦首部の波動砲発射口から発射された波動砲の様子が描かれている。
 上記映像部分では、宇宙戦艦ヤマト全体が、同戦艦から見て左斜め前方の、やや離れた位置から、艦首の発射口が画面の中心部付近に位置するように描かれている。
 発射口からは、黄白色の光が発せられており、この光は、最初は、画面の3分の1程度を占め、宇宙戦艦ヤマトの3分の1程度を覆い隠しているが、拡大していき、画面の6割程度を占めるまで拡大すると、今度は収縮し、発射口を覆い隠す程度の大きさのところで、その中央部から青白い光線が、勢いよく先端部を拡大しながら飛び出してくる。光線の先端が画面の左端に達すると、同光線の先端部は、画面の左端と発射口との中間地点付近まで戻り、その後、さらに、画面の左端まで拡大し、画面左端に達すると、また、上記中間地点付近まで戻り、その後、また、画面の左端まで拡大し、画面左端に達すると、宇宙戦艦ヤマトが画面の右方向へ移動する(すなわち、描写対象が光線の先端方向へ移動する。)。それとともに、上記光線の画面に占める割合が高くなり、最終的には、上記光線は、画面の7割程度を占めるようになり、光線が大量に発せられている様子が描かれ、色彩も若干黄色を帯びてくる。
b 被告映像対比表4リーチ映像部分
 被告映像対比表4リーチ映像部分は、約1秒間の動画映像であり、巨大な光線の様子が描かれている。
 上記映像部分は、最初は、画面の左側4分の3の部分のうちの概ね中央部に黄白色の光が描かれており、当該部分だけでは、どのような場面の映像であるかは判別し難いが、前後の映像から、上記黄白色の光は、戦艦様の飛行物体の艦首部の発射口から発射された光線であること、背景が宇宙空間であることが分かる。
 そして、黄白色の光の右端部(光線が発せられている元の部分)は画面の右奥の方向へ徐々に移動していき(すなわち、描写対象が光線の先端部に移っていき)、それに伴い、上記の光は波を打ち、光線が勢いよく大量に発せられている状況が描かれ、最終的には、画面のほぼすべての部分が黄白色の光で覆われる。
(イ) 対比
 本件映画対比表4部分と被告映像対比表4リーチ映像部分とは、前記(ア)のとおり、宇宙空間を背景に、戦艦の艦首の発射口から光線が発射されている点、その光線が勢いよく大量に発射されている点、描写対象が光線の発せられている元の部分から光線の先端部へと移っていく点で共通している。
 しかしながら、前記アで判示したとおり、宇宙空間を背景に、先端部に存在する発射口から光線を発する飛行物体を描いた映像は、特に目新しい表現ということはできない。また、その光線が大量に発射されているように描くことも、ありふれた表現形式である。さらに、戦艦が宇宙空間を飛行すること自体はアイデアに属し、また、海中又は宇宙空間を艦船又は飛行物体が進んで行くという表現は、上記同様、特徴あるものとはいえない。
 したがって、上記両映像の上記共通点のうち、宇宙空間を背景に、先端部に存在する発射口から大量の光線を発する戦艦を描いている点は、両映像にとって特徴的な表現ということはできず、この点が共通することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味を有するということはできない。
 そして、両映像の表現形式には、前記(ア)の認定から明らかなように、大きな相違があるから、描写対象が光線の発せられている元の部分から光線の先端部へと移っていくという点で表現形式が共通していることを考慮しても、両映像が同一であるということはできない。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表4リーチ映像部分は、本件映画対比表4部分の複製物ということはできない。
ク 被告映像対比表4待機映像部分は本件映画対比表4部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表4部分
 本件映画対比表4部分の表現内容及び表現形式は、前記キ(ア)aのとおりである。
b 被告映像対比表4待機映像部分
 被告映像対比表4待機映像部分は、約1秒間の動画映像であり、画面のほとんどが白色に発光しており、わずかに、画面の隅に、青色部分が見えるという状態から、上記発光部分が回転しながら拡大し、画面全体が完全に白色に発光するようになり、その状態が続く映像である。
 被告映像対比表4待機映像部分だけからは、どのような場面が描かれているかは分からないが、前後の映像から、宇宙空間を背景にして、画面の中央に位置する戦艦様の飛行物体の艦首部の発射口から、画面を見る者に向かって、白色に発光する光線が大量に勢いよく発射されている状況を、真正面の視点から描いた画像であることが分かる。
(イ) 対比
 本件映画対比表4部分と被告映像対比表4待機映像部分とは、前記(ア)のとおり、宇宙空間を背景にして、艦船の艦首の発射口から光線が勢いよく大量に発射されている状況を描いている点で共通する。
 しかしながら、前記ア(イ)で判示したとおり、宇宙空間を背景に、先端部に存在する発射口から光線を発する飛行物体を描いた映像は、特に目新しい表現ということはできない。また、その光線が大量に発射されているように描くことも、ありふれた表現形式である。さらに、戦艦が宇宙空間を飛行すること自体は、アイデアに属し、また、海中又は宇宙空間を艦船又は飛行物体が進んで行くという表現は、上記同様、特徴あるものではない。
 したがって、上記両映像の上記共通点のうち、宇宙空間を背景に、先端部に存在する発射口から大量の光線を発する戦艦を描いている点は、両映像にとって特徴的な表現ということはできず、この点が共通することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味を有するということはできない。
 そして、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうちの具体的な部分は、前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なる。
 以上の点を総合考慮すると、本件映画対比表4部分と被告映像対比表4待機映像部分との間に、同一性は認められないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表4待機映像部分は、本件映画対比表4部分の複製物ということはできない。
ケ 被告映像対比表13部分は本件映画対比表13部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表13部分
 本件映画対比表13部分は、約1秒間の動画映像であり、宇宙空間を背景に、宇宙戦艦ヤマトの主砲が立ち上がる様子が描かれている。
 上記映像部分では、正面から、宇宙戦艦ヤマトの2基の主砲とその背後の艦橋部分が、主砲を拡大して、発射口を中心に、かなり接近した位置から描かれているため、砲台部分は画面に入っておらず、映像の前半は、砲身のうち、下の一部は画面に現れていない。また、画面全体に明暗はなく、同系色の薄暗い色で描かれている。
 主砲は、1基の砲台に3門の砲身が取り付けられており、画面の手前側と奥側にそれぞれ1基配置され(奥側の主砲は手前側の主砲より若干高い位置にある。)、手前側の3門の砲身は若干、画面の左上方向を向き、奥側の3門の砲身は若干、画面の右上方を向いており、その背後の画面中央部分に艦橋が配置された構図となっている。手前側と奥側の主砲の大きさは、ほぼ同じである。
 そして、艦橋を中心にして、左右対称に近い形で、まず、右奥側の3門の砲身が右上方に向かって立ち上がり、同砲身がある程度立ち上がると、今度は、左手前側の3門の砲身が左上方に立ち上がる。
b 被告映像対比表13部分
 被告映像対比表13部分は、宇宙空間を背景に、戦艦様の飛行物体の主砲が、立ち上がる様子が描かれた動画映像である。
 上記映像部分は、正面から、戦艦様の飛行物体の3門の砲身を有する1基の主砲のすべての部分が画面中央に大きく描かれ、そのすぐ後ろに、1基の主砲が、手前の主砲に比べて、かなり小さく描かれ、さらに、後方の右に寄った位置に艦橋が描かれている。後ろの主砲は、手前の主砲の陰に隠れており、最初の場面では、砲身は2門しか見えない。艦橋は、光に照らされたように、明るく描かれているが、その他の部分は、薄暗い色で描かれている。
 そして、手前の主砲の3門の砲身は、上方に立ち上がり、それとともに、後方の1基の主砲の砲身が上方にわずかに移動する。
(イ) 対比
 本件映画対比表13部分と被告映像対比表13部分とは、前記(ア)のとおり、宇宙空間を背景に、正面から、戦艦の主砲が上方に立ち上がる様子が、主砲をアップにして描かれている点、その主砲は、1基の砲台に3門の砲身が設置されている点、主砲の後ろに艦橋が描かれている点で共通する。
 しかしながら、前記のとおり、宇宙空間に戦艦を飛行させること自体は、アイデアに属し、また、海中又は宇宙空間を艦船又は飛行物体が進んで行くという表現は、特徴あるものとはいえない。そして、戦艦に、3門の砲身を有する主砲を描くこと、及びその主砲が立ち上がることは極めてありふれた表現形式である。また、主砲を正面から大きく描くこと、その主砲の後ろに艦橋を描くこともありふれた表現形式である。
 したがって、上記共通点は、上記両映像にとって、特徴的な表現ということはできず、この点が共通することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味を有するということはできない。
 そして、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうちの具体的な部分は、前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なる。
 以上の点を総合考慮すると、本件映画対比表13部分と被告映像対比表13部分との間に、同一性は認められないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表13部分は、本件映画対比表13部分の複製物ということはできない。
コ 被告映像対比表14部分は本件映画対比表14部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表14部分
 本件映画対比表14部分は、約2秒の動画映像であり、宇宙空間を背景に、宇宙戦艦ヤマトの主砲が発射される様子が描かれている。
 上記映像部分では、正面下方の接近した位置から、宇宙戦艦ヤマトが描かれており、艦首部の先端上部部分、2基の主砲及び艦橋が描かれている。艦橋は、画面中央部に薄暗く描かれ、左側手前と右奥側にそれぞれ1基の砲台とその砲台上に3門の砲身が設置されている。左手前側の3門の砲身は、画面左上方を向いており、右奥側の3門の砲身は、画面右上方を向いており、艦橋を中心に概ね左右対称の形となっている。左側の砲身に比べ、右側の砲身は小さく、両方の砲身とも、その根元部分が艦首部分に隠れている。
 上記両主砲からは、白色に発光した光線が、次のような態様で発射される。すなわち、まず、右奥側の3門の砲身から、1つの巨大な白色に発光した光線(発射時の爆焔を表すように、光線の根元の部分が大きな円形になっており、この円形部分により砲身の上方の3分の1部分が隠れている。)が発射され、その後、その巨大な円形の発光部分が割れて、3門の砲身の先端部が現れ、各砲身からは、それぞれ、砲身の直径と同じ径の光線が発せられており、その後、その光線の発射が止み、次に、左手前側の砲身から、右奥側の砲身からの光線の発射と同じ態様で、光線が発射される。
b 被告映像対比表14部分
 被告映像対比表14部分は、宇宙空間を背景にして、戦艦様の飛行物体の主砲が発射される様子が描かれた動画映像である。
 上記映像部分では、戦艦様の飛行物体が、その主砲を中心にして、左斜め前方から描かれている。主砲は、手前に1基の砲台及び上方を向いた3門の砲身が大きく、その後方に1基の砲台が小さく、それぞれ描かれており、さらに、その右後方に、艦橋が、光に照らされたように、明るく描かれている。
 手前の主砲の3門の砲身からは、白色に発光した光線が発射されるが、この光線の発射の態様は、まず、3門の砲身から、発射時の爆焔を表すものと思われる、同砲身の先端部を隠すほどの大きさの楕円形の白色の発光部分と、その楕円形部分を根元とする3本の白色に発光した光線が生じ、その際、それらの白色の発光部分の周辺部分及び艦体は青白く発光し、その後、上記の楕円形の発光は止まり、各砲身から、それぞれ、白色の光線が発射されるというものである。
(イ) 対比
 本件映画対比表14部分と被告映像対比表14部分とは、前記(ア)のとおり、宇宙空間を背景にして、戦艦の主砲から白色の光線が発射される様子が描かれた点、主砲は、1基の砲台に3門の砲身が設置されている点、主砲から光線が発射される態様として、まず、砲身の先端部周辺に、砲身の先端部が全く見えなくなるような大きさの円形状ないし楕円形状の発光部分と同発光部分を根元として光線が発射される様子が描かれ、次に、上記円形状ないし楕円形状の発光部分が消滅し、3門の砲身から、それぞれ光線が発射される様子が描かれている点で共通する。
 しかしながら、宇宙空間に戦艦を飛行させることはアイデアに属し、また、海中又は宇宙空間を艦船又は飛行物体が進んで行くという表現は、特徴あるものとはいえない。そして、戦艦に、3門の砲身を有する主砲を描くこと、及びその主砲から光線が発射される様子を描くことは極めてありふれた表現形式である。また、乙第27号証によれば、戦艦の主砲の発射時、砲身の先端部分に、大きな円形の青白色の爆焔が描かれている画像が、本件映画の制作の前に既に存在していたことが認められることから、上記共通点のうちの光線が発射される上記態様もありふれた表現形式というべきである。
 したがって、上記両映像の上記共通点は、いずれも、両映像にとって特徴的な表現ということはできず、この点が共通することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味を有するということはできない。
 そして、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうちの具体的な部分は、前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なる。以上の点を総合考慮すると、本件映画対比表14部分と被告映像対比表14部分との間に、同一性は認められないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表14部分は、本件映画対比表14部分の複製物ということはできない。
サ 被告映像対比表15部分は本件映画対比表15部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表15部分
 本件映画対比表15部分は、約2秒間の動画映像であり、宇宙空間を背景にして、宇宙戦艦ヤマトに設置された多数の小砲から光線が発射される様子が描かれている。
 上記映像部分では、多数の小砲から、間欠的な破線状の光線が一斉に発射されている様子が、小砲の正面からの視点で描かれている。
 小砲の設置された砲塔は、いずれもドーム型をしており、画面上は9基の砲塔が描かれている。各砲塔は、上下3段に、上段には2基、中段には3基、下段には4基の砲塔が配置され、上段と下段の各砲塔には2門の砲身が、中段の各砲塔には4門の砲身が設置されている。いずれの砲身も、画面の左斜め上方を向いている状態から真上を向いている状態へゆっくりと旋回し、同じ速度で、同じ動きをする。砲身から発射される光線はオレンジ色をしており、発射時に発射口の爆焔は発生せず、砲塔の一部分が、爆焔のために発光するということもない。
b 被告映像対比表15部分
 被告映像対比表15部分は、宇宙空間を背景にして、複数の小砲から光線が発射される様子が描かれた動画映像である。
 上記映像部分では、2基の小砲から、間欠的な破線状の光線が発射されている様子が、小砲の手前上方の非常に接近した位置から描かれているため、画面上には、小砲の設置された砲塔の一部しか見えないが、ドーム型をしていることが推測され、各砲塔には各2門の砲身が設置されている。
 中心的に描かれた手前の砲塔は、左右へと高速で旋回し、各砲身は、それぞれ、別の動きをしている。砲身から発射される光線は白色であり、発射時には、発射口から白色に発光する爆焔が生じ、また、光線の速度は、本件映画対比表15部分における光線の速度に比べて、高速である。さらに、奥側の小砲の砲塔の一部は、光線の発射時の爆焔のため、白く発光している。
(イ) 対比
 本件映画対比表15部分と被告映像対比表15部分とは、前記(ア)のとおり、宇宙空間を背景に、間欠的な破線状の光線を発射している小砲を描いている点、同小砲の砲塔はドーム型をしている点、1基の砲塔に2門の砲身が設置されているものがある点で共通する。
 しかしながら、乙第36号証の2によれば、宇宙空間において、間欠的な破線状の光線を発射している小砲が描かれている画像が、本件映画の制作の前に既に存在していたことが認められ、また、証拠(乙31ないし33)によれば、戦艦の小砲の砲塔がドーム型であること、1基の砲塔に砲身が2門設置されていることも一般的であると認められる。
 したがって、上記両映像の上記共通点は、いずれも、両映像にとって特徴的な表現ということはできず、この点が共通することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味を有するということはできない。
 そして、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうちの具体的な部分は、前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なる。
 以上の点を総合考慮すると、本件映画対比表15部分と被告映像対比表15部分との間に、同一性は認められないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表15部分は、本件映画対比表15部分の複製物ということはできない。
シ 被告映像対比表16部分は本件映画対比表16部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表16部分
 本件映画対比表16部分は、宇宙戦艦ヤマトが宇宙空間を飛行している様子が描かれた約6秒間の動画映像である。
 上記映像部分では、何もない宇宙空間を飛行している宇宙戦艦ヤマトが、画面を見る者に接近して通過して行く様子が、同戦艦から見て左斜め前方の視点から描かれている。
 宇宙戦艦ヤマトは、画面右奥から、左手前に向かって、画面を見る者の方に近付いて来るように飛行して、徐々に大きくなり、本件映画対比表16部分の最終場面では、画面のほとんどを占めるように描かれ、画面を見る者に、宇宙戦艦ヤマトが目の前を通過して行く印象を与える。通過の際、艦体の側面部分が画面の中心に大きく描かれるため、同部分が特に注目される。
 宇宙戦艦ヤマトは、艦首部に発射口があることを除けば、一般的な戦艦の形状をしており、艦橋が甲板の後部に、主砲が艦橋の前に、それぞれ設置されており、喫水線付近で上下に色分けされ、上部は灰色に、下部は赤色となっており、翼様のものは付いていない。さらに、飛行している宇宙戦艦ヤマトは、宇宙空間と同様に薄暗く描かれている。
b 被告映像対比表16部分
 被告映像対比表16部分は、戦艦様の飛行物体が宇宙空間を飛行し、画面を見る者の近くを通過して行く様子が描かれた動画映像である。
 戦艦様の飛行物体は、画面中央奥から、左手前に向かって、画面を見る者に近付いて来るように飛行して、徐々に大きくなり、最終場面では、画面の下半分を占めるように描かれ、その時点では、同飛行物体を見下ろすような角度から描かれているため、画面を見る者に、目の前の下方の直近を通過して行く印象を与える。通過の際、主砲及び艦橋部分が画面の中心に大きく描かれるため、同部分が注目される。
 上記飛行物体の後方には、画面中央部分に、大きな惑星の右下4分の1程度が描かれ、また、同惑星の右側に、その陰に左半分が隠れている状態で、小さな惑星が描かれ、両惑星の右端の一部にのみ光が当たっている。大きな惑星の光が当たらない部分は、背景の宇宙空間と同じ暗青色であり、輪郭が不明確である。両惑星は映像の進行に伴い、右方向へ移動し、小さな惑星は、途中で画面から外れる。
 上記飛行物体は、艦首部に発射口があり、艦橋が甲板の後部に、主砲が艦橋の前に、それぞれ設置されており、喫水線付近で上下に色分けされ、上部は灰色に、下部は赤色となっており、また、側面に大きな翼様のものが設置されている。さらに、飛行物体は、光に照らされているように明るく描かれている。
(イ) 対比
 本件映画対比表16部分と被告映像対比表16部分とは、前記(ア)のとおり、宇宙空間をゆっくりと飛行している戦艦が、画面を見る者の近くを通過して行く様子について、当該戦艦の左前方の位置から描かれている点、戦艦が徐々に大きくなり、画面を見る者に、戦艦が自分の直近を通過して行く印象を与えるように描かれている点、戦艦の形状及び色彩が、艦首部に発射口があり、艦橋が甲板の後部に、主砲が艦橋の前に、それぞれ設置されており、喫水線付近で上下に色分けされ、上部は灰色に、下部は赤色となっている点で共通する。
 しかしながら、宇宙空間に戦艦を飛行させること自体は、アイデアに属し、また、海中又は宇宙空間を艦船又は飛行物体が進んで行くという表現は、特徴あるものとはいえない。また、乙第65号証によれば、昭和35年5月に発売された戦艦大和のプラスチック模型は、宇宙戦艦ヤマトの艦首に発射口があることを除けば、宇宙戦艦ヤマトと類似した形態及び色彩をしていることが認められ(宇宙戦艦ヤマトの形状及び色彩は、戦艦大和ないし一般的な戦艦の形状及び色彩に基づいて制作され、これに艦首の発射口を設けたものと認められる。)、したがって、宇宙戦艦ヤマトの形状及び色彩は、艦首に発射口がある点を除いて、ありふれたものであり、上記共通点の、艦橋が甲板の後部に、主砲が艦橋の前に、それぞれ設置されており、喫水線付近で上下に色分けされ、上部は灰色に、下部は赤色となっている点もありふれた表現形式というべきである。また、前記アで判示したように、本件映画が制作された時点で、先端に穴が空いた飛行物体が宇宙を航行している様子を描いた画像、先端に穴の空いた戦艦が海上を航行している様子を描いた画像が存在しており、艦首部に穴の空いた戦艦が特に目新しい表現ということはできない。さらに、戦艦が宇宙空間を飛行している様子を、戦艦から見て左前方の視点から描き、その際、戦艦が近付いて来るに従って大きくなり、画面を見る者としては、戦艦が自分の直近を通過して行く印象を持つように描くことも、ありふれた表現形式である。
 このように、上記の共通点ないし類似点は、著作権法上保護される表現に当たらないものであるか、又は、ありふれた表現形式にすぎないものである。
 そして、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうちの具体的な部分は、前記(ア)の認定から明らかなように、相当異なる。
 以上の点を総合考慮すると、本件映画対比表16部分と被告映像対比表16部分との間に、同一性は認められないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表16部分は、本件映画対比表16部分の複製物ということはできない。
ス 被告映像対比表17部分は本件映画対比表17部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表17部分
 本件映画対比表部分17部分は、宇宙戦艦ヤマトが宇宙空間を飛行している様子が描かれた約5秒間の動画映像である。
 上記映像部分では、宇宙戦艦ヤマトが、何もない宇宙空間を、画面の奥の方向へ遠ざかって行く様子が描かれたものであり、最初の場面では、画面全体に、拡大された宇宙戦艦ヤマトの左側面の一部が横側の位置から描かれ、画面を見る者に、目の前を通過して行く印象を与えている。その後、視点が宇宙戦艦ヤマトの左後方部分にゆっくり移るとともに、宇宙戦艦ヤマトの進行方向が画面左奥に向けられ、宇宙戦艦ヤマトの左斜め後方の位置から、宇宙戦艦ヤマトが、画面の中央やや左よりの奥の方に遠ざかって行くように、徐々に小さくなっていく様子が描かれている。
 宇宙戦艦ヤマトの艦尾は、円形をしており、全体がメインエンジンの噴出口となって、同噴出口がオレンジ色に発光している。また、艦尾の底部には、補助エンジンの噴出口が2つ設置されており、同噴出口もオレンジ色に発光している。さらに、艦尾には、相互に120度の角度に開いた3本の尾翼が設置されているが、翼様のものは付いていない。
b 被告映像対比表17部分
 被告映像対比表17部分は、宇宙空間を戦艦様の飛行物体が、画面の奥の方向へ遠ざかって行く様子が描かれた動画映像である。
 上記映像部分では、最初、飛行物体の艦橋の左側面が拡大されて、同飛行物体の左側後方の位置から描かれ、その後、上記飛行物体が描かれる位置が、飛行物体の後部を俯瞰する地点、真後ろの地点へと順次移っていき、最後の場面では、真後ろの位置から、飛行物体が画面の正面奥へ、遠ざかって行くように徐々に小さくなっていく様子が描かれている。この最後の場面では、飛行物体の先に、飛行物体に一部が隠れた状態で地球と思われる惑星が描かれており、飛行物体がこの惑星に向かっているという印象を受ける。
 上記飛行物体の艦尾は、円形をしており、全体がメインエンジンの噴出口となって、同噴出口が白色に発光している。また、上記飛行物体の両側面に大きな主翼が設置されており、同飛行物体を真後ろから見ると戦闘機ないし飛行機のように見える。さらに、艦尾の上部と底部に、補助エンジンの噴出口が、それぞれ2つずつ設置されており、上記主翼にも、各1つずつ補助エンジンの噴出口が設置され、いずれの噴出口も白色に発光している。艦尾には、相互に90度の角度に開いた4本の尾翼が設置されている。
(イ) 対比
 本件映画対比表17部分と被告映像対比表17部分とは、前記(ア)のとおり、宇宙空間を戦艦が画面奥へ遠ざかって行く様子が描かれている点、視点が変化していき、最終的には戦艦の後ろの位置から描写している点、戦艦の艦尾は全体がエンジンの噴出口となっており、同部分は発光している点で共通している。
 しかしながら、上記共通点のうち、宇宙空間に戦艦を飛行させること自体は、アイデアに属し、また、海中又は宇宙空間を艦船又は飛行物体が進んで行くという表現は特徴あるものとはいえない。また、上記共通点のうち、その他の部分は、いずれもありふれた表現形式である(後部の全面がエンジンの噴出口となっている飛行物体の画像は、乙第36号証の3に存在する。)。
 したがって、上記両映像に上記共通点が存在することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味を有するということはできない。
 そして、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうちの具体的な部分は、前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なる。
 以上の点を総合考慮すると、本件映画対比表17部分と被告映像対比表17部分との間に、同一性は認められないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表17部分は、本件映画対比表17部分の複製物ということはできない。
セ 被告映像対比表18部分は本件映画対比表18部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表18部分
 本件映画対比表18部分は、艦橋内部の様子が描かれた約3秒間の動画映像である。
 上記映像部分では、画面全体が薄暗く、艦橋内部の様子が、艦橋内部奥側から外を見る方向で、内部全体を見渡せるように、俯瞰する位置から描かれている。
 前方正面上方に巨大なパネルが描かれ、前方中央部に、4本の太い格子で区分された5つの窓があり、手前の床上には、手前側に操縦席が、正面の窓と両側壁の手前側に、複数の机と椅子が、中央部に、半球状のものが、それぞれ設置されており、その半球状のものの両側の左右対称となる位置に、1つずつの机と椅子が設置されている。
 上記パネルは、上辺が下辺よりも長い台形で、黒色をしており、碁盤目を有し、中央部に、中心部が赤色で、周辺部がオレンジ色の円形の物体が映し出されており、上記物体の周りは青くなっている。
 前方の5つに区分された窓は、中央部分の窓を中心にして、左右対称にそれぞれ2つの窓が配置されており、黒色である。窓を仕切る格子は、右側の2本が、くの字の形をしており、左側の2本は、逆くの字の形をしている。パネルと窓及び側壁との境界には仕切りがある。
 床及び床に設置された半球形の物体は、暗い茶色をしており、発光していない。両側面の壁部分には、それぞれの壁に、円形の大小の窓が1つずつ設置されている。
b 被告映像対比表18部分
 被告映像対比表18部分は、艦橋内部の様子が描かれた動画映像である。
 上記映像部分では、画面全体が青白く、明るく、艦橋内部の様子が、艦橋内部奥側から外を見る方向で、内部全体を見渡せるように、俯瞰する位置から描かれている。
 前方正面上方に、本件映画対比表18部分のパネルの幅の半分程度の幅の巨大なパネルが設けられ、前方中央部に、窓様のものがあり、手前の床上には、手前側に操縦席が、正面の窓様のものの手前と両側壁に複数の机と椅子が、中央部に、円錐状の物体が、それぞれ設置されており、その円錐状の物体の両側の左右対称となる位置に、1つずつ机様のものが設置されている。
 上記パネルは、上辺が下辺よりも長い台形で、青白く発光し、碁盤目を有し、中央部に、龍がとぐろを巻いているような物体が映し出されている。
 前方の窓は、横に細長い長方形をしており、仕切りがなく、中央部分は青白く発光し、右側の一部は白く発光し、左側の3分の1部分は黒色である。窓とパネルとの境界には仕切りがない。
 床は、青白く発光している。両側壁には、その中ほどの高さのところに、多数の小さな円形の発光体が一列に並んで配置してあり、窓はない。
(イ) 対比
 本件映画対比表18部分と被告映像対比表18部分とは、前記(ア)のとおり、艦橋内部の様子が、艦橋内部奥側から外を見る方向で、内部全体を見渡せるように、俯瞰する位置から描かれている点、前方正面上方に巨大なパネルが設けられ、前方中央部に、窓ないし窓様のものがあり、手前の床上には、手前側に操縦席が、正面の窓ないし窓様のものの手前に机と椅子が、中央部に物体が、それぞれ設置されており、その物体の両側の左右対称となる位置に、1つずつ机様のものが設置されている点で共通する。
 しかしながら、宇宙戦艦ヤマトの艦橋内部の様子を、艦橋内部奥側から外を見る方向で、内部全体を見渡せるように、俯瞰する位置から描いているものは、本件原図柄のうち、「第一艦橋」と表示された図(丁5の152頁)にあるところ、本件映画対比表18部分と同本件原図柄部分とは、構図、各設置物の配置及び相互の寸法関係がほとんど同一であるから、本件映画対比表18部分から同本件原図柄部分の表現上の本質的な特徴を直接感得することができる。しかも、本件原図柄は、前記のとおり、本件映画の制作過程において作成されたものであるから、本件映画対比表18部分は、本件原図柄の上記部分に依拠して制作されたものと認められ、したがって、本件映画対比表18部分は、本件原図柄の上記部分の二次的著作物であると解するのが相当である。そうすると、本件映画の本件映画対比表18部分の著作権は、補助参加人P1が作成した原著作物である本件原図柄の上記部分と共通し、その実質を同じくする部分には生じないというべきであるところ、上記共通点のうち、艦橋内部の様子を、艦橋内部奥側から外を見る方向で、内部全体を見渡せるように、若干俯瞰した視点から描いている点、前方中央部に窓があり、手前の床上には、手前側に操縦席が、床の中央部から左右対称の両側の位置に机と椅子が、それぞれ設置されている点は、本件原図柄(丁5の152頁)に表現されているから、同部分については、著作権が生じない。
 また、証拠(乙57の4)によれば、本件映画が制作される以前に制作されたアニメーション映画において、見上げるような高さの位置に巨大なパネルが設置されている様子が描かれた場面があることが認められることから、上記共通点のうち、巨大なパネルを設置した点は特に目新しい表現ということはできない。また、床の中央部に何らかの物体を設置することも特徴のある表現ということはできない。
 したがって、上記両映像に上記共通点が存在することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味を有するということはできない。
 そして、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうちの具体的な部分は、前記(ア)の認定から明らかなように、相当異なる。
 以上の点を総合考慮すると、本件映画対比表18部分と被告映像対比表18部分との間に、同一性は認められないというべきである。
 なお、原告は、本件原図柄と本件映画の関係について、著作権法16条本文において「その映画の著作物において翻案され、又は複製された小説、脚本、音楽その他の著作者」を除いているのは、既存の著作物の著作者をクラシカルオーサーとして映画の著作物とは別個の著作物の著作者として保護しようとするものであり、映画のために制作された著作物については、例外的に脚本及び映画音楽についてのみ、その著作者をクラシカルオーサーとして保護するとの趣旨であると理解し、それを前提に、原作漫画の存在しないアニメーション映画に使用されている図柄は、当該アニメーション映画の原著作物とはならない旨主張する。
 しかしながら、著作権法16条前段の規定は、映画の著作物の著作権者を明らかにするとともに、当該映画の著作物において翻案され、又は複製された小説、脚本、音楽その他の著作物について、それが別個の著作物として観念できる場合には、映画の著作物とは異なる者が著作権者となり得る旨を示したものと解され、原作漫画の存在しないアニメーション映画に使用されている図柄であっても、アニメーション映画で翻案された既存の他の著作物と同様に、完成したアニメーション映画とは別個の著作物と観念できる場合には、当該アニメーション映画の原著作物となり得るというべきである。原告の上記主張は独自の見解であり、採用できない。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表18部分は、本件映画対比表18部分の複製物ということはできない。
ソ 被告映像対比表19部分は本件映画対比表19部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表19部分
 本件映画対比表19部分は、約4秒間の動画映像であり、青色と薄青色の比較的コントラストの強い縦縞の壁を背景に、黒色のコート様のユニフォームを着て、軍帽を目深に被り、手を後ろに回して直立し、口を動かして話をしている体格のよい熟年男性が、正面から描かれており、画面には、最初は、男性の膝上の辺りから頭の部分までが映っているが、徐々に顔を中心とした映像となり、最後の場面では、胸から頭までが描かれている。
 男性の顔は、帽子に隠れていない部分では、頬骨、鼻、耳以外は、白い髭で覆われており、唇は全く見えない。男性の髭は、口髭と顎髭が分離しておらず、顔の輪郭に沿った形をしており、短い。この顔の大部分を覆っている髭部分は、印象が強い。
 帽子は、上部が白色で、下部が黒色であり、中央に金色の徽章と金色の顎紐が付いている。
 コート様のユニフォームは、黒色で、左前に合わせるようになって、合わせ部分が大きく、ベルトで止められており、左の胸部分に金色の碇様の図形が描かれている。襟は大きく、折り返されて肩に被さっており、折り返された裏地部分は、白く縁取られた赤色である。男性の襟元からは、白いものが見える。ベルトには、拳銃様のものが装着されている。
b 被告映像対比表19部分
 被告映像対比表19部分は、暗い背景の屋内で、青色のコート様のユニフォームを着て、軍帽を目深に被り、手を下に垂らした状態で直立し、口を終始閉じている体格のよい熟年男性が、男性の右斜め前方から描かれている動画映像であり、画面には、最初は、上半身すべてが映され、徐々に顔を中心とした映像となり、最後の場面では、頭、顔から肩の下辺りまでが描かれている。
 男性の顔は、灰色の口髭と顎髭が生えているが、下唇は髭に覆われておらず、耳は、コート様のユニフォームの襟部分に隠れて見えない。男性の顎髭は、下方に若干伸びている様子が描かれている。また、髭で覆われている部分が本件映画対比表19部分で描かれている男性よりも少ないことから、鼻や口部分の印象が強くなっている。
 帽子は、上部が白色、下部が黒色であり、中央に金色の徽章と金色の顎紐が付いている。帽子の上部の白色の部分は、丸くふくらんだような形をしている。
 コート様のユニフォームは、身体の中央からやや右側にずれた位置で留めるようになっており、ベルトはなく、左の胸部に金色の碇様の図形が描かれている。襟は大きく、立ち上がり部分も男性の顔の半分程度を覆うほどの高さがあり、折り返された裏地部分は、白い縁取りがされた赤色である。男性の襟元から、白いスカーフ様のものが見える。
(イ) 対比
 前記(ア)のとおり、本件映画対比表19部分と被告映像対比表19部分とは、屋内で、コート様のユニフォームを着て、軍帽を目深に被り、直立している体格のよい熟年男性が描かれている点、最初は上半身すべてが映されている映像が、徐々に顔がクローズアップされ、最後の場面では、頭、顔及び肩ないし胸の辺りまでが描かれている点、男性の顔には口髭と顎髭が生えている点、帽子は、上部が白色、下部が黒色であり、中央に金色の徽章と金色の顎紐が付いている点、コート様のユニフォームの襟は大きく、折り返された裏地部分は、白い縁取りがされた赤色である点、襟元から白いものが見える点で共通する。
 しかしながら、上記両映像中に描かれている男性には、前記(ア)のとおりの相違点があるが、アニメーション映画の登場人物は、顔や服装といった細部の違いから、相当に異なった印象を受けることが多いものと解されるところ、上記のような顔(とりわけ髭の分量から受ける印象)や、服装に大きな違いがあれば、別人として認識されると解される。また、その他の表現形式や、上記の共通する表現形式における具体的な表現形式において、前記(ア)の認定で明らかなように、両映像は大きく異なる。
 以上の点を総合考慮すると、本件映画対比表19部分と被告映像対比表19部分との間に、同一性は認められないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表19部分は、本件映画対比表19部分の複製物ということはできない。
タ 被告映像対比表20部分は本件映画対比表20部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表20部分
 本件映画対比表20部分は、約3秒の動画映像であり、軍帽を被り、髭を生やし、大きな襟の服を着た熟年男性が、顔を拡大して、正面から描かれている。男性は、口を大きく動かして、大声を出している。
 男性の顔は、左目は帽子のひさしに隠れており、帽子に隠れていない部分では、頬骨、鼻、耳以外は、白い髭で覆われており、唇は全く見えない。男性の髭は、口髭と顎髭が分離しておらず、顔の輪郭に沿った形をしており、短い。この顔の大部分を覆っている髭部分は、印象が強い。
 帽子は、上部が白色、下部が黒色であり、中央に金色の徽章と金色の顎紐が付いている。
 襟は、折り返されて肩に被さっており、折り返された裏地部分は、白く縁取られた赤色である。襟元からは、白いスカーフ様のものが見える。
b 被告映像対比表20部分
 被告映像対比表20部分は、画面中央に、軍帽を被り、髭を生やし、大きな襟の服を着た熟年男性が、胸より上の部分を、また、向かって右側後方にコートを着た白髪の男性が、正面から描かれている動画映像である。
 手前の軍帽を被った男性の顔は、左目は帽子のひさしに隠れており、灰色の口髭と顎髭が生えている。この男性の口髭と顎髭は分離しており、顎髭は下方に若干伸びている様子が描かれている。また、髭で覆われている部分が、本件映画対比表20部分で描かれている男性よりも少ないことから、鼻や口部分の印象が強い。
 帽子は、上部が白色、下部が黒色であり、中央に金色の徽章と金色の顎紐が付いている。帽子の上部の白色の部分は丸くふくらんだような形をしている。
 襟は立った状態で折り返されており、折り返された裏地部分は、白く縁取られた赤色である。襟元からは、白いスカーフ様のものが見える。
(イ) 対比
 前記(ア)のとおり、本件映画対比表20部分と被告映像対比表20部分とは、大きな襟の服を着て、軍帽を目深に被っている熟年男性の顔が拡大されて描かれている点、男性の顔には口髭と顎髭が生えている点、男性の左目は帽子のひさしに隠れている点、帽子は、上部が白色、下部が黒色であり、中央に金色の徽章と金色の顎紐が付いている点、襟の折り返された裏地部分は白く縁取られた赤色である点、襟元から白いスカーフ様のものが見えている点で共通する。
 しかしながら、上記両映像中に描かれている男性には、上記(ア)のとおりの相違点があるところ、上記ソ(イ)に判示したとおり、アニメーション映画の登場人物としては、このような相違点があれば、別人として認識されると解される。また、両映像のその他の表現形式や、上記の共通する表現形式における具体的な部分は、前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なる。
 以上の点を総合考慮すると、本件映画対比表20部分と被告映像対比表20部分との間に、同一性は認められないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表20部分は、本件映画対比表20部分の複製物ということはできない。
チ 被告映像対比表21部分は本件映画対比表21部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表21部分
 本件映画対比表21部分は、約10秒間の動画映像であり、室内で、眼鏡をかけ、頭髪のほとんどない男性が、椅子に腰掛けて、画面には映っていない者に対して話しかけながら、湯飲み茶碗で日本酒を飲んでいる様子が、男性の右斜め前方から描かれている。
 男性の人相は、@頭頂部が比較的尖った下ぶくれの輪郭で、髪の毛は、耳の上の辺りだけにわずかに生えており、A口が大きく誇張され、B目は黒い点であり、C小さな丸いフレームの眼鏡をかけており、D眼鏡は、ずれ落ちて、目が眼鏡の上に露出しており、E鼻は、山型をし、F眉毛は、細く、長い八の字の形をしている。
 男性の右横には、小さな金属製の机があり、男性は、椅子に腰掛けて、右の肘を机の上に置いている。机の上には、日本酒の一升瓶が置いてある。
 男性は、左手で日本酒を飲もうとし、一口飲む前に、舌なめずりをするように長い舌をほおの辺りまで出し、飲み終わると、右手で口を拭うような仕草をする。
 男性は、半袖の白色の服を着ており、左胸部に赤い十字の図形が描かれており、襟元は赤く着色されている。
 男性の背後には、本棚があり、百科事典のような体裁の本が並んでいる。
b 被告映像対比表21部分
 被告映像対比表21部分は、飛行物体内と思われる広い場所で、右手を肩の位置まで挙げて立っている頭髪のほとんどない男性が、男性の左斜め前方から描かれている動画映像であり、男性の顔が徐々に拡大される様子が描かれている。
 男性の人相は、@頭頂部は尖っておらず、下ぶくれの輪郭で、髪の毛は、耳の上の辺りだけにわずかに生えており、A口は大きいが、誇張されておらず、B目は、黒い点であるが、眼鏡の奥で、はっきりとは見えず、C普通の大きさの、角が丸味を帯びた四角いフレームの眼鏡をかけており、D眼鏡はずれ落ちておらず、E鼻は、団子鼻であり、F眉毛は、短く、太い八の字の形をしている。
 男性は、挨拶をするように、右手を肩の位置まで挙げ、左手は後ろに回しており、男性の上半身が徐々に拡大されていくが、その間、男性は、体を全く動かさない。
 男性は、袖をまくった緑色のジャンパーを、前を開けて羽織り、内側に着ている白いTシャツが見えている。
(イ) 対比
 前記(ア)のとおり、本件映画対比表21部分と被告映像対比表21部分では、頭髪がほとんどなく、眼鏡を掛けた男性が描かれている点、その男性の口が大きい点で共通するが、上記(ア)の認定から明らかなように、その他の表現形式や、上記の共通する表現形式のうちでも具体的な表現形式は、大きく異なる。特に、眼鏡の形や大きさ、鼻の形、口部分の形状において、両映像の男性の人相が大きく異なり、両人物は、アニメーション映画の登場人物としては完全に別人と認識されるものといえる。
 したがって、本件映画対比表21部分と被告映像対比表21部分との間に、同一性は認められないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表21部分は、本件映画対比表21部分の複製物ということはできない。
ツ 被告映像対比表22部分は本件映画対比表22部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表22部分
 本件映画対比表22部分は、1秒弱の動画映像であり、室内において、赤色をしたロボットの上部が、ロボットの若干右斜め前方の位置から、拡大されて描かれている。
 本件映画対比表22部分に描かれているロボットは、後記テの本件映画対比表23部分に描かれているロボットと同一のロボットであり、その上半身部分が描かれている。
 本件映画対比表22部分に描かれたロボットの特徴は、後記テ(ア)のとおりであり、本件映画対比表22部分では、左側背後に室内の出入り口があり、ロボットの頭部に設置されている計器の針が動き、頭部の最下部に上下二列に帯状に配置された、多数の小さな長方形のパネル様のものの上段の部分が、黄色く点滅している様子が描かれている。
b 被告映像対比表22部分
 被告映像対比表22部分は、宇宙空間を背景に、人型のロボット(ただし、足はない。)3体が、ロボットの若干左斜め前方の位置から描かれた動画映像であり、最初は、中央の1体だけが画面中央に描かれており、他の左右の2体は画面上には一部しか映っていないが、徐々に中央のロボットが画面奥に遠ざかって小さくなっていき、それに伴い、左右の2体も画面上に現れてくる様子が描かれている。
 上記各ロボットは、いずれも同一のものであり、頭部、胴部、下半身の3つのパーツに分かれており、各パーツ間には若干の隙間があり、いずれのパーツも、その大部分がオレンジ色をしている。
 ロボットの頭部は、半球状をしており、頭頂部に小さな突起物があり、両側面に円形の緑色の目が付いており、鼻の位置が、白色に色分けされている。頭部には、計器様のものは一切付いていない。頭部の最下部には、多数の小さな長方形の黄色いパネル様のものが一列の帯状に付いている。
 胴部には、腕が付いており、上腕の部分と手首の部分の間は蛇腹様の部材となっている。手には、指様のものが付いているが、具体的な形状は分からない(別の映像部分から、手には5本の指が付いていることが分かる。)。胴部の中央部分には、緑色の円形のものがあり、その左右に小さな白い突起物が付いている。胴部には、計器様のものは一切付いていない。胴部の最下部には、多数の小さな長方形の黄色いパネル様のものが一列の帯状に付いている。
 下半身は、人間の足の代わりに円錐状のものが付いている。下半身の最上部には、多数の小さな長方形の黄色いパネル様のものが一列の帯状に付いている。
(イ) 対比
 本件映画対比表22部分と被告映像対比表22部分とは、前記(ア)のとおり、ロボットが描かれている点で共通する。
 しかしながら、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式であるロボットが描かれているという点における具体的な表現形式は、前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なる。
 したがって、本件映画対比表22部分と被告映像対比表22部分との間に、同一性は認められないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表22部分は、本件映画対比表22部分の複製物ということはできない。
テ 被告映像対比表23部分は本件映画対比表23部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表23部分
 本件映画対比表23部分は、約2秒間の動画映像であり、室内において、赤色をした人型のロボットの、頭部、胴部、下半身の3つのパーツに分離する様子が、正面から描かれている。ロボットは、青色の壁と茶色の床を背景として、画面上にすべての部分が入るように描かれており、途中で、頭部が分離して、浮遊し始め、続いて、胴部が右側に回転した後、左側に回転して元の位置に戻り、その後、胴部が下半身と分離して、浮遊し始める。
 ロボットの頭部は、半球状をしており、頭頂部に3つの大きな鶏冠状の突起物があり、両側面はガラスで覆われており、そのガラスの中に円形の目が付いている。頭部の正面中央部には、円形の計器が3つ付いており、その両側にも小さな円形の計器がそれぞれ1つずつ付いているが、これらの計器は、ときどき、白色や黄色に発光する。鼻に相当するものはない。頭部の最下部には、多数の小さな長方形の黄色いパネル様のものが一列の帯状に付いており、同パネル様の部分は、ときどき発光する。また、頭部の両側面の下部から、1本ずつ短いアンテナが出ている。
 胴部には腕が付いており、手には5本の指がある。胴部の中央部には、1つの円形の計器と、その下に黄色の部品が2つ、更にその下に小さな白色の部品が5つ付いている。
 下半身には、人と同様の太い足が付いている。
b 被告映像対比表23部分
 被告映像対比表23部分は、被告映像対比表22部分のロボットと同一のロボットが、室内において、両腕を挙げて、頭部、胴部、下半身の3つのパーツに分離している様子が正面から描かれている動画映像である。背景には、パネル様のものが複数設置されている壁が描かれている。
(イ) 対比
 本件映画対比表23部分と被告映像対比表23部分とは、前記(ア)のとおり、室内において、ロボットが、頭部、胴部、下半身の3つのパーツに分離している様子を正面から描いた点、ロボットの頭部が半球状をしており、両側面に円形の目が付いており、その最下部には、多数の小さな長方形のパネル様のものが一列の帯状に付いている点、胴部には腕が付いている点において共通する。
 しかしながら、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうちの具体的な部分は、前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なる。特に、両映像のロボットの形状が大きく異なり、両ロボットは、アニメーション映画に登場するロボットとしては完全に別のロボットと認識されるものといえる。
 以上の点を総合考慮すると、本件映画対比表23部分と被告映像対比表23部分との間に、同一性は認められないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表23部分は、本件映画対比表23部分の複製物ということはできない。
(5) 本件映画と被告パチスロ映像との対比
 甲第15号証の1及び弁論の全趣旨によれば、以下のとおり認められる。
ア 被告映像対比表28部分は本件映画対比表28部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表28部分
 本件映画対比表28部分は、約14秒間の動画映像であり、陸地上に停泊している宇宙戦艦ヤマトが、宇宙戦艦ヤマトから見て右斜め前方の位置から描かれており、映像を見る者の位置が徐々に宇宙戦艦ヤマトから遠ざかっていき、最初は、画面上に宇宙戦艦ヤマトの艦橋部とその周辺部分しか見えないが、次第に、宇宙戦艦ヤマトの全体が見えてきて、さらに、宇宙戦艦ヤマトが陸上に停泊している状態であることが分かるように描かれている。
 宇宙戦艦ヤマトの形状ないし色彩は、艦首部に発射口があり、艦橋が甲板の後部に、主砲が艦橋の前に、それぞれ設置されており、喫水線付近で上下に色分けされ、上部は灰色に、下部は赤色となっている。
 陸地の部分は茶色であるが、空の部分はやや暗い青色で、本件映画対比表28部分の映像だけからは、画面上に陸地の部分が現れない段階では、宇宙戦艦ヤマトが宇宙を飛行中であるようにも見える。
b 被告映像対比表28部分
 被告映像対比表28部分は、青白い宇宙空間を戦艦様の飛行物体の飛行していく様子が、同飛行物体から見て右斜め前方の位置から描かれている動画映像である。
 上記飛行物体は、終始同じ大きさで描かれているが、左右に揺れ、背景にある白い光の粒子や青色の惑星が画面左奥の方向へ移動していくことから、飛行物体が、画面右手前の方向に向かって飛行していることが分かる。
 戦艦様の飛行物体は、艦首部に発射口があり、艦橋が甲板の後部に設置されており、喫水線付近で上下に色分けされ、上部は灰色に、下部は赤色となっており、側面に大きな翼様のものが設置されている。
 また、艦首部及び喫水下のバルジが強調されて大きく描かれている。
(イ) 対比
 本件映画対比表28部分と被告映像対比表28部分とは、前記(ア)のとおり、戦艦が、同戦艦の右斜め前方の位置から描かれている点、戦艦には、艦首部に発射口があり、艦橋が甲板の後部に設置されており、喫水線付近で上下に色分けされ、上部は灰色に、下部は赤色となっている点が共通する。
 しかしながら、前記( )4 シで判示したように、上記共通点のうち、戦艦の形状及び色彩として、艦橋が甲板の後部に設置され、喫水線付近で上下に色分けされ、上部は灰色に、下部は赤色として描かれることは、ありふれた表現形式というべきである。また、前記アで判示したように、艦首部に穴の空いた戦艦が特に目新しい表現ということはできない。さらに、戦艦をその前方左側から描くことも、ありふれた表現形式である。
 したがって、上記両映像に上記共通点が存在することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味を有するということはできない。
 そして、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうちの具体的な部分は、前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なる。
 以上の点を総合考慮すると、本件映画対比表28部分と被告映像対比表28部分との間に、同一性は認められないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表28部分は、本件映画対比表28部分の複製物ということはできない。
イ 被告映像対比表31部分は本件映画対比表31部分の複製物といえるか。
(ア) 両映像の内容及び形式
a 本件映画対比表31部分
 本件映画対比表31部分は、約3秒間の動画映像であり、宇宙空間において、3基の主砲(1基の砲台に3門の砲身がある。)が画面左側奥の天体に狙いを定めている場面が、同主砲の手前左側の、同主砲に接近した位置から描かれている。
 3基の主砲のうち、最も手前の砲台の3門の砲身が中心的に描かれ、左端の砲身が、最初は上方を向いていたのが、下降して、他の2門の砲身と並んで、まっすぐ前方を向くまでの様子が描かれている。なお、砲身からの発砲はない。
 攻撃対象となっている天体は、画面左側奥に描かれており、全体的に灰色で、半球状の天体の上に略円錐状の山が乗っているような形状であり、その円錐状の山には、多数の高層構造物が築造されており、天体上に都市が造られているような印象を与える。
b 被告映像対比表31部分
 被告映像対比表31部分は、宇宙空間において、3門の砲身が、画面中央奥にある赤色の天体を実際に攻撃している様子が、同砲身の手前上方の、同砲身に接近した位置から描かれている動画映像である。
 3門の砲身は、最初は、左下方を向いているが、立ち上がって、正面の天体の方向を向き、まず、左端の砲身から、光線を天体に向けて発射し、次に、右端の砲身から、光線を天体に向けて発射する。
 攻撃対象となっている天体は、画面中央奥に描かれ、全体的に赤色をしており、逆円錐形状をした天体の上に略円錐状の山が乗っているような形状である。天体には、光線が着弾したような発光部分が散見される。
(イ) 対比
 本件映画対比表31部分と被告映像対比表31部分とでは、前記(ア)のとおり、宇宙空間において、主砲が天体に向いている場面が、主砲に接近した位置から描かれている点、攻撃対象である天体が画面上に描かれている点で共通する。
 しかしながら、主砲が攻撃対象を向き、その攻撃対象を画面上に映すという表現形式は、極めてありふれており、また、その様子を主砲側の、主砲に接近した位置から描くこともありふれている。したがって、上記共通点は、いずれも、ありふれた表現形式であり、このような共通点が存在することが、両映像の同一性の判断において、大きな意味を有するということはできない。
 そして、両映像のその他の表現形式や上記の共通する表現形式のうちの具体的な部分は、前記(ア)の認定から明らかなように、大きく異なる。
 以上の点を総合考慮すると、本件映画対比表31部分と被告映像対比表31部分との間に、同一性は認められないというべきである。
(ウ) 小括
 したがって、被告映像対比表31部分は、本件映画対比表31部分の複製物ということはできない。
ウ 別紙対比表5の「侵害映像2」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表5リーチ映像部分」という。)は、別紙対比表5の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「本件映画対比表5部分」という。)の複製物といえるか。
 いずれも、前記( )アにお4 いて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、被告映像対比表5リーチ映像部分は、本件映画対比表5部分の複製物ということはできない。
エ 別紙対比表5の「侵害映像1」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表5待機映像部分」という。)は、本件映画対比表5部分の複製物といえるか。
 いずれも、前記(4)イにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、被告映像対比表5待機映像部分は、本件映画対比表5部分の複製物ということはできない。
オ 別紙対比表6の「侵害映像2」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表2リーチ映像部分」という。)は、別紙対比表6の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「本件映画対比表6部分」という。)の複製物といえるか。
 いずれも、前記(4)ウにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、被告映像対比表6リーチ映像部分は、本件映画対比表6部分の複製物ということはできない。
カ 別紙対比表6の「侵害映像1」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表6待機映像部分」という。)は、本件映画対比表6部分の複製物といえるか。
 いずれも、前記( )エにお4 いて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、被告映像対比表6待機映像部分は、本件映画対比表6部分の複製物ということはできない。
キ 別紙対比表7の「侵害映像2」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表7リーチ映像部分」という。)は、別紙対比表7の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「本件映画対比表7部分」という。)の複製物といえるか。
 いずれも、前記(4)オにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、被告映像対比表7リーチ映像部分は、本件映画対比表7部分の複製物ということはできない。
ク 別紙対比表7の「侵害映像1」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表7待機映像部分」という。)は、本件映画対比表7部分の複製物といえるか。
 いずれも、前記(4)カにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、被告映像対比表7待機映像部分は、本件映画対比表7部分の複製物ということはできない。
ケ 別紙対比表8の「侵害映像2」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表8リーチ映像部分」という。)は、別紙対比表8の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「本件映画対比表8部分」という。)の複製物といえるか。
 いずれも、前記(4)キにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、被告映像対比表8リーチ映像部分は、本件映画対比表8部分の複製物ということはできない。
コ 別紙対比表8の「侵害映像1」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表8待機映像部分」という。)は、本件映画対比表8部分の複製物といえるか。
 いずれも、前記(4)クにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、被告映像対比表8待機映像部分は、本件映画対比表8部分の複製物ということはできない。
サ 別紙対比表24の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表24部分」という。)は、別紙対比表24の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「本件映画対比表2 4部分」という。)の複製物といえるか。
 いずれも、前記(4)ケにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、被告映像対比表24部分は、本件映画対比表24部分の複製物ということはできない。
シ 別紙対比表25の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表25部分」という。)は、別紙対比表25の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「本件映画対比表2 5部分」という。)の複製物といえるか。
 いずれも、前記(4)コにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、被告映像対比表25部分は、本件映画対比表25部分の複製物ということはできない。
ス 別紙対比表26の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表26部分」という。)は、別紙対比表26の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「本件映画対比表2 6部分」という。)の複製物といえるか。
 いずれも、前記(4)サにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、被告映像対比表26部分は、本件映画対比表26部分の複製物ということはできない。
セ 別紙対比表27の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表27部分」という。)は、別紙対比表27の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「本件映画対比表2 7部分」という。)の複製物といえるか。
 いずれも、前記(4)シにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、被告映像対比表27部分は、本件映画対比表27部分の複製物ということはできない。
ソ 別紙対比表29の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表29部分」という。)は、別紙対比表29の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「本件映画対比表2 9部分」という。)の複製物といえるか。
 いずれも、前記(4)スにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、被告映像対比表29部分は、本件映画対比表29部分の複製物ということはできない。
タ 別紙対比表30の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表30部分」という。)は、別紙対比表30の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「本件映画対比表3 0部分」という。)の複製物といえるか。
 いずれも、前記(4)セにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、被告映像対比表30部分は、本件映画対比表30部分の複製物ということはできない。
チ 別紙対比表32の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表32部分」という。)は、別紙対比表32の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「本件映画対比表3 2部分」という。)の複製物といえるか。
 いずれも、前記(4)タにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、被告映像対比表32部分は、本件映画対比表32部分の複製物ということはできない。
ツ 別紙対比表33の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表33部分」という。)は、別紙対比表33の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「本件映画対比表3 3部分」という。)の複製物といえるか。
 いずれも、前記(4)チにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、被告映像対比表33部分は、本件映画対比表33部分の複製物ということはできない。
(6) 本件映画と被告プレステゲーム映像との対比
 甲第19号証の1及び弁論の全趣旨によれば、以下のとおり認められる。
ア 別紙対比表34の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表34部分」という。)は、別紙対比表34の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「本件映画対比表3 4部分」という。)の複製物といえるか。
 いずれも、前記(4)ケにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、被告映像対比表34部分は、本件映画対比表34部分の複製物ということはできない。
イ 別紙対比表35の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表35部分」という。)は、別紙対比表35の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「本件映画対比表3 5部分」という。)の複製物といえるか。
 いずれも、前記(4)コにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、被告映像対比表35部分は、本件映画対比表35部分の複製物ということはできない。
ウ 別紙対比表36の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表36部分」という。)は、別紙対比表36の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「本件映画対比表3 6部分」という。)の複製物といえるか。
 いずれも、前記(4)サにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、被告映像対比表36部分は、本件映画対比表36部分の複製物ということはできない。
エ 別紙対比表37の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表37部分」という。)は、別紙対比表37の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「本件映画対比表3 7部分」という。)の複製物といえるか。
 いずれも、前記(4)シにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、被告映像対比表37部分は、本件映画対比表37部分の複製物ということはできない。
オ 別紙対比表38の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表38部分」という。)は、別紙対比表38の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「本件映画対比表3 8部分」という。)の複製物といえるか。
 いずれも、前記(4)スにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、被告映像対比表38部分は、本件映画対比表38部分の複製物ということはできない。
カ 別紙対比表39の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表39部分」という。)は、別紙対比表39の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「本件映画対比表3 9部分」という。)の複製物といえるか。
 いずれも、前記(4)セにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、被告映像対比表39部分は、本件映画対比表39部分の複製物ということはできない。
キ 別紙対比表40の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表40部分」という。)は、別紙対比表40の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「本件映画対比表4 0部分」という。)の複製物といえるか。
 いずれも、前記(4)ソにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、被告映像対比表40部分は、本件映画対比表40部分の複製物ということはできない。
ク 別紙対比表41の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表41部分」という。)は、別紙対比表41の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「本件映画対比表4 1部分」という。)の複製物といえるか。
 いずれも、前記(4)タにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、被告映像対比表41部分は、本件映画対比表41部分の複製物ということはできない。
ケ 別紙対比表42の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表42部分」という。)は、別紙対比表42の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「本件映画対比表4 2部分」という。)の複製物といえるか。
 いずれも、前記(4)チにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、被告映像対比表42部分は、本件映画対比表42部分の複製物ということはできない。
コ 別紙対比表43の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表43部分」という。)は、別紙対比表43の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「本件映画対比表4 3部分」という。)の複製物といえるか。
 いずれも、前記( )ツにお4 いて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、被告映像対比表43部分は、本件映画対比表43部分の複製物ということはできない。
サ 別紙対比表44の「侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「被告映像対比表44部分」という。)は、別紙対比表44の「被侵害映像」欄の映像に対応する動画部分(以下「本件映画対比表4 4部分」という。)の複製物といえるか。
 いずれも、前記(4)テにおいて検討した映像と同様の映像であり、同様の検討により、被告映像対比表44部分は、本件映画対比表44部分の複製物ということはできない。
4 小括
 以上のとおり、まず、本件証拠上、P2が本件映画の映画製作者であると認めることはできないから、P2が著作権法29条1項に基づき、本件映画の著作権を取得したとは認められず、したがって、原告が、甲3契約により、本件映画の著作権を取得したものと認めることはできない。また、本件証拠上、原告がP2から本件映画の翻案権の譲渡を受けたと認めることはできない。
 そして、念のため、P2が本件映画の映画製作者であると仮定して、被告映像侵害主張部分が本件映画被侵害主張部分の著作権を侵害するかについて検討しても、被告映像侵害主張部分は、いずれも本件映画被侵害主張部分の複製物とはいえない。
第4 結論
 よって、その余の点について判断するまでもなく、原告の請求はいずれも理由がないから、これらを棄却することとし、主文のとおり判決する。

東京地方裁判所民事第29部
 裁判長裁判官 清水節
 裁判官 山田真紀
 裁判官 佐野信


(別紙)
侵害品目録
1 被告三共製造に係る下記名称のパチンコゲーム機
 CR フィーバー大ヤマトMX
 CR フィーバー大ヤマトJX
 CR フィーバー大ヤマトFX
2 被告ビスティ製造に係る下記名称のパチスロゲーム機
 大ヤマトS
3 被告カード・システム製造に係る下記ビデオゲームソフト
 プレイステーション2用ビデオゲームソフト「FEVER 7 SANKYO 公式パチンコシミュレーション」

(別紙)
 映画著作物目録
1 「宇宙戦艦ヤマト」TV シリーズ(昭和49年10月6日製作)
2 「宇宙戦艦ヤマト」劇場用(昭和52年8月6日製作)
3 「さらば宇宙戦艦ヤマト」(昭和53年8月5日製作)
4 「宇宙戦艦ヤマト2」TV シリーズ(昭和53年10月14日製作)
5 「宇宙戦艦ヤマト・新たなる旅立ち」(昭和54年7月31日製作)
6 「ヤマトよ永遠に」(昭和55年8月2日製作)
7 「宇宙戦艦ヤマトIII」(昭和55年10月11日製作)
8 「宇宙戦艦ヤマト・完結編35mm」(昭和58年3月19日)
9 「宇宙戦艦ヤマト・完結編70mm」(昭和58年11月5日)
line
 
日本ユニ著作権センター
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